2020年02月28日

[毎日新聞] 特別法廷に違憲判決 ハンセン病の差別直視を (2020年02月28日)

ハンセン病を理由に隔離施設の特別法廷でかつて開かれた刑事裁判について、熊本地裁が憲法違反と認めた。不合理な差別で、被告の人格権を侵害していると判断した。

最高裁は2016年にまとめた報告書で差別的な取り扱いだったと認めて謝罪したものの、違憲とまではしなかった。熊本地裁判決は踏み込んだ判断であり、評価できる。

問題となったのは、1952年に熊本県で起きた「菊池事件」の裁判である。被告の男性はハンセン病療養所や刑事施設の特別法廷で裁判を受け、殺人罪などで死刑となった。

特別法廷は、被告の出廷が不可能な場合などに裁判所以外で行う裁判だ。判決は菊池事件で設置した合理性を認めず、裁判官や検察官がゴム手袋をはめ、箸で証拠物を扱ったことにも言及し、差別だと明言した。

療養所の特別法廷は一般傍聴ができないため、憲法が定める裁判の公開原則に反する疑いも指摘した。

ハンセン病を理由とした特別法廷は、48年から72年までに95件開かれた。最高裁は必要性を厳密に検討すべきだが、機械的に許可していた。

最高裁の報告書は、国の隔離政策を違憲とした01年の熊本地裁判決を踏まえ、60年以降の特別法廷は違法だったと記した。一方、今回の判決は、それ以前の裁判について違憲性を認めており、意義は大きい。

今回の裁判は、菊池事件の再審をしないと特別法廷で広まった差別被害が解消されないとして、元患者6人が起こした民事訴訟だ。

判決は、裁判手続きが違憲だとしても、直ちに事実認定に影響を及ぼすとはいえないと指摘して、再審の理由はないと結論づけた。

しかし、裁判のあり方が憲法に違反している以上、その結論に誤りがないとは言えないはずである。確定裁判の見直しに消極的な司法の姿勢には疑問が残る。

昨年、ハンセン病の元患者家族に対する差別について、国に賠償を命じる判決が確定し、補償法が成立した。そして、今回の判決で特別法廷の違憲性が初めて認められた。

最高裁の報告書公表後も、ハンセン病差別の理不尽さが次々と浮き彫りにされている。最高裁はこうした流れを重く受け止め、改めて差別の歴史を直視する必要がある。
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[毎日新聞] 首相の全国休校要請 混乱招かぬ対策が必要だ (2020年02月28日)

非常事態の対応とはいえ、国民生活への影響は免れない。混乱を招かぬ対策が必要だ。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相が来月2日から全国の全ての小中高校などについて臨時休校を要請する考えを示した。期間は春休みまでで、実質約1カ月に及ぶ。長期間にわたる極めて異例の措置だ。

子どもの健康、安全を第一に考え、感染リスクを低減することが目的だという。

すでに北海道や千葉、石川で臨時休校の措置がとられていた。このうち北海道では道内の全小中学校を1週間の休校にしている。

学校は集団生活の場である。一度感染が広がり出したら、歯止めがきかなくなる恐れがある。

これまで感染対策は後手に回ってきただけに、先手を打とうという意識が働いたのだろう。

ただし、首相の表明は唐突すぎる面があるのは否めない。大規模イベントの自粛要請と同様に、政府の基本方針に盛り込まれていない内容だからだ。この措置に伴うさまざまな課題に、政府は責任をもって対応すべきである。

首相の表明を受け、各自治体はさっそく、対応を迫られることになる。混乱を最小限に抑えるためにも、首相が早期に詳しい説明をする必要がある。

影響は学校だけにとどまらない。子どもや保護者に与える負担にも留意しなければならない。

共働きや一人親の家庭の場合、休校となれば子どもが一人で自宅に待機することになる。特に子どもが小さければ親は心配だ。子どもに合わせて仕事を休んだり、自宅で働いたりできるように、勤務先の企業などの協力が欠かせない。

特に非正規労働者の場合、家にいることで給与を得られなくなれば、生活に困る面も出てくる。こうした問題への対応も検討すべきだろう。

さらに、学習が遅れることへの手当てや、学校を円滑に再開するための配慮も忘れてはならない。

政府は当面、保育所については休園を要請しないという。ただ、今後、休園を検討せざるをえない事態が来る可能性は否定できない。早めに備える必要がある。
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2020年02月27日

[毎日新聞] 新型肺炎の国会答弁 政府の態勢に不安が募る (2020年02月27日)

新型コロナウイルスの感染が広がる中、安倍晋三首相が出席して衆院予算委員会の集中審議が行われた。

立憲民主党の枝野幸男代表は、発熱などの症状が出ても検査を受けられない人がいる状況を取り上げた。

国内のPCR検査(遺伝子検査)の能力は1日3800件程度だが、24日まで1週間の実施件数は1日平均約900件にとどまると加藤勝信厚生労働相が明かした。

感染の不安があってもむやみに医療機関を受診しないように政府から国民に呼びかけてきた経緯がある。加藤氏は柔軟な運用を通知していると答弁した。しかし、実際にそれが徹底されるのか心もとない。

クルーズ船の乗客が感染して亡くなった経過を検証する質問に加藤氏が答えられず、審議が一時止まる場面もあった。国民に向け発信すべき基本的な情報の整理もできていない政府の混乱ぶりを物語る。

地域に感染がどの程度広がっているのか、仮に感染してしまった場合に適切な検査や治療を受けられるのか。政府の答弁はこうした国民の不安を取り除くにはほど遠い。

もはや日本国内で誰が感染してもおかしくない段階だ。政府が25日に決定した基本方針は受診の回避のほか、発熱時の休暇取得や時差通勤、学校の臨時休業など、国民生活に大きな影響を及ぼす内容である。

首相が責任を持って基本方針を発表し、自身の言葉で国民に理解と協力を呼びかけるべきだった。加藤氏が発表したことは厚労省任せの姿勢と危機感の不足を印象づけた。

その翌日になって首相は政府の対策本部で、全国的なスポーツ・文化イベントの2週間自粛を要請することを表明した。なぜそれを基本方針に盛り込まなかったのか。行き当たりばったりの対応に映る。

野党は「桜を見る会」の問題も追及した。前夜祭の会場となったホテル側と首相の説明は食い違ったままで、首相自ら真相を明らかにしようとしないから疑惑が深まる。

検察人事に政治介入した疑惑についても、森雅子法相や人事院が不可解な答弁を繰り返した。

政権への信頼が揺らぐ中での危機対応だ。首相は新型肺炎対策に「内閣一丸となって取り組む」と述べたが、現状の態勢では不安が募る。
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[毎日新聞] 原爆症の最高裁判決 救済の道狭めない対応を (2020年02月27日)

原爆症の認定を巡り、被爆者3人の敗訴が最高裁で確定した。

認定には、原爆の放射線が病気の原因である「放射線起因性」と、現に医療が必要な「要医療性」が認められなければならない。

3人は慢性甲状腺炎や白内障と診断され、経過観察中だった。訴訟では、こうした状態が要医療性に当たるかどうかが争われた。

最高裁判決は、経過観察にこれが認められる条件として「積極的な治療の一環と言えるような特別な事情があること」との初判断を示した。その上で3人には、この条件が当てはまらないと結論づけた。

要医療性について、国の審査方針は「疾病等の状況に基づき、個別に判断する」としか記していない。今回の判決は、審査の厳格化を求めるものと言える。原爆症認定のハードルが高くなる懸念がある。

爆心地から一定の範囲にいた人などには被爆者健康手帳が交付され、医療費の自己負担がなくなる。原爆症と認定されれば、さらに月約14万円の医療特別手当が支給される。

だが、国は認定手続きを限定的、画一的に運用してきた。それを拡大したのは被爆者が起こした訴訟だ。放射線起因性を広く認める判決を相次いで勝ち取り、それに促される形で国は審査方針を緩和した。

それでも昨年3月末時点で被爆者手帳保持者14万5844人のうち、原爆症と認定された人は5%の7269人に過ぎない。2審の被爆者勝訴を覆した今回の判決は、従来の司法判断から後退している。

広島・長崎に投下された原爆の被害実態は占領期に封印され、その後も国は積極的な掘り起こしに及び腰だった。被爆者救済が不十分な中、偏見や差別を避けるために被爆体験を隠した人も少なくない。

今回の判決は「特別な事情」に関し、病気の悪化や再発の可能性などを医学的見地から個別に考慮すべきだとの考え方も示した。補足意見では、経過観察中でも原爆症と認定される余地に言及した。

原爆の放射線被害は今後、解明が進む可能性もある。被爆者の平均年齢は82・65歳になっており、救済は時間との闘いでもある。国には、被爆者救済の道を狭めないような対応が求められる。
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2020年02月26日

[毎日新聞] 新型肺炎の基本方針 「瀬戸際」の危機感見えぬ (2020年02月26日)

国内で新型肺炎が爆発的に増加し医療体制が破綻するか。感染拡大のカーブをなだらかにし流行のピークを低く抑えて医療を維持するか。

「この1、2週間が瀬戸際」との見解を政府の専門家会議が示した。

新型コロナウイルスによる死亡者をどれだけ減らせるかは今の対応の成否にかかっているとの判断だ。感染症や医療の専門家集団が現状分析に基づき危機感を表明したもので、重く受け止めるべきだ。

ところが、安倍晋三首相をトップとする「感染症対策本部」が示した「基本方針」には、その危機感が感じられない。「感染拡大防止」も「医療体制」もこれまで言われてきたことのまとめで、「瀬戸際の対策」が読み取れない。

本来、全閣僚を集めた対策本部の役割は、ここに列挙したことを実現するための具体策や、各方面への支援策を打ち出すことだろう。

たとえば、専門家会議は「人と人の距離が近い会話などの接触が、多人数間で一定時間以上続く環境」は感染拡大リスクが高く、すべての人に避けてほしいと呼びかけた。

立食パーティーや飲み会などが典型例だが、それ以外にもさまざまな状況が当てはまる。集会や行事のあり方、満員電車などの回避にも専門家会議は触れている。

しかし、これだけでは行動自粛したくてもできない人がたくさんいるはずだ。医療崩壊を防ぐという目的がある以上、対策本部はもっと踏み込んだ行動指針を示すべきだ。

医療を守るために「軽症なら自宅で」と呼びかけることは重要だ。軽症の人が「心配だから」と医療機関に押しかければ医療現場を圧迫するだけでなく、感染していない人が感染するリスクがある。

ただ、「37・5度以上の発熱が4日以上続くまで自宅療養」などと言われただけでは、不安に思う人が出てくるのは避けられない。対策本部は、この方針を支える具体策こそを打ち出すべきだ。

検査体制も、なぜ民間の活用をもっと進めないのか、基本方針をみてもわからない。それが人々の不信感や不安感にもつながる。少なくとも肺炎患者はどこでも新型の検査ができるようにすべきだ。保険適用も迅速に進めてほしい。
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[毎日新聞] 世界株安とG20 米中の対応に不安が残る (2020年02月26日)

新型肺炎が世界経済を脅かし、先の見えない不安が広がっている。

日米欧など主要20カ国・地域(G20)の財務相と中央銀行総裁らの会議は、新型肺炎のリスクを懸念する共同声明を採択した。景気を下支えするため、各国が財政政策などを行う用意があることも示唆した。

ただ、焦点だった具体的な連携の議論には踏み込まず、世界経済の安定化に懸念を残した。

感染はイタリアなどアジア以外でも急拡大している。発生源である中国の景気悪化だけでも世界を揺さぶる。まして欧州などで消費や企業活動が制限される事態に陥れば、世界への打撃は一段と大きくなる。

不安の表れがG20後の世界的な株価急落だ。きのうの日経平均株価は一時1000円超も下落した。楽観論が多かった米国でも1000ドル安と史上3番目の下げ幅を記録した。

世界の連鎖的な株安は、各国の景気を悪化させて一段の株安を引き起こす悪循環を招きかねない。グローバル経済の不安を解消するには、国際的な協調が欠かせない。

とりわけ大国である米中の責任は重い。

G20で議論が深まらなかった要因の一つは、中国の財務相と中銀総裁が欠席したためだ。新型肺炎の国内対応に専念するとの理由だ。

G20は、中国が感染状況や対策を説明し、各国と認識を共有する貴重な場だった。中国の政策は透明性を欠くと言われるだけに、国際社会が正確な情報を得る機会にもなったはずである。極めて残念だ。

さらに貿易戦争を繰り広げてきた米中の対立が影を落としている。

特に心配なのは「米国第一」を振りかざすトランプ政権の姿勢だ。対中政策も担当するロス商務長官はG20に先立って「新型肺炎は米国企業が生産と雇用を中国から取り戻すきっかけになる」と述べた。

米国は本来、国際的な危機管理をリードする立場だ。自国利益を露骨に優先するような発言は論外だ。トランプ政権が発足してからG20は空洞化する一方だった。今回も議論を主導した形跡はない。

米中は自らの立場を自覚し、世界経済の安定に向けた責任を果たすべきだ。日本も米中に協調を働きかけていく必要がある。
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2020年02月25日

[毎日新聞] 揺らぐ公文書管理制度 与野党で立て直し議論を (2020年02月25日)

公文書管理制度の理念をないがしろにする行為が絶えない。国会に提出された「桜を見る会」の資料は、一部が「白塗り」で隠してあった。根本から立て直すべきだ。

安倍内閣は2017年末に公文書管理のガイドラインを改定した。きっかけは廃棄や改ざんが次々と発覚した森友・加計学園問題だった。

改定では、公文書の保存期間を1年未満にできるケースを限定した。保存に値しない文書についてだけ、例外的に認めたはずだった。

しかし、内閣府は「桜を見る会」の招待者名簿がこれに該当するとして、保存期間を1年から1年未満に変えた。

例外を設けることで、都合の悪い文書を廃棄できる「抜け道」をあらかじめ作っておいたと受け取られても仕方あるまい。

公文書管理法は公文書を「民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置付ける。だが、現政権下でこの理念は踏みにじられてきた。

まず、取り組むべきなのは制度の穴をふさぐことだ。「1年未満文書」の規定を見直し、恣意(しい)的な解釈の余地をなくさねばならない。

ガイドラインはまた、政策立案に影響する打ち合わせなどを文書で記録するよう義務付けている。だが、首相と官僚の面談すら記録されていない。どんなものを残すべきかを明確に定める必要がある。

チェック機能も強化しなければならない。現在の公文書管理委員会や国立公文書館、公文書監察室は、独立性に欠けたり、権限が弱かったりして十分役割を果たせていない。

専門家らが求めているのは、各府省の保存や廃棄を監視する第三者機関の設置だ。内閣から独立し、強い権限を持つことが必要不可欠だ。

さらに、公文書管理法に罰則を設けることも検討すべきだ。悪質な改ざんがあっても、刑法の虚偽公文書作成罪を適用するには、満たすべき要件のハードルが高い。

公文書の適切な管理は、国民への説明責任を果たすための前提となる。だが、日本ではこの責任の自覚が不足している。制度改革を意識改革につなげ、公文書を守る文化を作ることは政治の役割である。

法の理念に立ち返るための議論を与野党で始めなければならない。
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[毎日新聞] 幼児期の吃音 支援体制の拡充が必要だ (2020年02月25日)

話す時に言葉が滑らかに出ない「吃音(きつおん)」について、幼児期の大規模な実態調査が初めて行われた。調査を基に、有効な支援につなげることが求められる。

吃音の人は、言葉が詰まって間が空いてしまったり、語頭などを繰り返したりする。海外の調査によると、幼児期には5?8%程度の割合で発症する。

日本ではこれまで大規模な調査が実施されておらず、発症率や治癒率が明確になっていなかった。

このため、国立障害者リハビリテーションセンターが中心になり、大学などと協力して、約2000人を対象に3歳児健診の時と、その後の約2年間に追跡調査をした。

その結果、3歳までに約9%が発症し、5歳までに約7割が自然に治っていた。また海外で開発された治療方法が約7割の幼児に有効であることも分かった。

センターは調査を踏まえ、適切な治療の時期や方法について、医療機関用にガイドラインを作成した。幼稚園などに対しても、幼児への対応についての資料をつくった。

これらによって、吃音の子どもを持つ親の不安が軽減されることが期待できる。

一方、幼児期の吃音をめぐっては、訓練に当たる言語聴覚士が足りない問題がある。

言語聴覚士は認知症の患者や、脳卒中などで失語症になった人が言葉を理解したり、話したりできるようにすることを支援する。

高齢化社会での需要が高まる中、高齢者施設で働く言語聴覚士が多い。幼児へのケアまで行き届いていないのが実情だ。

国や自治体は幼児期での支援の重要性を考慮して、体制の拡充を図るべきだ。

忘れてはならないのは、吃音がいじめやからかいの対象になりやすいことだ。教員の理解も十分ではないといわれる。

大人になって就職活動で差別されたり、就職後に不当な扱いを受けたりするケースは少なくない。自身が吃音だということを周囲に明かしにくい悩みもある。

吃音であっても、支障なく生活している人は多い。社会の理解を一層進めたい。
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2020年02月24日

[毎日新聞] NPT体制の50年 核軍縮の原点に立ち戻れ (2020年02月24日)

東西冷戦さなかの1962年に起きたキューバ危機は、世界を核戦争の瀬戸際に追い込んだ。

ソ連が支援するキューバでミサイル基地建設が始まり、米軍は空爆を主張し、戦況に応じて核兵器の使用もあり得ると提言した。

ケネディ米大統領はミサイル搬入を阻止する海上封鎖で難局を乗り切るが、万が一に備え核兵器を積んだ爆撃機に飛行命令が下された。

弟で司法長官だったロバート・ケネディ氏は核兵器使用を求める軍部の議論を皮肉交じりに述懐している。「間違っていても、(人類が滅亡し)だれもいなくなって間違いだったことに気付かれずにすむという利点がある」(自著「13日間」)

核攻撃の応酬になれば地球は壊滅する。キューバ危機の恐怖体験を教訓に米ソが主導して締結されたのが核拡散防止条約(NPT)である。


米露の危険な戦略強化
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核兵器保有国を米英仏中露の5カ国に限定し、新たな核保有国を認めない制度だ。保有国には核軍縮交渉の義務が課せられている。「核なき世界」に向かう原点といえよう。

その発効から3月5日で50年になる。だが、半世紀を経た世界の現状は冷戦に戻ったような寒々しさだ。

45年の米軍による広島・長崎への原爆投下は、核兵器のすさまじい殺傷力や重い後遺症を残す非人道性を世界に知らしめた。

しかし、この恐怖心はむしろ核軍拡競争へと世界を駆り立てた。

世界の核弾頭数はNPT発効後も増え続け、86年に7万発を超えた。人類が数十回も滅んでしまう量だ。

核兵器を持つ国もイスラエル、インド、パキスタンが加わり、核開発を進める北朝鮮を含めて9カ国に拡大している。

核弾頭数は、冷戦末期になって米ソが締結した中距離核戦力(INF)全廃条約や戦略兵器削減条約(START)によって、約1万4500発にまで削減された。

ところが、3年前に発足したトランプ政権はロシアの履行違反を理由にINF条約を破棄した。1年後に期限切れとなる新STARTを継承する軍縮条約交渉も進んでいない。

大きな問題は、世界の核弾頭のほとんどを保有する米露両国が核戦略をより強化していることだ。

ロシアは極超音速で飛行する最新核兵器を配備した。米国を射程に入れる大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載され、米国のミサイル防衛網を突破する能力があるという。

米国は新型の小型核弾頭を搭載した弾道ミサイルを原子力潜水艦に実戦配備した。小型核はすでにロシアも保有しているとされる。

被害が限定的な小型核だと使用に踏み切るハードルが下がり、核戦争のリスクが高まるおそれがある。

北朝鮮の核問題を巡る米朝交渉は行き詰まり、イランも核開発を再開した。トルコが将来の核兵器保有の可能性を示唆して物議を醸した。核兵器の脅威はより高まっている。


不拡散の立て直しこそ
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何のために核兵器を開発し、保有しようとするのか。抑止力を強化したり、交渉材料とする意図があったりと理由はさまざまだろうが、実際に使うためとは思えない。

大国同士でも、大国が小国に対してでも核兵器は広島・長崎以降、使用されていない。その非人道性が道徳的に各国指導者の手足をしばり、踏みとどまらせてきたのだろう。

米国は核戦力の更新を進めている。だが、米国内には通常兵器による抑止力を強化すべきだという議論もある。その方が少なくとも核軍縮を後押しする。

核保有国がNPTの特権にあぐらをかいて軍縮に取り組まず、核兵器の近代化を進めながら、ほかの国は核兵器を持つべきではないという理屈は、大国のエゴでしかない。

軍縮の履行を点検する5年に1度のNPTの再検討会議が4月に始まる。8月は原爆投下から75年だ。核問題を改めて意識する年になる。

唯一の戦争被爆国として日本は究極的な核廃絶を掲げる。だが、2年半前に採択された核兵器禁止条約には背を向けたままだ。

INF条約失効を受け米国によるアジアへの中距離ミサイル配備が取りざたされる。中国をにらみ日本も配備先の候補になる可能性がある。

節目の年に日本が核軍縮を説き、不拡散体制の再構築に取り組む意義は大きい。とりわけ米国の説得が重要だ。核軍拡競争を再び起こすようなことがあってはならない。
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2020年02月23日

[毎日新聞] 神戸教員いじめ報告書 再発防止の手立て全国で (2020年02月23日)

子どもの教育に責任を持ち、本来いじめを防ぐべき学校で、いじめや暴力など125件に及ぶハラスメント行為が教員間で日常的に繰り返されていた。その事実に慄然(りつぜん)とする。

神戸市立東須磨小学校で起きた教員間のいじめ問題の解明にあたった外部調査委員会が、事実関係や原因をまとめた報告書を発表した。

年上の加害教員4人によるハラスメントは、被害者である25歳の男性教員に「激辛カレー」を強引に食べさせていたのにとどまらない。

「くず」「死ね」と暴言を浴びせる。テニスラケットで頭をたたき、ひざ蹴りする。プールに放り込む。被害教員が交際中の女性教員の面前で嫌がらせをする――。

報告書は、悪質な加害行為を受けた被害教員が「精神を病むに至るほどの筆舌に尽くしがたい苦しみを被った」と結論づけた。

教育現場が特に深刻に受け止めなければならないのは、子どものいじめと同じ構造が教員間で生まれていたと指摘されている点である。

報告書は、加害教員に弱い者への「いじめ」の心理が働き、中心人物の加害行為を周囲の同僚が容認し、追随していた実態を記している。

管理職である歴代校長と一般教員の関係のいびつさも見逃してはならない。報告書は、威圧的な前校長が怖くて相談できなかった雰囲気や、現校長への相談が報復を招く悪循環などが、ハラスメント行為悪化の「遠因」だったと位置づけている。

問題はこの小学校にとどまらない。2018年度に全国の公立小中高校などで教員間のパワハラなどで処分された者は32人に上る。

加害教員らはきちんとしたハラスメント研修を受けていなかった。報告書は、加害教員の規範意識を是正する機会がなかったことが「大きな被害を生んだ」と分析している。

管理職を含めて、人権意識を高め、教員間のいじめを防ぐための効果的な研修制度の導入が必要だ。被害を受けた教員が安心して相談できる窓口の設置も求められる。

教育は国家の土台である。教員の多忙さが問題になる中、職場でのいじめが横行するようでは、教員のなり手と質を確保できない。再発を防止するための手立てを全国レベルで考えなければならない。
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[毎日新聞] 辺野古の軟弱地盤 なぜ再調査をしないのか (2020年02月23日)

米軍普天間飛行場の辺野古移設計画をめぐり、問題の軟弱地盤について政府説明と異なるデータの分析結果が明らかになった。

軟弱地盤は最深部分で海面から約90メートルに達するが、政府は70メートルの深さまで砂の杭(くい)を打ち込む工法で改良工事は可能だと説明してきた。70メートルより下は「非常に固い粘土層」であることをその根拠としている。

だが、防衛省の委託業者が行った地層調査のデータを外部の専門家が分析し、同省の説明より軟らかい粘土層である可能性が示された。

その地点には埋め立て地を囲う護岸の建設が予定されている。専門家は「重みで崩壊する可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

これに対し防衛省は、データは土の種類を確認する簡易な試験によるもので、土の強度を測る試験の結果ではないと言って取り合わない。

簡易な試験のデータであっても工事の成否に関わる分析結果が出たなら、再調査して確認すべきだ。

そもそも防衛省はこの地点で簡易な調査しか行っていない。同様の粘土層とみられる他の地点のボーリング調査をもとに「非常に固い」と断定したという。これで専門家の指摘を否定するのは説得力に欠ける。

広大な軟弱地盤に7万本を超える杭を打ち込んで地盤を固める難工事である。その中でも深さ90メートルまで粘土層があるこの地点の工事は特に実効性が危ぶまれている。そこで正確な土の強度を測る試験を行わないこと自体が理解に苦しむ。

防衛省は来月にも、地盤改良工事を実施するのに必要な設計変更を沖縄県に申請する方針だ。辺野古の埋め立てに反対する県側から承認を得られる見通しは立たない。

法廷闘争が想定される中、再調査によって不都合なデータが確認されるのを恐れているのだろうか。

仮に専門家の指摘通りであれば、移設計画が非現実的であることが一層明確になる。政府が辺野古移設に固執する限り、置き去りにされるのは、普天間飛行場の騒音と事故の危険に苦しんできた宜野湾市民だ。

防衛省は移設まで更に12年もの年月と総工費9300億円を見込む。巨大な浪費を生まないためにもここで立ち止まり、沖縄県、米政府と計画を見直す協議に入るべきだ。
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2020年02月22日

[毎日新聞] 新型肺炎で広がる自粛 暮らしへの影響最小限に (2020年02月22日)

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、イベントやスポーツ大会などの中止、規模縮小が広がっている。

厚生労働省はイベントなどの主催者に対し、開催の必要性を改めて検討するよう求めるメッセージを公表した。

一方で「一律の自粛要請ではない」とも説明し、最終的判断は主催者にゆだねた。「国内発生の早期」との現状認識を踏まえたのだろうが、あいまいな印象は否めない。

リスク要因として例示したのは「屋内で互いの距離が十分に取れずに一定時間いること」のみだ。判断のポイントを、よりわかりやすく示すべきではないか。

主催者に「感染の広がり」を踏まえて判断するよう求めているが、地域的な感染の拡大をどう認定するのか。高齢者の参加が多い催しの対応はどうすべきなのか。

開催する場合については、せきエチケットの徹底やアルコール消毒薬の設置を求めている。しかし、マスクや消毒薬は入手が難しい。政府は供給態勢の拡充を急ぐべきだ。

主催者は、開催か中止かを早めに判断して参加者に周知し、混乱を防ぐようにしたい。

多くの人が集まる機会を減らすことは、感染拡大の抑制につながる。

一方で、国民生活への影響を最小限にすることも必要だ。

就職活動をしている学生向けの合同企業説明会が、中止される例も出てきている。就活には影響が大きいだろう。企業側には、インターネットでの情報発信やオンライン面接などの活用を広げてほしい。

スポーツでは、大会への一般参加中止や無観客試合が決まったものもある。東京五輪・パラリンピックの代表選考には、影響が及ばないよう工夫したい。

大切なのは、感染拡大を防ぐ一人一人の行動だ。発熱などの症状がある人は、イベントへの参加を避け、仕事や学校を休むことが基本だ。

重症化リスクの高い高齢者や持病のある人は、いずれにしろ人混みをなるべく避けた方が良い。

死者や重症者を出さないことを第一に、感染拡大のリスクを減らしつつ社会活動の過度な萎縮は避ける。このバランスの取り方を、社会全体で考えていく必要がある。
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[毎日新聞] 楽天の送料無料化 出店者負担が重過ぎぬか (2020年02月22日)

公正取引委員会が通販サイト「楽天市場」を運営する楽天を立ち入り検査した。来月から予定する送料無料化について、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の疑いがあると見たためだ。

楽天市場では現在、出店者ごとに送料や無料となる条件が異なる。業界首位の米アマゾンは原則2000円以上買えば送料を無料にして、顧客を獲得している。

楽天は対抗策として来月18日から一つの店で計3980円以上買えば、送料を一律無料にする方針を決めた。ただ、配送コストを負担するのは出店者だ。出店する約5万社の中には中小業者も多く、「経営が立ち行かない」と反発の声が出ている。

楽天は「出店者は送料分を商品価格に上乗せすることもできる」と説明する。これを根拠に独禁法違反に当たらないと主張し、無料化を予定通り進める構えだ。

だが、出店者が送料分を価格に上乗せするのは難しい。通販サイトは価格競争が激しく、「割高」と見られれば、顧客が離れるからだ。

アマゾンを意識する楽天の三木谷浩史会長兼社長は「送料無料は時代の流れ」と強調している。ただ、自らさまざまな商品を仕入れて販売するアマゾンは自社の負担で送料を無料にしている。

一方、ネット上のショッピングモールである楽天市場は、出店者側の負担で無料化しようとしている点が大きく異なる。しかも、楽天は本来必要な出店者の幅広い理解を得ないまま、無料化を見切り発車で強行しようとしているように見える。

楽天を含むプラットフォーマーと呼ばれる巨大ネット企業に対しては「市場の寡占」の弊害が指摘されている。通販サイトを巡っては、立場の弱い中小業者が不当な圧力で不利益を被るケースが目立っている。

政府が今国会にプラットフォーマーを規制する新法案を提出したり、公取委が楽天に厳しい姿勢で臨んだりしているのも、中小業者の保護が求められているからだ。

地方の個人商店も出店する楽天市場は個性的な品ぞろえが評価されてきた。今回の対立で出店者が離脱すれば、楽天自身にもマイナスのはずだ。配送費の分担など、無料化の仕組みを再検討する必要がある。
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2020年02月21日

[毎日新聞] クルーズ船の集団感染 拡大した原因 徹底検証を (2020年02月21日)

新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から、検査で陰性と確認された乗客の下船が続いている。

乗客からはきのう、初の死者が出た。日本政府の一連の対応をめぐって、国内外から批判も出ている。感染拡大を防げなかったことについて、徹底的な検証が必要だ。

船は今月3日、横浜港に帰港した。検査で10人の感染が判明し、政府は2週間、乗客の下船を許可しない方針を決めた。

世界保健機関は、下船させない決定は支持している。船には56カ国・地域の人々が乗っており、確認が不十分なまま下船させればウイルスが世界に拡散する恐れもあった。

留め置くからには、船内での感染防止に加え、検査の着実な実施と感染者の隔離が不可欠だった。だが実際には、この2週間で感染者は増え続けた。乗客・乗員3711人のうち、感染者は600人を超えた。

国立感染症研究所は、留め置きを始めるまでに乗客の間で、その後は乗員の間で感染が広がった可能性を示唆する。船内では感染判明後もイベントやバイキング形式の食事が提供されたという。ウイルス検査も発熱などがある人に限られた。想定の甘さがあったことは否めない。

現場を訪ねた専門家からは、船内での感染防止が不十分だったとの指摘が出ている。

加藤勝信厚生労働相や政府はこれに対し「管理は十分だった」と反論した。責任を問われることへの警戒も働いたのだろうが、検疫官や船内で業務した政府職員が感染している現状では「十分」とは言えまい。まずは船内で何が起きたかを客観的に記録し、教訓として残すべきだ。

米国や韓国は下船後も乗客を14日間隔離するが、日本の乗客は自由行動となり、戸惑う声が出ている。乗客の健康面の見守りと心のケアも今後の課題だ。

今回は多国籍の人々が乗り合わせるクルーズ船が新興感染症に直面した初のケースである。日本はクルーズ船をはじめ海外からの観光客を積極的に受け入れる政策を掲げる。

だが検査態勢は手薄で、感染リスクのある人々を一度に受け入れる施設の用意も十分ではない。元々の備えについても検証が欠かせない。
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[毎日新聞] 検事長の定年延長問題 これでも法治国家なのか (2020年02月21日)

法律の解釈を恣意(しい)的に変える。それが法治国家のすることだろうか。

安倍政権が黒川弘務・東京高検検事長の定年を延長した問題は、さらに疑問が深まっている。

1947年に制定され、検察官の定年を定めた検察庁法には、延長の規定がない。81年に国家公務員法が改正され、一般職の定年や延長の特例が定められたが、人事院は当時、「検察官に国家公務員法の定年制は適用されない」と答弁していた。

これに対し、安倍晋三首相は今国会の答弁で「今般、検察官の定年延長に国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」と述べ、法解釈を変更したと明言した。

しかし、40年近く維持された法解釈を時の内閣が好き勝手に変えてしまうことには、大きな問題がある。

法律は、趣旨や適用範囲を議論した上で国会が制定する。運用の原則を変えるのならば、法改正を議論すべきだ。解釈変更で済ませるのは、国会軽視に等しい。

そもそも国家公務員法は公務運営に著しい支障が生じる場合に定年延長を認めているが、黒川氏のケースが当てはまるとは思えない。

法解釈を変更した経緯についての政府説明も迷走している。

人事院の担当局長は国会で、81年の人事院答弁について「現在まで当時の解釈は続いている」と答えた。

ところが首相の発言を受けて、担当局長はこの答弁を撤回した。81年当時の解釈が続いていたのは、黒川氏の定年延長を閣議決定する直前の1月下旬に解釈を変更するまでだったと修正した。

強引な解釈変更を取り繕うため、無理に答弁を修正し、つじつまを合わせたとしか見えない。このようなことが繰り返されれば、官僚組織は成り立たなくなる。

刑事訴追の権限を原則独占する検察官は、行政官でありながら裁判官に準ずる待遇を与えられている。このため政府は検察庁法の制定後、検察官の任免は一般の公務員とは取り扱いが異なると説明している。

こうした法の趣旨を無視するような形で、安倍政権は今回、人事権を行使した。政権に近いと目される黒川氏は、検事総長就任への道が開けた。やはり、黒川氏の定年延長ありきだったのではないか。
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2020年02月20日

[毎日新聞] 籠池夫妻に有罪判決 「森友」の本質置き去りだ (2020年02月20日)

疑惑は解明されず、問題の本質が置き去りにされた。

森友学園を巡る補助金詐欺事件の判決が大阪地裁であり、前学園理事長の籠池泰典被告と妻諄子被告に有罪判決を言い渡した。

判決は、籠池被告が国の補助金など計約1億7000万円をだまし取ったと認定し、「手口は巧妙かつ大胆」と悪質さを指摘した。

ただし、森友問題の本質は小学校建設を巡る不透明な国有地取引にある。この真相は解明されなかった。

発端は、財務省が鑑定価格9億5600万円の国有地を約8億円も値引きして学園に売却したことだ。

財務省は土地の地中にあるごみの撤去費用などを挙げた。しかし、実際に大量のごみがあったかどうかは確認されていない。

学園を巡っては安倍晋三首相の妻昭恵氏が建設予定の小学校の名誉校長に一時就いていた。こうしたことが、官僚が政権に忖度(そんたく)をしたという疑念を生んだ。

安倍首相は値引きが発覚した直後の2017年2月には、自身や昭恵氏が取引に関与していれば辞任すると国会で答弁した。

答弁をきっかけに財務省が国有地売却に関連して学園との取引に関する交渉記録を廃棄したり決裁文書などを改ざんしたりしたことが、後に分かった。

森友問題は、政治家への忖度と、公文書管理をめぐる政治と行政のゆがんだ実態を浮き彫りにした。

森友問題後、加計(かけ)学園の獣医学部新設問題が発覚したが、都合の悪い文書を「怪文書」扱いした。安倍首相主催の「桜を見る会」でも、野党に要求された直後に文書を官僚が破棄していた。

公文書は、公正、公平な行政が行われているかを検証する国民の共有財産である。官僚が政治家の顔色をうかがい、つじつま合わせに奔走するあまり、公文書を軽んじるなら、本末転倒だ。

公文書管理問題が大きな論争になった発端こそ、森友問題だった。その核心が解明されなければいつまでも「忖度政治」の温床は無くならないだろう。

この疑念が払拭(ふっしょく)されない限り、国民の不信感は取り除かれない。政治の責任は重い。
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[毎日新聞] 70歳雇用の改正法案 安心できる環境作れるか (2020年02月20日)

70歳までの雇用確保を企業に求める高年齢者雇用安定法などの改正案が、今国会に提出された。雇用確保の対象を65歳から引き上げる。

少子化の進行で、将来にわたる人手不足が懸念されている。企業の努力義務にとどめたものの、65歳以上の高齢者も働き手となってもらうことが政府の狙いだ。

高齢者の働く意欲は高まっており、雇用環境の整備は理解できる。ただ、今の制度が抱える問題を解決することが先決だ。

現在の雇用確保策は、企業に定年延長か定年後の継続雇用制度の導入、定年廃止のいずれかの対応を義務づけている。多くの企業が設けているのが継続雇用制度で、賃金が下がるのが一般的だ。

労働者側が「仕事内容は変わらないのに賃金を下げるのは不当だ」と訴えて、裁判になったケースもある。最高裁が基本給などの格差を認める一方、一部手当の格差を不合理とする判決を出した。

今年4月からは、まず大企業に同一労働同一賃金の実現が義務づけられるようにもなる。適正な賃金を定めずに70歳まで雇用すれば、問題は拡大する。

改正案ではこれに加え、起業やフリーランスを希望する人への業務委託や社会貢献活動に従事できる就業制度も選択肢とした。こうしたケースでは、企業との雇用関係がなくなり労働者の立場が弱くなる。

どのような委託契約をするのか、あらかじめ企業が示して労使で合意することが肝心だ。労働組合がなければ、会社と対等に協議することが難しくなるだろう。企業は労働者側の意見を丁寧に聞くべきだ。

安全に働くための配慮も欠かせない。厚生労働省の有識者会議は、高齢者は転倒や転落などの労災発生率が高くなると指摘している。一方で、高齢者の労災防止に取り組む企業は全体の半数程度にとどまる。対策を広めることが必要だ。

国や民間の調査では、働く理由の上位に「生活費を得たい」が挙がる。背景には、将来の生活への不安があるだろう。

国は企業任せにしてはならない。指針や中小企業への助成制度を十分に整えて、高齢者が安全、安心に働けるようにすべきだ。
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2020年02月19日

[毎日新聞] 肺炎で全人代延期へ 強権の弊害を見直す時だ (2020年02月19日)

中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が新型コロナウイルスの感染拡大のため、延期される見通しになった。1998年以降、3月5日開幕が恒例だった。予算や政策方針を決める全人代の延期検討は新たな感染症の流行が中国に与えた衝撃の大きさを物語る。

感染の拡大では大国・中国の持つ二面性が世界に示された。一つは1000万都市の武漢を封鎖し、10日余の突貫工事で2病院を完成させた力業だ。一方で、過剰な情報統制や事なかれ主義による対応の遅れから、感染を初期段階で封じ込める機会を逸した。

世界第2の経済大国、中国は人工知能(AI)など次世代技術でも米国としのぎを削る。習近平国家主席は体制の優位性を強調してきたが、脆弱(ぜいじゃく)性を併せ持っていたわけだ。

習氏自身、危機管理体制に欠点や不十分な点があったことを認めた。強権体制下、地方政府には独自の判断を避け、中央の指示を待つ方が無難という考え方が根強く残る。人権よりも治安維持を優先し、情報公開には消極的になりがちだ。

SNS(交流サイト)で新型肺炎に警鐘を鳴らした若い医師の勇敢な行為も公安当局に封じ込まれた。医師は感染で死亡し、言論統制に対する国民の批判が高まっている。

湖北省トップらが更迭されたが、それだけでは強権体制の持つ弊害は取り除けない。メディアの監視機能や内部告発の重要性にも目を向けるべきだろう。

全人代延期が決まれば、4月上旬に予定される習氏訪日にも影響する可能性があるが、新たな感染症の広がりは国際協力の必要性を再認識させてもいる。日中の協力は重要だ。

中国は情報公開を進め、武漢などで得られた知見を国際社会と共有してもらいたい。その際に台湾を排除すべきでないのは当然だ。特効薬やワクチンの開発でも国際協力が早期実現のカギになる。

感染拡大で中国各地の企業が操業をストップさせ、世界的な部品供給網に混乱が生じている。世界経済の先行きも不透明さが増している。

新型コロナウイルスの衝撃の大きさは中国の存在感を示してもいる。習政権がそれを自覚し、大国の責任を果たすことを求めたい。
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[毎日新聞] 首相答弁に食い違い このままでは信用できぬ (2020年02月19日)

安倍晋三首相の国会答弁の信用性が問われる事態である。

毎年の「桜を見る会」の際に首相の後援会が東京都内の高級ホテルで開いてきた「前夜祭」をめぐり、新たな問題が浮上した。2013、14、16年の会場だったANAインターコンチネンタル東京が首相答弁と食い違う説明をしたためだ。

首相は、参加者一人一人がホテル側との契約主体だから政治資金収支報告書に記載する必要はないと主張してきた。その根拠は(1)首相の事務所はホテル側から明細書を受け取っていない(2)参加者がそれぞれホテルに5000円を支払った(3)宛名が空欄の領収書をホテル側が参加者に発行した――というものだ。

これに対しホテル側は、ホテルで開くパーティーや宴席全般について(1)明細書を発行しないケースはない(2)代金は主催者にまとめて払ってもらう(3)宛名が空欄の領収書を発行することはない――と説明した。野党の問い合わせにメールで回答した。

衆院予算委員会でただされた首相は、ホテルから野党への回答は「一般論」であり「個別の案件については営業の秘密に関わるため回答に含まれていない」と答弁した。前夜祭が例外扱いだったと類推させる。首相の事務所からホテル側に口頭で問い合わせた結果だという。

ところがホテル側は毎日新聞の取材に「例外はない」と答えた。そうであるなら、前夜祭に関する首相の主張は根幹から崩れ、政治資金規正法に抵触する可能性が出てくる。

ホテル側がメールの文面で説明したのに対し、首相の答弁は口頭のやり取りを引用したものだ。引用の一部についてホテル側は、述べた事実はないと明確に否定した。

もし仮に首相がホテル側の説明を都合よく解釈したのだとすれば批判は免れない。野党は首相にホテル側とのやり取りを書面で示すよう求め、予算委審議を一時欠席した。

これまでの審議でも首相がヤジを飛ばして謝罪に追い込まれるなど紛糾する場面が度々あった。新型肺炎対策に与野党を挙げて取り組むべきときに、こうした国会の混乱が国民の政治不信に拍車をかけている。

首相はホテル側に明細書の再発行を求めるなど具体的な証拠を示し、食い違いの解消に努めるべきだ。
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2020年02月18日

[毎日新聞] GDP大幅マイナス 消費悪化の連鎖が心配だ (2020年02月18日)

昨年10?12月期の国内総生産(GDP)は実質で年率6・3%減と大幅なマイナス成長に陥った。昨年10月の消費増税に伴い、GDPの約6割を占める消費が落ち込んだ。

政府は増税前、2兆円規模の手厚い経済対策を講じた。それでもマイナス幅は、2014年の消費増税直後に記録した7・4%減以来の大きさとなった。ここまで悪化したのは、消費がそもそも増税前から低調だったからだろう。

政府は「増税に加え、台風や暖冬が影響した」と説明している。だが昨年7?9月期の成長率は0%台と増税前から消費が振るわなかったのは明らかだ。10月以降の消費動向も増税や自然災害の影響だけでは説明がつかないほど弱い、との指摘がエコノミストから出ている。

政府は昨年1月、景気拡大の期間が戦後最長になった可能性が高いと表明した。その後も「景気は緩やかに回復している」との楽観的な見方を維持してきた。

だが堅調な海外経済に頼ってきた面が大きい。国内は大企業中心に輸出で稼いでも、賃金はなかなか上昇せず、消費が盛り上がらないまま推移してきたのが実態である。

消費税は高齢社会を支える重要な財源だ。安倍晋三首相は以前から「消費税引き上げに向けた環境を整える」と繰り返し約束してきた。消費底上げが後回しになってきたアベノミクスの問題点を直視すべきだ。

さらに心配なのは今年1?3月期の景気である。増税の影響が和らいでプラス成長に回復するとの予測が大勢だったが、新型肺炎の影響が広がり、最近はマイナスが続くとの厳しい見方が増えている。

中国からの訪日客は大幅に減っている。中国に進出している企業も相次いで生産休止に追い込まれた。

加えて懸念が高まっているのは、日本での感染拡大が及ぼす影響である。感染を警戒して買い物やレジャーが手控えられると、ただでさえ低調な消費が一段と落ち込み、悪化の連鎖を招きかねない。

企業も消費下支えを担う必要がある。春闘で賃金を積極的に上げることだ。米中貿易摩擦などを理由に抑えたい考えのようだが、消費がさらに冷え込めば企業が求める持続的な景気回復にもつながらないはずだ。
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