2017年06月22日

[朝日新聞] 天下り調査 これでは実態が見えぬ (2017年06月22日)

文部科学省の組織ぐるみの天下りあっせん問題を受けて、内閣人事局が全府省庁の実態を調べた結果を先週、公表した。

現役職員が就職先を紹介するなど、再就職規制違反の疑いのある事例は12省庁で27件あった。情報提供などのOBの関与も複数、確認された。

しかし、人事課や事務次官らがかかわった、文科省のような組織ぐるみのあっせんの疑いは確認できなかったという。

まず納得できないのは、違反が疑われる事例の具体的な中身を明らかにしなかったことだ。少なくとも、省庁名や事例の概要を示さなければ、国民は天下りの実態を理解できない。

さらに納得しがたいのは、報告書の核心部分である、組織的なあっせんが確認できないとした根拠の弱さだ。任意調査の限界とはいえ、説得力に欠ける。

調査は1月から弁護士3人を含む約40人で行った。現行の天下り規制ルールが導入されて以降、昨年末までの8年間に再就職した6372人に調査票を送り、再就職の経緯を尋ねた。回収率は87%で、その中から問題事例を探し出した。

各省庁の事務次官や人事担当者ら285人からの聞き取りもした。だが、規制違反を見聞きしたと答えた人はいなかった。

当然だろう。自ら違反を申し出る人はなかなかいまい。

だが本当に組織的な関与はなかったのか、疑問が残る。

たとえば、税関と地方財務局の職員60人が15年7月1日に辞め、9月1日に40人が一斉に再就職したことが、先の国会で指摘された。似た動きは国土交通省や農林水産省でもあった。

今回の調査で、なぜ再就職日が同じなのかを問われた省庁側の答えは「個別の事情はわからない」がほとんどだった。

国会審議を避けるように、会期末のどたばたの中で発表したこととあわせ、この問題に本気で取り組む気があったのか、政府の姿勢に首をかしげざるをえない。

かつては離職後2年間、密接な関係のあった企業への再就職を禁じる規定があった。第1次安倍政権が撤廃し、かわりに官民をつなぐ人材交流センターなどを設けたが、十分に機能していないのが実情だ。

離職直後でも関係企業に再就職できたり、同一省庁の出身者が特定ポストに就き続けたり。現状のままでは、霞が関と企業や外郭団体との「持ちつ持たれつ」の関係はなくならない。

癒着を断つせめてもの一歩として、「2年」規定の復活を検討すべきだ。
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[朝日新聞] 豊洲移転表明 説明不足も甚だしい (2017年06月22日)

全国トップの水産物取引を誇る「東京の台所」の将来像を、小池百合子都知事はいったいどう描いているのか。おとといの記者会見を聞いて、どれほどの人が理解できただろう。

知事が示した基本方針を一言でいえば、築地市場を予定どおり豊洲に移し、跡地は当初の売却計画を取りやめ、再開発して賃料を得るというものだ。

だが具体的な姿は見えない。「豊洲と築地を両立させる」という知事の言葉は、都が主体となって築地に再び市場を設けるように聞こえ、事実そう受けとめた業者も少なくない。

だがこれはいかにも唐突な案で、いくつもの疑問が浮かぶ。

豊洲と築地は2キロほどしか離れていない。しかも流通の多様化で、市場の取扱高は減っている。「多額の税金をつぎこむことにならないか」と、豊洲の持続可能性に疑義を呈してきたのは、他ならぬ小池知事だ。

にもかかわらず、会見では豊洲と築地の役割のすみ分けも、採算や財源のおおよその見通しも示さないまま、二つの市場が併存できるような夢を語った。「基本方針」の段階とはいえ、無責任に過ぎないか。

都議選を前に自民党は「決められない知事」と批判を強めていた。豊洲移転を表明するだけでは「迷走の揚げ句、元に戻った」と、さらに攻め込まれかねない。そこで生煮えのまま「両立」という新たな看板を掲げ、当座をしのぐ。そんなふうにしか見えない会見だった。

焦点の「安全・安心」問題もはっきりしないままだ。

豊洲の地下水から環境基準を上回る汚染物質が検出されたことについて、専門家会議は地上は安全だとしたが、知事は「安全と安心は別」と慎重だった。

その姿勢は変更したのか。であるなら、石原慎太郎元知事の時代から豊洲開場の条件としてきた「無害化」は取りさげると明言し、判断に至った理由を説明して理解を求めるのが、行政の長としてとるべき態度だ。

昨夏、小池知事が立ち止まって移転を先送りしたことで、都議会のチェック機能の欠如をふくむ、豊洲市場をめぐる数々の問題が浮かび上がった。その功績は大きいが、混乱をどう収束させていくか、知事の手腕が問われるのはこれからだ。

おとといの会見はその大切な第一歩だったのに、わずか30分で一方的に切り上げ、記者の質問にも正面から答えなかった。

説明の場を改めて設け、都民の疑問に現時点で答えられることを丁寧に答える。さもなくば旗印の「情報公開」が泣く。
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2017年06月21日

[朝日新聞] 加計、森友問題 首相の約束どうなった (2017年06月21日)

「今後、何か指摘があればその都度、真摯(しんし)に説明責任を果たしてまいります」

安倍首相が一昨日の記者会見で語った言葉だ。その国民への約束を果たすべき局面である。

加計学園の獣医学部新設をめぐり、萩生田光一・内閣官房副長官が昨年10月、文部科学省の局長に発言した内容とされる新たな文書が明らかになった。

「10/21萩生田副長官ご発言概要」と題した文書には、「官邸は絶対やると言っている」などと記録されている。

昨年10月といえば、特区での事業者が加計学園に決まる約3カ月前だ。文書はこの時期に加計学園の具体名や立地にふれており、そのころから政府が加計学園ありきで調整を進めていたことがうかがわれる。「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」と首相の意向に言及する記述もある。

文書について萩生田氏は、文科省から「一担当者が伝聞など不確かな情報を混在させて作った個人メモ。著しく正確性を欠く」という説明と謝罪があったとするコメントを出した。だが、文書は文科省の複数の部署に送信され、共有フォルダーで保管されていたものだ。

先に明らかになった「総理のご意向」文書をめぐっても、文科省と内閣府の説明は食い違ったままだ。

首相の最側近であり、学園系列大学の名誉客員教授でもある萩生田氏がこの問題にどうかかわったのか。誰がみても解明が急がれる問題である。

この問題には首相官邸も含め複数の官庁が関与している。それぞれの役所による身内の調査には限界がある。

萩生田氏本人はもちろん、文科省や内閣府の関係者を国会に証人喚問し、証言を突き合わせることが欠かせない。

問われているのは、首相の友人が理事長を務める学園が特区の事業主体に選ばれる過程が、公平公正であったかだ。

そこに疑問を持たざるを得ない文書や証言が次々と出ているのだ。首相は率先して事実を明らかにする責任がある。

耳を疑うのは、菅官房長官が、首相が直接国民に説明することについて「考えていない」と否定したことだ。首相自ら国民に誓った「真摯な説明責任」の実行を促すことこそ、官房長官の役割ではないのか。

本紙の世論調査では加計学園問題の首相の説明に66%が「納得できない」と答えている。

首相が会見で語った「反省」は本心か。口先だけか。そのふるまいを国民は見つめている。
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[朝日新聞] 加計、森友問題 疑惑の全容を解明せよ (2017年06月21日)

大阪の学校法人「森友学園」に対し、大阪地検が強制捜査にのり出した。一昨日の午後7時すぎに始まった家宅捜索は、きのうの朝まで異例の時間帯におこなわれた。

容疑は、運営する幼稚園で、教員数と障害のある園児数に応じて支払われる大阪府の補助金を、虚偽の申請書を提出するなどして詐取したというもの。

さらに、豊中市で開校を計画していた小学校舎の建設で、金額の異なる3通りの契約書を作り、最も高額の分を国に出して補助金を不正受給した補助金適正化法違反の疑いもある。

保護者の中には「子どもを利用した裏切りがあったのなら許されない」と憤る人もいる。

両容疑とも公金の不正だ。検察は籠池泰典前理事長らに加え府や国の関係者からも事情を聴き、解明に努めてほしい。

一連の問題は、同学園が学校用地として国有地を格安で買い入れたことで発覚した。

財務省は鑑定価格からごみ撤去費として8億円余りを差し引き、近隣地の約1割の1億3400万円で売却した。なぜここまで値引きされたのか、その経緯は今も定かではない。

地元の大阪府豊中市議らは「不当な安値で売却し、国に損害を与えた」として財務省近畿財務局職員らを背任の疑いで告発し、地検が受理している。

背任の立件には「国に損害を与える意思があったかどうか」などの立証が必要となる。

きのうの朝、会見した籠池氏は、深夜に捜索した検察を批判した上で、安倍首相夫人の昭恵氏を小学校の名誉校長に迎えて国有地の買い取りを進めた経緯に言及し、「忖度(そんたく)する形ですべてが動いたと今も認識している」と述べた。

問われるのは忖度の中身であり、安倍首相への配慮があったのか、その認識と行動だ。

地検に求められるのは、国有財産の処分として価格や決定のあり方が適法だったかを明らかにすることだ。「文書は廃棄した」と主張する財務省関係者からも事情を聴き、関連資料を集めて捜査を尽くしてほしい。

昭恵氏は名誉校長を、問題発覚まで1年半、引き受けていた。国会で野党は、昭恵氏と学園のつながりが値引きの背景にあるのではと追及し、昭恵氏の国会招致を求めた。だが与党は拒み、疑問が残ったままだ。

籠池氏は国有地取得までの3年半、国との交渉の節目で昭恵氏に「交渉経緯を報告した」と主張している。学園が強制捜査を受けた今、昭恵氏は説明責任を果たすべきだ。
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2017年06月20日

[朝日新聞] 核禁止条約 政策を転換する契機に (2017年06月20日)

米ニューヨークの国連本部で、核兵器禁止条約をつくる交渉会議が再開した。交渉には100以上の非核保有国が参加しており、来月7日の会期末までに採択される見通しだ。

議長が示した原案は、前文で「核兵器使用の犠牲者(ヒバクシャ)や核実験による被害者の苦難を心に留める」とうたい、「いかなる核兵器の使用も国際法の原則に反する」と明記した。核兵器の悲惨さを訴えてきた被爆者の気持ちを反映した案だといえよう。

採択されれば、核兵器廃絶への重要な一歩となるのは間違いない。

交渉にはすべての核保有国と北朝鮮が参加していない。

米国やロシアは条約に対し、「世界を不安定化するものだ」と非難を繰り返している。邪魔だとはねつけるような姿勢は、残念でならない。

核兵器は非人道的で、使われれば人類の生存や地球の環境に大きな影響を与える。原案はこうした考えをもとに、核兵器を持つことや使用、爆発をともなう実験などを禁じている。

核兵器に頼った安全保障は、一時的に安定をもたらしたとしても、人類にとって長く続くものと考えるべきではない。条約をきっかけにし、核兵器は危険で違法であるという認識を核保有国の国民に広げ、政策をかえるよう迫る必要がある。

米国の「核の傘」に入っている国も、大半が交渉への参加を見送った。日本や韓国、オーストラリア、北大西洋条約機構(NATO)に加盟するカナダや欧州諸国がそうだ。

しかし条約の原案には「核兵器の使用をちらつかせる脅し」を禁止する直接的な文言はない。核の傘に入る国が、いずれは条約に加盟できるよう配慮した、という見方もある。

こうしたなかで被爆国である日本が参加しないのは、被爆者の気持ちにそむく態度と言わざるを得ない。日本政府は、核保有国と非核保有国の間の溝が深まることや、核・ミサイル実験を繰り返す北朝鮮の脅威などを不参加の理由としている。

日本は国際社会の溝を埋める「橋渡し役」を自任していたのではなかったか。米国や韓国など関係国と連携して北朝鮮への対応をとり、同時に今からでも核兵器禁止条約の議論に加わって、廃絶へつなげるための方策を練る責務があるはずだ。

条約は国連総会での採択で成立する見通しだ。実効性を高めるには、1国でも多くの加盟が望ましい。日本はその道筋を率先して考えていくべきだ。
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[朝日新聞] マクロン政権 おごらず丁寧な改革を (2017年06月20日)

「数」の上にあぐらをかく政治はやがて行き詰まる。手間はかかっても地道に理解を求める努力こそ、改革への正道である。フランスのマクロン大統領は、そう肝に銘じてほしい。

総選挙の決選投票で、マクロン氏の率いる新党が、連携する政党とあわせて定数の約6割の議席を確保した。

「右でも左でもない政治」を訴えて政治運動を立ち上げてから1年余。5月に大統領に就いたころは政治家としての経験不足を危ぶむ声もあった。

それでも左右双方から人材を登用した巧みな組閣人事、外交で米国やロシアの首脳らと堂々と渡り合う安定ぶりが、懸念をやわらげたといえるだろう。

マクロン氏が向き合うべき課題ははっきりしている。

10%近い失業率、年1%前後で横ばいの低い成長率、積み上がった政府の借金――。

マクロン氏は停滞から抜け出す処方箋(せん)として、「規制緩和で経済を活性化して成長につなげつつ、セーフティーネット(安全網)も充実させる」と説く。

だが、これが決して平坦(へいたん)な道ではないことは明らかだ。

とりわけ「いったん採用したら解雇できない」と形容される正社員に手厚い現行制度が、成長を妨げ、若者の雇用を阻んでいると指摘されて久しい。

歴代政権が改革を成し遂げられなかった背景には、「柔軟な雇用」を口実に労働者の正当な権利まで奪うのではないかと疑う国民の根強い不信があった。

さらに先進国共通の現象として、経済のグローバル化や技術革新の波で、もはや正規雇用すら安泰とはいえない時代だ。

政治への不信を映すように、今回の総選挙では有権者の半数超が棄権した。新党の勝利は、就任後間もないマクロン氏の個人人気によるところが大きい。

たとえ議席は多くても、政権基盤は盤石ではない。「痛みを伴う改革」に取り組むには、謙虚にきめ細かな説明努力を尽くす以外にない。「おごり」の政治こそが、マクロン氏の大敵と心得るべきだろう。

トランプ政権や欧州連合(EU)離脱を決めた英国政治の混迷で、「自国第一主義」を声高に説く欧州のポピュリズムの波はやや一服したかに見える。

だが、既得権益にまみれた既存政党に有権者が背を向けたいま、マクロン氏が新たな信頼関係を築けなければ、民意は残された選択肢として再びポピュリズムに向かいかねない。

国際協調の基盤を守るためにも、マクロン氏には改革への丁寧なかじ取りを望みたい。
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2017年06月19日

[朝日新聞] 稲田防衛相 閣僚の立場をふまえよ (2017年06月19日)

稲田防衛相が、4月に亡くなった渡部昇一・上智大名誉教授の追悼文を月刊誌に寄せた。

こんな記述がある。

「先生のおっしゃる『東京裁判史観の克服』のためにも固定概念にとらわれず、『客観的事実はなにか』を追求する姿勢を持つことが大切だ」

「東京裁判史観」とは何を指すのか、その「克服」とは何を意味するのか――。

記者会見でそう問われた稲田氏は「客観的事実が何だったか見極めることが必要だ」と繰り返したが、質問にまともに答えたとは言えない。「(自分を)歴史修正主義者とは思っていない」とも語った。

渡部氏は著書で、東京裁判史観についてこう説明している。

「戦前の日本が犯罪国家であり、侵略国家であると決めつけた東京裁判の前提を正しいと考える歴史観」

東京裁判をどう評価するかは立場によってさまざまだろう。「事後法による勝者の裁き」という側面があるのも確かだ。

だが、日本は1951年のサンフランシスコ講和条約によって東京裁判を受諾し、主権を回復した。戦争責任をA級戦犯に負わせる形で、国としてのけじめをつけ、国際社会に復帰したのだ。

これは否定することができない歴史の事実であり、戦後日本の基本的な立脚点である。

歴史家が史実を探り、それに基づいて東京裁判を評価するのは当然の仕事だ。しかし、閣僚が東京裁判に異議を唱えると受け取られる言動をすれば、国際社会における日本の立場は揺らぎ、外交は成り立たない。

まして稲田氏は自衛隊を指揮監督する立場の防衛相である。自らの主張はどうあれ、国内外の疑念を招きかねないふるまいは厳に慎むべきだ。

稲田氏は昨年末、防衛相として靖国神社に参拝した。安倍首相がオバマ米大統領と真珠湾を訪ねた直後のことだった。

戦争で亡くなった肉親や友を悼むため、遺族や一般の人々が靖国で手を合わせるのは自然な営みだ。だが、先の大戦を指導した側のA級戦犯が合祀(ごうし)されている靖国に閣僚が参拝することに、割り切れなさを感じる遺族もいる。

中国や韓国、欧米など国際社会にも、日本が戦争責任から目を背けようとしているとの疑いを広げかねない。

安倍首相は歴史認識や政治的主張が自らに近い稲田氏を一貫して重用し、その靖国参拝を容認した。今回の寄稿もまた、不問に付すのか。
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[朝日新聞] 憲法70年 国民投票は単独が筋だ (2017年06月19日)

安倍首相が提案した憲法改正の2020年施行をめざして、自民党が議論を始めた。

そのなかで、改憲の是非を問う国民投票と衆院選を同日に実施する案が浮上している。

これは看過できない。

自民党は改憲原案を年内にまとめ、他党との協議をへて来夏にも国会として発議したい。それで、来年12月に任期が切れる衆院議員の選挙と一緒に国民投票をやろうというわけだ。

シナリオ通りに進むかどうかは分からない。だが首相は先月のテレビ番組で「衆院選、参院選と国民投票を別途やることが合理的かどうか」と語った。周辺には「同時にやった方がいい」との考えを示したという。

確かに憲法上、同日実施は認められている。憲法96条は憲法改正の国民の承認について「特別の国民投票または国会の定める選挙の際行われる投票」で決めるとしている。

投票率の向上や経費節減のため「同日実施の方が合理的だ」と指摘する憲法学者もいる。

こうした点を踏まえても、国民投票と衆院選を切り離して行うのが筋だと考える。

理由は主に三つある。

第一に、選挙運動には公職選挙法で厳しい規制があるが、国民投票運動には表現の自由や政治活動の自由への配慮から原則として規制はない。ルールの違う二つの運動が同時に展開されれば、混乱は必至だからだ。

たとえば国民投票には費用もビラ、ポスターの配布も、宣伝カーの台数も制限がない。戸別訪問も認められ、個人による個人の買収禁止規定もない。

費用が制限され、戸別訪問も買収も禁止される公選法とは大きく違うのだ。

第二に、同日実施はしないというのが、かねて与野党の共通認識であることだ。

06年の国民投票法の衆院審議では、与党案の提出者である自民党議員が「有権者の混乱を引き起こしかねないという観点から、同時実施は想定していない」と明言していた。積み重ねてきた国会審議を軽視すべきではない。

第三は、首相らが同日実施をめざす背景に、一体化によって憲法改正への賛成機運を押し上げる思惑が透けることだ。

与野党が競い合い、国民に政権選択を問う衆院選なら「多数決の原理」でいい。

だが憲法は違う。国の最高法規である。

改正はできるだけ多くの政党や国民の合意に基づくべきだ。

必要なのは、熱狂ではなく冷静な議論である。
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2017年06月18日

[朝日新聞] 安倍政権 「議論なき政治」の危機 (2017年06月18日)

通常国会がきょう閉幕する。

150日間の会期を振り返って痛感するのは、民主主義の根幹である国会の議論が空洞化してしまっていることだ。

その責任は、巨大与党に支えられ、「1強」を謳歌(おうか)する安倍首相の慢心にある。

象徴的なのは、国会最終盤の「共謀罪」法案の採決強行だ。

自民、公明の与党は数の力にものを言わせ、委員会審議を打ち切る「中間報告」を繰り出して成立を急いだ。

首相や妻昭恵氏の関与の有無が問われている加計学園、森友学園をめぐる野党の追及から、身をかわすように。

■「1強」のおごり

与野党の論戦を通じて、多くの国民が法案に抱く疑問や不安を解消する。そんな立法府のあるべき姿を無視した、数の横暴である。

1月、通常国会冒頭の施政方針演説で、首相は野党を挑発した。「ただ批判に明け暮れ、国会の中でプラカードを掲げても何も生まれない」

議論相手の野党を攻撃し、あてこする首相の態度は、国会終盤までやまなかった。

加計学園理事長との親密な関係が、獣医学部新設の事業者決定に影響しなかったのか。多くの国民の疑問を野党議員が問うのは当然だ。なのに首相は「印象操作だ」「質問に責任が取れるのか」と質問者を批判した。

首相自ら野党の質問者にヤジを飛ばす。それなのに、野党からヤジられると「私が答弁しようとすると、ヤジで妨害するんですよ」などと繰り返し、審議時間を空費する。

森友問題をめぐる政府の説明に8割が納得できないとしている世論調査結果を、民進党議員に示されると、「その調査では内閣支持率は53%。自民、民進の支持率はご承知の通り」。

支持率が高ければ説明は不要とでも言いたいのだろうか。

■極まる国会軽視

憲法41条は、国会を「国権の最高機関」と定める。憲法66条は、内閣は、行政権の行使について国会に対して責任を負うと定めている。

国会は内閣の下請けや追認のためにあるのではない。

内閣をチェックし、行き過ぎを正すことこそ国会、とりわけ野党の重要な責務である。

首相をはじめ行政府には、野党の国会質問に誠実に答える義務があるのだ。

深刻なのは、首相も閣僚も、そして多くの官僚たちも、そのことを理解していないように見えることだ。

不都合な質問は、国会で何度問われてもまともに答えない。質問と直接関係のない話を延々と続けて追及をかわす。そんな首相の答弁が連日のように繰り返される。野党議員の背後に、多くの国民がいることが目に入らないかのように。

「あるもの」を「ない」と言いくるめる場面も続いた。

菅官房長官が「怪文書」と断じた加計学園にからむ「総理のご意向」文書は、後に存在を認めざるを得なくなった。防衛省が廃棄したとした南スーダン国連平和維持活動の日報も、その後存在が判明した。そして、財務省は森友学園との交渉記録を廃棄したと言い続けた。

公文書管理や情報公開など民主主義を支えるルールも、政権にとって都合が悪ければ無視していいということなのか。

政権の意に沿わない人物には牙をむき出しにする。

「総理のご意向」文書の存在を前川喜平・前文部科学次官が証言すると、菅官房長官は前川氏の人格攻撃を始めた。

圧倒的な権力を握る内閣の要が、反論の場が限られる一個人を、これほどまでにおとしめることが許されるのか。

■数の力で改憲か

海外からの指摘にも聞く耳をもたないようだ。

共謀罪法案について、国連特別報告者からプライバシーや表現の自由の制約を懸念する公開書簡が届くと猛反発。首相自ら国会で「著しくバランスを欠き、客観的である専門家のふるまいとは言いがたい」と報告者個人を非難した。

3月の自民党大会で、党総裁任期を連続3期9年に延長する党則改正が承認された。安倍首相は来年9月の総裁選で3選されれば、2021年まで政権を握ることが可能となった。

衆参両院で改憲勢力が「3分の2」を超えるなか、首相は5月の憲法記念日に読売新聞のインタビューなどで20年の改正憲法施行を提唱した。

だが国会で野党議員に意図を問われると「読売新聞に書いてある。ぜひ熟読して」。国会軽視、議論軽視はここでも揺るがないということか。

民主主義の基本ルールをわきまえない政権が、数の力を背景に、戦後70年、日本の平和と民主主義を支えてきた憲法の改正に突き進もうとしている。

いま日本政治は危機にある。この国会はそのことを鮮烈に国民に告げている。
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2017年06月17日

[朝日新聞] 加計学園問題 閉会中審査が不可欠だ (2017年06月17日)

文部科学省と、特区を担当する内閣府の矛盾があらわになった。加計学園の獣医学部新設をめぐる対応についてである。

文科省が存在を認めた文書について、山本幸三地方創生相は、内閣府が文科省に対し、「『総理のご意向』『官邸の最高レベルが言っている』などと発言した認識はない」とする内閣府の調査結果を発表した。

調査結果は「総理のご意向」などの言葉について、「内閣府職員が時として使用する強い口調が反映されたのではないか」としている。

なんとも苦しい釈明である。

たとえ内閣府職員が強い口調で主張をしたとしても、それを文科省職員が「総理のご意向」と言い換えるだろうか。

前川喜平・前文部科学次官はこの言葉について「圧力を感じなかったといえばウソになる」と証言している。実際に使われていないのに職員がメモに残すような言葉ではあるまい。

文科省が公表したメールに、同学園と競合した他大学を事実上排除する条件が、萩生田光一・内閣官房副長官の指示で書き加えられたようだと記されていたことについて、山本氏は参院予算委員会でこう述べた。

「(送信した内閣府職員は)文科省から出向してきた方であり、陰で隠れて本省の方にご注進したというようなメールだ」

メールの信頼性は低いと言いたいのかもしれない。だがメールには「指示は(内閣府の)藤原(豊)審議官曰(いわ)く、官邸の萩生田副長官からあったようです」など具体的な記述がある。

山本氏は記者会見で「課内でいろいろ飛び交っているような話を聞いて、確認しないままにそういうことを書いた」と説明したが、おかしな話だ。

この問題の「決定にかかわって指示したことはない」と言う萩生田氏の名前が、なぜ内閣府内で「飛び交って」いたのか。

驚いたのは、自民党の高村正彦副総裁が野党の追及について「げすの勘ぐり」と批判したことだ。内閣の姿勢をただすことこそ野党の大事な使命である。

事実究明は緒に就いたばかりだ。国会は閉会中でも審議はできる。証人喚問に応じるという前川氏を国会に呼び、直接話を聞くことは欠かせない。

首相は証人喚問について「国会で決めること」との答弁に終始した。だが問われているのは首相自身と、首相側近で、学園系列大学の名誉客員教授を務める萩生田氏の関与の有無だ。

国民が納得できるまで説明を尽くす重い責任があることを、首相は自覚すべきだ。
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[朝日新聞] 加計学園問題 「義家発言」の危うさ (2017年06月17日)

加計学園の獣医学部新設問題で、「総理のご意向」などと書かれた文書の存在を証言した文部科学省の内部告発者は、守秘義務違反に問われる可能性があるのか。公益のための通報者として保護されるべきではないのか。議論が起きている。

きっかけは義家弘介文科副大臣の国会答弁だ。

公益通報者保護法は、保護対象となる通報を生命や財産などにかかわる460の法律違反に絞り、メディアなど外部への通報にも厳しい要件を定める。

義家氏はこの規定を踏まえ、「告発の内容がどのような法令違反に該当するのか、明らかにすることが必要」と述べた。さらに「一般論」とした上で、「法令違反に該当しない場合、非公知の(公になっていない)行政運営上のプロセスを、許可なく外部に流出させることは、国家公務員法(違反)になる可能性がある」と語った。

だが04年の国会での法案審議を思い出すべきだ。当時の竹中平蔵担当相は「法案は通報を抑制するのではなく、正義を希求する通報者をエンカレッジ(鼓舞)する内容になっている」と指摘。「法案の定める対象範囲に該当しない通報は、通報の公益性等に応じて通報者の保護が図られる」とし、付帯決議にもその趣旨が盛り込まれた。

加計学園問題で、政府は情報開示に一貫して後ろ向きだ。関連文書についても文科省はおざなりな調査で「確認できない」と言い続けた。そうした状況のなか、文書はあるという内部告発が職員らから相次いだ。

立法の経過と趣旨を踏まえれば、今回の告発者は保護されるべきだ。再調査の結果、文書の存在を認めた会見で松野博一文科相が「職員としての立場が法の精神によって保護される」と語ったのは当然である。

一方、義家氏の国会答弁は、「一般論」と断ったとはいえ、内部告発をためらわせ、公益通報制度を損ないかねない危うさをはらむ。文科省をはじめ政府がなすべきは、告発者の口をふさぐことではなく、異論や批判に耳を傾けることだ。

公益通報制度にも不十分な点は少なくない。消費者庁の有識者検討会は昨年末、制度の強化に向けた報告書をまとめ、保護の対象に退職者を含めることや外部通報の要件を緩和することを提言した。法改正を急ぐとともに、通報対象の拡大など検討会が積み残した課題について議論を続けるべきだ。

公益通報者保護法の施行から10年余り。制度をさらに育て、定着させていかねばならない。
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2017年06月16日

[朝日新聞] 権力の病弊 「共謀罪」市民が監視を (2017年06月16日)

「共謀罪」法が成立した。

委員会での審議・採決を飛ばして本会議でいきなり決着させるという、国会の歴史に重大な汚点を残しての制定である。

捜査や刑事裁判にかかわる法案はしばしば深刻な対立を引きおこす。「治安の維持、安全の確保」という要請と、「市民の自由や権利、プライバシーの擁護」という要請とが、真っ向から衝突するからだ。

二つの価値をどう両立させ、バランスをどこに求めるか。

その際大切なのは、見解の異なる人の話も聞き、事実に即して意見を交わし、合意形成をめざす姿勢だ。どの法律もそうだが、とりわけ刑事立法の場合、独善と強権からは多くの理解を得られるものは生まれない。

その観点からふり返った時、共謀罪法案で見せた政府の姿勢はあまりにも問題が多かった。277もの犯罪について、実行されなくても計画段階から処罰できるようにするという、刑事法の原則の転換につながる法案であるにもかかわらずだ。

マフィアなどによる金銭目的の国際犯罪の防止をめざす条約に加わるための立法なのに、政府はテロ対策に必要だと訴え、首相は「この法案がなければ五輪は開けない」とまで述べた。まやかしを指摘されても態度を変えることはなかった。

処罰対象になるのは「組織的犯罪集団」に限られると言っていたのに、最終盤になって「周辺の者」も加わった。条約加盟国の法整備状況について調査を求められても、外務省は詳しい説明を拒み、警察庁は市民活動の監視は「正当な業務」と開き直った。これに金田法相のお粗末な答弁が重なった。

「独善と強権」を後押ししたのが自民、公明の与党だ。

政治家同士の議論を活発にしようという国会の合意を踏みにじり、官僚を政府参考人として委員会に出席させることを数の力で決めた。審議の中身を論じずに時間だけを数え、最後に仕掛けたのが本会議での直接採決という禁じ手だった。国民は最後まで置き去りにされた。

権力の乱用が懸念される共謀罪法案が、むき出しの権力の行使によって成立したことは、この国に大きな傷を残した。

きょうからただちに息苦しい毎日に転換するわけではない。だが、謙抑を欠き、「何でもあり」の政権が産み落としたこの法律は、市民の自由と権利を蚕食する危険をはらむ。

日本を監視社会にしない。そのためには、市民の側が法の運用をしっかり監視し、異議を唱え続けなければならない。
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[朝日新聞] 権力の病弊 「加計」解明これからだ (2017年06月16日)

1カ月遅れで解明のスタートラインに立ったにすぎない。

加計(かけ)学園の獣医学部新設をめぐる「総理のご意向」文書などについて再調査した結果、国会や報道で指摘されたものと同じ内容の文書が見つかった。松野文部科学相がそう発表した。

先月の調査で「確認できなかった」こと自体が疑問だ。職員の間でやり取りしたメールなど、パソコンを検索すればすぐに見つかる。そうできない何かがあったのではないかと思うのが、大方の受けとめだろう。

この間、政権は文書の存在を語る者の口を封じるような行いさえした。最初に証言した前川喜平前次官を菅官房長官が攻撃し、義家文科副大臣は国会で、内部告発者を処分する可能性をちらつかせる答弁をした。

考え違いもはなはだしい。調査の手を抜き、都合の悪いことを隠そうとしてきた自分たちこそ、処分に値する。

黒を白と言いくるめて恥じない体質が、不信のうねりを招いていることを、この政権はどこまで自覚しているのか。

今回の再調査は、文書の存在を確認したにとどまる。肝心の「行政がゆがめられた」事実があったのかどうか。その判断材料は示されていない。

問題の核心は、開学時期や手順について内閣府が文科省に伝えたとされる「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」の趣旨だ。文科省職員は調査に「真意はわからない」としか答えなかったという。

将来のことが気になって、安心して真実を答えられないと見るのが自然だ。不利益になるようなことはしないと言明したうえで、第三者による徹底調査をあらためて行うのが筋だ。

きょう参院予算委員会で、この問題の集中審議が開かれる。官房長官や文科相の責任追及はもちろん、「何があったのか」に迫る質疑を期待したい。

政治主導で理不尽な規制を取り除くことは誰も否定しない。だがそれは、定められた手順に従い、公平公正に進められて初めて社会に受け入れられる。

加計学園をめぐっては、国の発表前に地元自治体が開学時期を把握していたことなど、その「公平公正」を疑わせる事実がいくつか明らかになっている。さらに、きのう文科省が明らかにしたメールからは、同学園と競合した他大学を事実上排除する条件が、萩生田官房副長官の指示によって書き加えられたという新たな疑惑が浮かんだ。

内閣の姿勢をチェックし、ただすのは国会の使命だ。このことに、与党も野党もない。
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2017年06月15日

[朝日新聞] 国会最終盤 極まる政権の強権姿勢 (2017年06月15日)

あまりに乱暴な国会運営だ。とうてい承服できない。

「共謀罪」法案について、自民党は参院法務委員会での審議を打ち切り、本会議での直接採決に向けて「中間報告」を行うことを提案した。民進など野党が激しく反発するのは当然だ。

中間報告は、国民の代表である国会議員の質問権を事実上奪うものだ。憲法が定める国会への閣僚の出席・発言義務を免ずることにもなる。

提案自体が参院無用論につながりかねない強権姿勢を、与党の参院議員はどう考えるのか。

政権側の思惑は明らかだ。

共謀罪法案は何としても成立させる。だが18日までの国会会期を延長する事態になれば、森友学園や加計学園の問題で野党に追及の機会を与えることになる。とにかく早く閉会したい。強引な手法をとっても、人々はやがて忘れるだろう――。

異なる意見に耳を貸さない。数の力で押し切る。国民を軽視する。くり返し指摘してきた政権の体質が、国会の最終盤に、最悪の形であらわれた。

法案をめぐる疑問と危惧は、一向に解消されていない。

国際組織犯罪防止条約に加盟するには法案の成立が不可欠だという政府の主張は、本当に正しいのか。実行されなくても計画の段階で処罰できるようにする共謀罪を、なぜ277もの罪に包括的に導入しなければならないのか。国連の専門家が、政府と異なる見解を明らかにしているのをどう説明するのか。

まだまだある。

政府は「一般人」には影響はおよばないと説明するが、それを担保するものは何か。市民団体などに対する不当な監視活動が明らかになっても「正当な業務だ」と開き直る警察当局を、なぜ容認するのか。この先どのようにコントロールし、逸脱・暴走を防ぐのか。

国民の不安がぬぐえていない状況を見れば、いったん廃案にし、答弁能力に疑問符がつく法相を交代させて出直す。少なくとも、当初の会期にとらわれずに審議を尽くす。それが政治が果たすべき当然の責務だ。

安倍首相は今月、ニッポン放送の番組で「不安を広げるための議論を延々としている」「あおっているに過ぎない」と野党を批判した。十分な説明ができない政府の責任を棚に上げ、反対する者を徹底的に攻撃する、いつものふるまいである。

単に共謀罪法案の行方にとどまらない。「熟議」「謙譲」という言葉の対極にあるこの政権の下で、民主主義はどこへ行くのか。懸念がふくらむ。
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[朝日新聞] 脱線事故無罪 この教訓を安全向上に (2017年06月15日)

乗客106人と運転士が死亡した05年のJR宝塚線脱線事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴されたJR西日本の歴代3社長の無罪が確定する。

現場は事故の9年前に急カーブに変更されたが、JR西が安全装置を付けなかったことが争点だった。最高裁は、JR西管内に同種のカーブが2千以上あるなか、3人が「現場が特に事故の危険性が高いと認識できたとは認められない」として、過失責任を否定した。

日本の刑法では、過失責任は個人にしか問えない。5千キロ超の路線網を持つ巨大企業で、経営トップが個々のカーブの危険性までチェックすることは現実的に困難だろう。無罪となるのもやむをえない。

だが、JR発足後の30年間で最悪の犠牲者を出した事故は結局、刑事責任を誰一人負わないことになる。遺族らが割り切れない思いを抱くのも当然だ。

企業活動による事故は後を絶たない。だが、組織が大きいほど個人の役割は細分化され、捜査や原因調査でも、事故が起きた要因や責任の所在がはっきりしないまま終わるという事態が繰り返されてきた。

これでは被害者が納得できず、社会の安全向上にもつながらない。今回の事故を教訓に、捜査や原因調査のあり方をどう改善するか考えていくべきだ。

一部の遺族は、安全管理の不備で事故を起こした企業に巨額の罰金を科す「組織罰」の導入を訴えてきた。加害企業に変革を促す効果が期待される一方、処罰を恐れる企業が真相解明に協力しなくなるのでは、との懸念も指摘されている。

米国では、加害者の刑事責任を問う捜査よりも、調査機関による原因調査を優先する制度が確立されている。もっとも、遺族らの処罰感情が強いとされる日本で、こうしたやり方が受け入れられるかは未知数だ。

いずれにせよ、現状維持でよいという選択肢はない。さまざまな方向性について、社会的な議論を深めていきたい。

言うまでもなく、事故の教訓を最も受け止めるべきなのはJR西日本だ。元社長らの無罪は、乗客の命を守れなかった企業責任を免じるものではない。

JR西は「安全最優先」の改革を強調するが、見違えるほどの成果が出ているとはまだ言えない。一方で、この春から関西財界の要職に復帰した。事故前に戻るかのような動きに、遺族らの視線は厳しい。

JR西が果たすべき何よりの責任は不断の安全向上だ。全社員が改めて肝に銘じてほしい。
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2017年06月14日

[朝日新聞] 大田さん逝く 「沖縄と日本」問い続け (2017年06月14日)

沖縄県の知事だった大田昌秀さんが亡くなった。

多くの人の記憶に残るのは、95年の光景だろう。米兵による少女暴行事件に抗議する県民総決起大会。集まった約8万5千人の映像に目を奪われ、本土に住む多くの人も、メディアも、米軍基地への沖縄の怒りの大きさに初めて思い至った。

先頭にいたのが知事2期目の大田さんだった。「平和を求める沖縄の心」を発信し、政府と対決する。基地の整理縮小や日米地位協定の改定など、重い扉をこじ開けようと取り組み、いまに至る問題を提起した。

戦世(いくさゆ)からアメリカ世(ゆ)、そしてヤマト世(ゆ)へ。92年にわたる人生は、戦争から米軍による統治を経て復帰に至る、沖縄の激動の歴史そのものだった。

19歳で動員された沖縄戦では多くの学友が命を失った。72年前の今ごろは米軍に追われ、本島南部にいた。昨日まで徹底抗戦を叫んでいた軍人が民間人を装って壕(ごう)を脱出する。当時の経験から、「軍隊は住民を守らない」と繰り返した。

戦後は、留学先の米国でデモクラシーの薫風を浴びた。一方で、黒人などマイノリティーの存在に目を開かされ、それは必然的に「日本にとって沖縄とは何なのか」という生涯をかけた問いにつながった。

大田さんは、沖縄の歴史をふまえた多くの本を書いた。実感をこめて、繰り返し引用した米国人研究者の言葉がある。

「日本の政府は、あらゆる方法をもって琉球政府を利用するが、琉球の人々のために犠牲をはらうことを好まない」

なぜ本土防衛の「捨て石」として、12万人もの県民が沖縄戦で死なねばならなかったのか。なぜ国土面積0・6%の小さな島に、全国の7割の米軍基地が置かれているのか。

多数のために少数者の犠牲はやむを得ないという考えを批判し、米軍用地の代理署名をめぐる訴訟では、最高裁大法廷でこう陳述した。「安保条約が日本にとって重要だと言うのであれば、その責任と負担は全国民が引き受けるべきではないかと思っています。そうでなければ、それは差別ではないか」

あれから約20年。ほぼ同じ言葉を翁長雄志知事が語ることに改めて驚き、政治の無策を恥じる。かつての政府与党には沖縄に心を寄せる政治家が少なからずいた。いま安倍政権は辺野古移設の方針は「1ミリも動かさない」と言ってはばからない。

6月は沖縄にとって鎮魂の月。平和の礎(いしじ)に名を刻む学友たちのもとへ、永遠に旅だった。
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[朝日新聞] 財政再建目標 また「新しい判断」か (2017年06月14日)

国民にきちんと説明しないまま、政府は財政再建の目標を変えるつもりなのではないか。

経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の文言の変更が、そんな疑念を呼んでいる。

借金に頼らずに政策経費をまかなえるかを示す基礎的財政収支(PB)を、20年度に黒字化する。その従来の目標に加え、国内総生産(GDP)に対する国と地方の債務(借金)残高の比率を安定的に下げることを同時に目指すとした。

債務残高比率の引き下げは、昨年の骨太方針では収支黒字化達成後の目標として脚注で触れていたが、それを格上げした。

政府は「PB黒字化の目標としての位置づけは変わらない」と説明するが、額面通りに受け取るわけにはいかない。

首相は今年の施政方針演説で、昨年の演説で言及した基礎的収支に触れなかった。3月の国会答弁では「私はPB至上主義者ではない」「大切なことは税収を増やしていく、そのために名目GDPが上昇していく状況をつくること」と強調した。

軸足が、中長期の目標だった債務残高比率の引き下げに動いているのは間違いないだろう。

背景には、20年度の収支黒字化が絶望的だという事情がある。内閣府が1月にまとめた試算では、高めの経済成長を続け、19年10月に消費税率を10%に上げても、20年度の収支は8兆円余の赤字が残る。

一方、債務残高の対GDP比率は17年度は180%台後半の見込みで、先進国の中で最悪の水準だが、16年度からはわずかに下がる。高めの経済成長を達成できれば18年度以降も低下し続け、小幅なプラス成長でも当面は横ばいの見通しだ。

財政の悪化に歯止めがかかっているように見えるが、日銀の金融緩和に伴う超低金利に支えられていることを忘れてはならない。いったん金利が上がれば債務残高は簡単に膨らむ。

骨太の方針からは消費増税についての記述も消えた。思い出すのは1年余り前のことだ。

首相は主要7カ国(G7)首脳会議で、世界経済は危機に陥るリスクに直面していると唐突に訴えた。その直後、「再び延期することはない」と断言していた消費増税を「新しい判断だ」と言って再延期した。

今回の骨太方針での一連の記述の変更も、次の「新しい判断」への布石ではないのか。

なぜ従来の財政再建目標の達成が難しくなったのか。今後、国の財政をどう運営するつもりなのか。政府には国民に対して説明する責任がある。
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2017年06月13日

[朝日新聞] 文政権1カ月 日米との連携を基本に (2017年06月13日)

韓国の文在寅(ムンジェイン)政権が発足して1カ月がすぎた。まずは堅実な政権の滑り出しを評価したい。

朴槿恵(パククネ)前大統領の弾劾(だんがい)の後だけに、韓国は内政も外交も課題山積だ。文政権が独自の政策で手腕を発揮するまでには、まだ時間がかかるだろう。

ただ、韓国外交の基軸は、自由と民主主義の価値を共有する米国と日本との連携におく姿勢を忘れずにいてもらいたい。そのうえで、南北朝鮮の対話をめざすリベラル派政権として足場を固めてほしい。

文氏の最初の外遊先は、米国である。月末にトランプ大統領と会う。朝鮮半島の安全保障の礎である米韓同盟を再確認するのは有意義な一歩となろう。

韓国が配備する迎撃ミサイルシステムの問題では、中国が今も反発している。だが、問題の根源にあるのは、北朝鮮の挑発だ。中国がもっと積極的に北朝鮮を説得するよう、文政権は強く迫ってしかるべきだ。

日本についても文氏は、関係を強めたい意向を示している。2年前の日韓慰安婦合意に対する認識の違いなど、日本側の一部で懸念があったが、互いに配慮し、正面からぶつかる事態には至っていない。

きのうは訪韓中の二階俊博・自民党幹事長と文氏が会談した。来月にドイツである主要20カ国・地域の会合では、安倍首相との首脳会談が行われる。

文氏は首脳が相互訪問するシャトル外交の再開を提案している。朴前大統領は結局、一度も来日しなかっただけに、文氏には早期の来日を期待したい。

南北対話を訴える文氏を突き放すかのように、北朝鮮は4週連続でミサイルを撃った。

北朝鮮はかつて、対話を呼びかけた金大中(キムデジュン)、盧武鉉(ノムヒョン)両政権に対しても挑発を繰り返し、関係改善への「本気度」を試した。とりわけ盧氏の場合、大統領就任前後にミサイルを続けざまに撃つなど現状と似ている。

だが両政権とも説得を続け、南北首脳会談を実現させた。文政権も試練が続きそうだが、南北の和解と協力をめざす目標を抱きつつ、粘り強く対応していく以外に道はないだろう。

韓国の世論調査では文政権の支持率は80%前後。人事面で自身を支持しないグループから抜擢(ばってき)するなど、国民統合を強調する姿勢が評価されている。

韓国をとりまく情勢は厳しいが、冷静な政権運営を続けて内外の信頼を築いてほしい。

日本政府も、文政権への協力を惜しんではなるまい。東アジアの和平と繁栄には、韓国の安定が必須の条件なのだから。
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[朝日新聞] 過疎地の自治 向上目指し広く議論を (2017年06月13日)

高知県大川村が村議会(定数6)を廃止し、「町村総会」を設ける検討を始めた。人口約400人で、離島を除いて全国最少だ。村議のなり手不足が懸念され、村長がきのう、議会の存続を前提としつつ、具体的な研究を進める考えを表明した。

地方自治法は、町村に限り、議会を置かずに有権者が議案を直接審議する総会を設けることを認めている。政府は1947年の法制定時、「小さな町村の自主性を尊重した」と説明している。大川村が選択肢として検討することは十分理解できる。

15年の統一地方選では2割超の町村議選が無投票になった。なり手不足は過疎地の町村に共通する課題だ。全国で町村総会の検討が広がる可能性はある。

ただ、「窮余の一策」というだけなら、議会を総会に代えても地域の衰退は止まるまい。「どうすれば自治を向上できるか」という視点から、住民も交え、あり方を幅広く議論していくことが望ましい。

実際問題として、町村総会の実現へのハードルは高い。

総会は有権者が一堂に会することが前提だ。地方自治法は総会について「議会に関する規定を準用する」と定めており、そのままなら有権者の半数以上の出席が総会成立の条件となる。

大川村は、険しい山あいに集落が点在する。高齢化率は4割を超え、交通手段も乏しい。それだけの人が集まれるか、村内では疑問視する声が強い。

議会が扱う案件は予算や条例など幅広い。総会で有権者が十分な知識をもとに判断できるのかという課題も出てこよう。

町村総会は戦前戦後を通じて有権者が数十人しかいない2村に設置されただけ。参考になるような記録もほとんどない。

高市早苗総務相は「(自治体から)相談があれば適切に助言する」と述べた。国としても、町村総会の実現に道を開く制度設計を進めてもらいたい。

議会のあり方を見直し、担い手を増やす道がないかも、もっと探っていくべきだろう。

町村議の平均報酬は月21万円で、「兼業なしでは暮らせない」との声は強い。議会は平日昼の開催が一般的だが、会社員だと両立が難しい。

15年の統一選で欠員が出た北海道浦幌(うらほろ)町議会は今年3月、検証報告書をまとめた。「若者手当」「育児手当」の支給や、議員になることに伴う休職、休暇制度の整備を提言している。

自治を向上させるためにも、より多彩な人材が地方政治にかかわることが望ましい。国も地方も有効策を考えるときだ。
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2017年06月11日

[朝日新聞] 英国とEU 離脱への道、熟考を (2017年06月11日)

英国の為政者はまたも、民意を見くびった慢心の代償を払わされることになった。

英国の総選挙でメイ首相率いる与党・保守党が議席を減らして過半数を割り込んだ。

圧勝間違いなし。そう目されていた選挙だった。実際、解散時は最大野党の労働党に支持率で20ポイント近い大差をつけていた。

その勢いを駆って政権基盤を固め、これから本格化する欧州連合(EU)との離脱交渉に強い姿勢で臨みたい。メイ氏にはそんな計算があったはずだ。

確かに昨年、国民投票という形でEU離脱の民意が示されて以来、残留を求める声は英国内で必ずしも大きくなかった。

だからといって、国民は強硬な離脱の進め方まで受け入れたとはいえない。メイ氏は、あくまで移民規制を優先し、EU単一市場からの撤退も辞さない構えだったが、そうした離脱のあり方を考え直す必要がある。

他の先進国と同様に、英国民は暮らしの不安を募らせている。緊縮財政で社会福祉の予算が年々削られる。学費の値上げや不安定な雇用の増大の中で、親の世代より豊かな生活を築ける自信がもてない。

そうした不満を抱く国民が政治に寄せる視線は厳しい。なのに選挙戦で保守党は、英国がEUを離脱しさえすれば多くの問題が解決するかのような楽観論を繰り返した。メイ氏はテレビ討論での説明すら拒んだ。

対照的に、福祉の充実や大学授業料の無料化など、庶民に身近な政策を掲げた労働党が終盤、激しく追い上げたのは当然だ。相次ぐテロは国民の不安を強める結果にもなった。

思い起こせば、昨年、英国民が当時の政権の意向に反してEU離脱に賛成した理由のひとつが、エリート主導のEUの意思決定への強烈な不信感だった。

そして今回、強硬離脱の方針を首相の意思で固め、その信認を迫ったメイ政権に対し、大勢が再び不信を表明した。

優先すべき国民の関心事を見極めたうえで、国の未来を左右する重大な政策では、十分な情報開示と説明を尽くす。その基本動作を怠り、理念先行の政治に突き進めば、民意の痛いしっぺ返しを受けることを、政治指導者らは胸に刻むべきだ。

メイ氏は少数政党の協力を得て首相続投を表明した。だが、離脱交渉を着実に進める政権の体力はもはや心もとない。

ここはEUからの離脱の進め方について、国民と丁寧な対話を重ねながら改めて熟考する時ではないか。そのためには立ち止まる勇気も必要だろう。
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