2014年10月30日

[毎日新聞] 社説:派遣法改正案 格差を固定化するな (2014年10月30日)

今国会の焦点である労働者派遣法改正案が衆院で審議入りした。派遣労働の期限を事実上撤廃する内容で、「派遣は臨時的」という原則の大きな転換になる。

派遣労働者の身分保障や処遇改善をしないまま長期の派遣使用に道を開くことは正社員との格差の固定化を招くおそれがある。成長戦略の観点だけから論じるべきではない。慎重に議論を尽くすべきだ。

現行の派遣法は企業が同じ職場で派遣労働者を使える期間について、ソフトウエア開発など「専門26業務」を除き原則1年、最長3年と上限規制を定める。改正案は全業務で上限を3年とする一方、3年たった時点で別の派遣労働者に交代すれば、引き続き派遣での使用を可能とする。このため期限制限はなくなる。

安倍内閣は成長戦略の一環として派遣法改正を重視する。労働市場の流動化や働く形態の多様化は確かに重要だが、上限撤廃には強い懸念を抱かざるを得ない。

まず指摘したいのは派遣労働者の処遇を改善しないまま長期派遣に「お墨付き」を与える危うさだ。

派遣労働者の契約は「雇い止め」など不安定で、賃金も40代は時給換算で正社員と2倍以上の差があるとされる。専門26業務も不利な条件の労働を強いられる人が多い。

正社員と同等の仕事をこなす派遣労働者の格差是正こそ急ぐべきだ。賃金、安定雇用に加え年金など社会保障、キャリアアップ、福利厚生施設利用など差別解消へ検討すべき課題は山積しているはずだ。

「派遣労働者の能力向上を図り、正社員への転換を促す」との政府の説明もにわかには信用できない。

改正案は派遣元の会社に計画的な職業訓練や、派遣先企業に直接雇用を求めることなどを義務づける。

だが、派遣元の多くは中小零細で、計画的職業訓練をする力がないところが圧倒的に多い。人件費削減による「安価な労働力」目当てという派遣の本質がある以上、正社員化の保証は無い。それどころか派遣労働者の配置転換を繰り返す「生涯派遣」や、正社員の派遣労働者への振り替えなど格差の固定化、拡大を不安視する声が出るのも無理はない。

派遣労働者を含む非正規雇用者への厚生年金の適用拡大を政府は検討してきたが、経済界の反対もあり中途半端に終わっている。「企業の論理」だけで問題を捉えず、処遇改善や正社員化への道筋を実効性ある方法で裏付けるべきだ。

民主党は改正案に反対しているが維新の党がまとめた非正規職員と正社員の同一労働・同一賃金を求める法案の共同提出には応じるという。野党にも責任ある議論を求めたい。

2014年10月30日 02時30分
posted by (-@∀@) at 12:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 毎日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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