2020年03月20日

[東京新聞] コロナ禍で苦境 先見えぬ中小の不安 (2020年03月20日)

新型コロナウイルス感染症の影響で中小企業の苦境が鮮明になっている。政府は資金繰り支援を打ち出したが、先が見えない状況に経営者の不安は消えず、切れ目のない対策が必要となろう。

東京商工リサーチが今月上旬に実施した新型コロナに関する調査では、中小企業(資本金一億円未満)の52・7%が「既に影響が出ている」と回答した。二月上〜中旬の前回調査と比べて32・1ポイントも上昇。業種別では、インバウンド(訪日外国人)消費の減少を受けた宿泊、旅行業などが大きな打撃を受けている。

一方、大企業(資本金一億円以上)で「既に影響が出ている」のは64・2%だった。海外で幅広く事業を展開する大企業の影響が先行し、今後はイベント中止などで中小企業へも影響が拡大するとみられる。実際、名古屋商工会議所には「昨日の夜の来店客はゼロだった」(飲食店)「ほぼ全ての商品が中国製で物が入ってこない」(文房具店)といった深刻な相談が続々と寄せられている。

東京商工リサーチによると、全国の二月の企業倒産件数(負債額一千万円以上)は、前年同月比10・7%増の六百五十一件で、六カ月連続で前年を上回った。三月十七日時点で、新型コロナに関連した倒産は北海道の飲食店や福島県の旅館など六件だが、同社担当者の「東日本大震災の後は、日を追うごとに被害が確定できた。今回は先が見えないことに対する恐怖があり、業種、地域を問わず影響が出てくる」との予想は、的外れなものとはいえない。

政府は十日に発表した緊急対策第二弾で、新型コロナで業況が悪化した中小・小規模事業者向けの新たな貸付制度を設けた。20%以上、売上高が減少した中小企業の場合、三年間は利子補給を受けることができる。余裕資金が乏しい中小企業にとり、日々の資金繰りは命綱で「緊急避難策として一定の評価はできる」(愛知中小企業家同友会)との声も上がる。

ただ、融資は返済しなくてはならない。中小企業団体担当者は「返済の必要がない助成金を求める声は多い」と明かす。景気が悪くなり、取引先の大企業から値引き要請を受けると、中小企業は断りづらい。負の連鎖が起きやすい弱い立場だ。中小企業の破綻が相次げば、融資する地域金融機関も無傷ではいられず、金融システム不安につながりかねない。官民一体で、谷が深い景気後退を避ける施策が何より必要だ。
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[東京新聞] 森友文書で提訴 改ざんの闇に迫らねば (2020年03月20日)

「森友学園」問題の闇はあまりに深い。文書改ざんを強要され自殺した財務省職員の生々しい手記が明るみに出た。妻が起こした訴訟で改ざんの実態や国有地売却の真相に迫らねばならない。

「元はすべて佐川(宣寿(のぶひさ))理財局長の指示です。パワハラで有名な佐川氏の指示には誰も背けないのです」−そんな言葉がつづられた手記や遺書を近畿財務局職員だった赤木俊夫さん=当時(54)=の妻が公表した。

二〇一七年二月に国会で国有地売却の疑惑を追及された安倍晋三首相が「私や妻が関係していれば首相も議員も辞める」と答弁した。赤木さんが公文書の改ざんを始めるのは、ちょうどその後だ。

手記には「学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するように指示があった」とある。国会で佐川氏が「(議員らからの)不当な働き掛けは一切なかった」と答弁した二日後だった。

「こんな事をする必要はない」と上司に涙ながらに訴え「相当抵抗した」ものの、上席国有財産管理官だった赤木さんは決裁文書から安倍昭恵首相夫人や政治家らの関与を示す部分を削除する作業を強制されたのだ。

国会が会計検査院に検査を要請した際には「検査院に資料を示さないよう本省から指示があった」とも。上司からは「元の調書が書き過ぎているんだよ」とも言われたと記されている。

「森友事案はうそにうそを塗り重ねるという、あり得ない対応を本省が引き起こしたのです」とも。「最後はしっぽ切り」との言葉は何とも痛々しい。

うつ病を発症し、一八年三月に赤木さんは自殺。同省は決裁文書の改ざんを認め、二十人を処分したものの、検察は佐川氏ら三十八人全員を不起訴とし、闇が残ってしまった。それゆえ妻は「本当のことを知りたい」と佐川氏と国に約一億一千万円の損害賠償を求め大阪地裁に提訴したのだ。

究明不足だったのは明らかだ。それでも財務省は「新事実はなく、再調査しない」と国会答弁した。「決着済み」などという不誠実な態度を許してはなるまい。検証チームをつくった野党は徹底的に真相に迫ってほしい。

もともと八億円の値引きという、ありえない国有地の取引が発端だった。新設の小学校の名誉校長は安倍首相夫人。もう一度、会計検査院などが不自然な経緯を洗い直すのも当然である。調査再スタートの契機とすべきだ。
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[産経新聞] 【主張】虐待死の父に判決 無念さ忘れず悲劇なくせ (2020年03月20日)

千葉県野田市の女児虐待死事件の裁判員裁判で傷害致死罪などに問われた父親に対し、千葉地裁は「尋常では考えられないほどに凄惨(せいさん)で陰湿な虐待」が長期に及んだと認め、懲役16年(求刑懲役18年)を言い渡した。

しつけなどと称する身勝手な言い訳を排した重い刑は当然である。

判決が「むごたらしい」とまで指弾した虐待をなぜ長期に許したのか。社会全体で判決を受け止め、幼い命が失われる悲劇の連鎖を断たねばならない。

痛ましい事件に改めて言葉を失う。死亡した栗原心愛(みあ)さんは当時小学4年、10歳だった。昨年1月、自宅浴室で死亡しているのが見つかった。

父親の勇一郎被告が冷水のシャワーを顔に浴びせ続けるなどして死亡させた。殴る、寝かせないなど、肉体的にも精神的にも虐待が繰り返され、心愛さんが衰弱した中でのことである。

被告側は具体的暴行などの一部を否認し、「しつけのつもりが行き過ぎた」「日常的な虐待はしていない」などと反論していた。

しかし判決は、被告の主張は客観性や脈絡がなく、不自然で信用できないと退けた。

子供の虐待死事件をめぐっては過去の量刑傾向を斟酌(しんしゃく)し、求刑を大幅に下回る例があり、疑問が呈されていた。今回も量刑が注目されたが、判決は「前例を超えて極めて悪質性が高い」とした。関係者の証言を含め、客観的、冷静に判断した結果だろう。

判決が被告に対し「悲惨な結果をもたらしたすべての責任は被告にある」と断罪したのはもっともだ。虐待する親が一番悪い。

そのうえで判決の中では「児童を守る社会的なシステムがどうして機能しなかったのか」と慎重な表現ながら課題をあげた。児童虐待が絶えない中で真剣に考えねばならないことである。

事件について野田市がまとめた検証報告書では、心愛さんが児童相談所に一時保護されてから少なくとも十数回、行政機関が介入しなければならない状況があったと指摘していた。

判決ではまた「社会からも身内からも助けてもらうことができないまま、絶命した心愛さんの悲しみや無念さは察するに余りある」とも述べている。

すべての人が忘れてはならないことである。
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[産経新聞] 【主張】経済対策 大胆で効果的な手を打て (2020年03月20日)

政府が4月の経済対策策定に向けて検討作業を本格化させている。

新型コロナウイルスの感染拡大が世界中の経済を凍り付かせており、即効性のある財政出動は喫緊の課題である。効果的な政策を大胆に講じなければならない。

グローバルな人とモノの移動が制限されて企業の供給網が機能せず、暮らしも幅広く自粛を求められている。経験したことのない事態であり、前例にとらわれてはならない。

対応が不十分なら、不況の淵から逃れられなくなるという危機意識を持つことが重要である。

政府・与党では国民への現金給付などが検討され、消費税減税を求める与野党の声もある。政府は19日、有識者らから集中的に意見を聞く会合を始めたが、経済の実態をきめ細かく把握し、必要な施策を遅滞なく講じてほしい。

対策効果を高めるためにも、個々の施策のタイミングを適切に判断したい。優先すべきは、雇用を守り、所得減少を補う手立てに万全を期すことだ。ここが不十分では、感染が収束に向かっても景気回復はおぼつかない。

企業の資金繰り支援に不足があってはならない。18日には、経済的な打撃を受けた家庭に対する公共料金の支払い猶予や、個人事業主に対する緊急小口貸し出しの拡充なども打ち出したが、苦境が長引くことも想定しておかなければならない。内容や規模に不足があれば即座に見直し、拡充する柔軟さが必要である。

株価暴落などで極度に悪化した景況感を改善するには消費を上向かせる刺激策も欠かせない。ただし、政府が国民に自粛を要請している段階でアクセルを踏み込んでも、空ぶかしに終わりかねないことには留意がいるだろう。

現金給付はリーマン・ショック後、1人当たり1万2千円を支給したのと同様の措置である。同じ額では足りないという指摘や、逆に現金を給付しても貯蓄に回るだけだという慎重な見方もあり、精査が必要だ。消費税や所得税、固定資産税などの減税も含めて検討を急いでもらいたい。

トランプ米政権が1兆ドルの財政出動を検討するなど各国もこぞって経済対策を検討中だ。先進7カ国(G7)首脳は金融、財政などあらゆる政策手段を用いることで一致した。各国と足並みをそろえる視点も忘れてはならない。
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[毎日新聞] 新型コロナの拡大防止 瀬戸際は今も続いている (2020年03月20日)

外出禁止や国境封鎖など、多くの国で新型コロナウイルス対応の強硬策が打ち出されている。

日本はそこまでの状況にないと見ている人が多いかもしれないが、現状は決して楽観できない。

19日に政府の専門家会議がまとめた提言からは「このままでは、ある日突然、爆発的な患者急増が起きかねない」との懸念が伝わってくる。

根拠は、都市部を中心に新たな感染者が漸増している地域があり、東京などで感染源のわからない感染者が増加していることだ。見えない感染が広がっている可能性があり、爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながりかねないという。

これを防ぐために大事なのは誰もが「人が集まる換気の悪い場所を避ける」という感染防止の基本行動をこれまで以上に徹底することだ。

このメッセージが届きにくい若者らにどう伝えるか、工夫がいる。結果的に影響を受ける業種には政府が支援策を打ち出す必要もある。

感染クラスターの早期発見・早期対策の拡充も欠かせない。地方自治体間の連携強化や、クラスター対策のための迅速な情報共有も進めなくてはならない。3連休に大阪・兵庫間の不要不急の往来を控えることも感染拡大防止策の一環だろう。

今後も感染者が増えることは確実で、それに備えた医療体制を確立することも急務だ。それには一般医療機関の協力も欠かせない。

検査結果が陽性でも無症状や軽症の人は原則として自宅療養とすることは理にかなう。そうすれば限られた医療機関のベッドを入院が必要な人に優先的に使うことができる。

感染疑いの人を積極的に検査することもできるようになり、国内の感染状況もよりはっきりするだろう。高齢者と同居しているなど自宅療養が難しい人のための対応も必須だ。

専門家会議の提言は科学や医療の観点から感染爆発を防ぐために重要だ。一方で、すでに社会には「自粛疲れ」が見えている。

新型コロナの特徴を考えると、世界的流行は今後、長期間続くだろう。終息までの間、社会的・経済的影響を抑えつつ、医療を支えるには、対応策も持続可能でなくてはならない。そのための知恵が、政府にも企業や市民にも、求められている。
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[毎日新聞] 「森友」で遺族が提訴 佐川氏は真実を語る時だ (2020年03月20日)

「どうか本当のことを話してください」という遺族の声が重く響く。

「森友学園」への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で、一昨年自殺した近畿財務局職員、赤木俊夫さんの妻が国と佐川宣寿(のぶひさ)・元国税庁長官に損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。

森友問題は未解明な点を置き去りにしたまま、安倍晋三首相らは幕引きを図ってきた。遺族の思いに応えるためにも、今回の裁判を改めて真相究明していく契機としたい。

赤木さんが残していた手記や遺書も公開された。そこでは改ざんに関し「元はすべて佐川氏の指示」と明記している。改ざんに抵抗する赤木さんに当初理解を示していた近畿財務局の上司も本省の圧力に屈していく経緯も詳しく記されている。

財務省幹部の国会答弁を「嘘(うそ)に嘘を重ねる」とも記す。同時に改ざんに手を染めざるを得なかった苦悩や、「とかげのしっぽ切り」のように下部職員だけが摘発されるのではないかとの不安がつづられている。

ところが驚くことに、麻生太郎副総理兼財務相は「新事実はない」と再調査を拒む考えを早々に示した。首相も「財務省で事実を徹底的に明らかにした」「改ざんは二度とあってはならない」と人ごとのようだ。

確かに一昨年、同省がまとめた報告書でも、改ざん当時、同省理財局長だった佐川氏が「改ざんの方向性を決定づけた」と認めている。だがなぜそんな違法行為に至ったのか、動機や経緯は今も明らかではない。

改ざんは、国有地の大幅値下げ売却について、安倍首相が「自分や妻昭恵氏が関係していたら首相も国会議員も辞める」と国会で答弁した後に始まった。そこで昭恵氏らの名が出てくる記述などが消された。

佐川氏は、首相らの関与が疑われるのを避けようと忖度(そんたく)したのか。あるいは官邸などからの指示があったのか。これこそが問題の核心だ。

大阪地検特捜部も結局、佐川氏らを不起訴とし、捜査を終結した。このため裁判では佐川氏ら関係者の尋問を求めていくという。

以前の国会での証人喚問で、佐川氏は「刑事訴追の恐れがある」と証言を拒み続けた。今回の裁判以外にも再度の喚問や記者会見の方法もある。今度こそ真実を語る時だ。
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[読売新聞] 野田虐待死判決 際立った悪質性を重くみた (2020年03月20日)

「酌量の余地などみじんもない」。類を見ない凄惨(せいさん)な虐待を判決は厳しく指弾した。

千葉県野田市で小学4年の栗原心愛さんが虐待を受けて死亡した事件の裁判員裁判で、千葉地裁は、父親の勇一郎被告に懲役16年の判決を言い渡した。傷害致死など六つの罪に問われていた。

心愛さんは1年以上にわたり、日常的に暴行を受けた。死の直前は食事を与えられず、睡眠も十分に取らせてもらえなかった。「尋常でない陰湿な虐待だ」と判決が批判したのはもっともだ。

子供の虐待死事件では懲役10年前後の量刑が多い。今回の判決がこれを大きく上回ったのは、犯行態様の悪質性を裁判員が重くみた結果と言えよう。

被告側は公判で、数々の虐待について「あくまでしつけのつもりだった」などと主張した。だが、被告は本来、親として子供を大切に育てる立場にあった。

判決が「不合理な弁解に終始し、自らの罪に向き合っていない」と断じたのは無理もない。

事件を機に児童虐待防止法が改正され、「しつけ」と称した親による体罰の禁止が明記された。4月から施行される。

「しつけのために体罰が必要だ」と考える親は少なくない。子供の心身に深い傷を残す体罰は犯罪行為に匹敵するということを、改めて認識しなければならない。

事件は多くの教訓を残した。児童相談所や教育委員会、学校は心愛さんの虐待に関する情報を把握しながら、危機感を共有できず、適切に対応しなかった。

児相は心愛さんを一時保護したのに、虐待の危険性を十分検討せず解除した。その後、一度も心愛さんの自宅を訪問しなかった。

心愛さんが虐待を訴えた学校アンケートのコピーを、市教委は被告に渡してしまった。学校は長期欠席を重く受け止めなかった。

千葉県の検証委員会は「救える命だった」と指摘した。悲劇を繰り返さぬよう、全国の関係機関は連携を深めて、虐待を早期に発見し、子供を守る必要がある。

全国の児相が2018年度に児童虐待の相談・通告を受けて対応した件数は、過去最多の約16万件に上る。家庭調査や一時保護を担う児童福祉司が不足している。児相の体制整備が欠かせない。

今月には埼玉県で4歳の女児を放置して死亡させたとして両親が逮捕された。児童虐待に対して、警察は児相と協力し、目を光らせてもらいたい。
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[朝日新聞] 森友問題 真実知りたいに応えよ (2020年03月20日)

意に反する不正行為を強いられ、公務員としての矜持(きょうじ)も砕かれた。その無念はいかばかりであったか。いまだ解明されていない森友問題の真相に迫る新たな動きにつなげねばならない。

森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざんに加担させられ、自ら命を絶った近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54)の妻が、国と当時の理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)氏に損害賠償を求める訴えを起こした。

弁護団が公表した赤木さんの手記には、本省主導で公文書が改ざんされていく過程が、関係者の実名入りで詳細に記されていた。すべてが佐川氏の「指示」であるのに、近畿財務局に責めを負わせようとする財務官僚の無責任体質への怒りもつづられていた。

麻生財務相はきのうの記者会見で、18年に財務省が公表した調査報告書と手記の内容に「大きな乖離(かいり)」はないとして、再調査を行う考えはないと述べた。報告書では、佐川氏が改ざんの「方向性を決定づけた」と認定しているが、具体的な指示があったのか、佐川氏の一存だったのかなど、肝心な点ははっきりしていない。

そもそも、第三者が入らぬ財務省の内部調査である。首相官邸や森友学園の名誉校長だった安倍首相の妻の昭恵氏らからは話も聞いていない。そして、この問題の核心である国有地の大幅値引きについては端(はな)から何も調べていない。全容解明に程遠い報告書を盾に、再調査を拒むのは不誠実極まりない。

佐川氏には法廷で真実を話すとともに、国会でも説明責任を果たしてもらわなければならない。国民共有の財産である公文書が改ざんされ、国民を代表する国会の審議がうその資料と答弁の上に重ねられた。大阪地検の捜査は関係者の不起訴で終わっているが、立法府の行政監視機能がないがしろにされたのである。国会が真相解明に後ろ向きであってはならない。

「(国有地売却に)私や妻が関係していれば、首相も国会議員も辞める」。改ざんは首相がこう言い切った国会答弁の後に始まった。首相は手記をどう受け止めるのか。国会できのう「胸が痛む」としながらも、事実関係は麻生氏の下で徹底的に解明されているとの認識を示した。この問題をもう終わったことにしたいのだろう。

赤木さんの妻が公表したコメントにはこうある。「夫が死を選ぶ原因となった改ざんは、誰が誰のためにやったのか、改ざんをする原因となった土地の売り払いはどうやって行われたのか、真実を知りたい」。この切実な声に応えずして、首相への信頼回復はない。
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[朝日新聞] 震災の遺構 二つの思いの葛藤抱え (2020年03月20日)

悲惨な出来事を思い出したくない。だが忘れることはできないし、忘れて欲しくない。

この9年間、東日本大震災の被災者は二つの思いの中で葛藤を重ねてきた。いわゆる震災遺構をめぐる議論はその象徴だ。

宮城県気仙沼市の気仙沼向洋高校の旧校舎には、開館1年で約8万4千人が訪れた。

津波は4階にまで達した。生徒はその前に高台に避難し、残った教職員も屋上に逃げてかろうじて助かった。流されてきた冷凍工場がぶつかって崩れた外壁、ひっくり返ったままの教室内の車など、一つひとつが津波の脅威を後世に伝える。

半面、こうした遺構は被災者につらい記憶を呼び起こす。保存か解体かをめぐり、住民の意見が割れることもある。

石巻市の旧門脇(かどのわき)小は、車やがれきが炎上した「津波火災」を伝える数少ない建物だ。市は保存を考えたが、震災4年後に地元出身者を対象にしたアンケートでは、解体を望む意見が半数を占めた。これを踏まえ、校舎は一部だけ残し、周囲に植栽を施して、住宅地から目に入らないようにすることにした。

だが工事が近づくと、今度は保存の訴えが多くあがった。津波と火災はどう襲ってきて、住民はどう逃げたのか、全体が残っていないと伝わらないとの指摘だ。「復興が進むにつれて考えが変わった」。住民説明会ではそんな意見も出た。結局、計画は維持され、解体作業が昨秋始まり、今月で完了する。

震災の記憶が鮮明で生活もままならない時とその後とでは、被災者のとらえ方も微妙に異なる。建物は壊してしまえば元に戻せない。一方で住民の思いとの間に溝を抱えたままでは、遺構として整備しても目的である教訓の伝承に支障をきたす。

南三陸町も同じ悩みに直面した。被災した防災対策庁舎を解体する方針を決めたが、町内外からの反対の声を受け、31年まで結論を先送りすることにした。判断を急がず、次の世代に委ねるのは一つの知恵かもしれない。広島の原爆ドームも保存が決まったのは、被爆から20年以上が過ぎてからだ。

遺構を残す意義は、記憶と教訓を目に見える形で土地に刻むことにある。多くの犠牲者を生んだ石巻市の旧大川小校舎も残されることになり、周辺整備事業が近く始まる。震災伝承ネットワーク協議会によると、案内員や語り部がいる伝承施設は東北の被災4県で40を超す。

地震に限らない。噴火や風水害でも、何を、どうやって次代に引き継ぐかは、今を生きる世代の責務だ。東日本大震災の被災地の悩みや試行錯誤もまた、将来への大切な教訓となる。
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