2019年06月30日

[東京新聞] 米中の覇権争い 共存の道はあるはずだ (2019年06月30日)

米中両国の貿易戦争はひとまず小康状態に入った。大国同士がいがみ合えば世界が迷惑する。両国は衝突を避けて共存の道を歩んでほしい。

世界中が胸をなで下ろしたことだろう。トランプ米大統領と習近平中国国家主席による交渉が決裂に至らず、国際経済により深刻なショックを与える事態を当面は回避できたことを歓迎したい。再開される貿易協議では、双方が歩み寄ってほしい。


◆ハイテクめぐる対立
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大阪で開かれた二十カ国・地域首脳会議(G20サミット)も、この米中対立の影に覆われた。議長役の安倍晋三首相が「貿易制限措置の応酬はどの国の利益にもならない」と訴えれば、各国首脳からも懸念の声が相次いだ。

それでも首脳宣言には「保護主義と闘う」との文言は盛り込めず、力強いメッセージを発信できなかった。二〇〇八年に起きたリーマン・ショックへの危機対応として発足したG20サミットは、曲がり角にきている。

中国は建国百周年の四九年までに「製造強国」の先頭に立つべく、最先端技術の振興を国を挙げて進めている。

これに対し、米国は中国のハイテクたたきに躍起だ。人工知能(AI)や第五世代(5G)移動通信システムが米国の安全保障に関わり、世界の覇権の行方を左右するからだ。通商問題を超えて覇権争いに発展した米中対立は「新冷戦」とさえ呼ばれる。長期化は避けられない。

一九八〇年代、衰退したソ連に代わって日の出の勢いの日本を米国は警戒し、日本たたきに出た。ナンバー2が力をつけて自分を脅かすようになるのを米国は許さない。今は中国が標的である。

中国が経済的な発展を遂げれば、責任あるステークホルダー(利害関係者)として米国主導の国際秩序の中に取り込める−。米国が〇一年の中国の世界貿易機関(WTO)加盟を後押ししたのには、こんな期待があった。

ところが中国の急速な軍備増強や膨張主義的な海洋進出をみて、米国で警戒論が台頭。今では期待を裏切られたという反感が党派を問わず政界に充満する。

関税引き上げで他国を脅すトランプ流に冷ややかな米議会も、こと中国に限ってはもろ手を挙げて賛成だ。

トランプ政権が華為技術(ファーウェイ)排除に同調するよう日本はじめ同盟国に求めたのは、米国をとるのか中国をとるのか、と二者択一を迫ったに等しい。これに中国も対抗措置に出れば、IT産業の国際市場は分断され、サプライチェーン(供給網)も寸断される。

関税の報復合戦による保護貿易の横行と、ブロック経済化に伴う経済分断が第二次大戦に行き着いた教訓を忘れてはならない。

ただ、トランプ氏も二十九日の会見で、米企業に華為技術との取引を認める意向を示し、姿勢をやや軟化させた。

一方、中国は通商交渉で折り合えば米国も矛を収める、と甘く見ていたふしがある。対米交渉担当者の劉鶴副首相が「米国の姿勢がこれほど厳しいとは思わなかった」と漏らしたとも伝えられる。


◆衝突を避けるためには
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世界第二の経済大国にのし上がったとはいえ、経済発展を続けて国民全般に富が行き渡らないと、共産党独裁体制の正統性が揺らぐ。その経済成長を維持するには対米関係の安定が不可欠−。これが中国側の一般認識といわれる。

「太平洋は中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と太平洋の米中二分論を唱えて鼻息の荒かった習氏。最近は「太平洋は中・米とその他の国も受け入れることができる」と発言を微妙に変えた。

八九年の天安門事件を国際社会から指弾された中国は、爪を隠して力を蓄えようとした〓小平氏の韜光養晦(とうこうようかい)路線に踏み出した。習氏もこれを教訓にトーンダウンさせたようだ。

ただし、習政権が進める大国路線を見直さない限り、米国との衝突軌道を外れることはできない。

全面対決を避けるため、米中双方に求められるのは自制と理性だ。強硬論に引きずられれば、引くに引けない立場に追い込まれる。相手の意図を誤解しないように意思疎通にも努めてほしい。


◆主体性問われる日本
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翻って両大国の狭間(はざま)にある日本。米国主導による戦後の国際秩序を米国自身が否定する挙に出ている。日本は米国に同調しているだけでは立ちゆかない。主体性をどう出していくのか、国の針路に関わる。

中国とは摩擦をできるだけ減らし、安定した関係を築くことが必要だ。習氏の来春の訪日を相互に実りあるものにせねばならない。

※〓は登におおざと
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[産経新聞] 【主張】G20と米中 自由貿易を守る原則貫け 覇権争いの長期化に備えを (2019年06月30日)

安倍晋三首相が議長を務めた20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が閉幕した。首脳宣言には「自由、公平、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易・投資環境」という自由貿易の基本的な原則が盛り込まれた。

保護主義と闘うというG20の基本理念は昨年に続いて明記しなかった。米国の強い反対を踏まえて断念せざるを得なかったのだろう。これをもってG20の限界を批判するのはたやすい。

だが、懸案を一気に解決するのが難しいのは理解できる。米中両国は剥(む)き出しの自国主義で激しく対立している。まずは米中双方が納得できる自由貿易の原則を確認し、それに沿うよう促したのは現実的なアプローチといえる。

≪データ保護主義を阻め≫

幸い、G20と合わせて行われた米中首脳会談で、貿易交渉が決裂する事態は回避された。世界経済全体が悪化するリスクが多少なりとも遠のいたのは歓迎できる。

重要なのは、この間にG20が協議を進展させ、米中対立の根本にある中国の構造問題を解消する道筋をつけることだ。米中首脳と良好な関係を築く首相には引き続きこれを主導する責務がある。

G20が米中両国に翻弄される構図は、これまでの閣僚協議などと変わりがなかった。各国首脳からは米中摩擦がもたらすリスクを懸念する声が相次いだが、これを減じる効果的な打開策を打ち出せなかったのは残念である。

首相は会見で「世界経済は貿易をめぐる緊張から下振れリスクがある」と述べ、「G20がさらなる行動を取り、経済成長を牽引(けんいん)していく決意で一致した」と語った。具体化を急がねばならない。

大阪サミットにはいくつかの注目すべき成果がある。自由なデータ流通のルールを作る枠組み「大阪トラック」の開始や、世界貿易機関(WTO)改革などで合意したことだ。いずれも米中摩擦と密接に絡むテーマでもある。

人工知能(AI)やロボットなどの最先端技術が経済や社会に行き渡ろうとしている。その基盤となるデータを集積し、ビッグデータとして分析、活用できるかどうかが各国の成長を左右する。

そのためにも、信頼性のあるデータの自由な流通を確保する意義は大きい。米中が対抗する第5世代(5G)移動通信システムによる技術革新にもつながろう。

問題は、中国が、外資を含む内外企業が自国内で集めたデータを囲い込み、国家で管理しようとしていることである。いわゆるデータ保護主義は、中国が追求する覇権主義と表裏一体なのである。国境をまたいだデータ移動を重視する米国に対し、欧州は個人情報保護の規制を求める。こうした立場の違いを乗り越えられるかが大阪トラックの成否を左右しよう。

≪決裂回避も対立は深い≫

WTO改革も喫緊の課題だ。WTOは、市場経済の国際ルールを軽視し、不公正な貿易慣行を改めようとしない中国などの振る舞いに対応できていない。米国がWTOよりも2国間協議を重視するのも、そこに不信があるからだ。米国はWTOの紛争処理手続きで最終審にあたる上級委員会の欠員補充について同意を拒んでいる。紛争処理が機能不全に陥らぬよう実効性ある改革を急ぎたい。

一方、トランプ米大統領と習近平中国国家主席の首脳会談は通商協議を続けることで一致し、トランプ氏は対中制裁関税第4弾の発動を当面見送ると表明した。

すでに米中対立の悪影響は各国の企業活動に及んでいる。制裁対象を拡大すれば世界経済の成長率が0・5%押し下げられるという国際通貨基金(IMF)の試算もある。決裂回避は各国首脳にとっても安堵(あんど)できる動きだろう。

だが、両国の深刻な対立が打開できたわけではない。

米政府は米企業に対し、中国通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」への部品供給を禁じる措置を発表していた。トランプ氏は会談後、一転して華為への部品供給を認める意向を示したが、安全保障上の影響をもたらす部品は認めない条件付きだ。デジタル覇権を阻む意思に変わりはない。

米中協議は貿易問題にとどまらない。共産党政権による企業、経済支配が解かれない限り、安保上の深刻な懸念が解決しないということだ。人権問題もある。対立は長期化しよう。この点を厳しく認識しておくことが必要である。
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[毎日新聞] G20大阪サミット閉幕 米中摩擦の緩和に至らず (2019年06月30日)

大阪を舞台に日本初の主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が開かれ、2日間の日程を終えた。世界経済や地球環境を巡る多くの課題に直面する中、日本は議長国としてかじ取りを問われた。

最大の焦点となったのは米中貿易戦争への対応だ。だが米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席の会談は休戦に合意する程度にとどまり、G20として摩擦緩和に向けた協調態勢を築くには至らなかった。

両首脳の会談は世界経済の行方を左右するものとして、世界から注目された。トランプ氏は不調に終われば中国からの全輸入品に制裁関税を課す方針を示していたが、会談後に発動を当面見送ると表明した。


グローバル経済の分断
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全面対決に発展すれば、世界経済が深刻な打撃を被るのは必至だった。高関税で負担の増す米国企業の反発も強く、トランプ氏も考慮せざるをえなかったのだろう。

とはいえ打開のめどは立っていない。貿易不均衡の是正というレベルを超え、安全保障に直結するハイテク覇権争いに発展しているからだ。

心配なのは、米中が自国に有利な経済圏を作るブロック化を進め、グローバル経済が分断されることだ。

米国は、次世代通信技術5Gで世界をリードする中国ファーウェイ(華為技術)の排除に乗り出し、同盟国にも同調を迫っている。対抗して習氏はサミット前、ロシアのプーチン大統領と会談しファーウェイとロシア通信大手の提携に合意した。

トランプ氏は習氏との会談後、米国からのファーウェイ向け部品販売は容認する意向を示した。だが、中国との取引の一環で、米国などからファーウェイ製品を締め出す基本姿勢は変えていないとみられる。

米国は、中国政府がハイテク産業に過度な補助金を出していると批判する。だが官民一体の産業育成は中国特有の国家資本主義の根幹だ。習指導部には譲れない一線である。

今年は冷戦終結から30年に当たる。中国の台頭に象徴される経済のグローバル化が進んだ。米国企業が日韓の部品も使って中国で生産し、高性能で割安なスマートフォンなどが世界に出回るようになった。米中対立が長引くと、冷戦後の発展を支えた国際分業が寸断されかねない。

本来、世界経済の安定に協調するのがG20だ。だが「米国第一」を掲げるトランプ政権の発足で空洞化し今回も役割を果たせなかった。

象徴的なのは、保護主義に反対する文言を首脳宣言に盛り込めなかったことだ。トランプ政権の意向で消えた昨年の宣言に続くものだ。

2008年のリーマン・ショック後に始まったG20サミットは「反保護主義」を宣言に明記していた。G20は体制が違う国の集まりだ。それでも経済のグローバル化で協調の必要性が高まり、最低限の共通認識としたのが「反保護主義」だった。

今回も米中対立に懸念の声が相次ぎ、宣言は「貿易を巡る緊張は世界経済のリスク」と明記した。だが米中が意に介した形跡はない。休戦も米中の駆け引きの産物だ。


プラごみでは一定成果
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かつて米国と国際協調を担った欧州でも協調重視派は退潮傾向にある。米中のパワーゲームに世界が振り回されているのが実態だ。

議長国の日本は協調立て直しに努めた。世界貿易機関(WTO)の改革を首脳宣言に盛ることを主導したのは日本だ。中国に補助金是正などを促す仕組みを目指し、米国を多国間の枠組みにとどめる狙いだ。

経済のデジタル化に応じた国際的なルール作りや、プラスチックごみによる海洋汚染対策でも一定の成果をあげたと言えよう。

もっとも日本の役割は限られた。政府はそもそも「反保護主義」の文言は困難とみていた。安倍晋三首相は会議で「貿易制限の応酬はどの国の利益にもならない」と呼びかけたが、それ以上踏み込まなかった。貿易交渉中の米国を刺激したくないとの思惑が働いたのではないか。

何より必要なのは、米中が今後の協議で共存を探ることだ。大国として世界経済の安定に責任がある。

トランプ氏には、対中強硬姿勢を保てば大統領選に有利、との計算もあるのだろう。選挙目当てで世界を混乱に巻き込むのは許されない。

中国の国家資本主義も国際的に異質な体制だ。補助金に依存する体質から抜け出すことは中国の安定成長に役立つはずだ。中国が自主的に取り組むべき課題である。
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[読売新聞] 米中首脳会談 制裁と報復の応酬に歯止めを (2019年06月30日)

◆建設的な対話で打開策を探れ◆

米中両国は世界の国内総生産(GDP)の4割を占める。貿易戦争は、多くの国に深刻な影響を及ぼす。両国はその責任を自覚し、建設的な対話を積み重ねる必要がある。

大阪市で開かれた主要20か国・地域(G20)首脳会議に合わせ、米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席が会談した。膠着(こうちゃく)状態に陥っていた貿易協議を再開させることで合意した。

◆協議再開も楽観できぬ

協議は5月に物別れに終わり、世界経済の先行き懸念が強まっていた。決裂という最悪の事態はひとまず回避され、事態はわずかながら改善したと言えよう。

トランプ氏は記者会見で、追加の制裁関税発動を当面見送るとした上で、「中国は、米中西部の農家が生産する農産品を購入することになるだろう」と述べた。

米政府が制裁対象とする中国の通信機器大手「華為技術」(ファーウェイ)に米企業が製品を売ることを容認する考えも示した。

ただ、両国の隔たりは大きい。問題の先送りに過ぎず、交渉の行方は楽観できまい。

米側が見直しを強く求めている知的財産権の侵害や、自国企業への不透明な補助金支給を巡り、中国が実効性のある改革案を示せるかがカギになる。

補助金を使った産業育成は、国が経済活動を主導する中国の国家戦略の根幹をなす。この問題を棚上げしたまま、自由貿易の重要性を訴えても説得力を欠く。

外国企業に対する技術移転の強要も問題視されている。中国は行政などによる露骨な強制は禁じたが、「抜け道」は残されており、改善の余地は大きい。

中国は、10月に建国70年を迎える。その節目の年に、米国に大幅な譲歩を強いられたとの見方が広がれば、習氏の威信に傷がつく。交渉の阻害要因となろう。

補助金政策などについては日本や欧州も批判している。中国は、各国の不信感を取り除き、企業が安心して活動できる環境の整備に取り組まねばならない。

来年11月の大統領選で再選を目指すトランプ氏は、貿易赤字の縮小にこだわる。先端技術や軍事面で中国との覇権争いは激化している。米議会は、与野党問わず、対中強硬路線を支持する。中国に安易に譲歩するとは考えにくい。

◆追加措置は自制すべき

だが、制裁をちらつかせて屈服を迫る恫喝(どうかつ)外交だけでは、合意をより困難にするのではないか。

米中両国は昨夏以降、それぞれの輸入品に高い関税をかけ合ってきた。その余波で、世界の貿易量は減少傾向にあり、製造業を中心に企業心理の悪化が目立つ。

米国が検討していた対中制裁の第4弾は、約3000億ドル(約32兆円)の中国製品に最大25%の関税を上乗せするものだ。

スマートフォンや衣料品など身近な製品が対象で、これまで以上に影響は大きい。小売価格に転嫁されれば、米GDPの7割を占める個人消費の重荷になる。

世界の企業は部品供給網や設備投資の見直しを迫られる。米国は協議の結果次第で制裁を発動する構えだが、あくまで自制し、妥協点を見いださねばならない。

中国は対抗措置として、ハイテク製品の生産に必要なレアアース(希土類)の輸出規制をほのめかしている。米国はレアアースの8割を中国から輸入する。制裁と報復の応酬に歯止めをかけることが何よりも重要である。

◆協力し北の非核化促せ

北朝鮮の核・ミサイル開発は、米中が協力すべき課題だ。習氏は、先の訪朝で会談した金正恩朝鮮労働党委員長の意向をトランプ氏に伝えたとみられる。

2月の米朝首脳会談が決裂した後、米国は北朝鮮に対して「完全な非核化」を求める姿勢を崩していない。段階的な非核化を容認する中国との溝は大きい。

北朝鮮は一部の核施設を廃棄する見返りに、制裁の全面解除を求めている。金委員長が完全な非核化の決断に踏み切らず、具体的措置をとっていない以上、制裁圧力を緩めるのは時期尚早である。

朝鮮半島情勢の安定に向け、中国は北朝鮮に対する影響力を行使し、米朝非核化協議の再開を後押しすることが求められる。

トランプ氏が中国の人権問題を積極的に提起する姿勢を見せなかったのは気がかりだ。

香港での「中国化」の動きや、少数民族のウイグル族への弾圧など、中国の「力の統治」には国際社会の懸念が強まっている。米国は習政権に、人権状況の改善を訴え続けねばならない。

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[朝日新聞] 大阪G20閉幕 安倍外交の限界見えた (2019年06月30日)

世界のリーダーを大阪に招き、安倍首相が議長を務めたG20サミットが終わった。直面する課題に確かな処方箋(しょほうせん)を示せたのか、首脳外交の華やかさに目を奪われることなく、その成果を冷徹に問わねばならない。

採択された首脳宣言は、08年のG20サミット発足以来、明記されてきた「反保護主義」への言及が、昨年に続いて見送られ、「自由、公平、無差別な貿易と投資環境を実現するよう努力する」と記された。

首相は閉幕後の記者会見で、「自由貿易の基本的原則を明確に確認できた」と強調したが、米国への配慮は明らかだ。

「米国第一」を譲らず、国際秩序を揺るがし続けるトランプ米大統領の説得を、最初からあきらめていたのではないか。

首相が腐心するトランプ氏との蜜月は、具体的な課題の解決に生かせてこそ意味がある。

だが、首相が仲介外交に乗り出した米国とイランの対立や、サウジアラビアの記者がトルコで暗殺された事件をめぐって、突っ込んだ議論が交わされた形跡はない。会議の成功を優先し、難しいテーマから逃げたと見られても仕方あるまい。

会議と並行して行われた二国間会談でも、安倍外交の限界が浮き彫りになった。

トランプ氏が米メディアのインタビューに、日米安保条約は不平等だと不満を表明した直後の日米首脳会談でも、首相が真意をただすことはなく、何事もなかったかのように、日米同盟の重要性が確認された。

ところが、トランプ氏はきのうの会見で、安保条約が「不公平だ」とし、首相に「変えなければならないと言った」と語った。条約破棄は否定しており、貿易交渉などで日本側の譲歩を引き出す狙いだろうが、同盟の信頼関係に影響しかねない。

親密な個人的関係を成果につなげることも出来ず、いいように揺さぶられている現状を、首相はどう説明するのか。

一方、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領との首脳会談は見送られた。中国の習近平(シーチンピン)国家主席には「永遠の隣国」といって近づきながら、重要な隣国である韓国との関係悪化を放置するのは、賢明な近隣外交とは言いがたい。

安倍政権で目立つのは、国内世論の受けを優先させる姿勢だ。G20サミットは例年、G7サミットの後に開かれてきた。今回、G20議長国の日本が慣例に反し、G7の前に開催したのは、参院選の直前に「外交の安倍」を世論にアピールする狙いとみられている。

いったい、何のための外交なのか。長期的な戦略より政権維持の思惑が優先されるなら、その行き着く先は危うい。
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[朝日新聞] 米中首脳会談 世界の不安解く交渉を (2019年06月30日)

2大国の首脳が直談判した結果は、決裂を避けつつも問題の先送りでしかなかった。両者が「自国第一」から脱しない限り、世界の不安は解消しない。

トランプ米大統領と習近平(シーチンピン)中国国家主席が大阪で会談した。焦点の貿易問題について、交渉の再開で合意した。米側は制裁関税「第4弾」を見送る。

最悪の事態を回避し、話し合いの席に戻るのは前向きではあるが、展望は明るくない。

両首脳は昨年12月の前回会談でも、対話による解決で一致していた。折り合えないとみるや米国は第3弾の制裁に踏みきり、交渉を中断した。

争点である中国の国内産業への補助や知的財産権の侵害などについて、今回の発表で言及はない。今後も再び時をやり過ごすとすれば無責任である。

米中の報復の応酬は、世界経済に打撃を与えている。国際通貨基金によると、双方の関税措置などにより、2020年の世界の成長率が0・5%縮小しかねないという。

米中が経済的に正面から衝突すれば、損失は計り知れない。今度こそ、持続可能な真の合意につなげなくてはならない。

そもそも米中間には対話を深めるべき課題が山積している。

南シナ海問題、核軍縮・不拡散、地球温暖化など、米中抜きに問題の進展はありえない。そうした諸問題の論議が、貿易問題のあおりで低調なままなのは憂うべき事態である。

米中対立はもはや貿易にとどまらず、世界における覇権争いであるとの見方は根強い。そのため「新たな冷戦」とまで呼ばれるが、ここは20世紀型の古い思考に陥ってはなるまい。

中国企業の華為技術(ファーウェイ)に対し、トランプ政権は5月、米企業による輸出制限を発動。中国人の留学生受け入れなどでも、交流の「壁」を築くような動きを見せていた。

だが、それは米国にとっても損失と気づいたのか。トランプ氏は今回の会談で、華為への輸出を認め、中国人の米国滞在にも配慮をすると約束した。

技術革新も人的交流もグローバル化した今、米中も深い相互依存の関係にあり、「冷戦」構造をつくれるはずもない。両首脳とも、その現実を国内に説いて妥協を探るほか道はない。

習氏は会談で「協力は摩擦より良く、対話は対抗より良い」と語り、トランプ氏も記者会見で米中は「戦略的パートナー」になりうる、と述べた。

21世紀の国際環境を形づくるプロセスは、米中関係に大きく影響される。両首脳は足元の国内世論ではなく、世界の未来を考える大局観をもって交渉を進めてほしい。
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2019年06月29日

[東京新聞] 日中関係改善 「永遠の隣国」というなら (2019年06月29日)

安倍晋三首相は二十七日、大阪市で中国の習近平国家主席と会談した。「永遠の隣国」として協力する考えで一致したというが、大切なのは外交成果の演出でなく、隣国としての真の信頼構築だ。

首脳会談で、安倍首相は「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」と述べ、習氏が来春にも国賓として訪日することで合意した。

確かに、二〇一二年の日本政府による尖閣国有化によって長く凍(い)てついた日中関係は、昨年の李克強首相の訪日や安倍首相の七年ぶりの公式訪中で首脳往来が実現するまでに雰囲気が回復した。

だが、首脳間の真の信頼関係醸成が、両国関係を前向きに動かす力になったとは言い難い。

中国は一七年、習氏が進める「一帯一路」構想に日本が協力を示したことで歩み寄り姿勢に転じた。訪日した習氏には、米中貿易摩擦の悪影響を抑えるため日本の協力を得たいとの思惑が強い。

日本の対中接近には、北朝鮮による日本人拉致問題で中国の協力が不可欠との事情も横たわる。

今回の首脳会談では「永遠の隣国」を将来の日中関係のキーワードとし、ハイレベルの相互往来を強化する考えが示された。

そもそも地政学的に隣国の日中間で、あえて「永遠の隣国」を唱えるならば、粘り強く緊密な意思疎通を図り、真の信頼構築へとつなげるものでなければならない。

歴史を振り返れば、一九七二年の北京での国交正常化交渉で、田中角栄首相と周恩来首相は戦後処理の問題などで激しく応酬。その後、田中首相一行と面会した毛沢東主席は「ケンカはすみましたか。互いに言うべきことを主張しケンカしてこそ仲良くなれるものです」と言ったという。

半世紀近く前の毛氏の発言は、今の日中関係で欠けている点をついているとも言えそうだ。

外交的な蜜月ぶりを演出するよりも、両国首脳にとって耳が痛くとも、日中間の懸案解決や国際正義を守るため、率直に意見交換することが重要だ。

その意味で、安倍首相が習氏との会談で、香港での「逃亡犯条例」反対デモについて、「一国二制度」を守り、人権や法の支配を保障すべきだと指摘したのは評価できる。

尖閣周辺での中国公船の日本領海侵入はやまず、歴史認識も常にトゲとなる。難問解決はこれからが正念場。建設的な意見の応酬という「ケンカ」を通じ、「永遠の隣国」をめざしてほしい。
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[東京新聞] 日米首脳会談 安保の誤解は正さねば (2019年06月29日)

トランプ米大統領が日米安全保障条約の破棄に言及したという。「あまりに一方的だ」との理由だそうだが、日米安保は米国だけが義務を負う片務条約では決してない。事実誤認は正す必要がある。

米ブルームバーグ通信が報じたトランプ氏の発言は、近しい人物との私的な会話で述べたという。

トランプ氏の理屈はこうだ。

日米安保条約は、日本が武力攻撃を受けたとき、米国には日本を防衛する義務を定めているが、米国が攻撃されても、日本には米国を守る義務はない。だから「あまりに一方的だ」と。

菅義偉官房長官は「米大統領府から『米政府の立場と相いれないものである』と確認した」と、記者会見で述べたが、条約破棄に直接言及したか否かを別にしても、トランプ氏が安保条約を不公平と感じているのは確かなようだ。

トランプ氏の発言は、日米貿易交渉を有利に運ぶため、安保条約に言及し、日本側に譲歩を迫ることが真の狙いなのかもしれない。

とはいえ現職大統領の発言だ。安倍晋三首相がきのうの首脳会談で、報道の真偽を問うことはなかったが、それでよかったのか。

一九六〇年改定の日米安保条約は米国に日本防衛義務を、日本には米軍への基地提供義務を課す。

米軍の日本駐留費用は条約上、米政府が全額負担することになっているが、日本政府は支払い義務のある土地の借料などに加え、本来支払う必要のない費用含めて、約六千億円を毎年負担している。

騒音や事故、米兵の犯罪など米軍基地の存在は周辺住民にとっては重い負担だ。日米安保条約体制は双務的であり、トランプ氏の発言に代表される「安保ただ乗り」論は当たらない。条約を巡る誤解は正していかねばなるまい。

さらにトランプ氏の発言で聞き捨てならないのは「沖縄の巨大な基地の移設」は「米国からのある種の土地収奪だ」として経済的補償を求める考えを示したことだ。

米軍普天間飛行場(宜野湾市)を念頭に置いているのだろうが、この場所は戦前、集落が点在する農村地帯であり、住民を収容している間に、まさに米軍が収奪した土地である。歴史的経緯を無視することは許されない。

東アジアの現状を考えれば安保条約を破棄して米軍が日本から全面撤退することも、日本が憲法改正で集団的自衛権の行使を認め、米国とともに戦う国になることも現実的でない。それをトランプ氏に説くことも首相の仕事である。
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[産経新聞] 【主張】日産の経営改革 資本関係の見直しを急げ (2019年06月29日)

日産自動車が経営の監督と執行を分離する「指名委員会等設置会社」に移行する。同社の株主総会で議決された。

特別背任などの罪で起訴された元会長のカルロス・ゴーン被告に権力が集中していた経営体制を改革し、企業統治を強化するのが狙いである。

筆頭株主の仏ルノーは総会直前、この改革案に難色を示していた。結局、ルノー出身者に委員会ポストを割り当てることで収まったが、ルノーの同意がなければ改革が進まないという日産の大きな課題も浮かび上がった。

ルノーは日産との経営統合に強い意欲をみせている。ルノーが大株主の権利を主張して日産経営の独立性が脅かされれば、企業価値を損なうことになりかねない。

今回の総会では、両社に深刻な亀裂が生じた。互いの信頼を取り戻すためにも、現在の一方的な資本関係を見直し、対等な立場で企業連携を再構築すべきだ。

役員人事により、11人の取締役のうち、過半数の7人が社外取締役となった。取締役会議長も外部出身者が務める。外部の客観的な視点で経営を監視し、経営陣による不正などの再発防止を徹底しなければならない。

西川広人社長が総会で、ルノーとの資本関係見直しに向けた協議を始める意向を表明したのは評価できる。

現在はルノーが日産に43%出資する半面、日産はルノー株を15%しか保有しておらず、議決権もない。こうしたいびつな資本関係を是正するのは当然だ。

その必要性は高まっている。ルノーが総会前、委員会設置会社に移行する議案の採決を棄権する意向を一時的に示したのは、ルノー出身者が就くポストが少ないとの反発からだ。日産の企業価値を高める経営改革より、自らの利益を優先する姿勢は許されない。

今回の経営改革は外部有識者の提言を受けたものだ。ルノーの影響力を排除して経営判断する改革を求めていた。だが、日産はルノーの賛成を得るため、ルノー出身者を監査委員会メンバーにも加えた。これで本当に経営の独立性を確保できるのか。

今後も両社の主導権争いが続けば、世界の自動車業界で激化する競争には打ち勝てまい。日産が企業再生に全力を挙げるためにも、ルノーとの関係を含めた経営体制の再構築を急がねばならない。
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[産経新聞] 【主張】日中首脳会談 見せかけの友好は疑問だ (2019年06月29日)

日中間に横たわる懸案を棚上げして、首脳が笑顔で握手する。見せかけの友好を演じてまで「次の高み」に上ろうとしていいのか。はなはだ疑問である。

安倍晋三首相と習近平中国国家主席が大阪市内で会談し、習主席が来年春に国賓として再来日することで合意した。

両首脳は、日中関係が「完全に正常な軌道に戻った」と改めて確認した。安倍首相は国賓として招く際に「日中関係を次の高みに引き上げたい」と表明し、習主席は賛意を示した。

いくら「完全に正常な軌道」を強調されても、納得することは難しい。中国が引き起こしている問題が多すぎる。

中国では、スパイ活動の疑いなどで日本人が拘束され、懲役15年などの重刑を言い渡されている。事実関係が明らかにされないままの判決や拘束は、重大な人権侵害だ。沖縄の島である尖閣諸島(石垣市)の周辺海域では、中国公船の侵入が続いている。

日本人の釈放の実現や、中国公船の侵入がやむことなしに、実質を伴う関係改善はあり得ない。

安倍首相は会談で、拘束された日本人の早期帰国実現を要請し、尖閣海域の中国公船の活動に自制を求めた。南シナ海の非軍事化を促し、香港やウイグルなど中国の人権状況への懸念も伝えた。

中国による知的財産権侵害や技術移転の強要、不当な産業補助金の是正も要求した。

言うべきことを一通り伝えたのは評価できるが、習主席がどのような反応をしたのか分からない。言い放しで馬耳東風を許していては日中関係の実態はなんら改善しない。どうして「次の高み」に進めると思うのか。

最近の対中外交への疑問はまだある。米国を組み入れた方程式になっていない点である。

安倍首相はトランプ米大統領との会談冒頭、「強固な日米同盟」を強調した。習主席と会えば、日中が「完全に正常な軌道」にあるとし、経済関係の深化をうたう。ところが米中は経済、安全保障など広範な分野で「新冷戦」とも言うべき深刻な対立局面にある。

日本は、どちらにもいい顔をするような対米、対中姿勢を続けられない。米国の中国に対する危惧は妥当なものだ。同盟国として日本は米国の懸念と足並みをそろえることが国益にかなっている。
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[毎日新聞] 3カ月連続の日米会談 蜜月がかすむ同盟の内実 (2019年06月29日)

安倍晋三首相が来日したトランプ米大統領と会談した。両首脳の会談は3カ月連続である。

首相は会談の冒頭で「短期間に頻繁に日米首脳の往来があるのは強固な日米同盟の証しだ」と強調した。

だが、果たして内実はどうなのか。「蜜月」に水を差す発言が来日直前のトランプ氏から飛び出した。

「日本が攻撃されたら、米国は命をかけて第三次世界大戦を戦う。しかし、米国が攻撃されても日本は助ける必要はない。ソニーのテレビで見ていられる」

トランプ氏はかねて日米安全保障条約への不満を口にしている。日本の防衛義務に対する見返りがなく、一方的だという。

日本には基地の提供義務がある。米国にも利益があると日本政府はトランプ氏に繰り返し説明してきたというが、効き目はないようだ。

とりわけ問題なのは、トランプ氏が「同盟の片務性」を材料に通商問題などで日本に譲歩を迫ろうとしていることだ。

米中貿易戦争では互いに強硬姿勢を崩さず、打開のめどはついていない。きょう行われる米中首脳会談でも大きく前進する見通しはない。

行き詰まった状況を打破するために、巨額の貿易赤字の相手国である日本に無理を聞いてもらおう。そんな思惑が透けて見える。

米国は農産品の対日輸出拡大を求めている。対中輸出の減少に加え、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱で市場競争力が弱まった。だが、その原因は米国にある。

トランプ氏は日本の「安保ただ乗り」が問題だという。米軍の駐留経費負担の増額を求めているが、日本の支出はほぼ限界に達している。

「自国第一」に固執する米政権のもとで同盟は変質している。トランプ氏が難題や要求を突きつけ、日本は折り合いをつけるのに腐心する。トランプ氏は会談後、「大きな取引を近く発表する」と胸を張った。

だが、そんな損得勘定の繰り返しの中でまっとうな同盟論が置き去りになっていないか。会談で首相がトランプ氏に発言の真意を問うことはなかったという。

世界秩序の担い手がいないいまだからこそ、同盟の現実に向き合うことから逃げてはならない。
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[毎日新聞] ハンセン病差別と家族 画期的な被害認定の拡大 (2019年06月29日)

ハンセン病患者の隔離政策で家族も差別を受け、人権を侵害されたとして熊本地裁が国に賠償を命じた。これまで光が当てられていなかった家族の被害を司法が初めて認め、救済の道を開いたことは画期的だ。

隔離政策を巡っては熊本地裁が2001年、患者の人権侵害を違憲と判断した。国は元患者らには補償などを行ってきたが、家族の被害は認めず、謝罪も拒否してきた。

判決は、隔離政策が家族への偏見・差別を助長したにもかかわらず、国がそれを放置したとして、賠償責任を認め、総額約3億7000万円の支払いを命じた。

判決で示された家族の差別被害は、学校側の就学拒否や村八分、結婚差別、就労拒否など多岐にわたった。判決は、これらの差別が患者だけでなく家族にも「個人の尊厳にかかわる人生被害」をもたらしたと断じた。家族も患者と同様の被害を受けたと司法が認めた意義は大きい。

国が「被害がない」と主張した13年時点でも社会的に無視できない程度の差別被害があったと指摘した。

今回の訴訟を機に母親が元患者だと妻に初めて伝えた男性は、これを理由に離婚された。男性は母親と共に妻の実家で土下座したが、妻の親族から罵声を浴びせられたという。

肉親間の断絶も招いた。家族は差別を受けないように患者を隠した。生きているにもかかわらず、死んだことにした原告もいた。肉親の存在を秘密にせざるを得ない生き方を強いられた。

戦前戦後と続いた「無らい県運動」は、地域から根こそぎ患者を強制収容する究極の隔離政策だった。「恐ろしい伝染病」の患者予備軍として家族も迫害された。

国は判決を真剣に受け止め家族に謝罪すべきだ。元患者が対象のハンセン病問題基本法を改正し、家族も被害者だったと明記することも検討の余地があるのではないか。

ハンセン病は感染力の弱い感染症であり、遺伝はしない。現代の日本では新規の患者は皆無に近く、発症しても完治する。正しい知識を普及啓発することも重要だ。

誤解に基づく人間の差別心を改めて浮き彫りにした訴訟だった。私たちもハンセン病に抱く偏見から今度こそ決別しなければならない。
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[読売新聞] ハンセン病訴訟 家族への差別を重く見た判決 (2019年06月29日)

激しい差別、偏見を受けたのはハンセン病の元患者だけではなかった。家族の被害を重く捉えた司法判断である。

熊本地裁が国に対し、元患者の家族約500人に総額3億7600万円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。ハンセン病患者の隔離政策が、家族への差別も生んだとして、国の賠償責任を認めたのは初めてだ。

ハンセン病は感染力が極めて弱いにもかかわらず、国は1996年にらい予防法を廃止するまで患者の隔離政策を続けた。

2001年の熊本地裁判決は隔離政策を違憲とした。国はハンセン病補償法を作り、元患者らに1人最高1400万円を支払ったが、家族は対象外だった。今回の判決は、救済を家族にも広げるよう求めたと言えるだろう。

家族の受けた苦しみは大きい。幼少期に病気の親と引き離され、親子の触れ合いの機会を失う。就学を拒否され、就職や結婚の際に差別を受けることもあった。

こうした被害について、判決が「生涯にわたって継続するものであり、その不利益は重大だ」と言及したのはうなずける。

地裁は判決で、国の隔離政策により、「ハンセン病は恐ろしい伝染病」という誤った認識が国民に植え付けられたと指摘した。そのことが家族に対する排除意識を強めたと認定した。

そのうえで、ハンセン病政策を担当する厚生労働省は、病気に関する正しい知識を広めるなど、差別解消のための措置を尽くさなかったと結論づけた。法務省や文部科学省も、人権啓発や人権教育が不十分だったと批判した。

関係省庁の取り組みに厳しい目を向けた判断だ。

大切なのは、元患者だけでなく家族への差別や偏見を、社会からなくしていくことである。

原告の中には、提訴後に親の病気を知られ、妻から離婚を切り出された人がいる。裁判に参加したことを家族に話せずにいる人も少なくない。原告の大半は、実名を明らかにしていない。

現在も、差別が根強く残っている証左だろう。

14年には、小学校の授業で、ハンセン病に関する誤った知識を教えられた児童が、「怖い」「友達がハンセン病にかかったら、離れておきます」といった感想文を書いたことが明らかになった。

教育現場のほか、職場や町内会など社会のあらゆる所で、正確な情報を伝え、偏見を払拭(ふっしょく)する努力を重ねていかねばならない。

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[読売新聞] 日中・日米会談 アジアの安定へ協調進めよ (2019年06月29日)

アジア太平洋の安定と成長に向け、日本は国際協調を推進する責任がある。米国と緊密に連携しつつ、中国と協力関係を広げることが重要だ。

安倍首相が大阪で中国の習近平国家主席と会談した。国家主席の来日は約9年ぶりだ。2012年の沖縄県・尖閣諸島の国有化で冷え込んだ日中関係が、正常な軌道に戻ったと言えよう。

首相は「日中新時代を切り開きたい」と語り、習氏も「新しい時代にふさわしい関係の構築に取り組みたい」と応じた。

両首脳は来春に習氏の国賓としての再来日を実現することで一致した。首脳間の信頼を深め、安定した関係を築くことが大切だ。

習政権が日本との距離を縮めたのは、保護主義を強めるトランプ米政権を牽制(けんせい)する狙いもある。

両首脳は、自由で公正な貿易体制を発展させることを確認した。習氏は「多角的に自由貿易を推進したい」と述べた。

しかし、中国は外国企業に技術移転を強制し、補助金で国有企業を優遇しているのが実情である。市場を歪(ゆが)め、公正な経済活動を妨げている。首相が首脳会談で、是正を求めたのは当然だ。

両首脳は、東シナ海を「平和、協力、友好の海」とすることで合意した。尖閣諸島周辺では、中国公船による領海侵入が常態化している。緊張を高めないよう、習氏は指導力を発揮すべきだ。

首相は、香港が一国二制度の下で自由な体制を維持することが重要だと指摘した。中国本土への犯罪容疑者の移送を可能にする条例改正を巡るデモが念頭にある。

人権問題でも率直に注文を付けていかねばならない。

首相は大阪で、トランプ米大統領とも会談した。3か月連続の首脳会談となり、首相は「強固な日米同盟の証しだ」と強調した。

トランプ氏は最近、米メディアに対し、日米安全保障条約について、米側に負担が偏っていると不満を漏らしている。

日米安保条約は、米国の対日防衛義務だけでなく、日本の基地提供を定めている。片務的との指摘は当たらない。米軍の拠点となり、中国軍を牽制し、海上交通路の安全確保に役立っている。

米国自身の経済的利益に寄与していることを、トランプ氏は認識すべきである。

日米首脳会談では、北朝鮮の非核化に向け、国連安全保障理事会の制裁決議を履行する重要性を再確認した。原則を堅持し、北朝鮮の譲歩を促すことが肝要だ。

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[朝日新聞] 習主席の来日 「新時代」実行の一歩を (2019年06月29日)

「日中新時代を切り開いていきたい」(安倍首相)

「両国関係は新たな歴史的出発点にある」(習近平〈シーチンピン〉氏)

日中両首脳が良好な関係づくりの意思を確認し合った。

それ自体は歓迎すべきだが、外交辞令で終わらせてはならない。具体的な行動で諸問題を解きほぐし、互恵の構造づくりに踏み出すときである。

習近平国家主席がG20会議に出席するため、大阪を訪れた。中国国家主席の来日は実に9年ぶり。それだけ両国関係の不全が続いていたのだ。

おとといの会談では、高官の往来を増やすことなどで合意したほか、習氏が来春、国賓待遇で来日する方向になった。

2012年の尖閣諸島問題による関係悪化を経て、雪解けから融和へと歩んだ近年の流れに改めて弾みをつけたい。

この年内にも日中韓の首脳会議が中国で開かれる予定で、その際は安倍氏が訪中する。首脳の往来の活発化に伴い、安保、経済、民間交流などの各面で実質的な進展をめざすべきだ。

関係改善は今のところムード先行にすぎず、懸案の解決が遅々として進んでいない。

尖閣周辺での中国公船による挑発的な活動は増えている。防衛当局間の海空連絡ホットラインは、未開設のままだ。東シナ海のガス田共同開発に向けた協議も開かれていない。

これでは国民感情の改善が進まないのも無理はない。東シナ海の平和と安定がなければ建設的な関係は築けないことを中国は強く認識すべきである。

日本側の説明によると、会談では両国を「永遠の隣国」と位置づけることで一致したとしている。だが、中国側の発表に、その文言はない。対日融和をめぐり、まだ慎重さも残る微妙な温度差がうかがえる。

そもそも今の日中接近をもたらしたのは、米国と中国の対立の影響が大きい。トランプ政権による関税制裁などに悩む習氏には、日本を引き寄せて米国を牽制(けんせい)したい思惑がある。

自由貿易や多国間協議といった経済分野での中国の主張は、日本と立場が重なる。強引な二国間取引を迫る米国の姿勢は、同盟国かどうかを問わず大きな懸案だ。

日本にとって中国は最大の貿易相手国である一方、対米同盟は安全保障の土台だ。対立が続きそうな両大国の間に立つ平和主義の国として、日本は新たな役割を考えねばなるまい。

中国には平和的な発展と公正な市場運営を説き、米国には自国第一主義の不毛さを諭す。そうした対話に尽力し、アジア太平洋の安定をめざす日本の能動的な外交を築くべきである。
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[朝日新聞] ハンセン病 家族も深刻な被害者だ (2019年06月29日)

国がかつてハンセン病患者を強制隔離した政策では、元患者本人だけでなく、その家族も被害者だ。いまも差別や偏見に直面する家族を放置し続けるわけにはいかない。

元患者の子やきょうだいら561人が国に損害賠償などを求めた訴訟で、熊本地裁は大筋で原告の主張を認める判決を言い渡した。「憲法が保障する、社会で平穏に生活する権利や結婚生活の自由を侵害した」との判断はもっともで、誤った政策がもたらした「罪」の重さを改めて痛感する。

目を引くのは、家族に対する差別や偏見を除去する措置を講じなかった政府の責任を、厳しく指摘したことだ。とるべきだった施策に具体的に言及するなど、異例の内容になっている。

隔離を定めた「らい予防法」の廃止が遅れた国会の責任や時効の成否をめぐる判断など、判例や法理論に照らして踏み込んだ部分も多く、議論を呼ぶのは必至だ。

一方で、政府と国会は、この判決を家族の被害と向き合うきっかけにしなければならない。

ハンセン病はらい菌による弱い感染症だ。1900年代初めに隔離政策を始めた政府は、特効薬が開発されるなどしたあとも方針を変えず、予防法を廃止する96年まで隔離を続けた。

元患者については01年、隔離を違憲として賠償を命じた熊本地裁判決が確定。政府と国会は謝罪し、法律を作って補償金を支払うなど様々な対策を展開してきたが、家族への施策はとらなかった。

しかし、家族も被害を受けてきたことは厳然たる事実だ。

一家の暮らしが壊され、とりわけ親を奪われた子どもは大きな影響を受けた。家族に患者がいることが知られて学校や職場、地域での居場所を失い、就職や結婚を拒まれた例も相次いだ。患者を隠し、縁を切るまでに追い込まれた人が多くいる。

人生の様々な場面で自己実現の機会を奪われたことは「人生被害」と呼ばれる。差別が今もなくなっていないことは、今回の裁判で原告の大半が匿名だったことに端的に表れている。

09年に施行されたハンセン病問題基本法は、患者本人への補償金の支給を踏まえ、さらに対策を講じるよう国に義務づけた。原告と弁護団は、基本法を改正して家族も被害者だと明記するよう主張している。

法廷に立つことをためらう家族を励まし、後押ししたのは、高齢になった元患者本人だった。家族への支援は元患者の癒やしにつながる。そうした視点も踏まえ、教育の場や地域社会で偏見と差別をなくす取り組みを強めていかねばならない。
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2019年06月28日

[東京新聞] 直木賞候補独占 文芸が映す女性の活躍 (2019年06月28日)

女性作家の活躍、などと書けば何を今さらと笑われるだろうか。だが、七月に選考会のある直木賞の候補作がすべて女性の作品だったことは、この国の文芸史に残る一つの節目として記憶したい。

百六十一回を数える今回の直木賞。作品が候補となったのは、朝倉かすみ、大島真寿美、窪美澄、澤田瞳子、原田マハ、柚木麻子の六氏だ。全員が女性なのは、一九三五(昭和十)年に文豪・菊池寛が創設した芥川賞と直木賞の双方の歴史を通じて、初めて。

特筆されるのは、純文学系の芥川賞が新人賞であるのに対して、大衆小説系の直木賞は中堅以上が主な対象となる点。文壇の重鎮の選考委員たちによる選考では、候補作の評価に加え、作家としての地力や蓄積も重視されるのだ。

その直木賞の候補を女性が占めたことは、女性作家の個々の創作力の高さとともに、層の厚さも映し出す。遠く平安の時代に「源氏物語」を書いた紫式部が聞けば、後輩たちの活躍を喜ぶだろう。

平安の王朝期にはまた「枕草子」の清少納言をはじめ「和泉式部日記」「蜻蛉(かげろう)日記」など日記文学の書き手として女性が活躍した。

だが鎌倉以降は、男性上位の武家社会が発達。文芸では戦記物や戯作文学などが興隆し、男性が中心となった。明治に入ると西洋の影響で新たな文芸創作の模索が始まるが、その主体も男性だった。

そうした中、男女の平等や、封建的な家制度からの脱却などを求める女性たちは、本来であれば男性と同等に力を発揮しうる文芸に、その主張の場を求めた。文芸誌「青鞜」の平塚らいてう、「女人芸術」の長谷川時雨たちだ。

林芙美子の「放浪記」など、女性を描く名作の数々も誕生。文芸を創作し、享受する道が女性に大きく開かれた。

また三六(昭和十一)年には女流文学者会が発足し、ともに手を携えて創作に励み、後進を育てた。努力は実り、戦後は優れた女性作家が次々に登場する。

八七年、大庭みな子さんや田辺聖子さんらが、女性で初めて芥川賞や直木賞の選考委員に就任したのは、その勢いの象徴となった。やがて「女流作家」という言葉はほぼ死語となり、女流文学者会も二〇〇六年に休会した。

この国では、女性の活躍を阻む「ガラスの天井」が多くの分野に存在する。だが今回の直木賞は「もはや文芸の世界にはない」と改めて示したといえよう。この流れを他の分野にも広げたい。
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[東京新聞] 最高裁の判断 なぜ再審の扉を閉ざす (2019年06月28日)

四十年間も潔白を訴えていた大崎事件(鹿児島)の原口アヤ子さんに再審の扉は開かなかった。最高裁が無実を示す新証拠の価値を一蹴したからだ。救済の道を閉ざした前代未聞の決定に驚く。

「やっちょらん」−。原口さんは、そう一貫して訴えていた。殺人罪での服役。模範囚で、仮釈放の話はあったが、「罪を認めたことになる」と断った。十年間、服役しての再審請求だった。

鹿児島県大崎町で一九七九年に起きた事件だった。被害者が酒に酔い、側溝に落ちているのを住民が発見した。三日後に遺体が自宅横にある牛小屋で見つかった。原口さんは隣に住み、被害者の義姉にあたる。親族の計四人が殺人容疑などで逮捕され、八一年に最高裁で確定した。

そもそも本当に殺人なのかも疑われる事件だ。側溝に転落した際の「出血性ショック死の可能性が極めて高い」からだ。新証拠の鑑定はそう記している。この見方は地裁・高裁も支持している。何しろ確定判決時の鑑定は「他殺を想像させる。窒息死と推定」という程度のあいまいさだった。

では、絞殺という根拠は何か。実は共犯者とされた親族の自白に寄り掛かっている。供述は捜査段階でくるくる変わる。虚偽自白の疑いとみても不思議でない。

なぜ自白したか。「警察の調べが厳しかったから」だそうだ。しかも知的障害のある人だった。今なら取り調べが適切だったか、捜査側がチェックされたはずだ。

最高裁は新鑑定を「遺体を直接検分していない」「十二枚の写真からしか遺体の情報を得られていない」と証明力を否定した。親族の自白は「相互に支え合い信用性は強固」とした。だが、本当に「強固」なのか。過去の冤罪(えんざい)事件では、捜査側が描くストーリーに沿った供述を得るため、強要や誘導があるのはもはや常識である。

最高裁の判断には大いに違和感を持つ。審理を高裁に差し戻すこともできたはずである。事件の真相に接近するには、そうすべきだった。事故死か他殺かの決着も、再審公判でできたはずだ。再審取り消しは論理自体が強引である。もっと丁寧に真実を追求する姿勢が見えないと、国民の司法に対する信頼さえ損なう。

「疑わしきは被告人の利益に」は再審請求にも当てはまる。その原則があるのも、裁判所は「無辜(むこ)の救済」の役目をも負っているからだ。再審のハードルを決して高めてはならない。
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[産経新聞] 【主張】トランプ氏発言 日米安保再確認の契機に (2019年06月28日)

トランプ米大統領が米テレビ局のインタビューで、日米安全保障条約に基づく防衛義務が片務的であるとして、不満を表明した。米国は日本を守るが、「米国が攻撃されたとき日本はわれわれを助ける必要がない」と指摘した。

この発言をもって、米国が安保条約を破棄する兆しと焦る必要はない。ただし、安保条約の構造的な不安定性を浮き彫りにした点は否めない。

今後、防衛費の増額や中東でのタンカー護衛への協力などの要請があるかもしれない。日本は応分の責任を果たすべきだ。

菅義偉官房長官は会見で「全体としてみれば日米双方の義務のバランスは取れており、片務的との指摘は当たらない」と述べ、条約の見直しはないと強調した。

米国は日本を防衛し、日本は基地を提供することが安保条約の骨格で、「非対称的双務関係」とも呼ばれる。安保条約は、米国にとっても死活的に重要である。

日本の基地提供のおかげで、米軍は北東アジアはもとより、西太平洋から中東まで展開できる。破棄は米国の世界戦略を根底から覆す。日米同盟がなければ、米国は中国との「新冷戦」を有利に進めることもできない。中国の覇権を阻めなくなるだろう。

日米同盟は、インド太平洋の諸国民の自由と繁栄の前提となる国際公共財だ。その維持は、日米の国際的な責任である。

これらを日米両政府はよく分かっている。安保条約の破棄はありえない理由である。

ただし、それでも構造的な不安定性が残っている。トランプ大統領は「米国が攻撃されたとき、日本はその状況をソニーのテレビで見ていられる」と指摘した。

これが現実になれば、米国民は双務的とは考えず、強く反発するに違いない。米国民の心が日本から離れれば、米政府といえども安保条約の履行は難しい。

安倍晋三政権は、集団的自衛権の限定行使を可能にする安保関連法を整えた。日米が守り合う状況をつくる道を開いたが、適用には過度の制限がかかっている。トランプ大統領の指摘するようなケースが起きないともかぎらない。

産経新聞は平成23年、日米が完全に対等な相互防衛体制を確立するよう、安保条約の再改定案を世に問うた。その意義は今も失われていない。
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[産経新聞] 【主張】芸人処分 反社会的勢力と断絶せよ (2019年06月28日)

吉本興業などのお笑い芸人らが、反社会的勢力の主催する会合に出席したとして謹慎処分となった。「雨上がり決死隊」の宮迫博之さんをはじめテレビによく出演する人気芸人もいる。

新たに暴力団関係者の会合に同席したとして、同社のお笑いコンビ「スリムクラブ」の2人も無期限の謹慎となった。いずれも会社を通さない、いわゆる「闇営業」だったとされる。

どんな理由があれ、反社会的勢力とのつながりは許されない。本人も芸能事務所も猛省しなければならない。

処分された芸人らは、特殊詐欺グループが主催するパーティーに出席し、報酬を得ていた。吉本興業の別の芸人はすでに吉本との契約を解消された。

芸人らは当初、金銭の授受はなく、相手が反社との認識はなかったと説明していたが、その後の会社の聴取に、対価を受け取っていたことを認めた。反社の認識についても、素直に聞くわけにはいかなくなった。

虚偽の説明を受け入れていた吉本側の姿勢にも問題がある。なぜ最初から徹底的に調査し、厳しく処分しなかったのか。仲介した芸人の契約解消で事態をすませようとし、売れっ子には甘かったとみられても仕方あるまい。

吉本興業では平成23年、島田紳助氏が暴力団関係者との交際を認め、芸能界を引退した。これを機に反社との断絶に乗り出したはずだが、取り組みは甘かったと断ぜざるをえない。

一方で別の側面もある。特殊詐欺グループの会合は5年前、暴力団関係者の会合は3年前だった。問題の発覚は、情報が写真週刊誌に持ち込まれたことによる。一般に、一度反社と関係を持てば、これを断ち切ることは難しい。関係があったこと自体が恐喝の材料となり、脅しに屈すれば、それは新たな恐喝のネタとなる。

負の連鎖はどこまでも続く。大相撲の野球賭博問題では、賭博に関わった当時の大関らが協会を解雇され、賭博関係者からは口止め料を脅し取られていた。

反社の恐ろしさを知るべきである。だからこそ組織としての毅然(きぜん)とした対応が求められる。

芸能界が長く、反社と深い関係にあったことは事実だ。真の断絶には多大な労力を要する。業界全体で立ち向かう必要がある。
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