2017年02月28日

[日経新聞] 首相は国有地売却の疑問解明に指導力を (2017年02月28日)

大阪府豊中市の国有地が学校法人「森友学園」に評価額より大幅に安く売却された問題が波紋を広げている。野党は安倍晋三首相の昭恵夫人が「名誉校長」を務めていた経緯を含めて、政治家の関与の有無を追及している。政府は深まる疑問の早期解明に向けて事実を検証する責任がある。

森友学園は広さ8770平方メートルの国有地を小学校の建設用地として1億3400万円で随意契約で購入した。不動産鑑定士の評価額は9億5600万円で、建設工事中に見つかった地中のゴミ撤去費用などのため8億2200万円を減額したという。

財務省近畿財務局は情報公開法に基づく売却価格の開示要求に当初は応じず、後に一転して公表した。財務省は減額分の金額を見積もったのが、伊丹空港の騒音対策の一環で土地を管理していた国土交通省大阪航空局であることも明らかにした。

国民の財産である国有地が外部の目が届きにくい形で、しかも実勢とかけ離れた価格で取引された事実は重い。財務省はこれまでの審議で「近畿財務局と学園の交渉記録は残っていない」と説明した。政府は減額分のゴミ撤去作業がどう実施されたのかすら詳細に把握していないという。

麻生太郎財務相は取引について「適正な手続きによって処分を行った」と繰り返し答弁している。だが経緯が不透明なままでは野党が「政治家が関与したとの疑念を持つ」と指摘するのは当然だ。

さらに野党は学園が土地の取得に動き出した後の2014年末に昭恵夫人が学園の講演会に参加し、名誉校長に就任した点を問題視している。学園が小学校開設の寄付金を「安倍晋三記念小学校」という名称で集めていたことも明らかになっている。

首相は衆院の審議で「私や妻が関係していたとなれば、首相も国会議員もやめる」と断言している。それならば政府内の調査や関係者の国会招致に自ら指導力を発揮すべきだ。どういう経緯で昭恵夫人は学園を訪れ、名誉校長に就任し、経営内容をどの程度知っていたのかなど疑問点は多い。

今回の国有地の売却が政治家や官僚の思惑でゆがめられていたとすれば言語道断だ。国民に疑念を持たれること自体が政治不信を増大させかねない。与野党は疑惑の早期解明に向けて一致協力して取り組んでほしい。
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[日経新聞] メディアは民主社会の基盤だ (2017年02月28日)

「権力は腐敗する」。英国の思想家ジョン・アクトンの言葉だ。だから、厳しく監視する必要があるが、普通の人々にはそれほど時間はない。有権者を代表して監視役を担うメディアの責任は重大である。トランプ米大統領はこうした民主主義の基本ルールを理解しているだろうか。

トランプ政権とメディアの対立は激化する一方だ。気に入らない報道機関をホワイトハウス報道官の記者懇談から締め出し、記者会が4月に開く毎年恒例の夕食会にトランプ氏は参加しないそうだ。

権力とメディアの距離が近すぎるのも問題だが、ここまで溝が深まっては情報の伝達ルートとして機能しなくなる。関係が正常化することを望みたい。

日本と比べ、米メディアは党派色が鮮明である。懇談から排除された報道機関はいずれも野党の民主党寄りだ。トランプ氏は「敵」と呼んではばからない。

とはいえ、トランプ政権の一連の対応は、お気に入りメディアに意図して特ダネを流すのとはわけが違う。報道機関に最低限の取材アクセスを保障するのは、権力者の義務といってよい。

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が発達し、世論形成における新聞やテレビの影響力は下がっている。トランプ氏のツイッターには2500万人を超えるフォロワーがいる。旧来型メディアに頼らずに世論誘導したいのだろう。

SNSは考えが近い人を呼び集めるのに有効なツールであり、趣味の友人づくりなどに役立つ。だが、不確かな伝聞や嘘・デマなどがあっという間に広まるという弊害もある。事実の確認や背景の解説といったメディアの役割がなくなることはあるまい。

国民がデマに踊らされて国を誤った方向に向かわせる。こんなことは古今東西よくあったし、これからもあるだろう。そのとき、民主社会の基盤であるメディアがきちんと役割を果たせるか。米国の現状は決して他人事ではない。
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2017年02月27日

[日経新聞] 審査待ち原発の安全対策を引き締め直せ (2017年02月27日)

再稼働に向けて審査中の原子力発電所で、安全対策の不備が相次いで見つかった。東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)では事故対応の拠点となる免震棟の耐震性が不足していた。中部電力浜岡原発(静岡県)でも非常時に使う設備で欠陥工事が明らかになった。

問題がなぜ生じたのかは原子力規制委員会などが調査中だが、これらの原発は審査が長引いたり、後回しになったりしている点で共通する。電力会社が早く再稼働させたいと焦り、審査がさらに延びるのを恐れて、対応や報告を怠った疑いが強い。

東電や中部電は安全確保に万全を期すことを誓って審査を申請したはずだ。その意識にゆるみが生じているのなら、看過できない。両社は問題の根っこにあるものを調べ、安全対策を引き締め直すべきだ。審査中の原発をもつ他の電力会社も安全策の再点検が要る。

柏崎刈羽6、7号機の免震棟は2014年の東電社内の試算で耐震性の不足がわかっていた。だが社内で情報を共有せず、規制委にも事実と違う説明をしていた。

規制委の田中俊一委員長が「組織として信頼できるのか、疑義を持たざるを得ない」と述べたように、東電の安全への意識が根底から疑われる問題といえる。

浜岡3、4号機でも、事故時に格納容器の圧力を下げる設備で、配管の金具100カ所以上を規定外の方法で取り付けていた。中部電は「担当した社員が工程の遅れを心配し、規定が守られなかった」と説明している。

2つの原発は「沸騰水型」と呼ばれる。国内の原発のうち西日本に多い「加圧水型」は、内定を含めて12基が審査に合格した。一方で、沸騰水型は10基が審査中だが、合格はまだゼロだ。事故を起こした福島第1原発と同型であるため、審査の項目も多い。

これらの原発の大半は運転停止が5年以上に及び、作業員らの士気が低下していないかも心配だ。工事や検査の記録を社内で共有して改善策を助言しあうなど、組織として安全への意識を高めていく取り組みが欠かせない。

沸騰水型の審査の長期化について、規制委は「多くが地震リスクの高い地域に立地するためで、必要以上に時間をかけているわけではない」としている。念入りに審査するのは当然だが、どの原発に審査員を重点配置するかや審査の順番は、見直す余地がある。
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[日経新聞] 米温暖化対策の後退が心配だ (2017年02月27日)

米環境保護局(EPA)長官に、地球温暖化対策などに反対するスコット・プルイット氏が就任した。温暖化に懐疑的なトランプ大統領の意を受けた人事で、米国の対策が後退するのは確実だ。

プルイット氏はエネルギー産業が集まるオクラホマ州の司法長官を長く務め、環境規制が行き過ぎであるとして環境保護局を相手取り訴訟を繰り返してきた。エネルギー関連企業との過去の緊密な交流も明らかになっている。

長官への就任挨拶では職員に「エネルギー開発を進め雇用を生みつつ、環境を大切にすることは可能だ」と語った。経済成長と雇用創出を最優先するトランプ政権の方針に沿った考えだ。

今後、火力発電所の温暖化ガス排出規制の撤廃に加え、石炭開発規制や水質汚濁防止策の緩和などに動くとみられる。政策転換の影響は米国内にとどまらない。

世界2位の温暖化ガス排出国である米国は、1位の中国とともに新しい温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の早期発効を主導した。米国が削減目標をないがしろにすれば、ただでさえ難しい世界全体の目標達成はさらに遠のく。

そうした事態を避けるため、日本や欧州連合(EU)の役割は一層大きくなる。これから本格化するパリ協定の細則づくりでは、米国に代わって影響力を増す中国との連携も重要になる。

環境保護局は長期にわたる気象観測データなどを蓄積し、広く公開してきた。プルイット氏の下で、データ利用が制限されるのではないかとの懸念も出ている。

すでに米大統領府のホームページからは、温暖化に関する多くの情報が消えた。19日には、トランプ大統領が科学的な事実を軽視しているとして数百人の科学者がボストンで抗議集会を開いた。

大統領の主張と合わない科学研究やデータの公開を拒む姿勢は、温暖化対策だけでなく科学技術全体の進展を妨げかねない。世界の不利益になることを、米政府は常に認識してほしい。
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2017年02月26日

[日経新聞] 賃金が力強く上がる基盤を築こう (2017年02月26日)

消費は依然として本格的な回復に遠い。このままでは消費を盛り上げて企業の生産活動や設備投資を活発にし、経済全体を元気にするという政府の筋書きも画餅に帰そう。起点となる賃金の伸びが勢いを増すよう、本気で取り組むときだ。

総務省の家計調査によると、2人以上の世帯が使ったお金は2016年に月額平均28万2188円で、物価変動の影響を除いた実質で前年比1.7%減となった。14年も2.9%、15年も2.3%の前年比マイナスとなっており、3年連続の減少だ。

付加価値の伸び低迷

14年4月の消費税率引き上げや、円安が進んだ局面での輸入物価の上昇が消費を抑えた面はある。だが、大きく影響しているのは賃金の伸び悩みだ。

厚生労働省の毎月勤労統計調査によれば、現金給与総額は16年まで3年連続で前年比プラスとなったものの、増加率はいずれの年も1%に満たない。

経済界は安倍政権の要請に応えるかたちで賃上げを進めてきたが、基本給を増やすベースアップ(ベア)は大手企業でも力強さを欠く。経団連の会員企業などを対象にした集計では、14年0.3%、15年0.44%、16年は0.27%と、2%以上のベアがざらだった1980年代などと差がある。

賃金の低迷にはいくつかの要因が絡み合っている。まず、1人あたりで生み出す付加価値がこの20年ほどの間、ほとんど伸びていないことだ。

内閣府によると、1人あたり名目国内総生産(GDP)は12年度から増え続けているが、15年度実績(419万1千円)は90年代後半からほぼ変わっていない。賃金の伸びも鈍って当然だろう。

90年代半ば以降、企業の多くは正社員を減らし、人件費を抑えて収益性の確保に努めてきた。だが、成長性の高い事業へのシフトや新しい事業モデルの創造などは遅れた。それが、生み出す付加価値の停滞に表れている。

企業の間で賃金の安い非正規社員の活用が広がり、正社員との二極化が進んだことも、全体として働く人の収入の伸びが鈍化した理由だ。総務省の労働力調査では、非正規社員の比率は16年平均で37.5%と高止まりしている。

社会保険料がじわじわと上がり企業の負担が増していることも、賃上げ抑制につながっていよう。

これらを踏まえれば、賃金上昇のために何をしなければならないかは明らかだ。企業が付加価値を高めるための生産性の向上と、労働市場改革、社会保障改革の3つが欠かせない。

生産性向上は、もちろん第一には企業自身の経営改革にかかっている。コンサルティング・投資会社、経営共創基盤(東京・千代田)が支援する茨城交通(水戸市)は、高速バス路線の新設などを進め、社員の平均年収をこの7年間で2割強増やした。

人工知能(AI)など企業の競争力のカギを握る技術にたけた人材や外国人を採りやすくするために、企業は成果に見合った処遇を徹底する必要もある。

あわせて政策面で、企業がより収益を上げられる環境をつくっていかなければならない。

民間の力を引き出せ

成長分野への新規参入を阻んでいる制度を見直すなど、企業活動を活発にする規制改革に政府はもっと力を入れるべきだ。投資家の声を生かし、経営者に成長投資などの収益力向上の取り組みを促す企業統治改革も重要になる。

労働市場改革では、自らの技能や知識を磨けば、賃金がいまより高い仕事に移っていきやすくなる環境の整備が求められる。

非正規で働く人の賃上げを広げるには、その人の生産性向上を支援することが確実な道だ。衰退産業で働く正社員が成長力のある産業に転じやすくするには、柔軟な労働市場づくりが大事になる。

参考になるのはドイツが2000年代に進めた改革だ。実習生を受け入れる企業を増やすなど職業訓練に力を入れた。さらに民間の人材サービスを積極的に活用し、職業紹介を受けやすくした。日本も人手不足を追い風に、労働市場改革を推進すべきだ。

社会保障は費用が高齢化で膨らまないよう効率化を急がなくてはならない。子育て支援は充実させながら、医療や介護費用は必要なものに絞るなど、メリハリのきいた改革が要る。

賃金を継続的かつ安定的に上げていくための改革は、一朝一夕ではできないものばかりだ。腰を据え、着実に進めたい。
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2017年02月25日

[日経新聞] 司令塔不在の韓国はどこに向かうのか (2017年02月25日)

韓国で朴槿恵(パク・クネ)政権が発足してから、きょうで4年がたった。とはいえ、当の朴大統領は昨年末以来、国会による弾劾訴追で職務停止の状態が続く。司令塔不在のなか、混迷を深める韓国はどこに向かうのか。

朴大統領は4年前の就任演説で「希望の時代を開く」と述べた。だが肝心の経済は低迷が続き、昨年の成長率は2年連続の2%台に沈んだ。貧富の格差是正も進まず、社会の閉塞感は募った。

国民や政界との意思疎通に後ろ向きで独善的な姿勢も災いし、朴氏は旧友の国政介入疑惑で一気に国民の支持を失った。いまや罷免の是非を審理中の憲法裁判所の判断を待つ身だ。残る1年の任期を全うするのは難しいだろう。

朴氏の疑惑は政界と財閥の癒着問題にも及び、最大財閥サムスングループの事実上のトップ、李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長の逮捕にもつながった。

政財界の癒着は韓国の長年の悪弊とされ、格差社会の「勝ち組」である財閥への国民不信もかねて根強い。朴氏も財閥改革を公約したが、本腰を入れたとは言いがたい。それが皮肉にも自らの醜聞によってメスが入ったわけだ。

これを機に企業統治を含む財閥改革が進み、政財界の関係が透明化されるのであれば望ましい。

一方で厳しい世論におもねるあまり、疑惑追及が度を越している側面はないのか。海外では今後の韓国の内政・外交が世論の風潮に左右され極端に振れることを危惧する声も出ている。マティス米国防長官が就任後、真っ先に訪韓したのもその証左だろう。

次期大統領選に向けた政治論戦が本格化する韓国では、野党勢力が世論の後押しで勢いを増す。その野党側は総じて北朝鮮に対する融和路線への転換に前向きだ。

しかし弾道ミサイル発射や金正男(キム・ジョンナム)氏の殺害で浮き彫りになったように、北朝鮮の脅威は深刻だ。それに対処する上でも、日米韓が連携し厳しい圧力をかけていく必要がある。

野党内で浮上している米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備や日韓の慰安婦合意の見直し論も、無責任な主張といわざるを得ない。

国内改革もしかりだ。例えば韓国経済のけん引役である財閥の力を損なわず、財閥改革をどう進めていくのか。真の国益を冷静に見据えた政策論争を求めたい。
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[日経新聞] 「プレ金」から働き方改革へ (2017年02月25日)

月末の金曜日は仕事を早めに切り上げようという「プレミアムフライデー」が、きのう始まった。消費の喚起と働き方改革の一石二鳥をねらって、政府と経済界が主導した企画だ。

毎月1回、数時間だけの早帰りに、どれだけの経済効果があるのか、冷ややかな見方はあろう。導入する企業が一部にとどまっているのも、事実だ。

「金曜日の消費が増えても土日分の先食いに終わるのでは」「前日の残業につながらないか」といった疑問の声もある。時給制で働く人は収入減になりかねないという懸念も聞かれる。

ここは、日本の経済・社会に欠かせない働き方改革のきっかけとして、とらえたい。週末に会議を入れない、駆け込みで命令をしない、などと決めれば、仕事の簡素化や平準化につながる。特にホワイトカラー職場では無駄な仕事を点検する契機になる。

いまでは普通になった週休2日制も当初はゆとりのある一部企業が先行し、隔週から毎週へと導入も段階的だった。支持する人々が多ければいずれ広がるだろう。

また、今の消費者はモノの購入より特別な体験に支出する傾向が強い。自由時間を増やし消費を掘り起こす発想には一定の説得力がある。サービス業などには新しい仕掛けを試したり、新規顧客を呼び込んだりする好機になる。

より大事なのは、政府や企業がこの企画だけで良しとするのでなく、将来不安の解消や生産性向上による賃上げ、休暇をとりやすい職場づくりを進めることだ。

遊びだけでなく子育てや介護、病気の治療、学習、家族や友人との交流、地域活動など、それぞれの事情や要望で弾力的に取得できるほうが、休暇や時短勤務の満足度は高まる。仕事の繁閑を見極めて工夫すれば、一斉早帰りより支障は出にくいかもしれない。

個人消費の喚起も働き方改革も息の長い取り組みが必要だ。いっときのイベントにせず、さらなる改革につなげなくてはならない。
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2017年02月24日

[日経新聞] 米法人税の国境調整措置は経済に有害だ (2017年02月24日)

米下院共和党が法人税の抜本的な改革案について、トランプ政権と内容の調整を進めている。

下院共和党が昨年まとめた改革案は、高すぎる税率の引き下げや投資の即時償却制度の導入など理解できるところも多い。問題は国境調整措置の導入によって輸入に高い税を課そうとしている点だ。実現すれば、米国や世界の経済に甚大な悪影響を及ぼしかねない。この部分の実施は見送るべきだ。

国境調整は、輸出による収益を免税とする一方、輸入にかかる費用を課税所得から控除するのを認めないという仕組みだ。

世界貿易機関(WTO)は、消費税など付加価値税で国境調整することは認めている。だが、法人税での導入は国際競争上問題があるとして容認しておらず、改革案が実現すればルール違反と判定する公算が大きい。

それ以上に心配なのは、輸入への重課税がもたらす経済への影響だ。輸入品を売る米国の小売業者の利益が圧迫されたり、価格転嫁で消費者の負担が急増したりする恐れがある。対米輸出が多い海外企業にも当然大きな打撃になる。

国境調整措置を導入してもドル相場の上昇によって影響はすぐに相殺されるとの見方もある。だが、その通りになるか不透明なうえ、ドルが仮に急上昇すれば、世界の金融市場が動揺しかねない。

トランプ政権は国境調整措置の導入について明確な見解を示していない。小売業者をはじめとした反対論も強まっており、対応に迷っているようにもみえる。

ただ、政権内には輸入を抑えて貿易赤字の縮小をめざす考えが根強くあり、下院案に賛同する可能性もある。下院案を退けたとしても、トランプ大統領が選挙戦で主張したような高関税政策に走れば、問題はより大きくなる。

米国の企業課税を抜本的に見直すこと自体は間違っていない。現行制度には問題点も多いからだ。

たとえば、米企業は海外で稼いだ収益を国内に還元する際に、巨額の税の支払いが必要になる場合が多い。ほとんどの日欧企業が原則無税で海外収益を国内還元できるのと対照的だ。この税制の違いが、欧州など海外に本拠地を移す米企業が多い一因になっている。

法人税改革によって国内経済の活性化をめざしたいなら、こうした特異な税制の見直しを急ぐべきだ。内外経済を揺るがしかねない国境調整にこだわる時ではない。
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[日経新聞] ゴーン改革から何を学ぶか (2017年02月24日)

日産自動車のカルロス・ゴーン会長兼社長が4月1日付で社長を退き、最高経営責任者(CEO)のポストも次期社長の西川広人・現副会長に譲ると発表した。会長職は続けるが、1999年の来日以来18年間、日産の経営を最前線で引っ張ってきた自らの役割に区切りをつけることになった。

ゴーン氏の大きな功績は、破綻の瀬戸際にあった日産自動車を果断なリストラでV字回復に導いたことだ。その後もライバルに先駆けて中国市場を開拓したり、電気自動車に力を入れたりして、独自性を発揮してきた。

2005年からは日産の大株主で、自身の出身母体の仏ルノー社長も兼任した。99年時点で日産・ルノー連合の年間生産台数は480万台だったが、昨年は1千万台規模に達し、世界最大手の独フォルクスワーゲンやトヨタ自動車に迫る水準に引き上げた。

ゴーン革命のひとつの教えは、しがらみにとらわれない危機突破力だ。99年に打ち出した「日産リバイバルプラン」では古くから付き合いのある部品メーカーの株式を売却する系列解体を実行し、業界の常識に挑戦した。

今も東芝をはじめ経営が迷走する企業は少なくない。内部の人間では大胆な改革が難しいのなら、社外に人材を求めるのも一案だ。

ゴーン社長の経歴も示唆的だ。最初に入社した仏ミシュランでは30歳代の若さでブラジル法人の再建や米国での企業買収を任され、工場閉鎖の指揮を執ったこともある。日産に来たのは45歳のときだが、それまでに経営者として十分な経験を重ねてきたのだ。

日本企業も有為な人材には若いうちから、失敗を恐れず大きな仕事を与えるべきだ。年功序列型の横並び人事から脱却しないと、スケールの大きいグローバル経営人材はなかなか育たないだろう。

環境技術や自動運転技術をめぐって、自動車市場の競争は一段と激しくなりつつある。西川次期社長率いる日産の新経営陣のかじ取りにも注目したい。
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2017年02月23日

[日経新聞] 規制改革の再加速で技術革新を促せ (2017年02月23日)

時代に合わなくなった規制を改廃して民間の企業や個人に自由を与え、技術革新や新サービスを後押しする。そんな日本経済を活性化するための規制改革を政府は再加速するときだ。

自動運転や小型無人機(ドローン)といった先端技術は次世代の経済のけん引役として注目されている。人工知能(AI)などを使った技術は、生活の利便性を大きく高める潜在力を持つ。

開発した技術を実用化するには、まず実証実験を重ねていく必要がある。すでに地域限定で規制を緩和した国家戦略特区での実証実験は始まっている。

しかし、実証実験は公道や空間を利用するため、参加する企業が関係機関との事前調整に煩雑な手続きを強いられている。開始までに数カ月かかる例があり、研究開発の足を引っ張っている。

こうした問題を解決するのが、英国発の「規制の砂場」という仕組みだ。企業が当局の了解を得て、現行の規制にとらわれずに新たな事業やサービスを実験しやすくする。

小さな失敗を許容して試行錯誤を認めるやり方だ。迅速に実証実験をしやすくなるので、実用化までの期間が短くなる効果が期待できる。

政府はこの仕組みを盛り込んだ国家戦略特区法改正案を今国会に提出する方針だ。第4次産業革命の成否は日本経済の国際競争力を左右する。官民一体で特区での実証実験を急いでほしい。

法改正案には、宿泊や飲食、警備といったサービス業で訪日客に対応する外国人材を受け入れやすくする規定もつくる。外国人材の活用は日本の技術革新の一助にもなる。妥当な内容だろう。

一方で、自家用車で客を送迎する「ライドシェア」はほとんど広がっていない。個人住宅の空き部屋などに旅行者を宿泊させる「民泊」についてはルール整備が遅れているうえ、自治体が過度な規制をかける懸念も残っている。

日本経済の実力である潜在成長率は1%未満に沈んでいる。これを引き上げるには規制改革を通じて生産性を高める必要がある。

働き方改革などの課題はもちろん重要だが、政権にとって規制改革の優先順位が低下しているとしたら問題だ。かつて安倍晋三首相は「規制改革は成長戦略の1丁目1番地」と発言した。その矢は力強く放ち続けねばならない。
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[日経新聞] 豊洲の検証に何が必要か (2017年02月23日)

築地市場の豊洲への移転問題を巡って、東京都議会が22日、地方自治法100条に基づく強い調査権限をもつ特別委員会(百条委員会)を設置した。

百条委は自治体の仕事に関して関係者の出頭や証言、記録の提出を求めることができ、正当な理由がないのに出頭を拒んだり、虚偽の証言をしたりすると禁錮や罰金が科せられる。今後、用地を取得した当時の知事である石原慎太郎氏らを証人喚問する予定だ。

なぜ、土壌が汚染された東京ガスの工場跡地を移転先に選んだのか、多くの都民、国民が疑問を抱いている。汚染対策費の多くを原因者である東京ガスではなく、都が負担する契約になっている点などについても批判が出ている。

豊洲問題に対する国民の関心は極めて高い。都議会が自らの調査権限を生かして一連の疑問を解明しようとする点は評価したい。

一方、老朽化した築地市場の移転は30年前から曲折を経ながら進められてきた。都が豊洲への移転を決めて以降でも16年がすぎた。

都は当初、現在地での再整備に着手したが、営業活動を続けながらの工事は難航し、他地区への移転へ方針を転換した経緯がある。市場関係者の間でも当時、築地に近く、広い用地を確保できる豊洲への移転を求める声があった。

東京ガスは2007年までに約100億円をかけて都の条例に基づいて土壌改良をしている。それでもその後の調査で有害物質が検出され、都が自ら大規模な対策に乗り出して、現在に至っている。

今回の百条委の設置は7月の都議選をにらんだ会派間の駆け引きの結果という側面が強い。石原氏への責任追及を強める小池百合子知事の動向も影響している。

30年という時間軸に沿って、ていねいに事実を確認しながら審議しないと、単なる政治ショーに終わるだろう。過去の検証は必要とはいえ、本当に重要なのは3月に明らかになる豊洲市場の地下水の再調査の結果と、それを踏まえた小池知事の判断である。
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2017年02月22日

[日経新聞] 世界の安定に欠かせぬ米欧の緊密な連携 (2017年02月22日)

米国のペンス副大統領や主要閣僚が相次ぎ訪欧し、トランプ政権誕生でぎくしゃくした欧州との関係修復に動いた。強い米欧同盟の継続は日本にも重要だ。大統領自身が不規則な発言を控え、早く安定した外交姿勢を打ち出して不安を解消してほしい。

欧州連合(EU)は「ドイツのための乗り物」であり、北大西洋条約機構(NATO)は「時代遅れ」。トランプ氏は就任前にこうした冷ややかな発言を繰り返し、欧州側の強い反発を招いていた。

米側からは今回、副大統領のほかティラーソン国務長官、マティス国防長官がそれぞれ欧州を訪れ、EUやNATOとの関係を重視する姿勢を示した。米欧間の亀裂が広がっていくことへの危機感があったのだろう。

トランプ政権の幹部が総じて冷静で妥当なメッセージを伝えたことを歓迎したい。欧州側からも評価の声が聞かれた。

だが、これで米国への懸念を十分ぬぐえたとはいえない。米政権内で外交方針がきちんと共有されているのか確かでないからだ。トランプ氏は物議をかもす発言を続けており、世界情勢への認識や考え方にも不明確なところが多い。

例えばロシアへの対処のしかたは不透明だ。ティラーソン長官はロシアとの外相会談でウクライナ東部の停戦合意を順守するよう求めるなど、対ロ関係で慎重な姿勢を示したとされる。

ロシアとの関係改善に前向きな姿勢を見せてきたトランプ氏と認識は一致しているのだろうか。

力による国際秩序の現状変更を辞さないロシアは、米欧の足並みが乱れればつけ込む可能性が大きい。トランプ氏は対ロ政策を欧州とすりあわせ、効果的に協力する体制を築いてもらいたい。

米欧の結束に向けた課題は多い。マティス長官はNATOの会合で、国防費の支出水準が低い加盟国の取り組み強化を要求した。欧州側が応じなければ米欧対立に発展する恐れがある。

独仏などでは今年、重要な選挙があり内政の不透明感が増す。欧州側も求心力を保つのに苦労している状況だ。

米欧同盟が揺らげば世界は不安定になり、影響は日本にも及ぶ。米政権の対中姿勢もなおはっきりしない。トランプ氏が世界の現実を正しく見つめ、理にかなった外交路線を軌道に乗せるよう、日欧も連携していく必要がある。
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[日経新聞] 低コストの無電柱化を探れ (2017年02月22日)

電線などを地中に埋めて電柱をなくす無電柱化を進めようという機運が高まっている。カギを握るのは埋設費用の削減だ。

昨年末に無電柱化推進法が施行され、政府は具体的な目標を盛り込んだ計画を策定する準備に入った。自治体でも茨城県つくば市が中心市街地などで新たな電柱の設置を規制する条例を制定し、東京都も都道での新設を禁じる条例をつくる方針だ。

現在、日本には3500万本を超す電柱があり、宅地開発などに伴って今も増えている。無電柱化の割合をみると、最も進んでいる東京23区ですら7%にすぎない。

海外ではロンドンやパリ、香港が100%、シンガポールや台北なども9割を超している。日本が遅れているのは一目瞭然だ。

東日本大震災で大量の電柱が倒れて復旧の障害になったように、無電柱化が進めば街の防災性はかなり高まるだろう。日々の生活を考えても、電柱がなければ歩行者や車いすが通行しやすくなるし、街の景観も向上する。

現在、各地に電柱が林立している最大の理由はコストにある。地下深くに共同溝を設けて電線や通信ケーブルを通す現行方式では、官民合わせた費用は1キロメートル当たり5億3千万円程度かかる。電柱を設置する場合の10倍以上だ。

一方で、ロンドンやパリで一般的な電線などを直接埋める方式ならば、電気・通信設備などを除いた工事費だけでも共同溝方式の4分の1以下になる。道路の脇の小型の側溝などに電線を通す方式も費用を抑えられる。国はこうした新方式の実証試験を進めている。

首都直下地震などを考えれば無電柱化を急ぐべきだが、予算も限られている。まずは、主要道での新設を原則禁止すると同時に、市街地再開発などに併せて地中化を進めるのが現実的だろう。

生活道路などの電柱は安全で低コストの技術が確立した段階で、本格的に撤去すればいい。国や自治体はしっかりとした計画をつくって着実に取り組んでほしい。
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2017年02月21日

[日経新聞] 閣僚の答弁に緩みが目立つ (2017年02月21日)

今国会は序盤から閣僚の答弁が乱れ、野党の追及を受ける場面が目立っている。閣僚が所掌する重要案件を十分に説明できないようでは国政を安心して任せられない。5年目に入った安倍政権の緩みと言われないよう緊張感を持って国会審議に臨んでほしい。

野党は文部科学省の組織的な天下り問題で松野博一文科相、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の日報問題で稲田朋美防衛相、テロ等準備罪(共謀罪)法案で金田勝年法相の責任を厳しく追及している。野党4党は稲田、金田両氏の辞任も要求している。

南スーダンPKOへの陸上自衛隊の参加を巡り、野党の一部はかねて「現地情勢が悪化し活動を継続できる状況ではない」と指摘してきた。今回は昨年7月に首都ジュバで起きた大規模な武力衝突に関する日報の有無と記述内容が焦点になっている。

防衛相は日報は「廃棄」されたといったん説明。だが2月に入って電子データが昨年末に「発見」され、その報告を今年1月下旬に受けたと公表した。野党は「存在している日報を意図的に隠蔽したのではないか」と批判し、日報に記述された近隣での「戦闘」が本当にあったのなら陸自の活動継続は憲法違反だと指摘している。

もし隠蔽はなかったとしても、防衛相への報告が1カ月も遅れたのは大きな問題だ。防衛省・自衛隊はこれを機に部隊の安全や活動に関する情報保全と報告体制を根本から見直す必要がある。

金田法相はテロ等準備罪の新設がなぜ必要なのかという基本的な説明が二転三転している。詳細な国会での質疑は法案提出後にすべきだという趣旨の文書を官僚に作成させて報道陣に配った対応も首をかしげざるを得ない。

野党側があえて細かい質問をしている場合もあるとはいえ、今国会は閣僚が政府見解の紙をただ読んだり、官僚から助言を受けたりする姿が目立つ。充実した国会審議につながるよう気を引き締めて公務にあたってほしい。
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[日経新聞] 懸念を拭えないトランプ政権の1カ月 (2017年02月21日)

トランプ米大統領が就任して1カ月がたった。政権幹部の辞任劇があったり、司法と衝突したりするなどごたごた続きだ。やや現実的になった分野もあるが、世界が抱く懸念を払拭するにはほど遠い。職責の重さを自覚し、ふさわしい振る舞いをしてもらいたい。

米国は政権交代ごとに政府高官が多数入れ替わるため、出だしでもたつくことは珍しくない。それでもトランプ政権の出だしはあまりに多難である。ギャラップの世論調査によると、目下の支持率は41%。歴代政権の同時期の平均値より21ポイントも低い。

トランプ氏は、既成権力への人々の嫌悪感を糾合する形で当選した。自分が最高権力者になったにもかかわらず、大衆扇動的な手法は変わらない。

イスラム圏の7カ国からの入国制限は連邦高裁で否定された。移民制限を進めるにしても、民族・宗教の対立をあおるようなやり方は好ましくない。

来日したマティス国防長官が日米同盟の価値を再確認したことは評価できる。とはいえ、司令塔は誰で、政権全体としてどこへ向かおうとしているのかは、相変わらずよくわからない。

就任前にロシアと接触していた問題の責任を取り、フリン国家安全保障担当大統領補佐官が辞任した。政権発足3週間余での幹部更迭は前代未聞である。

「昨夜、スウェーデンで起きたことを見たはずだ」。トランプ氏は先週末の支持者向け集会で、ありもしなかったテロ事件に言及した。メディア報道をよく「偽ニュース」と罵るが、これでは天に唾するようなものだ。

より危惧すべきは、不確かな話をうのみにする人であるとわかったことだ。目にしたのが、米国のどこかが核攻撃を受けたという偽ニュースでなかったのは、不幸中の幸いである。

北朝鮮の弾道ミサイル発射に際し、衆人環視のもとで機密情報の報告を受け、側近と対応を協議したのも大統領らしからぬ振る舞いだった。公職に就くのは初めてなので、政権運営の基礎知識が乏しいのだろう。

歴代の米大統領の回顧録を読むと、酒も遊びも控えなくてはならないかごの鳥の日々への恨み節がよく出てくる。超大国の指導者というのは決して楽しい仕事ではないはずだ。トランプ氏にはまずそれをわかってほしい。
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2017年02月20日

[日経新聞] 自由な競争を実現し農業の成長を導け (2017年02月20日)

政府は昨年11月にまとめた農業改革策を具体化する農業競争力強化支援法案を閣議決定し、国会に提出した。今国会では半世紀ぶりとなる原料生乳の流通改革など、合わせて8つの農業関連法案の成立をめざす。

農業改革の狙いは自由な競争を実現し、そこから新たな付加価値や生産、流通の合理化を引き出すことにあるはずだ。政府はその目的を後退させず、改革を断行してほしい。

農業競争力強化支援法案は肥料や飼料、農薬などの農業資材に加え、コメ卸や製粉など流通加工の分野で業界再編を促すことがおもな狙いだ。

ここで重要なのは、農業資材や農産物の流通で高いシェアを握る全国農業協同組合連合会(JA全農)の事業改革だ。政府は農業資材の分野で価格競争が十分に機能しておらず、韓国などと比べ農家の生産コストが高くなっている現状を問題視している。

農協の設立目的は農家の経済活動を支援し、農業生産の拡大を後押しすることにある。農業生産にかかるコストや、農産物の出荷経費が少しでも安くなるように努力することは当然だ。全農は政府に促される前に、近くまとめる改革案で自ら農家支援の事業体制を示すべきだ。

生乳の流通改革も旧弊を改め、自由な競争を実現することが目的だ。安倍晋三首相は今国会の施政方針演説で「事実上、農協経由に限定している補給金制度を抜本的に見直し、生産者の自由な経営を可能にする」と言明した。既得権益を守ろうとする農協の圧力でその方針が曖昧になることがあってはならない。

イネなどの品種普及を都道府県に主導させる主要農作物種子法を廃止し、品種開発に民間の技術力を取り込む改革も急ぐべきだ。

旧来型の横並び保護を求める声は根強い。野党は畜産農家の保護を拡充する法案を議員立法で提出した。自民党の中にも環太平洋経済連携協定(TPP)関連法の保護対策を、TPPと切り離して出そうとする動きが見られる。

しかし、旧来型の保護が競争力を高める農家の努力を阻害し、農業を弱体化させたことを忘れてはならない。飼料米の増産支援なども農業改革の目的に逆行しかねない政策だ。自由な競争で農業を自立した産業へと導く改革を貫いてもらいたい。
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[日経新聞] 注目したいエコカーの新展開 (2017年02月20日)

自動車の環境技術が新たな進展を見せている。過去20年間、動力源が「エンジンを主、電池を従」のハイブリッド車がエコカーの代名詞だったが、その進化形ともいえる次代の技術方式が続々と名乗りを上げ始めた。

日本車が今後も環境技術で世界をリードし、地球温暖化問題や排ガスによる大気汚染の解決に寄与することを期待したい。

近年エコカーの分野では海外企業に注目が集まることが多かった。排ガスゼロの電気自動車(EV)では、新興の米テスラの急成長が脚光を浴びた。

従来型ハイブリッド車から進化した「電池を主、エンジンを従」として走るプラグインハイブリッド車(PHV)については、ドイツ勢が商品投入で先行した。

だが、ここにきて日本メーカーの取り組みも活発化しており、今後の展開が注目される。

トヨタ自動車はプラグインタイプの「プリウスPHV」を全面改良し、国内で発売した。ハイブリッド車の生みの親の内山田竹志会長は「プラグインが次のエコカーの大本命」と宣言。電池だけで68キロメートル走るので、夜充電しておけば、ガソリンを一滴も使わず日々の通勤や買い物ができるという。

日産自動車もエンジンを使って発電し、その電気でモーターを駆動して走る新しい形のハイブリッド機構を開発し、コンパクト車の「ノート」に搭載した。航続距離が短いというEVの弱点を克服しつつ、EVの魅力である静かでスムーズな走りを実現した。

各社が様々なエコカー開発に力を入れる背景には、米欧や中国における環境規制強化の流れがある。従来型ハイブリッド車や既存エンジンの改良だけでは対応が難しくなりつつあるのが現状だ。

世界市場の約3割を占める日本の自動車産業はこうした社会的要請を前向きに受け止め、エコカーの開発競争を引っ張ることで、次の飛躍の機会としたい。自力だけでは対応しきれない中堅企業には、大手との連携も必要になろう。
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2017年02月19日

[日経新聞] 企業は最高益に安住せずさらに強さ磨け (2017年02月19日)

日本企業が効率よく利益を上げる体制を整えつつある。強みを持つ事業や製品に経営資源を集中させることにより、売り上げが伸び悩んだり、環境が急に変わったりした場合に備える動きだ。企業はこの流れを途切れさせることなく、事業基盤をさらに強固なものとしなければならない。

本紙集計によれば上場企業の2017年3月期は売上高が3%減る一方、純利益は11%増えて2期ぶりに過去最高となる見通しだ。減収増益の決算が示すものは、ここ数年で日本企業が進めた事業再編や合理化の効果だ。

日立製作所は物流や金融といった本業と関係の薄い事業を切り離すことにより、収益力の向上をはかってきた。その結果、今期は売上高が10%減りそうだが、経営の効率化が寄与し純利益は16%増えると見込んでいる。

日立は非中核と位置づけた黒字の子会社、日立工機の売却も決め、インフラ事業などに集中する方針を改めて示した。得意分野をさらに強くする姿勢は他の日本企業の刺激ともなり、業種を越えて広がっている。

たとえば不採算品を減らしてきた三井化学は今期、1割の減収だが10期ぶりの最高益となる見通しだ。機能性肌着の販売に力を入れたグンゼは2%の微減収にもかかわらず、最終損益が黒字に転換するという。

世界経済の不透明感がいまひとつ晴れないため、景気が多少回復しても必要以上には規模の拡大は追わない。減収増益の決算の背景には、こんな経営判断もはたらいているのだろう。なんといっても心配なのは、自国優先の姿勢を崩そうとしないトランプ米大統領の経済政策だ。

輸出企業の税負担を軽くする一方、輸入企業への課税を重くする措置が米国で導入された場合、日本の自動車メーカーが打撃を受けるのは避けられそうにない。トヨタ自動車などの16年4?12月期決算は、収益の北米依存が浮き彫りになった。

英国が欧州連合(EU)からの離脱を通告する時期も近づきつつある。欧州全域での生産・販売体制を再検討する必要に迫られている企業も多い。

米欧の経済と政治に懸念がくすぶるなか、企業の最善策は環境に左右されにくい収益構造を築くことだ。自らの強みを見きわめ、磨きをかける必要がある。
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[日経新聞] 揺らぐ香港の「一国二制度」 (2017年02月19日)

香港政府トップである行政長官を決める選挙が、3月26日投票に向けて本格化する。中国政府が香港に約束した「一国二制度」の下での高度の自治が、真の意味で機能しているのか問い直す良い機会である。

1月下旬、多くの香港市民が不安を感じる事件が起きた。高級ホテルから中国出身の著名な大富豪が失踪した問題だ。中国当局の関係者に強要される形で大陸に連れ出されたとみられている。

香港では先に中国に批判的な書籍を扱う銅鑼湾書店の関係者らが次々、連れ去られた。一連の事件が浮き彫りにした香港の法規を無視した越権行為は「一国二制度」の根幹に関わる。それは国際的な信用にも影響しかねない。

中国は1997年の返還の際、香港の有権者「1人1票」の普通選挙を将来、導入すると公約した。だが2014年、事実上、親中派しか出馬できない制度を一方的に示す。反発した学生らは真の普通選挙を求め長期間、道路を占拠した。いわゆる「雨傘運動」だ。

習近平指導部はかたくなだった。制度改革は白紙に戻り、今回の選挙も従来の間接方式で実施する。親中派が多数の選挙委員会(定数1200)で選ぶ仕組みでは、中国政府の意向が反映される。現職の梁振英氏は出馬せず、前政務官の林鄭月娥氏、前財政官の曽俊華氏らが立候補を表明している。

香港の若者らは奇怪な「連れ去り事件」を目の当たりにし、将来に強い不安を抱いている。中国は今年後半、共産党大会の最高指導部人事を控えている。一連の事件の裏には、中央の権力を巡る闘いがあるとの見方も多い。だからといって香港の高度の自治をないがしろにしてよいはずがない。

「一国二制度」は、香港の繁栄が大陸の発展を後押しするとの理念に支えられてきた。香港の自由な雰囲気が消えれば都市の魅力は半減し、世界から資本や人材も集まらなくなる。香港は今後の選挙戦を通じて高度な自治を守る決意を新たにする必要がある。
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2017年02月18日

[日経新聞] 「2国家共存」を放棄するな (2017年02月18日)

パレスチナ人が自分たちの国を持ち、隣り合うイスラエルと共存する。長い対立と流血の末にたどりついた、パレスチナ問題を解決に導く和平の道である。これを放棄してはならない。

米国のトランプ大統領がイスラエルのネタニヤフ首相との共同記者会見で、「2国家でも、1国家でも、双方が望む方でいい」と語り、パレスチナ国家とイスラエルの「2国家共存」にこだわらない考えを示した。

2国家共存をパレスチナ問題の唯一の解決策としてきた米歴代政策からの唐突な転換である。

イスラエルとアラブ諸国は、1948年のイスラエル建国以来、何度も戦火を交えてきた。パレスチナ紛争はイスラエルとアラブの対立の核心にある問題だ。

パレスチナ国家の樹立による和平に道を開いた93年のパレスチナ暫定自治宣言を仲介したのは米国だ。その後のイスラエルとパレスチナの交渉は順調ではなかったが、独立国家はパレスチナ人の悲願である。反発は当然だろう。

イスラエルに影響力を持つ米国が、2国家共存の旗を降ろせば、イスラエルによる占領地の固定化を許すことになりかねない。ネタニヤフ政権はヨルダン川西岸などへの入植地拡大を続けている。その撤去は一段と難しくなる。

心配なのは、トランプ大統領が米国大使館をエルサレムに移す意欲を見せていることだ。エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教それぞれの聖地だ。

イスラエルは67年に東エルサレムを占領した。エルサレムを「永遠の首都」と主張するが、国際社会は認めていない。日米はじめ、各国はテルアビブに大使館を置いている。米国が大使館を一方的にエルサレムに移せば、イスラム世界全体の怒りを招くだろう。

トランプ大統領とネタニヤフ首相は弾道ミサイルの開発を続けるイランへ厳しく臨む考えで一致した。米政権のイスラエルへの過度の肩入れが中東の緊張を高めることにならないか懸念する。
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