2020年03月05日

[東京新聞] 買い占め問題 冷静で良心的な消費を (2020年03月05日)

新型コロナウイルスによる感染が拡大する中、マスクやトイレ紙などの買い占めが収まらない。生活防衛する姿勢は理解できなくもない。だが医療施設を中心に不足は深刻で良心的消費を求めたい。

買い占めはマスクやトイレ紙、ティッシュペーパーのほか米類、カップ麺などの保存食品で目立つ。直接の原因はネット上に流れたデマとの見方が強い。

ただ店頭での行列を目撃して不安にかられ、デマと分かっていながら列に加わるパターンも多いはずだ。その際、使用量が急に増えるはずのないトイレ紙を買いだめしたり、ついでに他製品を多めに買い求めるケースもあるだろう。暮らしを守るという意味ではある程度理解できる。

だが日本家庭紙工業会によると、トイレ紙の場合、二〇一九年は97・7%が国内生産(出荷ベース)。他の紙製品や食品の在庫も国内生産品については十分だ。東日本大震災のときのように、国内の生産拠点や流通網が破壊されていないからだ。

買い占めは結局、暮らし全体に悪影響を及ぼす。とりわけ病院や介護施設、長い行列に並ぶことが困難な高齢世帯への打撃が大きい現実を改めて直視したい。

各製品のうち、マスクについては買い占めに加え、極端な品薄も依然続いている。日本衛生材料工業連合会の調査では、一八年度に国内で流通したマスクの八割は海外からの輸入品で、大半は中国からだった。

医療従事者にとってマスクは、自らを守るという以上に患者への感染を防ぐという意味で必需品だ。食品などの製造現場でも着用が不可欠だ。

今回は買い占めにあきたらず、品薄に乗じたネットでの高額転売、さらにはマスクを抱き合わせた販売をしたケースも出た。直接命に関わる製品であり厳に慎んでもらいたい。同時にマスクの在庫管理や生産体制については今回を教訓とし、抜本的な見直しを早急に図るべきだろう。

政府は国民生活安定緊急措置法に基づき、マスクを感染が広がる北海道の一部自治体に配布するため、国に売り渡すよう製造・販売業者に指示。当然の措置だが医療や介護現場、高齢者への優先的配布もこれまで以上のスピード感を持って実施してほしい。

ただあまりに強引な法解釈や拙速な法整備は終息後の自由経済まで壊しかねない。慎重を期するようくぎを刺しておきたい。
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[東京新聞] 原爆パネル展 政府の圧力は許されぬ (2020年03月05日)

被爆者団体が国連本部で予定している原爆写真パネル展に関し、外務省が後援の条件として、原発事故に関する展示を変更するよう求めていることが明らかになった。何を隠そうとしているのか。

政府はこの問題について、「コメントは控えたい」(茂木敏充外相)としているが、表現の自由への圧力にも当たるのではないか。経緯をきちんと説明すべきだ。

原爆展は、五年に一度の核拡散防止条約(NPT)の再検討会議に合わせ、米・ニューヨークの国連本部ロビーで四月下旬から約一カ月開かれる。

全国の被爆者でつくる日本原水爆被害者団体協議会(被団協)によれば、被爆の実態などを伝える約五十枚のパネルのうち二枚が、福島とチェルノブイリの原発事故を扱っている。核にまつわる被害や非人間性を訴えるのが目的だったという。

ところが外務省は、この二枚について「NPTが提示する核の平和利用に反する」として、問題視し、内容の変更を求めたという。

東京電力福島第一原発事故は九年近く経過したものの、原子炉建屋からの燃料搬出がようやく始まったばかり。現状を訴え、核について考えることは当然だ。どこが問題なのか、理解に苦しむ。

同じ原爆展は過去三回開かれており、外務省は毎回後援した。原発事故のパネルもあったが、問題視しなかった。今回は何か、政治的な動きがあったのではないか。

NPTの基本理念は「核軍縮」にある。非核保有国には核製造・保有の禁止、核保有国には核軍縮を求めることだ。その意味で、核の危険性を紹介することはNPTとなんら矛盾してはいない。

今回のような「圧力」は、昨年もあった。オーストリアの首都ウィーンで開かれた、日本との国交百五十年を記念する芸術展について、現地の日本大使館が記念事業としての認定を撤回した。福島第一原発事故や安倍政権を批判的に扱った作品を問題視したためだ。

日本政府の行動は、東京五輪、パラリンピック前に、原発問題から国際社会の目をそらそうとしていると疑われかねない。

安倍晋三首相は常々、「核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、双方の協力を得ながら対話を粘り強く促す」と、唯一の戦争被爆国として核廃絶に努力する姿勢を強調している。しかし、これではとても「橋渡し役」として信頼されないだろう。原爆展の意義を認め、今回も後援するよう望む。
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[朝日新聞] 原爆展と政府 後援見送りを撤回せよ (2020年03月05日)

被爆者が世界に発する核廃絶の訴えを、唯一の戦争被爆国の政府が後押ししないのか。外務省は考えを改め、これまで通り展示を後援するべきだ。

被爆者らでつくる日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が、米ニューヨークの国連本部で4月下旬から開く「原爆展」をめぐって、外務省が内容に難色を示し、後援を見送ると伝えていたことがわかった。

日本被団協によると、被爆者の写真や証言を中心に50枚のパネルを展示する。そのうち福島第一原発と旧ソ連のチェルノブイリ原発の事故をテーマとする2枚が問題にされたという。

原爆展は、5年ごとに開かれる核不拡散条約(NPT)再検討会議にあわせ、日本被団協の主催で2005年に始まった。これまでも原発事故に関するパネルを展示し、後援を得てきた。今回、外務省の担当者は「NPTの3本柱の一つに原子力の平和利用がある」と話したという。

被爆者の願いは、核による被害を二度ともたらさないことだ。広島と長崎に投下された原爆への反対に加え、悲惨な事故を起こした原発にも問題意識が向かうのは自然なことだろう。

外務省は何を懸念したのか。引き続き原子力エネルギーを活用していく政府方針との違いを指摘したようだが、なぜ急に対応を変えたのか。福島の事故を想起させることが東京五輪に悪影響を及ぼすと心配したのか。

詳しい説明はなく、日本被団協が反発するのも当然だ。展示内容は既に国連と合意済みで、外務省の後援がなくても、広島、長崎両市との共催で予定通り開くという。茂木外相は記者会見で「しかるべく(後援の)審査中だ」としてコメントを控えたが、後援するよう指示するべきだ。

NPT体制に基づく国際社会の核軍縮への取り組みは、進展どころか後退しているのが実情だ。自らの高齢化が進む被爆者の代表者は、今回も再検討会議や展示の場に赴く。焦りもにじむその姿勢に、日本政府は真摯(しんし)に向き合わねばならない。

被爆者の声は、3年前に成立した核兵器禁止条約の推進力にもなった。多数の非核保有国が賛同し、核兵器の製造や保有などを禁じるその内容は、被爆者の目標と重なる。ところが日本政府は、「保有国と非保有国の橋渡しをする」と言いながら、核禁条約に背を向けたままだ。

被爆から75年の今年、原爆をめぐる展示や催しが国内外の各地で予定されている。核の非人道性を身をもって知る被爆者の訴えに耳を傾け、世界に伝え、共感を広げる。政府はその一翼を担うべきだ。
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[朝日新聞] 新型コロナ対策 説明尽くし慎重判断を (2020年03月05日)

新型コロナウイルス対策として、政府が法整備に乗りだすことを決め、安倍首相が野党5党首に協力を要請した。

必要な手当ては当然すべきだが、どんな制度を考え、いかなる姿勢で臨むのか。政府の明確な説明と国会での十分な審議が必要だ。議論を嫌い、様々な問題について黒を白と言いくるめて不信を深めてきた政権のあり方が、厳しく問われる局面だ。

検討されているのは、新型インフルエンザ等対策特別措置法を見直し、対象に新型コロナウイルス感染症を加えるというものだ。13年施行の同法は、これまでとは違う新しい型のインフルエンザや、毒性の強い未知の感染症を想定してつくられた。強い感染力を持つとはいえ、多くは軽症で済む新型コロナを直ちに当てはめるのには無理があり、法改正が浮上した。

同法は、要件がそろえば首相が緊急事態を宣言すると定めている。そうなれば、知事の権限で外出の自粛を求めたり、催しなどの開催制限、学校や福祉施設の使用制限を要請・指示したりできるようになる。臨時の病院開設のための土地使用や必要物資の運送・販売についても、同様のことが可能になる。

首相はこの宣言を視野に入れているというが、ひとたび発動されると暮らしや経済活動に及ぼす影響は計り知れず、社会に大きな萎縮効果ももたらす。慎重なうえにも慎重な対応が求められ、首相や周囲の判断で進めていい話では決してない。

被害想定をいたずらに過大なものとせず、科学的根拠や専門家の意見を踏まえる。意思決定の過程を透明にして説明責任を果たし、検証可能な形で後世に残す。人権の制限につながる措置は必要最小限に抑える。

いずれも現行法の制定時に指摘され、条文や国会の付帯決議に盛り込まれたことだが、この間(かん)の首相の行いはどうだろう。

全国的なイベントの自粛や小中高校の一斉休校など、政府の基本方針にないことを、政府の専門家会議に諮らないまま表明する。その専門家会議の記録も十全に残さない。突然の政策転換によってしわ寄せを受ける人たちへの手当ては後手に回る。政治の責任を強調する一方で、日によって発言のニュアンスやトーンを変える――。

対処が極めて難しい問題であることを考慮しても、目を覆うばかりの混迷ぶりだ。

本当に宣言が必要な状況なのか、「1?2週間が瀬戸際」という従前の見解と法整備はどう整合するのかなど、疑問は山積している。感染症のみならず、法律や経済、教育、社会保障などの専門家の意見を踏まえた、丁寧な説明と政策が不可欠だ。
posted by (-@∀@) at 12:01| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする