2020年02月04日

[東京新聞] 自衛隊中東派遣 国会の関与が不十分だ (2020年02月04日)

海上自衛隊の護衛艦が中東地域へ出港した。日本独自の判断だとはいえ、米国の要請を受けた派遣だ。国民を代表する国会の議決を経ず、閣議のみの決定でもある。国会の関与が不十分ではないか。

神奈川県の横須賀基地で行われた護衛艦「たかなみ」の出国行事に、安倍晋三首相が出席し、乗組員約二百人に訓示したことが、派遣の持つ意味の重さを物語る。

首相は「(中東海域は)年間数千隻の日本関係船舶が航行し、わが国で消費する原油の約九割が通過する大動脈・命綱と言える海域だ。日本関係船舶の安全確保は政府の重要な責務であり、必要な情報収集を担う諸官の任務は国民の生活に直結する、極めて大きな意義を有する」と強調した。

中東海域で緊張が高まっていることは事実だ。原油を中東に依存する日本にとって航行の安全確保が重要であることも理解する。

にもかかわらず、なぜ防衛省設置法の「調査・研究」を根拠とする閣議決定のみの派遣なのか。

政府は今回の派遣が、国民の権利義務にかかわらず、実力の行使を伴わないためと説明するが、自衛隊の海外派遣は国家意思の表明であり、極めて重い決断だ。

国連平和維持活動(PKO)協力法や、インド洋で米軍などに給油活動するテロ対策特別措置法、イラクでの人道支援や多国籍軍支援を行うイラク復興支援特措法を制定するなど、これまで自衛隊の海外派遣は、その是非は別にして国会の審議や議決を経てきた。

自衛隊の活動を国会による文民統制(シビリアンコントロール)下に置くのは、軍部の暴走を許した過去の反省に基づくものだ。

今回の派遣をめぐり、閉会中審査や通常国会での代表質問、衆参両院の予算委員会で質疑が行われたが、とても十分とは言えない。

閣議決定のみの派遣決定には、国会での追及を避ける狙いがあると疑われても仕方があるまい。

「世界中どこでもいつでも海外派遣できる先例にならないか」との与党議員の質問に、首相は「派遣を一般化することは毛頭あり得ない」と答えたが、調査・研究を根拠とし、国会の審議や議決を経ない海外派遣が、今後、行われない確証はない。

中東緊張の発端はトランプ米政権がイラン核合意から一方的に離脱したことだ。日本は米政権の要請を受けて自衛隊を独自に派遣したものの、米イラン両国と良好な関係にある。緊張緩和に向けた外交努力を怠ってはならない。
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[東京新聞] 呼吸器事件再審 冤罪の闇に十分な光を (2020年02月04日)

「呼吸器事件」の再審が、大津地裁で始まった。無理な捜査、虚偽自白、証拠開示の遅れ−を乗り越え、三月にも無罪判決の運び。半面、冤罪(えんざい)を生んだ経緯の検証は短期間の法廷では困難になった。

三日の再審初公判で、元看護助手西山美香さん(40)は、きっぱりと無罪を主張。検察側は短時間の冒頭陳述で「新たな有罪立証はせず裁判所に適切な判断を求める」と早口に。西山さんへの被告人質問は「特にありません」で終わり、有罪立証は断念された。

来週の第二回で結審し、三月の判決公判で無罪が言い渡されるのは確実だ。西山さんが待ち続けた「名誉回復」が近づいている。

ただ、検察が求めた早期の結審・判決は「西山さんはなぜ冤罪に陥れられたか」を法廷でじっくりと検証できず、背景の追及ができなくなることも意味する。

事件を振り返る。二〇〇三年五月、滋賀県の病院で男性患者が死亡。西山さんは「人工呼吸器のチューブを外した」と自白し、殺人容疑で逮捕された。公判で否認したが懲役十二年が確定し、服役した。患者の死因は低酸素状態(窒息)による急性心停止とされた。

しかし、第二次再審請求審で大阪高裁は「事件ではなく、不整脈による自然死かも」「供述が目まぐるしく変遷する自白調書に信用性はない」と再審開始を決定。昨年三月、最高裁で確定した。

その後、検察は迷走する。同四月、いったんは「再審での有罪主張」を表明した。だが「呼吸器を故意に外していない」との西山さんの自供書や、他殺でない可能性ありとの鑑定医の所見を載せた捜査報告書が滋賀県警から送られていなかったことが判明した。

いずれも捜査側に不利な書類。受け取った検察側は十月、これらを弁護側に開示し、有罪立証を事実上あきらめる方針も伝えた。

(1)軽い知的障害のある西山さんは刑事の取り調べに誘導されて殺人を自白してしまった可能性がある(2)患者の死因の不審点が見過ごされた(3)警察・検察側に不利な証拠が開示されなかった−。冤罪のたびに指摘される「刑事司法の闇」が今回も輪郭を表した。

まずは、西山さんの無罪の見通しを喜びたい。しかし、三回で終わる再審公判では、刑事司法のよどみや曇りを十二分に解明できないだろう。弁護団は、国家賠償を求める民事訴訟を検討しているとも聞く。せめてそういった場で、冤罪が生まれる構造に光が当てられることを望みたい。
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[産経新聞] 【主張】次世代加速器 未来見据えて政治決断を (2020年02月04日)

宇宙と物質の成り立ちに迫るため、日米欧の物理学者らが東北の北上山地への建設誘致を目指す次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」について、日本学術会議は優先度の高い「重点大型研究計画」への選定を見送った。

ILC誘致の議論は今後、大型研究プロジェクトに関する文部科学省の基本構想(ロードマップ)に記載されるか否かが焦点となる。学術会議の重点計画から漏れたことで、実現の道のりは険しくなったとの見方もあるが、科学技術の枠内の議論だけでILC誘致の是非に最終判断を下してはならない。

ILC誘致の意義は、科学分野における国際貢献にとどまるものではない。国づくりの視点で議論し、できるだけ早く日本政府の姿勢を表明すべきである。

たとえば、北上山地に形成されるであろう1万人規模の国際科学都市は、日本と日本人の国際化の指針となり、これを大きく前進させる可能性がある。

欧米のほかロシア、中国、韓国やインドの参加も見込まれる国際協力プロジェクトで中心的な役割を果たすことは、国際社会における日本の存在感を大きく高めることになるはずだ。

また、中国はILCとは別に次世代加速器を建設する計画を進めている。ILC誘致を見送れば、日本は相応の分担金を支払って中国の加速器実験に参加することになるだろう。落差は大きい。

ILC誘致は、日本の安全保障にとっても重要な意味を持つと、認識しなければならない。

日本学術会議は平成13年と18年にもILC誘致に慎重、消極的な見解を示してきた。10年間で4千億?5千億円と見込まれるホスト国負担が他の研究分野を圧迫することへの懸念から、内向きの議論に終始した。

ILC誘致は、五輪や万博と並ぶような国家プロジェクトと位置付けて議論すべきである。

世界のアスリートが約2週間にわたって集う五輪に対し、世界の科学者が20年にわたって日本で暮らすのがILCだ。単純に比較できないとしても、ILCの意義を議論する目安にはなるだろう。

これまで政府が判断を先送りにしてきたために、国民的な議論も盛り上がりを欠いた。国際的信頼を損なう「遅延行為」をこれ以上続けてはならない。
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[産経新聞] 【主張】新型肺炎と経済 失速回避に躊躇許されぬ (2020年02月04日)

新型コロナウイルスによる肺炎が日本経済の重しになっている。感染は収束に向かうどころか拡大の一途だ。このまま事態が長引けば、景気が失速しかねないということを厳しく認識しておかなくてはならない。

影響は、春節休暇の中国人観光客が激減した観光業や小売業にとどまらない。中国経済が悪化すれば、これと密接につながる日本の製造業なども打撃を受ける。その広がりに警戒を怠ってはならない。

安倍晋三首相は1日の対策本部で「すでに観光を含めた地域経済をはじめ、わが国の経済社会全般にわたって大きな影響をもたらしている」と述べた。ならば万全の対策を取るのは当然である。

中小企業や地方企業には、今回の事態によって資金繰りが悪化しているところもあろう。緊急融資制度などで企業を支える措置はもちろん、必要な政策を躊躇(ちゅうちょ)なく総動員することが肝要である。

3日に取引を再開した上海株式市場は一時、春節連休前より9%近く下落した。混乱回避のため、中国人民銀行は1兆2千億元(約18兆7千億円)を市場に供給する異例の措置を打ち出したが、下落の流れを抑え切れなかった。

中国では、春節時期と重なる感染拡大で消費が悪影響を受けたほか、製造業の生産活動も休業などで縮小し、1?3月期の国内総生産(GDP)成長率が4%台に落ち込む可能性を予測する日本のシンクタンクもある。

6%前後でも低水準とされる成長率がここまで悪化すれば、その影響は世界中に波及しよう。政府・日銀は市場や実体経済の変調に細心の注意を払う必要がある。

政府は昨秋の消費税増税を受けて、事業規模26兆円の経済対策を打ち出した。この一部を盛り込んだ令和元年度補正予算が成立したばかりであり、これを円滑に執行すべきなのも論をまたない。

気を付けたいのは、この対策があるから景気悪化は避けられると高をくくることだ。新型肺炎の蔓延(まんえん)により、昨年の対策策定時とは経済環境が大きく変化していることを踏まえなければならない。

ただでさえ今の日本経済は、消費税の影響や海外経済の減速リスクにさらされている。米中貿易摩擦は休戦状態だが、新たに新型肺炎のリスクが加わった。後手の対応が許されるほど景気に力強さがないことを銘記しておきたい。
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[毎日新聞] 米大統領選スタート 反トランプ超えた論戦に (2020年02月04日)

米大統領選がアイオワ州の党員集会を皮切りに始まる。「米国第一」を掲げ世界を揺るがすトランプ大統領が再選されるかどうかが焦点だ。

米国では、格差やポピュリズム政治によって社会の分断が深まる。国際秩序の担い手としての役割から身を引こうとしている。この3年間でトランプ氏が助長した面もある。

格差是正の処方箋をどう書くか。国際秩序を安定させる策はあるか。同盟国との絆を固め直せるのか。

11月の投票まで9カ月におよぶ長丁場だ。政策だけでなく、人間性や価値観も問われる論戦になる。

前半戦の注目は政権奪還を目指す野党・民主党の対抗馬選びだ。中道派のバイデン前副大統領や、左派のサンダース、ウォーレン両上院議員らが競り合っている。

しかし、現状は本命候補がいない混戦状態で、共和党のトランプ氏を相手に対抗軸を打ち出せていない。

経済政策では大企業や富裕者への増税で教育や社会保障を充実させる政策では一致する。ただし、国民皆保険の導入や公立大学の無償化を訴える左派に対し、中道派は慎重だ。

国際問題でも米軍の軍事介入を辞さない中道派と、否定的な左派との違いが目立つ。党内対立が深まり候補者の一本化に時間がかかれば、トランプ氏を利するだけではないか。

米国では「不正なシステム」という言葉が飛び交う。富裕層の所得は増える一方なのに労働者層の賃金は上がらない。支配階級が利益を独り占めできるよう操作をしているのでは、という疑念から生まれた。

格差の拡大はトランプ氏だけの責任ではない。歴代政権は大企業への規制をためらう一方、労働者への目配りを怠ってきた。党派を超えて不満が広がる現状が、それを物語る。

既成政治への不信は「トランプ旋風」を巻き起こした前回大統領選から改善したようには見えない。これをてこにトランプ氏が支持基盤の人気とりに走ることも考えられる。

与野党の対立が先鋭化し、中道派への期待もあるが、分断した社会をまとめるのは容易ではないだろう。それでも著しい格差や自国第一主義は克服すべき世界共通の課題だ。

トランプ政治の是非にとどまらず、それを超えた論戦を通じて解決の糸口を見つけてほしい。
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[毎日新聞] 新型肺炎の経済リスク 中国の景気悪化に備えを (2020年02月04日)

中国発の新型コロナウイルスによる肺炎の拡大が世界経済のリスク要因となってきた。中国経済の悪化懸念から日米の株価が大幅安となり、春節(旧正月)明けのきのうの中国・上海株式市場も急落した。

有効な治療薬が見つからない中、中国政府は感染拡大防止へ発生源の湖北省武漢市を中心に厳しい移動制限を敷く。長引けば、観光など国内総生産(GDP)の約6割を占める消費を冷え込ませる懸念がある

中国は2003年にも重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染拡大で、成長率が一時的に2%程度落ち込むなど経済に打撃を受けた。ただ、当時は中国経済が世界のGDPに占める割合は4%程度だった。

世界第2位の経済大国となった今はその比重が16%程度と格段に高い。年間の新車販売台数が世界一で、製造業やハイテク産業のサプライチェーン(供給網)の中核も担う中国経済が落ち込んだ場合の悪影響は03年の比ではない。

米中防衛摩擦の影響で中国の昨年の実質成長率は6・1%と、29年ぶりの低水準だった。年明けに米国との貿易交渉が第1段階の合意に達したため、中国経済の一段の落ち込みは回避されると期待されていた。

新型肺炎の中国経済への打撃がどれほどかは感染の終息時期次第だ。ただ、大和総研によると、移動規制が当面続いて観光など関連消費が10%程度減ると想定すれば、1?3月期の成長率が4%程度に低下する可能性があるという。

自動車をはじめ製造業の一大集積地である武漢の「封鎖」で、現地工場を持つホンダなど国外メーカーは生産再開が見通せない状況だ。新型肺炎はモノやサービスの需給の両面で世界の中心である中国の経済機能をマヒさせる恐れがある。

日本への影響もひときわ深刻だ。日中の貿易額はSARSが流行した03年の2倍以上の三十数兆円に拡大し、最大の貿易相手国だ。

さらに、昨年の訪日中国人数は03年の20倍以上の約959万人にのぼり、日本の観光産業の成長をけん引する役割も果たしている。

経済の対中依存度が高い日本は、今後の新型肺炎の感染動向を注視しつつ、中国の景気悪化に備えた機敏な対応策を検討すべきだ。
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[読売新聞] 海自艦中東へ 円滑な部隊運用の態勢整えよ (2020年02月04日)

海上自衛隊の護衛艦が中東での情報収集活動に向かった。現場の隊員が的確に任務を果たせるよう、政府は万全の態勢を整えねばならない。

安倍首相は、出航に際する訓示で、「情報収集任務は、国民生活に直結する極めて大きな意義を有する」と強調した。

日本は原油輸入の大半を中東に依存している。年間3000隻超の日本関連の船舶が、中東の海域を通航する。政府が自衛隊を派遣し、海上交通路の安全確保に主体的にかかわるのは当然だ。

護衛艦は、防衛省設置法の「調査・研究」の規定に基づき、2月下旬からオマーン湾やアラビア海北部などで活動する。レーダーや搭載ヘリを使い、現場海域を航行する船舶の種類や船籍を調べ、不審な船の覚知にあたる。

哨戒機2機は先月から、現場で監視任務についている。

派遣部隊は、危険な兆候を察知した場合、国土交通省経由で海運会社に通知し、航行海域の変更などを要請する。官民で速やかに情報を共有する仕組みを構築することが欠かせない。

広大な海域を自衛隊だけで調査するのは限界がある。

既に米国や英国、豪州などが、米国主導の枠組みで周辺海域に艦艇を派遣している。防衛省は、情報交換のためバーレーンにある米海軍司令部に自衛官を送った。自衛隊は、各国部隊との緊密な連携に努める必要がある。

懸念されるのは、日本のタンカーが襲撃されるといった不測の事態への対応だ。調査・研究の名目では、護衛艦は武器を使って他の船を守ることができない。

政府は、緊急時には自衛隊に海上警備行動を発令し、日本籍船の防護を可能にする。発令には、閣議決定が必要となる。情勢が悪化した場合には、遅滞なく任務を切り替えなければならない。

海上警備行動でも、自衛隊の防護対象は日本籍船に限られる。

外国船の危機に遭遇した場合、護衛艦は武器を使わずに、不審船を遠ざけるといった難しい対応を迫られよう。現場の指揮官が戸惑うことのないよう、様々な事態を想定しておくことが重要だ。

米軍がイラン革命防衛隊の司令官を殺害したのに対し、イランは、イラクにある米軍駐留基地へ報復攻撃を行った。その後、2国間の関係は膠着(こうちゃく)状態にある。

日本は米国と同盟関係を築く一方、イランとも友好的な関係にある。政府は、対話による解決を粘り強く両国に促すべきだ。

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[読売新聞] ロヒンギャ問題 スー・チー氏は直ちに行動を (2020年02月04日)

ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問には、住民数十万人が家を追われ、迫害を受けている現状に対処する責任がある。これ以上の放置は許されない。

国際司法裁判所(ICJ)が、ミャンマーのイスラム系住民ロヒンギャの迫害防止に向けて、「あらゆる措置」を取るようミャンマー政府に命じた。

ロヒンギャはミャンマーの国籍法で土着の民族と認められず、不法移民の扱いを受けている。国民の多数を占める仏教徒は、ロヒンギャの定住や帰還につながる国籍付与に反対している。

2016年から17年にかけて、ロヒンギャ系武装勢力に対する国軍の掃討作戦で多数の住民が殺傷され、70万人以上が隣国バングラデシュに逃げ込んだ。今も劣悪なテント生活を強いられている。深刻な人権侵害だ。

国際条約が禁止する集団殺害(ジェノサイド)の疑いがあるとして、西アフリカのガンビアが昨年、イスラム諸国を代表してミャンマーを提訴していた。

国際司法裁は、特定の民族の抹殺を意図した集団殺害だったかどうかの判断は先送りした。一方で国内にとどまる約60万人のロヒンギャが「集団殺害の危機にある」との認識を示し、緊急的な措置として防止策の実行を命じた。

命令に拘束力はないが、国際司法の場で初めて深刻な危機感が示された意味は重い。ミャンマー政府は「留意する」との声明を発表しただけで、具体的な行動をとっていない。極めて遺憾である。

スー・チー氏は国際司法裁の公聴会に自ら出廷し、国内問題だとして審理打ち切りを求めていた。一部の兵士による過度な武力行使の可能性は認めたが、集団殺害はなかったとし、「国内法に従って適切に裁く」と主張する。

だが、国軍は11年の民政移管後も、憲法で国会の議席の4分の1が割り当てられており、政治的な影響力は強い。国内での公正な責任追及は期待できない。

軍事政権下で民主化を訴え続けたスー・チー氏が、軍や世論に縛られ、人道危機に手を打てずにいる姿には失望を禁じ得ない。

中国の習近平国家主席は先月、ミャンマーを訪れ、経済協力で合意した。人権問題を棚上げにした接近には警戒が必要だ。

欧米は投資を控え、圧力を強めるが、日本は中国の影響力拡大につながるとして一線を画してきた。今こそ、スー・チー氏に迅速な行動を求めねばならない。

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[朝日新聞] 海自艦中東へ 国会は不断の監視を (2020年02月04日)

派遣の意義にも、不測の事態への対応にも、疑問が山積みのままの出航である。国会による不断の監視が不可欠だ。

海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が中東海域に向けて出発した。今月下旬に到着し、日本に向かうタンカーなどの安全確保に向けた情報収集にあたる。

期間は1年間で、延長もできる。防衛省設置法の「調査・研究」を名目に、かくも長期間、部隊が海外で活動した例はない。拡大解釈は明らかだ。

安倍首相は国会で、調査・研究に基づく派遣を「一般化することは毛頭あり得ない」と述べる一方、個別の事案については慎重に判断すると答弁した。今回の件が「先例」とされる可能性は否定できない。

米国主導の「有志連合」に加わらず、独自派遣の体裁をとったものの、米軍と一体とみられる懸念もぬぐえない。すでに、海自の隊員1人がバーレーンの米中央海軍司令部に詰め、情報共有を始めている。

現状では、日本関係船舶の護衛は必要ないと、政府は説明している。だが、予期せぬ緊急事態が生じた場合、そのときの状況や国内法、国際法の制約などを考慮し、難しい判断を迫られるのは必至だ。

政府は、限定的な武器使用が認められる海上警備行動に切り替えて臨む方針だが、日本関係船舶の大半は外国籍である。公海上の船舶は船籍のある国の管轄に属するのが国際法の原則であり、自衛隊にできることは限られる。ソマリア沖で実施している海賊対処と異なり、脅威の対象が明確でないことも対応を難しくさせる。

いったん遠い海外に派遣されると、国内からの監視の目が行き届かなくなるのは、南スーダンPKOの教訓でもある。

ところが今回の中東派遣は、国会のまともな議論抜きに決定された。(1)閣議決定時(2)閣議決定の変更時(3)活動終了時――に国会に報告するとされたが、昨年末の閣議決定の際は、その決定文を国会議員に配り、1日だけの閉会中審査で終わった。これでは、実効的なチェックなど望むべくもない。

国会の会期は6月まである。現地での活動が一定期間を過ぎれば、政府は国会に経過を報告し、質疑に応じるべきだ。事後の検証ができるよう、部隊から届く「日報」を適切に管理しておくことはいうまでもない。

米国とイランの武力衝突は当面、回避されたが、対立の構図に変わりはない。緊張が再び激化すれば、一瞬の判断が日本の針路を左右する。そこへ軍事組織である自衛隊を送り込むことの重みを、政府も国会も忘れてはならない。
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[朝日新聞] 記録的な暖冬 生活見直すきっかけに (2020年02月04日)

今冬は雪が少なく、1月の降雪量は各地で観測史上最少だった。その分暖かい日が多く、真夏を思わせる大雨が降ったり、104年ぶりに1月の最高気温を更新したりした所もある。

気象庁によると、今後、寒気の南下で冷え込む日はあるものの、暖冬傾向は続くという。

あるシーズンの現象を、単純に地球温暖化に結びつけて説明するのは避けるべきだ。だが長い目で見たとき、気温は確実に上昇し、気候の変動幅は大きくなっている。異変を身近に迫る危機と受け止めたい。

暖冬には除雪作業の負担減や光熱費の節約といった利点がある。一方でスキー場の休業、行事の中止、冬野菜のとれすぎによる値崩れなど、各方面に様々な影響が及ぶ。雪解け水が減るとして、水不足や秋の収穫を心配する声も出ている。

山形県は雪不足に関する融資制度を初めて設けた。各自治体はこのように、短期的には今季の暖冬が招くマイナス面を把握し、地域経済への打撃を減らす手だてを講じる必要がある。

あわせて長期的視点から、温室効果ガスの排出を抑えるためにどうすべきか考え、実践することにも取り組んでほしい。

注目したいのは自治体による「気候非常事態宣言」だ。16年のオーストラリア・デアビン市を皮切りに、パリ、ロンドンなどが続いた。言葉だけでなく、具体的な数値目標を掲げることが条件で、運動を推進する国際NGOによると、これまでに世界で1千超、日本でも五つの自治体が表明している。

長野県白馬村もその一つだ。地元の高校生の要請がきっかけだった。昨年12月の宣言では、パウダースノーの自然に恵まれた村にとって気候変動は深刻な脅威であり、「2050年の再生可能エネルギー自給率100%」に取り組むとしている。

台風19号で被災した長野県も12月に宣言し、「2050年のCO2排出量実質ゼロ」などをうたった。堺市や神奈川県鎌倉市は議会の議決を受け、市長部局が対応を検討している。

宣言を機に、再生エネルギーの普及促進や家庭での省エネ、マイカーの利用抑制などの目標を打ち出し、市民と行政で達成をめざすのは意義がある。

「良い子にしてても地獄行き」――。先月、18歳で米グラミー賞の主要4部門を制覇したビリー・アイリッシュさんは、歌詞のなかで温暖化への危機を訴え、いま行動を起こさなければ大変な事態になると訴える。「警告したよ。聞いてなかったなんて言わないでね」とも。

次の世代にどんな地球を引き継ぐか。記録的暖冬から読み取り、考えるべきことは、多い。
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