ロシアが、ウクライナ経由の欧州向け天然ガス輸出を全面停止した。
ガス輸出価格交渉の決裂で、ウクライナ向け輸出を停止したところ、欧州に向かうパイプラインからウクライナがガスを抜き取ったため、という。
欧州が消費する天然ガスの25%はロシア産だ。その8割が、ウクライナ経由のパイプラインで運ばれている。ウクライナは「抜き取り」を強く否定して双方の言い分は異なるが、そのとばっちりを欧州諸国が受けた形だ。
ブルガリアでは暖房がストップし、ハンガリーでは日系自動車工場が操業中止に追い込まれた。厳冬期に入った欧州で、ガス供給の停止は大きな打撃だ。
商取引をめぐる交渉ごととして、当初は静観していた欧州連合(EU)が、ロシアとウクライナに早期解決を求めたのも当然のことだろう。両国は早急に価格交渉をまとめ、ロシアは欧州向けガス供給を再開すべきだ。
3年前にも、同様に価格交渉の決裂が原因で、ロシアはウクライナ向けのガス供給を停止し、欧州にも影響が出た。
繰り返される中断騒ぎは、ロシアが、安定したエネルギー供給国としての信頼に欠けることを示すものだ。
ウクライナの場合、親欧米政権が5年前に登場して以降、特に米国の後押しを受けて、欧州連合(EU)との経済統合や、北大西洋条約機構(NATO)加盟を推進してきた。
ロシアが強硬手段に出たのは、西側接近を図るユシチェンコ政権を強く牽制(けんせい)する狙いがある。
ウクライナ・パイプラインの弱みを欧州に印象づけ、ウクライナを迂回(うかい)した新規パイプライン建設構想に欧州の関心をひきつけたい計算もあるに違いない。
欧州としては、エネルギー安全保障の観点から、ロシアへの依存度を下げることが課題となろう。液化天然ガスの受け入れ施設を増やせば、中東などからの輸入を拡大できる。供給源の多様化を図るため、そうした投資を進める努力をしたらよい。
エネルギー資源の大部分を海外に依存している日本にとっても、他人事(ひとごと)ではない。
国際情勢を鋭意注視しながら、石油や天然ガスへの依存度を抑えて、原子力などの利用を着実に拡大していく努力を、継続していくことが重要である。


