2017年03月11日

[東京新聞] 3・11とメディア 福島 もう一つの真実 (2017年03月11日)

トランプ米大統領のオルタナティブファクト(もう一つの事実)。米国だけの問題ではない。原発報道には以前からあった。どう伝えるかを考えた。

福島県立福島高校のホームページに先月、「福島第一原子力発電所見学報告」がアップされた。昨年十一月に見学した。

報告書を読むと、生徒たちは日ごろから放射線量の計測をしたり、国際ワークショップに参加したりしている。事前に学習会を開き、質問事項も考えていた。

「今、大きい地震が来たときの対策は取られているのか」「賠償は最後の一人になるまでと聞いたが、どこまでいったら最後の一人なのか」−。被災地に生きる高校生ならではの問いが並ぶ。


◆高校生の鋭い観察眼
----------

見学中、路上に配線や配管が多かったことから「冗長性」も尋ねている。冗長性とは、異常時に備えて、あえて付加した余裕の設備などだ。「原子力発電所は二重、三重にするのが基本的な考え方だが、今の1F(第一原発)では二重が限界。あわてて作ってきたので、本当に二重になっているかは怪しい」と本音を引き出した。

高校生が第一原発に入るのはこれが初めて。全国紙の記事がインターネットのニュースサイトに載った。

「高校生たちは放射線や廃炉について自ら調べ、国内外に発信してきた」と紹介。参加したのは男女十三人だが、写真は壊れた原子炉建屋を背景にした女子生徒、記事中のコメントも女子生徒だった。好意的な記事だったが、インターネット上では「女子生徒の体が心配だ」といった声も出た。

感心な高校生の記事と、放射能は怖いという感想。福島に関する記事ではよくあるパターンだ。

生徒が見学によって被ばくした線量は四・三マイクロシーベルト。日本人の外部被ばくは一日二マイクロシーベルト弱で、二日分を余分に浴びたぐらいだった。


◆説明とデータが違う
----------

ある女子生徒は見学の前に言っていた。「私は放射線の勉強をし、自分の被ばく量も分かっていて、がんの心配はないと考えています。でも、母が気にしているので甲状腺がんの検診は受けます」

甲状腺がんは多くの福島県民の関心事だ。チェルノブイリ原発事故では甲状腺がんが多発した。福島県では二〇一一年十月から、ゼロ歳から十八歳までの全員を対象に検診を始めた。生涯にわたってチェックする方針だった。

よく言われたのは「子どもの甲状腺がんは百万人に数人」「チェルノブイリでは事故から五年後に急増した」だった。

一回目の対象は約三十七万人。がんと診断された人は百人を超えた。専門家は「高精度の検査で、小さいがんを早くに見つけたためだ」と説明した。新たな患者は少なくなると考えられた二巡目の検査だが、昨年末までに四十四人ががんと診断された。前回は異常なしだった子どももいた。

予想と違うデータに、記者会見では毎回、「多発は事故のせいでは」との質問が出る。だが、福島県の検討委員会は「チェルノブイリの知見から被ばくの影響とは考えにくい」の繰り返しだ。「がん患者が○人増加した」と「放射線の影響は考えにくい」という真逆にもみえることが一本の記事になる。「もう一つの事実」が真実を見えにくくしている。

甲状腺がんが増える期間に入った昨年、検査の縮小を求める声が福島県内で強くなった。理由の一つに「国内外での風評につながる可能性」が挙げられ、それがそのまま報道されている。甲状腺がんの増加は風評ではない。事実を風評と過小評価してはいけない。

昨年、「福島子ども健康プロジェクト」が発表した八歳ぐらいの子を持つ母親を対象にした調査では63・7%の人が「放射能の情報に関する不安がある」と答えている。放射線被ばくとがんの関係は研究者によって意見が異なる。それが県民を不安にしている。

福島高校の原尚志(たかし)教諭は「生徒たちが県外で発表すると、質問は、あなたたちは福島県に住んでいて大丈夫なのかと、福島県の食品を食べているのか、ばかりなんです」と話す。


◆自分の目で見ること
----------

高校生の感想をもう少し。

「誰かのフィルターをかけた1Fではなく、自分の目で見ることができてとても良かった」

「私たちが直面している『偏見』も、今の時点で残っていることは何一つおかしなことではなく、これが恒常的なものになってしまうのかどうか、それを防ぐのかは、これからの私たち次第なんだと強く感じました」

エールを送ろう。私たちは福島に寄り添う。忘れない。そして「何が本当のことなのか」。それを見極めて報道していく。
posted by (-@∀@) at 13:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/447806496
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック