2017年07月24日

[朝日新聞] 難民と日本 人命を守る視点こそ (2017年07月24日)

この地球に暮らす113人に1人が紛争や迫害で家を追われている。未曽有の人道危機といっても言い過ぎではあるまい。

国内外に逃れた避難民や難民が昨年末、第2次大戦以降で最多の6560万人になった、と国連が発表した。

日本に保護を求める人も年々増え、昨年は今の難民認定制度ができた1982年以降で最多の1万901人になった。

だが難民認定されたのはわずか28人。他の先進国と比べて桁違いの少なさで、認定率も際だって低い。彼らに安全な場所を提供する国際責務を日本が果たしているとは到底いえない。

法務省は、就労が目的で難民認定を求める「偽装」が多いと説明する。本来救済すべき人の審査が後回しにされたり、認定まで時間がかかったりしているならば、ゆゆしき問題だ。

明らかな「偽装」は、手続き段階のなかで早期に防ぐ制度の改善は必要だろう。

それでもなお「日本は難民認定のハードルが高すぎる」との声が専門家の間で根強い。難民の定義をあまりに狭くとらえているという指摘だ。

たとえば、出身国の当局から反政府活動家などと目をつけられた個人でなければ、なかなか難民と認めてもらえない。

紛争地や圧政国では、支配する側と違う政党、宗教、社会集団に属しているだけで一般市民も迫害の標的になりかねない。

所持品も十分持たずに異国に逃れた人に、「迫害されたことの証明」を過度に求める審査のあり方にも問題がある。

そうした中、画期的な判決が名古屋高裁で昨年確定した。

出身国で野党の指導的立場になかったことを理由に難民と認められなかったケースで、それを適法とした一審判決を退け、「指導的立場でないことが、難民であることを否定する根拠にならない」とした。

また、本人の説明内容に変遷があっても、迫害をめぐる中核的事実に一貫性があれば信用性はあるとの判断を示した。

優先すべきは、「いかにふるい落とすか」より、「生命や安全が脅かされている人をどう救うか」という視点だろう。

有識者が不服審査にかかわる参与員制度が05年に導入されたが、審査の透明性と公正性を高めるさらなる工夫も必要だ。

最近、難民を支援する国際機関や団体に寄付する市民や、難民の受け入れに意欲を示す企業や大学が日本でも増えている。

困っている人を助けたい。そう心から願う日本人が誇れる難民制度を望む。
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[朝日新聞] 都心大学定員 規制は活力を生まない (2017年07月24日)

東京23区内は大学の学部の新設・増設を抑制し、原則として定員増を認めない。そんな内容の閣議決定が先月あった。地方創生政策の一環だという。

地方を元気にするために、若者が東京に出るのを食い止めたいとの思いは、わからないではない。しかし効果は疑わしく、副作用も心配される。

東京の大学は地方出身者が3割を占めるが、この15年間、比率は下がり続けている。地元志向が近年の若者の流れだ。都内の有名大学が「首都圏進学校の出身者ばかりになってしまい、多様性が損なわれる」と危機感を抱き、地方の人材を呼び込む工夫をしてきたほどである。

そもそも若者が上京するきっかけは進学よりも就職が主だ。東京都への転入は、20代前半が10代後半の4倍に達する。地方に雇用をつくらないと根本的な解決にはならない。

都心の大学の意欲と活力を奪いかねない規制を課す一方で、政府はその大学に国際競争力の強化を迫り、留学生や学び直しを望む社会人の受け入れを増やすよう求めている。手足を縛ったうえで遠くまで泳げというようなもので、筋が通らない。

政府は、閣議決定には「学部を改廃して定員の空き枠を充てるなら、学部の新設を認める」とあり、大学側にも配慮しているというかも知れない。

しかし教員には専門分野がある。工学部をつくるからといって法学部から人を移すわけにいかない。時代の要請に応じた新増設は、公正・透明な手続きのもとで柔軟に認めるよう、閣議決定を見直す必要がある。

経済的な理由で進学できない子を生まないために、各地域に大学がある意義は大きい。しかし今、地方大学の多くが資金難や定員割れに苦しんでいる。地域のシンクタンクとして頼りにされ、全国の学生が進学したくなるような特色ある大学づくりを急がねばならない。

そのためには、国立大学の運営費交付金や私学助成金を、地方に手厚く配分することも検討してよいのではないか。

人の行き来は社会の多様性を高め、活力をもたらす。都心大学の規制によって、地方から東京への移動を一部抑えられたとしても、逆の動きを生み出すのは難しい。その意味で、今回の閣議決定が、地元に就職した学生の奨学金返済を支援する制度や、企業の地方採用枠の拡大、地域限定正社員制度の導入を盛り込んだことは評価できる。

若者が地方をめざす。そのための様々な仕掛けを用意することに、知恵を絞りたい。
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2017年07月23日

[朝日新聞] 憲法70年 「原発と人権」問い直す (2017年07月23日)

東京電力福島第一原発の20キロ圏に入る福島県南相馬市小高(おだか)区。大半の地域で避難指示が解除されて12日で1年がたった。

商店や学校は徐々に再開され、登下校時は高校生たちの声が響く。一方で、シャッターを下ろしたままの店や、庭に草が生い茂った家も目立つ。

市によると、12日現在の小高の居住者は2046人。11年の原発事故当時の6分の1弱だ。

憲法が保障していたはずの「ふつうの暮らし」を、原発事故は多くの人から奪い去った。

■事故が問うた本質

漁師の志賀勝明さん(68)は小高への帰還を断念した。海岸近くに建てたばかりの自宅は津波で浸水した。事故後、立ち入りを禁じられた間に荒れ果て、解体を余儀なくされた。

志賀さんは言う。「自分だけじゃなく、地域のすべての人の人生が変わった。生存権とか、基本的人権とか、憲法の本質的なものを考えさせられたよ」

南相馬市は昨年5月、全世帯に憲法全文の小冊子を配った。

小高出身の憲法学者、鈴木安蔵(やすぞう)が終戦直後にまとめた憲法草案要綱は「国民ハ健康ニシテ文化的水準ノ生活ヲ営ム権利ヲ有ス」と生存権を明記し、現憲法25条につながった。多くの市民の生活が暗転したなか、原点を再認識してほしいとの思いが、桜井勝延(かつのぶ)市長にはあった。

福島県では今も数万人が県内外で避難を続ける。長年のなりわいや家屋を失った人は数え切れず、居住、職業選択の自由(22条)、財産権(29条)の侵害は著しい。多くの子が故郷の学校に通えなくなり、教育を受ける権利(26条)も揺らいだ。

そして何より、事故は多くの人を「関連死」に追い込んだ。

「原発事故で、憲法に書いてある生活ができなくされた。これは憲法違反でしょう」。桜井市長は語気を強めて言う。

■よりどころは憲法

「原発は電気の生産という社会的に重要な機能を営むものではあるが、憲法上は人格権の中核部分より劣位」。14年5月、関西電力大飯原発(福井県)の周辺住民らが起こした訴訟で、福井地裁判決はこう述べ、再稼働の差し止めを命じた。

原発事故の避難者が国と東電に賠償を求めている集団訴訟で、関西原告団代表を務める森松明希子(あきこ)さん(43)は、憲法に立脚した判決に希望を感じた。

幼い2人の子の被曝(ひばく)を案じ、福島県郡山市から大阪へ避難した。だが地元は避難指示区域ではない。少数派である自主避難者への視線は福島の内でも外でも厳しく、行政の支援や東電からの賠償も乏しい。

「自分の選択は正しかったのか」。苦悩し、学生時代に学んだ憲法をいま一度ひもといた。

「恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」(前文)、「すべて国民は、個人として尊重される」(13条)。これこそが自分のよりどころだ、と思った。

避難するのもとどまるのも、個人の自由だ。どの選択をした人に対しても、憲法が保障する生活が実現できるような支援を。森松さんはそう訴える。

「ふつうの暮らし」を取り戻すため、憲法を盾にたたかっている人たちがいる。憲法施行70年の日本で、忘れてはならない重い現実といえよう。

■主権者が選ぶ針路

福島の事故より前、原発が憲法と関連づけて問題視されたことはなかったといっていい。

日本の原子力開発は、憲法施行8年後の1955年に制定された原子力基本法に基づいて進められてきた。同法は「人類社会の福祉と国民生活の水準向上」を目的とし、「平和利用」を明記している。

澤野義一・大阪経済法科大教授(憲法学)は「原発は当然のように合憲視され、学界でもほとんど論議されたことがなかった」と指摘する。

資源が乏しい日本で、大量の電力を供給できる原発が経済発展に貢献したのは確かだろう。

ただ、ひとたび事故が起きれば、無数の人権がただちに脅かされる。そのリスクは「安全神話」のもとで隠され、国民も十分に認識してこなかった。

多くの国民が被災者となった福島第一原発事故の後も、国や電力事業者は原発を推進する方針を変えようとしない。

全国の原発の周辺には、事故で避難を迫られる可能性がある30キロ圏だけで400万人以上が暮らす。憲法が目指す社会は守りうるのか。そんな観点から、この国の進む道を見直す必要はないだろうか。

中欧のオーストリアは78年、国民投票で原発の稼働が否決されたのをきっかけに、原発の建設を禁じる法律を制定した。86年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故を経て、「脱原発」を求める世論は強まり、99年に原発禁止が憲法に明記された。

日本の針路を選ぶ権利は、主権者である国民一人ひとりにある。この6年超の現実を見据え、議論を広げていきたい。
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2017年07月22日

[朝日新聞] 部活動の改善 過度な練習と決別を (2017年07月22日)

過熱しがちな中学・高校の運動部活動を、どうやって適切で均衡のとれたものにするか。スポーツ庁が検討会議を設け、指針づくりにとり組んでいる。

最近は、指導する教員の負担の重さにも注目が集まり、その是正は社会全体の関心事になっている。多くの生徒、保護者、教員が納得し、実効性のあるものにすることが大切だ。

スポーツ庁の昨年の調査では、練習を休む日を学校の決まりとして設けていない中学が2割超、土日にまったく休んでいないところが4割超を占めた。

休養日については、97年に当時の文部省の有識者会議が「中学で週2日以上、高校でも週1日以上の休み」をとるよう提言している。20年が経つのになかなか改善されていない。

今回の検討会議では「スポーツで良い成績を残すと進学に有利になる現実の反映だ」「強くなりたいという、親や生徒の熱意が強すぎる」などの指摘が出た。指導する側にも「厳しい練習が子どもの成長や生活指導に役立つ」との声は根強い。

たしかに部活動は生徒の心身を鍛え、社会性を育む場となり得る。そこから優れた選手も見いだされてきた。しかし、だからひたすら打ち込むことが尊いという話にはならない。

練習時間が一定のレベルを超えると、けがや故障が起きる頻度が高くなる。睡眠時間が短くなるほど練習の意欲は下がる。そんなデータもある。

大事なのは、部活動とそれ以外の生活とのバランスであり、練習の質だという認識を、すべての当事者がもつ必要がある。

例えば日本サッカー協会が世界に通じる選手や人材を育てるために設けた「アカデミー」の練習時間は、13?15歳が週560分、16?18歳は730分ほどだ。試合は週末の1度だけで連戦はない。週1回の休養日に加え、夏冬にオフ期間をおく。

参考になる数字だ。きつい練習が善という意識を、今度こそ変えてゆきたい。

指針づくりでは、外部指導者の活用も論点になっている。

外から招くコーチが役割を引き受けてくれれば、教員の負担軽減になる。だが、待遇や責任の分担など詰めるべき点は少なくない。そこで、規模も環境も異なる8府県市町を選び、指導者研修のプログラム開発や地域での人材確保策、プロチームとの連携などをテーマに研究を進める。全国の参考になるモデルを示してもらいたい。

今回のとり組みは、文化系の部活動のあり方を考える際の手がかりにもなるだろう。
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[朝日新聞] 日銀と物価 信頼失う安易な見通し (2017年07月22日)

「期待に働きかける」と言いながら、逆に期待を裏切り続けているのではないか。

日本銀行が、物価の2%上昇という目標を達成する時期の見通しを、18年度から19年度に先送りした。4年前の「異次元緩和」開始から6回目の修正だ。

これだけ前言撤回が続くと、今後の見通しにも信頼が置けなくなるのが普通だろう。先送りが続けば、緩和策を終える出口で日銀が被るコストも膨らむ。それだけに、安易な見通しが続くのは見過ごせない。

今回の先送りの理由は「賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が企業や家計に根強く残っている」「労働需給の着実な引き締まりや高水準の企業収益に比べ、企業の賃金・価格設定スタンスはなお慎重」といったことだという。

そうした要因があるのは確かだ。だがそれは、前回の見通しを示した4月時点でも分かっていた。実際、民間のエコノミストは、日銀よりかなり低い水準の物価上昇を予測していた。なぜこうしたことが繰り返されてしまうのか。

黒田東彦総裁は先月の講演で、「中央銀行が物価安定に向けた強い意志を示すことが、人々の期待に働きかけ、金融政策の効果を高める」というのが今の政策の要点だと説明した。バブル崩壊後の経済低迷の中で人々に根付いた「物価は上がらない」というデフレ心理を、払拭(ふっしょく)するのが狙いだ。

そうだとしても、これまでのような先送りを繰り返せば、日銀の物価安定目標に対する信認はむしろ低下し、インフレ期待の形成にもマイナスに働くのではないか。

黒田総裁は、今回の先送り決定後の会見で、賃金や物価が上がらない状況が「ずっと続くということはありえない」と述べた。好況が続き、失業率も低下する中で、いずれは物価上昇が強まるとの見方だ。

一般論としては正しいかもしれない。だが、人手不足なのに賃金が上がらないという「謎」については、専門家の間でも多くの仮説がある。家計の消費動向も、様々な要因の影響を受ける。現実の経済の中で家計や企業の意思決定に影響を与えたいのであれば、より緻密(ちみつ)で丁寧な分析と説明が必要だ。

先行き見通しは、政策目標とは切り離して、現実的、客観的に立てる。期待に働きかけるためには、国民に納得のいく言葉で説明を尽くす。そうした姿勢に徹しなければ、政策効果は上がらず、中央銀行への信頼も失われていく。
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2017年07月21日

[朝日新聞] 朝鮮学校訴訟 無償化の原点に戻れ (2017年07月21日)

教育の機会を公平に保障するという制度の理念に立ち返って判断すべきなのに、あまりに粗雑な論理で導いた判決だ。

高校の授業料無償化の対象から朝鮮学校を除外した国の処分をめぐる裁判で、広島地裁は19日、「国に裁量の逸脱はなく、適法だ」として、広島朝鮮高級学校側の訴えを退けた。

判決が焦点をあてたのは、学校と朝鮮総連との関係だ。

国は、過去の新聞記事や公安調査庁の報告書をもとに、「朝鮮総連の『不当な支配』を受け、無償化のための支援金が授業料に使われない懸念がある」と主張。判決はこれを認めた。

この先も資金流用がありうると、どんな証拠に基づいて判断できたのか。地裁が取りあげたのは、約10年前の別の民事訴訟の判決だ。「総連の指導で学園の名義や資産を流用した過去がある」と指摘し、「そのような事態は今後も起こりえると考えられた」と結論づけた。総連の支配の継続については「変更や見直しを示す報道が見当たらなかった」ことを理由にした。

朝鮮学校が総連と関係があるとしても「不当な支配」とまでいえるのか。地裁が実態の把握に力を尽くしたとは言い難い。

原告側は生徒や教員の証人尋問や学校での現場検証を求めた。だが、地裁は採用せず、代わりに授業内容などのビデオ映像が法廷で上映された。

少なくとも朝鮮学校や総連の関係者を証人として法廷に呼び、財務資料を提出させるなどし、国の主張が正当かを具体的に確認すべきではなかったか。

高校無償化は10年に民主党政権で導入されたが、朝鮮学校は、北朝鮮の韓国・大延坪島(テヨンピョンド)砲撃を理由に適用が見送られた。12年の第2次安倍内閣の発足後、下村博文・文科相が拉致問題などで「国民の理解が得られない」とし、対象から外した。

政治・外交問題に直接関係のない朝鮮学校の生徒に、まるで「制裁」を科すような施策には、国連の人種差別撤廃委員会も懸念を示している。

中華学校やブラジル人学校など40余りの外国人学校が無償化の対象になっている。申請を国が認めなかったのは朝鮮学校だけ。制度の本来の目的に立ち返り、国は適用を検討すべきだ。

多くの大学・短大が朝鮮高級学校生の受験資格を認めているのも、日本の高校に準じた教育水準とみなしているからだ。

問われているのは、子どもの学ぶ権利に関わる教育行政の公平性である。原告側は控訴する方針という。高裁は丁寧な審理を尽くしてほしい。
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[朝日新聞] 山本担当相 強まった「加計ありき」 (2017年07月21日)

安倍首相の友人が理事長を務める加計学園の獣医学部新設は「加計ありき」で進められた。そんな疑いがいっそう強まる文書が明らかになった。

文書は、学園が国家戦略特区での学部設置を認められる約2カ月前、山本幸三地方創生相が日本獣医師会を訪れた際の獣医師会側の記録だ。山本氏が学園の具体名や、愛媛県や今治市の負担額をあげて学部新設方針を伝えたと記されている。

山本氏はこれまで、国会答弁で「加計ありき」の手続きを否定してきた。文書に記された発言が事実なら、国会答弁と矛盾する重大な内容である。

山本氏は「獣医師会側の思い込みと私の発言を混同したものであり、正確ではない」と文書の信用性を否定した。

だが記録を示した獣医師会の指摘と、裏付けを示さない山本氏の主張と、どちらに信用性があるだろうか。

思い出すのは、特区担当の内閣府が文部科学省に「総理のご意向」をかざして手続きを促したとする文科省の文書が明らかになった際の対応だ。

次々に出る文書に対し、山本氏ら内閣府側はこう主張した。「『総理のご意向』などと伝えた認識はない」「職員が時として使用する強い口調が反映されたのではないか」

では、文科省とどんなやりとりがあったのか。そう問われると、文書はないというばかり。

獣医師会側との話し合いについて、山本氏は「議事録はないが、秘書官がメモ書きみたいに書いていた」と語ったが、後に「メモはもうないらしいが、内容は覚えている」と発言を修正した。文書の管理・保存に対する感度があまりにも鈍すぎる。

大事な協議内容は記憶に頼らず、文書に残す。公的機関に限らず、民間でも常識である。

その当たり前のことが、なぜ安倍内閣では通用しないのか。この問題の政府の説明に国民が納得しない背景には、そうした不信がある。

来週24、25両日、国会の閉会中審査が開かれる。説得力のある根拠を示さぬまま、首相や山本氏が「一点の曇りもない」などこれまで通り訴えても、言葉が空しく響くだけだ。

首相にひとつ提案がある。

中立的な第三者に依頼して、首相官邸や内閣府の関係者の聞き取りや、文書の存否を徹底調査してもらい、結果を包み隠さず公表してはどうか。

それくらいのことをしなければ、深く傷ついた国民の政治への信頼を少しでも取り戻すことはできまい。
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2017年07月20日

[朝日新聞] 司法通訳 専門職として制度化を (2017年07月20日)

捜査機関で適正な取り調べを受け、裁判所で公平な裁判にのぞむ。外国人の容疑者や被告にも保障される権利だ。

ところが、捜査や公判で外国人が自分の立場を正確に説明できなかったり、通訳によって証言が誤って訳されたりする例が表面化している。

事件の真相を解明するうえでも一定の技量をもった通訳の確保は欠かせない。裁判や捜査で言葉の壁をなくす「司法通訳」の資格化や、通訳選定の基準を明確にするルールづくりなどに、国は着手すべきだ。

一昨年、全国の地裁や簡裁で判決を受けた被告のうち22人に1人にあたる約2700人に通訳がついた。使用言語は中国語、ベトナム語、タガログ語の順に多く、39言語に及ぶ。

大阪地裁で5月、妻を殺した罪で実刑判決を受けた中国人男性被告の裁判では、警察での取り調べの録音・録画から大量の通訳漏れや誤訳が判明した。

被告が殺意を否定する発言をしたのに訳されていないなど、弁護人の分析で約120カ所の問題点が見つかった。

東京地裁での昨年の刑事裁判でも、インドネシア人証人の通訳内容を地裁が鑑定し、弁護側の分析で約200カ所の誤訳や訳し漏れが見つかっている。

録音・録画があれば誤訳かどうか検証できるが、なければそれも困難となる。発覚した例以外で、誤訳の実態が見過ごされている可能性はある。

通訳ミスは、誤った捜査や冤罪(えんざい)につながりかねない。

問題は、日本では司法通訳に資格や語学力の基準がなく、裁判所や警察が個々の判断で依頼していることだ。拘束時間の長さの割に報酬は低く、専業で生計を立てるのは困難という。

韓国・朝鮮語の法廷通訳を約25年務める女性は「精神的な負担が大きく責任も問われる仕事だが、専門職として社会で認識されていない」と指摘する。

日本弁護士連合会は13年に意見書を出し、法廷通訳を資格制にすることや、報酬を規則で定めて能力の高い通訳には相応の額で身分保障することを提案した。資格制を導入している米国や豪州、報酬基準を明確にしている韓国を参考にしている。

司法の一角を担う専門職として通訳を位置づけていくために、参考になる提案だ。

警察官や検察官、裁判官、弁護士にも、通訳しやすい言葉を使うといった配慮が求められる。そのための研修も必要だ。

万人にとって適正で公平な刑事手続きを整えるのは、法治国家として当然の責務である。
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[朝日新聞] 稲田防衛相 首相はまだかばうのか (2017年07月20日)

防衛省・自衛隊のみならず、安倍政権全体の信頼性が問われる事態である。

南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊部隊の日報が、「廃棄した」とされた後も陸自内で保管されていた問題で、対応を協議した2月の幹部会議に稲田防衛相が出席していたことがわかった。

稲田氏は「隠蔽(いんぺい)を了承したとか、非公表を了承したとかいう事実は全くありません」と述べたが、複数の政府関係者が稲田氏の出席を認めている。

この問題で組織的な隠蔽があった疑いはかねて指摘されてきた。稲田氏は3月、報道で陸自に日報が保管されていた事実が判明した後に、報告を受けていたかどうかを国会で民進党議員に問われ、「報告はされなかった」と答弁している。

その稲田氏が幹部会議に出席し、報告を受けていたとすれば、防衛省トップとして公表を指示せず、さらには国会で虚偽答弁をしていた疑いが極めて濃くなる。

稲田氏は、直轄の防衛監察本部に特別防衛監察の実施を指示したとして、国会での野党の質問に対して具体的な説明を拒んできた。だが監察結果は今なお公表されていない。

そもそも特別防衛監察の対象に防衛相ら政務三役は含まれていない。そこに稲田氏自身の関与が疑われる事態となれば、もはや防衛省内での解明には限界があると言わざるをえない。

やはり国会での真相究明が不可欠である。

来週、衆参の予算委員会の閉会中審査が予定されているが、加計学園や森友学園の問題など論点は山積みである。野党が憲法53条に基づき要求している臨時国会をすみやかに召集するよう、安倍内閣に強く求める。

稲田氏はこれまでも東京都議選の応援演説で「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と呼びかけるなど、防衛相として不適格な言動を重ねてきた。なのに今も防衛相を続けているのは、任命権者の安倍首相が政治的主張の近い稲田氏をかばってきたからだ。

今回の事態を受けても、菅官房長官は「今後とも誠実に職務にあたっていただきたい」と稲田氏を続投させる意向だ。

だが現状をみれば、実力組織である自衛隊への文民統制が機能しているとは到底言えない。この異常事態はただちに収拾する必要がある。

来月の内閣改造で稲田氏を交代させればいい。首相がもしそう考えているなら、甘すぎる。
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2017年07月19日

[朝日新聞] ヒアリ対策 先例に学び定着阻止を (2017年07月19日)

毒を持つ外来種のヒアリが、各地で見つかっている。海外からのコンテナや貨物にまぎれこんできたとみられている。

環境省が2005年に外来生物法に基づく「特定外来生物」の第1弾で指定して以来、警戒を続けてきたものだ。

さまざまな手段を駆使して、ぜひ定着を阻止したい。

南米原産のヒアリは1930年代に米国に侵入。21世紀に太平洋を越え、オーストラリアや中国、台湾でも繁殖している。

モノや人の交流が盛んになるほど外来種は入りこみやすくなる。93年に広島県で見つかったアルゼンチンアリや、95年の大阪府のセアカゴケグモは大きな騒ぎになり、駆除も試みられたが、定着してしまった。

ヒアリはこれらと比べても、想定される被害がけた違いに大きい。人を刺し、家畜を襲う。電化製品や通信設備の中に入り込み、故障の原因になる。米国では経済損失が年間7千億円にのぼるとの試算もある。

まず行うべきは水際対策の徹底だ。当面の措置はもちろん、将来に備えて持続可能な監視体制を築くことが求められる。

参考になるのが、同じ島国のニュージーランドの例だ。

外来種の発見は、国や公的機関以外にも、輸入や運送、通関、荷役にかかわる業者に負うところが大きい。同国では生物がどんな荷物にまぎれこんでいるかのリスクを評価。それに応じて、業者が守るべき貨物の衛生管理に関する基準を作った。ヒアリなら、コンテナ以外にも車や中古機械、建築材などが「リスク高」に分類される。

国内でどんな基準を設け、いかに実効あるものにするか。関係省庁で協議し、必要に応じて法改正や国際社会での連携強化に取り組んでもらいたい。

それでも侵入を防げるとは限らない。国内で巣が発見されたときに迅速・確実に対応できるよう、専門家のネットワークづくりを急ぐべきだ。

ニュージーランドでは06年に巣が見つかると、半径2キロ圏の土壌などの移動を制限し、殺虫エサや捕獲わなを使った監視を3年間続けて定着を阻んだ。

私たちも正しい知識で、この問題にのぞむ必要がある。

刺されると激しい痛みがあるが、命にかかわるのは呼吸困難など急性のアレルギー症状が出たときだ。一方、在来種のアリは、農作物や植物を害虫から守ったり、種子を運んだりと、生態系の中で大切な役割を果たしている。殺虫剤でむやみにアリを殺すようなことはせず、落ちついた行動を心がけたい。
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[朝日新聞] 韓国の提案 日米との連携忘れずに (2017年07月19日)

北朝鮮は日米韓のわずかなズレを突いて連携を乱そうとしてきた。3カ国はそれを常に意識し、結束を強めなければ事態打開はありえない。

韓国の文在寅(ムンジェイン)政権が、国際社会の非難を無視して核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に、本格的な対話を独自に提案した。

対話によって朝鮮半島の当事者である韓国と北朝鮮の風通しが良くなれば、それ自体は地域の安定にとって好ましい。

ただ、韓国の提案直後の日米両政府の反応を見る限り、事前に十分な合意が図られていた形跡は乏しい。

大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射など、北朝鮮の脅威の度合いは増している。文政権は関係国、とりわけ日米に事前の説明を尽くしたうえで行動に出るべきだった。

韓国政府が呼びかけたのは、南北の軍事当局者会談と赤十字会談の開催だ。軍事会談では、北朝鮮指導部が嫌がる軍事境界線付近での宣伝放送の停止も議題にする模様だ。

一方、赤十字会談で話し合う予定の離散家族の再会事業は、北朝鮮側が外部からの情報流入に神経をとがらせてきた。

二つの提案は、文大統領が今月6日、東西ドイツの統一を象徴するベルリンで演説した北朝鮮へのメッセージが土台になっている。

演説で文大統領は、核問題だけでなく、北朝鮮が望む平和協定の締結などすべてを対話のテーブルに載せようと訴えた。

その姿は17年前、同じ地で平和共存を力説した故・金大中(キムデジュン)大統領と重なる。当時の北朝鮮は難色を示したものの、結果的に初の南北首脳会談が実現した。

確かに今回の提案内容は、国連安保理決議による制裁などに反しない民族間の固有の問題だ。それでも今回の提案が、日米韓の連携に微妙なさざ波を立てたのは間違いない。

米ホワイトハウスの報道官は、対話の条件が満たされているとは言えないとして、否定的な反応をみせた。

日本政府にも韓国の独自行動への反発はあるものの、菅官房長官は「北朝鮮に対する圧力を強化する日米韓の方針との関係で問題になるとは考えていない」と述べるにとどめた。

大事なことは、圧力を続けることを共通認識としながらも、平和的解決に向けていずれは必要となる対話に踏み出すための具体的な道筋を、3国政府が共有しておくことである。

今回の韓国の提案もその一環として、日米とのすり合わせをいまからでも急いでほしい。
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2017年07月17日

[朝日新聞] 憲法70年 多様な人々の共生社会を (2017年07月17日)

観光地で、飲食店で、そして学校や職場でも。海外からやってきた人びとの姿は今や、日常に溶け込む光景になった。

日本に暮らす外国人は昨年末の時点で238万人と過去最多となった。登録された国籍・地域は196にのぼる。

欧米の国々と同様、日本も多様な社会への道を確実に歩み始めている。

では日本国憲法は、外国人の権利を守っているのだろうか。答えはイエスだ。70年前に施行された憲法は、外国人の基本的人権の尊重も求めている。

■外国人の人権等しく

すべて国民は法の下に平等で、人種、信条、性別、社会的身分などで差別されない――。憲法14条はそう定めている。

「国民」とは誰か。最高裁は1978年の判決で「権利の性質上、日本国民のみが対象と解されるものを除けば、基本的人権の保障は外国人にも等しく及ぶ」との見解を示した。

むろん「入国の自由」などの権利は原則、外国人には及ばない。また、この判決は人権保障の対象を、日本政府が在留を認めた外国人に限っている。

そうした留保はあっても、原則として人間の平等をめざす趣旨は忘れてはなるまい。

外国人の人権を保障しているのは、憲法だけではない。79年の国際人権規約批准、95年の人種差別撤廃条約加入によって、日本も「人種や民族による差別は認めない」との普遍的な規範を国際社会と共有してきた。

憲法が、条約や国際法規の順守を求めていることも留意しておくべきだろう。

ただ、実際に外国人は平等な生活を営んでいるだろうか。

法務省が昨年、日本に長期滞在する18歳以上に尋ねたところ、差別が日常化している実態が浮かんだ。

外国人であることを理由に入居を断られた――。過去5年間に家を探した人のうち39%がそんな体験をしていた。「『外国人お断り』と書かれた物件を見てあきらめた」人も27%いた。

就職や職場でも、壁がある。 就職を断られた(25%)▽同じ仕事なのに日本人より賃金が低かった(20%)▽昇進できない不利益を受けた(17%)。

■生かされぬ理念

人種や民族、国籍の違いが理由で、当然の権利が阻まれているとすれば、外国人と共に暮らす社会は成り立たない。

なぜ憲法や条約の理念が生かされないのか。外国人が置かれてきた状況を振り返る。

戦後しばらく、外国人は明確に「管理」の対象とされた。

憲法が施行される前日の47年5月2日、日本国籍を持つ朝鮮や台湾の旧植民地出身者を「外国人」とする勅令が出された。52年に日本が主権を回復すると、この人たちは日本国籍を失い、外国人登録法で登録時の指紋押捺(おうなつ)が義務づけられた。

あたかも犯罪の容疑者のように指紋押捺を強いる制度は人権侵害とする批判が80年代に高まり、在日コリアンら特別永住者について93年に廃止された。

その後も日本の入国管理政策は厳しさで知られたが、それでも経済成長により就労や留学で来日する人が増えた。日本人との国際結婚も珍しくなくなった。外国人は今では日本社会の不動の一員といえる。

だが、その現実に意識や制度が追いついていない。

確かに、外国人の入居や入店を断る行為を、違法とする司法判断は積み上がっている。

だが、今回の調査は、裁判に至るのは一握りで、被害者の大半が「泣き寝入り」していると見るべきことを示している。

人種や民族を標的にした差別的言動については1年前、ヘイトスピーチ対策法が成立した。一歩前進ではあったが、差別をなくすにはさらなる方策を考える必要がある。

国内法の不備を再三、問題視した国連の人種差別撤廃委員会に対して、日本政府は「立法が必要とされる人種差別行為はない」と苦しい反論をしてきた。

政府も国会も現実を直視し、事態の改善へ向けた真剣な論議を始めるべきである。

■心の垣根なくす試み

「外国人お断り」などの露骨な排斥や、低賃金・長時間労働といった人権侵害は当然、なくしていかねばならない。

一方、「マナーが悪い」「言葉が通じないから面倒」といった誤解や偏見から外国人の入居を断る事例も後を絶たない。

日本の賃貸制度や居住マナーを外国語で説明した冊子を配ったり、外国人と日本人双方の相談に乗る窓口を設けたりして、差別を防ぐこともできる。

日本人と外国人をつなぐ試みは、日本語の学びの場の開設や防犯活動など、各地に広がっている。自治体や市民団体の努力をもっと支援していきたい。

心の垣根を取り払い、外国人に「この社会の一員」との自覚をもってもらえる方策こそ、憲法を生かし、日本の繁栄と安定をもたらす道だろう。
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2017年07月16日

[朝日新聞] 労基法の改正 懸念と疑問がつきない (2017年07月16日)

一定年収以上の専門職を労働時間の規制から外し、残業や深夜・休日労働をしても会社が割増賃金を払わない制度の創設が現実味を帯びてきた。

制度を盛り込んだ政府の労働基準法改正案に反対してきた連合が容認姿勢に転じ、神津里季生会長が安倍首相と会って一部修正を要望した。首相も受け入れる意向で、改正案を修正し、秋の臨時国会で成立を目指す。

だが、残業代の負担という経営側にとっての歯止めをなくせば、長時間労働を助長しかねない。そう連合自身が指摘してきた問題点は残ったままだ。方針転換は傘下の労働組合にも寝耳に水で、あまりに唐突だった。修正の内容、検討過程の両面で、懸念と疑問がつきない。

連合の修正案は、今は健康確保措置の選択肢の一つである「年104日以上の休日取得」を義務付ける。さらに、労働時間の上限設定▽終業から始業まで一定の休息を確保する「勤務間インターバル制度」▽2週間連続の休日取得▽年1回の定期健康診断とは別の臨時の健康診断、の四つからいずれかの措置を講じるというものだ。

だが、この内容では不十分だ。過労死で家族を失った人たちや連合内からも批判と失望の声があがっている。

年104日は祝日を除いた週休2日制に過ぎない。しかも4週で4日休めばよいルールなので、8週で最初と最後に4日ずつ休めば48日連続の勤務も可能だ。働く時間の制限もない。

また四つの選択肢には、臨時の健康診断のような経営側が選びやすい案がわざわざ盛り込まれた。これで労働時間の上限設定や勤務間インターバル制度の普及が進むだろうか。

労働団体にとって極めて重要な意思決定であるにもかかわらず、連合は傘下の労働組合や関係者を巻き込んだ議論の積み上げを欠いたまま、幹部が主導して方針を転換した。労働組合の中央組織、労働者の代表として存在が問われかねない。

この規制緩和は経済界の要望を受けて第1次安倍政権で議論されたが、懸念の声が多く頓挫した。第2次政権になり2年前に法案が国会に提出されたが、これまで一度も審議されず、政府の働き方改革実現会議でもほとんど議論されていない。

臨時国会では同一労働同一賃金や残業時間の上限規制が柱の「働き方改革」がテーマになるが、これに紛れ込ませて、なし崩しに進めてよい話ではない。

働く人の権利と暮らしを守る労働基準法の原点に立ち返った検討を求める。
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[朝日新聞] コウノトリ ともに生きる環境を (2017年07月16日)

国の特別天然記念物で、絶滅の危険性が極めて高いコウノトリが、人工繁殖を経た放鳥によって少しずつ増えている。自然に定着したつがいからヒナも生まれ、野外で生息するコウノトリは6月、100羽を超えた。

コウノトリは、多様な生き物がすむ生態系がなければ、定着も繁殖もできない。里山の自然が保たれていることを示す生きた鏡と言える。この取り組みを持続させ、より多くの個体が大空を飛び回る環境にしたい。

兵庫県豊岡市では、地元の人々と市、県が協力して飼育や繁殖に取り組んできた。野生復帰のための放鳥を始めたのは12年前のことだ。この間、46都道府県で飛来が確認された。

背中につけた発信器から、福井県で放鳥されて列島各地を舞い、海を越えて韓国へ渡り、北朝鮮まで羽をのばしていたオスもいることがわかった。繁殖地も徳島県や島根県に広がった。

コウノトリはかつて全国各地で人の身近にいた。だが、明治期から狩猟によって減り、戦時中は営巣するマツが燃料用に伐採され、行き場を失った。

長いくちばしで水田や湿地にすむカエルやドジョウ、魚、昆虫など大量のえさを食べる。農薬の影響で戦後も生息数が減り続け、71年に野生の個体が消滅した。人間の活動が、絶滅の危機に追い込んだと言える。

豊岡では半世紀前から人工飼育に取り組んだが、親鳥の体がえさを介して農薬に侵され、卵からヒナがかえらなかった。そこで地元の農家が「コウノトリもすめる町に」と、無農薬・減農薬の農法を始めた。雑草を根絶やしにせず、収量が大幅に落ち込まない程度ならあってもいい、と発想を転換させた。

冬も田に水をはり、春はオタマジャクシが育つまで水を抜かない。一年中、生き物がいる水田づくりにも努めた。すると、コウノトリのえさのカエルが害虫を食べてくれ、里山の食物連鎖が戻り始めた。コウノトリの野生復帰を支える中で、地域の人々も健やかに暮らせる環境の大切さに気づいたという。

兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園の山岸哲(さとし)園長は「人間は自分たちの都合で自然を改変し、多くの生き物を絶滅に追いやった。どうやって共生できるかをみんなで考えていきたい」と語る。

環境省の今年のレッドリストで、絶滅のおそれのある「絶滅危惧種」の動物は1372種で、2年前より35種も増えた。

在来の多様な生き物を守るため、里山の自然を取り戻し、保つ。それは多くの生き物の生息地を奪ってきた人間の責務だ。
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2017年07月15日

[朝日新聞] 劉暁波氏死去 恥ずべき弾圧の体制 (2017年07月15日)

劉暁波(リウシアオポー)氏が帰らぬ人となった。61歳だった。

中国で自由を追い求めた一徹な生涯は、きわめて不当な獄中生活の中で閉じた。

この蛮行を世界は忘れまい。中国の政権に断固抗議する。

政治犯として長い服役を強いられ、その間に肝臓がんが悪化した。処遇に重大な問題があった疑いが濃い。そもそも投獄されたことが理不尽だった。

中国当局は、米独の医師を招いて、対応の適切さを訴えた一方、国外での治療希望は拒み、見舞客を受け入れなかった。

妻の劉霞(リウシア)さんも含め、最後まで監視を緩めぬやり方は、人権感覚が欠落した中国政府の体質を改めて世界に露呈した。

劉氏が投獄されたのも、ノーベル平和賞を受けたのも、民主化を追求したがゆえである。89年の天安門事件を含め、たゆまず市民の権利を問うてきた。

劉氏らを中心に08年に発表された「08憲章」は、共産党の一党支配に反対し、権力分立、人権保障、公正な選挙を求めている。多くの国で実践済みの、ごく穏やかな提案にすぎない。

こうした真っ当な意見表明を「国家政権転覆扇動罪」に処した共産党政権こそ、正当性を問われるべきである。

多種多様な意見が交わされる社会。複数の党が政策を競いあう政治。劉氏が構想したのは、そんな自由な中国だった。

「私には敵はいない」

その文章が広く記憶される。09年の法廷での陳述書として劉氏自身が筆を執り、のちに、出席できなかったノーベル賞授賞式で読み上げられた。取り調べの警察官や検事らにも敬意を表し、憎しみを全面否定した。

これは寛容の精神である。自由な社会は、各人が自らの意思で責任をもって行動するのを原則とする。各人の選択は互いに尊重される必要があり、だから自由と寛容は不可分なのだ。

ささやかな批判すら許さぬ不寛容の体制と向きあい、投獄間際にあって「敵ではない」と言い切るのは、究極の共産党政権批判といっていい。

この文章を劉氏は、こう締めくくっていた。「中国で綿々と続いた言論弾圧の最後の被害者となることを望む」

その願いに反し、弾圧は今も続いている。習近平(シーチンピン)政権下で厳しさを増し、人権活動家、言論人や弁護士が獄中にいたり監視されたりしている。

民衆を敵視する政治は間違っている。劉氏が命をかけて紡いだ言葉と精神は、中国のみならず自由を愛する世界の人びとが厳粛に受け継ぐことだろう。
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[朝日新聞] 辺野古提訴へ 問われる工事の公正性 (2017年07月15日)

米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐる政府と沖縄県の対立が、再び法廷に持ち込まれる事態になった。

きのうの県議会で、県が工事の差し止め訴訟を起こすことが賛成多数で可決された。

県が敗訴した昨年暮れの最高裁判決で、法的な争いは決着したのではないか。そんな疑問をもつ人もいるかもしれない。

だが、工事を進める国の手順に新たな疑義があることが、次第に明らかになってきている。その当否を司法に問おうという県の姿勢は理解できる。

どんな疑義か。

基地を造るには辺野古の海底の岩を破砕しなければならず、許可する権限は知事にある。前知事が出した許可は今年3月に失効した。これに対し国は「地元の漁協が埋め立て海域の漁業権を昨年放棄したので、もはや知事の破砕許可はいらない」として、工事に着手した。

だが水産庁は過去に「漁協が放棄を議決しただけでは漁業権は消滅しない」と読める見解を示していた。これに従い、沖縄を含む各地の埋め立て工事は、知事による漁業権の変更手続きを経たうえで進められてきた。

水産庁は見解を変えたのか。それはいつ、なぜか。県の照会に対し、納得のゆく回答は返ってきていない。先の通常国会では野党議員から「法治国家がとるべき手段とは到底考えられない」との声もあがった。

行政の公正・中立、そして憲法が保障する適正手続きが、辺野古の埋め立てをめぐって、改めて問われているのだ。

現地では、こうした疑念を置き去りにして工事が進む。このところ県内の首長選や議員選で翁長知事支持派が劣勢に立っていることもあり、一部にあきらめムードも漂う。半面、粘り強い抗議活動は依然続いており、県民を分かつ溝が広がる気配をみせているのは心配だ。

沖縄は戦後、米軍基地を造るために「銃剣とブルドーザー」で土地や家を奪われた歴史をもつ。そしていま、自国政府の手で新たな基地が強引に建設されようとしていることへの、怒りと悔しさに直面している。

国と地方の紛争処理を目的とし、有識者でつくる政府の委員会が、昨年6月に出した見解をいま一度思いおこしたい。

「国と県は、普天間飛行場の返還という共通の目標の実現に向けて真摯(しんし)に協議し、双方が納得できる結果を導き出す努力をすることが最善の道である」

くり返し訴える。政府は工事を中止し、県との話し合いのテーブルに着くべきである。
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2017年07月14日

[朝日新聞] 電通違法残業 働き方を見直す公判に (2017年07月14日)

広告大手・電通の違法残業が公開の法廷で審理されることになった。会社が罪を認めて罰金を支払う略式手続きによって決着させるのは「不相当」だと、東京簡裁が判断した。

異例ではあるが、事件がもつ深刻さや社会への広がりを考えれば、適切な措置といえよう。この先、検察当局による正式な起訴を経て、簡裁の別の裁判官のもとで公判が開かれる。

労使で決めた時間外労働の上限を超えて、従業員4人に月最大19時間の残業をさせた――。それが直接の容疑で、法人としての電通が被告となる。だが摘発のきっかけになった一昨年12月の新入社員の自殺をはじめ、同社の労働実態をめぐっては多くの問題が指摘されてきた。

社会が直面している大きな課題である「働き方改革」のゆくえや、ほかの企業の労務管理、経営者の意識にも大きな影響が及ぶのが必至の裁判だ。だからこそ、簡裁は公の場での審理を選んだといえよう。

その認識に立ったうえで、提出する証拠の選定、冒頭陳述に盛りこむ内容、関係者から聞き取った調書の要旨の紹介や法廷での尋問のあり方などを、裁判所、検察、弁護それぞれの立場で検討してもらいたい。

電通では、91年にも入社2年目の若手社員が働きすぎが原因でみずから命を絶ち、会社側の責任を認める最高裁判決が言い渡されている。国が過労死や過労自殺対策を見直すきっかけになった悲劇だった。

当時の教訓はなぜ生かされなかったのか。企業風土の改革を阻んだものは何か。電通だけの問題に終わらせずに、各企業が足元を見つめ直す。そんな公判になることを期待したい。

今回の事件を機に、長年の懸案だった残業時間の規制について「原則として月45時間まで」「繁忙期など特別の場合の上限は月100時間未満」などとする政労使の案が、この春まとまった。秋の臨時国会に関連法の改正案が提出される見通しだ。

だが「100時間」は、労災認定の目安とされる「過労死ライン」ぎりぎりの数字だ。過労死で家族を失った人たちなどからは批判が出ている。

上限いっぱいまで働かせることにお墨付きを与える法律にしてはならず、残業をできる限り減らす努力が求められる。

それをどうやって担保するのか。国会は政労使合意を所与のものとせず、労働者の健康を第一に議論を深める必要がある。

長時間労働の是正、過労死・過労自殺の防止に向けた取り組みは、これからが正念場だ。
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[朝日新聞] 受動喫煙ゼロ がん計画に目標明記を (2017年07月14日)

2022年度までの国のがん施策を示す「第3期がん対策推進基本計画」をつくる作業が、大詰めで難航している。

焦点は、がん予防策の大きな柱であるたばこ、中でも他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙の取り扱いである。

厚生労働省が6月に公表した原案では、受動喫煙率の数値目標が「保留」とされた。社説でくり返し主張してきたように、国民の生命・健康を考えれば、「受動喫煙をゼロにする」という考えを、計画の中で明確に位置づけるべきだ。

現行の第2期計画(12?17年度)は、20年までに「受動喫煙の無い職場」を実現し、そのうえで22年度までに、過去1カ月間に受動喫煙を家庭で経験した人の割合を3%、飲食店で15%にするという目標を掲げた。

しかし状況は厳しい。

15年の国民健康・栄養調査によると、飲食店での受動喫煙率は41%にのぼり、11年の45%からほとんど変わっていない。職場の状況も同様で、数値はやや低いものの、11年の36%が31%になったにとどまる。

厚労省の専門家協議会は危機感を抱き、第3期では職場、家庭、飲食店での受動喫煙すべてを、20年までにゼロにすることを目標とするよう求めた。

だが、計画づくりと並行して厚労省がとり組んでいた、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の国会提出が、自民党側の反対で先送りに。その影響で第3期基本計画での目標も宙に浮いた状態になっている。

「達成できる見通しのない目標は掲げるべきではない」との意見があるかも知れない。しかし現状が問題だからこそ、あるべき姿を示し、政策を総動員して実現させる。そのための基本計画ではないか。

飲食店や職場での全面禁煙はいまや世界標準だ。小池百合子東京都知事は、9月議会に受動喫煙対策の条例案を提出したい考えを明らかにしたが、東京だけやればよいという話ではない。国全体で取り組まなければならないテーマだ。

がん対策としては、喫煙者そのものを減らす政策も必要だ。

計画原案には禁煙を希望する人たちへの支援が盛り込まれた。15年の成人の喫煙率は18%で、いまの目標の「22年度に12%」になお遠いが、国民健康・栄養調査では喫煙者の半数以上が「やめたい」「本数を減らしたい」と答えている。

公的医療保険を使った禁煙治療も現に行われている。禁煙に挑戦する人を支える仕組みの整備も忘れないようにしたい。
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2017年07月13日

[朝日新聞] 民進党 勘違いしていませんか (2017年07月13日)

民進党は大きな勘違いをしているのではないか。

東京都議選の敗因分析に向けた党内議論を見ていると、そんな疑問を抱かざるをえない。

国会議員の会合では「解党的出直し」を求める声に加え、蓮舫代表の「二重国籍問題」に矛先が向いた。蓮舫氏は「いつでも戸籍開示の用意がある」と、戸籍謄本を公開する意向を示したという。

民進党の議員たちに問う。

蓮舫氏が戸籍を公開すれば、党勢は上向く。そう本気で思っているのか。

旧民主党政権の挫折から4年半。民進党が民意を受け止められない大きな原因は、そうした的外れな議員たちの言動にこそあると思えてならない。

今回の都議選で民進党は、前回の15議席から5議席に獲得議席を大幅に減らした。国政での野党第1党の存在意義が問われる危機的な敗北である。

さらに安倍内閣の支持率が急落する中、民進党の支持率は本紙の世論調査では5%にとどまっている。

「共謀罪」法や加計、森友学園の問題などで、民進党が安倍政権を問いただす役割を担ってきたのは確かだ。

なのになぜ、野党第1党の民進党が、政権の受け皿として認知されないのか。

都議選では小池百合子知事率いる都民ファーストの会の躍進があった。しかしそれだけではない。政党にとって何よりも大事な政策の軸が、定まらないことが大きい。

象徴的なのは原発政策だ。

なし崩しの原発回帰を進める安倍政権に対し、民進党が脱原発依存の旗を高く掲げれば、鮮明な対立軸を示せるはずだ。

そのことが分かっていながら、電力会社労組などへの配慮を優先し、政策をあいまいにする。大きな民意を見失っていることが、党勢低迷の根本的な要因である。

「二重国籍」問題で、蓮舫氏の説明が二転三転したことは、公党のリーダーとして不適切だった。

だが、主な敗因とは思えない「二重国籍」問題に議員たちがこだわるようなら、国民はどう受け止めるだろう。

もう一つ懸念されるのは、蓮舫氏が戸籍謄本を公開することが社会に及ぼす影響だ。

本人の政治判断とはいえ、プライバシーである戸籍を迫られて公開すれば、例えば外国籍の親を持つ人々らにとって、あしき前例にならないか。

民進党と蓮舫氏はいま一度、慎重に考えるべきだ。
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[朝日新聞] 税収の減少 成長頼みへの警告だ (2017年07月13日)

景気は回復を続けているのに、国の税収が7年ぶりに減少に転じた。経済が成長すれば税収が増え、財政も再建できる――。そう主張してきた安倍政権への、重い警告である。

16年度の一般会計税収は55・5兆円で、前年度より0・8兆円減った。英国の欧州連合(EU)離脱決定に伴う円高などで企業収益が期待したほど伸びず、法人税収が2年続けて減少。所得税と消費税も減り、税収全体の約8割を占める主要3税がそろって陰った。

大胆な金融緩和と機動的な財政出動で経済成長を図るのが、政権の経済政策の基本戦略だ。成長がもたらす税収増などを使って経済対策を打ち、次の成長につなげつつ財政も改善する「好循環」を狙ってきた。

今年1月の施政方針演説でも、首相は政権交代後に国の年間税収が15兆円増えたと指摘した。8%への消費増税分を含む金額ではあるが、「こうしたアベノミクスの果実も生かし、『成長と分配の好循環』を創り上げていく」と強調した。

しかし成長頼みの政策運営には限界があることを、税収の減少は示している。

第2次安倍政権の発足時、経済はリーマン・ショックによる落ち込みから回復に向かい、税収も増え始めたところだった。

景気回復の初期は、赤字企業が黒字に転じて納税を再開するので法人税収が増えやすい。しかし黒字転換が一巡すると、税収の伸びは鈍くなる。多くの日本企業の収益の柱が国内から海外に移っていることも、業績改善が法人税収の増加に直結しない一因となっている。

問題は、政権がそうした現状から目をそむけていることだ。

16年度の税収については、昨年12月に編成した補正予算で、当初予算より1・7兆円少なくなると修正した。一方、同時につくった17年度当初予算での税収は、修正前の16年度当初より増えると強気に見込んだ。

その結果、17年度予算では、歳出が5年連続で過去最大を更新しながら、財源不足を埋める新規の国債発行額は前年度からわずかながらも減った。官邸や財務省は、国債の発行減を強調することで実態以上に財政再建が進んでいるかのように見せようとしたのではないか。

現実を直視しなければ、まっとうな政策論議はできない。

政府は20年度に基礎的財政収支を黒字化する目標を掲げているが、達成は絶望的だ。財政運営でどんな選択肢があるのか、政府は実態に即して国民にきちんと説明しなければならない。
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