2018年01月23日

[日経新聞] よりよい合意へ建設的な国会審議を (2018年01月23日)

国会は何をするところか。与野党が互いの言い分を宣伝するだけでよいのだろうか。歩み寄れるところは歩み寄り、より幅広い有権者の声を反映した合意づくりをする場でないのか。きのう始まった通常国会が建設的な議論を生み出すことを期待したい。

安倍晋三首相は「働き方改革国会」と銘打った。労働時間よりも成果に重きを置く高度プロフェッショナル制度の創設などを盛り込んだ労働基準法改正案がその柱である。諸外国と比べて低い日本の労働生産性を引き上げるために必要な改革である。

同法案が国会に初めて提出されたのは2015年のことだ。野党の「残業代ゼロ法案」との批判の前に、与党執行部はずっと先送りしてきた。首相は今国会で成立させる方針だ。

では、力まかせに押せばよいのか。そうではあるまい。だからこそ、首相は施政方針演説で「ともに……していこう」と何度も呼びかけたのだろう。

何が変わるのかが実感しにくかった安保法などと異なり、働き方改革はほぼ全ての国民の暮らしとかかわりがある。関連法案には、過労死の温床とされる時間外労働の規制強化も含まれる。

野党も頭ごなしに反対するのではなく、よりよいアイデアがあればぶつけるべきだ。

そのためにも国会審議を活性化させたい。自民党は質問時間の割り振りの変更を主張しているが、野党の発言封じと受け止められるだけだ。昨年はいちどもなかった党首討論の積極活用など論戦力で戦うのが筋である。

ばらばらになった野党のあり方にはさまざまな意見がある。小党ばかりでは存在感を示しにくいが、政策で距離がある勢力が無理に一緒になっても対抗軸は生まれない。国民生活に資する政策づくりに取り組み、結果として連携する形での再編を望みたい。

国会の後半では、憲法改正の行方が焦点になる。自民党執行部は3月の党大会までに改憲案をまとめたい考えのようだ。

憲法論議が重要な政治課題であることは否定しない。とはいえ、あまり急いであおり立てれば与野党対立が過熱し、予算案や働き方改革などの法案の審議まで影響を受けかねない。

今年は全国規模の大型選挙がない。目先の人気取りに走らない国会論戦ができるはずだ。
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[日経新聞] TPP経済圏へ道筋固めよ (2018年01月23日)

米国が抜けても環太平洋経済連携協定(TPP)の意義はきわめて大きい。米国を除く11カ国は目標とする3月の署名に向け、交渉の総仕上げをするときだ。

11カ国による首席交渉官会合が始まった。11カ国は昨年11月、米国を含む12カ国で合意したオリジナル版TPPのうち、ルール分野から20項目を凍結することで大筋合意した。

今回はそれ以外で継続協議となっている項目の扱いを決め、新協定「TPP11」を確定するのが目的だ。日本政府などは3月に署名式を開催したい考えで、それまでの実質的に最後の大きな交渉機会になるとみられている。

焦点はカナダの対応だ。カナダは自国の文化保護を理由に、映画など外国産コンテンツへの規制を残すよう主張している。しかし、これを認めてしまえば貿易自由化に逆行しかねない。

一方でカナダが決着に難色を示すと3月に署名式を開けず、その後の国内手続きも遅れることが懸念される。日豪が中心となってカナダとの間合いを詰め、合意を導いてほしい。

TPPは21世紀型の自由貿易圏をつくる試みだ。モノにかかる関税の大半を撤廃するだけでなく、電子商取引や知的財産、国有企業などの分野で規律の高いルールを定めているのが特徴だ。

とくに電子商取引では、国境を越えるデータの自由移動を確保するとともに、データを保存するサーバーを国内に置くよう外国企業に要求することを禁じた。

対照的な動きを見せているのは中国だ。昨年、外国企業が中国で集めた顧客データは中国国内で保存するよう義務づけた。

「デジタル保護主義」ともいうべきこうした動きが他の新興・途上国に広がるのを防ぎ、公正な貿易ルールの礎となる役割が、TPPには期待されている。

世界の自由貿易・投資協定のモデルとしての価値を損ねないよう、11カ国は来年の発効に向け道筋を早く固める必要がある。
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2018年01月22日

[日経新聞] NHKは業務効率を高めよ (2018年01月22日)

NHKが2020年度までの経営計画を策定した。焦点だった受信料の一律引き下げは見送り、インターネットを活用したサービスの拡充や、4K・8Kと呼ぶ超高精細な放送に力を入れるという。

ネットを通じた動画配信サービスが普及するなど、視聴者が情報を手に入れる手段は大きく変わった。こうした変化に対応するのは理解できるが、業務が際限なく広がることには懸念を覚える。

NHKの事業収入は17年度に7118億円に達する見通しだ。5年前と比べると500億円あまり増え、さらに20年度は7300億円超まで増やす計画だ。

収入が増えても一律の引き下げを見送る理由として、石原進経営委員長は「一度値下げすると再値上げは難しい」ことを挙げた。

広く国民が支える公共放送の性格を考えると、業務効率を高めて負担は最小限にとどめるべきだ。資金が必要になったら改めて説明し理解を得るのが筋である。

NHKは4K・8K放送を始めるためにチャンネルを増やすが、事業を広げるだけでなく、重要性が薄れた業務は縮小すべきだ。職員の負担を減らし、番組の品質を保つためにも見直しは急務だ。

欧州では、英BBCがネットを活用したサービスの拡大にあわせてチャンネル数を減らした例などがある。NHKの上田良一会長は「チャンネル数も含め議論する必要がある」としており、検討を急ぐ必要がある。

視聴者が多様な情報を得られるようにするため、メディア企業の健全な競争環境を整える必要もある。NHKの蓄積した技術やコンテンツを民間企業に開放し、多様なサービスの提供につなげることなども検討課題になる。

NHKが本格開始を望んでいるテレビ番組のネットを通じた「常時同時配信」は、放送法の改正が前提になる。放送法が施行された1950年と現在では環境が大きく変わっている。本質的な議論を進め、時代に合った公共メディアの枠組みをつくる必要がある。
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[日経新聞] 米国の株高を支えるお金を生かす経営 (2018年01月22日)

2018年に入ってからも米株式相場が堅調に推移している。米経済の鏡ともいえるダウ工業株30種平均は史上初となる2万6000ドル台をつけた。

株価上昇を支える要因の一つは、業績好調な米企業が賃上げや雇用・投資増に動いていることにある。米企業のお金を生かす経営は、デフレ脱却を目指す日本の企業の参考にもなる。

米調査会社トムソン・ロイターによれば、17年10?12月期の米主要企業の利益は前年同期に比べて約10%伸びたもようだ。世界経済の拡大を映して、アナリストの事前予想を上回る好決算が例年より多いのが特徴だ。

人への投資を増やす企業も目立つようになった。金融のウェルズ・ファーゴや通信大手AT&Tは、従業員の賃金や報酬を増やす。小売業ウォルマート・ストアーズのマクミロン社長は「(経営の)根底にあるのは人の力」と述べ、賃上げや研修を通じた人材育成の重要性を強調した。

設備や研究開発に積極的にお金を投じる例も多い。米IT(情報技術)企業の代表であるアップルは、米国内の人工知能(AI)事業などに今後5年で300億ドルを投じる計画を表明した。

トランプ米大統領の税制改革によって米企業は法人税の負担が軽くなり、海外にためた余資を自国に還流しやすくなる。米企業がさまざまな投資の積み増しに動くのは、トランプ減税を経営基盤を充実させる好機と捉えているからと考えられる。

株主の力が強い米国は企業が目先の株主還元を重視しすぎるあまり、国内での人材や設備への投資が後手に回っているとの指摘があった。そんな米企業のお金の使い方が変わりつつあることに、もっと目を向けるべきだ。

経営基盤が強くなれば、長期の視点に立つ年金などの投資家の評価が高まる。お金を生かす経営は株主利益にも合う。

100兆円超の手元資金を持つ日本の上場企業も、人やモノに資金を投じる余力はおおいにある。株主への利益還元だけでなく、人材の確保や育成、研究開発の充実を投資家が求める構図は米国市場と共通している。

企業が起点となりお金の巡りを良くすることが、経済活性化の要諦である。日本企業は最高値圏の米株式市場から、そんなメッセージを読みとるべきだ。
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2018年01月21日

[日経新聞] 仮想通貨の健全な発展に国際協調を (2018年01月21日)

この1年間で仮想通貨は急速な発展をとげた。日本では値上がり益を期待した個人マネーが流入したビットコインが有名だが、それ以外にも世界で仮想通貨の種類や取引規模は急拡大している。一方、先進国だけでなく、新興国・途上国で中央銀行がデジタル通貨発行を検討する動きも出ている。

仮想通貨では、最近のビットコインの急落など投機マネーの動きが注目されるが、仮想通貨に使われるブロックチェーンは様々な分野に応用が期待される技術だ。金融とITの融合は、新産業を生み、経済の効率化にもつながる。

日本では昨年4月に施行された改正資金決済法で取引所に登録を義務付けた。ただ、その後広がった仮想通貨技術を使った資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)をどう扱うかなど新たな課題も浮上している。

海外では、米国でビットコインの先物取引が始まり、イーストマン・コダックが仮想通貨の発行を発表した。一方、韓国は仮想通貨取引所の禁止を検討し、ブラジルはファンドの仮想通貨への投資を禁じた。

金融の技術革新を促進し、新規参入を促すには過度の規制は望ましくない。ただ、世界的に仮想通貨の取引が広がるなかで、規制・監視などで金融当局間の国際協調が必要な段階にきたといえる。

各国で同じ規制を一斉に入れる必要はないが、仮想通貨の普及とその影響、健全な発展に必要な規制について当局間で情報交換を進める必要がある。仮想通貨はマネーロンダリング(資金洗浄)に使われる恐れもあり、その対策には国際協力が不可欠だ。

国が発行するデジタル法定通貨にも新たな動きがある。先進国ではスウェーデンなどが先行しているが、最近目立つのは新興国・途上国だ。中国はロシア、インド、アフリカ諸国などと組んでデジタル法定通貨の研究を始めた。

銀行制度が発展していないアフリカでは現金を持ち運ぶより安全なデジタル通貨への需要がある。中南米ではエクアドル、ウルグアイのほか、経済危機で高インフレに苦しむベネズエラで大統領がデジタル通貨発行を提案して注目を集めている。

20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議などで、仮想通貨やデジタル法定通貨の金融システムや金融政策への影響について意見交換し監視を始めるべきだ。
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[日経新聞] インド太平洋戦略を日豪で (2018年01月21日)

来日したオーストラリアのマルコム・ターンブル首相は安倍晋三首相との会談で、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する圧力を高めることで一致し、航空自衛隊と豪空軍による初の合同演習を年内に実施することで合意した。

北朝鮮問題に加え、中国が海洋進出を活発にする一方で米国が内向きの姿勢を強めるなど、太平洋からインド洋へと広がる地域の安全保障環境は大きく変わっている。日豪の連携強化は当然で、具体的な協力を加速すべきだ。

首脳会談では「訪問部隊地位協定」(VFA)の大枠で合意することも、日本側は目指していた。交渉を詰め切れず「できる限り早期」の妥結を目指す意思を確認するにとどまったのは、残念だ。

VFAは、自衛隊が豪州に出かけたり豪軍が日本に来たりする場合の法的な取り扱いをあらかじめ定め、共同訓練や災害救助活動などを円滑にできるようにする枠組みだ。細部まで整えるのは容易でなく、実務レベルの話し合いをさらに緊密にする必要がある。

ターンブル首相は陸上自衛隊の習志野演習場を訪れ、対テロ作戦などを担う「特殊作戦群」の訓練を視察した。日本の安全保障の司令塔ともいうべき国家安全保障会議(NSC)にも出席した。いずれも異例で、日豪の協力の深まりを内外に印象づけたといえる。

豪州では近年、短期の政権が続いている。ターンブル首相は第2次安倍政権が発足してから4人目の豪首相だ。ただ、外交・安保政策の基本は揺らいでいない。

安倍首相が唱える「自由で開かれたインド太平洋戦略」にとって重要なパートナーといえる。両国の同盟国である米国、さらにはインドも加えた連携が動き出しているが、これを実のあるものにしていかなくてはならない。

米国をのぞく11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)の早期発効を目指すことでも、両首脳は一致した。将来の米国の復帰に向け地ならしをするうえでも、日豪の協力は欠かせない。
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2018年01月20日

[日経新聞] 避けがたいトランプ政権の一層の混迷 (2018年01月20日)

トランプ米大統領が就任1年を迎えた。威圧的な政治手法を改める兆しはなく、政権の安定は望むべくもない。場当たり的な政策決定は米国民を右往左往させ、国際社会とのあつれきは米国の国際的な地位の低下を加速させた。政権2年目も、さらなる混迷を覚悟せざるを得ない。

トランプ氏の暴言虚言は選挙に勝つための方便であり、政権に就けば現実志向になる。1年前によく耳にした、この手の楽観論は全く当て外れだった。

法人税率の大幅な引き下げ、行き過ぎた規制の緩和など評価できる成果もあるが、もたらしたマイナスはそれ以上だ。

支持基盤である白人貧困層の歓心を買おうと繰り返す人種差別的な発言は、歴代政権が腐心してきた多民族融和・国民統合の努力を台なしにした。トランプ政権が終わっても、その後遺症は長く続くだろう。

さらに重大なのは、トランプ氏が国際秩序を揺るがしたことだ。どの国にも国益はある。だが、それを言い立てれば対立が激化し、戦争の引き金を引きかねない。話し合い、譲り合いで紛争の芽を摘もうというのが戦後世界の基本ルールのはずだ。

環太平洋経済連携協定(TPP)や地球温暖化に関するパリ協定からの米国の離脱がもたらしたのは、経済的な損失だけではない。世界を弱肉強食の時代に逆戻りさせ、中国やロシアが膨張志向を正当化する根拠を与えた。

米国は軍事力だけで世界をリードしてきたのではない。人権の尊重、民主主義、市場経済といった普遍的な価値こそが米国の支配力の源泉だった。トランプ氏はそれらを手放してしまった。

ここに来て、ホワイトハウス内の対立は深まっているようだ。トランプ氏と絶縁したバノン元首席戦略官の今後の言動によってはロシアゲート問題が急展開し、トランプ氏が窮地に追い込まれる可能性もある。

米国民の目先をそらそうと、トランプ氏は米メディア批判に一段と力を入れている。それでも済まずに、ビッグ・サプライズに走るかもしれない。

危惧されるのは北朝鮮への対応だ。経済制裁などで圧力をかけるのは核・ミサイル開発を封じ込めるためだ。疑惑隠しの思惑から無謀な戦争に踏み出すことだけはあってはならない。
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[日経新聞] 機密費開示のルールづくりを (2018年01月20日)

何でもかんでも秘密にすべきではない。ときの政権が自由に使える機密費の使途をめぐる訴訟で、最高裁がこんな判断を初めて示した。監視の目が届かないと不正が起きがちなのは官民を問わない。妥当な判決だ。

機密費は正式には内閣官房報償費と言い、2017年度予算では12億3000万円が計上されている。極秘情報の提供者への報酬などに充てるためとされる。

こうした経費は、どこの国にもある。誰にいくら払ったのかをいちいち公開していたら、まともな情報網はつくれない。不安定な国際情勢などを考えれば、決して無駄なカネではない。

ただ、官房長官の経験者によれば、外遊に行く与党議員の餞別(せんべつ)などにも使うそうだ。過去に機密費の出納簿と目される書類がネットに流出したことがあったが、政府高官の出身校のOB会費まで載っていた。完全非公開が甘えを生むのだろう。

最高裁は機密費関連の書類のうち、会計検査院に提出する報償費支払明細書などは情報公開法に基づく請求があれば、一部は公開して差し支えないと判断した。月ごとの機密費の使途を類型別に合算したもので、情報源は明かすことにはならないからだ。

類型別の使途が公開されるとなれば、公私混同のおそれのある支出はしにくくなる。

一切明かせないとしてきた国の言い分が否定されたのだから、この機会に与野党で話し合って公開の範囲をきちんと法律で定めてはどうだろうか。

米国では情報公開法の趣旨に沿って、国の機密文書が順次公開されている。米中央情報局(CIA)がかつて自民党に秘密資金を渡していたなど、いまの外交関係に影響しそうな文書でも出す。

日本は機密費に限らず、機密文書の公開に消極的だ。書類の存在さえ否定することがある。これでは機密費が有益に使われたのかが検証できない。25年ぐらいで自動的に公開するルールが必要だ。
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2018年01月19日

[日経新聞] 核燃サイクルを問う機会に (2018年01月19日)

7月に満30年の期限を迎える日米原子力協定が自動的に延長されることになった。日米のどちらかが改定や破棄を求める場合、期限の6カ月前までに申し入れる決まりだが、両政府ともに見直しを求めなかった。

協定では、日本が原子力発電所の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出すことやウラン濃縮などを認めている。原子力利用を民生目的に限っている日本に特例的に再処理などを認めており、政府と電力業界が進める核燃料サイクル政策の前提になってきた。

プルトニウムは核兵器の原料になり、米国内には日本のプルトニウム保有が核拡散につながると懸念する声がある。トランプ政権はそうした意見にくみせず、協定の見直しを求めなかった。それ自体は日本にとって歓迎すべきだ。

一方で、核燃料サイクルの実現は大幅に遅れている。要となる青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場は工事の延期を繰り返し、稼働は早くても3年後になる。プルトニウムを燃やす高速増殖炉もんじゅも廃炉が決まり、次の炉の計画は具体化していない。

日米協定の延長で、核燃料サイクルにとっては猶予期間が生まれたことになる。その時間を政策見直しの議論にあてるべきだ。

資源が乏しい日本にとって、ウランを繰り返し使える核燃料サイクル政策をすぐに放棄することはできない。しかし、使用済み核燃料の全量を再処理する必要があるのかや、中間貯蔵施設の位置づけ、高速炉の開発をどうするかなど議論が必要な項目は多い。

建設の長期化などでコストも膨らみ、再処理だけで約14兆円と見込まれている。費用対効果についても綿密な検証が欠かせない。プルトニウムを既存の原発で燃やす計画を着実に進める必要もある。

協定は自動延長後、日米いずれかの通告があれば6カ月後に終了できる。米国の政権交代などで失効を迫られることがないよう、日本が政策を明確にしておくことが大事である。
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[日経新聞] 一見順調そうな中国経済に潜む問題点 (2018年01月19日)

中国の2017年の実質経済成長率は6.9%だった。成長率が前年を上回るのは7年ぶり。目標とした6.5%前後も達成した。昨年は共産党大会を前に拡大した公共投資が寄与したが、今年は減速が予想される。特に不動産に絡むリスクに注意を払うべきだ。

中国景気をけん引する個人消費は堅調だ。巨大な中国市場を狙う外国企業の投資意欲は旺盛である。輸出も伸び、焦点の対米貿易黒字はトランプ米大統領の批判を受けつつも過去最高を記録した。失業率も比較的低い。

とはいえ、中国政府が鳴り物入りで旗を振ったはずの供給サイド重視の構造改革、とりわけ生産能力の削減が滞りがちなのは気になる。17年の粗鋼生産は公共投資の増加に伴う市況好転で過去最高になる。この反動は景気後退時に重くのしかかる。

「社会主義市場経済」を標榜する中国は土地公有制を崩さず、期限付きの使用権を売買している。だが実際には不動産が経済の支え役になっている。中央、地方政府が土地使用権を売り出し、その収入が財政を支える構造である。

大都市では住宅価格が暴騰した。2、3年で4倍になった地域もある。高学歴の若手夫婦がほぼ一生分の給与をつぎ込んでもマンションを買えない。不動産の活用で得られる収益と無関係な高騰の原因は、今後も値上がりするはずだという期待に基づく投機だ。

企業などの債務比率の高さも金融リスクを顕在化させかねない。少子高齢化で労働人口は今後、減少に向かう。既に製造業の労働コストの上昇は著しい。長く続いた「一人っ子政策」は転換へカジが切られたが、人口構成を変えるには長い年月がかかる。

成長の鍵は独自の新技術開発だ。習近平国家主席は人工知能(AI)をはじめ、様々な中長期計画に言及した。注目したいのはプロジェクトを具体化する政府の布陣だ。3月の全国人民代表大会では李克強首相以外の経済、貿易、金融、情報など各分野を担う副首相、閣僚らの人事が焦点になる。

共産党人事では中央での行政経験に乏しい習氏側近らの抜てきが目立ち、一部であつれきを生んだ。巨大国家の今後を左右する経済の行く手には多くの地雷が埋まっている。その処理では官僚機構を上手に動かす必要がある。習氏側近らを補佐する実務経験豊かな人材が登用されるか注目したい。
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2018年01月18日

[日経新聞] ベンチャーと連携し経営革新を急ごう (2018年01月18日)

大手企業が技術革新や事業モデルの転換に向けてベンチャー企業と連携する動きが目立ってきた。人工知能(AI)の発達、シェア経済の普及といった事業環境の変化が急速に進み、必要な技術や人材の幅が広がっているためだ。

こうした動きは起業が盛んな米国で先行してきたが、ここにきて日本でも関心を示す企業が増えている。大手とベンチャーの連携を一段と加速することで、産業の競争力を高めていきたい。

今月12日まで開いた米家電見本市「CES」の出展企業は3900社を超え、5年前に比べて2割近く増えた。大手とベンチャーの「顔合わせ」の場としての色彩が強まり、ベンチャーの参加が活発になっている。

日本でも大手企業がベンチャーとの関係を強めつつある。M&A(合併・買収)仲介のレコフによると、大手が設けたファンドによる国内外のベンチャーへの出資は2017年に681億円となり、過去最高を更新した。

ベンチャーはリスクの高いテーマに取り組めるほか、スピード感をもって事業を進められる利点がある。米国ではIT(情報技術)に加えて医薬、金融といった分野でもベンチャーと組む動きが一般的になっている。日本企業も出資や事業提携を増やすべきだ。

連携を成功させるには課題がある。ひとつは、ベンチャーと組む目的を明確にすることだ。まず自社の強みと弱みを冷静に見きわめ、弱点を補う形でベンチャーと連携するのが望ましい。流行だからといって組むようなことがあれば、成果をあげるのは難しい。

米ゼネラル・モーターズ(GM)は先週、ハンドルのない自動運転車を19年に実用化すると発表した。買収したベンチャーの自動運転技術と自らの生産能力などを組み合わせた例で、参考になる。

ベンチャーと連携するため大手が社内の体制を整えることも重要だ。ベンチャーの経営者から「大手企業は担当者がころころ変わる」といった不満の声を聞くことは少なくない。責任者を明確にし、腰を据えて取り組むべきだ。

ベンチャーが十分に力を発揮できる環境を整えることも欠かせない。下請け企業との取引が長い日本の大手は、規模が小さく歴史の浅い企業を下に見る傾向がある。対等の関係を築いて双方が活発に知恵を出し合うことは、連携を成功させる条件となる。
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[日経新聞] 「真の難民」保護に一層の改革を (2018年01月18日)

法務省は難民申請者の処遇を見直し、15日から新しい枠組みの運用をはじめた。難民と認められるかどうかを審査している間に日本で働くのを、従来より厳しく制限するのが見直しの柱だ。

日本での就労をめざす、いわゆる「偽装難民」が急増し「真の難民」を保護するのに支障が出てきたため、と同省は説明している。たしかに「偽装」を抑制する効果は期待できるが、本当の意味で「真の難民」を保護するには一層の改革が必要だろう。

法務省は2010年、難民認定の申請者が申請の半年後から原則として日本で仕事ができるようにした。審査を待つ間の経済的な困窮をやわらげる狙いだったが、一部の途上国で「日本では難民申請すれば職に就ける」との受け止め方が広がったという。

実際、同年から17年までに申請者の数は10倍以上に膨らんだ。結果として申請者ひとりひとりにかかる審査は長期化し、本当に保護が必要な「真の難民」の認定も遅れがちになってきた。

今回の見直しでは、短期間の審査で「明らかに難民に該当しない申請者」をまず振り分け、原則として就労を認めないことにした。「偽装」の申請を抑えるうえでやむを得ない対応だろう。

心配なのは「真の難民」をしっかり保護できるかどうかだ。政府が17年1?9月に難民と認めた数は10人で、先進国のなかでは際だって少ない。厳しい認定基準を維持したままであれば、本当に保護が必要な難民をさらに苦しめる結果となりかねない。

「偽装難民」のなかに技能実習生や留学生が少なくないことにも注意したい。単純労働者は受け入れないという建前の、いわば抜け道となってきた仕組みが「偽装難民」を誘い込んでいる。

人手不足が深刻になるなか、外国人をどう受け入れていくのか――。これが問われているともいえる。法務省だけでは済まない問題で、政府さらには国民全体で真剣に考えなくてはならない。
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2018年01月17日

[日経新聞] 賃上げでデフレ脱却への決意を示せ (2018年01月17日)

経団連が2018年の春季労使交渉に臨む経営側の指針をまとめた。デフレ脱却を前進させるため、例年になく強く賃上げを呼びかけている。働き方改革で残業代が減る分の補い方などにも企業は目を配り、賃金上昇の流れを確かなものにしてもらいたい。

交渉指針となる経営労働政策特別委員会(経労委)報告は政府の要請を踏まえ、「3%の賃上げ」は社会的な期待であり前向きな検討が望まれると明記した。基本給を引き上げるベースアップや賞与の増額などを想定している。3%は日本経済がデフレに入る前の1994年以来の伸びとなる。

民間の賃金決定への政府介入は市場経済のメカニズムをゆがめかねず、本来なら望ましくない。ただ、企業が抱えるお金が増え続けているのも事実である。上場企業の手元資金は100兆円を上回っている。

18年3月期に上場企業は2年連続で過去最高益となる見通しで、企業が積極的な賃上げを検討できる環境にあるといえる。経済の好循環の鍵を握る消費拡大には将来不安を除く社会保障改革と併せ、継続的な所得の伸びが求められる。収益力が高まった企業は例年以上の賃上げを考えてはどうか。

もちろん賃金は生産性の伸びに応じて決める必要がある。女性や高齢者が働きやすい短時間勤務制度などの生産性向上策についても労使で議論を深めるべきだ。

今春の労使交渉では残業削減による減収をどのように補うかも大事なテーマになる。大和総研の試算では残業時間が月平均60時間を上限に抑えられた場合、残業代は最大で年間8.5兆円減る。

労働組合側は「残業時間の減少は生産性が上がった表れといえ、その分、賃金を上げるのが筋だ」と主張する。生産性の向上がみられるなら、従業員への還元を考えてしかるべきだろう。

経団連は経労委報告で、賞与の増額や手当の新設などの還元方法を挙げた。減収は従業員の働く意欲をそぎかねず、企業にもマイナスだ。適切な対応が求められる。

雇用されている人の7割が働く中小企業の賃上げも重要になる。大企業による著しく低い代金での発注などが中小企業の収益を圧迫している例は少なくない。

下請法違反の取り締まり強化が求められるのはもちろんだが、大企業自身、中小企業に不当な取引を強いていないか点検すべきだ。
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[日経新聞] 外国人の娯楽消費の拡大を (2018年01月17日)

2017年の訪日外国人が前年比19.3%増の2869万人になり、過去最高を更新した。それに伴い年間の消費額も17.8%増の4兆4161億円と、初めて4兆円を超えた。しかし1人あたりの消費額は15万3921円にとどまり、2年連続の減少となった。

政府は20年の訪日外国人の人数と消費額について4000万人、8兆円を目標に掲げている。達成するには1人あたりの消費額を20万円に増やす必要がある。

消費が伸び悩めば住民などが経済効果を感じにくくなり、「交通機関が混む」といったマイナス面への不満ばかり膨らむ可能性もある。旅行者の満足度を高め、消費の開拓につなげるべきだ。

経済協力開発機構(OECD)が16年に公表した国際比較によれば、米国、カナダ、フランス、ドイツを訪れた外国人観光客の消費のうち、8%から10%を文化鑑賞や野外活動など「娯楽サービス」への支出が占める。日本の場合は1%台だ。伸びしろは大きい。

外国人観光客が日本の音楽公演やスポーツの試合を見ようとする場合、チケットの買いにくさが壁になる。電子チケットを導入し、海外からネット予約できるようにすれば、コンビニエンスストアなどでの発券手続きが不要になる。来日後、チケットを簡単に購入できる販売店の充実も望まれる。

演劇などの鑑賞時に電子端末を貸し出し、多言語の翻訳字幕を表示するといった方法もある。さまざまな場面でIT(情報技術)を最大限に活用すべきだ。

国立公園や神社、城など、自然や文化財の活用法も工夫したい。米欧の観光先進国には元ガスタンクや修道院など、産業遺産や歴史的建築をホテルや商業施設に転用し人気を集めている例は多い。

これまで手薄だった富裕層向けの施設やサービスの充実、知名度が低い地方の祭りに関する情報発信、深夜時間帯の公共交通の整備など、工夫の余地はたくさんある。慣習や前例にとらわれず、柔軟な発想で取り組みたい。
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2018年01月16日

[日経新聞] 転機迎えた住宅市場の構造改革を促せ (2018年01月16日)

住宅建設が減っている。住宅着工戸数をみると昨年7月以降、5カ月連続で前年同月を下回った。相続税対策に伴う賃貸住宅の建設ラッシュが落ち着いたことが主因だが、持ち家も減っている。

住宅建設の減少は足元の景気にはマイナスだが、全国で空き家の増加が問題になっている点を考えれば自然な流れだろう。住宅市場は大きな転換期を迎えたといえるのではないか。

今後大切なことは、大きくいえば2つある。まず、空き家の増加を抑えるためにも中古住宅の取引をもっと増やすことだ。それには税制など政策面からリフォーム投資を促し、住宅の質を維持・向上させる必要がある。

住宅投資に占めるリフォーム投資の割合をみると、日本は3割弱と欧州に比べてかなり低い。リフォーム投資が増えれば新築投資の減少を補う効果も期待できる。

第三者である建築士などが建物の状況を調べるインスペクション(住宅診断)も普及させたい。米国などでは住宅診断は一般的だが、日本ではまだ少ない。

宅地建物取引業法の改正で、4月から取引を仲介する業者が顧客に住宅診断をするかどうかを確認することが義務付けられる。住宅の状況を事前に把握できれば、消費者は安心して適正な価格で購入しやすくなるだろう。

住宅金融のあり方も問われる。中古住宅の購入費とリフォーム費用を一体で提供する住宅ローン商品を充実する必要がある。そのためにも、土地とは分けて建物の価値を評価する手法を広げたい。

2番目は都市計画と連動させて、住宅の立地を既存の住宅地にしっかりと誘導することだ。日本では多くの住宅がもともとは住宅地ではなかった工場跡地や農地などに新たに建設されている。

その一方で、既存の住宅地では建て替えが進まないので空き家がますます増えている。住宅着工戸数全体に対する古い物件を壊して建てた住宅の割合を示す「再建築率」をみると、2015年度は8.4%と過去最低になった。

居住者がいる住宅だけをみても、耐震性に欠ける物件が全国に約900万戸もある。こうした物件の除去と一体となった住宅建設を後押しすべきだ。

日本では人口に続いて23年をピークに世帯数も減少に転じる見通しだ。転機を迎えた住宅市場の構造改革をしっかりと進めたい。
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[日経新聞] 大西洋のマグロ管理に学べ (2018年01月16日)

大西洋・地中海でマグロ類などの資源管理にあたる国際機関(ICCAT)は、2018年のクロマグロ漁獲枠を2万8200トンと昨年より2割増やした。漁獲管理が奏功し、資源量が回復したためだ。大西洋の成功例を太平洋での資源回復にいかしてもらいたい。

大西洋の漁獲枠の拡大は4年連続で、最も削減された11?12年の2.2倍になる。ICCATは19年、20年も漁獲枠を増やすことで合意し、20年の漁獲枠は3万6千トンまで拡大する。同海域での日本の漁獲枠も増える。

かつては大西洋でも乱獲が止まらず、10年のワシントン条約会議では禁輸措置が提案された。危機感を強めた漁業国は体重30キログラム未満の未成魚を原則禁漁とし、流通過程で漁獲証明書を確認するなどの保護策を打ち出した。

漁獲規制をきちんと守り、流通管理も厳しくすれば資源量は確実に増えることが立証された。

大西洋・地中海域では現在も未成魚の禁漁措置は継続されている。一方、日本近海を含む中西部太平洋の国際機関(WCPFC)の漁獲規制は、未成魚の漁獲量を02?04年の半分に抑えるものだ。それでも、日本などの各国で漁獲枠を超す違反が相次ぎ、政府は漁獲量が枠に近づいた時点で操業停止命令を出す方針だ。

国内の漁業者からは「厳格な漁獲規制は漁業経営への影響が大きい」と不満の声が多い。WCPFCが昨年12月に開いた総会で、資源量に応じて漁獲枠を柔軟に見直す措置で合意した背景には、日本の漁業者の不満の声がある。

しかし、中長期で見れば、厳格な資源管理が漁業経営にもプラスとなることは大西洋の事例で分かるはずだ。資源の回復した大西洋クロマグロの流通量は国内市場でも増え、対照的に太平洋域ではなお漁獲規制が続く。それは漁獲、流通管理の優劣が招いた結果にすぎない。

漁業の持続可能性を高めるために何が重要かを、漁業者は改めて考えてほしい。
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2018年01月15日

[日経新聞] 持続可能な社会へ企業は力注ごう (2018年01月15日)

環境問題や貧困、格差拡大などの課題を放置すれば経済成長は続かず、健全な社会を築くこともできない。こうした問題意識から、持続可能な社会に向けた取り組みを強めようという動きが世界で広がっている。なかでも重要なのが企業の果たす役割だ。

環境や社会問題とのつながりを考えて事業を進めることは、企業にとって社会的責任を果たすだけでなく、新たなビジネス機会を得たり事業のあり方を改善したりする好機にもなる。

自ら価値高める発想で

日本企業も得意分野を生かしながら、自らの企業価値を高めるという前向きな発想で臨みたい。

経済や社会の持続可能な発展という課題は、国連が「持続可能な開発目標(SDGs)」という国際社会共通の目標として推進している。貧困、健康と福祉、教育、気候変動など17の項目で目標を設け、2030年までに達成するよう加盟国に求める。

国連は途上国の開発に重点を置いてきたが、先進国も含めた包括的な課題に広げ、15年に採択したのがSDGsだ。地球環境問題やグローバル化の負の側面などに対応するには、あらゆる国の参加が必要だという問題意識がある。

日本政府は首相をトップにする推進本部を設置し、実施に向けた指針を打ち出している。経団連は昨年11月に7年ぶりに改定した企業行動憲章で「持続可能な社会の実現」を掲げた。

独ベルテルスマン財団などがまとめた国別のSDGs達成度によると、日本は昨年、157カ国中で11位だった。教育や産業・イノベーションなどで目標を達成する一方、男女間格差や気候変動など5分野の評価が低かった。

SDGsの推進は国際社会への貢献だけでなく、自らの社会の質を高めることにもつながる。日本はSDGsで最先端をいくモデル国家をめざすべきだ。

カギを握る民間の取り組みでは、既に実績をあげている企業も少なくない。

住設機器大手のLIXILグループは世界の衛生問題の解決に向け、新興国で簡易トイレを生産、販売している。製薬大手エーザイのように、熱帯病の治療薬を無償で新興国に提供している企業もある。こうした動きは単なる社会貢献の域を超え、長期の経営戦略としても大きな意味を持つ。

新興国の生活水準が上がれば、新たな市場の開拓につながる。グローバルな課題に取り組む姿勢は、企業や製品のブランド価値向上という面でも良い影響をもたらすとみられるからだ。

業界として国際的な規範をつくる動きも目立ってきた。資源メジャーなど世界20社以上が加盟する国際金属・鉱業評議会(ICMM)はSDGsが掲げる目標も踏まえて環境対応、人権の尊重など10の基本原則を打ち出している。

評議会に加盟する住友金属鉱山が鉱山開発にあたるフィリピンの先住民族について社内講習をしたり、精錬に使わない鉱物の堆積場を緑化したりする活動はその一環だ。環境対策はコストになるが、軽視すれば長期的に資源の安定確保はできない。

サプライチェーンの的確な管理も欠かせない。米コカ・コーラグループなど世界の食品、小売り大手は原料農産物の調達にあたり、環境や働く人の人権を重視する基準を設けている。

ESG情報の開示を

劣悪な労働環境で働かせたり、環境対策をおろそかにしたりすれば道義的な問題だけでなく、事業基盤を傷付けて結局自らにはねかえってくる。環境や人権の重視と事業の持続可能性は表裏一体だ。

株式市場では最近、企業の環境や社会分野などへの取り組みを評価する「ESG投資」が広がっている。年金基金などの資金が流入し、全世界の運用規模は20兆ドルを超えたもようだ。日本でも年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が昨年、ESG投資に乗り出した。

資産運用業界では、投資先企業の業績や財務の分析だけでなく、社会問題への取り組みを含めた事業評価のためのアナリスト育成も始まった。企業にとっては資本市場への情報開示がいっそう重要になる。業績・財務情報だけでなく、社会問題解決の取り組みなどもあわせて説明する「統合報告書」などを活用すべきだ。

本業のビジネスの力を使って環境や社会問題を解決し、それが株式市場での評価に結びついて事業の追い風にもなる。そんな好循環が根付くように企業も投資家も力を注ぎたい。
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2018年01月14日

[日経新聞] 遺伝情報はルールに沿って活用を (2018年01月14日)

生命の設計図ともいわれるゲノム(全遺伝情報)を、がんや難病の診断・治療に応用する動きが広がってきた。「テック社会」が医療を大きく変えようとしている。究極の個人情報であるゲノムは取り扱いに注意が必要だが、ルールを明確にして上手に活用したい。

法改正で規制対象に

病気の多くは遺伝子の異常で起きるため、ゲノム解析は原因の把握や最適な治療に役立つ。日本は米欧に比べ導入が遅れたものの、国立がん研究センターなどでゲノムに基づく治療が始まった。

ただ、ゲノムは一人ひとりの顔かたちや性格などと密接に関係する個人情報だ。人工知能(AI)などを駆使すれば一部の情報からでも個人を特定できるとされる。本人の知らぬ間に悪用される事態は防がねばならない。

2017年5月に施行された改正個人情報保護法がゲノムを個人情報の一種とみなし、規制の対象としたのは妥当だ。名簿情報と同じように、第三者への提供はあらかじめ本人の同意取得が義務付けられることなどを明記した。

18年春には、ゲノムを含む膨大な「医療ビッグデータ」を研究開発に効果的に使うための「次世代医療基盤法」も施行される。どちらかというとブレーキ役の個人情報保護法に対し、次世代法はアクセルにもたとえられる。

次世代法により、医療機関などは個人を特定できなくするための情報の匿名加工を認定事業者に委託できるようになる。自前の設備や人材をそろえずにすみ、情報を大学や企業に提供しやすくなる。

AIに大量のがんの診断画像を分析させて特徴を導きだしたり高度な統計処理をしたりして、よりよい診断や治療につなげる研究開発が加速するだろう。それには信頼できる優良な加工事業者の選定が不可欠だ。経営破綻による情報流出などがあってはならない。

難病研究などでは国内の症例だけでは不十分で、海外とのゲノムデータの交換が必要な場合も多い。個人情報保護などに関する法制度の国際調和が課題となろう。

既に欧米の研究機関が中心となり、データの整理方式の共通化やインターネットによる相互利用システムの運用を試みている。日本医療研究開発機構などは各国との連携を密にし、後れをとらないようにすることが重要だ。

ゲノムの医療応用には負の側面もある。検査で予期せぬ遺伝性疾患の可能性など、知りたくない情報までわかってしまう場合だ。病気の不安は本人だけでなく、子や兄弟姉妹にまで広がりかねない。

ゲノムから読み取れる病気のリスクやその信頼性はどの程度で、発症や悪化は防げるのか。数々の疑問に専門のカウンセラーが丁寧に答える態勢が欠かせない。

日本人類遺伝学会などが認定遺伝カウンセラー制度を設けたが、有資格者は全国で220人程度と少ない。仕事内容への理解も不十分だ。国をあげて認知度を高め、人材育成に取り組む必要がある。

ゲノムから得られた知見と遺伝子を容易に操作できるゲノム編集の技術が合わさり、従来考えられなかったこともできるようになってきた。注目されるのが、受精卵のゲノム編集により子どもの病気を未然に防ぐ方法だ。

生命倫理の議論も重要

現状では不完全な遺伝子操作のため障害をもった子が生まれる危険があるが、技術の改良は急ピッチだ。欧米や中国では出産にこそ至っていないものの、人間の受精卵にゲノム編集を施した研究報告が相次いでいる。

いずれ、特別な才能を持つ子をつくるためにゲノム編集を希望する親も現れるだろう。「デザイナーベビー」の技術的なハードルはかなり下がっている。

忘れてはならないのは、受精卵操作の影響が子々孫々にまで及ぶということだ。人類の進化の歴史に人の手が入り、「神の領域」に踏み込む行為ともいえる。

内閣府の生命倫理専門調査会が昨年、ゲノム編集した受精卵による出産を禁止する方針を示したのは当然だ。もっとも、海外で研究例が出てから慌ててルールを巡る議論を本格化したのが実情だ。

関係省庁は技術動向を見極め、先回りして課題を検討できる態勢を整えてほしい。ゲノム編集のような技術をどこまで受け入れるのか、広く国民が議論できる場を設けることも必要だ。

(おわり)
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2018年01月13日

[日経新聞] 論理的思考を磨いて人材に厚みを (2018年01月13日)

人工知能(AI)やロボットなどを上手に利用する「テック社会」の実現には教育や人材育成がカギを握る。新しい技術について多くの人が基本的な知識をもち、正体の知れないブラックボックスにしないことが肝要だ。

それには子どものころからロボットなどに親しみ、技術との向き合い方を学ぶ教育が欠かせない。論理的な思考法や倫理を養う教育で人材を厚くし、世界に通用する研究開発の担い手も育てたい。

文理の垣根を払え

埼玉大学教育学部の野村泰朗准教授らは年に7、8回ほど、小中高生を集めて泊まりがけでロボットやプログラミングを教える集中講座を開いている。

昨年末にさいたま市で開いた講座では人と対話できるロボットを作った。小学生にとっては高度な課題だが、指導は最低限にとどめて設計などを考えてもらい、2日がかりで完成させた。

講座は「STEM教育」と呼ばれる教育法を取り入れている。科学、技術、工学、数学の英語の頭文字をとって命名され、米欧などで広がりつつある。「理系・文系と分けるのではなく、皆に論理的な思考法を身につけてもらうのが目的」(野村准教授)だ。

日本の教育は知識の習得に偏り論理的思考を磨くことは軽視されてきた。例えば学校で統計の読み方は学ぶが、データの集計法まで遡って真偽を確かめることは教えない。ビッグデータの利用が本格化しているが、データの扱い方を体系的に学んだ人は少ない。

文部科学省は2020年度から小学校でプログラミング授業を必修にする。算数や理科、総合学習などの授業の中で、プログラミングに必要な思考能力を養ってもらうことが狙いだ。

だが課題は多い。プログラミングの指導経験がない教員が大多数を占めるなか、カリキュラムを柔軟につくれるのか。教え手を外から招くにしても、日本のIT(情報技術)専門家は人手不足だ。

重要なのが、社会人が学び直せる「リカレント教育」の拡充だ。論理的な思考法は理工系出身者の専売特許ではない。文系出身者がプログラマーとして活躍することも多いように、社会に出てから学び直せる。

インターネットを使ったオンライン教育を活用するのは一案だ。大学の授業をネットで配信する大規模公開オンライン講座(ムーク)の受講者は世界で5千万人を超えた。日本版ムークでも「統計学」「データサイエンス」といった授業が配信されている。これらを積極的に利用したらどうか。

テック社会をけん引する最先端の研究開発に携わる人材を育てる必要もある。

車の自動運転のように、モノと情報が融合する分野から新たな技術が生まれている。だが理工系大学では機械や電気などモノづくり系の学部・学科と、情報通信などIT系の学部・学科の縦割り意識が根強く、研究者同士の連携も少ない。

この反省から学部や学科を再編する動きが出ている。金沢大は今年春、AIやロボット、新素材などを横断的に研究する「フロンティア工学類」を新設する。滋賀大や横浜市立大のようにデータ科学の専門学部を設ける動きもある。

社会全体で倫理規範を

日本は欧米などに比べAIやコンピューター科学の研究者が少なく、論文発表でも劣勢が続いている。大学の研究組織を見直すことから巻き返しにつなげたい。

「人工知能は人間社会にとって有益なものでなければならない」。研究者ら約4千人がつくる人工知能学会は昨年、学会として初の倫理指針を定めた。

学会員が法規制や他者のプライバシーを守る義務を明記し、研究の産物であるAIに対しても「社会の構成員になるためには、学会員と同等に倫理指針を順守できなければならない」とした。

一方で社会全体を見ると、AIに仕事を奪われるのではないかといった脅威論や警戒心が強い。AIとどのように共存していくか、社会の合意はまだできていない。

人と技術の役割分担をどうするか。それを考えることは、人にしかできないことは何か、人の尊厳とは何かを考えることでもある。こうした倫理面についても若いころから学べる機会を増やし、社会的な規範をつくる必要もある。
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2018年01月12日

[日経新聞] 交通事故死をもっと減らそう (2018年01月12日)

昨年1年間に交通事故で死亡した人は3694人で、警察庁が統計を取り始めた1948年以降でもっとも少なかった。「交通戦争」と呼ばれた70年の1万6765人と比べると、5分の1近くまで減ったことになる。

飲酒運転といった悪質な行為の厳罰化、信号機など交通安全施設の整備、自動車の安全性能の向上。さまざまな取り組みが功を奏した結果であろう。警察や自治体など関係者の労を多としたい。

だが交通事故死はもっと減らせるはずだ。大きな課題は高齢者対策である。昨年1?11月の統計では、65歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故は、全死亡事故の3割近くを占めた。判断力や身体能力の衰えが事故につながっている例も多いとみられる。

このため近年、免許更新時の認知機能検査が強化され、免許証の返納を呼び掛ける取り組みがなされてきた。これらの効果を検証し、高齢者の特性に応じた対策をさらに強めていきたい。信号や標識を見やすくするなど道路のバリアフリー化も欠かせない。

「交通弱者」という面からの高齢者対策も重要だ。事故死者数全体に占める65歳以上の割合は70年には2割に満たなかったが、2012年以降は5割を超えている。

そもそも日本は欧米の主要国に比べ、生活道路で「歩行中」や「自転車乗用中」に車にひかれて死亡する割合が目立って高い。事故に遭うのは高齢者に限らない。年齢別に見ると、歩行中の死傷者は7歳が突出して多いのだ。

警察や自治体は住宅地での車の速度を時速30キロ以下にする取り組みを進めているが、実効性を持たせることが難しい。運転者、歩行者双方への安全教育や住宅地での取り締まりを強化するとともに、道路面を一部盛り上げるハンプの設置などをさらに促すべきだ。

車の安全性を一段と高めなければならない。国は自動ブレーキやアクセルの踏み間違い防止機能を備えた車の普及を目指している。これを加速させる必要がある。
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