2017年03月29日

[朝日新聞] 核禁止条約 被爆国の責任放棄だ (2017年03月29日)

もはや日本政府が「被爆国として、核兵器廃絶に向けて世界をリードする」と言っても説得力はなくなった。広島、長崎の被爆者はもちろん、多くの国民の思いを裏切る行為だ。

核兵器禁止条約の制定に向け、国連本部で開幕した最初の交渉会議で、日本の政府代表は不参加を表明した。

100以上の非核保有国が参加する一方、米国、ロシア、中国などの核保有国や北朝鮮はボイコットした。

核兵器を「非人道的」とし、使用や保有を法的に禁じるのが交渉の目的だ。岸田文雄外相は不参加の理由について「核保有国と非核保有国の対立を深め、逆効果になりかねない」と述べたが、理解に苦しむ。

被爆国であり、米国の核の傘の下にある日本は、非核保有国と核保有国の「橋渡し役」を自任してきた。対立が深まっている今こそ溝を埋める役割は重要だ。核保有国と足並みをそろえる形で不参加を表明するとは、責任放棄もはなはだしい。

核保有国は、核の抑止力に頼る安全保障政策が脅かされるとして、禁止条約に強く反対してきた。米国の大使は、会議場のすぐ外で約20カ国の代表とともに抗議会見を開いた。この反発ぶりは、禁止条約の必要性を逆に示したようにも思える。

核兵器の非人道性を、核保有国の指導者はまず理解すべきだ。どの核保有国も状況次第で核を使う可能性を否定していない。条約ができれば、核の使用は国際犯罪になる。

トランプ米大統領は「他国が核を持つなら、我々はトップになる」と発言し、核戦力の増強に意欲的だ。北朝鮮は核・ミサイル開発で挑発を繰り返す。「核を使ってはならない」と条約で明示すれば、こうした動きへの強い歯止めにもなろう。

岸田外相は、日本周辺の安全保障環境の厳しさも不参加の理由に挙げた。北朝鮮の脅威に加え、中国も軍拡路線をひた走るなか、禁止条約は米国の核の傘を損ね、望ましくないとの考えは、政府内に強い。

確かに核軍縮は、地域の安定を崩さないよう注意深く進める必要がある。だからこそ日本は交渉に加わり、核の傘からの脱却は後回しにすることを認めるなど、より多くの国が賛同できる条約をめざして意見を述べるべきではなかったか。

オーストリアやメキシコなどの非核保有国は、7月までに、条約案をまとめる意向だ。

今ならまだ間に合う。日本政府は交渉の場にただちに参加すべきだ。
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[朝日新聞] 高浜原発決定 あまりに甘い安全判断 (2017年03月29日)

原子力規制委員会の新規制基準や電力会社の安全対策に理解を示し、合理的だと結論づける。安全に対する意識が、福島第一原発の事故前に戻ったような司法判断だ。

関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転を差し止めた大津地裁の仮処分決定について、大阪高裁は関電側の訴えを認め、決定を取り消した。

焦点の一つは事故後にできた新規制基準への考え方だ。

大津地裁は、福島事故の原因究明が「道半ば」で基準が作られたとし、安全の根拠とすることを疑問視。新基準を満たしただけでは不十分とした。

きのうの高裁決定は福島事故の基本的な原因は各事故調査委員会の調べで明らかにされているとし、新基準についても「原因究明や教訓を踏まえたもの」と評価、「不合理とはいえない」と正反対の判断を示した。

さらに耐震安全性のための補強工事についても、高裁は「規制委が規制基準に適合していると確認した」とし、「相当の根拠にもとづいている」と評価した。関電が耐震設計の基本とした基準地震動に疑問を呈した地裁の決定とは全く逆だ。

あまりに電力会社の言い分に沿っていないか。規制基準は正しく、それに適合さえしていれば安全だと言わんばかりだ。

技術面で素人である住民や一般の人が不安に感じるなら、納得が得られるよう安全性を追い求める。そうした姿勢の大切さが、事故の示した教訓だったはずだ。

住民の避難計画についての判断もそうだ。今の計画について「様々な点でいまだ改善の余地がある」と指摘しながら、対策が検討されていることを理由に追認した。複合災害や渋滞などで避難できないのではないかという住民の不安を、正面から見据えたものとは到底いえない。

行政手続きさえ整っていればよく、安全は専門家の判断にゆだねよというなら、司法の役割は何なのか。

福島事故から6年。甚大な被害を国民が目の当たりにした今、裁判所として原発にどう向き合うか。大阪高裁はどこまで突き詰めて考えたのだろう。

決定を受け、関電は高浜3、4号機の再稼働に向けた準備に入る。だが関電も国も「これで安全性にお墨付きが得られた」ととらえるべきではない。福井県に多くの原発が集まる集中立地のリスクや、使用済み燃料の処分など、議論は不十分だ。

山積する問題を残したまま、再稼働に突き進むことは許されない。
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2017年03月28日

[朝日新聞] 香港長官選 民意との溝を埋めよ (2017年03月28日)

市民に不人気な候補者が大差で当選する。香港政府のトップである行政長官の選挙は、そんなねじれた結果になった。

問題点は、選挙制度にある。中国共産党政権の介入を受けやすく、民意を必ずしも反映しない間接選挙なのだ。

20年前に英国から香港が返還された際、中国は「一国二制度」の下での高度な自治を約束した。現状では、その原則が守られているとは言いがたい。

新長官は、返還当時の出発点に立ち返り、謙虚に市民の声に耳を傾けるべきだ。

当選した林鄭月娥(キャリー・ラム)氏は選挙前の世論調査で支持率が30%を切り、敗れた曽俊華(ジョン・ツァン)氏の半分程だった。当選したのは、選挙委員1200人による投票で決まる仕組みのためだ。

委員は商工業、法曹など業界別に選ばれ、中国経済との関係の深さから親中派が多数を占める。曽氏も行政官出身で親中だが、北京の支持が事前に伝えられた林鄭氏へと票は流れた。

もともとは、今回から市民一人ひとりが投票する普通選挙を実施するはずだった。ところが中国の習近平(シーチンピン)政権は、候補者をあらかじめ2?3人に絞り込む方式で統制を図ろうとした。

これを推進したのが香港政府ナンバー2だった林鄭氏だ。学生らは街頭を占拠する「雨傘運動」で抗議した。その結果、制度の改正はならなかった。

それで今回は従来通りの選挙になったが、この間接選挙で香港社会の納得は得られない。立候補段階から市民に開かれた、真の普通選挙が必要だ。

香港に対する最近の中国の介入は一線を越えた感がある。

今年1月、中国出身の有名企業家が香港で失踪した。中国当局が連行した疑いが濃い。昨秋には香港議会の議員資格をめぐり、中国側が一方的に資格剥奪(はくだつ)の解釈を示した。いずれも反発と不安を招いている。

自由社会・香港の繁栄は中国の利益でもある。だからこそ国家統合と自治を均衡させる「一国二制度」に意味がある。

今月、北京での全国人民代表大会で李克強(リーコーチアン)首相は「香港独立に前途はない」と警告した。香港で独立論議は自由だが、現実には少数派だ。その主張が広がるとすれば、それは中国側の強硬姿勢にこそ原因がある。

習政権は香港政府に対し、市民への締め付けをさらに強める国家安全関連法の導入を求めるとみられている。一度試みたが、反発で見送られたものだ。民意に沿うかじ取りができるのか、林鄭氏の姿勢が試される。
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[朝日新聞] 森友と財務省 納税者を甘く見るな (2017年03月28日)

森友学園(大阪市)を巡る様々な問題について国会で激しい論戦が続くなか、国の新年度予算が成立した。与党からは「次のステージに向かう時だ」との声があがり、幕引きを急ごうとする動きが見られる。

とんでもない。学園の籠池(かごいけ)泰典氏の証人喚問を経ても疑惑は晴れない。安倍首相夫人の昭恵氏や昭恵氏付の政府職員の行動が、学園への異例づくしの国有地売却などに影響したのか、事実関係の徹底解明が不可欠だ。

見過ごせないのは、取引の経緯を詳しく説明しようとしない財務省の姿勢である。

国有地の売却ではその金額を原則公表してきたのに、森友側との取引では伏せた。財務省近畿財務局によるこの異例の対応が一連の疑惑の発端になった。

遊休国有地の取引は売買が主流なのに、定期借地契約を認めた。その後売買に切り替えたが、ゴミ撤去費用を巡る不明朗な見積もりを経て、周辺の地価と比べて9割安という破格の条件になった。

財務省は「適正に処理した」と繰り返す。交渉記録は廃棄したから残っていない。法令違反はない。関係者への聞き取り調査はしていない――。

最近になって一部の調査結果を公表したが、自分たちが正しいから信じろと言わんばかりだ。国会では当時の理財局長と近畿財務局長の参考人招致が実現したが、「報告がなかった」「政治的配慮はしていない」との発言にとどまった。

財務省の仕事は、国有財産の管理と不要な資産の処分にとどまらない。税制を考え、それに基づいて税金を徴収し、予算案として配分を練るという政府の仕事の中核を担っている。

そうした役割は納税者・国民の理解と納得に支えられている。財務省を含む政府の説明が明らかに足りないと考える人が多数を占める現状に、危機感はないのだろうか。

ただちに関係者から話を聞き、誰がどう動いたかを再現して、国会で説明するべきだ。自ら調べる意思がないのなら、第三者に任せるしかない。

土地の売却契約の成立から1年もたたずに記録を廃棄したとしているのも適切でない。内規に基づく措置だというが、内規自体が情報公開を充実させる基本に反していることを自覚し、猛省しなければならない。

かたくなな財務省は何を心配しているのだろう。自らの組織の防衛か、森友問題で浮上した政治家への配慮なのか。

納税者の目は厳しい。甘く見れば必ずしっぺ返しがある。
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2017年03月27日

[朝日新聞] 震災とアート 喪失と希望、刻む作品 (2017年03月27日)

東日本大震災と福島第一原発事故の被災地には、多くのアーティストが足を運ぶ。被災者や避難者に寄り添い、地道に創作を続けている人もいる。

災害の記憶を長く社会にとどめていくためにも、さまざまな立場の人々をやわらかくつなぐ文化・芸術の力は大きい。

映画「息の跡」の小森はるか監督は震災の翌春、東京芸術大大学院を休学して岩手へ移住した。そば屋で働きながら、陸前高田市の種苗店主、佐藤貞一さんを3年間撮り続けた。

佐藤さんは津波で流された自宅兼店舗跡に自らの手でプレハブを建て、井戸を掘って店を再開した。英語や中国語で体験を記し、出版している。悲しみが大きすぎて、日本語で表現するのを体が拒んだという。

映画は大学院の修了制作だったが、追加撮影と再編集をへて長編デビュー作になった。記録と表現が溶けあうドキュメンタリーは、震災を伝える有力な手立てだ。各地で順次上映されているのは意義深い。

除染で出た大量のフレコンバッグや、海岸にそびえ立つ巨大堤防の前で弁当やお茶を楽しむ――。現代美術家の開発好明さんは昨年、連作写真「新世界ピクニック」を発表した。

くつろぐ人々と荒涼とした風景との落差が、消えぬ傷の大きさをあらわにする。海外にも作品をたずさえ、震災がもたらしたものを問いかける。

小森監督と開発さんはそれぞれ震災直後、東北へ通い支援やチャリティーをした。重い現実を前に、表現活動をすることにはためらいがあったが、被災者やその家族から逆に励まされ、創作に立ち戻れたという。

2人はともに、被災地での息長い活動をライフワークにかかげる。

震災後、被災地には多くのボランティアの姿があった。6年たったいま、アーティストの営みも実を結んできている。作品は、震災を新たな視点からとらえ直す手がかりになる。

被災地のどこで、どんなアートが生まれるのか。新たな試みを見つけるのは難しい。しかし仙台市のせんだいメディアテークなど、震災をめぐる表現を集積している文化施設もある。

こうした取り組みをもとに、個々のアーティストの活動をネット上で一覧できる仕掛けをつくったり、好みの企画には少額を寄付できるクラウドファンディングを採り入れたりしてはどうだろうか。

共感に基づくゆるやかな支援で、震災から生まれる多彩な表現を育てていきたい。
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[朝日新聞] 春闘と賃上げ 広がりが問われる (2017年03月27日)

春闘は、組合側からの要求に対し会社側の回答が進んでいる。先週までの連合の集計によれば、賃上げは、前年をやや下回る水準という。

例年、交渉を引っ張る自動車や電機などの大手企業のベースアップでは、昨年以下の回答が目立った。米国のトランプ政権の政策や為替水準など、輸出をとりまく経済環境の不透明感が背景にあったようだ。

一方で、食品加工や流通といった内需関連の産業では、昨年を上回る回答が目立つという。こうした業種では人手不足も強まっており、労働側への追い風になっていると見られる。

個別の企業や業界ごとに、ある程度の濃淡があらわれるのはやむを得ないだろう。問題は全体の水準だ。

昨年10?12月期の法人企業統計によると、企業全体でみれば、前年を上回る空前の利益を上げている。ベアの平均が昨年を下回るような結果になれば、働き手への公正な配分という点で大きな疑問が残る。また、今後の物価上昇次第では、実質賃金の低下を通じて消費を弱め、景気の足を引っ張りかねない。

注目されるのは中小企業や非正社員への賃上げの波及だ。「底上げ春闘」を掲げる連合は、中小企業でも早めに回答を引き出した組合が多いことなどから、成果が出ているとしている。非正社員でも正社員を上回る改善も見られるという。

失業率が下がり、労働市場の需給が引き締まっていることを受けて、労働組合の影響力が弱い中小・非正社員でも賃上げの流れが強まりつつあるのは確かなようだ。

だが、賃金の水準で見ればなお大手・正社員との差は大きく、格差縮小への動きは緒についたばかりともいえる。「同一労働同一賃金」が政策課題にもなっており、さらなる裾野の広がりが必要だ。

現時点で回答を得ているのは、連合傘下の要求提出済み組合の3分の1程度であり、中小企業の多くではこれからも交渉が続く。経営者には、公正な分配と内需の下支えを意識した上で、積極的な回答を望みたい。

今年の春闘では、長時間労働の是正など「働き方改革」もテーマになっている。賃上げに加え、さまざまな労働条件の改善が求められるのは当然だ。

社会全体のあり方にもかかわる課題について、企業側と労働側が集中的に議論し、大きな方向性を打ち出すことは春闘の一つの機能である。労使の前向きな取り組みが広がることを期待する。
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2017年03月26日

[朝日新聞] 欧州統合60年 市民の信頼築く改革を (2017年03月26日)

「60周年」の節目を、欧州連合(EU)への信頼を取り戻していく元年としたい。

1957年3月25日、フランスや西ドイツなど6カ国がローマ条約に調印。EUの前身、欧州経済共同体の設立を決めた。

二度の大戦への反省から、国境を越えた人や物の自由な往来を促し、各国が主権を譲って共通政策を打ち出すことで平和と繁栄を目指す壮大な実験は、いま深刻な壁にぶつかっている。

ギリシャ危機に端を発した経済の停滞、難民や移民の流入、相次ぐテロで、「EUは安全と繁栄をもたらすのか」と疑う声が広がった。英国のEU離脱決定で欧州統合は初の後退を迫られ、「自国第一」を掲げるポピュリズム(大衆迎合)政党が各国で勢いを増している。

「長い平和に慣れ、EUのありがたみが薄れた」との指摘もある。何世紀も戦争が繰り返された欧州で、過去60年間は加盟国間の武力衝突がなかった。

初心に戻り、「不戦」の共同体を築き上げた意義を再確認すべき時だ。

ローマには25日、加盟国首脳が集い、結束を誓い合った。

あるべきEUの姿の検討も始まった。従来通り加盟国が横並びで統合を進めるか、各国事情に応じて統合速度に差をつけるのか、活発な議論が期待される。その際、大国主導で小国の意見が軽視されてはなるまい。

保護貿易に傾くトランプ米政権や強権姿勢を強めるロシアなど、大国のエゴへの懸念が募る折だ。EUには国際協調のモデルを追求してほしい。

一方、60年を経ても、加盟国の市民にとってEUは身近な存在とは言いがたい。

市民生活に直結する多くの規制をEUが決めているのに、その決定過程をめぐる発信が足りない。直接選挙で選ばれる欧州議会はあるが、権限が限られ、選挙の投票率も低い。

「自分たちが代表されていない」という市民のEU不信が結束を乱しているなら、ゆゆしき事態だ。民意を生かし、透明性を高める改革に、EUや各首脳は知恵を絞ってほしい。

いまの世界の先進国を見渡すと、「統治する側」と「される側」との距離をどう縮めるかは共通の課題でもある。非難の的がEUであれ、グローバル化であれ、多くの国々の市民が既成政治に限界を感じている。

政治家や官僚が物事を決めて動かす日々の営みが、市民を置き去りにしていないか。統治システムをどう検証し、改善に取り組んでいくか。先行する欧州の実験の行方を見極めたい。
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[朝日新聞] 大阪万博案 このままで開けるのか (2017年03月26日)

大阪で25年に国際博覧会(万博)を誘致しようとする経済産業省の構想案がまとまった。安倍政権は5月下旬までに、博覧会国際事務局(BIE)に立候補を届け出る方針だ。

ただ、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマにした案は、全般に漠然としてインパクトを欠く。昨年11月にいち早く立候補したフランスに勝てるかという問題以前に、国民の理解を得られるか、疑問だ。

巨額の資金確保や交通アクセス整備にも難題を抱えている。手続き上、立候補は閣議了解だけでできるが、国会でその是非を議論すべきだ。

大阪万博構想は、松井一郎大阪府知事が率いる大阪維新の会が14年に提唱した。わずか3年でここまで進んだのは、維新との関係を重視する安倍政権の後押しゆえだ。関西出身の世耕弘成経産相はとりわけ前向きだ。

だが、構想浮上から閣議了解まで7年かかった05年愛知万博に比べ、準備不足は明らかだ。

最も重要な開催テーマについて、大阪府は「健康・長寿」を提案した。しかし経産省の有識者会合では「途上国の支持を得にくい」との声が相次ぎ、「未来社会」に今月変更された。

人工知能(AI)や仮想現実(VR)といった先端技術を駆使し、参加型で疲れない万博を目指すという。多くの要素を盛り込もうとしたあまり、かえって万博の統一的な方向性が見えにくくなった感が否めない。

フランスでは官民合同の万博誘致組織が12年末から活動を始めている。日本はまだ、経団連会長をトップとし、今月27日にようやく発足する段階だ。

経産省は今月の有識者会合に「関西弁」に訳した構想案を参考資料として配布した。ところが批判が相次ぐと、すぐに撤回した。政府の司令塔のドタバタぶりにも不安を禁じえない。

万博の会場建設には1250億円かかる見込みだ。過去の万博では国と地元自治体、経済界が3分の1ずつ負担してきた。ただ、関西の企業からは「一過性のイベントに資金を出すのは難しい」との声が相次ぐ。

会場候補の人工島には鉄道がなく、必須となる地下鉄延伸で別に640億円かかる。大阪府と大阪市はカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致とセットでの整備をもくろむものの、カジノには府民の抵抗感が強い。

松井氏らは「20年東京五輪後の成長の起爆剤に」と25年万博開催にこだわる。だが無理押しする必要がどこまであるか。国民の意見を幅広く聞き、立候補を慎重に判断したほうがいい。
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2017年03月25日

[朝日新聞] 「道徳」の検定 教科化で窮屈になった (2017年03月25日)

文部科学省は「考え、議論する道徳」をめざすという。その取り組みが、この検定意見であり、この教科書なのだろうか。

道徳が来年春から教科になるのに伴い、文科省が小学校の教科書の検定結果を公表した。

話し合ったり、発表したり、主人公の役を演じて考えたりするなど、学習方法はたしかに多様になった。

しかし、肝心の中身は学習指導要領にがんじがらめだ。

検定の具体例を見てみよう。

指導要領は道徳科の内容として、「正直、誠実」「節度、節制」「礼儀」「感謝」など22の徳目を定めている。

他の教科と違い、これらに客観的・科学的根拠があるわけではない。だが指導要領に書かれている以上、教科書はすべてを網羅しなければならない。

加えて検定意見は、一つひとつの徳目の説明に書かれている具体的な事項にふれていなければ、「不適切」とした。

例えば、指導要領は「感謝」の対象として高齢者を挙げる。このため元の教科書にあった地域の「おじさん」への感謝は、「おじいさん」に書き換えられた。町探検で出合った「アスレチック」は、「伝統と文化の尊重」を理由に、「こととしゃみせん」の店に変更された。

あまりのしゃくし定規ぶりに驚く。「考え、議論する道徳」の最初の教科書が、こんなに窮屈な検定姿勢から生まれるとは皮肉以外の何物でもない。

国が指導要領で徳目の内容を定め、それに基づいてつくった教科書を改めて国が検定する。この二重の縛りが、お仕着せの教科書を生んだ。朝日新聞の社説は「道徳の教科化」に疑念を投げかけてきたが、その思いは深まるばかりだ。

道徳の狙いは、「いかに生きるか」という課題に子どもたちを向きあわせることにある。文科省が決めた徳目の枠内に、そもそも収まるはずがない。

教員には教科書を使う義務があるが、文科省も独自の教材の使用まで禁じてはいない。

一線の先生に求めたいのは、あくまでも目の前の児童・生徒から出発する姿勢である。一人ひとりの子やクラスをとりまく状況を踏まえ、身のまわりの出来事も素材にして、胸に届く指導を試みてほしい。

教育委員会や学校長には、現場の意向を最大限尊重し、工夫の余地を確保してもらいたい。考え、議論する力を本気で育てたいのなら、成長段階に応じて、教科書の内容そのものを疑い、批判的に読む授業も認めるべきだろう。
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[朝日新聞] 森友学園問題 説得力ない首相の説明 (2017年03月25日)

疑問はいっこうに晴れない。

安倍首相はきのうの参院予算委員会で、「森友学園」への国有地払い下げや学校認可に、自身や妻昭恵氏が「まったく関与していない」と強調した。

審議で焦点となったのは、首相夫人付の政府職員から籠池(かごいけ)泰典氏に届いたファクスだ。

証人喚問での籠池氏の証言によると、国有地の買い上げ条件の緩和についての相談を、昭恵氏の留守番電話にメッセージとして残した。

その後、首相夫人付職員は次のファクスを籠池氏に送った。

「財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室長から回答を得ました」「なお、本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」

「工事費の立て替え払いの予算化について(略)平成28年度での予算措置を行う方向で調整中」と、政府予算に言及した部分もある。

首相は、ファクスは籠池氏側から首相夫人付への問い合わせに対する回答で、昭恵氏は報告を受けただけだと主張する。しかし、国家公務員である首相夫人付の職員が、昭恵氏の了解もなく一学校法人の要望を官庁に取り次ぐものだろうか。

首相は、首相夫人付の行為について「事務的な問い合わせで、依頼や働きかけ、不当な圧力はまったくない」という。だが首相夫人付からの問い合わせは、官庁に政治的な影響力を持ちうる。

自らが持つ権力の重さや周囲の受け止めを、首相と昭恵氏はどう考えているのか。

稲田防衛相も発言の信用性がいっそう疑われる事態だ。

稲田氏はこれまで、弁護士である夫が「本件土地売却にはまったく関与していない」と述べていた。だが籠池氏の証言を受け、夫が16年1月の籠池夫妻と国側との話し合いに同席した事実を認め、「(国有地)売却の話ではなく、借地の土壌汚染対応の立て替え費用の返還の話」だったと語った。

籠池氏の喚問での証言に対し、昭恵氏は自身のフェイスブックで「籠池さんから何度か短いメッセージをいただいた記憶はありますが、土地の契約に関して、まったくお聞きしていません」などと反論した。

だが、自分の主張を一方的に述べるフェイスブックでの説明だけで、首相夫人という公的存在としての説明責任を果たしたとは到底、言えない。

籠池氏は、虚偽を述べれば偽証罪に問われる証人喚問で証言した。昭恵氏も自ら国会で説明すべきである。
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2017年03月24日

[朝日新聞] 待機児童ゼロ もう先送りできない (2017年03月24日)

「もっと保育所を増やして!」。新年度を前に、希望する認可保育所などに入れなかった子育て世帯の切実な声が、今年も各地であがっている。

「保育園落ちた」の匿名ブログをきっかけに政府が緊急対策を打ち出してからちょうど1年。保育所の数は増えたが、深刻な実態に追いつかない状況が続く。安倍首相は「17年度末までに待機児童ゼロ」の政府目標の達成は厳しいと認めた。

首相は6月にも新たな対策をまとめることを表明した。小手先の対応は許されない。できるだけ早く解消するよう、本腰を入れてほしい。

待機児童が一向に減らない原因の一つに、保育のニーズをきちんとつかめていないという問題がある。首相も国会答弁で、働く女性が予想以上に増え、見込み違いがあったと語った。

国の整備計画は、自治体が積み上げた数字をもとにしている。待機児童には数えていない潜在的な保育ニーズも含めることになっているが、どこまで実態に迫れているのか。まずはニーズの把握の仕方を含め、今の計画を根本から見直すべきだ。

保育所の整備が急ピッチで進むなか、建設予定地の近隣住民の反対で計画が遅れたり中止されたりする例も目立ってきた。

子育て支援は最重要の課題だという意識を、地域全体で共有することが必要だろう。一方で、整備を急ぐあまり、丁寧な説明や住民との話し合いがおろそかになっていないか。事業者任せにせず、自治体が合意形成の先頭に立つことも大事だ。

保育所を増やすには、何よりも安定的な財源の裏付けが欠かせない。保育士を確保するために待遇を改善し、職員の配置を手厚くして保育の質を高めるには、お金がかかる。

こうした取り組みを支えることこそ、政府の役割だ。責任をきちんと果たしてほしい。

政府はこれまで、職員の配置基準などを緩めて受け入れ枠を増やす応急措置を進めてきた。しかし、保育所整備を求める保護者らの集会では「預けられれば何でも良いのではない」「子どもの成長にふさわしい保育所を」との声が多くあがる。

無理をして詰め込むと子どもへの注意が行き渡らず、事故のリスクを高めかねない。親の不安にも真摯(しんし)に耳を傾けねばならない。

「子どもが生まれておめでたいはずなのに、どうして憂鬱(ゆううつ)な思いをしなければならないのか」――。そんな社会で良いはずがない。悲痛な訴えを正面から受け止めねばならない。
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[朝日新聞] 籠池氏の喚問 昭恵氏の招致が必要だ (2017年03月24日)

安倍首相の妻の昭恵氏が、国有地払い下げに関与したことを疑わせる重大な証言だ。関与を全否定してきた首相の説明とも食い違う。解明のため昭恵氏を国会に招致する必要がある。

学校法人「森友学園」理事長の籠池(かごいけ)泰典氏がきのう、衆参両院で証人喚問にのぞんだ。同氏は昭恵氏に国有地買い上げ条件の緩和に関し、「助けをいただこうと考えた」と証言した。

籠池氏本人が15年10月、昭恵氏の携帯電話の留守番電話にメッセージを送り、翌月、首相官邸の昭恵氏付きの職員から「財務省の室長から回答を得ました」「現状では希望に沿うことはできません」などと書いたファクスが届いたという。

事実なら昭恵氏が籠池氏の要望を誰かに伝え、職員を通じて返事をさせたことになる。

菅官房長官はファクスの存在を認めた上で、「問い合わせへの回答」だと説明する。だが国の財産処分に関して要請を受けた首相夫人が何らかの動きをしていたなら、一定の関与をしていたことになる。

政府は昭恵氏を「私人」だとし、認可や土地取引と無関係と強調する。だが首相夫人が公的存在であることは明らかで、説明責任は免れない。

昭恵氏側が100万円を寄付したとされる問題で、籠池氏は「夫人の方から封筒をかばんの中から出した」と語り、同行の職員を昭恵氏が「人払いした」ため、園長室で一対一のやりとりだったと証言した。「寄付していないことを確認している」という首相側との言い分は、真っ向から食い違っている。

もちろん、籠池氏の一連の証言が事実だとは限らない。解明するには、昭恵氏本人の公の場での証言が不可欠だ。

首相の説明責任も問われる。国会で首相は「国有地払い下げや認可に私や妻が関係していたということになれば首相も国会議員も辞める」とまで語った。そこまで言うなら、ファクスの件を含め昭恵氏の行動をどう説明するつもりなのか。

参院予算委員会はきょう、売却交渉をしていた時期に財務省理財局長だった迫田英典・国税庁長官と、近畿財務局長だった武内良樹・財務省国際局長を参考人招致する。

籠池氏は複数の政治家名もあげたが、財務省や国土交通省がどう対応したのか、未解明のままだ。当時の実情を知る両氏は明確に答えるべきだ。

また籠池氏は「刑事訴追の恐れ」を理由に、補助金不正疑惑について口をつぐんだ。解明はまだ、緒についたばかりだ。
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2017年03月23日

[朝日新聞] 大学と軍事 若手にも考えてほしい (2017年03月23日)

大学などの研究機関は軍事研究に携わるべきではないとする声明案を、日本学術会議の委員会がまとめた。あすの幹事会を経て4月の総会で採択される見通しで、その意義は大きい。

文系、理系をあわせた科学者の代表機関である学術会議は、1950年と67年に「軍事目的の科学研究を行わない」との声明を出している。

今回の声明案は、軍事研究が学問の自由や学術の健全な発展と緊張関係にあることを確認したうえで、過去の二つの声明を「継承する」としている。

自衛のための研究を容認する声もあったため、いまの言葉で正面から宣言する方式でなく、「継承」という間接的な表現になった。物足りなさは残るが、予算削減などで総じて厳しい研究環境を迫られるなか、科学者たちが集い、学問の原点を再確認したことを評価したい。

もちろん、これで問題がすべて解決するという話ではない。筑波大での学生アンケートでは、軍事転用を見すえた技術研究に賛成する意見が、反対を上回った。「転用を恐れたら民生用の研究も自由にできない」との理由が多かったという。

たしかに同じ技術が軍民両用に使われることは多い。研究開発した技術の使い道に、最後まで責任を負うよう科学者に求めるのは、現実的ではない。

だが、民生用に開発した技術が軍事転用されることと、最初から軍事目的で研究することとの間には大きな違いがある。

軍事が科学技術の発展を加速させた歴史は長い。一方で、国家に動員された科学者が積極的に軍事研究に携わった結果、毒ガスや生物兵器、核兵器が開発され、おびただしい人の命を奪ったことを忘れてはならない。

50年と67年の声明は、科学技術の牙を人類に向けてしまった歴史に対する痛切な反省に基づく。学術会議や大学には、こうした問題の本質を若い世代に広く伝える責務がある。しかしその営みは極めて不十分だった。

学術会議が議論を進めているさなかに、米軍の資金が大学の研究者に渡っている実態が判明した。これも「伝承」の弱さを裏づける証左の一つだろう。

今回の声明案は、資金の出所がどこか慎重に判断するのとあわせ、軍事研究と見なされる可能性があるものについて、大学などには技術・倫理的な審査制度を、学会には指針を、それぞれ設けるべきだとしている。

若手研究者もぜひこうした場に参加して、多角的な議論に触れ、科学者の責任とは何か、考えを深めていってもらいたい。
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[朝日新聞] 震災障害者 もう孤立させぬために (2017年03月23日)

地震で負傷し、障害が残った「震災障害者」を孤立させないでほしい。95年の阪神大震災で障害者になった人たちと支援団体が先月末、政府に要望した。

東日本大震災では約6千人が重軽傷を負った。昨年の熊本地震でも2千人を超す。

傷が癒えても心身の機能が元に戻らず、多くの人が障害者となることは、阪神の被災地で問題視されてきた。

だが実際どれだけの人に障害が残ったか、全容をつかむすべは今のところない。周囲に悩みを打ち明けられず、孤立しがちだと当事者たちは指摘する。

地震大国の日本では、誰もが震災障害者になりうる。どんな支えが望ましいか。過去の教訓に耳を傾け、考えたい。

まずは、誰が震災障害者になったかを行政が把握できる仕組みが必要だろう。

今の公的支援としては、災害弔慰金法に基づく最高250万円の災害障害見舞金がある。東日本では岩手、宮城、福島3県で今年1月までに92人が受給した。熊本では昨年末までに4人だという。だが、支給対象は、両腕・両足の切断や両目失明といった最重度の障害だけだ。

兵庫県と神戸市の10年の調査では、阪神大震災で少なくとも349人が障害を負ったが、約8割は見舞金の対象外だった。東日本や熊本でも似たような状況である可能性がある。

神戸市にある支援団体「よろず相談室」は改善策として、被災者が自治体に障害者手帳の交付を求める時に提出する医師の診断書の書式を改めるよう提案する。障害の原因欄に「震災・天災」を加えることだ。

兵庫県と神戸市はすでに採用している。ほかの自治体もすぐに検討してもらいたい。

その上で、被災者の置かれた実情に気を配り、寄り添って支える仕組みが必要だ。

震災障害者は、家族や住居、仕事も失うといった複合的な困難に直面しがちだ。悩みを抱え込み、苦しむケースが目立つ。

よろず相談室は07年から月1回、震災障害者と家族、支援者が思いを語り合う「集い」を開いてきた。阪神大震災で下半身不随になった飯干初子さん(70)は「おしゃべりをするうちに、笑って生きていこうという気持ちになれた」と振り返り、「ほかの被災地でも同じような場を」と願う。

障害を負った人々が前を向いて生きられるよう、手を差し伸べる。社会全体で協力すれば、決して難しくはあるまい。「ひとごとではない」と考える人を増やしていきたい。
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2017年03月22日

[朝日新聞] 豊洲百条委 都の無責任体質に驚く (2017年03月22日)

土壌汚染がわかっていた豊洲への市場移転を、誰が、いかなる判断に基づいて決めたのか。

東京都議会百条委員会による石原慎太郎元知事らへの証人喚問を終えても不透明さは残ったままだ。かわりに浮き彫りになったのは、決定にかかわった人々の驚くべき無責任ぶりだ。

質疑から、都が東京ガスと01年に「水面下」で交わした文書の存在が明らかになった。豊洲の汚染物質の処理は都条例の範囲にとどめるとし、完全除去までは求めない内容だ。交渉の基調となり、11年に都は「今後の汚染対策費は東ガスに負わせない」とする協定を結んだ。

政策を進める際に、相手の事情を踏まえ、譲歩や妥協をせざるを得ない場面はある。

だがそのためには、状況を掌握し、他の方策も検討したうえで決断することが不可欠だ。とりわけ費用が百億円単位になる事業とあれば、最上層部が知らないでは済まされない。

実際はどうだったか。

石原氏は豊洲問題について「大きな流れに逆らいようがなかった」と証言し、当時の浜渦武生副知事に一任したと述べた。豊洲移転を表明した10年、「知事が歯車を大きく回すしかない。それがリーダーとしての責任だ」と会見で語った石原氏の、これが実像なのか。

浜渦氏は05年までナンバー2として石原氏の名代を務めた。だが、市場問題に携わったのは01年文書を結ぶ前までだとし、「私のどこに責任があるのか」と気色ばんだ。元市場長らも水面下交渉について「知らない」をくり返した。

汚染対策に巨費を投じた末に、こんな情けないやり取りを目の当たりにしなければならない都民は、その気持ちをどこにぶつければいいのか。

もうひとつあきれたのは、都がいま保管している01年文書は原本ではなく、作成の6年後に東ガスからファクスで送られた写しだという事実だ。重要な合意が引き継がれず、幹部で共有もされない根底に、こうしたずさんな文書管理がある。

小池百合子知事は、市場問題の経緯の検証が今後の移転判断に「影響を及ぼす」と述べる。検証はむろん大切だが、それが進まないことが判断の先送りを続ける理由にはなるまい。

明らかになった無責任体質の反省に立ち、意思決定過程を透明にして、後世の批判に耐える都庁の態勢を築く。それが、知事が率先して取り組むべき課題だ。豊洲移転の是非についても、そのプロセスの中で結論を出していかねばならない。
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[朝日新聞] 「共謀罪」法案 疑問尽きない化粧直し (2017年03月22日)

かつて3度廃案になった「共謀罪」を創設する法案が、化粧直しをして組織的犯罪処罰法改正案として閣議決定された。

先立つ与党審査では、当初案になかった「テロリズム集団」という言葉を条文に書きこむ修正がされた。テロ対策の法案だと世間にアピールするのが狙いで、法的に特段の意味はない。

化粧直しのポイントは、(1)取り締まる団体を「組織的犯罪集団」に限定する(2)処罰できるのは、重大犯罪を実行するための「準備行為」があった場合に限る(3)対象犯罪を組織的犯罪集団のかかわりが想定される277に絞る――の三つだ。

だが、いずれにもごまかしや疑問がある。

旧来の共謀罪についても、政府は「組織的な犯罪集団に限って成立する」と言ってきた。だとすれば(1)は新たな縛りといえない。安倍首相の「今度は限定している。共謀罪との大きな違いだ」との国会答弁は、国民を誤導するものに他ならない。

(2)の「準備行為」も何をさすのか、はっきりしていない。

殺人や放火などの重大犯罪には「予備をした者」を罰する規定が既にあるが、これと「準備行為」はどこがどう違うのか。準備行為である以上、犯罪が実際に着手される前に取り押さえることになるが、それまでにどんな捜査が想定されるのか。わかりやすい説明が必要だ。

共謀罪は組織犯罪防止の国際条約に加わるために必要とされた。そして条約の解釈上、重い刑が科せられる600超の犯罪に一律に導入しないと条件を満たせないというのが、政府の十数年来の主張だった。

(3)はこれを一転、半減させるというものだ。融通無碍(むげ)、ご都合主義とはこのことだ。

現時点で政府が「市民生活に影響は及ばない」と説いても、状況次第で法律の解釈適用をいかようにも変えられると、身をもって示しているに等しい。

そもそも条約をめぐっては、これほど大がかりな立法措置を求めておらず、現行法のままで加盟可能との異論も以前からある。何らかの手当てが必要だとしても、277の罪が妥当かの精査は当然必要となろう。

条約を締結できないことで、これまでにどんな支障が生じ、締結したらいかなるメリットがあるのか。この点についても、政府から説得力のある具体的な説明はなされていない。

犯罪が実行されて初めて処罰するという、刑法の原則をゆるがす法案である。テロ対策の名の下、強引に審議を進めるようなことは許されない。
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2017年03月21日

[朝日新聞] 残業時間規制 まだ一歩でしかない (2017年03月21日)

働き方改革で焦点となっている残業時間の規制について、繁忙期など特別の場合の上限を「月100時間未満」とする案を、政労使がまとめた。

ほかに、労使協定で認められる残業の原則は月45時間までと法律に明記▽これを超える特例は年6カ月まで▽2?6カ月間の特例の上限は月平均で80時間以内、とする方向も固まった。

これまで事実上無制限だった残業時間に上限が設けられる。長時間労働を改めていく一歩には違いない。だが、現状の深刻さを考えると物足りない。さらなる残業削減への努力を関係者に求める。

上限規制を巡って「100時間未満」を主張する連合と「100時間以下」を唱える経団連が対立するなか、最後は安倍首相が「未満」とするよう要請した。連合に配慮を示した形だが、実態は当初「100時間など到底あり得ない」と反対していた連合の譲歩だ。

合意ができず規制が導入できなくなっては元も子もないという判断もあっただろう。が、100時間を超える特別条項付きの労使協定は今でも全体の約1%にすぎない。現状追認と言われても仕方あるまい。

過労死で家族を失った遺族は今回の案に強く反対している。月100時間の残業は、労災認定の目安とされる「過労死ライン」ぎりぎりだからだ。15年度に脳・心臓疾患で過労死と認定された96件のうち、月100時間未満の残業だった例は54件と過半を占める。懸念の声があがるのはもっともだ。

そもそもこの上限は、どんな場合も超えてはならない「最低基準」だ。この範囲内の労使協定ならよいわけでなく、できる限り残業を減らす努力が求められることは言うまでもない。

政府も、こうした考え方を徹底し、残業時間を短くする取り組みを促す考えは示しているが、どうやってその実を上げていくのか。さらに具体的に示す必要がある。

合意では規制の実施状況を踏まえて5年後に見直しも検討するとされているが、さらに上限を引き下げていく姿勢をより明確にすべきではないか。

厚労省が昨年11月、長時間労働が疑われる全国約7千事業所を対象に立ち入り調査したところ、労使協定を上回るなどの違法な残業が約4割で見つかった。規制は作るだけでなく、守られてこそ意味がある。指導監督態勢の強化も大きな課題だ。

政府は疑問や不安の声に耳を傾け、実行計画やその後の法改正の作業にいかしてほしい。
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[朝日新聞] 黒田日銀総裁 国民に説明責任果たせ (2017年03月21日)

日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁が就任5年目を迎えた。当初から、2年程度で年率2%の物価上昇を目指すことを掲げてきたが、依然、実現を見通せていない。任期が残り1年になった今、国民への説明責任を果たすよう改めて求めたい。

まずは、現行の大規模な緩和策に潜むコストについてだ。

将来、物価上昇率目標が実現すれば、日銀は利上げが必要になる。その「出口」でどんな対応をするのか、日銀はほとんど明らかにしていない。黒田総裁は「経済・物価・金融情勢によって、出口での戦略も変わってくるため、時期尚早なことを言うと、マーケットに余計な混乱を及ぼす」と説明する。

たしかに、具体的な手順について予断はできない。だが想定される多くの場合で、巨額の国債を抱え込んだ日銀が大幅な損失を出す可能性がある。前提の置き方にもよるが、年間数兆円規模の損失が何年も続くと試算する専門家もいる。

もちろん、日銀の目的は物価安定であり、利益の最大化ではない。収益にしても長期間でならして考えれば、大きな問題にはならないとの見方もある。

そうだとしても、出口でのコストの議論を封印しているのは不健全だ。そのときになって急に公表すれば、日銀への信頼が失われかねない。黒田氏ら今の執行部が説明すべきで、「時期尚早」は言い訳にならない。

昨秋から始めた長期金利の操作も問題をはらむ。米国の利上げなどで長期金利の上昇基調が強まる中で、低水準に固定する操作は、市場への介入を強めることになる。操作に無理がないか、国債購入が財政難への政府の危機感をゆるめていないか、副作用についての説明も十分とは言えない。

説明責任を果たすうえで、注目されるのは政策決定会合での議論だ。会合には、正副総裁3人と6人の審議委員が参加する。いずれも、国会の同意を得て内閣が任命している。

最近の会合では第2次安倍政権下で任命された7人が執行部提案に賛成し、それ以前に任命された審議委員2人が反対するケースが続く。後者の2人は今年の7月で任期を終える。後任次第では、会合で表明される意見の幅が狭まりかねない。

次の審議委員の人選は、来春の正副総裁の後任選びの試金石でもある。多様な見解の持ち主による十分な討議があってこそ、政策は周到さを増し、国民への説得力も高まる。国会と内閣は、その責任の重さを自覚してほしい。
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2017年03月20日

[朝日新聞] G20と米国 「国際協調」を粘り強く (2017年03月20日)

「米国第一」を掲げる世界最大の経済大国の独善がまかり通り、自由貿易体制が揺らぐのか。そんな危惧を禁じ得ない結果である。

米トランプ政権の発足後、初めての国際経済会議として注目された主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明が、昨年から一変した。焦点だった通商分野の記述は、「あらゆる形態の保護主義に対抗する」という一文が削られ、「経済に対する貿易の貢献の強化に取り組んでいる」という表現にとどまった。

自国の貿易赤字削減と国内での雇用確保を掲げ、保護主義的な姿勢を強める米国が強硬に削除を主張。複数の国が反対して引き続き明記するよう求めたが、米国に押し切られる形で妥協したようだ。

G20は1990年代後半のアジア通貨危機を受けて財務相・中央銀行総裁会議が始まり、08年のリーマン・ショック後に首脳会議も設けられた。グローバル化が進む経済の危機を防ぐには主要国と新興国の協調が欠かせない。そうした理念の柱の一つが「反保護主義」だった。

時代を逆行させるかのような動きは、米国にとどまらない。欧州でも移民・難民や雇用への懸念などを背景に、英国が欧州連合(EU)からの離脱を決めた。フランスなどでも排外主義的な主張が台頭している。多国間の枠組みに背を向ける米国を放置すれば、危うい「自国最優先」に弾みがつきかねない。

ここは、各国が結束を強め、国際協調の大切さを粘り強く訴え続けなければならない。

今年のG20議長国のドイツは財務相会議の終了後、7月の首脳会議に向けて議論を継続する意向を示した。5月には主要7カ国(G7)首脳会議もある。米国に翻意を促していけるかどうかが問われる。

日本の責任と役割は大きい。

安倍首相は欧州歴訪に出発し、独仏などの首脳と会談する。自由貿易体制の維持と深化は主要議題の一つだ。各国と連携して「反保護主義」を明確にうたってほしい。日本とEUの経済連携協定など、多国間での交渉を前に進めることも有効だろう。

今回のG20財務相会議の声明では、地球温暖化に関する文章もすべて削除された。環境対策に後ろ向きなトランプ政権の意向が反映されたとみられる。

国際協調が不可欠な課題は、途上国の開発支援や貧困対策など、ほかにも数多い。取り組みの停滞を防げるか、貿易分野が試金石となる。
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[朝日新聞] 駅前活動判決 過剰規制省みる機会に (2017年03月20日)

意見が割れるテーマを取りあげた催しや活動は公共の場から締め出し、発表の機会そのものを与えない。各地の自治体に広がるこのおかしな風潮に、歯止めがかかることを期待したい。

神奈川県海老名市の駅の自由通路で「マネキンフラッシュモブ」と呼ばれる活動をしないよう命じた市長の命令を、横浜地裁がこのほど取り消した。

不特定多数の人が集まり、共通の衣装をつけ、各自ポーズをとってマネキンのように静止する。数分間続けると次の場所に移動し、またポーズをとる。そんなパフォーマンスだ。

参加者が「アベ政治を許さない」「自由なうちに声を上げよう」と書いたプラカードを持っていたことから、市は「条例が禁じる集会・デモや承認のない広報活動にあたる」とし、今後こうした行為をしないよう命じた。その命令が違法とされた。

もっともな判断である。

判決は、集まったのは約10人で、1時間半ほどの活動中、他の通行人の妨げにならなかったと指摘し、市は条例の解釈適用を誤っていると述べた。

直接の言及こそなかったが、民主社会を築くうえで欠かせない「表現の自由」を重視する立場にたって、結論を導きだしているのは明らかだ。

人はだれも自分の意見を持つ自由を持つ。だが他人に伝えられなければ、心の内にあるだけにとどまる。世の中に訴え、賛否にさらされ、考えを深め、また世に問い、賛同者を増やす。そのサイクルがうまく回って初めて、民主主義は機能する。

ネット時代を迎え、意見を表明する手段は質量とも大きく変化した。しかし、道路や公園・広場、公民館など大勢の人が行き交い集う場が、大切な役割を担うことに変わりはない。

にもかかわらず、政治性があるなどの理由で、こうした公共空間を市民に利用させない行政の動きが近年目につく。対立や苦情に巻きこまれたくないという「事なかれ主義」に基づくものも多いようだが、過剰な規制は、結局は自分たちの足元を掘り崩し、社会を弱体化させる。この自覚を欠いた安易な制約が横行してはいないか。

表現活動を縛るのは、危険な事態を招くと明らかに予想されるときや、法が定める不当なヘイト行為など、例外的な場合に限るべきだ。主催者側とよく話し合い、状況に応じて、条件をつけて使用を認めるなどの工夫も検討されてよい。

海老名市は控訴を断念した。司法の警告を「我が事」として各自治体は受けとめてほしい。
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