2017年05月06日

[産経新聞] 【主張】憲法と地方自治 人口減見据えたあり方を (2017年05月06日)

憲法は「地方自治」を明記している。だが、地方自治法ともども、70年前の施行時には想定できなかった事態に、日本は直面している。

人口減少によって、多くの自治体が将来的な存続を危ぶまれている。理念の担い手を喪失しようとしているのだ。

「国と地方のあり方」をいかに新たな観点から位置付けるか。これもまた、改正の重要な論点となり得る。

現実は既に、全ての地方を維持し続けることが難しくなっている。少子化で自治体の新規採用が滞れば、行政サービスを続けていくことも困難になる。

人口が激減する一方で、東京一極集中は止まらない。国と地方のあり方を考えるとき、この現実を見据えることが不可欠だ。

平成12年施行の地方分権一括法によって、国と地方は「主従」から「対等・協力」の関係へと改められた。地方に関する議論も、財源移譲を含む「地方分権」に力点が置かれてきた。

憲法改正を目指す動きの中で「道州制」の導入論が出ている。4月の衆院憲法審査会の参考人質疑でも、地方の権限強化や道州制を求める声が相次いだ。

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押さえておきたいのは、地方分権が遅れたために少子化が進んだわけではない、ということだ。

隣接県と一緒に道州を形成しても、人口減少は解消しない。道州内の大都市に集中し、人口激減地域の拡大を加速させかねない。

かつて、参院選の選挙制度に関し、選挙区を全国10ほどのブロックに再編する構想が有力な案として浮上した。だが、当選者が人口集積地に偏るおそれがあるとの懸念から頓挫した。

参院に限らない。人口偏在は、全国一律のルールで選挙制度を敷くことを困難にしている。

住民に近い存在である自治体により多くのことを委ねる。地方自治の理念そのものは維持を求められるだろう。その担い手をどう維持し、つくっていくか。

政府が推進する「2地域居住」では、地方税や地方参政権をどちらの自治体に帰属させるかという課題が残る。逆に考えれば、隣接自治体ではなく、遠く離れた都会と地方の自治体が、補完し合うやり方もあるということだろう。

国民の新たなライフスタイルを先取りする地方自治と、それに合致する憲法は何かを探りたい。
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[東京新聞] 長官選後の香港 社会の亀裂修復急げ (2017年05月06日)

香港で反中国派の立法会(議会)議員らの逮捕が相次いでいる。七月には初の女性行政長官が誕生するが、「一国二制度」は大きく揺らいでいる。深刻化した社会の亀裂の修復が急務である。

香港では三月の行政長官選で中国が支持した前政務官の林鄭月娥氏が当選し、英国からの返還二十周年となる七月一日に就任する。

気になるのは、長官選後に二〇一四年の民主化運動「雨傘運動」を率いた議員や学者ら九人が香港警察に逮捕され、民主派に対する抑圧がより強まっていることだ。

四月中旬には香港独立を訴える議員が、立法会で中国の国旗を逆さまにしたとして国旗侮辱容疑などで逮捕された。

長官選では「北京の代理人」と批判された林鄭氏だが、当選後の会見では「言論の自由を守り、人権を尊重する」と香港市民に約束したはずである。

軍事と外交以外の香港の「高度な自治」は国際公約であり、香港の憲法にあたる香港基本法には最終的な普通選挙の導入が規定されている。

だが、近年の中国の過度な香港干渉は「一国二制度」を形骸化させ、親中派と反中派の対立を激しくしただけでなく、過激な「香港独立派」すら台頭させた。

林鄭氏は就任後、社会の亀裂を早く修復し、民意に耳を傾けて、民主派の立候補も排除しない選挙制度の導入に努力すべきだ。

返還二十年の記念式典に合わせ、中国の習近平国家主席が就任後初めて香港入りするという。

立法会議員らの逮捕が式典などでの民主派の抗議行動を封じ込める狙いがあるなら、雨傘運動抑圧の混乱で投資先が逃避するなどし傷ついた国際金融センターとしての香港にさらに打撃を与えることになろう。

習政権は最近とみに共産党の指導を徹底させる強権政治を露骨にしている。習氏は北京、上海両市長をはじめ主要ポストに自身の地方勤務時代の部下などを抜てきし側近政治も強めている。北京では四月、スパイ行為の通報を奨励する規定が制定され、社会は息苦しさを増している。

だが、香港は民主の拠点としてこそ輝いてきた。中国が大陸流の強権統治を押しつけるのは、その輝きをそぐことにならないか。五十年不変とした「高度な自治」の枠内で政治改革を認めてこそ、香港の繁栄が保てることを忘れてほしくない。
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[産経新聞] 【主張】商工中金の不正 公的金融の意義問い直せ (2017年05月06日)

商工組合中央金庫(商工中金)による大規模な不正融資が発覚した。

支店ごとの融資目標を達成するため、融資先がその条件を満たすように書類を改竄(かいざん)していた。悪質極まりない。

商工中金はいわゆる政府系金融機関の一つだ。民業補完に徹する立場を大きく逸脱し、事業拡大が目的化していた。

存在意義を誇張し、完全民営化を逃れようとしたと疑われても仕方あるまい。公的金融のあり方を根幹から揺るがす事態である。

深刻なのは、組織的な隠蔽(いんぺい)工作が行われたことだ。融資を実行した支店のみならず、監査などを行う本店も不正のもみ消しを指示していた。口先だけの再発防止など信じられない。抜本的な組織改革が不可欠である。

不正の舞台となったのは「危機対応融資」という制度だ。震災や景気低迷などで、業績が悪化した中小企業が対象だ。融資を伸ばすため、相手の業績を悪く見せて融資の必要性が高くなるよう、審査書類を書き換えていたという。

商工中金によると、不正融資は35支店816件に上り、総額は約200億円に達する。支店ごとに融資目標が割り当てられ、本部も書類の差し替えなどに加担していた。組織挙げての不正である。

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経済産業省と財務省が共管する商工中金は、完全民営化が議論されていたが、一昨年の法改正で当面は政府が株式保有を続けることになった。完全民営化を逃れる理由に、危機対応融資の維持が使われていた疑いは濃厚だ。

第三者委員会の調査報告が「特定の人物の指示はなかった」と結論づけたのは首をかしげる。調査対象は全体の1割強にすぎない。全店規模で詳細に調査をやり直し、経営陣の関与を含め不正融資の全容解明を急ぐべきである。

不正融資の責任を取って、経産省出身の安達健祐社長らが役員報酬を自主的に最大3割カットすることを決めた。処分として手ぬるい印象は否めない。

所管官庁は再発防止に向けた組織見直しを求めるなど、厳しい措置をとる必要があろう。

緊急時に民間では難しい融資にあたる、公的金融の役割は否定しきれるものではない。だが、民業圧迫を避けるため、さらなる合理化に踏み込むべきだ。不正融資問題を、政府系金融機関のあり方を改めて考える契機とすべきだ。
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[東京新聞] 日銀審議委員 反対票が消える危うさ (2017年05月06日)

政府は七月に任期を終える日銀審議委員二人の後任を決め、国会に提示した。これで政策決定に携わる同委員六人すべてが安倍政権下の任命となる。リフレ派ら「賛成派」ばかりなら危うくないか。

安倍政権誕生に伴い、日銀総裁は白川方明(まさあき)氏が辞任、黒田東彦(はるひこ)氏が就任して四年余り。新旧の総裁をもじりオセロゲームにたとえるなら、白から黒へすべての石がひっくり返ったことになる。今回は特に象徴的な意味合いがある。

それというのも、退任する木内登英氏(野村証券金融経済研究所チーフエコノミスト)と佐藤健裕氏(モルガン・スタンレーMUFG証券チーフエコノミスト)は政策決定会合で総裁案に異を唱えることが多かったからだ。

二人は、二〇一三年四月の異次元緩和の導入には賛成したが、その後は(1)追加緩和(一四年十月)(2)マイナス金利導入(一六年一月)(3)追加緩和(同年七月)(4)長短金利操作の導入(同年九月)−にことごとく反対。決定会合は多数決制のため、二人が厄介な存在だったのは確かだろう。

だが「二年で2%の物価上昇」という目標は四年たっても達成できていない。巨額の国債を購入する緩和策を長期間続けているが、景気回復で金利が上がっていけば財政赤字が急拡大するなどリスクは高まる。こうした現状や副作用を考えれば、反対票を投じた二人が間違いだとは到底いえまい。

決定会合が異論も出ず、総裁案の追認機関となるなら危険だ。

さらに大きな問題がある。後任の片岡剛士氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済政策部上席主任研究員)と鈴木人司氏(三菱東京UFJ銀行取締役)について、鈴木氏はともかく片岡氏は金融緩和に積極的な「リフレ派」の論者で知られている。

だがリフレ派が主張した「デフレは貨幣現象であり、(量的緩和で)貨幣供給量を増やせば物価は上がる」との言説はどうだったか。異次元緩和の理論的支柱だった浜田宏一内閣官房参与(エール大学名誉教授)は昨秋、自らの理論が正しくなかったことを認め、「転向」まで口にした。

リフレ政策の行き詰まりが明らかな中で片岡氏の人選は疑問だ。日銀は昨年九月の総括検証でマネーの量から金利重視に移るといいながらリフレ派にも配慮して量も続けている。そんなぶれた政策では、ますます信頼が失われることを日銀・政府は肝に銘ずべきだ。
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[毎日新聞] 広がるサービス見直し 快適・便利の裏側考えたい (2017年05月06日)

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ヤマト運輸が配送現場の負担を減らすため、宅配の時間指定を一部廃止する。働く環境を改善して、人手を確保しやすくする対策だ。

消費者はこれまで、企業が提供するサービスを当然と受け止め、快適さと便利さに浴してきた。

だが、その裏側に過重な労働を強いられる人はいないのだろうか。労働人口が減少に向かう時代の流れもふまえ、問い直したい点である。

サービスの再検討は、さまざまな業界で進んでいる。

ファミリーレストランのロイヤルホストは24時間営業を全面廃止した。すかいらーくや日本マクドナルドも深夜営業の店を減らしている。

イオンは、首都圏1都2県の大型店の約7割で開店時間を繰り下げた。中堅スーパーや都心の駅ビルなども相次いで、夜間や24時間の営業を見直している。三越伊勢丹は昨年から首都圏の多くの店で正月の初売りを1月2日から3日に遅らせた。

サービスを提供する時間を増やせば、消費を取り込み、業績は伸びるというのが定説だった。「冷蔵庫は24時間動いているし、配送や掃除、商品の陳列も夜の方が効率がいい」と言った経営者もいた。

そして消費者は、配達時間の指定や24時間営業、元日からの開店を便利でありがたいと歓迎した。

どちらも大切なことを忘れていたのかもしれない。サービスを生む「人」の存在だ。日本経済が順調に拡大を続け、人口減少が話題にならなかった時代だったからでもある。

欧州では、日曜休日や深夜の営業は空港やターミナル駅などの店に限られている国がある。ドイツやフランス、スイスなどだ。

規制緩和で日曜営業の百貨店も登場しているが、伝統的・宗教的に労働者を保護する考えが強い。体力と資金のある大型店の攻勢から中小の店を守る狙いもある。

そうした考え方には学ぶ点が少なくない。それに彼らの方が日本人よりもよく休み、労働生産性は高いという事実もある。

連休中、多くの人がさまざまな場面でサービスを受けているはずだ。手厚いサービスが、だれかの犠牲の上に成り立っていないか。その質の高さはこれからも持続可能なのか。改めて考える機会にしたい。
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[毎日新聞] 透明化した五輪マラソン選考 高水準の争いに期待する (2017年05月06日)

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2020年東京五輪からマラソン代表の選考方法が変わる。日本陸上競技連盟は協議による選考をやめ、同じレースで競わせる場を設ける。

主観的な要素を極力排除し、透明性を高めたものと評価できる。

新たな選考方法では、今年夏からの国内外の主要大会が「予選」と位置づけられる。設定記録や順位で「予選」を通過した選手が19年秋以降に新設される「決勝」レースに臨み、男女とも3枠ある代表のうち優勝者ら2人を自動的に選出する。

残り1人については、その後の主要国内大会で最速の記録を出した選手を含め選ぶ。

これまでは気象条件やコースの難易度が異なる複数のレースから「総合的に勘案して」選考してきた。そのため過程に不透明さや基準に曖昧さが生じ、社会問題となるケースもあった。

00年シドニー大会金メダリストの高橋尚子さんは04年アテネ大会に向け、選考レースの一つで2位に入ったことから後の大会を回避したところ落選し、物議を醸した。

昨年のリオデジャネイロ大会では、選考レースで設定記録を破り優勝した福士加代子選手がその時点で内定にならず、約1カ月後の別の選考会に強行出場する意向を示した。

新たな選考方法は透明性だけでなく、調整能力や安定性、勝負強さを求めた点も特徴だ。選手は最低でも「予選」と「決勝」にピークを合わせ、結果を出さなければならない。

代表がすべて決まる20年春まで約3年という時間を作ることで、早い時期からマラソンに取り組む選手が増えそうなのも強化の観点から望ましい。

もちろん課題はある。

特に男子は、アフリカ勢に大きく水をあけられている。真夏の五輪代表を冬から春にかけてのレースを中心に選ぶ構図は従来通りで、暑さに強い選手が選ばれるかわからない。

日本の長距離界は駅伝とマラソンが両輪だ。双方を両立させていく方策も考えていかねばならない。

選考レースは8月から始まる。マラソンは見るだけでなく、今や一般の人々も楽しむスポーツだ。幾多の関門を乗り越えるハイレベルの代表争いが日本のマラソン文化を一層育むことを期待したい。
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[日経新聞] 生産性改革(中) (2017年05月06日)

日本の問題のひとつは製造部門の人たちを除いたホワイトカラーの生産性の低さだ。ものづくりは効率化が進むが、営業や間接部門などは1人の従業員が生む付加価値が低迷していると指摘される。

米国の調査会社コンファレンス・ボードとコンサルティング会社マーサーは共同で、アジアの計11カ国について、1人あたりの生産性の伸び率を算出した。

大きい経営者の役割

2008年から16年にかけて最も高いのはインドで6.47%、2位は中国の5.82%。日本は0.29%と、韓国(1.82%)やシンガポール(0.77%)も下回り最下位だった。ホワイトカラーの生産性の伸び悩みによるところが少なくない。

現状を放置できない理由が2つある。第1は労働力不足が進むことだ。15年に7728万人の日本の生産年齢人口(15?64歳)は29年に7千万人、40年に6千万人を割る。成長には働き手一人ひとりの生産性向上が必須になる。

第2は「第4次産業革命」の到来だ。人工知能(AI)やロボットに代替される仕事が増えるとみられており、雇用の安定のためには働く人が付加価値の高い仕事をしなくてはならない。

ホワイトカラーが自らの生産性を高めやすい環境をつくる必要がある。経営者の役割は大きい。

もうかる事業に経営資源を集中することが、社員がより多くの付加価値を創出する基礎になる。米ゼネラル・エレクトリック(GE)はデジタル技術を駆使してサービスで稼ぐ事業モデルに改革した。日本企業も技術革新に即応した戦略をもっと打ち出すべきだ。

米コンサルティング会社のウイリス・タワーズワトソンが昨年、雇用されて働く世界の3万1千人に調査したところ、積極的で充実した精神状態にはないという人は日本では69%と、世界平均の46%を大幅に上回った。

社員の「やる気」を引き出さなくては生産性は高まらない。権限委譲を進め、社員が成長する機会を増やすべきだ。アサヒビールや中外製薬は経営学修士(MBA)取得や語学留学などのための休職制度を設けている。

海外企業は個人が価値創造をしやすい仕掛けづくりで先行する。米グーグルの各拠点には、働く時間の2割を好きな研究など担当業務以外の活動に充てられる「20%プログラム」という制度がある。無料のウェブメールサービス「Gメール」もここから生まれた。

多様な人材が力を発揮しやすくする工夫があるのは保険大手の仏アクサグループだ。社員が相手の国籍や年齢などに対して無意識のうちに抱く偏見を取り除けるよう研修に力を入れている。

成果主義が日本企業はまだ甘く、その徹底が生産性向上には欠かせない。カルビーでは社員が毎年度、具体的な数字をあげて会社との「コミットメント(約束)」を設定する。結果にこだわる姿勢を産業界全体に広げたい。

大学も企業に勤める人を再教育する場として重要な役割を担う。だが大学入学者に占める25歳以上の比率(12年)をみると、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均が18.1%なのに対し、日本は1.9%にすぎない。

社会人教育を活発に

関西大学は昨秋に開設した大阪市・梅田キャンパスで、大学院教育として、企業の人材を東南アジアなど海外子会社の経営幹部に養成する講座を設けている。大学は教育内容に知恵を絞ってほしい。

政府には2つの点を強く求めたい。まず、労働時間でなく成果に賃金を払う「脱時間給」制度の創設と裁量労働制の拡大を盛り込んだ労働基準法改正案を、早く成立させることだ。ホワイトカラーの仕事は基本的に、成果が働いた時間に比例しない。柔軟に働ける労働時間制度は不可欠である。

2点目は成長力の落ちた産業から伸びる分野へ、人材が移りやすくすることだ。付加価値を生みやすい仕事に、より多くの人材を振り向けたい。民間の職業紹介サービスを活発にするための規制改革が欠かせない。IT(情報技術)やロボット、医療関連など成長分野の仕事に就くための職業訓練の充実も急がなければならない。

企業、大学、政府の3者が危機感を持って、ホワイトカラーが生産性を高めやすい環境整備へそれぞれの役割を果たすときだ。
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[読売新聞] 再生エネ普及策 悪質業者の排除につなげたい (2017年05月06日)

再生可能エネルギーの導入は、国民負担とのバランスに配慮して進める必要がある。電気料金の高騰を招かない制度にせねばならない。

政府が、太陽光や風力など再生エネの固定価格買い取り制度を大幅に見直した。

再生エネによる電気は、電力会社が事業者から一定の価格で買い取り、その費用を家庭や企業の電気料金に上乗せして徴収する。

民主党政権下の2012年に導入された際、再生エネ普及を優先しようと買い取り価格を過度に高くしたため、異業種を含めた事業者が太陽光発電に殺到した。

利益拡大を狙って、太陽光パネル価格が値下がりするまで発電を始めない事業者も多い。

高利回りの見込める太陽光発電を運用商品として扱う投資ファンドが、不正取引で摘発される問題も起きている。

改正の柱は、制度の欠陥を突いた悪質な再生エネ事業者を排除することだ。経済産業省は、全体の14%にあたる約45万件の認定が取り消されると計算している。

再生エネの急増で、17年度の上乗せ額の負担は、全体で前年度比19%増の2兆1400億円に達する。標準的な家庭で月686円の負担は、30年度に1000円超に膨らむとの見方もある。

国民に過大な負担を強いる制度設計にもかかわらず、見直しの動きは鈍かった。遅きに失した感はあるが、今回の改正は妥当な方向と言えよう。実効性を検証し、不十分なら一段の見直しもためらうべきではない。

再生エネの活用には、電力を安定供給する観点が何より重要である。今回の制度改正では、太陽光発電の新規案件を対象に今秋から入札制度の新設も決めた。

従来は経産省が価格を提示し、事業者を認定していた。大規模太陽光については、認定する電力量を設定し、安い価格を提示した事業者を選ぶ方式に改める。

政府が掲げる30年度の電源構成比率で、再生エネの目標は22?24%となっている。入札方式の導入には、認定済みの再生エネの9割以上が太陽光発電に集中している現状を改善する狙いがある。

入札制度の活用で太陽光発電に偏重した再生エネを地熱や風力、バイオマスなどに多様化し、主要電源である原子力や火力と組み合わせることが大切だ。

地熱や風力は適地選定に時間がかかり、導入が遅れている。環境規制の緩和や地元との合意形成など、政府の支援も欠かせない。
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[朝日新聞] 道半ばの子育て支援 社会全体で担い、投資を (2017年05月06日)

「希望者が入所予定者数を超える為(ため)、または希望園に空きがない為」。説明はそれだけ。とても納得できなかった。

東京都大田区の佐々木麗さんは3月末、昨年生まれた長女を預けられる保育園はないという区からの通知を受け取り、不服を申し立てる審査請求をした。

幸い申し込んでいた保育園の一つに空きが出て、仕事に復帰できたが、請求は取り下げていない。「自分が良ければそれでいい、という話ではないので」。声をあげず、納得したと思われたら、同じことが毎年繰り返される。そう感じている。

「保育園落ちた 日本死ね!!!」のブログが大きな反響を呼んでから1年余。政府は緊急対策を打ち出したが、「2017年度末までに待機児童ゼロ」の目標にはなお遠い。

そんな現状を変えようと、行動する人たちが増えている。

■地域と世代を超えて

「子ども子育て予算に1・4兆円を追加して、待機児童の解消を」。東京都武蔵野市の天野妙さんは4月、署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」で集めた1万7千人あまりの署名を自民党本部に提出した。

個々の「私」の怒りやため息を束にして、「公」の提案に変える取り組みだ。

3児の母で、女性も働きやすい職場作りのコンサルティングを仕事にしている。自身も昨年、地元の市議会に保育園新設を陳情した。採択はされたが、保育園は周辺住民の反対運動で頓挫。地域や世代を超えて世論を作る大切さを痛感した。

「保育園落ちた」は、泣き寝入りせず声を上げていいんだと気づかせてくれた。ただ、後ろ向きな語感は引っかかった。自分たちのキーワードは「#保育園に入りたい」にした。

イベントを催すと、お年寄りや子どものいない人も来てくれた。ネットでは地方都市に住む人の書き込みも多かった。広がりに手ごたえはある。

政府や国会への働きかけにも力を入れた。自治体以外に国の予算や制度も大きいからだ。

国会議員に面会し、訴えを繰り返すと、3月には衆院の厚生労働委員会に参考人として招かれた。「行動すれば、国に物申したり、影響を与えたりできる」。天野さんの実感だ。

政府が、初めて子育て支援総合計画「エンゼルプラン」を打ち出したのは1994年。2001年には小泉内閣が「待機児童ゼロ作戦」を掲げた。

だが、子育て支援の予算は先進諸国の中で最低レベルのまま大きくは増えなかった。少子化は進み、05年には出生率が過去最低の1・26を記録した。

■めどが立たない財源

その反省に立ち、民主(現・民進)、自民、公明の3党が12年にまとめた税・社会保障一体改革では、消費増税に合わせて年に1兆円超を確保し、支援策を強化する方針が示された。

だが、肝心の消費増税を安倍首相は2度にわたって延期した。今、進んでいる保育所の整備は、いわば増税分の「先食い」だ。消費税以外で確保する約束の3千億円も、全くめどが立っていない。

政府は6月にも新たな待機児童対策を打ち出すというが、消費税率が10%になってもその使い道はすでに決まっている。保育サービスを今の計画以上に増やすなら、新たな財源が必要だ。政府に覚悟はあるのか。

一石を投じる動きも出てきた。自民党の小泉進次郎氏ら若手議員が提言する「こども保険」だ。現役世代が納める年金保険料に上乗せしてお金を集め、児童手当の拡充などに活用するという。消費増税を待っていたら子育て支援が進まない。そんな切迫感もにじむ。

■「負担」から「投資」へ

提言には、「なぜ現役世代だけがお金を出すのか」「そもそも保険になじむのか」との異論があり、税金でまかなうべきだとの意見も根強い。それでも、子育て支援の財源問題に向き合おうとする意味は大きい。これを契機に、具体案を出し合い、議論を深めてほしい。

「子育て支援が日本を救う」の著者で、「子育てを社会全体で支えよう」と説く柴田悠(はるか)・京都大准教授は、「保育サービスの拡充は女性の就業率を高め、経済成長率の上昇にもつながる」と語る。社会保障=負担ではなく、社会に必要な投資ととらえる発想が重要との指摘だ。

相続税の拡大、高所得者層への課税強化、事業主の拠出金など様々な方策を組み合わせれば財源も生み出せると提案する。「どんな政策と財源を選択し、どんな未来を作っていくのか。私たちは岐路に立っています」

子どもを産み、育てたいと願う、すべての人たちの希望をかなえる。社会全体で将来の社会の担い手を育み、それが年金や医療、介護の制度を支えることにもつながる。

合意作りを急ぎ、今度こそ実行に移したい。
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[読売新聞] 大学スポーツ ブランド力をいかに高めるか (2017年05月06日)

大学スポーツの活性化は、日本の競技力の向上に直結する。各大学が連携して、振興に努めてもらいたい。

文部科学省の有識者会議が、大学や競技の枠を超えた横断的な統括団体を2018年度に創設すべきだとする報告書をまとめた。大学や学生競技連盟を中心に、産官学で協議会を設置して、具体像の検討を近く始める。

モデルにするのは、全米大学体育協会(NCAA)だ。約1300の大学、50万人が加盟する。組織的な運営で、高いブランド力を誇り、バスケットボールなどの試合の放映権や入場料などで多額の収益を上げている。

潤沢な資金により、競技環境が整備され、選手は質の高いトレーニングに打ち込める。日本から留学する選手もいる。地域の人々は、地元の大学チームを応援する楽しみを享受している。

日本でも、大会のブランド力が選手のやる気を引き出し、競技力を高める例はある。正月の箱根駅伝がその典型だと言えよう。

だが、一般的には、大学の体育会は自主的な課外活動との考え方が根強い。学生自らが運営を担うケースが多い。予算や部員不足で活動が滞ったり、学業や就職活動との両立に行き詰まったりといった課題を抱えている。

様々な大会を催す競技団体も、学生主体の組織が多く、PRや広域連携が不十分なのが現状だ。

今後は少子化で競技人口の減少が見込まれる。充実した活動には確たる戦略が必要となろう。

国内の実情に照らしつつ、NCAAのどのような点を取り入れられるのか、議論を深めてほしい。大学スポーツ全体の注目度を高めることが、日本版NCAAの最大の役割だと言える。

選手の意欲を高める環境整備も、日本版NCAAと各大学が連携して取り組みたい課題だ。

米国では大学ごとに独立採算の体育局があり、経営のプロが資金調達や施設の整備、運営を担当する。成績の管理やキャリア形成など、学生へのサポートも行う。

こうした例は参考になる。スポーツ庁は、専門家を招聘(しょうへい)する大学への支援を始める。

体育会の組織強化を自前で進めてきた大学にとって、統括団体が創設されることのメリットは想定しにくいかもしれない。

大切なのは、大学スポーツ全体を底上げする視点だ。日本版NCAAと各大学が協力して、魅力ある大会を育てる。それが未来のアスリートの励みにもなる。
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