2020年03月26日

[東京新聞] 五輪延期と経済 影響精査し対応 迅速に (2020年03月26日)

新型コロナウイルス拡大による五輪延期が、国内経済にさらなる打撃を与えようとしている。官民共に膨大な調整を余儀なくされ損失は計り知れない。雇用などへの波及前に迅速な対応を求めたい。

政府と国際オリンピック委員会(IOC)の合意だと五輪は一年程度延期となる。これを受け日本側はさまざまな変更作業に着手するが、その間の経済的な損失は甚大だと指摘せざるを得ない。

インフラ面では、新競技施設について少なくとも一年分の維持費が発生する。既存施設を借りるケースでも、複雑なスケジュール調整が必要で、違約金などの問題が出る。ボランティアへの対応のほか、スポンサー企業や警備会社との契約も修正を迫られる。

五輪後に住宅となる選手村の居住希望者との契約も影響が避けられない。周辺地域のインフラ整備の計画変更も無視できない。

五輪施設関連については、まず国が前面に出て調整作業を進め、開催までの具体的な行程表を早急に提示すべきだ。現場の不安は日増しに高まるはずで、混乱が起きる前に対応策をまとめ、実行に移してもらいたい。

一方、運輸関連企業や宿泊施設、旅行業者など、すそ野が広い観光業界への影響も深刻だ。新型コロナの影響で売り上げが激減する中、五輪延期はとりわけ中小にとって致命傷になりかねない。

すでに中小のホテルやバス会社、飲食店などで倒産や解雇は始まっている。非正規労働者を中心に不安は頂点に達しているはずだ。五輪前に連鎖倒産や大規模なリストラが加速しないよう、これまで以上にきめ細かで効果的な資金支援が必要だろう。

空前規模の計画変更に伴い五輪予算全体は確実に膨らむ。追加負担の在り方についても、直ちに国と自治体が協議してしっかり再調整しなければならない。

五輪費用についてはこれまでも国や東京都、IOCなどの見解が分かれ決着にかなりの時間を要した。ただ国や自治体の負担増は国民負担に直結する。世界的な感染症拡大という想定外の事態であるにしても、安易な決定だけは許されない。

ウイルスとの死闘に打ち勝ち、盛大な五輪を開催することを多くの人は望んでいるはずだ。そこに至るためには、国際協調の下で可能な限りの対策を実行する必要がある。国内の暮らしの安定が五輪実現の前提であることを忘れてはならない。
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[東京新聞] 補助金一転交付 文化庁は反省と検証を (2020年03月26日)

愛知県が昨年開いた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」への補助金を不交付とした文化庁が、一転して交付を決めた。こうした混乱に至ったことを同庁は率直に反省し、経緯を検証するべきだ。

あいちトリエンナーレは、三年ごとの開催。昨年は、従軍慰安婦を象徴する「少女像」などからなる企画展が、「反日」といった激しい抗議を受けてわずか三日で中断する異常な状況となった。

文化庁は愛知県に補助金七千八百万円を交付する予定だったが、手続き上の不備があったとして、全額の不交付を決定した。芸術家や識者らからは「事実上の検閲」と強い抗議の声が上がった。県側も訴訟を辞さない方針だった。

だが文化庁は今月二十三日、約千百万円を減額するものの、補助金を交付することを表明。いったん内定した補助金の交付を一方的に取り消し、さらにそれを撤回するという極めて異例な事態だ。

これを受けて識者からは、今回の決定を歓迎しつつも、どのような論理で不交付を撤回したのか明らかにするよう同庁に求める声が上がった。もっともだろう。

企画展に対しては、賛否が大きく分かれた。自由な社会において芸術作品に多彩な見方や意見があるのは当然だが、残念ながら否定する人の側には、テロ予告など表現や言論の自由を脅かす言動もあった。そうした状況の下で文化庁がまず行うべきは、有形・無形の圧力や暴力に抗して、表現者の側に立つことではなかったか。

だが同庁が実際に取ったのは、愛知県側の不備をとがめる対応であり、問題行動を黙認する結果にもなったと言わざるをえない。その点、深い反省を求めたい。

そもそもなぜ補助金は不交付とされたのか。政府は「文化庁の判断」としてきたが、そこに企画展を問題視した政治家などの介入はなかったのか。逆に、そうした意見に対する同庁の側からの過度な「忖度(そんたく)」はなかったのか。

同庁が今後、自主的で自律的に施策を遂行するためにも、不交付の決定から撤回までの経緯を検証し、公開することが必要だろう。

一九六八年の設置から半世紀あまりとなる文化庁。人が人らしく生きる上で大切な文化の営みに関わる官庁だが、一方でこの間、かけがえない歴史遺産である高松塚古墳(奈良県)の壁画の劣化を糊塗(こと)し、信頼を失いもした。今回の問題でも自らを戒め、今後の文化行政に適切に反映させてほしい。
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[産経新聞] 【主張】東京五輪延期 日本は成功に責任を負う まず感染の収束に力を尽くせ (2020年03月26日)

この夏に開催が予定されていた東京五輪・パラリンピックが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を受け、1年程度延期されることになった。感染拡大が収まらない現状をかんがみれば、妥当な判断である。

代表選手選考や会場、人員の確保、組織の維持や膨らむ経費負担など課題は山積する。だが、中止という最悪の選択は避けられたのだ。意を新たに、再スタートを切らなくてはならない。

≪「人類の祝祭」の実現を≫

延期の決定に、驚かされたことが2つある。

1つは、安倍晋三首相が国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長との電話会談で「大会の1年程度延期の検討」を提案し、バッハ会長がこれに「百パーセント同意する」と応じたことだ。

これで事実上、大会の延期は既定の方針となり、その後のIOC臨時理事会で承認された。

五輪マラソン・競歩コースの札幌変更に代表されるように、これまで五輪組織委員会や東京都は、いわばIOCの言いなりだった。異を唱えることは、はばかられる空気もあった。

世界的な新型コロナウイルスの感染拡大を受けた五輪の大会日程についても、「決定権はIOCにある」との声ばかりが聞かれた。IOC会長が開催国首脳の提案を受け、理事会を経ずに重大な決定を示唆したこと自体、極めて異例である。

安倍首相はバッハ会長との電話会談に先立ち先進7カ国(G7)首脳テレビ電話会議で、東京五輪を「人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証しとして、完全な形で実施する」と訴え、一致した支持を取り付けていた。

延期の決定後、バッハ会長は東京五輪について「新型コロナウイルスによる前例のない危機を克服した人類の祝祭となる」と述べた。これはG7における安倍首相の発言を受けたものだろう。

東京五輪はこれで、感染症との戦いの象徴として新たな意義、使命を持った。安倍首相が世界に向けて発信した公約ともいえ、成功に責任を負う立場となった。

まず力を尽くすべきは、感染拡大の収束である。国内では政府の専門家会議が爆発的に患者が急増する「オーバーシュート」の懸念を示しており、五輪開催地の東京でも感染者が増え続けている。感染拡大との戦いは、国民の協力を抜きには成り立たない。

1年を経ても世界的流行が収束していなければ、五輪を開催することはできない。治療薬やワクチンの開発に向けても、日本がリードすることが求められる。

≪聖火走者は歓声の中で≫

2つ目の驚きは、IOCの決定に対して世界陸連や国際水泳連盟といった主要競技団体がいち早く賛同の意を示したことだ。

来夏には米オレゴン州で世界陸上、福岡市で水泳の世界選手権といった大イベントが予定されており、これが五輪1年延期の最大の障壁となるとみられていた。だが両連盟は、柔軟に日程変更を検討することまで表明した。

米国での放映権を独占するNBCユニバーサルや大スポンサーの米コカ・コーラなども延期の決断を支持した。

五輪の価値が認められたということである。各競技団体の世界大会の隆盛や、大会経費の肥大化などから五輪の地盤沈下が声高に言い立てられ、開催立候補都市の確保にもIOCは苦心していた。

それでも五輪の窮地に、水陸の連盟をはじめとする各勢力が一致して賛意の声を上げたのだ。東京五輪は成功すれば、迷走する五輪ムーブメントに一定の方向性を示すことができる。

世界のスポーツ界にその機運がある今、日本のスポーツ界にこれをリードする気概が求められる。延期をめぐる動きの中で全く存在感を示せなかったことを、まず反省すべきだろう。

バッハ会長はまた、「聖火は希望の象徴として日本に残り、暗いトンネルの出口を照らす光になる」とも述べた。

大会の延期を受けて26日にスタートする予定だった聖火リレーも中止となった。これも妥当な判断だった。現状はいまだ、感染症との戦いのトンネルの中にある。

聖火は沿道の歓声、祝福を受けて走者の手から手へ受け渡されてほしい。来年、日本中で、そうした幸せな光景をみたい。
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[毎日新聞] 東京五輪1年延期 乗り越えるべき課題多い (2020年03月26日)

東京オリンピック・パラリンピックは来年まで1年程度、延期されることが決まった。

過去には1940年の東京五輪など、戦争のために大会が中止になったり、返上されたりした例がある。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続く中、延期はそれに匹敵する史上初の事態だ。

年内の延期は感染の終息に見通しが立たず、2年後なら代表選考が白紙に戻される。2年分の経費も大きい。そう考えれば、来年への延期はおおむね納得がいく結論といえる。

ただし、1年程度でパンデミック(世界的大流行)が収まる確証はない。大会には200を超える国・地域が参加する。国際的な人の出入りを伴う以上、選手や観客の安全を保証できることが開催の大前提だ。


実力発揮できる環境を
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競技面では、1年の期間が空くことで、代表の再選考を行う競技も出てくるはずだ。

選考のやり直しとなれば、代表に決まっていた選手はコンディションや精神面でも再び負担を強いられる。一方、チャンスが生まれる選手もいる。競技団体は、実力が発揮できる環境を整え、不公平感が生じない方法に知恵を絞ってほしい。

組織委員会には、運営面で乗り越えるべき課題が山積している。競技施設の確保、宿泊・輸送の手配、ボランティアの募集、聖火リレーなど大半の作業がやり直しになる。

これまでの準備で指摘された問題点を改善する契機にしたい。酷暑を避ける日程や競技時間はぜひとも再検討してほしい。水質汚染が問題となったお台場海浜公園のトライアスロン会場や、札幌へのコース移転が決まったマラソンと競歩も、課題を洗い出す必要がある。

延期に伴う追加費用の負担問題も重要なテーマだ。大会予算として、組織委、東京都、政府を合わせて総額1兆3500億円が計上されている。追加費用は数千億円に及ぶとみられる。別に予備費が270億円あるが、それではとても賄えない。

やみくもな経費膨張は許されない。削減の努力は必須だ。早期に追加コストを算定し、どこが負担するのかを決定すべきだ。

組織委の財政に赤字が出た場合は都が肩代わりし、それでも不足する時は国が補塡(ほてん)することが決まっている。とはいっても、国民の税金だ。透明性の確保に加え、積極的な情報公開が求められる。

関連行事や宿泊のキャンセルは多方面で悪影響を及ぼすだろう。感染拡大の影響で景気が後退する中、五輪の延期はそれに追い打ちをかける。政府は影響を受ける企業への支援も含め、国内経済への打撃を緩和させる救済策にも取り組まなければならない。


政権の「遺産」ではなく
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今回の決定過程では安倍晋三首相が前面に出た。中止になれば、経済などへのダメージは大きい。最悪の事態を避けるために、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長との直談判に動き、延期の流れを作った。

開催目標を「来年夏まで」としたことについては、来年9月までの自民党総裁任期を意識したもの、との指摘がある。政権の総仕上げに五輪を利用する思惑があるのかもしれない。しかし、五輪は政権の「遺産」を残すために開催するのではない。

予定通りの開催にこだわっていたIOCには、各国の選手やオリンピック委員会から批判の声が相次いだ。ビジネスの契約や損失ばかりに気を取られ、他のスポーツ大会との日程調整が進まなかった。

感染拡大の現実を直視せず、通常開催を強調し続けたのは日本の関係者も同様だ。選手不在の「商業五輪」では原点を忘れている。

五輪は、スポーツを通じて平和な社会づくりに貢献することを目指す。今回は戦争ではなく、世界的な感染症との闘いだが、人と人とを結びつける点で本質は変わらない。

グローバル化に歩調を合わせて五輪は発展してきた。ウイルス感染が広がり、渡航制限や外出禁止で世界の人の流れは分断されている。だが、感染が収まれば、スポーツは世界の人々をつなぎ、活気づける役割を果たさなければならない。

大会が中止にはならず、舞台が残ったことを前向きにとらえたい。世界の人々から祝福される祭典にするためにも、安心してスポーツを行い、観戦できる環境の整備に万全を期すべきだ。
posted by (-@∀@) at 12:20| Comment(0) | 毎日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[読売新聞] 五輪1年延期 開催実現へ手立てを尽くそう (2020年03月26日)

◆経済悪化を防ぐ目配りが必要だ◆

世界的なスポーツの祭典の実現に向けて、あらゆる手立てを講じていくことが求められよう。

今夏の東京五輪・パラリンピックについて、安倍首相は国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長と電話で会談し、1年程度延期して開催することで合意した。IOC臨時理事会も承認した。

電話会談は日本政府から打診した。早期に方向性が示されないと中止論が出かねないとの危機感があったのだろう。

◆感染抑止策に全力を

安倍首相は1年程度の延期を提案し、同意を取り付けた。自身の自民党総裁任期中の開催が可能になったと言える。

新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。五輪開催を目指すには、まずは世界各国が協力して治療薬の開発などにあたり、沈静化を図らねばならない。

特にホスト国となる日本は、首都・東京を中心に感染抑止対策を徹底する責任がある。海外の選手や大会関係者、観客が安心して日本を訪れられるように、医療・防疫体制を整えるべきだ。

世界の選手たちは、ウイルスの感染拡大に伴い、練習や試合に様々な制約を受け、不安な日々を過ごしてきた。中止ではなく延期という形で開催のめどが示されたことは、多くの選手に歓迎される結果と言えるのではないか。

選手たちには気持ちを切り替えて、新たな目標に向かって努力を続けてもらいたい。

すでに日本代表に内定した選手は100人を超える。卓球では、男女計6人の代表を代えない方針だが、競技によっては選考のやり直しが検討課題に上っている。

◆選手のサポート万全に

1年の延期により、体力面などに影響が出る選手もいるだろう。コンディション作りのサポートが欠かせない。選考をやり直す場合には、選手の理解を十分に得た上で、公正で透明性のある手続きを踏むことが不可欠である。

当面の課題は、新たな大会日程を確定することだ。

来年の7、8月は、水泳と陸上の世界選手権の開催と重なる。世界陸連は、五輪が1年延期された場合に「日程を変更する用意がある」との声明を発表した。IOCは各競技団体と十分協議し、日程の調整に努めてほしい。

日程が固まった場合、五輪の試合会場を確保し直す必要がある。来年の利用の予約がすでに入っている施設は少なくない。

大会組織委員会は五輪開催の意義を改めて説明し、会場確保に協力を求めていかねばならない。確保できない時には、会場の変更も視野に入れるべきだろう。

一方で、完成した国立競技場などの施設については、五輪開催までの期間に、可能な範囲でスポーツ大会などに活用することを検討してもいいのではないか。

延期に伴い、新たな費用が発生することが予想される。

大会経費は組織委、東京都、政府の3者で合わせて1兆3500億円に上る。競技に使用予定だった複合施設のキャンセルによる違約金が発生する可能性がある。

組織委の職員は、今夏の開催を前提に省庁や企業から集められている。任期を延長したり改めて出向者を確保したりする場合には、新たな人件費が要る。

販売済みのチケットは数百万枚に上る。チケットの取り扱い如何(いかん)では、払い戻しを検討しなければならない場面も出てこよう。

◆懸念される追加負担

追加経費について、東京五輪の計画書類では、組織委が資金不足の場合には都が負担し、それでもカバーできなければ政府が補填(ほてん)することになっている。3者は協議を重ねて解決策を見いだす努力を惜しまないでほしい。

五輪の延期が日本経済に及ぼす影響も懸念される。

今夏に予定した観客がいなくなることで、観光業やサービス業、グッズの販売など幅広い業者が打撃を受けるのは避けられない。

最大2兆円と見込まれた五輪開催による経済の押し上げ効果が、2021年度に先送りされるとの試算も出ている。

ウイルスの感染拡大の影響に、五輪開催延期のダメージが重なることにより、景気の減速に拍車がかかりかねない。

政府は20年度当初予算案の成立後、大規模な経済対策を打ち出す方針だ。家計に対する支援や企業への助成といった景気の下支え策が中心となる。

多くの企業が事業縮小や倒産に追い込まれないよう、しっかり目配りすることが重要だ。
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[朝日新聞] 五輪1年延期 コロナ収束が大前提だ (2020年03月26日)

東京五輪・パラリンピックの開催が、「1年程度」延期されることになった。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と安倍首相が合意し、IOCの臨時理事会も満場一致で承認したという。

「延期を含めて検討」「4週間をめどに結論」との方針が打ち出されてからわずか2日。まさに電光石火の決定だ。年内開催、2年延期などの案も取りざたされたが、なぜ1年延期を適当と判断したのか、それぞれのメリット・デメリットをどう勘案したのか、詳しい説明がないままの表明となった。

新たな開催時期を固めないことには、延期に伴う様々な課題の解決策も見いだせない。不安を募らせる各国の選手たちを落ち着かせたい。そんな事情もあったのだろうが、「中止」だけは何としても避けたいIOCと日本政府の思惑が、早期決着で一致したと見るべきだ。「21年夏」で動き出せば再延期は考えられない。両者は大きなリスクを背負ったことになる。

待ち受けるのは、これまで6年かけて準備してきたもろもろを、たった1年でつくり直すという厳しく困難な作業だ。他の国際大会との日程調整に始まり、競技会場や運営ボランティア、宿泊先、輸送手段などの再確保、警備計画の見直しなど、挙げていけばきりがない。

最大の課題がコロナ禍の収束であるのは言うまでもない。首相がいう「最高のコンディション」「安全で安心な大会」を実現する大前提である。日本はもちろん、全世界でこの問題が解消していなければ開催はおぼつかない。国内対策の推進とあわせ、開催国としてどのような貢献ができるか、しなければならないか、政府は検討し、実践していく必要がある。

財政問題も重要だ。ただでさえ総経費が当初言われていたものより大きく膨らんでいるなか、延期によってどれだけの額が上乗せされるのか。それを誰が、どうやって負担するのか。都民・国民の財布を直撃する話だ。見通しをできるだけ早く示すことが求められる。

この国では、目標の達成を優先するあまり、正当な疑問や異論も抑えつけ、強引に突き進む光景をしばしば目にする。そのやり方はもはや通用しない。情報の開示―丁寧な説明―納得・合意の過程が不可欠だ。

一連の経緯を通じて、テレビ局やスポンサーの巨大資金に依存し、肥大化を続けて身動きがとれなくなっている五輪の姿が浮かび上がった。仕切り直し開催に向けた準備とは別に、五輪のあり方を根本から考え直す機会としなければならない。
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[朝日新聞] NHK経営委 現体制では原則守れぬ (2020年03月26日)

今の経営委員会の体制で運営を続けることは不適切である。少なくとも委員会幹部が明確に責任をとらない限り、放送の自主自律という原則について疑問符がぬぐえないだろう。

かんぽ生保による不正販売の報道をめぐり、NHKの経営委が当時の会長を厳重注意するまでの経緯がわかってきた。2018年秋に開かれた会合の資料を、経営委が公表した。

日本郵政グループから申し入れを受けた経営委は、当時の上田良一会長を出席させ、その場で番組を批判していた。「作り方に問題があるのでは」「一方的になりすぎた気がする」などの発言があったという。

放送法は、番組作りについて「何人からも干渉され、又(また)は規律されることがない」と定め、経営委員が個別の番組編集について、その規定に抵触することを禁じている。

国会の同意を得て首相が任命する経営委員と、実際に番組を作る執行部との間に厳格な一線を引くことに重い意味があり、NHKという公共の報道機関の根幹を成すルールである。

しかし会合での発言内容について、当時、委員長代行だった森下俊三・現委員長は、あくまで「意見・感想」にすぎず、番組への干渉には当たらない、と主張している。

それがNHKの最高意思決定機関としての認識であることに慄然(りつぜん)とする。報道に不満をもつ取材対象から申し入れを受け、番組作りに苦言を呈した行為をどう正当化できるのか。

しかも朝日新聞の取材によると、森下氏自身が会合で、番組の取材を「極めて稚拙」と評するなど、批判的な議論をリードしたとされる。放送法に基づく基本原則を理解できていない委員長が、このまま職責を適正に果たせるとは考えにくい。

問題が発覚してから半年あまり、経営委の説明は変転してきた。「透明性の観点から考えれば、議事録で公表すべきだったと反省している」というが、いまだに発言者名などの詳細は明らかにしていない。

今後については、番組についての発言が疑念を招かないようにするとしつつも、「状況によっては意見を述べ合うこともある」と含みも残した。経営委は今なお問題の核心に向き合っているとは言いがたい。

NHKは4月からネット同時配信を本格的に始めるが、変わらぬ使命は、報道機関としてあらゆる権力を監視し、視聴者の知る権利を保障することだ。

外部からの一切の圧力に抗し、自主自律の原則を守る決意がなければ、NHKは存立の基盤を失う。経営委は見失った重責を改めて考え直すときだ。
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