2017年04月25日

[日経新聞] 仏国民は開かれた経済・社会を守れるか (2017年04月25日)

フランス大統領選挙の第1回投票で独立系中道候補のマクロン元経済産業デジタル相と、極右政党、国民戦線(FN)のルペン党首が1位と2位になり、5月7日の決選投票への進出を決めた。

反欧州連合(EU)を掲げる候補者同士による決選という展開は回避され、親EUで穏健な政策を説くマクロン氏が当選に向け前進した。ポピュリズム的な政治潮流が欧州で止まる節目となるか、仏国民の選択が問われる。

マクロン氏は39歳と若く、主要政党に属さない清新なイメージなどで中道層を中心に支持を集めたようだ。ルペン氏はトランプ米大統領のように自国第一主義を前面に出し、ユーロ圏からの離脱や移民制限といった内向きな政策で現状に不満を持つ層を取り込んだ。

ルペン氏が当選すれば、ドイツとともに欧州統合の中核を担ってきたフランスで反EUの大統領が誕生し、欧州に与える打撃ははかりしれない。保護主義的政策で世界を揺さぶることも予想される。

ルペン氏の党からは2002年の大統領選でも同氏の父が決選投票に進んだが、右派と左派の主要政党が結束して当選を阻んだ。今回も第1回投票で敗れた共和党と社会党の候補がマクロン氏支持を表明するなど、主流派の政党は反ルペンを訴えていく見通しだ。

目を引くのは、これら2大政党の候補者がいずれも決選投票に進めなかったことだ。

フランスの大統領選で極めて異例の事態は、既成の主要政党への批判が根強いことを示す。社会党から票が流れたとみられる急進左派のメランション氏がルペン氏とともに勝ち進み、反EUの候補者同士の対決になることも懸念されていた。

決選投票では、こうした主要政党への不満票がルペン氏にどれだけ向かうかがカギを握りそうだ。

マクロン氏が制すれば、欧州統合を推進するとともに、国内の経済改革で競争力強化をめざすことが見込まれる。

欧州では6月の英総選挙、9月のドイツ総選挙と、重要な選挙が続く。英国のEU離脱交渉もこれから始まる。フランスが次の大統領のもとで過激で内向きな路線にかじを切れば、欧州は深刻な混乱に陥りかねない。

EUとグローバル化を重視する現実的な道をフランスは堅持してもらいたい。有権者の冷静な判断が期待される。
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[日経新聞] 「常識を越す万博」に肉付けを (2017年04月25日)

政府は博覧会国際事務局(BIE)に2025年国際博覧会(万博)の大阪招致を申請、すでに立候補しているフランス・パリとの招致レースが本格的に始まる。開催地は18年11月のBIE総会で、加盟国の投票によって決まる。

政府や大阪府がまとめた計画によると、万博は大阪市の人工島、夢洲を舞台に25年5月から半年間開催する。期間中に最大3000万人の入場者を見込んでいる。

万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。人工知能(AI)や仮想現実(VR)など先端技術の実験場にする計画だ。

実現すれば、地盤沈下が指摘される関西や大阪の経済活性化に大きく役立つだろう。最近、アジアからの観光客などでにぎわう大阪に新たな魅力が加わり、長年の懸案だった大阪湾岸の開発にも弾みがつくことになる。

前回、大阪万博が開かれたのは高度経済成長期の1970年だ。当時と今では社会の姿はもとより、国民の未来に対する考え方も大きく変わっている。

経済産業省の有識者検討会は大阪万博の方向性のひとつとして「常識を越えた万博」を掲げている。招致に向けた国民の機運を高めるためにも、その具体的な姿を早く肉付けすべきだろう。

地元経済界では万博招致を支持する意見が多い一方で、資金負担を懸念する声も少なくない。魅力的な万博の姿を官民が協力して描く必要がある。

大阪府や大阪市は夢洲をカジノを含む統合型リゾート(IR)の候補地にもしている。カジノに対してはギャンブル依存症の増加や反社会的勢力の介入など様々な負の側面が指摘されている。万博とカジノは別問題ととらえたい。

市はIRや万博に向けて夢洲に地下鉄を延伸する予定だ。会場建設費に加えてこうした関連事業の費用もかさむ。

万博の招致が財政面で府や市の重荷になっては困る。中長期的な財政見通しも改めて明らかにしてほしい。
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2017年04月24日

[日経新聞] 国際金融規制を包括的に点検する時だ (2017年04月24日)

2008年のリーマン・ショックの後、世界的に進められた金融機関に対する規制づくりが、一段落しつつある。このあたりで、経済的な側面から規制を点検してみてはどうだろう。

そんな問題意識に基づき、各国・地域の金融機関を監督する当局で構成する金融安定理事会(FSB)が、金融規制の経済的なメリット・デメリットを測定する手法などについて、世界中から意見を募り始めた。

過剰規制の見直しは、日本の金融庁や銀行界がかねて主張してきたところだ。金融システムの安定と経済成長を両立させるためのルール構築に向け、日本勢はFSBなど国際交渉の場で積極的に発言していくべきだ。

金融危機後の規制づくりは、20カ国・地域(G20)の主導で進められてきた。巨大金融グループに手厚い自己資本を積むよう求めたり、銀行に投機的な取引を禁じたりといった様々なルールが提唱され、現在までにその大半が実行に移されている。

一連の規制強化は金融システムの動揺を鎮め、世界経済の安定におおいに寄与した。しかし一方で、規制が金融市場の流動性を低下させ、成長の妨げになりかねないとの指摘も世界的に広がっている。

実際に米国ではトランプ大統領が、主に中小企業への資金供給を増やすことを念頭に、ドッド・フランク法(金融規制改革法)などの見直しに着手している。欧州銀行界では、自己資本比率規制のいっそうの強化に慎重な姿勢が目立ちはじめた。

リーマン後の規制づくりは危機対応の目的が前面に出たため、証券化などを前提にした金融仲介への影響が考慮されていたとは、必ずしも言えない。企業や個人が資金調達の面で不利益を被っていないかどうか、各国・地域の金融機関監督者が調査する必要がある。

そのうえで不利益が利益を上回ると判断された規制の事例をFSBなどの場に持ち寄り、国際的な協調を保ちながら手直しを進めるべきだ。ただし、特定の国や地域で規制緩和が先行しすぎると、グローバルなお金の流れがゆがみ、経済が混乱しかねない。

金融危機後の世界経済を支えた中国では、「影の銀行」と呼ばれる規制対象外の金融仲介も拡大した。中国をはじめとする新興国の市場も視野に入れた、包括的な規制の点検が必要だ。
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[日経新聞] ITで医療・介護費を抑えよ (2017年04月24日)

高齢化で医療や介護の費用が際限なく膨らめば、現役世代や次世代の負担が急増し、日本の社会保障制度の存続すら危ぶまれる。

そんな悲観的な未来を変えるためにも、IT(情報技術)を使って医療・介護費を抑えられる余地は大きい。政府は2018年度の診療報酬・介護報酬の同時改定に反映させる必要がある。

政府の未来投資会議で、有識者がITを使った医療・介護の効率化策を提案したのは理解できる。

たとえば、かかりつけ医がパソコンやタブレット端末から患者のデータを集めれば、対面でなくても画像をもとに患者の病状を診断できるようになる。

遠隔地にいる医師が患者に向き合う回数が増えたとしても、早めの診断で重症になるのを防いだり疾病を予防したりして、全体としての医療費を抑えやすくなる。

これまでは対面の診察が重視されてきたが、ITを使った遠隔診療を広く認めていくのは当然だ。政府は診療報酬改定の際に遠隔診療に関する診療報酬を上げ、普及を後押ししてほしい。

介護も事態は深刻だ。2025年度に介護費は約20兆円まで増え、約37万人の人材不足が見込まれている。だからこそITによる効率化の流れを加速したい。

赤外線センサーを使った見守りシステムや介護ロボットは、ヘルパーの負担を大きく減らすことができる。政府は介護報酬や人員配置基準で支援していくべきだ。

また膨大な要介護者のデータを分析し、効率よく要介護者の自立を支援していけるような介護標準化の努力を始めてほしい。

一方ですでに診療報酬明細書(レセプト)のデータから、地域で診療回数に大きな差があることが明らかになっている。政府はデータをさらに活用し、過剰な医療行為に切り込んでほしい。

ITによる効率化を評価しつつ、無駄は徹底的に排除して総額としての費用を大きく抑える。そんなメリハリの利いた診療報酬と介護報酬を政府はめざすべきだ。
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2017年04月23日

[日経新聞] IT企業が変える自動車開発 (2017年04月23日)

中国のネット検索大手、百度(バイドゥ)が、自動運転車を制御するソフトを外部企業に無償で公開することを決めた。開発力が低い自動車メーカーなども百度のソフトを使い、自動運転車を早期に生産できるようになる。

ソフトを公開して誰でも利用や改良ができるようにする手法は、IT(情報技術)分野で普及している。百度の取り組みは、IT業界の経験を自動車の開発に応用する新たな試みといえる。

自動運転車の開発は自動車メーカーに加えて、グーグルやアップルといった米国のIT企業が力を入れている。百度も2015年に着手し、公道で実証実験もした。障害物の検知や経路の設定などに使うソフトを今年7月から段階的に公開し、20年までに完全自動運転を可能にするという。

これまで企業の間では多額の資金や人材を投じて開発した技術を囲い込み、自社だけが使える期間を長くする動きが目立っていた。だが、IT企業の一部はこうした流れと一線を画し、成果をあげている。

グーグルは基本ソフト(OS)「アンドロイド」を無償で外部に提供し、このソフトで動くスマートフォンは世界販売が年間10億台を超えるまでに成長した。ソフトそのものでは対価を得ず、広告配信などを収益源としている。

広くソフトを公開すれば普及の速度が増す。世界各地の技術者が改良に取り組むことにより、完成度を高めやすい。百度もこうした効果を狙っている。

ただ、誰でも詳細を見たり、手を加えたりできるソフトに対しては、一部で安全性を懸念する声が上がっている。

自動車は人命を左右するため慎重に開発すべきだとの考え方も根強いが、IT化の流れは着実に強まっている。日本の自動車メーカーには安全性や製品の個性を高めるために技術を囲い込む分野と、他社と協力する分野を明確に分け、バランスを保つ経営戦略を求めたい。
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[日経新聞] G20首脳が保護主義の自制へ先頭に立て (2017年04月23日)

世界経済は足元で回復基調を強めているものの、下振れリスクは大きい。その最たるものが保護主義である。20カ国・地域(G20)の首脳こそが先頭に立って自由貿易の意義を説き、保護主義を自制しなければならない。

ワシントンで開いていたG20財務相・中央銀行総裁会議は、通貨安競争を回避するなどの原則を確認して閉幕した。

国際通貨基金(IMF)の見通しによると、世界経済の成長率は2016年の3.1%から17年に3.5%まで高まる。先進国、新興国ともに全体として着実に回復していると評価できる。

先行きの懸念は、米国の政策や政治の不確実性が強いことだ。「米国第一」を掲げるトランプ米政権の政策は保護主義の色彩が濃く、米国の主張をうけ前回のG20会議は声明に「保護主義に対抗」との文言を明記できなかった。

今回は声明をとりまとめなかったが、G20議長国ドイツのワイトマン連邦銀行総裁は「ほぼ全員が開かれた市場や自由な市場アクセスの重要性を強調した」と明らかにした。

問われているのは、各国・地域の行動だ。たとえば、米政府は日本などの鉄鋼製品に反ダンピング(不当廉売)関税を適用する方針を決めたほか、鉄鋼の輸入規制にのりだそうとしている。

反ダンピング関税そのものは世界貿易機関(WTO)協定で認められている。ただ貿易相手国が関税上げという報復を繰り返す事態になれば、貿易減少を通じ世界経済の足を引っ張りかねない。

WTOによると、G20が導入した貿易制限措置はかなり残っている。世界経済の成長を後押しするため、G20は関税上げといった自由貿易をゆがめる政策を厳に控えねばならない。

通商政策を担っていない財務相・中銀総裁にこれ以上の議論を委ねるのは適切ではない。首脳こそが7月の会議の際に反保護主義で結束し、行動する必要がある。

自由貿易に背を向けて国や地域が豊かになれるわけではない。一方で急速な技術の変化に追いつけず、経済のグローバル化から取り残された層がいるのも事実だ。

自由貿易の利点を最大限生かしつつ、失業者にはきめ細かな職業訓練や再教育といった支援をする。そんな地道な取り組みが均衡のとれた成長につながる点をG20首脳は再確認してほしい。
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2017年04月22日

[日経新聞] サービス残業を根絶する時だ (2017年04月22日)

賃金を払わずに時間外労働をさせるサービス残業が依然として横行している。ヤマトホールディングス(HD)や関西電力では従業員の多くで残業代の未払いがあることが明らかになった。

時間外労働に適切な割増賃金を支払わないのは違法であることを、企業の経営者ははっきり認識すべきだ。サービス残業は健康にも悪影響を及ぼし、見過ごせない問題である。業務の効率化も進め、一掃するときだ。

ヤマトHDは宅配便の運転手を中心に、過去2年間で4万7千人に残業代の未払いが見つかったと発表した。総額は190億円にのぼる。関西電力は2016年末までの2年間で1万2900人に計約17億円の時間外賃金を払っていなかった。

業務量の増加などの事情があったとしても、企業の責任は重い。関電は02?04年にも残業代の未払いがあった。猛省を求めたい。

連合のシンクタンク、連合総合生活開発研究所(連合総研)の昨年10月の調査では、時間外労働をした人のうち38%が残業代の不払いがあったと答えている。サービス残業は産業界全体の問題だ。

まず管理職が意識を改める必要がある。連合総研の調査では、勤務時間を「上司から調整するよう言われた」という人が少なくなかった。「働いた時間どおりに申告しづらい雰囲気がある」との回答もめだっている。

違法行為を放置すれば企業への信頼が失墜することを経営者は自覚すべきだ。法令順守の徹底が求められる。業務を点検し、不要な仕事をなくすことも欠かせない。

悪質な企業を排除するには、行政による監督指導を強化する必要もある。労働基準監督署の人員不足を補うため、ハローワークの職業紹介業務の民間開放を進めて、それに従事している公務員を振り向ける手もあるだろう。

残業時間への上限規制を設けても、サービス残業が広がったままでは働き方改革の実をあげることはできない。悪弊を断つときだ。
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[日経新聞] 退位の議論では残る課題の解決も急げ (2017年04月22日)

天皇陛下の退位に向け政府が検討してきた特例法案の、骨子案が固まった。衆参両院の議長らのもとで各党各会派が話し合い、3月にまとめた国会提言の内容をおおむね踏まえたものである。

一方、政府の有識者会議も最終報告をまとめ、安倍晋三首相に手渡した。退位後の陛下のお立場や、皇位継承順位が1位となられる秋篠宮さまの呼称に言及した。法案に反映されるものとなる。特例法案は5月の連休明けに国会へ提出される見込みである。

新しいかたちの退位へ向けた制度設計は、世論の後押しもあって着実に進んでいるようにみえる。しかし、残る課題も多い。政府、国会とも、その解決に全力をあげてもらいたい。

国会の議論では、皇室典範の付則に「特例法は、典範と一体をなす」と明記することで、各党が歩み寄った経緯がある。退位は例外的措置と位置づけ、同時に特例法が将来の退位の先例としても機能し得ることを示した合意だ。

ところがこの内容に必ずしも沿っていないとして、政府の骨子案の一部に反発の声が出ている。たとえば、国会提言は法案名に「天皇」を使っていたが骨子案は「天皇陛下」としている。退位容認は一代限りとする趣旨が鮮明になったのでは、との指摘がある。

他の部分も含め、今後、国会提言を軸とした丁寧な擦り合わせが必要となる場面が予想される。くれぐれも政争の具にしないよう、議論を深めてほしい。

退位の日について骨子案は、法律の公布から3年以内の政令で定める日、とした。皇太子さまの即位で元号が新しくなれば、国民のくらしや、さまざまな業界の活動に大きな影響が及ぶ。スピーディーで、かつ漏れのない周知や対策を進めていく必要がある。

有識者会議が最終報告で指摘したように、皇室の現状をかえりみる時、皇族の減少について抜本的で速やかな検討が求められるのは明らかだ。国会提言はさらに踏み込んで「女性宮家の創設等」との文言を盛り込んでいる。

現行の制度のままだと、遠くない将来に、国民が皇室に期待している多様な役割を十分には果たせなくなる可能性も、出てくるのではないだろうか。

議論をタブー視することなく、専門家の知見も借りながら「国民の総意」で新しい皇室像を模索しなければならない。
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2017年04月21日

[日経新聞] ユナイテッド事件の教訓は (2017年04月21日)

米ユナイテッド航空が乗客を強制的に機内から降ろしたことへの批判が高まっている。この問題には中国など海外の関心も高く、同社のブランド価値が世界的に毀損しかねない状態だ。危機管理の観点から日本企業も他山の石とすべき事件である。

問題の発端は「降りたくない」と抵抗する男性を空港の治安当局が力ずくで引きずり出す動画がネット経由で世界に流れたことだ。無残に引きずられる男性の姿や周りの女性客の悲鳴も聞こえ、騒然とした様子が伝わってくる。

これだけでも衝撃は大きいが、世論の怒りの火に油を注いだのがオスカー・ムニョス最高経営責任者(CEO)のまずい対応だ。

最初のコメントでは、強制退去させられた男性を含めてオーバーブッキング(過剰予約)で飛行機から降りた4人の乗客に「便の振り替えをせざるを得ず、申し訳なかった」と表明しただけで、力ずくの行為についての謝罪はなかった。さらに社内向けのメールでは「(男性は)反抗し、けんか腰になった」と、相手に非があるかのような表現をした。

航空会社がある程度の過剰予約を受け付け、席が不足した場合は一定の代替措置をとって乗客の搭乗を断ることができるのは日本を含め世界的にほぼ共通のルールだ。だが、嫌がる乗客を暴力的に引きずり降ろすのは誰がみてもやりすぎだろう。

米航空業界は再編による寡占化が進んだ。客を客とも思わない事件の背景に寡占のおごりがあるなら、米当局は空の競争を活発にする策を講じる必要があろう。

加えて問題は世論の風向きに鈍感としかいいようのないCEOの対応だ。経営者は社内の指揮だけでなく、「会社の顔」として社会と対話する役目もある。

情報がネットで瞬時に拡散する時代に対応を誤れば代償は大きい。アンテナを高く張って世論に誠実に向き合い、コミュニケーション能力を発揮する。それが企業トップの欠かせない要件である。
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[日経新聞] 「脱時間給」制度の審議に逃げ腰になるな (2017年04月21日)

働き方改革への政府・与党の本気度を疑わざるを得ない。労働時間ではなく成果に対して賃金を払う「脱時間給」の制度化を盛り込んだ労働基準法改正案について、今国会の成立も見送ろうとしているからだ。

人工知能(AI)の普及などで働き手は一段と創造性を求められており、脱時間給はこうした社会の変化に応じたものだ。早期の制度化が求められる。にもかかわらず労基法改正案は一昨年4月に国会に提出されて以来、たなざらしにされている。政府・与党は認識を改めてもらいたい。

改正法案の成立を先送りするのは7月の東京都議選を控え、野党の批判が高まるのを避けるためとみられている。かねて野党は法案を「残業代ゼロ法案」と名づけて反発している。

政府は秋の臨時国会に残業時間への上限規制などを定めた働き方改革関連法案を提出する方針で、労基法改正案はこれと一体で審議することで成立させやすくなるとの読みもあるようだ。

だが、脱時間給制度の創設は、成果が働いた時間に比例しない仕事が増えてきたことに対応した時代の要請だ。審議に逃げ腰になる必要はまったくない。

政府の制度設計では対象者を高収入の一部の専門職に限っているが、本来はホワイトカラーにもっと広げるべきものである。

残業に上限を設ける一方で、長時間労働を助長しかねない脱時間給制度を新設するのは矛盾する、という批判がある。しかし脱時間給制度では、本人が時間の使い方を工夫して生産性を高めれば、労働時間の短縮が可能になる。会社に拘束されずに働けるという長所にもっと目を向けるべきだ。

導入にあたっては本人の同意を条件とし、企業に(1)年104日以上の休日の確保(2)1カ月または3カ月間の労働時間への上限設定――などのいずれかを義務づけることとしている。健康確保のための対策は企業の労使が議論して充実させる余地も大きい。まずは制度の利用に道を開くことが必要だ。

労基法改正案は、仕事の時間配分を自分で決められる裁量労働制を提案型の営業職などに広げることも盛り込まれている。

国際的にみて低い日本のホワイトカラーの生産性向上を促す意義は小さくない。成長戦略として法案の成立を急ぐ必要があることを政府・与党は自覚してほしい。
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2017年04月20日

[日経新聞] 衆院選の区割り改定だけでは不十分だ (2017年04月20日)

衆院選挙区画定審議会が19日、小選挙区の「0増6減」などを反映した区割り改定案を安倍晋三首相に勧告した。関連法が成立すれば「1票の格差」は2倍未満に是正される見通しだ。だが今回の見直しも、格差を一時的に縮める効果しか期待できず、各党は衆参の役割分担や選挙制度の抜本改革に向けた議論を急ぐべきだ。

区割り審は昨年5月に成立した改正公職選挙法に沿って具体的な区割り案を検討してきた。青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の6県は定数を1減らし、19都道府県の97選挙区で区割りを変更した。2015年の人口に当てはめた格差は1.956倍となる。

政府は勧告を反映した公選法改正案を提出し、今国会で成立する運びだ。周知期間を経て、夏以降には新たな区割りで衆院選ができるようになる。比例代表も東北、北関東、近畿、九州の4ブロックで定数を1ずつ減らし、衆院定数は465議席と戦後最少になる。

近年は衆院選や参院選があるたびに全国で1票の格差をめぐる訴訟が起きている。最高裁は14年衆院選の最大格差2.13倍を「違憲状態」とした。16年参院選の3.08倍も「違憲状態」との高裁判決が相次ぎ、最高裁が年内にも最終判断を示す方向だ。

国政選挙のたびに司法が違憲性に触れた判決を下し、立法府が後追いで選挙制度を小幅改正する展開は望ましくない。衆院選は人口比に近い配分が可能な「アダムズ方式」の導入が決まっているが、次の改正は5年後だ。格差が安定的に2倍未満になるような制度と運用方法の検討が必要だろう。

参院選は都道府県が選挙区の単位で、格差の是正がさらにむずかしい。昨年は鳥取・島根、徳島・高知を初めて合区した。現行制度のままなら合区がどんどん増える見通しだ。各党では「選挙区を地域ごとのブロック制に改める」「参院を地域代表だと位置づけて格差論争から切り離す」といった案が浮上しているが、憲法改正も絡むため議論は難航しそうだ。

日本は衆参両院ともに選挙区と比例代表を組み合わせた選挙制度を採っている。法案審議や国会同意人事の権限もほぼ同じだ。二院制の国々の中でも例外的な制度といえ、立法府のあり方について根本から議論する必要がある。1票の格差を是正する対症療法的な発想だけではイタチごっこのような制度改正からぬけだせない。
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[日経新聞] 英総選挙で霧は晴れるか (2017年04月20日)

英国の欧州連合(EU)離脱に向けた道筋は見えやすくなるだろうか。メイ英首相が下院を解散し6月8日に総選挙を実施する方針を明らかにした。

離脱の条件を巡る英国とEUの交渉は難航が予想されている。総選挙を経て、国民の信任を得た強いリーダーシップのもとで英国は交渉を着実に進め、EUからの離脱を円滑に実施してもらいたい。

メイ首相は総選挙に踏み切る理由として、EU離脱への立場で議会が割れている点をあげた。EUの単一市場から完全撤退するなど「強硬離脱」の政府方針に、野党・労働党などには反対も多い。

キャメロン前首相の辞任を受けて昨年就任したメイ氏は、今回が首相として初めての総選挙となる。首相の与党、保守党の議席数は下院で半分強にとどまるが、最近の世論調査では支持率で野党に大差をつけている。いまなら与党議席を増やして政権基盤を固め、EU離脱交渉を進めやすくできるとメイ首相は読んだようだ。

勝てば党内での首相の求心力が強まり、極端な強硬離脱派をおさえて、離脱交渉に柔軟に臨む余地も生まれるかもしれない。

早期の総選挙にはリスクも伴う。首相の思惑に反して保守党が議席を減らせば、政権は不安定になり、離脱交渉も停滞しかねない。過半数を割り込めば、取って代わる有力な野党が不在のまま政局が混乱する可能性もある。

保守党が大勝した場合でも、仮にメイ首相が勝利を背景に強気一辺倒の姿勢で交渉に臨めばEU側が態度を硬化させる恐れがある。英北部のスコットランドでは強硬離脱路線への反対が根強く、独立を問う住民投票の再実施を求める動きが強まることも考えられる。 英政府に求められるのは現実的で柔軟な姿勢だ。3月末に離脱をEUに通知した英国は、原則2年後の2019年春に離脱する。EUとの交渉時間は限られている。与野党ともにEU離脱が世界に及ぼす影響を十分に踏まえ、建設的に政策論争を深めてほしい。
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2017年04月19日

[日経新聞] 日米双方の構造改革促す経済対話に (2017年04月19日)

18日に東京で開いた日米経済対話の初回会合は、今後の対話の大枠で合意したものの、具体的な議論は次回以降に持ち越した。

環太平洋経済連携協定(TPP)を離脱した米国は日本との2国間の自由貿易協定(FTA)に意欲を示した。短期的な成果だけでなく、お互いの利益になるような中長期的な構造改革を進める視点を、日米双方は求められる。

2国間の貿易赤字削減を重視するトランプ政権は、日本に農産物や自動車などで市場開放を求める意向を示している。また、トランプ大統領は最近ドル高をけん制する発言をしており、米国は円安など日本の為替問題にも関心をもっているとみられる。

一方の日本側は、従来の日米協議のように米国の外圧に日本が対処するという形でなく、日米が双方向で建設的な議論をする場にしたいという考えから経済対話を提案し、枠組みづくりを進めた。

初回会合では、米政府の幹部人事の遅れなどで米国側が準備不足だったこともあり、個別問題で突っ込んだ議論にはならなかった。

ただ、会合終了後の記者会見でペンス副大統領は、将来的な2国間FTAへの意欲を表明した。世耕弘成経産相と個別に会談したロス商務長官も「(日米協議を)何らかの協定の形に落とし込みたい」と述べた。担当省庁、閣僚間の協議では、米側が様々な要求を出してくるだろう。

日本は2国間協定の交渉に応じるにしても、TPP交渉での日米合意をベースに議論を進めるべきだ。米離脱後のTPPが空中分解しないよう、米を除く11カ国での発効を探る必要もある。

日米両国が特に問われるのは、短期的な得点稼ぎでなく真に両国が必要とする構造改革につながる議論をできるか、だろう。

トランプ政権は雇用創出を掲げ、失われた製造業の復活に力を入れている。ただ、民間企業への圧力や保護貿易措置で一時的に雇用を戻しても、長続きはしない。

生産性の低い部門から高い部門への労働者の移動を促す職業訓練や教育など、雇用市場に踏み込んだ構造改革が必要だ。

日本も、金融・財政政策など景気刺激策に頼らない自律的な経済成長を実現するには、雇用、農業、社会保障など国内の抵抗の強い構造改革が欠かせない。せっかく始めたからには、志の高い日米対話にしてほしい。
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[日経新聞] 新技術で音楽市場の拡大を (2017年04月19日)

音楽ソフト世界首位の米ユニバーサル・ミュージック・グループが、スウェーデンの音楽配信大手スポティファイとの間で、楽曲を提供する際の条件を見直すことに合意した。著作権を守りながら配信を増やす狙いだ。

著作権を重視するコンテンツ企業と、使いやすさを重視するネット配信企業は、摩擦を生むことが多かった。ユニバーサルとスポティファイの取り組みは、共存を目指す新たな試みといえる。

スポティファイは、パソコンなどに情報を保存しないストリーミングという技術を使い、多数の楽曲が聞き放題となるサービスを提供している。広告が入るサービスは無料で、しかも有料版と同じ楽曲を聴けるようにしてきた。

無料のサービスで利用者の裾野を広げ、有料版の利用へとみちびく。こうした事業モデルはネット企業の間で広がっている。

ただスポティファイに対しては、一部の歌手が対価が不十分と主張し、配信を取りやめる動きも出ていた。今回の枠組みでは、CDアルバムを発売から2週間は有料版の利用者だけが聴けるようにして、著作権に配慮する。

米国の音楽ソフト市場では、CDの販売が急速に減る一方、ネット経由で端末に情報を取り込むダウンロード型の違法配信が深刻になったことがある。

そのため米国の音楽ソフト会社は、ストリーミングなど新技術の活用を積極的に進めてきた。それが奏功して2016年に音楽ソフト市場は11%拡大し、けん引役であるストリーミングの比率は初めて過半を占めた。

一方、日本では動きが鈍い。音楽のネット配信では一時、携帯電話向けを世界に先行して広げたが、ストリーミングで出遅れた。主力のCDの販売は減少が続き、音楽ソフト市場は縮小している。

音楽に限らずコンテンツの輸出拡大は日本の成長戦略の柱のひとつだ。それには自国市場の健全な発展が前提になる。日本企業も新技術を積極的に活用すべきだ。
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2017年04月18日

[日経新聞] 構造改革が再び滞る中国経済 (2017年04月18日)

中国の1?3月期の実質経済成長率は前年同期比6.9%だった。2期連続の拡大だが、短期的なインフラ投資と不動産に頼っており、中国経済はなお不安を残している。

中国はここ数年、供給サイド重視の構造改革を断固、進めるとしてきた。習近平国家主席も年初に生産能力の削減など構造改革の推進を改めて宣言した。いわば対外的な公約である。

実態は異なる。過剰な生産能力が指摘されていた鉄鋼などは逆に生産量が増えている。目先の景気テコ入れを狙って道路、空港などインフラ投資を急拡大し、一時的に需給が締まった結果だ。

在庫を抱えている不動産市場にも、実需とは必ずしも関係ない様々な投機資金が流れ込んだ。特に都市部での住宅価格の高騰は深刻な社会問題になっている。

一連の景気テコ入れ策は副作用を伴う。資産バブルである。リスクを認識する中国人民銀行(中央銀行)は、過度の金融緩和を改め始めた。今後、不動産価格が急激に下がれば、金融システムが不安定化しかねない。十分な注意が必要だ。

中国景気の従来のけん引役は、黒字を積み上げてきた対外貿易、独自の発展を遂げた電子商取引による消費の伸び、第3次産業の成長などだった。

しかし、稼ぎ手の対米輸出を巡っては、先の米中首脳会談で貿易不均衡の是正を目指す「100日計画」づくりで合意した。個人消費も以前ほどの伸びはない。景気回復を確実にするには、新たな産業の育成と内需の開拓が不可欠だ。その前提となるのが産業の構造改革である。

中国は今秋、5年に1度、最高指導部を入れ替える共産党大会を控えている。経済低迷の印象を与えれば、現執行部の求心力に響く。経済安定に向けた短期的なテコ入れは政治優先の選択でもある。とはいえ中長期的な成長を確保する構造改革を棚上げすれば、後に大きなツケを回すことになる。
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[日経新聞] トルコは民主主義守り中東安定に貢献を (2017年04月18日)

トルコで大統領権限を強化する憲法改正の是非を問う国民投票が実施された。暫定の開票結果で、賛成票が改憲に必要となる過半数を上回った。

首相職を廃止し、象徴的な存在だった大統領が国家元首と行政の長を兼ねる。大統領は閣僚や司法の人事権や国会の解散権など、強大な権限を持つようになる。

1923年に誕生したトルコ共和国の転換点である。改憲を目指してきたエルドアン大統領は今回の勝利に、「歴史的な決定だ」と語った。エルドアン氏は最長で2029年まで大統領の座にいることが可能になった。

ただし、勝利は僅差だった。野党は開票結果に異議を唱えている。投票したほぼ半数の有権者が大統領への権限集中に懸念を表明したことを忘れてはならない。

トルコは欧州とアジアのつなぎ目に位置する。その安定が地域に不可欠であるのは言うまでもない。シリア内戦の解決や過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討にトルコの関与は欠かせない。

トルコ国内ではISやクルド人反政府勢力によるテロが頻発している。治安の悪化は高い伸びを続けてきた経済成長にも影を落としている。昨年7月にはクーデター未遂が起き、政府は事件への関与を理由に、軍や公務員、司法など、10万人以上の関係者を拘束・解職した。

国際社会もトルコの不安定化とエルドアン体制の行方を注視している。なかでも欧州は無関係ではいられない。シリアを逃れた難民の多くは、トルコを通って欧州に向かった。難民問題の解決にはトルコとの連携が欠かせない。

トルコ政府がクーデター未遂後に出した非常事態宣言は今も続いている。その状況の下で実施された国民投票が、エルドアン大統領による強権支配に道を開くことがあってはならない。

エルドアン大統領がすべきことは、こうした国内外の懸念を払拭することだ。実権型の大統領制への移行で手に入れる安定した政権基盤を、治安の安定と対外関係の改善にいかすべきだ。

民主主義とイスラム教が調和するトルコはイスラム世界の発展モデルと期待される。安倍晋三首相とエルドアン大統領が相互訪問するなど、日本とトルコは良好な関係にある。トルコが民主主義を守り、国際社会で果たす役割を後押しするのは日本の役目である。
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2017年04月17日

[日経新聞] 持続可能なふるさと納税へ (2017年04月17日)

総務省が全国の自治体に対して、ふるさと納税に伴う過度な返礼品を是正するように要請した。寄付額の3割を超すような返礼品を提供している市町村に見直すように強く求めている。

ふるさと納税は寄付をすると2000円を超える部分について一定の上限額まで税金が戻ってくる制度だ。自分の出身地や興味がある地域に寄付し、都市と地方の税収格差を縮めようと2008年度に始まった。

寄付総額は当初、年間で100億円前後にとどまっていたが、13年度以降急増し、15年度は1653億円に増えた。返礼品競争に加えて、手続きを仲介する民間サイトが登場し、利用が増えている。

お礼として特産品などを提供することが悪いわけではないが、現状はネット通販とほぼ変わらない。寄付額の6、7割相当の商品を用意して宣伝したり、提供した商品券がネット上で転売されたり、様々な問題も生じている。

総務省が「良識のある対応」を求めるのは一昨年、昨年に続く3度目になる。今回は不適当な返礼品を細かく列挙するなど内容がより具体的だ。今後は国が自ら、市町村に見直しを求めるという。

今回のこまごました通知にはやや違和感もあるが、ふるさと納税は寄付制度である。過度な返礼品の見直しに消極的だった自治体側が招いた結果といえるのだろう。

返礼品がなくても熊本地震の被災地などには多額のお金が集まっており、ふるさと納税は日本の寄付文化を育てている面もある。制度を持続させるためには、市町村の節度ある対応が不可欠だ。

現行制度には他にもおかしな点がある。自分が暮らす地域に寄付しても同じように税金が戻ってくる。早急に見直す必要がある。

都市と地方の税収格差を縮めるためには、ふるさと納税だけでは力不足な点も指摘したい。地方向けの補助金を減らし、それを財源に地域間の偏在が小さい税源を国から地方に移す改革にも取り組むべきだろう。
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[日経新聞] 対話と圧力を駆使し東アジアの安定を (2017年04月17日)

朝鮮半島情勢が一段と緊迫してきた。北朝鮮は6カ国協議の再開を拒んでおり、対話の呼びかけだけで核・ミサイル開発に待ったをかけるのは難しい。軍事衝突の回避が最優先ではあるが、北朝鮮に影響力を持つ中国を巻き込み、硬軟あらゆる手段を用いて東アジア安定への道を探るべきだ。

北朝鮮は故金日成主席の生誕105年の15日、軍事パレードを催し、朝鮮労働党副委員長が「核戦争には核打撃戦で対応する」と訴えた。16日は弾道ミサイルを発射し、結果は失敗だったものの、対決姿勢をあらわにした。25日は朝鮮人民軍の創設85年を迎える。

一連の行動を通じて核保有国としての存在感を世界に印象付け、米国を交渉の場に引き出す思惑があるとみられる。通算6回目の核実験の実施も取り沙汰される。

他方、米国は空母カール・ビンソンを半島沖に向かわせ、先制攻撃や特殊部隊による金正恩(キム・ジョンウン)委員長の殺害も辞さない構えだ。在韓米軍への核兵器の再配備も視野に入れる。

シリアへの巡航ミサイル攻撃やアフガニスタンでの大規模爆風爆弾(MOAB)の使用は、北朝鮮をけん制する狙いもあるようだ。

緊張が高まると、不測の事態が起きかねない。政府は(1)北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合の国内の避難・誘導の手順(2)韓国在留の邦人を救援する段取り――などを再確認すべきである。

朝鮮半島から多くの難民が船で漂着することも考えられる。小さな自治体には対応能力が乏しいところもある。政府があらかじめ手を打っておくべきだ。

トランプ米大統領がオバマ前政権の掲げた「戦略的忍耐」を否定し、対話から圧力に軸足を移したことで、これまで北朝鮮にあまり口出しせずにいた中国の態度にやや変化が見受けられる。習近平国家主席はトランプ氏に「半島の非核化には協力する」と伝えた。こうした変化は評価する。

もちろん、北朝鮮との対話の窓口は閉ざすべきではない。中国をさらに米中協調の方向に動かすには、日米韓の連携の強さをみせつけることが重要だ。日本の外交努力の見せどころである。歴史問題などでこの時期に日韓の溝が深まる愚は犯したくない。

東アジアの安定を回復するため、対話と圧力のバランスを上手に取り、現実的な落としどころを見いだしたい。
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2017年04月16日

[日経新聞] 科学技術立国の堅持へ大学改革を (2017年04月16日)

日本は科学技術立国を堅持できるのか。そんな不安を抱かせる指標や分析が発表されている。なかでも新しい産業の芽や社会的価値を生む役割が期待される大学で、活力の低下が指摘されている。

人口が減る日本では研究者数や研究費を右肩上がりでは増やせない。科学技術立国を標榜し続けるには、研究の多様性を保ちつつ、生産性を高めるという難題を乗り越えねばならない。遅々として進まなかった大学改革に、いまこそ危機感をもって取り組むときだ。

年功崩し若手登用

「日本の科学研究はこの10年で失速し、この分野のエリートの地位が揺らいでいる」。英科学誌「ネイチャー」は3月、日本の科学研究の弱体化を厳しい表現で指摘した。

同誌によれば、この10年間に世界で発表された論文数は80%増えたが、日本は14%増にとどまる。日本の世界シェアは2005年の7.4%から、15年には4.7%に低下した。お家芸だった「材料」や「エンジニアリング」などでもシェア低下が目立つ。

国連の専門機関である世界知的所有権機関によれば、日本は研究開発の産物である特許の登録件数で長く世界首位だったが、15年に中国に抜かれ2位に落ちた。有力研究機関が公表する競争力ランキングでも日本はじりじりと順位を下げている。

日本では研究開発投資の約8割を企業が担い、科学技術全体が急速に弱っているかどうかは議論の余地があろう。だが大学の活力低下は国際化の遅れなど他の指標からも見て取れる。ネイチャーの警告は重く受け止めるべきだ。

何が活力を奪っているのか。大学関係者からは、国が支給する運営費交付金の削減をあげる声が多い。交付金は教員数などに応じて配分され、大学運営の基礎となってきた。政府は04年度の国立大学法人化を機に毎年減額し、この10年間で約1割減った。

しかし、大学予算全体はそれほど減っていない。政府は交付金を減らす代わりに、公募方式で研究者に資金獲得を競わせる「競争的研究費」を増やしてきた。本質にあるのは研究費不足ではなく、もっと構造的な問題とみるべきだ。

ひとつが研究者の高齢化だ。ノーベル賞級の独創的な成果は若い頭脳から生まれやすい。1980年代、大学では40歳未満の若手教員が4割を占めたが、いまは25%にまで下がった。代わりに50?60代が半数近くを占める。産業界などでは崩れてきた年功序列が、大学ではいまだに残ったままだ。

政策も失敗が続いた。文部科学省は博士号をもつ若手を任期付きで雇用する「ポスドク」を増やしたが、任期後の就職先がなく、収入や身分が不安定な「高学歴ワーキングプア」と呼ばれる若手研究者が増えてしまった。

閉塞感を打ち破るには、若手を積極的に登用する政策が欠かせない。政府は科学研究費補助金を若手に重点配分したり、国のプロジェクトで登用したりする制度を始めたが、これだけでは足りない。

各大学が若手に責任あるポストを用意し、意欲を引き出す改革が不可欠だ。企業の研究との兼業を認める「クロスアポイントメント」という制度も活用すべきだ。

企業の資金生かせ

研究費を国だけに頼るのではなく、企業などから受け取れるように「稼ぐ力」もつけるべきだ。

日本は欧米に比べ産学共同研究が大幅に少なく、金額ベースでは米国よりも1桁少ない。連携を仲介する専門人材を増やしたり、企業の設備を借りたりすることで共同研究を増やす余地は大きい。

研究評価の方法も見直しが要る。公募型の研究が増え「数年先に実用化が見込める研究ばかりが評価される」との声があがる。実用性が不透明な基礎研究はさらに資金を得にくくなる心配がある。

研究の多様性を保つには、研究費を配分する日本学術振興会などの役割が重くなる。欧州では「経済効果は基準に含めない」「論文の本数だけでは評価しない」などと、10年単位の長い目で研究の価値を評価する例が増えている。日本でも参考にしたらどうか。

政府の総合科学技術・イノベーション会議は昨年度から5年計画で始めた科学技術基本計画に数値目標を盛った。大学についても「40歳未満の若手教員を3割にする」「企業などからの資金調達を5割増やす」などと掲げた。

それらの達成に向け、政府が細かく指示を出し、研究活動を縛っては、かえって大学の活力をそぐ。大学の自発的な改革を加速させるときだ。
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2017年04月15日

[日経新聞] 無人運転実現へ安全徹底を (2017年04月15日)

遠隔監視システムで制御し、ドライバーが乗っていなくても走るタイプの自動運転車の実用化に向け、警察庁が公道での実証実験を広く認めることを決めた。

モニターなどで車の周囲の状況を十分把握できる。車両との間の通信に異常があれば安全に停止する。こうした基準を設け、これを満たした企業や研究機関に対して警察署が実験のための道路使用許可を出す仕組みにする。

自動運転が実現すれば、交通事故の大幅な減少や渋滞の解消をもたらす。また無人運転の技術は、運送業界などでのドライバー不足を補い、過疎地での高齢者の足となる無人タクシーや無人バスの開発につながる可能性がある。

警察庁によると、欧米での自動運転の実験はドライバーが乗車する方式がほとんどで、遠隔制御の事例は少ないという。日本ではIT(情報技術)関連企業などが遠隔操作による無人運転の実用化を目指している。

公道での実証実験のルールが定められたことで、実際の交通環境のなかで走行データやノウハウの蓄積ができるようになる。開発を目指す企業などが積極的に参画し、技術の進歩が加速することを期待したい。

ただ公道実験に際して、最大の「基準」は安全の確保であることを忘れてはならない。深刻な事故が起きれば、自動運転の普及そのものに大きなマイナスとなる。

基準案でも、事故や故障があった場合は現場に急行できる態勢をとることや、消防への実験資料の提出、地域住民への事前説明などを求めている。当然のことであろう。安全対策の徹底こそが自動運転への近道であることを、関係者は改めて肝に銘じてほしい。

遠隔制御で走る自動車には、通信を乗っ取られて犯罪やテロ行為などに悪用される懸念もある。公道での実証実験などで開発を後押しすることはもちろん重要だが、将来に向けたシステムや制度上の課題について、国は検討を急ぐ必要がある。
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