2017年12月31日

[産経新聞] 【主張】ISの駆逐 過激思想への対策怠るな (2017年12月31日)

イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)が、イラクとシリアからほぼ駆逐された。イラクのアバディ首相は全土を解放したとして勝利宣言した。

IS掃討戦の有志連合を率いる米国は、シリアを含め支配地の98%が奪還されたと発表した。

テロ集団が国境をまたぐ広大な地域を制圧し、建国を宣言したのは3年半前だ。驚愕(きょうがく)すべき「怪物」の出現だった。

住民から徴税し、油田を強奪して石油を密輸し、外国人を誘拐して身代金を要求した。日本人2人の殺害映像を公開するなど、残忍さも際立っていた。

内戦下のシリアはもちろん、イラクも民族・宗派対立の表面化で政情は不安定だ。そこをテロ集団につけ込まれ、巨大化させてしまったことを忘れてはならない。

必要なのは、争いをなくし、住民の暮らしを守ることである。まずはイラクでの避難住民の帰還、生活再建を急ぐべきだ。シリア内戦にいつまでも手をこまねいてはなるまい。

国家分裂の状態にあるリビアなど、中東・アフリカを中心に、テロ集団に対して無力ともいえる危うさを抱えた国が少なくない。

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アフガニスタンは、イスラム原理主義組織タリバンが依然、勢力を維持し、政府が支配する地域は国土の6割にとどまる。そこへISが浸透を始めている。

ISは新たな拠点を求め、各地の過激組織との連携も模索している。巨大化した過激勢力が新たに生じる恐れも無視できない。

日本を含む各国が、テロ集団の情報を共有し、危機の兆候をいち早く察知して芽を摘み取らねばならない。政情不安の国へは、解消のための支援も必要である。

ISの戦闘員はなお、地域に約3千人残っているとみられ、掃討戦は継続される。一方、欧州諸国を含む出身国に戻った戦闘員は5千人以上といわれる。

過激思想を抱いている可能性が強く、各国で十分なテロ対策をとる必要がある。

ISを特徴づけるのは、インターネットを駆使した巧みな宣伝戦であることを想起したい。欧米では普通の若者が感化され、車など入手の容易な「凶器」を使い、テロを起こすケースが目立つ。

ネット上の過激思想対策も含め、長期のIS掃討戦を覚悟しなければならない。
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[産経新聞] 【主張】医師の偏在 政府挙げて根本解決せよ (2017年12月31日)

医療は、生活に欠かせない社会基盤である。医療機関がなくなれば、地域全体がいずれ成り立たなくなる。

その存在は、地方創生の要諦の一つだ。だが、医師は診療科や勤務先を原則自由に選ぶことができる。それによる偏在が地方を危うくする。

専門的な医療を目指す医師が増えた。自分の子供の教育環境を考え、医師数が少ない地域での激務を嫌う。結果として大都市部に医師が集中する。都道府県間の差も大きいが、同じ県内でも地域により開きが生じる。

厚生労働省は地域医療構想を都道府県に描かせ、医療機関同士の連携と役割分担を進めている。だが、肝心の医師が不足したのでは画餅に帰す。

このままでは多くの地域で医療崩壊が進みかねない。根本的な解決に向け、安倍晋三首相のリーダーシップを期待したい。

医師偏在の解消について、検討を進めてきた厚労省の有識者会議が報告書をまとめた。

「医師不足地域での勤務経験」を、地域の核となる一部の病院で管理者に就任する際の基準に加えるなどの内容だ。小手先の対策を列挙した印象である。これでは効果を発揮するとは思えない。

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医療団体の代表者など、利害関係者が議論を重ねている。そこに抜本策を望むのは難しい。いたずらに時間を費やす間に地方の人口減少の方が進んでしまう。

そもそも、これまでの医師偏在解消の議論が、日本の人口激減をどこまで織り込んできたのか疑問である。

人口の激減に対応するには、人が集まり住み、社会基盤そのものをコンパクト化することが避けられない。

現在の医療機関の維持を前提としているのでは実現できまい。地域ごとに拠点を定め、政府の責任で重点的に充実を図る思い切った発想の転換を求めたい。

患者の通院の足を確保し、コンピューターを活用した遠隔診断を普及させるなど、総合的な施策の展開も重要である。

「地方」とはどこを指し、何をもって偏在というのか、その尺度についても根本的な見直しを行うべきだろう。

厚労省任せではできない。人口減少対策の先例となるよう、安倍首相は省庁を横断して政策を総動員し、取り組んでもらいたい。
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[東京新聞] 大晦日に考える 最近、たるんでないぞ (2017年12月31日)

いろいろあった一年もついに暮れますね。大晦日(おおみそか)ぐらいは、ということで大目に見ていただき、ちょっとくだけて笑いや遊びについて書いてみます。

二〇一七年も三百六十五日目。「いやはや、もう一年か」と感慨にひたっている方も少なくないでしょう。こんな笑話があります。

雷様が、お月様とお日様と一緒に旅をした。だが朝、宿で雷様が目を覚ますと独りぼっち。宿の者に聞けば「お月様もお日様ももう出発なさいましたよ」。雷様が一言。「月日のたつのは早いなぁ」


◆「新解釈」で笑う
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笑いといえば、割と有名ななぞなぞを一つ。英語で一番長い単語は何? 答えは、smiles。「ほほ笑み」のスマイルの複数形とか、人の姓にもありますね。で、たった六文字でなぜこれが一番長いのか。最初のSと最後のSの間が1マイル(1・6キロ)あります…。スマイル、いや薄笑いでも浮かべていただけたら幸甚。

笑いとは何かは難問ですが、例えば劇作家の鴻上尚史(こうかみしょうじ)さんがどこかで書いていたのは「新解釈」。そういえば、駄洒落(だじゃれ)だって、言葉に別の意味を見いだすのですから新解釈といえば新解釈ですね。時に「おやじギャグ」などと蔑(さげす)まれますが、なかなかの傑作もあって−。

ゴルフ場で、一人が、もう少しでグリーンに乗るというナイスショット。その瞬間、誰かが叫ぶ。「あわや、乗りこ!」。まあ、ブルースの女王を知る世代限定ですが。

これも「新解釈」でしょうか。記憶曖昧ながら、前にネットで見た変換ミスコンテストの応募作の一つが、確かこんな感じで−。

その人は、友人とメールで信仰について論争中、「(自分は)神の存在を信じないし、不幸とも思わない」と大まじめに打って送ったつもりが、変換ミスでこうなっていたそうです。

「紙の存在を信じないし、拭こうとも思わない」


◆「遊び」へと飛び出せ
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ちょっと言葉遊びがすぎたでしょうか。でも、笑いは健康にいいとも言われますし、昔から「笑って損した者なし」と。ただ、笑いは、笑う方にゆとりがなければ生じ得ないのも確かです。

古く外の目から言われる日本人の特質はといえば、第一に勤勉、まじめであって、ついつい仕事にのめり込む傾きが。ゆとりというのは案外苦手な気がします。

勤勉は美点ですが、そこに企業の競争・効率至上主義がつけこむと、個人が無理を強いられ続けかねません。今年を振り返っても、過労死や過労自殺など働き方をめぐる悲劇は相次ぎました。

文筆家のワクサカソウヘイさんは雑誌『望星』十二月号のエッセーで、そうした、こうあらねばならない、と不断に迫ってくるような社会状況を「意味の呪縛」と呼んで、こう指摘しています。

<私たちは意味の呪縛に対抗する、唯一にして尊い手段を持っている。それが「遊び」だ>。草野球でも登山でも盆栽でも、とにかく何でもいいのでしょう。意識的に「意味の構図」から無意味=「遊び」へと飛び出すべし、と。

「遊び」といえば、もう、ひと昔前になりますが、原題にひかれて一冊の本を買い求めたことがありました。トム・デマルコという米国人コンサルタントが書いたビジネス書ですから、本来なら本屋で見ても素通りなのですが、表紙の「Slack」という言葉に目がとまったのです。

聞かない英語ですが、筆者の愛好する遊び、フライフィッシング(西洋式毛針釣り)ではなじみ深い言葉で、結んだ毛針を水面で流す時、糸につくる「たるみ」を指します。それがほどけて流れを吸収してくれる間は、毛針が糸に引っ張られて動くことなく自然に流れてくれる。ピンと張っていてはそうはいきません。

この本(邦題『ゆとりの法則』)の著者はビジネスにも、その「たるみ」こそが肝要だと説いています。効率化を進めすぎて、スラックがなくなると、変化への対応力も失い、生産性は損なわれる、というのです。

こんな例を挙げています。

九ますに八個の数字タイルが並ぶパズル。そこにもう一つタイルを入れて、空きスペースをなくしてしまうとどうなるか? もう、タイルは一切、動かせない…。


◆スラックがなくなると
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この「たるみ」は「遊び」に通じます。ほら、ハンドルの遊びなどと言いますし。「ゆとり」と呼び換えてもいい。さすれば、笑いも生まれ得ましょう。

企業にも個人にも大事なのですから、むしろ、上司は「最近、たるんでるぞ」じゃなく「最近、たるんでないぞ」と部下を叱咤(しった)すべきなのかもしれません。

さて、もう一つ寝るとお正月。いい新年にしたいものです。
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[毎日新聞] 回顧・トランプ政治元年 国際政治の地軸が動いた (2017年12月31日)

千葉県で見つかった地層が地球の磁場逆転の時代(チバニアン)を物語るように、後世の歴史書は2017年を起点とする国際政治の特異さを記すだろう。トランプ政治。今年はその元年だった。

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や地球温暖化対策のパリ協定からの離脱宣言。そして今月は世界の反対と懸念をよそにエルサレムをイスラエルの首都と認定した。

1月に就任したトランプ米大統領の矢継ぎ早の変革。その根底には既成の権威への嫌悪感がある。とにかく破壊する。あとは閣僚や官僚たちが考えればいいと言わんばかりの政治姿勢はいかにも乱暴だった。


「こわもて」には限界も
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前政権との違いは明らかである。

理知的なイメージのオバマ前大統領は「核なき世界」の理想をうたい、イランとの核合意をまとめた。

半面、争いごとに弱い体質に乗じるように、ロシアはクリミア半島を奪い、過激派組織「イスラム国」(IS)は国家樹立を宣言。中国は南シナ海の軍事拠点化を進め、北朝鮮は核実験を続けた。

その意味では学級崩壊の趣もあった。騒ぐ生徒をよそに格調高い話を続けた「オバマ先生」は去り、こわもての新たな担任、「トランプ先生」が登場。「問題児」たちもしばし緊張して見守っている??。

そんなふうに例えても、あながち的外れではあるまい。

「こわもて」にはそれなりの長所がある。トランプ氏の11月のアジア歴訪で日本や中国、韓国は皇帝を迎えるような厚遇ぶりだった。米国が北朝鮮問題と貿易不均衡問題で強気の姿勢を見せ、特に軍事力を前面に押し出したからだ。

「米国は必要なら本当に軍事力を使う。そう人々に知らしめれば、米国の待遇は変わる。尊敬をもって処遇されるようになる」

トランプ氏は著書(「グレート・アゲイン」)にそう書いた。

単純なまでの軍事力信仰。史上最強の軍事力を現実的な利得に変えようという姿勢は一貫している。

だが、軍事圧力を強めても北朝鮮問題はほぼ進展がなかった。中国の対米協調が進んだのは「力の外交」の成果とはいえ、仮に米国が妥協して北朝鮮の核廃棄を実現できなければ、「こわもて」は限界を露呈し米国への不信が広がるだろう。

また、ロシアとの癒着疑惑「ロシアゲート」の捜査が、仮に娘婿のクシュナー氏ら身内に及べばトランプ氏は窮地に立たされる。1970年代に当時のニクソン大統領が辞任に追い込まれたウォーターゲート事件のような展開も想定外ではない。

だが、現時点で重要なのは「議会の共和党議員がトランプ氏に逆らえなくなっている。共和党はトランプ党になりつつある」(渡辺靖・慶応大教授)という現実だ。税制改革法の成立は与党の協力を物語る。

その一因は、反トランプ派の議員に対してトランプ氏の盟友・バノン前大統領首席戦略官らが対立候補を立てて落選させようとするからだという。米国版「刺客」である。

エルサレムの首都宣言も再選への布石だろう。イスラエルと強い絆を持つキリスト教右派を取り込めば共和党内での発言力が強まり大統領再選への環境も整備されるからだ。


「リベラル疲れ」日本にも
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だが、失われたものも大きい。

理想を追い求め、よりよい社会をめざすのは米国政治の伝統でありリベラリズムの特長でもある。

トランプ氏はそんな伝統に背を向け、社会に不満を持つ白人労働者層の支持を集めた。逆に言えば、きれいごとはたくさんだと「本音」を声高に語る人々が台頭したのだ。

そんな「リベラル疲れ」は日本を含む先進国でも見られるのではないかと渡辺教授は指摘する。

国会議員の相次ぐ問題発言、インターネット上の外国非難も「リベラル疲れ」の一種だろうか。そうした現象の背後にある感情は、トランプ氏を擁護する感情と親和性を持っているのではないかというのだ。

だが、国際的枠組みからの離脱やイスラム教徒の入国規制などは「自由の国・米国」のソフトパワーを損ない、その分野での米国の利益も失わせる。結局はトランプ氏の支持層にもツケが回る可能性がある。

トランプ政治を米国民と世界がどう評価するか。その答えが出るのは来年以降だが、破壊に終始すれば豊かな社会も本当に安全な世界も築けない。それだけは確かである。
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[読売新聞] 人工知能の未来 社会に根付かせる工夫が要る (2017年12月31日)

進化し続ける最先端技術を国民の暮らしにどう役立てるか。人口減社会を乗り切る技術革新のあり方について、知恵を絞らねばならない。

少子高齢化の進展で、2030年の日本の生産年齢人口は6900万人となり、15年間で750万人も減る見通しだ。労働力不足は年々深刻化し、企業の経営環境が厳しさを増していく。

日本の時間当たり労働生産性は、主要国で最低水準だ。このうえ人口減が進めば、国際競争力の一段の低下が避けられない。

こうした事態を打開するカギとして、人工知能(AI)やロボット、あらゆるものがインターネットにつながるIoTの技術が脚光を浴びつつある。

最先端技術が、企業の人材不足を補う。効率化で増えた利益は賃上げにつながり、個人消費の盛り上がりも期待できよう。

政府は、AIを社会に根付かせるため、新たな法整備や規制緩和などの後押しが欠かせない。

例えば、自動運転車などAIを使った製品による事故・損害に対処する法律はこれからだ。

AI開発は、資本力と人材の層の厚さに勝る米国、中国が先行する。日本も競争に乗り遅れないような環境作りが必要となる。

気がかりなのは、AIやロボットの高度化が、人手不足の解消だけでなく、将来的に失業増を招くとの指摘が少なくないことだ。

日英の共同研究では、10?20年後には現在の職業の半分が、AIやロボットで代替できるようになるとの予測がある。

既に外国語を自動翻訳するAIは、観光施設や自治体などで利用が始まっている。銀行もAIを商品提案に役立てている。

数年後には、スーパーのレジやホテルのフロント業務なども、無人化が進むとの見方がある。

「人への投資」が大切となろう。新たな成長分野への人材移動が求められる。柔軟に対応できるよう、企業は、従業員研修などの充実に努めることが重要だ。

だが、従業員の教育訓練費は、1990年代以降、減少傾向にある。企業任せにするのではなく、大学や専門学校などで、社会人が新たなスキルや知識を学び直せる体制作りも課題である。

近い将来、人間の思考に匹敵するAIが登場するかどうかは、専門家にも多様な意見がある。

少なくとも、技術革新に伴う失業などの副作用について、産学官で十分に分析し、対応策の検討を急いでもらいたい。
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[読売新聞] 薬害肝炎救済法 被害者の掘り起こしを急ごう (2017年12月31日)

汚染された血液製剤を投与された事実を知らないまま、肝炎が進行している人が、まだ大勢いるのではないか。

出産や手術で止血剤として使われた「フィブリノゲン」などが原因で、C型肝炎になった人への給付金の請求期限が、5年間延長された。先の特別国会で成立した改正薬害C型肝炎被害者救済法によるものだ。

期限延長は、2012年に次いで2回目だ。1万人以上とされる被害者のうち、これまでに救済されたのは約2300人にとどまる。再度の延長を意義あるものにするため、政府は被害者の掘り起こしに一層努めてほしい。

救済法は、08年に議員立法で制定された。患者が国や製薬会社を相手取った訴訟で、原告勝訴が相次いだのを受けた措置だった。被害の拡大を防げなかった政府の責任を明記し、「被害者の一律救済」をうたっている。

カルテや医師の証言で投与が証明できれば、症状に応じて最高4000万円が支払われる。

しかし、カルテを保管する医療機関による調査は、遅々として進んでいない。確認作業すらしていないところも多い。

フィブリノゲンは1980年代を中心に、28万人以上に投与されたとされる。データ量が膨大なだけに、医療機関に任せきりの調査には限界があるのは事実だ。

被害者の問い合わせを受けて、医療機関が投与の有無を確認する方が、確実かつ効率的だろう。

投与された母親の多くは、50歳代から60歳代になっている。C型肝炎は自覚症状が乏しく、気付かないうちに肝硬変や肝がんへと進行している恐れがある。

一日も早く肝炎の検査を受ける。感染が確認されれば、かつて受診した医療機関に照会する。被害者を特定し、早期治療につなげるためには、この流れを定着させる必要がある。政府は積極的な検査受診を呼びかけるべきだ。

カルテが廃棄されていたり、廃院して証言できる医師がいなかったりするケースは少なくない。被害者にとって立証のハードルは高いが、血液製剤の納入記録などを基に、救済されることもある。

乳幼児期の集団予防接種の際、注射器が使い回されていたのが原因で、B型肝炎に感染した人も多い。被害者が給付金の支給を求める訴訟が全国で続く。

ウイルス性肝炎の広がりは、過去の血液行政の過ちの結果でもある。被害者救済は、政府の責務であることを忘れてはならない。
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[朝日新聞] 2017―2018 聞けなかった声、を (2017年12月31日)

北九州空港から東九州自動車道に乗り南下すること約30分、左にミカン園が見えてきた。

ここはミカン農家の岡本栄一さん(71)が買収に応じず、唯一未開通だった区間。福岡県が強制収用し、園を分断して昨春、宮崎市まで全線開通した。

2年前、大みそか付の社説に岡本さんのことを書いた。久々の再会。当時は「怒」のエネルギーに満ちていたが、なんだろう、「惑」の気配が濃くなった。

■排除された「異物」

「今年は出来が悪くて」。木の乾燥が激しいのは、地下の水脈が切られたからだと思うが、確たることはわからない。道路付近では猟銃が使えなくなり、鹿の食害も激化した。わな猟の免許を取ったが、効果はわからない。理由はわからないが注文と違う品種の苗木が届く。文句を言うと「ミカンなんか植えんでも高速道路の補償金をもらえばいい」と返されたという。

「分断されたらもう、あちこちがおかしくなって」

この土地で50年、甘いミカンを作るためにこつこつと手入れし、築きあげてきた世界がきしきしときしみ、すっかり見通しがきかなくなってしまった。

その痛苦はどうすればあがなえるのか。岡本さんは18年間反対を貫き、約1億7千万円の補償金の受領もずっと拒んできたが、先月、うち数千万円を受け取った。園が二分されて作業効率が落ち、借金が膨らみ、どうにもならなくなったという。

――そうでしたか。受け取る時、どんな心境でしたか?

一瞬、身体をこわばらせたのち、残る補償金のうち3千万円ほどを使って、公共工事を改革するための基金をつくるつもりだと、今後の構想を語った。

――あの、どんな心境……。

なんでそんなこと聞くのよぉと、うつむく。ごめんなさい。でもわからないんです。なぜ岡本さんがこんな目に遭うのか。父親から受け継いだ土地を守りミカンを作り続けたかっただけなのに、その思いを大事にし過ぎたということなのか――。

「わからん。自分のことは、わからんよ」

全線開通による時間短縮効果は約10分。「人や物の流れがスムーズになる」とうたわれる。

スムーズになる。「異物」が排除されれば、それは、確かに。

■預けられた「私」

精神科医で立教大教授の香山リカさんは最近、診察室を訪れる若者の変化を感じている。

「つらいんです」。どういう風にですか?と聞いても、「つらいってことです」。

単調なやりとりが増え、「この感じがとれる薬ください」と、カウンセリングより手っ取り早い薬物療法を望む人も目につくようになった。自分の内面を掘り下げ言葉で表現する力が落ちているように思う。

大学で学生たちと接していても、「『私』をどこかに預けている感じがする」という。

――なぜ預けるんでしょう?

「自分の弱さと向き合うのはとても苦しいことだから、でしょうね」

それと対をなすのが、今年の流行語大賞に選ばれた「インスタ映え」なのだろう。言葉や中身ではなく、かわいい、おいしそう、楽しそうな「映える」写真と「いいね!」の数が「私」の輪郭をかたどる。言葉を介するよりもきっとずっとスムーズに「私」は他者とつながれる。

なるほど、言葉で説得しようという意思を欠く一方、「看板」や「包装紙」のデザインに傾注するいまの政治のありようは、この時代に適合的と言えるのかもしれない。もちろん、それを「政治」と呼ぶか「集客」と呼ぶかは、別の問題としてある。

■社会的想像力を

「私」を掘り下げられないなら「私たち」を掘り下げるのも難しい。かつては大事件が起きれば、社会が生んだ犯罪かもしれないと、漏れ伝わってくる容疑者の「声」に耳を傾け、時に想像力を使って、背景を理解しようとする「作法」があった。

しかし、秋に発覚した座間の事件。昨年、相模原で起きた事件。自分とは別世界の「異物」が引き起こしたものと、簡単に切り捨ててはいないか。「死にたい」というつぶやきを、「障害者は生きていても仕方がない」という、社会への「挑戦状」を、私たちは真正面から引き受け、考えてきただろうか。

精密な受信器はふえてゆくばかりなのに/世界のできごとは一日でわかるのに/“知らないことが多すぎる”と/あなたにだけは告げてみたい

(茨木のり子「知らないことが」)

社会的想像力が弱れば、負担を押し付けられた人は押し付けられたまま、ブラックボックスはブラックボックスのまま、力を持つ人の声だけが響く、それはそれでスムーズな社会が現出するだろう。

2017年が終わる。

聞かなかった、聞けなかった数多(あまた)の声に思いをはせる。来年こそはと、誓ってみる。
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2017年12月30日

[産経新聞] 【主張】回顧2017 「異質」な指導者目離せぬ 現状変更勢力から国益守れ (2017年12月30日)

世界は今年、2人の異質な指導者に翻弄された。

米国第一主義に立ち、既存の秩序を次々と否定するトランプ大統領と、核・ミサイル開発で挑発を続ける北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長である。

不当な核開発をやめない独裁者と超大国のリーダーを同列に並べるのは本来、適切ではない。しかしながら、国際社会の対応が両氏の言動に大きく左右されてきたのは事実である。

とりわけ北朝鮮の脅威に直接、さらされる日本は、今後も2人から目を離すことができない。

≪分断狙う隣人に警戒を≫

トランプ政権は北朝鮮の核武装は容認しない姿勢を鮮明にし、テロ支援国家に再指定した。日本も同じ立場から、圧力強化に向けて米国との連携を強めてきた。

対する金正恩氏は、今年の元日に米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射準備が「最終段階にある」と宣言した。

この時点で、世界の大方は年内に完成間近になるとは予想もしなかっただろう。またしても開発阻止に失敗したのだ。

1月の就任直後、トランプ氏はいきなり環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)離脱を表明し、中東・アフリカ7カ国からの入国禁止令などの大統領令に次々と署名した。

議会調整も政府内の根回しもない“トランプ流”に各地でデモが起きたが、白人の支持者らは拍手喝采した。

そうした内向きの米国をにらみながら、金正恩氏は「国家核武力」の完成に向けて布石を打っていたといえよう。

マレーシアの空港で異母兄弟、正男氏の殺害を見届けると、核・ミサイル開発の速度を上げ、夏にはICBM発射や6回目の核実験に成功した。

ICBMの配備を許せば、米国の「核の傘」は効力をそがれる。国連では初の「核兵器禁止条約」が採択された。だが、日本が唯一の被爆国だと唱えても、現実的な備えを講じたことにならない。

安倍晋三首相が「国難」への覚悟を問い、衆院解散に出た背景にも、そうした危機感があった。

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対北包囲網の強化に欠かせないのは、日米韓の結束である。しかし、韓国の文在寅大統領は最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備をめぐり、これに反対する中国に妥協を強いられている。

一方、歴史問題では抗日で中国と協働し、北朝鮮への融和的な姿勢も捨てない。異なる相手に口裏を合わせる“カメレオン”ぶりには当惑する。米韓の寸断をもくろむ隣人の思うつぼではないか。

対北圧力のカギを握る中国の習近平国家主席は、原油の禁輸には腰が重い。米国の視線を朝鮮半島に向けさせつつ、南シナ海の軍事拠点化を公然と続けている。

≪拉致置き去り許されぬ≫

2期目に入った習体制は、現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」で囲い込み、独自の秩序形成を急ぐだろう。それを阻むための開かれた地域構想は、日本が提唱し、米国が賛同したインド太平洋戦略であるはずだ。

良好な安倍?トランプ関係が奏功した例だが、日米の同床異夢に終わらせてはなるまい。強固な日米同盟をさらに肉付けしていく努力を止めてはならない。

トランプ氏への不安がぬぐえないのは、独善的な思考によるところが大きい。ロシアによる大統領選介入疑惑の追及はまだ続く。

自らの弱点から支持者の目をそらそうとするためだろうか。強硬的な対外政策をツイートするのが習いとなっている。

米国に求めたいのは、自由と民主主義、法の支配という価値を国際協調を通じて守り抜く意思である。それに対抗する現状変更勢力は巧みに戦いを仕掛ける。

スターリンの粛清時代を肯定するプーチン露政権は、軍事力とサイバー攻撃、世論操作などを併せた「ハイブリッド戦争」で西側の分断をもくろんでいる。

日本の主権と国民の安全が踏みにじられた屈辱を、置き去りにしてはならない。

「善良な13歳の少女」である横田めぐみさんが北工作員に拉致された事件を、トランプ氏は国連演説で取り上げた。

国際世論が高まりをみせる今こそ、拉致被害者の救出に日本は能動的に動くことが必要である。
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[東京新聞] ニッポンの大問題 高齢期を「どう生きる」  (2017年12月30日)

今年は推計で百三十四万人が亡くなりました。超高齢社会の日本は「多死社会」を迎えます。人生の最終段階にどんな医療を受けたいでしょうか。

死を考えるとは、どう生きるかを考えること。そう感じる赤裸々な告白でした。

十一月のある日の日経新聞に「感謝の会開催のご案内」という広告が載りました。その主は建設機械メーカー・コマツの元社長、安崎暁さん(80)です。


◆人生最終段階の医療
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胆のうがんが見つかり体中に転移していることを告げました。そして、残された時間はクオリティー・オブ・ライフ(QOL・生活の質)を優先したいと、つらい副作用がある放射線や抗がん剤治療は控えることを宣言しました。

治療による延命より、自分が望む生活を優先する。そんな「終活宣言」に聞こえます。

十二月の「感謝の会」は友人・知人ら約千人が集まり、病の痛みをこらえながら車いすで会場を回り親交を温めました。出身の徳島の阿波おどりも披露されました。参加した男性(69)は「自分で決める本人も、それを許す奥さんもすごい」と語りました。

安崎さんは会の終了後、メディアにも思いを語ってくれました。

「十分、人生を楽しんできました。人間の寿命は有限、だから現役の間は一生懸命働いて、棺おけに入るときは自分の人生よかったなあと、そう思って入りたい。若いころからひとつの死生観がありました」

仕事を引退後、「余生三等分主義」を実践してきました。残ったエネルギーを三等分して、社会、家族、自分のために使う。これが安崎流のQOLです。ただ、今回の決断を「一般の方にお勧めできるわけではない」とも。周囲の環境や考え方も多様だからです。

かつて、経営トップとして厳しい判断をしてきたことでしょう。この決断も強い意志を感じます。

それでも唯一、その心が揺らいだ瞬間があります。決断に賛同しているという妻のことを聞かれた時です。「家内は、まだがんばれば生きられるんじゃないかと…」。食事療法に取り組んでいることを説明し「一生懸命やってくれています」と話した後、しばらく言葉になりませんでした。

強い意志を持つ人でも家族を思うと迷いはあったのではないか。どんな医療を選ぶかは、当事者には明快な解のない重い問題です。

死をどう迎えるかは聖域にされています。「個人の自由、周囲が口出しすべきではない」との考え方は尊重されるべきです。


◆本人の思い共有する
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しかし、医療技術の進歩は別の問題を突きつけています。食べられなくなっても、意識がなくなっても生きられる時代です。選んだ医療がほんとうによかったのか、直面した人たちは悩みます。

本人はどんな医療を受けたいか、家族はどんな医療を受けさせたいか。それを決めるには、どんな生活を送りたいかを考える必要がでてきます。つまり、終末期の医療を考えれば、それは「どう生きたいか」を問われます。

では、どう決めればいいのでしょうか。「自己決定」が基本ですが、認知症など自身で判断できない場合は戸惑います。本人、家族、医療・介護従事者が話し合うことがひとつの解になりえます。早い段階から本人の希望、家族の思い、提供できる医療サポートなどを「共同決定」する考え方です。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)と呼ばれます。いわば「最期までの予定表」。もちろん気持ちは変わります。予定表は書き換えることができます。その都度、思いを共有する取り組みです。

書面を作って終わりではなく、本人の意思を絶えず共有すること、それができたら本人が満足し、家族が納得する医療が実現できるのではないでしょうか。

厚生労働省の意識調査では、こうした考えを事前に書面にすることについて70%が賛成しているのに、実際に作成している人は3%にすぎません。本人の意思を知る重要性は理解しつつも、死へのタブー視が阻んでいるようです。

病にむしばまれた安崎さんは「余生三等分主義」を貫くことは難しくなっています。


◆死は生とともにある
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ただ、ひとつ言えることがあります。死に行く人や家族のケアを考える死生学は英語でサナトロジー、直訳では「死亡学」になります。これを日本人は「死生学」と訳しました。死はいつも生と対にあるもの、どう死ぬかはどう生きるかと同義ではないでしょうか。

安崎さんは「今後、QOLに何を求めるのか、まだ結論がでていません」と吐露しました。自身の死生観とともに生きることを模索しているに違いありません。
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[毎日新聞] 障害者施設での虐待増加 暴力や身体拘束の根絶を (2017年12月30日)

障害者施設の職員による虐待が増加の一途をたどっている。虐待の根絶に向けて取り組みを強化しなければならない。

厚生労働省によると2016年度に虐待を受けた障害者は3198人。家庭や職場での虐待は認定件数も被害者数も前年より減ったが、福祉施設職員による虐待は401件、672人で前年より2割近く増え、4年連続で過去最多を更新した。

虐待防止に向けて職員研修や綱領の策定に取り組む施設は増えているが、現場職員を指導する立場の管理者による虐待も「職員による虐待」のうち8%を占めた。施設ぐるみで虐待がはびこっている実態があるのではないか。

証拠となる記録の隠蔽(いんぺい)を図る、虐待を通報した職員に経営者が多額の損害賠償を求めて「口封じ」をするなどの悪質な例もある。被害者の7割近くが知的障害者で、自傷他害やパニックなどの行動障害を起こす人への暴力や身体拘束が特に多い。

以前は多くの施設で体罰が横行しており、障害者を力で抑制できる職員が現場で影響力を持つ傾向があった。行き場がなくなることを恐れて、沈黙する家族も多かった。

しかし、1990年代後半から障害者虐待が社会問題となり、権利擁護の必要性が議論されるようになってから状況は変わってきた。

行動障害に関しても、障害特性に合った環境やコミュニケーションに基づく支援によって改善できることが、各施設で実証されてきた。暴力による抑制や身体拘束はむしろ行動障害をエスカレートさせることもわかってきた。国も行動障害の改善に向けた職員研修を強化している。

ところが、今も旧態依然のやり方で暴力や身体拘束を繰り返している施設は少なくない。虐待を認定されたのは氷山の一角だ。

職員側が障害者の行動障害を引き起こしておきながら、どうしていいかわからず、また暴力や身体拘束を繰り返す。公的な補助金で運営されている福祉施設でそんな理不尽が繰り返されているのだ。

これに対して、自治体の調査体制は弱く、虐待防止に向けた指導も甘い。政府や自治体は事態の深刻さを自覚し、悪質な施設や職員にはもっと厳しく対処すべきだ。
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[毎日新聞] 豊洲市場移転と小池都政 それで築地はどうなった (2017年12月30日)

東京都政は今年も「豊洲」「築地」に揺れた1年だった。

築地市場から豊洲市場への具体的な移転・開業日が来年10月11日に決まった。都と市場関係者の合意がようやくまとまり、当初の予定から約2年遅れての移転となる。

小池百合子知事が移転延期を決めたのは昨年8月末だ。その後、盛り土が一部ないことが判明し、施設内の地下水から環境基準の100倍を超える有害物質も検出された。

確かに、延期したことで政策決定のずさんさが浮き彫りになった。安全対策を講じたのは当然だ。

だが、東京都議選を前にした6月、豊洲市場と築地市場の両立方針を示してから、迷走が始まった。

小池氏は「築地は守る、豊洲を生かす」と述べ、築地市場の跡地を「食のテーマパーク」とする再開発構想を打ち出した。しかし、その具体的なビジョンはいまだに示されていないままである。

豊洲市場と築地市場のすみ分けがはっきりしないことは、豊洲市場の集客施設構想にも不安を与えている。施設の運営を予定する業者は「競合する」と反発し、撤退も検討しているという。

これでは都政をあずかる責任ある姿勢とはいえないだろう。

市場の安全を確保し、風評被害が出ぬよう努めるとともに、早急に築地再開発のグランドデザインを示すべきだ。

豊洲市場の採算を危ぶむ声は根強い。年間の管理費も約77億円かかるとされ、赤字運営が見込まれる。

卸売市場の水産物取引量は減少している。築地など都中央卸売市場の取引額は、1990年のピーク時に比べ2016年は約4500億円と半減している。消費者の魚離れや産地との直接取引の広がりが要因だ。

取引量を増やし、経営合理化などで赤字を減らす工夫も必要だ。

小池氏は「希望の党」を結成し、代表として10月の衆院選に臨んだ。だが「排除発言」などから失速し大敗すると代表を辞任した。国政と都政の間で揺れ動いた年だった。

衆院選後、小池氏は「都政に専念する」と宣言した。豊洲移転問題への一連の対応が、知事のパフォーマンスだったといわれぬためにも責任ある対応が求められる。
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[読売新聞] 教員不祥事処分 厳格な対応で再発を防ぎたい (2017年12月30日)

児童生徒へのわいせつ行為に及ぶなど、資質を欠く教員には、厳正に対処し、再発防止につなげねばならない。

文部科学省が、昨年度の小中高校などの教員に対する処分状況をまとめた。わいせつ行為やセクハラによる処分は226人で、過去最多だった。

教え子など自校の児童生徒を対象とした事例が半数を占める。実態は深刻である。子どもの信頼を踏みにじる卑劣な行為だ。

文科省は児童生徒へのわいせつ行為を原則、懲戒免職とするよう各教委に求めているが、一部の県は処分基準を策定していない。

明確な基準を予(あらかじ)め公表することで、抑止効果が期待できよう。

学校の姿勢も問われる。LINEなど、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で教員が生徒を呼び出すケースが目立っている。個別に私的な連絡を取らないルールを徹底したい。

管理職や教員同士が日頃から連携し、1対1の長時間指導をできるだけ避けるといった工夫も大切だろう。生徒が第三者に相談しやすい態勢も必要だ。

看過できないのは、わいせつ行為で懲戒処分を受けた教員が、経歴を偽るなどして、他県で採用されていた事案だ。再び問題を起こすまで、教委が処分歴を把握していなかったのには驚かされる。

わいせつ行為による処分では、被害者への配慮から、教員の氏名を公表しないことが多い。文科省は、懲戒免職で教員免許が失効した場合、各教委が情報を共有できるシステムを導入する方向だ。採用時のチェックに役立てたい。

昨年度の体罰による処分は654人だった。大阪市立桜宮高校の体罰事件を受けて急増した2013年度をピークに、減少傾向にあるが、根絶には程遠い。部活動などで体罰を繰り返し、何度も処分される教員は少なくない。

教員の度を越した叱責(しっせき)や暴言が、生徒の自殺など、重大な結果を招いている。

新潟市では、原発事故後に福島県から避難してきた男児の名に「菌」を付けて呼んだ教員が減給処分となった。クラスのいじめが助長され、男児は不登校になった。心ない言動の責任は重い。

体罰を伴わなくても、子どもの心を深く傷つける不適切な言動があれば、厳正に処分すべきだ。

処分を受けた教員の多くは、教委の指導や研修を受ける。子どもを守るためには、安易に教壇に戻さず、教員としての適格性を冷静に見極めることが重要である。
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[読売新聞] 地方分権改革 住民視点で全国一律を見直せ (2017年12月30日)

杓(しゃく)子(し)定規で不合理だが国の制度でそう決まっている。こうした身近な地方行政の問題点を、住民の視点で着実に見直すことが大切である。

政府が、地方分権改革に関する今年の対応方針を閣議決定した。第8次となる地方分権一括法案を来年の通常国会に提出する。

地方自治体が権限移譲や規制改革を求めた207件の提案について、内閣府が各省庁と調整してきた。9割の186件を「実現・対応する」と位置づけた。

子育て支援や介護といった日常生活に関わる行政サービスなどを巡り、地域の実情に即した分権改革を進める。法律を改正しなくても、省庁の通知や法令解釈で改善できるものも少なくない。早急に実施してもらいたい。

共働き家庭などの小学生を預かる放課後児童クラブは、約117万人が利用している。現在約1万7000人いる待機児童について政府は、2019年度末までに解消を目指すとしている。

クラブには、「高卒資格を持つ支援員が2人以上必要」などの全国一律の基準がある。自治体から緩和を求める提案が相次いだ。

岐阜県本巣市は、「中山間地域では、利用する子供が1人しかいない」などと訴える。高卒資格のないベテラン職員を活用したいという市町村も多い。

政府は18年度に、市町村が支援員の人数を独自に判断できるようにする方向で検討する。

支援員が1人でも運営できるようになれば、クラブの増設が容易になる。自治体は、安全性や質の確保を前提に、効果的な学童保育を進めてもらいたい。

学校給食費の集金は従来、コンビニエンスストアに委託できるかどうか、法令解釈が曖昧だった。横浜市の提案を受け、コンビニ納付ができることを明確化する。

災害関連の提案も目立った。

熊本地震では、被災者の支援金受け取りに必要な罹災(りさい)証明書の交付に約140日を要した自治体があった。被災家屋の写真判定の導入などで、より迅速に発行できるよう検討する。妥当だろう。

国と地方は、1999年の地方分権一括法で、「上下・主従」から「対等・協力」の関係へ改革された。自治体のアイデアに基づき権限移譲する提案募集方式は、その理念に適(かな)っている。

今回提案した自治体などが184にとどまったのは物足りない。人口減少や財源不足を乗り越えるため、自治体の一層の創意工夫と熱意が求められよう。
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[朝日新聞] 災害大国に暮らす 教訓生かし、自衛する時 (2017年12月30日)

災害が起こる。それを教訓に次に備える。一歩ずつ、対策は前に進んでいるはずだ。それなのに、自然災害による犠牲は毎年のように出ている。

社会は被害を小さくする方へ向いているだろうか。

広大なユーラシア大陸と黒潮という世界最強の暖流にはさまれた日本の国土は、台風の通り道に弧を描いて存在する。四つのプレートがせめぎ合う世界有数の地震国でもあり、多様な自然現象の影響を受けやすい。

■弱点多い都会

近年、地球温暖化がすすみ、水害への警戒が必要だ。

4千人を超す死者が出た59年の伊勢湾台風後、台風被害で千人を超える死者は出ていない。一方で積乱雲の急発達による極端な豪雨が増え、土砂災害や川の氾濫(はんらん)が各地でおこるようになった。こうした雨は予測が難しく、備えが追いつかない。

ことし7月の九州北部豪雨では、福岡、大分両県で死者・行方不明者が41人にのぼった。15年には茨城県で鬼怒川の堤防を決壊させた大雨により、県内外で20人が死亡。14年には広島の土砂災害で77人が亡くなった。

いずれも予測以上の雨が同じ地域に集中した結果だ。

不測の気象現象は、人間社会の弱点を突くように被害を広げる。九州北部豪雨のような大雨が首都に降ればどうなるか。

国土交通省の想定では、荒川が都内で氾濫し、水はほどなく東京駅に達し、地下へ流れる。死者は2千人を超え、霞が関は機能不全に陥る。

日本の独り暮らしの高齢者(65歳以上)は15年度で約600万人と、15年で倍になった。都会でも地方でも、一人で逃げられないお年寄りが増える。

約80年前、明治生まれの物理学者、寺田寅彦は「天災と国防」と題する文章で書いた。

「文明が進む程天災による損害の程度も累進する傾向があるといふ事実を十分に自覚して、そして平生からそれに対する防御策を講じなければならない筈(はず)であるのに、それが一向に出来ていない」

今こそ、過去の災害から学ぶときに来ている。

■安全への過信

昨年8月、台風10号で川が氾濫し、岩手県岩泉町の高齢者グループホームで入所者9人が死亡した。なぜこんな川の近くに施設ができたのかと、防災関係者から疑問の声が出た。

付近は洪水の浸水想定区域にすら指定されていなかった。県は指定を検討していたが、東日本大震災の影響で先送りしていたという。今年になって、指定にむけて動き出した。

13年9月、台風18号の大雨で京都市の桂川があふれ、住宅街に水がおしよせた。市は約27万人に避難指示を出したが、避難所への避難率は1%だった。

この台風で、約1万戸が浸水、全国で6人が死亡した。京都府には初の大雨特別警報が出ていた。情報が十分に生かされたとはいいがたい。

ここは大丈夫。以前も同じようなことがあった――。今の社会には、安全へのそんな過信が潜んでいるのではないか。

全国の河川は堤防や護岸が整備され、排水機能など、洪水対策は格段にすすんだ。だが自然がその壁を破った時、被災者から漏れるのは「生まれて初めての経験」という驚きだ。極端な気象の被害を、ふだんから「わがこと」として意識したい。

■遊ぶ、学ぶ、備える

最近の防災の流れは「自助の重視」である。

避難勧告や指示は、以前より早めに、広範囲に出される。判断は住民に預けられるのだ。

西日本などを襲う南海トラフ地震では津波などで死者が最大約32万人にのぼる。避難者950万人は避難所に入りきれず、行政支援は追いつかない。

長期的には、危険性が高い地域から移転するのが効果的な防災策だ。それが難しいなら、備えを考えておくしかない。

95年の阪神大震災を機にできた神戸市兵庫区の「ひよどり地区防災福祉コミュニティ」は、発足から19年。年2回、管内約1300世帯の住民の多くが、小中学校で訓練をする。

息長く続けるコツは「楽しく遊びながらやること」と、代表の森田祐(たすく)さん(73)はいう。

119番で目の前の現象を冷静に伝える体験。無害の煙で充満したテントからの脱出。地震や大雨にともなっておこる事象を想定し、ときにはゲーム形式で、訓練をくりかえす。

集まって防災訓練というと、面倒に考えがちだが、日々の暮らしを守るため、隣近所で力を合わせてとりくむ。それが意識を高める一歩ではないか。最近は企業や自治体同士、医師ら専門家の間でも、災害時に協力しあう連携が進む。さまざまな横のつながりを広げたい。

もちろん行政による情報提供や防災対策があった上で、自助、共助が力を発揮する。

自然現象は制御できないが、被害を減らすことはできる。
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2017年12月29日

[産経新聞] 【主張】文氏の「合意」批判 国家関係を損ねたいのか (2017年12月29日)

日韓関係を損なうことは目に見えている。現下の情勢を顧みない、あきれた発言である。

韓国側の日韓合意検証を受けて、文在寅大統領が「この合意では慰安婦問題は解決できない」などと表明した。断じて容認できない。

文氏は「当事者(元慰安婦の女性)を排除した政治的な合意」であり、「気が重い」と述べたという。

北朝鮮の新たなミサイル発射などが懸念される中、緊密な連携を取るべき隣国の指導者がこれでは日本こそ気が重い。

繰り返すまでもないが、日韓合意は両国関係を損なってきた慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的な解決」を表明したものだ。見直す余地などない。

北朝鮮問題など地域の安全保障環境を考え、関係改善が欠かせないと歩み寄った経緯もある。政治的というなら、解決済みの問題についてあえて日本が付き合い、韓国側は面目を施したといえる。

その意義も顧みずに批判するのは、前政権の失政探しに汲々(きゅうきゅう)とし、日韓関係を悪くする材料を自ら生み出す行為である。

元慰安婦らを「排除」したという指摘もあたらない。日本政府が拠出した10億円による財団の支援事業を、元慰安婦の多くは受け入れている。

慰安婦問題で看過できないのは、旧日本軍の「性奴隷」などとする歴史の捏造(ねつぞう)により、日本の名誉が傷つけられていることだ。

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朝鮮半島で女性を強制連行したとする吉田清治証言が嘘だと分かっても、「自由が奪われた」などと議論をすり替え、不当な非難を続けている。

合意批判の一方、文氏は「未来志向的な協力のために、首脳外交を回復させる」という。外交・安全保障や経済と歴史問題は別だと言いたいのだろうか。

反日運動の象徴である日本大使館前などの慰安婦像は、撤去されないままだ。問題を蒸し返し、嘘を振りまき続ける国内の反日運動を大統領が助長している。

国同士の約束を守らなければ、国家関係そのものが成り立たなくなる。国際的な信用を失うリスクを考えているのだろうか。

政府は、合意の着実な履行を求める立場は「不変」だとしている。それは当然だが、大統領の妄言(もうげん)は日韓関係を壊しかねないことを直接、伝えるべきだ。
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[東京新聞] ニッポンの大問題 安倍一強と国会の劣化 (2017年12月29日)

安倍晋三氏が再び首相に就いて五年。このまま続投すれば歴代最長も視野に入りますが、眼前に広がるのは「安倍一強」がもたらした国会の惨状です。

国会は今年三回開かれました。一月召集の通常国会と、安倍首相が冒頭、衆院解散に踏み切った九月の臨時国会、衆院選後の十一月に召集された特別国会です。会期は三国会を合わせて百九十日間。首相の政権復帰後、最も短い会期の年となりました。

野党側は通常国会閉会後、憲法五三条に基づいて臨時国会を召集するよう求めていましたが、首相は三カ月間も放置し続け、召集した途端の冒頭解散です。


◆野党の召集要求を放置
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野党側は「森友」「加計」両学校法人をめぐる問題と安倍首相らとの関わりを追及しようとしていました。国会を開かなかったり、会期を短くした背景に、追及を避ける首相らの狙いがあったのかもしれませんが、召集要求の放置は憲法軽視にほかなりません。

「内閣の助言と承認」に基づいて天皇が国事行為を行うと定めた憲法七条に基づく衆院解散も、慣例化しているとはいえ「解散権の乱用」との批判が続いています。

衆院解散は、立法府を構成する国会議員の職を、行政府の内閣が一方的に奪う行為だからです。

内閣不信任決議の可決や信任決議案の否決という憲法の規定に基づくものでなければ、政府提出の予算案や重要法案が否決された場合や、国論が二分されて国民に判断を仰ぐ必要がある場合など、大方の国民が納得できる相当の理由が必要でしょう。

首相は国会議員から選ばれる必要があります。閣僚の過半数も同様です。政府は国会が決める法律や予算に従って行政権を行使します。国会は憲法上、内閣に優越するように見えます。何せ、国会は「国権の最高機関」ですから。


◆下請け機関と化す与党
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国会議員の多くは政党所属ですから、この権力構図は気圧配置にならい「党高政低」と呼ばれ、長らく政権の座にあったかつての自民党では、これが当然でした。

しかし、この力関係は「政高党低」へと徐々に変化し、二〇一二年の第二次安倍政権の発足以降、特に顕著になりました。

背景にあるのが平成に入ってからの政治改革です。自民一党支配下での疑獄事件を機に、政治腐敗をなくすには政治に緊張が必要だとして、政権交代可能な二大政党制を目指して衆院小選挙区制と、政党助成制度が導入されました。

政党・政策本位の制度への転換です。確かにこの制度の導入後、疑獄事件は鳴りを潜めました。

同時に、選挙での政党による公認と、政治資金の配分という政治家の政治生命を左右する権限が、首相を頂点とする政権中枢に過度に集まってしまいます。

首相やその周辺の機嫌を損ねるような言動をすれば、自らの政治生命が絶たれるかもしれない。そんな空気が政権与党、特に自民党議員の間にはびこっているからこそ「安倍一強」とされる政治状況が生まれ、増長するのでしょう。

首相は野党の主張に耳を貸そうとせず、謙虚な姿勢で、丁寧に説明すると言いながら、野党議員に対する国会答弁は尊大です。

特定秘密保護法や安全保障関連法、「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法など国の将来を左右する重要法案では採決強行が繰り返されました。そこにあるのは首相官邸の意向を追認する下請け機関と化した与党の姿です。

極め付きは安倍首相の改憲発言です。歴代首相は憲法改正への言及を避けてきました。首相や閣僚らには憲法尊重・擁護義務があり首相による改憲発言は憲法に抵触しかねないからです。

今、自民党内で首相の改憲発言に、面と向かって異を唱える議員はほぼいません。いくら自民党が「改憲政党」だとしても、現行憲法を軽んじるような言動を、許してはいけないのではないか。

首相官邸の振る舞いに国会が注文をつけられない。それは立法、行政、司法が互いを監視し、均衡を図る三権分立の危機です。国会の劣化と言ってもいい。


◆行政に「民主的統制」を
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主権者である国民が、その代表で構成する国会を通じて行政権力である内閣を民主的な統制の下に置く。これは権力を暴走させないための重要な仕組みであり、先の大戦の反省に基づくものです。

平成の政治改革が始まって二十年以上がたちますが、そろそろ弊害にも目を向け、改善策を講じなければなりません。安倍政治がその必要性に気付かせてくれたのだとしたら、せめてもの救いです。



平成の時代もあと一年余り。いまだ解決されない、また新たに浮上した「ニッポンの大問題」を読み解き、読者とともに考えます。
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[産経新聞] 【主張】北の船長起訴 法治国として当然である (2017年12月29日)

犯罪行為が明白である以上、法と証拠に基づく起訴は、法治国家として当然の措置である。

函館地検は、北海道松前町の松前小島で発電機を盗んだとして、北朝鮮の木造船船長を窃盗の罪で起訴した。正式裁判で犯行の背景を明らかにしてほしい。

当たり前のことがニュースとなるのは、これまで同様のケースで不自然な処分が繰り返されてきた歴史があるからだ。

民主党政権の平成22年、沖縄の尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりした事件では、海保が逮捕した船長を、那覇地検が「日中関係を考慮する」などとして処分保留で釈放した。

起訴権限を独占する検察が政治判断を下したことになり、「法の下の平等」を定めた憲法14条の否定に等しい措置だった。

船長は凱旋(がいせん)帰国して反日運動の英雄となった。後に検察審査会によって強制起訴されたが、中国側が起訴状の受け取りを拒否し、公訴棄却となった。

自民党政権の13年には金正日総書記の長男、金正男氏とみられる男を入国管理局が拘束した。

偽造旅券を所持しており、旅券法違反の容疑は明白だったが、検察当局の出番はなく、外交問題化を恐れた政府は事実上の超法規的措置で国外退去処分として、北京に送り届けた。

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金正男氏は、その後も別人名義の旅券でアジア各国を行き来し、今年2月、マレーシアの空港で殺害された。

いずれも逮捕、拘束後の対応を誤らなければ、全く違った経緯をたどったはずである。

木造船は、日本海でのイカ漁中に漂流し、松前小島に接岸したとみられる。島からは発電機の他、テレビや冷蔵庫などの家電、ミニバイクなどもなくなっていた。北海道警による逮捕後もロープを切断して逃亡を図るなど、犯意は悪質である。

日本海の好漁場「大和堆(たい)」などでは北朝鮮漁船が違法操業を繰り返しており、水産庁や海保が対応に追われている。多くは古い木造船で、操船不能となり日本海側沿岸に打ち上げられるケースが後を絶たない。海保によると、北朝鮮籍とみられる船の漂流・漂着件数は今年、統計を取り始めた25年以降で初めて100件に達した。

こうした北朝鮮の漁業事情についても公判で追及してほしい。
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[毎日新聞] 日本の中東和平政策 「中庸の理念」貫いてこそ (2017年12月29日)

河野太郎外相が中東のイスラエルとパレスチナ自治区を訪れ、ネタニヤフ首相、アッバス議長に中東和平に向けた対話を呼びかけた。

河野氏は双方が共存する「2国家解決」を支持し、「エルサレムの最終的地位は当事者間の交渉により解決されるべきだ」と訴えた。両首脳も対話の重要性を確認したという。

トランプ米大統領によるエルサレムの「イスラエル首都認定」を巡り対立の先鋭化が懸念されていた。

双方に交渉を促し、中東和平の実現に向けて役割を担おうとした河野氏の姿勢は評価されよう。

ただし、トランプ氏の「首都認定」後の日本政府の対応は、必ずしも明快ではなかった。

トランプ氏の決定には英仏独など欧州諸国や中東諸国から不支持表明が相次いだ。だが、日本政府は懸念を示すにとどまった。

決定撤回を求める国連総会決議案の採択では賛成したが、棄権を含めて対応を協議したという。背景には米国への配慮があった。

北朝鮮の核・ミサイル問題で日米連携への影響を心配したようだ。しかし、中東和平とはまったく別の政策で従属関係にあるわけではない。

安倍晋三首相は2015年の中東訪問時の中東政策スピーチで「中庸」の重要性を説いた。中庸とは、特定の考えや立場に偏らず、極論を排し調和の取れたことを言う。

首都認定は、米国が和平仲介者の役割を放棄し、中東和平を一段と遠ざける一方的な決定だった。

日本のパレスチナ支援はオスロ合意の1993年以降で約2000億円に達する。約10年前から始めたパレスチナ支援構想「平和と繁栄の回廊」を中東諸国は評価している。

こうした日本の和平戦略と首都認定は相いれないものだ。日本は毅然(きぜん)とした態度を示し、米国に建設的な役割を果たすよう促すべきだ。

中東和平はイスラエルとパレスチナだけでなく、アラブ諸国やイランにも波及する広範な問題だ。

石油の約9割を中東に依存する日本にとって地域の安定は死活的な重みを持つ。だからこそ米国とは違う独自の中東外交を展開してきた。

「中庸の理念」を貫き、米国に直言してこそ、中東での日本への信頼が高まるはずだ。
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[毎日新聞] 貴乃花親方処分めぐる議論 排外的な風潮が気になる (2017年12月29日)

大相撲の元横綱・日馬富士による傷害事件で、日本相撲協会は貴乃花親方の理事解任を評議員会に提案することを決めた。

理事が解任された例はなく、被害者側の処分としては重い。だが、貴乃花親方は巡業部長でありながら協会への報告義務を怠ったうえ、協会に協力せず調査を長引かせた。処分はやむを得まい。

気になるのは、この問題をめぐり、元横綱の暴力や貴乃花親方の態度とは無関係な排外的な議論が目に付くようになったことだ。

九州場所千秋楽で、優勝した横綱・白鵬関が「うみを出し切る」と話し、観客に万歳三唱を促した頃から、こうした傾向が出始めた。

貴乃花親方を擁護する意見とともに、ナショナリズムをあおるような声がインターネットを中心に広がっている。「相撲は日本の国技で、外国人は国技、神事が何たるかを理解していない」といったものだ。

また、白鵬関に限らず、モンゴル人力士全体を否定する意見も見受けられるようになった。

貴乃花親方の沈黙がさまざまな臆測を呼び、モンゴル人力士との対立の構図を際立たせてしまった面は否めない。白鵬関の行動に問題があったのも事実だ。

だが、日本の伝統文化である大相撲の発展に外国人力士の尽力があったことは明白である。

外国人受け入れに消極的だった時代に入門したハワイ出身の高見山は、外国人初の関取となり、大相撲の国際化に貢献した。

近年でも、野球賭博や八百長問題で人気が低迷する中、大相撲を支えてきたのは朝青龍や白鵬関らモンゴル勢だ。

スポーツにおいてナショナリズムがファンを高揚させる一面を持つことは否定しないが、今の風潮には危うさを感じざるを得ない。

問題の根幹は暴力問題である。

2007年の序ノ口力士暴行死事件を機に、協会は再発防止に取り組んできた。しかし、暴力は許されないという当たり前のことが浸透していなかった。殴ることが指導だという考えが生きていた。

協会も貴乃花親方も事態を早期に収拾させ、一体となって暴力根絶に当たるべきだ。
posted by (-@∀@) at 12:21| Comment(0) | 毎日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[朝日新聞] 原爆症認定 国は約束を忘れるな (2017年12月29日)

広島、長崎で被爆して病気になったのに、切り捨てるような態度をいつまで続けるのか。原爆症の認定で、被爆者が裁判で争わざるを得ない状況に、国は終止符を打つべきだ。

加藤勝信・厚生労働相は、今月開かれた日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)との定期協議で、認定制度の抜本的な見直しを求める被団協側の要請を、「難しい」と拒んだ。

かたくなな国の姿勢に、被爆者たちが失望したのも当然だ。定期協議は09年、日本被団協と麻生太郎首相(当時)が結んだ確認書に基づき、開かれている。「今後、訴訟の場で争う必要のないよう、解決を図る」と合意した。国は被爆者との約束に立ち返るべきだ。

被爆者健康手帳を交付された人は全国に約16万人。放射線を浴びたために治療が必要な病気にかかった場合は、原爆症に認定され、医療特別手当が国から支給される。だが、審査は厳しく、認定者は当初、手帳を持つ人の1%にも満たなかった。

数百人の被爆者が原爆症の認定を求める訴えを相次いで起こし、約9割の人が勝訴した。爆心地からの距離などをもとにした推定の被曝(ひばく)線量で原爆症かどうか線引きをする国の審査方針を、各地の裁判所が「放射線と病気の関係が否定できなければ認めるべきだ」と批判した。

国は08年、被爆者らが、がんや白血病などになった場合は積極認定するよう、基準を緩和した。13年にも対象疾病を広げたが、それでも申請を却下される人が後を絶たず、各地でなお訴訟が続いている。

大きな問題は、被曝線量を認定の際に重視する姿勢を、国が一貫して変えないことだ。

放射線の影響は未解明な部分が多い。被爆者は生涯、心身の後遺症に苦しみ、いつ発病するか、不安を強いられる。被爆者援護法はこうした健康被害に「国の責任で援護対策を講じる」と記している。この精神に沿い、幅広く救済すべきだ。

日本被団協は、手帳を持つすべての人に「被爆者手当」を支給することを提案する。疾病ごとに額に差をつけ、一部は減額になることも受け入れる内容だ。当事者からの提案を国は前向きに議論してはどうか。

被爆者の平均年齢は81歳を超えた。毎年約1万人の被爆者が亡くなり、提訴しても判決を聞けずに亡くなる人もいる。

安倍首相は折に触れて「被爆者の方々に寄り添いながら援護施策を着実に推進したい」と述べてきた。被爆者たちはその実行を待ち望んでいる。
posted by (-@∀@) at 11:21| Comment(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする