2017年03月12日

[読売新聞] 朴大統領罷免 司法の行き過ぎた政治決定か (2017年03月12日)

◆対日関係への悪影響を避けたい◆

北朝鮮の軍事的脅威が深刻化する中での驚くべき事態である。東アジアの安定や日韓関係への影響が懸念されよう。

韓国の憲法裁判所が、朴槿恵大統領を罷免する決定を宣告し、朴氏は失職した。裁判官8人全員が賛成した。

韓国で大統領が弾劾訴追で罷免されるのは初めてだ。1987年の民主化以降、任期を全うできない例もなかった。

◆分断の深刻化が心配だ

国会は昨年12月、朴氏が友人である崔順実被告に国政介入を許したことなどを理由に、弾劾訴追した。憲法裁はこれを受けて、審理を行ってきた。

決定は、崔被告が関与する財団の資金集めを朴氏が支援したと認定した。「崔被告の利益のために大統領の地位、権限を乱用したことは、憲法及び国家公務員法に違反する」との判断を示した。

朴氏が崔被告の国政介入を隠蔽し、政府から独立して捜査する特別検察官や検察の取り調べに応じなかったとも指摘した。朴氏には「憲法を守る意志がない」と結論づけた。

憲法裁が、大統領罷免を求める国民の声に阿(おもね)って権力を行使したとすれば、行き過ぎだろう。

昨秋以降、大統領に抗議する大規模集会が毎週開かれ、宣告直前の世論調査では、罷免賛成が8割近くに上っていた。朴氏が専門性のない友人に、国政への介入を許したことの衝撃は大きかった。

罷免反対派も街頭活動を繰り広げ、対立が先鋭化していた。決定当日には、集会参加者と警官隊が衝突し、死傷者が出た。

朴氏は崔被告らの起訴に際し、共犯と認定された。罷免によって刑事訴追を免れる特権を失ったため、逮捕される可能性がある。混乱の長期化は避けられまい。これ以上、社会の分断が進まないよう、双方の自制が必要だ。

◆「漢江の奇跡」はならず

朴氏が2012年に韓国初の女性大統領に当選したのは、韓国保守の源流である朴正煕大統領の長女として人気があったからだ。

就任演説では、グローバル化の中で経済を発展させ、国民の幸福につなげる「第2の漢江の奇跡」を掲げた。だが、任期1年を残して幕を閉じた朴政権は、その実現からはほど遠い結果となった。

財閥企業主導の輸出頼みの経済は、中国経済の減速で壁に突き当たり、成長率が低迷している。特に若年層の就職難を招いた。

社会に蔓延(まんえん)した不満は、反政権運動が拡大する素地となった。

安全保障分野では、北朝鮮の核実験などの挑発に対して、一貫して毅然(きぜん)とした態度を崩さず、圧力を強化したことは評価できる。

北朝鮮への影響力行使を期待して対中接近し、15年9月に、中国の「抗日戦争勝利70年」の軍事パレードに参列までしたのは、計算違いだった。中国が北朝鮮を支え続けるのを目の当たりにし、気づいたのではないか。

◆対「北」抑止維持せよ

北朝鮮の弾道ミサイル発射や金正男氏殺害事件で、朝鮮半島を巡る緊張は日増しに高まっている。政権移行期であっても、日米韓3か国の連携維持が不可欠であることを忘れてはならない。

在韓米軍への最新鋭ミサイル防衛システム「最終段階高高度地域防衛(THAAD)」の配備作業が始まった。

韓国には、配備に執拗(しつよう)に反対する中国の様々な圧力に屈しない姿勢が求められよう。

大統領選は5月上旬までに行われる。懸念されるのは、北朝鮮に融和的な左派野党の候補予定者が勢いづいていることである。

世論調査で支持率トップに立つ左派野党の前代表は、南北経済協力を重視する。「当選したら、米国よりまず北朝鮮に行く」と発言したことすらある。

対日姿勢も疑問だ。慰安婦問題の日韓合意を否定し、釜山の日本総領事館前に慰安婦を象徴する少女像を設置した市民団体を、公然と支持した。日本が一時帰国させた駐韓大使と釜山総領事を帰任させるメドは立っていない。

朴氏は慰安婦問題で日本に一方的譲歩を求め、就任後2年半以上も、安倍首相との首脳会談に応じなかった。全斗煥氏以後の歴代大統領でただ一人、在任中に来日する機会がなかった。

だが、日韓合意は、その朴氏と日本が歩み寄った貴重な外交成果にほかならない。

岸田外相は「新政権とも様々な分野で協力を進めていかねばならない」と強調した。韓国が合意を誠実に履行するよう働きかけを続けていくことが欠かせない。
posted by (-@∀@) at 11:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 読売新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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