2017年07月20日

[日経新聞] 「米国抜き」の世界が本当にやってきた (2017年07月20日)

米国が超大国になって1世紀になる。「米国第一」はいまに始まったことではない。国益にしがみついて無謀な戦争を始めたり、金融市場を混乱させたり、と世界を振り回してきた。だが、いまほど自国に引きこもり、存在感を失った米国は記憶にない。

「米国抜きの世界」が本当にやって来たともいえる。私たちはこの新しい秩序、いや、無秩序にどう向き合えばよいのだろうか。

トランプ米大統領が就任して半年を迎えた。メディアとしては、ここがよい、ここが不十分だ、とそれなりの通信簿をつけるタイミングである。

残念ながら、トランプ政権はありきたりの論評にはなじまない。長所や短所を探そうにも、そもそも何がしたいのか、誰が主導しているのかがよくわからない。

政権の発足の前後、トランプ氏の一挙手一投足は世界中の注目を集めた。ツイッターの発信が多い米国時間の早朝に画面を見守る役職を設けた国もあった。

最近は読むに値する発信はあまりない。政権半年の節目に「米国製品を買おう」運動を展開したが、その程度のことで米製造業がよみがえるわけがない。

「北米自由貿易協定(NAFTA)を破棄する」「中国を為替の不正操作国に認定する」「医療保険制度改革法(オバマケア)を廃止する」――。これらの主張はどこに行ったのか。公約で本当に実現したのは、環太平洋経済連携協定(TPP)と温暖化に関するパリ協定からの離脱くらいだ。

トランプ氏が尊敬しているとされるレーガン大統領は国政の経験がないのをわきまえ、大統領選でライバル陣営にいたジェームズ・ベーカー氏を中枢に置き、政権運営を任せた。トランプ政権は政治の素人が内輪もめを続けている。

共和党主流派との折り合いが悪く、政策の推進力はほぼない。ロシアゲート疑惑に足を取られ、もはや暴走すらしないかもしれない。大統領任期はあと3年半あるが、何もせずに下降線をたどって終わるのではなかろうか。

ギャラップ社の世論調査で16日時点の支持率は39%。6月に記録した37%よりましだが、上向く気配はない。もはやトランプ氏の顔色をうかがっても仕方がない。

日本はどうすればよいのか。欧州やアジアの主要国との連携を深めることだ。国際秩序の漂流を少しでも食い止めるために。
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[日経新聞] 正面から汚染水処理の議論を (2017年07月20日)

東京電力福島第1原子力発電所の汚染水処理をめぐり、同社の川村隆会長の発言が波紋を広げている。浄化処理した汚染水を海に流す方針を決めたと受け取られたためだ。同社は火消しに走るが、発言を問題視するよりもこの機会に正面から是非を議論すべきだ。

汚染水は浄化処理しても放射性物質のトリチウム(三重水素)が残るので、タンクにためている。その量は約78万トンに達し敷地内のタンクは900基近い。トリチウム水は増え続けており、このままでは廃炉計画を妨げかねない。

原子力規制委員会の田中俊一委員長はかねて、トリチウム水を薄めて海に流すことは技術的に問題がない、などと指摘してきた。東電は、川村会長が田中委員長の見解に同意する趣旨の発言をしたが、「最終方針を決めたわけではない」と説明する。

国の基準ではトリチウム濃度が1リットルあたり6万ベクレル以下なら海に放出できる。環境や生体への影響が完全に解明されているわけではないが、低濃度トリチウムの危険性は極めて低いとされ、正常な原子力発電所などからも出ている。

トリチウム水の処理をめぐっては昨年、経済産業省の作業部会が複数の選択肢を技術的に検討し、報告書にまとめた。そのなかで海洋放出がもっとも現実的だというのが、田中委員長や多くの専門家の見方だ。

それでも、福島第1原発の事故以来、風評被害に苦しんできた漁業者らにとって海洋放出への不安は大きい。

相次ぐ懸念の声を受け、吉野正芳復興相は、トリチウム濃度が基準を下回っても海洋放出には反対だと表明した。しかし、単に海洋放出を否定し、議論を封じたのでは問題は解決しない。

海洋放出の濃度基準は何を根拠に決まったのか。科学的に未解明な点や、考えうるリスクは何か。風評被害にはどう対処すべきか。政府も東電も、地元関係者だけでなく消費者にも丁寧に説明したうえで、結論を出すべきだ。
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2017年07月19日

[日経新聞] 政治要因で滞る中国経済改革 (2017年07月19日)

中国の4?6月期の実質経済成長率は前年同期比6.9%だった。成長率は1?3月から横ばいである。景気はインフラ投資と消費が引っ張る一方、引き締め基調の金融政策の下、不動産関連の動きが鈍い。今後は緩やかな減速の動きに注意を払う必要がある。

習近平指導部は2017年通年で「6.5%前後」という成長目標を掲げている。年初段階では不安要因があったため、政府は道路、空港などインフラ投資を急拡大した。4?6月期は21.1%という突出した伸びだ。巨額の投資をけん引役に通年目標の達成にはメドをつけつつある。

とはいえ現状には危うさがある。中国は秋以降、5年に1度の共産党大会で最高指導部人事を控えている。習国家主席としては、この5年の政権運営の成果をアピールする場であり、経済状況が足かせになるのは避けたい。

それがインフラ投資に頼ってでも成長目標だけは達成する姿勢につながった。半面、習主席自ら主導してきたはずの供給サイドを重視した構造改革は滞りがちだ。企業の債務比率の高さという問題も解決されていない。

こうした状況の下、先に5年ぶりに全国金融工作会議が開かれた。習主席は深刻化する金融リスク問題を取り上げ、全体的な調整を担う「金融安定発展委員会」の設置を決めた。しかし、業界ごとに縦割りの監督行政は温存してしまった。

金融監督は今後も中国人民銀行(中央銀行)に加えて、銀行、証券、保険の3つの監督管理委員会という計4組織が担う。これらは相互連携に乏しく、矛盾した指導をすることさえある。危機対応の能力にも大きな疑問が残る。抜本的な組織再編は今後も中長期的な課題だろう。

一連の政策課題の先送りは、共産党大会を控えているという政治的要因が大きい。世界経済に多大な影響を及ぼす中国の経済・金融改革は極めて重要だ。遅滞は許されない。
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[日経新聞] 税収増に過度に頼った財政再建は問題だ (2017年07月19日)

内閣府が中長期の経済財政に関する試算をまとめた。名目の経済成長率が中長期で3%以上になっても、2020年度の国と地方をあわせた基礎的財政収支を黒字にする政府目標の達成は、難しいことが改めて鮮明となった。

先進国で最悪という日本の財政状態を改善する魔法のつえはない。安倍晋三政権は目先の経済成長に伴う税収増に過度に頼ることなく、歳出・歳入の一体改革や潜在成長率を高める構造改革を着実に実施すべきだ。

内閣府の試算によると、高成長の「経済再生ケース」でも20年度の基礎的財政収支は8.2兆円の赤字である。今年1月時点の前回試算よりわずかに改善するものの、赤字は高止まりしたままだ。

より現実的な成長率を前提にした「ベースラインケース」では、基礎的財政収支の赤字は10兆円を上回る。

いずれのケースも、19年10月に消費税率をいまの8%から10%に引き上げる前提の試算である。このままでは20年度に基礎的財政収支を黒字にする目標の達成はほぼ絶望的といわざるを得ない。

見過ごせないのは、16年度の国の一般会計税収が7年ぶりに前年度を下回ったことだ。年度中に円高がすすみ、企業収益が伸び悩んだのも一因だ。

政権の経済政策「アベノミクス」は経済成長で税収を増やし、財政再建につなげる道筋を描いていた。だが、もはや目先の税収増だけで財政再建が可能という発想は慎むべきではないか。

財政再建の手段は、歳出削減、増税、そして経済成長に伴う税収増の3つしかない。安倍政権の対応はいずれも問題だ。

第一に、社会保障費を中心とする歳出削減・抑制は不十分だ。所得や資産にゆとりのある高齢者向けの給付削減や負担増は待ったなしだ。

第二に、政権は10%への消費増税を2度も先送りした。景気への配慮は必要だが、真に必要な増税から安易に逃げてはならない。

第三に、構造改革にも課題を残す。たとえば国家戦略特区を舞台とした規制改革では、いまだに自家用車を使った移動サービスや、インターネットなどを利用した遠隔服薬指導の実績がない。

「改革したふり」では困る。大事なのは、少子高齢化やグローバル化に対処できる日本経済へと体質改善を加速することだ。
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2017年07月17日

[日経新聞] 医療・介護費を不断の改革で抑えよ (2017年07月17日)

2014年度の国民医療費は40兆円強、介護給付費は10兆円と合わせて50兆円を突破した。国内総生産(GDP)比は早くも節目の10%水準に達している。医療・介護費は経済成長を上回って膨張しており、制度の持続性が危うい。

これまで私たちはGDPの10%を大きく超さぬよう不断の改革で膨張を抑えるよう求めてきた。

戦後ベビーブーム期に生まれた団塊の世代「1期生」が後期高齢者になるまでに5年しかない。安倍政権は制度の持続性を確かにする改革に早急に乗り出すべきだ。

安易な後期医療の財源

政権は19年10月に消費税率を10%に上げる。医療・介護費の膨張構造を温存したままでの増税は、穴が開いたバケツに水を注ぐに等しい。増税分を社会保障の充実に有効に使うためにも、まず給付抑制に主眼を置かねばならない。

政府は18年度に医療・介護の公定価格である診療報酬と介護報酬の増減率を同時に改定する。主に医療職の人件費に充てる診療報酬本体の改定率は、日本医師会を巻きこんでの大議論になろう。

デフレが続き、賃金水準が全般に伸び悩んだこの十数年、報酬本体は上昇基調をたどっている。一段の引き上げの必要性は小さい。

医療改革の重要な論点は、公の健康保険の給付範囲をどうするかだ。医師が処方する薬のなかには薬局が扱う市販薬と成分や効果・効能が変わらないものがある。このような処方薬は保険の対象から外すのが原則である。

先進医療の扱いも焦点だ。医療技術の進歩には目を見張るものがある。がんや循環器疾患などの分野では新技術や新薬が次々に開発されている。患者本位の医療を実現させるためにも、有効性・安全性を確認したものは早く治療に使えるようにすべきだ。

それには、当座は保険対象外であっても、患者がほかの保険診療と同時に受けられる混合診療を広げるのが理にかなっている。

重複受診や多重検査を減らすには家庭医と専門医の役割分担を促すのが有効だ。医学教育を拡充させ、種々の病気を一通り診られる家庭医を育てる必要がある。

患者は重篤な病気が疑われる場合を除き、家庭医へ行くのを原則とし、必要に応じて専門医にかかる仕組みにする。双方の連携を密にすれば医療の質は高まる。

加えて医療費の負担構造の見直しが待ったなしだ。後期高齢者の医療費は税財源を主体にするのが筋である。しかし厚生労働省などは企業の健康保険組合などの拠出金を増やすことで繕った。

取りやすいところから取る策の典型であろう。社会保障・税一体改革による消費税の増税分を充てる病院補助金などは減らし、後期医療に回してはどうか。

今や年間の死亡者は130万人を超える。25年には150万人に激増する見通しだ。多死社会が到来するなかで介護保険改革が急務だ。論点は主に3つある。

第1は、真に介護が必要な人に質の高いサービスが届くよう、軽度の要介護者はその経済状況に応じて自己負担を増やすなどして給付範囲を絞り込む。料理、掃除の手伝いなど生活援助を漫然と続けていては制度はもたない。

第2は、要介護度の改善や自立の後押しだ。どのサービスがより効果的か、自治体は先進事例の研究やビッグデータ分析を急ぎ、有効な仕組みをつくってほしい。

介護の給付範囲を絞れ

第3は、要介護者を支える体制を自治体が当事者意識を持って整えることだ。末期がんの痛みを和らげるケアやみとり医療の重要性は一段と高まっている。持病を抱えていても病院より自宅や施設で暮らしたい高齢者の思いに応えるためにも、急性期病床から居住性の高い施設への転換を促したい。

介護は重労働だ。それに見合う賃金の引き上げが課題だが、財源を介護報酬だけに頼るのは無理がある。解決策の一つは、利用者が自費でサービスを受けやすくすることだ。その前提として保険サービスと組み合わせる混合介護の使い勝手をよくする必要がある。

逆風のなかで介護人材を増やすのが喫緊の課題だ。法務、厚労両省は外国人の技能実習に介護を加えるが、付け焼き刃と言わざるを得ない。経済連携協定を結んだ東南アジアの国から意欲ある人材が来やすいよう運用を見直すのが本道だ。ロボット介護をどう位置づけるかも、結論を急いでほしい。

高齢者などからの反発を恐れて医療・介護改革を先送りすれば制度がもたない。為政者は将来世代に責任を持ち、正面から切り込むべきである。
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2017年07月16日

[日経新聞] 転勤制度を社員が納得しやすいものに (2017年07月16日)

親の介護や育児がしづらくなるなどの理由で、転勤をしたくないと考える人はいまや少なくない。転勤のあり方が問われているといえよう。

転居を伴う人事異動が嫌われて企業の新卒採用や中途採用がしにくくなったり、退職者が増えたりすることも考えられる。本人の望まない転勤はなるべくしなくて済むようにするなど、企業は制度を工夫してはどうか。

労働政策研究・研修機構の調査によると、正社員で「できれば転勤はしたくない」という人は4割いた。「転勤は家族に与える負担が大きい」とした人は9割近い。進学期の子どもの教育や持ち家の所有が難しくなることも転勤が敬遠される理由だ。

共働き家庭が全世帯に占める割合は6割に達しており、夫の転勤によって妻のキャリア形成が妨げられやすいという問題も見過ごせなくなっている。

転勤は社員を新しい環境に移して経験を積ませることで、人材育成の効果があるとされる。しかし必ずしも転居を伴う異動をさせなくても、本社内の新規プロジェクトに参加させるなどで、人の養成は進められるのではないか。

グローバル化が進み、国内での経験より海外経験が重視される傾向もある。国内の転勤については人材育成の効果が相対的に弱まっているともいえよう。

こうした変化を踏まえると、転勤の制度は見直しの時期に来ているといえる。人事制度を複線化し、会社の命による転勤があるコースと、そうでないコースに分けるなど、転勤の有無をはっきりさせることが企業に求められる。

その人以外には適任者がいないというケースを除いて、転勤は本人の同意を前提とするといったルールをつくる方法もあるだろう。海外企業は一般に、社員の転勤は本人同意を条件としている。

外資系企業などでは国内拠点で欠員が出ると、赴任者を社内公募する例がみられる。キリンビールには育児や介護などの事情がある社員が、最大5年間、転勤をせずに済むよう申請できる制度がある。社員の納得を得やすい仕組みを各企業が考えてほしい。

日本企業は社員に、長期の雇用を保障する代わりに残業や転勤を求めてきた。残業の削減に加え、転勤の制度の見直しも進み始めれば、正社員の雇用のあり方も変わっていく可能性があろう。
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[日経新聞] 国と沖縄はいつまで戦うのか (2017年07月16日)

国と沖縄県が再び法廷闘争に突入する。なぜかくもいがみ合わねばならないのか。最後は司法の判断に委ねるにしても、ここまで話がこじれた要因をよく考え、摩擦を少しでも和らげるための努力をしてもらいたい。

国は米軍普天間基地を同県名護市辺野古へ移設するのに必要な周辺水域の埋め立て工事を進めている。県は18日にも、国に埋め立て工事の差し止めを求める訴訟を起こす。

県が2013年に出した周辺水域の岩礁破砕許可は今年3月で失効した。国がその後も工事を続けているのは違法である、というのが県の言い分である。

国は、県の破砕許可はもはやいらなくなったと反論する。許可は水産資源を保護するためのものであり、地元漁協が今年1月に漁業権を放棄したので、保護対象が消滅したという説明である。

最高裁は昨年12月、県が破砕許可を取り消したのは無効だとする判決を下した。今回も国の主張を100%支持する可能性が高い。日本は法治国家であり、県は判決が出たら従うべきだ。

問題は、県の主張を法的に退けたとしても、それだけで県内の反基地運動がなくなるわけではないことだ。移設が実現しても、県民の理解と協力がなければ、基地の円滑な運用は望めない。有事の場合はとりわけだ。

安倍政権は県の提訴で工事が中断した場合、翁長雄志知事に損害賠償を求めることを検討中だ。億円単位になるとの見方もある。来年の知事選をにらみ、翁長知事に打撃を与える狙いのようだ。

そんなことをすれば、県民の反本土感情を勢いづけるだけだ。意に沿わない相手がいると、「こんな人たちに負けるわけにはいかない」とむきになる。安倍政権のこうした姿勢が批判された東京都議選の二の舞いになりかねない。

普天間移設問題は、安倍政権の今後の政治姿勢を問う試金石である。なぜ移設が必要かを県民に丁寧に説く努力を求めたい。
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2017年07月15日

[日経新聞] 劉氏の死が警告する人権問題 (2017年07月15日)

獄中でノーベル平和賞を受賞した中国の民主化運動の象徴、劉暁波氏が亡くなった。中国をより良い国にしようと言論だけで戦った不屈の姿勢に敬意を表したい。

民主的な立憲制度など当たり前のことを訴え続けた非暴力の人は国家政権転覆扇動罪で懲役11年の厳しい刑を科され、国外でのがん治療も認められなかった。刑務所外の病院での最期とはいえ、事実上の獄死だ。十分な医療の提供を受けたのかさえ不明なまま死に至らせた責任は中国政府にある。

評論家としての劉氏は中国で続く専制政治の問題点に文化面から鋭く切り込んだ。1989年には天安門広場でハンストをし、武力鎮圧で多数の学生が犠牲になった天安門事件の後、拘束された。2008年には共産党独裁の廃止などを呼びかけた「08憲章」を起草。実刑判決を受けて服役する。

その天安門事件は今、風化の危機にある。中国内で暮らす大学生らは、封印されてしまった現代中国史の重要な事実を知らない。世界第2位の経済大国の若者が自国の現代史さえ知らないのは大きな問題だ。

獄中の劉氏は10年にノーベル平和賞を受けた。中国政府はオスロでの授賞式への出席を許さず、主役なき空席の椅子が世界の話題になった。中国政府はノルウェーに反発し、同国産サーモン輸入を事実上制限した。巨大な購買力を武器にした圧力は世界の常識とかけ離れていた。

中国の人権問題は劉氏の例にとどまらない。2年前の7月には人権を守る活動などをした中国の弁護士らが全土で一斉に拘束された。5年前に発足した習近平政権は、言論、情報への統制でこれまで以上に強権的な手法をとっている。その中での劉氏の死は中国国民にとって大きな損失である。

米国は中国の人権問題で積極的に発言し行動してきたが、トランプ政権になってから動きを止めている。今こそ日本を含めた世界の民主国家が一丸となって中国の人権状況に警鐘を鳴らす時だろう。
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[日経新聞] 上向き米国経済に残された課題は何か (2017年07月15日)

米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は議会証言で、雇用を中心に米国経済が順調に回復しているとの見方を示した。

米国にとっては、金融や財政政策の支えで景気を後押しする時期は過ぎ、いかに経済の安定を持続させるかが重要な課題になっている。経済の潜在力を高めるとともに、成長の果実を国民に広く行き渡らせる施策が欠かせない。

イエレン議長は、年内の早い時期に量的緩和政策で膨らんだ保有資産の縮小に動く方針を示すとともに、政策金利の引き上げを緩やかに進める考えをあらためて明らかにした。同氏の議長としての任期は来年2月に切れるが、内外経済や物価、資産価格の動向などに幅広く目配りしながら冷静な政策運営を続けることが望まれる。

米国がいま必要なのは構造的な問題に正面から取り組むことだ。失業率は低下しているものの、25?54歳の働き盛り世代の労働参加率は81%程度と歴史期に見て高いとはいえない。企業は高収益をあげても、中間層以下の賃金はそれほど伸びていない。

就労を促すとともに、賃金レベルの高い職につけるよう人びとの技能習得を支える方策の強化が求められている。

トランプ政権は、法人減税を含む税制改革やインフラ投資、規制改革を経済活性化策の柱に掲げている。企業の活力や生産性を高める政策は前進させるべきだ。同時に、財政への影響や金融の安定性確保といった面にも配慮する必要がある。与党・共和党だけでなく、野党の民主党にも積極的に働きかけ、中長期的に効果が続く政策を実現させなければならない。

せっかく改善しつつある経済に冷や水をかけかねないのが、トランプ大統領が掲げる内向きな対外政策である。

政権公約に掲げたカナダ、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉は、やり方次第では北米の製品供給網に大きな打撃を与えかねない。政権が検討している安全保障を理由とした鉄鋼輸入制限に実際に動けば、世界的な貿易戦争を招く恐れがある。移民を制限するような政策を取れば米国の活力は損なわれるだろう。

世界最大の輸入国である米国経済の改善が続けば、日本を含むほかの国々にも大きな安心材料になる。米国の強みをいかし、弱点を補う政策を進めることで世界経済をけん引していってほしい。
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2017年07月14日

[日経新聞] LNG取引の自由化を促そう (2017年07月14日)

液化天然ガス(LNG)取引で売り手が買い手に転売を制限する取引慣行は、独占禁止法に違反する恐れがある。そんな報告書を公正取引委員会がまとめた。

電力やガス会社などLNGの買い手が手持ちのLNGを自由に売買できれば、調達を最適化しコストを下げることができる。世界最大のLNG輸入国である日本にとってメリットは特に大きい。

これを阻む硬直的な取引慣行を公取委が問題視し、実態調査に踏み切ったことは重要だ。報告に強制力はないが、売り手との交渉にいかし、自由な取引市場を育てる一歩にしていきたい。

LNGは天然ガスを産出地に近い場所で冷却・液化し遠い消費地まで専用の輸送船で運ぶ。一連の設備には巨額の費用がかかる。

売り手は投資を確実に回収するため、買い手と20?30年に及ぶ長期契約を結び、荷揚げ地を契約に明記した港に限定する「仕向け地条項」と呼ぶ条件を盛り込むケースが、多かった。

LNGの導入国は近年、東南アジアや中南米、欧州など世界各地に広がる。一方、米国で割安なシェールガスを原料としたLNGの生産が本格化するなど、生産と消費の両面で多様化が進む。

取引の形も、5年程度の短期契約やスポットでの取引が増えている。買い手が手持ちの余剰分を売り不足分を他社から買えれば、余分な在庫を持たずに済む。

政府は2020年代前半までに日本をLNG取引の拠点に育てる政策を掲げている。市場の整備には、売り手と買い手が自由に売買できることが大前提になる。

欧州委員会は00年代からロシアやアルジェリアなどガス供給国の販売地域制限を問題視し調査を通じて是正を求めた。結果、買い手に不利な条件の撤廃が進んだ。

日本もアジアの消費国と連携して、産ガス国や売り手企業と交渉すべきだ。地域全体で自由な取引環境をつくることが、LNG貿易の拡大を促し、調達の安全網を整えることにつながるはずだ。
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[日経新聞] ウーバー騒動は対岸の火事ではない (2017年07月14日)

スマートフォンを活用した配車サービス大手、米ウーバーテクノロジーズの経営の混乱が続いている。6月20日に創業者のトラビス・カラニック最高経営責任者(CEO)が辞任し、財務や法務などの責任者も空席のままだ。

同社は企業価値の評価が円換算で7兆円を上回り、世界最大のベンチャー企業といわれる。経済の活性化に向けてベンチャーを育てる必要のある日本にとっても、経営体制の整備など学ぶべき教訓が、今回の騒動にはある。

ウーバーは2010年にハイヤーの配車を始め、一般のドライバーが利用者を運ぶライドシェア(相乗り)が人気を得た。現在、サービスは世界の450を超す都市に広がっている。

事業の急拡大の背景にあるのは成長を最優先する企業文化だ。ライドシェアは各地でタクシー会社や規制当局との摩擦を生んだが「まず事業を始め、問題はあとから解決する」姿勢を貫いてきた。

カラニック氏が築いたこうした企業文化は深刻な問題も引き起こした。女性社員のセクハラの訴えを無視し、競合企業から自動運転の技術を盗んだとの疑惑が浮上した。カラニック氏のドライバーに対する暴言も問題になり、大株主のベンチャーキャピタルから辞任を求められた。

一連の問題から浮かび上がるのは、ブレーキ役となる人材がいなかった実態である。同じように急成長したグーグルやフェイスブックでは、大企業などで経験を積んだ人材が幹部として経営陣に加わり若い創業者たちを支えた。

日本のベンチャー投資は米国より大幅に少なく、起業家の裾野も狭い。そのため政府は、成長戦略の一環としてベンチャーの創出を掲げ、リスクマネーの供給体制を強めることを目指している。

ベンチャーの資金調達が増えるなど変化の兆しも出てきた。米国に比べてベンチャーキャピタルは未成熟な半面、大企業が投資部門を設けるなど新たな企業や事業の育成で存在感を高めつつある。

気がかりな点のひとつは、資金や技術に焦点が当たる一方で人材への関心が低いことだ。

大企業は多様な知見を持つ人材を抱えている。人材の流動性を高め、経験を積んだOBがベンチャーの経営を支える立場に回る、といった取り組みが必要だ。こうした流れができれば、ベンチャーの成長がより確かなものになる。
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2017年07月13日

[日経新聞] 電気自動車が普及するための課題は (2017年07月13日)

フランスのマクロン新政権が、地球環境対策として大胆な政策を打ち出した。2040年までに、走行時に二酸化炭素(CO2)を排出するガソリン車などの販売を禁止し、電気自動車(EV)の普及を加速するという。

自国に有力自動車会社を擁する同国の「脱エンジン」政策は、日本を含む世界の自動車産業の行方に大きな影響を与えるだろう。

排ガスゼロのEVや、電池とエンジンを併用しつつも、電池による走行の比重の高いプラグインハイブリッド車の普及を後押しする動きは、カリフォルニアなど米国の有力州や世界最大の自動車市場である中国でも顕著であり、メーカーとしても対応が急務だ。

スウェーデンのボルボ・カーは、19年以降に発売する全車種をEVやハイブリッド車にし、エンジン単独車の販売を順次打ち切る。独フォルクスワーゲンや米フォード・モーターも車の電動化について長期の計画を打ち出した。

気になるのは日本メーカーの動きだ。トヨタ自動車など日本車は燃費改善などエンジンの改良で一定の成果を上げてきたが、過去の成功にとらわれるあまり、新たな潮流に乗り遅れてはならない。自動車は地域経済や雇用を支える大黒柱的な存在でもあり、技術革新の波にしっかり対応してほしい。

一方で、自動車の電動化が順調に進むためには、いくつか課題もある。

昨年の世界新車販売に占めるEVの比率は0.5%にすぎず、ハイブリッド車を含めた電動車全体でも3%弱にとどまる。電池のコストがエンジンに比べてまだまだ高く、一回の充電で走れる距離も短いからだ。

EVの普及が進むノルウェーなどでも、税金や通行料金の減免など種々の優遇策で需要を支えているのが実態だ。EVがエンジン車と同等の条件で競争できるようになるためには、電池技術の改良や量産化によるコストの大幅低減などを着実に進める必要がある。

環境面でも電動化の利点を見極めたい。EV化すれば排ガスがゼロになり、中国の大都市部など一部の地域で深刻な大気汚染の解消に威力を発揮するだろう。

他方で温暖化対策としては発電時に発生するCO2も勘定に入れて考える必要がある。CO2排出の少ない原子力発電の比重が高いフランスが電動化に動くのは、この観点からも理にかなっている。
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[日経新聞] TPP11発効へ柔軟に対応を (2017年07月13日)

米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)参加11カ国による首席交渉官会合が、神奈川県箱根町で始まった。

日本は欧州連合(EU)と経済連携協定(EPA)で大枠合意した。これを追い風に、11カ国によるTPP(TPP11)の発効にむけて各国の間合いをできるだけ縮めてほしい。

11カ国は11月に首脳会合を開く。今回の首席交渉官会合はその準備の一環と位置づけられる。

米国を含む12カ国で合意したTPPは質の高い21世紀型の貿易・投資ルールである。米国が離脱を決めても、12カ国での合意内容の骨格は維持すべきだ。

たとえば、11カ国が約束した関税の削減・撤廃の修正を議論し始めると、収拾がつかなくなる公算が大きい。再交渉に長い時間が必要となり、その分だけ発効の時期が遅れる。

安易に関税の議論を蒸し返してはならない。議長国の日本がその点を各国と確認してほしい。

一方で実質8年で合意した医薬品のデータ保護期間の扱いは、柔軟に対応してはどうか。

12カ国による交渉では、米医薬品業界の意向を背に米国が12年、オーストラリアなどが5年を主張して対立した経緯がある。米国がTPPに復帰するなら8年に戻すことを条件に、それより期間を短くする微修正は考えていい。

TPPの発効は、参加国全体の国内総生産(GDP)の85%以上を占める6カ国以上が国内手続きを終えるのが条件だ。米国抜きで発効するには条件を変えなければならない。

11カ国が協定本体を変える案のほか、協定本体は維持したまま別に「議定書」を結んで暫定的に発効する案があるとされる。米国がいずれ復帰できる可能性も意識しながら案を詰めてほしい。

日欧のEPA合意はひとまず、保護主義に対抗する決意を世界に示した。次はTPP11の番である。日本はそのために強い指導力を発揮すべきだ。
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2017年07月12日

[日経新聞] ISとの戦いはモスル解放で終わらない (2017年07月12日)

イラク軍と米軍主導の有志連合が、過激派組織「イスラム国」(IS)が最大の拠点としてきたイラク北部の都市モスルを解放した。ISが首都と位置付けるシリア北部のラッカでも、米軍の支援を受けたクルド人主体の部隊が攻勢をかけている。

ISの非人道的な支配は終わりに近づいている。だが、支配地を取り戻すことでイスラム過激派との戦いが終わるわけではない。ISを生んだ中東の混乱を収拾し、世界各地に広がるテロに粘り強く対処していく必要がある。

ISは2014年6月にイラク第2の都市であるモスルを制圧した。指導者のバグダディ容疑者がイスラム法に基づく国家の樹立を宣言した場所だ。ここを奪還する意味は大きい。モスル入りしたイラクのアバディ首相は「偽りの国家は崩壊した」と宣言した。

ISは恐怖と暴力で住民を支配した。非イスラム教徒や女性らに残虐な仕打ちを重ねた。市民生活の安定にはまず、民族や宗派間の和解が必要だ。都市インフラの復旧も急がねばならない。イラクではISの台頭により中断を余儀なくされた日本の経済協力事業もある。この再開を準備したい。

イラクでは03年のフセイン政権崩壊後の混乱が続き、シリアの内戦も長期化している。混乱で生じた権力の空白がISの台頭を許したといえる。ISを復活させないためには、地域全体の秩序回復が不可欠だ。なかでもシリア内戦をいつまでも放置すべきでない。

シリアをめぐっては米国やロシアなど大国の利害が対立し、国際社会は事態の収拾に有効な手を打てずにきた。20カ国・地域(G20)首脳会議にあわせて初の首脳会談に臨んだトランプ米大統領とロシアのプーチン大統領はシリア南西部の停戦を確認した。これを全面停戦につなげてもらいたい。

ISには多い時で3万人を超す外国人が兵士として加わった。組織の弱体化に伴い、出身国に戻ったり、他の国に拠点を移したりするメンバーもいる。イラクやシリアの組織はなくなっても、過激思想の拡散と、その影響を受けた支持者によるテロへの警戒を怠るわけにはいかない。

IS支持者や情報、資金の移動を封じる国際協力がこれまで以上に重要になる。若者が過激思想へ傾倒する原因となる社会格差や、失業など経済不満を解消する地道な取り組みも欠かせない。
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[日経新聞] 近隣に迷惑かけぬ民泊に (2017年07月12日)

住宅に旅行者を有償で泊められる住宅宿泊事業法(民泊法)が成立した。訪日外国人の増加につながる半面、騒音やゴミ出しが社会問題化している。民泊の健全な発展のためにも、来年に予定される施行に向け、近隣への迷惑を減らす仕組みづくりが急がれる。

民泊合法化で先行した欧米でも利用者の増加で騒音などの苦情が増えている。家主が同居する本来の民泊に比べ、家主不在の民泊は騒音やゴミ出しなどの問題が起こりやすい。欧米に比べ家主不在型の比率が高い日本では、特に念入りな対策が必要といえる。

新法では、民泊事業を希望する家主は都道府県に届け出る。家主不在型の場合、安全管理などは国土交通省に登録した管理業者に委託する。民泊の仲介業者にも観光庁への登録を義務づけた。これで物件や契約を巡る責任者を特定できるようになった。

観光庁は苦情や相談を一括して受け付ける窓口を設ける。関連省庁や自治体は、情報をスムーズに共有できる体制を整えたい。

苦情は観光庁から自治体の担当部署に伝え、家主や管理業者に是正を促すという。宿泊者が日々入れ替わる中で、どこまで効果が上がるか、疑問が残る。

ここは観光庁自身が監督する仲介業者にも一定の責任を負ってもらってはどうか。家主と客の情報を把握し、ネットでほぼ常時、連絡を取れるのが民泊のプラットフォーマー(基盤の提供者)である仲介業者だからだ。悪質な家主や客は除名する手もあろう。

無届け物件の掌握にも仲介業者の名簿は役立つ。また新法では年間宿泊日数の上限を定めている。ここでも物件ごとに予約状況や稼働日数を常に把握できる仲介業者の果たせる役割は大きい。

仲介業大手の米エアビーアンドビーは今後、宿泊上限に達した物件は表示しない方針だという。新法成立による民泊合法化を受け、日本企業も民泊仲介に乗り出す。規模だけでなく、安全・安心という点も競いあってほしい。
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2017年07月11日

[日経新聞] 事実解明へさらに努力がいる (2017年07月11日)

学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設を巡り、衆参両院が10日に閉会中審査を開いた。前川喜平前文部科学次官の招致実現は前進だが、行政判断が適正だったかどうかの見解は大きく食い違った。与野党は関係者をさらに国会に招致し、事実の解明に向けた努力を続けるべきだ。

前川氏は国家戦略特区を活用した52年ぶりの獣医学部新設について「決定のプロセスに不公平で不透明な部分がある」「背景に官邸の動きがあった」などと述べた。萩生田光一官房副長官や和泉洋人首相補佐官から早期開学への働きかけがあったとも証言した。

山本幸三地方創生相は「特区は地元が提案するものだ。岩盤規制を突破するには地域を限定してやるしかない」と強調。萩生田氏は文科省の内部文書に「加計学園が誰も文句が言えないような良い提案をできるかどうかだ」との発言記録があることに関して、「発言した記憶はない」と否定した。

国家戦略特区は、許認可権限を持つ省庁が業界団体と結びついて新規参入を阻む状況を官邸主導で打破する仕組みだ。ただ加計学園の理事長は安倍晋三首相の長年の友人であり、決定過程で政治の圧力や官僚の忖度(そんたく)があったとすれば大きな問題だ。

野党は「閉会中審査で疑惑はさらに深まった」として、首相出席による集中審議と和泉氏や内閣府幹部らの招致を要求した。特区認定の経緯には疑問が多く残っており、政府・与党は審議に積極的に応じるべきだ。

野党は学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地払い下げ問題も引き続き追及している。評価額を大幅に下回って売却された経緯はなお不透明な部分が多い。

いずれも問われているのは、行政における意思決定の公正さと国民への説明責任である。行政文書の作成や保存、公開の基準が極めてあいまいな制度上の問題が改めて浮き彫りになった。国会では行政情報の保存や公開のルールについても議論を深めてほしい。
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[日経新聞] 気象情報いかし頻発する豪雨に備えを (2017年07月11日)

九州を襲った豪雨は20人を超える犠牲者を出した。行方不明者も多く、救出に全力をあげてほしい。梅雨前線はなお日本付近にかかり、別の場所で豪雨が起きる可能性もある。気象情報をこまめに確認して、早めの避難行動などにつなげたい。

福岡、大分両県では1日で平年の1カ月分を超える激しい雨が降り、河川の氾濫や土砂災害が多発した。土壌は大量の水分を含み、わずかな雨でも災害につながる恐れがあるので注意が必要だ。

気象庁は両県に「数十年に1度の異常事態」を示す大雨特別警報を出した。地域によっては雨のピークを過ぎていたため遅すぎたとの批判もある。

局地的な集中豪雨は最新技術でも正確な予測が難しい。そうしたなかで、特別警報はすでに避難を終えていなければならない危険な状態を伝える「最後の警告」だ。本来は通常の警報の段階で避難行動をとるべきだということを、あらためて確認したい。

気象庁は土壌に染み込む水や地表面を流れる水の量を計算し、今夏から全国2万河川の洪水の危険度を出し始めた。国土交通省も地域の雨量や河川の水位情報を提供している。

得られる情報量は格段に増えたが、緊急時に素早く必要な事柄を読み取るのは容易ではない。自治体は住民の避難の是非などを短時間で判断しなければならないが、担当者も限られる。日ごろから情報の扱いに慣れることが大切だ。

気象庁は昨年、全国6市に気象予報士を派遣した。期間中に大雨警報が出た茨城県龍ケ崎市では危険度の理解や避難準備情報を出すのに役立ち、今年から独自に予報士を置くことにした。自治体の取り組みのモデルになりうる。

地球温暖化が進むと異常な豪雨はさらに頻発するといわれ、自分の身は自分で守る発想もいる。

洪水や土砂災害の危険度を示すハザードマップをもとに居住地のリスクを知り、避難経路などを確かめておけば慌てずにすむ。職場や地域の防災訓練、災害支援のノウハウがある防災士の助言を得るのも有効だろう。

今年6月には改正水防法が施行され、主要河川ごとに関係機関が洪水・浸水に関する情報を共有して避難計画を検討する協議会が設置され始めた。自治体や省庁の壁を越えた重要な取り組みであり、早急に態勢を整えてほしい。
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2017年07月10日

[日経新聞] 若者が投票しやすい仕組みに (2017年07月10日)

18歳選挙権が実施されて1年になる。教育現場での主権者教育は順調だし、高校生が政治参加することへの世間の違和感はかなり薄れたようだ。他方、進学や就職で引っ越した場合の投票しにくさは相変わらずだ。投票率向上には、投票所に足を運びやすくする仕組みづくりが必要だ。

10代の投票率で特徴的なのは18歳に比べ、19歳の投票率が著しく低いことだ。

日本人は高校卒業まで生まれた地域に住み続けることが多い。18歳有権者は候補者名になじみがあるし、同居する親に投票を促される機会もあるだろう。

他方、19歳になると、出身地を離れ、都会でひとり暮らしする人が増える。住民票を移していなければ、選挙の案内が届かずじまいだったりする。

引っ越したのに住民票をそのままにしておくのは褒められたことではない。ただ、地域によっては過疎化の進行を懸念し、親に「住民票を残させておかないと行きっきりになるよ」などと“指導”する事例もあるようだ。

居住地に住民票がないと、投票するのは簡単ではない。以前の居住地の選挙管理委員会に投票用紙の送付を請求し、届いたら現在の居住地の不在者投票所に行く。請求は選挙が公示・告示されてからでないと受け付けてもらえない。不在者投票所はふつうの投票所よりもずっと少ない。

衆院選のように選挙期間が12日間しかない選挙で、以上の作業を期間内に終えろ、と若い有権者に求めるのは、選挙に行くなと言っているようなものだ。

住民票を移動させた場合でも、新住所で投票できるのは3カ月後だ。4月に進学し、一段落してから住民票を動かしたのでは、7月にあることが多い参院選には間に合わない。国政選の選挙人名簿の書き換えに3カ月もかかる合理的な理由はない。

若者の声が国政に届きにくい現状を放置したままでは、真の民主主義国家とはとても言えまい。
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[日経新聞] 保護主義の連鎖回避へ協調再構築を (2017年07月10日)

ドイツのハンブルクで開いた20カ国・地域(G20)首脳会議は保護主義を回避することを盛り込んだ首脳宣言を発表した。だが、実際には米国が鉄鋼の輸入制限措置を検討するなど保護主義がドミノ倒しのように広がる危険は消えていない。自由貿易を守る政策協調を立て直す時だ。

米国第一主義を掲げる米トランプ政権の誕生で、主要7カ国(G7)やG20の首脳会議の経済討議の場は一変した。「保護主義と闘う」という従来は当たり前だった文言を確認することにさえ手間取り、「不公正な貿易への対抗措置」を併記することで、抵抗していた米国も最後には折れた。

それでも米国が検討中の安全保障を理由にした輸入制限措置など保護主義の広がりには懸念が残る。欧州連合(EU)は米国が同措置をとった場合は、ウイスキー、酪農製品などを対象に報復措置をとることを検討している。G20会議は、鉄鋼の過剰生産問題を話し合う国際会議の枠組みで解決するよう求めたが、予断は許さない。

国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)はG20会議に向けた共同声明で、保護貿易措置が連鎖反応を呼び世界の経済成長を妨げることに警鐘を鳴らした。2国間の貿易赤字削減にこだわるトランプ政権の誕生で、そうした懸念が現実のものになっているからだ。

日本とEUが経済連携協定(EPA)の大枠で合意するなど自由貿易体制を推進するための前向きの動きもある。12日からは米国以外の11カ国で環太平洋経済連携協定(TPP)の発効を目指す首席交渉官の会合も始まる。

自由貿易の恩恵を受ける日本は欧州などとも協力して、米トランプ政権が保護主義措置をとらないように粘り強く説得する必要がある。

G20会議では、2020年以降の温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明した米国と、その他の国々の対立が鮮明になった。会議は意見の違いを取り繕うのに終始し、世界の成長促進や反グローバリズムに対処する政策協調の議論は進まなかった。

トランプ大統領とプーチン・ロシア大統領の初会談や、日韓、日中首脳会談など2国間の首脳外交の場としてはG20会議は機能しているようだが、せっかくG20として集まったのだから、多国間の協調の成果も示してほしかった。
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2017年07月09日

[日経新聞] 対北朝鮮で中ロは国際社会の結束乱すな (2017年07月09日)

北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を実施したことで、国際社会は新たな対応を迫られている。ただ、制裁による圧力の強化を目指す米国に対し、中国とロシアは追加の制裁に慎重で、調整は容易ではない。

北朝鮮の暴走にどう歯止めをかけるか。中ロを含めた国際社会の結束が試されている。

中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は4日、モスクワで首脳会談を開いた。その後に発表した共同声明で両国は、北朝鮮の核・ミサイル開発凍結とひきかえに米韓合同軍事演習を凍結する、という構想を提案した。

さらに、米軍による地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備計画を、即刻中止するよう求めた。

いずれも、この地域での米国の存在感を抑制しようとする中ロの戦略に沿った主張で、いささか筋違いである。両国は問題を複雑にしてはならない。

米国や日本は中ロを粘り強く説得していくべきだ。7日にハンブルクで開いた米ロ首脳会談は北朝鮮への対応で食い違いが残ったが、それを踏まえティラーソン米国務長官が「あきらめない」と表明したのは、当然である。

やはりハンブルクで8日に開いた日中首脳会談では、安倍晋三首相と習主席がこの問題で緊密に連携していく方針を確認した。今後どこまで具体的な取り組みにつなげられるかが問われる。

場合によっては厳しい措置で中ロの変化を促す必要があるかもしれない。たとえば米政府は、6月下旬、北朝鮮を国際金融システムから遮断するためとして、中国の銀行などへの制裁を発表した。

当面の焦点は、国連安全保障理事会の対応だ。ICBM発射を受けて開いた緊急会合で、米国は北朝鮮への制裁強化につながる議長声明案を提出した。

これに対しロシアは「ICBMではなく中距離ミサイルだった」「制裁は問題解決に役立たない」などと反論してきた。

日本はいま安保理のメンバーである。北朝鮮の脅威の高まりに対する危機感を率直にロシアに伝え、その理解を求めていく必要があるだろう。

同時に、北朝鮮の脅威に応じた防衛体制の強化や米韓との協力の深化が欠かせない。それは北朝鮮だけでなく、中ロへのメッセージともなるはずだ。
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