2019年11月30日

[東京新聞] 中曽根氏死去 権力の魔性を自戒して (2019年11月30日)

一九八〇年代、約五年にわたり首相を務めた中曽根康弘氏が亡くなった。国鉄など三公社民営化を断行するなど、戦後政治の転換期にあって、その政治手腕は日本の内政・外交の姿を大きく変えた。

鈴木善幸首相を継いで中曽根氏が政権に就いた一九八二年当時の風景は、現在と全く違っていた。

まずJR各社は存在せず、全国一社体制だった国鉄が鉄道輸送を担っていた。電話もNTT各社や各携帯電話会社でなく、日本電信電話公社が独占し、たばこや塩は日本専売公社による専売だった。三公社と呼ばれる体制だ。

しかし、国鉄は約二十兆円もの長期債務を抱え、経営難に陥っていた。七五年度には赤字国債の発行も再開され、行財政をどう立て直すのか、後に「戦後政治の総決算」を掲げる中曽根氏には、挑戦すべき大仕事だったのだろう。

八〇年、鈴木内閣で行政管理庁長官に就いた中曽根氏は翌年、第二次臨時行政調査会(第二臨調)を立ち上げた。会長に元経団連会長の土光敏夫氏を起用するなど、民間の知恵と力を借りながら、行財政改革に取り組む道を選んだ。

中曽根氏にとって行管庁長官就任は必ずしも本意ではなかったようだが、第二臨調が結果的に民営化路線の起点となった。

中曽根政権は米国ではレーガン大統領、英国ではサッチャー首相の時代と重なり、民営化や民間活力導入は当時の潮流でもある。富の偏在や格差拡大を招いたとの批判を後に受けるが、行政機構の肥大化に歯止めをかけるには当時、現実的な選択だったのだろう。

外交面では、鈴木内閣当時に対日不信が高まっていた米国との関係を、レーガン氏と親密な関係を築くことで修復したが、特筆すべきは、訪米直前に訪韓し、日韓関係修復に努めるなどの重層的外交だ。後に靖国神社公式参拝で悪化したとはいえ、中国とも一時、胡耀邦総書記との家族ぐるみの交流を通じて緊密な関係を築いた。

中曽根氏は、首相の一念は「一種の狂気だ」と、自著『自省録』(新潮文庫)などで指摘している。本気になれば大方のことは実現できるとの意味だという。

同時に首相たるもの「権力の魔性を自戒せよ」とも述べている。権力が政治家を独善的な道に走らせることを警戒せよとの戒めだ。

今、政権を担う安倍晋三首相は中曽根政権を超える長期政権になったが、権力の魔性に取りつかれてはいまいか。先人の警鐘に耳を傾け、常に自戒すべきである。
posted by (-@∀@) at 12:40| Comment(0) | 東京新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[東京新聞] 首里城再建 県民の声を生かさねば (2019年11月30日)

那覇市の首里城で正殿などが焼失した火災から一カ月。再建に向けた支援の輪が広がっている。国の所有とはいえ、城は沖縄の歴史と文化の象徴。再建には県民の声を最大限反映させるべきである。

十月三十一日の火災後、首里城再建支援の動きが広がり、那覇市がインターネットを利用して始めた寄付金募集には二十九日現在、国内外の四万人余から、当初目標の一億円を大幅に上回る約六億一千六百万円が集まっている。

これらの善意と期待に誰がどう応えるか。安倍晋三首相は関係閣僚会議で、財源の手当てを含め政府の責任で取り組むと表明した。玉城デニー知事は、沖縄の本土復帰五十年に当たる二〇二二年までに県が再建計画を策定する方針を示し、国の財政負担を要望している。

国と県の役割分担には、なお議論が必要だ。国営公園の施設とはいえ、沖縄のシンボルの再建が国主導で進められることに違和感を感じる県民は少なくない。背景には、辺野古新基地建設を強行する国への不信感もある。

首里城は、十五世紀から四百五十年続いた琉球国の為政の拠点だった。一八七九年の琉球処分(併合)で琉球国は滅亡。城は明治政府に明け渡されたが、明治末期に当時の首里区(現・那覇市)に払い下げとなった。

一九四五年の沖縄戦で、日本軍が城の地下に司令部壕(ごう)を築いたため米軍の砲撃の標的となり旧来の建物は焼失。米国統治下、跡地に琉球大学が開設され、七二年の復帰で国立大学となった経緯から用地も国有となり、大学移転後に国営公園整備が決まった。

歴史的には、首里城はもともと土地も建物も地元のものだ。国は再建の在り方について、県民の意向を尊重すべきではないか。この際、公園を県営に移管し、再建は県主体の事業として国は予算面の側面支援にとどめる手もあろう。県は各界代表による「首里城復旧・復興県民会議」(仮称)の設置を計画している。県民の声を的確に集約してほしい。

今回焼失した建物群を九二年に再建した際の費用は、約七十三億円。樹齢数百年の台湾産ヒノキが台湾側の特別許可により運ばれて柱などになり、屋根の建造には今は亡き職人が中心となって焼いた赤瓦二十二万枚が使われた。同様の資材と人材をどう確保するか。予算や設計図はあっても前途は多難だ。時間はかかるだろうが、県民の熱意と英知の結集を望みたい。
posted by (-@∀@) at 12:40| Comment(0) | 東京新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[産経新聞] 【主張】中曽根元首相死去 指導力発揮の政治貫いた (2019年11月30日)

中曽根康弘元首相が、101歳で死去した。

国家を忌避しがちな戦後の風潮に阿(おもね)らず、安全保障の確保や自主憲法制定の運動、国民経済の発展に取り組んだ。国家国民に尽くした中曽根氏が不帰の客となったことに哀悼の意を表したい。

東西冷戦たけなわの昭和57年11月、「戦後政治の総決算」を掲げて首相になった。約5年の在任中、内政では多くの抵抗を排して、国鉄の分割民営化や電電公社、専売公社などの民営化を実現した。経済や国民の暮らしを伸ばす意義があった。

それでも中曽根政治の真骨頂は外交安全保障にある。戦後の無責任な一国平和主義の是正は、中曽根内閣から始まった。

前任の鈴木善幸首相が日米同盟について「軍事的意味合いは持っていない」と語り、米国との関係がぎくしゃくしていた中で首相に登板した。ソ連に厳しい姿勢で臨んだレーガン米大統領やサッチャー英首相と緊密に連携した。

日米同盟を重視し、防衛費の国民総生産(GNP)1%枠撤廃など防衛力充実に動き、それが軍事バランスを西側有利につなげた。冷戦終結に寄与したのである。

当時、米ソの中距離核戦力(INF)削減交渉で、ソ連の中距離弾道ミサイルSS20の「欧州全廃、アジア半減」案が有力だった。中曽根氏は地域で米国の核抑止力が弱まると危惧し、「ロン、ヤス」と呼び合う関係を築いたレーガン氏に要請してアジア全廃も実現させた。日本の安全保障を重視する中曽根氏の行動がINF全廃条約に結びついた。

指導力を発揮してリアリズムに基づき日本の平和、安全保障を追求し、冷戦終結や核軍縮に貢献した。戦後日本の首相が世界の有力リーダーに名を連ねたのは、中曽根氏が最初である。

内務省入省直後に志願して海軍主計士官となり、先の大戦で生死の境をくぐった経験が生きた面があるのだろう。ただし、中韓両国や国内左派勢力の批判を浴びて、靖国神社参拝を定着させられなかったのは残念だった。

衆院連続当選20回を数えた中曽根氏が、今の政治家とは比べものにならないほど勉強家だったことはもっと広く知られていい。晩年まで憲法改正運動に熱心に取り組んだ。国益を常に考え、真剣に政治に当たった姿勢を、後輩政治家は見習ってもらいたい。
posted by (-@∀@) at 12:30| Comment(0) | 産経新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[産経新聞] 【主張】パワハラ指針 職場の共通認識を育てよ (2019年11月30日)

職場のパワーハラスメント(パワハラ)を防止する指針案を、厚生労働省の専門分科会がまとめた。女性活躍・ハラスメント規制法に基づき、大企業が来年6月から、中小企業が令和4年4月から防止策を取ることが義務づけられるためだ。

最初の一歩である。指針をもとに職場でパワハラへの共通認識を育てることが重要だ。誰もが気持ちよく働ける環境を整えなければならない。

指針案はパワハラを、侮辱や暴言などの「精神的な攻撃」、遂行不可能な量の業務を強制する「過大な要求」、能力に比して過度に軽い仕事を命じる「過小な要求」など6類型に分けた。

その上でそれぞれの具体例を示した。必要以上に長時間の厳しい叱責を繰り返して精神的に傷つけたり、退職させたい管理職に誰でもできるような軽微な業務を行わせたりすればパワハラである。

一方でパワハラに該当しない例も示した。「重大な問題行動を行った労働者に、一定程度強く注意する」などがそうだ。ほかの非該当事例でも注意の程度や業務量について「一定程度」を多用しており、分かりにくい。パワハラをする側が都合よく解釈することのないようにしなければならない。

防止策を講じる対象となる労働者には、正社員だけでなく、パートや契約社員などの非正規雇用者も含まれる。当然である。

すでにセクハラと、妊娠・出産をめぐる「マタニティーハラスメント」には企業の防止策が義務づけられている。これに対してパワハラは、業務上の「指示」とどう区別するのかという線引きが難しいとして、対応が遅れていた。

職場でのいじめや嫌がらせに関する都道府県労働局などへの相談は昨年度、約8万3千件に上った。優越的な立場をかさにきて、同僚や部下に身体的、精神的な苦痛を与える行為は許されない。

厚労省は今後、労災を認定する際の理由として、新たに「パワハラ」の項目を設ける方針だ。パワハラによる労災の実態をきめ細かく把握し、再発防止につなげることが重要である。

各企業は、従業員の離職を招くようなパワハラが経営上のマイナスであることを社内で徹底してほしい。働く側も内容を把握し、何が許されないかを共有したい。職場のハラスメント根絶には、それが一番の近道である。
posted by (-@∀@) at 12:30| Comment(0) | 産経新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[毎日新聞] 中曽根元首相が死去 戦後政治の針路を変えた (2019年11月30日)

中曽根康弘元首相が101歳で死去した。敗戦を機に官僚から政治の世界に身を投じた。戦後保守政治の最後の生き証人だった。

1982年に首相に就いた。日本は当時世界第2位の経済大国となり、戦後のピークに立っていた。だが、政権発足に際して「戦後政治の総決算」のスローガンを掲げた。

内政では、行政、税制、教育の3改革を目指した。このうち、行革で大きな成果を残した。

なかでも、特筆すべきは国鉄改革だ。累積債務が37兆円を超え、国の財政を圧迫する大きな元凶だった。

官主導のシステムは戦後三十数年を過ぎ、行政の肥大化という問題を招来した。改革は時代の要請でもあった。米国や英国では、民間の自由な活力に任せて経済成長を促す「新自由主義」が潮流になっていた。

不動産バブルへの道を開いたとの指摘もあるが、民間活力重視の流れは、小泉純一郎、安倍晋三両内閣の経済政策に引き継がれている。

47年に衆院議員に初当選した中曽根氏は吉田茂元首相を批判する急先鋒(せんぽう)だった。吉田氏の政策が米国に依存しすぎると判断したからだ。

保守本流の吉田氏に対し、中曽根氏は自らを「革新保守」と規定した。それが首相として、単に経済大国であることをよしとせず、安全保障を含む国際的な役割の拡充を模索することにつながった。

米国への武器技術供与を「武器輸出三原則」の例外扱いとし、日本列島を旧ソ連に対抗する「不沈空母」になぞらえ物議を醸したのもこうした模索の一例だろう。従来、「対米従属」を批判していたが、レーガン大統領との間で「ロン・ヤス」関係を築くことにも成功した。

一方で、85年8月15日には、靖国神社を初めて公式参拝した。しかし、中国などの猛反発に配慮し、翌年以降は参拝を見送った。

戦後占領政策から主体性を回復するとして、憲法改正を早くから掲げ、「青年将校」などと呼ばれることもあった。だが、首相在任中はその時にあらずとして無理押しをしない柔軟性も見せた。

政治の生の変化に対応する姿勢は時に「風見鶏」と皮肉られたが、戦後政治に対し、新たな針路をもたらしたのは確かだ。
posted by (-@∀@) at 12:20| Comment(0) | 毎日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[毎日新聞] 初の日印2プラス2 地域の安定促す枠組みに (2019年11月30日)

日本とインドの初の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)がきょうインドで行われる。訪印する茂木敏充外相と河野太郎防衛相はモディ首相とも会談する予定だ。

インドは高い経済成長を続け、人口も近く世界最大となる見通しだ。関係を深め、政治や経済、安全保障で協力を強化する意義は大きい。

中国は近年、インド洋での潜水艦の航行など軍事活動を活発化させている。安全保障協力を話し合う重要性は高まっている。

自衛隊とインド軍が食料や輸送を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)についても協議する。協力の加速につながるだろう。

日本は中東海域に海上自衛隊艦艇を派遣する。航行の安全確保にはインドの協力は重要だ。インド洋の軍事施設への寄港も容易になる。

ただし、日印の安保協力が抑制的なものであっても、軍事的な緊張が高まるのなら、かえって地域を不安定化させかねない。

日米が主導する「自由で開かれたインド太平洋」構想にインドを組み込むことは、中国から見れば対中包囲網に映る。

軍事面だけでなく、外交的にも日印が中国とどう向き合うのか。認識のすり合わせが必要だろう。

日印はアジアやアフリカでのビジネス協力の枠組み設立を打ち出している。中国の経済圏構想「一帯一路」に対抗する狙いがあるのだろう。

港湾建設など中国のインフラ投資が相手国に過剰債務を負わせるケースがある。債務返済の代わりに軍事拠点化しようとするなら問題だ。

中国は国際基準に見合った投資を行うべきだ。日印が透明性があり開放的なプロジェクトを主導することで中国の手本となれるはずだ。

留意すべきは、日印と中国がプロジェクト合戦に陥らないことだ。競争になれば地域の国々はどちらにつくかで振り回される。

インドは権益が損なわれるとして一帯一路に反対する一方、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)から多額の支援を受けている。

日印と中国が対立するのではなく是々非々の関係を築くことで共存の余地も生まれてくるのではないか。外交と安保のバランスをとり地域の安定を促す日印関係が求められる。
posted by (-@∀@) at 12:20| Comment(0) | 毎日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[読売新聞] 中曽根氏死去 戦後史に刻む「大統領的」首相 (2019年11月30日)

戦後政治史に刻まれる一時代を築き、強いリーダーとして内政、外交の両面で確かな足跡を残したと言えよう。

1982年11月から5年間、首相を務めた中曽根康弘氏が死去した。101歳だった。首相としての在職日数は、戦後5番目に長い1806日に及ぶ。

中曽根氏は47年の衆院選で初当選した。若手の頃は、吉田首相を厳しく批判し、「青年将校」と呼ばれた。岸内閣で初入閣して以降、要職を歴任した。

66年に中曽根派を結成し、自民党の実力者5人を称した「三角大福中」の一角を占めるようになった。82年に田中派の協力を得て、首相の座を射止めた。

政権運営で特筆すべきは、「戦後政治の総決算」を掲げ、多くの改革を成し遂げたことだろう。

内政では「聖域なき行財政改革」に取り組み、国鉄、電信電話、専売の3公社の民営化を断行した。トップダウンの手法で政策を決定しつつ、時に民間の有識者も活用した。大統領的な手法はその後、多くの政権が踏襲している。

外交面で、今日に至る強固な日米同盟の礎を築いた功績は大きい。首相就任当初から「日米は運命共同体」と強調し、当時のソ連に対して、日米が共同歩調を取る姿勢を鮮明にした。

ロナルド・レーガン米大統領とは親密な関係を築いた。「ロン」「ヤス」と日米首脳がファーストネームで呼び合うようになったのも、この頃からである。

三木内閣が定めた防衛費の「国民総生産(GNP)比1%枠」を取り払い、防衛力の強化に努めたことも注目されよう。

中曽根氏は86年、いわゆる「死んだふり解散」で衆参同日選挙に臨み、衆院で300議席を超える大勝を果たした。この結果、自民党総裁の任期が1年延長された。長期政権の最終盤では、教育改革に力を注いだ。

2003年まで議員を続け、当選回数は20回を数えた。会長を務めた世界平和研究所で政策提言を重ね、憲法改正に情熱を傾けた。18年に発表した政策論集では、政府に安全保障のコストを積極的に分担するよう求めていた。

初当選の頃から首相を目指し、政策やアイデアを大学ノートに書きつづった。これが政権構想の土台となった。確固とした信念を持ち、政策の実現を目指した。

「政治家とは歴史という名の法廷で裁かれる被告である」が口癖だった。多くの議員にかみしめてもらいたい至言である。

無断転載禁止

* twitter

* facebook

* line

* mail
posted by (-@∀@) at 12:10| Comment(0) | 読売新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[読売新聞] 再犯防止対策 出所後も切れ目ない支援を (2019年11月30日)

刑務所を出た人が再び犯罪に走ることのないよう、立ち直りを支える取り組みが肝要だ。

法務省が公表した今年の犯罪白書によると、検挙者に占める再犯者の割合は増加傾向が続いている。中でも、昨年の覚醒剤取締法違反での再犯者率は66・6%で、極めて高い。

覚醒剤など薬物使用者には、依存症を抱えている人が少なくない。その更生には、刑務所でただ服役させるだけでなく、受刑者の状況や特性に応じた改善指導を行うことが欠かせない。

現在、刑務所では、薬物犯罪や性犯罪などの受刑者に対して、認知行動療法を取り入れた特別プログラムを受講させている。専門家との面談や受刑者同士のグループワークを通じて、考え方や行動パターンを修正するものだ。

ただ、刑務所で指導を受けても、誘惑の多い実社会に戻ってから、犯罪に手を染めずに過ごし続けるのは簡単ではない。

2016年からは、刑期の一部だけ刑務所で服役させて、残りの期間は釈放する「刑の一部執行猶予」制度が導入された。早期に社会復帰させる代わりに、長期にわたって指導や治療を受けさせ、更生を図る仕組みだ。

これまで制度が適用された人の大半が、覚醒剤取締法違反だ。執行猶予期間中は、定期的に保護観察所に通って再犯防止プログラムを受講し、尿検査も受ける。

だが、一部執行猶予中に再犯に及んだケースも出ている。法務省は、制度の効果を検証し、再犯防止プログラムなどの改善につなげなければならない。

薬物依存者の回復を支援する民間団体と連携して、働きかけを強めることも重要だ。

課題は、刑期を満期で終えた出所者への対応である。

保護観察官や保護司から指導や支援を受けられる仮釈放者に比べて、再犯に及ぶ人が多い。白書によると、出所から2年以内に再び刑務所に入る割合は、仮釈放者の10・7%に対し、満期釈放者は25・4%に上っている。

出所後に強制的に指導できる法的根拠がなく、フォローが行き届いていないのが現状だ。

住むところや身寄りのない満期出所者に対し、保護観察所の委託を受けた民間の更生保護施設が一時的に受け入れる「更生緊急保護」制度がある。ただ、利用できる期間は最長1年に限られる。

希望する出所者に対し、継続的に相談に応じる態勢作りを検討してもいいのではないか。

無断転載禁止

* twitter

* facebook

* line

* mail
posted by (-@∀@) at 12:10| Comment(0) | 読売新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[朝日新聞] 桜を見る会 公文書管理 教訓どこへ (2019年11月30日)

森友・加計問題や自衛隊の日報隠しを受け、安倍政権は公文書管理の徹底を誓ったはずではなかったのか。行政機関の活動を記録に残し、後から検証できるようにするという公文書の意義が、政府内でいまだに共有されていないというほかない。

首相主催の「桜を見る会」をめぐり、さまざまな問題が指摘される中、実態解明がなかなか進まないのは、安倍首相が説明責任を十分果たしていないことに加え、「招待者名簿」という根幹の公文書が廃棄されて存在しないことに主な理由がある。

首相や与党、各省などからの推薦者をとりまとめる内閣府・内閣官房は、名簿の保存期間を1年未満と定め、会の終了後、直ちに処分しているという。しかし、翌年の招待者を決める参考に保存しておくのが自然である。大量の個人情報を保有し続けるのはリスクがあるからという説明は納得しがたい。

内閣府・内閣官房に各省が提出した「推薦者名簿」の方は、1年以上保存されている例が相次いで確認された。また、「招待者名簿」が「1年未満」に分類されたのは昨年からだという。理屈をつけて、名簿を早く処分できるようにしたのではないかと疑われるゆえんだ。

しかも、今年の名簿を大型シュレッダーにかけたのは、共産党議員が国会質問のために資料を求めた約1時間後だったという。政府は、名簿を廃棄した職員は資料要求のことは知らず、この日にシュレッダーを使うことは以前から決まっていたというが、「偶然の一致」というには出来過ぎている。

この会をめぐっては、オーナー商法で多くの被害者を出したジャパンライフの元会長が、消費者庁から行政指導を受けた翌年に首相の推薦枠で招待状を受け取っていた可能性が指摘されているほか、反社会的勢力が実際に参加していたとも言われている。政府は名簿を廃棄済みなので事実関係を確認できないというが、だからこそ記録を残す必要があったのではないか。

多くが残されていた「推薦者名簿」の中で、処分されていたのが、政党や政治家から寄せられたものだ。政治家が絡むと記録がなくなるケースは、これまで何度も明らかになっている。官邸では、首相が省庁幹部と面談した際の記録をとっていない。NPO法人情報公開クリアリングハウスの調査では、多くの省庁が大臣の日程表を作成当日などに廃棄しているという。

一連の制度改革で、政策決定における政治主導が強まった。政治家の言動をきちんと記録しておくことは、行政の透明性や後の検証の実効性を高めるのに不可欠である。
posted by (-@∀@) at 12:00| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[朝日新聞] 暴力団員射殺 抗争激化をくい止めよ (2019年11月30日)

飲食店やマンションが並ぶ市街地で、暴力団間の抗争と見られる殺人事件が起きた。犯行には自動小銃が使われた模様だ。

市民が巻き添えになっていたらと思うと、恐怖と憤りを禁じ得ない。捜査を急ぐとともに抗争の激化を防がねばならない。

現場は兵庫県尼崎市の阪神電鉄尼崎駅に近い路上で、人通りが多い夕刻に事件は起きた。指定暴力団神戸山口組の幹部が殺害され、対立する指定暴力団山口組の元組員の男を警察は逮捕した。

男は拳銃と米軍が軍用銃として使うM16系統と見られる自動小銃を持っていた。犯行現場では多数の空の薬莢(やっきょう)や不発弾が見つかった。入手経路や組織の関与の解明が当面の焦点になる。

日常の生活の場で殺傷能力が高い凶器が使われたことに近隣の住民は衝撃を受け、不安が広がっている。小学生の登下校に保護者が付き添うなど対策に追われており、まずは住民の安全に万全を期さねばならない。

県警は組の事務所など関係先に十分な要員を配置してほしい。山口組をめぐっては過去の対立抗争で市民が巻き添えになり、死傷者を出した。悲劇を二度と繰り返してはならない。

今回の事件の背景にあると見られるのが、4年前に始まった山口組の分裂だ。一部幹部らが離脱して神戸山口組を結成し、2年前には神戸山口組を抜けた勢力が新たに任侠(にんきょう)山口組を作った。三つの組織がからむ対立の構図が続いている。

今春からは山口組と神戸山口組の間で傷害事件が相次ぎ、10月には「神戸」系組員2人が射殺されて山口組系組員が逮捕された。その後服役していた山口組ナンバー2の幹部が出所し、抗争に拍車がかかりかねないと懸念されていた中で、また事件が起きた。

二つの組に対しては兵庫、大阪、岐阜、愛知の4府県の公安委員会が暴力団対策法に基づき、双方の本部を含む19カ所の事務所の使用制限を命じて立ち入りを原則禁じている。この対象を広げるほか、より規制が厳しい「特定抗争指定暴力団」への指定も検討課題となる。定められた警戒区域内で組員が5人以上集まると逮捕できるなど、行動を厳しく制限できる。

暴力団勢力は取り締まりの強化や社会の排除運動で減少傾向にあり、18年末で3万500人と5年間に半減した。しかし暴力団がからんだ特殊詐欺など被害はなお後を絶たない。

警察の取り締まりとともに、構成員が社会に復帰するのを支援する取り組みも充実させる。暴力団をけっして許さないという決意を新たにし、社会全体で対策を重ねていく必要がある。
posted by (-@∀@) at 12:00| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月29日

[東京新聞] SNSと子ども 「危険あり」教えた上で (2019年11月29日)

会員制交流サイト(SNS)で知り合った小中学生を誘拐する事件が相次ぐ。危険性を教えることはもちろん必要だ。同時に、ネットに脱出口を求める子どもたちの心の奥底にも目を向けたい。

「知らない人にはついていかない」。大人は子どもたちに繰り返し教えてきた。危険な大人は今やネット空間にもいる。社会は便利さと引き換えに困難な課題を抱えたと自覚し、対策を講じていく必要がある。

大阪市の小学六年女児の誘拐事件で容疑者の男は、非公開でやりとりできるツイッターのダイレクトメッセージを使って接触したという。さいたま市の女子中学生を誘拐した罪で起訴され、兵庫県の女子中学生の誘拐容疑で再逮捕された埼玉県の不動産業の男は「勉強するなら養ってあげる」と誘い出したとされる。中学生はツイッターに家出希望と投稿していた。

ツイッターで「#家出」で検索すると「泊めてくれる方いませんか?」などの書き込みが多数見つかる。SNSが、困っている少女たちと、それに付け込む大人が出会う場となっている現実の延長線上で事件は起きている。

まずできる手だてはいくつかある。子どもが使うスマホに保護者がSNSなどの使用制限を設定することは可能だ。警察庁によると昨年SNSで児童が巻き込まれた事件の九割近くで、閲覧制限をするフィルタリングの機能は使われていなかった。保護者が機能をきちんと理解し、子どもに何をすることが危険かを具体的に伝えられるようになることも大切だ。

災害時の連絡手段にしたいという保護者からの要望もあり、小中学校へのスマホなどの持ち込みを解禁する方向で、文部科学省の有識者会議が議論を進めている。

スマホを使う小学生は三割強だが、持ち込みを認めたことがきっかけで所持率が増加することも考えられる。管理する教員の業務が煩雑になることや、ゲーム依存を助長することへの懸念の声も出ている。事件に巻き込まれるリスクも考慮した上で、持ち込みを許可する場合はどんなルールや教育が必要か、慎重な議論が必要だろう。

子どもたちにとって、SNSが悩みのはけ口になっていることを深刻に受け止めたい。家庭でも学校でも自分を受け止めてもらえないと感じてはいないか。安心できる居場所や聞いてくれる大人がいる環境をどう広げるか、議論を深めていく必要がある。
posted by (-@∀@) at 12:40| Comment(0) | 東京新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[東京新聞] 女川原発 その時避難できるのか (2019年11月29日)

原子力規制委員会は、宮城県女川町などに立地する東北電力女川原発2号機が国の規制基準に適合するとの結論を出した。だがこれまで繰り返し述べてきたように、それは安全のお墨付きではない。

3・11後、規制委が新規制基準に「適合」とする原発は、これで九原発十六基。このうち五原発九基が、それぞれに課題を抱えたままですでに再稼働しているが、中でも、東北の被災地にある女川原発は特別だ。

女川町内では六百人以上が震災で犠牲になった。いまだ二百五十人以上が行方不明のままだ。震災の傷痕が住民の心に深く残る町である。

女川原発は東京電力福島第一原発同様、被災した原発だ。

地盤が一メートル沈下した。2号機の原子炉建屋では、千カ所以上でひびが見つかった。十三メートルの津波による浸水被害もあった。外部電源五回線のうち四回線が遮断され、残る一回線で辛うじて冷温停止に持ち込んだ。福島との違いは「運」というしかないだろう。

東北電は、想定する最大の地震の揺れ(基準地震動)を震災前の五八〇ガルから一〇〇〇ガルに引き上げ、約三千四百億円を投じて、防潮堤のかさ上げに伴う地盤改良工事や、浸水防止壁の設置などに取り組んできた。

だが、東日本大震災の最大の揺れの強さは二九三三ガル(宮城県栗原市)だった。自然の猛威は常に人間の想像力の上をいくというのが、大震災の教訓ではなかったか。天災への備えに「これでよし」はない。津波を生じやすいとされる「アウターライズ地震」が追い打ちをかける恐れもあるという。

規制委は避難計画の妥当性を審査しない。そのことに多くの住民が強い不安を感じている。

女川原発の敷地の一部がかかる石巻市などが策定した避難計画では、十四万五千人が自家用車やバスに分乗し、仙台市などへ移動することになっている。

今月、石巻市民らが「渋滞が起きれば逃げられない。広域避難計画に実効性がない」として、市と県による「地元同意」の差し止めを求める仮処分を仙台地裁に申し立てた。地元同意は事実上、再稼働への最終関門だ。

宮城県の村井嘉浩知事は「立地自治体だけでなく、県内市町村の声をよく聞いて(再稼働の是非を)判断したい」と話している。

そうしてほしい。そして福島など隣接県の意向も可能な限りくんで、賢明な決断をくだすべきではないか。
posted by (-@∀@) at 12:40| Comment(0) | 東京新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[産経新聞] 【主張】女川原発「合格」 新たな再稼働の道筋開け (2019年11月29日)

宮城県の牡鹿半島に立地する東北電力の女川原発2号機(沸騰水型、出力82・5万キロワット)が原子力規制委員会の安全審査で、事実上の合格証を獲得した。

残る審査などが順調に進めば、再来年度中の再稼働も視野に入る。

これまでに再稼働している原発9基はいずれも西日本に多い加圧水型で、女川2号機は沸騰水型原発として初の再稼働が有力視されている。

東京電力などと同じ沸騰水型が復活する呼び水として、また原発再稼働の「西高東低」解消の第一歩となることを期待したい。

待望の合格だが、規制委の審査にほぼ6年もの歳月が費やされたのは残念だ。審査を手際よく進めることはできなかったのか。

原発の運転期間が基本40年に限られていることを考えると6年の停止期間は、あまりにも長い。

このことは再稼働していない他の原発についても当てはまる。運転していないなら、設備の劣化はほとんど進行しないはずだ。

規制委は、原発の運転停止期間を40年間から除外すべきである。そうした合理的な規制導入の検討を早急に開始してもらいたい。

さらに注文するなら、基本的な安全対策を終えた段階で原発の運転を認め、安全審査を並行させる道筋を考えるべきである。

原子力発電は、国のエネルギー政策で「重要なベースロード電源」と位置付けられているが、これまでの再稼働ペースでは、期待されている役割は果たせない。

来年から実運用に入る地球温暖化防止の「パリ協定」で、日本が世界に約束した二酸化炭素の26%削減も公約倒れを免れない。

沸騰水型原発の安全審査では、東電の柏崎刈羽原発(新潟県)の6、7号機と日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)が女川2号機より進んだ段階にあるのだが、地元同意の壁の前で再稼働の時期が見通せない状況だ。

女川2号機への地元同意の壁は高くないとみられているが、国が前面に出て、しっかり説明すべきである。東海第2と柏崎刈羽についても同様の対応が望まれる。

女川原発は東日本大震災の震源に最も近い原発だったが、巨大津波にも地震動にも負けなかった。被災した300人以上の近隣住民の避難生活を約3カ月にわたって支えたのもこの原発だった。その実績を忘れてはなるまい。
posted by (-@∀@) at 12:30| Comment(0) | 産経新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[産経新聞] 【主張】暴力団の抗争 法規駆使して組織壊滅を (2019年11月29日)

兵庫県尼崎市の路上で27日夕、指定暴力団神戸山口組の幹部が自動小銃で射殺された。京都市内で逮捕された男は指定暴力団山口組の関係者とみられ、自動小銃と拳銃を所持していた。職務質問の際にも警察官に銃口を向けたとされる。

現場は飲食店やマンションが立ち並ぶ一角で、多くの人が銃声を聞いた。一般市民を巻き込む恐れもあった凶悪事件である。

警察庁の松本光弘次長は「今後の推移に応じ、暴力団対策法の効果的な活用も視野に対応したい」と述べた。あらゆる法規を駆使して危険な抗争を押さえ込み、組織を壊滅に追い込んでほしい。

神戸山口組は国内最大の指定暴力団山口組から分裂してできた組織だ。神戸山口組からはさらに任侠(にんきょう)山口組が分裂し、抗争を繰り返してきた。今春以降、4月に神戸山口組系組長が山口組系組員に刺されて重傷を負い、8月には山口組系組員が神戸山口組系とみられる男に銃撃された。10月10日には神戸山口組系組員2人が山口組系幹部に射殺された。

10月18日には山口組のナンバー2、高山清司若頭が恐喝罪による刑期を終えて出所した。強硬派で知られる同氏は組織の再統合をにらんでいるとされ、警察当局は抗争の先鋭化を警戒していた。

すでに大阪、兵庫などの府県警は、両組織の本部など計20カ所の拠点に暴対法に基づく使用制限の仮命令を出し、事実上の閉鎖に追い込んでいた。

今後見込めるのは両組織を「特定抗争指定暴力団」に指定することだ。指定すれば、警戒区域内で5人以上で集まることや傘下事務所の使用などを禁じることができる。平成24年12月には福岡県の道仁会と九州誠道会が指定され、抗争沈静化のきっかけとなった。

同じ24年には、福岡県の工藤会を「特定危険指定暴力団」に指定して取り締まりを強化し、組織の弱体化に結びつけた。

山口組をめぐっては、昭和59年から平成元年にかけて、分裂した一和会との抗争で暴力団関係者25人が死亡し、一般市民や警察官70人が負傷した。尼崎市では流れ弾を受けた19歳の女性が死亡する痛ましい事件もあった。

悲劇を繰り返してはならない。一方で、抗争の激化は壊滅への好機でもある。日本の社会に、暴力団はいらない。
posted by (-@∀@) at 12:30| Comment(0) | 産経新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[毎日新聞] 子どものゲーム障害 防ぐ手立てを社会全体で (2019年11月29日)

ゲームに長時間のめり込み、日常生活に支障が生じる「ゲーム障害」について、国の初の実態調査結果が公表された。

過去1年間にスマートフォンなどでゲームをした10?20代のうち、平日のプレー時間が「3時間以上」の人は約2割に上った。

プレー時間が長いほどやめづらくなり、健康や人間関係に悪影響を及ぼす傾向がデータで確認された。

平日6時間以上プレーする人の半数が、昼夜逆転の生活になっていた。4割が「目の痛みや頭痛などがあっても続けた」と答え、「学業成績や仕事の能率低下」は3割の人が経験していた。「友人や恋人などとの関係を損失してもゲームを続けた」という人も15%いた。

娯楽の域を超えている。

ゲーム障害は、アルコールやギャンブルなどの依存症と異なり、子どもや若者に多い。ゲームをした人の半数近くが幼児や小学生の時にオンラインゲームを始めていた。8割がスマホでゲームをしている。

内閣府の2018年度調査によると、スマホは小学生でも4割、高校生なら9割以上が持っている。日々の暮らしにスマホが及ぼす影響力は大きい。

専門家は、発育段階にある子どもの脳は、ゲーム依存の悪影響を受けやすいと指摘している。

社会として予防に手立てを尽くすべきだ。ゲーム依存がもたらす悪影響を、親をはじめとして広く各層に啓発することが欠かせない。

家庭では、のめり込みすぎると健康に悪いことを子どもに説明し、ゲーム時間を含めたルールを親子で決めることが大切だ。プレー時間やインターネット接続を制限できる機種もある。ゲーム以外の楽しみを見つけることも一案だろう。

すでに依存状態になっている場合は、無理にやめさせようとすると家族に暴力を振るうこともめずらしくない。専門家の支援が必要だ。

世界保健機関(WHO)が5月、新たな依存症と認定したことを受けて、厚生労働省は調査結果をもとに専門的な診療・相談体制の強化を進める。

ゲーム業界も来年度、全国的な実態調査をする。官民が連携した取り組みを急がなければならない。
posted by (-@∀@) at 12:21| Comment(0) | 毎日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[毎日新聞] 消防署内の暴力 ゆがんだ上下関係是正を (2019年11月29日)

人命を救うはずの職場での信じがたい暴力行為である。組織の体質を改めて問わざるを得ない。

大阪府茨木市消防本部の分署で複数の署員が暴力を振るっていたことが今月、発覚した。4月から5月にかけ、先輩署員が救急車内で血圧計のベルトを後輩の首に巻き一時窒息させたり、手足をロープで縛り消防車に逆さづりにしたりしていた。

暴力を振るった署員らは「コミュニケーションの一環だった」と釈明したという。被害者は刑事罰を求めていないとされるが、陰湿で悪質ないじめだ。加害者3人が懲戒免職処分となったのは当然だろう。

消防現場は閉鎖的な上下関係ゆえの体罰やハラスメントが絶えないことがかねて問題視されてきた。

総務省消防庁は2017年に消防職員を対象に抽出アンケートを実施した。パワハラ被害の経験があると答えた男性職員は17・5%で、見聞きしたケースは41・5%に達した。今年もパワハラなどを理由とする懲戒事例が数多く起きている。

消防職員は危険な現場で活動するため、厳しい訓練が必要で、指揮命令系統の確立も大切だ。階級に基づく上下関係が厳格になりやすいことが暴力やパワハラの温床となる。

消防庁は対策として全国の消防本部に相談・通報窓口の設置を求めている。今年1月時点で約8割が開設済みだ。しかし、今年に入っても懲戒事例は相次いでおり、茨木市のケースでは窓口は活用されなかった。

職員が安心して相談できる窓口になっているか検証し、懲戒事例を徹底的に分析すべきだ。ストレスがたまりにくくするケアや、研修などを通じた意識改革も欠かせない。

消防職員は労働組合を結成する団結権を認められていない。主要国ではおおむね認められており、国際労働機関(ILO)は日本のケースを問題視している。

政府は「上司と部下が対立し、服務規律の維持が困難になる」などと団結権に反対している。だが、基本権の制約が職場での被害を訴えるルートを狭めているのではないか。

陰湿な暴力行為が続けば、優秀な人材の確保にも支障が出る。ゆがんだ上下関係の暴走を防ぐための組織のあり方や、職場環境の整備を政府は本格的に検討すべきだ。
posted by (-@∀@) at 12:20| Comment(0) | 毎日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[読売新聞] 香港人権法成立 中国の強権にクギ刺した米国 (2019年11月29日)

民主化を求める香港の人々を後押しする米国の決意が示された。中国が弾圧を強めないよう牽制(けんせい)したと言える。米中対立の激化につながらないか注視する必要がある。

「香港人権・民主主義法」がトランプ米大統領の署名によって成立した。米上院は全会一致で、下院は圧倒的多数の賛成で、それぞれ法案を可決していた。

貿易、安全保障、先端技術などに加え、香港問題を巡っても米国が中国の姿勢に懸念を強めていることを反映している。

香港では中国政府や香港当局を批判する抗議活動が続く。デモ隊と警官隊の衝突が激化し、収拾のめどが立たない。デモ隊は、外交や防衛を除く幅広い分野で香港に認められている「高度な自治」が脅かされていると訴える。

人権法は、「高度な自治」が機能しているかを米政府が毎年検証し、議会に報告することを義務づけた。自治が侵害されていると判断した場合、米国が香港に与えている関税やビザ発給などの優遇措置の見直しが可能になる。

香港経由で貿易や資金調達を行う中国企業には打撃となろう。

大統領が、香港での人権抑圧に関わった個人に制裁を科せるとも規定している。ただ、具体的に法律がどう運用されるかは不明確な部分が多い。

トランプ氏は声明で、「外交に関する大統領の権限」を強調し、法律の一部の履行を見送ることもあり得るとの考えを示した。米国内で高まる対中批判に配慮して署名はしたが、中国との決定的な対立は避けたいのだろう。

中国は外務省声明で、人権法は「重大な内政干渉だ」と反発し、報復措置を取ると警告した。外務省は米国のブランスタッド駐中国大使を呼び、抗議した。

先の香港区議選では、デモを支持する民主派が圧勝した。中国は抗議運動について、米国などの外部勢力の支援を受けた「一部の暴徒」によるものだと主張してきたが、その理屈は崩れている。

中国は、強圧的な香港政策が裏目に出ている現実を直視すべきだ。国家の主権や安全を守るとの名目で、香港への介入を一層強めることがあってはならない。

懸念されるのは、米中貿易協議への影響だ。両国は農業や金融などの分野に絞った「第1段階」の合意を目指している。

米中の新たな制裁・報復関税が来月に迫る。発動されれば世界経済への影響は大きい。回避に向けて冷静な議論を重ねるべきだ。

無断転載禁止

* twitter

* facebook

* line

* mail
posted by (-@∀@) at 12:11| Comment(0) | 読売新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[読売新聞] 女川原発合格 再稼働に地元理解得る努力を (2019年11月29日)

原子力発電所の安全性を高め、再稼働を一歩ずつ進めることが電力の安定供給につながろう。

原子力規制委員会の安全審査で、東北電力女川原発2号機(宮城県)の審査書案が了承された。事実上の合格証にあたる。合格は、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島の3県で初めてだ。

東北電力は、予想される最大の揺れを、震災前から大幅に引き上げた。最大23メートルの津波を想定し、海抜29メートルの防潮堤を造った。事故発生時に放射性物質の漏えいを抑えながら原子炉の圧力を下げる設備を取り付けた。

対策費用は約3400億円に上る。規制委は、こうした取り組みで、女川原発の安全性が確保できると判断したのだろう。

東北電力は今後、残っている安全対策工事を行い、2020年度以降の再稼働を目指す。工事に万全を期すことが求められる。

再稼働には、地元自治体の同意も焦点になる。17年に合格した東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)や18年に合格した日本原子力発電の東海第二原発(茨城県)は、同意の見通しが立っていない。

関西電力役員らの金品受領問題で、原発に向けられる国民の視線は厳しくなっている。

東北電力は、自治体や住民に対して、安全対策について丁寧に説明し、再稼働への理解を得る努力を重ねる必要がある。

震災後、すべての原発がいったん停止し、その後、9基が再稼働している。ただ、九州電力玄海原発4号機(佐賀県)が18年6月に運転を再開して以降、再稼働に至った原発はない。

原発は天候などに左右されず安定して発電できる。二酸化炭素を排出せず、温暖化対策の観点でも有用だ。政府は、30年に全電源に占める原発の比率を20?22%にする目標を掲げている。

安全性が確認された原発については、着実に再稼働していくことが肝要である。

震災時、女川原発にも13メートルの津波が押し寄せたが、福島第一原発と異なり、炉心溶融は起こさなかった。敷地が14・8メートルと高く、主要施設の大半が浸水を免れた。

東北電力は1970年頃、平安時代に大津波を起こした貞観地震の史実を基に、女川原発の敷地のかさ上げを決めたという。自然災害の脅威に対する当時の経営陣らの意識の高さを物語る。

電力各社は、安全を不断に追求する姿勢の重要性を改めて胸に刻んでもらいたい。

無断転載禁止

* twitter

* facebook

* line

* mail
posted by (-@∀@) at 12:11| Comment(0) | 読売新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[朝日新聞] 国の補正予算 「金額ありき」は危うい (2019年11月29日)

政府・与党は「大型補正予算ありき」で、経済対策をまとめるつもりなのか。

対策の費用の一部を盛り込む今年度の補正予算は、自民党内で「10兆円規模」を求める声が広がる。二階俊博幹事長が「思い切った予算を組むべきだというメッセージ」として言及し、公明党とは「少なくとも10兆円程度の大型の補正を組み、国民に安心感を持っていただく考え方で一致」した。政府への提言でも「未来への投資が財源の制約によって機を逸することは望ましくない」と念押しした。

「総理からもしっかりとした規模で力強い経済対策を、と言われている」。対策をまとめる西村康稔経済再生相も、規模感重視で歩調を合わせる。

しかし、「10兆円」の根拠は聞こえてこない。海外経済の下ぶれリスクなどに備えるというが、どれほどの影響を予測し、国の財政支出でどの程度、支える必要があるのか。

一方で政府は、景気の先行きについて「各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される」との見解を維持したままだ。

これでは必要性も定まらないのに金額ばかりが先行してしまい、予算をばらまくだけになりかねない。

対策の費用は、今年度の補正予算と来年度の当初予算に計上する。政府が検討しているのは、災害対応のほか、自動ブレーキなどを搭載した安全運転サポート車の購入支援や、就職氷河期世代の就労促進、学校に1人1台のパソコン整備、マイナンバーカードによるポイント還元などがある。

畜産・酪農の収益力強化や中小企業の支援、訪日外国人客への対応など、毎年の予算要求で目にする政策も少なくない。

特に、財政規律が働きにくい補正予算には事業をのせやすく、政治的な存在感を示すのには都合がいい。政権のこれまでの政策では何が不十分で、どこまで急いで対応すべきなのか。過去の検証や政策の中身の吟味が置き去りにされていないか。精査を忘れてはならない。

今年度の当初予算は101・5兆円。いずれも10兆円以上の補正予算を組み、東日本大震災とリーマン・ショックのそれぞれの危機に対応した際の年間の歳出額を、すでに上回る。税収は想定より落ち込む見通しで、補正予算では国債を追加発行することもありうる。

経済対策の規模も中身も、政府は厳しく問い直すべきだ。財政や社会保障制度の持続可能性が危ういのに、必要性や効果を見極めないまま大型補正を組んでも、「国民の安心感」にはつながらない。
posted by (-@∀@) at 12:01| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[朝日新聞] ウイグル問題 民族弾圧は許されない (2019年11月29日)

恐ろしい「想定問答集」である。里帰りした学生が、自らの家族が拘束されたことを知る。その際、地元当局者はこう対応するよう指示されている。

(学生)わたしの家族は罪を犯したのですか?

(当局者)彼らはよくない思想に感染しました。思想上のウイルスを取り除けば、すぐに自由になれますよ――。

中国の新疆ウイグル自治区のイスラム系住民に対する弾圧は今も、ベールに包まれている。だが最近、注目すべき報道が相次いで世界を驚かせている。

米ニューヨーク・タイムズが入手した中国当局の内部文書には、冒頭の問答集を含む様々な当局の内実が記されていた。

世界の報道機関や記者でつくる「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)は、新疆に強力な監視網が張り巡らされたことを示す文書を報じた。1週間で2万人以上が、テロ関連で「疑わしい人物」として特定されたという。

別の内部文書によれば、習近平(シーチンピン)国家主席は「イスラム過激分子」を「容赦なく」取り締まれと指示したとされる。人権団体の報告では、「テロ対策」の名目で100万人規模の人々が収容されたとの情報もある。

確認はむずかしいが、重大な弾圧が起きているのは確かだろう。中国当局は「テロ」「過激思想」などの言葉を用いているものの、実態はウイグル族などの特定の文化と宗教の住民に対する民族的迫害と呼ぶべきだ。断じて容認できない人権侵害である。

中国政府は現地での記者の取材を制限している以上、説明責任は自らにある。情報を自ら積極的に公開し、国際社会の指摘に真正面から答えるべきだ。

中国政府は「過去3年間、新疆でテロは封じられている」として政策の正当性を訴えるが、説得力はない。民族としてのアイデンティティーや内心の自由は人間の尊厳にかかわる問題であり、公権力が踏み込むべき領域ではない。

そもそも強引にテロを封じ込める手法には限界がある。弾圧は憎しみを増幅し、世代を超えて大きな暴力に向かう。中国政府は強権ではなく、融和策によって各民族が共存できる社会を実現させるべきだ。

国外在住のウイグル族も恐怖を抱える。日本に住む30代の女性は「新疆にいるすべての親族の電話がつながらなくなった。生きているのかも分からない」と東京での集会で語った。

日本を含む国際社会は、現実から目をそらしてはなるまい。新疆を覆う闇の実態を明らかにし、膨大な数の人々を救う国際的な取り組みを急ぐべきだ。
posted by (-@∀@) at 12:00| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする