2019年08月22日

[毎日新聞] 消費者庁の一部移転 すみ分けに見合う成果を (2019年08月22日)

地方移転を検討していた消費者庁は一部の機能だけを徳島県に移すことを決めた。宮腰光寛消費者担当相が発表した。すでに試験的に移転していた業務を拡充し、来年度に常設部署を新設するという。

安倍政権が「地方創生」の目玉とした省庁移転の一環だ。東京一極集中の是正を目的として2015年に政府が呼びかけ、42道府県が69機関の誘致に名乗りをあげた。

しかし、消費者庁を含めて最終的に移転を決めたのは、21年度までに京都府に全面移転する文化庁と、和歌山県に統計局の一部をすでに移転した総務省の3省庁にとどまった。

国会対応など政治や行政の中心である東京からの分散には限界があるということだろう。一部移転でお茶をにごした印象は否めない。

ただし、移転を決めたのであれば、中央とのすみ分けに見合う成果を出す必要がある。

消費者庁は移転に向けて2年前から徳島県庁内に事務所を置き、どんな業務ができるかを試行実施し、検証してきたという。

クイズで消費者トラブルを学ぶ同庁作成の教材「社会への扉」を使った授業を県内の全高校で実施したほか、環境や人権に配慮した「エシカル(倫理的)消費」などを研究し、啓発をしてきた。これを踏まえ、新拠点を消費者研究などを担う「新未来創造戦略本部」とする。

消費者行政に深く関わる研究テーマに取り組み、消費者行政に反映させることは重要だろう。先行実施して得た知見を生かす工夫も必要だ。

ただし、一部機能の移転でどんな成果を得ようとしているのか。新設部署の具体的な目標や展望を示すべきではないか。

宮腰氏は「東京と徳島の両方で政策立案し『車の両輪』とする」と語った。人員も拡充されるが、単に屋上屋を架すことになるのでは困る。

組織の肥大化を生むなら行政改革の目的にも反する。そうした批判を招かないためにも、生産性を高める努力を忘れてはならない。

東京との情報共有や連絡調整という課題もある。徳島県は高速ネット環境の整備などに熱心だ。IT先進県を目指す同県と、情報通信技術の面でも連携を深めることで、新たな可能性を生み出してほしい。
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[毎日新聞] 大学新テストの英語 混乱収拾へ手立てが必要 (2019年08月22日)

来年度の大学入学共通テストに英語の民間資格・検定試験が導入されることに対し、学校現場などからの不安の声が高まっている。

対象となる検定試験を実施するのは現時点で6団体だが、その多くはまだ試験日や会場などの詳細な予定を公表していない。このため、多くの受験生は、自分の希望する時期や場所で、希望する試験を受けられるかも分からない状況だ。

全国高校長協会は、不安の解消を求める異例の要望書を文部科学省に提出した。学校の現状は「先が見通せないほど混乱している」という。

なぜ、こんな事態になったのだろうか。

受験生は来年4月から12月までにこの検定試験を受ける。6団体の試験から選び、最大で2回まで受験できる仕組みだ。

受験生が早く勉強の計画を立てたいのは当然だろう。自分の希望する試験がいつ、どこで実施されるのか確定しないままだと困惑するのは無理もない。

そんな中、予定されていた試験の一つの「TOEIC」を運営する団体が先月になって突然撤退を表明した。「実施運営などが当初の想定より複雑で、責任を持って対応するのが難しい」というのが理由だった。

その背景は、大学入試センターと各検定団体の間で、試験実施の詳細を定める協定締結に向けた協議がなかなかまとまらずにいたことだ。この問題が学校側の不安に拍車をかけることになった。

検定試験を巡っては、これまでもさまざまな懸念が指摘されてきた。

まず、検定団体によっては会場が大都市中心で、地方の受験生には不利となる可能性がある。各試験は出題傾向がまちまちで、中高生向けや留学希望者向けなど対象も幅広い。その結果を公平に評価できるのか。

こうした懸念が払拭(ふっしょく)されないことから、検定試験の結果の活用を見送った大学もある。

ようやく今月中に他の6団体との間で協定を締結する見通しはついたが、現場からは「不安が払拭されるまで実施を見送るべきだ」との声も上がっているという。

文科省はこうした事態を受け、混乱を収拾する手立てを講じる必要がある。
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2019年08月21日

[毎日新聞] 再開された商業捕鯨 やはりマイナスが大きい (2019年08月21日)

7月から31年ぶりに商業捕鯨が再開され、捕獲された鯨の肉が料理店などに流通し始めている。

卸売市場では、ご祝儀相場で鯨肉が高値で取引され、捕鯨拠点がある北海道・釧路や山口・下関などでは「鯨食文化復活」を期待する声が出ている。

商業捕鯨は日本の領海と排他的経済水域(EEZ)内で行われ、年末までにミンククジラやニタリクジラ、イワシクジラの3種計227頭を捕獲する計画だ。

だが、捕鯨を商業的に成り立たせるのは容易ではない。1960年代に20万トンを超えた国内の鯨肉消費量は近年、5000トン前後と落ち込み、消費者の鯨肉離れが進んだ。

新たな販路を広げるのも難しい。環境保護など企業の社会的責任が問われる中、大手スーパーは鯨肉販売を自粛したり、捕鯨拠点のある一部店舗にとどめたりしているからだ。

一方で、国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、単独主義に走った日本への国際社会の目は厳しい。

政府は南極海などでの調査捕鯨から撤退し、商業捕鯨での捕獲数は調査捕鯨の年600頭程度より大幅に減ると強調する。

水産庁は、捕獲枠が「IWCの算定方式で100年間、捕獲を続けても資源に悪影響を与えない水準だ」と説明し、国際社会の理解を得ようとしている。

しかし、日本の思惑通りにいくかは分からない。国連海洋法条約65条は、鯨類の資源管理について「適当な国際機関を通じて活動する」と定めている。

政府はIWCの科学委員会のオブザーバーとして国際協力を続けるというが、専門家は条約違反の可能性を指摘する。反捕鯨国などから国際訴訟を起こされるリスクがある。

また、日本が注力するサンマやマグロなどの国際的な資源管理交渉に悪影響を与えるのも必至だ。中国などに乱獲防止の国際協調を求めてきたことと、つじつまが合わない。

政府は「長年の空白」を理由に捕鯨業者を財政支援しているが、いつまでも補助金頼みとはいかない。

伝統的な鯨食文化は否定しないが、国際的に批判され、商業的にも成り立たないのならば、マイナス面の方が大きいと言わざるを得ない。
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[毎日新聞] 障害者差別の解消 配慮の範囲をもっと広く (2019年08月21日)

障害者差別解消法の施行から3年がたち、改正に向けた議論が進められている。

法律は、障害を理由に不利な扱いをしないだけでなく、障害者の就労や社会参加に必要な配慮をすることも公的機関や企業などに求めている。「合理的配慮」と呼ばれるもので、車いす用のトイレの設置、点字や手話などの情報保障、知的障害者や発達障害者に合ったわかりやすいコミュニケーションなどを指す。

改正に向けた論点は多岐にわたる。公的機関は合理的配慮が法的義務だが、民間は努力義務にとどまる。働く場については民間企業も障害者雇用促進法で法的義務とされている。差別解消法で努力義務にとどめる理由はないだろう。

国会と裁判所は同法の対象外となっている。三権分立の観点から自主的な取り組みに委ねるというが、説得力のある理由だろうか。

参院選で当選した重度障害の議員の採決方法やヘルパー負担をめぐって議論となっている。これを機に、国会も同法の対象とし、合理的配慮を進めるけん引役になるべきではないか。これからは議員だけではなく、参考人や傍聴者にもさまざまな障害のある人が増える可能性がある。

罰則規定がないこと、相談や解決に直接当たる機関がないことについても批判がある。多くの論点を掘り下げて、実効性を高める改正につなげるべきだ。

3年前に同法が施行されてから、重度障害者が19人殺害される相模原事件が起きた。中央省庁の障害者雇用の水増しも発覚した。障害者差別の根の深さを見せつけている。

その一方、旧優生保護法下での障害者に対する強制不妊手術問題で、国は救済法を制定し、後に被害者に謝罪した。障害を理由に公務員などになれず、公的資格を得られないことなどを法律で規定した「欠格条項」の改善も進んだ。今年の通常国会で計187本の法律にあった同条項を一括削除する法律が成立した。

今後は障害者の就労がさらに広がり、多様な特性を持った人々が増えていく。法制定時には想定していなかったことも起きるだろう。そうした未来を照らす灯台の役割を解消法は担っている。合理的配慮を広げ、誰もが暮らしやすい社会にしよう。
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2019年08月20日

[毎日新聞] 昭和天皇の「肉声」記録 軍部増長に「反省」の重み (2019年08月20日)

終戦後、昭和天皇が田島道治初代宮内庁長官と交わしていた約5年間のやり取りが明らかになった。

田島元長官が個人的に記録していたもので、昭和天皇は1952年5月の独立回復式典に際し、自らのお言葉で「反省」を表明する意向を示していたが、宮内庁幹部や当時の吉田茂首相が反対し、当初の文案から削除された経緯などが分かる。

「反省」の中身について、同年2月、昭和天皇は「軍も政府も国民もすべて下剋上(げこくじょう)とか軍部の専横を見逃すとか皆反省すればわるい事がある」などと述べたという。

元長官が残した他の記録から、昭和天皇は東京裁判のA級戦犯被告への判決(48年11月)に際し、戦争を悔恨し、国民に謝罪したい意向を持っていたことが知られている。その時は実らなかった希望を、その後も追求していたのであろうか。

だが、明らかになった発言では、天皇から国民や他国への謝罪というより、日本人全体が軍の独走を止められなかったことを皆で「反省」しようという趣旨のように読める。

昭和天皇は戦後30年の75年、初の訪米から帰国後、記者会見で戦争責任について問われ、「そういう言葉のアヤについては、よく分かりません」などと答えたことがある。二度と戦争を繰り返したくない決意は尊いが、天皇が「反省」を言う以上、戦争責任問題は避けて通れない。

まして52年2月の別の日、昭和天皇は再軍備と憲法改正の必要性に言及していた。同年5月の発言には「再軍備によって旧軍閥式の再擡頭(たいとう)は絶対にいや」ともある。

新しい象徴天皇制のあり方を模索していた時期とはいえ、昭和天皇が依然として、君主としての感覚を持ち続けていた様子がうかがわれる。

吉田首相がお言葉に「反省」を盛り込むことに反対したのは、東京裁判の結果、政治的に決着したはずの退位論が蒸し返されるのを封じるためだったとみられる。朝鮮戦争特需で経済復興は勢いづき、世相も未来志向を求めていた。

さまざまな思惑や力学で「反省」の表明を見送った独立回復は、その後の日本の歩みにどのような光と影をもたらしただろうか。昭和天皇がこだわった「反省」のあり方は、今なお私たち自身の問題でもある。
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[毎日新聞] 復興庁の存続方針 防災司令塔の議論は半ば (2019年08月20日)

東日本大震災からの復興を担当してきた復興庁について、政府は現在の設置期限が切れる来年度末以降も存続させる方針を固めた。

自民、公明両党が安倍晋三首相に存続を提言し、首相も「提言をしっかり受け止めて生かす」と応じた。首相の直轄組織として、専任閣僚を置く今の体制が維持される。

政府は今年3月、いったんは後継組織を設置すると決めていた。与党内で取りざたされたのは、内閣府へ移管して金融庁のような外局とする案などで、内閣府防災担当と統合して被災地の復興と他の災害への備えを併せて担わせる案もあった。

だが、そうした組織になった場合、権限が縮小したり、防災に重心が置かれて東北の被災地支援が後手に回ったりするのではないかと懸念する声もあったため、結局、存続に落ち着いた。

被災地の復興に向けた取り組みを緩めないのは当然だ。

特に福島は、原発の廃炉や除染、住民の帰還など課題がまだ山積している。岩手、宮城の津波被災地も、来年度末までにハード面の復興事業はおおむね完了するが、被災者の心のケアなどソフト面の課題は残る。

このため、被災地の首長からも、復興庁の存続に安堵(あんど)の声が上がっている。

復興庁は当初、省庁の縦割りを排して復興の計画から実施までを担うことが期待されたが、実際は省庁間の調整などに業務が限定された。今後はいっそう被災地の要望に一元的に対応していく必要がある。

一方、今後30年間に高い確率で、南海トラフ地震や首都直下地震という大災害の発生が予測されていることも忘れてはならない。

国の防災部門の中心となる現在の内閣府防災担当は職員が100人弱にすぎず、しかも他省庁などからの出向者が多い。国家の存亡にかかわる危機に備えるのに、体制が万全とは言い難い。

復興庁が存続することにより、防災強化の議論がしぼむことがあってはならない。

政府は復興庁の新たな設置期限などの基本方針を年末までにまとめ、関連法案を来年の通常国会に提出する。防災の司令塔となる組織の設置方針も併せて示すべきだ。
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2019年08月19日

[毎日新聞] 企業型保育所の不正 ずさん審査放置したツケ (2019年08月19日)

企業主導型保育所を開設する名目で国の助成金約4億8000万円をだまし取ったとしてコンサルティング会社の経営者らが起訴された。

企業主導型保育所は「従業員の働き方に応じた柔軟な保育サービスの提供」を目的に構想されたが、これまでも施設工事費の水増しや運営費の詐取などが起きている。利用希望者の状況をよく把握せずに開設するため、定員割れのところも多い。

待機児童の解消を急ぐ安倍政権が、多額の公費を投じて企業に保育事業の参入を促したことが背景にある。甘い審査を見直し、不正を許さない体制を作らなければならない。

企業主導型保育の制度は2016年度から始まった。企業が自社の従業員のための保育所を持てるようにすることが目的だ。従業員以外の子どもも一定割合で受け入れが認められている。認可外保育だが、国から認可施設並みの助成金が支出されるなど経営上のメリットは大きい。

企業が自ら保育士の確保や開設の手続きをしなくても、保育事業を熟知した別法人などに運営を委託することができる点も特徴だ。保育所経営の経験がなく、資金が少ない企業の参入も促すためだ。実際、建設や不動産など保育とは無関係の企業が開設に乗り出すケースは多い。

社会情勢や消費者のニーズの変化に応じて企業が事業内容を変えることはよくあり、それ自体は批判されるものではないだろう。問題は、新規事業の開設や運営が適切に行われるかどうかだ。

企業主導型保育所で不正が横行しているのは、厚生労働省管轄の公益財団法人「児童育成協会」の審査がずさんだからである。

通常の認可保育所の審査では現地に赴いて調査し、運営体制も詳細に調べる。ところが、企業主導型保育所の審査を担う同協会は書類を見るだけで認可することが少なくない。助成申請が急激に増え、昨年度だけで4887件に上る。これを約50人の職員で審査しているためという。

認可保育所は毎年増え続けているが、待機児童はなかなか解消されない。政府が成果を急ぐあまり、新規保育所開設のブレーキになりそうな審査の厳格化を遠ざけてきた面はないだろうか。再発防止のための詳しい検証が必要だ。
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[毎日新聞] 米大統領選と民主党 「反トランプ」超える旗を (2019年08月19日)

2020年11月の米大統領選に向けた野党・民主党の討論会が始まった。有力政治家ら20人が大統領候補の座を争う激戦になっている。

支持率でトップを走るのはオバマ前政権の副大統領だったバイデン氏だ。穏健派の重鎮で、現実路線を重視する姿勢には安定感がある。

これに対しベテランのサンダース、ウォーレン、若手のハリス各上院議員ら急進左派が大胆な環境・福祉政策で支持を集め、猛追する。

資質に最も優れている候補はだれか。どの候補の政策が社会や生活をよくできるか。なによりだれなら現職のトランプ大統領に勝てるか。候補者たちの論戦は白熱している。

野党が政権奪還を目指して今の政権を厳しく批判するのは当然だが、それにしても異様な雰囲気だった。

「差別主義者」「白人国家主義者」「臆病者の略奪者」。現職大統領にこれほど激烈な言葉を次々と浴びせたことに驚く。7月の候補者討論会のことだ。民主党に渦巻くのは「反トランプ」の大合唱である。

不法移民問題や人種的憎悪による銃乱射事件でトランプ氏の対応を批判する狙いだったとしても、それでは感情的な対立をあおるだけだ。

トランプ氏は「眠たげなバイデン氏」「狂ったサンダース氏」などさげすんだ表現で繰り返し批判しており、中傷合戦の様相を呈している。

候補選びは長丁場だ。討論会を重ねる過程で党員が吟味し絞り込んでいく。だが、その結果、前回共和党が選んだのがトランプ氏だった。

移民に寛容な民主党は一方で白人の支持を失ってきた。その不満を吸い上げたトランプ氏だ。だが差別的な手法は社会の分断を広げている。

移民問題の背景には25年後までに半数を割り込むという白人の反発がある。人種的な融合は難題だが、民主党は白人層に目を向けるべきだ。

大統領選の論争は国内問題に集中する。しかし、トランプ氏によって国際秩序が動揺する中、外交は避けて通れぬ大きなテーマだ。

中国やロシアの台頭、北朝鮮やイラン問題など多くの課題を抱える。にもかかわらず世界を安定に導く議論が深まらないのは心もとない。

9月の討論会は人数が絞られる。トランプ氏の「米国第一」に対抗する政策を具体的に示してほしい。
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2019年08月18日

[毎日新聞] 夏休み続く国会 閉会中も諸課題の議論を (2019年08月18日)

国会はこのまま、あと50日近くも夏休みを続けるのだろうか。

政府・与党は9月前半に内閣を改造したうえで、臨時国会を10月初旬に召集する方針だという。野党は早期に閉会中審査を行うよう求めているが、与党が応じる様子はない。

国会は政府が諸課題について広く国民に説明する場でもある。参院選で与党が多数派を維持したといっても有権者が全ての政策を安倍晋三政権に白紙委任したわけではない。

内政、外交の懸案がこれだけ山積しているにもかかわらず国会審議が全く行われないのは異常とさえ言える。議論を拒むのは理解できない。

国会で今、論議すべきテーマを挙げれば切りがないほどだ。

日韓は深刻な対立が続く。中東ホルムズ海峡などの安全確保のため米政権が呼びかけている軍事的な有志連合に、日本がどう対応するかも喫緊の課題となっている。

政府が静観を続ける北朝鮮のミサイル発射問題もある。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画で防衛省の調査ミスが次々発覚した一件も国会ではきちんと議論されていない。

米中の貿易対立は日本経済にも影響を及ぼしている。農産物や自動車をめぐる日米貿易交渉も大詰めだ。

そんな中、参院選後、臨時国会が開かれたものの、参院の正副議長選出などをしただけで終わった。

それが慣例なのかもしれないが、そもそも安倍首相が出席して、さまざまな課題を審議する衆参の予算委員会が4月以降、一度も開かれていない点を忘れてはならない。

首相は参院選後も憲法改正論議を進めるよう再三野党に求めている。ところが憲法以外では国会審議自体に極めて消極的だ。虫がいいというほかない。首相の姿勢を追認している自民党の責任も重い。

今月24日に始まるフランスでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)を皮切りに、確かに今後の首相の外交日程は目白押しだ。ただし国会閉会中でも首相が出席して予算委が開かれた例は過去にもある。課題ごとに他の委員会を開くのも可能だ。

内外の情勢が動けば臨機応変に与野党で審議する。それを慣例化することこそ、国会を再生させる第一歩ではないのか。
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[毎日新聞] スパコン「京」運用終了 成果と技術力を後継機に (2019年08月18日)

理化学研究所が神戸市に設置していたスーパーコンピューター「京(けい)」が16日で運用を終えた。2012年9月以来、国産計算機のフラッグシップとして基礎研究や企業の技術開発を支援した。稼働率は94%に上り、1300本を超す論文が生まれた。

スパコンは、膨大な計算を瞬時にこなす。実験室では再現できない地球規模のシミュレーションや複雑な現象の再現、大量の作業を伴う実験の効率化にも役立つ。

集中豪雨や台風の発達を精度良く予測する手法、東京都心で大地震が起きた場合の建物ごとの被災予測、抗がん剤や低燃費タイヤの開発など、京を使った成果の一部が暮らしの安全・安心を支えている。

7年という運用期間は、世界のスパコンの平均寿命の4?5年を上回る。年1・8倍のペースで向上するともいわれる計算速度の世界ランキングでは首位から20位に後退したが、複雑な計算能力を測る別の指標では、15年から首位を維持している。

開発には1111億円の国費が使われた。開発途中の09年秋には、旧民主党政権の事業仕分けで「2位じゃだめなんですか」と巨額投資を皮肉られた。研究の実用化には時間がかかるため、京の投資効果の算出は容易ではないが、コスト削減を含めて「1兆円程度」と見積もった米企業の調査もある。

後継機「富岳(ふがく)」の開発費用は1300億円で、うち1100億円が国費だ。京が撤去された場所で21年の稼働を目指す。それまでの間は、国内11の大学・研究所にあるスパコンで対応する。

富岳は京の100倍の計算性能を想定する。スマートフォンなどに幅広く使われる設計思想を取り入れることで、利便性を高める。ビッグデータを詳細に分析し、その結果を基に人工知能(AI)が予測するなど、データ活用時代に向けた応用の広がりが期待される。

スパコン大国の米国に加え、近年は中国が巨額の軍事費を投じるなど国際競争は激しい。日本は投資規模では及ばないが、京の蓄積を生かし、世界一を競うのではなく総合力と平和利用で存在感を示せる。

富士山からもらった名の通り、頂の高さと裾野の広さで、新たな可能性を広げてほしい。
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2019年08月17日

[毎日新聞] 長引く香港の混乱 介入回避が長官の責務だ (2019年08月17日)

香港から中国への犯罪容疑者移送を可能にする「逃亡犯条例」改正案への反対運動に収束の気配が見えない。香港国際空港がデモ隊の占拠でマヒする事態にまで発展した。

民主派の要求に耳を塞ぐ香港政府への批判も高まる。中国の無用な介入を招かぬように香港政府が民主派との対話に動くべきだ。

条例案をめぐっては6月の大規模デモ後、林鄭月娥(りんていげつが)行政長官が事実上、廃案にする考えを表明した。しかし、民主派は完全撤回や林鄭氏辞任を求め、抗議活動を続けている。

香港市民の多くが憤るのは催涙ガスや暴動鎮圧用の銃を用いた香港警察の過剰な警備行動だ。デモ参加者から多数の負傷者が出ていることに国連人権高等弁務官も国際基準に合わないと懸念を示した。

独立調査委員会で警察の「暴力」の実態を調べるよう求める意見も多い。林鄭氏が耳を傾ければ、対話の環境も整うのではないか。

中国政府はデモ隊が国旗や国章を毀損(きそん)したことを非難し、デモを支援する米国や旧宗主国の英国などの動きを「内政干渉」と批判する。

しかし、アジアの金融センターで交通の要所でもある香港の行方に国際社会が関心を持つのは当然だ。

香港と隣接した広東省深センには武装警察部隊が集結している。中国軍が介入すれば、世界から厳しい批判を浴びることになるだろう。

香港駐留部隊以外の軍が境界を越えられるのは戦争か国家の安全が脅かされるような緊急事態の場合に限られるはずだ。正体不明の集団がデモ参加者を襲う事件が起き、デモ隊の一部が過激化するなど混乱は拡大しているが、非常事態とは程遠い。

民主的な選挙を経ていない行政長官は権威を欠く。中国のあやつり人形という批判もある。しかし、警察を含めた政府を指導し、法、予算を執行する権限を持つことも事実だ。

林鄭氏は今の香港の状況について「引き返せるかどうかの瀬戸際にある」と危機感を示す。それなら、自ら動く時だ。民主派との対話と共に中国に「1国2制度」の重要性を説き、介入を防ぐことが求められる。

今後もデモや集会が予定されている。デモ隊側も「非暴力、理性的」という方針を貫き、香港政府に対話を促すべきだろう。
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[毎日新聞] JOC理事会非公開に これが改革の第一歩とは (2019年08月17日)

日本オリンピック委員会(JOC)が、報道陣に公開してきた理事会を完全非公開にすることを決めた。来月より実施するという。

JOC理事会は、山下泰裕会長をトップに各競技団体などから送り出された理事ら約30人で構成される。選手強化やマーケティングなどの方向性を決める、いわば最高意思決定機関である。1989年の発足以来、人事案件など一部を除き公開が続いてきた。

山下会長は非公開にする理由を「公の場で話せない内容が多く、本音の議論ができない」と話す。

報道陣がいるため本音で話せないという理屈は理解に苦しむ。仮に非公開にすることにより議論が活発化するというのであれば、その根拠を示す必要があるだろう。

山下氏は6月、東京五輪招致に関する不正疑惑で仏司法当局の捜査対象となっている竹田恒和氏の後任として会長に就任した。

レスリングやボクシングなど国内で相次いだ不祥事により失ったスポーツ界の信頼を回復すべく「『高潔性』の充実に取り組んでいきたい」と意欲を見せていた。

そうした不祥事がどうして起きたのかを思い返してほしい。競技界内部で、不透明な組織運営がまかり通ったことが原因だった。

スポーツ基本法では、スポーツ団体は運営の透明性の確保などガバナンス(組織統治)の充実に努めるよう定めた。6月にスポーツ庁が策定した、各競技団体が順守すべき規範でも適切な情報開示を求めている。スポーツ界に求められているのは、高い透明性なのだ。

理事会の公開を定めた法律はないが、スポーツのありようを議論する場を非公開にする必要はなかろう。JOC同様に統括の役目を担う日本スポーツ協会は公開を続けている。

ましてJOCは国から補助金を受けている公益性の高い団体だ。そのJOCの改革の第一歩が「理事会の非公開」とは残念でならない。

競技団体の中には理事会を公開しているところもある。指導する立場にあるJOCの決定が他の競技団体に影響を与えることを懸念する。日本のスポーツ界のけん引役であるJOCは、模範となる開かれた団体であってもらいたい。
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2019年08月16日

[毎日新聞] 文・韓国大統領の演説 抑制された姿勢の維持を (2019年08月16日)

抑制された姿勢を維持してほしいと切に願う。

韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領がきのうの光復節に行った演説である。日本に対する直接的な批判は避け、「日本が対話と協力の道に歩み出るなら我々は喜んで手を取る」と呼びかけた。

少し前まで強い言葉で非難し、反日感情をあおっていたのとは対照的である。抑制されたトーンが貫かれたことは少なくとも評価したい。日本の植民地支配からの解放を祝う記念日だけに、対立をエスカレートさせる懸念が出ていた。

演説の中心は、経済を軸に強い国づくりをしていくという構想を示したものだった。事前に専門家や政界から聞き取りをしたところ、経済問題で前向きなメッセージを出すべきだという意見が多かったという。

日本の対韓輸出規制や米中貿易戦争の長期化で、国民の間に不安が広がっているためだろう。日韓の民間交流にまで影響が及ぶ現状は、望ましくないという内外の声にも配慮したとみられる。

この日、文氏は東京五輪に触れ、「共に繁栄の道に進む絶好の機会だ」と期待感を表した。そうであるならば、日本が掲げる東日本大震災からの復興という理念に水を差すようなことは慎むべきだ。

韓国外務省は東京電力福島第1原発の汚染水問題について、日本に揺さぶりをかける動きを見せる。国民感情を理由に汚染水の管理計画などについて情報公開を求めるという。

また、韓国政府は日本への事実上の対抗措置として日本を輸出管理の優遇対象国から除外する考えを表明した。相互に報復し合う悪循環に陥っては、両国ともに損失が大きい。経済面の影響に加え、国際社会からも冷ややかな視線が送られている。

韓国では、この日を境に秋の外交シーズンに向けて対日関係改善を模索する傾向がある。文氏は引き続き冷静な対応に努め、またそれを国民に呼びかけてほしい。

日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の更新期限は来週に迫る。岩屋毅防衛相は文氏の演説に関し「一時期に比べるとモデレートされた(穏当になった)」と述べた。 双方にとって不可欠なパートナーとの認識を持ち、政府間のさまざまな協議を活性化させてほしい。
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[毎日新聞] 令和初の戦没者追悼式 受け継がれた平和の願い (2019年08月16日)

終戦の日のきのう全国戦没者追悼式が営まれ、天皇陛下がこの式で初めておことばを述べられた。「過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い??」と語り、慰霊と平和へのお気持ちを表した。

平成の30年間、戦没者を悼み、遺族に寄り添って平和の尊さを後世に伝えていこうとした上皇さまの姿勢を、陛下が受け継いでいくことを明確に示した。

戦後生まれで初めて即位した陛下は、幼少期以降、戦争の痛ましさを両親から繰り返し聞いてきたという。皇太子時代には広島、長崎、沖縄への訪問をはじめ、旧ソ連に抑留されてモンゴルで亡くなった日本人の慰霊碑を参拝するなどして、人々の苦難を心に刻んだ。

かつて「戦争を体験した世代から戦争を知らない世代に、悲惨な体験や日本がたどった歴史が正しく伝えられていくことが大切であると考えています」と語ったのはこうした経験があるからだろう。陛下は愛子さまにもご自身の考えを伝えている。

激動の昭和期とは違い、平成期は日本が戦争の当事者になることはなかった。上皇さまが昨年の戦没者追悼式で述べた「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致し」という表現は、陛下のおことばにもある。

歴史と真摯(しんし)に向き合い、平成と同じように平和が続くことを願う強い意思がうかがえる。

一方、安倍晋三首相は追悼式の式辞で今回も加害責任や「反省」に触れなかった。この姿勢は再登板後の2013年から変わっていない。

戦後生まれは人口の8割を超えている。国から恩給を受ける旧軍人・軍属、遺族らはピークの1969年度に約283万人いたが、18年度には約28万人に減った。

戦後74年を迎え、薄れていくばかりの戦争の記憶をどう受け継いでいくのかは社会全体の課題だ。

国民の間では原爆や空襲の被害、戦場での経験などを若い世代が当事者から丹念に聞き取り、本人に代わって「語り部」となる動きも広がっている。こうした活動は貴重だ。

戦争の記憶を受け継ぐのは容易ではない。しかし、日本が破綻寸前だったことを思えば、世代間で継承しなければならない。
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2019年08月15日

[毎日新聞] 終戦の日と戦後処理 世代をまたいで辛抱強く (2019年08月15日)

終戦の日である。戦禍にたおれた人びとを追悼するとともに、日本が歩んだ過去への内省や、不戦の決意が交差する日だ。

今年はここに韓国との深刻な不和が加わって、日本の座標軸をより複雑なものにしている。

戦後74年。昭和から平成、令和へと時代を経ても、戦争の後始末がいかに困難であるかを物語る。一度手を染めると、修復するのに何世代もかかるのが戦争の宿命だ。

ここで日本の戦後処理がどうなされたか改めて整理しておきたい。

日本を占領した当初、米国などが考えた対日賠償政策は、被害国の感情を反映して日本の経済力を最低レベルに抑える懲罰的な内容だった。


歴史リテラシーの不足
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ところが、朝鮮戦争の発生と占領経費の増大が、米国の政策転換をもたらす。冷戦によって戦略的な価値が増した日本を経済的に自立させることが米国の利益に変わった。

こうして1951年9月調印のサンフランシスコ平和条約は、日本に十分な支払い能力がないことを認めて、役務提供という日本に有利な賠償方式が採用された。

日本は77年までかけてアジア諸国への賠償総額15億ドルを完済した。少なくない金額だが、相手国が購入する日本製品の代金を政府が円で支払う形だったため、日本企業のアジア進出の後押しにもなった。

若い政治家には「日本は過酷な条件で十分に償った」と思い込んでいる人がいる。日本に寛大だった講和内容の理解不足だ。政治家は歴史へのリテラシーを高める必要がある。

韓国との国交正常化も、サンフランシスコ条約に沿ってなされた。条約が、かつて日本の統治下にあって戦後に分離された地域に対する特別な取り決めを求めていたからだ。

植民地支配の性質をめぐって交渉は難航し、65年の日韓基本条約調印までに14年を費やした。実質的には米国の影響を受けた3カ国条約ではあったが、大局的な見地から双方が妥協した歴史的意義は大きい。

昨年10月に出た韓国最高裁の判決は、その土台を揺さぶっている。元徴用工の問題は条約の枠内で「解決済み」というのが両国の見解だったのに、「司法権の独立」を盾に日韓関係の一方的変更をもくろむ文在寅(ムンジェイン)政権の対応は極めて遺憾だ。

ただし、日本が文政権の外交的不作為をなじるだけでよいだろうか。韓国は中国と並んで日本の近代史における「特別な国」である。

戦時中の日本には、70万人と推定される朝鮮半島出身の徴用工のほかに、強制連行された約3万9000人の中国人労働者がいた。

過酷な労働を強いた日本企業に対して、中国人被害者が起こした裁判のうち、2000年に花岡事件の鹿島、09年に西松建設、16年に三菱マテリアルとの和解がそれぞれ成立している。韓国とは対照的だ。

中国は日中共同声明で戦争賠償の請求を放棄し、韓国は請求権協定で3億ドルの無償資金を受けているという事情の違いはある。中国は連合国の一員で、韓国と日本は交戦状態になかったとの区別も可能だろう。


先人の努力を忘れずに
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それでも日韓両国がこのまま正面対決を選んで、「歴史」のトゲが一層深く突き刺さって抜き差しならなくなることを私たちは恐れる。

花岡和解では政治家ルートが機能した。相談を受けた土井たか子元衆院議長が後藤田正晴元副総理に話をつなぎ、後藤田氏が鹿島の石川六郎元会長を説得したという。

また朝鮮半島や台湾出身の元軍人・軍属に弔慰金を支給する特別立法(00年5月)は、野中広務元官房長官の熱意から生み出された。

衆参国会議員709人のうち戦前・戦中生まれは現在わずか28人、4%足らずになっている。政界から戦争の記憶は薄れる一方だが、条約から漏れた課題に目を凝らしてきた先人の努力を忘れるべきではない。

「加害者と被害者の間の和解には、世代を越えた双方の勇気と努力を必要とする。加害者にとっては、過去と正面から向き合う勇気と反省を忘れない努力、被害者にとっては過去の歴史と現在を区別する勇気であり、相手を許して受け入れる努力である」。栗山尚一(たかかず)元外務次官は「外交フォーラム」誌でこう訴えていた。

戦争のもたらす被害はあまりに大きく、国家間のある時点での処理には限界がある。少しずつでも辛抱強くトゲを抜こうとする努力が、平和国家としての土台を強くする。
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2019年08月14日

[毎日新聞] 民法の規定見直し 無戸籍ゼロにするために (2019年08月14日)

親が出生届を出さなかったのが原因で無戸籍者となった人は830人に上る。今年6月時点で法務省が把握している数だ。約8割は、民法の「嫡出推定」が原因とされる。

法制審議会の民法(親子法制)部会が、その「嫡出推定」の見直しに向けた検討を始めた。

民法部会が参考にするのは、法務省の有識者研究会が示した見直し案だ。ポイントは大きく2点ある。

民法は、結婚中に妻が妊娠した子は夫の子とする「嫡出推定」を定めている。離婚後も300日以内に生まれた子は前夫の子とされる。見直し案はこの規定について、出産時に妻が再婚していれば現夫の子とみなすという例外規定をもうけた。

また、現行規定は嫡出推定を覆す「嫡出否認」の訴えを夫だけに認めているが、子や妻も申し立てられるように拡大した。

嫡出推定の例外規定は、どこまで実効力があるかは分からない。離婚後に新たなパートナーと婚姻せずに生活するライフスタイルはもはや珍しくない。例外規定はこうした女性には適用されないからだ。

嫡出否認権の拡大は、無戸籍者を減らすことにつながりそうだ。

現行規定では、妻が別居中に別の男性と子をもうけた場合、推定を覆すには夫の協力が必要となる。だが、別居の原因が家庭内暴力の場合などには協力を求めづらく、出生届を出さないケースが生じていた。

子や妻が自分で訴えを起こせれば、夫に協力を求める必要はない。ただし、相手が家庭内暴力の夫だった場合、子や妻が申し立てをする「勇気」は必要で、ハードルが低いとは言えない。

嫡出推定は明治時代から続く規定で、子どもを不安定な立場に置かないよう早期に父子関係を確定させる目的がある。

見直し案はこれを維持する一方で、複数の規定の見直しにより、無戸籍者問題を解決すべきだと主張する。だが、その手法で、問題を完全に解消できるか懸念が残る。

戸籍がないと原則として住民票やパスポートを取得できず、行政サービスが十分に受けられない。不条理としか言いようがない。

無戸籍者をゼロにするための改正を目指すべきだ。
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[毎日新聞] インド・カシミール問題 自治権の剥奪は即撤回を (2019年08月14日)

インドのモディ政権が北部ジャム・カシミール州の自治権を強引に剥奪した。現地の混乱だけでなく、同地の領有権を主張するパキスタンとの対立にも拍車がかかっている。

自治はインドとパキスタンの分離独立後、約70年間続いていた。インドで少数派のイスラム教徒が約6割を占める地域の特殊性に配慮し、住民に一定の自決権を認める措置だった。外交や防衛など一部の権限を除き、州の独自性は保たれてきた。

ところが、モディ政権は唐突に「テロを排除し開発を進める」との理由で、大統領令を出し、自治権を定めた憲法を国会で改正させた。今後、中央政府が直接統治に乗り出す。

あまりにも強引な手法ではないか。政権は決定に相前後して現地に兵士を大量動員し、政治家を含む地元反対派を大勢拘束した。デモを防ぐために通信も遮断した。「世界最大の民主主義国」を自負する国のやり方とは思えない。

今回の決定により、住民以外に認められていなかった不動産の取得が州外のインド人にも可能になる。地元の住民が恐れるのは、ヒンズー教徒が大挙して移住し、イスラム教徒が優勢な人口構成が変わることだ。

モディ氏と与党・インド人民党(BJP)は、インドがヒンズー教徒の国だという思想である「ヒンズー至上主義」を掲げ、カシミールの統合も悲願だった。だが、4?5月の総選挙に圧勝したからといって、住民との対話なしに現状を力ずくで変更するのは無謀だ。

パキスタンは反発し、駐インド大使を召還し貿易を停止した。パキスタンはカシミールの帰属を、国連安保理決議に基づく住民投票で決めるべきだと主張している。同地方の一部を実効支配している中国も反発し、国際的な問題に広がっている。

インドとパキスタンは2月、カシミールを巡り互いに空爆し、軍事的緊張に陥った。双方とも核兵器保有国であり、周囲の不安は増した。

今後、パキスタンとの対立が激化することが心配だ。また、インド国内ではヒンズー教徒とイスラム教徒の亀裂が深まっており、憎悪による犯罪やテロが懸念される。

自治権の剥奪は地域情勢を不安定にさせるだけだ。モディ政権は決定を即時、撤回すべきだろう。
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2019年08月12日

[毎日新聞] 自治体のAI活用 住民本位の視点忘れずに (2019年08月12日)

自治体が行政に人工知能(AI)を活用するケースが増え始めた。

AIには学習能力があり、大量の事務を処理できる。地方は人口減少や要員不足に直面している。それだけに、これまで多くの人手を要した作業の省力化を期待している。

ごみの分別案内、窓口業務、公共交通など、ここ数年、地方がAIの活用や検討を進める分野は幅広い。

高松市の場合、保育施設への入所児童の選考作業にAIの技術を導入して注目されている。

入所者を決めるには世帯状況などを点数化し、順位をつけるため、多くの労力を要する。この作業の一部をAI化すると、職員4人で600時間要した作業が1分以内で終了したと同市は説明している。

東京都港区は外国人からの問い合わせにチャットで英語などで自動回答するシステムや、会議録作成などに活用している。高松と同様、保育所決定にも導入する。

自治体は定員削減に伴う慢性的要員不足に苦慮している。しかも人口減少に伴う人手不足は深刻化する。AIに注ぐ視線は熱い。

だが、自治体による住民行政と、効率優先の企業経営では、AI活用のあり方にはおのずと違いがあることをわきまえねばならない。

たとえば保育所入所者の決定は生活に直結するデリケートな分野であるため、自治体は導入にあたり、職員による作業と結果が一致するようテストを重ねる。それでも作業が「ブラックボックス」化しないよう、検証し説明する姿勢が求められる。

住民サービス向上につなげる視点を忘れてはならない。職員を単純作業から解放する代わりに、創造的な業務や住民と直接ふれあう分野に余力を振り向けないと、単なる人減らしの道具と化してしまう。

AIの導入には多くのコストを要する。このため、財政が豊かな自治体と町村などの間で利用度の格差が拡大するおそれもある。活用がさらに進めば個人情報の取り扱いなど、さまざまな課題も生じよう。

近い将来、自治体の仕事はAIで可能なものと、あくまでも職員が担うものの「仕分け」が必要になるかもしれない。行政の進め方を大きく変え得るテーマだ。効率至上に陥らぬ運用をこころがけてほしい。
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[毎日新聞] 語り始めた戦争孤児 悲惨な体験記録し後世へ (2019年08月12日)

戦時中の空襲などで保護者を亡くした戦争孤児はどんな生活を強いられたのか。戦後74年を迎える今、浅井春夫・立教大名誉教授ら全国の研究者約30人が「戦争孤児たちの戦後史研究会」をつくり、聞き取り調査を進めている。

戦争孤児は12万人以上いるといわれ、空襲のほか広島・長崎の原爆、沖縄の地上戦でも大勢の子供が孤児となった。中国や南洋など海外から引き揚げる際に身寄りをなくした子供も多かった。

終戦後、東京・上野の地下道など各地に「浮浪児」といわれた子供たちがあふれ、餓死したり、凍死したりしたことも少なくなかった。

生きるために盗みや恐喝、売春をする者もいた。行政は「狩り込み」と呼ぶ強制的な収容をした。トラックに乗せられ、遠い山中に置き去りにされたこともあったという。

戦争は弱い立場の人に最も悲惨な被害をもたらす。だが、国は孤児の救済に力を入れず、孤児のための施設も少なかった。親戚や里親に引き取られる子供は多かったが、学校に通えず、働かされることもあった。

差別や偏見にさらされ、苦しんだ体験を大人になっても話さない人は多い。国も調査をしてこなかったため、他の戦争被害と比べて実態がよく分かっていない。

こうした中、当時子供だった人が高齢になった近年、このままでは孤児の体験が歴史に埋もれてしまうと、研究者の聞き取りなどに、つらい過去を語ることも増えてきた。ようやく発した言葉は重い。

星野光世さんは東京大空襲で両親と兄妹を亡くし、親戚の家で苦労を重ねた。星野さんは自分を含めて孤児11人の体験を文と絵で表した本「もしも魔法が使えたら」(2017年)に書いている。

<誰が好き好んで孤児になったというのでしょう。蔑(さげす)まれるべきは残された子どもではなく、親を奪った「あの戦争」ではないでしょうか>

民間の空襲被害者らの救済を目指している超党派の議員連盟は17年、孤児らの被害の実態調査を国に課すことを含めた法律の骨子素案をまとめている。

体験を記録に残すことは、悲惨な戦争被害を後世にしっかり伝えることにつながる。
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2019年08月11日

[毎日新聞] 温暖化と農業の未来 まず食卓から取り組みを (2019年08月11日)

地球温暖化が食料生産を脅かし、食料の安定確保のための農地開発が温暖化をさらに加速させる。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書は、温暖化と農業を巡る悪循環について警告を発した。

温暖化を食い止める努力は「パリ協定」に基づき各国で進む。だが報告書は、陸地の気温は地球全体の倍の速さで上昇しており、砂漠化が進む一方、農地では干ばつや土壌の劣化、作物の病気などの被害が出始めていると指摘した。

畜産を含む農業や森林伐採によって排出される温室効果ガスは、地球全体の排出量の約23%を占める。これを放置すれば地球は近い将来、食料確保か温暖化防止かの二者択一を迫られるという。

温暖化の進行を防ぎつつ、増え続ける人口を飢えさせないための食料も確保するという難題に、世界は直面している。

食料調達がグローバル化した今、実際の被害は局地的でも、影響は地球規模に及ぶ。「2050年には穀物価格が最大23%上昇する可能性がある」という予測は象徴的だ。

日本は、大豆や小麦などの大半を輸入している。先ごろ公表された食料自給率(カロリーベース)は史上最低の37%だった。政府は45%に上げる目標を掲げるが、国内農業の衰退は止まらない。

また、近年の異常気象は、主食のコメだけでなく、他の農産物の品質や収量に影響を与えている。

どうすればいいか。すぐにできることは、食品ロスの削減だ。推計で食品ごみの4分の1、年間643万トンが、まだ食べられる状態で捨てられている。国民の栄養の6割以上を海外に頼りながら、このような浪費を放置していいはずがない。

5月には「食品ロス削減推進法」が成立した。賞味期限に過度に厳格な流通ルールを見直すなど、製造・流通の段階から無駄を減らす努力を産業界はすべきだ。

温暖化の被害を軽減するための対策も重要だ。気温上昇に強い品種への改良や転作など、農業は他分野にさきがけて模索が始まっている。

地球を健やかな状態で子孫に引き継ぐために、一人一人ができることを「わがこと」として考えたい。
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