2017年11月18日

[朝日新聞] 所信表明演説 首相こそ「建設的」に (2017年11月18日)

建設的な議論を行い、政策をともに前に進めていこう――。安倍首相はきのうの所信表明演説で、野党に呼びかけた。

ならば首相にも求めたい。首相こそ、この特別国会での議論に建設的に臨むべきである。

忘れたわけではあるまい。

この特別国会は6月に通常国会を閉じて以降、約5カ月ぶりの本格論戦の舞台である。

この間、野党は憲法に基づき臨時国会を求めてきたが、首相は3カ月も放置したあげく、召集直後に衆院解散の挙に出た。

森友・加計学園をめぐる問題で、国民に約束した「丁寧な説明」を今度こそ果たす重い責任が首相にはある。

だが、首相や与党のふるまいは「建設的」とは程遠い。

そもそもこの特別国会は実質審議も所信表明演説もせず、約1週間で閉じる方針だった。

野党の要求で会期は12月9日までとなったが、所信表明演説は約15分と昨年の臨時国会の半分の短さだった。

内容もあっさりしていた。

北朝鮮情勢の緊迫と少子高齢化を「国難」と強調し、トランプ米大統領の来日など外交成果を誇る。その大半が、衆院選や一連の外交行事ですでに語ったことの繰り返しに過ぎない。

自民党は、野党に手厚かった国会審議の質問時間の配分を変え、野党の割合を減らす要求を強めている。実現すれば、行政府に対する立法府のチェック機能が弱体化しかねない。

先の通常国会では、森友・加計や陸上自衛隊の日報問題で野党の追及を受け、内閣支持率が下落した。その二の舞いを避けるためにも、野党の質問の機会を少しでも削りたい。そんな狙いがうかがえる。

それが首相の「建設的な議論」のあり方なのか。むしろ首相は質問時間の見直しを直ちに撤回するよう、党総裁として自民党に指示することが筋ではないか。

国会では来週は代表質問、再来週には予算委員会がある。

森友・加計問題のみならず、北朝鮮情勢や少子高齢化対策など、与野党が論じ合うべきテーマは数多い。

野党は、自民党の質問時間削減要求をはね返すべく結束する必要がある。あわせて各党で質問内容を事前に調整し、似た質問は避けるなど工夫を凝らし、議論を活性化させてほしい。

巨大与党に「多弱野党」が対峙(たいじ)する。その最初の場となるこの国会のありようは、年明け以降の国会運営にも影響する可能性がある。国会審議を形骸化させてはならない。
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[朝日新聞] 政治家の言論 その荒廃ぶりを憂える (2017年11月18日)

政治は言葉だ、といわれる。みずからの理念を人の心にどう響かせるか。それが問われる政治の営みが、すさんでいる。

加計学園の獣医学部問題を審議した衆院文部科学委員会で、聞くに堪えぬ発言があった。

他の政党の議員3人を名指しし、日本維新の会の足立康史氏が「犯罪者だと思っています」と述べた。相応の論拠を示さないままの中傷である。

各党から抗議されると「陳謝し撤回したい」とすぐに応じた。その軽薄さに驚く。言論の府を何だと思っているのか。

憲法は議員の国会内での言動に免責特権を認めている。多様な考えをもつ議員の自由な言論を保障するためだ。低劣な罵(ののし)りを許容するためではない。

これまでも、他党に対し「アホ」「ふざけるなよ、お前ら」などと繰り返し、懲罰動議を受けてきた人物である。

一向に改めないのは、黙認する雰囲気が国会内にあるからではないか。

同じ委員会で、朝日新聞への批判もした。「総理のご意向」などと記された文部科学省の文書を報じた記事について「捏造(ねつぞう)だ」と決めつけた。

自身のツイッターでは、「朝日新聞、死ね」と書いている。

加計問題の報道は確かな取材に基づくものだ。記事や社説などへの意見や批判は、もちろん真摯(しんし)に受け止める。

だが、「死ね」という言葉には、感情的な敵意のほかにくみ取るものはない。

昨年、「保育園落ちた日本死ね!!!」の言葉が注目されたが、それは政策に不満を抱える市民の表現だ。国会議員の活動での言動は同列にできない。

政治家による暴言・失言のたぐいは、以前からあった。最近は、政権中枢や政党幹部らからの、とげとげしい言葉が増えている。

政権与党が、論を交わす主舞台である国会を軽んじる風潮も一因だろう。昨年は首相周辺が野党の国会対応を「田舎のプロレス」「ある意味、茶番だ」と切り捨てた。

国会に限らず、政治の言葉が、異論をとなえる者を打ち負かすだけの道具にされている。

安倍首相は7月の東京都議選で、演説にヤジを飛ばした人々に「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と叫んだ。

「犯罪者」「死ね」「こんな人たち」。国策に重責を担う政治家が論争の相手を突き放し、対立と分断をあおる。

そんな粗雑な言動の先にあるのは政治の荒廃であり、それに翻弄(ほんろう)される国民である。
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2017年11月17日

[朝日新聞] 日本人拉致 落胆の日々に終止符を (2017年11月17日)

13歳の横田めぐみさんが下校途中に新潟市内で拉致されて、40年の歳月が過ぎた。

母の早紀江さんが節目の日の会見で、老いを重ねる自らを踏まえ、「『めぐみちゃんだ』とわかる間に1時間でもいいから会いたい」と語ったのは、心の底からの叫びだろう。

日本政府が認定する被害者は17人だが、拉致された疑いがある特定失踪者はさらに多い。被害者やその帰りを待ち続ける家族たちにとって、どんなに残酷で長い歳月だったろうか。

これまで帰国できたのは5人にすぎない。認定被害者の残る12人について、北朝鮮は8人死亡、4人は未入国とし、問題は解決済みだと主張してきた。

だが、きっちりとした被害者の安否確認や真相究明は進まず、解決などしていない。

拉致は国家的犯罪であり、明白な反人道的な行為だ。金正恩(キムジョンウン)氏は父の故・金正日(キムジョンイル)氏が犯行を認め、謝罪したことの意味をよく考え、国の責任者として誠実な対応をとるべきである。

核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対し、国際社会はいま、制裁を強めている。中でも日本は圧力強化を先頭に立って呼びかけている。だが、拉致問題は時間との闘いだ。解決を図るためにも、対話が欠かせない。

結成から20年を数える家族会が2月、日本政府の独自制裁の解除という見返りも条件に実質協議を進めてほしい、と初めて訴えたのも切実さの表れだ。

これまでを振り返ると、北朝鮮は米国との関係改善の糸口が見えない時、政治的な打開策として日本との協議を再開させたことが多かった。

米朝関係が冷え込む今、軍事挑発に対しては国連制裁の履行を進めつつ、拉致などの人道問題ではもっと柔軟な交渉を考えるべきではないか。人的交流などでの制裁緩和も視野に、北朝鮮を動かす工夫がほしい。

日朝両政府は3年前、日朝平壌宣言を元に、拉致被害者らの再調査などを含むストックホルム合意を発表した。いまもなお完全に白紙化されたとは言えない状況だけに、合意をうまく活用する道を模索すべきだ。

安倍政権は拉致問題を最重要課題と掲げるが、肝心の具体的な成果はまだ何もない。

人権問題を扱う国連の委員会では今月、北朝鮮の拉致批判を強める非難決議が出された。安全保障政策で連携する米国や韓国も、拉致問題に関する日朝協議には理解を示している。

国際的な世論の支持を背景にした、結果にこだわる外交が、日本政府に求められている。
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[朝日新聞] 憲法70年 改憲ありきの姿勢では (2017年11月17日)

自民党が憲法改正推進本部の会合を開き、改憲に向けた議論を再開した。

衆院選で自民党は、自衛隊の明記▽教育の無償化・充実強化▽緊急事態対応▽参院の合区解消の4項目を公約にうたった。公明党とあわせた与党で、改憲発議に必要な3分の2を上回る議席を獲得した。

与野党を問わず、国会議員の改憲志向は強まっている。本紙と東大の調査では、当選者の82%が改憲に賛成姿勢だった。

一方で、国民の意識と大きなズレがあるのも確かだ。

本紙の今月の世論調査で「首相に一番力を入れてほしい政策」を聞くと、社会保障32%、景気・雇用20%、教育15%などが高く、憲法改正は6%にとどまった。

自民、公明両党にも温度差がある。公明党の山口那津男代表は最近、こう指摘した。

「発議は、国会内の多数派工作で可能な場合もあるが、国民投票でぎりぎりの過半数では大きな反対勢力が残ってしまう。国民の憲法としては不幸な誕生になる。発議の3分の2の背景には、それ以上の国民の支持があるくらいの状況が望ましい」

見識だろう。

国会による発議にこぎつけたとしても、最終的に改憲の是非を決めるのは主権者である国民による投票だ。

国民の納得が不十分なまま強引に発議に持ち込めば、国民投票の結果がどうあれ、国民の間に深刻な分断をもたらす恐れさえある。

憲法のどこに、どんな問題があるのか。その問題は憲法を改めなければ解消できないのか。他の政策課題より先に、いま改憲を急ぐ必要性はあるのか。

まず衆参両院の憲法審査会での超党派の議論が重要だ。

少数意見を排除せず、丁寧な議論を積み重ねる。少なくとも野党第1党の賛成をえる。

手順をふんだ合意づくりの努力を尽くすことしか、国民の幅広い納得をえる道はない。

安倍首相は5月に憲法への自衛隊明記を訴え、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と意欲を示したが、夏以降は「スケジュールありきではない」と述べている。

当然の姿勢だろう。

何よりも大事なのは、国民の多くがその改憲は必要だと理解し、同意することである。

改憲ありきの姿勢は厳に慎むべきだ。

ましてや安倍氏自身の首相在任中の施行を視野に、期限を区切るようなやり方では、国民の合意は広がらない。
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2017年11月16日

[朝日新聞] 相撲界の暴力 事件生む素地の解明を (2017年11月16日)

何度問題を繰りかえしても、懲りない。そんな組織と思われても当然だろう。大相撲で再び暴力事件がおきた。

しかも横綱による傷害容疑事件である。秋場所で優勝した日馬富士が同じモンゴル出身の幕内、貴ノ岩にけがをさせた。

日頃の鍛錬で養った力を土俵の外で暴力として用いるのは、力士の資格が問われる事態だ。大相撲をつかさどる日本相撲協会の責任は重い。

事件は10月下旬、巡業先の鳥取市でおきた。モンゴル出身力士らの懇親会で、横綱が酒に酔い、暴力をふるったという。横綱はおととい、負傷させた事実をメディアの前で認めた。

被害届を受けた鳥取県警は、捜査を始める。九州場所のさなかであっても、関係者は全員、聴取に全面協力すべきなのは言うまでもない。

協会は、法曹関係者らによる危機管理委員会を立ち上げた。協会自ら真相解明を尽くすとともに、厳正な処分を下さねばならない。

不明な点も多い。「右中頭蓋底(ずがいてい)骨折、髄液漏の疑い」で全治2週間と診断されたが、貴ノ岩は事件のあとも土俵に上がり、行事などにも参加していた。

もちろん、けがの症状が時間を経て出ることもある。だが、貴ノ岩は事件の数日後に警察に被害届を出していたのに、事実が伏せられていたのはなぜか。協会は今月上旬に警察の問い合わせを受けて知ったというが、その後、どう対応したのか。

社会的に許されない身内の行動に対する、協会の鈍い体質が変わっていない疑いが濃い。

危機管理委は、そうした相撲界の土壌も追及すべきだ。

時津風部屋で07年、当時の師匠や力士に暴行を受けた若手が死亡した事件は記憶に新しい。10年には横綱朝青龍が知人への暴行の責任をとり引退した。

その後も、髪を結う職人への親方による暴行や、門限を破った力士を師匠がゴルフクラブで殴った例など問題が続いた。

そのたびに協会は力士や親方への研修会などを開いて再発防止の姿勢を見せたが、その効果は乏しかった。

大相撲は、今年の初場所後に稀勢の里が横綱になってから、本場所の連日満員が続く。人気の回復に協会も力士も慢心があったということだろう。

相撲界には、血気盛んな若者を指導する難しさを言う人もいる。しかし、力でねじ伏せる指導が、あしき伝統として受け継がれているのではないか。

暴力が続く素地を解明し、根絶する意識改革こそ必要だ。
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[朝日新聞] 加計問題審議 行政監視を担う使命 (2017年11月16日)

衆院選から3週間余。争点の一つだった加計学園の問題をめぐる国会審議が、きのう衆院文部科学委員会で行われた。

衆院選で勝った安倍首相は強い権力を再び手にした。だからこそ、行政府を監視する立法府の役割はさらに重みを増す。

その使命には本来、与野党の違いはないはずだ。

だが自民党から質問に立った義家弘介氏は、8月まで学園の獣医学部新設のプロセスに関わった文科副大臣だった。先の通常国会では政府側の答弁者を務めた、いわば当事者だ。

その義家氏が強調したのは一連の政府手続きの正当性だ。部下だった文科官僚と歩調をあわせ、「きちっと手続きを踏みながら歩んできた」と主張した。

際だったのは政府と与党の一体性である。

一方、立憲民主党の逢坂誠二氏は、国家戦略特区の審査過程が不透明だと追及した。

加計の計画が獣医学部新設を認める要件を満たしていると、だれがどう判断したのか。記録に残っているのか。

政府側は「一つひとつの詳細は残っていないが、会議の結論は(記録に)残っている」と具体的な根拠は示さなかった。

希望の党の山井和則氏は、首相と学園の加計孝太郎理事長がゴルフや会食を重ねていたことを改めて指摘。首相は特区基本方針で審議や議決に関われない「利害関係者」に当たるのではないかとただした。

与党に行政監視の役割を期待できないなら、野党の役割はいっそう重要だ。だが、その野党の質問時間が十分に確保されなくなるかもしれない。

衆院選の大勝を受けて、自民党が野党の質問時間を削る要求を強めているからだ。

きのうの文科委員会をめぐっても、野党は近年の実績をもとに「野党8、与党2」の割合を求めたが、自民党は「与党5、野党5」を主張した。

最終的に「野党2、与党1」で折り合ったが、野党による政府追及の場を少しでも減らしたい与党の狙いは明らかだ。これでは国会による行政監視そのものが弱体化しかねない。

数におごった自民党の慢心にほかならない。これが衆院選で首相が国民に誓った「謙虚」で「真摯(しんし)」な政治のあり方なのか。直ちに撤回すべきだ。

政府は獣医学部新設を認可したが、そこに首相や周辺の意向が働かなかったのか。疑問は解消されていない。

この特別国会で、首相みずから十分な説明責任を果たすべきなのは当然のことだ。
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2017年11月15日

[朝日新聞] 小池代表辞任 一連の騒動は何だった (2017年11月15日)

旗揚げからわずか約50日。一連の新党騒動は何だったのか。あきれる人も多いだろう。

希望の党の小池百合子代表がきのう辞任した。新執行部の発足を機に、党運営は今後、国会議員に任せ、自身はサポート役に回るという。

東京都知事である小池氏が、国政政党の代表を兼ねることには当初から懸念の声もあった。それでも国会議員主導の新党構想を「リセットして私自身が立ち上げる」と乗り出した。

一時は吹くかに見えた小池旋風も、自ら持ち出した「排除の論理」で急速にしぼみ、衆院選では「排除された側」の立憲民主党に野党第1党を譲った。

党の支持率は低迷が続く。本紙の今月の世論調査では3%にとどまり、立憲民主党の12%に水をあけられている。

衆院選を勝ち残った議員は旧民進党出身者ばかり。自民党出身の小池氏が指導力を発揮しにくいとの事情もあろう。

党勢回復の方向性を見失い、もはや代表を続ける意義を見いだせなくなったのだろうか。

だが、小池氏には忘れてならない責任がある。衆院選で「安倍1強を倒す」と訴え、比例区で967万の票を得たことだ。小池氏の指導力に期待した人も多かっただろう。この票の重みをどう考えるのか。

小池氏が政党代表を辞めるのは、この半年弱で2度目だ。

夏の都議選前には「改革のスピードを上げる」として、地域政党「都民ファーストの会」の代表に就任。選挙で大勝すると「知事に専念する」とわずか1カ月で辞任した。

2カ月半後、衆院選を前に再び「(改革の)スピード感を確保するには国政関与が必要」と希望の党代表に。そしてまた、その立場を放り出す。

新党設立、代表辞任の繰り返しが政党や政治への国民の不信をさらに深めることを憂える。

小池氏という看板を失った希望の党は立て直しが急務だ。党内では旧民進党と同様に、安全保障法制などをめぐる路線対立が整理されないままだ。

希望の党は何をめざす党なのか。まず玉木雄一郎・新代表のもと、衆院選は小池氏主導の急ごしらえで済ませた政策論議をいちから始めるしかない。

衆院選で圧勝した自民党は、野党の質問時間の削減を求めるなど、早くも慢心が見える。

野党なのか、与党への協力もあり得るのか、選挙戦で小池氏はあいまいにしてきた。

これから本格化する国会論戦にどんな立場で臨むのか。玉木執行部の選択が問われる。
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[朝日新聞] 米アジア政策 ここでも自国中心か (2017年11月15日)

トランプ米大統領が10日にわたる初のアジア歴訪を終えた。

目立ったのは、やはり「自国第一主義」だった。アジア太平洋地域の安定と繁栄のため、どう包括的な秩序づくりにかかわるのか。その決意や責任感が見えなかったのは残念である。

ベトナムで演説したトランプ氏は「自由で開かれたインド太平洋」構想を掲げ、地域に関与していく方針はみせた。

しかし、大半は経済問題にあてられ、安全保障にはほとんど触れなかった。中国の強引な海洋進出への言及もなかった。

ベトナム首脳との会談では、中国を念頭に「仲裁や仲介ができるなら、知らせてほしい」と持ちかけた。当事者であることを忘れたような発言である。

米国の重みが目減りし、中国への配慮が強まる。その流れは東南アジア諸国連合(ASEAN)の会合にも表れ、南シナ海問題の議論は低調だった。

各国は先行きの不透明感を抱いているだろう。アジアは世界経済の牽引(けんいん)役といわれながらも、まだ政治的に安定しない国が多い。その地域に米国がどう臨むのか、はっきりとした指針が見えない。

オバマ政権は米国を「太平洋国家」と位置づけ、アジア重視を宣言した。外交、軍事、経済の重心を欧州・中東などの大西洋から移す方針を示した。

重視したのは多国間の枠組みだった。外交や安全保障ではASEANとの連携強化であり、経済では環太平洋経済連携協定(TPP)だった。

しかしトランプ氏はTPPを離脱したまま、アジアの経済統合の動きに関心を示さない。今回の歴訪では「私は常に米国を最優先する」とし、二国間交渉を重んじる考えを力説した。

実際、いくつかの会談では北朝鮮など地域問題への取り組みより、巨額の商談といった「成果」が強調された。

目に見える利益は、米国内で支持を得やすい。だが、地域の基盤となるべき規範づくりなどの責務を米国が怠れば、アジアの未来は不確実さを増す。

米外交のもう一つの柱だった自由や法の支配などの理念も、置き去りにされたのは深刻な問題だ。中国やフィリピンなどの民主化や人権について、トランプ氏は素通りした。

「インド太平洋」は本来、価値観を共有する国々の連携を強めるものだろう。その構想を共に掲げる日本政府は、トランプ政権に粘りづよく説くべきだ。理念に基づく多国間の協調枠組みづくりこそ、アジア太平洋の持続的な発展の道だ、と。
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2017年11月14日

[朝日新聞] ヘイト規制 差別許さぬ意識深化を (2017年11月14日)

人種、民族、宗教などをめぐる憎悪の言動を防ぐには、どうすべきか。地域ごとの試みで、社会の意識を深めたい。

このほど川崎市が公表した新たな取りきめが注目されている。いわゆるヘイトスピーチを規制するためにつくったガイドライン(指針)である。

ヘイトスピーチの恐れがある場合、公園など公的施設の使用を認めない。使用許可を出した後でも、恐れがあるとわかれば取り消すとしている。

申請者の活動歴やネットでの情報発信などをもとに判断するという。実際に不許可などにする時は、弁護士らでつくる第三者機関に諮り、結論を出す。

これまでも大阪市などで先駆的な動きはあったが、公的施設の利用を事前に規制する基準を盛った指針は初めてという。

ヘイトスピーチをめぐっては昨年夏に対策法が施行された。だが、罰則のない理念法であるため、実効性のある対策をどうとるかは模索が続いている。

大阪市は法成立に先んじて条例をつくり、問題行為をした者の名称を公表することにした。その後、ネット上の動画をヘイトスピーチと認定したが、投稿者名などの情報は得られず公表には至っていない。

川崎市も昨年、特定団体の公園使用を、市の判断で許可しなかったことがある。これまでは市長と職員が個別に判断してきたが、今回の指針により一定の基準が確保される。

ただ一方で、こうした対策の悩みどころは、表現の自由との兼ねあいだ。

差別的言動を防ぐ目的でできた規制が正当な表現の制約につながったり、時の権力への批判を封じる道具に使われたりすることは断じて認められない。

その意味でも、第三者機関に人権問題の専門家を含めるといった配慮が必要だろう。また、結論にいたる過程の透明性も確保されねばなるまい。

最近のヘイトスピーチは、民間の施設で少人数で集まり、それをネットで中継するなど巧妙化している。街頭での行動だけでなく、ネットの投稿や書き込みに、今後どう対応するかといった課題も少なくない。

差別をなくすための方策は常に、正解があるわけではない。人間の多様さを認め、尊重するという基本的な人権の感覚を社会でどう養い、強めるかという恒久的な問いかけが必要だ。

言葉の暴力に対しては、社会全体で拒絶する姿勢が欠かせない。自治体や組織、企業など、それぞれの立場で問題意識をもち、対策を考えるほかない。
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[朝日新聞] 日中首脳会談 接点見いだす努力こそ (2017年11月14日)

アジアの安定に向けて日中が役割を果たせるよう、両首脳の粘り強い努力を期待する。

安倍首相が中国の習近平(シーチンピン)国家主席と訪問先のベトナムで会談し、関係改善で一致した。

象徴的なのは、この首脳会談を「日中関係の新たなスタートになる会談だ」と位置づけた習氏の言葉である。

中国共産党大会を終えた習氏と、衆院選で圧勝した安倍氏。ともに政権基盤を固めた両首脳にとって、長く停滞してきた日中関係を仕切り直す環境が整ったということだろう。

この機運を生かしたい。一度も実現していない両首脳の相互訪問など日中関係の進展はもちろん、アジアの安定に向けた両国の協力につなげてほしい。

いま日中が角を突き合わせている場合ではない。喫緊の課題は、北朝鮮の核・ミサイル開発による挑発にどう歯止めをかけるかだ。

会談で両首脳は、国連制裁の完全な履行に向けた緊密な連携を確認した。

北朝鮮の最大の貿易相手国である中国の協力がなければ、制裁の実効性は保てない。中国もこれ以上、北朝鮮への制御が利かなくなる事態は避けたい。

ただ、対話重視の中国と、圧力重視の日本とでは力点に違いもある。米韓、さらにはロシアと歩調をあわせて北朝鮮の非核化をどう実現するか、日中間の綿密な調整が求められる。

先の日米首脳会談で共通戦略として打ち出した「自由で開かれたインド太平洋戦略」も、中国のシルクロード経済圏構想「一帯一路」と競り合うばかりではなく、日中で協力の余地がないかを検討すべきだ。

中国が重視する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)も同様だ。立場に違いはあっても、多国間の枠組みをめざす日中の方向性は一致している。接点を見いだす努力が必要だ。

一方、東シナ海や南シナ海での中国の強引な海洋進出は地域に影を落とし続けている。

中国側によると、習氏は会談で「互いに脅威にならないという戦略的共通認識を体現することを希望する」と強調した。ならば中国も、脅威になるような行動をとるべきではない。

安倍首相はきのう李克強(リーコーチアン)首相ともフィリピンで会談。日中の関係改善を印象づけた。

日本にとって、日米同盟や日米韓の連携は欠かせないが、それだけで十分ではない。

アジアの責任ある二つの大国が認識と行動をともにする。一歩一歩の努力の先にこそ、地域安定への道は見えてくる。
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2017年11月12日

[朝日新聞] 米抜きTPP 「多国間」を粘り強く (2017年11月12日)

米国の離脱に揺さぶられた環太平洋経済連携協定(TPP)は、漂流という最悪の事態を何とか避けられそうだ。

米以外の参加11カ国の閣僚会合が開かれ、新たな協定について大筋で合意した。今後、最終合意を経て、過半数の6カ国が議会承認などの国内手続きを終えれば発効する。

土壇場でカナダが反発し、首脳レベルで合意を確認できなかったのは残念だ。カナダも加わるよう、調整を続けてほしい。

11カ国は、米国の主張で盛り込まれたルール分野の一部項目について、米国の復帰まで凍結することにし、その対象を協議してきた。医薬品データの保護期間など20項目を凍結することで折り合ったが、国有企業の特別扱いを禁じる規定などについて検討を続けるという。作業を急がねばならない。

米国が抜けたとはいえ、11カ国は国内総生産(GDP)で世界の約13%を占める。世界のあちこちで保護主義的な動きが強まるなか、今回の合意が持つ意味は小さくない。

問題は、米国をどうやって呼び戻すかだ。

「米国第一」を掲げ、自国の利益を反映させやすい二国間協議を重視するトランプ大統領の姿勢はなかなか変わりそうにない。一昨日の演説でも、多国間の自由貿易協定(FTA)には入らないとし、「公正で互恵的な貿易の原則に従う、インド太平洋の国と二国間の協定を結んでいく」と述べた。いずれ、日本にも一対一の交渉を求めてくるだろう。

しかし、二国間の協定では、ヒトやモノ、カネ、情報が活発に行き交うグローバル化に十分に対応できない。電子商取引などの新たなルールを広げるためにも、多国間の枠組みが理にかなっているし、米国の利益にもなる。そう説き続けることは、日本の役割である。

世界貿易機関(WTO)での交渉が停滞するなか、貿易自由化の主役はTPPのようなメガFTAに移っている。日本は欧州連合(EU)とも経済連携協定を結ぶことで大枠合意した。

それに続く今回の合意をテコに、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉も加速したい。RCEPには中国や韓国、ASEAN諸国、インドが参加しており、成立すれば広大な自由貿易圏ができあがる。

その時、まだ多国間の枠組みの外にいることを、米国は選ぶだろうか。

保護主義に対抗するには、粘り強く自由化の輪を広げていくしかない。
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[朝日新聞] 子育て支援 「すべて無償化」の前に (2017年11月12日)

安倍首相が衆院選で掲げた「子育て世代への投資の拡充」の具体策を巡る議論が始まった。注目を集めているのが、幼児教育・保育の無償化だ。

だが、待機児童は2万人を超え、受け入れ施設が足りない状況が続く。保育士不足も深刻だ。財源が限られるなかで、施設利用者の負担を軽くする無償化が最優先の課題なのか。立ち止まって考えたい。

無償化論議で焦点となっているのは、3?5歳児への支援のあり方だ。首相は「すべての子どもたちの幼稚園や保育園の費用を無償化する」と公約した。

いまは、国の基準を満たす認可施設の利用者を対象に、生活保護世帯などに限って無償化を実施している。このため、政府は認可施設で無償化の対象を広げる方針を示し、必要な財源を年に約7千億円と見積もった。

しかし、希望がかなわず、やむなく認可外の施設を利用する人たちとの間で不公平感が生まれるとの批判が噴出。政府は、認可外も一部対象にする方向で軌道修正を始めたようだ。

保育所の利用料は、認可外の方が総じて割高だ。認可外を利用する人たちからすれば、負担が少ない認可施設の利用者だけが無償化されることに納得がいかないのは当然だろう。

ただ、その不公平感の原因を突き詰めると、希望しても認可施設に入れないという現状に行き着く。無償化を認可外に広げても、認可外施設にも入れない人たちがいる。根本的な解決にはならない。

いま優先すべきなのは、認可施設を希望する人がそろって利用できるように、受け皿を用意することだ。

保育所の利用者の中には、所得が多い世帯もある。認可施設では、利用料は所得が増すほど高くなるように設定されている。全員を無償にすれば、支援の必要性が乏しい高所得者が多く恩恵を受けることにもなる。無償化は、まずは家計の苦しい世帯を対象にするのが現実的ではないか。

課題はほかにも山積みだ。

一人ひとりの子どもに保育士の目が行き届くよう配置基準を引き上げるなど、保育の質を高める。そのために政府は年3千億円を確保すると「社会保障と税の一体改革」を決めた時に約束したが、いまだに実現していない。貧困率の高いひとり親世帯向けの支援でも、積み残しになっている検討課題がある。

子育てを社会全体で支え、若い世代への支援を強化する。そのために急ぐべき対策を、広い視野で検討していきたい。
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2017年11月11日

[朝日新聞] 「多弱」の野党 再編より、まず政策だ (2017年11月11日)

希望の党の共同代表に玉木雄一郎氏が選ばれ、四分五裂した野党の新体制が固まった。

野党の一部にはさらなる野党再編や統一会派、旧民進党勢力の再結集に期待する声もある。だがその前に、各党にはまずなすべきことがある。

政党としてどんな政策を重視し、どんな社会をめざすのか。党内で徹底的に議論し、国民に分かりやすく示すことだ。

突然の衆院解散を機に生まれた、にわかづくりの政党にとっては、本格的な政策論議はまさにこれからだ。

原発ゼロ実現への道筋は。少子高齢化に向けた負担と給付のあり方は……。政権与党への対抗軸になり得る政策を、それぞれの党内で鍛えてほしい。

同時に、野党には忘れてならない役割がある。

政権与党の慢心や暴走を厳しくチェックし、政治に緊張感をもたらすことだ。「1強多弱」と言われる国会だからこそ、巨大与党に立ち向かうには、野党間の協力が欠かせない。

選挙戦では「謙虚」を誓った自民党だが、早くもおごりが頭をもたげている。衆院選大勝の勢いに乗り、国会で野党の質問時間を削ろうというのだ。

衆院予算委員会で「野党8対与党2」だった質問時間の割合を「5対5」にしたいと、自民党がきのう野党第1党の立憲民主党に申し入れた。

実現すれば、行政府を監視する立法府の機能が低下しかねない。森友・加計学園の問題をめぐる野党の追及の場を減らす狙いもうかがえる。

この自民党の数の横暴に、力をあわせて歯止めをかけられるか。野党の協力が試される。

あわせて、野党の側も各党が似た質問を繰り返しがちな現状を改める工夫をすべきだ。

そのためにも、森友・加計問題で、各党のプロジェクトチームのうえに野党合同のチームをつくってはどうか。

その場を通じて各党の質問を調整し、党派を超えて二の矢三の矢を放つような質問ができないか。そうなれば国会審議は活性化するはずだ。

「違憲」の安全保障法制をどう正すかなど各党に差がある政策についても、合同で協議し、折り合える点、折り合えぬ点を確かめ合う場が必要だろう。

そうした話し合いを重ねるなかで、中長期的な野党連携のあり方が見えてくるはずだ。

2019年夏には、参院選がある。野党が再びバラバラに臨めば、今回の衆院選のように政権与党を利するだけだ。野党各党の自覚が問われている。
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[朝日新聞] 「加計」開学へ これで落着とはならぬ (2017年11月11日)

加計学園が愛媛県今治市に計画している獣医学部について、文部科学省の大学設置審が新設を認める答申をした。

はっきりさせておきたい。

来春開学の見通しになったからといって、あの「総理のご意向」をめぐる疑いが晴れたことには、まったくならない。

問われてきたのは、設置審の審査をうける者を決めるまでのプロセスが、公平・公正だったかどうかということだ。

国家戦略特区の制度を使って獣医学部を新設する、その事業主体に加計学園が選ばれるにあたり、首相や周辺の意向は働かなかったか。逸脱や恣意(しい)が入りこむことはなかったか――。

こうした疑念に白黒をつけるのは、設置審の役割ではない。教員の年齢構成や経歴、科目の体系などを点検し、期待される教育・研究ができるかを専門家の目で判断するのが仕事だ。見る視点や材料が違うのだから、特区選定の正当性を裏づけるものにならないのは当然だ。

むしろ、きのう公表された審査資料によって、見過ごせない事実が新たに浮上した。

設置審は今年5月の段階で、加計学園の計画について、抜本的な見直しが必要だとする「警告」を突きつけていた。修正できなければ不認可になる問題点を七つも列挙していた。

政府は国会などで「加計の計画は、競合する他の大学よりも熟度が高いと判断した」と説明してきた。設置審の見解とのあまりの乖離(かいり)に驚く。

七つの指摘の中には「ライフサイエンスなど新分野の人材需要の動向が不明」なことも含まれる。これは、2年前の閣議決定に基づき、設置審にかける前に、特区の審査段階でクリアしておかねばならない条件だったはずだ。設置審はまた、四国地方における獣医師の需要見通しの不備にも言及していた。

これらの重要な点を積み残したまま、なぜ加計学園は特区の認定を受けられたのか。政府に「丁寧な説明」を強く求める。

安倍首相は先の衆院選の際、街頭演説では加計問題にほとんど触れず、「国会があるのでその場で説明させてほしい」と述べていた。この特別国会で約束を果たす義務がある。

問題の発覚から半年。疑問は解消されず、むしろ膨らむばかりなのに、学園の加計孝太郎理事長は公の場で一度も説明していない。野党が国会への招致を求めるのはもっともである。

首相も理事長も、逃げ回っても問題は消えてなくならない。「どうせ国民は忘れる」と高をくくってもらっては、困る。
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2017年11月10日

[朝日新聞] 米中首脳会談 「協調」演出に潜む懸念 (2017年11月10日)

異例の熱烈歓迎ぶりだった。トランプ米大統領の訪中は、明朝以来600年の歴史を有する故宮での歓談から始まった。

そのもてなしが象徴するように、米中の首脳会談は「協調」ムードの演出に終始した。

両大国の対話が建設的に深化したならば、国際社会の安定に資するはずだ。だが、両首脳が発したメッセージを見る限り、外交的な美辞麗句以上の責任ある姿勢は読み取れない。

米国第一主義を掲げるトランプ政権がめざすアジア戦略とは何なのか。中国国内の権力集中を図る習近平(シーチンピン)国家主席は、対外的に強硬姿勢を強めるのか。

日本などアジア各国が抱く、そうした不安をやわらげるには、あまりに配慮の乏しい会談だった。

北朝鮮問題をめぐり、トランプ氏の発言は変化した。日韓では「比類のない軍事力」「力による平和」を説いたが、北京では国連制裁の完全履行など穏当な言い方にとどまった。

制裁については習氏も「完全で厳格な履行」に同調したが、もともと米中は圧力と対話の力点が違う。朝鮮半島の軍事的な混乱を避けるために、両首脳がどう折り合い、対立したのか、周辺国には見えないままだ。

もうひとつの焦点である通商問題では、米中間で計2500億ドル(約28兆円)の商談がまとまったと発表した。だがこれも、本質的な改善には結びつかない。

そもそも、米中の関係だけが円満に収まれば済むものではない。本来は中国の健全な市場化に向けた改革を促すのが、米国の役割であるはずだ。

両首脳は共同会見で「世界に重い責任を担う」大国と自任したが、ならば二国間取引に腐心するより大切な役割がある。世界の平和と繁栄をめざす安定的な枠組みをどう築くか、米中が協調して描くことだ。

その意味で米中の意図が見えないのが、アジアにとって最大の懸念だ。とりわけトランプ政権は、環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱したことで、アジア全体への関与の意思が問われている。

陰る米国の存在感を埋めるように台頭する中国は、「中華民族の復興」を強調し、法の支配や人権といった普遍的な理念を尊重するようには見えない。

新旧両大国の内向きのパワーゲームの将来に、どの国も懸念を抱くのは当然だろう。トランプ氏が本当に米国の威信を取り戻したいのなら、続く歴訪の中で米国の前向きなアジア関与の決意を明確に発するべきだ。
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[朝日新聞] 出国税 あまりに安直で拙速だ (2017年11月10日)

疑問が尽きない新税の案である。必要性がはっきりしない。税金の無駄遣いになる懸念も拭えない。検討期間はわずか2カ月。取りやすいところから取るという安直な発想ではないか。

日本から海外に向かう人に課す「出国税」の新設を、観光庁の有識者会議が提言した。

外国人か日本人かを問わず、1人当たり千円以内の額を徴収する案だ。最近の出国実績に当てはめると、千円なら税収は年に約400億円になる。観光庁予算の2倍で、急増する訪日客をさらに呼び込むための観光振興策に充てるという。

だが、議論は生煮えだ。

どんな施策にどれほどの財源がさらに必要なのか。複数の省庁にまたがる既存の観光関連事業をはじめ、予算を広く見直し、効果が乏しいものを削って財源をつくることが先ではないか。訪日客対策が主眼なのに、なぜ日本人旅行者にも負担させるのか……。

説得力のある説明はなされていない。関係業界からは、訪日旅行や日本人の海外旅行に水を差すことを心配する声も出ている。政府は、新税の必要性をはじめ、さまざまな疑問に答えなければならない。

最大の問題は、無駄遣いを防ぐ手立てが見えないことだ。

観光庁は、使い道を観光振興に限るよう法律などに明記する考えだ。だが、特定財源のような手法は負担と受益の関係が見えやすい半面、特定省庁の既得権益となり、無駄な予算を生みやすいという弊害がある。

想定する使途は、地方のPR活動やITを使った情報発信の支援、空港の出入国体制の整備など幅広い。費用対効果を検証して使い方を見直すなど、無駄遣いを防ぐための具体的な仕組み作りはこれからだという。

話の進め方もおかしい。

有識者会議は非公開で、審議内容は配布資料や報道関係者への事後説明で概要がわかる程度だ。千円以内とする徴収額については、会議を開かず、観光庁が委員らと水面下で調整して固めた。こんな透明性を欠くやり方で、幅広い理解を得られるだろうか。

新税が浮上した背景には、訪日観光を経済成長のエンジンにしたい首相官邸の意向があるようだ。今後、与党が12月にまとめる税制改正大綱で道筋をつけ、19年度からの導入をめざしている。

税制は民主主義の根幹にかかわる。開かれた場でじっくり議論し、丁寧に説明することが不可欠だ。「結論ありき」は許されない。
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2017年11月09日

[朝日新聞] 無電柱化 技術革新で加速させよ (2017年11月09日)

電柱をなくし、災害に強く、景観のよい街にしよう。そんなねらいで無電柱化推進法が成立して12月で1年になる。

だが街中にある電線の埋設は時間とお金がかかり、「電柱大国」返上への道は遠い。災害時に電柱が倒壊すれば、避難や救助の妨げになる。優先順位の高い政策として勢いをつけたい。

推進法は国や都道府県に推進計画をつくるよう促し、事業者には計画への協力を求めた。

国土交通省は年内に推進計画をつくるという。日本には約3550万本の電柱があり、毎年7万本ずつ増えている。計画ではこの現状に歯止めをかける手だてを示し、その上で中長期の目標をかかげてほしい。

国が管理する道路では、昨年4月から災害時の緊急輸送道路での電柱の新設が禁止された。これにならい都道府県が管理する緊急輸送道路でも新設を禁じる自治体が出てきた。各地の県・市道にさらに拡大を促せば当面の抑制策になるだろう。

国交省は全国10ブロックごとに自治体、道路管理者、電線管理者で協議会をつくり、地中化の候補地を検討してきた。こうした場で各自治体が互いのとりくみを参考にすればどうか。

無電柱化で先行する東京都は、9月から無電柱化推進条例を施行し、都道での電柱の新設を禁じた。都心の都道では2019年までに、整備対象の100%を地中化するという。ただ公道の9割を占める区市町村道は幅が狭く、地上機器の置き場の確保も難しい。ノウハウをもつ都の支援がかぎとなる。

電線の地中化は最も進んでいる東京23区でも8%にすぎない。課題は1キロあたり約5・3億円かかる工事費の削減だ。

地中化の費用は通常、国、自治体、事業者が3分の1ずつ負担する。事業者の協力を促すには技術革新が必要だ。

国交省は電線用の管路を浅く埋めることや、小型ボックスに電線を入れる工法を低コスト方式として推奨するが、それでも3割減にとどまる。外国のように電線を直接埋める方式の実用化など、関連業界とともに開発を急いでほしい。

大事なのは、電柱を放置すれば命にかかわるという認識だ。国交省の有識者ヒアリングでは、災害現場でたれ下がった電線の感電事故や、火災のおそれが報告された。東日本大震災では約5万6千本の電柱が被災し、倒れた電柱や電線は道路を開く作業の支障になった。

11月10日は「無電柱化の日」。行政だけでなく住民自身の問題という認識を広めたい。
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[朝日新聞] 再エネの普及 送電線の「空き」活用を (2017年11月09日)

風力や太陽光など、再生可能エネルギーによる発電を普及させていくことは、脱原発と温暖化対策の両立に欠かせない。

ところが、送電線への接続問題が大きな壁としてたちふさがっている。送電線を持つ電力大手が「空きがない」と主張し、再エネ業者が何年もの期間と多額の負担金がかかる送電線増強を嫌って計画を断念する。昨春、東北電力が北東北で「空き容量ゼロ」と発表して以来、そんな例が各地で相次ぐ。

本当に空きはないのか。京都大学の研究グループが青森と秋田、岩手、山形4県の基幹送電線について、全国の送電網利用を監督する公的機関が公表したデータを基に分析すると、実際には2?18%余りしか使われていないことがわかった。北海道でも同様の結果だった。

電力大手各社は空き容量の計算方法の詳細を明らかにしていないが、基本的には先着順に接続契約している発電設備がすべてフル稼働した状況を前提にしているという。今は止まっている原発はもちろん、未完成の原発なども計算に含めている。

あまりにも不合理だ。経済産業省と公的機関はそれぞれ改善策の検討に入っているが、透明で公平なルール作りを急がねばならない。

この問題を考える時、忘れてならないのは、送電線はだれのものかという視点である。

法的な所有権こそ電力大手にあるが、その建設と維持の費用は電力料金の算定に織り込まれている。電気の利用者、すなわち広く国民の負担で整備してきた公共物そのものと言える。

電力会社が原発など自らの発電設備への「予約」を優先し、再エネ電力を締め出すような仕組みはおかしい。既存の送電線を最大限に活用し、新たな負担をできるだけ抑えるためにも、見直しは不可欠である。

電力大手側は「公表データは現状の一断面で、これだけで設備増強の要否を評価すべきではない」(東北電力)などと言うが、その前に詳細な状況を開示するべきだ。データを独占して議論を誘導するようなら、意図的に参入障壁を作っていると疑われてもやむをえまい。

発電と送電の分離が進んだ欧米では、出力の変動が大きな再エネも接続したうえで、停電などの問題が起きないよう制御する仕組みをさまざまな工夫で実現している。

日本も2020年に発送電の分離を予定する。送電線の空き問題への対応は、分離後の透明で公平な態勢づくりへの試金石でもある。
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2017年11月08日

[朝日新聞] ロシア革命 世紀を越えて問う足跡 (2017年11月08日)

世界を揺るがしたロシア革命(十月革命)から、きのうで、ちょうど100年を迎えた。

内戦を経て生まれた世界初の社会主義国ソ連は、飢饉(ききん)や弾圧などで膨大な犠牲者を出した。一方で、米国などの資本主義陣営に対抗する価値観を示し、20世紀の世界を二分した。

ソ連は1991年に崩壊し、希代の「実験」は失敗したが、革命の歴史は、今後の世界の針路を探る手がかりを残した。

本家ロシアでは、あの革命の輝きは失われている。プーチン大統領は05年、11月7日を国民の祝日から外した。

革命について「時代遅れを放置する人、転換を求めて破壊へ突き進む人、双方が無責任だから起きる」と突き放す。

一方で、今なおロシア革命をたたえる国もある。中国の習近平(シーチンピン)氏は先月の中国共産党大会で「十月革命の砲声がとどろいて、中国にマルクス・レーニン主義が送り届けられた」と建国の歴史を誇った。

だが、共産党一党独裁のソ連を範にした体制を続ける中国、北朝鮮、キューバなどの国々は、自由、人権、平等などで、理想とはほど遠い状況だ。

人類を進歩させるために社会主義革命は不可避だという考えは色あせた。だが、冷戦に勝利したはずの資本主義・自由主義陣営の国々も今、よりよい未来を目指すための羅針盤を失ったかのように漂流している。

グローバル化は世界の格差の構造を複雑にした。新興国の豊かさを増した半面、先進国で格差の不満が高まり、ポピュリズムが既成の政治を脅かす。

富の集中に警告を発するフランスの経済学者ピケティ氏の論著が注目され、米国の「サンダース現象」など不平等への異議申し立てが相次いでいる。

自由と民主主義を掲げる従来の政治が閉塞(へいそく)感に覆われる今、政治家が人気取りのために「革命」という言葉を乱用するのは時代の皮肉というほかない。

公正で平等を保障する社会を築くには、民主主義への問いかけを続けるしかない。その今の現実と今後の指針を考えるうえでも、ロシア革命とその後の現代史は今日的な意味を持つ。

日本もロシア革命に深く関わった。革命翌年、反革命派の支援のために日本軍がロシアに上陸し、一時はシベリア中部まで進軍した。最後のサハリン北部からの撤退は7年後だった。

この「シベリア出兵」は、日本への警戒感をソ連に刻んだ。北方領土問題やシベリア抑留と共に、日ロ関係を考えるうえで忘れてならない歴史である。
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[朝日新聞] ユネスコ 米国の脱退は無責任だ (2017年11月08日)

東アジア歴訪中のトランプ米大統領にわずかでも学んでほしい。多様な国々が共に繁栄する工夫がどれほど大切かを。

世界遺産などで知られるユネスコ(国連教育科学文化機関)も、平和と安定をめざすための大切な活動を担っている。

再び世界大戦を招かないために、教育、科学、文化の国際協力を進める目的で運営されている国連の専門機関である。

ところがトランプ政権は、来年末に脱退する方針を先月表明した。またもや自国第一主義にもとづく一方的な決定だ。

気候変動をめぐるパリ協定や、日米を含む環太平洋の自由貿易協定などに続く離脱である。多国間の協調枠組みに背を向ける姿勢は、米国にも国際社会にも役立たない。ユネスコ脱退の表明は撤回すべきだ。

決定の理由は「反イスラエル的な偏向」だという。今夏、パレスチナ自治区にある旧市街を「世界遺産」として登録したことなどに反発している。

かねて米国は、イスラエル支援の立場からユネスコへの批判を重ねてきた。6年前から、パレスチナの正式加盟に抗議して分担金の拠出を止めている。

ユネスコに不満を抱くのは米国だけではない。昨年、中国が申請した「南京大虐殺の記録」が記憶遺産になった際、日本政府も分担金を一時凍結した。

審査が非公開で意見表明の場もないなどの批判はあるが、だからといって資金を止めたり、離脱を表明したりするのは、国連活動をリードすべき国として適切な振るまいではない。

「世界の記憶」(旧・記憶遺産)をめぐっては、来年以降、異議を唱える国などがあれば、当事者間の話しあいを促すことになった。今年の審査で「旧日本軍の慰安婦に関する資料」が登録保留となったのは、新制度を先取りした判断だった。

国際機関で様々な国や団体の主張や利害の摩擦がおきるのは当然だ。問題があるなら内部で改善を働きかけ、国際機関としての価値を高める。それこそが世界の紛争の根源を絶つための責任ある態度だろう。

米国は1984年にも、政治的な偏向などを理由にユネスコを脱退した。このときは、99年に事務局長に就いて組織改革を進めた松浦晃一郎氏の尽力もあり、03年に復帰している。

15日にユネスコの新事務局長に就くフランスのアズレ前文化・通信相は「加盟国の信頼を取り戻したい」と抱負を語る。日本政府には、新事務局長とも協力して、米国の説得に力を尽くしてもらいたい。
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