2017年09月20日

[日経新聞] 与野党は財政・社会保障で責任ある議論を (2017年09月20日)

安倍晋三首相が衆院を解散する意向を固め、10月22日に総選挙を実施する見通しとなった。首相は2019年10月に予定する消費税の増税分の使い道を、教育無償化などに拡充する検討に入った。民進党の前原誠司代表は増税分すべてを社会保障や教育に充てる構想を示している。

各党は票目当ての政策を競うのではなく、中長期に財政・社会保障の仕組みを安定させる道筋で責任ある議論をしてほしい。

12年6月の旧民主党政権下の与野党3党合意では、消費税率を2段階で10%に上げることが決まった。12年末に発足した安倍政権は14年4月の8%への引き上げは予定通り実施したが、その後は景気情勢などを理由に延期した。

3党合意は、5%の引き上げ分のうち1%分(約2.8兆円)を社会保障の充実に充て、残りの4%分を年金の国庫負担や国債の償還など財政健全化に振り向けるとしていた。

この増税分の使い道に教育無償化などを加え、財政健全化と社会保障などへの新規歳出の配分割合も見直すことを、首相は検討しているという。

安倍政権が看板政策に掲げた「人づくり革命」では、教育の無償化や生涯学習支援などを全部実施すれば兆円単位の財源が必要になるとみられている。

そこに消費増税分を充てる案が浮上した形だが、安易な使途拡大は許されない。大学教育の無償化などは問題が多く、人材投資は費用対効果を見極め厳選すべきだ。社会保障費も聖域ではなく、一段の効率化と抑制の努力が要る。

安倍政権はプライマリーバランス(基礎的財政収支、PB)を20年度に黒字化する財政再建目標を掲げているが、今後8兆?10兆円の収支改善が必要な目標達成は厳しいという見方が増えている。

政府は来年なかばに財政再建目標の中間見直しをする。消費税増税の使い道を議論するならば、中長期の財政再建目標についても語るべきだ。野党もあらたな歳出を約束するだけでなく、財政再建の見取り図を示してほしい。

借金の返済というと後ろ向きに聞こえるが、財政健全化は、超高齢化社会に向けた社会保障制度の安定と表裏一体のものだ。「財政再建か、社会保障か」という二者択一の議論ではない。選挙戦では、将来世代の負担と給付も考えた骨太の論戦を聞きたい。
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[日経新聞] 地価の回復が続くためには (2017年09月20日)

地価が緩やかに回復している。国土交通省が公表した基準地価(7月1日時点)は商業地が2年連続で上昇し、住宅地も下落幅が一段と縮まった。

今回の特徴は、地価回復の動きが地方に一段と広がったことだろう。札幌や仙台、福岡などの上昇率は三大都市圏を上回っており、地方でも地価が上昇に転じた地点が着実に増えている。

訪日客の増加と投資資金の流入が支えている。住宅地では、外国人の別荘地の購入が広がる北海道倶知安町の上昇率が全国で最も高かった。商業地の上昇率の上位にも、訪日客に絡む店舗需要が強い京都や大阪の地点が並んだ。

人手不足を背景とする物流施設の建設が回復を後押ししているのも特徴だ。工業地の地価は住宅地に先駆けて下落から脱した。

金融機関の不動産融資が高水準なのはやや気がかりだが、現在の地価動向は総じて実需に裏打ちされているとみていいだろう。

先行きには懸念材料が幾つかある。首都圏ではマンションの価格が高止まりし、需要がついていかない。企業業績の改善が賃金の継続的な上昇につながらないと、住宅販売は息切れしかねない。

ここ数年、節税目的による賃貸住宅の建設が増えたのも心配な点だ。首都圏でも空き家は増えており、需給が緩む一因になる。

商業地をみても、東京の都心部ですらビルの賃料の上昇が鈍い。来年以降、大型ビルが相次いで完成することが賃料の上値を抑えている。土地の収益力が高まらないと地価の上昇は続かない。

地価が今後も持続的に回復するには、規制改革などをてこに都市の魅力をさらに高めることが欠かせない。成長戦略を着実に実行し、2020年の東京五輪以降も海外から資金や人を呼び込む基盤を整える必要がある。

明るさが広がる地方でも、調査地点の3分の2は今も地価が下がっている。訪日客を幅広い地域で呼び込み、コンパクトな街にならないと下げ止まらないだろう。
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2017年09月19日

[日経新聞] 薬物汚染への警戒を強めよう (2017年09月19日)

薬物汚染の広がりが懸念される。大麻の幻覚成分を濃縮した「大麻ワックス」という新たなタイプの薬物が相次いで押収され、船舶を使った覚醒剤の大量密輸事件なども続いているからだ。

薬物の乱用は本人や家族を不幸にし、良好な治安や社会の基盤をむしばむ。警察や厚生労働省、海上保安庁、税関など関係する組織が協力して、一段と取り締まりに力を入れる必要がある。

特に重要なのは密売する組織の解明と摘発だ。日本に出回る薬物の多くは密輸入されている。海外の取り締まり当局との連携が欠かせない。なによりまず水際で押さえ、通信傍受や「泳がせ捜査」など法律で認められている手法も駆使し、捜査の実をあげてほしい。

ここ数年、大きな社会問題になっていた危険ドラッグは、販売店の摘発などの対策で沈静化しつつある。だが薬物情勢全体をみればまったく楽観はできない。

大麻事件での摘発者数が増えていることに加え、より危険性が高い大麻ワックスが流行の兆しを見せている。関東信越厚生局麻薬取締部によると、それまで摘発例がなかったのに昨年は6件、今年は8月末までに8件が全国で押収された。市販されている器具で乾燥大麻から容易に抽出することができるため、警戒が必要だ。

国内で乱用される薬物の大半は覚醒剤だ。昨年1年間に全国で押収された覚醒剤は約1521キロで、過去2番目の多さだった。今年に入ってからも大がかりな密輸事件が発覚しているが、国内での末端価格はむしろ下落傾向にあるという。「十分な量」が出回っている可能性を示している。

米国ではオピオイドという医療用麻薬の乱用が広がり、依存症になって働かなくなったり、過剰摂取で死亡したりする人が急増し、大きな社会問題になっている。

まん延を防ぐには薬物の恐ろしさへの認識を社会で共有しなければならない。若い世代などに向けて、データや実例を用いた教育・啓発の取り組みを強化すべきだ。
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[日経新聞] 首相は何を争点に国民の審判を仰ぐのか (2017年09月19日)

安倍晋三首相が衆院を解散する意向を与党に伝えた。何を争点に国民の審判を仰ごうとしているのだろうか。任期を1年あまり残して総選挙に踏み切るからには、問いたいテーマがあるのだろう。憲法改正なのか、経済再生なのか。争点隠しと言われない選挙戦にしてもらいたい。

選挙の争点は本来、与野党の論戦を通じて定まっていくものだ。しかし、急に解散が浮上し、10月22日の投票日まで約1カ月しかない短期決戦である。政策万般を漠然と論じていては、何のための選挙かがよくわからないうちに終わってしまう。

2000年代前半に盛り上がったマニフェスト(政権公約)づくりが下火になり、最近はひたすら政党名や候補者名を連呼するような選挙戦が復活しつつある。「お任せください」型の選挙が低レベルの国会議員を生んでいる。もっと政策本位の選挙にしなくてはならない。

有権者が投票する際の判断基準を大別するとふたつある。過去の業績評価と将来への期待表明である。前者は2014年の前回の衆院選後に安倍政権が推し進めた政策、例えば安全保障法制の整備が適切だったのかどうかを考えて1票を投じるというものだ。

北朝鮮の核・ミサイル開発を抑止するうえで、集団的自衛権の行使の限定解除が効果を生んでいるのか。よく考えて適切と思えば与党に、不適切と思えば野党に投票すればよいわけだ。

他方、期待表明は与野党が掲げるビジョンを見比べ、善しあしを判断するものだ。一般国民があれもこれも細かく検討するには簡単ではない。まずは解散を断行する側の首相が、国民に問いたいことを語るべきだ。

8月の内閣改造・自民党役員人事のあと、首相は経済再生に最優先で取り組む方針を示した。そのための道筋はしっかり説明してもらいたい。

衆院解散は首相の伝家の宝刀であり、歴代首相は勝てそうと思ったときに解散権を行使してきた。そうした判断力も政治家の重要な資質であることは否定できないところだ。

とはいえ、与党にとっての損得だけで宝刀を振り回されては、有権者も鼻白むに違いない。森友・加計学園問題の疑惑隠し解散などと言われて損をするのは首相自身である。
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2017年09月18日

[日経新聞] 生保選びの眼力が試される (2017年09月18日)

2018年4月に新規契約者を対象にした生命保険料が変わる。寿命の延びなどを反映して保険料算定の基準となる生命表が11年ぶりに改定されるためで、生保各社は商品ごとに保険料を見直す。

生保は消費者にとって住宅に次ぐ人生の大きな買い物とされる。需要が膨らむ医療保険を中心に新商品が相次ぐなかでニーズに合った保険選びの眼力が問われる。

生命表の改定は07年以来。多くの死者・行方不明者を出した11年の東日本大震災が生命表に及ぼす影響が確認できたこともあり、保険業界で作る日本アクチュアリー会が生命表の改定作業に着手していた。前回改定に比べ、例えば40歳男性の死亡率は10万人中148人から118人に低下する。

生命保険は「死亡保障型」「貯蓄型」「生前給付型」の3種類に分けられる。このうち契約者の生死と関係が薄い個人年金保険など貯蓄型には大きな変更がない。一方、契約者が死亡した際に遺族らに保険金が支払われる定期保険など死亡保障型は、10%前後の保険料引き下げが期待できそうだ。

注目は長生きリスクに対応する生前給付型だ。民間介護保険や医療保険など第3分野と呼ばれ、本来なら寿命が延びるほど保険金や給付金が支払われる回数が増えるため保険料に上昇圧力がかかる。

だが生保各社は値上げをするか否か、慎重に検討している。成長市場でシェアを確保するため利益を削って料率を据え置く可能性もある。喫煙の有無によって保険料が異なったり病気になった際に所得保障したりする保険など、多様な新商品開発が加速しそうだ。

保険の契約期間は長期に及ぶだけに商品選びにあたって保険会社の経営状態の確認も欠かせない。今回の生命表改定は保険会社の収益を圧迫する。契約者は業績の動向や保険金の支払い余力を示すソルベンシーマージン比率など健全性指標にも目配りしてほしい。何より、消極的な情報開示が批判されてきた生保業界が契約者への情報提供をさらに徹底すべきだ。
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[日経新聞] 広がる「観光公害」へ対策を急ごう (2017年09月18日)

一部の観光地で、訪問客の増加により地域の生活に支障が出始めている。道路の渋滞や交通機関の混雑、マナー面の摩擦などが住民の間に不満を生み、「観光公害」という言葉も使われ始めた。これ以上深刻化する前に、現状の把握と総合的な対策を急ぎたい。

かつて観光公害といえば、山や海でのゴミ投棄や自然破壊を指した。今は生活環境の侵害が問題となっている。住民の足である鉄道やバスが混む。渋滞で車が使えない。祭りに支障が出る。住宅街で騒ぎ、写真を撮りゴミを捨てる。そうした例が指摘されている。

観光客は世界中で増えている。欧州では反観光運動が起こり、受け入れ抑制に乗り出す都市も現れた。民泊の普及で空き家が減り家賃が上昇したことも反観光ムードを生んでいる。外国人観光客が急増した日本でも摩擦や弊害への対策は急務といえる。

分野や地域ごとに個別の対策は始まっている。国土交通省はIT(情報技術)を活用し、渋滞状況の把握と解決策の研究を始める。鎌倉市は地元の江ノ島電鉄で、混雑時には地元住民を優先して駅に入れる社会実験を実施した。

宅配便業界は、外国人が大きな荷物を路線バスに持ち込まなくて済むよう宿泊施設間の荷物配送に乗り出す。旅行業界は日本のマナーや生活習慣を本国から出発する前に伝える努力を続けている。

こうした事例や実情を踏まえ、政府はまず、どういう問題が、どの程度の深刻さで広がっているのか、実態を把握してはどうか。各地の情報を共有できれば、自治体がそれぞれの実情に応じ、具体策を工夫するときに役立つ。

訪問地などの分散も進めたい。かつて静かな地方都市が古い町並みを「小京都」と宣伝し、国内客を集めた例が参考になる。人気観光地と周辺の町が連携し、公共交通機関で足を確保しつつ宿泊先を分散させた例も欧州にはある。

政府はこれまでのように訪日外国人の数だけを追うのではなく、富裕層など経済効果が大きく、1カ所に長期滞在する層の呼び込みにも力を入れたい。

住民の不満の裏には、コストやマイナス面だけを負担させられているという意識もあろう。観光収入の増加を目に見える形で地元に還元する仕組みを作るのも一案かもしれない。同じ悩みを持つ世界の町に、日本ならではの解決策を発信したい。
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2017年09月17日

[日経新聞] ロヒンギャの救済へ実行を (2017年09月17日)

ミャンマー西部に暮らす少数民族「ロヒンギャ」が、深刻な危機に直面している。武装勢力と国軍が衝突したあおりで、30万を超える人たちが隣国バングラデシュへの避難を余儀なくされている。

アウン・サン・スー・チー国家顧問ひきいるミャンマー政府は、ロヒンギャへの迫害をすぐに止めなくてはならない。避難生活に苦しむ人たちへの支援を、国際社会は迅速に実行すべきだ。

危機の発端は8月下旬に武装勢力が治安施設を襲撃したことだ。掃討作戦に乗りだした軍は、武装していないロヒンギャも攻撃した。国連のグテレス事務総長が軍事行動を停止するようミャンマー政府に求めたのは、当然だ。

問題の根が深いことには注意が必要だろう。ミャンマーで多数派の仏教徒たちの間では、イスラム教徒のロヒンギャへの差別的な感情が際だって強い。

国籍を与えないなど政府がロヒンギャを不当に扱ってきた背景には、そうした差別意識が横たわる。ノーベル平和賞の受賞者でもあるスー・チー氏が、ロヒンギャ保護をはっきり打ち出してこなかったのも、多数派の反発を恐れた面が大きいようだ。

とはいえ、東南アジアで最も深刻といわれる人道危機に手をこまぬいていいわけはない。スー・チー氏はじめミャンマー政府は差別を打破する努力が求められる。

国際テロ組織のアルカイダは最近、ロヒンギャ迫害を理由にミャンマーへの攻撃を呼びかけた。テロの拡散を防ぐためにも、ミャンマー政府が和解と共存の道に踏み出すよう、日本を含む国際社会は働きかけを強めるべきだ。

今年の国連総会への出席を見送ったスー・チー氏は19日、首都ネピドーで演説する。迫害を終わらせるための、断固としたメッセージを期待したい。

スー・チー氏が招いたアナン元国連事務総長をトップとする委員会は8月、ロヒンギャに国籍を認める制度の導入などを勧告した。まずはこの勧告の実行である。
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[日経新聞] 新たな選挙互助会では支持は得られない (2017年09月17日)

東京都の小池百合子知事に近い若狭勝衆院議員が主宰する政治塾が初会合を開いた。塾を踏み台に旗揚げする新党は政界の台風の目になりそうだ。気がかりなのは、どんな政策を進めたいのかが、まだよく見えないことだ。新たな選挙互助会づくりになってしまっては、有権者の支持は得られまい。

政治塾「輝照塾」の初会合には約200人が参加した。若狭氏は「日本の未来図を悲観から希望に変える」、講師として参加した小池氏は「必要なのは評論家ではなく、プレーヤーだ」と訴えた。

若狭氏はすでに政治団体「日本ファーストの会」を発足させ、民進党を離党した細野豪志衆院議員らと会合を重ねている。政治塾を通じて発掘する新人候補を含め、次の衆院選に向けて、近く新党を立ち上げる意向だ。

現時点では、有権者の期待度はさほど高くはない。日本経済新聞とテレビ東京の最新の世論調査によると、日本ファーストの会に「期待する」(42%)は「期待しない」(48%)を下回っている。

新党といっても参加が見込まれる議員のうち、元自民党は若狭氏だけだ。逆に目立っているのが細野氏や長島昭久衆院議員といった民進党離党組である。

民進党では離党ドミノが起き始めており、さらに多くの議員がなだれ込んでくる可能性も取り沙汰される。「第2民進党」との印象を与えていることが、ブームになっていない最大の理由だろう。

もうひとつの理由は、政策の旗が見えないことだ。若狭氏は「一院制の実現」を打ち出した。統治機構改革は重要なテーマだが、それをもって自民党との対抗軸とするのは無理がある。

外交・安保、経済再建、税・社会保障など国政の重要課題にどう取り組むのかを明確にしてもらわなければ、有権者も支持してよいものかどうかを判断できない。

初会合のあと、記者団に具体的な政策プランについて聞かれた若狭氏は「それはまだ」と語るにとどめた。何のための新党かをはっきりさせ、それに合わない議員の参加は断るぐらいでなければ、選挙互助会のそしりを免れない。

小池氏が国政にどうかかわるのかも知りたい。地方発の政党としてはすでに日本維新の会があるが、責任の所在がわかりにくいなどの問題が指摘されている。同じ轍(てつ)は踏まないようにしてもらいたい。
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2017年09月16日

[日経新聞] 北朝鮮への圧力増す外交努力をさらに (2017年09月16日)

北朝鮮が15日、日本上空を通過する弾道ミサイル発射を再び強行した。国連安全保障理事会が6回目の核実験を受けて追加制裁を決議した直後の暴挙だ。日本政府はニューヨークで始まった国連総会の機会などを通じ、国際社会の圧力を増すための外交努力をさらに強める必要がある。

発射は中距離弾道ミサイル「火星12」とみられ、北海道の襟裳岬の上空を経て北太平洋に落下した。飛行距離は約3700キロメートルで、8月29日の発射より約千キロメートル伸びた。米領のグアム島が射程に入ると誇示したともいえる。

国連安保理が11日に全会一致で採択した制裁決議は、石油供給を実質3割削減するなどの厳しい措置を盛り込み、北朝鮮は「全面的に排撃する」と反発していた。今回のミサイル発射は、国際社会の度重なる警告を無視する危険きわまりない蛮行である。

この決議には北朝鮮が核実験やミサイル発射を中止しない場合には「さらなる重要な措置をとる決意を表明」との確認事項がある。各国は安保理制裁の厳格な履行で足並みをそろえるとともに、もう一段の圧力強化策の検討を急ぐことが肝要だ。

北朝鮮の核・ミサイル開発はすでに現実の脅威であり、核不拡散体制を揺るがしている。中国やロシアを含む主要国が危機感を共有して行動しなければ、軍事衝突の可能性は増すばかりだ。

安倍晋三首相は14日にインドでモディ首相と会談して「北朝鮮への圧力最大化」で一致したのに続き、近く訪米して国連総会に出席する。米韓との首脳会談で緊密な連携を確認し、国際社会に結束を呼びかける重要な機会となる。

一方、国内ではミサイルや部品が落下する万一の事態への備えを急ぐ必要がある。ミサイル発射を伝える全国瞬時警報システム(Jアラート)は、防災行政無線やメール配信の不具合が一部の地域で指摘された。

警報が出た場合はどこへ避難し何をすればいいのか。国民には戸惑いの声も根強い。不安をあおらない配慮をしながら、訓練や危機管理の点検が欠かせない。

国民保護法は日本に武力攻撃があった場合、国と自治体などが連携して住民の避難や救援にあたるよう定めている。自治体は地域の実情に応じ、どう行動すべきかについて住民に分かりやすく周知しておく必要がある。
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[日経新聞] 中小を圧迫する商慣行改めよ (2017年09月16日)

政府は中小企業の働き方改革や生産性向上を後押しするため、関係省庁の連絡会議を発足させて議論を始めた。生産性の低迷につながっている長時間労働の是正と併せ、大企業からの過度な短期納入の要求など、過重労働の背景にもなっている取引慣行の改善に重点的に取り組んでほしい。

雇用されている人の7割は中小企業で働いている。ここで効率的な働き方が広がって生産性が高まれば、経済を活性化させる効果が大きい。公正な取引が浸透するよう政府は努力すべきだ。

総務省の2016年の労働力調査によると、規模の小さい企業は長時間働いている人の割合が大企業に劣らず多い。月末1週間の就業時間が60時間以上の人の比率は、従業員1?29人の企業で7.8%、30?99人で8.1%と、500人以上の7.2%を上回る。

政府は今月下旬に召集される臨時国会に、罰則付きの残業規制を設ける労働基準法改正案を提出する。ただ、こうした制度改革に加えて、中小企業の長時間労働を根本から改善する取り組みが求められる。

企業自身、仕事の進め方の見直しやIT(情報技術)活用を進めねばならないのはもちろんだが、そうした努力が実を結びやすくする環境整備は政府の役割である。

中小企業が挙げる長時間労働の原因で多いのは、取引先が要求する納期が極端に短い場合があることだ。中小企業庁や公正取引委員会には監視の強化を求めたい。

下請け企業が製品の納入時に、対価をもらわずに倉庫へ荷物を搬入している例もみられる。こうした取引慣行も中小企業の生産性の低下につながっている。著しく低い代金での発注などを禁じた下請法違反の取り締まりを含め、不透明な取引慣行を多面的に監視する必要がある。

長時間労働は人材の採用で不利になったり、離職者が増えたりする原因にもなる。中小企業の人手不足対策の観点からも長時間労働を改めることは急務だ。
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2017年09月15日

[日経新聞] 年金未払いがあぶり出した名ばかり改革 (2017年09月15日)

年金受給者に払うべき分を払っていなかった事例が多数あったと厚生労働省が明らかにした。ただでさえ国民の間に不信感が渦巻いている年金制度の土台を揺さぶる不祥事といっていいだろう。

年金事務をつかさどる日本年金機構が未払い分を速やかに払うのは当然として、政権与党が主導して多額の未払いを生んだ真因を徹底して調べる必要がある。

その際に大切なのは、単なる事務処理の誤りだけで済ませないことだ。総額598億円に達する未払い分のうち、260億円は年金機構と公務員などの共済組合との間で受給者情報のやり取りがずさんだったことに起因する。

これは、2012年に成立した関連法に基づく厚生・共済年金の一元化が名ばかりである可能性を示している。一元化はもともと年金の官優遇をならすのが狙いだった。その原点に立ち返り、年金機構と共済組合の統合を含め、年金への信頼を高める制度改革に取り組む責務が政権にある。

年金機構が払っていなかったのは、厚生年金加入者の配偶者が65歳になったときに一定の条件の下でその基礎年金に加算する分だ。対象は10万5963人。うち10万1324人は夫婦どちらかが公務員などの共済年金に入っていた。

ほぼ10年前、年金機構の前身である社会保険庁が5000万件の年金記録の持ち主を把握していない問題が発覚した。すったもんだの末に社保庁を解体して年金機構に衣替えしたのは、この宙に浮いた記録問題が発端だった。

今回は年金機構自らが問題点を明らかにして未払い分を払う態勢を整えた。社保庁に染みついていた無責任体質が一掃されつつあることをうかがわせる。

だが未払い分を回復させれば済む問題でもなかろう。厚労省は未払いの理由として年金機構と共済組合との情報連携の不備、システム処理の誤りなどを挙げた。これらは双方を組織ごと一元化していれば防げた可能性がある。

年金の官民一元化は道半ばだ。公務員などの共済組合が所管官庁の天下り先になっている実態もある。政治が主導して組織を統合し積立金運用を一体化する真の一元化に乗り出すときである。

国会論戦に求められるのは、この類いの年金不祥事を政争の具にしない節度だ。加入者・受給者の信頼を回復させるべく、実りある議論を与野党に求めたい。
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[日経新聞] 五輪の将来像示す東京大会に (2017年09月15日)

2024年と28年の夏季五輪の開催都市が、パリ、ロサンゼルスに決まった。いずれも3回目の大会となる。

2都市と国際オリンピック委員会(IOC)による事前の合意が満場一致で認められたものだ。

異例の同時決定は、平和の祭典である五輪が大きな曲がり角に来ていることを示す。その認識を共有しなければならない。

24年の五輪には当初、5つの都市が立候補していた。しかし、住民らの反対などで2都市に絞られ、IOCからの財政支援を得たロサンゼルスが28年開催に回った経緯がある。

巨額の施設建設費、そして期間中の混雑やテロの脅威、開催後の負の遺産などを前に、成熟した市民社会が五輪招致に静かな拒否反応を示しているといってよい。

商業主義的な運営やドーピング問題なども影を落としていよう。

IOCも危機感から3年前に「アジェンダ2020」という行動計画を採択している。既存、仮設施設の活用や会場の分散化を盛り込んだ。20年の東京大会は、その実現が厳しく問われる。

東京大会の運営の成否に今後の五輪の行方がかかっているといっても過言ではあるまい。

まず、約1兆4千億円と見込まれる開催費用に関し、これ以上の膨張で国民に負担を強いぬよう、厳しい目配りが必要である。

セキュリティーや輸送の面でも、種々のテクノロジーを活用し、安全・安心を第一に効率化とコスト減を図ることが肝要だろう。

東京大会では会場内での誘導や通訳、医療などで9万人以上ものボランティアの参加が予定される。その運用の巧拙も大会の運営を左右してくる。

さらに、大会後も施設をレガシーとして長く活用し続けるには、大会前からスポーツの裾野を広げる取り組みなどが大切になる。

「五輪は東京で生まれ変わった」と世界が感じ、将来へ末永く続く契機となる大会を目指したいものである。
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2017年09月14日

[日経新聞] 学力データ提供で政策検証を (2017年09月14日)

文部科学省は来春をめどに、小学校6年生と中学校3年生を対象に毎年実施する全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の集計結果のデータを、匿名化したうえで大学などの研究者に提供する。

初めての試みだ。制度の趣旨を広く周知して、児童・生徒の学力と学習環境の因果関係などに関する学術調査を促し、「科学的な根拠」に基づき教育政策の効果を検証するよう求めたい。

統計法は、政府が収集する統計を社会全体で利用する情報基盤と位置づけ、データを個人が特定できないように加工して研究者に提供するよう規定している。学力テストは「行政資料」という位置づけのためこの対象に含まれない。

調査に毎年約50億円もの巨費を投じているのに、データ提供は国の委託研究に限られている。研究者が独自の視点でデータを収集・分析するには自治体に個別に情報開示を請求するしかない。これでは学力と教育政策の関係をきちんと検証できないという研究者の批判に応えて、ようやく文科省はデータの研究利用を認める。

文科省は学力調査とあわせ、学校の教育環境、児童・生徒の生活態度や習慣などの質問調査を実施している。例えば学級規模と学力の関係を継続的に調査すれば、規模の大小と教科別偏差値の関係が分かる。少人数学級の費用対効果に関する知見も得られよう。

また、タブレット端末を利用したデジタル教科書や、離島や過疎地の小規模学校での遠隔授業システムなど、情報通信技術を活用した教育効果の測定も期待できる。

学力テストは「基礎的知識は身についているが応用力は不十分」という課題を毎年確認するにとどまり、その意義が問われていた。また、「ゆとり教育」などの施策が根拠の薄い印象論や経験主義で進められ、失敗した経緯がある。

教育委員会の同意があれば地域や学校名を明らかにした学力データの提供も可能だ。科学的根拠に基づき、不断に政策を検証する仕組みをつくる一歩としたい。
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[日経新聞] 人への投資は費用対効果を吟味せよ (2017年09月14日)

政府は新たな看板政策に掲げた「人づくり革命」を議論する有識者会議を立ち上げた。人生100年時代を見据えて、人生の様々なステージでの教育・人材投資のあり方を検討するという。その趣旨は正しいが、課題は費用対効果を考慮して、有効な政策を打ち出せるかだ。

「人生100年時代構想会議」と銘打った会議には、首相や関係閣僚のほか、人材論の専門家の英ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授や10代の学生起業家など年齢層も多様な有識者を招いた。

初回会合では、(1)幼児教育の無償化(2)すべての人に開かれた大学教育の機会確保(3)社会人を対象にしたリカレント教育の拡充――などを議題とし、財源も含めて検討することになった。

長寿化社会、第4次産業革命などの構造変化が起きるなかで、成長力強化、生産性向上のためにも教育・人材投資の拡充が必要なのは言うまでもない。問題は限られた財源から、どう優先順位をつけて効率的な投資をするかだ。

大学教育について、安倍晋三首相は、返済不要の給付型奨学金の拡充を検討する考えを示した。経済的理由で大学進学をあきらめる若者への支援は必要だが、どこまで支援するかの線引きが重要だ。広げすぎれば大学無償化に限りなく近づく。大学教育の質の改革もあわせて進めることが不可欠だ。

社会人が産業構造の変化などに対応し新たな能力を取得するリカレント教育への支援も、やり方によっては単なるバラマキ政策になる恐れがある。幼児教育では無償化よりも、喫緊の課題である待機児童の解消を急ぐべきだ。

人材投資を支援するにあたっては、その成果をきちんと検証し、効率的に進める仕組みをつくるべきだ。

首相は「全世代型社会保障」という看板を掲げたが、そのためには高齢者に偏っている社会保障給付を抑え、次世代や現役世代への教育・人的投資に振り向けるといった予算配分の見直しに切り込むことが重要だ。

現在の給付の見直しをせずに、財源を「教育国債」といった借金だけに頼るならば、負担を、育てるべき将来世代に押しつけることになる。有識者会議が単なる予算要求会議にならないように、世代間の公平な負担についても議論してほしい。
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2017年09月13日

[日経新聞] 対岸の火事でない米気象災害 (2017年09月13日)

米国を強力なハリケーンが相次ぎ襲い、洪水や高潮の被害が広がった。暖かい海上で発達し、強い勢力で陸地に近づいた。温暖化が進むと日本付近でもこうしたケースが増える可能性があり、対岸の火事では済まされない。

今週フロリダ州に上陸したハリケーン「イルマ」と8月下旬にテキサス州などを襲った「ハービー」は、ともに最盛期の風速が毎秒60?80メートルに達した。こうした「スーパーハリケーン」が短期間に続けて上陸するのは極めて珍しい。

ハービーはメキシコ湾の高い海水温でエネルギーを得て、上陸前に勢力が強まった。イルマもあまり弱まらないまま上陸し、広い地域に強い風と雨をもたらした。

熱帯太平洋で発生し日本などに影響を与える台風も、近年強力なものが目立つ。迷走後に強い勢力で東北地方に上陸した昨年の台風10号や、歴代3位の「長寿」となり勢力を保ったまま西日本などに大雨を降らせた今年の台風5号は記憶に新しい。

これらの引き金の一つと考えられるのが温暖化だ。イルマやハービーが直接、温暖化によるものとは言い切れないが、何らかの関係があると考える研究者は多い。

スーパーコンピューターを使った計算で、温暖化が進むと海水温の上昇などによりスーパーハリケーンやスーパー台風ができやすくなるとの研究がある。強さを保ったまま北上する台風なども増えるとみられるという。

気象研究で先頭を走る日米欧などの研究機関は協力して、温暖化でどれだけハリケーンや台風の威力が増すのかを明らかにしてほしい。進路や強さの予報精度の向上も課題だ。わずかなずれでも高潮や洪水、竜巻などの大きな被害につながるからだ。

研究と並行して、各国政府は堤防の整備や避難計画の点検などを急ぐべきだ。リスクの大きさとコストを見比べることは大切だが、科学的に未解明な点があるからといって立ち止まっていては対策が手遅れになりかねない。
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[日経新聞] 安保理制裁の厳格履行で北に強い圧力を (2017年09月13日)

制裁内容には不満が残るとはいえ、北朝鮮の核開発を決して容認せず、国際社会が結束して一段と強い圧力をかける姿勢を示したことは評価したい。6回目の核実験を強行した北朝鮮に対し、国連安全保障理事会が追加の制裁決議を全会一致で採択した。

北朝鮮は「大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆」と称する核実験を3日に強行した。安保理はそれから1週間余りという異例のスピードで制裁決議を採択したわけだ。国連総会を控えた日程上の都合もあったにせよ、国際社会の強い危機意識を映したといえるだろう。

決議には米国の当初案にあった石油全面禁輸は盛り込まれなかった。金正恩(キム・ジョンウン)体制に深刻な打撃を与える「最強の制裁」とされたが、禁輸に反対する中国やロシアに配慮したようだ。後退感は否めないものの、北朝鮮への石油精製品の輸出などに上限を設け、石油供給を実質的に3割削減する措置は打ち出した。

決議はまた、新たに北朝鮮からの繊維製品の輸入を禁じ、出稼ぎ労働者に新規の労働許可を与えることなども原則禁止とした。

安保理は過去の決議ですでに、石炭、鉄・鉄鉱石、海産物など北朝鮮の主要輸出品を禁輸対象にしている。今回の制裁措置も加えると、北朝鮮の輸出による外貨収入の90%超を削減できるという。これで核・ミサイル開発の資金源を断てれば、危険な核の挑発に歯止めがかかるかもしれない。

当然ながら大切なのは、安保理決議の厳格な履行だ。厳しい制裁措置も、順守されなければ何の圧力にもならない。とくに北朝鮮との貿易取引の9割以上を占める中国、北朝鮮との関係が深いロシアの役割は重要だ。中ロは安保理常任理事国としての自覚を持ち、履行を徹底してもらいたい。

北朝鮮が従来、制裁に非協力的なアフリカやアジアなどの国々と禁輸品を取引し、外貨を獲得してきた実態も明らかになっている。国際社会が協力し、制裁逃れを厳しく監視する必要もあろう。

北朝鮮は決議に反発し、核・ミサイルの挑発を繰り返す恐れがある。日本政府は不測の事態に備え、万全の態勢を整えてほしい。

北朝鮮が危険な核の暴走を加速させるなら、今度こそ石油禁輸に踏み込むべきだ。今回の決議は将来の禁輸を真剣に検討するという北朝鮮への警告と受け止めたい。
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2017年09月12日

[日経新聞] TPP11テコに貿易自由化の好循環を (2017年09月12日)

日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、インドを含むアジア全域をほぼ対象とする巨大な自由貿易協定(FTA)である。

16カ国による交渉は遅れている。日本は米国を除く11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)の発効に全力を挙げつつ、それをテコに質の高いRCEPの実現を各国に働きかけてほしい。

16カ国が開いた閣僚会合は「年末までに重要な成果を達成」との方針を確認するにとどめた。

設立50周年を迎えたASEANは年内の成果を求めているものの、各国の主張の隔たりは大きく、年内の合意は相当に難しいと判断せざるを得ない。

関税の削減・撤廃をめぐり中国やインドは慎重姿勢を崩していない。高い水準の貿易自由化を求める日本やオーストラリアなどと差がある。

また、一部の国が関税の削減・撤廃を重視しているのに対し、日本は電子商取引や知的財産権などのルールでも高いレベルをめざすべきだとの立場だ。

現時点で16カ国による早期合意だけを優先してしまうと、関税やルールで自由化の度合いの低い内容で妥協せざるを得なくなる。

交渉そのものは加速しなければならないが、合意の時期が多少遅れたとしても、まずは質の高い内容を優先するという日豪などの方針は当然である。

通商分野では、あるFTA交渉が妥結すると、触発されて別のFTA交渉が進むという連鎖反応が起きやすい。RCEPの交渉を後押しする最大のカギは、米国を除く「TPP11」だ。

TPPはきわめて質の高い協定である。米国を除く11カ国は月内に日本で首席交渉官会合を開く。日本は議長国として、11月のTPP首脳会議で発効条件を合意できるよう精力的に動いてほしい。

中印が入るRCEPは、交渉参加国の人口が世界の約半分を占め、先進国だけでなく後発の途上国も含む。だからといって野心的な貿易自由化をあきらめれば、経済効果は大きくそがれてしまう。

TPP11が発効すれば、韓国や台湾なども参加を検討する動きが強まろう。それが質の高いRCEPを促し、将来のアジア太平洋自由貿易圏の可能性を高める。そんな貿易自由化の好循環をつくらねばならない。
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[日経新聞] 尖閣国有化5年で浮かぶ課題 (2017年09月12日)

日本政府が尖閣諸島を国有化して5年が過ぎた。反発した中国は周辺海域での公船の航行をなかば常態化させ、日中関係は緊張を帯びた状況が続いている。

「海洋強国」を掲げる中国共産党政権は今後も力を誇示してプレッシャーをかけてくる公算が大きい。日本は海上保安庁の体制強化など備えを怠ってはならない。

と同時に、尖閣をめぐる対立が日中関係全体をそこなわないようにする外交面の努力が、求められる。北朝鮮の核・ミサイル開発や地球温暖化など、両国が連携すべき課題は多い。

アジアの二大国がいがみあってばかりでは、地域と世界の発展にマイナスだ。根深い相互不信の解消は容易でないが、だからこそ、双方の指導者は話し合いの機会を増やすべきだ。

海保によれば、この5年間で尖閣周辺の領海に中国当局の公船が侵入したのはおよそ200日。接続水域での航行は荒天の日をのぞけばほぼ毎日という。

中国のメディアはこうした活動が習近平国家主席の指示によると指摘し、「日本のいわゆる実効支配を打破した」と意義づけている。中国は公船の増強を進めており、これからも圧力が高まる可能性を覚悟する必要があろう。

尖閣は日米安保の適用範囲に含まれる、との考えを米国は明確にしている。これが中国の軍事行動を抑える効果は小さくないが、日本は気を抜いてはならない。とくに、軍事行動とはみなされない公船や漁船の動きは要注意だ。

尖閣の国有化から間もなく、日本では第2次安倍晋三政権が、中国では習政権が、それぞれ誕生した。以来、両首脳は国際会議などの機会に顔を合わせてきたが、相互訪問は実現していない。一衣帯水と言われる隣国同士の関係としては何とも情けない状況だ。

ただ経済関係はそれほど悪くなく、近年は中国からの観光客が急増している。広い視野から「戦略的互恵」関係を具体化する知恵を、両首脳は問われている。
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2017年09月10日

[日経新聞] カタール危機打開に役割示せ (2017年09月10日)

サウジアラビアやエジプトなどの国々が、カタールとの国交を断絶して3カ月が経過した。アラブ諸国の間に生じた亀裂は収拾の糸口が見えない。

サウジは大産油国であり、カタールは世界最大の液化天然ガス(LNG)の生産国だ。産油地帯であるペルシャ湾の不安定化は世界経済に重大な影響をもたらす。この地域に原油やLNGを頼る日本にとっても人ごとではない。

河野太郎外相がカタールやサウジ、エジプトなど中東を訪問中だ。これらの国々と良好な関係にある日本は、危機の打開へ積極的な役割を果たしていくべきだ。

カタールはLNGの生産・輸出をてこに、飛躍的な経済成長を遂げた。1990年代に最初に輸出したLNGは日本向けだった。今も日本の調達量の約15%がカタール産だ。発電所や空港、都市交通など日本企業が関与する大型プロジェクトも多い。

サウジやアラブ首長国連邦(UAE)は断交に伴ってカタールとの空路や陸上の国境を閉鎖した。今のところLNG輸出に支障は出ていないが、半導体製造などに使うヘリウムガスの輸出は、輸送ルートを変更せざるをえなくなるといった影響が出始めている。

サウジも日本にとって、原油輸入量の3割を占める最大の調達先だ。緊張が武力衝突に発展するようなことになれば、エネルギー供給が滞る事態にもなりかねない。

河野外相はまずカタールを訪れた。11日にはエジプトのカイロで開く「日アラブ政治対話」の場で、アラブ諸国の外相級との会合に臨む。カタール問題がアラブの結束に影を落としているときに、当事国を訪れるのは時宜を得た判断だと言えよう。

カタール問題ではクウェートなどが仲介に動いているが、うまくいっていない。日本も仲介の列に加わり、当事国に対話を促していくことが重要だ。サウジとも、カタールとも話ができる関係をいかし、解決を求める国際社会の声を大きくしていかねばならない。
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[日経新聞] 電気自動車時代の足音が近づいてきた (2017年09月10日)

電気自動車(EV)シフトの動きが世界的に高まっている。日産自動車はEV「リーフ」の初のフルモデルチェンジを実施し、西川広人社長は「日産のコアになる車」と表明した。米国ではテスラが50万台という破格の予約を集めた「モデル3」の納車を始めた。

メーカーだけでなく各国政府もEVの普及に熱心だ。仏英両国は2040年までにガソリン車などの販売を禁止する「脱エンジン」の方針を打ち出した。中国やインド政府、あるいは米国でもカリフォルニアをはじめとする有力州がEVの普及を後押ししている。

以前のEVブームは尻すぼみに終わったが、今回は本物だろう。日本としてもここで競争に負けて、基幹産業の自動車を失うわけにはいかない。EV化の波を「脅威」ではなく、電池の部材や車の新素材、関連する電子部品など幅広い産業を浮揚させる「好機」ととらえ、変化を先取りしたい。

ただ、いたずらに慌てる必要はない。携帯端末の世界では、スマートフォンがいわゆる「ガラケー」に取って代わるのに10年もかからなかったが、車の動きはもっとゆっくりだろう。

米金融大手のゴールドマン・サックスは2040年時点でも世界の新車販売におけるEVの比率は32%にとどまり、エンジン車の45%を下回ると予測する。

電池の性能向上や量産体制の確立、さらにリチウムやコバルトなど電池に使用される金属資源の増産にはかなりの時間が必要になる。使用済み電池のリサイクル技術の確立も未解決の課題だ。

とはいえ変化の波は確実に押し寄せる。過去100年続いた「エンジンだけが車の動力源」だった時代が終わる衝撃は予想以上に大きいかもしれない。独自動車工業会などは「エンジンがなくなれば、ドイツ国内で60万人以上の雇用が影響を受ける」と試算した。

日本でも「脱エンジン」の加速で、一部の自動車部品メーカーなどが痛みを被る恐れはある。

こうした負の側面の一方で、EV化は電子部品や軽量な炭素繊維などの需要を広げるだろう。

EVは自動運転技術との相性がよく、機械が人の運転手をサポートすることで、交通事故が大幅に減る可能性もある。そして何より排ガスがゼロになるので、新興国を中心に大気汚染に苦しむ地域には朗報だ。EV時代の足音を、冷静に前向きに受け止めたい。
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