2017年05月26日

[日経新聞] 農協は金融依存を改め本来の姿に戻れ (2017年05月26日)

政府は全国農業協同組合中央会の権限縮小、全国農協連合会の事業見直しといった農協改革を打ち出した。改革の主眼は、農協を農家の経営改善や農業生産の拡大を支援する本来の姿に戻すことにある。そのためには農家以外の組合員の拡大や、肥大化した金融事業の修正を棚上げしてはならない。

農林中央金庫は全国に600超ある地域農協に対し、2019年5月までに信用(銀行)事業についての方針を示すよう求めた。

政府・与党は14年6月にまとめた農業改革で、地域農協が手掛ける信用事業をJAバンク法の規定に基づいて都道府県の上部機関や農中に譲渡し、経営資源を農協本来の経済事業に振り向けることを促している。

ただ、農中が農協に示した選択肢は事業譲渡だけでなく、事業を残したまま周辺の農協と合併して財務基盤を強化する対応、さらには現状維持も含まれる。

これまで金融事業を切り離した農協は3つにすぎない。残る農協も多くは現状維持を模索している。信用、共済(保険)という金融事業抜きで経営は成り立たないと考えるからだ。

農協の組合員は15年度で1037万人と1985年度に比べ3割近く増えた。准組合員と呼ばれる非農家組合員が2.3倍に拡大し、全体の6割弱を占めるようになったからだ。農中に集まる貯金の残高は100兆円に迫り、規模でメガバンクと肩を並べる。

農協は農家の組合だからこそ生損保、銀行兼業などの特権が認められている。非農業者を顧客に金融事業に注力する姿は農協の設立目的とかけ離れている。少なくとも准組合員や組合員以外の利用が、正組合員(農家)を超えないようにすべきだ。

規制改革推進会議の農業部会がこれまで提言した、准組合員の利用規制や信用事業を手掛ける農協の削減案はどれも農協の抵抗で実現していない。

准組合員の拡大に歯止めをかけ、金融事業に依存しすぎる農協の実態を是正することこそ農協改革の本丸といえる。

農協による農業向けの融資残高は減少傾向にある。一方で、日本政策金融公庫や地銀などは農業向けの融資でシェアを伸ばす。農協は金融事業に固執しながら、農業の資金需要に応える努力を怠っているのではないか。農協の金融事業も農家のためにある。
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[日経新聞] 見通し甘すぎる米予算教書 (2017年05月26日)

トランプ米政権が2018会計年度(2017年10月?18年9月)の予算教書を議会に提出した。選挙公約のインフラ投資や大型減税を盛り込んだが、その財源は甘い成長見通しや実現性に乏しい歳出削減案をベースにしており、問題が多い。

政権発足後初となる予算教書は議会が決める予算のたたき台になるものだ。選挙公約通り、減税やインフラ投資で経済を活性化させる考えを示したほか、国防費の増額も盛り込んだ。一方、低所得者向け支援や対外援助予算などを削減するとしている。

減税やインフラ投資の拡大という方向自体は間違っているとはいえないものの、財源についての疑問は解消されていない。

予算教書の基本的な考え方は、減税などの経済活性化策により年3%の成長を実現することで財政赤字の拡大は防げるというものだ。ただ、政権の成長率見通しは独立機関の米議会予算局(CBO)などに比べて1ポイント以上高く、楽観的すぎるとの見方が多い。

歳出削減の中身についても問題がある。

米国も日本と同様、高齢化に伴う社会保障費の膨張を抑えることが求められているが、高齢者医療や年金には原則的に手をつけない方針。その一方で、低所得者向けの医療支援や生活保護には大胆に切り込む姿勢を示している。

福祉のムダは減らす必要があるが、削減対象としてどこまで優先順位が高いのか、予算教書で示したほど巨額の削減が可能なのか、など疑問点は多い。

対外支援や国際機関への拠出金が削減対象とされているのも気になる点だ。米国が世界で果たすべき役割に消極的になれば、米国の影響力をそぐことにもなる。

楽観的な経済見通しや大規模な福祉予算の削減を含む予算教書の内容には、野党・民主党だけでなく与党・共和党の議員からも批判的な声が出ている。その意味では実現性に乏しい予算教書ともいえるだろう。
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2017年05月25日

[日経新聞] テロとの戦い、結束を新たに (2017年05月25日)

英マンチェスターのイベント会場を狙った自爆テロは死者22人、負傷者59人の大惨事になった。同国で起きたテロとしては、52人が死んだ2005年のロンドン連続爆破事件以来の規模である。メイ首相はテロ警戒水準を5段階中で最高の「重大」に引き上げた。

会場では米国の人気歌手のコンサートが開かれており、8歳の少女を含む子供が多数、犠牲になった。無辜(むこ)の人を非道な暴力で無差別に殺傷したテロリストを断じて許せない。

今週末にイタリアで開く主要国首脳会議(G7サミット)は、治安情報の共有など結束を新たにする必要がある。英政府は欧州連合(EU)との離脱交渉を始めるが、テロ対策で両者が連携を緊密にするのは当然だ。

過激派組織「イスラム国」(IS)がインターネットで犯行声明を出した。英当局は自爆犯のほかに関わったグループがいる可能性があるとみている。第2、第3のテロへの備えが要る。

英国は大陸欧州と海で隔てられているうえ、旅行者が旅券審査なしで国境を越えられるシェンゲン圏に入っていない。銃器類が容易に持ち込めず、独仏やベルギーなどに比べればテロ封じ込めに成功してきた印象がある。当局は過去4年に13件を未然に防いだ。

ただ「抑止には限界がある。問題はテロが起きるかではなく、いつ起こるかだ」と警告してもいた。3月にはロンドンの議会議事堂近くでイスラム過激派の男が車を暴走させ、4人が死んだ。

今回は総選挙の選挙戦の最中だった。テロ犯は厳戒態勢のロンドンを避け、人が集まるのに警備をしにくいソフトターゲットを狙った。周到な準備がうかがえる。空港や駅などに限らず、あらゆる場が標的になり得る。

テロを防ぐ即効薬はない。各国間で情報を密に交換し、要監視者を見張り、資金の流れを断つ。それでも防ぎきれまいが、暴力と恐怖に屈するわけにはいかない。日本人にとっても人ごとでない。
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[日経新聞] 米中東政策の転換に長期戦略はあるか (2017年05月25日)

トランプ米大統領の就任後初めての外遊先は中東だった。サウジアラビアではイスラム過激派の掃討への結束とイランに対する圧力強化を訴え、イスラエルでは中東和平の実現に意欲を示した。

サウジとイスラエルはオバマ政権の時代に米国との関係が冷え込んだ。トランプ大統領が最初にこの2国を訪れ、イランとの対決姿勢を明確にしたことは、オバマ政権時代からの中東政策の転換を意味している。

中東の安定に米国の関与は必要だ。ただし、複雑に絡み合う問題の解決には長期的な戦略が求められる。バランスを欠く性急な介入は、かえって中東の亀裂を広げることになりかねない。

トランプ大統領は選挙運動の期間中イスラム教を敵視する発言を繰り返した。就任後には、イスラム教徒の多い中東・アフリカ諸国からの入国制限措置を決め、国内外で反発を招いた。

サウジにはイスラム教の聖地メッカがある。最初の訪問先として選んだのはイスラム世界との和解を訴える狙いがあるのだろう。

トランプ大統領はサウジで、イスラム諸国の首脳らを前に、イスラム過激派への対処を目的とする新たな安全保障協力の枠組みを提唱した。拡散するイスラム過激派のテロに立ち向かうにはイスラム諸国の関与が不可欠で、視点は評価できる。ただ、問題もある。

トランプ大統領は「イランを孤立させ、テロ資金を遮断する」と強調した。大統領の演説に招かれたのはイスラム教スンニ派の国々だ。シーア派のイランと対峙するスンニ派連合の結成が安保協力の狙いだとすれば、宗派対立をあおりイスラム世界の分断を加速することになりかねない。

トランプ大統領はイスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナ自治政府のアッバス議長にそれぞれ会い、中東和平の仲介に意欲を示した。パレスチナ問題は不安定な中東情勢の核心にある。歴代の米政権が仲介に取り組みながら挫折を繰り返してきた。大統領の意気込みに期待したい。

だが今回の訪問では和平の具体的な構想や手順は示されなかった。トランプ氏はイスラエル寄りとされる。独立したパレスチナ国家がイスラエルと共存するという従来の和平原則にこだわらない考えを示したこともある。大切なのは公正な仲介者としての立場だ。腰を据えた取り組みを求めたい。
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2017年05月24日

[日経新聞] なお残る「共謀罪」法案の懸念 (2017年05月24日)

組織犯罪処罰法の改正案が、与党などの賛成多数により衆院本会議で可決された。テロや組織犯罪を実行前の計画段階で罰するため、「共謀罪」の構成要件を改めたテロ等準備罪を新設するというのが大きな目的だ。

この法案をめぐっては、「処罰の対象が不明確で、恣意的に運用されかねない」「思想や内心の自由を侵す」といった懸念がかねて指摘されている。衆院での審議でもこうした点はなお解消されておらず、国民が法案を理解しているとは言えないのが現状だろう。

そのような法案が、先立つ衆院法務委員会に続き、本会議でも与党側が押し切る形で採決されたことは残念だ。参院では、政府・与党は法案の成立をいたずらに急ぐのではなく、十分に時間をかけて繰り返し丁寧に説明を尽くす必要がある。

「共謀罪」は国際組織犯罪防止条約を締結するための前提として、各国に整備が義務付けられている。組織犯罪の封じ込めは国際社会の大きな課題であり、条約を締結する意義や、そのためにテロ等準備罪を導入する必要性自体は理解できる。

だがこれまでの衆院の審議では、政府側の答弁は一貫性を欠いたり、根拠があいまいなままに強弁したりといった場面が目立った。野党側の追及が理念的だったこともあり、議論がかみ合わないやり取りも多かった。

それでも議論を積み重ねることで、疑問点や課題は徐々に集約されつつある。仮に法案が成立した際には、国会での審議が運用面での大きな指針や歯止めにつながることも忘れてはならない。

政府・与党には、「想定時間に達したから採決する」という態度ではなく、改めて反対の立場の意見を真摯に聞き、受け止めていく姿勢が求められる。

議論のなかで必要があれば、処罰範囲の明確化や対象犯罪のさらなる削減など、条文の見直しをためらうべきではない。国会のあり方が問われている。
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[日経新聞] 小粒で先送りが多い規制改革答申を憂う (2017年05月24日)

規制改革は企業による新たな商品やサービスの供給を後押しし、技術革新を通じて生産性を高める。成長戦略でもっとも大事な政策のひとつである。

残念ながら規制改革推進会議がまとめた今年の答申は小粒で、懸案の先送りがめだつ。政府は規制改革の推進体制も立て直す時だ。

介護の分野では、介護保険サービスと保険外のサービスを組み合わせる「混合介護」というやり方がある。

現在でも制度上は認められているが、厚生労働省が保険サービスと保険外サービスの明確な区分を求めているため、事業者が柔軟なサービスを提供できずにいる。

答申は自治体や事業者向けのわかりやすい通知(技術的助言)を出す方針を示した。ただ、その内容は「現行ルールの整理について検討し、結論を得る」と事実上先送りしているうえ、実施時期も「2018年度上期中に速やかに措置」とスピード感を欠く。

事業者の創意工夫で多様なサービスが生まれれば、収益機会が増えて介護人材の処遇も改善しやすくなる。そんな混合介護の効果の大きさからすると、答申の内容は期待外れというほかない。

混合介護をめぐっては「高所得者ばかりが恩恵を受ける」という厚労省や与党内の慎重論があったが、その壁を破れないところに事態の深刻さがある。

民間の有識者が大胆な提言をぶつけ、最後は閣僚も交えた交渉で政治決着を図る。そんな医療や雇用の「岩盤規制」改革でみられた場面は今回なかった。

答申は、行政手続きコストの2割削減、人手不足が目立つ労働基準監督署の一部業務の民間委託も盛った。地味だが成果である。

しかし、一般のドライバーが自家用車で利用客を送迎するライドシェア(相乗り)については今後認める範囲を通達で明確にする方針にとどめた。改革の入り口にたっても、そこから大きく突破できずにいるのが現状ではないか。

全体として、規制官庁と規制改革推進会議の事務局が合意できる範囲で小さな案を重ねた「官僚主導」の印象は否めない。

地域限定で規制改革をする国家戦略特区でも、ライドシェアや漁業生産組合の特例など、用意したメニューの実績がゼロという例が判明した。規制の本質は細部に宿る。政府には改革の徹底とそのための体制整備を厳しく求めたい。
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2017年05月23日

[日経新聞] 「TPP11」を含め通商協議の同時加速を (2017年05月23日)

米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)参加11カ国が閣僚会合を開き、協定の早期発効に向けた選択肢の検討を11月までに終える方針で一致した。

TPPは高水準の貿易・投資ルールであり、米国が離脱しても意義は大きい。日本こそが指導力を発揮し、発効の道筋をできるだけ早く整えなければならない。

11カ国は「TPPの利益を実現する価値」を再確認した。各国の思惑が微妙に異なる中、ひとまず結束できた点は評価できる。

離脱を表明した米国が復帰できるように配慮しつつ、TPP参加国の拡大に道を開く方針を示したのも妥当だ。ただ、11カ国によるTPP発効の具体的な手順を示すには至らなかった。

日本やオーストラリアなどは、米国を含む12カ国で合意した内容は実質的に再交渉せず、発効条件など技術的な手直しだけで早期発効にこぎつけたい考えだ。

これに対し、ベトナムやマレーシアは、米国が離脱するのであれば市場開放の合意内容の一部を再交渉したい意向とされ、日本との間で溝がある。

11カ国は7月に日本で首席交渉官の会合を開くという。「TPP11」を漂流させず、11月の次の閣僚会合で合意できるように議論を主導するのが日本の責務だ。

日本はTPPのほか、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉、日中韓など16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉にあたっている。米国とは経済対話も始まった。

自由貿易のけん引役として日本はTPPを含む3つの協議すべてを同時に加速すべきだ。日米対話もしっかりと準備してほしい。

大詰めを迎えている日・EU交渉が妥結すれば、保護主義の広がりに一定の歯止めをかけられる。日本との2国間協議に意欲的な米国をけん制できる効果もある。

RCEP交渉では、日本は自由化の度合いの高い合意を求めている。質よりも早期合意を優先しがちな東南アジアの国々には、人材育成などの支援を約束しながら理解を求めていく必要がある。

日米間では、世耕弘成経済産業相がライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と初めて会談した。自由貿易協定(FTA)、農業、自動車といった個別の話は出なかったというが、先行きの楽観は禁物だ。米側のあらゆる出方を想定して対話に備えるべきだ。
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[日経新聞] 中東に欠かせぬイランの役割 (2017年05月23日)

イラン大統領選挙で現職のロウハニ師が再選を決めた。国民は米欧との関係改善を掲げる大統領の対外融和路線を支持した。

中東の安定には地域大国であるイランの役割が欠かせない。ロウハニ大統領は国民の期待に応え、引き続き国際社会がイランに抱く懸念の払拭に努めてほしい。

ロウハニ政権は2015年、米欧やロシア、中国との間で、イランが核開発の制限を受け入れる見返りに、米欧がイランに科す経済制裁を解除することで合意した。

今回の選挙では核合意の評価が争点になった。核開発をめぐる経済制裁は解除されたものの、テロ支援などを理由に米国が個別に続ける制裁のために、外国企業による投資や貿易再開の動きは鈍い。

これに伴う経済回復の遅れを批判する保守強硬派のライシ師との事実上の一騎打ちになったが、ロウハニ大統領が大差をつけた。

ロウハニ大統領の圧勝には、長い国際的な孤立から抜け出たいイラン国民の願いが込められていると言えよう。

国際社会もこの結果を正面から受け止めるべきだ。中東は今、混迷を深めている。シリアやイエメンの内戦収拾やイスラム過激派の掃討にイランの関与は不可欠だ。

ロウハニ師が再選を果たした直後、トランプ米大統領が就任後初めての外遊先として、サウジアラビアを訪問した。50カ国以上のイスラム諸国首脳を前に、「イランを孤立させなければならない」と演説した。

イランを再び孤立に追い込むことは得策ではない。中東の問題解決にどう巻き込むかを考えるべきだ。ロウハニ政権が窮地に陥り、米欧に敵対的な勢力が台頭すれば、域内の核開発競争に火がつき、緊張が一気に高まりかねない。

重要なのは米欧とイランの双方が核合意を順守し、国際社会がロウハニ政権との関係を維持することだ。そのためにはまず、イランが弾道ミサイル開発やテロ組織への支援について、疑念を持たれない行動を取ることが必要である。
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2017年05月22日

[日経新聞] 日本のエレクトロニクスは復活するか (2017年05月22日)

自動車と並んで産業界の2本柱だった電機産業だが、昨年はシャープが台湾の鴻海精密工業の傘下に入り、今は東芝が巨額の赤字に苦しんでいる。日本の電機は復活できるだろうか。

こうした厳しいニュースが前面に出る中で意外かもしれないが、実は電機全般の業績はまずまずだ。正式の決算発表ができていない東芝を除いたベースで、上場電機メーカーの2017年3月期の合算純利益はその前の期に比べ1千億円以上の増益になった。

円高が進む逆風のもとでの増益達成であり、コスト削減や事業の絞り込みなど経営努力の成果として一定の評価ができるだろう。

いま有力メーカーの多くが力を入れるのは部品や製造設備のような中間財・生産財だ。

キヤノンで最も伸びの目立つ事業は韓国サムスン電子を主力顧客とする有機ELパネルの製造装置だ。パナソニックは車載部品を成長戦略の柱として位置づけ、米テスラなどに供給する電気自動車(EV)搭載用の2次電池で大型投資を展開する。

海外の戦略的顧客と太いパイプを築き、彼らが必要とする技術を供給する、いわば「裏方」役に徹する事業モデルである。

逆にかつて日本勢が得意とした自ら最終製品を企画・生産し、世界の消費者に売り込むビジネスはすっかり影が薄くなった。米国で人気の「スマートスピーカー」の主役はアマゾン・ドット・コムやグーグルなどのITの巨人であり、日本企業の名前が見当たらないのはやはりさみしい。

「裏方」モデルも悪くないが、それと同時に「ウォークマン」やVHS型VTRのような世界的ヒット商品の再来を期待するのは無いものねだりなのだろうか。

失敗に学ぶことも重要だ。東芝の今の経営トップは医療機器事業の出身であり、規模も時間軸も違う原子力発電事業について十分な知見があるとは見えない。広げすぎた事業範囲を絞り込み、焦点を絞った専業企業として再出発するという選択肢もある。

「日の丸」への過度のこだわりもよくない。鴻海傘下のシャープが復調の手掛かりをつかんだのに対し、政府系ファンドの主導で発足したジャパンディスプレイは経営の混乱が長引いている。事態が行き詰まったときには、自前主義を捨て、外部の資本や人材を受け入れるのも一つの方策である。
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[日経新聞] 改善が必要な高齢者がん治療 (2017年05月22日)

厚生労働省は高齢がん患者の診療指針づくりに乗り出す。がん患者は高齢化が進み、約4割が75歳以上だ。薬の効果がはっきりしないまま、副作用に悩みながら治療を受け続ける例も多い。医療費が増える一因ともなっており、指針の作成は意義があろう。

同省は今年度から6年間のがん対策の方向を示す「第3期がん対策推進基本計画」に、指針づくりを盛り込む方針だ。

がんは種類や進み具合の診断結果に応じて最適と考えられる「標準治療」をまず実施するのが一般的だ。しかし、根拠となる臨床研究の多くは若い患者が対象だ。

高齢患者にとって標準治療はリスクが大きい場合もある。生活の質(QOL)を考えて積極的に治療しない選択肢もありうる。

経験豊富な医師は患者の表情によって治療内容を変えるというが、限界がある。科学的に根拠のある判断基準を設ければ、診断や治療の質の底上げにもつながる。

それには国立がん研究センターや学会の協力を得て治療データを集め、副作用や効果を丁寧に調べる必要がある。

ただ、結果をがん治療の現場にそのまま当てはめられるとは限らない。余命を延ばしたりQOLを高めたりできる可能性が低い治療法を、医療保険でどう扱うかなど慎重な議論がいる。

がんの症状の表れ方は千差万別だ。治療を続けるか否かには一人ひとりの死生観も絡む。医師は指針をもとに、体の状態に応じた選択肢を十分に説明し、患者や家族の納得を得なければならない。

がんは通院などの都合から、住まいの近くで治療を受ける場合が多い。中小の病院が、がん治療に重点を置く拠点病院と緊密に連携する仕組みも整える必要がある。

将来的にがんの性質や薬への反応を判定できる遺伝子解析技術が進めば、年齢と無関係に患者にもっとも適した治療を提案できるようになるだろう。日本の取り組みは、これから高齢がん患者が増える他国のモデルにもなるはずだ。
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2017年05月21日

[日経新聞] 保育拡充で仕事と子育ての両立支えよ (2017年05月21日)

働きながら、子育てしたい。そう願う人にとって、保育サービスの不足は大きな足かせだ。待機児童の解消はなお見通せず、若い世代の将来への不安はつきない。

政府は6月に待機児童解消に向けた新しい計画を公表する。仕事と子育ての両立を支える、実効性の高い道筋を示してほしい。

政府は2013年に、17年度末までの待機児童解消を掲げ、対策を急いできた。民間の力を生かした企業主導型保育事業など新たな仕組みも設け、保育の受け入れ枠を大きく増やしたが、働きたいという人が多く、待機児童の数は高止まりのままだ。もう一段の強い取り組みが要る。

保育拡充は、女性の就労を後押しするだけでない。安心して両立できると分かれば、出産をためらってきた人の不安は薄れるだろう。経済的な理由で結婚に踏み切れない人にとっても、共働きをしやすくなることは追い風だ。少子化対策としても意義がある。

見直しで問われるのは、安倍政権の本気度だ。保育拡充を未来への投資と位置づけ、説得力ある財源を示すことが欠かせない。

日本の社会保障は、高齢者向けに偏りがちだ。効率化で給付の無駄を省くとともに、一定の資力がある高齢者には自己負担を増やしてもらう。こうした工夫で、子どものために財源を振り向ける議論を始めなければならない。これにより将来世代が増えていけば、社会保障制度の安定性を高めることができる。

気になるのは、こうした議論なしに、従来の延長線上での予算確保に終始してしまうことだ。

例えば、企業が負担している子ども・子育て拠出金や、児童手当の見直しで財源を確保するという考え方もある。これ自体は一考に値するだろうが、いずれも子ども関連の枠から出ていない。それだけで、十分な対策を打ち出すことができるだろうか。

少子高齢化が進む日本では、働きながら子どもを産み、育てやすい社会に変えていくことが欠かせない。両立を阻む壁をいかに低くしていくか、財源や制度はどうあるべきか。グランドデザインを示すことができれば、若い世代が未来に明るい展望を持てるようになる。

そしてこのことが、人口減少の圧力を緩和し、日本経済の持続的な成長につながる。官邸が強く主導して取り組むべきだ。
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[日経新聞] 銀行は収益構造の改革を急げ (2017年05月21日)

銀行の2017年3月期決算が出そろった。日銀が昨年2月に始めたマイナス金利政策が通期で響く最初の年度決算は、地方銀行の収益環境の厳しさが改めて鮮明になった。メガバンクは比較的堅調だったが、新たな成長の見取り図が描けているとは言いがたい。

大手銀の前期の合計純利益は3年連続で減ったが、減益率は3%にとどまった。マイナス金利の影響で国内の貸出業務の利ざやが縮小した分を海外での収益で埋め合わせた。

最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の純利益は9264億円。4期連続で1兆円前後の利益を計上した。傘下ノンバンクで500億円の損失が生じたが、米投資銀行やタイ子銀行が好調だった。三井住友FGは7千億円、みずほFGは6千億円と、計画並みの純利益は確保した。

リーマン危機下の08年度に45件あった国内上場企業の経営破綻は、26年ぶりにゼロになった。新規の大型の経営不振企業への対応も事実上、東芝1社に限られた。

だが現状に安住していては日本経済の活性化に貢献するという銀行の使命は果たせまい。3メガ銀行を合わせた現金・預け金は2割以上増えた。貸し出しを増やせず、顧客に適切な投資商品を提示していない現状を端的に示す。

メガバンクはこれまで相乗効果が不十分だったグループの銀行・証券・信託の力を結集し、収益の構造改革を加速させるべきだ。ITを活用したフィンテックへの取り組みの強化も欠かせない。

一方、海外展開が難しい地銀合計の純利益は11%減った。地元経済の地盤沈下で新規の貸出先は乏しい。利回りを稼ぐため外債投資に資金を振り向けたが、米国債の価格下落で損失を被る地銀が続出し、八方ふさがりの感もある。

スルガ銀行のように戦略を工夫することで連続最高益を計上する地銀も出てきている。業界内では再編や大胆な提携が増えてきた。あらゆる選択肢を視野に、生き残りの方策を模索する時期だ。
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2017年05月20日

[日経新聞] 2%成長に慢心せず改革を (2017年05月20日)

内閣府が発表した1?3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質ベースで前期比0.5%増、年率換算で2.2%増となった。

0%台後半といわれる潜在成長率を大きく上回る成長を達成した。政府はこれに慢心せず、日本経済の実力を高める構造改革を断行していかねばならない。

1?3月期の日本の実質成長率は、米国やユーロ圏、英国を上回った。約11年ぶりに5四半期連続のプラス成長となり、ひとまず景気の足どりはしっかりしていると評価できる。

経済成長の中身も比較的よい。0.5%の実質成長率の内訳をみると、0.4%分が内需、残りの0.1%分が外需と、バランスがとれている。

個人消費は前期比で0.4%増えた。生鮮食品の価格高騰がおさまったほか、スマートフォン(スマホ)や衣服の消費が増えた。

輸出は相変わらず堅調だ。中国経済をはじめとして世界経済の回復基調が強まっている背景がある。特にアジア向けの半導体製造装置や電子部品、中国向け自動車部品などが増えている。

気になるのは、賃金総額を示す雇用者報酬が実質ベースで前年同期比0.5%増と、伸びが大きく鈍化した点だ。

雇用情勢の改善は続いているものの、1人当たりの賃金が伸び悩んでいるからだ。賃金が低迷したままだと、個人消費の持続力に不安を残す。仮にエネルギー価格が上昇し、電気代やガス代などへの転嫁が進めば、家計の実質的な購買力が低下し、個人消費が下振れするリスクにも注意しなければならない。

企業は成長力を高め、持続的な賃上げや攻めの投資に踏み込んでほしい。政府は構造改革の加速でその環境を整える必要がある。

最近の消費低迷は、若年層を中心とする将来不安が一因でもある。持続可能な社会保障制度をつくる改革や、骨太な労働市場改革から政府は逃げてはならない。
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[日経新聞] 台湾は改革推進で中国の風圧しのげるか (2017年05月20日)

台湾の蔡英文総統が就任して1年がたった。社会的少数派への目配りや「脱原発」などリベラルな改革を打ち出す一方、外交・安全保障の面では現実主義的な構えで中国との間合いをはかり緊張の高まりを防いできたといえる。

ただ、中国の圧力もあって経済は停滞感を払拭できていない。この1年で政権への支持率は大きく下がった。残る3年の任期中に改革をどこまで軌道に乗せ、経済を立て直せるかが問われる。

内政ではリベラルな路線が鮮明だ。蔡総統は昨年夏、先住民が不公平な待遇を受けてきたとして、歴代の総統のなかで初めて正式に謝罪した。同性婚を法的に認める民法改正案を立法院(国会に相当)に提出し、原子力発電所の運転を2025年までにすべて停止するための法改正を実現した。

アジアでは異例なほどにリベラルな政策で、強権的な中国とは対照的な存在感を世界に発信する戦略と評価できよう。

外交・安保では現実主義的な姿勢が目につく。緊張が高まらないよう中国の圧力に過敏に反応することを控える一方で、防衛力の充実をすすめていく方針だ。

蔡総統に「一つの中国」の考え方を受け入れるよう求めている中国は、経済、外交、軍事といったさまざまな角度から圧力を強めている。対して蔡総統は「一つの中国」を受け入れない考えを繰り返し表明しており、中台関係はかなり冷却化した。

世界保健機関(WHO)のような国際的な枠組みから台湾を排除しようとする中国の取り組みは、グローバルな課題への対処にマイナスだ。軍事的な圧力は台湾の有権者の中国への反発を強めるだけでなく、東アジアに緊張をもたらしかねない。より柔軟な台湾政策を、習近平国家主席は模索する必要があるのではないか。

台湾の外交・安保では米国がカギを握る。トランプ米大統領はこのところ、就任前とは打って変わって対中融和姿勢を鮮明にしている。蔡総統は米国から先進的な武器・装備を購入したい意向だが、トランプ政権が中国に過度に肩入れすれば困難の度は増す。

蔡総統にとって幸いなのは、政権への支持率は下がっているのに最大野党の国民党が党勢を回復できていないことだ。中間選挙にあたる来年の統一地方選までに、改革の実行と経済の立て直しに一定の成果をあげたいところだ。
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2017年05月19日

[日経新聞] 獣医学部新設の経緯を示せ (2017年05月19日)

学校法人「加計学園」(岡山市)が国家戦略特区に獣医学部を新設する計画をめぐり、民進党が首相官邸の圧力をうかがわせる文書を入手したとして追及している。政府は否定するが、特区での運営事業者の選定には不透明な部分も多い。政策判断の経緯を明らかにしていく必要がある。

民進党は17日、文部科学省が作成したとする文書を国会で明らかにした。加計学園の2018年4月の獣医学部の新設をめぐって、国家戦略特区を担当する内閣府側が「官邸の最高レベルが言っていること」「総理のご意向だ」と発言したと記録されている。

菅義偉官房長官は記者会見で、安倍晋三首相をはじめ官邸側の関与を否定し「首相は一切指示をしていない。こんな意味不明のものについて、いちいち政府が答えることはない」と強調した。

現時点で文書の真偽は不明だが、文科省や内閣府は折衝の有無や発言内容を早急に確認すべきである。官邸から直接の指示があったのか。内閣府側が首相の意向を忖度(そんたく)したのか。それとも学部新設に消極的な文科省を動かすために「官邸の印籠」を使ったのか。事実が知りたい。

首相は加計学園の理事長との個人的な関係を問われて「友人だから会食もゴルフもする」と説明しつつ、事業への協力は否定している。野党は獣医学部の52年ぶりの新設が急に実現したのは不自然だと訴える。特区の指定を受けて愛媛県今治市は加計学園への建設用地の無償譲渡を決めた。

国家戦略特区は、地域限定で規制を緩和して経済活性化を目指す仕組みだ。岩盤規制に風穴を開ける意味は大きいが、運営事業者の選定で不公正な政治的配慮が働いたとしたら問題である。

今国会では学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地の売却問題も焦点となっている。財務省は交渉経緯の調査に後ろ向きな態度をとり続けている。政府は様々な疑惑を自ら払拭する姿勢で事実を明らかにしてもらいたい。
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[日経新聞] トランプ大統領はまっとうな政権運営を (2017年05月19日)

米政権のごたごたが収まる気配をみせない。不安定な政治はマーケットにも動揺を与えており、影響は米国内にとどまらない。トランプ大統領は威圧的な政権運営を改め、政権中枢とロシアとの不明朗な関係などの解明に協力すべきだ。このままでは政権の遠心力が加速するばかりである。

選挙戦以来、物議を醸し続けるトランプ氏だが、9日に米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官を突然、解任して以来、政権への批判は野党の民主党だけでなく、与党の共和党でも目立ち始めている。

解任に先立ち、トランプ氏は自身がFBIの捜査対象になっているのかどうかをコミー氏にじかに尋ねたそうだ。解任は、ロシアが昨年の米大統領選に関与したとされる疑惑を封印するための捜査妨害との見方が出ている。

ギャラップ世論調査によると、トランプ氏の支持率は14日時点で38%と政権発足以来の最低タイを記録した。低支持率が続けば、来年ある議会の中間選挙をにらみ、与党でも「トランプ離れ」の動きが出てこよう。そうなれば、政権はますます弱体化する。

政権がうまく機能しないせいで、税制改革などの課題の多くは放置されたままだ。いま必要なのは、さまざまな疑惑をきちんと解明し、政策遂行に専念できる体制をつくることだ。

その意味で、司法省が強力な捜査指揮権を持つ特別検察官の設置を決め、コミー氏の前任の長官だったロバート・モラー氏を任命したのは妥当な判断だ。12年にわたり長官を務めた同氏には与野党とも信頼感を抱いている。

次にトランプ氏が取り組むべきは、政権内の指揮系統をはっきりさせることだ。側近同士の足の引っ張り合いによって、ものごとへの対応がばらつく場面もあり、政権の方向性がわかりにくい。

中央省庁の中枢がほとんど空席なのも、政策遂行の停滞を招いている。500以上ある政治任用ポストのうち、8割超が議会の承認待ちどころか、指名もされていない。行政府の体をなしていないといって差し支えあるまい。

世界のリーダーたるべき米国の政治の機能不全は、アジアの安全保障にも影を落としかねない。トランプ氏はあつれきを生む言動を慎み、政治を前に動かすことを考えてほしい。言い換えれば「まっとうな政権運営」である。
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2017年05月18日

[日経新聞] 日銀の金融政策「出口」の議論は丁寧に (2017年05月18日)

日本銀行が大規模な金融緩和を始めて4年以上たった。2%の物価安定目標はまだ達成していないが、異例の金融緩和の出口を探る時はいずれ来る。その日に備え、政策の効果とコストも含め丁寧な議論をしておく必要がある。

出口の議論でまず必要なのは、きちんとした整理だ。第1は、金融緩和を縮小し、政策金利を上げて日銀の資産を減らす道筋の議論。第2は、出口で生じる恐れのある日銀の損失の議論だ。

前者については、先行して緩和縮小に動く米国の例などを参考に市場と対話することが肝要だ。現時点では、いつ金利を上げ資産を縮小するか、といった具体的な手順を示すのは難しい。経済・物価情勢を見ながら、適切な時期と手法を日銀は工夫すべきだ。

後者の日銀の損失問題は複雑で、丁寧な議論が必要だ。日銀は国債の発行残高の4割超を保有している。国債を買うためのお金は、主に日銀券の発行と民間金融機関からの日銀当座預金でまかなっている。この当座預金の金利の一部は現在はマイナスだ。

将来、日銀が政策金利の短期金利を上げれば、当座預金の金利も上がる。これに対し、日銀が持つ超低金利の国債はすぐに売れないので、逆ざやになって日銀に損失が生じる恐れがある。

日銀は引当金を積むなどの対応をとってはいる。だが、金利上昇の速度などによっては巨額の赤字が生じ債務超過におちいる恐れがある、といった指摘が民間のエコノミストなどから出ている。

中央銀行には利息のつかない銀行券を発行する通貨発行益があるので、一時的に赤字になっても長い目でみれば利益が出るので収益は回復する。ただ、日銀の赤字が現実のものとなれば金融市場の不安が高まる恐れもある。一時的な財政支援の仕組みを検討する必要があるかもしれない。

日銀の財務への影響は出口の際の経済・金利動向次第で、すべてを想定するのは難しい。それでも、異例の金融政策にコストがあることは念頭におくべきだ。

本質的に重要なのは日本の財政への信認だ。国債の大量購入で日銀の資産が膨張した背景には、財政の健全化の遅れがある。

日銀が国債を買えば財政問題が解決するということはあり得ない。日本経済の持続的成長と財政健全化の道筋を示し国の信用を維持することこそ、最重要の課題だ。
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[日経新聞] 女性宮家を考える契機に (2017年05月18日)

秋篠宮家の長女で、天皇・皇后両陛下の初めての孫に当たる眞子さまが、婚約される運びとなった。お相手は大学時代の同級生で、法律事務所に勤務する小室圭さんである。ともに25歳だ。

国際感覚が豊かで美術にも造詣の深い眞子さまが、よき伴侶を得て新たな人生のステージに立たれる。心からお喜びしたい。

皇室典範の規定により、眞子さまは結婚にともなって皇族の身分を離れる。現在7人いる未婚の女性皇族は、ちかく6人となるわけだ。今回の慶事を機として、皇族数の減少について真剣に向き合うべきだろう。

女性の皇族は医療や文化関連の団体で役職を務めたり、イベントに出席したりして、啓発に当たられている。皇族数の減少で活動に支障が出るようなら、国民と皇室の関係に微妙な影を落としかねない。対処は喫緊の課題だ。

これまで検討がなされてこなかったわけではない。2005年、小泉内閣の有識者会議は皇位の安定的な継承のため、女性・女系天皇や女性宮家を容認するなどの内容を提言した。反響は大きかったが、悠仁さまの誕生で制度改正は見送られた経緯がある。

12年には当時の民主党の野田内閣が女性宮家の創設の論点整理をまとめた。しかし自民党政権になってから議論は停滞している。

そして今春、天皇陛下の退位をめぐる特例法に向けた衆参両院議長らによる国会提言は、女性宮家の創設などを速やかに検討するよう政府に求めた。有識者会議の報告書も、皇族の減少について議論を深めるよう促している。

19日に閣議決定される退位の特例法案は、付帯決議に皇族減少などへの対応をどう盛り込むか、なお調整が続いているという。

退位をめぐる制度設計の過程では、長年にわたる政治の無策を批判する声があがった。皇族の減少に関しても二の舞いを演じることになれば、将来、深刻な事態を招きかねない。強い危機感を持つ必要があろう。
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2017年05月17日

[日経新聞] 米中の動きもにらみ日中関係の改善を (2017年05月17日)

中国が主導する海と陸の現代版シルクロード経済圏「一帯一路」構想を巡る初の国際会議が北京で開かれ、ロシア、イタリア、インドネシア、フィリピンなど29カ国首脳が参加した。経済・政治両面で中国が台頭するなか、日米など主要国が中国との関係をどう調整するのかは重要な課題である。

現代版シルクロード経済圏構想にはもともと、米国が主導する世界秩序を切り崩す狙いがあった。だが、ここに来て中国は米国との連携演出も狙い始めた。

4月、米フロリダ州で習近平・中国国家主席とトランプ米大統領が会談した後、中国は貿易不均衡是正への「100日計画」の一環として米牛肉の輸入解禁、金融面での参入障壁軽減などに応じた。

これを受けてトランプ政権は北京の国際会議に国家安全保障会議(NSC)の幹部らによる代表団を送った。これは北朝鮮の核・ミサイル開発阻止を巡る米中の連携とも関係している。

トランプ政権の発想と行動は従来の米政権とは大きく異なる。それだけに日本としても同盟国、米国との緊密な連携を基本とし、十分な情報収集のうえ、必要に応じて対外政策を調整すべきだ。

その意味で安倍晋三首相が今回、自民党の二階俊博幹事長や今井尚哉首相秘書官らによる代表団を北京の国際会議に派遣したのは評価できる。

二階氏らは16日、北京で習主席と会談し、安倍首相の親書を手渡した。習氏は自身の訪日も含めハイレベルの往来を検討する意向を示した。長く膠着状態だった日中関係には変化の兆しが見える。

今後は昨年、延期された日本での日中韓首脳会談の早期開催、7月にドイツで開く20カ国・地域(G20)首脳会議の際の日中首脳会談、安倍首相の訪中などの調整を進め、関係改善の流れを固める必要がある。

中国主導の国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)への加盟は77カ国・地域となる。その数は日米両国が主導するアジア開発銀行(ADB)を上回る。アジアのインフラ整備への支援はADB、AIIBが共有する目的である。けん制し合うだけではアジアの国々が困惑してしまう。

日米両国はAIIBに参加表明していない。日本は同じ立場の米国と緊密に意見交換しながら運用ルールの透明化を粘り強く求め、建設的な関与を探るべきだ。
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[日経新聞] 大学新入試は何をめざすのか (2017年05月17日)

大学入試センター試験に代わって2020年度に実施する「大学入学共通テスト」の原案を文部科学省が公表した。知識に加え、思考力、判断力、表現力の評価を重視する改革という。新テストの目的と期待される効果を丁寧に説明し関係者の不安を払拭すべきだ。

国語に最大120字の記述式問題を課し、英語では実用英語技能検定(英検)やTOEICなどの民間試験を活用して「書く」「話す」の技能も評価するのが柱。国語の記述問題と英語の民間試験は得点ではなく段階別で評価する。

だが、他科目は数学を除きおおむねマーク式問題で、1点刻みで受験生をふるいにかける。相対評価という幹に、おおまかな到達度評価という枝を接ぎ木したような構造だ。このため、選抜試験としての精度を疑問視する大学関係者もいる。すでに個別2次試験で受験生の思考力を問う記述式問題を導入している有力国立大学が、新テストの国語の記述問題を利用しないといった事態も想定される。

新テストの機能はセンター試験とどこが違うのか。肝心の点が曖昧だ。受験生を選抜する従来のセンター試験の性格を重視するのか、高校の教育課程の達成度を測る資格試験的な役割を持たせようとする改革の第一歩なのか。将来の方向性を明示する責任がある。

そもそも新テストは、高校と大学教育を円滑に接続させるため、(1)1点刻みで合否を判定するセンター試験一発勝負から複数回受験が可能な到達度評価に転換する(2)各大学が記述式問題を含む個別2次試験で丁寧に学力を判定する――という構想から出発した。

文科省は24年度以降、新テストの複数回実施や、地理歴史・公民や理科にも記述式を導入することを検討する。相対評価の性格を薄め、漸進的に到達度評価への移行を目指す方向とみられる。知りたいのは、それをどのような手段と時間軸で実現するかだ。

関係者の理解を得るためにも文科省は、新テストが目指す改革の工程表を早急に示すべきだ。
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