2020年02月25日

[朝日新聞] 神戸教員間暴力 背景と向き合い対策を (2020年02月25日)

問題の根深さが浮き彫りになった。関係者の責任を問うだけでなく、常軌を逸した行為を許した背景と向き合い、対策を講じていかねばならない。

神戸市立東須磨小学校でおきた教員間の暴力や暴言をめぐり、外部の弁護士からなる調査委員会が報告書をまとめた。

「くず」「死ね」といった罵倒と、体当たりやひざ蹴り。激辛カレーを顔に塗りつけ、食べさせる――。採用3年目の男性教諭(25)の尊厳を傷つけ、教壇に立てなくなるまでに追い詰めた先輩教諭4人によるハラスメントとして、調査委は120を超える行為を認定した。前校長についても被害教諭への2件のハラスメントを指摘した。

4人の加害側教諭は必ずしも集団で暴力・暴言を重ねたわけではなく、被害教諭との関係も時期により変化していた。総じて「ふざけやからかい」と考えていたようだが、言語道断だ。前校長ら管理職も含め、それぞれの悪質度に応じて、定められたルールと手続きに従い厳正に処分しなければならない。

周囲はなぜ早期に止められなかったのか。調査委はそうした疑問に基づき、他の多くの教諭からも聞き取りをした。見えてきたのは、複数の要因が重なり、子どものいじめにも共通する構図ができていた実態だ。

まず問うべきは、人権と規範への意識を欠いた加害側教諭である。そして、前校長の威圧的な姿勢が異様な言動を許す空気をつくり、加害側教諭を指導した現校長も配慮不足で被害教諭への報復的行為を招いた。ハラスメントに関する教育と研修は不十分で、学校外・市教委外への通報窓口も不備だった。報告書から読み取れる概要である。

先輩との関係を拒めなかった被害教諭は、信頼できる相談相手がおらず、耐えるしかなかった。その様子は関係を受け入れているようにも見えた。他の教諭は多忙さもあってハラスメントに気づかず、気づいてもかまう余裕がなく、見て見ぬふりと言わざるをえない面もあった。

子どものいじめを察知し、指導・予防することを求められている先生の間に、それと同じ構図ができていた。調査委は、研修や相談窓口の見直しとともに、子どものいじめ問題について学校現場の認識をいま一度確認し、職員室をPTAや地域に開くよう提案している。

東須磨小では、今回の被害者と加害者以外の教諭の間でも、さまざまなハラスメントがあった。先生同士の関係がおかしくなった学校で、子どもたちが楽しく学び、生活できるはずがない。他の学校もひとごとと片付けず、現状をみつめ、問題の解決に努めてほしい。
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[朝日新聞] カジノと政権 噴き出す問題直視せよ (2020年02月25日)

「国民の声に耳を傾ける」「丁寧に議論していく」

安倍政権が発するこうしたもっともらしい言葉は、内実を伴わず、その場を言い繕うだけのものであることがしばしばだ。

カジノを含む統合型リゾート(IR)をめぐる国会審議でも同様の光景が繰り返される。

日本への参入をめざす中国企業側から賄賂を受け取ったとして、IR担当の内閣府副大臣だった秋元司衆院議員が起訴された。16年12月のIR推進法の成立過程にも、改めて重大な疑念が生じた。ところが政権は、既定路線をひた走っている。

事件を受け、事業者が政府関係者と接触する際のルールを、IR整備に向けた基本方針に盛り込む考えを示してはいる。だがその程度の手当てで、公平公正な事業者選定が担保できるとは到底思えない。

衆院予算委員会では、野党が「立ち止まって問題の本質と癒着の温床を徹底的に洗い出すべきだ」と指摘した。これに対し首相は冒頭の決まり文句に逃げこみ、事件に向き合おうとしなかった。誘致を検討する自治体について、カジノ業者との接触実態を調査・公表するよう求められても、応じなかった。

秋元議員が摘発された後も、政府は自治体からの誘致申請の受付期間を来年1?7月とする日程を変えていない。一方で、成長戦略の目玉と位置づけながら、IRの経済波及効果について具体的な数字を出すことを拒む。赤羽一嘉国土交通相は「立地場所が決まっていないので積算できない」との説明を繰り返すが、そんなことでどうして「目玉」といえるのか。

ギャンブル依存症への対策も改めて問われている。

野党は、カジノで賭けられる金額や事業者が客に貸し付ける額に上限を設けるなどしないのか尋ねたが、首相は「依存症防止のための制度を整備している」と述べるにとどまった。

IR実施法が、入場を「週3回、28日間で10回」に制限していることを念頭に置いた答弁だが、専門家はかねて「それだけ賭場にいれば依存症になる」と警告し、対策の強化を訴えてきた。実施法成立から1年半が過ぎてもゼロ回答とは、政権の意向と異なる「国民の声」には耳を傾けないと言うに等しい。

朝日新聞社の1月の世論調査では、IR整備の手続きを「凍結する方がよい」と答えたのは64%で、「このまま進める方がよい」20%を大きく上回った。2月調査でも、IRにメリットよりもデメリットを感じるとの答えが2倍近くあった。

やると決めたのだからやる。後は問答無用――。そんな政権の態度は、将来に禍根を残す。
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2020年02月24日

[朝日新聞] 保釈のあり方 時代に即し 原則忘れず (2020年02月24日)

いまの保釈制度にどんな問題があり、いかなる対処をすべきか。その議論が始まる。

保釈が認められた刑事事件の被告が、その後、行方をくらます事例が続いたのを受けて、森雅子法相が防止のための法整備を法制審議会に諮問した。

逃走事件が起きれば、裁判や刑の執行に支障が出るばかりでなく、地域に不安と混乱をもたらす。制度や運用に見直すべき点があれば、見直さなければならない。

保釈は、被告が社会生活を営みながら、裁判で十分な防御活動を行うためにある。推定無罪の原則に基づくもので、刑事司法の適正さを保つうえで欠かせない措置といえる。

しかし日本では、その趣旨に反する長期の身体拘束が当然のように行われてきた。行動の自由を奪うことで、捜査側に有利な供述を得ようとする「人質司法」との批判が出るゆえんだ。

それが近年、冤罪(えんざい)事件への反省や裁判員裁判の導入を背景に、改善の方向に進んできている。流れを後戻りさせてはならない。審議にあたり、法制審はまずこの点を確認し、共有する必要がある。捜査・裁判上の要請と人権との均衡をどう図り、あるべき姿を探るか。多様な角度からの議論を望みたい。

具体的な論点のひとつは、保釈後に逃げてしまう行為を、刑務所からの逃走と同じように、罪に問えるようにすることだ。現在これを罰する法律はない。行方を追うために通話記録を押収するなど、強制力をもった捜査ができる規定も欠く。何らかの手当てが必要だろう。

もうひとつが、保釈の際、所在地を把握できるGPS(全地球測位システム)機器を被告に装着させることの是非だ。

海外で多くの実施例があり、弁護人の間にも「拘束が続くよりもはるかに良い」との声がある。十分検討に値する。

とはいえ、他者に常に居場所を知られるのは、人権の重大な制約だ。装着させることを禁じる規定はないのに実施されてこなかった大きな理由だ。

カルロス・ゴーン被告のような明確な意思と計画に基づく逃亡の防止に、どこまで有効か。機器や監視体制の構築・運営にかかるコストに見合う効果があるか。また、いったん導入されると、保釈条件にGPS機器の装着が安易に採り入れられる懸念もある。結論ありきでなく、要件の絞り込みを含めた慎重な仕組みづくりが求められる。

今回の諮問は諮問として、保釈の可否を判断する裁判官の責任は重い。事件の性質や被告の立場、取り巻く状況を見極め、適切な判断を下しているか。不断の点検を怠ってはならない。
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[朝日新聞] 首相の訪ロ 歴史を踏まえた判断を (2020年02月24日)

モスクワで5月9日、対ドイツ戦勝75周年記念式典が開かれる。安倍首相がこれに出席しようと意欲を示している。

安易な形での出席は国内外に誤ったメッセージを送る結果になるだろう。軽々な判断で結論を出すべきではない。

2005年の60周年には当時の小泉首相のほか、ブッシュ米大統領、シラク仏大統領、アナン国連事務総長らが顔をそろえた。第2次大戦でのナチスドイツへのソ連の勝利の歴史的意義に敬意を表するためだった。

しかし15年の70周年の際は、日本を含むG7の首脳は欠席した。ロシアがその前年、ウクライナのクリミア半島を一方的に併合したからだ。

大戦後の国際秩序は、隣国との国境を尊び、紛争は話し合いで解決することを原則としてきた。それを踏みにじったロシアのクリミア併合はその後、何も是正されていない。

まして、記念日に赤の広場で行われる軍事パレードは近年、核ミサイルをはじめとするロシアの軍事力を内外に誇示する国威発揚の機会となっている。

そうした行事への出席は、ロシアの振るまいを容認していると受け取られかねない。

メルケル独首相は5年前、式典の翌日にモスクワを訪ね、プーチン大統領と無名戦士の墓に献花した。軍事パレードへの参席は避けつつ、大戦を引き起こした国の指導者としての責任を果たす苦渋の判断だった。

だが安倍氏からは、自国の歴史に真摯(しんし)に向き合う姿勢は感じられない。

第2次大戦をめぐる日本とソ連との関係は、ドイツよりも複雑だ。日本は当時ドイツの同盟国であり、近隣国にも大きな損害をもたらした。一方でソ連は終戦間際に中立条約を破って対日参戦し、北方領土を含む日本の領土を占領した。

日本は一貫してソ連の行為を国際法違反だと非難してきた。だがロシアは近年、第2次大戦の結果を受け入れるよう日本に強く求めている。戦勝記念日への出席は、ロシアの歴史観を受け入れたかのように受け取られる懸念もある。

安倍氏は国会で「十分な時間をとって首脳会談ができるか否かという観点も含め、出席を検討していく」と述べた。首脳会談の意義は否定しないが、この日が持つ意味合いを考えると、慎重さに欠ける姿勢だ。

プーチン氏は戦勝記念日に多くの外国首脳を招いており、安倍氏が出席すれば歓迎されるだろう。だがプーチン氏の歓心を買おうとする安倍氏の対ロ平和条約交渉は行き詰まっている。

目先の損得だけで出席すれば、失うものも少なくない。
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2020年02月23日

[朝日新聞] 桜を見る会 首相の説明 破綻明らか (2020年02月23日)

安倍首相の説明と食い違う事実がまた明らかになった。問題はないと強弁するためのつじつま合わせの破綻(はたん)は、もはや明らかだ。一国の政治指導者の言葉の信が問われる、深刻な事態と言わざるを得ない。

首相をはじめとする政治家が推薦した「桜を見る会」への招待者は、会の趣旨にふさわしい「功績・功労」があったのか。首相はこれまで「内閣府で最終的にチェックしている」と答弁してきた。しかし、複数の政府関係者が、朝日新聞の取材に対し、「政治枠」は事実上ノーチェックだったと認めたのだ。

招待者は第2次安倍政権下で膨れあがり、首相の地元事務所が後援会関係者に幅広く参加を募っていた。それでも首相は、内閣府のチェックを根拠に、公的行事の私物化との批判をはねつけてきた。証言通りであれば、首相の説明は言い逃れに過ぎなかったことになる。

桜を見る会の前夜祭をめぐる首相とホテル側の説明の食い違いも決着していない。

明細書は示されず、費用は参加者個人が支払ったという首相に対し、ホテル側は明細書を発行しないことはなく、代金は主催者からまとめて受け取るなどと、野党議員の質問に答えた。

整合性を問われた首相は、先方に確認した結果として、ホテル側の説明はあくまで「一般論」と釈明したが、その際、ホテル側が言っていない「営業の秘密に関わる」などの文言を加えていたことが後で明らかになる。自らの主張を補う脚色をしたと疑われても仕方あるまい。

その後の首相は、記者団の問いかけに、素っ気なく「国会で答弁した通りだ」と繰り返すだけ。菅官房長官は国会での野党の追及に「首相が答弁したことが正しい」と色をなした。謙虚に自らを省みることなく、正当化に躍起になるのは、この政権で繰り返されてきた光景だ。

ホテル側への自民党の対応も見過ごせない。党内から「もう使わない」との声があがり、森山裕国会対策委員長は、ホテルの関係者が「ご迷惑をかけている」と党本部を訪ねて来たことを、わざわざ記者団に明らかにした。口封じの圧力と受け止められないか。

桜を見る会だけにとどまらない。東京高検検事長の定年延長やカジノ汚職など、政権をめぐるさまざまな問題の解明が進んでいないというのに、政権与党は予算案の早期の衆院通過をめざし、次々と審議日程を決めている。

このままでは、行政をチェックすべき立法府の役割は果たせない。これほどずさんな政府の答弁を、決してうやむやに終わらせてはいけない。
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2020年02月22日

[朝日新聞] 製鉄所閉鎖 雇用への目配り怠るな (2020年02月22日)

民間企業の事業に盛衰はつきものだ。縮小や撤退もときに避けられない。だが、雇用や地域経済に過大な負荷がかかれば、生活が脅かされ社会がきしむ。十分な目配りが必要だ。

鉄鋼最大手の日本製鉄が、呉製鉄所(広島県呉市)の高炉2基を休止し、圧延なども含めた製鉄所全体を2023年9月末までに閉鎖する方針を発表した。鉄鋼需要の低迷などで業績不振に陥り、国内拠点の再編を加速する。和歌山の高炉1基も休止するという。

呉製鉄所は、17年に新日鉄住金(現日本製鉄)の傘下に入った旧日新製鋼の基幹事業所だ。呉海軍工廠(こうしょう)の跡地に戦後建設され、60年代に高炉が稼働した。重厚長大型産業が集まる呉のシンボル的な工場で、協力会社を含め3千人余りが働く。

突然の閉鎖方針に地元では戸惑いの声が漏れ、知事や市長は製鉄所存続を要望した。影響の大きさを考えれば理解できる反応だが、国内鉄鋼業をとりまく環境は厳しく、大幅な見直しはハードルが高そうだ。

ただ、現時点で日本製鉄の経営が行き詰まっているわけではない。歴代の経団連会長や、日本商工会議所の現会頭を輩出してきた企業として、自社の都合だけを押しつけるような行動はあってはならない。

当面する最大の課題は、雇用の安定の確保だ。呉製鉄所の自社社員約千人については、希望退職などは募らず、配置転換で対応する姿勢を示している。しかし広域の配転には応じにくい社員もいるだろう。協力企業の雇用にも影響は及ぶ。どのような日程、条件で閉鎖するのか、丁寧な説明と情報提供に努め、可能な限り激変を緩和できるよう、措置を講じてほしい。

日本経済は足元では人手不足が続いている。職種や待遇で必ずしも条件があうわけではないにせよ、数字の上では広島地域でも一定の雇用吸収力がある。

雇用不安を招かぬためには、マクロ経済環境の安定が、まず欠かせない。加えて、雇用のマッチングや社会人が学び直す機会の充実も、重要になる。

一方で、「企業城下町」的な地域で基幹となる工場が閉鎖されると、商店街や飲食店などを含め、地域への影響が加速度的に広がる場合もある。簡単な解決法は見いだしにくいが、工場跡地を含め、地域の資源をいかに有効に活用するか、官民で知恵をしぼるべきだ。

グローバル化や技術の進歩は経済全体に恩恵をもたらす一方で、特定の産業や地域、個人に打撃を与え、放置すれば社会の不安定化につながりかねない。個別企業、地域にとどまらない問題として受け止めたい。
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[朝日新聞] 感染症と社会 判断支える情報もっと (2020年02月22日)

新型コロナウイルスの感染が広がるなか、様々なイベントなどを開く必要性について、厚生労働省が主催者側に検討を促す声明を発表した。一律の自粛要請ではないとしつつ、今後見直す可能性にも触れている。

声明には「屋内などで、お互いの距離が十分にとれない状況で一定時間いることが、感染のリスクを高める」とある。

だが、これだけではあまりに漠としていて、市民は戸惑うばかりだろう。開催する際の「工夫」として紹介されている、手洗いの推奨やアルコール消毒薬の設置などは、すでに多くのところが実施している。

「十分」な距離とはどの程度か、会場の状況のどんな点に留意すればいいのかなど、より具体的な情報と根拠となるデータを積極的に伝え、判断を側面から支えるようにしてほしい。

感染のリスクを少なくするのに越したことはないが、人が集まる機会を全て中止したり延期したりするのは現実的でない。自粛のゆき過ぎは社会の萎縮と経済活動の停滞を招く。

事業継続計画(BCP)をつくっている企業・団体は、それを踏まえて冷静に判断することが大切だ。病気の流行阻止と同時に、社会の「平常心」を保つ力が試されている。

たとえば、満員電車での感染の危険性については、こんなふうに考えるべきではないか。

運行を止めてしまえばリスクはなくなる。だが移動の手段を奪われる人が続出し、社会に甚大な影響が及ぶ。公共性の高い事業やサービスは原則として維持し続けなければならない。

ただし、鉄道を利用する側の企業や職場が、時差出勤や自宅での勤務、テレワークなどを進んで採り入れることはできる。個々の自主的な取り組みや働きかけによって満員状態を少しでも緩和できれば、そのぶんリスクは減る。結果として、どうしても電車に乗らねばならない人たちが恩恵を受け、社会総体のメリットは大きくなる。

厚労省はきのう、経団連をはじめとする経済団体に対し、社員に発熱など風邪の症状がみられるときは自宅で休養させる▽休みやすい環境や休暇制度を整備する▽パートタイムや派遣労働など多様な働き方に配慮する――などの要請をした。

多くの職場や学校では、インフルエンザにかかったとわかれば、発症の翌日から5日間、出勤・出席を停止する措置が定着してきている。周囲に一時的な影響はあるかもしれないが、全体に目を向ければ流行の規模を抑えることにつながる。

正しい認識をもち、実践する社会をつくることで、感染症との闘いに臨みたい。
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2020年02月21日

[朝日新聞] 男性の育休 「取って当然」の社会に (2020年02月21日)

長時間労働が仕事と家庭の両立を阻み、育児や家事の負担が女性ばかりに偏る。そんな日本のありようが、深刻な少子化の要因と言われて久しい。

男女が協力し合って子どもを育てる。当たり前のことを、誰もができるようにするには、働き方も人々の意識も、大きく変える必要がある。

そのために、男性の育児休業をもっと広げたい。

育休は、原則として子どもが1歳になるまで、男女どちらでも取得できる。休業中は賃金の67?50%の給付金が支給される。国連児童基金(ユニセフ)は昨年、父親のための育休制度で、日本は41の先進国の中で1位と評価した。

問題は、多くの父親が利用できていないことだ。厚生労働省の18年度の調査では、育休取得率は女性82・2%に対し、男性はわずか6・16%だ。

政府は昨年末、男性の育休取得率を25年に30%にする目標を掲げた。3月に新たな少子化社会対策大綱の取りまとめを目指しており、男性の育休取得の促進は柱の一つとなる見込みだ。

どうすれば誰もが気兼ねなく取れるようになるのか。政府内では、休業中の給付金をさらに手厚くする案が取りざたされている。

たしかに、家計の収入が減ることへの不安は大きい。給付率を引き上げれば、そうした人が取得しやすくなるだろう。

一方で、「取りづらい雰囲気がある」「仕事の代替要員がいない」など、職場環境を理由に挙げる声も少なくない。

制度の見直しと両輪で、職場の意識、働き方も改めねばならない。上司が積極的に取得を促せば、部下も休みやすいのではないか。日頃から複数の社員で仕事の情報を共有していれば、だれかが休んだときのカバーも円滑に進むだろう。それぞれの企業、職場で工夫しながら、男性が育休を取りやすい環境を整えることが求められる。

同時に、育休の「質」にも目を向けたい。

厚労省の調査で、育休の取得期間は女性の約9割が6カ月以上なのに対し、男性は7割以上が2週間未満だ。

夫が育休を取得したという女性に聞いた民間の調査では、約3人に1人が育休中の夫の家事・育児時間が1日あたり2時間以下と答え、不満を抱く人が少なくない様子もうかがえる。

さらに、育休を終えたら後は女性任せ、というのでは困りものだ。

家事や育児について、「女性の仕事」という固定観念をぬぐいさり、男性も日常的に携わる社会に変える。育休を、その第一歩としたい。
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[朝日新聞] 中国とウイルス 情報の自由奪う危うさ (2020年02月21日)

国民の健康と安全をめぐる医療情報や批評が封殺される。そんな社会は異様であり、秩序の安定もむしばむだろう。

中国共産党政権が言論の統制を強めている。新型コロナウイルスが広がる深刻な事態を受けて、監視と取り締まりをさらにエスカレートさせている。

今週、米ウォールストリート・ジャーナル紙の中国駐在記者3人を事実上の国外退去処分にした。米国の大学教授が新型肺炎問題を受けて中国を論評したコラムに抗議したものだ。

同紙については昨秋、習近平(シーチンピン)国家主席の親族をめぐる報道をした記者も、事実上の退去処分になった。今回は当局が問題とする記事とは直接関係のない記者たちを処分した点で、異例さが際立つ。

中国の市民に対しても、厳しい強権の発動が続いている。

感染都市とされる武漢は今も「封鎖」されているが、弁護士や市民らが一時、病院現場の悲惨な実情をSNSで発信していた。だが、やがて彼らは相次いで行方不明になった。当局に拘束されたとみられている。

外国メディアや市民による情報発信を封じる動きには、感染拡大をめぐる当局批判を抑え込みたい思惑がある。

共産党政権はかねて、社会の安定こそが市民の利益だとし、そのためには言論の自由も制限されると正当化してきた。

しかし今回は、そうした言論弾圧が情報の隠蔽(いんぺい)を生み、感染拡大という悲劇につながったのではないかという疑念を広げている。

武漢市の33歳の医師、李文亮氏は昨年、ウイルスに関わる情報をいち早くSNSで発信し、警鐘を鳴らした。だが、警察は「デマで秩序を乱した」として訓戒処分にした。その後、十分な対策がとられないなかで李氏は自身も感染し、死亡した。

李氏の遺志を継ぐ形で、北京大学教授らは今月、異例の公開書簡を発表し、「人民の知る権利が奪われた結果、数万人が感染した」と指摘した。感染拡大は当局の言論統制が招いた「人災だ」と糾弾している。

報道への圧迫や市民の取り締まりを強めても、そうした疑念は拭えまい。

現に起きていることを誰もが自由に発信し、論じあい、様々な対策と備えをとる。それがいかに社会の強靱(きょうじん)化に必要か。今回の問題は改めて、自由が制限された社会の弊害を中国国民に考えさせている。

亡くなった李医師は中国メディアに「健全な社会は一種類の声だけであるべきではない」と語っていた。その言葉の重みを共産党政権は正面から受け止めるべきである。
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2020年02月20日

[朝日新聞] クルーズ船対応 ケアと検証を確実に (2020年02月20日)

新型コロナウイルスの集団感染が起きた大型クルーズ船で、政府による14日間の留め置き措置が終わり、検査の結果が陰性で、かつ症状のない乗客の下船が始まった。

感染が確認された乗客・乗員は600人を超えた。乗客に個室での待機を求めた今月5日以降も、船内で広がった疑いがある。おととい現場に入った国内の専門家からは、感染防御の対策が取られていなかったという厳しい指摘も出ている。

集団感染の原因や伝播(でんぱ)のルートを早急に調べ、今後の対策にいかすとともに、情報を世界で共有しなければならない。

下船した人たちの心身のケアも欠かせない。定期的に健康状態をチェックし、異常があれば速やかに対処できるようにすることが、本人はもちろん周囲の安心にもつながる。

この間、政府の方針は二転三転した。当初、症状のない人はそのまま下船させる予定だったが、横浜港に入った直後の検疫で感染者が見つかると、方針を変えて船内待機を求めた。その後、感染者がほぼ連日見つかるなか、持病を悪化させて救急搬送される人も出るようになった。14日からは高齢者らの下船を認めることにした。

ウイルスの検査態勢が整わず、対応に一定の制約があったにせよ、無症状で元気な人や、検査で陰性だった人まで船内にとどめる必要があるのか、疑問の声はあった。疑いのある者は上陸させず、水際で阻止するという方針にこだわり、事態の悪化を招いた面はないか。

また、持病薬の提供を含む日常生活のサポートや、乗客・乗員への情報提供のあり方にも課題を残した。あわせて検証の対象にしてもらいたい。

船には、日本以外にも55の国・地域の乗客と乗員が乗っていた。今回の政府の一連の措置が、こうした国々の信頼を得られているとは言い難い。

米国はチャーター機を派遣して自国民を退避させたが、帰国後、改めて14日間の隔離を実施している。今月5日以降新たな感染は起きていないという、厚労省の見解が受け入れられていない証左だ。対策の足並みをそろえるためにも、船内の実態の解明を急ぐ必要がある。

集団感染が疑われる大型船への対処方法が、国際社会で確立していない問題も浮上した。

別のクルーズ船は、日本やフィリピン、タイなどで入国を拒まれ、1週間余り洋上をさまよった。世界保健機関(WHO)は「根拠に基づかないリスク評価だ」と批判している。

検疫・治療の態勢や費用分担のあり方について、国境を超えたルールの整備が急がれる。
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[朝日新聞] 森友学園問題 忘れるわけにはいかぬ (2020年02月20日)

行政の公平性がゆがめられたのでは、との疑念はいまも消えていない。経緯を検証できる公文書は、改ざんや廃棄が重ねられ、国民の知る権利は大きく損なわれた。

学校法人森友学園にまつわる一連の問題は、民主主義の根幹を揺るがしてきた。そして、首相主催の「桜を見る会」に関しても、同じことが突きつけられている。ともに真相の解明と責任追及を続ける必要がある。

大阪地裁できのう、森友学園の前理事長夫妻が国の補助金などをだまし取ったとされる事件の判決があり、有罪が言い渡された。今後控訴が予想され、刑事責任の有無の確定にはなお時間を要しそうだ。

忘れてならないのは、この裁判では正面から争われなかった多くのことがらである。

学園に国有地を売却するにあたり、財務省はなぜ鑑定価格から8億円余、9割近い値引きをしたのか。他の売却事例では金額を公表しているのに、このケースだけ当初開示を拒み、さらに決裁文書などの改ざん、廃棄に手を染めた理由は何か。

学園が開校をめざしていた小学校の名誉校長には安倍首相の妻昭恵氏が就いており、公文書からは、取引にかかわった複数の政治家らとともに、昭恵氏の名が削除されていた。首相側への配慮が背景にあったのでは、との疑いは残ったままだ。

改ざんの責任をとって、財務省で理財局長を務めた佐川宣寿氏が辞職し、他の多くの職員が処分された。だが麻生財務相は続投し、国会で「私や妻が関与していれば、首相も国会議員もやめる」と答弁した首相は、その後言い分を変え、うやむやにすることを図った。そんな「トカゲのしっぽ切り」の過程で、財務省近畿財務局職員の自殺という悲劇も生まれた。

「桜を見る会」をめぐっても、森友問題と同じような構図が浮かびあがる。

会の招待者は第2次安倍政権の発足以降、年々膨らみ続け、首相の後援会関係者や昭恵氏が推薦した知人が大勢含まれていた。招待者名簿に関し、公文書管理法と関連規則に反する対応が次々と発覚。保存期間を管理簿への記載義務がない「1年未満」に変更し、短期間で廃棄した事実も明らかになった。

内閣府の歴代人事課長が厳重注意処分になったが、「見る会」担当の菅官房長官ら政治家は誰も責任をとらない。首相も説得力を欠く国会答弁を重ねるばかりで、調査を求める野党の声を頑としてはねつける。

愚弄(ぐろう)されているのは国会であり、そこに代表を送っている国民だ。森友問題は終わっていないし、終わらせてはならない。
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2020年02月19日

[朝日新聞] 石炭火力輸出 気候危機の助長やめよ (2020年02月19日)

気候危機に立ち向かうべきときに、温室効果ガス排出の多い石炭火力発電所を海外に輸出していいのか。そんな議論が、にわかに注目されている。

きっかけは、小泉環境相が先月、日本の公的資金が使われる見込みの海外事業が適正かどうか、環境省として調べる意向を明らかにしたことだ。

たとえばベトナムのブンアン2石炭火力発電所の計画には三菱商事の子会社が出資し、国際協力銀行が融資を検討しているが、工事などを受注するのは中国と米国の企業の予定だ。小泉氏は「この実態はおかしい」として、ほかの案件についても調査する考えを示した。

といっても、日本企業に受注させよという話ではない。

異常気象や自然災害が各地で相次いでおり、被害の深刻化を回避するには、地球温暖化対策の国際ルール・パリ協定の下、産業革命以降の気温上昇を1・5度に抑える必要がある。それには、2050年に二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにしなければならない。

石炭火力は最新型でも天然ガス火力の2倍の排出量があるため、20?30年代に発電所の稼働ゼロをめざす国々が欧州などで増えている。

にもかかわらず日本は、主要7カ国(G7)で唯一、国内に数多くの新規計画を抱え、国際的な風当たりが強い。

批判に輪をかけているのが、プラント輸出や投融資を通じ、東南アジアなどで多くの石炭火力の新設にかかわっていることだ。安倍政権は「相手国から要請がある」「高効率な設備に限る」など四つの条件を満たした場合、輸出を許容する政策を変えていない。

「しかし、高効率といってもCO2排出量が従来より数パーセントほど減るにすぎない」。自然エネルギー財団は今月、そう指摘する報告書をまとめた。いくら高効率でも、新設すれば今後40年にわたり多量のCO2を排出することに変わりはなく、パリ協定がめざす脱炭素化に逆行するのだ。

たとえ日本が撤退しても、中国などの企業が受注するだけでは――。そんな声もある。そうであっても、輸出から率先して撤退し、他国にも同調するよう促すのが、日本のとるべき姿勢ではないか。

自然エネ財団によると、安倍政権がめざすインフラ輸出30兆円のうち、石炭火力は民間投資を含めても2%に満たない。そのせいで「脱石炭に後ろ向き」と批判されては割に合わない。

国内で再生可能エネルギーを広げ、ノウハウを途上国に輸出する。求められるのは、気候危機を助長しない支援である。
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[朝日新聞] 検察官の定年 検討の過程 文書で示せ (2020年02月19日)

法にのっとって当然作成されているはずの公文書を示しながら、国民に丁寧に経緯を説明する。その義務が森雅子法相、そして安倍政権にはある。

東京高検検事長の定年延長問題である。政府側の答弁は極めてわかりにくく、迷走の末、つじつま合わせに終始していると言わざるを得ない。

検察官の定年年齢は検察庁法に明記されている。それなのになぜ延長できるのか。この疑問に、森法相は当初、国家公務員法に延長規定があるので、それを適用したと解説していた。

だがその条文を審議した81年の国会で、政府が「検察官には適用されない」と述べていたことが、今月10日に判明した。法相から納得できる説明がないまま、安倍首相は13日になって、「今般、適用されると解釈することとした」と答弁した。

では「今般」とはいつか。

17日の衆院予算委員会で尋ねられた法相は、「国家公務員一般の定年引き上げに関する検討が昨年から行われている」としたうえで、検察官の定年延長を「政府内で是としたのは本年1月」と述べた。検事長の定年が2月7日に迫る中での異例の措置だったことが確認された。

しかもこの質問に法相は答えようとせず、5回繰り返し聞かれてようやく明らかにした。

検察官は起訴、不起訴の決定をはじめ、強大な権限をもつ。その職務と責任の特殊性に鑑みて、検察庁法は特別に定年規定を設けている。延長が必要だというのならば、同法の改正案を国会に提出して審議を仰ぐのが当然の理ではないか。

昨年から今年1月まで、法務省及び政府内部で、いつ、誰が、どんな検討をしたのか。81年の政府答弁をどう理解したのか。法改正でなく解釈変更でいくと、誰が、いかなる理由で判断したのか。異論はなかったのか。国会での説明が不可欠だ。

公文書管理法は、行政機関の意思決定に至る過程を合理的に跡づけ、検証できるように、文書を作成しなければならないと定める。そして政府のガイドラインは、法律の解釈や閣議に諮った案件の関連文書は30年間保存すると明記している。

森友・加計問題を反省して政府は襟を正したはずだ。問われているのは、検察官の身分に関わる重大な法解釈である。正確で詳細な記録が法務省に残されていなければおかしいし、法相が「相談した」という内閣法制局や人事院も同様である。

不可解な定年延長は、検察に求められる中立・公平への疑念を呼び起こし、「法の支配」への理解を欠く政権への不信を一層深めている。このまま放置することは到底許されない。
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2020年02月18日

[朝日新聞] 大学入試改革 出直し議論、根本から (2020年02月18日)

文部科学省の「大学入試のあり方検討会議」が先月から始まった。共通テストへの英語民間試験と記述式問題の導入が土壇場で見送られたのを受け、仕切り直しのために設けられた。

だが、これまでの3回の会議を見ると、その反省をふまえた運営になっているのか、疑問を抱かざるを得ない。

まず審議期間の問題だ。

文科省は「1年をめどに結論を得たい」と繰り返す。新指導要領で学ぶ最初の学年は25年1月の入試を受けるので、それにあわせて改革したい。受験生や大学への周知期間を考えると、検討に割けるのは1年だ――。

そんな理屈だが、説得力があるとはとても思えない。指導要領の切り替え時期などお構いなく「21年1月導入」で走り、今回の混乱を引き起こしたのは当の文科省ではないか。

民間試験と記述式の導入をめぐっては課題が噴出している。1年で解決策を出すのは難しいとの考えを、検討会議の少なからぬ有識者が示している。期限を切って急がせれば、昨年の二の舞いになりかねない。

会議にどんな姿勢で臨むかという基本認識でも溝がある。

文科省側は「大学入試の英語には読む・聞く・話す・書くの4技能の試験が必要」という、従来と変わらぬ方針で議論を進める構えだ。一方、会議のメンバーからは「4技能が大切だからといって、全て入試で測らねばならないという話にはならない」との指摘が出ている。

中でも「話す」については、高校で習得できる環境がないまま一律に試験を課せば、家庭の経済力や住む地域による不公平を助長する。学校教育での指導体制もあわせて見直すべきだというのが、一連の経緯から酌むべき教訓だ。根本に立ち返った議論が求められる。

記述式問題に関しても、共通テストに盛り込む必要があるのかとの声が相次ぐ。

各大学の個別入試に委ねる場合、とりわけ受験生が殺到し、採点業務の負担が重い大規模な私立大学の対応が焦点となる。最終的にはどんな学生を迎え入れたいかという大学側の判断だが、記述式を課す割合を広げるところには、対象人数に応じて助成金を出すといった漸進的な方法も考えられよう。

課題は他にもある。例えば、一般入試でも「主体性」を評価する仕組みが導入された。実施大学はまだ少ないが、これにも海外経験や校外での多様な活動にお金を使える家庭の子が有利になるとの懸念が出ている。

共通テストだけでなく、全体を俯瞰(ふかん)し、受験生や家庭、教育現場に過度な負担をかけない公正な選抜方法を探るべきだ。
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[朝日新聞] 首相と国会 その言動 胸を張れるか (2020年02月18日)

国会を軽んじ、野党を敵視する姿勢が本当に改まるのか。安倍首相の「反省」をうのみにはできない。

首相がきのうの衆院予算委員会の集中審議の冒頭、先週の委員会で立憲民主党の辻元清美衆院議員に「意味のない質問だ」とヤジを飛ばしたことをおわびし、「今後閣僚席からの不規則発言は厳に慎む」と述べた。

直後には、「罵詈(ばり)雑言」を浴びたので「当然そう思う」と開き直っていた。低姿勢に転じたのは、年度内成立をめざす予算案の審議への悪影響を避けたい思惑からなのか。

首相のヤジは、これまで何度も問題視されてきた。安全保障関連法案を審議していた5年前には、同じ辻元氏に「早く質問しろよ」。昨年の臨時国会では、加計問題で官邸幹部の関与がうかがわれる文書の作成者をただした野党議員に「あなたじゃないの」。いずれも陳謝したが、同じことが繰り返される以上、謝罪は口だけとみられても仕方あるまい。

国会審議にヤジはままあるとはいえ、立法府のチェックを受ける立場の閣僚側が質問者に放つのは筋違いだ。一国の指導者の振る舞いとして、首相は恥ずかしくないのだろうか。

きのうは、首相のこれまでの答弁が信用できるのか、疑問を抱かせる事実も辻元氏から突きつけられた。「桜を見る会」の前夜祭をめぐる問題である。

首相はこれまで、ホテル側から明細書の提示はなく、費用は参加者個人が会費形式で支払った、領収書の宛名は空欄だったなどと説明してきた。

ところが、過去3回、会場となったANAインターコンチネンタルホテル東京が、辻元氏の書面での問い合わせに対し、(1)明細書を発行しないことはない(2)宛名が空欄の領収書は発行しない(3)代金は主催者からまとめて受け取る――などと、メールで回答してきたというのだ。

事実なら、前夜祭を収支報告書に記載してこなかったことが政治資金規正法違反に問われかねない重大な指摘である。

首相はその後、事務所がホテル側に口頭で確認したとして、辻元氏への回答は「あくまで一般論」であり、従来の説明と齟齬(そご)はないと繰り返した。

安倍後援会は特別扱いを受けたということか。しかし、ホテル側は政治家や政治団体を理由に扱いを変えたことはないとも答えている。これもまた、首相の主張をうのみにはできない。

野党は、ホテル側と文書でやりとりし、その結果を示すよう強く求めたが、首相は応じなかった。自らの言葉の信が問われているというのに、積極的に疑念を晴らさずにどうするのか。
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2020年02月17日

[朝日新聞] 米予算教書 超大国の責任はどこへ (2020年02月17日)

米国のトランプ大統領が、10月から始まる新たな会計年度の予算教書を示した。

国防費は前年度より0・3%多い7405億ドル、日本円にして81兆円とする。米国とメキシコの国境の壁の建設費も追加で20億ドルを求め、インフラ投資にも積極的に取り組む。

一方で、海外援助は約2割、環境予算は3割近くと大きく減らし、低所得者向けの公的医療保険や食費補助などの費用も抑える。このため、財政赤字は前年度より1割減らせ、今後5年間で半減できるという。

本当に達成できると考えているのだろうか。

トランプ氏は大統領に就任した3年前、「偉大な米国のための新たな基盤」と題した最初の教書で、10年後には財政黒字が実現するとした。

しかし実際にはこの間、歳出は2割ふくらみ、6千億ドル台だった財政赤字も、リーマン・ショック直後に並ぶ1兆ドルを超える水準に達している。

教書は、財政についての大統領の考え方を示すが、強制力はない。連邦政府の予算を実際につくるのは、議会だ。

与党共和党の保守派は本来、財政規律を重視するはずだ。しかし議会の上院は共和党、下院は民主党が多数派を握り、双方の主張を盛り込まないと、折り合えない。その結果、共和党は国防費、民主党は福祉の増額を求め、財政拡大に歯止めがかからなくなっている。

そのうえトランプ氏は、前回の大統領選の公約だった大型減税を進めたのだから、財政状況が改善するはずがない。

教書が前提とする3%の経済成長率も、楽観的すぎる。米国の昨年の実績は2・3%だ。

議会予算局が先にはじいた試算では、教書と正反対の先行きを予測している。現実を踏まえた成長率を前提にして、税収はさほど増えないと見込む。その結果、財政赤字は拡大基調をたどり、5年後には1・3兆ドルへふくらむとした。

11月に大統領選を控えるトランプ氏は、支持者への配慮を強く意識し、国防費を維持しつつ財政は改善するというシナリオを描いたとみられる。低所得者向けの支出の抑制には、大統領選の予備選で社会保障の充実を競っている民主党との違いを際立たせる狙いもあるだろう。

だからといって、教書は選挙に向けた宣伝ではない。実現性をかえりみない提案は、あまりにも無責任だ。

米国は、基軸通貨のドルを発行する世界最大の経済大国だ。財政運営のゆくえが世界経済に与える影響は、大きい。その責任の重さを、トランプ氏は少しでも自覚するべきだ。
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[朝日新聞] 立憲党大会 「草の根」生かす正念場 (2020年02月17日)

安倍政権のおごりや弊害があらわな中、もう一つの選択肢として国民に認めてもらえるか、まさに正念場である。

野党第1党である立憲民主党がきのう党大会を開き、「全ての取り組みを政権交代のための準備につなげる」との活動方針を決めた。国民民主党との合流見送りにも触れ、「門戸を閉ざすことなく、今後も不断の努力を行う」と明記した。国民も22日の党大会で、「合流に向けて協議を粘り強く継続していく」との活動方針を決める。

昨年の臨時国会から続く立憲、国民などの野党統一会派が、「1強多弱」の国会に一定の緊張感をもたらしたのは事実だ。とはいえ、理念や政策の溝を十分埋めないまま、「数合わせ」を優先すれば、かえって国民の信頼を失いかねない。

3年前の衆院解散時、小池百合子・東京都知事が立ち上げた希望の党に民進党議員が雪崩をうち、はじき飛ばされた人たちが集ったのが立憲だ。理念・政策や政治家としての筋の通し方を大切にしようとした、その原点を忘れてはなるまい。

確かに衆院議員58人、参院議員33人の小所帯で、単独では巨大与党の足元にも及ばない。若い議員が多く、政策立案や国会論戦の中軸となる中堅が少ないのも悩みの種だろう。昨年の参院選の比例票は、衆院選より約300万票減らした。朝日新聞の世論調査では、結党時17%あった政党支持率は直近でわずか7%である。

こうした党勢低迷の原因はどこにあるのか。そして、枝野幸男代表が結党時に掲げ、綱領の1項目に記した「草の根からの民主主義」は、どこまで浸透しているのか。この間の党の歩みを総点検し、地道な取り組みを強化するほかあるまい。

枝野氏は国会での先の代表質問で、党がめざす社会像について、「支え合う安心」「豊かさの分かち合い」「責任ある充実した政府」という三つの理念を打ち出した。現場の多様な声を吸い上げ、具体的な政策に肉付けできるか。「ボトムアップの政治」の真価が問われる。

と同時に、野党の力をまとめるために心を配らねばならない。政権の問題点をただす国会論戦での連携に加え、次の総選挙で自公政権に代わる選択肢を有権者に準備できるか、共産党など統一会派に参加していない野党を含む選挙協力の態勢づくりが課題となる。

全国32の1人区すべてに「野党統一候補」を立てた昨年の参院選では一定の成果があったが、289ある衆院小選挙区の候補者調整は容易ではない。共通の公約や政権構想づくりを含め、野党第1党の責任は重い。
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2020年02月16日

[朝日新聞] 検察官の定年 法の支配の否定またも (2020年02月16日)

法の支配の何たるかをわきまえず、国会を軽んずる政権の体質がまたもあらわになった。

東京高検検事長の定年延長問題をめぐり、安倍首相は13日の衆院本会議で、従来の政府の見解を変更し、延長が許されると「(法律を)解釈することとした」と答弁した。

政府は、唯一の立法機関である国会が定めた法律に基づき、行政を運営する責務を負う。詳しい説明もないまま、内閣の一存で法律を事実上書き換える行為が許されるはずがない。

先月末、異例の定年延長が閣議決定されると、検察の首脳人事を思いのままにしようとする政権の暴挙との批判が巻き起こった。あわせて、検察官の定年年齢は検察庁法に明記されており、閣議決定は違法だとの声が国会の内外で上がった。

政府は、定年延長の規定がある国家公務員法を持ちだして、問題はないと主張した。だが、その規定が導入された1981年の国会審議で、政府自身が「検察官には適用されない」と説明していたことが、野党議員の指摘で明らかになった。

衆院予算委員会でこの点を問われた森雅子法相は「詳細は知らない」と驚くべき発言をし、それでも延長できると言い張った。人事院の幹部が、現在も81年当時と同じ解釈だと答弁しても、姿勢を変えなかった。さすがにこのままでは通らないと思ったのか、首相は過去の政府見解を認めたうえで、今回、解釈を変更したと言い出した。ドタバタ劇も極まれりだ。

制定経緯を含め、法律の詳細を検討した上での閣議決定だったのか。人事院や内閣法制局から疑義は呈されなかったのか。機能不全を疑う事態だ。

何のために国会で手間ひまをかけて法案を審査するか、政権は理解しているのだろうか。

法案提出者の説明を通じて、国民の代表がその必要性や趣旨を点検し、あいまいな点があれば解釈の確定に努め、場合によっては修正する。質疑の中で示された見解は条文と一体となって人々や行政機関を縛り、行動の指針になる。裁判で判断を導き出す際にも参考にされる。

ましていま問題になっているのは、強大な権限をもつ検察官の資格や職務を規定し、国民の統制の下に置くために設けられた検察庁法である。定年延長を実施しなければならない事情があるのなら、当然、法改正の手続きを踏むべきものだ。

安倍政権には、積み重ねてきた憲法解釈を一片の閣議決定で覆し、集団的自衛権の行使に道を開いた過去がある。今回の乱暴な振る舞いも本質は同じだ。民主主義の根幹を揺るがす行いを、認めることはできない。
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2020年02月15日

[朝日新聞] 新型肺炎対策 国内流行想定し態勢を (2020年02月15日)

中国との接点がはっきりせず、感染経路が不明な新型コロナウイルスの患者が、各地で見つかった。今後、国内で流行が広がる可能性がある。そんな事態になっても被害を最小限に抑えられるように、態勢の整備を急がなくてはならない。

最も大切なのは、重症患者を見逃さず、確実に治療につなげることだ。指定医療機関のベッドには限りがある。一般の病院でも患者が入院できるように準備を進め、軽症者は自宅療養に切り替えるといった措置も必要になるかもしれない。

あわせて初動の対応も問われる。今回のウイルスの特徴か、不調を訴える人を診察しても当初は感染に気づかず、その後、確認までに相当の時間が経過しているケースが目につく。この間に他人に伝播(でんぱ)してしまう恐れが高い。積極的に感染を疑い、処置する必要がある。

憂慮すべきは医療関係者への感染だ。和歌山県で感染が確認された外科医は、発熱後も解熱剤を服用して仕事をしていた。きのうになって、勤務先の病院の入院患者が感染していることがわかった。外科医との接点はないというが、院内感染が起きている疑いがある。経路の解明を急がなければならない。

また、横浜港に停泊する大型クルーズ船では検疫官が感染した。マスクの使い方や手の消毒に不適切な点があったとされ、基本動作の徹底が求められる。

感染が疑われる人への対処に当たる医師や看護師、検疫官、保健所職員らの負担は、今後さらに増えることが予想される。ハードワークが続けば体力を消耗し、注意力も散漫になる。中国・武漢の例を見ても、医療側の安全が保たれなければ、状況は悪化の一途をたどる。

おととい決まった国の緊急対策には、ウイルス検査体制の拡充に加え、医療用マスクや医薬品の供給確保が盛り込まれた。政府や自治体は、対策が長期に及ぶことを想定して、病院任せにせず、十分な要員と物資の確保に努めてもらいたい。

クルーズ船の扱いも大きな課題だ。政府は、80歳以上で持病があるなど、一定の条件を満たす乗客の下船を認め、用意する宿泊施設に滞在させることにした。感染者は日々増え、船内で新たな広がりが起きている可能性も否定できない。

疑いのある者の入国を認めず水際で阻止するという方針で臨んだため、結果として対応が遅れたと批判されてもやむを得ない。一人ひとりの健康状態や希望を踏まえた、柔軟な方策に切り替えるときだ。外国人の乗客乗員も多い。情報を丁寧に発信し、これ以上、不安や不信を広げないことが肝要だ。
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[朝日新聞] 資料書き換え 原発審査の根幹揺らぐ (2020年02月15日)

原発の審査を、根幹から揺るがしかねない事態である。

日本原子力発電・敦賀原発2号機(福井県)の新規制基準に基づく審査資料を、原電が黙って書き換えていた。「再稼働実現のために改ざんしたのでは」と疑われても仕方あるまい。

原子力規制委員会が審査を中断し、調査資料の原本の提出を求めたのは当然だ。

敦賀2号機をめぐっては、規制委の有識者会合が「原子炉建屋の直下に活断層が走っている可能性がある」と報告した。これを規制委が認めたら運転できなくなるが、原電は「活断層ではない」と主張して審査を申請した経緯がある。

書き換えられたのは、ボーリング調査で採取した地層サンプルの観察記録だ。たとえば、原電は一昨年の審査資料にあった「未固結」という記述を無断で削除し、「固結」と書き加えていた。同じような事例が、少なくとも十数カ所あるという。

もとの資料は肉眼で観察した記録だったが、顕微鏡で調べたら結果が異なっていたので最新情報に修正した――。原電はそう説明し、「悪意はない。意図的ではない」と釈明した。

だが、観察記録のような生データの書き換えは、一般の研究論文なら改ざんと認定されてもおかしくない。原電が問題の重大さを認識していなかったのは、あきれるばかりだ。

「生データに手を加えれば議論に誤解が生じる。本当にひどい」と規制委の更田豊志委員長が批判したのも無理はない。

看過できないのは、今回の書き換えが審査の行方を左右しかねなかった点である。規制委が活断層と判断するか否かは今後の審査しだいだが、その際にボーリング調査のデータは重要な役割を担うのだ。

原発専業の原電は、4基のうち2基の廃炉が決まり、残る敦賀2号機と東海第二原発の再稼働に社運がかかる。ぜひとも運転を認めてもらおうと、活断層説が弱まるようにデータを書き換えたのではないか。そんな疑いがぬぐえない。

悪意も意図もなかったというのなら、原電は詳しい事実関係を明らかにする責任がある。

原発を運転できるかどうかが経営に大きく影響するのは、電力各社に共通しており、業界あげて早期の再稼働を望んでいる。だからといって再稼働に不都合なデータが隠され、都合のいい資料ばかりが提出されるようでは、審査が骨抜きになってしまう。業界全体で改めて襟を正すべきだ。

規制委の厳正な審査こそ、原発の安全性を担保する。それが福島の原発事故の重い教訓であることを、忘れてはならない。
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