2017年10月31日

[東京新聞] 国会の質問時間 野党への配慮は当然だ (2017年10月31日)

安倍政権が、国会での野党の質問時間を削減し、与党分を拡大することを検討している、という。野党質問は政権監視には必要不可欠だ。厳しい追及を避ける狙いがあるとしたら、見過ごせない。

本会議や各委員会での各会派への質問時間の割り振りは、国会法に規定はなく、与野党が協議して決める。議席数に応じた配分が原則だが、政権を監視する野党の役割を考慮して野党側により多く配分するのが慣例になっている。

例えば、今年の通常国会では、衆院予算委員会の基本的質疑などで、与党二、野党八の割合で質問時間が配分された。

この割合を与党に多くしようというのが第四次に突入する安倍政権だ。自民党の安倍晋三総裁(首相)は萩生田光一幹事長代行に、この慣例を見直すよう指示した。

背景には、議席数に比べて与党への時間配分が少なく、発言機会が制限されているとの不満が、特に若手の与党議員にあるようだ。

国会議員は全国民の代表だ。発言機会は与野党を問わず、できる限り等しく確保すべきではある。

同時に、政権を監視する野党の役割を十分に考慮することも必要だ。質問時間を議席数の割合よりも多く野党側に配分してきたのにはそれなりに妥当性がある。少数意見の尊重は民主主義の要諦だ。

菅義偉官房長官は「議席数に応じた質問時間の配分を行うべきだという主張は国民からすればもっともな意見だ」と語ったが、「数は力」という民主主義の一側面しか見えていないのではないか。

ただでさえ、自らの党首を首相に頂く与党議員の質問は問題点の指摘よりも、政権を持ち上げることに偏りがちだ。与党は法案の国会提出前、政府から説明を受けて事前に了承しており、質疑が「出来レース」に陥る可能性もある。

質問時間を持て余して、般若心経の一部を唱え、夏目漱石の文学論をぶった与党議員もいた。与党の質問時間を増やせば国会審議形骸化の恐れなしとは言えない。

それとも、それが狙いなのだろうか。野党議員の質問時間を減らすことに学校法人「森友」「加計」両学園の問題などをめぐる野党からの厳しい追及を避ける意図があるのなら論外だ。

首相が、衆院選後の記者会見で「今まで以上に謙虚な姿勢で、真摯(しんし)な政権運営に全力を尽くさねばならない」と語ったのは、口先だけだったのか。数の力を背景に、野党議員の質問機会を減らすもくろみは、とても認められない。
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[東京新聞] 核廃絶と日本 信頼取り戻す努力を (2017年10月31日)

日本政府の主導で国連に提出された核兵器廃絶決議が、昨年より賛成が二十三カ国も減る百四十四カ国によって採択された。内容への不満が原因だ。唯一の戦争被爆国としての信頼を取り戻せるか。

決議は、米国やロシアなど核保有国に核軍縮の努力を求める内容で、日本が一九九四年以来、毎年提案し、採択されてきた。日本の決意を、世界に示すものだ。

昨年までは、「核兵器のあらゆる使用」が「壊滅的な人道上の結末」をもたらすと明記していた。今年の決議は、「あらゆる」という文言が削除されるなど、非人道性に関する表現が大きく後退していた。

さらに問題視されたのは、七月に国連で採択された核兵器禁止条約(日本は未参加)に、まったく言及していない点だ。

「まるで核保有国が出した決議のような印象」(長崎市の田上富久市長)といった批判のほか、「核兵器使用もありうるというニュアンスを含んだ、危険な内容」(広島で被爆し、今年国連で自らの体験を語った日本原水爆被害者団体協議会の藤森俊希事務局次長)という怒りの声も相次いだ。

日本の決議案が提出された国連総会第一委員会(軍縮)では、「核軍縮を後回しにする書きぶりだ」という批判もあったという。

この決議が最初に国連に提出された時の外相は河野洋平氏だった。息子である河野太郎外相は、採決後に談話を出している。

この中で外相は、「核兵器国と非核兵器国の立場の違いが顕在化している」と指摘した。決議は「すべての国が核軍縮に改めて関与できる共通の基盤を提供するものであり、幅広い支持を受けたことを心強く思う」と自賛した。

確かに、核保有国である米英に加え、核兵器禁止条約に参加しなかったドイツ、イタリアなども共同提案国となり、賛成している。

しかし、ブラジルやオーストリアなど核兵器禁止条約に熱心に取り組んでいる国は棄権に回り、決議の賛成国が、昨年より大幅に減った事実は重い。

北朝鮮の核問題が深刻化する中で、唯一の戦争被爆国としての信頼や中立性、核廃絶に対する姿勢を疑われたといえよう。

日本政府は十一月下旬に広島で、核軍縮をめぐって国内外の専門家が討論する「賢人会議」を主催し、具体的な提言をまとめる計画だ。日本が本当に核廃絶に向けた「橋渡し役」になるのか。証明なくして胸は張れない。
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[産経新聞] 【主張】カタルーニャ問題 欧州主権国家の分解防げ (2017年10月31日)

独立の是非を問うため10月1日に住民投票を強行したスペイン東部カタルーニャ自治州の州議会が、「独立宣言」を可決した。

独立を認めない国側は、ラホイ首相が自治権の停止で対抗した。

一連の動きを主導し、州首相を罷免されたプチデモン氏は、独立支持派に「民主的な抵抗」を呼びかけている。一方、州都バルセロナでは「宣言」に反対する人々のデモが行われた。

国との対立が決定的になったばかりか、州内で住民が二分された状況である。決め手となる解決策は直ちに見つからないが、混乱を拡大させないことを最優先に各当事者は動くべきだ。

カタルーニャ州は、スペイン経済の2割を占める。地域の停滞が与える影響は小さくない。日本企業も80社以上が進出している。混乱が長びくようなら、活動の継続は難しくなろう。

そもそも、自治州が行った住民投票には法的根拠がなく、国が認めないのは当然といえる。9割が独立を支持したというが、投票率は4割にとどまっており、住民の総意とも言い難い。

欧州連合(EU)のトゥスク大統領や、欧州諸国の首脳に、住民投票や独立宣言を支持する声はない。プチデモン氏が展望のないまま、行動に移した責任は重い。

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バルセロナはサッカーの強豪クラブでも知られる国際的に有名な都市である。カタルーニャの人々は独自の文化と言語を有し、誇りを持っている。それは世界も改めて知った。だが、周囲の懸念も構わず、独立に突き進むことで、理解は広がるだろうか。

住民投票に治安部隊を投入し、大勢のけが人を出した国の対応も適切ではなかった。独立慎重派の反感さえ買ったことが、事態を複雑にした面もある。

州議会は解散され、12月21日に選挙が行われる。どの勢力も拒まず、正常化へつなげてほしい。

独立の動きの背景には、カタルーニャ州が稼いで国に納めた税金が、貧しい地域で使われることへの不満がある。富の偏在は、ユーロ危機以降にEU域内で表面化した問題とも重なっている。

統合の深化には、国家の存在価値を低下させる効果がある。地域独立や自治権拡大の動きが、他の欧州諸国にあることにも、警戒を怠ってはなるまい。
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[産経新聞] 【主張】「子供」への投資 人口減への構想聞きたい (2017年10月31日)

財務省、厚生労働省を中心に社会保障をめぐる政府内の議論が本格化してきた。

安倍晋三首相が先の衆院選で、少子高齢化を国難と位置づけ、全世代型の社会保障を掲げたことを受けたものだ。

首相は具体的な政策パッケージを年末までにまとめる方針も示した。

だが、選挙向けに掲げた内容はそもそも細部が分からない。たとえば、首相が「子育て世代への大胆な投資」を語っているのに対し、財務省は児童手当の特例給付廃止を検討している。

どこまで整合性が保たれているのか疑問だ。国難の打開策を国民にわかりやすく示してほしい。

少子高齢問題は、社会保障改革だけで解決しない。発足する第4次安倍内閣は、人口の激減にどう備えていくか。まずは、首相が全体的な構想を語るべきだ。

首相は政策パッケージの財源について、選挙戦では消費税増税の使途変更で捻出すると強調してきた。ここにきて経済界に3000億円程度の拠出を要請したのは、使途変更では足りないにしても、唐突感が否めない。

首相は解散前の9月の記者会見で、保育の受け皿整備計画の前倒しに言及し、政府は消費税増税前にその運営費を捻出する必要性に迫られていた。拠出を求められた経済界には反発もある。新方針について丁寧な説明がいる。

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そもそも、幼児教育・保育の無償化について、基本的な議論が尽くされていない。教育に消費税を充てることへの疑問もある。消費税の使途を簡単に拡大すれば、歯止めをかけるのは難しい。各省から「少子化対策」を名目に予算要求が相次ぐことにならないか。

急ぐべきは、保育の受け皿整備である。無償化は、保育の需要をさらに掘り起こす。首相がいう受け皿整備の前倒しも、時期を早めるだけで計画自体が拡充されるわけではないようだ。

保育の質の向上や育児休業の充実といった課題も残る。無償化で少子化対策の効果をどこまで見込めるか。疑問に答えず、無償化路線をひた走るのは問題である。

高齢者向けの社会保障も、ただ絞り込めばよいわけではない。本当に必要とする人にサービスが届かないのでは本末転倒となる。

勤労世代の減少、地方の人口減の深刻化にも目配りしつつ、効果のある策を講じてほしい。
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[毎日新聞] カタルーニャ自治権停止 穏健な収拾を図るべきだ (2017年10月31日)

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スペイン・カタルーニャ自治州の独立の動きをめぐり、スペイン中央政府との対立が激化している。

中央政府はカタルーニャの自治権停止に踏み切り、州議会の解散とプチデモン州首相の解任を決めた。同氏を反逆罪で訴追して刑事責任を問う動きすらある。一方の州議会は、正式に独立宣言を採択した。

カタルーニャ側には甘い見通しがあった。

独立に伴う国家運営の難しさも、欧州連合(EU)に加盟することで乗り切れると考えていたようだ。しかし、そのEUからは独立を支持されず、苦しい立場に追い込まれた。

混乱を避けて州外へ移転する企業が出始め、経済への打撃も懸念されている。

一方、スペイン中央政府は州政府との協議を一貫して拒否している。少数与党で政権基盤が安定せず、カタルーニャの独立要求に強い姿勢を取らざるをえなかったという事情がある。

EUなどの支持も強気を後押しした。EUには、英スコットランドやイタリア北部など、欧州各地にある分離独立の動きを勢いづかせたくないという思惑もあっただろう。

対立の発端は、10月1日に自治州で行われた住民投票だった。中央政府は憲法違反だとして中止を求めていたが、住民の約4割が投票し、投票総数の約9割が独立を支持した。

中央政府は今回、新たな州議会の選挙を12月に行うことを決めた。

これまでの州議会は独立派が過半数を占めていたが、今回の混乱を受けた直近の世論調査では反対派がやや優勢とされ、独立派の封じ込めは可能とみているようだ。

だが、衝突で多くの負傷者を出した住民投票の時のような事態を繰り返してはならない。解任した州首相を訴追するような、中央政府による強硬措置は独立派を追い詰めるだけであり、慎重な対応が求められる。

カタルーニャの独立実現は国際的にも厳しい情勢にある。自治州側は、州議会選の実施を受け入れ、その結果を尊重していくという原則に立ち返るべきではないか。中央政府も、少なくとも自治権拡大などの協議には応じるべきだろう。

双方が自制し、穏健な収拾を図るよう望みたい。
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[毎日新聞] 首相が3%賃上げ要請 数値ありきは疑問がある (2017年10月31日)

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安倍晋三首相が来年の春闘を巡って3%の賃上げを経済界に求めた。賃上げ要請は5年連続だが、具体的な数値に踏み込んだのは初めてだ。

今年の春闘の賃上げ率は2%弱と2年連続で縮小した。実績を上回る水準を持ち出し、企業に一段の賃上げを促す狙いとみられる。

円安や堅調な世界経済を反映し、企業収益は過去最高の水準にある。だが賃金が伸び悩んでいるため、消費に力強さを欠き、政府が目標とするデフレ脱却のめどが立たない。

消費の活性化には十分な賃上げが欠かせない。企業もたくわえた利益を積極的に社員に還元すべきだ。

政府が賃上げを後押しする政策も重要だ。首相がこれまで賃上げを促してきたことも一定の効果があっただろう。ただ、だからといって、具体的な数値目標を明示する手法には疑問がある。

賃金は本来、労使交渉で決めるものだ。政府が介入する「官製春闘」は、企業の生産性向上とともに賃金も上がるという経済原則をゆがめると指摘されている。

生産性や収益は企業ごとに異なる。首相が一律の目標を示しても、企業の実力を反映しない賃金水準に無理に引き上げてしまうと、長続きしないのではないか。

必要なのは、企業が賃上げしやすい環境を整備することだ。

賃金が伸び悩む要因の一つは、人手不足を非正規社員で補う企業が多いからだ。待遇改善には「同一労働同一賃金」の早期実現が欠かせないが、首相は衆院を解散して関連法案の審議を先送りしてしまった。

企業の生産性向上には、成長分野に参入しやすくする規制改革が重要である。アベノミクスは当初、規制改革を成長戦略の看板政策に据えたが、これまで金融緩和や財政出動に頼り、成長戦略の成果は乏しい。

首相は賃上げ促進のため「予算や税制など政策を総動員する」との考えも示した。その柱が最近打ち出した「生産性革命」だが、緒についたばかりだ。看板を取り換えただけに終われば、いくら賃上げを要請しても、十分に進まないだろう。

民間への干渉を強めるよりも、従来政策の効果と課題を検証し、そのうえで必要な対策を着実に講じていくべきだ。
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[読売新聞] カタルーニャ 強引な「独立」が招く異例事態 (2017年10月31日)

中央政府と自治州政府が激しく対立し、収拾の兆しが見えない。国家の秩序と安定を揺るがす異常事態である。

スペイン東部カタルーニャ自治州の議会が、一方的な独立宣言を採択した。州政府が今月初めに強行した住民投票で、独立への賛成票が多数を占めたことが根拠とされた。

中央政府は投票結果を認めていない。独立宣言が国の一体性を定めた憲法に違反するとして、州の自治権を一部停止した。プチデモン自治州首相を更迭し、直接統治を強化するという。州議会解散と12月の議会選実施も発表した。

プチデモン氏は解職を拒否し、住民に中央政府への不服従を呼びかけた。だが、現状は独立反対派が勢いを増し、賛成派と拮抗(きっこう)する。混乱の長期化や権力の二重構造化への懸念の表れだろう。

多くの企業が、ビジネスに悪影響が出ることを警戒し、登記上の拠点を州外に移した。経済への打撃は避けられまい。

カタルーニャは、独自の歴史と文化を持つ。1975年までのフランコ独裁下では、固有の言語の使用が制限された。民主化後は、教育、保健などで自治権が与えられたが、反中央感情は根強い。

自治州は、バルセロナを中心に発展し、スペイン全体の16%の人口で、国内総生産(GDP)の2割を占める。税収が他地域のために使われている、という不満の高まりも、独立派を支えた。

国際社会が独立宣言を認めない立場で足並みをそろえ、孤立が深まっているのは、独立派の誤算ではないか。

欧州連合(EU)のトゥスク欧州理事会常任議長は、自治州側の仲介要請を拒んだ。米英独仏も、距離を置き、中央政府による解決を見守る立場を強調した。

独立を求める強硬派に煽(あお)られ、冷静に情勢を判断できなかったプチデモン氏の責任は重い。

中央政府のラホイ首相にも不手際があった。住民投票を阻止しようとして、警官隊を投入した。独立派との衝突で多数の負傷者が出たため、感情的反発を招いた。

正常化を急ぐあまり、流血の事態を繰り返してはならない。

EU域内では、ベルギーのオランダ語圏などでも独立運動がくすぶる。イタリアの北部2州は、今月下旬の住民投票に基づき、自治権の拡大を要求している。

EUという「大船」に支えられているという思い込みが、こうした運動を勢いづかせている。欧州統合の思わぬ副作用だ。
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[読売新聞] 朴教授逆転有罪 基本的価値観を共有する国か (2017年10月31日)

粗雑な事実認定に基づく不当な判決である。到底納得できない。

著書「帝国の慰安婦」を巡り、名誉毀損(きそん)罪に問われた韓国・世宗大の朴裕河教授に対し、ソウル高裁は無罪とした1審判決を破棄して、罰金刑を言い渡した。

判決は、「強制連行という(日本の)国家暴力が朝鮮では行われなかった」「朝鮮人慰安婦が日本軍と同志的関係にあった」などの記述が虚偽だとした。元慰安婦の社会的評価を大きく低下させ、名誉毀損が成立すると断じた。

検察側の主張に沿って、元慰安婦が「性奴隷として動員された」とも認定した。1996年に国連人権委員会で採択され、「性奴隷」の表現を使ったクマラスワミ報告が根拠とされた。

報告には、客観性に乏しい記述が多く、吉田清治氏のでっち上げの証言も引用されている。問題のある資料に基づいて、裁判所が判断を出すのは不適切だろう。

93年の河野官房長官談話が判決の論拠に使われていることも看過できない。

河野談話は、慰安婦の募集や移送などが「総じて本人たちの意思に反して行われた」としたが、安倍政権による検証で、日韓両政府の政治的妥協の産物だったことが明らかにされている。

韓国では、元慰安婦を支援する市民団体が強い影響力を持つ。裁判所は、市民団体が主導する反日世論に迎合した、と受けとられても仕方がなかろう。

朴氏の著書は、慰安婦に関する韓国での一面的な見方に異を唱えた。一方で、慰安婦の過酷な境遇を作り出した「大日本帝国」の責任を追及している。バランスのとれた労作だ。

1審判決が「学問的表現は保護しなくてはならない」として、記述内容の真偽の認定に踏み込まなかったのは合理的だった。高裁判決は、「学問の自由」への配慮を著しく欠く。

日韓間の歴史に関する冷静な学術的議論が、韓国内でさらに萎(い)縮(しゅく)していくのは避けられまい。

慰安婦問題は、2015年末の日韓合意で外交決着した。だが、文在寅政権は、合意を履行する意思を明確にしていない。韓国内では再交渉を求める声が根強い。今回の判決で、こうした動きが勢いづくことが懸念される。

「帝国の慰安婦」は日本語版も出ている。有罪判決は、日本の韓国観にも影を落とす。韓国は基本的な価値観を共有する国と言えるのか。疑念が強まろう。
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[朝日新聞] イラン核合意 問われる米外交の信頼 (2017年10月31日)

国際社会が積み上げた合意を一方的にないがしろにする。そんな大国の「自国第一主義」が世界を不安に陥れている。

トランプ米大統領の対イラン政策である。核開発をめぐる合意について、意義を認めないとし、修正ができなければ「合意を終わらせる」と表明した。

合意は、米国が中ロ英仏独などと共に2年前、イランと交わした行動計画だ。イランが核開発を制限する見返りに、米欧が一部の経済制裁を解いた。

かねてイスラエルによる軍事攻撃も取りざたされた中、外交交渉によって戦争の危機を防いだ歴史的な合意である。

トランプ氏の表明を、どの当事国も冷ややかに突き放したのは当然だ。合意は今も、中東と世界の安定をめざすために肝要な枠組みの一つである。

トランプ氏の主張はこうだ。イランは各地でテロを支援し、ミサイル開発を続け、中東を不安定にしている。だから合意の「精神」に反している――。

イランが各地で反米を掲げる組織を支えているのは事実だ。しかしそれは、イスラエルへのアラブの反発という地域事情が絡む中東全体の問題でもある。

そこに核合意を結びつけて、イランとの対立をあおるのは、それこそ中東を不安定化させる無責任な姿勢だ。

イランを29日訪れた国際原子力機関の天野之弥事務局長は、イランは合意を守っていると確認した。ロハニ大統領は「こちらからは合意を破棄しない」と辛抱の態度をみせている。

トランプ氏は、イランに新たな条件を課すため、米国の国内法を改正するよう米議会に求めた。だが議会では合意を維持すべきだとの声が大勢だという。冷静な判断を期待したい。

心配なのは北朝鮮問題への影響だ。米国は強い威嚇の一方で対話も探っているとされる。しかし、一度合意した約束を理不尽にたがえるようでは、話し合いなど真剣に考えていないと思われても仕方あるまい。

安倍首相は9月にロハニ氏と会談した際、イラン核合意への支持を表明し、「すべての当事国による順守が重要だ」と強調した。ならば近く来日するトランプ氏に釘をさすべきだ。

身勝手なトランプ外交の弊害は広がっている。気候変動をめぐるパリ協定からの離脱や、自由貿易協定の見直し要求などで多くの国を悩ませている。

独りよがりの外交は、米国の信頼を傷つけるだけでなく、世界秩序の土台を揺るがす。その国際社会の懸念を、安倍首相は本人に直言すべきである。
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[朝日新聞] 「慰安婦」裁判 韓国の自由が揺らぐ (2017年10月31日)

自由であるべき学問の営みに検察が介入し、裁判所が有罪判決を出す。韓国の民主主義にとって不幸というほかない。

朴裕河(パクユハ)・世宗大学教授の著書「帝国の慰安婦」をめぐる刑事裁判で、ソウル高裁が有罪の判決を出した。

著書には多くの虚偽が記されていると認定し、元慰安婦らの名誉が傷つけられたと結論づけた。朴教授には罰金約100万円を言い渡した。

虚偽とされたのは、戦時中の元慰安婦の集め方に関する記述などだ。研究の対象である史実をめぐり公権力が独自に真否を断じるのは尋常ではない。

一審は、大半の記述について著者の意見にすぎないとして、無罪としていた。高裁は一転、有罪としながら、学問や表現の自由は萎縮させてはならないと指摘したが、筋が通らない。

学問の自由が守られるべき研究の領域に踏み込んで刑事罰を決める司法を前に、学者や市民が萎縮しないはずがない。

韓国では、植民地時代に関する問題はデリケートで、メディアの報道や司法判断にも国民感情が影響すると言われる。

そんな中で朴教授は、日本の官憲が幼い少女らを暴力的に連れ去った、といった韓国内の根強いイメージに疑問を呈した。物理的な連行の必要すらなかった構造的な問題を指摘した。

社会に浸透した「記憶」であっても、学問上の「正しさ」とは必ずしも一致しない。あえて事実の多様さに光を当てることで、植民地支配のゆがみを追及しようとしたのである。

朝鮮半島では暴力的な連行は一般的ではなかったという見方は、最近の韓国側の研究成果にも出ている。そうした事実にも考慮を加えず、虚偽と断じた司法判断は理解に苦しむ。

韓国では、民意重視を看板に掲げる文在寅(ムンジェイン)政権が発足して、もうすぐ半年になる。政権は、歴史問題で日本に責任を問うべきだと唱える団体にも支えられている。もし高裁がそれに影響されたのなら論外だろう。

日韓の近年の歩みを振り返れば、歴史問題の政治利用は厳禁だ。和解のための交流と理解の深化をすすめ、自由な研究や調査活動による史実の探求を促すことが大切である。

その意味で日本政府は、旧軍の関与の下で、つらい体験を強いられた女性たちの存在を隠してはならず、情報を不断に公開していく必要がある。

日韓の関係改善のためにも、息苦しく固定化された歴史観をできるだけ払拭(ふっしょく)し、自由な研究を尊ぶ価値観を強めたい。
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2017年10月30日

[東京新聞] 第4次安倍内閣 国会軽視してはならぬ (2017年10月30日)

来月一日に召集される特別国会での首相指名選挙を経て、第四次安倍内閣が発足する。「謙虚」「真摯(しんし)」との言葉を違えず、国権の最高機関である国会を軽視するような政権運営をしてはならない。

先の衆院選で「勝利」した安倍晋三自民党総裁は一日、首相に選出された後、同日中に第四次内閣を発足させる見通しだ。現閣僚を全員、再任する意向だという。

現在の第三次安倍第三次改造内閣は八月三日に発足した。しかし、その後、臨時国会が開かれたが冒頭で解散され、各閣僚は所信を語らないままだ。極めて異例である。背景に、国会を軽視する安倍内閣の姿勢があると指摘されても仕方があるまい。

安倍政権は、安全保障関連法や「共謀罪」法の成立を強行するなど強引な国会運営を続けてきた。首相が野党議員にやじを飛ばしたかと思えば、憲法五三条に基づく野党側の臨時国会召集の要求を無視し、衆院解散に踏み切った。

一日に召集される特別国会は、衆院選後に開くよう憲法に定められたものだ。しかし、会期はわずか八日間。休日や外交日程を考慮すれば、実質三日間だ。これでは実のある審議は望むべくもない。

首相が、衆院解散の大義として「国難」に挙げた北朝鮮情勢や少子・高齢化対策はもちろん、経済政策や社会保障、財政規律など、議論すべき課題は山積している。

加えて、学校法人「森友」学園への国有地売却や同「加計」学園の獣医学部新設も、引き続き国会での解明が必要な問題だ。共同通信社の九月下旬の世論調査では、政府の説明に納得できないとの答えが八割近くに上る。

森友問題では、国有地売却額の妥当性を調べている会計検査院が値引き額が最大約六億円も過大だったと試算している、という。

なぜそうなったのか。公平・公正であるべき行政判断が「首相の意向」や忖度(そんたく)で歪(ゆが)められたことはなかったのか。行政への国民の信頼にかかわる問題だ。内閣は国会での解明に進んで協力すべきだ。

安倍政権は特別国会の会期を延長するか、閉会後、速やかに臨時国会を開き、実質審議の時間を確保すべき必要がある。その際、首相と閣僚が所信を表明し、各党の質問に答えるのは当然だ。

首相は、衆院選後の記者会見で「今まで以上に謙虚な姿勢で、真摯な政権運営に全力を尽くさなければならない」と語った。

言葉だけではなく、具体的な行動で示すべきである。
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[産経新聞] 【主張】児童ポルノ 好奇の目に子供さらすな (2017年10月30日)

今年上半期の18歳未満の児童ポルノの摘発件数が、警察庁のまとめで1142件と、過去最多となった。

子供の心身に計り知れない影響を与え、健全な成長を著しく阻害する恐れがある。子供を性的な好奇の目にさらしてはならない。

摘発の内訳は、子供の性的な姿を撮影する「製造事件」が最も多い。次いでインターネットへ画像を出すなどの「提供・公然陳列事件」、画像を持つ「所持等事件」となっている。

ネットが普及した現代では、児童ポルノは瞬時に拡散され、所有されてしまう。

いったん広がったデータは、どこに残り、再び拡散されるか分からない。

被害者は不安におびえながら暮らすことになる。それがどれほど、子供の健全な成長を妨げることか。

被害に遭った小学生以下の低年齢児のうち半分強は、強姦(ごうかん)や強制わいせつを受けていた。ただでさえ大きすぎる傷を負っている。そのうえ撮影された画像が広まることは決して許されない。

注意したいのは、いわゆる「自画撮り」による被害が増えていることだ。

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スマートフォンで、不特定多数の人間と知り合えるコミュニティーサイトに入った子供が、だまされたり脅かされたりして、自分の性的な画像をメールで送ってしまう。そのような被害者が、上半期の4割以上を占める。

画像を送らせる男らの手口は、さまざまで巧妙だ。ネット上で男性モデルの写真を使って、別人になりすます。女子中学生を装うなど年齢の近い同性と思わせた例もある。弱みを握って脅すケースもある。

警察庁の別のまとめでは、コミュニティーサイトで犯罪被害に遭った18歳未満の子供は、今年上半期、900人を超えた。統計のある平成20年以降、最も多い。女子中高生が約8割を占めている。

子供のいる家庭では、ネット社会の危うさについて子供とよく話し合っておきたい。

児童買春・ポルノ禁止法が改正され、児童ポルノは所持しただけでも処罰の対象となる。社会悪以外の何物でもない。

一般のネット利用者も社会悪を根絶する意識を持ち、見つけたらすぐ警察に連絡してほしい。
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[産経新聞] 【主張】デンソー勝訴 実体を見極め適正課税を (2017年10月30日)

シンガポールにある子会社の所得にタックスヘイブン(租税回避地)対策税制を適用した約12億円の課税処分をめぐる最高裁判決で、処分取り消しを求めていた大手自動車部品メーカー、デンソーが逆転勝訴した。

対策税制は、企業が税率の低い海外に所得を移す不当な税逃れを防ぐ仕組みだ。課税対象は事業実体がない場合などとされ、最高裁は「事業の判断は収入や人員、店舗などを総合して考慮すべきだ」と新たな基準を示した。

そのうえでデンソー子会社には物流改善事業などが認められるとし、課税処分の取り消しが確定した。妥当な判断といえよう。

対策税制をめぐっては、国税当局と企業の主張が対立し、訴訟に発展するケースが後を絶たない。不当な税逃れに対する取り締まりの強化は欠かせないが、実体に合わない課税は健全な経済活動を阻害する。

今回の訴訟では、デンソーのシンガポール子会社に対策税制が適用されるかが争われた。最高裁は「子会社には東南アジア諸国連合(ASEAN)地域の事業を効率化する目的があり、財務や物流などで実体があった」として課税処分は違法と結論づけた。

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1審名古屋地裁は、デンソーの主張を認めて名古屋国税局による課税処分を取り消したが、2審名古屋高裁は「子会社の主な業務は株の所有だ」などと認定してデンソーの敗訴とした。裁判所の判断が分かれる中で、最高裁が新基準を示した意義は大きい。

対策税制は約40年前に導入されたが、企業の国際競争の激化に伴い、政府は適用要件を緩和するなど企業を支援する見直しを進めている。それでも適用された企業が課税を不服として訴える事例が増えており、最高裁が示した新基準を混乱回避につなげてほしい。

国税庁は、海外子会社との取引などをめぐる課税に対し、企業から税務相談を受け付けるなどの対策に乗り出している。対策税制などの仕組みは複雑なため、産業界に「分かりにくい」との批判が根強いからだ。適正な課税のためにも、丁寧な説明は必要だ。

一方で、タックスヘイブンを舞台に一部の多国籍企業などが不当に課税を逃れていることへの対応も急務である。各国の税務当局が連携し、国際的な監視網を構築しなければならない。
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[東京新聞] カタルーニャ 秩序と安定は壊せない (2017年10月30日)

スペイン北東部カタルーニャ自治州が独立宣言に踏み切った。独自の文化や歴史を背景にした独立への思いは理解したいが、秩序と安定を守ることが最優先だ。収拾への道を探りたい。

自治州政府は一日、憲法裁判所の違憲判決を無視して住民投票を強行、九割の賛成を得たとして独立に向けた対話を求めたが、中央政府は拒否。州議会は二十七日、一方的な独立宣言に踏み切った。

中央政府は州の閣僚解任や議会解散で州の自治権を停止し、全面対決する構えだ。

しかし、追い詰めても反発を強めるだけだろう。

そもそも、北部バスク州には認めている徴税権を認めなかった。憲法裁判所は二〇一〇年、独自のカタルーニャ語公用語化などをうたった自治憲章を違憲と退けた。今回の住民投票では、治安部隊が暴力を使ってまで妨害した。中央政府の高圧的な姿勢が目立つ。カタルーニャにもっと寄り添った対応を考えるべきではなかったか。

カタルーニャはかつて独立王国だったが、フランコ独裁政権下で弾圧された。自主独立の気風を持つのは分かるが、プチデモン州首相らの見通しは甘すぎた。住民投票の投票率が43%にすぎないのも説得力に欠ける。

経済的には豊かで、「たくさん税金を払っているのだからもっと公共サービスを」という“金持ちの理屈”も、独立の理由というのでは、国際社会の理解も得られにくいだろう。

中央政府、州双方が正義を主張するが、いずれのやり方にも問題は多い。

中央政府は十二月二十一日の州議会選実施を命じた。独立への民意を測る機会になる。

欧州連合(EU)や欧州諸国はスペイン中央政府を支持し、州の独立を認めない。英国の離脱問題を抱え、これ以上求心力低下を招きたくない事情もある。

しかし、事態が膠着(こうちゃく)する今、EUをはじめとする国際社会の仲裁も求めたい。州政府には振り上げたこぶしを下ろしてもらい、自治憲章、徴税権などの要求について話し合い、無理ない形で自治権を拡大する“軟着陸”を図るべきだろう。

対立がエスカレートすれば、スペインの国家分断が現実味を帯びる。衝突による流血の恐れもある。一千社以上の企業が本社をカタルーニャ州外に移しており、経済も立ちゆかなくなる。

独立が分裂では困る。
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[毎日新聞] 朴裕河教授に逆転有罪 学問の自由を侵す判断だ (2017年10月30日)

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慰安婦問題を扱った著書「帝国の慰安婦」で名誉毀損(きそん)の罪に問われた韓国・世(セ)宗(ジョン)大の朴裕河(パクユハ)教授に、ソウル高裁が逆転有罪判決を下した。

大きな影響力を持つ支援団体に後押しされた元慰安婦らの告訴を受けて、検察が2年前に在宅起訴した。今年1月の1審判決は「意見の表明にすぎない」などとして無罪だった。

控訴審判決は一転して、名誉毀損の意図を認定した。根拠とされたのは、不正確な引用を含んでいると指摘される1996年の国連報告書(クマラスワミ報告)などだ。

名誉毀損の適用基準が国によって違うことは理解できる。

しかし、朴教授の著作は植民地の女性を戦場に動員した「帝国」というシステムに着目した学術研究だ。

朴教授は「多くの少女が日本軍に強制連行された」という画一的イメージを否定した。一方で、慰安婦を必要とした帝国主義日本に厳しい視線を向けている。実際には業者が慰安所を運営していたとしても、そのことで日本が免罪されるわけではないと明快に主張した。

日韓のナショナリズムが衝突する状況から脱し、和解へ進む道を模索する意欲が読み取れる。それを否定するのは学問の自由を侵す判断ではないか。極めて残念である。

日本の植民地支配に起因する問題に対して、否定的な見方が韓国社会に多いことは不思議ではない。

だが、感情論や政治性を排した歴史研究は不幸な過去を繰り返さないために重要だ。世論の反発が強い分野でこそ、学問や表現の自由は守られなければならない。

慰安婦問題は外交的にも敏感な懸案だ。特に朴槿恵(パククネ)前政権の前半期には日韓関係全体を悪化させた。一昨年末の日韓合意でやっと状況が変わり、両国の安全保障に緊要な対北朝鮮政策での連携もスムーズに進むようになった。

それでも韓国には合意への反対論が根強い。文在寅(ムンジェイン)大統領は合意見直しを選挙公約としていた。当選後は「見直し」を口にしなくなったものの、日本側には文政権の進める合意の検証への警戒感が強い。

今回の判決は韓国内の合意否定論を勢いづけかねない。文政権には、日韓の感情的対立を再燃させないよう留意してほしい。
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[毎日新聞] 建設石綿訴訟で原告勝訴 救済の制度作りを早急に (2017年10月30日)

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建設現場でのアスベスト(石綿)による健康被害が争われた「建設石綿訴訟」で、東京高裁が国と建材メーカー4社の賠償責任を認めた。

建設資材に含まれる石綿の粉じんで肺がんや中皮腫にかかった元労働者や遺族約90人が起こした訴訟だ。

耐火性にすぐれた石綿は建材に広く使われ、1960年代以降の高度経済成長期に大量に輸入された。日本が石綿の輸入を停止したのは2006年だ。欧米各国が80年代に大きく消費量を減らす中で、日本の対策は後れをとった。

企業、行政の双方が経済成長を優先して健康対策を後回しにしたことが被害の拡大を招いた。そこに問題の本質がある。国と企業両者の責任を認めた点で判決は評価できる。

石綿を原因とする疾患の労災認定者は年間約1000人で、その半数が大工や塗装工ら建設業従事者だ。

だが、こうした労働者は現場をわたり歩くため、被害に遭っても特定の雇用主の責任を問いにくい。疾患の発症がどこのメーカーの建材によるものか立証するのも困難だ。

さらに、中皮腫などは発症までの潜伏期間が30?40年と長く、時間も責任追及の壁となってきた。

石綿被害をめぐっては、石綿関連工場の元従業員らによる集団訴訟で、最高裁が国の責任を認定し、賠償が行われた。だが、建設労働者の救済は置き去りにされたままだ。

「建設石綿訴訟」は全国で14件が係争中だ。7件で1審の判決が出ており、6件が国の責任を認定し、うち2件は一部の建材メーカーの責任も認めた。高裁判決は初めてだが、被害救済を求める司法判断の流れは定着しつつあるのではないか。

集団訴訟の原告患者の7割は既に亡くなっている。全ての司法判断を待っていては解決が遅れる。

原告らは、国と企業が被害を補償する基金を立法措置で創設することを求めている。公害被害をめぐっては、東京大気汚染訴訟で、国や東京都、自動車メーカーなどが費用を拠出してぜんそく患者の医療費を助成する制度を作った前例もある。

高度成長期に作られた建物の解体工事がピークを迎え、石綿被害は今後も増加すると予想されている。

抜本的な救済の枠組み作りを急がなければならない。
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[朝日新聞] シリア内戦 「IS後」へ国際仲介を (2017年10月30日)

中東のシリア内戦は、いまも膨大な犠牲を生んでいる。戦乱の終結へ向け、国際社会は努力を結集すべき時だ。

内戦に乗じて支配地域を広げた組織「イスラム国」(IS)が、「首都」と称されたシリアの都市ラッカを失った。

最大の拠点だったイラクの都市モスルに続き、主な支配地域が消えつつある。恐怖と暴力で疑似的な国家をつくろうとする試みはついえたといえよう。

長い混乱で広がった力の空白が、ISに温床を与えてきた。過激派の再興を防ぐうえでも、内戦の収束が欠かせない。

本来、国の再建に責任をもつべきアサド政権は、今も反体制派を攻撃している。この状況を打開するには国際社会の本格的な仲介が必要であり、とりわけ米国とロシアの責任が重い。

これまで米国はアサド政権の打倒をめざし、反体制派を支えた。逆にロシアは政権を守ろうと軍事介入した。イラン、サウジアラビアなど周辺国の思惑も絡み、事態を複雑にした。

国連主導の和平協議では2016年、政権と反体制派で「移行政権」を発足させ、国連監視のもと総選挙を実施するなどの政治プロセスが議論された。

しかし、関係国の綱引きのなかで何ら実を結んでいない。

まずは米ロが全土で実効性ある停戦を実現させ、和平協議を前に進めるよう周辺国にも影響力を行使することが必要だ。

米ロはIS問題については、テロを拡散させる脅威との見方で一致していた。だが早くも、ISの旧支配地域をめぐり主導権争いを始めている。

ラッカを制圧したのは、米国が後押しする勢力の部隊だった。油田地帯にも軍を進めており、ロシアが反発している。

この部隊の多くはクルド人であるため、シリアで多数派のアラブ人が警戒し、民族対立に火がつくことも懸念される。

追い詰められたとはいえ、ISはイラク国境付近に一定の勢力を維持している。シリアが一刻も早くISを根絶し、秩序を回復するためにも、アサド政権は暴力をただちに停止し、和平協議に全面協力すべきだ。

何より目を向けるべきは、シリアの人々の惨状である。

6年におよぶ内戦で、死者は少なくとも30万人とされる。人口2500万の半分が家を追われた。500万人が近隣国で難民となり、630万人が国内で避難生活を送る。

大国や周辺国の利害のはざまで、今世紀最大ともいわれる人道危機が放置されていいはずがない。
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[朝日新聞] 規制委5年 対話通じて安全高めよ (2017年10月30日)

原子力規制委員会の2代目委員長に更田豊志(ふけたとよし)氏が就いて、1カ月がすぎた。

発足から5年率いた田中俊一前委員長のもとで、更田氏は委員や委員長代理を務めてきた。田中氏と二人三脚で築いた土台をもとに、積み残された課題への取り組みが問われる。

東京電力福島第一原発の事故後、原子力安全行政の刷新を担った規制委は、「透明性と独立性」を目標に掲げてきた。

透明性についてはかなり徹底されている。テロ対策などを除いて会議はほとんど公開され、資料や審議内容はウェブサイトで確認できる。毎週の委員長会見は動画や速記録でたどれ、他省庁が見習うべき水準にある。

独立性も、電力会社とのなれ合いが批判された以前の態勢と比べて改善されたと言える。

ただ、新規制基準に照らして原発再稼働の是非を判断する適合性審査には問題が残る。評価の対象が機器などに偏り、電力会社の組織運営や職員の意識に対する審査が不十分だからだ。

再稼働した原発の運転中の管理もまったなしの課題である。

事故防止の第一の責任は電力会社にあるが、規制委やその実動部隊である原子力規制庁は、安全軽視の姿勢や訓練不足といった問題がないか、目を光らせる役目を負う。

カギになるのは、電力事業者との「対話」だろう。現場への訪問などで意思疎通を図りながら、安全文化の劣化の兆候を探る。ごまかしを見抜く技術を磨くことが不可欠になる。

世界の潮流だが、日本では手つかずだ。抜き打ち検査など緊張感を保つ手法も組み合わせ、安全を高めていけるか。更田氏は規制庁職員を米国で研修させ、検査業務に明るい米コンサルタント会社も使う考えだ。先達の知恵を生かしてほしい。

規制委の対話力は、地震や火山噴火など人知が十分でない分野でも試される。専門の学者らと交流を重ね、最新の知見に基づく規制をめざしたい。

柏崎刈羽(かしわざきかりわ)原発(新潟県)の再稼働について「適合」判断を示したことでは、米山隆一新潟県知事から説明を求められている。原発を抱える自治体には、規制委との距離を感じているところが少なくない。

現地に足を運び、意見に耳を傾けて、自らの仕事を見つめ直す。そうした機会をもっと増やしてはどうか。

独立性を追求し続けることは大切だが、孤立や独善に陥っては元も子もない。さまざまな対話を重ねて、安全性の向上につなげるべきである。
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[読売新聞] 重力波観測 「かぐら」の活躍を早く見たい (2017年10月30日)

世界各地の天文台が参加する国際観測網がもたらした発見だ。日本の科学技術力を高め、さらなる貢献を果たしたい。

米国を中心とする国際研究チームが、二つの中性子星が合体して放出された重力波を今年8月に捉えたと発表した。重力波は、重い天体が高速で動く時に、宇宙をさざなみのように伝わる空間のゆがみだ。

重力波の観測は5回目だが、過去4回はいずれもブラックホールの合体だった。中性子星の合体の観測は、初めてだ。互いの重力で引き合った結果、地球から1億3000万光年離れた宇宙で合体が起きたという。

中性子星は極めて小さく重い。半径10キロでも太陽1、2個分の質量を持つ。合体時に中性子が鉄などの原子核に吸収され、金やプラチナなど、鉄より重い元素が作られたことが確認された。

宇宙の成り立ちの根源に迫る仮説の実証である。天文ファンならずとも胸が躍るだろう。

今回の重力波の観測には、米国の2台の装置に加え、欧州の1台が加わった。重力波が来る方角を絞り込むことが可能になり、研究チームは世界中の天文台に追跡観測を呼びかけた。

ブラックホールは光が出て来ないので観測は困難だが、中性子星の合体では、電波や赤外線、可視光、ガンマ線など様々な電磁波が宇宙に飛び出す。

日本からは、国立天文台や東京大、名古屋大などが参加した。米ハワイ州にあるすばる望遠鏡は、赤外線の分析にあたった。存在感を示せたと言えよう。

岐阜県飛騨市では、地下深くで東大などの重力波観測施設「かぐら」の建設が進む。長さ3キロのトンネル2本がL字形に交わる構造だ。レーザー光線が鏡に反射して往復する時間の、重力波によるわずかなずれを検出する。

性能は、欧米の施設に引けを取らない。2019年にも本格観測を開始し、国際観測網に加わる予定だ。重力波源の絞り込みに寄与するのは間違いない。一日も早く稼働させてもらいたい。

先端の天文観測装置は精密技術の粋であり、国の科学技術水準の高さを表す。重力波の観測計画は、中国やインドでも進む。国際協力と同時に、激しい競争にも対応していく必要がある。

日本の宇宙物理研究は世界のトップレベルで、ニュートリノやX線の観測など、優れた成果が多い。政府には、こうした基盤を維持する取り組みが求められる。
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[読売新聞] 米国VSユネスコ 問われる国際機関の中立性 (2017年10月30日)

加盟国からの拠出を基に運営する国際機関として、中立性を保ってきたのか。存在意義に関わる重い問題を突き付けられたと言えよう。

トランプ米政権が、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)から2018年末に脱退することを決めた。19年からは、正式加盟国ではなく、オブザーバー国として関与するという。イスラエルも追随する方針を示した。

脱退理由として、ユネスコの根本的な組織改革の必要性や、「反イスラエル的な偏向」を挙げた。今年7月に、パレスチナ自治区の「ヘブロン旧市街」がユネスコの世界遺産に登録されたことも影響したのは間違いない。

米国はユネスコと長く対立してきた。1984年にも、政治的偏向や放漫運営を理由に脱退した。その後の合理化を評価して、2003年に復帰した経緯がある。

11年には、パレスチナのユネスコ加盟承認に反発し、年間予算の22%を占める分担金の拠出を止めた。滞納額は5億ドルを超える。

ユネスコ総会では、パレスチナを支持する途上国が大半を占め、米国は孤立している。親イスラエルのトランプ大統領は、留(とど)まる利益はないと判断したのだろう。

米国脱退により、ユネスコの資金不足の恒常化は必至だ。識字率向上など、真に必要な事業に絞り込む自己改革が欠かせない。

ボコバ事務局長は、脱退は「非常に残念だ」と述べたが、ユネスコが政治的に利用され、機能しにくくなっている、という米国の主張は的を射ている。ボコバ氏自身も「中国寄り」や「改革に後ろ向き」との批判を受けていた。

米国脱退後に、中国の影響力が増すことが懸念される。中国が申請した「南京大虐殺の文書」は、ユネスコの「世界の記憶」に2年前に登録された。事件の犠牲者数などに関し、資料は客観性に乏しく、選考過程も不透明だった。

中国や韓国などの民間団体は、「慰安婦に関する資料」の登録も目指す。韓国政府内で、こうした動きを支援する発言が出ているのは看過できない。

「世界の記憶」などの事業は、文化財保護や異文化への理解促進を目的とする。反日宣伝の道具に使うのは筋違いだ。日本は昨年、ユネスコへの分担金支払いを一時保留した。公平な審査を担保する改革を求め続けねばならない。

フランスのアズレ前文化相が近く、ユネスコの新事務局長に就く。指導力を発揮し、加盟国の信頼を取り戻してもらいたい。
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