昨年、一般刑法犯(刑法犯から交通事故関係を除く)として検挙された65歳以上の高齢者は約4万8600人と1988年のほぼ5倍に増えた。同時期の65歳以上人口の増え方は約2倍である。
社会の高齢化の勢いをはるかに超えた急増ぶりに法務省は危機感を持ち、今年の犯罪白書で「高齢犯罪者の実態と処遇」を特集した。
団塊の世代が高齢者のとば口に立つ今、手を打たなければ大変なことになると考えてだが、高齢犯罪の急増を押しとどめる奥の手・決め手があるわけでは、無論ない。
白書から引けば、「福祉制度の拡充、住まいの場の拡充、就労支援、地域社会の協力などの取り組みと、刑事司法機関の取り組みとを密に連携させながら、社会全体で対策を講じていく」しかあるまい。
警察による犯罪抑止策や治安対策、刑務所での矯正教育など「刑事司法機関の取り組み」だけで問題が片づかないのは、白書が試みた高齢犯罪の分析からも明らかだ。事件の訴訟記録を調べると「経済的不安」「疎外感・被差別感」「あきらめ・ホームレス志向」が罪を犯した背景に浮かび上がる、と白書は指摘し次のように結論づけている。
「(犯罪を重ねる)犯罪性が進んだ高齢犯罪者ほど、社会的な孤立や経済的不安といった深刻な問題を抱えており、このことが高齢犯罪者全般の主な増加原因である」
刑務所では、増え続ける高齢受刑者をどう扱うかの配慮に追われ、高齢受刑者の特性に合わせた矯正教育まで手が回らないのが現状といえる。食事や歩行など日常の生活に介助が要る人も多く、そこまででなくても体の動きが年齢相応に緩慢で他の受刑者と集団行動ができない例はいくらもある。いま3つの刑務所で高齢者専用のバリアフリー型収容棟を建設しているほどだ。
法務省の調査によると、満期出所した65歳以上の受刑者の約7割が5年以内に再入所する悲しい現実がある。これもまた、高齢犯罪の増加を止める対策を社会全体で講じる必要を訴えている。


