2017年09月20日

[朝日新聞] 基準地価 「実需」の先行き注視を (2017年09月20日)

2017年の都道府県地価調査(基準地価)で、商業地の全国平均が10年ぶりに上向きに転じた。

東京、大阪、名古屋の3大都市圏や、札幌と仙台、広島、福岡などでは、値上がりの幅が広がる傾向にある。東京・銀座では、地価の水準が90年前後のバブル時代のピークを超えるところもでてきた。

国土交通省は、地価動向について「実需に支えられており基本的に好ましい」と説明する。海外からの観光客や地域の再開発などで街のにぎわいが増し、土地所有者が賃料収入といった収益を確保できているという。

バブル期は、値上がりが続くなかで転売益を狙い、実際の収益力を度外視した取引が目立った。87年の東京圏の商業地は、平均上昇率が約8割に達した。一方、今年は3・3%で、状況はずいぶん違う。

だが、警戒は怠れない。

都心の一部で実際に取引されている価格には、より大きな値上がりも見られる。国による別の評価額の数倍といった例も珍しくない。

異例の金融緩和策をとる日本銀行は、金融市場に膨大な資金を供給し、不動産投信も大量に買い入れている。マンション需要には相続税対策など制度のゆがみをついたものもある。

買い手が転売益目当てでないとしても、実需を裏付ける「収益力」そのものが、歴史的な低金利と、急激な観光客増加などに支えられていることを忘れてはならない。金利が上昇に転じたり、観光客の波が引いたりすれば、逆回転が始まるリスクもある。

地価の乱高下が一部にとどまるうちは、影響も個別投資の成否の範囲内だろう。だが、見込みの薄い投資や開発が広がったり、万が一、不動産向け融資が大規模に焦げ付いて金融システムを揺るがしたりすれば、経済全体を損なう。国交省や金融当局は監視やチェックを緩めないようにすべきだ。

今回の調査では、地方圏では平均的には地価が下がり続けていることも明らかになった。一部の中心街や観光地で、需要をうまく取り込んで地価が上向いているところもある。だが、全体から見ればごく少数だ。

過疎が進む地域では、買い手がなく、放置された土地も目立つ。空き家撤去なども始まっているが、緒についたばかりだ。

人口減少や高齢化が進む中で、即効性のある対策は難しい。だが、地域の荒廃を招かないよう、官民で知恵をしぼっていきたい。
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[朝日新聞] 10月衆院選へ 大義なき「身勝手解散」 (2017年09月20日)

安倍首相による、安倍首相のための、大義なき解散である。

衆院総選挙が10月10日公示、22日投開票の日程で検討されている。首相は、9月28日に召集予定の臨時国会の冒頭、解散に踏み切る公算が大きい。

重ねて記す。野党は6月、憲法53条に基づく正当な手続きを踏んで、臨時国会の早期召集を要求した。これを3カ月以上もたなざらしにした揚げ句、やっと迎えるはずだった国会論戦の場を消し去ってしまう。

まさに国会軽視である。そればかりか、憲法をないがしろにする行為でもある。

首相は、8月の内閣改造後、「働き方改革」のための法案などを準備したうえで、召集時期を決めたいと語っていた。

だが解散すれば、肝いりの働き方改革は後回しになる。首相が「仕事人内閣」と強調した閣僚メンバーの多くは、まだほとんど仕事をしていない。目につく動きと言えば、「人生100年時代構想会議」を1度開いたくらいだろう。

首相は、衆院選で掲げる公約の案を自民党幹部に伝えた。

2019年秋の消費税率引き上げは予定通り行ったうえで、税収増の大半を国の借金の穴埋めに使う今の計画を変え、教育の無償化など「人づくり革命」の財源とする構想だ。

しかし、消費増税の使途見直しは与党内の議論を経ていない。民進党の前原誠司代表の主張に近く、争点をつぶす狙いがうかがえる。いま総選挙で有権者に問うにふさわしいテーマとは言えない。

さらに理解できないのは、北朝鮮情勢が緊張感を増すさなかに、政権与党の力を衆院選に注ぎ込もうとする判断である。

自民党内では、有事や災害に備えて憲法を改正し、緊急事態条項や衆院議員の任期延長の特例新設を求める声が根強い。その一方で、衆院議員を全員不在にするリスクを生む解散をなぜあえてこの時期に選ぶのか。ご都合主義にもほどがある。

与党は予算案や法案を通す圧倒的な数をもつ。国民の信を問うべき差し迫った政策的な緊迫があるわけでもない。総選挙が必要な大義は見当たらない。

なのになぜ、首相は解散を急ぐのか。自身や妻昭恵氏の関与の有無が問われる森友学園や加計学園の問題をめぐる「疑惑隠し」の意図があると断じざるを得ない。

それでも首相はこの身勝手な解散に打って出るのか。そうだとすれば、保身のために解散権を私物化する、あしき例を歴史に刻むことになる。
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2017年09月19日

[朝日新聞] 安保法2年 政府任せにはできない (2017年09月19日)

多くの反対を押し切って、安倍政権が安全保障関連法を成立させてから、きょうで2年。

かねて指摘されてきた懸念が次々と現実になっている。

自衛隊の活動が政府の幅広い裁量に委ねられ、国民や国会の目の届かないところで、米軍と自衛隊の運用の一体化が進んでいく。

その一端を示す事実が、また報道で明らかになった。

日本海などで北朝鮮の弾道ミサイル発射の警戒にあたる米海軍のイージス艦に、海上自衛隊の補給艦が5月以降、数回にわたって燃料を補給していた。

安保法施行を受けて日米物品役務相互提供協定(ACSA)が改正され、可能になった兵站(へいたん)(後方支援)だ。法制上は日本有事を含め、世界中で米軍に給油や弾薬の提供ができる。

問題は、今回の給油について政府が公式な発表をしていないことだ。菅官房長官は「自衛隊や米軍の運用の詳細が明らかになる恐れがある」からだとしているが、このままでは国民も国会も、政府の判断の当否をチェックしようがない。

やはり安保法に基づき、米軍艦船を海自が守る「米艦防護」も、初めて実施された事実が5月に報道されたが、政府は今に至るも公表していない。

忘れてならないのは、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)で起きた日報隠蔽(いんぺい)だ。

「戦闘」と記述された陸上自衛隊の日報をなぜ隠したのか。背景には、駆けつけ警護など安保法による新任務の付与を急ぐ安倍政権の思惑があった。

政府の隠蔽体質は明らかだ。であれば文民統制上、国会の役割がいっそう重要だ。政府の恣意(しい)的な判断に歯止めのない現状を、早急に正す必要がある。

一方、政府による拡大解釈の可能性を改めて示したのは、小野寺防衛相の次の発言だ。

8月の閉会中審査で、グアムが北朝鮮のミサイル攻撃を受けた場合、集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」にあたりうるとの考えを示したのだ。

グアムの米軍基地が攻撃を受けたとしても「日本の存立が脅かされる明白な危険がある」と言えるはずがない。ミサイルの迎撃が念頭にあるようだが、現時点では自衛隊にその能力はなく、実態とかけ離れている。

安保法は、歴代内閣の憲法解釈を一変させ、集団的自衛権の行使容認に踏み込んだ。その違憲性はいまも変わらない。

2年間で見えた安保法の問題点を洗い出し、「違憲」法制の欠陥を正す。与野党の徹底した議論が必要だ。
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[朝日新聞] 新幹線の整備 熱に浮かされるな (2017年09月19日)

新幹線にバラ色の未来を期待し、巨額の公費をつぎ込み続けるのは、そろそろやめにしたい。人口減と財政難の日本にはもっと優先すべき課題がある。

整備新幹線は今、北海道と北陸、九州の3路線が工事中だ。すべて完成するのは30年度で、建設費は計3・3兆円を超す。

このうち、福岡と長崎を結ぶ九州新幹線長崎ルートが壁に突き当たっている。

建設費を抑えようと、途中の佐賀県内の一部では既存の在来線を活用する計画だった。新幹線とは線路の幅が違うため、車輪の幅を変えられるフリーゲージトレイン(FGT)の新車両を導入するとしていた。

ところが、国が進めてきたFGTの開発は約500億円を投じても安全上の問題が解決できず、目標の25年度までの導入は絶望的になった。運行主体のJR九州は7月、FGTの導入を断念し、全区間に新幹線用の線路を敷くフル規格化を求める考えを表明した。

長崎県も同調するが、ちょっと待ってほしい。そもそも、実用化もできていない車両を当て込んだ建設計画に無理があった。見切り発車した国はもちろん、早期整備を訴え続けた地元にも責任がある。

全線をフル規格にすれば建設費は倍増し、1兆円規模になりそうだ。国と地元の負担を増やすしかないが、納税者の理解は得られるのか。佐賀県は負担増に難色を示している。

山形、秋田両新幹線のように、在来線の線路幅を広げる「ミニ新幹線」という選択肢も考えうる。与党が今後の方向性を検討しているが、投資効果を精査するなど、議論を一からやり直すべきだ。

ほかの地域でも、「新幹線を早く」の声は高まるばかりだ。北陸や関西の自治体と経済団体は5月、財源の都合で国が31年度以降の着工としている北陸新幹線の大阪延伸を30年度までに完成させるよう要望した。

四国や東北、山陰では、70年代から凍結状態にある新幹線計画を復活させようとする動きが活発になっている。おもな旗振り役はどこも政治家だ。

あまりに熱に浮かされていないか。故田中角栄元首相の「日本列島改造論」以来、新幹線や高速道路、空港の整備は着実に進んできたが、それが必ずしも地方衰退の歯止めにならず、むしろ東京一極集中を促した現実を直視してほしい。

誕生から半世紀余りを経た新幹線は、もはや「夢の超特急」ではない。立ち止まり、考え直さねばならない。
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2017年09月18日

[朝日新聞] 年内解散検討 透ける疑惑隠しの思惑 (2017年09月18日)

安倍首相が年内に衆院を解散する検討に入った。28日召集予定の臨時国会冒頭に踏み切ることも視野に入れているという。

衆院議員の任期は来年12月半ばまで。1年2カ月以上の任期を残すなかで、解散を検討する首相の意図は明らかだ。

小学校の名誉校長に首相の妻昭恵氏が就いていた森友学園の問題。首相の友人が理事長を務める加計学園の問題……。

臨時国会で野党は、これらの疑惑を引き続きただす構えだ。冒頭解散に踏み切れば首相としては当面、野党の追及を逃れることができるが、国民が求める真相究明はさらに遠のく。そうなれば「森友・加計隠し解散」と言われても仕方がない。

野党は憲法53条に基づく正当な手順を踏んで、首相に早期の臨時国会召集を要求してきた。冒頭解散となれば、これを約3カ月もたなざらしにしたあげく葬り去ることになる。憲法の規定に背く行為である。

そもそも解散・総選挙で国民に何を問うのか。

首相は8月の内閣改造で「仕事人内閣で政治を前に進める」と強調したが、目に見える成果は何も出ていない。

首相側近の萩生田光一・自民党幹事長代行は衆院選の争点を問われ、「目の前で安全保障上の危機が迫っている中で、安保法制が実際にどう機能するかも含めて国民に理解をいただくことが必要だ」と語った。

だが北朝鮮がミサイル発射や核実験をやめないなか、衆院議員を不在にする解散に大義があるとは到底、思えない。

むしろ首相の狙いは、混迷する野党の隙を突くことだろう。

野党第1党の民進党は、前原誠司新代表の就任後も離党騒ぎに歯止めがかからず、ほかの野党とどう共闘するのか方針が定まらない。7月の東京都議選で政権批判の受け皿になった小池百合子知事が事実上率いる都民ファーストの会は、小池氏の側近らが新党結成の動きを見せるが、先行きは不透明だ。

都議選での自民党大敗後、雲行きが怪しくなっている憲法改正で、主導権を取り戻したい狙いもありそうだ。

自民党内で首相が唱える9条改正案に異論が噴出し、公明党は改憲論議に慎重姿勢を強めている。一方、民進党からの離党組や小池氏周辺には改憲に前向きな議員もいる。

北朝鮮情勢が緊迫化するなかで、政治空白を招く解散には明確な大義がいる。その十分な説明がないまま、疑惑隠しや党利党略を優先するようなら、解散権の乱用というほかない。
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[朝日新聞] 年金支給漏れ 組織も業務も見直せ (2017年09月18日)

もらえるはずの年金がもらえていなかった。年金制度への信頼を揺るがしかねない事態が、また明るみに出た。

「振替加算」と呼ばれる上乗せ年金の支給漏れが約10万6千人分見つかった。総額で598億円にのぼる。支給漏れが最も多い人は約590万円にもなり、未払い分を受け取らないまま亡くなった人も約4千人いるとみられる。

年金制度は1986年、全ての国民が加入する仕組みになった。その際、それまで任意加入だった専業主婦らの加入期間が短く、年金額が少なくならないように設けられたのが振替加算だ。支給漏れは加算の支給が始まった91年から生じていた。

振替加算をめぐっては、旧社会保険庁時代の2003年にも約3万3千人分、約250億円の支給漏れが見つかった。にもかかわらず、どうして再び、このような事態になったのか。

03年の時は夫婦双方のデータを管理する旧社保庁内でのミスだった。これに対し今回は、支給漏れの96%が夫婦のどちらかが元公務員のケースで、旧社保庁を引き継いで10年に発足した日本年金機構と、公務員の年金を扱う共済組合にデータがまたがっていたという。

共済組合と機構との間で、加算の支給に必要な情報がきちんと伝えられなかったり、情報の確認が必要な人を抜き出すシステムに不備があったりしたことが、今回の支給漏れの主因だ。一昨年秋の厚生年金と共済年金の一元化で、機構が共済側のデータの一部を見ることができるようになって、ようやくわかったということのようだ。

だが、旧社保庁のずさんな年金記録への反省から発足したのが機構だ。再出発後も不備を放置してきた責任は重い。

他にも、支給漏れなど問題が残っていないか。長年のウミは今回で完全に出し切れたのか。徹底的な洗い直しが必要だ。

機構と共済組合は、情報共有が進んだとはいえ、今も別組織のままだ。官民で分けることを疑問視する声も根強くある。組織の統合も視野に、効率的な運営態勢を考えるべきだ。

支給漏れの背景には、制度が複雑でわかりにくいという問題もある。例えば振替加算がつく配偶者の方が年上の場合、加算の対象になる時点で機構への届け出が必要だが、手続きをしていない人も多くいた。

機構は今後、この届け出もなくせるものは廃止するという。他にもこうした改善の余地はあるだろう。国民の立場にたった業務の見直しも急務だ。
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2017年09月17日

[朝日新聞] 五輪開催地難 運営の抜本的見直しを (2017年09月17日)

五輪とは何か。開催都市はそこにどんな意義を見いだし、責任を担うのか。そんな問題を真剣に考える必要があることを、世界に突きつける決定だ。

東京に続く2024年と28年の夏季五輪開催地に、パリとロサンゼルスが決まった。

これまでは、大会の7年前に国際オリンピック委員会(IOC)が投票で決めてきた。24年大会には当初5都市が立候補したが、費用負担の重さに対する住民の反発から3都市が撤退。28年以降の状況も見通せないため、残ったパリとロスをいずれも「当選」させ、振り分ける異例の手法をとった。

招致熱の冷え込みの背景には五輪の肥大化がある。もはや一部のごく限られた大都市しか引き受けられないのが実情だ。

今後も五輪を続けようというのであれば、運営の根幹に踏みこんだ改革が不可欠だ。IOCは、2大会同時決定で手にした時間とエネルギーを、そこに傾注してもらいたい。

たとえば、競技数や参加する選手の数を大幅に縮小する。複数の国や都市による共催を認める。事実上7、8月に限られている大会の時期を見直す。開催地をいくつかの都市に固定し、回り持ち方式にする――。

これまではおよそ対象にならなかった選択肢も含め、幅広に研究し、議論する必要がある。

国際競技団体も意識を変えなくてはならない。

最高の舞台を求めるあまり、会場設備に対する要求は上がる一方だ。ハード面の整備はほどほどにして、選手が集中し、持てる力を発揮できる環境をどう整えるかという観点から、試合時間や運営方法などソフト面の改善を進めるべきだ。

人々の五輪への不信を取り除くには、立候補段階での計画の審査と、開催地決定から本番までの準備期間中の点検も、これまで以上に重要になる。

東京大会を見ても、経費は倍増している。当初の「コンパクト五輪」構想は大幅に変更された。立案時の日本側のずさんさに最大の問題があるとはいえ、それを見逃し、認めたIOCの責任も問われる。

大会計画は、委員だけではなくスポーツ、建築、街づくりなどの専門家を動員して評価し、開催決定後も監視と助言を強めていくべきだ。コンパクト五輪を掲げるパリと、既存施設でまかなう節約五輪を訴えたロスの成功が見えてくれば、後に続こうという都市も出てこよう。

この危機を乗り越えて、次の世代に引き継げるか。五輪は大きな岐路に立っている。
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[朝日新聞] 人づくり革命 言葉だけが躍っている (2017年09月17日)

看板を掛け替えることで、新たな政策に取り組む姿勢を訴えたいのだろう。しかし看板に書かれた言葉の意味があいまいで、古い看板も残ったままでは、国民は戸惑うばかりだ。

安倍内閣が「人づくり革命」を掲げた。女性活躍、1億総活躍、働き方改革に続く、4枚目の看板である。

「人づくり革命」とは何か、想像できる人がどれほどいるだろう。具体策を議論するため、政権は10代から80代までの多様な人を集めて「人生100年時代構想会議」を設けたが、こちらにも疑問が消えない。

「人生100年時代」は、会議のメンバーにも選ばれた英ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授が著書で提唱した。長寿社会では、学び、働いて、一定の年齢になったら引退するという単線型の人生設計を変えるべきだという考え方だ。

教育のあり方から働き方、社会保障まで抜本的に見直そうというのならわかる。それほど大きなテーマだ。しかし会議では、教育費の負担軽減やリカレント教育(社会人の学び直し)の充実、これらの課題に応えるための高等教育改革について月1回のペースで話し合い、年内に早くも中間報告を、来年前半には最終報告をまとめる。

首相が6月の記者会見で「人づくり革命」を打ち出した際、議論の場となる有識者会議の名称は「みんなにチャンス!構想会議」だった。なぜ「人生100年時代」に変わったのか、きちんとした説明はないままだ。

首相は「『人づくり革命』は内閣が目指す『1億総活躍社会』をつくり上げるうえでの本丸」と言う。確かに会議の検討課題は、昨年6月に政府がまとめた「1億総活躍プラン」の延長線上にあるものが多い。

では、1億プランについて成果と残る課題を整理したのか。総括を欠いたまま次へ進むことを繰り返した結果、4枚の看板を4人の閣僚が1枚ずつ担うことになった。それぞれが個々の政策をどう分担し、責任を持つのかさえ判然としない。

会議では、幼児教育や保育の無償化、大学教育向けの給付型奨学金の拡充なども取り上げるという。その具体的な方法や財源を検討し、それぞれのコストと効果を踏まえて優先順位を考えることは必要だ。会議を通じて議論を深められるか、政権が問われることになる。

大切なのは政策の見せ方ではない。どんな社会を目指すのかを国民に示し、共有しながら、具体策を積み上げることだ。
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2017年09月16日

[朝日新聞] 旧姓使用拡大 小手先対応では済まぬ (2017年09月16日)

国家公務員が仕事をする際、結婚前の旧姓を使うことを原則として認める。各府省庁がそんな申し合わせをした。

職場での呼び名や出勤簿などの内部文書などについては、2001年から使用を認めてきたが、これを対外的な行為にも広げる。すでに裁判所では、今月から判決などを旧姓で言いわたせるようになっている。

結構な話ではある。だが、旧姓の使用がいわば恩恵として与えられることと、法律上も正式な姓と位置づけられ、当たり前に名乗ることとの間には本質的な違いがある。長年議論されてきた夫婦別姓の問題が、これで決着するわけではない。

何よりこの措置は国家公務員に限った話で、民間や自治体には及ばない。内閣府の昨秋の調査では、「条件つきで」を含めても旧姓使用を認めている企業は半分にとどまる。規模が大きくなるほど容認の割合は高くなるが、現時点で認めていない1千人以上の企業の35%は「今後も予定はない」と答えた。

人事や給与支払いの手続きが煩雑になってコストの上昇につながることが、導入を渋らせる一因としても、要は経営者や上司の判断と、その裏にある価値観によるところが大きい。

結婚のときに姓を変えるのは女性が圧倒的に多い。政府が「女性活躍」を唱え、担当大臣を置いても、取り残される大勢の人がいる。

やはり法律を改めて、同じ姓にしたいカップルは結婚のときに同姓を選び、互いに旧姓を名乗り続けたい者はその旨を届け出る「選択的夫婦別姓」にしなければ、解決にならない。

氏名は、人が個人として尊重される基礎であり、人格の象徴だ。不本意な改姓によって、結婚前に努力して築いた信用や評価が途切れてしまったり、「自分らしさ」や誇りを見失ってしまったりする人をなくす。この原点に立って、施策を展開しなければならない。

だが安倍政権の発想は違う。旧姓使用の拡大は「国の持続的成長を実現し、社会の活力を維持していくため」の方策のひとつとされる。人口減少社会で経済成長を果たすという目標がまずあり、そのために女性を活用する。仕事をするうえで不都合があるなら、旧姓を使うことも認める。そんな考えだ。

倒錯した姿勢というほかない。姓は道具ではないし、人は国を成長・発展させるために生きているのではない。

「すべて国民は、個人として尊重される」。日本国憲法第13条は、そう定めている。
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[朝日新聞] 北朝鮮問題 日本外交の役割拡大を (2017年09月16日)

国際社会が声を一つに非難してもなお、金正恩(キムジョンウン)政権は愚行を続けている。国連制裁による外交的包囲網を強めつつ、局面転換の道を探るほかあるまい。

北朝鮮がきのう、また北海道を越える弾道ミサイルを発射した。相次ぐ危険極まりない暴挙に改めて強く抗議する。

6度目の核実験を受け、国連安保理は石油輸出の制限に踏み込む制裁決議を採択した。中国とロシアを含む全会一致の決議から、数日後の発射である。

飛行距離は過去最長の約3700キロで、方向を変えれば、米軍基地のあるグアムにも届きうるとされる。対米攻撃のリスクは避けつつ、米国を対話に引き出す狙いがにじんでいる。

だが、結果はまた裏目に出るはずだ。トランプ米大統領は圧力の強化に傾いている。安保理の緊急会合は、先の制裁決議の履行徹底を確認しつつ、新たな非難を加えるだろう。

制裁に同調した中国では、大手銀行が北朝鮮系口座に利用制限を加えるという異例の動きが出ている。中南米でもメキシコやペルーが、北朝鮮大使に国外退去を命じた。

比較的近い関係にあった国々からも見放されている現実を、金政権は直視すべきである。

制裁決議を含む包囲網づくりはこれまで米国と中国が主導しているが、ミサイルが相次いで北海道上空を飛ぶ事態である。日本政府はもっと独自の役割を切り開く必要がある。

小泉純一郎首相が訪朝し、金正日(キムジョンイル)氏に拉致問題で謝罪させてから、明日で15年を数える。

両首脳が署名した平壌宣言は、国交正常化への展望をうたう一方で、ミサイル発射の凍結や日朝間での安全保障協議も盛り込んだ。

北朝鮮は以降、数々の約束に背いてきたが、平壌宣言の破棄はいまだ宣言していない。

北朝鮮は、核・ミサイルは米国との協議事項だと主張する。だが、米朝の本格交渉が見通せないなか、日本は単調に圧力強化を唱えるだけでは外交努力を尽くしているとは言えまい。

北朝鮮問題で米韓とスクラムを組み、ロシアとも頻繁に対話を重ねる日本は、6者協議のような多国間の対話を呼びかけるにふさわしい立場にある。

今月開幕した国連総会は、その好機だ。来週出席する安倍首相は、朝鮮半島を安定化させる利益を説き、米韓と中ロをつなぐ外交力が問われよう。

同時に、日米韓首脳による3カ国会談も開かれる方向だ。平壌に隙を見せない3者の結束と決意を示してもらいたい。
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2017年09月15日

[朝日新聞] 朝鮮学校訴訟 説得力を欠く追認判決 (2017年09月15日)

「結論ありき」で政権が進めた施策を、「結論ありき」で裁判所も追認した。そう言わざるを得ない判決である。

高校の授業料無償化をめぐり、朝鮮学校が対象からはずされたことの違法性が争われた裁判で、東京地裁は国側の主張を全面的に認めた。文部科学相がとった措置は「不合理とまではいえない」と述べた。

「追認」が際立つのは、「この施策は政治的・外交的理由によってなされたものとは認められない」と判断した部分だ。

朝鮮学校を無償化の対象としないことは、政権交代で第2次安倍内閣が発足した直後に事実上決まった。省内の規定で「意見を聴くものとする」と定められていた学識者による審査会の結論は、まだ出ていなかった。

当時の下村博文文科相は記者会見で「拉致問題の進展がないこと」を、まず理由にあげた。民主党政権の下で「外交上の配慮などはせず、教育上の観点から客観的に判断する」という政府統一見解が出ていたが、これについても下村氏は「当然廃止する」と明言した。

だが政治・外交への配慮から対象外にしたとなると、教育の機会均等を図る無償化法の目的に反し、違法の余地が生じる。政府は、大臣発言は国民向けのメッセージであって、本当の理由は「朝鮮学校に支給した金が流用される恐れがあるからだ」と説明するようになった。

取り繕ったのは明らかだ。しかし東京地裁は、納得できる理由を示さないまま、国側の言い分を認めてしまった。

行政を監視し、法の支配を実現させるという司法の使命を忘れた判断だ。無償化をめぐる同様の訴訟で「教育とは無関係な外交的、政治的判断があった」と述べ、政府の措置を違法とした7月の大阪地裁判決のほうが事実に即し、説得力に富む。

改めて確認したい。

北朝鮮による拉致行為は許し難い犯罪だ。だがそのことと、朝鮮学校の生徒らに同世代の若者に対するのと同じく教育の機会を保障し、成長を手助けすることとは、別の話である。

朝鮮学校と朝鮮総連の間に一定の関係があるとしても、同校は、一市民として日本社会で生きていくために、必要な知識や考え方を身につける場になっている。通っているのは自分のルーツの民族の言葉や文化を学ぶことを望む生徒で、韓国・朝鮮籍や日本国籍など多様だ。

誰もが明日の社会の担い手である点に違いはない。この当たり前のことを胸に刻みたい。社会の成熟度が問われている。
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[朝日新聞] 民進離党騒ぎ 自民党を利するだけだ (2017年09月15日)

民進党から離党する国会議員が相次いでいる。

新代表に前原誠司氏を選んだばかりで、なぜ離党なのか。あきれる国民も多いに違いない。

離党騒ぎが揺さぶるのは、民進党の行く末だけではない。

日本の政治に「もう一つの選択肢」が必要だ――。1980年代末から、積み重ねられてきた政治改革が後戻りしかねない現実を、民進党の議員たちは自覚すべきだ。

たしかに、どの党に所属するかは議員それぞれの政治判断による。

ただ、理解できないのは、民進党の不人気をひとごとのように語る姿だ。自分自身に責任はないのか。ことあるごとに自ら選んだリーダーの足を引っぱり、離党騒ぎを繰り返す。そんな現状こそが党の低迷を招いた大きな要因ではないか。

その反省も総括もないまま、民進党はもうダメだと言い募るような態度では、有権者の共感は広がるまい。

選挙の際に党の看板で一票を得たことを忘れたのか。とりわけ党名投票の比例代表枠で選ばれた議員が、議員辞職をせずに離党できることに釈然としない有権者も多いだろう。

離党した議員たちは、東京都の小池百合子知事を支持する勢力がめざす新党との連携が取りざたされている。7月の都議選で吹き荒れた世論の風を受けたいという本音が透けて見える。

だが、新党の理念や政策はまだ見えない。特定秘密保護法や安全保障関連法に賛成した小池氏の政治姿勢を見れば、新党が第2自民党のような存在になる可能性もある。

小選挙区制を中心とする衆院選挙制度が導入されて20年余。旧民主党政権が実現し、政権交代可能な政治が幕を開けたかに見えた時期もあった。一方で、多くの野党が生まれては離合集散のなかで消えていった。

民進党が野党第1党である以上、その使命は重い。理念や政策を明確に掲げ、政権を監視し、腐敗や慢心があれば代わりうる受け皿となる役割がある。

だが、たび重なる離党騒ぎは党の体力を奪う。結果として、政治の緊張感は失われ、自民党政権を利するだけだ。

旧民主党は結党から政権獲得までに11年間を要した。旧民主党政権の挫折で失った有権者の信頼を、民進党が取り戻せるか否か。いずれにしても長い時間を覚悟せねばならない。

野党第1党の責任から目をそらし、風頼みの新党に頼る。それは一連の政治改革の歩みに逆行する姿勢だと言うしかない。
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2017年09月14日

[朝日新聞] 憲法70年 まっとうな筋道に戻せ (2017年09月14日)

憲法は、一人ひとりの人権を守り、権力のあり方を規定する最高法規である。その改正をめぐる議論は、国民と与野党の多くが納得して初めて、前に進めるべきものだ。

このまっとうな筋道に、自民党は立ち戻るべきだ。

同党の憲法改正推進本部が一昨日、9条1項、2項を維持しつつ自衛隊の存在を明記する安倍首相の案について、条文の形の試案を示す方針を確認した。

「2020年を新しい憲法が施行される年に」。首相がそう語ったのは5月だった。

それが森友、加計学園問題などで「1強のおごり」への批判が高まり、7月初めの東京都議選で惨敗すると、「スケジュールありきではない」と軌道修正したはずだった。

だが結局、首相が描いた日程は変えたくないらしい。同本部の特別顧問である高村正彦副総裁は、秋の臨時国会で自民党案を「たたき台」として各党に示し、来年の通常国会で発議をめざす考えを示している。

背景には、最近の内閣支持率の持ち直し傾向があるようだ。北朝鮮情勢の緊迫や民進党の混迷も一因だろう。それ以上に、野党が憲法に基づき要求した臨時国会召集を拒み、一連の疑惑の追及を避けていることも支持率上昇の理由ではないか。

国会での圧倒的な数の力があるうちに、自らの首相在任中に改憲に突き進む。そんな強引な姿勢も世論の批判を招いていたのではなかったか。そのことを忘れたのだろうか。

一昨日の自民党の会合では、首相の9条改正案に同調する意見と、国防軍保持を明記した2012年の党改憲草案を支持する意見が対立した。

石破茂元防衛相は会合で「いまでも自民党の党議決定は草案だ。それを掲げて、国民の支持を得てきた」と指摘した。

連立を組む公明党の山口那津男代表は、安全保障関連法が施行されたことを理由に、9条改正には否定的な立場だ。

改憲論議には積極的な前原誠司・民進党代表も「少なくとも年単位の議論が必要だ。拙速な安倍さんのスケジュール感にはくみしない」と距離をおく。

民意も二分されている。本紙の5月の世論調査で首相の9条改正案について「必要ない」が44%、「必要」は41%だった。

憲法改正は、与野党の意見も民意も割れるなかで強引に進めるべきものではない。

党派を超えて、幅広い合意づくりを心がける。衆参の憲法審査会が培ってきた原点に戻らなければならない。
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[朝日新聞] 東電と原発 規制委の容認は尚早だ (2017年09月14日)

福島第一原発事故を起こした東京電力に、原発を動かす資格はあるのか。

原子力規制委員会が、柏崎刈羽(かしわざきかりわ)原発6、7号機(新潟県)の再稼働への審査で、安全文化が社内に根付いているかなど「適格性」を条件付きで認めた。

「経済性より安全性追求を優先する」などと東電社長が表明した決意を原発の保安規定に盛り込み、重大な違反があれば運転停止や許可の取り消しもできるようにするという。

しかし、今後のチェック体制を整えることと、現状を評価することは全く別の話だ。適格性を十分確認したとは言えないのに、なぜ結論を急ぐのか。近く5年の任期を終える田中俊一委員長に、自身の任期中に決着をつけたいとの思いがあるのか。

規制委の姿勢には前のめり感が否めない。今回の判断は時期尚早である。

安全文化は「過信」から「慢心」、「無視」「危険」「崩壊」へと5段階で劣化していくが、福島の事故前から原発のトラブル隠しやデータ改ざんで既に「崩壊」していた。東電は2013年、事故をそう総括した。改善に向けて、社外のメンバーをまじえた委員会に定期的に報告する態勢を整え、成果を誇る自己評価書も公表済みだ。

ところが、第一原発事故で当時の社長が「炉心溶融」の言葉を使わないよう指示していたことは、昨年まで明るみに出なかった。柏崎刈羽原発では、重要施設の耐震性不足を行政に報告していなかったことが発覚。今年8月、第一原発の地下水くみ上げで水位低下の警報が鳴った際は公表が大幅に遅れ、規制委は「都合の悪い部分を隠し、人をだまそうとしているとしか思えない」と厳しく批判した。

それなのに、規制委はなぜ、適格性について「ないとする理由はない」と判断したのか。

福島の事故後、日本の原発について、事業者も規制当局も設備などのハード面に関心が偏っているとの指摘が内外から相次いだ。安全文化の醸成と定着へ組織運営や職員の意識を改めていくソフト面の取り組みは、東電以外の事業者にも共通する課題であり、事故後の新規制基準でも不十分なままだ。

規制委にとって、適格性の審査は新しい取り組みだ。専門のチームで検討を始めたのは今年7月で、年内に中間まとめを出す予定という。

まずは適格性に関する指針を固める。その上で、個々の原発の再稼働審査にあてはめ、安全文化を徹底させる。それが、規制委が踏むべき手順である。
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2017年09月13日

[朝日新聞] 対北朝鮮制裁 決議後の行動が重要だ (2017年09月13日)

しっかりした圧力の枠組みは国連安保理でできた。次は、北朝鮮を対話の席につかせる国際社会の外交力が問われる。

北朝鮮による6回目の核実験を受け、安保理は新たな制裁決議を全会一致で採択した。

実験から1週間余りという異例の迅速さだ。これまで以上に厳しい制裁を盛り、早さと厳格さで国際社会の強固な意思を示したことは評価できる。

決議は、米国が当初に示した「最強の措置」の草案と比べれば、譲歩した。石油の全面禁輸や、金正恩(キムジョンウン)氏の在外資産の凍結と渡航禁止は見送られた。

だが、石油輸入に上限を設けたほか、主力産業である繊維製品も禁輸の対象とした。貴重な収入源である労働者の国外派遣も新規は認めないとした。

先月の制裁決議では石炭や鉄鉱石などが全面禁輸にされており、北朝鮮にとって大きな打撃となるのは間違いない。

北朝鮮経済を完全に窒息させる寸前の内容でとどめたのは、金政権に対する最終的な警告と受け止めるべきだろう。

「最高尊厳」とあがめる金正恩氏が名指しで制裁を受ける事態を避けたいなら、挑発行動を控えるしかない。戦争状態に近い「最強の措置」の一歩手前に立たされた重大さを、金政権は今度こそ悟るべきだ。

制裁決議は、06年の初めての核実験以来、今回で9回目だ。なぜ、ここまで挑発と制裁のパターンが繰り返されたのか、日米韓中ロの関係国は、過去の決議後の対応について検証してみる必要があろう。

経済的な制裁の抜け穴の存在は、これまで何度も指摘されてきた。順守が徹底されなければ決議は意味をなさない。

そして、さらに重要な点として、決議による国際圧力を設けた後に、北朝鮮を対話に導く政治的な働きかけが不足していたことを反省すべきであろう。

北朝鮮のいびつな体制は、経済苦境に陥っても直ちに政権が揺らぐわけではない。食糧難や財政難にあっても、体制を脅かす最大の敵は米国であり、駆け引きに神経を注いでいる。

そんな金政権の行動を改めさせるには、制裁を強めるのと同時に表舞台や水面下を問わず、関係各国があらゆるルートを駆使して交渉を進め、米朝間の本格対話をめざすほかない。

安保理の論議がスピード決着したのは、朝鮮半島での軍事的な混乱を避けたいとの強い思いで各国が一致したからだ。

国際社会はこの機に、北朝鮮に対外交渉の価値を考えさせる外交努力を重ねるべきである。
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[朝日新聞] 森友学園問題 国会は矛盾をただせ (2017年09月13日)

学校法人・森友学園の前理事長、籠池泰典と妻諄子(じゅんこ)の両被告が、大阪府、大阪市の補助金を詐取した詐欺罪などで、大阪地検特捜部に起訴された。

国の補助金を含めた詐取総額は1億7千万円にのぼる。補助金不正の捜査はこれで終結した。だが、特捜部は、学園に国有地を大幅値引きして売った財務省職員らの背任容疑については、捜査を続けるという。

繰り返すが、問題の核心は、国有地がなぜ8億円余りも値引きされたかだ。この点が解明されなければ、国民の納得は得られまい。捜査を見守りたい。

この問題で新たな音声データの存在も明らかになった。

財務省近畿財務局の職員が、学園側の希望する金額に近づけるために「努力している」と伝えていたことを示す内容だ。

朝日新聞の取材によると、昨年5月、財務局の職員2人が学園の幼稚園を訪問し、「来月には金額を提示する」と説明。前理事長夫妻は、すでに国に伝えていた新たなごみに加え、「ダイオキシンが出た」と述べ、「0円に近い形で払い下げを」などと迫っている。

財務局職員は汚染土の除去費の立て替え分としてすでに国が学園に約1億3200万円を払っており、「それを下回る金額はない」と理解を求め、10年の分割払いも提案し、「ご負担も減る」と説明した。

翌月、土地は1億3400万円で、分割払いでの売却が決まった。国有財産の処分が、相手の要望に沿って決まったとすれば驚くほかない。国有地は一括売却が原則だ。「新たなごみ」が出たというなら地中を掘削して調べ直せばいい。国の立て替え分は売値とは別の話だ。

このやりとりの前にも、財務局が「いくらなら買えるのか」と学園側にたずね、学園側が「1億6千万円まで」と答えたという関係者証言もある。

音声データは特捜部も入手している。価格決定までの国の内部のやりとりについて、捜査を尽くしてほしい。

焦点は、学園の小学校の名誉校長に安倍首相の妻の昭恵氏が就任していたこととの関係だ。

国会も事実関係の確認に乗り出すべきだ。

財務省理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)・国税庁長官は3月、国会で「(価格を)提示したこともないし、先方からいくらで買いたいと希望があったこともない」と述べた。分割払いも、学園の「要望」と答弁している。明らかに矛盾する交渉経緯が浮上している以上、臨時国会で真相を明らかにする必要がある。
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2017年09月12日

[朝日新聞] 桐生9秒98 努力と研究が開く地平 (2017年09月12日)

上下動のないフォームと高性能エンジンを連想させる爆発的な足の運び――。

陸上男子100メートルの桐生祥秀(よしひで)選手が9秒98の日本新記録を出した。日本のスプリンターの前に立ちはだかってきた「10秒の壁」がついに破られた。

人類が初めて電気計時で9秒台を記録したのは1968年。米国のジム・ハインズがメキシコ五輪で9秒95をマークした。10秒を切ることは、日本の短距離界にとって、半世紀にわたる目標だった。

98年のバンコク・アジア大会で10秒00まで肉薄した伊東浩司をはじめ、多くの一流選手がこの壁に挑んだが、はね返されてきた。レース後、桐生本人はもちろん、多くの人が喜びを爆発させたのも当然だろう。

見た目のシンプルさとは裏腹に、競技は繊細かつ複雑だ。

スタート直後にトップスピードとなって、長く持続させる。それが極意だ。だが難しい。

歩幅を狭くして足の回転数をあげれば、最高速に早く達するが、伸びは悪く失速も早い。逆に歩幅を広げれば、ギアがトップに入るのに時間がかかり、序盤の遅れを取り戻す前に、レースが終わってしまう。わずか100メートル、10秒の間に、マラソンにも負けないドラマがある。

新記録の背景には、練習によってその精緻(せいち)なバランスを極めた桐生の努力がうかがえる。

別の観点からも今回のタイムは高く評価できる。これまでに9秒台で走ったのは120人あまり。そのほとんどはアフリカにルーツを持つ選手だ。

日本の選手とは、身長や体重の体格差に加え、骨格や筋肉の付き方の違いがあると指摘する研究もある。日本陸連は90年代から科学的な研究に取り組み、欧米の走法や練習方法も参考にしながら、選手に合わせた育成方法を進めてきた。その成果が実り、日本歴代10傑では桐生に続く全員が10秒0台の記録を持つ。10傑の8人を現役が占め、うち6人は去年から今年にかけて自己記録を更新している。

選手層の厚みは、国際大会でメダル獲得が続くリレー種目での活躍からも明らかだ。

今季で引退したジャマイカのウサイン・ボルトの世界記録9秒58にはまだ差はあるが、世界と戦う出発点に立ったといっていいだろう。五輪や世界選手権での決勝進出、ファイナリストの誕生も決して夢ではない。

正しい方法であきらめることなく挑戦を続ければ、新しい地平が開ける。日本のアスリートが秘める可能性を、改めて教えてくれた新記録でもある。
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[朝日新聞] たばこ規制 東京の機運を全国に (2017年09月12日)

他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙を防ぐ施策に、東京都が乗りだした。

小池百合子知事が、職場や飲食店など、多数の人が使う施設を原則屋内禁煙とする条例をつくると表明した。年度内の議会提出をめざすという。

焦点となる食堂や居酒屋などの飲食店については、全面禁煙(喫煙室の設置は可)としつつ、30平方メートル以下のバーやスナックに限り、すべての従業員の同意などを条件に喫煙を認めるという。3月に公表された厚生労働省案にほぼ沿う内容だ。

先の国会では、20年東京五輪を視野に同省が規制法案の提出を探ったが、自民党の反対で先送りされた。国レベルの対策が進まないなか、今回の都独自の取り組みを歓迎したい。

ただ、その中身は十分とはいえない。日本も加盟する世界保健機関(WHO)の「たばこ規制枠組み条約」の指針が求めるのは、公共施設での「屋内全面禁煙」だ。喫煙室を設置しても漏れ出る煙で受動喫煙はゼロにはならないし、雇い主に向かって「客にたばこを吸ってほしくない」と、はっきり言えない従業員もいることだろう。

公募中の都民の意見も踏まえ、条例案提出までに都庁内の検討をさらに深めてほしい。

これとは別に、都民ファーストの会と公明党は「子どもを受動喫煙から守る条例案」を今月始まる都議会に出す予定だ。

条例案では、18歳未満に受動喫煙をさせないよう努めることを「都民の責務」と定める。子どもが乗っている自動車内でたばこを吸ってはならないとし、家庭で子どもと同じ部屋で喫煙しないことを努力義務として課す。罰則規定は盛りこまない。

子どもの受動喫煙をなくすという目的をかかげ、都議たちが条例案を提出しようとする試みは評価する。都民の意識を高める効果は大きいだろう。

ただ、喫煙自体は違法な行為ではない。私的な領域に公権力はどこまで口を出してよいのか、相互監視の風潮を生まないかなどの疑問や不安もある。

都議会の審議では論点を洗い出し、条文の内容や制定後の運用のあり方などについて、議論を尽くす必要がある。

たばこ規制は、五輪が開かれる東京だけやればよい話ではない。自民党内でも「望まない受動喫煙をなくす」という基本方針では合意が得られているという。だが、今月下旬に始まるとみられる臨時国会に向けた具体的な動きは見えない。

ここは一気に、全国レベルで対策を進めるべき時だ。
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2017年09月10日

[朝日新聞] 養育費不払い 確実な履行へ法改正を (2017年09月10日)

裁判で勝訴したのに、あるいは公証役場で正式な約束をかわしたのに、相手が履行しない。転職して連絡を絶ったり、財産を隠したりする――。

そんな問題に対処するための法整備案(中間試案)を法制審議会の部会がまとめた。

民事上の権利を実現する強制執行制度については、その不備がかねて指摘されてきた。03、04年に民事執行法が改められたものの、問題の解消には遠かった。今回の再改正は遅すぎる感があるが、試案はおおむね妥当な内容といえる。これを踏まえて法案づくりを急いでほしい。

とりわけ関心が高いのは、離婚後の子どもの養育費の不払い問題だ。母子世帯の6割が「一度も受け取っていない」と答えたという調査結果もある。厳しい経済環境におかれた子は進学もままならず、貧困の再生産を招く。社会の分断を防ぐためにも早急な手当てが必要だ。

試案は、支払い義務のある者(債務者)に対し、財産を明らかにさせる仕組みを強化する方針を打ちだした。裁判所の手続きに出てこなかったり、うそをついたりした時の制裁を厳しくする。罰金や懲役などの刑事罰まで科すことに賛否があるが、実効ある制度にするため前向きに検討すべきだ。

金融機関から債務者の預貯金の額や口座のある店名を、また一定の公的機関から勤務先の所在地を、それぞれ裁判所を介して取りよせられるようにする案も盛りこまれた。これまで個人情報保護などとのかねあいで見送られてきたが、実現すれば効果を発揮するだろう。

ただし、たとえば消費者金融の貸金(債権)回収のために公的情報を使うというのでは、幅広い理解を得るのは難しい。養育費をはじめ、生活していくうえで欠かせない債権の執行に限るなどの工夫が可能か、詰めた議論をしてもらいたい。

養育費の問題は強制執行制度を見直すだけでは解決しない。離婚時に書面でしっかり約束するよう、行政のサポートも進むが、海外では国が立て替え払いしているところもある。別途、さらなる検討が必要だ。

試案には、子どもが離婚した一方の親に連れ去られるなどしたとき、裁判所がさだめる監護者のもとに戻すための手続きの整備なども盛りこまれた。

共通するのは、裁判の結果が確実に果たされる社会にしようという考えだ。ここがいい加減では司法への期待と信頼はなり立たず、国の根幹を揺るがす。その認識にたって、今後も立法作業を進める必要がある。
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[朝日新聞] 尖閣問題5年 日中互恵の歩を進めよ (2017年09月10日)

沖縄県尖閣諸島の3島を日本政府が国有化してから、5年になる。

領有権を主張する中国が反発し、日中関係は一時最悪の状況に陥ったが、このところ停滞の中にも改善傾向がみられる。

だが、安倍政権と習近平(シーチンピン)政権の間では、信頼関係ができたと言うにはほど遠いようだ。

日中にとって、東アジア地域の平和と繁栄は共通の利益である。それが今、北朝鮮のミサイル発射と核実験によって脅かされている。にもかかわらず、両首脳間で直接の意思疎通がないのは異様というべきだ。

尖閣の国有化後、中国の国家主席も首相も来日していない。首脳会談は国際会議のときに、短時間できただけだ。関係改善の余地はまだまだ大きい。

尖閣周辺海域の状況も依然、厳しい。中国の公船による日本領海への侵入が繰り返されている。中国漁船とともに近づき、「公務執行」の事実を積み重ねているようにみえる。

こうした緊張を高める不毛な行動を中国はやめるべきだ。

問題は尖閣にとどまらない。中国軍の海洋進出が強まっている。艦船による日本の海峡などの航行や、航空機の接近が目立つようになった。

日本側も、この5年で変わった。集団的自衛権の行使を含む安保関連法を施行したほか、南西諸島の防衛を強化している。中国がそれも意識しつつ、さらなる軍拡を進めている。

そもそも両国の間には、自由民主主義と共産党支配という根本的な体制の違いがある。だが一方で、長年にわたる貿易と投資、人的交流の太い結びつきがあり、相互依存は強固だ。

新興大国・中国に対しては、どの国も協力と対抗の両面を抱えざるをえない。ただ、日本の外交は後者に偏りがちだった。

その意味では最近、習政権の「一帯一路」構想に日本政府が示した協力姿勢はバランスの修正を図ったものといえる。

尖閣国有化からさらに5年前は07年。第1次安倍政権の下で日中関係が改善し、温家宝首相が来日した。その翌年には胡錦濤国家主席が訪れ、相互信頼をうたう共同声明をまとめた。

ついこの間まで、そんな関係だったことを思い出したい。

安保面では、偶発的な衝突を防ぐ連絡態勢作りを急ぎたい。経済や環境ではもっと互恵関係を広げたい。地道な努力で関係の再構築を図るほかない。

まずは延期されている日本での日中韓サミットの開催をめざし、日本政府が中国に働きかけを強めてはどうか。
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