2019年10月31日

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[東京新聞] 英総選挙へ EU離脱を問い直せ (2019年10月31日)

欧州連合(EU)が英国の離脱期限延期を認め、今月末の合意なき離脱は当面回避された。英国は十二月に総選挙を実施する。混乱が続くEU離脱の是非を問い直す好機としたい。

七月に就任したジョンソン英首相は、EUと新離脱協定案で合意したが、下院は採決を見送った。

ジョンソン氏はEUとの合意や英議会の承認がなくても、今月末までにEU離脱を強行する構えだった。議会は協定案を承認しなかった場合に備えて、離脱期限を来年一月末まで延期するよう政府に義務付ける法律を成立させ、先手を打っていた。ジョンソン氏も従わざるを得ず、EUに離脱延期を申請、EUも承認した。

ジョンソン氏の専横を止めたのは、英議会の機能と底力だろう。

ジョンソン氏の総選挙実施動議は否決されたが、「合意なき離脱の恐れはなくなった」として最大野党・労働党が総選挙実施賛成に転じ、十二月十二日に行う法案が下院で可決された。

二大政党の最近の支持率は与党・保守党37%、最大野党・労働党22%にすぎず、選挙の行方は見通せない。

保守党は政権基盤を強化し、EU離脱実現を目指す。

EU残留派の野党第二、三党のスコットランド民族党、自由民主党は、総選挙を離脱の是非を問う再国民投票と位置付ける。

労働党も国民投票実施をマニフェスト(政権公約)に掲げるが、EUとの経済関係を重視する穏健離脱派もいて、一枚岩ではない。

新党「離脱党」は早期離脱を訴える。

離脱の是非を問うた国民投票から三年四カ月がたつが、政府案は何度も否決され、離脱の方向性すら見えない。紛争の火種になりかねない英領北アイルランドとアイルランドとの関係は定まらず、EUとの将来像も描けないままだ。

国民投票後に、分かったことも多い。

合意なき離脱の場合、食料品や医薬品の供給が滞り、社会不安も広がる。関税の復活で英国生産のメリットはなくなり、すでに自動車工場の閉鎖が相次ぐ。

総選挙は、EU残留か離脱かを再び意思表示する機会ともなる。議論が深まれば、離脱の是非を問う国民投票を再度実施してもいいのではないか。

ただ、三年前の国民投票時のような、根拠のないキャンペーンに左右されることのないよう、注意が必要だ。
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[産経新聞] 【主張】「身の丈」発言 受験生本位で制度見直せ (2019年10月31日)

大学入試の新共通テストで、英語の民間検定試験利用をめぐり混乱が続いている。萩生田光一文部科学相の「身の丈」発言が批判され、撤回に追い込まれた。

言葉尻を捉え受験生不在で批判する泥仕合は避けたいが、民間試験頼みの制度自体に問題がある。不安払拭のため、令和2年度からの実施は見送り、制度を見直すべきだ。

新共通テストは大学入試センター試験に代わり、3年1月に最初の試験が行われる。

このうち英語は、マークシート方式の試験と併せ英検など民間6団体7種の試験が利用される。受験する年度の4月から12月に受けた民間試験2回までの成績が大学側に提供される仕組みだ。

一方で一回5千?2万円程度する民間検定料の経済的負担のほか、地方と都市部で会場数が違う地域格差の問題など、高校側から多くの不安が示されている。

こうした不安に対し、萩生田氏はBSフジの番組で「裕福な家庭の子が回数を受けてウオーミングアップできるみたいなことは、もしかしたらあるかもしれないが、自分の身の丈に合わせて勝負して頑張ってもらえれば」「できるだけ負担がないように知恵を出したい」などと話した。

発言を撤回したのは妥当だが、それでは足りない。指摘される問題点を見直してもらいたい。

民間試験利用に必要な受験生の共通IDの発行申し込みが、11月1日から始まる。だが、文科省のまとめで、英語の民間試験の成績を合否判定に利用するとした大学・短大は国公私立合わせ6割にとどまっている。

民間試験の利用は、マークシート方式では「聞く・話す・読む・書く」の4技能をみるのに限界があるためだ。いくら勉強しても英会話力が身につかない日本の英語教育を変える狙いがある。だが、民間試験を導入するだけで英語が身につくと考えるのは早計だ。

英語力を問うなら各大学の個別試験で工夫し、入学後の教育を充実させればいい。入試は大学が責任を持ち行うべきことで、民間への丸投げは責任放棄に等しい。

経済的状況にかかわらず挑戦できる社会を目指す安倍晋三政権なら、「身の丈」と言わず、大いに競い合える透明性ある制度をつくり、大学入学後に人材を鍛える教育を促してもらいたい。
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[産経新聞] 【主張】英総選挙へ 長引く混迷に終止符打て (2019年10月31日)

欧州連合(EU)からの離脱か残留か。英国民は今度こそ混迷に終止符を打ってほしい。

英議会下院は、総選挙を12月12日に実施する特例法案を438対20の大差で可決した。10月末の「合意なき離脱」は回避された。

新たな離脱案に基づくEU離脱の是非を最大の争点に、与党保守党と最大野党の労働党の2大政党が軸の対決となる。離脱、残留両派による事実上の国民投票の色彩が濃い。

英国は、議会における合意形成がうまくいかず、2016年6月の国民投票から3年4カ月にわたって離脱の具体策をまとめられなかった。総選挙の実施決定を受け、ジョンソン英首相は「今こそ英国が団結してEU離脱を実現するときだ」と語った。

「合意なき離脱」も辞さないとして首相に就任したジョンソン氏は17日に急転直下、EUと新離脱案をまとめた。だが、野党が多数の下院は同意せず、EUへの延期要請を強いられた。

新離脱案をまとめた実績を背景に、少数与党の苦境を打開しようと総選挙に打って出た。勝利すれば新離脱案の議会承認を経て、年内にも離脱する道が開かれる。

最近の世論調査では、ジョンソン氏率いる保守党が労働党に10ポイントから15ポイントの差をつけて優勢が伝えられるが、強硬離脱を唱える「離脱党」の追い上げもあって、盤石とまではいえない。

野党労働党はまとまりに欠けている。コービン党首は「野心的な選挙戦を展開する」と述べ、EU残留を旗印に、総選挙に勝てば改めて国民投票を求める方針とされる。ただ、同党は一昨年の総選挙では「離脱」を公約にした経緯がある。今でも、EU関税同盟に残れば離脱していいという穏健離脱派を党内に抱えている。

12月総選挙の結果、EU離脱が決まれば、英国は直ちに次の大きな課題に直面する。離脱後の激変緩和のための移行期間に、英国はEUとの間で自由貿易協定(FTA)を結ぶ交渉を始める。

英政権は、日本や米国などともFTAを結ぶ方針だ。欧州以外にも幅広く経済的機会を求める「グローバル・ブリテン」構想を描いているからだ。

離脱の場合、日本は速やかに英国とのFTA締結や英国の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加入に動くべきだ。
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[毎日新聞] 沖縄米軍の降下訓練 ルール無視が同盟損なう (2019年10月31日)

在日米軍が沖縄の嘉手納(かでな)基地でパラシュート降下訓練を行った。防衛省が中止を要請する中で日米の合意を逸脱する行為が繰り返された。

降下訓練は航空機から人員や物資を投下する。海外に展開する米軍の即応態勢の維持に必要ではあるが、誤って基地外に落下すれば重大な事故につながる危険がある。本土復帰前にはトレーラーが落下して女児が死亡する事故が起きている。

かつては沖縄本島にあった読谷(よみたん)補助飛行場が訓練場所だった。県が飛行場の返還を強く求め、1996年の日米特別行動委員会(SACO)合意に基づき伊江島に移転された。

にもかかわらず、市街地に囲まれた嘉手納で行われるようになり、これまでに計13回、今年に入って4回目になる。米側は「例外的な場合」に限って嘉手納を使用するとした別の合意を2007年に日本側と交わし、それを根拠としてきた。

今回は伊江島の悪天候を理由として27日に日本側へ通告し、29日の日没後に実施した。しかし、同日の昼間に伊江島でも行っている。

視界の悪い夜間は海上に落下した場合の捜索が難しい。そうした危険のない嘉手納での夜間訓練を当初から想定していた疑念も拭えない。県や嘉手納町は強く反発している。

河野太郎防衛相が「天候は例外事由に当たらない」と批判したのは当然だ。これに対し、在日米軍司令部は例外の解釈について「定期的に行われないことを意味する」との反論をフェイスブックに掲載した。

これでは不定期の体裁をとればいつでも恣意(しい)的に嘉手納で訓練できることになり、常態化しかねない。解釈の相違を長らく放置してきたのだとすれば、日本政府の責任は重い。

防衛省はこれまでも訓練通告があれば中止を求めてきたというが、どこまで真剣に交渉したのか。河野氏は閣僚レベルで話し合う考えを示した。本気で談判してもらいたい。

そもそも伊江島ならいいという問題ではない。沖縄全体の負担軽減になることを前提に、伊江村が苦渋の判断で受け入れたものだ。その原点を忘れ、ルール無視がまかり通るようでは不信感が増すばかりだ。

河野氏は「日米同盟の維持強化に反する」とも指摘した。このままでは同盟関係を損ないかねない。
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[毎日新聞] テコンドー協会問題 外部検証で体制の一新を (2019年10月31日)

組織内の混乱が続く全日本テコンドー協会の金原昇会長ら理事が総辞職することになった。

今後、弁護士や大学教授による外部有識者の検証委員会が協会の運営体制をチェックし、約1カ月かけて新理事を選任する方針だ。

混乱は、強化指定選手の大半が9月の合宿をボイコットしたことで表面化した。指導体制への有力選手の不満だけでなく、金原会長のワンマン運営に対する理事たちの不信感も噴き出し、協会内部の亀裂を浮き彫りにした。

当初は批判を受け止めていなかった金原会長も、このままでは組織が維持できないと判断したのだろう。総辞職の方針を示した上で、有識者に組織の検証を委ねる形で出直しを迫られた。

だが、再び金原氏が理事に選ばれれば、会長に再任される可能性もある。事実、金原氏本人もそういう展開を否定していない。

それだけに検証委が協会立て直しの鍵を握っている。

検証委に入った境田正樹弁護士ら4人の外部有識者は、スポーツ庁が制定した「ガバナンスコード」の検討部会の中心的メンバーでもある。不祥事防止を目的とした競技団体の運営指針作りに携わった面々だ。

指針では、特定の人物への権限集中を防ぐため、競技団体の理事の在任期間を「原則10年まで」と制限している。運用は来年度からだが、これに照らして、2005年の協会発足時から10年以上も理事を務める金原会長の扱いが焦点となる。

テコンドー界では内紛による組織分裂や、金原会長のもとでの補助金の不適正処理、公益法人の返上などトラブルが続いてきた。

金原会長の責任はやはり重いと言わざるを得ない。検証委には組織内で何が起き、不信の根に何があるのかをしっかりと見極め、体制の一新を進めてほしい。

東京五輪に出場するのは、日本からは男女各2階級とすることが決まっている。代表の最終選考会は来年2月に実施される予定だ。

問題解決に残された時間は多くない。協会内の信頼関係を取り戻し、正常な組織として五輪に向かえるよう、検証委は新体制への移行に責任を果たしてもらいたい。
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[読売新聞] 英総選挙へ EU離脱を問い直す機会だ (2019年10月31日)

英国の欧州連合(EU)離脱の是非を国民に問い直す選挙となろう。混乱を収拾し、「決められない政治」から脱却する契機とせねばならない。

英国の総選挙が12月12日に行われる見通しとなった。ジョンソン首相が提出した総選挙の実施法案を下院が可決した。

与党・保守党の下院の議席数は過半数を下回る。英政府がEUと離脱案で合意しても、議会承認のメドが立たず、離脱を巡る分裂は社会全体に広がっている。

ジョンソン氏が総選挙を求めたのは、下院の過半数を確保し、主導権を握ったうえで、離脱関連法案を早期に成立させる狙いからだ。「今こそ国が団結してEU離脱を果たす時だ」と強調した。

英国民に提示される選択肢は、ジョンソン氏がEUとまとめた離脱案を認めるのか、野党が提唱する別の道を進むのか、である。

2016年6月の国民投票は、「残留か離脱か」の二者択一で、離脱がわずかに上回った。17年6月の総選挙は、保守党と最大野党の労働党がいずれも、離脱に伴う具体的な影響を有権者に提示せず、論争が深まらなかった。

2年余りにわたるEUとの厳しい交渉で、英国の提案が修正を迫られた過程を通じて、問題点がようやく国民の目にも明らかになったのではないか。

ジョンソン政権の離脱案は、英国がEUの関税同盟から抜けることを柱とする。英領北アイルランドとアイルランドとの自由往来を維持するために、北アイルランドには税関手続きや物品の規格などでEUルールの適用を認めた。

労働党は政府案に反対するが、党内は一枚岩ではない。コービン党首は、英国が離脱しても、関税同盟には残るよう、EUと再交渉すべきだと主張する。EU残留派は国民投票の再実施を求める。

これでは、政権への明確な対立軸とは言い難い。EU離脱は英国の長期的な針路を定める重大な問題だ。労働党は政権交代を求める以上、旗幟(きし)を鮮明にし、建設的な論争を展開してもらいたい。

EUは英国の要請に応じて、10月末の離脱期限を最長で来年1月31日まで延期することを決めた。英国とEUが「合意なき離脱」の回避で足並みをそろえたことは、せめてもの救いだ。

離脱の延期は3度目になる。トゥスク欧州理事会常任議長が「時間を有効に使ってほしい」と英国に注文を付けたのは当然だ。離脱の行方が不透明な状況を早急に解消することが求められる。

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[読売新聞] 新幹線浸水 教訓踏まえ弱点を克服したい (2019年10月31日)

整然と並ぶ新幹線が、泥水につかった姿は多くの人に衝撃を与えた。重要な交通インフラを水害からいかに守るか、検討を急ぐ必要がある。

台風19号による水害で北陸新幹線の車両センター(長野市)が浸水し、全車両の3分の1にあたる10編成120両が水没した。損害額は最大150億円に上る見込みだ。25日の東京―金沢間の直通運転再開まで約2週間かかった。

全線復旧後も本数は通常ダイヤより約1割少ない。年末年始の混雑時期に、十分な輸送能力を確保できるかどうか不透明だ。

新幹線は、ビジネスや観光など地域経済を支えている。浸水への備えや対応について、車両センターを使用するJR東日本は、徹底した検証を行ってもらいたい。

長野の車両センターは、過去の水害の記録から2メートルの盛り土がしてあった。だが、今年作られたハザードマップでは「1000年に1度」の前提ながら、最大10メートル以上の浸水が予測されていた。

ハザードマップの「警鐘」を生かせなかったのは残念である。

他のJR各社や私鉄も、危険性を緊急点検するべきだ。

鉄道の車両基地は全国各地にあり、浸水が想定されるエリアにも立地する。広大で平らな土地が必要なため、低地になりやすい弱点がある。全てを盛り土でかさ上げするのは無理があろう。

現実的なのは、水害が予想される時に、車両をあらかじめ安全な場所に退避させることである。

1967年に起きた豪雨の際、大阪にある東海道新幹線の鳥飼車両基地では、車両を高架線に避難させ、被害を免れたという。

今回、JR東日本は、栃木県にある東北新幹線の基地から、近くの那須塩原駅などに車両を移動させた。しかし、長野県は、台風の予想進路から外れていたため、対応しなかったとしている。

車両の退避は、運転士の配置や送電、信号の準備に、ある程度の時間がかかる。気象状況の見極めや迅速な退避の手順を決め、訓練を重ねることが求められよう。

台風19号では、福島県のJR磐越東線や長野県のしなの鉄道、岩手県の三陸鉄道などで次々に運休区間が出た。地域住民への打撃は大きい。バスなどで代替輸送しながら、早期復旧に努めたい。

大都市洪水への懸念が増す中、地下鉄の防災も重要になる。地下鉄各社は、駅やトンネル入り口、換気口からの浸水を防ぐ措置を取っているというが、万全の備えには不断の確認が欠かせない。

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[朝日新聞] 日本原電支援 東電はまず説明せよ (2019年10月31日)

東京電力が、日本原子力発電への資金支援を正式に決めた。日本原電が再稼働を目ざす東海第二原発(茨城県)の安全対策工事費を自前で用意できないため、将来買い取る電気の代金を前払いする形で、資金を拠出する。

「低廉で安定的かつCO2の少ない電気を届けるための電源として期待できる」のが支援の理由だという。しかし記者会見では、2200億円超になるとみられる支援規模は具体的に示さなかった。「低廉」と言いながら、電気の買い取り価格なども明かさなかった。同業者や専門家なら類推しうるだろう概要ですら、「他社との競争で不利になる」と口を閉ざした。

東電は福島第一原発の事故後、被害者への賠償や廃炉をすすめるため、実質国有化された。国民負担で生かされながら他社を助けようというのに、具体的な内容も、支援が妥当かどうか判断する根拠も説明しない。これでは国民の理解を得られるはずがない。

今回の資金拠出は「支援ではなく協力」であり、日本原電と「ウィンウィン」だと位置づけた。しかしそもそも、東海第二の再稼働には反対の声が根強く、地元の同意を得られる見通しは立っていない。「見切り発車」での支援決定だ。

東電は国とともにまとめた再建計画で、原発を使って収益をあげ、「福島への責任」を果たすとしている。自社の柏崎刈羽原発(新潟県)を早期に動かせそうにないことも「見切り発車」につながったのだろうが、首をかしげざるをえない。東海第二が稼働できなければ、収益どころか損失が膨らむだけだ。

東日本大震災の後、原発専業の日本原電の2基は止まったままだ。それでも受電契約を結ぶ電力大手は、これまでに計1兆円の「基本料金」を払い、再稼働に向けた支援でも各社が加わる枠組みが判明している。

日本原電には電力各社が出資しており、破綻(はたん)すれば損失が及ぶ。それを避けるためにも支え続けているのだろうが、その場しのぎには限界がある。

梶山弘志・経済産業相は東電の支援決定に対し、賠償や廃炉、電力の安定供給に支障が生じかねない場合をのぞき、「個別の経営判断は経営陣の裁量で行われるべきだ」とコメントした。経産省は東電の経営を差配しうる立場なのに、まるで人ごとのような口ぶりだ。

国策で進めながら再稼働が難しい原発をどうするのか、原発専業で先行きの見えない日本原電のあり方をどう考えるのか。業界まかせにせず、政府も主体的に取り組み、説明責任を果たさねばならない。
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[朝日新聞] 英国総選挙へ 「離脱」の争点を明確に (2019年10月31日)

欧州や世界の国々と、どんな関係を築きたいのか。

欧州連合(EU)からの離脱問題に揺れる英国で、12月に総選挙が行われる方向になった。英国と欧州の将来の姿を左右する選挙になるかもしれない。

きょう31日は、ジョンソン首相が「何が何でも離脱する」と宣言した期日だった。無秩序な離脱を回避し、民意を問う機会が生まれたのは、EUが3度目の離脱延期を認めたからだ。

新たな期日である来年1月末まで3カ月ある。英国は今度こそ、貴重な時間を有効に使わなければならない。

言うまでもなく最も重要な争点は「EU離脱」だ。ただし、有権者が思い描く選択肢は、離脱か残留かの単純なものではないことを認識しておきたい。

「強硬離脱」から「今の協定案よりソフトな離脱」「再度の国民投票」「残留」など多様な色合いで複雑化している。

与党保守党や最大野党の労働党など各党と候補者は、公約集や討論会などで考え方を明確に示す必要がある。それぞれの選択がどこへ導くのか、利点や問題点は何か、国民に誠実に示してもらいたい。

3年前の国民投票の際は、誤った情報が流布された。「EUから出れば、毎週約500億円を医療に回せる」と、事実でない宣伝もあった。最近も、無秩序離脱がもたらす市民生活への影響を予想した政府の機密文書の存在が明るみに出た。

政府も政党も、情報をゆがめることなく開示する。それが民意を問うための必須の前提であることを忘れてはならない。

ジョンソン氏は、僅差(きんさ)だった3年前の投票を理由に、「離脱を望む国民」と「阻む議会」との闘いだと訴え、議会での熟議を拒む姿勢を続けてきた。

選挙運動でそんな対立の構図を持ち出すべきではない。すでに世論が二分された社会で、さらに分断が進む恐れがある。

今後の行方次第では、連合王国としての英国の一体性が崩れる危険性もある。先の国民投票では、スコットランドと北アイルランドで残留支持、イングランドとウェールズで離脱支持が多数を占めた。実際、スコットランドの地域政党はEU残留と英国からの独立を掲げている。

今の協定案での英領北アイルランドの扱いも心配だ。プロテスタント系とカトリック系住民の対立で3千人を超す犠牲者を出した暗い過去がある。

北アイルランドだけが実質的にEUの関税同盟に残れば、1998年の包括和平合意が揺らぎかねないとも指摘される。

いくつもの重い懸案を論じるべき選挙である。英国民も冷静に判断し、票を投じてほしい。
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2019年10月30日

[東京新聞] 緒方貞子さん 現場主義を全うした (2019年10月30日)

国連難民高等弁務官として東奔西走し、戦火におびえる難民らに手を差し伸べてきた。自国第一主義が幅を利かす今こそ、「現場主義」を活動の基本とする緒方貞子さんの志に学びたい。

緒方さんが亡くなった。九十二歳だった。

「難民保護は抽象的な概念ではない。食料や毛布を与え、家を補修するなど、現場で最も効果的な具体策で対応することが重要」。ジュネーブの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)本部で一九九七年、緒方さんは本紙の取材に、こう強調していた。

内戦が激しかったアフリカ中央部のコンゴ(旧ザイール)、ボスニア・ヘルツェゴビナなど、訪れた現場は四十カ国以上に上る。

重要なのは、どの紛争当事者にも肩入れすることなく交渉し、各勢力の信頼を得ることだという。難民の移送や保護をスムーズに進めることができるよう、協力してもらうためだ。現場主義ならではの工夫が光る。

国連難民高等弁務官を約十年間務めた後、独立行政法人・国際協力機構(JICA)理事長に就任。国家間だけでは解決できない飢餓、難民の発生、感染症などの脅威から人々を守る「人間の安全保障」の理念を掲げた。

海外の態勢を手厚くし権限を拡大、青年海外協力隊を重視するなど、ここでも現場主義を貫いた。

難民の苦難は今も絶えることはない。内戦が続くシリアでは、五百万人以上もの難民と六百万人以上もの国内避難民が家を失った。ミャンマーでは、迫害された少数民族ロヒンギャ七十万人以上が難民となった。

しかし、トランプ米大統領は米国第一主義を唱え、難民への寛容政策を唱えたメルケル独首相は非難の砲火を浴び、欧州連合(EU)各国も難民受け入れに及び腰だ。日本の若者の海外への関心も低くなっているという。

「自分さえよければ」では、いずれ行き詰まるだろう。緒方さんのように世界の現場に足を運び、支援のための知恵を絞りたい。

国際社会で活躍する女性のさきがけでもある。自らも女性運動家の故市川房枝さんの勧めで国連の仕事を始めた。

大学や国連での仕事を経て、難民支援の道に入ったのは六十歳を過ぎてからだった。夫や子どもと離れての単身赴任も長かったが、家族の絆には気を配ってきたという。先駆者の勇気と行動力にも学びたい。
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[東京新聞] 「身の丈」発言 制度の欠陥認め見直せ (2019年10月30日)

撤回ですまされる話ではない。「身の丈に合わせて頑張って」という萩生田光一文部科学相の発言は、英語民間試験では公平性が担保できないことを自ら示している。制度を見直すべきではないか。

大臣はもちろんご存じだとは思うが、そもそもの話から書く。教育の機会均等は憲法一四条の法の下の平等と、憲法二六条によって保障されている。

これを具現化し一九四七年にできた教育基本法は「人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」とうたう。憲法一四条にはない「経済的地位」が追加された。貧富で子どもの未来が左右されてはならないという決意の表れだろう。二〇〇六年の改正後もこの部分は変わらない。

大学入学共通テストで導入される英語民間試験は機会均等の原則を損なう恐れがある。六団体七種類の試験は都市部での開催が中心で、受験料が二万円を超える試験もある。地方の受験生は交通費や、場合によっては宿泊費もかかる。共通テストで成績が使われるのは三年生で受ける二回だが、試験に慣れるためには同種の試験を繰り返し受けた方が有利だ。

萩生田文科相は自らの発言を撤回した二十九日の会見でも「制度としては平等性が担保される」と話す。しかし全国高等学校長協会が延期を求めるなどの異例の事態を見れば、教育現場がそう感じていないことは明らかだ。

すでに経済格差や地域格差が以前より高い壁となっている現実がある。〇八年のリーマン・ショック以降、首都圏の大学に通う地方出身者の割合は減少している。地方の受験生が挑戦しやすいよう制度を改革する大学もある。多様性が生み出す活発な議論が、イノベーションなどの新たな価値を生み出す効果を重視しているからだろう。

共通テストの民間試験も四年制大学の三割が使わず、出願資格とした大学でも別の手段で英語力を証明する余地を残したところもある。格差拡大への懸念が解消していないことの表れだ。

本来は格差を縮める努力をするのが政治家の役割だ。十一月には民間試験の利用に必要なID(個人の識別番号)の申し込みが始まる。混乱や懸念が拡大する中で新制度を強行してもよいのか。生まれた場所や家庭の経済状況だけではなく、この大臣のもとでの受験が不運だったと、受験生を嘆かせたくはない。
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[産経新聞] 【主張】マラソンの札幌案 IOCも責任の一端負え (2019年10月30日)

現場に混乱を招いておいて、責任は負わないのか。東京五輪のマラソン・競歩について、国際オリンピック委員会(IOC)が示した札幌開催案は、課題が次々と指摘されている。

費用負担をめぐり、東京都や大会組織委員会などが繰り広げる責任の押し付け合いにもIOCは頬かむりしており、腹立たしさを覚える。決定が遅れれば、迷惑を被るのは選手たちだ。夏の暑さばかりが取り上げられ、東京の印象まで悪くなりかねない。

都や組織委は30日から、IOC調整委員会と協議を行う。開催地決定が急を要するのは当然だが、一方的な発表で札幌案を既成事実化したIOCのやり方は乱暴に過ぎる。開催都市をかやの外に置いた今回の経緯に東京側は抗議し、説明を求めるべきだ。

IOCは札幌ドームを発着点とする案を示したが、出入り口の狭さから改修工事が必要となるなど実にお粗末な中身だ。発着点の候補に挙がっている大通公園も夏祭りの期間中という課題がある。

メダリストを東京に移動させて表彰式を行うとする提案も、セレモニーありきで「選手第一」にほど遠い。なぜレース中に気温の下がる夕方ではなく、日が高くなってゆく午前の開催を念頭に置いているのか理解に苦しむ。

札幌開催で生じた余分な費用についても、IOCは責任を負うべきではないか。東京で行うマラソン・競歩の開始時間を早朝にする過程には、IOCも関わっていたはずだ。五輪憲章は、財政面や運営面でIOCが責任を負わないとしているが、情勢の変化に応じて都合よく五輪の形を変えてきたのはIOCである。

選手の健康を考えれば、東京の夏が看過できないほど暑いのは事実だ。その対策として、都は約300億円かけて遮熱性の高い路面舗装を進めてきた。札幌開催があらゆる面で東京を上回るというなら、IOCは、納得のいく説明を尽くすべきである。

日本オリンピック委員会(JOC)が沈黙しているのも問題だ。盛夏に開催する夏季五輪は限界を迎えている。

日本のスポーツ界はそうした現実をIOCに突きつけてほしい。一部の競技・種目を冬季五輪に移すなど、選択肢を示す姿勢をなぜ見せないのか。言いなりとは、実に情けない。
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[産経新聞] 【主張】若い世代のがん 治療と支援の充実進めよ (2019年10月30日)

小児や思春期、若年のがんは高齢のがんに比べて対策が遅れている。突然にがんだと知らされる若い世代が安心して治療を受け、当たり前の生活に戻れるよう、万全の支援をすべきである。

国立がん研究センターと国立成育医療研究センターが小児(0?14歳)と、思春期・若年成人のAYA世代(15?39歳)の調査をまとめた。

小児がんを発症するのは年に2千?2500人だ。数は少ないが、子供の命を奪う大きな原因である。治療の専門性が高いため、国は全国に15カ所の「小児がん拠点病院」を指定し、治療の集約化を目指している。

一人一人に効果的で、質の高い医療を提供するためだ。治療だけでなく、精神的に支えていく役割も欠かせない。拠点病院には、研究開発の役割も求められる。症例を蓄積し、治療の改善や開発に取り組んでもらいたい。

しかし調査結果を見ると、集約化は十分に進んでいない。調査対象の約800の医療機関のうち、平成28年と29年に小児がんの初回治療が1?3例だったところが146もある。

これらの医療機関で治療を受けた患者の4割が脳腫瘍だ。症例数が少なく、実績のある医療機関での治療が求められる疾患だ。

子供が治り、希望を持って元の生活に戻るために、治療中も年齢に見合う学びや遊びを提供し、成長や暮らしに目配りをすることが必要である。

例えば10代やAYA世代の患者には、学業をサポートする態勢が必要だ。20代なら就職や、治療と仕事の両立などの不安がある。個々に異なる不安やニーズに対応できる、きめ細かい相談支援の態勢を整えてもらいたい。

ベストの医療を目指す一方で、患者や親族からすれば、なるべく近隣で治療を受けたいという気持ちがあるのは自然なことだ。

治療が長期化すれば経済的な負担も大きい。

こうした不安や悩みに丁寧に応え、疾患への理解を深めることが欠かせない。負担軽減を検討することも必要だろう。

小児の場合は、治療後も長期に副作用などのフォローが必要になる。小児がん拠点病院が、地域の医療機関と連携を強め、身近な医療機関で相談できるようにすることも重要である。
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[毎日新聞] 緒方貞子さん死去 現場と人間中心を貫いた (2019年10月30日)

日本人として初めて国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子さんが死去した。冷戦終結後の世界で、故郷を追われた難民らに寄り添い、その救援に全力を尽くした。

貫いたのは、徹底した現場主義と人間中心主義だった。小柄な体を防弾チョッキに包み、イラクや旧ユーゴスラビアなどの紛争地に自ら出向き、難民らの声に耳を傾けた。

弁務官に就任した1991年、湾岸戦争でイラクからトルコ国境に多数のクルド人が向かった。保護任務の対象でない「国内避難民」だったが、人道的視点から救援に乗り出した。難民支援の転機となった。

ちょうど冷戦構造によって封じ込められていた民族・宗教対立が表面化した時期だった。それだけに、人道支援が紛争当事者に政治利用されないよう細心の注意を払った。

「一番大事なのは人間です」。従来、国家を守る枠組みで語られてきた安全保障の領域において、国家に守られない個々の人々を守る「人間の安全保障」の重要性を提起した。

国際社会で活躍する日本人女性の先駆けでもあった。退任後は国際協力機構(JICA)初代理事長として人道支援と開発の連携を進めた。

グローバル化の進行に伴い、移民・難民は急増している。難民や国内避難民のように移住を強いられた人々は7000万人を超す。

「人道問題に人道的解決策はない」「難民問題の発端は政治」。緒方さんは政治指導者に人道危機解決への取り組みを働きかけてきた。

だが、難民や移民を取り巻く現状は目を覆うばかりだ。欧米の一部政府は「反移民」の受け入れ規制策を打ち出し、中東などの紛争地では難民の苦境に出口が見えない。

日本にとっても人ごとではない。昨年、日本で難民認定申請をした外国人1万人強のうち、認定を受けられたのは42人にとどまる。欧米に比べ、極めて少ない傾向が続く。

緒方さんは近年、難民の受け入れに慎重な日本の姿勢に苦言を呈し、日本が経済力に見合った「人道大国」になるよう訴えてきた。

私たちの集団的な努力で、避難生活の恐怖や苦痛を、安全と結束に変えられる――。紛争の犠牲者に向き合い続けた緒方さん。その願いはまだ果たされてはいない。
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[毎日新聞] 萩生田氏・身の丈発言 「本音」が不信増幅させた (2019年10月30日)

教育行政の理念に関わる問題と捉えねばならない。

来年度から始まる大学入学共通テストの英語民間検定試験について、萩生田光一文部科学相が「自分の身の丈に合わせて勝負してもらえれば」と発言し、撤回に追い込まれた。

検定試験は7種類ある。高校3年時にその中から2回まで受験した成績が志望大学に提供される。それまでに「練習」で受けられる回数に制限はない。試験によっては検定料が高額だったり、会場が都市部に偏ったりする。このため、経済、地域格差が生じると指摘されている。

発言は民放のテレビ番組で飛び出した。「裕福な家庭の子が回数を受けてウオーミングアップできるようなことはあるかもしれない」と認めたうえで、「そこは自分の身の丈に合わせて2回を選んで頑張ってもらえれば」と語った。

問題はまず、新制度が受験生の格差を拡大しかねないことを事実上容認している点だ。

萩生田氏は「どんな環境下にいる受験生も頑張ってもらいたいという思いだった」と釈明し、「説明不足だった」と謝罪した。だが、撤回では済まない。発言は萩生田氏の本音ではないかという疑念が消えないからだ。

高校側からは検定試験導入の延期を求める声が上がっている。文科省は検定料軽減などの配慮を検定団体側に求めているが、格差解消の見通しは立っていない。それでも、来月1日には試験で受験生が使うIDの発行申し込みが始まってしまう。

より深刻なのは、萩生田氏が教育基本法の定める「教育の機会均等」を理解していないことだ。テレビ番組で格差の指摘を受けて「『あいつ、予備校に通っていてずるい』と言うのと同じだ」とも述べた。

だが、予備校に通うかどうかは主に本人の判断であるのに対し、家庭や居住地を受験生は選べない。そうした事情で検定試験の「練習」ができなければあきらめるしかない。これらの不公平をなくすのが教育行政の役割のはずだ。「身の丈に合わせて」と言うのは開き直りに等しい。

今回の発言で、新制度への不信感がいっそう広がっている。制度の不備に目をつぶったまま見切り発車してしまうのでは責任の放棄だ。
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[読売新聞] 高校の国語 文学に親しむ機会失わせるな (2019年10月30日)

2022年度から始まる高校の新学習指導要領の国語が、波紋を広げている。科目の再編で、文学作品に触れる機会が減るのではないかとの懸念が出ているためだ。

現在の高校生は、1年生で必修科目の「国語総合」を学び、2?3年生で選択科目の「現代文」と「古典」を履修するのが一般的だ。夏目漱石や森鴎外などの文学作品は主に現代文で扱う。

新指導要領では、「現代文」が実用的文章を学ぶ「論理国語」と、文学を題材にする「文学国語」に分かれる。論理国語の方を選択し、近現代の文学を素通りする高校生が出ることを、日本文芸家協会などが心配するのは無理もない。

論理国語が設けられた背景には、高校生の読解力が低下し、リポートなどを書く力も乏しいという現状がある。評論文を読みこなし、筋道の通った文章を作成する能力を育むことは必要だろう。

ただ、こうした力だけが豊かな国語力を形作るものではない。

価値観や思考のベースを、文学作品から学ぶことは多い。感受性豊かな高校生の時期に、様々な人間の生き方が凝縮された文学に接する意義は大きい。

高校生の半数近くが、電子書籍も含めて月に1冊も本を読まなかったという調査結果もある。国語の授業は、高校生が本を読むきっかけになるかもしれない。

あたかも、「論理か文学か」という選択を学校現場が迫られるような指導要領の科目再編は適切だったのか、疑問が拭えない。

大切なのは、実践的な言語能力と、幅広い教養をバランス良く身につけさせることである。

指導要領に定められた選択科目の標準授業時間数は、教育委員会などの裁量で増減が可能だ。例えば、論理国語の時間を減らし、その分を文学国語に振り向けるといった対応もできる。

学校が柔軟なカリキュラムを組めるよう、教委は弾力的な編成基準を示してほしい。

大学の入試では、文学作品が出題されることは少なくなっている。近現代の文学は多様な解釈が可能で、模範解答を作るのが難しいといった理由からだという。

入試に出ない分野の勉強は、敬遠されがちだ。だが、文学を通じて、人の気持ちを理解する力を高めれば、長い人生のどこかで役立つ場面は来るだろう。将来を見据えた教育が求められる。

高校では、文学の魅力を生徒たちが主体的に感じ取れるような授業を工夫してもらいたい。

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[読売新聞] 緒方さん死去 今に続く難民支援の現場主義 (2019年10月30日)

紛争の現場に自ら足を運び、関係国の政府や軍と協力しながら、難民の命を救うことに全力を挙げた。日本の安全だけを考える「一国平和主義」を戒め、国際協力を訴えた。

国際情勢の不安定化が進む今こそ、「世界のオガタ」の姿勢を学び、受け継いでいきたい。

国連難民高等弁務官などを歴任し、日本を代表する国際人として知られた緒方貞子さんが、92歳で亡くなった。

緒方さんが国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のトップだった1991?2000年は冷戦終結後の激動期だった。内戦や紛争で大量難民問題が多発した。

イラクでは、フセイン政権の迫害を受ける少数民族のクルド人が、トルコから難民受け入れを拒まれ、行き場を失った。

UNHCRの本来の任務は、国外に出てきた難民の保護であり、イラク国内のクルド人は対象ではない。しかし、緒方さんは前例を踏襲せず、保護を決めた。

政府によって安全を保障されない「国内避難民」を難民と同様に扱う。緒方さんの現実的な判断は難民救援のあり方を変えた。

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争では、自らヘルメットに防弾チョッキ姿で現地入りした。国連が空輸する支援物資が孤立した住民を支えていることを強調し、国際社会に支援を呼びかけた。

国連の官僚主義にとらわれず、常に現場を見て、弱い立場にいる人々に寄り添ったことが、緒方さんが「行動する国連難民高等弁務官」と呼ばれたゆえんだろう。

弁務官の退任後は、国際協力機構(JICA)の理事長などを務め、紛争後の平和構築や開発支援の重要性を唱えた。国家の安全保障だけでなく、個々の人間の尊厳を重視する「人間の安全保障」の議論でも存在感を示した。

印象深いのは、精力的な活動を続ける中で、日本の現状を憂える発言が目立っていたことだ。

日本から海外に行く留学生の減少や、国際情勢への関心の薄さなど、内向きの傾向を案じていた。日本だけが世界から切り離されて「繁栄の孤島」を目指すことはできないとし、他国を尊重する社会になることを願っていた。

緒方さん自身、米国に留学し、働く女性が少ない時代に、子育てと母親の介護の傍ら、大学教員を務めた後、日本人、女性、学者出身として初の弁務官となった。

緒方さんのような国際的な人材が育つ環境をどう整えていくか。日本の課題の一つだろう。

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[朝日新聞] 緒方さん死去 「人間を守る」精神貫く (2019年10月30日)

「人間を助けることが何より大事と考えた」「命さえあれば次のチャンスが生まれる」

それは緒方貞子さんに言わせれば「本能的な常識」である。国際政治の難解な世界に、明快で普遍的な哲学を打ち立てた。その緒方さんが逝った。

国際協力の分野で最前線に立ち続け、確固たる実績を築いた稀有(けう)な日本人だった。終始ぶれることなく追求したのは、「人間の安全保障」である。

国家の枠組みにとらわれず、あらゆる脅威から人間の安全と尊厳を守る。その概念の実践を強めたのは、難民を支援する国連機関のトップに就いた1990年代初めからだった。

湾岸戦争のイラクの国内で、大勢のクルド人が行き場を失った。国連機関には難民の定義が活動の壁となったが、「国境を越えた難民は助けるのに、国内避難民だから助けないのはおかしい」と援助を決めた。

既存のルールの理屈ではなく、今その現場に生きる人間の目線で考える。その自由ながら現実に立脚した発想は、国境の垣根が低まるグローバル化の時代を先取りしていた。

日本の国際協力機構の理事長としても、視野の広さが際立った。途上国の教育に投資するだけでは不十分。教育後の就職ができる経済づくりも視野に入れねば自立にならない。そんな結果重視の支援を模索した。

人間の安全保障は日本やカナダなどが提唱し、2000年の国連総会が定めた「ミレニアム開発目標」につながり、今はSDGsの略称で知られる「持続可能な開発目標」に発展した。「地球上の誰一人も取り残さない」との目標を掲げる。

一方で、そうした理念の進展に逆行する動きが拡散したのも国際政治の現実である。

欧米で難民や移民を排斥する声が強まり、それを追い風にする指導者が伸長した。環境破壊や感染症、テロなど国境を超えた問題が山積するのに、自国第一主義が幅を利かせている。

だが、そんな風潮だからこそ日本は人間の安全保障の意義を再認識すべきではないか。かつて小渕恵三政権は外交政策の柱に据えて国連に基金を創設し、いまも存続している。

日本の国際貢献のあり方として、緒方さんが貫いた人間第一の目線と支援は貴重であり、これからの時代も活用すべき指針であるのは間違いない。

「誰も取り残さない」責任は政府だけでなく、NGOや企業など社会全体にあり、市民一人一人の行動も問われている。

「東日本大震災を経験し、国際社会の連帯の大切さが身にしみた日本だからできる」。緒方さんは晩年そう語っていた。
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[朝日新聞] 英語新入試 身の丈発言が示すもの (2019年10月30日)

制度が抱える構造的欠陥と、担当閣僚の不見識、無責任ぶりを示す発言と言うほかない。

来年度から始まる「大学入学共通テスト」に英語の民間試験が導入されることによって、家庭の経済状況や住む地域による不公平が生じるのではないか。報道番組で問われ、萩生田光一文部科学相はこう答えた。

「それを言ったら『あいつ予備校通っていてずるいよな』というのと同じ」「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえば」

民間試験は英検など7種の中から受験生が自分で選ぶ。入試として受けられるのは2回までと決まっているが、別途、腕試しは何度でも自由にできる。

受験料(1回約6千?2万5千円)に加えて会場までの交通費、場合によっては宿泊費もかかるため、都市部の裕福な家庭の子とそうでない子とで条件が違い過ぎると、懸念の声があがっている。生徒の側に「受けない」という選択肢はなく、予備校通いと同列に論じられる話でないのは明らかだ。

入試には貧富や地域による有利不利がつきまとう。その解消に努めるのが国の責務であり、ましてや不平等を助長することはあってはならない。それなのに教育行政トップが「身の丈」を持ちだして不備を正当化したのだ。格差を容認する暴言と批判されたのは当然である。

萩生田氏はきのう発言を撤回した。だが大臣として急ぎ取り組むべきは、改めて浮き彫りになった新制度の欠陥の是正ではないか。少なくとも受験料負担と試験会場をめぐる不公平の解消を図らねば、受験生や保護者の納得は得られまい。

民間試験に関しては、異なるテストを受けた者の成績を公平に比較できるかなど、他にも課題は多いが、萩生田氏は今月初め、「初年度は精度向上期間」と述べて物議をかもした。

改革の方向性は正しいのだから、多少問題があってもやるしかない。氏に限らず今回の入試改革の関係者には、そんな開き直った態度が見え隠れする。

文科省のまとめでは民間試験を活用する大学・短大は6割にとどまる。中には一部の学部でのみ使う例もあるので、実際の使用率はもっと低い。また、求める得点レベルを極端に下げ、事実上成績不問とする大学も珍しくない。入試で最も大切な公平・公正に対する不安と不信の表れにほかならない。

改革の目玉である民間試験への懐疑は、共通テスト制度そのものの信頼を揺るがす。矛盾を放置したまま実施を強行し、本番で問題が噴出したらどうなるか。文科省にとどまらない。そのリスクを政府全体で共有し、対策を講じるべきだ。
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