2019年12月13日

[毎日新聞] 出生90万人割れへ 少子化対策の総点検必要 (2019年12月13日)

2019年生まれの子どもの数が、90万人を下回る見通しとなった。1899年の出生数の統計調査開始以来、初めてのことだ。

出産に適した年齢の女性の人数自体がすでに減っており、出生数の低下は長期的なトレンドだ。しかし、90万人割れは国の推計より2年早いペースだ。昨年は92万人弱だった。今年1?9月の前年比5・6%減というペースが続けば、87万人を下回る可能性もある。

政府は、少子化に歯止めをかけられていない現状をより深刻に受け止めるべきだ。

子どもを持つかどうかは個人の自由で、国が押しつけるものではない。しかし、望んでも結婚や出産をできない現状がある。政府は、希望通りになった場合の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数に相当)を1・8と見込み25年度の実現を目指すが、18年は1・42にとどまる。

厚生労働省の調査で、理想の数の子どもを持たない理由の最多は「子育てや教育にお金がかかりすぎる」だ。10月から幼児教育・保育無償化がスタートしたが、大学などの無償化は低所得世帯にとどまる。

2番目の理由としては、働く女性の増加で晩婚化が進む中、高齢出産へのためらいがある。政府が女性活躍を推進する一方で、20代で結婚・出産してもキャリアを積めるような働き方が見えていない。

他にも、核家族化で子どもの祖父母の支援を受けづらいことや、子育てをしにくい社会だという親の意識など、幅広い要因がある。

子育ての負担ばかりが目につき、安心して子どもを育てられる環境があるとは実感できないのだろう。

少子化は東アジア諸国に共通した課題だ。働き手や社会保障の支え手が減り、社会の活力やセーフティーネットが弱まりかねない。想定以上に少子化が進めば、さらなる社会保障サービスの削減や負担増も浮上してくるだろう。

少子化社会対策大綱は年度末に向け、5年ごとの見直しが進んでいる。施策を総点検し、税制面での優遇を含めた経済的支援の拡充や働き方改革による男性の育児参加の促進、正規雇用による収入の安定などが必要だ。財源の確保も欠かせない。
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[毎日新聞] 環境相のCOP演説 「脱石炭」に背向けるのか (2019年12月13日)

地球温暖化対策の国際会議「COP25」で、小泉進次郎環境相の演説に、世界から厳しい目が注がれた。「石炭依存」脱却への具体的な道筋を示せなかったためだ。

「厳しい批判も承知している」と認め、温室効果ガスを5年連続で削減した実績を強調したが、不十分な内容だった。温暖化対策に消極的な国に非政府組織が贈る「化石賞」に、同じ会議で2度も選ばれた。

国連のグテレス事務総長は各国に「石炭依存をやめて」と呼びかけている。日本の現状はほど遠い。

電力供給の33%を石炭火力発電が占める。現在、約100基が稼働し、約20基の新設が計画されている。

東京電力福島第1原発事故で全原発が停止し、原子力発電の割合が約3割から3%まで落ち込んだ。代替手段として電力会社は、石炭火力の比重を増やした。

さらに政府は、高効率の石炭火力発電所を途上国へ輸出する政策も進めている。小泉氏は演説に際し、輸出抑制方針を盛り込もうと調整を図ったが、経済産業省などの抵抗が根強く、見送った。

「脱石炭」は世界の潮流だ。欧州を中心に、2030年までの石炭火力廃止を宣言する国が相次いでいる。だが、日本のエネルギー基本計画が規定する将来の電源構成は、石炭に過度に依存している。

来年始動する「パリ協定」で日本が約束する温室効果ガス削減目標も、この計画に基づいて設定された。「30年までに26%削減する」との目標は、国際社会で見劣りするだけでなく、国内の削減への意欲も損なう。石炭火力を温存し続ければ、この目標達成すら危うい。

基本計画を見直し、温暖化対策に真剣に取り組む姿勢を示すべきだ。基本計画は30年の原子力への依存度についても「20?22%」と明記するが、再稼働が困難な現状から目をそらすものだ。再生可能エネルギーの活用にかじを切る時だ。

日本は1990年代、世界が温暖化対策に取り組む契機となった「京都議定書」を主導した。パリ協定は、その理念を受け継ぐ。

現状に安住せず、「脱石炭」の目標を掲げて努力する道を選ぶことが、先進国に課せられた最低限の責任である。
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2019年12月12日

[毎日新聞] 増えぬ特定技能労働者 制度の矛盾が表れている (2019年12月12日)

外国人労働者の受け入れ拡大に向け、4月に新設された在留資格「特定技能」の取得者が増えていない。

政府は今年度に最大4万7550人と見込んでいたが、今月6日時点で1539人にとどまる。3・2%に過ぎず、掛け声倒れに等しい。

特定技能制度は、一定の仕事の技能と日本語能力を持つと判断された外国人を14業種で受け入れる。

受け入れが伸び悩む理由として、準備不足が指摘される。働き手不足対策として政府が昨年10月に入管法改正案の骨子を示して以降、4月スタートありきの急ごしらえだった。

技能と日本語の試験実施が遅れている。14業種中、11月末までに行われたのは8業種だ。資格の申請は複雑で審査にも時間がかかっている。

送り出し国の手続きも進んでいない。最大の人材提供国とみられたベトナムは、雇用企業が払う手数料などの指針が決まっていないという。

出入国在留管理庁は国内外で制度の理解が広がれば、資格取得者は増えると説明する。しかし、技能実習制度を温存したまま、新制度を設けた矛盾が表れているのではないか。

母国への技術移転を名目にした技能実習制度は、人手不足を手っ取り早く補う手段として使われてきた。

技能実習生は3年の実績があれば無試験で特定技能に移行できる。移行資格のある人は、年間約9万人いる。政府は多くの「移行組」を想定していたが、現状は大幅に少ない。

特定技能は、技能実習では原則許されない転職が可能だ。このため技能実習生の雇用先が、資格変更に消極的なケースも出ている。

雇う側、働く側とも特定技能のメリットが分からないとの声がある。人手不足が著しい業種では、技能実習生への依存を強める動きもある。

技能実習制度は低賃金や長時間労働が問題化している。2017年施行の適正化法で実習生保護を図ったものの、待遇は十分に改善されず、18年も9052人が失踪している。

単純労働者は受け入れないとの建前を変えないまま、技能実習や特定技能という名目で人手不足を補う政策は、つじつまが合わない。

外国人が働きやすい環境を整備しなければ、日本は選ばれなくなる。日本語教育の充実や労働条件改善など共生に向けた対策がまず必要だ。
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[毎日新聞] WTOの機能停止 保護主義の横行が心配だ (2019年12月12日)

各国の貿易のもめごとを裁き、一方的な高関税発動などの保護主義政策を防いできた世界貿易機関(WTO)の機能が停止した。

最高裁にあたる上級委員会の委員(定員7人)が1人だけに減ってしまい、審理に最低限必要な3人を下回った。1995年のWTO発足以来、初の異常事態である。保護主義的なトランプ米政権が委員選出を拒み続けたためだ。

心配されるのは、保護主義が世界にはびこる引き金となることだ。

WTOの目標は、多くの国が関税を下げて貿易を活発にし、世界経済を発展させることだ。こうした自由貿易体制に必要なルールを定め、違反した国に是正を求めてきた。要の役割を果たしたのが、法的拘束力を持つ上級委員会の判断である。

それが止まってしまったため、米国以外も自国の利益を優先して高関税の応酬を繰り広げる恐れがある。国際協調を前提とした自由貿易体制を根底から揺るがすことになる。

トランプ政権の対応の根底にあるのはWTOへの不満だ。

米国は中国に多額の貿易赤字を抱えている。トランプ大統領は、中国が不当に安い製品を米国に大量輸出しているのに、WTOは不公平を放置していると批判してきた。

「米国第一」を振りかざすトランプ氏はWTOを軽視し、離脱も辞さない発言を繰り返してきた。今回もWTOの弱体化が狙いだろう。

WTOにも問題はある。中国政府は企業に過剰な補助金を支給し輸出競争力を不当に強めていると批判されるが、WTOの対応は不十分だ。

ただ、だからといって米国が協調を損なうのは筋が通らない。

米国は超大国として国際秩序を安定させる責任がある。自国の主張だけを押し通せば混乱を招くだけだ。

自由貿易をけん引し、最も利益を得てきたのは米国である。WTOに不満があるのなら、米国がリードして組織や運営を改革すべきだ。

貿易立国の日本にとっても重要な問題である。ルールに基づくWTOの判断がなければ、米国のような大国が有利になってしまう。

同様の立場の欧州と連携し、米国を説得する必要がある。同時に中国の補助金問題に対応したルール整備などのWTO改革も促すべきだ。
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2019年12月11日

[毎日新聞] 旧民進党再合流の動き 「元のさや」超えられるか (2019年12月11日)

旧民進党から分かれた立憲民主党と国民民主党、無所属議員らが再合流を模索している。立憲民主党の枝野幸男代表が呼びかけた。

「1強多弱」状況を脱し、安倍政権と対峙(たいじ)する大きな野党の塊をつくろうという趣旨は理解できる。

この秋の臨時国会では旧民進党勢力に社民党を加えた統一会派を組み「桜を見る会」問題や閣僚不祥事の追及、大学入学共通テストの見直し論議などで一定の成果を上げた。

これをさらに推し進め、年明けの通常国会が始まるまでに政党としても一つになろうという提案だ。枝野氏は社民党にも参加を呼びかけている。全員まとまれば衆院120人、参院61人の規模になる。

ただし、元のさやに収まるだけでは国民の期待感は高まらない。官僚機構を使いこなせず、内紛から自壊した旧民主党政権への失望感は今も根強く残っている。

党名を民進党に変えた後も憲法改正や原発政策で党内対立を繰り返し、2017年衆院選時の分裂に至った。国家どころか党内のガバナンス(統治)もままならなかった。

次の衆院選が近づく中、政党がバラバラのままでは選挙で不利だからという理由で再合流するなら、まさに枝野氏が否定してきた「政党の数合わせ」になってしまう。

そのため枝野氏は「理念・政策の共有」を再合流の前提とし、立憲民主党への吸収合併を主張している。結党時の寄せ集め状態を引きずった旧民主党の反省もあるのだろう。

電力総連の支援を受ける国民民主党議員の中には、立憲民主党が共産党などと国会に提出した原発ゼロ基本法案への反発がくすぶる。

7月の参院選で候補者が競合したしこりも残り、国民民主党側がまとまって合流できるかは微妙だ。

だが、多様性を重んじる共生社会などの理念はもともと共有している。政策面の一致点を見いだす努力を続けるべきだ。

さらに、何よりも重要となるのが国民の将来不安に応える政策の提示だ。令和の日本が直面する少子高齢化や人口減少、東京一極集中といった重い懸案に安倍政権が正面から向き合ってきたとは言い難い。

自民党に代わって政権を担う覚悟が本物なのかを見極めたい。
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[毎日新聞] NHK会長交代 政権との距離保つべきだ (2019年12月11日)

NHKの次期会長に、みずほフィナンシャルグループ元会長の前田晃伸(てるのぶ)氏が選ばれた。

来月に任期満了となる上田良一会長続投との観測もあった。会長交代の理由は何だったのだろうか。

上田会長は、トップとしての資質を問われる言動を繰り返した籾井勝人前会長時代の混乱を収拾した。

インターネット時代を見据え、念願だった番組のネットへの常時同時配信に道筋をつけた。受信料値下げも実施するなど、局内外で評価する声があった。

交代の背景にあるとみられるのが、かんぽ生命保険の不正販売を追及した番組を巡る問題だ。上田会長は日本郵政グループの抗議を受けた経営委員会から厳重注意された。

経営委は「ガバナンス(企業統治)に問題があった」と強調するが、放送法が禁じる、経営委の番組編集権への介入との疑念は晴れていない。

番組内容に誤りがあったわけではなく、上田会長は当初、郵政側の圧力ともとれる執拗(しつよう)な要求に抵抗していた。

一方、官邸には、上田会長が政権批判の番組に十分には対応できていないとの不満もあったという。今回の新会長人事に、番組内容への影響力を強めようとの意図があったとすれば問題だ。

前田氏は官邸との近さも指摘される。安倍晋三首相を囲む経済人が集う「四季の会」のメンバーだった。

5代続けて外部の財界からの会長登用となるが、権力を監視する報道機関のトップとして、政権と距離を置き、公共放送の理念を貫く姿勢を示すべきだ。

NHKは、業務の見直し、受信料のあり方、ガバナンスの強化という「三位一体」の経営改革が積年の課題だ。ネット業務拡大を含め、肥大化への批判も根強い。

総務省から再検討の要請を受け、今年度中に開始予定だった常時同時配信を来年4月にずらし、ネット活用業務費の上限も大幅削減する方針を公表した。

昨年度は受信料収入が初めて7000億円を超えた。受信料の適正化も含め、新会長の手腕が問われる。

災害が増加し、正確で迅速な報道にNHKへの期待も高い。視聴者の信頼こそが、公共放送の生命線だ。
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2019年12月10日

[毎日新聞] 神奈川の個人情報流出 データ管理の死角認識を (2019年12月10日)

神奈川県の行政文書を保存するサーバーのハードディスク(HDD)が転売され、個人情報が流出した。

氏名や住所を記載した自動車税の納税記録、法人名を記した税務調査後の通知などが含まれていた。税の情報は個人のプライバシーに直結するだけに、極めて深刻な事態だ。

HDDは、データ消去を請け負った会社「ブロードリンク」の社員が社内から無断で持ち出し、オークションサイトで転売したと認めた。

県がデータを見えなくする「初期化」を施しただけで、復元可能な状態だった。流出による具体的な被害は確認されていないものの、転売されたHDD18個のうち9個が回収されていない。

この社員は社内から別のHDDを盗んだ容疑で警視庁に逮捕された。ブロードリンクは、社員が入社した2016年2月以降、3904個もの記憶媒体をオークションサイトに出品していたと明かした。持ち出しが常態化していたとすれば悪質で、会社のずさんな管理にもあきれる。

まず肝心なのは、流出に伴う被害の防止だ。ブロードリンクは、官公庁や自治体、大手IT企業、銀行と取引していたという。神奈川県と同様の流出も懸念される。警察は全容解明を進め、ブロードリンクも防止対策に努めなければならない。

HDDのデータは、簡単には消せない。完全消去には、物理的に壊すか磁気による破壊が必要になる。

神奈川県は、サーバーを「富士通リース」から借りた際の契約で、返却後はHDDのデータを復元できない状態にするよう求めていた。

しかし、実際の消去作業を把握しておらず、消去の証明書も受け取っていなかった。行政文書を暗号化して、容易に見られないようにする措置も取っていなかった。

公権力で収集した情報について、行政は公文書として厳格に管理していく責任がある。今回の神奈川県の対応は、結果的に甘かったとのそしりを免れない。

総務省は全国の自治体に対し、廃棄時に職員が立ち会うように通知した。こうした措置は当然だろう。

大量の情報を蓄積できるデジタル化の新たなリスクが浮き彫りになった。データ管理の死角を認識して、早急に対応しなければならない。
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[毎日新聞] 臨時国会が閉会 長期政権のひずみ一段と (2019年12月10日)

「桜を見る会」をめぐる疑惑に揺れた臨時国会が、きのう閉会した。

異例と言える野党の会期延長要求を、与党が拒んだのは、疑惑の早期幕引きを安倍晋三首相や自民党が狙ったからにほかならない。

しかも安倍首相は、閉会に伴う記者会見の冒頭、この問題に一切触れず、記者の質問にも従来の説明を繰り返すだけだった。これで納得しろと言う方が無理だ。

この問題は、政府側がその場しのぎの説明を続けた結果、かえって矛盾が次々と広がり、疑問は何一つ解消されていないのが実態だ。

自民党は今後、国会で政府側に説明させる約束をした。ならば、明確な閉会中審査の形で、安倍首相が出席する衆参両院の予算委員会を早急に開くべきである。

今国会では日米貿易協定や、なお改善されない日韓関係をはじめ、もっと議論が必要だったのは確かだ。

ただし「桜を見る会」に時間が費やされたのは、首相や与党に大きな責任がある。首相自身が内閣府に厳しい調査を命じ、予算委で説明することもしなかったからである。

そもそも税金を使った政府行事の公正さが疑われる問題だ。民主政治の基本を軽んじる首相や自民党の姿勢は理解しがたい。

都合の悪い公文書はすぐに廃棄してしまう現政権の悪弊と言うべき問題も改めて浮き彫りになった。

菅義偉官房長官は招待者名簿を記録した電子データに関し、今年5月に国会で資料要求があった時点ではバックアップデータが残っていたことを認めた。しかし、このデータは公文書ではなく、資料要求に応じる必要はなかったと言い出す始末だ。

今回の疑惑は共産党が独自調査で掘り起こし、他野党も共同歩調を取って追及した。大学入学共通テストで予定されていた英語民間検定試験の導入を延期する流れを作った点も含め、野党が行政監視について一定の役割を果たしたと評価していい。

今国会中には、自民党の菅原一秀氏が経済産業相を、河井克行氏が法相を相次ぎ辞任した。ともに政治とカネの疑惑が問われたにもかかわらず、その後、約束していた説明をしていない点も看過できない。

長期政権のおごりやひずみは一段と深刻になったと言うべきである。
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2019年12月08日

[毎日新聞] 五輪経費「3兆円」に さらなる肥大化が心配だ (2019年12月08日)

うたい文句だった「コンパクトな大会」には程遠い状況だ。

東京五輪・パラリンピックを巡る国の支出が、1兆600億円に上るとの試算を会計検査院が公表した。

現段階で東京都は1兆4100億円、大会組織委員会は6000億円を負担することになっている。合計で大会の総経費は3兆円を超える。マラソン、競歩コースの札幌移転に伴う費用も確定しておらず、経費はさらに膨らむだろう。

招致時に総経費は約7300億円と見積もられていた。最終的な総経費はその4倍に達する見込みだ。

総経費は、開催に直結する「大会経費」と道路整備などの「大会関連経費」に分けられる。特に膨張を続けるのが関連経費だ。国は今年度までの7年間で2197億円の予算を計上したが、会計検査院は他にも関連事業があると判断している。

今回の調査では340事業が対象とされた。だが、関連経費かどうか、国と会計検査院との間で見解が分かれているものもある。例えば、水素社会実現に向けた燃料電池産業車両の導入補助や、地域の農産物や食文化を映像化して海外に発信する取り組みの支援などだ。

五輪・パラリンピックは国家事業として準備が進められている。その機会に乗じて各府省庁から数々の事業が申請されたのではないか。政府は会計検査院の指摘を厳しく受け止めなければならない。

「大会経費」も総額1兆3500億円に膨らんでいる。組織委が近く最新の予算を発表する見通しだが、さらなる増額は許されない。

施設の後利用にも不安材料はある。完成した国立競技場は、民間業者に運営権を売却する計画の策定が先送りになった。業者のめどが立たない場合、所有者の日本スポーツ振興センターが管理しなければならない。だが、財源のスポーツ振興くじは売り上げが低下している。

五輪・パラリンピックは肥大化し、今や世界的な大都市でしか開催できない状況だ。立候補都市は減少傾向にあり、国際オリンピック委員会は危機感を募らせる。

年が明ければ、大会準備は最終点検の段階に入る。政府は税金がどれだけ使われるかを改めて精査し、肥大化に歯止めをかけるべきだ。
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[毎日新聞] 家庭での体罰防止 「しつけだから」は通らぬ (2019年12月08日)

親による体罰を定義した厚生労働省の指針案がまとまった。児童虐待防止法などの改正で、体罰が禁止されたことを受けたものだ。

たとえ、しつけのためだとしても、身体に何らかの苦痛を引き起こす行為は体罰に当たると明確にした。

「友達を殴ってけがをさせたので、子どもを殴った」「宿題をしないので、夕ご飯を与えなかった」などを例に挙げている。

体罰以外の暴言や辱めも「子どもの心を傷つける」として否定した。

体罰はなぜいけないのか。

子どもの成長に悪影響があるからだ。体罰を受けた子は周りの人を傷つけることが増えたり、感情的に切れやすく攻撃性が強くなったりするとの研究結果がある。

体罰が虐待への入り口となっていることも見過ごせない。児童虐待事件で、逮捕された親がしつけを口実に正当化するケースは多い。

何より、子どももひとりの人間として尊重されるべきで、日本も批准した「子どもの権利条約」であらゆる形態の身体的・精神的な暴力を防ぐことが求められている。

しかし、民間団体の全国調査で、しつけのための体罰を容認する20歳以上の人は6割弱に上っている。18歳以下の子を持つ人の7割が、過去にしつけで子どもをたたいたことがあると回答した。

「口で言うだけでは子どもはわからない」という考え方は根強い。仕事や介護などでストレスがたまった親が、つい感情的になって手を上げることもあるかもしれない。

指針案はこうした点にも目を配り、「体罰によらない子育てを社会全体で推進する」姿勢を打ち出した。体罰に頼らないための工夫や、親に対する支援策が紹介されている。

今後は、指針の内容をどのようにして親や子育ての支援者、社会に浸透させていくか、具体策が肝心だ。

母子手帳や初めて親になる人に向けた両親学級などを通じた啓発や、キャンペーン広告による周知などの案が挙がっている。子どものいる相手と結婚して子育てをすることになる人への情報提供も欠かせない。

子ども自身に「体罰を我慢しなくてよい」と教えることも大切だ。学校教育の中で、子どもの権利条約と併せて伝えるべきだ。
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2019年12月07日

[毎日新聞] 参院1票の格差判決 抜本改革の議論を早急に (2019年12月07日)

「1票の格差」が最大3・00倍だった今夏の参院選は憲法に違反するかどうかが争われた裁判で、1審となる高裁の判決が出そろった。

全国16件のうち14件は「合憲」、2件は「違憲状態」と判断した。

最大3・08倍だった2016年の前回参院選について、最高裁は合憲と判断している。初めて「鳥取・島根」「徳島・高知」が合区され、前々回の最大4・77倍から格差が縮小したことを評価した。

合憲判決14件は、この最高裁の結論を土台にしている。前回以降の制度改正は埼玉の定数2増だけだが、「現実的な選択肢として是正を図った」(広島高裁岡山支部)などと、国会の取り組みに理解を示した。

ただし、前回選挙の枠組みを定めた公職選挙法の付則は、次の選挙に向けて制度を抜本的に見直し、必ず結論を得るとうたっていた。これも最高裁が合憲とした理由だった。

今回、違憲状態と判断した判決2件は、埼玉2増の措置を抜本的な見直しにはほど遠いと指摘した。

高松高裁は、一時的に取り繕った是正に過ぎないと断じた。札幌高裁は、都道府県を選挙区の単位とする仕組み自体の見直しを求めた。

前回選挙後の制度改正は、自民党の党利党略によるものである。合区であぶれた候補者を救済するため、比例代表に特定枠を設けた。埼玉2増は、公明党を含めた他党の懐柔という側面があった。

大都市への人口集中は止まらず、選挙区が現状のままだと、格差は拡大していく。定数是正では追いつかず、合区論議の再燃もあるだろう。

だが、合区は弊害が生じている。今回選挙で、対象4県中3県は投票率が過去最低を記録した。徳島県は全国で最も低い38・59%となった。

必要なのは、参院のあり方を正面から問い直すことだ。「熟議の府」としての存在意義や衆院との役割分担を明確にしなければならない。

参院選の投票価値の平等について最高裁は、2院制の下、参院の性格や機能との兼ね合いで実現されるべきだとの考え方を取る。だからこそ衆院選より格差を緩く見てきた。

最高裁は来年中にも、憲法判断を示すとみられる。国会はそれを待たず、抜本改革に向けた議論を早急に始める必要がある。
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[毎日新聞] 内定辞退率で37社指導 「データ社会の倫理」問う (2019年12月07日)

データの活用が社会で広がる中、個人情報の保護を軽視した企業の倫理が厳しく問われた。

就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアから就活生の「内定辞退率」予測を購入した企業37社を、政府の個人情報保護委員会が行政指導した。社名も公表され、トヨタ自動車や三菱商事など大企業が大半を占めた。

行政指導は、明確な法令違反とまでは言えないが、問題のある行為について企業に改善を促す措置だ。

各社は「採用の合否には使っていない」という。だが、自社を志望する学生の個人データを明確な同意なしにリクナビ側に渡して辞退率を算出させた。保護委が社名公表に踏み切ったのは「悪質」と見たからだ。

勝手に辞退率を出された就活生は約2万6000人に上る。人生を左右する就活で不利に扱われかねなかった。保護委が「利用企業の責任も重い」としたのは当然だ。

トヨタなどはおわびのコメントを出したが、信頼回復には不十分だ。各社は個人情報の取り扱いの問題点を調べ、再発防止を徹底すべきだ。

保護委はキャリア社には、個人情報保護法に基づく2度目の是正勧告を出した。前回8月の勧告では、就活生個々の氏名付きで辞退率を販売したことを違法とした。

今回は「クッキー」と呼ばれるサイト閲覧履歴などを使って個々の就活生を特定しない形で販売した辞退率も違法と認定した。

クッキーは現行法で保護すべき「個人情報」に含まれない。だが、企業側がクッキーを手持ちの就活生の情報と照らせば、個人が特定できた。保護委は「法の趣旨を逃れる極めて不適切なサービス」と断じた。

使い方次第で個人が特定できるクッキーについて、政府は来年に予定する個人情報保護法改正で規制の対象とする方針だ。

ただ、ネットで膨大な個人データがやり取りされる中、企業が個人情報の保護を重視する姿勢に転換しなければ、リクナビのような問題が再発する恐れがある。

「21世紀の石油」とも呼ばれるデータを新たな収益源にしようと、多くの企業がビジネスを進めている。個人情報を取り扱う以上、重い責任が伴うことを自覚すべきだ。
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2019年12月06日

[毎日新聞] 中村医師の銃撃死 命尊ぶ信念引き継ぎたい (2019年12月06日)

志半ばであったはずだ。しかし、足跡はアフガニスタンの大地に深く刻み込まれている。

混乱が続くアフガンで長年にわたり人道支援に携わってきたNGO「ペシャワール会」の医師、中村哲さんが、現地で武装集団に銃撃され亡くなった。

並外れた信念と行動の人だった。

パキスタンで始めた医療支援をきっかけに、アフガンに軸足を移していった。アフガンは2000年に大干ばつに見舞われ、飢えと渇きが広がった。命を救うには清潔な水と食料が必要だった。

医療の枠を超え、井戸や農業用水路の建設に取り組んできた。掘った井戸は1600本、1万6500ヘクタールを沃野(よくや)に変えた。土木は独学だ。

アフガンの若者が武装勢力に加わる背景には、貧困がある。干ばつと戦火で荒廃した農業の再生による貧困解消が、負の連鎖を断ち切るという確信があった。

安倍晋三首相は「命がけでさまざまな業績を上げられた。本当にショック」と悼んだ。

しかし、首相が14年に集団的自衛権行使を巡り、海外NGOのための自衛隊任務拡大に言及した際、中村さんは「不必要な敵を作らないことこそ内閣の責任」とクギを刺した。武力による紛争解決に異議を唱えていた。

アフガンは治安の悪化に歯止めがかからない。01年の米同時多発テロ後、米軍とタリバンなど反政府武装勢力との戦闘が続く。

国連によると、昨年だけでも3804人の民間人が犠牲になった。人道援助団体も攻撃対象になり、今年1?8月で27人が死亡した。

治安悪化を理由に援助は先細る。銃撃事件を受け、さらに及び腰にならないか心配だ。両国が協力して事実関係解明に努めてほしい。

ペシャワール会は活動を継続する方針だ。国際社会はアフガンを見捨てずに、志を引き継ぐ責任がある。

訃報を受けてアフガンでも悲しみの声が広がっている。文化や伝統を尊重し、地域に根ざした支援で信頼を得てきたことの表れだろう。

中村さんはかつて、人々との相互信頼が武器よりも大事だと語っていた。その思いをいま一度、かみしめたい。
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[毎日新聞] 13兆円の経済対策 規模ありきのつけは重い (2019年12月06日)

政府が新たな経済対策を決めた。国と地方の財政措置が13兆円に上る大型対策だ。民間支出などを加えた事業規模は26兆円に達する。今年度補正予算と来年度予算に計上し「アベノミクスの加速」を図るという。

疑問の多い内容だ。最大の問題は危機的な財政にもかかわらず、規模ありきで策定されたことだ。安倍晋三首相が「しっかりした規模」を指示し、与党も大型対策を促した。

政府は米中貿易摩擦など海外リスクを強調するが、日本経済については消費増税後も「緩やかに回復している」との認識を変えていない。なのに規模を優先し、ばらまきになりかねない事業も詰め込んだ。

典型的なのが、マイナンバーカードを持っている人への買い物ポイント還元である。2万円の買い物に5000円分と破格の還元率だ。

増税対策で始めた別のポイント還元が来年6月末に終わるため、その後の消費落ち込みを防ぐ狙いだ。

だが、財政頼みの消費刺激策を続けていては、対策でうたった「民間主導の成長」と矛盾する。

普及率が低迷するカードを高額のポイントで広める狙いもあるが、筋違いの手法だ。

公共事業は6兆円規模と手厚く盛り込む。台風などの被害を踏まえ、防災を柱に据えたためという。

必要な堤防改修などは行うべきだ。ただメニューには道路や港湾、農業施設など幅広いインフラ整備が並び緊急性が乏しい事業も目立つ。

成長戦略として、経済のデジタル化や中小企業への補助金拡充も計上する。首相はこれまでも「アベノミクスの加速」と称し大型予算を組んできた。だが成果は限定的だ。今回も効果を見極めたのか疑問だ。

たび重なる財政出動で国と地方の借金は1100兆円を超えた。

今回の対策の財源は、公共事業などに使途を限る建設国債や、過去の予算の使い残しの剰余金などで賄い、赤字国債は発行しないという。

だが建設国債も赤字国債も同じ借金であることに変わりない。剰余金も本来、借金返済に充てるべきだ。対策に使う分、借金が減らず、将来世代に負担が先送りされる。

首相は対策を「未来への投資」と位置づけた。しかし、未来へのつけが膨らんでしまえば本末転倒だ。
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2019年12月05日

[毎日新聞] PISAで読解力低下 長文に触れる機会作りを (2019年12月05日)

3年ごとに行われる経済協力開発機構(OECD)の2018年国際学習到達度調査(PISA)で、前回調査に続き日本の子どもの読解力の低下傾向が示された。

文部科学省や学校現場は真摯(しんし)に受け止める必要がある。結果を詳しく分析し、学習改善につなげることが大事だ。

今回の調査には、79の国・地域から義務教育修了段階の約60万人が参加した。

PISAは日本の教育政策に大きな影響を与えてきた。03年調査でも読解力や数学の順位が大幅に低下し「ゆとり教育」が原因と指摘された。それを機に、全国学力テストが始まり、学習指導要領が改定されて授業時間が増えた。

その後、順位はいったん回復したが、前回は再び低下に転じて参加国・地域中8位となり、今回はさらに15位まで急落した。

とりわけ日本の正答率が低かったのは、ある程度長い文章から求められた情報を探し出したり、書かれていることの信用性を評価して事実なのか意見にすぎないのかを判断したりする問題だ。

専門家は、低下の原因として、スマートフォンやSNSの普及で子どもの読み書きやコミュニケーションが短文中心になっていることを挙げる。調査では、日本の子どもがゲームやインターネット上で友人らとやりとりするチャットに費やす時間の長さも指摘された。

一方で、小説や伝記、ルポルタージュ、新聞などまで幅広く読んでいる子どもは読解力が高いことが示された。長文に触れる機会を授業や課外活動で増やしていく工夫が求められる。

インターネット上にフェイクニュースがあふれ、真実を見抜く力が求められる時代だ。紙かデジタルかにかかわらず、文章を批判的に読み解く力の大切さはますます高まってきている。

英語教育の重視などで授業時間が増え、子どもも教師もゆとりがない中で、新たな試みをするには難しい問題もあろう。だが、読解力は学力の基本だ。

全体の学習プログラムを調整したうえで、文章を読む楽しみを根付かせたい。
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[毎日新聞] 日米貿易協定の承認 やはり平等とは言えない (2019年12月05日)

政府が今国会の最優先課題とした日米貿易協定が、きのうの参院本会議で与党などの賛成多数で承認された。米議会の承認は不要なため、来年1月1日に発効する見通しだ。

国会審議で最も問題となったのは、米国に押し切られて日本が不利になったのではないかということだ。日本は米国産牛肉や豚肉の関税引き下げを約束したが、米国は日本車の関税撤廃を見送ったからだ。

安倍晋三首相はトランプ大統領と合意した際「日米にウィンウィン」と強調した。協定で将来の車関税撤廃が前提になっているためという。

ただ協定には「撤廃についてさらなる交渉を行う」と玉虫色の文言しかない。日本車への追加関税を振りかざしたトランプ氏が撤廃に応じるとは考えにくい。政府は国会で説得力ある説明を行う必要があった。

だが首相らは協定の文言を繰り返すばかりで、米国から撤廃の確約を得たという明確な根拠を示さなかった。撤廃が決まっているのなら時期のめどぐらいは示せるはずだが、明言できなかった。これで日米が平等と主張するのは無理がある。

政府が公表した協定の経済効果も日本車関税の撤廃を前提にしている。野党は撤廃分を除いた試算の提出を求めたが、政府は拒んだ。

協定は国民生活に深く関わる。政府は都合の悪いデータも含めて公表し、国民の理解を得るのが筋だ。

大事な論点が多いのに審議時間は短かった。衆参両院合計で30時間を下回り、米国が参加していた3年前の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の2割程度にとどまった。

トランプ氏は来年の大統領選で成果をアピールするため、発効を急いでいる。トランプ氏の都合を優先し、国民への説明をないがしろにしたと受け取られても仕方がない。

自由貿易は本来、互いに主要な分野を開放し、経済の活性化を図るものだ。日本は、来年春以降とされる次の交渉で日本車関税の撤廃を明示するよう求めていくべきだ。

日本は米国抜きの11カ国によるTPP発効を主導したが、地域の要である米国だけ個別協定というのは極めて不自然だ。TPP参加国を増やせば、参加しない米国は国益を損なうだけだろう。米国に将来的なTPP復帰を促すことが重要だ。
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2019年12月04日

[毎日新聞] 日産の新体制が始動 ルノーと関係修復が急務 (2019年12月04日)

業績回復、ガバナンス(企業統治)改革、自動車連合を組む仏ルノーとの関係修復など、難題山積みの船出である。

日産自動車が内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)をトップに新経営体制を始動させた。前会長のカルロス・ゴーン被告が昨秋逮捕され、後継の西川広人前社長も不当報酬問題で辞任するなど経営が混乱した。

商社出身の内田社長を、車業界に精通したアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)と、日産生え抜きの関潤副COOが支える「3頭体制」だ。トップに権限が集中したゴーン時代の弊害を踏まえた。

ゴーン体制下では、拡大主義の下、現場に過大な目標が課され、達成のために値引き販売が横行した。新車開発もおろそかになり、顧客離れと収益悪化の悪循環を招いた。

内田氏は「(ゴーン時代は)できないことをできると言わせていた」と認めた。今後は過剰な生産拠点・人員の削減や、積極的な新車投入で業績回復を図るという。

再建のカギを握るのはルノーとの協業強化だ。内田氏も「アライアンス(提携)は重要」と述べた。だが、経営統合をめぐる対立などを背景に「日仏連合」は機能不全に陥っているのが実情だ。

提携は20年前にルノーが日産を資本支援して始まった。ルノーが日産株の4割超を握るが、日産はルノー株を15%しか持たない。一方、販売台数では日産がルノーを上回る。

この微妙な関係を制御していたのが、両社のトップを兼務したゴーン前会長だ。前会長の失脚後は、資本の論理を盾に統合を迫るルノーに日産が反発し、相互不信が深まった。

内田氏はルノーとの統合を否定するが、社内には疑心暗鬼が渦巻く。新経営陣選定にルノー会長が関与したためで、再建に向けた社員の士気への影響さえ懸念されている。

ただ、強気のルノーも収益面や技術開発は日産に依存する。部品調達や新車開発なども一体化した今、提携を解消できない事情は同じだ。

にもかかわらず、いがみ合ったままでは、自動運転など次世代車開発が遅れるばかりだ。日産新体制を機に、内田氏の言う「ウィンウィン(共存共栄)」を目指して関係修復を急がないと、生き残れなくなる。
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[毎日新聞] 「桜を見る会」と首相 逃げるほど疑惑が深まる (2019年12月04日)

このまま説明を尽くさずに、臨時国会を終えるつもりなのか。

2日の参院本会議は「桜を見る会」をめぐり、次々と浮かぶ疑問に安倍晋三首相がどう答えるかが注目された。しかし、首相は内閣府が招待者の名簿を廃棄したことを理由に追及をかわす答弁に終始した。

悪質なマルチ商法で知られるジャパンライフの元会長が2015年に招待されたのは首相の推薦枠だった疑いが強まっている。

首相は元会長と「個人的な関係は一切ない。妻も面識はない」と明言した。では、誰がどのようにして首相の推薦枠を使ったのかが問題になる。しかし、首相は個人情報だとして確認を拒んだ。

元会長側が同社の宣伝チラシで招待状を公開しているのだから「個人情報」は理由にならないはずだ。

元会長への招待状が同社に信用を与え、結果としてマルチ商法の被害拡大に加担した形にもなっている。

首相夫妻の関与を否定するのなら進んで招待の経緯を解明すべきだ。名簿が残っていなくても、自身の事務所や内閣府などに調べさせることはできる。なぜ首相は疑惑を晴らす努力をしないのか。

今年の桜を見る会にも反社会的勢力の関係者が参加した疑惑がある。事実確認には名簿データの復元が近道だ。ところが首相は「復元は不可能」と断定的に答弁した。

データは外部のサーバーで管理していたという。そのような場合、削除の仕方によっては履歴をたどって復元できる可能性もあるとされる。

復元を試みる姿勢が首相に見えないのでは、不都合な事実を隠すために廃棄を急いだのではないかとの疑念に拍車をかけてしまう。

首相の後援会が高級ホテルで開いた前夜祭の経費についても不透明さが残ったままだ。「後援会としての収入・支出は一切ない」との説明を立証する書類は示されていない。会費5000円で何人が参加したのか、首相からホテル側に明細書の発行を求めないのは解せない。

公金で催される政府行事が首相ら政権党の支持者をもてなす事実上の選挙活動に利用されていた疑惑だ。

首相がその気になれば真相解明が進むのに、説明から逃げるから、さらに疑惑が深まる。
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2019年12月03日

[毎日新聞] 東西冷戦終結から30年 対立を繰り返さぬために (2019年12月03日)

米国のブッシュ(父)大統領とソ連のゴルバチョフ共産党書記長が東西冷戦の終結を宣言したマルタ会談から30年を迎えた。

第二次世界大戦後のソ連の拡張政策と米国の封じ込め政策の対立は、世界を東西2陣営に分断し、一時は「核戦争」の瀬戸際に追い込んだ。

民主政治と資本主義が独裁政治と共産主義に勝利し、世界が憎悪と恐怖から解放され、永久平和が訪れると信じられた歴史の転換点だった。

ブッシュ氏は冷戦後の目指すべき「新世界秩序」をこう表現した。

「法の支配が弱肉強食の論理に取って代わり、国々が自由と正義への共通の責任を認識し、強国が弱小国の権利を尊重する新しい世界」

対立から協調へ――。その高い理想を世界は実現できただろうか。


グローバリズムの明暗
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冷戦後の国際秩序の柱となった一つは国際協調主義だろう。

イラクがクウェートに侵攻した湾岸危機では、国連安全保障理事会が朝鮮戦争後初めて一致して侵略に対抗し、本来の機能を取り戻した。

地域紛争での国連平和維持活動(PKO)や地球温暖化への取り組みなど世界規模の課題に国連が主導的な役割を果たす機会は増えた。

もう一つは、グローバリズムだ。人、モノ、カネ、情報が国境を越えて移動し、それを支える国際的な制度や機関が整備された。

グローバル化によって多文化社会が生まれ、自由貿易により世界経済は繁栄し、相互依存が深まり、世界平和につながると考えられていた。

これを主導してきたのが超大国の米国である。大国同士の紛争の危機は遠のき、開発途上国の貧困は冷戦時に比べて大きく減った。

ただし、こうしたメリットの半面、デメリットも浮き彫りになったのが30年を経た世界の現状だろう。

グローバル化のひずみは経済格差と移民への不寛容な風潮をもたらした。世界最大の移民大国の米国の分断はとりわけ深刻だ。

グローバリズムへの反動からナショナリズムが世界のあちこちで噴き出し、協調の枠組みを揺るがす要因になっている。

自由と民主主義を共有する先進国に迎えられたロシアがウクライナのクリミア半島を軍事的に掌握し、強権主義的な姿勢を目立たせている。

冷戦後に台頭してきた中国が経済力と軍事力を蓄え、人工知能(AI)などを駆使した「デジタル独裁」が世界を脅かすようになった。

新たな形の国家の融合と期待された欧州連合(EU)は通貨危機と難民危機で統合に亀裂が入り、英国の離脱決定へとつながった。

冷戦後の世界を率いた米国も同時多発テロを受けて単独行動に走り、協調より「米国第一」を優先する。

リベラルな国際秩序は傷み、核軍拡競争の懸念が再び世界に広がる。

米中、米露の新たな大国の対立は「新冷戦」とも呼ばれる。だが、グローバル化した世界では冷戦時のブロック化や封じ込めは通用しない。

網の目のように張り巡らされた相互依存の貿易体制を断ち切れば、自国の利益まで損なう。「鉄のカーテン」を下ろす隙間(すきま)はどこにもない。


自由な国際秩序維持を
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世界はより大きな歴史の転換点に立っていると認識すべきだ。

21世紀の国際秩序を見通すのは難しい。だが、最も避けるべきは、大国が独自のルールを振りかざし、世界を混乱に陥れることだ。トランプ米大統領、習近平中国国家主席、プーチン露大統領はいずれも強権的だ。その懸念は消えない。

大国が独善的な態度で振る舞えば、自由で公正な国際秩序は崩壊する。強国は弱小国を意のままにしようとするだろう。

現在の国際秩序の源流は約100年前の第一次世界大戦にある。欧米や日本は国際連盟を創設し、不戦条約という平和の枠組みを構築した。

第二次世界大戦や東西冷戦の対立を経験しながらも、軍縮や自由貿易体制など、国連や多国間による協力は強化されてきた。

国際協調の維持は日本にとっても重要だ。果たすべき役割は大きい。

同盟国である米国を基軸に中露とも良好な関係をつくろうとしている。大国が競争しながら国際社会で共存を図るよう促すこともできるだろう。

地球規模の課題に率先して取り組む必要もある。日本は欧州などと協力して大国と小国をつなぎ、国際協調を揺るぎないものにすべきだ。
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2019年12月02日

[毎日新聞] 五輪からロシア除外へ 薬物頼りの体質と決別を (2019年12月02日)

東京五輪・パラリンピックからロシア選手団が除外される可能性が強まっている。

世界反ドーピング機関(WADA)は、ロシアから提出された検査データに多数の改ざんがあったと判断した。このため、主要国際大会において、今後4年間はロシアの出場を停止させる処分案を発表した。

処分が決まれば、2022年北京冬季五輪・パラリンピックにもロシア選手団は出場できず、国際大会開催や招致、国旗使用も禁じられる。

ロシアの薬物疑惑は14年、ドイツ公共放送がロシア陸上界の組織的不正を報じて明るみに出た。WADAはその後、ロシア反ドーピング機関を資格停止にし、国ぐるみの不正と断定した。

16年リオデジャネイロ五輪にはロシア選手団として参加したものの、ドーピングが疑われる100人以上が排除され、パラリンピックは全員が出場停止となった。18年平昌冬季大会では五輪、パラリンピックとも、潔白が証明された選手に限り「個人資格」での出場が許された。

来年の東京大会までには処分が解け、ロシア選手団が復帰するとみられていた。しかし、WADAがロシアの機関に対し、所有する全データを提出させたところ、次々と改ざん箇所が見つかった。

禁止薬物の使用はスポーツの公正さを踏みにじり、選手の肉体と精神を荒廃させる。WADAからの度重なる注意や処分にもロシア側に改善の兆しがなく、さらにデータの不正まで犯していたのは深刻だ。

最終的には東京大会も個人資格での参加のみ容認されるとみられる。だが、米国反ドーピング機関からは「ロシア選手全員を排除すべきだ」との意見が上がっている。潔白を本当に証明できるのかという疑義だ。

国際オリンピック委員会は昨年1月、政府や国際競技団体から独立したドーピングの国際検査機関を設立した。ロシアについては、この機関が中心となって徹底した調査を進めるべきだ。東京の組織委員会も、不正を許さない大会運営のために、関係機関と連携する必要がある。

ロシアは五輪のメダル順位で常に上位を争う。スポーツ大国の立場を自覚し、薬物に頼る体質と決別しなければならない。
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