2020年03月07日

[東京新聞] CO2削減目標 引き上げは不可避だ (2020年03月07日)

温暖化対策目標引き上げの期限とされた二月を過ぎた。日本政府は提出すら見送った。日本の現行目標は、あまりに低い。異常気象は激化の一途をたどる。今のままでは気候危機を克服できない。

二〇一五年に採択されたパリ協定は、参加する国それぞれが対策目標を立て、互いにその進捗(しんちょく)状況を評価し合いながら、五年ごとに見直す仕組みになっている。

現行の目標水準は皆低く、速やかに引き上げていかないと「気候危機」を逃れることができないというのが、大前提だ。

国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は一八年、今のまま温暖化が進行すれば、早ければ三〇年にも、世界の平均気温の上昇が産業革命以前から一・五度に達する恐れがあり、人の健康や食料供給、経済成長などに多大な影響が出るとの警告を発した。

今や「一・五度」は、気候危機回避の目安であり、三〇年がその期限とみられている。ところが、今提示されている目標がすべて達成されたとしても、気温は三度上昇してしまい、何が起きるかわからない。

世界五位の温室効果ガス排出国である日本の現行目標は一三年度比26%削減。それすら、排出量の多かった一三年度を基準年にした数字であり、「一九九〇年比40%削減」という欧州連合(EU)の基準年に合わせると、18%にすぎず、そもそも世界から「低すぎる」との批判を浴びてきた。

日本政府は現行目標のまま、再提出するはずだったが、提出自体を見送った。大量排出源の石炭火力にこだわるからだ。「原発再稼働ができないから」とも言うものの、福島の現状を見、世論に耳を傾ければ、言い訳にはできない。

二月までに目標を再提出した国は少ない。だが百を超える国々が見直しを表明している。EUは、55%に引き上げるための法整備を進めている。

日本の場合、法律どころか、目標見直しの議論の道筋すら見えてこない。今からでも遅くはない。十一月に開かれる気候変動枠組み条約第二十六回締約国会議(COP26)をめどに、目標引き上げへの工程表をまずつくるべきである。

一・五度目標の達成には「五〇年時点で二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロ」のシナリオが必要だ。容易ではない。しかし、この現実を直視しなければ、世界的な気候危機への取り組みに背を向ける国になる。
posted by (-@∀@) at 12:41| Comment(0) | 東京新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[東京新聞] マスク転売禁止 「支え合い」肝に銘じて (2020年03月07日)

新型コロナウイルスが拡大する中、政府がマスク転売禁止を決めた。法に基づく措置で高額転売防止に強い効果が期待できる。ただ一月には顕在化した問題で、対応の鈍さも指摘せざるを得ない。

転売禁止は国民生活安定緊急措置法の規定を適用して実施する。同法は第一次石油ショックが起きた一九七三年に制定された。当時頻発したトイレットペーパーや洗剤などの買い占めに対処するのが制定の理由だった。

今回は同法に基づきネット上などでのマスク転売を禁止する。さらに従わない場合、罰則を科す方向性も打ち出している。

マスク不足は医療機関や介護施設のほか高齢者を介護している家庭などでも深刻化している。マスク着用は患者や高齢者らへの感染を防ぐ意味で必要不可欠だ。いずれも命に関わるケースであり、思い切った転売禁止は一定の評価ができる措置だ。

ただマスク不足については、新型コロナが確認された早い段階から、供給難を指摘する声が相次いでいた。マスクは大半が中国からの輸入に頼っており、在庫不足は簡単に予測がついたはずだ。政府は三月に入ってようやく本格対処した形で、後手に回ったとの印象は避けられない。

また転売の大半はネットで行われたが異常な高額での出品が目立っていた。ネットを運営する事業者側の認識も甘いと指摘したい。

政府の方針発表後、ネット上でため込んだマスクをはき出そうと駆け込み転売が増えている。一箱六十枚入りのマスクをネットで買い、それをほぼ同額で売ろうとしていたコンビニ店もあった。さらにマスクを盗んで売ろうとしたケースまで出た。

マスク不足で困窮を極めている人々がいる中、なぜこのような行為ができるのか。高額転売をした人には猛省を促すとともに、二度としないよう強く求めたい。

一方、法の適用には課題もあることを指摘したい。物品の転売は一定のルールを守れば違法ではない。確かに感染症拡大時の医療関連物資の高額転売は論外だ。だが医療関連の転売であっても、通常時にはどこまで法の網をかぶせるべきか細目を詰める必要がある。

さらに医療品以外の転売まで敵視するような風潮が広まる可能性も否定できない。経済行為としての転売を改めてどう規定するか、事態の収束後深く議論する必要があるだろう。
posted by (-@∀@) at 12:40| Comment(0) | 東京新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする