2018年01月23日

[朝日新聞] 機密費判決 知らしむべからずの罪 (2018年01月23日)

小さな風穴、ではある。それでも一歩前進だ。

市民団体が内閣官房機密費の使い道を明らかにするよう求めた裁判で、最高裁が文書の一部開示を命じた。公開を一切拒んできた政府は、その国民不在の姿勢を猛省する必要がある。

機密費は、内閣官房の仕事を円滑に進めるために機動的に使える経費とされる。官房長官が管理し、政策への協力を依頼する際の対価(政策推進費)や情報提供者への謝礼、飲食代、慶弔費などに使う。毎年十数億円が計上され、会計検査院によるチェックも限られる。

最高裁は、機密費全体から、いつ、いくらを政策推進費に繰り入れたかを記録した文書や、毎月の支払総額などの公開を命じた。その範囲なら個別の支払先や目的が判明する可能性はなく、業務に支障が及ぶおそれはないと結論づけた。16年2月の大阪高裁判決は、飲食費の支払いを決定した日付なども公開対象としたが、最高裁はそこまでは踏みこまなかった。この点は不十分と言わざるを得ない。

他国に関する情報収集など、秘密を要する活動があることは否定しない。だが、裁判にのぞんだ国側の姿勢には重大な疑義がある。機密費の使途に国民やメディアが関心を寄せること自体、大きな迷惑だと言わんばかりの主張を繰り広げた。

実態はどうか。

自民党から民主党への政権交代があった09年の衆院選後に、一度に2億5千万円もの機密費が引き出された。選挙費用に充てたのではないかとの疑念が持ちあがった。ほかにも国会対策と称して、機密費から与野党の国会議員らにカネやモノが渡ったことを示す、官房長官経験者の証言や記録がある。

他者の目が届かなければ必ず腐敗は起きる。機密費の扱いの見直しは必至だ。外交文書と同じように、一定の期間が過ぎた後に第三者が検証できる仕組みの導入も検討すべきだろう。

興味深いのは山本庸幸判事の個別意見だ。文書に公開、非公開双方の情報が混在している場合、「情報は一体のもの」としてすべて非公開にしてしまう考えを批判し、一つ一つ丁寧に検討していく必要性を指摘した。当然の見解で、この問題を議論していくうえで参考になる。

民主主義をなり立たせる基盤が情報公開であることを理解せず、その範囲を狭めようという動きは、中央・地方を問わず厳然としてある。とりわけ現政権にはその色が濃い。判決を、こうした誤った考えを正す機会にしなければならない。
posted by (-@∀@) at 11:21| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[朝日新聞] 憲法70年 際立つ首相の前のめり (2018年01月23日)

通常国会が開会した。安倍首相は自民党の両院議員総会で、こう呼びかけた。

「わが党は結党以来、憲法改正を党是として掲げてきた」「そしていよいよ実現をする時を迎えている。皆さん、その責任を果たしていこう」

3月25日の党大会までに、党としての改憲原案をまとめたい――。首相に近い党幹部からはこのところ、そんな発言が相次いでいる。

だが目下の政治情勢は、首相らの前のめり姿勢とは程遠い。

焦点の9条について、自民党内ですら意見は割れている。1項と2項を維持して自衛隊を明記する首相案に対し、戦力不保持をうたう2項を削除して自衛隊の目的・性格をより明確にするべきだという議員もいる。

連立を組む公明党も慎重姿勢だ。山口那津男代表は「国会で議論を尽くして国民の理解、判断が成熟する。ここを見極めることが重要だ」と語っている。

野党はもちろん、与党内も意見はまとまらず、国民的な議論も深まっていない。そんな中でなぜ首相はアクセルを踏み込み続けるのか。

自ら昨年5月に打ち上げた「2020年の新憲法施行」に間に合わせるためだ。言い換えれば、安倍氏自身が首相でいるうちに改憲したいからである。

来年は統一地方選や天皇陛下の退位、新天皇の即位などが続く。夏には参院選があり、国会発議に必要な3分の2超の勢力を維持できるかは見通せない。

つまり「20年改憲」のためには、9月の党総裁選で首相の3選を決め、年内に国会発議し、来春までに国民投票を終えておきたい、ということである。

忘れてならないのは、改憲は首相の都合で決めていいものではないということだ。

首相はきのうの施政方針演説で「国のかたち、理想の姿を語るのは憲法だ」と述べた。これに対し、立憲民主党の枝野幸男代表は「憲法は国民が公権力を縛るためのルールだ」と反論。首相が間違った前提を改めなければ、「まっとうな議論はできない」と指摘した。

改憲の是非を最終的に決めるのは、主権者である国民だ。

重要なのは、国民がその改憲を理解し、納得できるような丁寧な議論を積み重ねることだ。

首相は施政方針演説で、国会の憲法審査会で与野党が議論を深めることへの期待を述べた。

だが首相の前のめり姿勢は、これに逆行する。

国会議員の数を頼み、強引に押し切るようなふるまいは、国民に分断をもたらしかねない。
posted by (-@∀@) at 11:21| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月22日

[朝日新聞] 企業と人権 世界の動きに対応を (2018年01月22日)

企業が配慮するべき人権を広くとらえ、保護に努めるよう求める声が世界で広がっている。

自社やグループ企業はもちろん、原材料の調達から加工・製造、販売まで、取引全体に目配りする必要がある。従業員を大切にするだけでは不十分で、環境破壊も住民に対する人権侵害だ――そんな考え方である。

経団連も昨年、企業行動憲章を改定し、「人権の尊重」をうたう条文を新設した。だが、日本企業の動きは鈍い。批判をかわす守りの発想にとどまらず、積極的な姿勢を見せてほしい。

ビジネスと人権の関係については国連が11年、原則を打ち出し、各国政府の義務と企業の責任などを示した。

その2年後、バングラデシュで縫製工場が入ったビルが崩壊し、千人を超す犠牲者が出た。世界的な有名ブランドを支える下請け労働者の劣悪な環境が衝撃を与え、大手企業の責任を問う動きが本格化した。

人権と環境を結びつける流れが強まったのは、15年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)がきっかけだ。

17分野のうち企業にとって人権に直接かかわるのは働き方、ジェンダー平等などだが、気候変動や生態系・森林、水も人権に引きつけて考える。そうした視点は、SDGsがうたう「誰一人取り残さない」と重なる。

日本企業では、「ユニクロ」が昨年、アジア7カ国の縫製工場140余りを公表したことが注目されたが、背景にはNGOからの要求があった。花王は、製品の原料であるパーム油や紙・パルプへの配慮をはじめ、人権侵害がないか幅広く調べる姿勢が評価されているが、取り組みを加速させたきっかけは、やはりNGOからの批判だった。

今後企業に問われるのは、自らすすんで人権問題に向き合えるかどうかである。

どう取り組めばよいのか、戸惑う声は少なくない。そんな企業の一つだったANAは、まずは機内食の食材調達などわかりやすい課題に絞り、少しずつ広げていく方針という。参考になるのではないか。

企業を動かすのは、NGOだけではない。

農林水産分野をはじめ、NGOなどが人権や環境の観点から認証を与えた商品は着実に増えている。企業を環境と社会、社内統治の三面から評価し、資金の振り向け先を決める「ESG投資」をうたう投資信託も目立ってきた。

商品の購入や資金運用を通じて応援する企業を選ぶ。それが企業を変える原動力になる。
posted by (-@∀@) at 11:21| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

NHK 公共性の議論をもっと

posted by (-@∀@) at 11:21| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[朝日新聞] NHK 公共性の議論をもっと (2018年01月22日)

NHKが18年度から3カ年の経営計画を発表した。放送に加え、ネット配信も活用した「公共メディアへの進化」を重点方針の第一にかかげる。

だが、華々しいアピールの陰で、視聴者が置き去りにされた感は否めない。

象徴的なのは、籾井(もみい)勝人前会長が提唱した受信料の値下げが見送られ、一部対象者への減免措置にとどまったことだ。事業収入は過去最高を更新中。毎年7千億円を大きく上回り、20年度の繰越金は600億円を超えるにもかかわらず、である。

理由としてNHKは、東京五輪に向けたスーパーハイビジョン(4K・8K)の設備投資などに巨費がかかることを挙げる。しかし、そうまでして超高精細な画像がなぜ必要なのか、丁寧な説明はない。「一度値下げすると値上げは難しい」という石原進経営委員長の発言は、世の中にどう受けとめられたか。自己都合が過ぎよう。

視聴者の視線は厳しさを増している。事実をゆがめた番組づくり、取材費の流用、受信料の着服など不祥事が相次ぐ。報道姿勢をめぐっても、政権との距離感を欠くとして公正さを疑う声は絶えない。いずれもNHKの存立にかかわる問題だ。

若者を中心にテレビ離れが進み、メディア環境が激変するなか、NHKの公共性とは何か、何が期待されているのか、突っ込んだ議論が必要だ。

受信料訴訟で政府が最高裁に出した意見書は、災害時などの情報提供を使命と位置づけたが、それにとどまるものではない。NHKには、社会全体に情報を届け、人々の知識や教養を底支えしてきた歴史がある。不確かな言説がネット上に飛びかういま、使命はますます重くなっているとの見方も強い。

だが、意欲的で優れた番組がある一方で、いい意味でのNHKらしさが薄れてきているのを危ぶむ声は少なくない。表向きは否定するが、現場からは「視聴率主義が強まっている」との嘆きがしきりに聞かれる。

民放の二番煎じのような安易な演出や、近年目に余る番組宣伝の多さは、NHKに対する信頼を深いところで傷つける。視聴率に結びつかなくても、多様な価値観をすくい上げ、人々のニーズにきめ細かく対応した放送がなされなければ、市民が受信料で支える意義はない。

上田良一会長は年頭あいさつで「NHKの公共性が問われる年」と述べた。その言葉通り、批判に真摯(しんし)に向き合い、社会との対話を深めることが、この巨大組織に求められている。
posted by (-@∀@) at 11:21| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月21日

[朝日新聞] 原発輸出 国民にツケを回すのか (2018年01月21日)

苦境の原発産業を支えるために、国が高いリスクを肩代わりする。そんなやり方に、国民の理解が得られるだろうか。

日立製作所が英国で計画する原発の建設・運営事業に対し、日本政府が資金面で強力な支援策を検討している。

だが、福島第一原発の事故後、安全規制の強化で建設費が膨らむなど、世界的に原発ビジネスのリスクは大きくなっている。東芝が米国で失敗し、経営危機に陥ったことは記憶に新しい。万が一、大事故を起こした時の賠償責任の重さは、東京電力がまざまざと見せつけた。

日立の事業がうまくいかなければ、支援をする政府系機関が巨額の損失を被り、最終的に国民にツケが回りかねない。政府は前のめりの姿勢を改め、リスクの大きさや政策上の必要性を慎重に見極めるべきだ。

計画では、日立の子会社が原発を建設し、20年代半ばに運転を始める。現時点で3兆円ほどと見込まれる事業費は、日英の金融機関からの融資や新たに募るパートナー企業の出資などでまかなう想定だ。日立は採算性を見極めた上で、建設するかどうかを来年にも最終判断する。

この計画に対しては、日本の大手銀行は慎重な一方で、「官」の肩入れが際立つ。政府系の国際協力銀行が数千億円を融資するほか、数千億円と見込む民間銀行による融資の全額を貿易保険制度の対象とし、返済を国が実質的に保証する方向で調整している。日本政策投資銀行も出資に加わるとみられる。

ここまで政府が後押しするのは、原発産業を守る思惑があるからだ。福島の事故以降、国内では原発の新設が見込めず、経済産業省やメーカー、電力大手は、技術や人材の維持をにらんで海外市場に期待する。

だが、原発輸出はあくまでビジネスであることを忘れてはならない。リスクは、事業を手がける民間企業が負うのが本来の姿だ。それを国が引き受けるというなら、社会にとって有益であることが前提になる。国民の多くを納得させられるような意義はあるだろうか。

政権と経済界は、原発などインフラ輸出の推進で足並みをそろえてきた。日立会長の中西宏明氏が近く経団連の会長に就くだけに、今回の支援策が合理性を欠けば、官民のもたれあいだと見られるだろう。

そもそも、福島の事故を起こした日本が原発を海外に売ることには、根本的な疑問もある。

政府や関係機関は、幅広い観点から検討を尽くし、国民に丁寧に説明しなければならない。
posted by (-@∀@) at 11:21| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[朝日新聞] 中国経済 不平等にどう対処する (2018年01月21日)

中国の昨年の経済成長率は6・9%だった。ここ最近は徐々に減速していたところ、7年ぶりにわずかながら加速に転じた。消費、投資、輸出とも堅調で、まずまずの結果と言っていいだろう。

習近平(シーチンピン)政権は単に高い成長率を求めるのではなく、成長の質を追求する姿勢だ。昨年末の中央経済工作会議で、そんな方針が打ち出された。

だとすれば問われるべきは、貧富の差であろう。40年近く前に始まった改革開放以降、ほぼ一貫して悪化してきた問題にどう対応するのか。

昨年末の会議では貧困対策が重点課題に挙げられたものの、発表文に「過度の期待を抱かせない」との文言がわざわざ盛り込まれた。こうした中央のシグナルは、各地の現場に負の影響を与えかねない。

昨年11月半ば、象徴的な事件が起きた。北京の出稼ぎ労働者の集まる地区で火災が発生、19人が犠牲になった。これをきっかけに市当局が住民の強制排除に乗り出した。

「違法建築」をその理由としたが、首都の都市計画推進の前に、彼らの代替住居を用意しておくべきだった。国内でも批判の声が上がった。

全国の出稼ぎ労働者は2億人を数える。劣悪な生活環境にあり、賃金未払い問題にさらされている。一方で、日本の高所得者以上の生活レベルを享受する都市住民が増えている。

フランスの経済学者ピケティ氏らのグループが公表している「世界不平等報告」の最新版によれば、中国では上位1割の高所得層が所得全体の41%を占める。北米ほどではないが、欧州より富の偏りが大きい。

そもそも貧富の差は、80年代以降の経済発展の機会に恵まれた人々と、そうでなかった人々との差に始まる。さらにその上に複合的な要因が加わった。

財政による所得の再分配機能が相当に弱い。とくに税制では相続税がない。また、年金・医療など社会保障の仕組みは、まだまだ手薄だ。

近年、大都市部で不動産価格が高騰し、北京や上海では過去数年で3?4倍になった物件が珍しくない。これが格差をさらに広げている。

社会主義を標榜(ひょうぼう)し、「西側と異なる中国式発展の道」を習政権が強調してみたところで、これまでの経済の実態は米国流の新自由主義に近い。

昨秋の共産党大会で習氏は、貧困を撲滅し、一人ひとりの生活の質を高めると宣言した。その本気度が問われている。
posted by (-@∀@) at 11:21| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月20日

[朝日新聞] 外国人住民 日本語学習の支援を (2018年01月20日)

日本に住む外国人の数が昨年、240万人を超えた。この5年間で四十数万人の増加だ。しかし日本語が理解できず、社会に溶け込めない人も多い。生活や学習に欠かせない日本語教育を支援する制度が必要だ。

優先すべきなのは、子どもへの学習支援である。

文部科学省の16年度の調査では、公立の小中高校などで日本語の指導が必要な児童・生徒は約4万4千人いる。国際結婚で親のどちらかが日本人であっても、両親が外国語で話すため、日本語を十分理解できないまま学齢期に達する例もある。

文科省は4年前、日本語の能力が不足している子どものため、別教室で日本語や算数などを教えられるよう制度改正した。だが、実施しているのは外国人の多い自治体が中心で、4割弱。放課後などの日本語指導で対応している学校もある。

地域によっては、NPOの日本語教室頼りなのが現状だ。

15歳で来日した日系ペルー人4世のオチャンテ・村井・ロサ・メルセデスさん(36)=奈良学園大助教=は、日本語が理解できないことに苦しみ、三重県伊賀市のNPOが開く日本語教室に通いつめた体験をもつ。

「子どもが多様な将来の夢を描くには、社会の支えを制度化することが必要」と話す。

浜松市など外国人住民の多い22市町は昨年11月、「外国人集住都市会議2017」を津市で開き、外国人住民の日本語学習の機会を国が保障するよう求める津宣言を採択した。

首長からは、専業の日本語教師の育成▽日本語教育に取り組む企業への助成制度▽日本語習得者の在留資格での優遇――などのアイデアが出た。

こうした背景には、外国人とのトラブルを未然に防ぎたい事情もあろう。同時に人口減が進む中、外国人住民が地域社会の一員として能力を生かし、活躍できる仕組みを作ることは、町の活性化に不可欠だという考えもあるのではないか。

国は現実を正面から受け止め、財政、人材両面での支援策を具体化するべきだ。

労働人口が減少する中、政府は外国人技能実習生制度などで事実上、外国人労働者の受け入れを拡大してきた。その是非はおき、結果として在留外国人が増えている現実を前に、共生社会の実現に向けて環境を整えることは避けられない課題だ。

この問題では超党派の「日本語教育推進議員連盟」が16年に発足、基本法の制定をめざしている。実態に即した議論が国会で広がることを期待する。
posted by (-@∀@) at 11:21| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[朝日新聞] トランプ1年 危ぶまれる米国の理念 (2018年01月20日)

失望の連続だった。米大統領としての資質に欠ける疑いが深まる一方である。トランプ氏がきょうで就任1年を迎えた。

大統領選をめぐるロシア関連疑惑、側近や高官の解任など、政権は揺れ続けた。米国内に不安が広がり、世界の目に映る米国の姿も色あせてきた。

露呈したトランプ氏の思慮の浅さは目にあまる。

核のボタンを手にしたと誇る北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)氏に対し、「私のはずっと大きくパワフルだ」と応じる。これほど軽率に核戦争を口にする米軍最高司令官の存在は危険というほかない。

人種や宗教をめぐる差別意識は相変わらずだ。イスラム教徒への差別をあおる動画をツイッターで拡散したほか、中米やアフリカの国々を「肥だめ」と呼んだ疑惑が浮上した。

「力による平和」をとなえるトランプ氏は、米国の力の源泉を見誤っている。軍事と経済がすべてではない。自由と平等を重んじる寛容な多元主義という理念こそが、世界での指導的な地位を裏打ちしてきた。

中国やロシアなど、台頭する各地の国々は軒並み、独裁や排他的な強権統治を強めている。その潮流のせき止め役になるべき米国が逆に、自らの理念を損ねていくのは嘆かわしい。

この間は、米国の統治システム全体の健全さが試されてきたともいえる。一部の移民・難民に扉を閉ざそうとした大統領令に対し、司法がただちにブレーキをかけたのは救いだった。

しかし本来、政権を常に監視し、外交政策でも安全弁となるべき議会の存在感は薄い。都合の悪い報道を「フェイク」と切り捨て、司法の独立や報道の自由などの原則を侮蔑する大統領をいさめる議員は少ない。

上下両院の多数派を握る与党共和党の責任は重い。トランプ氏の支持率は全体では3割台だが、共和党支持者に限れば、まだ7割ある。その現実を前に口をつぐむなら、米議会も狭量な保身政治のそしりを免れまい。

11月には上院の3分の1と下院の全議席を改選する中間選挙がある。今の政治で傷つけられているものは何か、議員と有権者全体で考えてもらいたい。

一方、この異色な大統領との個人的な関係がめだつ外国首脳といえば、安倍首相である。

気候変動対策に背を向けるなど国際社会にとって米政権のリスクが高まる中、ひたすら蜜月関係を強調するのは異様だ。

国際秩序の行方が危ぶまれるからこそ西欧の首脳と同様、トランプ氏に率直に苦言を呈す。その責任が安倍首相にある。
posted by (-@∀@) at 11:21| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月19日

[朝日新聞] 日米原発協定 再処理工場は動かせぬ (2018年01月19日)

今年7月に30年の期限を迎える日米原子力協定が自動延長される。両政府とも期限の半年前までに再協議を申し入れず、今の内容で継続する。

日本の原子力事業は原発から研究開発まで、この協定に従って進められている。なかでも、原発の使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す「再処理」を日本に認めていることは、協定の大きな特徴だ。

しかし、協定で許されていることと実際に再処理することは別の話だ。日本は既に長崎型原爆を約6千発作れるだけのプルトニウムを抱えており、減らしていくメドは立っていない。

青森県六ケ所村に電力業界が建設中の再処理工場は動かしてはならない。建設中止を含めて議論すべき局面である。

前回の改定では、日本は再処理の権利を米国に認めさせることに注力した。核燃料サイクル構想を実現し、プルトニウムを高速増殖炉で燃やせば、燃やした以上の燃料を得ることができ、エネルギー問題を解決できると考えた。

しかし、核燃料サイクルはこの30年間で、経済性を欠き安全上の懸念も大きいことが明白になった。先進国のほとんどがサイクルを断念。日本も一昨年、高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉を決め、サイクル事業は事実上破綻(はたん)している。

日本が持つプルトニウムは、英仏両国に再処理を委託してきた分を含めて約47トンに達する。政府と電力業界は、それをウランと混ぜて通常の原発で燃やすプルサーマル発電で減らしていくと言うが、原発の多くは福島の事故後、止まったままだ。

核不拡散条約のもとで、日本は非核保有国では唯一、再処理を認められている。プルトニウムの平和利用に徹するのが条件だが、現状では日本政府がいくらそう強調しても、国際社会の疑念は消えない。

内閣府の原子力委員会は「利用分だけ再処理する」方針を明示することを検討し始めたが、認識が甘く、対応が遅すぎる。新たにプルトニウムを取り出せる状況ではまったくない。

余剰プルトニウムは持たないとの国際公約にのっとって、保有量の削減に具体的に取り組むべきだ。英仏への譲渡や米国への処分法の研究委託も一案だ。

六ケ所村の再処理工場は97年に完成予定だったが、昨年末に23回目の延期が決まり、21年度上半期へと約3年先延ばしされた。トラブルが後をたたず、建設費は当初の4倍近い2・9兆円に膨らんでいる。

答えは明らかなはずだ。
posted by (-@∀@) at 11:21| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[朝日新聞] 民進と希望 「数合わせ」から卒業を (2018年01月19日)

案の定、というべきか。

民進党と希望の党の執行部が合意した、国会での統一会派結成がご破算になった。

旧民進党勢力が散り散りになり、自民党が大勝した衆院選からわずか3カ月。たもとを分かったはずの両党が、元のさやに戻る。そのこと自体に無理があった。

週明けに始まる通常国会を前に、混乱を引き起こした両党執行部の責任は重い。

巨大与党に対抗するには野党の連携が欠かせない――。確かにその通りだ。だが「数合わせ」を急ぐなかで、両党は政党の大事な使命を怠った。

その連携で何をめざすのか、基本的な方向性を共有するための真摯(しんし)な政策協議である。

両党の姿勢が異なる安全保障関連法については「違憲と指摘される部分を削除することを含め、必要な見直しを行う」との文書をかわした。それぞれが都合よく解釈できる玉虫色の合意である。

かつての民進党の姿が思い浮かぶ。寄り合い所帯を反映し、その場しのぎのあいまい対応を繰り返し、それが結局、先の衆院選での分裂につながったのではなかったか。

統一会派の協議の前に、両党がなすべきことは明らかだ。まずそれぞれの党内で、理念や政策を徹底的に論じ合うことだ。

その結果、主要部分でどうしても折り合えなければ、別の道を選ぶこともあり得よう。

そうした各党での議論の延長線上に、党を超えた連携が模索されることが望ましい。

「それぞれの党が主張を明確に打ち出し、国会で協力できることは協力する方が国民の期待に応えられる」。立憲民主党の枝野幸男代表の指摘はもっともである。

忘れてならないのは、野党が果たすべき役割の大きさだ。

内閣提出法案の問題点を指摘し、修正を求める。政府・与党がくみ取れない民意に手を伸ばし、議員立法に取り組む。

「安倍1強」の政治状況で、野党の行政監視機能はいっそう重要だ。政権の疑惑の調査での協力や、国会質問の重複を避ける調整なども求められる。

自民党は昨秋の特別国会に続き、野党の質問時間を削ろうとしている。与党の横暴は、結束して跳ね返さねばならない。

そうした協力の先に、選挙協力のあり方や、さらなる政党再編も見えてこよう。

政治に緊張感をもたらすために、野党の使命は重い。野党勢力の混迷は、政府・与党を利するだけだ。
posted by (-@∀@) at 11:21| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする