2020年03月13日

[東京新聞] 父親は逆転有罪 被害実態に沿う判断だ (2020年03月13日)

当時十九歳の実の娘への準強制性交罪に問われた父親に名古屋高裁は実刑を言い渡した。無罪の一審判決は抗議デモを呼んだ。被害実態に沿う判断を機に、性犯罪への司法のあり方を深く考えたい。

怒りをおぼえる事件である。一審・名古屋地裁支部判決は娘が中学生当時から父親は性的虐待を繰り返していたが「性交の強要を拒めた時期もあった」として「抵抗が極めて困難な『抗拒(こうきょ)不能』(同罪の構成要件)に当たるとまではいえない」と無罪とした。

これを含めて性暴力への無罪判決が昨年三月だけで全国の地裁で四件連続。抗議の「フラワーデモ」が同年四月に東京で始まった。今では名古屋など全国で、毎月、デモ行進が行われている。参加者は「不当な判決で被害者が泣かなくて済むように」と訴える。

二審・名古屋高裁は娘が「抗拒不能」だったかが争点。一審判決後に娘を鑑定した精神科医が検察側証人として「長年の性的虐待で娘は抵抗意欲を失っていた」と証言した。娘は医師に「ペットのように扱われた」と話したという。

判決で名古屋高裁は「抗拒不能」を認めた。一審判決を「抵抗が著しく困難だったことへの合理的疑いを検討していない」「事件は実子への性的虐待だという実態を十分に評価していない」と批判して無罪を破棄。求刑通り懲役十年の実刑を言い渡した。

刑法の性犯罪規定は二〇一七年に大幅な改正があったものの、裁判官の心証で認定が左右されやすい「抗拒不能」は、準強制性交罪成立の要件として残った。専門家によると、恐怖を植え付けられた被害者は、加害者に迎合するような態度を取り、抵抗していないように見える場合がある。受け入れられない現実に接し、感情や感覚を体から切り離す「解離」の状態になる場合もあるという。

性犯罪の審理では、裁判官ら法律家が、被害者と加害者の心理的な関係性などを十分に理解していないケースがあると指摘される。それゆえ、一七年の刑法改正では、裁判官らに性犯罪被害者の心理についての研修を行う、と国会で付帯決議されたが、実施率は低い。

刑法自体も、そうした実態を反映していないとの批判があり、同年の改正では「三年後(今年)をめどに、実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加える」と付則で述べ、見直しも示唆している。ぜひとも、迅速な議論を期待したい。
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[東京新聞] 新型コロナ 暮らし守る対策大胆に (2020年03月13日)

新型コロナウイルスの拡大に伴い、経済危機が深刻化している。家計、企業双方で底の見えない不安が広がり、資金循環が急激に勢いを失った。政府は減税を含む大胆かつ迅速な対策を打つべきだ。

新型コロナの影響は観光、運輸、流通だけでなくほぼ全産業に広がったとみていいだろう。すでに資金繰りに窮している中小企業や店舗は多い。正規、非正規を問わず、従業員の解雇という苛酷な道を選ばざるを得ない経営者も激増しているはずだ。

海外を中心とした旅行者激減による影響に加え、スポーツやコンサートなど、さまざまなイベントの自粛も国内経済への強烈な重しとなって顕在化し始めている。

急落を繰り返す株価など金融市場の激しい動揺も企業経営者の心理を一気に冷やしている。今後、経営者が賃上げや設備投資の抑制に走る姿は想像に難くない。

この間、政府は中小企業や仕事を休む保護者への賃金補填(ほてん)などを行ってきた。第三弾の対策も来月に実施する方針だ。

だがこれまでの対策は、各省がさみだれ式に行った上に規模も小さく打撃を止め切れていない。力強い情報発信という意味からも、首相がより前面に出て対策の全体像を国民に訴えかけるべきだ。

一方、日銀は潤沢な資金を市場に流すことで対応している。ただ一国の中央銀行だけでは効果は限定的だ。欧米や中国など主要国の金融当局者と深く連携した協調行動を起こしてほしい。

与野党内では消費税を視野に入れた減税論も浮上している。安倍政権は昨年秋に消費税増税を実施した際、「リーマン・ショック級の危機に見舞われた場合は延期もあり得る」との姿勢だった。

現在の危機はリーマン級といって差し支えない。もちろん将来の社会保障という課題はある。だが足元の経済が崩れれば元も子もない。消費税減税なども選択肢に含めた、柔軟で思い切った対策の検討を求めたい。

さらに中小企業支援については一刻の猶予もない。連鎖倒産が広がってからでは遅い。税金納付や借入金返済の期限猶予など、即効性の高い緊急施策を各省庁や各自治体、金融機関に要請したい。

いずれの経済危機でも、厳しい影響を受けるのは生活弱者や中小零細企業だ。内部留保を持つ大企業の多くは持ちこたえられるはずだ。照準を庶民目線に合わせた暮らし防衛策を強く期待したい。
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[産経新聞] 【主張】パンデミック 国際協調で鎮静化目指せ WHOは対中配慮を猛省せよ (2020年03月13日)

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の現状について「パンデミック(世界的大流行)といえる」と表明した。

世界全体で、感染者数は約12万人、死者は4千人以上に上っている。人類が異常事態に直面したことは明らかだ。

WHOの規定上は、パンデミックの公式な宣言はインフルエンザに対してのみ使用される。そこでパンデミックと形容することで事態の深刻さを訴えた。

今、最も必要なことは国際社会が協調して、中国・武漢発の新型コロナウイルスの脅威に立ち向かうことだ。

≪習氏は全情報の開示を≫

それにはまず、習近平政権が世界に対して全ての情報を開示する必要がある。これまでのように情報の隠蔽(いんぺい)が疑われるようでは、世界的な危機に対処できない。

日本は米国など先進諸国と足並みをそろえ、中国に対して国際的な調査団の受け入れを迫るべきである。

中国政府は12日、新たに確認される感染者が減り続けているとして、「中国での流行のピークは過ぎた」と表明した。習国家主席は10日、武漢市を視察した。ネットでは習氏や中国政府を批判する声が削除され、習氏の指導力をたたえるコメントがあふれている。

オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が「中国当局による隠蔽で世界の対応が2カ月遅れた」と批判したのは理にかなっている。本当に中国で流行のピークが過ぎたのか。天安門事件や新疆ウイグル自治区での弾圧をなかったことにしてきたのが中国政府だ。その対外発信を鵜呑(うの)みにはできない。

WHOは中国政府寄りになっている。ここは、日米など先進7カ国が協力して専門家からなる調査団を中国に派遣し、実態を見極める必要がある。圧倒的に感染者数が多いのは中国である。その正確なデータを共有できなければ有効な手を打てない。

アフリカなどの発展途上国は、医療態勢が整っておらず、感染症に極めて脆弱(ぜいじゃく)である。新型ウイルスの侵入が本格化すればひとたまりもない。

先進諸国は自国の対応に追われているが、途上国への支援も忘れてはならない。

トランプ米大統領は感染拡大を防ぐため、英国を除く欧州26カ国から米国への入国を、30日間停止すると発表した。これに欧州諸国は反発している。この局面で求められるのは対立ではなく協調であるはずだ。

WHOのテドロス事務局長は、今回のパンデミックは制御できるとの見解を示した。ただ、これまでの対応を見る限り、説得力を感じられない。

情報隠蔽を重ねてきた中国政府と歩調を合わせてきたのがWHOだ。感染拡大を招いた責任の一端があることを猛省しなければならない。

≪最悪の事態に備えたい≫

安倍晋三首相は「国際社会と協力し対応を強める。警戒を緩めることなく、必要な対策は躊躇(ちゅうちょ)なく決断して実行する」と語った。

政府が機敏に対応すべきなのはもちろんだが、都道府県や各地の医療機関、保健所、医師会などは国内での大流行という「最悪の事態」にも対応できる態勢を急ぎ整えてもらいたい。

地域によって患者の発生動向も高齢化の程度も病床数も異なる。政府からの指示待ちではいけない。当事者意識をさらに強め、地域住民の命を救うため万全を期してほしい。

検査の態勢整備が必要なことは言うまでもない。医師が必要だと認めた患者に検査ができないようでは適切な治療が施せない。

治療薬やワクチンの開発を急ぐべきである。既存薬が効けば早く使える。国内ではHIV(エイズウイルス)やインフルエンザの薬による臨床試験が始まった。良い結果が出ることを期待したい。

学校の一斉休校や大型イベントの自粛が続いている。家庭や経済へのダメージは否めないが、新型ウイルスの感染拡大を抑え込むためには、国民挙げての協力が必要である。

食事や睡眠、換気、手洗いなど日々の感染予防は何よりも大切だ。医療機関ができるだけ混雑しないようにすることも感染拡大の防止につながる。
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[毎日新聞] 「パンデミック」表明 冷静に長期化への対応を (2020年03月13日)

新型コロナウイルスを巡り、世界保健機関(WHO)が世界的大流行を意味する「パンデミック」の状態であるとの見解を示した。

本来はインフルエンザだけに使ってきた表現だが、国から国への感染拡大が制御できなくなったとの認識を特例的に示し、警鐘を鳴らした。

日本が取るべき対策の基本線は変わらない。感染者の正確な把握と拡大防止、重症者の治療、社会的な混乱への対処などに、国と自治体は冷静に取り組んでほしい。

WHOは折に触れて見解を出してきたが、司令塔機能は不十分だった。1月下旬の緊急委員会では中国以外でも感染者が出始めていたのに、各国に強力な措置を求める緊急事態宣言を一度見送った。今回も110以上の国・地域で感染が広がり、イタリア全土に移動制限が発令される事態になるまで決断しなかった。

2009年には、新型インフルエンザの感染拡大を踏まえてパンデミックを宣言したが、症状が想定以上に軽く批判を浴びた。その経験から今回、慎重になった可能性もある。ウイルスに未知な部分が多いとはいえ、初期段階での過小評価が各国の初動を遅らせた責任は重い。

このウイルスは致死率こそ高くないが、無症状の人からも広がり、時に重症化する。多くの患者が受診すれば医療崩壊を招く。公衆衛生の観点からは厄介な相手だ。

人、カネ、モノが国境を越えて移動する今、一国、一地域での感染にとどまることはありえない。専門家は長期化すると予測する。今後は各国が連携して対処すべきだ。

米政府は英国を除く欧州各国から米国への渡航を停止すると発表した。水際対策も重要だが、こうした動きは経済的打撃だけでなく国家間の摩擦を生むことにも留意したい。

日本でも感染拡大は止まらず、事態は予断を許さない。一方で、クルーズ船での失敗も含め、知見や教訓が蓄積されている。拡大のさなかにある国、これから広がる可能性のある国への協力も検討してほしい。

WHOは、パンデミックになったからといって封じ込めの努力をやめないよう呼びかけた。治療薬やワクチンの開発までウイルスとの闘いは続く。パニックを防ぎつつ、国家の枠を超えて知恵を共有したい。
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[毎日新聞] 震災後の原発政策 思考停止から脱却したい (2020年03月13日)

東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から9年が過ぎた。日本のエネルギー戦略は依然、迷走したままだ。電力の安定供給と地球温暖化対策の両立にどう道筋をつけるのか、全く見えない。

事故をきっかけに原発の「安全神話」は崩壊した。安全対策費の膨張で「低コスト電源」でもなくなった。震災前に54基あった原発のうち4割は廃炉が決まり、再稼働したのは9基だけだ。発電電力量に占める割合は震災前の約3割から3%に激減している。

安倍政権は原子力規制委員会の安全審査に合格することを条件に再稼働を推進してきた。だが、東電の柏崎刈羽原発(新潟県)は合格しても地元同意の見通しが立たない。まして原発の新増設は現実的ではない。

にもかかわらず、「原発回帰」にこだわる安倍政権は2030年度の原発の割合を20?22%とする目標を掲げ続けている。実現には30基程度の再稼働が必要で、電力業界でも「現実離れしている」と指摘される。

電力不足を起こさないように、石炭火力発電の増強で原発の「穴」を埋めてきた。今後も20基以上の新設が計画されている。

だが、石炭火力は温室効果ガスを多く排出する。地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の下、排出削減目標の上積みを求められる日本は石炭頼みをこれ以上続けられない。

政府は太陽光など再生可能エネルギーの普及も目指すが、天候に発電量が左右される弱点を克服し切れず、思うように伸びていない。

ジレンマは他国も同じだ。それでもドイツは福島事故を受けて22年までの脱原発を決め、パリ協定の目標達成に向けて石炭火力も38年までに全廃する方針だ。代わりに再エネの発電比率を5割近くまで高めた。

政策転換に伴う電気料金高騰などには批判がある。一方で、国民を巻き込んで問題解決を探ろうとする真摯(しんし)な姿勢は評価されている。

安倍政権は近く首相が議長を務める未来投資会議で新たなエネルギー戦略づくりに着手するという。

日本はこの9年間、「どの電源も大事だ」というだけで議論を避けてきた。これでは思考停止だ。「周回遅れ」を挽回するには、原発政策の抜本的な見直しが不可避だ。
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[読売新聞] 経済安全保障 政府は企業と連携し国益守れ (2020年03月13日)

情報通信分野の技術革新が進み、企業の活動が国家の安全保障に密接に関わるようになった。政府の戦略的な取り組みが欠かせない。

政府は来月、首相を議長とする国家安全保障会議(NSC)の事務局である国家安全保障局に、経済担当の新部署を設ける。安全保障が絡む通商政策などへの対応を強化することは妥当だ。

人工知能(AI)やビッグデータの普及は、あらゆる産業に変革をもたらした。技術面での優位性を保つため、米中両国の覇権争いは激しさを増している。

中国は、民間の技術を活用して国防力を強化する「軍民融合」を図っている。通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」などの中国企業は、次世代通信規格「5G」の整備で先行する。

これに対抗し、トランプ米政権はファーウェイなどを安保上の脅威と見なし、米企業の取引を禁じた。重要技術を輸出管理の対象とする法整備も進めている。

こうした国際環境を踏まえ、日本も対応を急がねばならない。

政府は通信機器の政府調達に関する指針を定め、外部流出などのリスクのある機器を排除した。

今後は、外国人投資家などによる日本企業への投資を規制する。宇宙や原子力など安全保障に関わる分野で、情報窃取を防ぐ狙いがある。適切に審査する体制を整えることが不可欠だ。

大学や研究機関などの情報管理が甘いとの指摘が出ている。官民が連携し、技術流出を防ぐ仕組みを構築することが大切だ。

米政府と意思疎通を図り、協調して取り組むべきである。

民間の経済活動や研究開発に過度に介入すれば、健全な競争を阻害しかねない。安全保障政策と、企業の競争力確保のバランスに留意する必要があろう。

早急に解決すべき課題は多い。政府は今国会に、国産ドローンの普及を後押しするため、開発予算を支援する法案を提出した。

ドローンの国内シェアは、中国製が大半を占める。災害対策や物流など幅広い分野に普及するにつれ、不正な情報収集や重要施設への攻撃に使われる懸念が高まる。着実に法整備を図りたい。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、中国からの部品調達が滞り、自動車メーカーなどは、減産に追い込まれている。

生産拠点の過度な偏りは、産業基盤を揺るがすリスクがある。サプライチェーン(部品供給網)の多様化が求められている。
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[読売新聞] パンデミック 世界が協調し感染拡大抑止を (2020年03月13日)

新型コロナウイルスの拡大について、世界保健機関(WHO)がパンデミック(感染症の世界的な大流行)と認定した。各国が協力して感染抑止に努めるべきだ。

新型ウイルスの感染は中国で始まり、韓国や日本に広がった。その後、イタリアなどの欧州やイラン、米国にも飛び火し、感染者は100を超える国や地域で12万人を上回っている。

2009年に新型インフルエンザが流行した際、WHOは早期にパンデミックを宣言したものの、かえってパニックをあおる結果になったと批判された。今回、WHOが慎重だった背景には、こうした事情があったのだろう。

パンデミックの認定で各国に義務は生じないが、感染者が出た国は対策の強化を促すメッセージと受け止める必要がある。

WHOは「まだあきらめるのではなく、封じ込めの努力を続けるべきだ」とも指摘した。各国が感染のスピードを抑えて医療体制を維持し、犠牲者をできるかぎり出さないことが大切だ。

WHOの表明後、トランプ米大統領は、英国を除く欧州からの入国を30日間禁止する異例の措置を発表した。感染が広がるにつれ、こうした措置を取る国が増えるのは、防疫体制を強化する観点からやむを得ない面がある。

重要なのは、入国制限を行うに当たり、相手国と十分な意思疎通を図り、理解を得る努力をすることだ。理性的な行動が無用な混乱や摩擦を防ぐことにつながる。

感染者の増加とともに、各国には多数の症例が蓄積されている。WHOを中心に、各国の医師や研究者が協力して症例を分析し、有効な治療方針を確立してもらいたい。ワクチンや治療薬の開発にも、国際協力が欠かせない。

医療体制が脆(ぜい)弱(じゃく)な発展途上国での感染拡大も懸念される。特に病院の少ないアフリカでは、被害が深刻化する可能性がある。先進国など余裕のある国は検査機器を送ったり、資金を援助したりして、途上国を支えてほしい。

欧州では、中国人が路上で「コロナ」と罵(ののし)られるなどアジア人に対する差別的な言動が目立つ。感染に対する不安が偏見を招かぬよう冷静な対応が求められる。

日本は現在、学校の休校や大規模イベントの自粛を行い、政府の専門家会議は「爆発的感染に至っていない。一定程度持ちこたえている」と評価する。引き続き、検査能力の拡充に努め、患者の確実な治療につなげたい。
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[朝日新聞] 東日本大震災9年 災害法制の早急な見直しを (2020年03月13日)

避難してきた人々が体育館で雑魚寝をする。災害時には見慣れた光景だ。昨秋の台風15号、19号のときもそうだった。

だが、なぜ、いつまでも変わらないのだろう。非常時だから仕方ないと思われがちだが、1週間以上も続くのはどうしたことか。被災者の人権がないがしろにされ過ぎている。

9年前の東日本大震災から、私たちは何を学んだのか。現場での問題を踏まえ、法律や制度はどこまで改善されたのか。

振り返ると、未曽有の大災害の経験を生かしていない実態が浮かぶ。

■めざせ「TKB72」

避難所をめぐっては「TKB72」という言葉がある。災害発生から72時間以内に、快適で十分な数の「トイレ」、温かい食事をつくれる「キッチン」、簡易な「ベッド」を提供する。

不潔なトイレや連日の冷めた飯、硬い床が健康を害し、災害関連死につながる。それを防ぐのに役立つ。イタリアなどでの実践例が報告されている。

国内ではなかなか進まない。より清潔な新型の仮設トイレや段ボールベッドを、拠点になる自治体が備蓄するか、すぐ調達できる段取りをつけておけば、事態は確実に改善される。避難所の運営を定める災害救助法の趣旨にも沿う。その資金を政府が助成するのは当然だろう。

復興でも課題は見えている。

ハード面での典型例が、津波被災地で街の再建に多用された土地区画整理事業だ。都市開発の手法で、権利調整や工事に時間がかかる。過疎の被災地で、しかもスピード重視の復興には適さないと言われ続けてきた。

いかに不向きだったかは、岩手県陸前高田市など沿岸部の多くの造成地に「空き地」が広がっているのを見れば明らかだ。

高台への集団移転も計画変更が多かった。人口が減る社会の「まちづくり」は難しいのだ。それに対応できる制度が、いま全国で求められている。

■現場の声が届かない

被災者の支援策でも、制度と現実に隔たりがあった。

たとえば被災者生活再建支援法。住宅の被害状況を全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊に分類し、最大で300万円を支給する。だが、半壊以下には一銭も出ない。半壊が28万戸を数えた被災地から悲鳴があがった。

全国知事会はすでに、国と都道府県が折半して、半壊世帯まで現金を渡す案を防災担当相に提言した。

立憲民主、共産など野党も、半壊へ支援を拡大する改正案を国会に提出している。

だが、実現していない。

この間、政府は応急修理の経費の一部を負担する制度改正などはした。しかし、小手先の対応というしかない。

もっと手厚い再建策を用意すべきだ。仙台弁護士会は被災地で実際にかかった補修費に基づき、支援額の上限500万円への増額を求めた。仮設住宅は建設から撤去まで1戸につき1千万円、公営住宅は2千万円かかる。500万円で自宅に住めるなら効率がいい。

そのうえ仮設住宅や公営住宅の戸数を減らせて、行政の負担も軽くなる。

南海トラフ地震や首都直下型地震では倒壊家屋が多すぎて、仮設住宅は用意できまい。自宅の補修で対応するのが現実的かつ合理的だ。早く制度を準備しておくべきだろう。

支援制度は複雑で、わかりにくい。

現状を踏まえて、関西学院大の災害復興制度研究所は昨年、応急救助から生活再建まで切れ目のない支援をめざす被災者総合支援法案を提言した。災害救助法、災害弔慰金支給法と被災者生活再建支援法などを束ねて再構成し、示唆に富む。

■「防災庁」が必要だ

被災地には支援のあり方を根幹から問う声も多い。

・「現物給付」の原則は時代遅れ。金銭給付をもっと柔軟に活用すべきだ。

・みずから申請しなければ支援を受けられない「申請主義」が被災者を切り捨てている。

・被災者生活再建支援法の支援対象は被災世帯であり、被災者個人の事情は考慮されない、などなどだ。

こうした声を受け、被災者一人ひとりに支援メニューをつくる「災害ケースマネジメント」が注目されている。

必要な支援は資金、仕事、教育、医療など多岐にわたり、人それぞれで違う。それらを行政職員らが聞き取り、複数の制度を組み合わせたプランを練る。

だが、従来にない対応は既存の省庁縦割りの制度の壁にぶつかりがちだ。乗り越えるには、省庁横断的な施策が要る。

政府は来春から復興庁を10年間延長するが、各省からの出向者を集めた現状では、そういう大胆な対応は望めない。

だからこそ、防災から復興までを担う組織で、専門的な人材を育て、災害の経験を継承し活用する必要がある。政府は後ろ向きだが、やはり「防災庁」の創設を検討すべきだ。
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