2017年03月21日

[東京新聞] 林京子さんと考える 命の尊さ、ありのまま (2017年03月21日)

「書きたいんです。命とは何か」。作家林京子さんのそんな願いが、長崎から福島への一本道を明らかにした。私たちはそこからどこへ行くのだろうか。

本人の意思とは関係なく「原爆作家」と呼ばれてきた。だが、明らかに何かが違う。

十四歳、長崎県立高女三年の時に、勤労動員先だった爆心から一・四キロの三菱兵器製作所で被爆した。

長崎市内で生まれ、一歳で上海へ。父親は石炭を扱う三井の商社マン。戦況の悪化に伴い帰国したのは敗戦の年の三月だった。


◆加害者の視点も秘めて
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魔都上海の共同租界で、「侵略者の国の子供」として育てられ、加害者の視点も持っていた。原爆が一瞬に消し去ったふるさとの風景に対する感傷は薄かった。

だからだろうか。一九七五年に芥川賞を受賞した「祭りの場」には、かなり乾いた叙述も目立つ。

その五年前、学習雑誌に登場した全身ケロイドだらけの「ひばくせい(星)人」を見て、「原爆の被爆者を怪獣に見たてるなんて、被爆者がかわいそう」と女子中学生が指摘し、問題になった。今で言う炎上だ。

林さんは、こう書いた。

<漫画だろうと何であろうと被爆者の痛みを伝えるものなら、それでいい><「忘却」という時の残酷さを味わったが、原爆には感傷はいらない>(祭りの場)と。

被爆後三十年が過ぎていた。記憶と体験の風化が進む。しかし、被爆者の心と体が時間の経過に癒やされることはない。不安は一生つきまとう。

「被爆者たちは、破れた肉体をつくろいながら今日まで生きてきました」と、林さんは語っている。


◆長い時間の経過の中で
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そんな被爆者の、そして自分自身の長い長い時間の経過を、林さんはなぞり続けてきたのである。

風化にあらがい、怒りと不安を心の奥に深く沈めて、子どもの目でありのまま、化学記号のように的確に表現できる言葉を探しつつ−。

「核の問題には決して決着がつかない。どこかで終わってしまったことにはできない」「核というものは、絶対に利益にはつながらない」−ということを静かに訴え続けてきたのである。

3・11は、林さんのそんな心を激しく揺さぶった。

<放射性物質、核物質への認識の甘さ。人体が受ける放射性物質の危害は、(八月の)六日九日とイコールなのですが/“想定外”という狭量な人智(じんち)の枠に閉じ込めて報道される対策を聞きながら、私は、この国は被曝(ひばく)国ではなかったのか、と愕然(がくぜん)としました>

昨年暮れに刊行された短編集「谷間 再びルイへ。」のあとがきに、そう書いた。

8・6、8・9と3・11は、疑う余地なく“地続き”だったのだ。

林さんが秘めたる怒りをあらわにしたのは、福島原発事故の放射能が人体に与える影響について説明する「役人」の口から「内部被曝」という言葉が出た時だ。

「直ちに影響はない」という。

<八月六日九日から今日まで、幾人のクラスメートが、被爆者たちが『内部被曝』のために『原爆症』を発症し、死んでいったか。原爆症の認定を得るために国に申請する。国は却下。被爆と原爆症の因果関係なし。または不明。ほとんどの友人たちが不明と却下されて、死んでいきました。被爆者たちの戦後の人生は、何だったのでしょう>(再びルイへ。)

「物書きの性(さが)でしょうか」と恐らく苦笑を浮かべ、林さんは再びペンをとりました。

8・6、8・9から3・11へ、そして未来への“橋渡し”をするために。

あれから六年。首相が五輪招致の演説で福島は「アンダーコントロール(管理下にある)」と世界に向けて公言してから三年半。事故処理は遅々として進まない。

科学の粋を集めたロボットも放射線には歯が立たず、溶け落ちた燃料の所在も正体もつかめない。汚染水は止められない。核のごみの行き場は決まらない。

なのに政府と電力会社は原発の再稼働と、放射能に故郷を追われた避難者の帰還だけは、ひたすら急ぐ。誰のため、何のために急ぐのか。


◆この国のほころびは
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林さんが何より恐れた風化が進む。この国のほころびをつくろいながら、私たちはどのように生きていくのか。つくろうことはできるのか−。

“続き”を書くのは、私たちの仕事である。

風化にあらがい、命の尊さ、はかなさを直視して、子どもの目でありのまま、化学記号のように的確に表現できる言葉を探し−。
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[産経新聞] 【主張】北朝鮮と米中 危険増大に即した行動を (2017年03月21日)

核・ミサイルの挑発をエスカレートさせる北朝鮮にどう対処するか。最も影響力を持つのは、米国と中国である。

ティラーソン米国務長官の初訪中でも、対北朝鮮政策は焦点の一つとして注目された。

王毅外相との会談では朝鮮半島情勢が「危険レベル」にあるとの認識で一致し、「それぞれができる全てのことをする」と確約した。

それは良いとしても、問題は北朝鮮の暴走を止める具体策だ。そこに至らなかったのは残念だ。

両国にはさらに協議を重ねてほしい。とくに北朝鮮の後ろ盾である中国の責任は重大である。

ティラーソン氏は、訪中前に訪れた日本や韓国で、過去20年の米国の対北政策を「失敗」とし、新たなアプローチが必要だと強調している。トランプ政権が掲げる「あらゆる選択肢」は、武力行使を含むことを示唆している。

だが、王毅氏は「外交手段による平和解決」を主張し、対話優先の立場を変えない姿勢を崩さなかった。

国際社会の自制を求める声に耳を傾け、自ら核・ミサイル開発を放棄するような国が相手であれば、対話の活性化は望ましい。

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現実はどうか。国連安全保障理事会決議は無視され、核実験やミサイル発射を繰り返し、核戦力の向上が図られている。これまでの国際社会の接し方が「危険レベル」を高めてきたのである。

ティラーソン氏の訪中にタイミングを合わせるように、北朝鮮は高出力ロケットエンジンの地上燃焼実験をした。全国人民代表大会のさなかにミサイルを撃った。

中国はエネルギー、食糧の輸出などで北朝鮮の生命線を握り、安保理では北朝鮮を擁護し、制裁の「抜け穴」を提供してきた。暴走を許し、面目を失っているという認識はないのだろうか。

トランプ大統領は先に、北朝鮮問題に関して「中国はほとんど協力していない」とツイッターで指摘した。金正恩朝鮮労働党委員長については「非常に悪い振る舞いをしている」と発言している。

北朝鮮への圧力を高める方向性が見えはじめたといえよう。日本や韓国も、北朝鮮の挑発を阻止するため、米国との連携をさらに強めなければならない。

同時に、国際社会を巻き込み、中国の影響力を引き出す働きかけが重要である。
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[毎日新聞] 陸自の日報問題 国民の信頼損なう隠蔽 (2017年03月21日)

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国の安全保障は、国民の信頼なしには成り立たない。その安全保障を担う防衛省・自衛隊で、信頼を損なう問題が発覚した。組織的な隠蔽(いんぺい)が疑われる深刻な事態だ。

南スーダンの国連平和維持活動(PKO)で、陸上自衛隊の部隊の活動を記録した日報が、「廃棄した」とされてきた陸自の内部で、電子データとして保管されていたことが明らかになった。これまで防衛省は、再調査したところ、陸自ではなく、陸海空の自衛隊でつくる統合幕僚監部で電子データが見つかったとして、内容を一部公表していた。

こうした過去の説明とつじつまを合わせるため、陸自はデータが保管されていたことを公表せず、消去した可能性もあるという。さらに陸自の幹部が保管の事実を公表しようとしたところ、統合幕僚監部の「背広組」といわれる防衛官僚が非公表とするよう指示したとされる。

日報は、昨年7月に首都ジュバで大規模戦闘があった際の状況を伝えている。情報公開請求に対して「廃棄して不存在」のため不開示とした最初の判断が、意図的な隠蔽だったのか否か、現時点ではわからない。

ただ、この時の誤った判断が発端となって、矛盾しないようにウソを重ね、最後は事実を隠すために証拠を消し去ったとの疑いが出ている。 防衛省には、徹底した真相究明と、関係者の厳正な処分、再発防止を強く求める。

直接の責任は隠蔽に関わった幹部たちにある。しかし、稲田朋美防衛相の管理責任も大きい。

稲田氏は、学校法人「森友学園」との関与を否定した国会での「虚偽答弁」などをめぐり、省内で求心力の低下が指摘されている。重要な報告が、稲田氏に上がっていないのではないかという疑いも浮かぶ。文民統制(シビリアンコントロール)が利いているのか心配だ。

稲田氏は「改善すべき隠蔽体質があれば私のもとで改善していく」と語り、直轄の防衛監察本部に特別防衛監察の実施を指示した。当然のことで、遅すぎたぐらいだ。

だが、もし稲田氏が、不祥事に厳正に対処することをもって、自己保身に利用しようとするならば、それは許されない。稲田氏自身の責任は自ら厳しく判断すべきだ。

防衛省・自衛隊には、情報隠しで揺れている余裕はない。南スーダンPKOでは、陸自が5月末に撤収することが決まったが、まだ気は抜けない。北朝鮮は弾道ミサイル4発を同時発射し、米国は対北朝鮮政策の見直しを進めている。平時にこんな隠蔽をするようでは、有事にどれだけの情報操作が行われるのか、不安になってくる。
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[日経新聞] 欧州のポピュリズムに懸念が消えない (2017年03月21日)

反イスラムや反欧州連合(EU)などの排外的な主張がどれだけ支持を広げるか、欧州政治の流れを左右する国政選挙が今年は相次ぐ。その第1弾となった先週のオランダ下院選挙では、極右の自由党が予想外に勢いを欠く結果となった。

極右勢力が躍進すれば、影響は4?5月のフランス大統領選挙に及んだり、EUの不安定化につながったりする可能性があっただけに、欧州にとって好ましい結果だったといえる。

自由党はイスラム教の礼拝所廃止といった過激な主張を掲げて支持を増やし、一時は第1党の座をうかがう勢いも示した。しかし中道右派の与党、自由民主党が首位の座を守り、次期政権への連立協議で中心になることが確定した。

投票率は8割にのぼり有権者の関心は極めて高かった。EU離脱を決めた英国からトランプ米大統領誕生へと、欧米ではポピュリズム(大衆迎合主義)的な政治の動きが続いている。その連鎖が及ぶことをオランダ国民は拒否した。

だが、有権者が必ずしも主流政党の支持で結束した結果でない点には注意する必要がある。自由民主党は勝ったとはいえ、議席を減らした。連立与党の一つである中道左派の労働党は大敗し、代わりに環境政党が大きく伸びた。

極右への集中は回避したが、与党への批判票が左右の政党に分散して向かったもようで、既存政治への不満が根強いことを示した。

欧州政治の焦点は4月下旬からの仏大統領選に移る。世論調査では極右政党・国民戦線のルペン党首が、中道系の独立候補マクロン元経済産業デジタル相と争う展開だ。中道の左右二大政党の候補はいずれも勢いがない。

移民規制やEU、ユーロ圏からの離脱など過激な政策を掲げるルペン氏が大統領に当選すれば、欧州は混乱が必至だ。最終的にはマクロン氏が有利とみられているが、予断は許さない。

9月に議会選を迎えるドイツでは、難民排斥を訴える民族主義政党が注目を集めている。排外的な勢力が支持を得る流れがどこまで及ぶのか、不透明感は消えない。

保護主義的な姿勢をみせる米政権への対応、近く始まる英国とEUとの離脱交渉など、欧州が抱える懸案は多い。仏独という中核国が過激で排他的な勢力を選挙で退け、安定した政治基盤を堅持できるか、引き続き目が離せない。
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[日経新聞] 混迷深まる築地の豊洲移転 (2017年03月21日)

築地市場の豊洲への移転問題がさらに混迷してきた。地下水の再調査で改めて高い濃度の有害物質が検出されたためだ。早期の移転は難しいと言わざるを得ない。

豊洲市場での地下水の調査は2014年秋以降、9回実施された。今年1月に公表された最後の調査で基準値を最大79倍上回るベンゼンなどが検出された。

数値が急激に悪化したため、実施したのが今回の再調査だ。再調査でも最大100倍のベンゼンが検出され、毒性が強いシアンなども再び見つかった。

環境基準は地下水を飲み水に使う場合の目安である。豊洲では飲料水としても食品の洗浄にも使わないから、これで安全性に欠けるわけではない。土壌はコンクリートなどで覆われているので、法的にも何ら問題はない。

しかし、この結果では消費者の理解はなかなか得られまい。再調査でも数値は改善していなかったのだから、なおさらだろう。

一方で、築地市場も問題を抱えている。こちらも土壌汚染のおそれがあるうえ、市場内の6棟の建物は耐震性を欠いていることが発覚した。開放型の施設が多いから衛生面にも不安がある。

東京都は当初、築地市場を現在地で再整備する方針だった。1991年に着手したが、営業しながらの工事は難航し、とん挫した。過去の経緯をみても建て替えは時間や費用がかなりかかるだろう。

豊洲市場を巡っては、都議会の百条委員会が続いている。土壌汚染に対する都の認識が甘かった点や、石原慎太郎元知事がこの問題に関して人任せにしていた様子などが明らかになった。

これまでの経緯を引き続き検証することは大事だが、それを移転の是非を決める判断材料のひとつと位置付ける小池百合子知事の姿勢は解せない。過去と今後は切り離して考えるべきだ。

豊洲でも築地でもない第3の選択肢はあるのか。まずは、豊洲での有効な追加対策の可能性を探るべきだろう。
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[毎日新聞] 米大統領令 やはりイスラム差別だ (2017年03月21日)

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再び司法からの「待った」である。

トランプ米大統領が今月署名した入国規制の大統領令に対し、ハワイなど2州の連邦地裁が相次いで執行停止の仮処分を決めた。

16日に発効するはずだった大統領令は土壇場で差し止められた。

トランプ大統領には手痛い敗北である。1月末に出した大統領令が執行停止とされたため「改良版」の大統領令を出したが、やはり司法のお墨付きを得られなかった。

トランプ大統領は「司法の行き過ぎだ」と非難する。だが、むしろ政治の暴走を司法が止めたのであり、トランプ氏のイスラム観に重大な疑念が示されたと考えるべきだ。

大統領令の最大の問題点は、テロ対策としてイスラム圏6カ国(イラン、シリア、イエメン、リビア、スーダン、ソマリア)からの新規入国を90日間禁止したことだ。

これに対しハワイ州の連邦地裁は、好ましくない人を入れたくないからといって国民全員を入国禁止にするのは不当だとの判断を示した。

メリーランド州の連邦地裁は、トランプ氏が「全イスラム教徒の入国禁止」を大統領選時から主張していたことを指摘した。1月の大統領令からイラクを外して6カ国にしたとはいえ、基本的にイスラムに対して差別的だというのだ。

いずれも妥当な判断である。米国の憲法は特定の宗教を特別扱いしたり差別したりすることを禁じている。なぜイスラム教徒が9割以上を占める国ばかり選んだのか、この6カ国がテロとどう関係するのか、政府側から説得力のある説明はない。

目に付くのは「イラン封じ込め」の気配だ。イスラム教シーア派のイランは、イエメンのシーア派武装組織や、シーア派の一派とされるアラウィ派を信奉するアサド・シリア政権との関係が深い。この3カ国で対象国の半分を占める。

他方、スンニ派の盟主サウジアラビアはアサド政権と対立し、イエメンの武装組織と戦っている。大統領令からは、イランと断交中のサウジを支援しイランを封じ込めようとする意図が感じられる。

だが、米同時多発テロ(2001年)の実行組織アルカイダにはサウジ人が多く、首謀者のウサマ・ビンラディン容疑者もサウジ出身だ。国籍では判断できないし、米国で生まれ育った「テロ予備軍」もいる。

トランプ大統領は連邦最高裁まで闘う構えだが、米国の開かれた社会に「入国禁止」はそもそもふさわしくない。イスラムに対するトランプ氏の強硬姿勢こそが米国への反感をあおり、対米テロを誘発する危険性をはらんでいるのではないか。そのことに早く気付くべきだ。
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[朝日新聞] 残業時間規制 まだ一歩でしかない (2017年03月21日)

働き方改革で焦点となっている残業時間の規制について、繁忙期など特別の場合の上限を「月100時間未満」とする案を、政労使がまとめた。

ほかに、労使協定で認められる残業の原則は月45時間までと法律に明記▽これを超える特例は年6カ月まで▽2?6カ月間の特例の上限は月平均で80時間以内、とする方向も固まった。

これまで事実上無制限だった残業時間に上限が設けられる。長時間労働を改めていく一歩には違いない。だが、現状の深刻さを考えると物足りない。さらなる残業削減への努力を関係者に求める。

上限規制を巡って「100時間未満」を主張する連合と「100時間以下」を唱える経団連が対立するなか、最後は安倍首相が「未満」とするよう要請した。連合に配慮を示した形だが、実態は当初「100時間など到底あり得ない」と反対していた連合の譲歩だ。

合意ができず規制が導入できなくなっては元も子もないという判断もあっただろう。が、100時間を超える特別条項付きの労使協定は今でも全体の約1%にすぎない。現状追認と言われても仕方あるまい。

過労死で家族を失った遺族は今回の案に強く反対している。月100時間の残業は、労災認定の目安とされる「過労死ライン」ぎりぎりだからだ。15年度に脳・心臓疾患で過労死と認定された96件のうち、月100時間未満の残業だった例は54件と過半を占める。懸念の声があがるのはもっともだ。

そもそもこの上限は、どんな場合も超えてはならない「最低基準」だ。この範囲内の労使協定ならよいわけでなく、できる限り残業を減らす努力が求められることは言うまでもない。

政府も、こうした考え方を徹底し、残業時間を短くする取り組みを促す考えは示しているが、どうやってその実を上げていくのか。さらに具体的に示す必要がある。

合意では規制の実施状況を踏まえて5年後に見直しも検討するとされているが、さらに上限を引き下げていく姿勢をより明確にすべきではないか。

厚労省が昨年11月、長時間労働が疑われる全国約7千事業所を対象に立ち入り調査したところ、労使協定を上回るなどの違法な残業が約4割で見つかった。規制は作るだけでなく、守られてこそ意味がある。指導監督態勢の強化も大きな課題だ。

政府は疑問や不安の声に耳を傾け、実行計画やその後の法改正の作業にいかしてほしい。
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[読売新聞] 日露2プラス2 建設的な安保協力を追求せよ (2017年03月21日)

東アジアの厳しい安全保障環境を踏まえれば、双方の利益が合致する分野で建設的な協力を追求する意義はあろう。

日露両政府が外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を3年4か月ぶりに開いた。

北朝鮮の核・ミサイル開発に対し、緊密に連携して対応することで一致した。北朝鮮に挑発行動の自制や国連安全保障理事会決議の順守を求める方針も確認した。

北朝鮮は、大陸間弾道弾(ICBM)用とみられる新型エンジンの燃焼実験の実施を発表した。北朝鮮の暴走を阻止するには、ロシアとも情報・意見交換し、北朝鮮包囲網を強化する必要がある。

稲田防衛相はショイグ国防相との個別会談で、ロシア軍の北方領土への地対艦ミサイル配備などに抗議した。ショイグ氏は、「ロシアの国防目的だ」と説明した。

北方領土での軍備増強は、日露関係を改善し、平和条約交渉を落ち着いた環境で行うことに逆行する行為であり、抗議は当然だ。

ショイグ氏は、在日米軍のミサイル防衛体制に懸念を示した。稲田氏が「北朝鮮向けで、ロシアに脅威を与えるものではない」と強調したのはうなずけよう。

ロシアが日本との2プラス2に前向きなのは、ウクライナ問題で先進7か国(G7)から対露制裁を科される中、G7の分断を図る思惑があるとみられる。

安全保障を巡る日露の立場が完全に一致しているわけではない。しかし、まずは可能な分野で協調し、信頼醸成を図りつつ、協力を拡大することが肝要だ。G7の足並みを乱さない範囲で、日露の防衛交流や共同訓練も進めたい。

岸田外相とラブロフ外相の会談では、4月下旬に安倍首相がロシアを訪問することで合意した。

焦点の北方4島での共同経済活動については、4島周辺の観光船ツアーや、ロシアの島民向け遠隔医療などの検討に入った。いずれも北海道の関係自治体の要望に基づき、日本が提案した。

だが、共同経済活動のハードルは高い。日本は、警察権、徴税権などに関し、互いの法的立場を害さない「特別な制度」下での実施を主張する。ロシアは「ロシアの法律に矛盾しない案件のみ実施できる」との姿勢を崩さない。

共同経済活動は、あくまで北方領土返還に向けた環境整備が目的である。ロシアの不法占拠を既成事実化するような妥協はあり得ない。領土に関する原則を曲げずに一致点を探るべく、粘り強く交渉することが大切である。
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[朝日新聞] 黒田日銀総裁 国民に説明責任果たせ (2017年03月21日)

日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁が就任5年目を迎えた。当初から、2年程度で年率2%の物価上昇を目指すことを掲げてきたが、依然、実現を見通せていない。任期が残り1年になった今、国民への説明責任を果たすよう改めて求めたい。

まずは、現行の大規模な緩和策に潜むコストについてだ。

将来、物価上昇率目標が実現すれば、日銀は利上げが必要になる。その「出口」でどんな対応をするのか、日銀はほとんど明らかにしていない。黒田総裁は「経済・物価・金融情勢によって、出口での戦略も変わってくるため、時期尚早なことを言うと、マーケットに余計な混乱を及ぼす」と説明する。

たしかに、具体的な手順について予断はできない。だが想定される多くの場合で、巨額の国債を抱え込んだ日銀が大幅な損失を出す可能性がある。前提の置き方にもよるが、年間数兆円規模の損失が何年も続くと試算する専門家もいる。

もちろん、日銀の目的は物価安定であり、利益の最大化ではない。収益にしても長期間でならして考えれば、大きな問題にはならないとの見方もある。

そうだとしても、出口でのコストの議論を封印しているのは不健全だ。そのときになって急に公表すれば、日銀への信頼が失われかねない。黒田氏ら今の執行部が説明すべきで、「時期尚早」は言い訳にならない。

昨秋から始めた長期金利の操作も問題をはらむ。米国の利上げなどで長期金利の上昇基調が強まる中で、低水準に固定する操作は、市場への介入を強めることになる。操作に無理がないか、国債購入が財政難への政府の危機感をゆるめていないか、副作用についての説明も十分とは言えない。

説明責任を果たすうえで、注目されるのは政策決定会合での議論だ。会合には、正副総裁3人と6人の審議委員が参加する。いずれも、国会の同意を得て内閣が任命している。

最近の会合では第2次安倍政権下で任命された7人が執行部提案に賛成し、それ以前に任命された審議委員2人が反対するケースが続く。後者の2人は今年の7月で任期を終える。後任次第では、会合で表明される意見の幅が狭まりかねない。

次の審議委員の人選は、来春の正副総裁の後任選びの試金石でもある。多様な見解の持ち主による十分な討議があってこそ、政策は周到さを増し、国民への説得力も高まる。国会と内閣は、その責任の重さを自覚してほしい。
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[読売新聞] 石原氏証人喚問 無責任体制があぶり出された (2017年03月21日)

政策の決定過程が、あまりに不透明である。責任の所在が不明確な都政運営の問題点が、浮かび上がった。

築地市場の豊洲への移転問題で、東京都議会の百条委員会が、石原慎太郎元知事の証人喚問を行った。

石原氏は、「ピラミッドの頂点にいて、(移転を)決裁した責任は認める」と述べた。

一方で、豊洲移転は既定路線だったことを強調し、「都庁全体の大きな流れの中で決定した」と説明した。用地買収交渉や土壌汚染対策などは、「自分が立ち入る問題ではなく、担当者に一任するしかなかった」とも釈明した。

百条委では、複数の元都幹部が移転問題について、石原氏に節目ごとに報告していたと証言した。石原氏は「記憶にない」などと繰り返した。組織のトップの姿勢として、疑問を禁じ得ない。

当初の交渉を一任された元副知事の浜渦武生氏も、19日の証人喚問で、東京ガスとの土壌汚染対策などの確認書の内容について、「全く知らない」と否定した。

一体、誰が豊洲移転問題の実質的な責任を負っていたのか。

百条委で分かったのは、担当幹部らが土壌汚染のリスクを把握しつつも、豊洲への「移転ありき」で突き進んだ実情だ。元市場長の岡田至氏は「交渉をまとめることが第一だった」と証言した。

東京ガスに土壌汚染対策の追加負担をさせる瑕疵(かし)担保責任を免除した経緯など、「水面下」の交渉の実態は不透明なままだ。来月に行われる交渉役の元都幹部らの証人喚問で解明してほしい。

豊洲市場の地下水の再調査では、環境基準の最大100倍のベンゼンが検出された。数値が急上昇した前回の調査結果を裏付けた。地下水位の管理システムが本格稼働した影響とみられる。

豊洲市場では、地下水を飲料などに利用せず、敷地はコンクリートなどで覆われている。都の専門家会議は「地上部分は科学的に安全」という見解を示した。

小池百合子都知事は、水質調査の結果を「重く受け止めなければならない」と語った。移転問題については「判断するのはまだ早い」との考えを示した。小池氏は、都民や市場関係者の「安心」を確保することを重要視している。

市場問題を7月の都議選の争点とするため、移転の最終判断を引き延ばすようなら、都民や市場関係者の不信を招こう。過去の経緯と安全性の問題を区別して、速やかに方向性を示すべきだ。
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2017年03月20日

[東京新聞] 北朝鮮核問題 米国は対話と圧力を (2017年03月20日)

北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止するためには武力行使も辞さない−。ティラーソン米国務長官は歴訪先の日中韓三カ国で強硬姿勢を見せた。それでも北朝鮮との対話を忘れてはならない。

北朝鮮が早晩、米本土を核攻撃できる能力を身に付けるとの危機感を強めた米国では、強硬論がにわかに台頭した。

一九九四年の米朝枠組み合意で首席代表を務めたガルーチ元国務次官補は「東京やソウル、サンフランシスコが破壊されるのを待つ必要はない」として、北朝鮮の攻撃が迫っていると判断すれば先制攻撃を仕掛けるべきだと主張する。

こうした世論を受け、トランプ政権は北朝鮮政策の見直しを進めている。

ティラーソン氏は歴訪先で「北朝鮮を非核化させようとした過去二十年間の努力は失敗に終わった」と認め「新しいアプローチが必要だ」と強調した。

そのうえで、北朝鮮が非核化に動きださない限り、交渉には応じないとしたオバマ前政権の「戦略的忍耐」路線の「終了」を宣言。「軍事衝突は望まないが、われわれが対応を必要とするレベルまで北朝鮮が脅威をエスカレートさせれば、相応の措置を取る」と強く警告した。

一方で、北朝鮮との対話については「北朝鮮が核兵器や大量破壊兵器を放棄して初めて可能になる」と否定した。だが、北朝鮮の変化を待つという点はオバマ路線と変わらない。

冷戦時代の米ソ両国は、首脳間のホットラインのように意思疎通の手段を持っていた。

ところが米朝間にはそんなパイプはない。このまま緊張が高まれば、双方が疑心暗鬼に陥って軍事衝突に突き進む危険が高まる。それを防ぐためにも対話が必要だ。

米国の強硬姿勢は北朝鮮には大きな圧力となる。ただ、あくまでも平和的解決へ導くための圧力であるべきだ。

米国が実際に軍事力に訴えた場合、日韓両国も北朝鮮の攻撃にさらされ、大きな被害を受ける危険がある。やみくもに武力行使に走らないよう米国には自制を求めたい。

中国も国際社会と一層協調してこの問題に取り組んでほしい。

中国は米国の高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備に反対しているが、北朝鮮の暴走が間接的に自国の安全保障も脅かしていることを看過してもいられまい。
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[産経新聞] 【主張】東芝の決算再延期 背負う責任の重さ認識を (2017年03月20日)

日本を代表する名門企業とは思えない惨状である。米原発事業の巨額損失に揺れる東芝が、決算発表の再延期に追い込まれた。

米原発子会社ウェスチングハウス(WH)の内部統制をめぐり、監査法人の承認が得られなかったためだという。東芝は不正会計事件でも決算の発表延期を繰り返してきた。上場会社として再び市場の信頼を裏切った責任は重大である。

「特設注意市場銘柄」に指定され、管理体制の強化を進めていた最中に、経営を揺るがす損失が新たに発覚した。内部統制の改善が認められなければ、上場廃止の恐れもある。

何にせよ、WHの経営実態を解明し、原発事業の損失額を確定する決算の発表、再建策の提示を急ぐほかない。それなくして再生への第一歩も記せない。

東芝は先月、2016年4?12月期の決算発表について、「WHの上層部から部下に不適切な圧力があった疑いがある」として1カ月延期した。だが、監査法人が追加調査を求め、再び発表を来月に延期する失態を演じた。

東芝は米原発事業で数千億円規模の損失を計上するが、工程遅れの原因などをいまだに解明できていない。WHを掌握していなかった証左だ。企業統治の欠陥は明らかだ。改革は急務である。

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今年度末で負債が資産を上回る債務超過に陥る見通しだ。そうなれば東証1部から2部に格下げとなる。投資家や市場の混乱を避けるため、経営再建の道筋などを丁寧に説明すべきだ。

同社は原発や防衛関連など日本にとって重要な技術を保有している。東京電力福島第1原発の廃炉処理でも、東芝の原発技術は欠かせないものだ。課せられた責務の大きさを忘れてはならない。

東芝の動向は、米国で原発を建設するWHの経営を左右する。それだけに、米政府も強い関心を抱く。訪米した世耕弘成経済産業相が米商務長官らと会談し、緊密な情報交換で合意した。日米間の連携をもっと進めるべきだ。

同社は稼ぎ頭の半導体事業を分社化し、過半の株式を海外企業などに売却する。それで資金を確保できるとしても、海外への技術流出リスクが残る。政府系金融機関などが新会社に出資し、日本に一定の技術基盤が残る方法を探ることも求められよう。
posted by (-@∀@) at 13:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 産経新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする