2017年05月23日

[読売新聞] イラン大統領選 国際協調路線が信任された (2017年05月23日)

国際的な孤立から脱却し、経済の再建を進める路線が、有権者から信任されたと言えよう。

イラン大統領選で、対外融和を重視する保守穏健派のロハニ大統領が、再選を果たした。「イランは世界と協調する道を選んだ」と勝利宣言し、政策の継続を訴えた。

1期目の実績として強調したのは、イランが核開発を制限する見返りに、米欧が原油禁輸などの経済制裁を解除する「核合意」だ。2015年に、米英仏など6か国とイランの間で結ばれた。

「核合意によって、戦争を防げた」というロハニ師の主張には、説得力がある。合意の効果に懐疑的な保守強硬派のライシ前検事総長が当選すれば、反米路線に逆戻りし、緊張が再び高まるのは避けられなかっただろう。

ロハニ政権の2期目の課題は、制裁解除の「果実」を国民に幅広く行き渡らせることである。

世界4位の埋蔵量を持つ原油の生産は増加したが、失業率は12%と高い水準にとどまる。約8000万人の人口の半分を占める若年層では、26%に達するという。

外国企業の投資が伸び悩み、雇用が増えていないのが原因だ。イランとのビジネスを阻害する国内外の問題が背景にある。

政教一致のイランでは、宗教的な権威である最高指導者のハメネイ師が全権を握り、保守強硬派が支える。ハメネイ師が直轄する軍事部門の「革命防衛隊」は、シリアの内戦などに介入し、国内経済の利権も抱える。

ロハニ師が公約した対外関係の改善や外資導入、腐敗撲滅に、保守強硬派が抵抗を続けるのは必至だ。政権が一連の政策を実現し、地域大国として、中東の安定に寄与するには、国内世論と国際社会の後押しが欠かせない。

日本からは、多くの企業がイランに進出する。4月には投資協定が発効した。関与を強めたい。

懸念されるのは、トランプ米大統領の敵対的な姿勢だ。核合意を「最悪の取引」と非難し、イランのテロ支援などに対する米国の独自制裁を維持している。

初外遊では、イランと断交中のサウジアラビアを訪問し、12兆円規模の兵器供与契約を締結した。テロ対策とイランへの圧力を目的に、サウジを中心とする中東諸国と新たな安全保障連合を創設する構想も検討中だという。

イランを追い詰めれば、保守強硬派の発言力が強まり、地域が不安定化しかねない。トランプ氏には慎重な対応が求められる。
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[読売新聞] 北ミサイル発射 安保理は早期に追加制裁せよ (2017年05月23日)

北朝鮮が無謀な軍事挑発を加速させた。国際社会は結束し、追加制裁を科すことが急務だ。

北朝鮮が、新型の中距離ミサイル「北極星2型」を発射した。約500キロ飛行して日本海に落下した。弾道ミサイルの発射は今年、既に11発目で、前回からわずか1週間後というペースの速さだ。

固体燃料を使う北極星2型は、発射の兆候を探知しづらい。今回の実験には、奇襲能力の向上を誇示する狙いがあろう。

朝鮮労働党の金正恩委員長は、北極星2型について「大量生産し、軍に装備させねばならない」と述べ、実戦配備を指示したという。「核戦力の多様化、高度化」で米国に対抗するとも表明した。

北朝鮮は常に、自らの戦力を誇大に喧伝(けんでん)する癖がある。失敗を重ねた新型ミサイルが実用段階に達したとの主張には、疑問が残る。だが、ミサイル技術の進展は否定できず、警戒を怠れまい。

米軍は、「カール・ビンソン」と、横須賀を母港とする「ロナルド・レーガン」の空母2隻態勢で北朝鮮を牽制(けんせい)する。金政権は、こうした軍事圧力には屈しない姿勢を強調したいのだろう。

安倍首相は、ミサイル発射に関して、「国際社会の平和的解決に向けた努力を踏みにじるもので、世界に対する挑戦だ」と厳しく非難した。当然の指摘である。

国連安全保障理事会は、日米韓3か国の要請で、23日に緊急会合を開く方向だ。新たな制裁決議を早期にまとめ、北朝鮮包囲網を強化しなければならない。

安保理は再三、北朝鮮を非難する声明を発表している。日米両国などが追加制裁を主張するが、中国、ロシアが慎重で、より強力な制裁は実現せず、北朝鮮の挑発を許す結果を招いている。

日米両国は、既存の決議よりも実効性が高く、北朝鮮に対する影響力の大きい措置を求めている。北朝鮮と取引のある中国などの銀行や企業を対象とする制裁や、原油の輸出制限である。

中国は2月、石炭輸入の停止を発表したが、十分ではない。中露両国は、北朝鮮に安保理決議違反の行為を自制させられない以上、制裁強化に応じるべきだ。

安倍首相は、イタリアで26日から開かれる主要国首脳会議(タオルミーナ・サミット)で、北朝鮮を主要議題とし、強いメッセージを打ち出したい考えを示した。

日米両国の主導で、国際社会が核・ミサイル開発の放棄を迫る体制を構築することが重要だ。
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2017年05月22日

[読売新聞] TPP閣僚会合 11か国で早期発効へ歩み寄れ (2017年05月22日)

米国の離脱で暗礁に乗り上げている環太平洋経済連携協定(TPP)が何とか命脈を保ったと言えよう。

米国を除く参加11か国によるTPP閣僚会合が開かれた。「TPPの戦略的・経済的意義を再確認した」との共同声明を採択し、11か国が結束していくことで一致した。

米国が抜けて初の閣僚会合で、11か国が協定実現への意欲を共有できたのは一定の成果だ。

協定は、米国の離脱で発効できなくなっている。声明は「早期発効のための選択肢」を11月の次回会合までに詰めるとした。

期限を区切り、議論の停滞を防ぐという狙いだろう。今秋までの協議が極めて重い意味を持つ。

日本が提案した7月の高級事務レベル会合の開催も歓迎された。経済規模が突出する日本のリーダーシップの発揮が欠かせまい。

米国を中心とする保護主義の台頭に対抗し、世界の自由貿易体制を守る。高い水準の貿易・投資ルールを定め、他の経済連携協定でも質の向上を促す。11か国でのTPPの着実な推進が、日本の通商戦略上も極めて重要である。

今後の協議は予断を許さない。米国抜きの枠組みを巡っては、各国の思惑が交錯している。

対日輸出の増加をにらむ豪州やニュージーランドは積極的だ。米市場を重視するベトナムやマレーシアは慎重姿勢を崩さない。

11か国での発効を目指す協議が本格化すれば、ベトナムなどが現在の協定内容の大幅な変更を求めかねない。その場合、協定が漂流する恐れが大きくなる。

現実的な対応として、日豪など5か国程度で、既に合意済みの内容を踏襲する形で先行発効させる案も取りざたされている。

ただし、枠組みが縮小していけば、巨大経済圏を構築するTPPの意義が減じるのも事実だ。

協定内容の大幅な変更を避けつつ、いかに意見の相違点を克服できるか。そこが問われる。

日本は今回の声明を踏まえ、各国にTPPの戦略的メリットを粘り強く訴え続けねばなるまい。

同時に、米国をTPP体制に引き戻す努力も欠かせない。

声明は「原署名国の参加を促進する方策」を講じると明記した。米国を念頭に、新たな参加希望国よりも加盟手続きを簡略化する方法などを想定している。

米国が直ちに離脱方針を変える可能性は低いとしても、合流への扉を常に開いておくことが、11か国の結束にも有益だろう。
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[読売新聞] ゲノム編集技術 適正な活用にルール備えたい (2017年05月22日)

遺伝子を効率良く改変するゲノム編集技術を、どこまで活用すべきか。政府によるルール作りと環境整備が大切だ。

ゲノム編集技術で人の受精卵の遺伝子を操作する研究について、内閣府の生命倫理専門調査会が、ルールの在り方に関する検討を始めた。

日本は、海外に比べて取り組みの遅れが指摘されている。

技術の進展に即したルールの不備が大きな要因だ。研究者の多くが、人の受精卵を用いた研究を自粛している。政府として早急に対策を講じることが求められる。

生命の根幹を操作できるゲノム編集技術は、各種の細胞に応用できる。中でも、調査会が検討対象とした受精卵の遺伝子操作は、最も注目される分野である。

遺伝子変異による疾患は、成長した細胞の遺伝子を改変しても、根治につながりにくい。受精卵の段階で原因となる遺伝子を改変・除去できれば、発症しない。

不妊治療でも、受精卵の遺伝子を操作して、着床しやすくする手法などが模索されている。実現すれば、不妊に悩むカップルにとって朗報となるだろう。

世界的には、臨床への応用が現実味を帯びている。

英国や中国などでは、基礎研究が国の指針などで認められ、受精卵での研究が実施されている。米国の専門家会議は2月に、ゲノム編集技術で受精卵の遺伝子を操作する治療を、条件付きで容認する報告書をまとめた。

忘れてはならないのが、負の側面だ。遺伝子操作で子供の能力向上を目指す「デザイナーベビー」につながらないか。遺伝子改変が健康に悪影響をもたらし、次世代に拡大するリスクはないか。

不妊治療施設などが危険な応用を試みる恐れがある、と警鐘を鳴らす生命倫理の専門家もいる。

適正な研究は認めつつ、懸念に応えるルールとすべきだ。

受精卵の扱いを巡っては、専門調査会が2004年に「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」をまとめ、慎重な対応を求めた。これに基づき、厚生労働省や文部科学省が関連指針を設けて、個別の研究の是非を審査している。

生殖技術は、さらに先を行き、この指針は実態にそぐわなくなった。海外では、受精卵や卵子そのものを改変する「核移植」で、子供が誕生したとされる。

技術の進展に対応できるよう、受精卵だけでなく、卵子・精子など生殖細胞の扱いについても、抜本的に見直す必要がある。
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2017年05月21日

[読売新聞] 自民麻生派拡大 人材育成にも力を注いでは (2017年05月21日)

自民党の派閥の地盤低下が指摘されて久しい。存在意義を示すには、規模拡大だけでなく、政策提言や人材育成にも力を入れる必要があろう。

自民党の麻生副総理と山東昭子・元参院副議長、佐藤勉衆院議院運営委員長が会談し、新派閥の結成で合意した。

7月上旬にも、麻生派(44人)、山東派(11人)、佐藤氏のグループ(6人)が合流する。

新派閥は、額賀派(55人)を抜き、細田派(96人)に次ぐ党内第2派閥になる見通しだ。会長には麻生氏が就き、山東氏は会長代行、佐藤氏は会長代理を務める。

麻生、山東両派は一貫して安倍首相を支持している。党内の「安倍1強」体制に変わりはない。夏以降の内閣改造や、来年秋の自民党総裁選に向けて、党内での影響力を増したいのだろう。

麻生氏は「小さな派閥の乱立より、大きな派閥があった方が政権を安定させる」と語る。党内での「疑似政権交代」が可能な2大派閥を形成すべきだとの立場だ。

将来的には、岸田派(46人)と合流する「大宏池会」構想もにらんでいるとみられるが、ポスト安倍の行方とともに流動的だ。

自民党の派閥は伝統的に、自らの領袖(りょうしゅう)を総裁選で勝たせるため、激しい権力闘争を展開する主体だった。1990年代の衆院選への小選挙区制導入で、選挙の公認などで党執行部の権限が強まり、派閥の力は相対的に衰退した。

小泉政権では、閣僚・党三役人事で派閥の意向が無視され、さらに派閥の求心力は弱まった。今も、派閥が直接関与するのは副大臣以下のポスト配分に限られる。

無派閥議員が80人以上もおり、党全体の約2割を占めていることが、派閥に所属するメリットの小ささを象徴している。

安倍政権では、首相官邸が政策決定を主導する「政高党低」の構図が続く。内閣が政策を主導するにしても、政治家が志を持って党の政策を立案・提言することまで否定されるべきではあるまい。

若手の人材育成も重要課題だ。自民党の衆院議員は当選3回以下が過半数である。特に2012年に初当選した100人余には不適切な言動の議員が目立ち、政治家の質の低下が問題視される。

党執行部は、若手対象の国会活動などの研修を検討したが、実現していない。かつては派閥が人材育成の一翼を担っていたこともある。今の派閥にも、こうした地道な活動に正面から取り組むことが求められるのではないか。
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[読売新聞] GDPプラス 持続力を高める工夫が必要だ (2017年05月21日)

景気は息の長い回復を続けているが、勢いは今ひとつである。力強い成長の実現へ、日本経済の底力を高めたい。

内閣府が発表した今年1?3月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比0・5%増、年率換算で2・2%増となった。5四半期連続のプラス成長は、約11年ぶりのことである。

牽引(けんいん)役は前期比2・1%増と高い伸びになった輸出だ。北米やアジアなど海外の好景気に支えられた。アジア向けでは、半導体関連機器などが好調だった。

内需の柱の個人消費も、0・4%増と堅調に推移した。生鮮食品の高騰が一服し、消費者心理が改善したことが大きい。

内需と外需がバランス良く成長したのは、明るい材料である。

ただし、外需の先行きは不透明だ。北朝鮮などの地政学リスクやトランプ米政権の保護主義的な通商政策に注意が要る。

消費が増加基調をどこまで保てるのか、不安な面もある。

気がかりなのは、賃金の伸びの鈍化だ。給与などの実質雇用者報酬は前年同期比0・5%増と、前期の2・2%増から減速した。

賃金の伸び悩みが消費を冷やす事態は避けねばならない。

今年の春闘では、約2%の賃上げが確保された。4?6月期にはこれが反映されよう。企業の好業績が賃金を押し上げ、それが消費を活性化させる「好循環経済」につなげることが求められる。

それには、賃上げに加えて、職業訓練などで労働者の能力向上を図り、1人当たりの生産性を高めることが大切である。

企業の収益アップと、従業員の処遇改善につながろう。

非正規雇用者から正規雇用への移行を容易にし、雇用環境を底上げすることも急がれる。

年金など社会保障制度に対する将来不安が、消費者の節約志向を強めている面もある。

消費税率引き上げの2度の延期を受けて、社会保障・税一体改革の実現をどう図っていくのか。持続可能な制度への道筋は、依然として示されていない。

GDP速報で、設備投資が前期比0・2%増の低い伸びにとどまったのは、やや物足りない。

人手不足などの克服を目指す省力化投資は、企業にとって喫緊の課題である。ため込んだ多額の内部留保を、もっと積極的に活用してもらいたい。

政府も、新産業育成を支援する規制改革を聖域なく実施し、企業の背中を押す必要がある。
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2017年05月20日

[読売新聞] トランプ政治 ロシア疑惑を自ら拡散させた (2017年05月20日)

昨年の米大統領選で、ロシアがトランプ大統領の陣営と結託していた疑惑は、一段と深まった。真相究明に向けて、公正な捜査を行う態勢が整えられたのは当然である。

米司法省が、モラー元連邦捜査局(FBI)長官を特別検察官に任命した。ホワイトハウスの意向に背いて決定したという。異例の事態だと言える。

特別検察官は、大統領や高官の関与が疑われる事件について、中立的な立場で捜査を指揮する。幅広い裁量を持ち、必要な場合は刑事訴追もできる。ニクソン大統領の辞任につながったウォーターゲート事件でも、解明に努めた。

今回の「ロシアゲート」は、ロシアがサイバー攻撃などでクリントン陣営の選挙運動を妨害し、トランプ氏の当選に手を貸した疑惑だ。トランプ陣営も連携していた可能性が指摘されている。

トランプ氏に近いフリン前大統領補佐官が政権発足前に、対露制裁の緩和を駐米露大使に「密約」した疑いも捜査対象となる。

深刻な局面に発展したのは、トランプ氏がコミーFBI長官を電撃解任してからだ。「目立ちたがり屋で、FBIを混乱に陥れた」という理由は説得力を欠き、世論の猛反発を招いた。

トランプ氏がコミー氏に、フリン氏に対する捜査を打ち切るよう求めていたとの報道が追い打ちをかけた。自らが捜査対象でないことをコミー氏から確認を取ったとも主張している。

FBI長官への直接の働きかけは、司法妨害と受け取られかねない。事実関係が確認されれば、大統領罷免(ひめん)に向けた「弾劾(だんがい)訴追」の対象にもなる。コミー氏はトランプ氏との会話メモを残しているという。徹底した捜査が必要だ。

トランプ氏がラブロフ露外相との会談で、イスラム過激派のテロ計画に関する機密情報を漏らした疑惑も看過できない。情報はイスラエルから得たとされる。

同盟国や友好国が提供する情報を無断で第三国に伝えるのは、諜報(ちょうほう)活動の基本ルールに反する。米国に対する信頼を著しく損ねたのは間違いない。情報収集体制への悪影響が懸念される。

トランプ氏は、自身や陣営に関する疑惑を全面否定した。「すべては魔女狩りだ」と不満を示し、メディア批判を繰り返す。

政治経験と専門知識の欠如を自覚せず、強権的手法を続けることが、政権運営を危うくさせている現実を認識できないのか。大統領の資質が改めて問われよう。
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[読売新聞] 「退位」特例法案 円満な成立へ詰めの努力急げ (2017年05月20日)

政府が、天皇陛下の退位を実現する特例法案を国会に提出した。

ほとんどの党が法案に大筋で同意している。円満かつ速やかに成立させてもらいたい。

政府は、法案の骨子案を事前に示し、与野党協議を先行させる異例の対応を取った。内容について、各党の見解に大きな隔たりがなくなったのは、このためだ。

憲法1条は、「天皇の地位は国民の総意に基づく」と定める。これを踏まえ、幅広い合意形成を重視した政府や各党の姿勢は、適切だったと言えるだろう。

法案名は「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案」だ。公布後3年以内に施行される。退位後は上皇と称し、宮内庁に上皇職を設ける。これらが主な内容だ。

「皇室典範は特例法と一体をなす」との文言を皇室典範の付則に加えることも規定される。「皇位は皇室典範の定めるところにより継承する」という憲法2条に抵触するのを避けるためだ。

与野党に意見の相違があった部分も、概(おおむ)ね妥当な内容になった。中でも、退位を示唆した陛下の「お言葉」に触れた文言を取り入れなかった意味合いは大きい。

衆参両院の正副議長が3月に国会の総意としてまとめた見解は、「お言葉」に触れるよう求めていた。だが、「お言葉」を踏まえた法制化は、「天皇は国政に関する権能を有しない」と定める憲法4条に違反する恐れがあった。

法案は、衆院では議院運営委員会での審議となり、参院には特別委員会が設置される。

懸念されるのは、政府に安定的な皇位継承策を検討するよう求める特例法案の付帯決議について、未(いま)だに与野党間の合意が得られていないことである。

皇族の数を維持し、皇室の安定を図るための現実的な方策の一つが「女性宮家」の創設だろう。民進党は、創設を検討するよう付帯決議に明記して、早期に議論を始めることを求めている。

古くから続く男系継承を重視する自民党は、女性宮家が女性天皇や女系天皇の容認につながるのを警戒し、付帯決議への明記に、なお難色を示している。

法案審議は、与野党が付帯決議について合意した後に始まる予定だ。協議が難航すれば、法案成立が遅れる可能性もある。

秋篠宮ご夫妻の長女、眞子さまが婚約される。ご結婚すれば、皇籍を離脱する。皇族減少への対応策の検討は先送りできない。各党は、それを肝に銘じたい。
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2017年05月19日

[読売新聞] 高浜原発再稼働 仮処分が招く混乱に終止符を (2017年05月19日)

原発の再稼働は、電力の安定供給に大きく貢献する。その恩恵を消費者に実感してもらうことが大切である。

司法判断などで停止を余儀なくされた関西電力高浜原発4号機が再稼働した。近く発電を始め、6月中旬にも営業運転に移行する。3号機は7月からの営業運転を目指している。

敷地内では1月、大型クレーンが倒れる事故が起きた。原子炉に影響はなかったが、地元の福井県は厳しく批判した。関電は安全確保に万全を期さねばならない。

2基が営業運転した後、関電は電気料金を値下げする方針だ。火力発電の燃料費などを、月に70億円抑制できるためだという。

関電は東日本大震災前まで、発電量に占める原発の比率が約50%と高かった。全原発が停止した震災後は、2度にわたって料金を上げざるを得なかった。

現在、関電の電気料金は東京電力や中部電力より割高だ。値下げが実現すれば、消費者や企業の負担感は軽減される。結果として原発の重要性が再認識され、他の原発の再稼働へ追い風となろう。

関電では、大飯原発3、4号機も、再稼働の前提となる安全審査などの手続きが大詰めだ。

西日本では既に、四国電力伊方原発3号機と、九州電力川内原発1、2号機が再稼働した。九電玄海原発3、4号機についても、地元が再稼働を了解している。

懸念されるのは、司法リスクである。大津地裁は昨年3月、高浜原発の2基に対して、運転差し止めの仮処分を決定した。大阪高裁が今年3月、決定を取り消したため、再稼働にこぎ着けた。

同様の仮処分申請は各地で出されている。再び停止命令が出る可能性は捨て切れない。高浜原発に対しても、福井地裁敦賀支部に改めて仮処分が申し立てられた。

仮処分は元々、急迫した危険などを避けるために設けられた司法手続きである。迅速に審理を進めることが重要視される。

広島地裁は3月、伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分申請を退けた。原発に関する司法判断には「慎重な認定作業が必要」で、仮処分手続きは、これに「なじまない」との理由からだ。

原発は、規制当局による厳しい審査に合格して、初めて稼働できる。広島地裁も指摘するように、差し止め請求は、審査データや専門家の見解などを基に、本訴訟で丹念に審理されるべきだろう。

拙速な司法判断で、電力供給を混乱させてはならない。
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[読売新聞] 国連拷問委勧告 慰安婦合意見直しは筋違いだ (2017年05月19日)

慰安婦問題に関する事実関係や日韓両政府の外交努力への理解が欠けている、と言えよう。

国連の拷問禁止委員会が、慰安婦問題を巡る2015年末の日韓合意の見直しを韓国政府に勧告した。

勧告は、慰安婦を「第2次大戦中の性奴隷制度の犠牲者」と決めつけた。日韓合意は「被害者に対する名誉回復や補償、再発防止が十分でない」とも批判した。

勧告に強制力はない。ただ、韓国の朴槿恵政権の結んだ日韓合意の履行に消極的な文在寅大統領が合意の「再交渉」を日本に求める口実とする恐れも否めない。

日本政府は、慰安婦を「性奴隷」とする勧告の誤りを指摘し、反論する文書を委員会に近く提出する方針だ。当然の対応である。

日韓合意は、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した。当時、韓国出身の潘基文国連事務総長や米政府など、国際社会から高く評価された。

日韓合意に基づき、日本政府は昨年8月に元慰安婦を支援する韓国の新財団に10億円を拠出した。存命する韓国人元慰安婦の7割がこの現金支給を受け入れた。

そもそも日韓間の財産・請求権問題は、1965年の国交正常化時の協定で国際法的には解決済みだ。人道的支援として日本政府は「アジア女性基金」を設立し、元慰安婦に「償い金」も渡した。

委員会は、こうした経緯や戦時中の慰安婦の実態を正確に理解せず、偏った考え方の元慰安婦支援団体や個人の主張に依拠し過ぎているのではないか。

国連総会で採択された拷問等禁止条約に基づき、委員会は88年に発足した。各締約国が拷問や暴力的な刑罰を行っていないか、などを定期的に審査している。

政府は昨年2月の国連女子差別撤廃委員会で、慰安婦問題について初めて包括的な説明を行った。強制連行を裏付ける資料は発見されておらず、「性奴隷」の表現は事実に反する、と指摘した。

しかし、遅きに失した感は否めない。女子差別撤廃委は翌月、「犠牲者の立場に立ったアプローチが取られていない」と日韓合意を批判する報告書をまとめた。

国連人権委員会には96年、慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏の虚偽証言を引用したクマラスワミ報告が提出された。報告は様々な機会に取り上げられ、日本の名誉を傷つけている。

一連の誤解や曲解をきちんと正すため、政府は国際的な発信を積極的に続ける必要がある。
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2017年05月18日

[読売新聞] 郵政赤字決算 M&Aの失敗から多くを学べ (2017年05月18日)

収益向上の目玉とされた国際物流強化のM&A(合併・買収)が、わずか2年でつまずいた。

日本郵政の2017年3月期決算は、最終利益が289億円の赤字だった。07年の民営化後、初の赤字転落だ。

15年に子会社の日本郵便が買収した豪物流大手トール・ホールディングスの経営不振を受けて、約4000億円に上る巨額損失を計上したことが響いた。

日本郵政には、「負の遺産」を一括処理して、反転攻勢の環境を整える狙いがあるのだろう。目標とする総合物流会社への脱皮を果たすため、稼ぐ力を高める改革を断行しなければならない。

国内市場は今後、人口減などで縮小が避けられまい。海外に活路を求めるのは理解できる。

今回の損失に懲りて、国際進出に後ろ向きになるようでは、未来の展望は開けない。今後もM&A戦略を展開する上で、過去の経験に学ぶ姿勢が何より重要だ。

日本郵政は、資源安で豪州景気が冷え込み、トールが想定通りの利益を上げられなかったと説明する。そうした事情を勘案しても、6200億円というトール買収額は明らかに「高値づかみ」だったのではないか。

15年11月に郵政グループ3社が上場する前に買収を実現させたいとの焦りにかられて、資産査定が甘くなった。買収後の経営管理がほぼ現地任せだった。そんな反省の声も聞かれる。

M&Aの是非を十分検討し、適正に経営判断されたのか、疑問は拭えない。当時の西室泰三社長ら経営トップの責任についても、厳しく問い直す必要があろう。

大切なのは、トール買収の誤算を踏まえ、郵政グループとして確かな収益基盤を築くことだ。

日本郵政の利益は、傘下のゆうちょ銀行とかんぽ生命保険への依存度が大きい。金融2社はいずれ完全民営化してグループを離れる方向である。残る日本郵便は業績が下降線で、どう成長を図るのか、極めて不透明だ。

新たな収益の柱として、日本郵政は野村不動産ホールディングスの買収を検討している。郵便局用地の再開発などが有望な事業になるか、精査が求められる。

日本郵政株は、政府保有が3分の1程度になるまで市場で売り、売却益を東日本大震災の復興財源に充てることになっている。

株価が低迷すれば、復興財源の確保に支障をきたしかねない。市場の厳しい評価に耐え得る成長戦略を示すべきだ。
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[読売新聞] 眞子さま婚約へ 二人の出会いを祝福したい (2017年05月18日)

秋篠宮ご夫妻の長女、眞子さまが婚約されることになった。心からお喜びを申し上げたい。

天皇陛下の孫が結婚するのは初めてとなる。内親王としては、2005年に結婚した長女の黒田清子さん以来の慶事である。

お相手は大学時代の同級生の小室圭さんだ。出会いは、12年に開かれた留学の意見交換会だった。秋篠宮ご夫妻の了承も得て、交際を深めてこられた。

女性皇族はこれまで、旧家などに嫁ぐことが多かった。

小室さんは、法律事務所に勤める一般の青年だ。東京都職員と結婚した清子さんと同様、眞子さまは、国民に身近な皇室を体現されている。気さくな人柄だけに、明るい家庭を築かれるだろう。

眞子さまは国際基督教大を卒業後、英レスター大大学院で博物館学を学ばれた。現在は東京大総合研究博物館の特任研究員だ。

公務にも積極的に取り組んでこられた。東日本大震災の被災地を訪問し、子供たちに優しい言葉をかけるなど、皇族としての役割を立派に果たされている。

現行の皇室典範の規定では、女性皇族は結婚すると、皇籍を離れる。眞子さまが結婚されると、未婚の女性皇族は6人となる。将来、同じように皇籍を離脱すれば、皇族が分担している公務の遂行が困難になる恐れがある。

皇族数が減少していることへの対応は、重要な課題である。

国会の各党・会派は、天皇陛下の退位を可能にする特例法案の付帯決議に、「女性宮家」創設を検討するよう明記するかどうか、調整を続けている。

女性宮家を設ければ、結婚後も女性皇族が皇室にとどまることが可能になる。12年に当時の野田内閣が、創設を検討すべきだとする論点整理を公表したが、この年に第2次安倍内閣が成立して以来、議論は進んでいない。

皇族数を維持するための現実的な方策として、女性宮家創設の検討を付帯決議に盛り込み、議論を深めるべきだろう。

戦後に皇籍離脱した旧宮家の男子を皇族に復帰させる、という手法も考えられる。安倍首相も野党当時、月刊誌上で提言した。男系による安定的な皇位継承を図ることが主眼だが、幅広い支持を得られているとは言い難い。

首相は、1月の国会答弁で「対象者すべてから拒否されることもあり得る」と述べている。

慶事を機に、将来の皇室の在り方をじっくりと考えたい。
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2017年05月17日

[読売新聞] 大学新入試案 受験生の力を適切に測りたい (2017年05月17日)

3年後の導入にもかかわらず、解決すべき課題は、まだ多い。

文部科学省が、大学入試センター試験に代えて2020年度から始める「大学入学共通テスト」の実施方針案を公表した。大学や高校関係者らの意見を聞いた上で、6月にも正式決定する。

国語と数学の一部の問題に記述式を導入する。英語では民間の資格・検定試験を活用する。これらが新テストの特徴だ。

国語の記述式では、契約書や行政機関の資料から必要な情報を読み取って、考えをまとめ、論じる問題例が示された。マークシートの問題とは別に、1点刻みではなく、数段階で評価する。

数学では、解答を導く過程の数式の記述を求めている。

知識偏重の入試から脱却し、読解力や思考力、表現力を問う。大学入試改革の趣旨に沿った問題形式だと言えよう。画一的な受験テクニックだけでは、正解を得るのは難しい。高校教育の充実につながることを期待したい。

採点は、大学入試センターが民間業者に委託して実施する。正確かつ迅速に処理するためには、採点基準の明確化や質の高い採点者の確保が不可欠である。

英語の試験は大きく変わる。受験生は基本的に、高校3年の4?12月に2回まで、実用英語技能検定(英検)やTOEFLなどを自ら選択して受ける。各大学は、その結果を入試の成績に用いる。

「読む」「聞く」だけでなく、「話す」「書く」を加えた総合的な英語力を判定する。

その狙いは理解できるが、問題は、民間テストで学力を適切に測れるのか、という点だ。文科省が例示した約10種類の試験は、必ずしも高校の学習指導要領に準拠していない。ビジネスや留学など、想定する目的も一律ではない。

文科省や大学は、問題の質を入念に見極めることが大切だ。

民間試験では1回につき、約5000円から2万5000円程度の受験料が必要になる。家庭の経済状況により、受験機会が制限されるケースも考えられる。

文科省は、民間試験と現行のような共通テストを当面は併用する案と、民間試験の結果だけで評価する案を示した。教育現場の声に耳を傾け、受験生の身になって最終判断することが肝要である。

50万人規模の試験だけに、周到な準備を怠ってはならない。大学入試センターが今年度に実施するプレテストなどで、改善点をしっかりと洗い出してもらいたい。
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[読売新聞] サイバー攻撃 安全対策に手抜かりはないか (2017年05月17日)

市民生活や経済活動に重大な損害を与える卑劣な攻撃である。官民が連携し、安全対策を徹底せねばならない。

「ランサム(身代金)ウェア」と呼ばれるウイルスによる大規模なサイバー攻撃が世界を襲った。コンピューターが感染すると、データが暗号化される。復元するには数万円を支払え、と要求する文言が画面に現れる。

先週末からの数日間で、少なくとも150か国・地域にわたり、30万台以上の被害が出た。約30言語が使われ、仮想通貨のビットコインでの支払いを求めるという巧妙な手口である。拡散の速度と規模は、史上最悪レベルだ。

英国では、公的医療機関のシステムが感染し、手術や救急治療が延期される事態に陥った。スペインの通信会社やドイツの鉄道網も被害を受けた。日常生活にかかわる重要インフラを狙った攻撃は、看過できない。

攻撃に使われたウイルスは、米マイクロソフト社の基本ソフトウェア(OS)の欠陥を悪用したものだ。1台が感染すると、企業などのネットワーク内で増殖し、拡散する仕組みになっていた。

欠陥は今年3月に公表され、修正プログラムが配布された。旧型のOSへの対応が遅れたことが、被害の拡大につながった。

OSを常時更新し、ウイルス対策ソフトを導入する。データをバックアップし、不審な添付ファイルは開かない。利用者には、そんな細心の注意が求められよう。

深刻なのは、米国家安全保障局(NSA)がこの欠陥を突くため開発した攻撃用ツールが盗まれ、今回のウイルスに転用された可能性が大きいことだ。

米国、ロシア、中国などは、国家ぐるみでサイバー攻撃能力の向上を進めているとされる。

各国が「サイバー兵器」を厳重に管理し、犯罪者の手に渡さない方策が必要ではないか。一般市民を攻撃から守るための国際ルールの策定も長期的課題となろう。

日本では、日立製作所でメールの送受信障害が起きた。JR東日本では、パソコン1台が感染した。週明けの鉄道運行に支障はなかった。欧米に比べて軽度な被害にとどまっているのは幸いだ。

だが、600か所、2000端末が感染したとの情報もある。警戒を怠ってはなるまい。

2020年東京五輪に向け、日本がサイバー攻撃の標的にされるとの懸念は強い。政府や企業は、情報収集と対策の周知徹底に努めることが欠かせない。
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2017年05月16日

[読売新聞] G7財務相会議 格差是正に自由貿易が必要だ (2017年05月16日)

世界経済の持続的成長には格差の是正が欠かせない。そのためにも、自由貿易体制の重要性の認識を先進国が改めて共有せねばなるまい。

イタリアで開かれた先進7か国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は共同声明で、「過度の格差は、将来の潜在成長率を抑制する」と警鐘を鳴らした。

「多くの国で格差が顕著に見られ、特に低・中所得者に影響を与えている」とも指摘した。

社会の分断や、地域間・世代間の格差拡大を是正できなければ、息の長い成長は望めない。この観点から、政策協調を深めようとするG7の合意は評価できる。

声明は、財政出動と構造改革を組み合わせ、低所得層にも恩恵が及ぶようにすべきだとした。

欧米でポピュリズムが台頭した背景には、格差拡大による大衆の不満が影を落としている。格差社会の固定化は、成長の核となる中間層を弱め、活力を失わせる。それがG7の抱く危機感だろう。

米国は、鉄鋼など競争力の劣る製造業地帯を抱える。欧州は、多くの国で若者の失業率が高い。各国は個別事情に配慮しつつ、効果的な施策を講じる必要がある。

問題は、米国が自らの産業構造転換の遅れを棚に上げ、自由貿易をやり玉に挙げる保護主義的な主張を繰り返していることだ。

麻生財務相が会議で「自由貿易が経済の繁栄に寄与してきた」と強調したのは、もっともである。同様の意見が相次いだという。

ムニューシン米財務長官は会議後、「他国との貿易が公正ではない場合、保護主義的な行動をとる権利がある」と明言した。

貿易が「公正」かどうかは、立場によって解釈が異なることが珍しくない。通商紛争が生じれば、世界貿易機関(WTO)の裁定に委ねるのが国際ルールだ。

トランプ米政権は、自国に不利な場合は、WTOに従わない可能性を示唆している。G7を主導してきた米国が孤立を深める事態は極めて異常である。保護主義で世界経済の停滞を招けば、格差是正も果たせないだろう。

今月下旬の主要国首脳会議(サミット)は、トランプ大統領が初参加する。今回の議論を踏まえ、貿易が主要議題の一つとなる。

米国内の格差問題を、貿易相手国に責任転嫁する姿勢に変化が見られるか、どうなのか。

米国が格差是正に本気で取り組むなら、国外に敵を見つける政治ゲームから卒業し、国内で実のある対策を急ぐべきである。
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[読売新聞] 「一帯一路」会議 中国主導で国際秩序築けるか (2017年05月16日)

中国主導の国際秩序構築に向けて布石を打っても、独善的な振る舞いを改めない限り、日米などの不信感は拭えない。

習近平政権が北京で、巨大経済圏構想「一帯一路」をテーマにした国際協力会議を初めて開いた。

この構想は、2013年秋に習国家主席が提唱した。かつての陸と海のシルクロードを軸にアジアと欧州を結び、沿線国のインフラ整備や貿易の活性化を目指す。

会議には、130か国以上から計1500人が参加した。ロシアやイタリア、フィリピンなど29か国は、首脳が出席した。

今秋、習氏は5年に1度の共産党大会を開く。最大の外交イベントと位置づける「一帯一路」会議を成功させることで、自らの威信強化につなげる思惑があろう。

習氏は開幕式で、「協力と共存共栄を中核とした新たな国際関係を築く」と演説し、米国中心の既存秩序を牽制(けんせい)した。インフラ投資などの資金を賄う「シルクロード基金」に、約1兆6400億円を追加拠出する方針を表明した。

そのうえで、「多国間貿易体制を守り、自由貿易圏の建設を推進する必要がある」とも語った。

トランプ米政権が環太平洋経済連携協定(TPP)を離脱したことを念頭に、「世界経済の牽引役」を自称したいのだろうか。

国内で外国企業の活動を制限する。過剰生産した安い鉄鋼製品を大量に輸出する。そんな中国が米国に代わって自由貿易を先導するとの主張は説得力を欠く。

インフラ案件では、共存共栄を唱えながら、強引な手法や見通しの甘さから事業が停滞するケースも目立つ。インドネシアの高速鉄道計画は、その象徴と言える。

問題なのは、海のシルクロード構想が港湾整備を通じた海軍の拠点確保と表裏一体である点だ。

インド洋周辺にあるパキスタンやスリランカの港などでは、大規模な投資が進む。中国は経済的な恩恵を強調するが、米国排除を狙った覇権主義的な海洋進出を支える港湾整備なのは間違いない。

アフリカ北東部のジブチでは、海軍補給基地の建設が進行中だ。軍事拠点化が完成しつつある南シナ海の人工島とともに、インドなど周辺国の懸念を招こう。習政権が力の支配を続けるなら、「一帯一路」の成功も覚束(おぼつか)ない。

日本は、自民党の二階幹事長らを会議に派遣した。日中関係はもとより、アジア地域の安定と発展に寄与するかどうかを慎重に見極めることが重要である。
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2017年05月15日

[読売新聞] 司法修習給付金 法曹養成の抜本改革こそ急げ (2017年05月15日)

「法曹離れ」を食い止める一助となるのか。

改正裁判所法が、全会一致で成立した。司法修習生に、国が月13万5000円の基本給付金を一律支給する制度の創設が柱だ。11月に施行される。

2011年に廃止された「給費制」の事実上の復活だ。法律家は公益性の高い職業だけに、社会全体で育てる。この理念は今回も引き継がれていると言えよう。

国の新たな負担額は年30億円に上る。厳しい財政事情の中、異例の厚遇である経済支援を再開するのは、法律家を志す人の減少を食い止めるのが目的だ。

確かに、法曹養成制度は危機的状況にある。昨年の司法試験の受験者は6899人で、前年より1000人以上も減った。法科大学院の志願者は、昨年度が8274人で、ピークだった04年度の9分の1近くに落ち込んでいる。

日本弁護士連合会は、法曹になるまでに費用がかかり過ぎることに原因がある、と主張する。

新制度も、この考えに沿っているが、国民は、すんなりと納得できるだろうか。

給費制に代わって導入された「貸与制」で、修習生は月18万?28万円を無利子で借りることができる。返済は修習終了から5年間、猶予される。これだけでも、かなりの好条件だろう。貸与制は、新制度の開始後も維持される。

司法制度改革で法曹人口が大幅に増えると、国の財政が圧迫される。これが給費制廃止の理由だったが、法曹人口の拡大目標は既に下方修正されている。

改革への取り組みが中途半端なまま、経済支援だけ復活させることには、違和感を禁じ得ない。

求められるのは、現行の法曹養成の在り方の抜本的見直しだ。

法曹離れの最大の原因は、法科大学院の不振にほかならない。修了者の司法試験合格率は昨年、過去最低の20・68%にとどまった。かけた時間と費用に見合う結果をなかなか得られない。志願者が尻つぼみになるのは当然だろう。

実務教育重視の理念を維持しつつ、合格に向けた指導の充実が急務だ。法科大学院中心の制度をこのまま続けるかどうか、も検討する時期にきている。

司法サービスには、改善すべき点が多い。弁護士の多くが大都市圏に集中する偏在は、解消されていない。弁護士の活動領域も、さらに拡大する必要がある。

国民が求めているサービスを提供する。支援を受ける以上、それが法曹の務めである。
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[読売新聞] 北ミサイル発射 中韓への挑発だけではない (2017年05月15日)

北朝鮮の弾道ミサイル能力の確実な向上を示す威嚇行動だ。関係国は緊密に連携し、包囲網を強化せねばならない。

北朝鮮が北西部から弾道ミサイルを発射した。約30分間にわたって、800キロ程度飛行し、日本海に落下した。

防衛省によると、高度が2000キロ超と、従来の中距離ミサイルよりも格段に高く、新型ミサイルの可能性がある。意図的に高い軌道を選んだとみられる。通常の角度で発射すれば、飛行距離を大幅に伸ばせると分析されている。

安倍首相は、「国際社会の強い警告にもかかわらず、またも発射を強行した。断じて容認できない」と、北朝鮮に強く抗議した。

韓国では、北朝鮮に融和的な左派の文在寅大統領が就任したばかりだ。文氏との対話に簡単には応じない、という金正恩政権のメッセージとも解されよう。

文氏は関係閣僚らとの会議で、「無謀な挑発だ」と、北朝鮮を批判した。南北対話について、「可能性はあるが、北朝鮮の態度が変わって初めて実施できる」と、慎重な姿勢を見せた。対話や経済支援を急いではなるまい。

日米韓が、結束して北朝鮮に対処することが大切である。

岸田外相と韓国の尹炳世外相が電話会談で、「対話のための対話では意味がなく、今は北朝鮮に圧力をかけていくことが必要だ」と確認したのは、もっともだ。

北朝鮮のミサイル発射は、中国の「一帯一路」国際協力フォーラムの開幕直前を狙い撃ちしたものだった。米国と協調して圧力を強めようとする習近平政権への牽制(けんせい)であるのは間違いない。

北朝鮮経済の生命線を握る中国は今こそ、原油供給を制限するといった実効性のある措置に踏み切ることが求められよう。

日本は、外交努力と同時に、独自のミサイル防衛を強化する取り組みが欠かせない。

政府は、陸上型イージスシステムを新たに導入する方向で調整に入った。コストなどの面で適切との意見が強まっているためだ。

実現すれば、現行のイージス艦搭載の迎撃ミサイル、地上配備の地対空誘導弾と合わせた「3段構え」の迎撃態勢が整う。

政府と自治体は、国民の安全確保に万全を期す必要がある。

全国瞬時警報システム「Jアラート」を活用した避難訓練を重ねる。着弾時の対処法などの周知徹底を図る。いずれも不測の事態に備えた対応であり、「過剰反応」との批判は当たらない。
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2017年05月14日

[読売新聞] 東京都議選 政策論争の土台が定まらない (2017年05月14日)

7月2日投開票の東京都議選まで1か月半となった。自民、公明両党が長年の協力関係を断ち、現職知事が地域政党を率いて戦うという、かつてない首都決戦になる。

有権者に分かりづらいのは、都議選の各党の構図が国政とねじれていることだ。公明党は都議会で自民党との連携を解消し、小池百合子知事が特別顧問の「都民ファーストの会」と選挙協力する。

危機感を募らせる自民党は、都議選の総決起大会を開き、菅官房長官らが候補者を激励した。地方選としては異例の挙党態勢で臨む。2020年東京五輪の成功、防災対策の強化などを盛り込んだ公約骨子を4月に発表した。

小池氏は、自民党との対決姿勢を強め、公明党などとの協調関係をアピールする。連休中の街頭演説で「都議会改革の先頭に立っている」と公明党を持ち上げた。

民進党は、小池氏の高い人気を意識し、「子どもファースト」を掲げて小中学校の給食費無償化などを訴える。だが、公認候補予定者の3分の1超が離党届を出し、都民ファーストへのくら替えも相次ぐ。党勢低迷は深刻だ。

都議選が重視されるのは、09年の政権交代などで国政選の先行指標になってきたからだ。今回も、結果次第では安倍首相の政権運営や衆院解散戦略に影響しよう。

都民ファーストの問題は、候補者の擁立が遅れているうえ、公約も固めきれていないことだ。

全42選挙区に60人超を擁立し、公明党などと合わせて過半数の64議席の獲得を目指すが、現時点での公認は42人にとどまる。小池氏が主宰する政治塾出身者や、自民、民進の離党組が中心だ。

公表した政策も、議員公用車の廃止や政務活動費での飲食禁止など、議会改革に限られる。都民の関心が高い築地市場の豊洲移転問題が混迷し、小池氏が判断を留保している影響ではないか。

小池氏は、築地の再整備案も視野に入れ、豊洲への移転案と併せて検討中だ。自民、公明両党は、豊洲への早期移転を推進し、共産党は築地の再整備を主張する。

小池氏は移転の判断を先送りせず、都議選前に方向性を有権者に示すべきだ。都民ファーストが地域政党として何を目指すのか、国政にどう関与するのか、についても明確にする必要がある。

小池都政へのイエスかノーかを問うだけでは、実のある政策論争は望めない。各党には、具体的な政策を提示し、深みのある議論を展開することが求められよう。
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[読売新聞] 図書館の活用 地域の課題に寄り添う場所に (2017年05月14日)

読書の楽しさを提供するとともに、地域の課題にも寄り添い、住民と一緒に解決に取り組む。

これまでのイメージを超えた役割を担う、個性的な図書館が増えている。

日本図書館協会の調査では、全国の約500自治体で、図書館を拠点にした地域振興の取り組みが進行中だという。

岩手県紫波町では、農業の専門書やデータベースを充実させて、地元の農家を支援する。併設された農作物の直売所に料理本の紹介パネルを置いたり、住民と農家の交流会を開いたりしている。

神奈川県大和市の図書館は、健康関連の書籍や器具を集めた専用階などが人気を集め、昨秋の開館から140万人超が来館した。

地元企業のためにビジネス情報を提供する。認知症の家族に必要な書籍を紹介する。そんな工夫を凝らす図書館もある。

多様な住民が集まり、その中で思いがけない交流が生まれる。地域活性化の観点からも、こうした図書館の機能を大切にしたい。

活字文化を守るためには、若年層への働きかけが肝心だ。

親子でゆっくり読書を楽しめるよう、児童書の充実に力を入れる自治体は少なくない。10代の若者が友達と会話を交わしながら本も読める。気軽に立ち寄れるフロアを設けたところもある。

本好きの子供が一人でも増えるように、居心地のいい図書館が増えることを期待したい。

問題なのは、図書館を運営する人材や予算が足りないことだ。臨時職員なしでは日常業務もままならないケースもみられる。

効率化を目指し、民間企業などに運営を委ねる自治体が相次いでいる。民間ならではの柔軟な発想やノウハウを活用するのは一案だ。利用者や貸出数が飛躍的に伸びた例も少なくない。

斬新なアイデアの具体化には、やる気のある司書の存在と行政の後押しが不可欠である。

幅広い知識を持つ司書の確保という点で、現行の資格制度は物足りないとの声もある。

優秀な人材の発掘・育成に向けてどんな手立てがあるのか。政府は真剣に検討してもらいたい。自治体にも時間をかけて司書を育てる心構えが必要だ。

図書館は地域に根ざした公的拠点である。中長期的な視点が重要だ。健康福祉や子育て支援といった自治体の部署と司書との連携が求められる。知恵を出し合うことで、より充実した施策が期待できるのではないか。
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