2018年11月30日

[産経新聞] 【主張】無形文化遺産 「来訪神」を後世に残そう (2018年11月30日)

男鹿(おが)のナマハゲ(秋田県)など8県10件の伝統行事「来訪神 仮面・仮装の神々」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されることが決まった。

日本の民俗文化を彩るこうした伝統は、ひとたび途絶えると再興は難しい。地方の過疎化が進む中、集落の絆を強め、伝承者を残すためにも登録を追い風としたい。

世界の無形文化遺産は約400件だ。このうち日本は歌舞伎、結城紬(ゆうきつむぎ)、和食、和紙など21件を登録済みである。

来訪神は、大晦日(おおみそか)や正月などの節目に仮面で顔を隠し、神々に扮(ふん)した住民が各家を訪れる伝統行事だ。怠け者を戒め、子供が悪さをしていないかをただす。去った後には福をもたらすとされる。

南北に長い国土を持つ日本は風土も気候も違う。来訪神にまつわるストーリーもさまざまだ。四季に恵まれながら、深雪や酷暑といった過酷な環境とともに生きてきた日本人の、自然に対する畏敬の念が来訪神の祭りとなって残されてきたのは興味深い。

ナマハゲは、すでに登録されていた甑(こしき)島のトシドン(鹿児島県)との類似性を指摘され、登録を見送られた経緯がある。

類似の伝統行事をグループ化することで、北はナマハゲ、南は沖縄県宮古島のパーントゥまで一挙10件の登録にこぎつけた。単独だと周知が難しかったこれらの伝統行事が世界に知られるのは、日本の伝統文化を理解してもらう上でも好ましい。地元経済の活性化につなげるメリットもあろう。

ただ、安直に観光化すればよいというものではない。大事なことは伝承者をいかに確保し、祭りに誇りを持って取り組んでもらう環境を整えるかだ。

男鹿市ではナマハゲ伝承館で観光客に実演している。伝統と真摯(しんし)に向き合う姿が、観光客の共感を呼んでいるという。

国や地方自治体は補助金を出すだけでなく、祭りの担い手が何を欲しているのか、意思疎通を密にしていくことも大切だ。

10行事を構成する市町村は、担い手不足という共通の悩みを抱えている。意見交換会や親睦会を開き、知恵を出し合っている。訪問先の子供が減っているという深刻な問題もある。伝統文化の継承に特効薬はない。登録を機に地道な努力を続けたい。
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[産経新聞] 【主張】徴用工判決 暴挙止める対抗措置急げ (2018年11月30日)

いわゆる徴用工訴訟で、また日本企業に損害賠償を命じる判決が確定した。韓国最高裁は先月末の新日鉄住金(旧新日本製鉄)に続き、三菱重工業の上告を退けた。

繰り返すまでもないが、日韓国交正常化に伴う協定で、請求権問題は解決済みだ。国同士の約束を無視し日韓関係を崩す不当な判決である。

菅義偉官房長官は「断じて受け入れられない」と、韓国側の国際法違反を批判した。適切な措置が講じられない場合、「国際裁判や対抗措置を視野に入れ、毅然(きぜん)とした対応を取る」と述べた。その通り、実効性ある対抗手段の検討に入るべきだ。

今回の訴訟の1件は昭和19年から広島の工場などで働いていた原告遺族らが訴えていた。もう1件は19年、名古屋の軍需工場に動員された元朝鮮女子勤労挺身(ていしん)隊員によるものだ。

以前は韓国でも「徴用工」訴訟で原告側敗訴が続いていた。

だが6年前に韓国最高裁は一転して個人の請求権は消滅していないとの判断を示し差し戻した。その判断自体が「日本の植民地支配は不当な強制的占拠」などと決めつけ、史実を無視したものだ。

審理はしばらく棚上げ状態だったが、文在寅政権下で最高裁は賠償命令を相次いで確定させている。最高裁長官は文氏に抜擢(ばってき)された人物であり、「司法の独立」との責任転嫁は通らない。

徴用は法令(国民徴用令)に基づき合法的に行われた勤労動員である。「強制労働」など、何でも「強制」を冠して批判するのは言いがかりに等しい。

司法が史実をねじ曲げ、暴走する。政権も責任ある対応を取らず逆に反日を助長している。まっとうな法治の国とはいえず、安定した関係は築けない。

昭和40年の日韓協定で日本から供与された無償3億ドルに、徴用の未払い賃金や被害補償問題の解決金も含まれている。本来解決する責任は韓国政府にあるのだ。

しかし新日鉄住金に対する賠償命令の確定後も、韓国政府は、日本政府からの抗議を批判するばかりで有効な手立てを取らない。

日本政府には国民の生命、財産を守る責務がある。賠償命令が続き資産が差し押さえられる懸念の中で、韓国の不法を国際社会に訴え、邦人や企業を守るあらゆる手立てをためらうべきではない。
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[東京新聞] <IT強国 中国で考える>(7) 交錯する驚きと冷静さ (2018年11月30日)

計六回の連載に対しご意見、ご感想を寄せていただきました。深く感謝致します。

反応には共通項がありました。それは今の中国の状況に対する新鮮な驚きと、冷静な見方です。

「中国の変化が恐ろしく早いということは、成功から失敗への変化も早いとみて、じっくり、冷静に現状を観察することも大事だと思った」(千葉県、男性)。連載で取り上げた急激なキャッシュレス化などに驚きながらも、その行く末もしっかり見据える必要があるとの指摘です。

ダイナミックに変貌する隣国と向き合う上で実際に観察することの大切さを改めて痛感しました。

IT企業が蓄積した情報を使って渋滞緩和など、行政サービスに一役買っているとの記事について「良い側面が評価されていけば、中国政府もおおらかになっていくのではないかと楽観する」(栃木県、女性)との指摘もありました。

中国側は、普通なら隠したがる最新技術を自慢げにみせました。指摘のように、評価されたがっている雰囲気が強く感じられました。日本とは異質ですが、中国の意外な側面でもありました。

取材直前の十月四日、ペンス米副大統領が行った対中演説が世界的に話題となりました。

米国は中国が国際社会に入ることを助けてきた。だが中国は今、米国の民主主義や安全保障を脅かしている。AIなどの技術を盗み、周辺国には借金漬け外交を押しつけている。中国に対し米国は断固とした態度で臨む。

米国は中国への対決姿勢を鮮明にしました。ニューヨーク・タイムズが「新冷戦への号砲」と伝えるなど、米国が対中政策を融和から対立へと劇的転換したとの見方が広まりました。

しかし「どちらにも肩入れしないことが大事。うまく立ち回って漁夫の利を得ようとせず、嫌悪感を抱かれるのを避けるのも大事」(静岡県、男性)といった意見も。両国にこびず落ち着いて対処せよとの提案です。

同時に「ITを中心に据えた経済は矛盾をすべて押し流す迫力でまい進する。わが国の今後は、その対応は、と気になる」(愛知県、男性)との声もありました。

情勢を「米中冷戦だ」と単純にとらえず、とりわけ情報が取りにくい隣国の最新状況を見極め、分析し、主張を続ける。これが読者が新聞に求めている役割だと改めて肝に銘じました。
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[東京新聞] 韓国徴用工判決 今こそ政治が動く番だ (2018年11月30日)

三菱重工業に対し、戦時中の強制労働への賠償を求める韓国最高裁の確定判決が相次いだ。このまま放置していては関係が悪化するばかりだ。司法判断とは別に、政治は溝を埋めなければならない。

徴用工関連では、十月末に新日鉄住金に賠償を命じる大法院(最高裁)判決が出されたばかり。

日本政府は一連の判決について「一九六五年の日韓請求権協定で解決済み」「日韓関係の法的基盤を根本から覆す」と批判し、国際裁判などによる対抗措置も示唆している。

一方、韓国の司法は、六五年の合意は強制動員被害者の慰謝料請求権を含まないとの判断に立っており、完全に平行線だ。

元徴用工訴訟は、地裁や高裁で十件以上が係争中で、来月以降も判決が続く。日本企業が敗訴する流れは止まらないとみられる。

さらに、韓国政府は、慰安婦を巡る日韓合意に基づき設立した「和解・癒やし財団」の解散を発表している。

さっそく、関係の冷え込みを予兆させる出来事が起きた。

埼玉県秩父市が十二月から予定していた韓国・江陵(カンヌン)市との職員相互派遣を、外部からの抗議を受けて中止したのだ。

日韓関係は年間一千万人が往来するまで発展している。政治的対立が、交流事業にまで波及するのは大変残念だ。両国の経済界を中心に、影響を心配する声が出ているのも当然だろう。

六五年の協定は、元徴用工に関する外交的な合意である。しかし問題の本質は、意にそわない労働に駆り出された人たちの人権を、どう考えるかでもある。

韓国政府は、判決を尊重しつつ、対応策を取りまとめているところだという。今こそ政治が知恵を絞る時だろう。

これに関連して、康京和(カンギョンファ)・韓国外相が訪日して、日本側と協議する考えを示した。

日韓は北朝鮮の核問題でも協力する必要がある。外交当局が対話を重ねることは欠かせない。

これに対し、河野太郎外相は、「(康外相は)ただ来てもらっても困る」との趣旨の発言をしたと報じられた。これに韓国外務省が「事実なら、非外交的で不適切」と反発した。

感情的な発言で亀裂を深めることは、もちろん賢明ではない。

米国務省も、事態打開のため日韓間での対話を促している。これ以上の摩擦の激化は、両国民とも望んではいないはずだ。
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[毎日新聞] イタリアの放漫予算案 ユーロ安定への責任欠く (2018年11月30日)

イタリアの来年度予算案に、欧州内外から強い関心が集まっている。ばらまき色が濃く、財政悪化につながりかねないとして欧州連合(EU)から突き返された予算案だ。

修正しEUの承認を得られなければ、ユーロ史上初の制裁金が科せられる事態になりかねない。

イタリアのコンテ政権からは、一定の妥協を示唆する声も出始めた。打開への期待から、イタリア国債の利回りは一時期より低下している。

しかし、一過性の対策によるごまかしは通用しまい。EUと激突のコースを進むのは危険で無責任だ。

ギリシャ危機が示したように、大規模な金融不安へと進展してからでは痛みが大きくなる。ユーロそのものの存続も揺るがす危険をはらむ。

イタリア政府には、速やかに財政健全化へとカジを切ってほしい。

ユーロには、円やドルなどと決定的に異なる点がある。19もの主権国家が共有していることだ。一国でも放漫財政に走れば、その影響はユーロ加盟国全体に及ぶ。

一方、財政破綻に直面した他国の救済には、各国世論の根強い抵抗がある。放置も支援も困難な窮地に陥り、危機を深めてしまう。

財政ルールを設けているのはそのためだ。加盟国は、財政赤字や債務残高の国内総生産(GDP)比を一定値以下に抑えねばならない。

その上限を大きく逸脱しているのがイタリアだ。債務残高はGDP比132%と、上限である60%の2倍超で、ユーロ加盟国中、ギリシャに次ぐ深刻さである。

ところが、コンテ政権は改善を目指すどころか、財政赤字が従来目標の3倍にもなる予算案を作成した。

手遅れになる前の軌道修正が不可欠だが、難しい国内事情もある。

大衆迎合的な現政権に、「貧困対策」としてばらまき型の財政方針を掲げ発足した経緯があることだ。

与党が選挙公約を守ろうと努力すること自体、不思議ではない。だが、人気取り政策の結果、長期に及ぶ経済混乱を引き起こすようでは元も子もない。最も辛酸をなめさせられるのは貧困層なのだ。

イタリアは欧州統合を推進してきた中核国の一つである。統合の成果であるユーロを守る重い責任も負っていることを忘れてはならない。
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[毎日新聞] 徴用工で再び賠償命令 日韓首脳は率直に協議を (2018年11月30日)

戦時中の韓国人元徴用工や元女子勤労挺身(ていしん)隊による訴訟で、韓国最高裁が再び日本企業に賠償命令を出した。今回も、元徴用工らの請求権問題は1965年の日韓請求権協定では未解決との見解を示した。

同様の訴訟は他に12件あり、追加提訴の可能性もある。今後も日本企業への賠償命令が続くとみられ、日韓関係の一層の悪化が懸念される。

両政府は従来、徴用工問題は請求権協定で解決済みとの立場で一致していた。国交正常化の前提条件を覆す司法判断が相次ぎ、このままでは対話の糸口さえつかめなくなるような事態に陥りかねない。

韓国政府は過去の外交文書などから、徴用工問題は韓国政府が対応すべき問題だと整理していた。これを否定する司法判断との折り合いをつけるのは、韓国側の責任だ。

しかし、韓国が対応策をまとめるのを日本が待つばかりでは、双方の感情的な対立が激しくなるだけだ。

このため安倍晋三首相と文在寅(ムンジェイン)大統領が会談して今後の方向性について協議してはどうか。きょう始まる主要20カ国・地域(G20)首脳会議はその好機となりうる。トップ同士が顔を合わせることで、互いの国内世論を静める効果も期待できよう。

会談は、双方とも国内世論を意識して平行線となりかねず、現段階では行わない方が良いという考え方もあるだろう。だが、首脳外交が比重を増す現代だからこそ、率先して向き合う姿勢を内外に示すことは意味があるはずだ。

日韓双方は、北朝鮮問題の解決に不可欠なパートナーだ。貿易相手国としても無視できない存在である。年間約1000万人に上る両国の交流にも影を落としてはならない。

また、国際社会のリーダーとして、隣国との関係悪化を放置するのは望ましくない。問題があるからこそ会談するという成熟した姿勢を示すことが必要だろう。

世論の悪化は、地方にも影響を及ぼしている。埼玉県秩父市は、韓国への批判が多く寄せられたため、12月から実施予定だった韓国の姉妹都市・江陵(カンヌン)市との職員相互派遣の見送りを決めたという。

困難な課題があっても、首脳同士が話し合う。日韓両政府はこれを習慣にする努力をしてほしい。
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[読売新聞] NHK値下げ 無駄を排し肥大化に歯止めを (2018年11月30日)

受信料に支えられた公共放送が肥大化する懸念は残る。経営効率化の手を緩めてはならない。

NHKが受信料を2020年10月から2・5%値下げすると発表した。月額受信料は地上契約で35円程度、衛星契約では60円程度安くなる。

来年10月の消費増税時には価格を据え置く。その分を含めると、4・5%程度の実質値下げになるとNHKは説明している。

受信料収入は年間で約7000億円に達する。徴収の強化や、受信料制度を「合憲」とした最高裁判決の影響から、この10年間で900億円近く増えた。

NHKは「今できる最大限の値下げ」としているが、もっと視聴者に還元する余地はないのか。不断に検討すべきだ。

受信料の支払率は全国平均で80%まで改善したが、東京都と大阪府は70%に満たない。沖縄県は50%にとどまる。視聴者の不公平感の是正も欠かせない。

NHKは災害時などに限り、テレビ番組を放送と同時にネットに流している。これを19年度から、いつも流す「常時同時配信」に切り替えることを目指している。

受信料引き下げは常時配信の条件の一つとされる。今回の値下げは実施に向けた布石だろう。

受信料制度の上に成り立つ公共放送として、事業拡大には一定の節度が求められる。結論ありきでは国民の理解は得られまい。

NHKのネット業務は放送の補完と位置づけられる。このため、費用は「受信料収入の2・5%を上限」とするルールがある。

仮に常時同時配信を認めるとしても、予算の上限を定めた現行ルールの順守が不可欠だ。

受信料収入の活用に歯止めがなくなれば、組織の肥大化や民業圧迫を招きかねない。

放送とネットの経理を区分し、収支も明確にすべきである。

12月1日からは高精細の「4K」「8K」放送が始まる。NHKのテレビチャンネル数は、地上波と衛星波を合わせて4から6に増える。国民になじみがある地上波を減らすのが難しい以上、衛星波の削減が課題になろう。

コスト意識の低さも問題だ。番組制作費や経費、関連会社の業務などに無駄がないか、徹底した見直しが求められる。

収入が安定しているNHKは財務上、民放より圧倒的に有利な立場にある。NHKと民放が切磋琢磨(せっさたくま)する二元体制を崩す事態は避けねばならない。NHKは、改革の道筋を早急に示す必要がある。
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[朝日新聞] 防衛大綱改定 「空母」導入には反対だ (2018年11月30日)

歴代内閣が否定してきた空母の保有に向け、安倍政権が一線を越えようとしている。専守防衛からの逸脱は明らかで、認めるわけにはいかない。

政府は、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」を改修し、垂直着艦ができる米国製の戦闘機F35Bの運用を検討してきた。年末に改定する防衛計画の大綱に、それを可能とする表現を盛り込む方針だ。

2015年に就役した「いずも」は艦首から艦尾まで通じる飛行甲板を持つ。護衛艦と称しているが事実上のヘリ空母だ。設計段階から、戦闘機を載せる改修が想定されていた。

憲法9条の下、歴代内閣は、自衛のための必要最小限度の範囲を超える攻撃型空母は保有できないという見解を踏襲してきた。ところが政府や自民党は、表向きは空母でないと言いながら、既成事実を積み重ねる手法をとっている。

自民党が政府への提言で、災害派遣などにも対応する「多用途運用母艦」という名称を使っているのが典型的だ。岩屋毅防衛相は27日の会見で「せっかくある装備なので、できるだけ多用途に使っていけることが望ましい」と語った。

事実上、空母であることは明白なのに、言葉を言い換えることで本質から目をそらそうとする。安倍政権下で何度も繰り返されてきたことである。

そもそも空母の導入が日本の防衛にどれほど役立つのか、巨額な費用に見合う効果があるのかについては、自衛隊や専門家の間にも疑問の声がある。

政府や自民党は離島防衛や太平洋の防空への活用を強調しているが、「いずも」が現在担っている対潜水艦の警戒能力が低下すれば本末転倒ではないか。太平洋の防空を言うなら、自衛隊のレーダーや哨戒機の運用を見直すのが筋だろう。

有事を想定した場合、敵のミサイルや潜水艦からどうやって空母を守るのか。空母を運用するには任務用、整備用、訓練用の3隻が必要とされるが、資金的にも人員的にも、今の自衛隊にそんな余裕はあるまい。

強引な海洋進出を進める中国への対処は必要だとしても、空母には空母で対抗するような発想は危うい。空母の保有は、実態以上に日本の軍事重視のメッセージを送る恐れがある。

米国製兵器の大量購入が地域の安定に直結するわけでもない。日米同盟を基軸としつつ、大国化した中国にどう対応するかは難問だ。不毛な軍拡競争を招かぬよう、注意深い手立てを考えねばならない。
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[読売新聞] 徴用工賠償命令 文政権は収拾策を早急に示せ (2018年11月30日)

韓国の裁判所が不当な判決を繰り返し、日韓関係の法的基盤が崩れる。懸念された事態が現実に進行している。文在寅政権は収拾策を早急に示さなければならない。

戦時中に朝鮮半島から動員された元徴用工5人が、三菱重工業を相手に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、韓国最高裁は三菱重工業の上告を棄却した。これにより、1人当たり約800万円の賠償を命じた高裁判決が確定した。

「女子勤労挺身(ていしん)隊」として名古屋の軍需工場に動員された韓国人女性らが、三菱重工業に損害賠償を求めた訴訟の上告審でも、原告側の勝訴が確定した。

いずれも、新日鉄住金に賠償を命じた10月末の最高裁判決を踏襲している。同様の判決が今後も続くのは避けられまい。新たな訴訟を起こされる恐れもある。

賠償を命じられた日本企業が韓国内の資産を差し押さえられるなど、企業活動に悪影響が及ぶ事態が懸念される。

最高裁の一連の判決は、日本による植民地支配は不法だったという一方的見解に基づき、原告らの慰謝料請求権を認めた。

日韓両国が1965年の国交正常化で締結した請求権・経済協力協定は、請求権問題の「完全かつ最終的解決」を確認している。判決が協定に反するのは明白だ。歴代韓国政権も、徴用工が協定の対象に含まれると認定してきた。

看過できないのは、徴用工裁判を巡り、日韓関係が悪化しているにもかかわらず、韓国政府の動きが鈍いことだ。李洛淵首相を中心に対応を検討しているが、有識者の意見聴取にとどまり、いまだに具体策を打ち出していない。

文大統領が沈黙を続けているのは理解しがたい。韓国政府による元徴用工への補償の拡充や、日本企業が判決で不利益を被らない措置に取り組むべきだ。

河野外相は、韓国政府に対し、日韓協定の根幹を覆す「国際法違反の状態」を一刻も早く是正するよう求めた。韓国側の出方によっては、「国際裁判や対抗措置を含め、毅然(きぜん)とした対応を講じる」と警告したのは当然だ。

日本政府は、徴用工裁判の被告企業と密接に連携し、一体となって対処する必要がある。

この問題で、政府は英語の反論資料を作り、国際会議などでの発信に乗り出した。慰安婦問題では、国際社会への政府の説明が遅れ、「性奴隷」であるかのような誤解が米欧にも広がってしまった。同じ轍(てつ)を踏んではならない。
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[朝日新聞] 先生の働き方 子供のためにも改革を (2018年11月30日)

先生の労働時間をどうやって減らすか。中央教育審議会で教員版「働き方改革」の議論が大詰めを迎えている。

日本は中学で6割、小学校で3割の教員が、過労死ラインの月80時間を超す残業をしている。先進国で際立って忙しい一方、授業にあてられる時間はよそより短い。それ以外の用事に日々追われているからだ。

子どもたちが受ける教育の質を高めるためにも、むだな仕事を削ったり、肩代わりしてもらったりして、肝心かなめの授業とその準備に集中できるようにしなければならない。

たとえば中学の先生は部活動の指導に携わる時間が長い。国が目安とする「週休2日以上」を確実に守るようにし、あわせて教員に代わる外部指導員の登用に力を注ぐ必要がある。

難しいのは、先生の心がけだけで解決できる話ではないことだ。学校には次々と新たな課題が降ってくる。小学校では、英語に続いてプログラミング教育が再来年度から必修になる。地域や保護者から要請があれば、むげな対応もできない。

仕事の範囲が野放図に広がらぬよう、歯止めとなる制度を設けなくてはいけない。先般成立した働き方改革関連法で、企業の残業時間は月45時間以内とされた。学校もこれを原則とし、その前提で仕事をどう回すかを考えるようにすべきだ。

教師にだけ適用される時間外労働に関する法律も見直す時期にきている。本来の給与月額に4%分を上乗せするかわりに、残業代は一切支給しないのが現在の決まりだ。残業が週2時間ほどだった半世紀前の規定で、実態とかけ離れている。

文部科学省の試算では、働いた時間どおりに手当を支給すると総額は年9千億円に達するという。膨大なただ働きを現に強いていることを社会全体で認識し、その解消に本気で取り組むことが求められる。

残業はこれまで「自発的なもの」とみなされてきた。だが過労で倒れた教員に対し、「個別の指示がなくても、包括的な職務命令に基づく残業といえる」として公務災害を認めた例もある。引き受けた業務に見合う報酬を支給する制度を検討してはどうか。教員の仕事量と労働時間を校長や教育委員会が適切に管理する意識をもてば、残業の抑制にもつながるだろう。

教員採用試験の受験者は近年減少ぎみだ。学校が「ブラック職場」のままでは、若者の教員離れはさらに進む。しわ寄せを受けるのは、ほかでもない、未来を担う子どもたちである。
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2018年11月29日

[東京新聞] 南シナ海「規範」 骨抜きにしてはならぬ (2018年11月29日)

南シナ海の紛争防止に向けた「行動規範」作成について、中国の李克強首相が「三年以内の交渉妥結」を表明した。具体的な時期を明示したことは歓迎するが、中身を骨抜きにしてはならない。

李首相は十一月中旬、訪問先のシンガポールで演説し、東南アジア諸国連合(ASEAN)との「行動規範」策定交渉について、中国最高指導部の一人として「三年以内」とのタイムスケジュールを初めて示した。

行動規範は南シナ海での領有権をめぐる紛争を防ぐための国際的に重要なルールであり、策定に消極的だった中国が重い腰を上げたことは評価したい。

だが、ASEANが二〇一三年以降、法的拘束力のある行動規範の早期策定を求めてきたのに、中国が人工島建設などを強行し実効支配を強めてきたのは、「平和の海」実現に非協力的だったと批判されても仕方がない。

転機は一六年の国際仲裁裁判所の判決だった。中国が主張する南シナ海での権益が公に否定され、中国は表向きは規範策定に前向き姿勢に転じた。

「三年以内」と踏み込んだのは、米国の対中強硬姿勢があったからである。ペンス米副大統領はシンガポールでの東アジアサミットで、中国による南シナ海の軍事拠点化について「違法であり危険だ」と厳しい表現で非難した。

一方、李首相はASEANに「南シナ海問題の解決のカギは我々の掌中にある。外部の干渉を排除しよう」と、連帯を呼びかけるエールを送った。

「三年以内」の表明には、経済支援で親中派に転じたフィリピンが二一年までASEANと中国の調整国の役に就いたことを背景に、自国主導で行動規範を策定しようとの狙いも透けて見える。

米国の干渉を排除し、ASEANを露骨に取り込むような姿勢であれば、規範が法的拘束力を持つものになるかどうか疑問も残る。

中国艦艇が九月、南シナ海を航行中の米駆逐艦に四十一メートルの距離まで接近するなど、危険な行動をしているのも気がかりだ。

南シナ海は日米にとっても重要な海上交通路であり、中国が排除しようとする「外部」ではない。日米が連携してASEANを後押しし、本当に海の安全を守れるようなルールを策定してほしい。

近く、アルゼンチンで開かれる米中首脳会談でこの問題を議題とし、両国首脳が直接対話することが重要である。
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[東京新聞] 新大綱と中期防 専守防衛を逸脱するな (2018年11月29日)

国際情勢の変化に応じて防衛力を見直すことは必要だ。しかし、他国に脅威を与える装備を買いそろえたり、防衛費を際限なく増やすことで、憲法の趣旨である「専守防衛」を逸脱してはならない。

安全保障や防衛力整備の基本方針を示す「防衛計画の大綱(防衛大綱)」と「中期防衛力整備計画(中期防)」の改定作業が大詰めを迎えている。安倍内閣は来月中旬の閣議決定を目指す、という。

二〇一四年度から十年間程度を念頭に置いた現行の大綱を前倒しで見直す背景には、中国、北朝鮮など日本周辺の情勢が急速に変化しているとの認識があるのだろう。変化に即して防衛力を適切に見直す必要性は理解するが、それは憲法の趣旨である「専守防衛」の枠内であることが前提だ。

政府は新大綱に、海上自衛隊の護衛艦「いずも」を、米国製ステルス戦闘機F35Bが離着陸できるよう「空母化」する方針を盛り込む方向で調整に入った、という。

政府見解は大陸間弾道ミサイル(ICBM)や長距離戦略爆撃機などと同様「攻撃型空母」の保有は許されないとしてきた。「いずも」を空母化しても防衛目的に限れば、憲法が禁じる戦力には当たらない、という理屈なのだろう。

しかし、これは詭弁(きべん)だ。米軍の例を引くまでもなく、空母は打撃力を有する攻撃的兵器である。攻撃的兵器と防御的兵器の区別が困難であることは、政府自身が認めてきた。いくら防御型と言い募っても攻撃型性能を有することは否定できず、専守防衛を逸脱する。

防衛費の膨張も危惧する。一四年度から五年間の防衛費の総額を定めた現行中期防では、年平均四兆八千億円程度、国内総生産(GDP)比で1%未満だ。

政府は、軍人恩給など防衛省以外の関連経費も含む新しいGDP比の目安を設けるという。北大西洋条約機構(NATO)の算定基準を使って1・3%程度へと上積みを図り、防衛費の増額を求めるトランプ米大統領の圧力をかわす狙いもあるのだろう。

GDP比1%は法の定めではないが、専守防衛に徹する国際的メッセージになってきた。関連経費を含むとはいえ1・3%という数字は独り歩きしかねない。

防衛費は安倍晋三首相の政権復帰後、増額の一途だ。際限なく増やせば軍事大国化の意図を疑われかねない。新中期防ではむしろ防衛費の伸びを抑え、節度ある防衛力整備に努める意思を明確にすべきだ。それが憲法の趣旨である。
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[産経新聞] 【主張】台湾の輸入規制 風評根絶に民意を向けよ (2018年11月29日)

東日本大震災後、台湾の人たちはいち早く被災者支援に動き、総額で200億円を超える義援金を送ってくれた。それだけに残念でならない。

台湾の統一地方選に合わせて実施された住民投票で、福島第1原発事故から続けている福島県など5県産の食品に対する輸入禁止措置が今後2年は継続されることになった。

重要な問題点が2点ある。

一つは、食品の安全にかかわる問題が、科学的議論を抜きに住民投票に委ねられたことだ。

たとえば、「天動説」と「地動説」のどちらをとるかを、住民投票で決めるのが「おかしい」ことは明白だろう。食品の安全性も科学的論拠に基づいて判定されるべき事象であり、民意を問うこと自体が間違いなのだ。

原発事故以降、台湾のほか韓国、中国、香港、シンガポールなどの国、地域が日本産食品に対する輸入規制を続けている。

今年2月、世界貿易機関(WTO)の小委員会は、韓国の禁輸に関する報告書で「不当な差別」だとする判断を示した。「基準値以上の放射性物質は検出されていない」とする日本の主張の正しさは、科学的かつ客観的に示されているのである。

民意を問う前に輸入規制には根拠がない。これを国際社会の共通認識としなければならない。

もう一つの問題点は、極めて深刻な「風評」の根深さである。

原発事故から7年8カ月余が過ぎた。福島県や近隣の生産者は米の全量検査をはじめとする厳格な検査で安全性をアピールし、風評の払拭にできる限りの手立てを尽くしてきた。しかし、現実と乖離(かいり)した「福島=放射能汚染」というイメージは払拭されず、むしろ定着してしまっている。

中国や韓国では、反日感情と風評が結びついて政治利用されている。台湾の住民投票にもその影響はある。生産者や自治体の努力では解消できない。政府が前面に立ち、あらゆる手立てを講じて風評を払拭するしかない。

菅義偉官房長官は「台湾の消費者に十分に理解してもらえず、極めて残念だ」と述べたが、国内でも「福島産」が敬遠される傾向はまだ続いている。中国メディアは「日本人も福島の食品をあえて食べない」と論評した。

日本の民意を「風評の根絶」に向ける必要がある。
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[産経新聞] 【主張】消費増税対策 ばらまきに終わらせるな (2018年11月29日)

政府が来年10月の消費税増税に向けた経済対策案をまとめた。

増税前後の駆け込み需要や反動減の発生を抑制し、景気に与える影響をできる限り排除することが狙いである。

ばらまきに終わらせず、消費の変動を押さえ込む実効的な対策としなくてはならない。

クレジットカードなどを使ったキャッシュレス決済でポイント還元するほか、プレミアム付き商品券の発行などが柱となる。

中小小売店を対象とするポイント還元をめぐっては、安倍晋三首相が当初の増税相当分の2%から5%に拡大する意向を示した。消費の変動を防ぐ一定の効果は期待できるが、食料品などの税率を据え置く軽減税率も同時に導入することに留意が必要だ。

複数の税率の商品が店頭に混在し、販売現場では混乱が予想される。政府は、制度の周知や準備を促す取り組みを徹底すべきだ。

対策の目玉となるポイント還元は、中小小売店で現金を使わずに決済した場合、買い物客に後で使えるポイントを還元する。費用は国が負担し、小売店が導入する決済端末の費用も助成する。

安倍首相は、増税後の9カ月間にわたり、増税分以上の5%を還元する方針を表明している。

ただ、このポイント還元には需要の先食いという側面もある。対策が切れた後に需要を急減させない工夫も必要となろう。

ポイント還元終了後に実施するマイナンバーカードにためられる自治体のポイント制度などもうまく活用したい。

消費税増税に伴う実質的な家計負担を日銀が試算したところ、今回は軽減税率を導入し、税収を教育無償化などにも回すため、前回の増税時よりもその負担額は3分の1以下にとどまるという。

だが消費税率が2ケタに上がる心理的な影響も考慮し、景気を下支えする対策には万全を期さなくてはならない。

そのためにも、対策は厳しく選別すべきだ。プレミアム付き商品券は過去にも同様の対策が講じられたが、費用対効果が低いと試算されている。公共事業も、防災や経済効果について、十分な吟味が必要である。

増税分の価格転嫁も事業者が主体的に判断できる仕組みづくりが不可欠だ。総額表示などを含む多様な取り組みを求めたい。
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[毎日新聞] ゲノム編集ベビー 事実なら重大な倫理違反 (2018年11月29日)

中国の研究者がゲノム編集技術を使って受精卵の遺伝子を改変し、そこから双子の女児を誕生させたと発表した。発表内容が事実だとすると、医学的にも倫理的にも正当化できず、生まれてくる子どもを実験に使ったに等しい。

関係する大学や病院は、中国政府とも協力し、まずは事実関係を明らかにすべきだ。今後、こうしたことが起きないよう、それぞれの国が防止策を徹底すると同時に、国際的なルール作りも検討する必要がある。

ゲノム編集ベビーの誕生は南方科技大の賀建奎(がけんけい)副教授が香港で開催中の国際会議で報告した。夫がエイズウイルス(HIV)感染者のカップル7組を対象に、体外受精の際にゲノム編集技術を使い、HIV感染を防ぐための遺伝子改変を受精卵に施したという。

ヒトの生殖細胞の遺伝子を改変して子どもをもうけることは、安全性が確立していないだけでなく、加えた操作が世代を超えて伝わる。

両親が望む容姿や能力を持つ「デザイナーベビー」の作製につながる可能性もある。現時点で認める段階にないというのが国際的な合意だ。遺伝子操作した子どもを出産させることは、独仏英などが法律で禁じ、中国も国の指針で禁じている。

賀氏は中国や途上国でHIV感染が多いことなどを実施理由に挙げたが、今回の試みに医学的な必要性はなく、むしろ、子どもに新たな性質を付け加える試みと言っていい。

しかも、この遺伝子の改変で、別の病原体に感染しやすくなるなど、悪影響が出る恐れがある。標的以外の遺伝子を傷つけ、障害を持つ子どもが生まれる恐れも否定できない。

こうした臨床研究には、独立した複数の倫理審査が欠かせないが、どのような手続きを踏んだのかさえ賀氏は明らかにしなかった。

今回使ったというゲノム編集技術は高度な専門知識がなくても扱えると言われる。それだけに、不妊治療の一環として民間クリニックなどで安易に使われる可能性がある。

日本は国の遺伝子治療臨床研究の指針で生殖細胞の遺伝的改変を禁じているものの、医療行為は対象に含まれず、法規制もない。今回のことを契機に、早急に法整備の検討を進めるべきだ。
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[毎日新聞] 北方領土めぐる政府答弁 国民向けの説明も誠実に (2018年11月29日)

国民の理解と支持を得て外交政策を進める。そんな日本政府の方針が空虚に響く。ロシアとの北方領土交渉をめぐる政府答弁である。

「政府のこれまでの姿勢は一貫しており、領土問題を解決して平和条約を締結する。この方針に一切変わりはない」。安倍晋三首相が今週、衆院予算委員会でこう答弁した。

果たしてそうか。1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を行うことで日露首脳が合意してから初の国会での発言だが、従来の政府答弁から後退している。

平和条約締結後に歯舞群島と色丹島の2島を日本に引き渡すと明記したのが日ソ共同宣言だ。会談に先立つ10月には「北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する」と「四島の帰属」に言及していた。

しかし、会談後は「四島」を強調しなくなった。プーチン露大統領は2島の主権がどちらに属するかは明確ではないと言い、残る国後島と択捉島の返還を拒んでいるとされる。

返還を求める島の数について問われた首相は「交渉対象となる島々についてのコメントは差し控える」と述べた。北方四島をロシアが「不法占拠」しているという原則的な見解すら明言するのを避けた。

戦後70年以上を経て解決していないのが北方領土問題だ。難しい交渉であるのは間違いなく、本格的な折衝を前に対立をあおりたくないという気持ちは理解できる。

しかし、あいまいな姿勢では首相の真意はわからない。「両国が受け入れ可能な解決策」と言われても、ロシアペースで進む不安や交渉力への疑問が生じて不思議ではない。

河野太郎外相は同じ委員会審議で「これから交渉するときに政府の考え方や交渉の方針を対外的に言うのは日本の国益にならない」と答弁した。基本的な考え方も示さないのでは、国民の理解は得られまい。

「国民と共にある外交」をうたっているのは他ならぬ外務省だ。そのトップが国民不在で外交交渉をプロが独占した「旧外交」に拘泥しているように映る。

外交は内閣の専権事項であっても条約は国会が承認する。世論の支持がなければ結実しない。国民に誠実に説明し意見を吸い上げて交渉に生かす。そのバランス感覚が必要だ。
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[読売新聞] 入管法改正案 駆け引き排し本質的な議論を (2018年11月29日)

人手不足を補うには、外国人労働者の受け入れ拡大はやむを得ない。与党のみならず、多くの野党も認識を共有するはずだ。本質を外れ、駆け引きに終始したのは残念である。

出入国管理・難民認定法改正案が自民、公明両党と日本維新の会の賛成により衆院を通過した。審議の舞台は参院に移った。

論点が多岐にわたる法案にもかかわらず、衆院での審議は17時間余りにとどまった。与党は、成立を確実にするため採決を急いだ。野党は、山下法相の不信任決議案を提出して、抵抗した。国会運営を巡る不毛な対立は目に余る。

法案は、新たな在留資格を設け、人手不足が深刻な業種に限って、労働者を受け入れる内容だ。

日本人の働き手を確保できず、外国人労働者に依存しなければ、成り立たない業種は多い。現実を直視し、建設的な論戦を展開するのが国会の役割である。

衆院の審議では、受け入れ人数の「上限」が焦点となった。

政府は、業界の要望などを基に、5年間で最大約34万人の受け入れを見込んでいると説明した。

野党は「根拠が不明確だ」と批判した。法案に、上限を明記するよう求める意見も出た。

雇用状況は景気動向や技術革新に左右される。将来を見越し、上限を決めるのは、容易でない。

法案には、必要とされる人材が確保されたと所管省庁が判断した場合は、受け入れを停止する措置を盛り込んでいる。この仕組みが適正に機能するかどうかが、重要な論点ではないか。

参院では、十分な審議時間を確保し、新制度の詳細について、踏み込んだ議論を行うべきだ。

新たな在留資格を取得する外国人の多くは、技能実習生からの移行が見込まれている。

技能実習生は安価な労働力として利用され、長時間労働などの問題が指摘される。新制度の基盤となる実習制度についても、課題を洗い出し、是正策を検討することが欠かせない。

受け入れ態勢の整備も課題である。地方自治体には、生活相談や苦情対応、日本語の習得支援、行政手続きの情報提供など、幅広い対応が求められる。

総合的な支援のあり方について、議論を尽くすべきだ。

政府は、来年4月の制度導入を目指している。大島衆院議長は与野党に対し、法施行前に、政府が全体像を国会に提示し、質疑することを求めた。指摘を踏まえ、実施する必要がある。
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[朝日新聞] 2次補正予算 緊急に必要なのか (2018年11月29日)

来年度予算案や消費増税対策と並行して、政府内では今年度の第2次補正予算案がつくられている。「景気をしっかりと下支えできるよう、切れ目のない対策を講じ、万全を期す」と、安倍首相が編成を指示した。

「切れ目のない対策」は、「やめられない対策」になってはいないか。

「下支え」の具体的な項目には、「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化の緊急対策」「TPP(環太平洋経済連携協定)の早期発効に向けた農林水産業の強化」「中小・小規模事業者への支援」が挙がっている。

「農林水産業」「中小企業」は、第2次安倍政権で編成された9回の補正予算で、ほぼ定番となっている。農林水産業では「活力発揮」「輸出促進」などを掲げ、毎年のように盛り込まれてきた。2015年度以降は、3千億円超をTPP関連と位置づけている。中小企業のものづくりなどを支援する政策にも、毎年1千億円程度が計上されてきた。

既視感のある政策が目につくのは、あらかじめ想定されていたのに当初予算に入りきらなかったメニューを並べ、補正を組むことが、年中行事のように繰り返されているためだ。

このままでは、消費増税対策が終わった後や東京五輪の後にも、「景気を下支えする」といっては補正を組み、定番の事業を精査もせずに続けることになりかねない。

首相が第2次補正予算の編成を指示したその日、財政制度等審議会は建議を公表し、「当初予算のみならず、補正予算も一体として歳出改革の取り組みを進めるべきだ」と指摘した。補正は当初に比べ、歳出を絞り込もうという規律が働きにくい、との認識からだ。

建議は、平成で最初に編成した1990年度予算は赤字国債から脱却したのに、平成が終わるいま、軍事費調達のために多額の国債を発行した第2次世界大戦の末期の水準に借金が積み上がった歴史にも言及。「過ちを二度と繰り返すことがあってはならない」と訴えた。

政府も、財政健全化が遅れた一因に、平均で年約5兆円という諸外国より相対的に大きな金額を補正に計上してきたことがある、と分析していた。6月にまとめた骨太の方針には「補正予算も一体として歳出改革の取り組みを進める」と明記した。

政府は骨太の方針に立ち返り、真剣に問い直すべきだ。

第2次補正予算に計上しようとしている事業は、本当に緊急に必要なのか、と。
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[読売新聞] 介護予防 医療との連携強化を進めたい (2018年11月29日)

健康寿命を延ばし、元気で長生きできる社会を作ることは、社会保障の持続性を高めるうえでも大切だ。要介護状態になる手前での予防策の充実を急ぎたい。

厚生労働省の有識者会議が高齢者の健康作りと介護予防の実施体制に関する報告書案をまとめた。より効果的・効率的に行うため、制度の枠を超え、市町村が一体的に実施するよう提言している。

現状では、生活習慣病対策などの健康作りは医療保険、運動機能向上などの介護予防は介護保険で、別々に実施されている。

高齢者の多くは複数の疾患を持ち、年齢を重ねるほど身体機能の低下や社会的つながりの減少といった複合的な課題を抱える。医療と介護にまたがる問題も多い。

住民に身近な市町村に健康上のリスク対策を集約し、個々の状態に応じてきめ細かく対応できる体制を作る。その狙いは適切だ。

具体的には、公民館などを拠点に体操やレクリエーションを行う介護予防の「通いの場」で、健康相談など医療保険の保健事業を展開することが想定される。

医療・介護両面から支援が必要な人を把握し、適切なサービスに効率的につなぐことができる。

要介護の手前の「フレイル」と呼ばれる虚弱状態の予防・改善策としても有効だろう。

フレイル対策は、都道府県単位の広域連合が運営する後期高齢者医療制度の保健事業に含まれている。実際には、個別対応は困難で、ほとんど実施されていない。

「通いの場」を活用して介護予防と一体的に取り組むことで、社会参加を含めた幅広いフレイル対策が可能になる。

介護予防教室と健康相談を一緒に開催したり、「通いの場」に保健師が出向いたりする自治体も現れている。1か所で複数のサービスが受けられることは、高齢者にとってもメリットが大きい。

市町村での一体的実施には、事業にあたる保健師ら専門職の新たな配置が欠かせない。広域連合が責任を持って人材と財源を確保しなければならない。

医療・介護データの共有と活用も進めたい。一括して分析すれば、個々の健康状態や地域ごとの特性がより明確に把握できる。

課題は、健康への関心が低い層に、どう働きかけていくかだ。「通いの場」への参加率は4%程度と低迷している。ショッピングセンターに拠点を設けるなど、誰もが気軽に参加できる環境作りを工夫する必要がある。
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[朝日新聞] 気候変動会議 パリ協定始動へ道筋を (2018年11月29日)

地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を2020年以降に始動させられるかどうか、重要な局面である。

国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP〈コップ〉24)が来月2日、ポーランドで始まる。

パリ協定は、産業革命からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度未満に抑えることをめざす。すべての国が温室効果ガスの削減目標を示し、対策に取り組むことになっている。

COP24では、発効ずみのこの協定を実際に動かすために、運用ルールを話し合う。国別の削減目標にどんな内容を盛り込むか。排出量をどう算定し、目標の達成度をいかにチェックするか。項目は多岐にわたる。

世界2位の排出国・米国のトランプ政権は協定からの離脱を表明した。ここで交渉が頓挫すれば、温暖化対策の機運がしぼむ。一部の項目は来年の会議に積み残しそうだが、ルールの大枠は固めなければならない。

気がかりなのは、先進国と途上国の基本姿勢の違いが、交渉に影を落としていることだ。

先進国は「すべての国が同じルールの下で排出削減に努めるべきだ」と唱える。途上国は「現在の気温上昇は先進国の過去の排出が主因。ルールが同じなのはおかしい」との立場だ。

確かに先進国には歴史的責任がある。ただ、中国とインドで世界の排出量の3分の1を超えるいま、途上国に配慮しすぎると協定の実効性が損なわれかねない。お互いが歩み寄り、世界全体の排出削減につながるよう知恵を出し合ってほしい。

今回のCOP24には、もう一つ大きな課題がある。温室効果ガス削減の国際的な機運を、さらに高めていくことだ。

国連の気候変動に関する政府間パネルが出した特別報告書によると、各国が既に掲げる目標を達成しても、気温の上昇幅は今世紀末には3度に達する。そうなると異常気象や自然災害による深刻な被害が避けられない。パリ協定下で5年ごとに国別目標を見直す際、削減量を増やしていかねばならない。

その環境を整えようと、フィジーの言葉で「開かれた話し合い」を意味するタラノア対話が、各国政府や自治体、企業などが参加して続けられている。

COP24でも閣僚らのタラノア対話がある。日本は来年のG20議長国として、対話をリードする役割を果たすべきだ。

パリ協定が15年に採択されてからの3年間で、脱炭素社会に向けた世界の動きは力強さを増した。その流れを揺るぎなくする国際社会の決意が問われる。
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