2020年01月20日

[産経新聞] 【主張】米中貿易協定 本丸は中国の構造問題だ (2020年01月20日)

米中両政府が通商協議の「第1段階」となる協定文書に署名した。米国の対中輸出を2年間で2千億ドル(約22兆円)増やし、中国に対する米国の一部関税を引き下げることなどが柱である。

一連の摩擦で米国が追加関税を緩和するのは初めてだ。制裁の応酬が泥沼化し、世界経済が停滞するリスクは幾分薄らいだ。日本企業も安堵(あんど)できる流れだろう。

もちろん、これは一時休戦である。合意の履行状況や、「第2段階」の協議次第で、再び米中摩擦が激化する事態も併せて想定しておかなくてはならない。

問題は、米大統領選を控えたトランプ政権が目先の成果にこだわり、中国の不当な補助金や国有企業の優遇を排する構造問題を第2段階に先送りしたことだ。

これこそ米国が迫るべき本丸である。中国は共産党の独裁体制を支える国家資本主義が揺らぎかねないため抵抗しよう。それでもここに切り込めなければ、米中協議は本質的に意味をなさない。

トランプ氏は第2段階合意を大統領選後に持ち越す可能性にも言及するが、よもや輸出拡大だけで満足というわけではあるまい。米国には、迅速かつ確実に真の成果を得るよう努めてほしい。

第1段階で見過ごせないのは典型的な管理貿易になったことである。自由貿易とは対極をなす。

中国が米国からの輸入を無理に増やそうと、第三国からの輸入を減らす恐れはないか。世界1、2位の経済大国が需給を無視して市場をゆがめれば、影響は世界に及ぼう。2千億ドルには農畜産品だけでなく、工業品やエネルギーなども含まれる。日本企業も市場の変調に気を付ける必要がある。

通貨安誘導を禁じる為替条項もある。米国は見返りに中国の為替操作国指定を解除したが、本来、金融政策などを縛りかねない為替条項は通商協定になじまない。米国が日本にも同様の要求をしないか、引き続き警戒がいる。

知的財産権保護や技術移転の強要を禁じる条項もあるが、これらは中国の既定路線だ。問題は約束を確実に守るかどうかである。その点で協定の順守状況を検証する枠組みを設けたのは前進だ。

中国は自由貿易の恩恵を享受しながら、自らは国際ルールをないがしろにしてきた。だが、もはや約束破りは許されないことを厳しく認識すべきである。
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[産経新聞] 【主張】NHK同時配信 業務肥大化につなげるな (2020年01月20日)

総務省が、NHKのテレビ番組のインターネットでの同時配信を認可した。視聴者は4月から追加の受信料を支払うことなく、スマートフォンなどでNHKの番組を見ることが可能になる。

ネット同時配信は放送と通信の融合をにらんだ新サービスで、その実現はNHKにとって悲願だった。視聴者の利便性が高まる取り組みではあるが、一方で懸念も根強い。同省がサービスを認可する条件としてきた経営改革が十分には進んでいないからである。

安定した受信料収入にあぐらをかき、NHKの業務が肥大化するようでは民放との健全な競争が損なわれる恐れがある。同省が一度は認可を見送り、業務の再検討を指示したのもこのためだ。

NHKグループの内部留保は約2千億円にのぼる。業務の効率化を通じ、受信料の値下げなどに充てることが求められる。それも公共放送の立派な役割である。

NHKは総合とEテレの番組を放送と同時にネット配信する。当初は24時間の常時配信を予定していたが、午前6時から翌日午前0時までの1日18時間とし、人件費を抑制するという。4月からの本格実施に向け、3月から1日17時間程度で試験的に実施する。

総務省はネット配信の条件として、業務の効率化などを求めていた。NHKではネット業務を受信料収入の2・5%以内に収めるとしたが、年7千億円を超える受信料は増加傾向にある。このままではネット配信に伴って業務がさらに拡大しかねない。業務抑制の仕組みが欠かせない。

経営改革にも取り組む必要がある。衛星放送を今の4波から3波に削減するというが、番組制作で随意契約が目立つなど高コスト体質の是正は急務である。競争契約を広げるなどの方法でコスト削減に努めてほしい。管理職らの処遇見直しも課題だ。

高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの商用化が目前に迫る中で、NHKは公共放送からネットを含めた公共メディアへの進化を目指している。だが、視聴者が負担する莫大(ばくだい)な受信料収入を自由に使い、民放の経営を圧迫するようでは本末転倒である。

わが国の放送メディアは、NHKと民放の二元体制で築かれてきた。NHKが肥大化すれば、メディア全体の健全な発展に支障が生じることを忘れてはならない。
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2020年01月19日

[産経新聞] 【主張】日米安保改定60年 同盟発展が平和もたらす (2020年01月19日)

■再改定と防衛力の強化を図れ

日米両政府が、旧日米安全保障条約に代わる現行の安保条約への改定に署名してから、19日で60年を迎えた。

昭和26年に結んだ旧条約と合わせ、新旧の安保条約は日米同盟体制の基盤となり、日本の独立と平和、そして自由を守ってきた。

日米同盟は世界の歴史の中でも極めて成功した部類に入る。それは日本の防衛を実現したことにとどまらない。当初は極東の、そして今はインド太平洋地域ひいては世界の平和と安定の礎としての役割を果たしているからである。

日米安保の国際公共財としての意義も銘記しつつ、新たな時代へ向けて強固な同盟の維持、発展を目指したい。

≪世界安定の「公共財」だ≫

日米の外務・防衛担当の4閣僚は17日、共同発表で改定60年を祝い、「両国が共有する価値及び利益を守るため、献身的に奉仕する自衛隊及び米軍に感謝の意を表する」と強調した。

戦後日本の平和は憲法9条のおかげではない。外交努力に加え、自衛隊と、日米安保に基づく駐留米軍が抑止力として機能してきたから平和が保たれてきた。

60年の間、同じ安保条約の下で世界の情勢はさまざまに変化した。はじめの約30年間はソ連の脅威への対処に追われた。ソ連崩壊後は同盟の危機が叫ばれ、日米は平成8年の安保共同宣言で、日米安保をアジア太平洋地域の安定の基礎と再定義した。

その後、中国の急速な軍事的、経済的台頭と北朝鮮の核・ミサイル開発の進展で日米安保が備えるべき新たな対象が明確になった。尖閣諸島など南西諸島防衛の重要性が増し、朝鮮半島有事と台湾海峡危機、南シナ海情勢への対応も真剣に考えなければならなくなっている。

安倍晋三首相は平成27年、集団的自衛権の限定行使を容認する安保関連法制定を実現した。これにより、北朝鮮問題対処などに日米が協力して当たっている。

旧安保条約は占領終結後も米軍が日本に駐留すると定めつつ、米国の対日防衛の義務を明記しなかった。駐留米軍を日本の内乱鎮定に使用できる条文もあった。これらは独立国にふさわしくないと当時の岸信介首相は考え、左派勢力の猛烈な反対をよそに現行条約を結んだ。内乱条項は削除され、米国の日本防衛義務(5条)と日本による駐留米軍への施設・区域(基地)の提供(6条)が定められた。日本は米国を防衛する義務を負わないため、全体としてバランスを取る「非対称の双務性」と説明されている。

在日米軍基地のおかげで、米軍は西太平洋から中東まで展開できる。日米安保は米国の世界戦略に不可欠の存在となっている。

≪自ら守る気概取り戻せ≫

そうであっても、日米安保には不安定な点もあり、空洞化や破綻を招かぬよう努力が必要だ。

日本の集団的自衛権の行使には過度な制限がある。安全保障にうとい首相が登場すれば、有事に日米が守り合う関係になれず、同盟が危機に陥りかねない構造的な不安定性が残っている。多くの野党が集団的自衛権の行使容認は違憲だと叫んでもいる。

日米安保への「片務的」という批判をトランプ米大統領も口にした。米政府から駐留米軍経費の増額圧力が高まっている。日本政府は安保条約の意義を繰り返し説くべきだが、不安定性の問題を放置しては危うい。

日米安保には副作用もあった。戦後日本人は米国への依存心を強め、自国や世界の平和を守る自立心と気概を失った。だが、それでは済まされない時代になった。

米国の世界における相対的国力は低下しつつある。トランプ氏やオバマ前大統領が「米国は世界の警察官ではない」と語るなど米国には内向き志向が現れている。宇宙やサイバーなど新たな領域への取り組みも重要だ。中国の軍拡はなお急ピッチだ。

成功した安保条約だが、そろそろ再改定が必要ではないか。産経新聞は平成23年、再改定案を提言した。「片務性」批判という条約上の不安定性を除くため、再改定で日米が真に守り合う関係を整えたい。日本自身が一層、防衛力強化に努めるべきはいうまでもない。その際、敵基地攻撃能力の保有を含め「専守防衛」から「積極防衛」へ転換し、日本の役割を増すことが必要である。
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2020年01月18日

[産経新聞] 【主張】新型肺炎 中国は正確な情報開示を (2020年01月18日)

中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が日本でも初めて確認された。

神奈川県在住の30代中国人男性で、武漢市に滞在後に日本に戻った。武漢市在住の父親も発症しており、人から人へと感染した疑いが強い。

タイでも中国人観光客の感染が判明した。にもかかわらず、中国国内での発症者は、交通の要衝で人の往来の活発な武漢市を中心に限定的だ。これでは情報を正確に伝えているかどうか疑われても仕方あるまい。

発生現場となった中国当局は責任をもって事実関係を公表し、アジア各国への感染拡大を防ぐ努力をすべきだ。

新型コロナウイルスの患者はこれまでに43人が見つかった。武漢市の海鮮市場の関係者に多い。2人が死亡している。

想起されるのは、2002年に発症者が出始めたSARS(重症急性呼吸器症候群)における中国当局の対応だ。

情報公開や対策が大幅に遅れたことで、中国本土と人の往来が密接な香港や台湾をはじめとした世界各国・地域に感染が拡大し700人以上が死亡したとされる。

今回、中国外務省は世界保健機関(WHO)や関係国に積極的に情報を提供しているというが、額面通りに受け取れない。中国では近年、市民のパニックや当局への反発を押さえ込むため事件、事故や災害報道を規制する傾向が強まっているのも懸念材料だ。

今月下旬には旧正月を祝う春節で、中国国内外で人の往来が活発となる。今夏には、オリンピック・パラリンピックを控える。適切な対応策を講じるためにも、正確な情報は欠かせない。

今回、新型肺炎感染者の入国を許してしまったが、水際での防疫強化も喫緊の課題だ。男性は出国前に解熱剤を飲んでおり、外部から体温を測るサーモグラフィーに引っかからなかった。

中国当局には日本向けの航空機について、発熱が疑われる乗客にこれまで以上にきちんと自己申告させるなど、注意喚起を促すよう求めていく必要がある。日本政府は中国当局に対し、情報開示を求めるとともに自らも入国管理を強化すべきだ。

感染症は一国だけの問題ではない。関係各国が連携して対処し、感染拡大を防ぐ責任を果たさねばならない。
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[産経新聞] 【主張】伊方原発停止 高裁の迷走が止まらない (2020年01月18日)

司法の見識が疑われる決定である。

広島高裁が仮処分で四国電力・伊方原子力発電所3号機(愛媛県)の運転停止を命じた。

伊方3号機に関する広島高裁の仮処分の判断は、この約2年のうちに運転が1回、停止が2回となった。裁判長が異なるとはいえ、高裁としての定見の欠如ぶりは、看過できない迷走状態だ。

伊方3号機は、福島事故で国内の全原発が停止した後、平成28年夏に国内で4番目に再稼働を果たした原発である。

昨年12月から定期検査中の3号機は、4月からの運転再開を予定していたが、仮処分は即時に効力を発揮するため、効力が期限付きとはいえ、停止継続を余儀なくされる見通しだ。

停止による電力不足分の穴埋めは、火力発電で行われるため、二酸化炭素の排出増と併せて、電気代の値上がりが消費者に及ぶ事態は避けがたい。

広島高裁による前回の運転差し止めは、29年12月に下されたが、その際は阿蘇山の巨大噴火が理由だった。火砕流が海を渡って伊方原発に到達する可能性が否定できない、というものだった。

今回の運転差し止め理由は、伊方原発が立地する佐田岬半島沿いの断層と原発までの距離だ。

伊方3号機は原子力規制委員会の厳格な安全審査に合格して再稼働を果たした原発である。

にもかかわらず、裁判長は四国電力の主張よりも近くに断層が位置すると解釈し、3号機を合格させた「規制委の判断には、その過程に過誤ないし欠落があったといわざるを得ない」とした。

阿蘇山からの火砕流については、ゼロリスクを理由に伊方原発を立地不適とするのは社会通念に反する、と良識を示したものの、火山灰などの降下量に関して規制委にかみついた。

四国電力の想定は過小で、それを認めた「規制委の判断も不合理である」としたのだ。

高度に専門的な理学、工学知識が求められる原発訴訟での大胆極まる「決定」だ。審尋は、たったの1回だったからである。

しかも裁判長は今月25日に退官する。近年の原発訴訟で運転停止を命じる決定が定年退職が近い裁判長から出される傾向は偶然か。仮処分が脱原発の闘争手段になりつつあることも気にかかる。
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2020年01月17日

[産経新聞] 【主張】阪神大震災25年 決して忘れてはならない (2020年01月17日)

■不断の見直しと点検が必要だ

平成7年1月17日の阪神大震災から25年、四半世紀となった。

大震災を経験していない世代も増えた。社会を揺るがせたどんな出来事も、いずれは歴史の一ページにならざるを得ない。

しかしそれは決して、忘れてよいということではない。6434人の犠牲者、震災が遠因となって亡くなったすべての方に、改めて心から哀悼の意をささげたい。

◆防災減災に教訓生かせ

都市型の大規模災害だった阪神大震災は多くの教訓を残した。古い建物に被害が集中し、通電火災や圧死が目立った。震災は、耐震基準をさらに強化する契機となった。政府の初動は遅れ、危機管理のあり方も見直された。

被災者生活再建支援法ができ、個人の住宅の大規模な被害も公的に支援できるようになった。大きな代償を払って得た社会の財産である。その後も23年の東日本大震災などを経て、防災、減災のための見直しが続いている。片時も気を抜いてはいけない。

南海トラフ地震や首都直下地震が現実味を帯びる中、今後も現在の街づくりや組織、制度に不備な点はないか、なお不断の点検と見直しが欠かせない。多発する気象災害に対しても同じである。災害に強い社会にすることは犠牲者に対する責務だろう。

将来への備えだけではない。阪神大震災が歴史に沈もうとする今、重要なのは、体験の風化といかに戦うかである。

亡くなる理由のまったくない私たちの隣人だった。その死が忘れられていいはずがない。

40人以上が犠牲になった神戸大学では、メディア研の学生らが、亡くなった先輩の遺族の了解を得て、取材し発信している。涙を交えて語る遺族もいる。震災を知らない世代があの出来事を理解しようとしている。体験を継承する試みはさまざまになされている。

一方、兵庫県内の災害復興公営住宅で昨年、75人が孤独死した。全員が被災者かはわからない。だが寒々とした現実である。

大震災を知る世代は、語れるなら、思い出して語り伝えたい。知らない世代は耳を傾けたい。書物や映像によってもいい。語り伝え聞き学ぶことで、遠ざかる体験にも近づくことができる。

過去に対してだけではない。遠い場所であった出来事に対してもそうである。豪雨で、津波で苦しんでいた人はどうしているだろうか。そう思うことから小さくても何かが始まるだろう。遠い過去や場所にある苦しみを感じようとする姿勢を、忘れてはなるまい。

「苦しみを癒(いや)すことよりも、それを理解することよりも前に、苦しみがそこにある、ということに、われわれは気づかなくてはならない」

阪神大震災下、神戸大学医学部助手として被災者の精神的なケアに当たった精神科医、故・安克昌(あん・かつまさ)氏が残した言葉である(「臨床の語り」)。日本の「心のケア」のパイオニアとして活動した。

◆心の傷に優しい社会へ

安医師は阪神大震災の発生直後から、災害が人の心に与える傷について世間の注意を喚起した。避難所を訪問し被災者の話に耳を傾けた。ケアを押し付けるのではなく、さりげなく回復に寄り添おうとした。

心のケアを精神医学や心理学の技術的な問題に押し込めてしまいがちな社会の風潮には、批判的だった。

なぜ私は生き残ったのか。そんな被災者の苦しい自問に触れ、安医師は先の文章で書いた。「この問いには声がない。それは発する場をもたない。それは隣人としてその人の傍(かたわら)に佇(たたず)んだとき、はじめて感じられるものなのだ」

安医師は大震災から5年後、がんのため39歳で亡くなった。3人目の子供が生まれた2日後だった。病が末期で見つかると入院をなるべく避け、死の直前まで家族との時間を大切にした。どこまでも人を思いやろうとした。

それが安医師の思い描く、心が傷ついた人に優しい社会だったのだろう。人を思いやることはだれにでもできる。遠い過去、遠い場所の悲しみに近づき、ともに悲しむことも、だれにでもできる。

それがあればこそ、教訓をより生かし、よりよい街や組織や制度も築いていけよう。災害に強いばかりではない。

人に優しい社会とは何かを考えていきたい。
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2020年01月16日

[産経新聞] 【主張】両陛下ご訪英へ 令和の友好親善広げたい (2020年01月16日)

天皇、皇后両陛下が4?6月の間に、英国を公式訪問される方向で調整が進んでいる。英国のエリザベス女王から国賓として招待された。

皇室と英王室の交流は約150年の長きにわたっている。日英はどちらも立憲君主制の島国で友好関係にあり、英国は両陛下が留学されたゆかりの地でもある。即位後、初めて訪問される国としてふさわしい。

両陛下はエリザベス女王が主に週末を過ごすロンドン郊外・ウィンザー城に滞在される。女王はじめ王族方と旧交を温め、令和の時代の新たな親善友好関係を深めていただきたい。

昨年10月の即位礼正殿の儀にはチャールズ英皇太子をはじめ各国要人が来日して出席し、世界との友好親善が深まった。両陛下や皇族方の外国とのご交際を通じて日本に対する理解と好意が深まる。「皇室外交」は日本と世界にとって大きな意義がある。

天皇陛下は、皇太子になられる前の昭和58?60年に、ご成婚前の皇后陛下は63?平成2年に、それぞれ英オックスフォード大学に留学された。天皇陛下は同大でテムズ川の水運史を研究された。留学時代の思い出を綴(つづ)った「テムズとともに」というご著書がある。

一昨年夏には長女の愛子さまが英名門私立のイートン校のサマースクールに参加された。

皇室と英王室との交流は、ビクトリア女王の次男、アルフレッド王子の明治2(1869)年の来日から始まる。皇太子当時の昭和天皇は大正10(1921)年、欧州歴訪の最初に英国を訪ねて歓迎を受け、ジョージ5世から立憲君主制のありようを学ばれた。

先の大戦終結から間もない昭和28年には、19歳の皇太子だった上皇陛下が初の外国訪問として、エリザベス女王の戴冠(たいかん)式に参列された。46年には昭和天皇が半世紀ぶりに英国を再訪され、50年には女王が訪日した。上皇陛下は平成24年の訪英で、女王即位60周年を祝う行事に出席された。

英国など各国国民の多くが、126代にわたり連綿と続く日本の天皇に敬意を抱いてくれている。ご訪問では両陛下の温かいお人柄が伝わるだろう。皇后陛下はご療養中でもあり、ゆったりとした日程を組むようにしてほしい。

両陛下には今回の英国訪問を皮切りに、各国との友好親善を深めていただくようお願いしたい。
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[産経新聞] 【主張】文氏の年頭会見 「日本も努力」は間違いだ (2020年01月16日)

韓国の文在寅大統領が年頭記者会見で、「徴用工」判決問題について「日本も解決策を示し、膝を突き合わせて話し合うべきだ」と述べた。

全く受け入れられない発言だ。徴用を含む一切の請求権に関わる問題は、1965年の日韓請求権協定で解決済みである。「徴用工」問題は韓国側が責任を持って解決すべきであり、日本側に努力を求めるのは筋違いだ。

菅義偉官房長官は発言への直接のコメントを避けた上で、「韓国に国際法違反の状態の是正を強く求めていく考えに変わりはない」と強調した。関係打開のボールは韓国側にあるということだ。

「徴用工」をめぐる韓国最高裁判決に基づき、日本企業の資産売却手続きが進められ、現金化が近いと取り沙汰されている。

そうなれば、日韓関係の悪化は決定的となる。文氏は「時間の余裕はない」と日本側に対話を呼びかけたが、韓国政府が、日本側が納得できる解決策を実行すればよいのだ。

文喜相韓国国会議長が解決策と称する法案を国会提出し、「徴用工」訴訟の弁護団などは日韓合同の協議会創設を提案した。だが、そもそも協議会は必要ない。韓国内で解決すべき問題である。

文政権下では、慰安婦問題もこじれている。2015年の日韓合意は両国政府が膝を突き合わせて難問に取り組み、「最終的かつ不可逆的な解決」を約束した。この合意に基づき、日本政府は10億円を拠出し、元慰安婦のための財団が韓国で設立された。文政権はその財団を一方的に解散した。

韓国憲法裁判所は、この日韓合意は法的な履行義務のない政治合意にすぎず、効力も不明との判断を示した。これでは日韓関係が好転するはずもない。

年頭会見で文氏は、日韓関係改善に期待感を示した。だが、実質が伴わなければ言いっぱなしに終わるだけだ。

重要なのは、韓国側が請求権協定の違反状態を改めるかどうか、そして慰安婦をめぐる日韓合意を尊重するかどうか、である。

韓国の態度が改まらなくても関係改善ムードを高めようとする日本の政治家らも目立つが、事の本質を見誤っている。日本政府に対して、国益と国際法に反する妥協や歩み寄りを求めるような発言はやめるべきである。
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2020年01月15日

[産経新聞] 【主張】首相の中東外交 緊張の緩和へ努力続けよ (2020年01月15日)

安倍晋三首相が、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーンの中東3カ国を訪問し首脳らと会談した。

テロを含めた戦火が絶えない中東地域の緊張緩和は、一筋縄ではいかない難題である。

だが、日本を含む多くの国がこの地域に原油供給を頼っている。情勢の安定化に向け、不断の努力を続けていくことが欠かせない。

首相の訪問は、その点で一定の意義があった。

米国がイラン革命防衛隊の司令官を殺害し、イランが在イラク米軍基地をミサイル攻撃してから初めて、主要国の首脳が中東地域で展開した外交だった。

地域に影響力を有する3カ国に緊張緩和を働きかけることと、日本関係船舶の安全確保のための海上自衛隊派遣への理解と協力を求めることが主な狙いだった。

首相は、米イランの対立や、国交を断絶して敵対するイスラム教スンニ派大国サウジとシーア派大国イランの関係などを念頭に、関係国が抑制的な対応をとり、対話を進める重要性を指摘した。

さらに首相は、日本への石油の安定供給に謝意を表した。

高齢の国王に代わって国政を担っているサウジのムハンマド皇太子は「安倍首相の見方に完全に同意する。対話が必要不可欠だ」と語った。海自派遣については「日本の取り組みを完全に支持する」と表明した。

UAE、オマーンも同様の姿勢を示した。

これですぐさま対話が実現するわけではないが、イランに対するシグナルとなり、事態のさらなるエスカレーションを抑えることに資するだろう。

首脳外交と海自派遣は、地域の安定と日本の国益に配慮した重層的な対応である。茂木敏充外相と河野太郎防衛相が首相の中東訪問と軌を一にして同盟国米国を訪問したこともよかった。

首相は13日、中東各国との友好関係を踏まえ、「日本ならではの粘り強い外交努力を続けたい」と語った。

その通りである。

イランにも自制を働きかけ続けなくてはならない。

トランプ米大統領とイラン首脳双方と話ができる主要国の首脳は首相くらいである。この外交資産を、日本と世界のために活用していくべきだ。
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[産経新聞] 【主張】山下IOC委員 競技者の「代弁者」であれ (2020年01月15日)

日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長が、国際オリンピック委員会(IOC)委員に就任した。

東京五輪のマラソン・競歩がIOCの主導で札幌での開催に変更されるなど、日本はホスト国にもかかわらず、下風に置かれている。主役であるはずのスポーツ界は発言力を欠き、当事者意識も存在感も乏しい。

日本人のIOC委員は15人目で、柔道界からは大日本体育協会(現日本スポーツ協会)を創設した嘉納治五郎氏以来となる。

山下氏は1984年ロサンゼルス五輪の柔道無差別級金メダリストで、ロシアのプーチン大統領をはじめ、世界各地に幅広い人脈を持っている。強い発信力で、日本スポーツ界の存在感を高めてもらいたい。

前任の竹田恒和・前JOC会長は東京五輪招致疑惑の責任を問われ、任期途中でIOC委員を辞任した。日本への信頼が揺らぐ中で、日本のスポーツ界を代表する山下氏がIOC委員となった意味は重い。

もう1人のIOC委員である国際体操連盟会長の渡辺守成氏は、体操の普及や競技現場への新技術導入などに積極的だ。バッハIOC会長に行動力を買われ、五輪実施競技からの除外が危ぶまれたボクシングの立て直しにも奔走した実績がある。

山下氏は就任直後の所信表明で「責任の重さを感じている。覚悟を持って役目を果たす」と述べた。だが、マラソン・競歩の札幌開催では、大会組織委員会副会長の職にありながら、目立った発言はなかった。

IOCが夏季五輪の開催時期として固執する7月中旬から8月の日程は、巨額の放映権料を払う米メディアの意向を反映している。日本など北半球の中緯度国は、暑さや自然災害などの危険と背中合わせの大会運営を迫られる。

その結果、花形種目であるマラソンなどの東京開催が撤回された。場当たり的な大会運営は、「選手第一」にほど遠い。

山下氏には、IOCの論理で動く五輪のあり方に一石を投じる発言が期待される。80年モスクワ五輪の日本代表に選ばれながら西側諸国のボイコットで涙をのんだ苦い経験もある。だからこそ、スポーツ界の代弁者として選手本位の意見を発信する責任がある。
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2020年01月14日

[産経新聞] 【主張】原発処理水 放出の選択肢は絞られた (2020年01月14日)

炉心溶融を起こした燃料に触れるなどして生じた放射能汚染水を浄化装置に通した処理水が、東京電力福島第1原子力発電所のタンク群にたまり続けて廃炉工程の行く手を塞(ふさ)ごうとしている。

この処理水をどう処分するかの具体的な方法の絞り込みが、大詰めの段階を迎えている。

浄化後も残るトリチウム(三重水素)を含む処理水の扱いを検討する政府の委員会で、候補案が議論されたのだ。水で薄めて海に流す「海洋放出」と、空中に蒸発させる「大気放出」を主要な選択肢とする案である。

地中封入や電気分解放出などを含む従来の5案から、前例のある海洋放出と大気放出に絞り込まれた形だ。

トリチウムの放射能は弱く、生体に蓄積しない。原発の通常運転でも発生し、基準値以下なら環境中への放出が国際的に認められているのだが、福島第1原発の場合は問題点が2つある。

1つは、原発汚染水という前身から生まれる忌避感だ。2つ目は、その量の膨大さだ。約千基の大型タンクに計100万トンを超えるトリチウム水をためてしまった。事故から2年後に現在の浄化装置が稼働を始め、国際原子力機関(IAEA)からも再三、海洋放出などを勧められていたにもかかわらずだ。

また、国連科学委員会(UNSCEAR)の方法に基づく影響評価では、処理水の全量を1年間で海洋や大気に放出しても自然放射線による被曝(ひばく)の千分の1以下に収まることが確認済みである。

それでも漁業関係者などの間には処理水の放出を強固に拒否する声がある。風評被害を警戒しての反対だ。だが、放出を拒み続ければ、そのことがかえって風評の新たな温床になり得ることを忘れてはならないだろう。

では、海洋放出と大気放出のどちらを選ぶべきなのか。大気放出では農林業にまで風評の影響が及びかねない。冷静に考えると前環境相の原田義昭氏が発言したように、希釈して海洋に放出する以外の選択肢は存在しないのだ。

しかし、放出時期や期間はもはや事故当事者の東電が決められることではなくなっている。漁業関係者に対して最も説得力を持つのは、安倍晋三首相と原子力規制委員会の更田豊志委員長であろう。こちらも選択肢が絞られた。
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[産経新聞] 【主張】子供の体力低下 外で遊ぶ楽しさ教えたい (2020年01月14日)

子供の体力低下が気になる。

スポーツ庁が昨年12月に公表した令和元年度の全国体力テストの結果によると、50メートル走や反復横跳びなど実技8種目を点数化した体力合計点は、小中学校の男女とも前年度を下回った。

テレビゲームやスマートフォンの普及などにより、外で遊ぶ機会が減りつつあるのが一因とみられている。

習慣の変化が影響しているのだとすれば、「娯楽の多様化」では片づけられない。将来の社会の形にかかわる問題として、教育現場や地域を巻き込んだ取り組みが必要である。

テストは平成20年度から毎年、小学5年と中学2年の男女を対象に行っている。

小5男子は握力、50メートル走など3種目で、平均値が過去の最低値を下回った。体力合計点でも最低点を記録した。中2男子も1500メートル走など4種目で最低値を更新している。どちらも、「走る力」の低下が目につく。

子供の「走る力」は本来、戸外での遊びを通じて自然に培われるものだろう。鬼ごっこ一つを取っても、子供はさまざまなルールを編み出し、遊ぶ「楽しさ」を創り出してきた。それがゲーム機器やスマホなどの娯楽に取って代わられたのなら、大人の責任で状況を変えなければならない。

ボール投げの距離も下落傾向にある。ボール遊びが周囲への危険を伴うとして、昨今は大半の公園で禁じられており、投げ方を知らずに育った子供も多い。

東京都板橋区では昨秋、児童らが、サッカーなどボール遊びのできる公園の開放時間の延長などを陳情した。区議会は全会一致で採択し、区が具体的な施策に乗り出している。子供が自由に遊べる場所を求めている事実は見逃せない。遊び場の環境を変えるには、社会の理解も必要だろう。

スポーツ庁は昨年末に、幼児期からの体力づくりを検討する会議を設置したが、外で体を動かす時間を増やせばいい、という発想では解決しない。体育の授業にしても放課後の学校施設の開放にしても、体を動かす楽しさを子供の中に根づかせる工夫がほしい。

体を動かすことの楽しさ、すばらしさを学ぶのに、アスリートにまさる模範はいない。この夏の東京五輪・パラリンピックも子供たちの格好の教材となるはずだ。
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2020年01月13日

[産経新聞] 【主張】成人の日 あなたが新時代の主役だ (2020年01月13日)

令和となって最初の成人の日である。新成人となった皆さんのこれからの人生に幸多かれと、願ってやまない。

新元号の出典となって話題を呼んだ「万葉集」から、皆さんに味わってほしい歌がある。

「父母(ちちはは)が頭(かしら)かき撫(な)で幸(さく)あれて言ひし言葉(けとば)ぜ忘れかねつる」

巻第二十に収められた防人(さきもり)の歌である。防人に、また父母に限らない。だれしも育ててくれた人がいる。成長した皆さんの今後の幸せを祈っているだろう。まずそんな人たちに感謝したい。

仕事でも学業でもいい。それぞれの分野で頑張り、社会に尽くす大人になってほしい。それが、いつくしんでくれた人の恩に報いることにもなる。

日本の将来に不安もあろう。少子高齢化が進んでいる。厚生労働省の推計では、昨年の出生数は明治32年の統計開始以来、初めて90万人を割る見通しとなった。昭和24年に比べ3分の1以下である。今年元日時点での新成人は総務省の推計で122万人と、前年より3万人減った。

一方で高齢者人口は2040年代初頭まで増加傾向が続く。政府は全世代型社会保障改革を進めているが、医療や年金は大丈夫か、不安を抱く人も多いだろう。

それだけではない。災害が多発し、安全保障上の脅威もなくなっていない。日本が置かれた状況は厳しい。

しかし悲観ばかりしてはいられない。今回の新成人だけでなく若い世代には、逆風を吹き飛ばす力をこそ見せてほしい。

東京五輪の年である。若い力の躍動が見られよう。晴れ舞台に立てなくてもいい。白血病と闘っている競泳女子の池江璃花子選手は「コツコツと頑張っていきたい」と今年の抱負をつづった。すでに十分頑張っている彼女に、多くの人が声援を送ってきた。

スポーツに限らない。どんな分野でも、ひたむきな若者の姿は社会に力を与える。特に新成人の皆さんには、大人としての自覚と責任感を持って、挑戦を続けてほしい。令和という新時代を切り開いていく主役は、皆さんだ。

高齢世代も共に頑張りたい。社会保障改革の一環として雇用制度の改革も行われる。70歳まで企業で働くことが現実味を帯びてきている。元気な間は働き、若い世代の負担を少しでも減らしたい。
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[産経新聞] 【主張】蔡英文氏再選 中国に屈せぬ民意を守れ (2020年01月13日)

台湾の総統選で、民主進歩党の蔡英文総統が最大野党・中国国民党の韓国瑜高雄市長を破り再選を果たした。中国の圧力への対抗姿勢を訴えた蔡氏を史上最高票数で選んだ民意を尊重したい。

直接投票制による7回目の総統選は、蔡氏続投を阻もうとする中国の介入にさらされた。蔡氏が勝利宣言で「民主的に選ばれた政府が恫喝(どうかつ)に屈することはない」と語ったのは、中国の横暴を断じて許さぬ決意の表れである。

中国はこれ以上、無意味な妨害や干渉をやめるべきである。5月20日に2期目の蔡政権が円滑に発足するよう、国際社会は引き続き注視しなければならない。

一昨年の統一地方選での敗北で窮地に追い込まれた蔡氏が復活したのは、「一国二制度」による統一を迫った中国の習近平国家主席に拒否の態度を貫いたからだ。

香港情勢が蔡氏の認識の正しさを裏付けた。「一国二制度」をないがしろにする中国への抗議デモと警察隊の弾圧に「今日の香港は明日の台湾」との危機感が広がったのである。中国が発信源とみられる、蔡氏中傷などの偽情報に幅広い層が警戒したことも、対中関係推進を掲げた韓氏からの離反につながったとみられる。

民進党は立法委員選でも過半数を維持した。国民党の歴史的敗北は、民衆に「中国離れ」がかつてないほど広がった証左だ。

習政権は香港の混乱を制圧できず、蔡氏に勝因を与えた。内部批判をかわそうと揺さぶりを強めるのは間違いない。台湾が外交関係を保つ15カ国への「断交」工作は台湾孤立化の手段として苛烈となり、空母の展開など軍事威嚇にも拍車がかかる可能性がある。

「防波堤」として米国の存在は大きい。蔡政権には台湾海峡の平和と安定を維持するため、米国との事実上の同盟関係をより強固にしつつ、中国の侵攻の口実となり得る「独立」への過度な傾斜を抑える賢明さが求められよう。

民主主義の価値を共有する台湾への日本の関与も重みを増す。

中国の圧力で締め出された世界保健機関(WHO)など国際組織への参加や復帰は台湾の生命線である。台湾が意欲を示す環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加入を安倍晋三政権は後押しすべきだ。習氏の「国賓」来日を実現するため台湾への支援を封印する愚をおかしてはならない。
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2020年01月12日

[産経新聞] 【主張】東証の市場再編 「1部」の刷新が不十分だ (2020年01月12日)

金融庁の審議会が、東京証券取引所にある4つの市場を3つに再編するよう求める報告書をまとめた。曖昧だった市場の位置づけを明確化し、投資家にとって分かりやすい市場構造に改める。

令和4年上半期をめどに開始できるよう、東証が報告書を踏まえた具体的な制度設計を行う。

報告書の狙いは妥当である。欧米やアジアの取引所との競争が激化する中で、東証の存在感は低下した。市場の魅力を高める改革が急務なのは当然である。

残念なのは、肥大化した東証1部の企業数の絞り込みが事実上見送られたことだ。現在の1部上場企業は引き続き最上位市場に残れる。これでは市場の名称が変わるだけとみられても仕方がない。

市場には、企業が上場を維持するための経営努力を促す役割がある。上場が既得権益化すると、この機能はうまく働かない。そうならないよう、上場企業の高いガバナンス(企業統治)を確実に担保できる制度設計を求めたい。

東証には現在、1部、2部、ジャスダック、マザーズの4市場がある。ただ、新興企業の上場先にジャスダックとマザーズがあるなど、この区分には重複も多い。

このため株式の時価総額やガバナンスの水準が高い企業が上場するプライム市場、それに続くスタンダード市場、ベンチャー企業向けのグロース市場に再編する。

プライムの上場基準は、市場で売買される株式の流通時価総額で100億円以上が目安だ。ただし現在の1部上場企業は、これを満たしていなくてもプライムに移れる。トップ市場から降格する企業が出ないよう配慮したためだ。

改革で問われたのは、上場企業の6割が1部に集中し、時価総額1兆円超の巨大企業から数十億円の企業まで混在する分かりにくさをどう改めるかである。そこに踏み込まないなら、改革の意義も減じると言わざるを得ない。

注目したいのは、報告書が、東証株価指数(TOPIX)の構成銘柄を絞り込む考えを示したことだ。TOPIXには1部上場の全銘柄が組み込まれている。そこから時価総額の低い銘柄を外し、投資対象としての機能性を高める。外れると株価が下がる恐れがあるため、企業側は新指数に入るよう企業価値を高めなくてはならない。大切なのは、改革を企業の成長にどうつなげるかである。
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[産経新聞] 【主張】エネルギー安保 中東依存からの脱却急げ (2020年01月12日)

日本のエネルギー安全保障が再び揺らいでいる。イランと米国の対立で中東情勢が緊迫化し、わが国が中東地域から輸入するエネルギーの安定的な調達に懸念が強まっているからである。

中東のホルムズ海峡は、日本が輸入する原油の9割が通過する重要地域だ。日本として緊張緩和への外交努力が欠かせないのはもちろんだが、併せて、輸入燃料に依存しない国産電源の確保や、エネルギー基盤の強化も急がなければならない。

そのためには安全性を確認した原発を早期に再稼働させ、太陽光など再生可能エネルギーの持続的な普及も図る必要がある。暮らしと産業を支える電力やガスの安定供給に、官民を挙げて全力で取り組むことが肝要である。

イランがイラクにある米軍駐留基地を攻撃し、国際的な原油市況は急騰した。米国がさらなる攻撃を見送ったため、相場はいったん沈静化に向かったが、楽観できる情勢にはない。現地に進出する日本企業などは最大限の警戒にあたってほしい。

昨年6月にホルムズ海峡付近を航行していた日本のタンカーが攻撃され、9月にはサウジアラビアの石油施設も攻撃を受けた。そのたびに世界の石油・ガス価格は高騰し、海外からのエネルギー輸入に依存する日本が揺さぶられるという構図にある。

海外情勢の影響を軽減するためには、燃料の調達先を多様化する必要がある。原油とは異なり、火力発電の主力燃料である液化天然ガス(LNG)の中東依存度は2割にとどまる。オーストラリアやロシア、米国などに輸入先が分散しているからだ。今後は原油を含めて一層の多様化を進め、安定的なエネルギー基盤を築きたい。

発電過程で温室効果ガスを排出しない原発を活用し、国産電源を増やすことも重要である。原子力規制委員会による安全審査が停滞し、原発の再稼働は大きく遅れている。効率的な審査に向けて工夫を凝らすべきだ。

もちろん、さらなる再生エネの普及も欠かせないが、発電量が天候などに左右され、発電コストも高い。原発など他の電源と組み合わせながら利用を進めたい。

日本のエネルギー自給率は9%と主要先進国で最低水準だ。国産の安定電源を確保して自給率の着実な向上を図っていきたい。
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2020年01月11日

[産経新聞] 【主張】海自に派遣命令 航行の安全確保は当然だ (2020年01月11日)

米イラン両国の対立から、中東情勢は強い緊張をはらんだまま推移している。そのような情勢だからこそ、自衛隊の中東派遣の必要性は高まっている。

河野太郎防衛相が海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」とP3C哨戒機に対し、派遣命令を出した。日本関係の民間船舶の安全を守る上で当然の命令だ。

派遣部隊は、タンカーなど日本関係船舶の安全航行を確保するための情報収集を行う。不測の事態が起きれば、海上警備行動の発令によって、日本関係船舶の保護に当たる。哨戒機は11日に日本を出発し、20日から活動を始める。護衛艦は準備を続け、2月2日の出航を予定している。

日本は原油輸入の約9割を中東に依存している。それが滞れば、日本の経済と国民の暮らしは立ち行かなくなる。派遣部隊の隊員は胸を張って出発し、重要な任務を遂行してほしい。

安倍晋三首相は11?15日の日程で、サウジアラビアなど中東3カ国を訪問する。中東地域の緊張緩和に向けた外交努力に加え、自衛隊派遣について説明する。河野防衛相は9日、イランのハタミ国防軍需相と電話で会談し、自衛隊派遣について説明した。

日本関係船舶の航行と派遣部隊の活動には、沿岸国の理解があることが望ましい。政府は引き続き外交努力を重ねるべきだ。

自衛隊の海外派遣は本来、国を挙げて支える必要がある。ところが残念なことに、立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党の野党4党は、米イラン対立の激化などを理由に派遣に反対している。

危ないから海自派遣に待ったをかけるのは極めておかしい。

多くの日本関係船舶が日々、危険を押して中東海域を航行していることを忘れてはならない。危ない情勢だからこそ、民間船の安全に資するため海自の護衛艦と哨戒機に働いて貰(もら)うのではないか。

派遣部隊が集めた情報は日本の海運業界へ提供される。自衛隊が行くことで、協力関係にある各国の海軍が集めた航行情報も、より詳しいものが入手できる。それらも安全な航行に生かせる。

派遣に反対する野党は、日本関係船舶の安全を外国に頼り切るつもりか。それは、非現実的な一国平和主義の殻に閉じ籠もるに等しい。世界には通用しない無責任な発想は終わりにすべきである。
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[産経新聞] 【主張】英が離脱法案可決 円滑な合意へ柔軟対応を (2020年01月11日)

英下院が欧州連合(EU)からの離脱関連法案を可決した。1月末の離脱が事実上確定した。

2016年6月の国民投票から約3年半続いた離脱をめぐる混迷に一応の終止符が打たれた。

今後は、年末までの激変緩和のための移行期間内に、英国とEUが新たな通商関係を定める自由貿易協定(FTA)の合意ができるかが焦点となる。

英国は離脱をめぐる国内の分断状況を克服し、迅速に「円滑な離脱」を完成させなければならない。日米などとの新しい通商関係の確立も同様である。

離脱法案には、移行期間の延長を禁じる条項がある。ジョンソン英首相は期間内の交渉妥結を目指すが、EUとの交渉の項目は貿易から安全保障まで多岐にわたる。EUは年末までに全てを交渉するのは不可能との立場だ。

年内妥結がなければ、今回回避された「合意なき離脱」と似たような経済や市民生活の混乱を招きかねない。日本企業なども巻き込まれてしまう。

それは何としても避ける必要がある。

ジョンソン首相は、無関税を基本とする簡潔な内容のFTAを目指している。その実現には、EUに比べて英国が突出して有利にならないよう公平な競争環境を整える必要がある。

EUが求めている、労働市場や環境、国家補助などのEU基準に沿う柔軟性も求められる。EUも従来の硬直的な交渉姿勢を改善してもらいたい。

年内に交渉がまとまらない場合は、ジョンソン首相は移行期間の延長にかじを切るべきだ。昨年12月の総選挙で圧勝し、安定政権の利点を生かし、現実的な対処をすることが望ましい。

英国の分断解消も大きな政治課題だ。ロンドンなどの都市部を中心に、国民の約半数がEU残留を希望していたことを忘れてはならない。残留派の多いスコットランドでは独立機運が高まり、北アイルランドでは英本土から引き離される不安が広がっている。国民再統合には、多様な声に耳を傾ける必要があろう。

「連合王国」分裂の危機に至る芽を摘むべきだ。分断を克服し、経済状況を改善した英国の存在は国際社会の安定に資するからだ。ジョンソン首相の政治指導者としての真価はなお問われている。
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2020年01月10日

[産経新聞] 【主張】ゴーン被告会見 政府挙げて情報戦に臨め (2020年01月10日)

保釈中に不法に逃亡した日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告がレバノンで会見し、日本の司法制度や日産を一方的に批判した。

本紙を含む多くの日本のメディアは会見から排除された。内容に新味はなく、逃走経緯にも口をつぐんだが、ゴーン被告は「制度が変わらない限りは外国人には誰も日本へ行くことを勧めない」とまで述べた。

これを放置しては、日本の国益に関わる。政府を挙げて徹底的に反論すべきである。

東京地検は会見終了後の9日未明、「我が国の刑事司法制度を不当におとしめるものであって、到底受け入れられない」などとするコメントを出し、ホームページに英文でも掲載した。

森雅子法相も同日未明、午前の2度にわたって会見し、「旅券を提示せず不法に逃亡したのは子供たちにも説明できない信義にもとる行為だ」などと述べた。法相のコメントも英語、フランス語でホームページに掲載された。

極めて異例の対応である。検察は従来、公判廷以外で口を開くことを嫌ってきた。迅速な対応はゴーン被告の身勝手な主張が独り歩きすることを防ぐためで、森法相は「ただちに世界の皆さまに(日本側の主張を)理解してもらうためだ」と強調した。

例えばゴーン被告が99%を超える高い有罪率を批判したことに対し、森法相は「我が国の検察においては無実の人が訴訟負担の不利益を被ることなどを避けるため、的確な証拠によって有罪判決が得られる高度の見込みのある場合に初めて起訴する」と反論した。

こうした姿勢を評価する。ただし、ゴーン被告側が仕掛ける情報戦は日本の主権を否定し、「法の支配」に基づく日本社会そのものへの攻撃である。政府は対応を法務・検察に任せず、一丸となってこれに当たる必要がある。

菅義偉官房長官は「ゴーン被告の主張は一方的なもので全く説得力に欠ける」と批判したが、身柄引き渡しの可能性については「レバノン政府の判断に関する事柄で日本政府としてコメントする立場にはない」とも述べた。

物足りない。安倍晋三首相は、ゴーン被告の逃亡について全く言及していない。ゴーン被告の身柄を取り戻し、適正な刑事手続きを行うためには、首相をトップとする外交攻勢が必要である。
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[産経新聞] 【主張】米報復自制 危機回避へ警戒を怠るな (2020年01月10日)

トランプ米大統領が、イランによるイラク駐留米軍への弾道ミサイル攻撃に対し、軍事的報復はしないと表明した。

「イランは態度を後退させたようだ」とし、新たな経済制裁で圧力をかけ続けると強調した。

報復の連鎖はひとまず回避された。だが、全面衝突の危機が去ったわけではない。米国の自制表明を受け、事態収拾へ国際社会は速やかに動かなければならない。

トランプ氏は同時に、イランを「有力なテロ支援国家で、核開発を進めて文明社会に脅威を与えている」と改めて非難した。

イランの最高指導者ハメネイ師は、攻撃後の演説で「米国は中東から去れ」と述べた。両国の敵対関係は全く変わっていない。

今回の攻撃は国内向けには、殺害された革命防衛隊の司令官の「仇(あだ)討ち」を果たしつつ、全面戦争に至らぬ規模となるよう慎重に実施されたとの見方が強い。

イラン指導部は数日前から米軍の拠点を標的とすると予告しており、米側は犠牲者はなかったと発表した。イランは直後に「反撃しなければ、対米攻撃は続けない」との書簡を送ったという。

当面、懸念されるのは、イランが支援する中東各地のシーア派武装組織の動向である。殺害された司令官は対外工作の中心人物で、これらの組織の打撃は大きい。

そうした武装組織が独自の報復の手段としてテロを実行することも警戒せねばならない。その場合、標的は中東地域、米軍拠点とはかぎらない。

イランの指示の有無にかかわらず、武装組織のテロがあれば米国との関係は極度に緊迫する。イランは自制だけでなく、こうした武装組織を抑えねばならない。

重大な問題は、米国とイランとの間に、パイプや話し合いの場がないことである。双方が「戦争は避けたい」といっても、計算が狂い、予期せぬ展開となる可能性は否定できない。

国連安全保障理事会は、米国など拒否権を持つ常任理事国が当事国の場合、機能しない。仲介役を担いうるのは、イラン核合意の当事国でもある英国、フランス、ドイツのほか、日本しかない。

安倍晋三首相は米国の自制表明を受け、「地域の情勢緩和と安定化のために外交努力を尽くす」と強調した。事態収拾へ向け、日本の存在感を示してもらいたい。
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