2020年02月28日

[読売新聞] ハンセン病法廷 司法の過ち直視した違憲判断 (2020年02月28日)

裁判におけるハンセン病患者への人権侵害に、正面から向き合った司法判断と言えよう。

約70年前に熊本県で起きた「菊池事件」を巡る訴訟の判決だ。熊本地裁は、隔離されたハンセン病療養所の菊池恵楓園などに設けられた特別法廷が「法の下の平等を定めた憲法に反する」と指摘した。

ハンセン病を理由とする特別法廷は、90以上の裁判で設置された。最高裁は2016年の報告書で、隔離の必要性がなくなった1960年以降の設置手続きは「裁判所法に違反していた」と認めたが、違憲性には触れなかった。

今回、熊本地裁が裁判手続きを規定する裁判所法の違反にとどまらず、基本的人権を保障する国の最高法規である憲法に違反する、と踏み込んだ意義は大きい。

菊池事件では、ハンセン病患者とされた男性が殺人罪に問われ、特別法廷で死刑を言い渡されて62年に刑が執行された。今回の訴訟では、菊池恵楓園の入所者らが、検察が再審請求しないのは不当だとして国家賠償を求めていた。

判決は、男性の親族でない入所者らに賠償請求権はないとして、請求を棄却した。一方で「特別法廷での審理は、被告がハンセン病患者であることを理由とした合理性を欠く差別だ」と述べた。

菊池事件の特別法廷では、裁判官や検察官が証拠品を扱う際に、ゴム手袋をはめ、箸を用いていた。今回の熊本地裁判決は、こうした偏見に基づく差別的な取り扱いを問題視したのだろう。

判決が、特別法廷について、憲法が定める裁判の公開原則に反していた疑いがある、と言及したことは注目される。

特別法廷は、裁判所が被災するなど、やむを得ない場合のみ、例外的に認められるものだ。しかし、最高裁はハンセン病を理由とした特別法廷の設置を、具体的な事情を検討せずに許可していた。

特別法廷は、社会から隔絶された療養所などに置かれた。判決が「一般国民が訪問するのは事実上不可能で、傍聴を拒否したに等しい」と述べたのはもっともだ。

最高裁は、今回の判決を真摯(しんし)に受け止め、司法が犯した過ちを直視しなければならない。

菊池事件で刑を執行された男性の親族は現在、差別を恐れて名乗り出ることができない状況にあるという。昨年11月には、ハンセン病元患者だけでなく、家族の名誉回復を図る法改正が行われた。

社会に根強く残る偏見や差別を払(ふっ)拭(しょく)することが大切である。

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[読売新聞] 全国臨時休校へ 混乱抑え感染防止に全力を (2020年02月28日)

新型肺炎の患者が児童生徒にも出始めている。感染拡大につながるリスクをできる限り低減する狙いなのだろう。

安倍首相が、全国の小中高校や特別支援学校に対し、来月2日から春休みまで臨時休校とするよう要請する方針を明らかにした。

学校は大勢の子供が集まり、ひとたび生徒が発症すると、感染が一気に広がりやすい。家庭に戻って家族にうつす恐れもある。

新型肺炎では、感染経路のわからない患者集団が各地で見つかっている。ここ1?2週間は本格的な流行を抑止するための極めて重要な時期である。

全国一斉休校という異例の措置は、危機感の表れと言える。

北海道では27日から、小中学校の臨時休校が始まっていた。東京都は都立高校など約200校で、期末試験の終了後、前倒しで春休みに入ることを決めていた。

各自治体で独自に休校の動きが広がる中、政府として、統一的な考え方を示す必要に迫られた面もあったとみられる。

ただ、一斉休校に伴う様々な混乱も予想される。

3月に予定されている期末試験はどうするのか。試験を実施しないのなら、成績評価にも影響が出るのは避けられまい。

入学試験や卒業式も控えている。いずれも子供たちに重要な意味を持つ。実施する場合、会場の衛生管理を徹底するなど、感染防止に万全を期す必要がある。

休校中の子供たちが学習を続けられるよう、宿題を出して家庭学習を促すことも求められる。授業時間が不足するケースでは、学校が再開した後、適切な補習を実施してもらいたい。

一斉休校の措置を講じる際には保護者への配慮が欠かせない。

放課後に児童を預かる学童保育などの機能が低下すれば、日中も子供の世話をしなければならない保護者が増える。一人親や共働きの場合には、仕事を休まざるを得ないことになるだろう。

従業員が休みを取りやすい環境を、各企業が整えることが大切だ。テレワークなど在宅勤務も積極的に導入したい。

休業が長引いて収入が大きく減少するようだと、生活に困る人たちも出てくる。新型肺炎の影響で子供のために休んだ人に対して、政府は経済的な支援策を検討すべきではないか。

幼稚園や保育園の休園も予想される。幼い子供を持つ保護者にも十分な配慮が必要だ。

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2020年02月27日

[読売新聞] 衆院集中審議 新型肺炎対策を掘り下げよ (2020年02月27日)

衆院予算委員会で、安倍首相が出席して集中審議が行われた。論戦の焦点となったのは、新型肺炎の対策である。

立憲民主党の枝野代表は、政府の基本方針について「権限や財源をどう利用し、感染拡大を具体的に防止するのかが出てこない」と批判した。

首相は「今後の状況を見据え、各省庁で対策を具体化し、速やかに実行に移す」と語った。

基本方針は、患者の増加に備え、重症者に対する医療提供体制の整備や、マスクの円滑な供給などを盛り込んでいる。各省庁が連携して、必要な措置を躊躇(ちゅうちょ)なく行うことが求められる。

枝野氏は、小泉環境相ら3閣僚が政治活動を理由に政府の対策本部の会合を欠席したことも批判した。首相は「気を引き締めて取り組む」と述べた。緊張感を持って対策にあたらねばならない。

国民民主党の玉木代表は「先を見据えた緊急経済対策を講じてもらいたい」と述べた。首相は「きめ細かく対応する」と応じた。

個人消費の冷え込みや企業収益の悪化は大きな懸念材料だ。訪日中国人客は激減し、イベントの延期が相次ぐ。政府は影響を見極め、中小企業の資金繰り支援の拡充などを検討する必要がある。

新型肺炎の拡大に歯止めをかけることができるか、重要な時期である。与野党は総合的な対策について掘り下げて論じるべきだ。

野党は、黒川弘務・東京高検検事長の定年延長も取り上げた。検察庁法には規定がないため、政府は国家公務員法を適用し、黒川氏の定年を8月まで延ばした。

政府はかつて、検察官に定年延長の規定は適用されない、とする見解をまとめていた。今回の決定に際し、法解釈を変更したと説明したが、解釈変更に関する文書には日付がない資料もあった。

玉木氏は人事の撤回を求めた。首相は、定年延長は業務遂行上の必要性に基づくと説明したうえで「問題はない」と語った。

現在の検事総長は今夏が交代時期の目安だ。黒川氏は定年延長により、検事総長への道が開けた。首相に近いことから、首相官邸の意向が働いたとの見方がある。

検察は起訴権をほぼ独占し、時に政界捜査も行う。政治権力から不当な影響を受けないよう、一定の独立性が確保されている。

前例のない検察官の定年延長を判断した理由は何か。どのような経緯を経て解釈を変更したのか。政府は疑念を持たれぬように、説明を尽くさねばならない。

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[読売新聞] 違法薬物の密輸 態勢強化で確実に摘発したい (2020年02月27日)

覚醒剤など違法薬物の密輸が、深刻さを増している。人的、物的な態勢を拡充し、摘発を強化しなければならない。

全国の税関で昨年、押収された違法薬物は、約3・3トンで過去最多となった。このうち覚醒剤は約2・5トンで、8566万回分もの使用量に相当する。ゆゆしき事態と言える。

覚醒剤の密輸の典型例が、一度に大量の薬物を洋上で取引する「瀬取り」である。昨年6月には、静岡県南伊豆町に着岸した小型船から約1トン、12月には熊本県天草市にえい航された漁船から約590キロが押収された。

瀬取りの摘発には、不審な船の出入りなどの情報収集が重要だ。税関当局は漁業関係団体と協力して、監視を強めてもらいたい。

近年は、航空機や国際郵便物を利用した小口の密輸も目立つ。

成田空港では、タイからの格安航空会社便を使った密輸が相次いで摘発された。小分けした覚醒剤を複数人で運ぶ手口だ。密輸組織が多数の運び屋を現地で雇い、ツアー客に紛れ込ませて日本に持ち込ませているという。

チューブ型のボディークリームに覚醒剤を練り込んだり、入浴剤やカップ麺の粉末スープに見せかけたりして、国際郵便や航空貨物で送られてくるケースもある。

手口が巧妙化する密輸に対処するためには、水際の検査を徹底することが欠かせない。

税関当局は4月以降、空港や港湾に、高性能の検査機器を増設する。液体に溶けた違法薬物を探知する装置や、手荷物の中身を3D画像で解析できるX線CT検査機器などだ。担当職員の検査能力も向上させる必要がある。

警察庁によると、国内の覚醒剤事件の摘発者数はここ数年、年1万人前後と高止まりしている。

覚醒剤を使用すると心身が蝕(むしば)まれ、さらなる犯罪を引き起こすリスクが高まる。取引の多くに暴力団が関わり、その収益が活動を支える資金源にもなっている。

薬物犯罪を抑止するため、国内外の警察や税関当局が緊密に連携し、密輸による覚醒剤の供給ルートを断つことが大切である。

海外から密輸されるのは、違法薬物だけではない。今夏には、東京五輪・パラリンピックが開催される。テロ防止の観点から、爆発物や武器の持ち込み、不審人物の入国を防ぐことが課題となる。

大量の画像情報をAIに学習させ、疑わしい荷物をX線検査で見分ける実証実験も始まった。新技術を着実な摘発につなげたい。

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2020年02月26日

[読売新聞] 新型肺炎対策 本格流行を回避する正念場だ (2020年02月26日)

新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、社会全体で取り組まなければならない。

政府が、新型肺炎対策の基本方針を決めた。患者が増加するスピードをできるだけ抑制する方針を打ち出した。

国内では、感染経路が明らかでない患者集団が散発している。政府の専門家会議は、感染が急速に拡大するか、終息に向かうか、ここ1?2週間が「瀬戸際となる」と警鐘を鳴らした。

基本方針ではこれまで分かっている病気の特徴を整理した。軽症や治癒する例が多い一方、高齢者や持病のある人は重症化するリスクが高いと指摘した。

患者が急増すれば、医療体制が破綻し、重症者の治療が滞りかねない。政府や自治体、医療関係者は、危機感を共有し、連携して対策に当たらなければならない。

国民に対しては、手洗いや咳(せき)エチケットの励行を促すとともに、風邪の症状があれば外出を控えるよう呼びかけた。

軽い風邪にもかかわらず、不安から受診することは控えるよう、求めている。

自分を感染から守り、感染しても人にうつすことを避けられれば、社会全体として流行のピークを遅らせ、感染者を減らせる。

自治体や企業には、不要不急のイベントを延期することや、時差通勤などを提案している。

通常の社会生活を控えるには及ばないが、多数の人が密集する場所では感染が拡大する恐れが高い。流行を防ぐため、一人ひとりが、できることを考えたい。

政府は、国民に現状を正しく伝え、分かりやすい情報発信で社会不安を防ぐ必要がある。

新型インフルエンザ対策として備蓄されている抗ウイルス薬などが、新型肺炎にも効くのではないかと指摘する専門家もいる。新型肺炎には治療薬がないだけに、副作用に注意しながら、臨床研究を急がねばならない。

政府はマスクや消毒液の増産を業界に要請していくべきだ。

新型肺炎の本格的な流行を見据え、先手先手で対策を検討していくことが重要である。

地域単位で、病院ごとの役割分担をあらかじめ詰め、重症患者の受け皿を整えることが大切だ。

集団感染が各地で広がった場合、これまでの水際対策や感染経路を追跡する調査は縮小し、一般病院での患者受け入れなど、医療体制の拡充に舵(かじ)を切ることになろう。発生状況に応じて、重点を変える柔軟な姿勢が求められる。

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[読売新聞] 中国全人代延期 習氏は危機収拾へ責任果たせ (2020年02月26日)

中国の習近平政権には新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を招いた責任がある。事態収束に向けてあらゆる手段を講じなければならない。

中国が新型肺炎への対応を理由に、3月5日に開幕予定だった全国人民代表大会(全人代=国会)の延期を決めた。全人代は1978年から毎年開かれ、85年以降は3月開幕が定例化していた。日程変更は極めて異例だ。

新たな日程も示されなかった。収束時期が見通せないのだろう。習国家主席は「建国以来、最も制御が難しい公衆衛生事件だ」と述べ、厳しい認識を示した。

全人代は憲法で「最高国家権力機関」と規定され、憲法改正や法律制定、国家主席や首相らを選出する権限を付与されている。

約3000人の代表が北京に集まり、国内総生産(GDP)の成長率目標や予算案を審議する。今年中に「小康社会」(少しゆとりのある社会)を実現し、2010年比でGDPを倍増させるという目標も確認する予定だった。

だが、新型肺炎の流行で経済活動は停滞し、成長の急減速が予想される。公言してきた目標が達成できなければ、政権への打撃は避けられまい。4月の習氏の国賓訪日など今後の外交・内政が滞る可能性がある。

中国はサウジアラビアで開かれた主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に財務相と中央銀行総裁を派遣しなかった。批判の矢面に立たされるのを避けたのではないか。無責任な対応と言わざるを得ない。

習氏は状況に即した経済・外交政策を実行し、大国の指導者としての責務を果たすべきだ。

中国には、新型肺炎に関する積極的な情報公開が強く求められている。にもかかわらず、習政権が社会の監視と言論弾圧を強めているのは看過できない。

当局の対応の不備を指摘し、習氏の辞任をネット上で求めた著名な中国人法学者が連行された。封鎖された武漢市から医療現場の実態をSNSで発信していた弁護士らも行方不明となった。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国の脆弱(ぜいじゃく)性を指摘した識者の評論が当局に問題視され、北京駐在記者3人が事実上の国外退去処分を受けた。

共産党政権は、治安維持や社会の安定を名目に異論を封じ込めてきた。こうした統治手法が迅速な情報公開を阻み、危機を拡大させた。強権統治の綻びを更なる強権で繕う愚策は許されない。

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2020年02月25日

[読売新聞] 地方のバス路線 生活の足をどう守っていくか (2020年02月25日)

地方のバス会社の経営環境が悪化している。住民の大切な「生活の足」をどのように守っていくかが課題である。

熊本県内の乗り合いバス5社が、共同で経営を行う方針で合意した。会社の垣根を越えて車両や運転手を融通し合い、利用者の少ない不採算路線を維持する狙いがあるという。

具体的には、乗客の多い市街地の重複路線を整理し、余ったバスを、郊外や過疎地での運行に回す。収益性の高い地区を担当した会社だけが得をすることのないよう、運賃収入をプールして、各社で分配する仕組みも検討する。

本来、バス会社の共同経営は独占禁止法の不当な取引制限(カルテル)にあたる恐れがある。

政府は地方の支援策として、バス会社に対するカルテル規制の一部を除外する独禁法の特例法案を今国会にも提出する。

バス路線は、地方の暮らしを支える重要インフラ(社会基盤)だ。共同経営を促し、サービスの継続を図る方向性は理解できる。

無論、特例的な措置が適用されるバス会社には、より厳しい経営努力が求められる。将来的な合併も視野に、徹底した合理化を進めねばならない。

地域での寡占化で競争原理が働かなくなり、利用者の負担増や安易な路線の切り捨てを招かないか。厳しい監視が必要となる。

過疎地では、バス路線の廃止や減便が進む。長時間勤務や低賃金による運転手不足も深刻だ。

2017年度、3大都市圏を除く路線バス会社の8割超が赤字経営だった。自治体が多額の補助金で支えるケースは少なくない。

公共交通の劣化が過疎化を助長し、さらに交通インフラの維持を困難にする。そんな悪循環に歯止めをかけようと、自治体や事業者が取り組む例が増えてきた。

奈良県では過疎地などの約50系統のバス路線に、収支率や行政の負担額などの指標を設けている。毎年点検し、クリアできない路線は減便などの改善策を講じる。

それでも維持が難しい場合は、少人数を送迎するコミュニティーバスなどに切り替える。

高松市では、過疎地から来る複数のバス路線が、中心部で重複する現状を改めるため、郊外で鉄道に乗り換えてもらう仕組みを整備中という。乗り継ぎ運賃の割引制度を活用し、利用を促す。

交通網の存続は、地方共通の問題だ。先行事例も参考に、地域の実情に合った方策について、官民で知恵を絞ってもらいたい。

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[読売新聞] G20と新型肺炎 高まる経済リスクに万全期せ (2020年02月25日)

新型肺炎の世界的な感染拡大は経済にとって脅威である。主要国は危機感を共有し、対応に万全を期さねばならない。

サウジアラビアで開かれていた主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、景気の減速に備え、各国が政策を総動員することを盛り込んだ共同声明を採択した。

声明は「新型コロナウイルスの流行を含め、世界経済のリスクの監視を強化する」とし、「リスクに対処するため更なる行動をとる用意がある」と明記した。

各国がそれぞれの事情に応じて財政・金融両面から景気を下支えする。その方針を確認した意義は小さくない。情報交換を密にするなど連携を深め、適切な政策手段を探っておくことが大切だ。

新型肺炎の発生地である中国の国内総生産(GDP)は世界の2割弱を占め、主要企業の多くが自動車やスマートフォンなどの生産拠点を置く。工場は再開し始めたものの、本格稼働には程遠い。

停滞が長期化すれば経済への下押し圧力は大きくなろう。

とりわけ、中国との貿易量が多い日本やドイツ、アジア諸国は大きな影響が避けられまい。すでに日本やドイツなどの成長は減速しており、大手企業の業績悪化が目立っている。今回の事態が追い打ちをかけるのは間違いない。

企業は中国以外での代替生産を急ぐと同時に、部品供給網のあり方を再点検し、過度な中国依存を改める契機にすべきだろう。

国際通貨基金(IMF)はG20に合わせ、2020年の中国の経済成長率見通しを1月時点の6・0%から0・4ポイント下方修正した。6%を下回れば1990年以来となる。世界全体の成長率も3・3%から0・1ポイント下がるとした。

試算は、中国経済が早期に正常化することを前提にしているが、楽観はできない。24日の世界的な株安は、投資家が先行きを不安視している表れと言えよう。

中国では今後、3億人を超える労働者や学生が春節(旧正月)で戻った故郷から都市部にUターンすると見込まれる。そこで感染拡大に拍車がかかる恐れがある。

日本経済は当面厳しい状況が続きそうだ。訪日中国人客は激減し、イベントの自粛が相次いでいる。1?3月期は19年10?12月期に続いて、2期連続のマイナス成長に陥っても不思議はない。

日本銀行の政策余地は小さくなっている。政府は新型肺炎への緊急対策を着実に執行し、必要に応じて追加措置を検討すべきだ。

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2020年02月24日

[読売新聞] 洋上風力発電 普及に向け課題の検証進めよ (2020年02月24日)

有力なエネルギー源に育てるには、山積する課題を一つ一つ克服していくことが求められる。

再生可能エネルギーの拡大に向けて、洋上風力発電が注目されている。

洋上風力の導入を促す新たな法律が昨年、施行された。沖合での発電は、都道府県ごとの条例に従わねばならず、事業期間は3?5年だった。これを最長30年に延長して事業化を後押しする。

海に囲まれている日本の「地の利」を生かし、洋上風力の普及を図る狙いは妥当だろう。

政府は長崎県五島市沖を「促進区域」に指定した。ほかにも千葉県銚子市沖と秋田県沖の2地域が有力候補地となっている。

ただ、本格普及へのハードルは高い。効用や問題点をしっかり検証することが欠かせない。

2017年度の全発電量に占める再生エネの比率は、水力を除くと約8%にとどまる。しかも、太陽光が5・2%なのに対し、風力はわずか0・6%にすぎない。

夜間や曇天でも、風があれば発電できる風力を増やし、太陽光の短所を補う意義は小さくない。

これまで、風力発電設備はほとんどが陸上に作られている。日本は平地が少なく、適地は限られる。騒音への苦情も絶えない。

洋上なら起伏の多い陸上より風は安定している。騒音などを気にせず大容量施設を建てやすい。

洋上風力は、欧州が先行している。ドイツや英国では再生エネの比率が30%前後で、主力は風力という。ただし、欧州と日本では事情が大きく異なる。

最大の障害はコスト高だ。欧州では、水深の浅い海底に敷設する「着床式」が主流だが、日本は遠浅の海が少ない。海面に浮かべる「浮体式」が中心となろう。建設費は着床式より割高になる。

北海道や東北といった発電適地と首都圏などの大消費地を結ぶ送電線は不足している。その整備にも多額の費用がかかる。

日本の風力の発電単価は、世界平均の1・6倍と高い。官民が協力し、量産化や技術開発によるコスト削減に努めてもらいたい。

日本は台風が多い。設備の耐久性を高めねばならない。自然環境への配慮や、地元漁業者の理解を得ることも大切である。

温暖化防止と電力安定供給を両立するには、再生エネを伸ばすとともに、温室効果ガスを排出せず、発電量が安定している原子力発電所も活用していく必要がある。政府は、原発再稼働の重要性を国民に丁寧に説明していくべきだ。

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[読売新聞] 高齢者の介護 適切なケア体制で虐待を防げ (2020年02月24日)

高齢者への虐待が深刻化している。適切なケアができる体制作りを進める必要がある。

中でも見過ごせないのが、特別養護老人ホームなどで働く介護職員による虐待だ。厚生労働省によると、2018年度は621件で過去最多だった。5年で3倍近くになった。

ぶつかって転ばせる。入浴時に熱いシャワーをかけてやけどをさせる。こうした身体的虐待が6割近くを占める。食べこぼしを嘲笑するような心理的虐待や、世話をしない介護放棄も目立つ。

被害者の8割以上は認知症の人だ。高齢者を預けている家族には、「施設にお世話になっている」との意識があり、仮に虐待の兆候に気づいても、言い出しにくい。把握された虐待は氷山の一角である可能性は否定できない。

介護職員の虐待には、知識や技術の不足が影響しているとの指摘がある。高齢者を適切に介護できず、いら立ちを募らせる。何げない言動が高齢者を傷つけ、さらに意図的な虐待に及んでしまう。

ある介護事業者は「介護現場は負担が重く、職員が定着しにくい。専門的なケアが必要な入所者の世話を経験の浅い職員に頼らざるを得ない」と内情を明かす。

自治体は介護事業者と協力して研修の体制を強化し、職員の介護技術の向上に努めるべきだ。

介護職員が自分の感情をコントロールできるようにすることも、虐待の防止には欠かせない。

介護施設を運営するSOMPOケア(東京)では、憤る感情がこみ上げた時に、深呼吸したり、その場をいったん離れたりして気持ちを落ち着かせる対処法を、職員に繰り返し学ばせている。

職員からは「落ち着いて対応できるようになった」といった声が聞かれるという。

多忙な仕事でストレスや悩みを抱える職員は多い。カウンセリング体制を整えることが重要だ。

一方、家族による高齢者虐待は1万7000件を超えた。息子や夫などの男性介護者が加害者となる事例が6割を占める。加害者の年齢では50代が最も多い。

男性の場合、家事が苦手で介護の負担が重くなりがちだ。仕事一筋の人生を送ってきた人は、地域の人づき合いが少なく、孤立しやすいとの見方もある。

家事支援を受けられる介護保険サービスの利用を促す。介護を担う人が集まって、悩み事を気軽に話せるような場をつくる。各自治体には、介護者を孤立させない取り組みが求められる。

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2020年02月23日

[読売新聞] 竹島の日 情報発信のさらなる充実を (2020年02月23日)

島根県などが「竹島の日」の記念式典を松江市で開いた。世論を喚起する啓発活動を粘り強く続けなければならない。

15回目となる式典には約500人が出席し、政府に対して毅然(きぜん)とした外交交渉を求める特別決議を採択した。

県は2005年に竹島の日を定める条例を制定した。

領有の根拠を補強する資料の収集に力を入れてきた。昨秋、竹島を日本領として記載した19世紀のドイツ製地図を地元研究者が発見した。県内の学校では、竹島の歴史を学ぶ授業が行われている。

県が竹島の啓発事業を牽引(けんいん)してきたことは高く評価されよう。

藤原崇内閣府政務官は式典で、「国の主権に関わる重要な課題だ」と述べた。国として、島根県との連携を強めるべきだ。

政府は1月、東京・霞が関に「領土・主権展示館」を移設した。竹島や北方領土、沖縄県の尖閣諸島に関する展示内容を大幅に拡充した。情報発信と調査研究の拠点として活用する必要がある。

日本が竹島の領有権を確立したのは17世紀に遡る。アシカ猟の業者が漁業権を求めたのを契機に、1905年に明治政府が竹島の編入を決定した。戦後のサンフランシスコ講和条約は日本が放棄する領土に竹島を含めていない。

だが、韓国は条約発効直前に李承晩ラインを一方的に設定し、竹島を不法占拠した。

韓国側は、領有の根拠の一つとして、17世紀に日本と朝鮮の交渉が行われて、竹島が朝鮮領と確認されたと主張する。

これに対し、日本政府は「交渉は決裂しており、事実と異なる」と指摘する。江戸幕府が竹島への渡航を禁止していないことを裏付ける文書も存在している。

歴史をねじ曲げるかのような主張に対し、客観的な証拠を基に反論していくことが欠かせない。

韓国軍は例年、竹島周辺での軍事訓練を実施しており、与党を含む国会議員団の上陸も相次ぐ。政府は、独善的な行動を見過ごさず、その都度、抗議すべきである。

領土教育も大切だ。内閣府の昨秋の世論調査では、竹島に関心がある人は63%で、その2年前の前回と比べて微増にとどまった。

20年度から実施される新学習指導要領により、小学校5年の社会科の全教科書に竹島が固有の領土であることが明記される。

若い世代が史実を正確に学べるよう、政府や自治体は教員に対する研修の強化や副教材の充実に取り組んでもらいたい。

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[読売新聞] 和牛の遺伝資源 海外流出を抑止する法整備に (2020年02月23日)

貴重な和牛ブランドを守るには、受精卵や精液といった遺伝資源の海外流出を、未然に防ぐことが大切である。

農林水産省が、和牛の遺伝資源を不正に流出させる行為に刑事罰を科す新たな法案をまとめた。今国会に提出し、成立を目指す。

対象となるのは、輸出目的を隠して、畜産農家などから遺伝資源を入手したり、無断で第三者に譲渡したりする行為だ。個人には懲役10年または罰金1000万円、法人には罰金3億円を上限として、罰則が科せられる。

昨年、中国に和牛の遺伝資源を持ち出そうとした事件が摘発された。だが、流出を直接取り締まる法律がなく、家畜の伝染病を予防する法律が適用された。法規制の不備を埋める意義は大きい。

譲り渡した遺伝資源が悪用される可能性を畜産農家が察知した場合、譲渡先に対して遺伝資源の使用をやめるよう、裁判所に請求できる規定も設けられる。被害の未然防止に役立つだろう。

和牛は肉質が軟らかく、外国でも人気が高い。その遺伝資源は、日本の畜産農家による長年の改良努力のたまものである。海外へ流出して繁殖に使われると、和牛肉の輸出は減り、畜産農家が受ける打撃は計り知れない。

今回の法整備にあたって、農水省が、和牛の遺伝資源を知的財産として価値があると明確に位置付けたのは当然だ。

農水省は、畜産農家などが遺伝資源を売買する際に契約書を交わすことを要請する。「国外では利用しない」という条項を盛り込むのがポイントだ。違反があれば、違約金を請求できる。

遺伝資源の仲介業者などには、受精卵や精液の採取者の氏名を容器に明記させるほか、取引を記録した帳簿を作成してもらう。

こうした流通管理の厳格化によって、悪質業者の排除を図っていくことが欠かせない。

海外流出が懸念されるのは農作物も同様だ。国の研究機関が開発した高級ブドウ「シャインマスカット」の苗木は、中国や韓国に流れて現地で栽培され、東南アジア市場に流通している。

農水省は種苗法の改正案も今国会に提出する。開発者が新品種を登録する際、栽培地域を「国内」などに限定でき、条件に反する海外持ち出しに刑事罰を科す。

人口減少で国内消費が縮む中、政府は農産物の輸出拡大を目指している。ブランドの保護が国際競争力を高める上で不可欠だ。

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2020年02月22日

[読売新聞] 「5G」通信網 欧州は安全性の監視を怠るな (2020年02月22日)

社会、経済の基盤である通信網の構築にあたっては、安全保障上のリスクも考慮しなくてはならない。中国企業への過度な依存の回避は、日米欧共通の課題と言えよう。

高速・大容量通信を可能にする次世代通信規格「5G」事業を巡り、中国通信機器大手「華為技術」(ファーウェイ)製品の排除を求める米国と、容認に動く欧州主要国の温度差が際立ってきた。

英国は、ファーウェイを念頭に「リスクの高い業者」について、5G通信網で情報を集約、処理する中核部分から排除することを決めた。一方で、周辺部分の基地局などでは、35%の市場占有率を上限に参入を認めるという。

英国政府は、この措置で安全保障は損なわれないと強調する。米英豪、カナダ、ニュージーランドの5か国で軍事機密を共有する「ファイブ・アイズ」の枠組みにも悪影響はないとしている。

だが、米国は同盟国に、ファーウェイの完全排除を求めている。英国が度重なる説得にも応じなかったことは痛手だろう。

エスパー米国防長官は、ミュンヘン安全保障会議で、欧州各国に対し、「中国の5G業者に依存することは、情報共有の能力、ひいては同盟関係を危険にさらす」と強い口調で警告した。

米国は、中国政府がファーウェイなどの中国企業を通じて、各国の機密情報を窃取することを警戒している。中国政府と企業の不透明な関係を踏まえれば、「ファーウェイ包囲網」の形成を求める米国の姿勢は理解できる。

欧州では、英国に加え、フランスなどもファーウェイを排除しない方針を示す。すでに、製品が欧州各国の4G通信網で広く使われているうえ、巨額の投資や貿易など、中国との経済関係を重視しているのだろう。

欧州諸国は地理的に遠い分、中国を深刻な脅威とみなさず、米中両国の間でバランスをとる傾向も目立つ。欧州はファーウェイを排除しないのなら、通信網の安全性の監視を怠ってはならない。

日本は米国と足並みをそろえ、政府調達からファーウェイを事実上排除している。政府の方針を受け、通信大手はファーウェイ以外の製品による5G通信網の構築を進めるが、出遅れは否めない。

中国主導の「5G秩序」を阻止する一方で、日本の5G網をどう整備していくのか。政府は、日本企業の研究開発を支える政策や税制上の優遇措置など、長期的な戦略が求められる。

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[読売新聞] 無断キャンセル 無責任がもたらす大きな損害 (2020年02月22日)

飲食店を予約しておきながら、無断でキャンセルするケースが後を絶たない。客の無責任な行動が、大きな経済損失を生んでいることを深刻に捉えるべきだ。

経済産業省の試算では、飲食店業界の損失が年2000億円に上るという。無断キャンセルは予約件数全体の1%だが、飲食店は売り上げに対する利益が少ない店が多いだけに、打撃は大きい。

常連客を断って、座敷にコース料理を並べたのに、予約客は現れず連絡も取れない。他の客も入れられず、料理が無駄になる。

経済的な損失を埋めるため、店側が値上げするようなら、一般の消費者も迷惑を被りかねない。

無断キャンセルの背景には、インターネットの予約サイトの普及がある。手軽になった反面、とりあえず予約だけしてそのまま放置する事例も少なくない。30歳代以下の世代に目立つ。

ある予約サイトは、前日になると予約客に再確認の自動メールを送っている。同じ人が同時刻の予約を複数の店に入れた場合、店側に知らせる仕組みを導入すべきだと提案する専門家もいる。こうしたシステム上の工夫は有効だ。

店側にも努力が求められる。高額の予約客に、事前決済やクレジットカードの登録を要請するなど自衛策を講じている店がある。

店に連絡がつかないままキャンセルになる事態を防ぐため、客からの電話を常時受けられるようにしておくことも大切だろう。

宿泊施設や新幹線、飛行機などを予約する際には、キャンセル料が発生することが約款などで明示されている。一方で、飲食店の場合はこうした明示があいまいなことが多く、客側がキャンセルを軽く考えがちな面は否めない。

民法上は、電話であれ、ネットであれ、予約すれば契約が成立すると解される。一方的なキャンセルは、損害賠償請求の対象となることに改めて留意したい。

東京や大阪では、弁護士の事務所が、店側の依頼を受けて無断キャンセルの客に賠償金を請求する取り組みを始めている。安易な予約放置に歯止めをかける上で、一定の効果が期待されよう。

新型肺炎の影響で、不要不急の外出を控える動きが出ている。やむなく宴会の予約をキャンセルする人もいるに違いない。

その際には、飲食店に一本の電話を忘れないようにしたい。店側は仕入れを控えるなどの対応を取れるようになり、経営への打撃を和らげることにつながろう。

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2020年02月21日

[読売新聞] 新型肺炎 必要な情報の遅滞ない公表を (2020年02月21日)

新型肺炎対策では、医療態勢の充実と共に適切な情報提供が重要だ。

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船していた80歳代の日本人男女2人の死亡が確認された。クルーズ船では集団感染が起きていた。新型肺炎による国内での死亡は計3人となった。

厚生労働省によると、男女2人とも発熱が続き、病院に搬送後、呼吸状態が悪化した。男性はぜんそくなどの持病があった。

厚労省が容体の推移や持病の有無などについて公表したのは、無用な不安を招かないようにする目的からだろう。

新型肺炎の国内感染が広がるにつれて、感染者の情報をどう扱うかという問題が生じている。

感染者が出始めた当初は、情報の公表に慎重な自治体が目立った。奈良県は県内在住のバス運転手の感染が確認された際、運転手の訪問先や宿泊場所について、公表を控えた。風評被害への懸念があったようだ。

一方、具体的な情報の開示に踏み切る自治体もある。北海道は居住地の公表範囲を詳しくしたほか、職業なども明らかにした。

和歌山県は感染の確認された男性の移動経路について、利用した電車や何号車のどの座席に座ったかも公表した。

国民の間では感染に対する不安が高まっている。感染者のプライバシーに十分配慮したうえで、感染経路を知る手がかりとなるような情報については、適切に開示していくべきだ。

大切なのは、行政側が患者の治療状況や回復具合に関しても丁寧に伝えることだろう。国内に住む感染者の中には重症者も含まれるが、半分以上は無症状や比較的軽症で済んでいる。入院者の中にはすでに退院した人も多い。

新型肺炎は医学的に感染力の強さが判明しておらず、治療法も確立されていない。それだけに、病気に関する情報やデータを幅広く提供する姿勢が欠かせない。

情報を受け取る側にも、冷静な対応が求められる。

2009年に新型インフルエンザが流行した際には、感染者を出した高校に抗議や批判の電話やメールが殺到した。行き先に高校名を告げると、タクシーに乗車を拒否されるケースもあった。

今回も自治体の相談窓口には、感染者の名前や住所を尋ねる電話が寄せられている。

過剰に反応するのではなく、情報を病気の正しい理解に役立て、予防に生かしたい。

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[読売新聞] イラン国会選挙 対米強硬派の台頭を懸念する (2020年02月21日)

イランで21日に国会議員選挙が行われる。保守強硬派の勢いが増し、米国との緊張がさらに高まる事態が懸念される。

政教一致のイランでは最高指導者のハメネイ師が最終決定権を握る。大統領や国会の権限は限定的だ。それでも、保守穏健派のロハニ大統領の国際協調路線は、イランの外交政策で一定の役割を果たしてきた。

4年前の前回選挙では、ロハニ師を支える穏健派と改革派が躍進し、多数派を形成した。欧米との協調による経済成長への期待が議席増をもたらしたが、今回は退潮は避けられない。

トランプ米政権の経済制裁によって、イラン経済は苦境が続く。「反米」を強く掲げる保守強硬派は、ロハニ師の対外融和政策の失敗だと主張する。

さらに、穏健派と改革派の現職議員と候補者の多くが、出馬資格の事前審査で失格となった。ハメネイ師が任命したイスラム法学者らで構成する「護憲評議会」が、排除を決めた。

イラン指導部は、議会を強硬派で固め、権力基盤を強化しようとしているのではないか。米国との対立が激化する中で、体制の威信が失墜する事件が相次いだことが背景にある。

ハメネイ師が直轄する革命防衛隊の有力司令官は、米軍の攻撃で殺害された。革命防衛隊がウクライナ旅客機を誤って撃墜し、指導部が隠蔽(いんぺい)を図ったとして、国内で異例の反体制デモが起きた。

強硬派は、米国への「報復」の継続を求めている。イラン指導部は、強硬策では制裁解除や国際的孤立からの脱却が遠のき、国民の体制批判を封じ続けるのが困難になることを認識すべきだ。

大切なのは、イランが米欧との対話を重ね、相互不信を解くことである。イラン核合意の順守や、シリアやイエメンの内戦への介入など地域を不安定化させる行動の自制も欠かせない。

米国の責任も大きい。イランに対する「最大の圧力」政策が、ロハニ師や穏健派を窮地に追い込み、強硬派を勢いづかせた側面は否定できない。トランプ大統領の衝動的な言動は、米国とイランの衝突リスクを高めるだけだ。

米上院は、イランへの軍事行動で大統領の権限を制限する決議案を可決した。与党の共和党からも賛成票が出た事実を、トランプ氏は重く受け止めねばならない。

日本や欧州諸国は引き続き、米イランの緊張緩和に向けた仲介努力を尽くす必要がある。

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2020年02月20日

[読売新聞] 24時間営業 固執し続けるのは無理がある (2020年02月20日)

生活スタイルの変化に合わせて、営業時間を短縮するのは現実的な判断と言えよう。

脱「24時間営業」が、コンビニエンスストアや外食チェーンで広がってきた。

人手不足で深夜の従業員確保が難しくなり、人件費は上昇している。多店舗展開による過当競争で収入が減った店も多い。利用者の少ない深夜帯に営業を休止したいという事情は理解できる。

顧客の利便性を維持しながら、従業員の働き方改革を進める。持続可能なビジネスモデルの確立を目指すことが何よりも大切だ。

特に全国で6万店近くあるコンビニは、現金自動預け払い機(ATM)が設置され、公共料金の支払いや宅配便の発送もできる。災害時は物資提供や帰宅支援に活用される。社会基盤としての機能を維持する方策を探りたい。

経済産業省の有識者会議は、コンビニについて、全国一律サービスの見直しを提言した。

同省の調査では、加盟店のオーナーから深夜勤務の大変さや、休暇をほとんど取れない厳しい労働環境を訴える声が多く聞かれた。「24時間営業、年中無休」にこだわり続けるのは無理がある。

批判を受け、コンビニ各社では時短営業を選ぶ加盟店が増えてきた。その流れは変えられまい。

ファミリーマートが一部で時短の実験をしたところ、売り上げが減ったため、半数以上で営業利益が前年を下回った。まずは経費の削減が課題になる。

本部側は、消費期限が近づいた商品の値引きの容認などで、食品ロスを減らし、店側による廃棄費用の軽減に努めるべきだ。セルフレジの導入を含め、省力化の支援を拡大することも求められる。

一方、ファミリーレストランやファストフード店も、厳しい経営環境に直面している。

「ガスト」などを展開する「すかいらーくグループ」は、50年近い歴史を持つ24時間営業を、4月までに廃止することを決めた。日本マクドナルドなども24時間店を大幅に減らしている。

以前は、深夜のファミレスなどには終電を逃した人や若者が集まり、一定の集客が見込めたが、最近は利用者が減っている。

営業時間が短くなる分、収益力の強化が問われよう。

デジタル化による作業の効率化に加えて、メニューの充実などを図ることが生き残りのカギを握るのではないか。多様化する顧客のニーズに、機動的に対応できるかどうかが重要になる。

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[読売新聞] サイバー攻撃 防衛情報の流出防ぐ対策を (2020年02月20日)

日本の防衛関連企業に対するサイバー攻撃は、国の安全保障を揺るがす問題である。

1月に大量の情報流出が発覚した三菱電機では防衛装備品の機密情報が漏えいした疑いが浮上している。当初は、「防衛や重要インフラに関する情報漏えいはない」としていたが、その後の調査で判明した。

防衛装備庁が貸し出した文書を勝手に電子ファイル化し、インターネットにつながる端末に保管していたという。不適切な取り扱いというほかない。

三菱電機は、2018年度の防衛省との契約額が3位の有力な防衛関連企業だ。国の重要な情報に関わっているという意識に欠けていたのではないか。

三菱電機によると、不正アクセスが疑われるパソコンなどは国内外で132台に上る。中国の拠点から感染が広がり、中国系のハッカー集団の関与が指摘される。

一部の端末では、サイバー攻撃の痕跡が残らないような操作がされていた。極めて巧妙な手口だったことがうかがえる。

防衛省と取引のあるNECや神戸製鋼所、航空測量大手のパスコも攻撃を受けていた。現時点で防衛関連情報の流出は確認されていないが、こうした情報が狙われていたとすれば深刻だ。

艦艇のレーダーなどの防衛装備品は、米国などと共同開発しているケースが多い。国内の防衛産業から機密が流出すれば、日本の信頼が低下する。米国などとの防衛協力にも支障が出かねない。

防衛情報をサイバー攻撃から守る態勢を強化する必要がある。

防衛関連企業は、セキュリティー対策がきちんと機能しているかどうか常に点検すべきだ。システムを整備し、攻撃の高度化に対処しなければならない。

防衛省のサイバー防衛隊は、自衛隊の指揮系統や部隊運用のシステム防御を担っている。こうした知見を、民間でも活用できるよう協力することが求められる。

官民による情報共有の仕組みを構築することも大切だ。

米国は、ガイドラインで国防産業や重要インフラを担う企業に対してサイバー攻撃による被害を報告することを求めている。

防衛省も情報漏えいが起きた場合に、法的な通報義務を企業に課すことを検討している。

サイバー攻撃を受けた企業が速やかに関係機関に報告し、その情報をもとに他の企業が対策を講じれば、被害の拡大を防ぐことが可能になるだろう。

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2020年02月19日

[読売新聞] 北方領土交渉 誠実さを欠くロシアの姿勢 (2020年02月19日)

北方領土交渉の打開に向け、政府はロシアの出方を見極め、戦略的に取り組まねばならない。

茂木外相がロシアのラブロフ外相とドイツで会談し、領土問題を含む平和条約について協議した。ラブロフ氏の来日を調整する方針を確認した。

安倍首相とプーチン大統領は一昨年、歯舞群島と色丹島を引き渡すと明記した日ソ共同宣言を交渉の基礎とすることで合意した。

だが、ロシア側が頑(かたく)なな姿勢に転じ、交渉は膠着(こうちゃく)状態に陥った。領土返還に反対するロシア国内の世論の高まりが背景にある。

見過ごせないのは、ロシアの憲法を改正し、「領土割譲の禁止」を盛り込む議論が起きていることだ。今月、憲法改正に関する作業部会のメンバーの提案に、プーチン氏が賛同したという。

両国間で積み重ねてきた合意を反故(ほご)にするのであれば、あまりに不誠実ではないか。強行すれば日露関係は決定的に悪化しよう。

茂木氏は、外相会談でこの問題を取り上げたと表明したが、やり取りの詳細は明かさなかった。

憲法改正は、今春にも予定されている。政府はロシアに真意をただし、平和条約交渉に支障を来すような憲法改正はやめるよう、毅然(きぜん)として主張すべきである。

両政府は、北方4島で想定する共同経済活動を進展させる方針では一致している。

昨年は試行的に観光ツアーが行われ、日本人が国後、択捉両島を訪れた。様々な事業の本格実施に向け、両国の法的立場を害さない制度の検討を急ぐ必要がある。

日露間では、首脳合意に基づく経済協力が具体化しつつある。極東のハバロフスクでは、医療診断の施設整備に日本企業が貢献している。シベリアやサハリンで液化天然ガスを生産する事業への日本企業の参画も進む。

クリミア併合で欧米の経済制裁を受けるロシアには、日本からの投資拡大に期待する声が多い。

政府には、日露関係を多面的に発展させ、領土問題の前進につなげる狙いがある。経済協力だけが進み、領土問題が置き去りにされることがないよう、注意を払うことが求められる。

米露間の中距離核戦力(INF)全廃条約が失効し、米国は、アジアへのミサイル配備を検討している。ロシアは、返還した島に米軍が基地を置くことを警戒する。

自衛隊とロシア軍の共同訓練や、人的交流を地道に重ねて、日露間の安全保障分野での信頼を醸成することが大切だ。

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[読売新聞] 新型肺炎 適切な診療で重症化を防げ (2020年02月19日)

新型肺炎は国内での感染が本格化する恐れがある。医療機関の適切な受診を心がけたい。

厚生労働省が、新型肺炎が疑われる際に医療機関を受診する目安を発表した。

37・5度以上の熱が4日以上続いた時や、強いだるさや息苦しさがある場合、保健所などに設置された「帰国者・接触者相談センター」への電話を勧めている。

高齢者や持病のある人は、重症化する危険が高いので、4日を待たず、発熱が2日程度続いた段階での早めの相談を求めている。

症状に応じた行動の手がかりを示した意義は大きい。

相談センターは、患者から症状を聞き取り、治療を要する人には専門外来を紹介する。専門外来は一般には公表しない。

2009年に新型インフルエンザが流行した際は、専門外来に多数の軽症者が殺到して、重症者の診察に支障が出た。相談センターを介した仕組みは、こうした混乱を避ける狙いがある。過去の教訓を踏まえた措置と言えよう。

和歌山県の病院では医師や患者ら複数の人の感染が確認された。懸念されるのは、今後、新型肺炎の診療が進むにつれて院内感染が発生することである。

患者が集まる病院はもともと感染拡大の舞台になりやすい。病院や福祉施設といった、体力の衰えている人がいる場所で感染が一気に広がれば、命を失う人が相次ぐ事態を招きかねない。

医師や看護師が感染で欠勤すると、その地域の医療が立ち行かなくなってしまう。医療従事者には、手洗いや消毒など基本的な予防策の徹底が望まれる。

現在は人から人への感染が始まった流行の初期段階とみられる。この時期に大切なのは、感染の機会を少しでも減らすことだ。

宮内庁は、23日に皇居で予定していた天皇誕生日の一般参賀を中止する。3月に東京で開催される東京マラソンでも、一般ランナーの出場をとりやめる。感染拡大防止に一定の効果が期待される。

企業も、社員の感染に備える必要がある。従業員20万人を抱えるNTTグループは、時差出勤や自宅からのテレワークを推奨する。職場によっては、テレビ会議などを活用し、働き方を工夫する余地があるのではないか。

過剰な自粛は必要ないが、一人ひとりが無理のない範囲で、不要不急の集まりを延期したり、人混みを避けたりすることは有効だろう。社会全体で感染リスクを低下させる努力が求められよう。

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