2017年03月26日

[日経新聞] 機関投資家と企業の対話促す改革進めよ (2017年03月26日)

資産運用会社や年金など機関投資家の行動規範を定めた「スチュワードシップ・コード」が、約3年ぶりに見直される。金融庁の有識者会議で改定案が示され大筋で了承を得た。

安倍晋三首相は企業統治(コーポレートガバナンス)改革を、成長戦略の一つと位置づけてきた。その推進力となったのが、2014年に策定された機関投資家の行動規範だ。今回の見直しを、ガバナンス改革を一段と進めるための契機とすべきである。

強制ではないが守らない場合は理由を説明する必要がある、という規範の基本的な考えは変わらない。そのうえで見直し案は、議決権行使状況を開示することの重要性を強調した。

現在は開示に消極的な運用会社も多い。見直し案は、少なくとも役員人事や報酬など主な議案ごとに行使結果を集計し、賛否の件数を公表すべきだとした。さらに個別の投資先ごとの開示も促した。

こうした改定の背景には、資産運用を巡る日本的な事情が横たわっている。日本の大手運用会社はほぼすべて商業銀行や証券会社のグループに属する。信託銀行は企業にお金を貸しつけるとともに、大株主にもなっている。

はたから見れば金融商品の営業が優先されるあまり、機関投資家の経営チェックが甘くなっているのではないか、との疑義も生じる。議決権行使の結果の開示を促すことにより、資産運用会社が株主の責務を果たし投資先の経営に目配りしているかどうか、外部から判断しやすくする。

また行動規範は、あらゆる運用会社が投資先の企業価値を向上させるような提案をするよう求めた。影響力を強めるため他の投資家と協働することも選択肢の一つとして挙げている。

企業に投資の必要性を指摘したり、利益還元を提言したりする運用会社は増えている。規範で促すことにより、機関投資家の働きかけが広がることが期待される。運用会社は企業の経営を理解し、長期の視点で助言できる専門家を育てることが必要だ。

企業も株主向け広報の体制を拡充するなど、対話の準備を急ぐべきだ。機関投資家と経営陣が議論を深めることは企業価値を向上させ、お金の運用を託している個人の富を増やす。さらには、投資や雇用の拡大を通じて経済全体を豊かなものにするはずだ。
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[日経新聞] 信頼できる臨床研究体制を (2017年03月26日)

医薬品の臨床研究で、効果が高く見えるようにデータを改ざんしたとして薬事法違反に問われた製薬会社やその元社員を無罪とする地裁判決が出た。

改ざんがあったことは認めたが、その研究論文は法律で規制する虚偽広告には当たらず、罪は問えないとの判断だ。

しかし医療現場では、論文を見た医師の処方に影響を与える可能性は十分ある。人の命や健康に影響したり、医療費の無駄遣いにもつながったりしかねない大きな問題は残ったままだ。

この事件の発覚を受け、政府は昨年の通常国会に、臨床研究の透明性を高めるための法案を提出している。監査や情報公開を義務付ける内容だ。法案は継続審議中だが、早期に成立させ、信頼できる研究体制の構築を進めてほしい。

不正があったのは製薬大手ノバルティスファーマがつくる高血圧症治療薬のデータだ。同社は臨床研究の中心となった大学病院の医師らに多額の奨学寄付金を提供していたことも問題になった。

医薬品や医療機器の開発・改良のためには、実際に人に使ってみて有効性や安全性を確かめる臨床研究が欠かせない。これらの研究には、被験者の安全の確保や外部からの監視の目などが必要になるはずだ。ただ現状では、国が新薬や新医療機器を承認するための研究を除いて、法的な規制はかかっていない。

今回の不正事件も、すでに国が承認した高血圧治療薬の新たな効果を探る研究の中で起こったものであり、規制対象外だった。

規制を強めればよいというものでもない。再生医療などの新しい技術の実用化には一定の自由度も必要だ。法律が制定された後も、関係者でよく協議し、医学の発展の芽を摘まないような柔軟さを保ってほしい。

法規制以前の問題として、製薬企業や研究者は高度な倫理観を持つべきである。不透明な寄付金などによる癒着を排し、改めて襟を正してほしい。
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2017年03月25日

[日経新聞] 生産性を高めて無理なく残業を減らそう (2017年03月25日)

残業時間への規制案が固まった。残業を実質的に青天井で延ばせる現行制度を改め、罰則付きの上限規制を設ける。繁忙月に例外として認める残業は100時間未満とすることで決着した。

制度の見直しを過重労働是正の一歩としたい。重要なのは、労働生産性の向上によって働く時間を短縮していくことだ。働く時間の配分を本人にゆだね、生産性が上がるようにする制度の整備にも政府は力を入れてもらいたい。

政府、連合、経団連の政労使が規制案に合意した。残業の上限は原則として月45時間、年間では360時間とする。労使協定を結べば、年720時間の残業や繁忙月の特例などを認める。

月100時間を超える残業は脳や心臓疾患による過労死のリスクが高まるとされており、その基準近くまでの残業を認めることには批判もある。経営者は労働時間の短縮にできるだけ努める必要があることを自覚すべきだ。

終業から始業までに一定の休息を設ける勤務間インターバル制度については、導入を企業の努力義務とした。各企業は自社の事業内容などを踏まえ、制度化を検討してはどうか。

長時間労働対策でより大事なことは、一人ひとりが効率的に働き、短い時間で仕事が終わるようにする環境づくりだ。企画力や創造性で勝負するホワイトカラーの場合は、本人の工夫によって生産性を高め、働く時間を短縮できる制度を充実させる必要がある。

労働時間ではなく成果の対価として報酬を得る「脱時間給」制度の新設や、仕事の時間配分を自分で決められる裁量労働制の拡大が求められる。これらを盛った労働基準法改正案は一昨年に国会に提出されたが、本格審議が見送られたままだ。成立を急ぐべきだ。

日本はサービス分野の生産性がとりわけ低く、企業はIT(情報技術)を活用するなどで仕事の進め方を見直す必要がある。いまは労使協定で労働時間規制の適用除外になる運輸業や建設業についても、政府は将来的に残業の上限規制の対象とする方向だ。建設会社や運輸会社は積極的に業務効率化を進めることが求められる。

生産性の向上を伴わずに労働時間の短縮を急げば、企業活動に無理が生じやすい。社員が仕事を自宅に持ち帰らざるを得なくなる恐れもある。政府は生産性向上の支援策に多面的に取り組むべきだ。
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[日経新聞] EUは統合深化で生き残れ (2017年03月25日)

2度にわたる大戦の舞台となった欧州で、ドイツとフランスなどが再び戦火を交えないための壮大な事業が欧州連合(EU)だ。

今年の3月25日は、EUの前身である欧州経済共同体(EEC)設立を定めたローマ条約の調印から60年にあたる。平和の礎としてのEUの成果を踏まえ、さらなる統合への道を歩んでほしい。

EUの歩みはおおむね成功だった。その柱は域内を人、モノ、カネ、サービスが自由に移動できる「単一市場」だ。加盟国の経済が相互に結びつきを強め、戦争とはほぼ無縁の欧州を築き上げた。

しかし、各国が主権をEUに徐々に移して統合が進んだことで、足元では反EUを掲げる極右政党が台頭している。4?5月の仏大統領選で仮に「EUとユーロからの離脱」を訴える国民戦線のルペン党首が当選すれば、実質的にEU存亡の危機に直面する。

英ロンドン中心部で襲撃事件が起きるなど、欧州は今なおテロの脅威に苦しむ。中東や北アフリカから流入する難民への対応も課題だ。経済面ではギリシャやイタリアなど南欧の低迷が長引く。

そんな難局の時こそ、英国を除くEU加盟27カ国の首脳は結束して行動する必要がある。加盟国は国ごとに行動するには規模が小さい。協力と協調を通じて初めて実効ある政策を打ち出せる。

トランプ大統領の下で米国が内向き志向を強めるなか、EUには自由貿易や地球温暖化対策をけん引する役割も期待されている。

一部の加盟国が先行して統合を深める「多速度の統合」という考えが出ている。EUの基本理念に反する行動をしがちな中東欧をけん制するねらいなら理解できるが、加盟国の分断につながらないような工夫は要る。

EU加盟候補国はトルコを除けば小国で、規模からみたEUの拡大はほぼ一段落した。ユーロ圏の再強化からテロ対策、軍事協力まで統合の具体策を深めることが、EU生き残りの唯一の道だと欧州の首脳は肝に銘じてほしい。
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2017年03月24日

[日経新聞] 真相解明にはさらなる国会招致がいる (2017年03月24日)

疑惑は深まったと言うべきだろう。衆参両院の予算委員会が23日、学校法人「森友学園」の籠池泰典理事長を証人喚問した。

籠池氏は大阪府豊中市の国有地を評価額より大幅に安く購入できた経緯について「政治的な関与はあったのだろう」と指摘。安倍昭恵首相夫人から100万円の寄付を受け取ったとも明言した。国会は関係者をさらに招致して真相を解明していく必要がある。

森友学園が計画した小学校の新設を巡っては、評価額9億5600万円の国有地が地中のごみ撤去費などを差し引いて1億3400万円で売却された。籠池氏は大阪府の小学校の設置認可に関しても「特別な取り計らいを頂いたと感謝している」と言及した。

証人喚問で焦点となったのは政治家の関与だ。籠池氏は小学校開設に関して「安倍晋三首相には直接お願いしたことはない。昭恵夫人を通じていろいろなことを相談した」と説明した。籠池氏はまた、昭恵夫人が2015年9月に講演で学園を訪れた際に「どうぞ安倍晋三からです」として100万円の寄付をした、と証言した。

国有地の契約条件を巡って、首相夫人付の政府職員からファクスで「財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室長から回答を得ました」「現状ではご希望に沿うことはできないようです」と回答をもらった事実も明らかにした。

首相は学園側との接触について「個人的な関係や寄付の事実はない」と明確に否定しており、どちらかが嘘をついていることになる。学園側から首相や夫人の名前を聞かされた政府や大阪府の関係者が何らかの便宜を図ったとの疑惑もぬぐえない。

籠池氏は証人喚問で国有地の売却や学校の設置認可について相談したという複数の参院議員らの名前を明らかにした。大阪府の松井一郎知事が学園に力添えしたと受け取れる証言も繰り返した。

嘘をつけば偽証罪に問われる場で籠池氏がここまで証言した事実は重い。参院予算委は24日に当時の財務省理財局長と近畿財務局長を参考人招致する。松井知事や籠池氏の交渉代理人だった弁護士の証言も聞く必要がある。

政府・与党には昭恵夫人の国会招致について慎重な意見が根強い。しかし様々な疑惑の解明に後ろ向きだと思われれば、政治不信を増大させる結果につながることをよく自覚すべきだ。
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[日経新聞] 生殖医療は法の整備が急務だ (2017年03月24日)

病気で妊娠できない女性が国内で匿名の第三者から提供を受けた卵子を使って体外受精し、初めて出産した。同様のケースは今後増えるとみられるが、親子関係をどう規定するかなどは曖昧なため、法整備が急務だ。

卵子提供は海外で広く実施されている。日本では倫理的に問題があるといった声もあり、一部の医療機関が姉妹や友人の卵子を使うのにとどまってきた。一方で、海外に渡航して匿名の第三者の卵子提供を受ける人は多い。国内で可能になれば選択肢が広がる。

ただ、卵子提供者と産んだ女性のどちらを母とするか、子が出自を知る権利をどうするかなどが問題となる。卵子が商業主義的に売買されることへの懸念もある。

民法は誰が母になるかを明記していない。厚生労働省審議会は2003年に条件付きで卵子提供を認める報告書をまとめ、法整備が必要とした。昨年には自民党の部会が「子を産んだ女性が母」などとする民法特例法案を了承したが、国会審議には至っていない。

子宮の病気などで妊娠できない女性が海外に渡航し、自身の卵子を他人の胎内に入れて子を産んでもらう「代理懐胎」でも親子関係の問題が起きている。

14年には、提供精子を使って生まれた男性が出自を知りたいと病院に「遺伝上の父」の情報開示を求め、資料がないと拒否されて話題になった。

国際生殖医学会連合による65カ国・地域の実情調査では、8割で第三者からの卵子提供を認めていた。米欧アジアのほとんどの国に生殖補助医療に関する法律がある。日本の対応は遅れている。

政府は技術の進歩や広がりを踏まえ、さまざまなケースを想定して法整備を急ぐべきだ。

もちろん、生殖補助医療に頼りすぎるのもよくない。卵子の提供を受けても高齢妊娠は母子ともに危険を伴う。卵子提供者の体の負担も大きい。医学的な課題を理解したうえで、子の幸せを第一に最新医療を活用したい。
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2017年03月23日

[日経新聞] 日欧はEPA早期合意で自由貿易を守れ (2017年03月23日)

トランプ米政権が環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を決め、「米国第一」を掲げて保護主義的な政策に傾いている。そんな中で日本と欧州は結束し、世界の自由貿易体制を守るという強い決意を示さねばならない。

安倍晋三首相が欧州4カ国を訪問した。メルケル独首相やオランド仏大統領らとの会談で、自由で開かれた経済や貿易が重要との認識で一致したのは当然だ。

欧米各国では、移民や難民の増加も背景に経済のグローバル化への反発が強まっている。英国の欧州連合(EU)離脱決定や、トランプ米政権誕生の原動力にもなった。しかし、自由貿易は世界の繁栄の礎である。それに背を向けて国を閉ざせば経済は低迷し、豊かになる機会を失いかねない。

米国が内向き志向を強めている今、日本と欧州は自由貿易体制を守り、保護主義に歯止めをかける必要がある。そんな立場を確認できた点で安倍首相の訪欧はいちおうの評価ができる。

問われているのは、言葉だけではなく、日本とEUの経済連携協定(EPA)の合意という具体的な成果だ。

交渉は足踏みし、想定より遅れている。安倍首相とトゥスクEU大統領らは年内の大枠合意をめざす方針を確認したが、本来は昨年中に合意しておくはずだった。

交渉で残された最大の焦点は関税の削減・撤廃だ。たとえばEUはチーズなどの乳製品や豚肉などの市場開放を求めているが、日本の農業関係者が抵抗している。

仮に日本が一定の市場開放に応じなければ、EUは日本の乗用車や電子機器にかける関税の撤廃を受け入れないだろう。そろそろ日本とEUの双方が政治レベルで事態の打開をめざすときだ。

米国のTPP離脱の背後で、EUは米国を除くTPP参加国との自由貿易協定(FTA)を急ぐ方針だ。メキシコとFTA改定の交渉をしているほか、オーストラリアやニュージーランドとの交渉開始も視野に入れている。

日本とEUがEPAで合意すれば、焦った米国がTPP復帰を検討する契機になる可能性はある。日欧が自動運転車などの分野で協力できる余地も広がる。

「自由貿易の旗を高く掲げる」(安倍首相)のはきわめて大事だが、日欧EPAの合意という成果が伴わなければ、首脳の本気度が疑われるだろう。
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[日経新聞] 人手の不足も映す地価動向 (2017年03月23日)

地価は引き続き緩やかな上昇が続いている。国土交通省が公表した公示地価(1月1日時点)をみると、商業地に続いて住宅地も下落から脱した。不動産市場への資金流入が地価を押し上げている。

地価上昇の理由は幾つかある。ひとつは低金利で借り入れコストが低下した不動産投資信託(REIT)が積極的に物件を取得している点だ。金融機関の不動産向け融資も高水準になっている。こうしたお金は地方都市にも向かい、地価上昇のすそ野を広げている。

それを実需が下支えしている。訪日客の増加をにらんだホテルや商業施設向けの土地取得が活発だ。オフィスの空室率をみても東京などの大都市に限らず、主要都市で低下している。

ここ数年続くこうした構図に加えて、最近目立つようになってきた新たな特徴もある。人手不足が地価に影響し始めた点だ。

REITの取得物件をみると、人手不足への対応として高機能化が進む物流施設が増えている。この結果、全国の工業地の上昇率は住宅地を上回っている。

一方で、人手不足による建築費の上昇で首都圏のマンション価格が高止まりし、売れ行きが鈍い。持続的な賃金上昇による所得環境の改善がないと、住宅地の上昇は続かないだろう。

人口動向の影響も色濃くうかがえる。都道府県別の上昇率をみると、人口が増えている沖縄県が住宅地では最も高かった。

反対に、全国の住宅地で下落率が最大になったのは千葉県柏市の郊外だった。大都市圏ですら人口が伸び悩むなか、魅力が薄れると大きく下落するということだ。

現在の地価動向は景気実態をおおむね反映しているといえるのだろう。地価水準をみても、ほとんどの地域でリーマン・ショック前の2008年よりも低い。

一方で、大阪の道頓堀のように上昇率が40%を超す地点もある。不動産融資は過熱気味なだけに、バブルの芽はないのか、政府や日銀はよく注意してほしい。
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2017年03月22日

[日経新聞] 米国の北朝鮮への強硬姿勢は本気か (2017年03月22日)

米トランプ政権が北朝鮮に強硬姿勢で臨む構えをみせている。日本、韓国、中国の3カ国を歴訪したティラーソン国務長官は、情勢次第で先制攻撃も辞さない考えを表明した。日本にも重大な影響を与える政策変更である。どこまでが本気で、どこからが駆け引きなのか。注意深く見守りたい。

「20年間の(朝鮮半島の)非核化の努力は失敗した。違うアプローチが必要だ」。ティラーソン氏は安倍晋三首相らとの会談でこう強調した。韓国では軍事力行使の可能性について「あらゆる選択肢を検討する」と明言した。

オバマ前政権は「戦略的忍耐」を掲げ、北朝鮮が核開発を断念するならば話し合いに応じるとしてきた。米国が圧力に軸足を移す背景には、トランプ大統領の人柄もあるが、北朝鮮の軍事技術の急速な進歩がある。

先の北朝鮮のミサイル発射を巡り、韓国はいったんは「大陸間弾道ミサイル(ICBM)ではないか」との見方を示した。その後、間違いとわかったが、米本土に到達可能な技術水準に至るのはさほど遠くなさそうだ。地球の裏側のできごととみてきた米国も真剣に取り組まざるを得なくなった。

課題は北朝鮮に影響力を持つ中国の出方だ。ティラーソン氏の訪中に合わせてトランプ氏は「中国はほとんど協力していない」と非難した。ただ、北京でのティラーソン氏は来月の習近平国家主席の訪米を歓迎する発言に終始し、協議の中身はよくわからなかった。

どんな外交も、対話と圧力の適切な組み合わせが重要である。北朝鮮の挑発行為は国際社会の常識を外れており、その意味で米国がアプローチを修正することは理解できる。他方、かつてのイラク戦争のような無謀な戦いにつながることがあってはならない。

安倍政権は米国だけでなく、関係が冷え込んでいる韓国とも緊密に連携し、上手にバランスを取る役割を果たしてほしい。

不測の事態への備えも忘れてはならない。万が一だが、米朝が戦闘状態に陥った場合、自衛隊ができること、できないことは何なのか。日米の調整を進め、有事に国論が二分しないようにしなくてはならない。

政府は2013年に策定した現在の「防衛計画の大綱」を今年秋にも改定する。こうした機会に日本を取り巻く安保環境を国民に丁寧に説明すべきだ。
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[日経新聞] 十分な審議が必要な「共謀罪」 (2017年03月22日)

政府は組織犯罪処罰法の改正案を閣議決定した。テロや組織的な犯罪を、実行される前の計画段階で処罰できる「テロ等準備罪」を新設するのが目的だ。いまの国会での成立を目指す。

テロ等準備罪はこれまで3回にわたり「共謀罪」の名称で法案が提出されたが、「処罰対象が不明確」「恣意的に運用されかねない」といった批判が強く、いずれも廃案になっている。

今回の法案では、適用の対象を「組織的犯罪集団」に限定した。処罰するためには重大な犯罪を計画したことに加え、現場の下見といった準備行為が必要となるような見直しも行った。

法律の乱用を防ぐといった観点から、こうした修正は評価できる。しかしこの法案の必要性や意義について、そもそも国民の間に理解が深まっているとは言いがたい。国会審議の場では成立を急ぐことなく、十分な時間をかけて議論を尽くす必要がある。

共謀罪の制定は、国際組織犯罪防止条約を締結するため各国に課せられた義務の一つである。だが廃案が続いたこともあり、今回政府は国民が理解しやすいテロを前面に出して必要性を訴えてきた。

当初の法案の中に「テロ」の文言がなく、与野党から指摘を受け慌てて盛り込むことになった背景にもこうした事情がある。

テロも組織犯罪の一形態とは言えるが、国会審議ではまず、資金洗浄や人身売買、薬物取引など条約がうたう「本来」の組織犯罪対策のあり方などについて十分に議論すべきではないか。現に日本は暴力団犯罪など組織犯罪の脅威にさらされている。

テロ対策も2020年の東京五輪をにらんで欧米並みに取り組むのであれば、この条約に便乗するだけでは中途半端に終わってしまいかねない。テロを正面から定義することからはじめ、海外と比べて法制度や捜査手法の面でどのような問題、課題があるのかを分析し、国民に問うていく。こうした作業が必要なはずだ。
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2017年03月21日

[日経新聞] 欧州のポピュリズムに懸念が消えない (2017年03月21日)

反イスラムや反欧州連合(EU)などの排外的な主張がどれだけ支持を広げるか、欧州政治の流れを左右する国政選挙が今年は相次ぐ。その第1弾となった先週のオランダ下院選挙では、極右の自由党が予想外に勢いを欠く結果となった。

極右勢力が躍進すれば、影響は4?5月のフランス大統領選挙に及んだり、EUの不安定化につながったりする可能性があっただけに、欧州にとって好ましい結果だったといえる。

自由党はイスラム教の礼拝所廃止といった過激な主張を掲げて支持を増やし、一時は第1党の座をうかがう勢いも示した。しかし中道右派の与党、自由民主党が首位の座を守り、次期政権への連立協議で中心になることが確定した。

投票率は8割にのぼり有権者の関心は極めて高かった。EU離脱を決めた英国からトランプ米大統領誕生へと、欧米ではポピュリズム(大衆迎合主義)的な政治の動きが続いている。その連鎖が及ぶことをオランダ国民は拒否した。

だが、有権者が必ずしも主流政党の支持で結束した結果でない点には注意する必要がある。自由民主党は勝ったとはいえ、議席を減らした。連立与党の一つである中道左派の労働党は大敗し、代わりに環境政党が大きく伸びた。

極右への集中は回避したが、与党への批判票が左右の政党に分散して向かったもようで、既存政治への不満が根強いことを示した。

欧州政治の焦点は4月下旬からの仏大統領選に移る。世論調査では極右政党・国民戦線のルペン党首が、中道系の独立候補マクロン元経済産業デジタル相と争う展開だ。中道の左右二大政党の候補はいずれも勢いがない。

移民規制やEU、ユーロ圏からの離脱など過激な政策を掲げるルペン氏が大統領に当選すれば、欧州は混乱が必至だ。最終的にはマクロン氏が有利とみられているが、予断は許さない。

9月に議会選を迎えるドイツでは、難民排斥を訴える民族主義政党が注目を集めている。排外的な勢力が支持を得る流れがどこまで及ぶのか、不透明感は消えない。

保護主義的な姿勢をみせる米政権への対応、近く始まる英国とEUとの離脱交渉など、欧州が抱える懸案は多い。仏独という中核国が過激で排他的な勢力を選挙で退け、安定した政治基盤を堅持できるか、引き続き目が離せない。
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[日経新聞] 混迷深まる築地の豊洲移転 (2017年03月21日)

築地市場の豊洲への移転問題がさらに混迷してきた。地下水の再調査で改めて高い濃度の有害物質が検出されたためだ。早期の移転は難しいと言わざるを得ない。

豊洲市場での地下水の調査は2014年秋以降、9回実施された。今年1月に公表された最後の調査で基準値を最大79倍上回るベンゼンなどが検出された。

数値が急激に悪化したため、実施したのが今回の再調査だ。再調査でも最大100倍のベンゼンが検出され、毒性が強いシアンなども再び見つかった。

環境基準は地下水を飲み水に使う場合の目安である。豊洲では飲料水としても食品の洗浄にも使わないから、これで安全性に欠けるわけではない。土壌はコンクリートなどで覆われているので、法的にも何ら問題はない。

しかし、この結果では消費者の理解はなかなか得られまい。再調査でも数値は改善していなかったのだから、なおさらだろう。

一方で、築地市場も問題を抱えている。こちらも土壌汚染のおそれがあるうえ、市場内の6棟の建物は耐震性を欠いていることが発覚した。開放型の施設が多いから衛生面にも不安がある。

東京都は当初、築地市場を現在地で再整備する方針だった。1991年に着手したが、営業しながらの工事は難航し、とん挫した。過去の経緯をみても建て替えは時間や費用がかなりかかるだろう。

豊洲市場を巡っては、都議会の百条委員会が続いている。土壌汚染に対する都の認識が甘かった点や、石原慎太郎元知事がこの問題に関して人任せにしていた様子などが明らかになった。

これまでの経緯を引き続き検証することは大事だが、それを移転の是非を決める判断材料のひとつと位置付ける小池百合子知事の姿勢は解せない。過去と今後は切り離して考えるべきだ。

豊洲でも築地でもない第3の選択肢はあるのか。まずは、豊洲での有効な追加対策の可能性を探るべきだろう。
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2017年03月20日

[日経新聞] 好循環つくれぬ「官製春闘」 (2017年03月20日)

賃金の伸びをテコに経済を活性化させようという政府のもくろみが、腰折れしかねない状況といえよう。自動車、電機などの主要企業の賃上げ回答は、昨春に続いて、毎月の基本給を引き上げるベースアップ(ベア)が多くの企業で前年を下回った。

経営者が積極的な賃上げを継続できる環境が、整っていないことの表れともいえる。規制改革など政府は企業活動を活発にする政策に力を入れるべきだ。

トヨタ自動車のベア回答は昨年より200円少ない1300円、日産自動車は半分の1500円だった。電機は日立製作所、パナソニックなどが昨春より500円少ない1000円にとどまった。

前年割れの背景には、米トランプ政権の発足や英国の欧州連合(EU)離脱決定などで、世界経済が不透明さを増していると経営者が受け止めていることがある。

企業に求められるのは、そうした外部環境の変化を乗り越えて、賃上げの原資となる収益を着実に高める経営力だ。日本の1人あたりの付加価値は伸び悩んでおり、生産性の向上を急ぐ必要がある。

企業の後押しこそ、政府の役割である。成長分野への企業の参入を阻んでいる壁を取り払ったり、人工知能(AI)やロボットなど新技術を活用した経営効率化を広げたりするためにも、規制の見直しは重要になる。

投資家の声を生かし、経営者に成長投資など収益力の向上を促す企業統治改革も意義が大きい。働いた時間でなく成果に対して賃金を払う「脱時間給」制度など、労働生産性を高める働き方の制度も整備が急務だ。

政府が企業に賃上げを要請する「官製春闘」は今春で4年連続だ。だが、要請すれば賃上げが順調に進むというものではないことは、はっきりしてきたといえる。

賃金が上がって消費が伸び、企業収益が拡大してそれがまた賃金を増やすという「経済の好循環」を政府は描く。実現のため、政府はやるべきことをやってほしい。
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[日経新聞] 保護主義に反対できないG20では困る (2017年03月20日)

「米国第一」を掲げるトランプ米政権との間で、主要国や新興国がしっかりとした国際協調を築く難しさが浮き彫りになった。

トランプ政権が誕生してから初めてとなる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、異例の展開となった。

G20はこれまでに採択した声明で、貿易や投資の面で「あらゆる形態の保護主義」に対抗する方針を繰り返し確認してきた。

各国が関税を高くしたり、不当な補助金で輸出を増やしたりすれば、報復の連鎖を通じて世界経済に大打撃を与えるからだ。大恐慌などで学んだ教訓である。

それなのに今回のG20は米国の反対を受けて声明から「保護主義に対抗」の文言を削除し、代わりに「経済に対する貿易の貢献の強化」と指摘するにとどめた。こんな中途半端なG20では困る。

多額の貿易赤字を削減したい米国の立場に配慮し「過度の世界的な不均衡の縮小」に努力する、との表現も声明に盛り込んだ。

トランプ政権は環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を決め、米国の利益を損なうような世界貿易機関(WTO)の決定に従わない方針すら示している。保護主義的な姿勢は大いに心配だ。

次は各国・地域の首脳の番だ。公正なルールに基づく自由貿易のあり方は、首脳自らが討議するに値するテーマである。

トランプ米大統領を交えた5月の主要7カ国(G7)、7月のG20の首脳会議で、保護主義に戻らない方針を再確認してほしい。

今回のG20の数少ない成果は、外国為替政策だ。「為替の過度な変動や無秩序な動き」が経済に悪影響を与えるとの認識を共有するとともに、通貨の競争的な切り下げを回避するという従来の方針を踏襲したのは評価できる。

トランプ氏はかつて日本を「通貨安誘導」と批判していたが、日米の財務相による意思疎通が進んだ点もひとまず金融市場の安定につながる材料だろう。

今後もトランプ政権の対応に各国や国際社会が振り回されることが予想される。G7やG20はもちろん、国連やWTOといった場での合意形成はますます難しくなると覚悟しておく必要がある。

米国は政権交代直後の方針転換を国内外に印象づけたい面もあるのだろうが、建設的な態度で各国と真摯な対話を重ね、国際協調に努めるよう改めて求めたい。
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2017年03月19日

[日経新聞] 改憲は急がば回れの発想で (2017年03月19日)

衆院憲法審査会が4カ月ぶりに憲法改正の実質審議を再開した。まずは「参政権に関連した諸問題」に重点をおいて討議する。与野党の問題意識には共通点もあり、優先度が高い改憲項目は何かという合意形成に向けて丁寧で建設的な議論を期待したい。

与野党6会派は16日の衆院憲法審査会で、大災害時の国会議員の任期延長、首相の解散権のあり方、衆参両院の選挙制度などについて見解を表明した。

自民党は2011年の東日本大震災後に地方選挙が執行できなかった例をあげて「国会議員の任期延長が必須となる」と訴えた。民進党は首相の解散権を制限すべきだと主張する一方で「緊急事態での衆院議員の任期延長は検討に値する」との認識を示した。

公明党は「危機管理法制は相当整備されている」としてやや慎重、日本維新の会は改憲に積極的な立場から意見を述べた。共産党や社民党は、憲法に規定のある参院の緊急集会や投票日の繰り延べで対応可能などとして改憲に反対だと強調した。

緊急事態条項を巡っては自民党が2012年に公表した憲法改正草案で、武力攻撃や内乱、大規模災害時に内閣に「法律と同一の効力を有する政令」の制定権を与えるといった考え方を示した。

16日の審議では内閣や首相への強い権限付与に慎重意見が多かったが、災害時の議員任期の延長や国と地方の関係などは優先的な検討課題になり得る。

安倍晋三首相は5日の自民党大会で「今年は憲法施行70年の節目の年だ。自民党は憲法改正の発議に向けて、具体的な議論をリードしていく」と語った。

時代に合わせた憲法の議論は大事であり、緊急事態の対応や衆参両院の位置づけ、「1票の格差」の是正などは重要なテーマだ。ただ改憲への立場は与党内にも温度差がある。国民の幅広い理解を得るには、丁寧な議論の積み重ねが前提となる。国会審議も急がば回れの発想で臨んでほしい。
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[日経新聞] 日本はTPP11カ国の協調を主導せよ (2017年03月19日)

環太平洋経済連携協定(TPP)の署名国は、米国がTPP離脱を正式に決めた後で初めてとなる閣僚級会合を開いた。

TPPは実質的に世界標準となる貿易・投資ルールである。米国を除いた11カ国が、地域の経済統合の原動力としてのTPPの役割を強調したのは当然だ。

TPPの将来像をめぐり、11カ国には温度差がある。

たとえば、オーストラリアやニュージーランドは米国を除いた11カ国での発効を主張したとされる。農業国である両国は米国と競合している。米国が離脱すれば、その分だけアジアや中南米に牛肉などを輸出しやすくなる。

これに対し、日本などは最大の経済大国である米国のTPP参加が重要との立場から、米国抜きの発効に慎重だ。中南米の一部の国には中国や韓国の参加に期待する声もある。三者三様だ。

大事なのは、11カ国の結束を固めることだ。5月下旬の次回会合までに各国は意見の隔たりをできるだけ埋め、合意点を見いだす努力をすべきだ。そのために日本こそ指導力を発揮すべきだ。

米国が加わったTPPが理想型なのはたしかだ。しかし、トランプ米政権が近い将来にTPPに復帰するとは考えにくい。

米国にはいつでもTPPに戻れるように門戸を開けておく。同時に、次善の策として、米国を除く11カ国でTPPを発効できるように、発効条件の変更といった協定内容の部分的な見直しの準備も進める。

また、各国が個別に米国と2国間の自由貿易協定(FTA)を結ぶのも排除しない。そんな3段階の対処方針で11カ国が協調できるように働きかけてはどうか。

「米国抜きのTPP」に米国が難色を示す可能性はあるが、そうした選択肢を考えざるを得ない状況をつくった責任は米国にある。

TPPはモノにかかる関税撤廃だけでなく、知的財産権の保護、電子商取引、環境、労働などの新たなルールも定めている。

米国が約束した関税撤廃が実現しない欠点を割り引いても、透明性の高いルールをアジア太平洋地域に広げていく利点はきわめて大きい。

11カ国によるTPPは、日本が今後の米国との通商協議を優位に進めるためのカードになる可能性も秘める。日本が率先して汗をかく必要がある。
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2017年03月18日

[日経新聞] 原発事故の過失認めた重み (2017年03月18日)

東京電力福島第1原発の事故で、福島県から群馬県に避難した住民らが「生活基盤を失い、精神的苦痛を受けた」などとして国と東京電力を相手に損害賠償を求めていた集団訴訟の判決が、前橋地裁であった。

地裁は「国や東電は巨大津波の到来を予見することができ、事故を防げた」と指摘し、両者に賠償を命じた。事故をめぐる一連の裁判のなかで国や東電の過失が認められたのは初めてのことだ。

従来の司法判断の流れからみれば大きく踏み込んでおり、唐突な印象も否めない。だが、つねに万一の事態を想定し、安全を確保するための備えを尽くすべきだとする裁判所の考えが明確に示されたことの意味は、重い。

2002年に巨大地震発生の可能性を示す長期評価が出され、国と東電は津波が来ると想定できた。それを受け国は東電に対策を命じる権限があったのに、怠った。判決はそう結論づけた。

国や電力会社は指摘を真摯に受け止め、原発の周辺住民に対する避難計画の策定といった安全対策に生かしていく必要がある。

原発事故の避難者には、学識経験者らでつくる原子力損害賠償紛争審査会による指針にもとづいて、賠償が行われてきた。

だが事故から6年たったいまもなお、多くの人が福島をはなれて暮らしている。今回の判決は、国や東電の対応に納得しきれないままたくさんの人たちが避難生活を余儀なくされている現状を、改めて示したといえる。

今回の訴訟と同じような形で損害賠償などを求める訴訟は、全国各地で30件ほどが争われているという。強制起訴された東電の旧経営陣らに対する刑事責任の追及も今後、始まる。

各地の原発の再稼働をめぐっても依然、様々な議論が続く。安全性をめぐる国民の不安は払拭されていないままだ。

今回の判決はこうした動きに影響を与えることも考えられる。事態を注視していく必要がある。
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[日経新聞] 着地点みいだした国会の天皇退位論議 (2017年03月18日)

天皇陛下の退位に向けた法整備をめぐり、衆参両院の正副議長が国会としての提言を安倍晋三首相に伝達した。1月以来の各党派の議論を踏まえた内容である。

一代限りの特例法を主張する与党と、皇室典範改正による恒久制度化を求める野党が当初は対立していたが、双方が歩み寄った。退位を特例法で定めたうえで、特例法と典範が「一体をなす」と典範の付則に明記するという。

大きな政治問題としないで国民の多くが納得できそうな着地点を見いだした努力を、評価したい。首相はできるかぎり尊重して法案づくりを進めてほしい。

特例法と典範の付則という枠組みは、国民を代表する国会が退位をそのつど判断できる。それを通じて、象徴天皇制に対する国民の理解と共感が一層ふかまる。

「典範による皇位継承を定めた憲法2条に違反する」との疑いも払拭される。退位は例外的措置としながらも、将来の退位の先例にもなり得ることも明らかにした形で、妥当だろう。

提言はまた、今回の退位論議にいたった事情を特例法に詳細に記すよう求めた。昨夏の陛下の「おことば」への国民の共感など固有の事情を強調することで、今後、恣意的、強制的な退位につながるのを避ける狙いだ。

退位の手続きや退位後の敬称、待遇も規定すべきだと指摘した。ほぼ200年ぶりとなる退位を円滑にすすめるための配慮を重ねており、評価できよう。

「おことば」の末尾で陛下は、皇室の安定的な持続にも強いお気持ちをにじませた。「女性宮家の創設等」について提言は、特例法の施行後に検討すべきだという点で政府と各党派が一致している、と明示した。

ただ、結論を得る時期について思惑の違いは大きい。提言は、付帯決議に盛り込むことも含め合意に向けた努力を各党派に促した。注目していきたい。

政府の有識者会議も近く再開される。大型連休前後とされる法案提出に向け、詰めなければならない点は数多い。特に、暮らしに影響の大きい改元の時期に関してはスピード感が必要だ。

2019年元日の改元が検討されているとされるが、それには様々なシステムやカレンダーなどの手直しがともなう。国会はさらに政府と意思疎通を密にして「国民の総意」づくりに努めてほしい。
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2017年03月17日

[日経新聞] 稲田防衛相の管理能力を疑う (2017年03月17日)

閣僚の国会での説明がここまでいい加減では、野党が「隠蔽だ」と追及するのは当然だろう。南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊の日報問題などを巡り、稲田朋美防衛相の管理能力に大きな疑問符がつく状況になっている。

南スーダンPKOの派遣部隊の日報に関して、防衛省がこれまで「廃棄して存在しない」と説明してきた陸自内で保管されていたことが明らかになった。

南スーダンでは昨年7月に政府軍と反政府勢力の大規模な武力衝突が起き、陸自の派遣部隊は日報で「戦闘」との表現を使った。

防衛省は昨年12月に日報への情報公開請求に対し「すでに廃棄した」として不開示とした。その後の調査で統合幕僚監部に電子データが残っていると判明したにもかかわらず、防衛相への報告まで1カ月を要し、公表はさらに2月7日にずれ込んだ。

陸自内に日報のデータがずっとあったとすれば、防衛相は国会で事実と異なる答弁を繰り返したことになる。それまでの説明と辻つまを合わせるため、陸自内で見つかったデータが消去されたとの疑いも浮上している。

防衛相は一連の経緯を踏まえ、直轄の防衛監察本部に特別防衛監察の実施を命じた。対応が後手に回っているとはいえ、情報管理の問題点や隠蔽の有無をきちんと明らかにしてほしい。

防衛省は日報の扱いについて、中央即応集団司令部の担当者が報告用の「モーニングレポート」を作成したら廃棄する仕組みだと説明してきた。現地情勢は隊員の安全に直結するだけに関心も高い。これを機に情報の保全と公開に関する基準を見直す必要がある。

防衛相は日報の扱いがこれだけ焦点になっても省内の動きを把握できていない。学校法人「森友学園」の訴訟への弁護士時代の関与を全面否定した先の答弁も「記憶違い」だったとして発言の撤回と謝罪に追い込まれた。国会審議に臨む姿勢が問われている。
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[日経新聞] 経済の安定に資する米の緩やかな利上げ (2017年03月17日)

米国が昨年12月に続く利上げに踏み切った。経済が順調に回復しているのを映した決定である。緩やかな利上げの継続は、金融の不安定化を防ぎ、米景気拡大の持続力を高めることにもつながる。

米国の金利上昇は資金の米国への回帰や一層のドル高につながる可能性もある。海外からの資金依存度が高い新興国は、変化に耐えられるよう国内の経済構造を強固にしていく必要がある。

2015年、16年と1年に1回だけだった従来に比べれば利上げペースを速めるものの、内外の経済状況を見極めながら慎重に判断する姿勢は変えない。イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が、利上げ発表後の記者会見で示したのはこうした考え方だろう。サプライズを避けつつ政策を決めていく姿勢は評価できる。

米国が経済回復に伴い金利を引き上げることは、将来景気が悪化したときの利下げ余地を増やす面もある。ゼロ金利の壁にぶつかる可能性を減らせるという意味でも、経済の安定に貢献する。

米国経済には、仕事がみつからない人がなお多いといった問題が残る。だが、その解決手段は景気刺激よりも、求職者の技能と需要が合わないミスマッチの解消といったミクロ政策に移っている。

米国経済や金融政策にとって最大の不透明要因は、皮肉なことにトランプ米新政権の政策運営だ。

減税やインフラ投資などの財政刺激策がどこまで実現するのか、保護主義的な政策を本当に実施するのか。これら次第では経済や金融政策が予想された道筋からはずれる可能性がある。トランプ大統領は来年2月に任期が切れるイエレン議長を再任しない姿勢を示しているが、どんな人を後任にするのかもまだ見えてこない。

日本にとっては、米経済の改善や米金利の緩やかな上昇はプラス材料だ。日本の景気押し上げや、円高が進みにくい環境をつくりだすからだ。副作用を伴う一段の金融緩和を迫られるリスクも減る。

物価がほぼ横ばいにとどまる日本は、短期の政策金利を米国と同じように高められる状況にはなっていない。ただ米国の利上げ継続に伴い、日本の長期国債金利には上昇圧力が高まる可能性がある。

日銀は、昨年9月に10年物国債の利回りを0%程度に誘導する政策を導入したが、この水準に抑え続けることの是非についても今後議論がなされるべきだろう。
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