北朝鮮は先月中旬、南北の軍事境界線を通る陸路通行を「厳格に制限・遮断する」と通告した。先週末からは北朝鮮の開城観光が中断、南北を結ぶ鉄道運行も打ち切られた。1日からは開城工業団地の韓国人常駐者を現状の約半分に削減し、車両やヒトの往来も厳しく制限し始めた。
南北の経済協力は北朝鮮の金剛山と開城観光、韓国企業が進出して北朝鮮労働者を雇用する開城工業団地事業が柱だった。今夏、韓国人観光客が北朝鮮兵士に射殺されたのを機に中断した金剛山観光に続き、開城観光も長期中断が必至となった。
開城工業団地の操業にも深刻な支障が生じかねない。今後の北朝鮮の追加措置次第では全面的な操業停止に追い込まれる事態も想定されるが、南北事業の相次ぐ中断や事業縮小は北朝鮮にとっても、外貨収入面で大きな損失となるはずだ。
韓国で今年2月、10年ぶりに保守系の李政権が誕生して以降、南北関係は確かに冷え込んでいる。だが北朝鮮の強硬な対応は、南北融和を旗頭に経済支援を優先させた従来路線を転換し、核放棄を前提にした支援を主張する李政権への嫌がらせだけでは説明できない面がある。
北朝鮮は韓国の民間人権団体が金正日総書記の健康悪化などを伝える大量のビラを風船に付けて北朝鮮に飛ばしていることに激しく反発している。北朝鮮の揺さぶりは、米朝直接対話に前向きなオバマ米次期政権の発足を控え、日米韓の分断を画策したとの見方もある。
閉鎖国家だけに予断は禁物だが、強硬措置は軍部が主導している。金総書記の健康不安説と絡み、軍部が政策決定の主導権を握っているか、総書記の健康問題を国内で隠すために意図的に南北の緊張をあおっている可能性も否定できない。
南北関係の悪化は朝鮮半島情勢の大きな不安要因でもある。韓国政府は核放棄なしの北朝鮮支援は控えるという大原則を貫きつつ、北朝鮮の政情分析を急いでほしい。


