2020年02月03日

[東京新聞] 復興庁設置延長 痛みに向き合ってこそ (2020年02月03日)

復興庁の設置を十年延長する関連法改正案が今国会に提出される見通しだ。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で地域と人々の心が受けた傷は深い。支え続け、教訓は全国で共有すべきだ。

復興庁は、省庁の縦割りを排除して復興事業を実行するための内閣の直属組織として、震災後十年までの期間限定で設置された。二一年三月以降も、さらに十年延長する基本方針が昨年末、閣議決定された。

岩手、宮城などの地震・津波の被災地域では今後五年で復興事業を完了することを目指す。福島の原発事故被災地は中長期的な対応が必要として当面十年間、本格的な復興、再生に向けた取り組みを行うとしている。

被災地を二つに分けざるを得ないのは、原発事故は放射能による汚染があり、いまだ帰れない地域もあるからだ。

福島県の避難者数は、約十六万五千人から四万人余に数字上は減っている。しかし減少分には自主避難者向けの住宅無償提供を県が打ち切ったために、避難者とみなされなくなった人たちも含まれる。避難先で仕事や学校など新たな生活を始め、故郷に帰らない決断をした人たちも「避難者」ではなくなる。

事故前には、三世代、四世代で暮らしていたのに、避難指示が解除されても故郷に帰るのは高齢者だけという家族も多い。「国が前面に立って取り組む」と位置付ける福島の復興では、コミュニティーを再生していけるのかという、重い課題に向き合う必要がある。

これまでに蓄積したノウハウを関係行政機関などと共有して、活用する機能も組織には加えられる。成功事例だけでなく、解決できていない課題についても、議論提起の役割を果たしてほしい。

避難所のあり方もその一つだ。東日本大震災の震災関連死は被災三県で三千六百人を超える。その後の災害でも同様の事態は繰り返されている。

土地区画整理事業では空き地が生じている事例もある。人口減少の局面に入っているだけに、なおさら事業手法も検討していく必要があるだろう。

東京で開かれていた政府主催の追悼式は発生十年の来年で終わりにするという。東北の復興は道半ばで、十年は一つの通過点ではあっても「区切り」とはいえない。被災地の痛みを丁寧に受け止め、ともに修復していく歩みを止めてはいけない。
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[東京新聞] マイナンバー カード強要は不適切だ (2020年02月03日)

マイナンバーカードの保有状況を政府が公務員と家族について繰り返し調べている。「強制だ」と反発の声もある。法令では任意が原則である。普及が進まないとはいえ、不適切な手法といえる。

マイナンバーカードがあると、コンビニで住民票の写しや印鑑登録証明書などが受け取れる。確定申告でも自宅で「e−Tax」という電子申請が可能になる。身分証明にも使える−そんな利点がうたわれるが、カードの普及率は一月二十日現在で15・0%である。

利便性があれば、どんどん普及率は高まるはずだ。でも、日常でそれほど住民票などが必要ではないし、政府が宣伝するほど、国民はカードの利便性を感じてはいないのだろう。麻生太郎財務相も昨年、「俺も正直言って、使ったことは一回もない」と語ったことがあるほどだ。

普及が進まないためか、国家公務員と家族には昨年十月と十二月、内閣官房と財務省が作成した調査用紙を配布した。地方公務員と家族には、総務省が各自治体に依頼して、昨年六月、十月、十二月の三回調査している。

政府は「あくまで取得の勧奨だ」と説明するが、国家公務員向けの調査用紙には、カードの交付申請をしない理由を問う欄まである。家族に対しても理由を書かせ、かつ複数回にわたり報告させる−これを事実上の「強制」と言わずして何と言うのだろう。

職場によっては管理職らがカード非保有者にだけ繰り返し調査票を配る例もあったという。確かに政府は国民の取得を推進する立場だが、マイナンバーカードの取得は、法令で「その者の申請により交付する」と記されている。あくまで本人の意思に任せる申請主義に基づく。

任意取得が原則なのだ。政府の手法に反発の声が上がるのも当然である。国家公務員の取得率は昨年十月で28%、被扶養者にあたる家族は13・1%である。地方公務員もほぼ同じ数字である。

こんな調査をすれば、カードを持たないことが昇進などの妨げになるかと心配になるし、家族にまで調査を広げるのはゆきすぎである。個人番号制が情報漏えいリスクや超監視国家につながると不安視する声だってあるのだ。

二〇二一年三月から健康保険証の機能も持たせるが、従来の保険証も併用する。カード取得は個人の選択を尊重する原則から逸脱してはいけない。
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[産経新聞] 【主張】死刑判決の破棄 裁判員に無力感を与える (2020年02月03日)

裁判員制度は、国民の日常感覚や常識を裁判に反映させることなどを目的に導入されたのではなかったか。

職業裁判官による裁判員裁判の否定が続いている。制度の意義を問い直すべきではないか。

兵庫県洲本市で平成27年3月、男女5人を刺殺したとして殺人罪などに問われた被告の控訴審判決で、大阪高裁は求刑通り死刑とした1審神戸地裁の裁判員裁判判決を破棄し、無期懲役を言い渡した。

裁判員裁判の死刑判決を控訴審が破棄したのは7例目であり、5件は最高裁が控訴審判決を支持して確定している。

洲本の事件で1審と2審の判断が分かれたのは、被告の責任能力の評価による。

1審では2人の担当医の鑑定結果を検討して完全責任能力を認めたが、高裁は職権で3度目の鑑定を実施し、この結果から心神耗弱を認定して刑を減じた。

被害者遺族の一人は代理人弁護士を通じ、「1審の判断を否定して被告人を守ることは、裁判員裁判の趣旨を台無しにするものと思います」とコメントした。

裁判員裁判の判決は、原則として裁判員6人、裁判官3人の合議で行われる。法解釈や判例の判断については裁判官から十分に説明を受けることができる。決して裁判員のみによる感情に任せた結論が導かれることはない。

過去に死刑判決が破棄された6例でも、裁判員らは真剣に評議を続けてきた。死刑を選択した苦渋の判断は、主に被害者の数、犯行の計画性などを理由に過去の判例との公平性が疑われ、高裁で覆されてきた。

裁判員制度導入前の判例と、国民の日常感覚や常識との間に、ずれが生じていると理解すべきだ。裁判員裁判の判決の破棄が続く現状は、裁判員に無力感を生じさせることにつながる。

内閣府が全国の18歳以上の男女を対象に、昨年11月に実施した世論調査では、死刑制度の存続を容認する人が80.8%に上った。

「廃止すべきだ」は9.0%である。国民の大多数が死刑制度を支持している。

究極の刑である死刑の選択に慎重さが求められるのは当然だが、制度存続への国民の支持も軽視してはならない。裁判員制度下での死刑判決の判断基準を見直す時期に来ているのではないか。
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[産経新聞] 【主張】ふるさと納税訴訟 よりよい地方創生目指せ (2020年02月03日)

よりよい地方の創生を目指す契機として、国も地方も判決を受け止めるべきである。

総務省がふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を除外したのは違法として、同市が取り消しを求めた訴訟で、大阪高裁は国勝訴の判決を言い渡した。

平成20年に始まったふるさと納税では、自治体の返礼品競争の過熱が問題となった。同市は返礼品に加え、ネット通販大手のギフト券を贈るキャンペーンを行い、30年度には全国トップの約497億円を集めた。

昨年、返礼品は寄付額の3割以下の地場産品とするよう地方税法が改正され、総務省は同市などを新制度から除外した。国地方係争処理委員会は同省に再検討を勧告したが、除外が続いたため、地方自治法に基づいて1審となる高裁に同市が提訴していた。

判決は、同市の返礼品は「突出して極端」で、方法は「極めて不適切」と厳しく批判した。新制度が過去の実績をもとに自治体を選んだことも認定した。判決後、同市は最高裁に上告する意向を示した。今後も議論は続こう。

しかし少なくとも、返礼品競争そのものを「弊害」と指弾した判断は、十分うなずける。ふるさと納税の本来の趣旨を判決は、地方団体の特色ある施策や事業に共感して寄付を行うこと、とした。その通りである。

自治体はその土地ならではの魅力ある施策や産品を考え、育成する。寄付する側はそれに共感し、その自治体を応援する。それが、真の地域振興につながるふるさと納税の本来のあり方だろう。

同市も、なりふり構わないやり方を反省すべきである。過度な返礼品を出した他の自治体も、返礼品のお得感につられて寄付をした側もしかりだ。

反省が必要なのは総務省も同じである。勝訴したと喜んでばかりではいけない。もとの制度に欠陥があり、見直しも後手に回ったから、返礼品競争を過熱させたとわきまえるべきである。地場産品が少ない地域が不利な状況になっていないかなど、今後も細やかな目配りが欠かせない。

国民誰しもの大切なふるさとを守るための制度である。国、地方自治体、寄付者である国民それぞれが、今回の一連の混乱を教訓としたい。そのうえでさらによい制度に育てていかねばならない。
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[毎日新聞] 福島原発の処理水処分 地元との対話が不可欠だ (2020年02月03日)

東京電力福島第1原発に保管されている汚染処理水の処分について、経済産業省の小委員会が「海洋放出または大気中への放出が現実的」との結論をまとめた。

福島原発1?3号機の原子炉建屋内では、溶け落ちた「燃料デブリ」によって汚染水が1日170トン生じる。専用の装置で処理した後タンクに保管しているが、容量が限界に近づいている。東電によれば、残された時間は2年半だ。

処理水の処分は、燃料デブリの取り出しと同様、廃炉に向けた重要な作業だ。小委は複数の案について技術、費用、規制などの観点から3年にわたって検討し、国内外で実績のある2案に絞り込んだ。

結論を受けて政府は今後、処分方法や開始時期などを決めなければならない。

小委は、処分の前に処理水を再度処理して、その安全性を第三者が検証することや、情報公開の徹底を求めた。処理水は現在100万トンを超えるが、8割は浄化が不十分だ。再処理は当然である。

その上で慎重に取り組まなければならないのは、風評被害の問題だ。

再処理をしても、放射性トリチウム(三重水素)だけは残る。経産省の試算では、保管されている全量を1年間で放出すると仮定した場合、トリチウムによる被ばくは自然界の放射線による被ばくの1000分の1以下だという。

だが、この問題の受け止め方は一様でない。理屈ばかりを振りかざして処分を急げば、新たな風評被害を生むだけだ。

福島の農水産業や観光業は、事故による汚染に加えて深刻な風評被害にも見舞われた。県産米の全量全袋検査や厳しい独自基準による検査など、地道な努力の積み重ねがようやく実を結びつつある。

それでも、売り上げや漁獲量は事故前の水準にはほど遠い。処分に当たっては、失敗を繰り返さない注意が必要だ。国内の消費者はもちろん、外国に不正確な情報が伝わらないような働きかけも課題となる。

もとより政府は、方針を決める前に関係者の不安や意見、要望を謙虚に受け止める責任がある。説明ではなく対話を通じて、多くの人々が納得できる道を模索すべきだ。
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[毎日新聞] 戦争遺跡の保存 惨禍伝える方策探りたい (2020年02月03日)

戦争がもたらした惨禍の記憶をどう後世に引き継いでいくか。軍事施設の遺構など「戦争遺跡」の老朽化が進む中、保存を巡る議論が起こっている。

広島市に4棟残る被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」について、広島県が所有の3棟のうち2棟を解体、1棟を外観のみ保存する方針を示した。

震度6以上の地震で倒壊する恐れがあるというのが理由だ。1棟を所有する国は、県の検討を見守る方針という。

被服支廠は軍服や軍靴を製造・修理する軍需工場で、爆心地から2・7キロ南東に位置する。

かつての軍都・広島を象徴する巨大な建物には、爆風でゆがんだ鉄製の窓枠や扉がそのまま残る。

原爆投下直後には、臨時救護所として使われた。多くの人が苦しみながら亡くなっていく様子を詩人の峠三吉が「倉庫の記録」につづった。

被爆者団体などが全棟保存を求めている。県が実施したパブリックコメントでも、6割が県の方針に反対だった。

県は当初予定していた来年度の解体着手を見送る方向というが、「解体方針に変わりはない」とする。

老朽化や開発などで、戦争遺跡は各地で保存を巡って揺れている。

最近では、川崎市の明治大キャンパス内にある旧陸軍登戸研究所の遺構の一部の撤去が議論されている。風船爆弾など秘密兵器開発の拠点となった所だ。

戦争遺跡の歴史的価値をどう定義するかは難しい。しかし、終戦から75年たち、被爆者や戦争体験者という生き証人が少なくなっている。被爆や戦争の実相を伝える「物言わぬ証人」の存在意義は小さくない。

広島の原爆ドームが、存廃論議の末、21年後の1966年に保存が決まったという経緯もある。

一度壊したら二度と元には戻らない。国や自治体が文化財として保護の対象にしているのは300件近くあるが、未指定のものについても、地域の歴史の中できちんと評価していくことが今後は必要だ。

活用策の検討も含め、「解体ありき」ではない議論を進めるべきだ。 行政だけではなく、民間の知恵も借りながら、悔いの残らない解決方法を見つけたい。
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[読売新聞] ふるさと納税 制度の原点を再確認したい (2020年02月03日)

自治体間で過熱した返礼品競争に、警鐘を鳴らす司法判断である。

ふるさと納税制度から除外された大阪府泉佐野市が、総務省の除外決定の取り消しを求めた訴訟の判決で、大阪高裁が請求を棄却した。泉佐野市は上告する方針だ。

泉佐野市は、豪華な返礼品を提供することで、巨額の寄付を集めてきた。総務省は昨年6月、返礼品の基準を「寄付額の3割以下の地場産品」と定めた法律を施行し、それまでの取り組みを根拠に、泉佐野市を除外した。

争点となったのは、この対応の是非である。泉佐野市は「過去の実績を理由に除外するのは、実質的な法の遡(そ)及(きゅう)適用にあたり、許されない」などと主張した。

これに対し、判決は「法律はふるさと納税制度を正常化するために導入された」とした上で、その目的のために過去の事実を考慮したのは問題ないと結論づけた。

総務相には、制度の参加基準を決め、対象自治体を指定する権限があるとも指摘した。総務相の裁量権を広くとらえたと言える。

ただ、法施行前の行為を理由にした処分については、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」も疑問視していた。

ふるさと納税制度のスタート時に、総務省は返礼品競争を十分想定していなかった。その後、強制力のない通知で、返礼品の抑制を自治体に求めた経緯がある。

自治体の自制を期待した面があったにせよ、総務省の対応が後手に回った感は否めない。

今回の訴訟は、善意の寄付で地方を応援するという制度の趣旨を改めて思い起こさせた。

ふるさと納税は、居住地と異なる自治体に寄付すると、それに近い額が住民税などから差し引かれる。自治体には、寄付金を地方の事業や特色ある施策に振り向けることが期待される。

泉佐野市は、その地方とは無縁のギフト券を大量に提供した。集めた貴重な寄付金を返礼品の調達経費などに充てた。こうしたやり方が制度の趣旨を逸脱しているのは、誰の目にも明らかだろう。

自治体はふるさと納税で寄付を募る際、地域の課題や独自の政策をアピールし、賛同を得られるよう努力する必要がある。

石川県加賀市は、寄付金を子供たちがテクノロジーに触れられる施設に利用する。熊本地震や台風の被災自治体では、復興支援を目的にした寄付を呼びかけた。本来の趣旨に沿った、地方の活性化につながる取り組みを広げたい。

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[読売新聞] 男性の育児休業 企業の意識改革が欠かせない (2020年02月03日)

深刻な少子化に歯止めをかけるためにも、男女がともに子育てできる環境を整えたい。

政府が、男性の育児休業取得率を「2025年までに30%」とする目標を決めた。これまでの「20年までに13%」を大幅に引き上げた。

18年度の取得率は6%にとどまる。政府は利用を促すため、施策を着実に推進するべきだ。

育児・介護休業法は、原則1歳までの子供を育てる労働者が、育児休業を取ることができると定めている。休業中は月給の最大67%が雇用保険から支給される。

幼い子供を持つ男性正社員を対象にした厚生労働省の最近の調査によると、育休を望みながら取れなかった人は約2割に上った。

育休を取得しづらい職場の雰囲気や、上司の理解のなさを理由に挙げた人が多かった。会社の制度が整備されていない、と回答した人も目立った。

厚労省によると、育休を取得した男性のうち、約7割が2週間未満の休業だった。制度を使わず、有給を消化して子育てや家事を手伝う人も少なくない。

男性が気兼ねなく休業制度を利用できるよう、企業や社会の意識を改めていく必要がある。政府は先進的な取り組みを進める企業の事例を紹介し、経営者らに理解を広げていくことが重要だ。

厚労省は、育休を取得する男性がいる企業への助成金を最大84万円に拡充する。中小企業が人手不足に悩む現状を踏まえ、代替要員の確保などを後押しする。助成制度の周知が求められる。

核家族化が進み、共働き世帯が増えるなか、父親が果たすべき役割は大きくなっている。

出産後の女性は、睡眠不足などで精神的に不安定な状態になりやすい。泣き止まない赤ちゃんを抱え、育児に対する不安も募る。

父親が授乳やおむつ替えなど24時間態勢の育児の一端を担う。上の子の送迎や遊び相手を引き受ける。こうした手助けにより、母親の心身の負担は和らぐ。

男性の家事・育児時間が長いほど、第2子以降が生まれる割合が高いという調査結果がある。夫婦が子育てを前向きにとらえる効果があるのだろう。

小泉環境相が男児誕生を機に、育児に充てる時間を確保すると表明した。国会議員に育休制度はないため、短時間勤務やテレワークなどを組み合わせる。

閣僚が働き方を工夫し、子供を育てる意味は大きい。社会全体で機運を高めることが大切だ。

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[朝日新聞] 相次ぐ水害と減災 逆らわず、いなす力を高める (2020年02月03日)

日本は災害の多い国だ。

とりわけ近年、豪雨による深刻な水害が相次ぐ。関東や東北を襲った昨年10月の台風19号では、71の河川で堤防が140カ所決壊し、六つのダムで緊急放流が実施された。

背景には地球温暖化がある。今後、平均気温が2度上昇すれば、雨量が10%増え、洪水の発生頻度は2倍になるとも予想される。政府は新年度予算案に、堤防整備費などとして約6200億円を計上した。こうした手当てももちろん必要だが、予算には限りがある。命と暮らしをどう守るか。水害との向き合い方を考える時だ。

■「灰色」と「緑色」と

注目されているのが「グリーンインフラ」だ。自然環境がもつ多様な機能を活用して、災害リスクを下げる。そんな社会資本の充実を指向する用語で、コンクリートで固めた堤防やダムを意味する「グレーインフラ」と対置して語られる。

先の台風19号の際は、栃木、群馬など4県にまたがる日本最大の渡良瀬遊水地が受け皿となり、1億6千万トンの水をため、下流の東京方面に流れ出る量を抑えて被害を防いだ。

近年造られた施設も同様に威力を発揮した。ラグビーW杯の会場の一つとなった横浜国際総合競技場は、国土交通省が管理する多目的遊水地の上に立ち、周囲の池や運動広場、草地などとあわせて広大な公園になっている。近くを流れる鶴見川の水位は19号の大雨で6メートル超まで上昇したが、増えた水の一部をここに引き込んで制御した。

いっぽう京都市は、雨水を地中に浸透させる「雨庭」を、18年に街なかの交差点に設けた。アスファルトに降った雨をそのまま流さずに貯留し、時間をかけて土中に浸透させる。ゲリラ豪雨時などに排水溝からの氾濫(はんらん)を抑えるだけでなく、ヒートアイランド対策にもなる。

事業規模や費用は大きく異なるが、地形や自然の摂理を減災に役立てる点でこれらは共通する。日本には昔からそうした知恵があったが、堤防などの整備が進むとともに薄れてしまった。今こそ見直すべきだ。

■出遅れを取り戻す

近年の熱波や甚大なハリケーン被害を受け、欧米ではアスファルト部分を減らし、土や緑を使った公共空間づくりが、土地利用の主軸になりつつある。

たとえば人口約64万人の米オレゴン州ポートランドは、大雨のたびに浸水被害に悩まされてきた。90年代から道路脇に植栽帯を造り、あわせて透水性舗装や屋上緑化を徹底して被害を減らしている。7年前、ハリケーン「サンディ」による水害で地下鉄が浸水したニューヨークでも、同様の対策が進む。

欧州では、13年に欧州委員会(EUの政策執行機関)がグリーンインフラ戦略を発表し、力を入れる自治体が広がる。

これに対し日本は出遅れ、ようやく第一歩を踏み出したところだ。国交省が昨年7月にまとめた「グリーンインフラ推進戦略」は、人口減少や少子高齢化によって利用されない土地が増えるなどの社会情勢の変化を踏まえ、自然の力を国土づくりに生かすことをうたう。

問題は、理念を具体策にどうつなげるかだ。土地の状況、広さ、住人の数などで、取り得る手段はおのずと違うだろう。

たとえば地方では、山林を手入れし、里山をいかす。川の流域に遊水機能を持った土地を確保し、湿地を再生させる。住居があれば安全な所へ移す。防風林や防砂林の活用も検討対象になろう。都市部では、京都の雨庭のように舗装を極力減らしていくことを考えたい。

簡単ではないが、その地域にあったやり方を、国と自治体とで一緒に探ってほしい。

■カギ握る住民参加

気象庁によると、1時間に50ミリ以上の強い雨の年間発生件数は、1976年からの10年間と比べて約4割増えた。激甚化する気象にあわせて、全下水道を整備し直すことなど不可能だ。

自然と調和した町づくりを長年研究している東京都市大学の涌井史郎特別教授は「いなす、しのぐ」が大事だという。

「ピークカットの考え方に立ち、住む場所のどこが脆弱(ぜいじゃく)かを把握し、水の力をいなし、危険な状況をしのぐのです」

個々の受け入れ量は大きくなくても、身近な庭や公園を上手に機能させれば、下流の既存インフラにかかる負荷を軽くできる。それに「早めの避難」というソフト対策を組み合わせ、自然に逆らわずに命を守る方策を実現しようという発想だ。

注意すべきは、グリーンインフラには不断の手入れが欠かせないことだ。草が伸び放題の堤防や放置された山林では、水を制御することはできない。

行政に任せきりにせず、樹木の手入れや土手の草刈りに参加する。入居するビルの緑地管理を引き受ける。そんな取り組みは非常時の隣人同士の連携にもつながる。これからの防災のあり方を、それぞれの行動を通して考え、深めていきたい。
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