2017年08月11日

[東京新聞] 「山の日」に思う ライチョウ、命の記憶 (2017年08月11日)

パンダの誕生ほどには注目されていまい。ほぼ同じころ、人工繁殖で生まれたニホンライチョウの赤ちゃんたちだ。絶滅の危機にあるこの鳥を知るほどに、人と自然との関係を問いたくなる。

「よく生まれてきてくれた」

ニホンライチョウの人工繁殖を託された施設の一つで、最初にひなが誕生した富山市ファミリーパークの石原祐司園長は、会見の席で感極まり、声を詰まらせた。

ニホンライチョウは国の特別天然記念物だが、絶滅危惧種でもある。五年前には危険性がより高いIB類に“格上げ”もされている。

実際、一九八〇年代に約三千羽とされた生息数は、環境の悪化などで二千羽以下に減った。

種の保存のため環境省などが保護事業をスタート。昨年、一昨年と、乗鞍岳で卵を採取し、育った成鳥を同パークと長野県の大町山岳博物館、東京の上野動物園で飼育、今春から交配を試みた。そのひなが無事に誕生したのだ。

元来、ライチョウは北半球の北部に分布する鳥だが、ニホンライチョウは約二万年前の氷河期、大陸から日本列島に移りすんだと考えられている。温暖化とともに標高二、二〇〇〜二、四〇〇メートル以上の高山帯に取り残され、生息域も現在では、北アルプスの一部、乗鞍岳(独立峰)、南アルプスなど五つの地域に狭まった。

過酷な環境下で高山植物などを主食に生き抜いてきたが、数が減少の一途だったわけでもない。

富山大理学部の山崎裕治准教授らの調査では、約六千年前までの温暖化で一度減った立山のライチョウは、四千年前には餌の高山植物の回復に合わせるように、再び増えた。ふんの遺伝子型分析で明らかになった成果だ。

だが今、地球温暖化が再びひたひたと。高山植物の分布にもこの先不安が募る。期待の人工繁殖も見通しは甘くない。三園で二十羽余が生まれているが、半数近くが死亡。衛生管理をはじめ繁殖技術の確立には課題が多い。

ニホンライチョウの最大の特性は人を恐れぬことだ。欧州などでは狩猟の対象だが、日本は違う。それどころか、奥山すなわち高山は神の領域との山岳信仰に守られる“神の鳥”であった。

生息地に天敵のカラスや、シカが増えたのも里山の荒廃が要因だろう。ニホンライチョウの命のありようは、自然へのかかわり方が、ずさんになってきた私たちへの問いかけなのかもしれぬ。
posted by (-@∀@) at 13:21| Comment(0) | 東京新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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