2009年06月05日

[東京新聞] 足利事件釈放 もっと早く救えたはず (2009年6月5日)

「足利事件」で服役していた男性が釈放された。DNA型再鑑定は男性が犯人でないことを示していたから当然だ。再審開始前の釈放は前例がないことだが、もっと早く冤罪(えんざい)から救えなかったか。

一九九〇年五月に栃木県足利市内で殺害された保育園女児が見つかった「足利事件」で、翌年十二月に殺人容疑で逮捕された菅家利和さん(62)は一、二審とも無期懲役の判決を受けた。最高裁はDNA型鑑定の証拠能力を初めて認定して有罪判決が確定。菅家さんは服役中だった。

菅家さんは無罪を訴えて再審請求し、東京高裁で抗告審が続く。被害者の衣類に付いた体液のDNA型は菅家さんのものとは一致しないという再鑑定が出て、再審開始が確定的になった段階だ。

東京高検は再鑑定を「無罪の証拠に当たる蓋然(がいぜん)性が高い」とする意見書を高裁に提出、菅家さんの刑の執行を停止した。再審開始決定を待たず受刑者を釈放したのは前例がないが、妥当な決定だ。

再鑑定の「一致しない」は「別に犯人がいる」ことを示すものであり、刑事裁判の原則「疑わしきは被告人の利益に」どころではない。冤罪の菅家さんを速やかに釈放しなければ、国家による人権侵害を続けることになる。

DNA型鑑定は現在、科学的で客観的な立証手段となった。検察が今回の再鑑定を評価せずに異議を唱えては、ほかの裁判や捜査全般にまで影響が及びかねない。

これまでの検察であれば、受刑者を釈放せず徹底的に争ったかもしれない。しかし、裁判員制度がスタートした。「開かれた検察」として人権尊重をアピールする意味もあったのではないか。

弁護側は宇都宮地裁での再審請求で、菅家さんの毛髪からDNA型を調べた結果、警察の鑑定とは異なるとの再鑑定を提出した。

だが、地裁は請求を棄却した。この司法判断に誤りはなかったのか。「使われた毛髪が請求人(菅家さん)のものと確認できない」という理由だが、そうであれば地裁の職権で再鑑定すべきだった。

裁判官は事件に先入観を持ったり、結論ありきで臨むことは許されない。訴追する検察側に対するチェック機能も忘れてはならない。

逮捕から釈放までに十七年半もかかった。司法の真摯(しんし)な姿勢があれば、もっと早く菅家さんを救えたはずだ。検察庁が再検証するのは当然だが、裁判所も再調査して誤判防止に役立てるべきだ。
posted by (-@∀@) at 10:20| Comment(0) | TrackBack(1) | 東京新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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菅家さん17年半ぶり異例の釈放。 それにしても再審拒否した宇都宮地裁の責任は大きい。
Excerpt: いや、本当にニコニコ してますね。 右の写真の菅家さん ..
Weblog: 自分なりの判断のご紹介
Tracked: 2009-06-05 23:23