2016年12月31日

[産経新聞] 【主張】回顧2016 協調と和解の失速止めよ 「予想外」にたじろがぬ結束を (2016年12月31日)

「予想外」「番狂わせ」の文字がメディアに躍った。英国や米国などで、協調や統合路線、寛容な政策にノーを突きつける民意が示された。いわゆる反既存政治、反グローバリズムの旋風が吹き荒れた一年だった。

一連の民意の“勝者”に共通するのは、排外的で自国第一の姿勢だ。しかし、各国が自国の利益のみを優先し続ければ、衝突に至ることは歴史が示す通りである。

統合、協調、グローバル化に向かってきた国際社会の結束の乱れは、けっして有益ではない。

≪欧州の将来決める投票≫

今や、世界のどこにいてもテロの恐怖から逃れることはできないし、一国だけで安全を守れる時代でもない。2017年がこの理念を再評価、確認する年となることを望む。

11月の米大統領選では、公職歴のない実業家、ドナルド・トランプ氏が勝利した。イタリアでは憲法改正を国民投票で問うたレンツィ首相が敗れ、辞任した。

事前予想の「ズレ」と併せ、為政者と有権者の乖離(かいり)が民主主義の制度の下で突きつけられた。

激震は英国から始まった。6月の国民投票では欧州連合(EU)離脱派が残留派をわずかに上回って勝利した。かつて多くの移民を受け入れ、その多様さを活力としてきたはずのこの国で、「東欧などからの移民に職を奪われた」とする国民の不満がEU離脱を後押しした。

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離脱派勝利の勢いは、欧州大陸で直ちに共有された。フランスでは反移民、反EUを掲げる極右政党「国民戦線」が伸長した。

難民受け入れに寛容な政策をとってきたドイツも揺らいでいる。首都ベルリンの中心部で起きたトラック突入テロでは、12人が犠牲となった。

昨秋の中東からの難民受け入れ以降、ドイツ各地で相次いだテロや暴力事件の中でも最悪のものとなり、反移民、反EUを掲げる右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持が上向く結果を招いた。

独仏両国とも来年に国のリーダーを決める選挙が行われる。反EUの動きは止められないものとなるか、揺り戻しはあるか。EU基軸国の「選択」は、欧州の将来を決定づけるものになりそうだ。

トランプ氏の勝利は、グローバリズムのお膝元である米国で、それへの拒否反応が高まっていることを示した。

選挙期間中、在日米軍撤退の可能性を示唆して日本を驚かせたトランプ氏が、当選後に初めて会った外国首脳は安倍晋三首相だった。再会談にも合意し、次期政権が日米同盟を重視していることは世界に印象づけられた。

強固な同盟を維持・発展させていくために、日本はどんな役割を果たせるのか。受け身とみられない対応を次期政権に明確に伝えていく必要がある。

内外の注目を集めた日露首脳会談は、北方領土返還の困難さが再確認される結果となった。

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帰属問題が解決しないまま、ロシアとの経済協力が優先されれば、クリミア併合で対露制裁を科している先進7カ国(G7)の結束を乱しかねない。

主権と領土をめぐっては「法と正義」に基づいた交渉以外に道はない。この原則に基づく断固とした対応は、南シナ海で現状変更を進める中国への牽制(けんせい)ともなることを重くみるべきだ。

≪緊密さを内外に示した≫

「和解の力」を内外に示す歴史的行事も日米間であった。

オバマ米大統領は5月27日、原爆を投下した米国の現職大統領として初めて広島の平和記念公園を訪問、原爆慰霊碑に献花した。

被爆死した米兵捕虜の身元特定に尽力し、自身も被爆者の森重昭さんをオバマ氏が抱きしめる姿は、大きな感動を呼んだ。

今週、安倍首相はハワイの真珠湾を訪問し、戦没者を悼んだ。戦火を交えたかつての敵がもっとも緊密な同盟国となった。和解の力を世界に示す意義は大きい。

米大統領選でヒラリー・クリントン氏は敗れ去り、韓国の朴槿恵大統領は弾劾訴追された。英国ではメイ首相、ミャンマーではアウン・サン・スー・チー氏が国家の最高指導者に就いた。メルケル独首相は4期目に挑む。

活躍、失脚を問わず、女性指導者が主役となることはもはや珍しくなくなった印象も色濃い。
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[東京新聞] 大みそかに考える 被爆国の気概がある (2016年12月31日)

核と人類の命運とを一手に握る米大統領の、いよいよ交代です。時代がうねる年明け。核廃絶への暗がりに、被爆国日本がかざすべき平和の松明(たいまつ)とは。

来月の交代時、その黒カバンは恐らく最高機密の引き継ぎ案件となるのでしょう。中身は米大統領の核攻撃用指令装置、俗称「核ボタン」。今年、オバマ大統領と共に広島にも持ち込まれました。

七十一年前の爆心地で、当事国の首脳が核廃絶への誓いを新たにする傍らに、核攻撃装置がちらつく光景は、人類が抱える矛盾をまさに象徴しているようでした。

それは唯一の被爆国日本だからこそ際立つ矛盾であり、その後も国連などで幾度か際立ちました。直近は十一月、日本とインドの原子力協定署名です。

核保有国なのに核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドに原発を輸出する。核兵器に転用されるかもしれず、核軍縮に逆行する矛盾です。しかも、傷心まだ癒えぬ原発被災地の人々にも背を向け、また別の矛盾が重なります。

そこまでして、日本が原発輸出に執着するのはなぜか。

今年六月、米テレビでのバイデン米副大統領の発言が、微妙な含意をもって響きます。

北朝鮮の核抑止に真剣に取り組むよう、中国に求めた席で「さもなくば日本は一夜で核武装ができるのだから」と釘(くぎ)を刺したことを自ら明かしたのです。

真意は定かでないが、定かなことは、原発大国の日本が、核兵器製造に必要な技術・施設を一式国内に完備している事実です。そんな国は、NPT下の非核保有国で日本だけ。これを踏まえれば、発言の真意は、日本の原発を「潜在的核抑止力」に見立てた外交戦略の一環だったかもしれません。


◆同盟とは別次元の理想
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外交上もそれほど重要な原発技術だからこそ、多少の矛盾は押し切っても何とか維持したい。インドへの原発輸出も、つまりはそういうことでしょうか。

核の矛盾が押し切られる時の言い訳は大抵「核抑止力」に頼るためです。日米同盟でいえば、日本は米国の「核の傘」に入るしかない。それが安全保障政策の紛れもない現実ではあります。

しかし、ここで立ち戻るべきは私たちの原点です。そもそも戦後日本の平和主義は、原爆のむごたらしさを基点に戦争の愚を悟った当時の人々が、不戦の誓いを新憲法にも刻み、代々守り継いできたものでした。被爆国日本ならではの気概ともいえるでしょう。

少し前まで多くの日本人の心には、そうした非核の気概がしっかりと息づいていたはずです。

一九九八年五月中旬。インドの核実験翌朝、都内の大使館前に現れた武村正義・新党さきがけ代表(当時)は、ぶぜんとして「マハトマ・ガンジーの国なのに。残念というより悲しい」と語りながら館内へ入り、抗議文を手渡した−。本紙の夕刊報道です。

非暴力主義の国父に独立を導かれた国が、究極の暴力というべき核兵器を手にする矛盾。紙面からは、冷戦後の時代にも逆行するインドに、日本の人々が募らせた悲憤が伝わってくるようです。

国際社会においても、被爆国にしか果たせぬ使命は明快でした。苛酷な被爆体験を遠く未来の人類にまで伝え続け、核兵器の非人道性を広く知らしめることによって核廃絶の先導役を担うのです。

それが、いつのころからか。

多分、終戦体験世代が高齢化するにつれ、日本の政治は専ら、日米同盟を重視する現実路線に舵(かじ)を切り、核廃絶の理想はあえて遠ざけてもいるように見えます。

けれど、核廃絶で目指す人類普遍の恒久平和と、「核抑止力」で同盟や国益を仮想敵から守る「平和」とは、およそ別次元です。政治もこの際、核政策は米国に気遣うことなく、現実の安全保障政策と切り離して、別々に取り組んではどうか。「核の傘」が欠かせぬ政治の現実は理解するにしても、人類の核廃絶を希求する私たちの心まで、日米同盟に支配される道理はないのだから。


◆原爆の対抗では滅ばず
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マハトマ・ガンジーが日本への原爆投下の約一年後、公表した論考『原爆と非暴力』の一節から。その要約です。

<原爆がもたらした最大の悲劇から正しく引き出される教訓は、暴力が対抗的な暴力によっては打破できないように、原爆も原爆の対抗によって滅ぼされることはないということだ。人類は非暴力によってのみ暴力から脱出せねばならない。憎悪は愛によってのみ克服される。対抗的な憎悪は、ただ憎悪を深めるのみである>
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[毎日新聞] 5年目の安倍政権 アベノミクス 的は外れツケが増えた (2016年12月31日)

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「経済を、取り戻す。」??。そう公約し、今の安倍政権は誕生した。それから丸4年。あの時の約束はどうなったのだろう。

安倍政権が最も強調したのは「デフレからの脱却」と「経済の好循環」だ。2%の物価上昇率、3%以上の名目経済成長率を達成する、と公約に明記した。その実現のため登場したのが、金融政策、財政政策、成長戦略の「三本の矢」からなるアベノミクスだった。

第一の矢、つまり日銀による異次元緩和が的を外したのは明白だ。物価上昇率は9カ月連続でマイナスで、「2年程度で物価上昇率2%」はかすりもしなかった。第二の矢、財政政策はどうか。毎年のように何兆円という経済対策が打ち出されたが、効果は持続していない。法律に盛り込まれた消費増税を、経済状況を理由に2度も延期しなければならなかった事実は、好循環が起きていない証しに他ならない。

安倍首相は、有効求人倍率の上昇や雇用の増加を成果として強調する。景気対策による面も一部はあるだろうが、数字の改善=雇用の改善とは限らない。高齢化に伴う介護要員の需要増や建設・運輸業界の人手不足が有効求人倍率を押し上げている。高齢者が非正規社員として再雇用され雇用の総数を膨らませている面もある。経済構造の変化が高賃金の雇用を生み、人々が希望の職を得るという望ましい姿はまだ遠い。

アベノミクス最大の罪は、重要な課題を先送りし、将来世代に回すツケを一段と膨らませたことだ。異次元緩和に出口は見えない。2017年度末の国と地方を合わせた長期債務は1094兆円となる見込みで、12年度末から約160兆円増える。

アベノミクスの理論的支柱とされた経済学者の浜田宏一・内閣官房参与は文芸春秋1月号で、かつて日銀の金融緩和だけで経済が立ち直ると考えたがそうならなかったと誤算を認めた。そのうえで、原因を財政政策の踏み込み不足とし、もっと強力な財政のテコ入れと金融緩和を組み合わせる必要があると説いている。

一段と借金は増えるが同氏は、「国の借金であれば消費者金融などとは違って返済期限もなく、将来世代に繰り延べすることもできる」と指摘している。

せっかく働き方改革など構造問題に取り組んでも、同時に将来の不安が増大するツケ回しを続けていては効果は台無しだ。政策のコストは誰が負うのか、国民のチェックが求められている。
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[毎日新聞] 5年目の安倍政権 首相の姿勢 寛容さを国内政治にも (2016年12月31日)

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激動が続く欧米や韓国と比べれば、今年の日本政治は安定していたといえるかもしれない。今月、安倍晋三首相が政権に復帰してから5年目に入り、「自民党1強」体制はさらに強固になったように見える。だが数々の課題が浮き彫りになった1年だったことも忘れてはならない。

今年最大の政治決戦は7月の参院選だった。選挙の結果、自民、公明の与党と日本維新の会など憲法改正に前向きな勢力が、参院でも改憲発議に必要な3分の2を上回った意味は大きい。同時に注目すべきは自民党が27年ぶりに参院でも単独で過半数を占めることになった点だ。

その影響は直ちに表れた。象徴的なのが先の国会で成立した「統合型リゾート(IR)整備推進法」(カジノ法)だ。公明党に根強かった慎重論を自民党は顧みることなく、維新とともに強引に成立させた。

野党の存在感が薄い中、これまで公明党が安倍政権の行き過ぎに対して一定の歯止め役を果たしてきたのは確かだ。最近、公明党幹部から公然と自民党を批判する声が出始めてはいるが、今後、自民党の独走に拍車がかかる懸念は消えない。

安倍首相が異論に耳を傾けず、自らの非を認めようとしないことは再三、指摘してきたところだ。ところが年金制度改革関連法の審議の際、首相は「私の述べたことを全く理解いただけないのであれば、こんな議論を何時間やっても同じですよ」と答弁した。議論を軽んじる姿勢がさらに強まったというほかない。

担当閣僚が法案採決前に「強行採決」の可能性を語るなど、「1強」のおごりとしか思えない発言も相次いだ。一方で、自民党内では個々の政策や方針決定をめぐり、かつてのような激しい議論を戦わせる場面はめっきり少なくなっている。

外交で首相が次々と行動を起こしている点は評価していい。しかし、首相がオバマ米大統領と米ハワイ・真珠湾を訪問して日米の和解を強調した直後に、稲田朋美防衛相が靖国神社を参拝し、中国、韓国との関係改善に水を差した。首相が最重要課題に掲げる北朝鮮による拉致問題は今年もまったく進展せず、沖縄の米軍基地問題も解決せずに年を越す。

今年の年頭、私たちは多様性を認め、異論や批判を受け止めて吸い上げるほど民主主義は「強くなれる」と書いた。自民党総裁の任期延長が内定し、安倍政権は2021年秋まで続く可能性がある。だからこそ、首相が真珠湾で語ったように寛容さがもっと必要だ。
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[朝日新聞] ニッポン2016年 このまま流されますか (2016年12月31日)

2016年が終わる。

世界中で「分断」「亀裂」があらわになった。

ニッポンは、どうか。

「言葉」で振り返る。

政治では、悲しいかな、ことしもカネの問題があった。

「私の政治家としての美学、生き様に反する」

業者から現金をもらった甘利明経済再生相は1月に、こんな発言を残して閣僚を辞めた。その後の国会を「睡眠障害」で欠席し、関係者の不起訴が決まると、さっさと復帰した。

「公用車は『動く知事室』」

東京都の舛添要一知事は公用車での別荘通いや、1泊20万円のホテル滞在で袋だたきにあった。そのうえ政治資金の私的流用を「せこい」と酷評され、6月に知事の座を追われた。

「飲むのが好きなので、誘われれば嫌と言えない性分」

700万円近い政務活動費を飲食やゴルフなどに使った富山市議が8月に辞職した。似たような地方議員の税金乱費が、各地でぼろぼろと見つかった。



国会はさながら「安倍1強」劇場だった。安倍晋三首相は夏の参院選に勝ち、自民党総裁の任期延長に異論も出ない。

「結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」

「こんな議論を何時間やっても同じですよ」

首相の答弁は、ぞんざいさを増し、与党は「数の力」で採決を強行していった。

国連平和維持活動(PKO)に派遣する自衛隊に「駆けつけ警護」の新任務を与えた。強引に憲法解釈を変えた安全保障関連法の初めての具体化だが、首相の言葉は軽かった。

「もちろん南スーダンは、例えば我々が今いるこの永田町と比べればはるかに危険な場所」

南スーダンでは武器で人が殺されている。それを稲田朋美防衛相はこう説明した。

「それは法的な意味における戦闘行為ではなく衝突である」

この種の「言い換え」が増えた。沖縄県でのオスプレイ大破は「不時着」だった。安倍政権は「積極的平和主義」で「武器輸出三原則」を葬り、「防衛装備移転三原則」と称している。



ご都合主義的な言葉づかいの極みが、首相の6月の消費増税先送り会見で飛び出した。

「再延期するとの判断は、これまでの約束とは異なる新しい判断だ」

「新しい判断」は公約違反の逃げ口上だ。2年前には「再び延期することはない。ここでみなさんに、はっきりとそう断言する」と言ったのだから。

しかも国会での追及をかわそうと、閉会直後に表明した。ところが、野党も増税延期を唱えていたため、参院選の争点にすらならなかった。

「確実な未来」である人口減少と超高齢社会に備えるための国民の負担増を、政治家が先送りし、多くの有権者がそれを歓迎、あるいは追認した。

医療も介護も年金も生活保護も子育ても、財源難にあえいでいる。この厳しい現実から目をそむけ、社会全体が「何とかなるさ」とつぶやきながら、流されてゆくかのようだ。

その流れは、政治家の粗雑な答弁や暴言をも、のみ込んでしまっているようにも見える。

この夏、101歳で逝ったジャーナリスト、むのたけじさんの著作に次の一節がある。

「(日本人が)ずるずるべったり潮流に押し流されていくのがたまらなかった」

敗戦直後の世の中への感想だが、どこか現在に通じないか。



9月、安倍首相は所信表明演説で言い切った。

「非正規(労働)という言葉を、みなさん、この国から一掃しようではありませんか」

だが、働き方の問題は深刻かつ多岐にわたる。

「保育園落ちた日本死ね!!!」

この匿名のブログへの反響の大きさが、待機児童問題の窮状を物語っている。

過労自殺した電通の女性社員(24)の言葉も切ない。

「大好きで大切なお母さん。さようなら。ありがとう。人生も仕事もすべてがつらいです」

衝撃的な事件があった。

相模原市の障害者施設で19人を殺害した男は言った。

「障害者は生きていても無駄だ」

この異常な偏見に対する確固たる反論を、だれもが心に堅持し続けねばならない。

ことしも、いじめを苦にした自殺を防げなかった。原発事故の自主避難先で、いじめられた少年の手記が話題になった。

「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」

それぞれの「言葉」が、ニッポンのありのままの姿を映している。だから聞き流すまい。立ち止まって受け止めよう。

このまま来年も流されてしまわぬように。
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[読売新聞] 給付型奨学金 学ぶ意欲ある若者への支援に (2016年12月31日)

低所得世帯の大学生らを対象とした返済不要の給付型奨学金を、政府が創設する。

進学する意欲があるのに、経済的事情で断念せざるを得ない生徒を後押しする制度だ。有効に機能させたい。

本格実施は2018年度からだ。大学や短大、専門学校への進学者に対し、自宅か下宿か、私立か国公立か、などに応じて、月2万?4万円が給付される。

国による給付型奨学金制度を設けていないのは、経済協力開発機構加盟国では、日本とアイスランドだけだという。

対象となる住民税非課税世帯の進学希望者は、全国で1学年約6万人とされる。そのうち、給付を受けられるのは約2万人だ。全国の高校から、学業や課外活動のほか、本人の意欲や家庭の事情も踏まえて推薦してもらう。

親が十分な教育費を捻出できず、成績が伸び悩む生徒もいる。高校間の学力差も大きい。一律の成績基準を設けず、現場に判断を委ねる仕組みは理解できる。各校は生徒を総合的に評価して、向学心のある子を選んでほしい。

大学進学率が5割を超える中、学費や生活費の工面に苦労する学生が増えている。年間の授業料は私立で平均86万円、国立でも54万円かかる。保護者の負担は重い。昼間部の大学生の半数が、何らかの奨学金を利用している。

国の奨学金は現在、無利子と有利子の貸与型しかない。独立行政法人・日本学生支援機構を通じて132万人が利用している。

学生は大学卒業時に平均310万円の借金を抱える。非正規雇用で返済に苦しむ人も多く、3か月以上の滞納者は17万人に上る。

低所得世帯ほど将来の負担を懸念して、「借り控え」をする傾向もある。教育の機会均等の観点からも、新たな制度を創設する意義は小さくない。

21年度以降は、年間220億円の財源が必要になる。「未来への投資」に対する社会の理解を得るため、入学後の成績などを確認することは、欠かせない。

新制度導入後も、無利子の貸与型奨学金を併用できる。アルバイトに追われず、学業に専念できる環境整備が大切だ。

無利子の貸与型奨学金には、卒業後の所得に連動した返済制度が来年度から導入される。返済期間の一層の延長などの工夫も必要だろう。大学にも、授業料減免の拡充といった努力が求められる。

熱意ある若者を、重層的に支援する態勢を整えたい。
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[読売新聞] キトラ壁画修復 史跡の新たな活用法を示した (2016年12月31日)

かけがえのない文化遺産が無事、修復されたことに安堵(あんど)する。

奈良県明日香村の国特別史跡キトラ古墳(7世紀末?8世紀)の極彩色壁画をはぎ取り、保存修理する作業が完了した。

12年をも費やして、難事業を完遂させた。関係者の熟練の技と根気の賜物(たまもの)である。

キトラ古墳では、1983年から石室内部にファイバースコープや小型カメラを挿入して調査が実施された。壁には「朱雀」を始めとする四神図などが描かれていることが確認された。天井には天文図も見つかった。

壁画が剥落しそうなことが、その後に判明した。壁と漆喰(しっくい)の間に水がしみ込むなどしたためだ。文化庁は2004年、漆喰ごと取り出して保存する方針を決めた。

漆喰の厚さは数ミリだ。わずかなミスが損傷につながる。2人が入れば満員の空間で、日本画の修復が専門の技術者らが、1100片以上に分けて、はぎ取った。

色や描線の状態について、直接触れずに分析する技術を採り入れるなど、様々な工夫を凝らした。その手法や工程は、文化財修復の得難い財産となろう。後世に確かに伝えることが大切だ。

再構成された壁や天井は、古墳のそばに政府が整備した保管・公開施設に移された。今年9月の開館から1か月間、「朱雀」や天文図などが公開された。この間に、2万人近くが壁画を観覧した。小中学生らの姿も多かった。

今後も定期的に実物が展示される。本物を見ることで、多くの人が文化財を身近に感じ、その重要性を再認識する。文化遺産の有効な活用法だろう。

修復に際し、「現地保存の原則」を主張した専門家は少なくない。「墳丘や石室、壁画を一体で残すべきだ」という考え方だ。

だが、蘇(よみがえ)った壁画を石室に戻すと、カビの発生などの危険性が高い。被害を防ぐ確かな手立てがない現状では、別施設での保存が理にかなっていると言えよう。

明日香村では、石室内の不十分な管理により、カビの大量発生を招いた高松塚古墳の壁画修復が続く。劣化が激しいため、07年に石室自体を解体して、墳丘から取り出さざるを得なかった。

修復作業の終了後は、同様に別施設で保存・公開する方針だ。

第3の壁画古墳発見の可能性はある。できる限り元の状態のまま後世に受け継ぐには、どう対処すべきなのか。キトラ壁画の修復は貴重な実例となるだろう。
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2016年12月30日

[東京新聞] 年のおわりに考える 理想の旗を高く掲げて (2016年12月30日)

憲法改正が来年の大テーマとなるでしょう。緊急事態条項の創設などが現実になれば、九条も狙われます。平和主義の大切さを考えねばなりません。

法と現実の関係を考えてみましょう。例えば憲法には男女平等が書かれています。理想です。一四条で「法の下の平等」が定められ、性別で差別されないことを保障しています。二四条でも「両性の本質的平等」という言葉が登場します。でも、現実の社会ではいまだ男女不平等が残っています。そんな現実があれば、憲法の描く理想に近づかねばなりません。

理想と現実−。両者の間には常に隔たりがありますが、現実を理想の方向に導くのが正義の姿であるといえます。

ところが、九条の話になると、その関係が怪しくなります。改憲論者は世界で戦争の歴史が続いているから、その現実に合わせて日本も正規の軍隊を持たねばならないと考えるのです。

実際に自民党の憲法改正草案は、国防軍の創設をうたい、戦争放棄の条文から「永久にこれを放棄する」という大事な言葉を削除してしまいました。

九条一項の戦争放棄は「戦争の違法化」と説明されます。侵略戦争などの否定です。一九二八年にパリで締結された「不戦条約」も戦争を放棄し、紛争は平和的手段によって解決することを規定しました。日本も批准したものの、わずか三年後に満州事変を起こしました。

その結果、国際連盟を脱退せざるを得なくなり、日中戦争へ、太平洋戦争へと突入していったのです。「戦争の違法化」の理想は、もちろん四五年に制定された国連憲章でも生きています。


◆九条改正は限界を超す
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日本国憲法の先進性はむしろ九条二項に表れています。戦力の不保持と交戦権の否認の条項です。これこそ中核です。戦力がなければ、戦争などできはしないのですから…。十八世紀の政治哲学者カントが「永遠平和のために」で唱えた「常備軍の全廃」の精神が具現化されています。

これについても、改憲論者は自衛隊の存在を盾にとって、理想をなげうち、現実の方向へと導こうとします。この点については憲法前文が揶揄(やゆ)されるケースが目立ちます。例えばこんな部分です。

<日本国民は(中略)平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した>

現実離れしていると言うわけです。確かに世界で紛争がありますが、平和を愛さない人はいません。まさに理想の旗を高く掲げた日本国憲法の不朽の先進性を示すくだりだと考えます。

九条がなければ、かつてのベトナム戦争で韓国の若者が五千もの命を失ったように、日本の若者も多くの血を流していたでしょう。軍拡の道を歩んでいたでしょう。

逆に言えば、もし九条が改正されてしまったらどうなるか−。実は日本国憲法は「平和主義」を根本原理として書かれているので、かなり重要な条文をいくつも変えざるを得ないのです。

首相や内閣の権能などは書き換えねばならないでしょう。軍隊を持てば、軍法会議の規定も必要になってきます。それどころか、前文の平和的生存権や表現の自由、集会・結社の自由などは「公益及び公の秩序」の名の下で制約を受ける可能性が濃厚です。

九条を変えれば、それぞれの条文がきしむ音を立て、似て非なる憲法になってしまうことでしょう。この事態は憲法改正の限界点を超えると考えるべきなのです。

自民党草案では国を守ることを国民に課す内容も含まれています。「国防義務」そのものです。平和と安全は守らねばなりませんが、権力がそれを口実にしてさらなる強権を得ようとするのは歴史が示しています。

ナチス・ドイツでは緊急事態宣言と全権委任法でヒトラーの独裁を築きました。憲法に拘束されない無制限の立法権を政府に与える法律です。正式名称は「民族および国家の危難を除去するための法律」です。国家の危機と言われれば皆、反対しにくいものです。権力はそのような手口を使います。


◆国際社会からの信頼は
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国家の危機を口実に再び「軍」を持てば、周辺国はさらに危機感を高め、軍備を増強するに違いありません。九条というブレーキ装置を壊したら、かえって危険度は高まりはしないか。

国際社会で戦後日本が信頼されてきたのは平和主義があったためです。理想の旗はもっと高く、永久に掲げ続けたいものです。
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[産経新聞] 【主張】拉致問題 何一つ進展なく越年する (2016年12月30日)

平成28年、拉致問題は何一つ進展しないまま、むなしく越年する。

来年は、横田めぐみさんが13歳で北朝鮮の工作員に拉致されてから40年となる。拉致被害者家族連絡会の結成から20年の節目の年でもある。

なんと長く辛(つら)い年月だろう。めぐみさんの母、早紀江さんは「ずっと怒っています。よく生きてこられたなと思うほどに」と話した。

娘や息子、肉親の帰りを待ちわびる家族の多くは、高齢とも戦っている。被害者の奪還、帰国に時間的猶予はない。

拉致は、北朝鮮による主権侵害の残酷な国家テロである。非は全面的に北朝鮮にある。それがすべてだ。ただ日本政府は、被害者を取り戻すべく、この1年、どのような努力を続けてきたか。早紀江さんらは、安倍晋三政権にも「真剣勝負」を求めている。

加藤勝信・拉致問題担当相は今月、めぐみさんの友人らでつくる「再会を誓う同級生の会」と面会し、「大臣になって1年余、一人の帰国も実現しておらず申し訳ない」と述べた。だが聞きたいのは、謝罪や諦念の弁ではなく、奪還のための手立てである。

北朝鮮は今年2月、拉致被害者の再調査を約束した「特別調査委員会」を解体すると、一方的に表明した。核実験と長距離弾道ミサイルの発射に対し、日本が独自制裁を強化したことへの対抗措置なのだという。

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自らの犯罪行為を交渉材料に、嘘や引き延ばしで経済支援などを求めるのは、北朝鮮の常套(じょうとう)手段である。「対話と圧力」「行動対行動」の外交原則を堅持し、被害者の全員帰国なしに北朝鮮の未来はないことを、はっきりと理解させなくてはならない。

それは、日本政府にとっても同様である。拉致問題の全面解決なしに、わが国の未来を堂々と語ることはできない。その覚悟をみせてほしい。

めぐみさんは昭和39年10月、東京五輪開幕の直前に生まれた。早紀江さんは「次の東京五輪までに絶対にめぐみを返してほしい」と訴えている。母の思いに応えずして、何のための政治だろう。

まず拉致を北朝鮮指導部の人権犯罪として国際刑事裁判所(ICC)に付託するため、国連の場においてロシアと中国を引き込まなくてはならない。来年こそ、膠着(こうちゃく)した現状を打破してほしい。
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[産経新聞] 【主張】電通社長辞任へ 「残業文化」は通用しない (2016年12月30日)

広告大手、電通の新入女性社員が昨年末に過労自殺をした問題で、厚生労働省が違法な長時間残業をさせた労働基準法違反の疑いで、法人としての電通と、女性社員の上司だった幹部社員1人を書類送検した。

これを受け、石井直社長は来月に引責辞任すると表明した。同社は以前にも若手社員が過労自殺をしたほか、長時間労働で何度も是正勧告を受けていた。

横行する違法行為を放置してきたことが、経営トップの辞任に発展した。あらゆる企業が厳しく受け止めるべき事態である。

働く人の心身の健康を損なう過重労働は、なくさなければならない。その背景にあった残業文化を排し、効率的な働き方によって生産性を高めることが必要だ。問われているのは、経営者自らの意識改革である。

送検された電通幹部は、違法な残業をさせたうえ、勤務時間を過少申告させた疑いも持たれている。家宅捜索から1カ月半という早い段階での立件は、悪質性に加え、長時間残業に対する厳格な姿勢を示したものと受け取れる。

違法労働が全社的に広がっていた可能性もあるとみて、役員ら上層部の関与の有無を調べる捜査は継続される。

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石井社長に対する直接の事情聴取も行われたという。社長は会見で「過重労働を許す風土があった。全責任を取る」と述べた。

日本を代表するような大手企業といえども、法令を順守した労務管理が徹底されなければ、トップの経営責任に直結する。そういう時代を迎えたとの認識が要る。

少子高齢化に伴い、都市部などの人手不足は深刻化している。今後、賃金や勤務時間をめぐり、従業員の待遇向上に取り組まない企業に優秀な人材は集まらない。まして、社員を「使い捨て」にするブラック企業は生き残れまい。

電通は何度も是正勧告を受けていた。だが、事実は公表されなかった。厚労省は今後、違法な長時間残業などを強いる企業の社名を積極的に公表するという。悲劇を繰り返さぬため、労働実態の監督も強めてもらいたい。

「働き方改革」を掲げる安倍晋三政権は、長時間残業の解消に向け、労働時間の上限規制の強化を検討している。産業界の反発は根強いが、労働者保護の観点で実効性ある対策を講じるべきだ。
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[毎日新聞] 少子化と保育 まだ危機感が足りない (2016年12月30日)

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今年生まれる子供の数は統計を取り始めた1899年以降、初めて100万人を下回る見通しだ。今後も出生率が大幅に改善しない限り、最も多かった1949年(約270万人)の3分の1程度になる。安心して子供を産める環境を整えないと、日本は縮小していくばかりだ。

今年は保育所に入れなかった人の「保育園落ちた日本死ね!!!」という匿名ブログが発端となって母親たちの怒りが噴出し、政治を動かした年だった。

保育所の不足による待機児童問題は深刻だ。厚生労働省によると4月時点の待機児童は2万3553人だが、育児休業を延長している場合などは集計に含まれない。こうした「隠れ待機児童」は6万7354人にも上る。

都市部を中心に待機児童を多く抱える自治体は保育所の新設を進めているが、保育士の確保が追いつかず難航している。仕事が大変な割に賃金は全産業の平均より月10万円も低く、それが保育士不足の原因と言われてきた。

このため政府は来年度予算に540億円を計上し、全保育士の月給を6000円程度増やすほか、技能や経験を積んだベテラン職員はさらに4万円を上乗せする。保育士として働き続ける動機付けとしては効果があるだろう。

しかし、現実には経験が7年以下の保育士が全体の半数以上を占めている。6000円増えても、まだ月給が18万円程度にとどまる人は少なくない。一段の上乗せが必要だ。

総収入に占める人件費の割合が極端に低い保育所が多数あることも指摘されている。国が待機児童解消のために予算を増やしても、保育士の賃金に回らなければ意味がない。低賃金で若い保育士を酷使する保育所には厳しいチェックが必要だ。

保育士資格を持ちながら働いていない「潜在保育士」も約76万人に上る。低賃金とともに子育てや家庭生活との両立が難しいためとされる。正職員でないと保育所内での立場や処遇がさらに悪いためパートで働くことも控えている人が多い。もっとパートの処遇改善に力を入れるべきだ。

また、国が定めた職員配置基準では、4歳児以上は子供30人に保育士1人だが、0歳児は3人に保育士1人と定められている。多くの保育士が必要な0歳児を家庭で育てられるようにすれば、待機児童の解消には大きな効果がある。男性も含めて育児休業をもっと取ることができるようにすべきだ。

これから現役世代の女性の数はさらに減っていく。あらゆる政策を動員して出生率を改善しないと、人口減少に歯止めが掛からなくなる。
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[毎日新聞] 電通社長辞任へ 過重労働一掃の契機に (2016年12月30日)

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一人の新人社員の過労自殺が大企業のトップを辞任に追い込むことになった。長時間労働が横行している会社は相変わらず多いが、社員の命の重さを自覚し、過労死・過労自殺の一掃へ取り組むべきである。

広告代理店最大手・電通の新人社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が過労自殺した問題で、東京労働局は高橋さんの上司と同社を労働基準法違反の疑いで書類送検し、これを受けて石井直社長が辞任することを表明した。

「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは」。電通の行動原則である「鬼十則」には過重労働を促す文言が並ぶ。社員は入社直後から長時間の残業を余儀なくされることが多く、高橋さんの残業時間も過労死ライン(月80時間)を大きく超える105時間だったと労働基準監督署は認定した。

電通ではこうした違法残業が常態化している疑いがあるとして、各地の労働局が11月に全国の本支社を家宅捜索した。同社は過去にも若い社員が過労で自殺し、2010年、14年、15年に労基署から長時間労働の是正勧告を受けている。上層部への捜査は越年して継続されるが、改善されない企業体質には徹底してメスを入れるべきだ。

電通だけでなく、社員教育や業績アップのためには厳しい長時間労働も必要と考える経営者や幹部社員は多い。

音楽・映像ソフトの製造販売会社「エイベックス・グループ・ホールディングス」は長時間残業や時間外の割増賃金の不払いで今月、労基署から是正勧告を受けた。松浦勝人社長は「時代に合わない労基法なんて早く改正してほしい」とブログで主張し、物議をかもしている。

企業トップの意識や労務管理のあり方が根本的に変わらない限り、社員を追い詰める長時間労働は改善できないだろう。

厚生労働省は労基法違反を繰り返した企業名の公表対象を拡大し、違法残業時間を「月100時間超」から「月80時間超」に引き下げ、労基署の指導を受けても改善しなければ公表することを決めた。

サービス残業をなくすため、企業に社員の労働時間を正確に把握させる仕組みも導入する。

現在も労働時間は週40時間と法で定められているが、労使で「36(さぶろく)協定」を結べば時間制限を外すことができる。相反するダブルスタンダード(二重基準)を許してきた責任は政府にもあるのだ。

「働き方改革」の長時間労働是正の議論は年明けから本格化する。抜け道を許さないような労働時間の規制が必要だ。
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[読売新聞] 電通社長辞任へ 企業経営者への強い警鐘だ (2016年12月30日)

大手広告会社・電通の過労自殺問題は、社長の辞任表明に発展した。過重労働は、経営者が責任を問われなければならない重大事案であることを浮き彫りにした。

石井直社長は記者会見で、「120%の成果を求め、仕事を断らない矜(きょう)持(じ)もあった」と述べ、電通特有の企業風土が過重労働を招いたとの認識を示した。「経営陣が歯止めをかけられなかった」と、自らの責任を認めた。

電通では、過去にも社員が過労自殺している。近年も、違法な長時間残業で相次ぎ労働基準監督署の是正勧告を受けた。その後、「ノー残業デー」を設けるなどの対策を取ったものの、新たな悲劇を防げなかった。

経営陣が、職場の実態を十分に把握し、本気で変革に取り組んだとは、到底言えまい。

昨年末に新入社員の高橋まつりさんが過労自殺した問題で、東京労働局が法人としての電通と幹部社員1人を労働基準法違反容疑で書類送検した。これにより、石井社長は辞任に追い込まれた。

11月の強制捜査から2か月足らずでの早期立件である。日本の著名企業で過重労働が常態化していたことに対する当局の危機感の表れと言えるのではないか。

労使協定で決めた残業の上限を超えて高橋さんらを働かせた上、勤務時間を上限内に収まるよう過少申告させていた疑いがある。同様の例は複数見られ、労働局は労務担当役員ら上層部の立件も視野に入れ、捜査を続ける。

徹底的に全容を解明し、再発防止につなげてもらいたい。

高橋さんは、母子家庭で育ち、東大から電通に入った。「夢に向かって努力を続けてきた」「生きて社会に貢献できることを目指していた」。命日を前に母親が公表した手記につづられている。

若い社員の夢と希望を断ち切った電通の罪は重い。

電通だけの問題ではない。10月に公表された初の過労死白書によると、過労死ラインとされる月80時間超の残業があった企業は23%に上る。他の企業経営者も重く受け止める必要がある。

長時間労働の是正は、政府の「働き方改革」の柱だ。社員が疲弊すれば、生産性も低下する。

業務量を変えないまま、残業を禁じるだけでは、仕事を持ち帰る社員を増やす結果になる。受注する仕事の量や内容を精査し、社員に無理を強いずに業績を上げる。そのために、知恵と工夫を凝らすのは経営者の責務である。
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[読売新聞] 南スーダン情勢 安定構築へ外交努力強めたい (2016年12月30日)

政情不安が続く南スーダンをいかに安定させるか。日本は関係国と連携し、同国政府への働きかけを強めるべきだ。

国連安全保障理事会で米国が提出した対南スーダン制裁決議案が否決された。

安保理の15か国のうち、米英仏など7か国が賛成し、日中露やアフリカ3か国を含む8か国が棄権した。米国主導の決議案に日本が同調しないのは異例である。

決議案は、南スーダンへの武器輸出を禁止し、政府と反政府勢力の幹部に資産凍結や渡航禁止を科す内容だ。虐殺など住民への人権侵害を防ぐのが目的という。

別所浩郎国連大使は、「政権が前向きな行動を取っている時に、制裁は逆効果だ」と棄権の理由を説明した。制裁を科す時機として適切ではないとの認識だ。

安保理は今年8月、首都ジュバなどの治安確保へ、国連平和維持活動(PKO)部隊の約4000人の増派を決議した。南スーダンは難色を示したが、日本などの説得で11月に受け入れを決めた。

南スーダンでは、昨年8月の和平合意を踏まえ、今年4月に暫定政府が発足した。政府が反政府勢力を弾圧し、難民を大量に発生させたのは事実だ。国連に非協力的という問題もある。

それでも、今、制裁を科せば、国連との信頼関係が一層失われ、和平の維持が困難になる。棄権という判断は十分に理解できる。

日本は、PKOに陸上自衛隊部隊約350人を派遣している。

野党の一部などには、陸自の安全を優先して武器禁輸を回避するのは本末転倒だ、との批判もある。だが、重要なのは、禁輸の実効性と影響を見極めることだ。

南スーダンでは、様々な不法ルートで周辺国などから武器を容易に輸入できる。反政府勢力に武器が渡れば、政府軍による治安維持の重大な障害となろう。

ケニアなど東アフリカ8か国は「制裁は安定をもたらす解決策ではない」と決議案に反対する声明を発表している。米国も、「人権重視」という政治的なアピールに重点があったのではないか。

岸田外相は今月7日、キール大統領と電話会談し、「市民への暴力は絶対に受け入れられない」と伝えた。先週も、政府特使を派遣し、国民融和に向けての一層の努力をキール氏に求めた。

日本も、将来の制裁を否定してはいない。制裁実施も外交カードとし、南スーダン政府に過剰な暴力の自制と治安回復への真剣な取り組みを迫ることが大切だ。
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[朝日新聞] 靖国参拝 「真珠湾」は何だったか (2016年12月30日)

稲田防衛相が靖国神社に参拝した。極めて残念だ。

安倍首相がオバマ米大統領と真珠湾を訪ね、日米の「和解」を強調したばかりである。

稲田氏も同行したこの真珠湾訪問で、日本の過去の歴史をめぐる問題は清算された。稲田氏がそう考えているとしたら、それは大きな誤りだ。

稲田氏は「祖国のために命を捧げた方々に敬意と追悼の意を表するのは、どの国でも理解をしていただける」と語った。

戦争で命を失った肉親や友を悼むため、遺族や一般の人々が靖国で手を合わせる。そのことは、自然な営みである。

だが首相をはじめ政治指導者の参拝となると、その意味は異なる。靖国には、若者たちをアジアや太平洋地域の戦場に送った側のA級戦犯が合祀(ごうし)されているからだ。

そこに政治家が参拝することに、割り切れない思いをもつ遺族もいる。中国、韓国、さらには欧米など国際社会にも、日本がかつての戦争責任から目を背けようとしているとの疑いを広げかねない。

まして稲田氏は自衛隊を指揮監督する立場の防衛相である。

A級戦犯が罪を問われた東京裁判には、勝者による裁きという批判もある。それでも、日本はこの裁判を受け入れ、平和国家としての一歩を踏み出したことを忘れてはならない。

首相はかねて、日本の過去の侵略と植民地支配を認めた村山談話を疑問視してきた。3年前、靖国に参拝した際には、中韓との関係が悪化し、オバマ政権から「近隣諸国との緊張を悪化させるような行動に失望している」と批判を浴びた。

首相が昨年4月の米議会演説で「先の大戦に対する痛切な反省」や「アジア諸国民に苦しみを与えた事実」に触れ、今回、真珠湾を訪問したのは、そうした経緯を踏まえ、日本の首相としての歴史認識に変わりがないことを示すためだったはずだ。

首相が重用し続けている稲田氏の言動は、個人の行為にとどまらず、政権の意思と受け止められかねない。首相のこれまでの積み重ねを傷つけ、その真意に再び疑念を広げるだろう。

稲田氏の参拝は、首相を支持する右派へのメッセージと見ることもできる。首相の真珠湾での演説も、旧日本軍が悲惨な被害をもたらしたアジア太平洋地域への視線は希薄だった。

稲田氏の参拝について首相はコメントを避けた。だがアジアを含む国際社会と真の意味での「和解」をめざすなら、稲田氏の参拝を放置してはならない。
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[朝日新聞] 慰安婦合意 後戻りさせないために (2016年12月30日)

かつて日本軍将兵たちの性の相手を強いられた元慰安婦らの気持ちをどうやって癒やすか。日韓両政府がこの問題で政治的に合意して1年が過ぎた。

合意に盛り込まれた元慰安婦を支援する韓国の財団が今夏に立ち上がり、日本政府が送った10億円をもとに現金を支給する事業が始まっている。

1年前に46人が生存していた元慰安婦のうち、これまで7割以上にあたる34人が受け取りの意思を明らかにしたという。

傷つけられた名誉や尊厳が、70年後に受け取った金銭によって完全に癒やされることはあるまい。だが、いまできる限りを尽くそうとする意思が、元慰安婦らに少しでも受け入れられたのなら、政治合意には意味があったと言えるだろう。

着実に歩みを進めてきた事業を、日韓両政府は今後も協力して後押ししてほしい。

合意では、慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に解決」することが確認された。

持ちつ持たれつの両国関係はいまや、多くの分野に広がっている。慰安婦問題では互いに一定の譲歩をしつつ、一層連携を強めていこうとの思いが、合意には込められた。

後戻りさせないためには不断の努力が欠かせない。なのに、合意の精神に逆行するような言動が双方で出るのは残念だ。

朴槿恵(パククネ)大統領の進退問題に揺れる韓国では、野党勢力が日本との再交渉などを求めている。

次期大統領選を意識し、合意を決断した朴政権を批判するための発言との指摘があるが、歴史問題を政争の具として使おうというのであれば、無責任な政治と言わざるをえない。

日韓両政府が今後取り組むべきは、元慰安婦らに寄り添いつつ、不幸な歴史を教訓として、永遠の不戦の誓いなど普遍的な問題に昇華させ、人権の向上に努めることではないのか。

日本政府や自民党の一部には財団に資金を出した時点で日本側は役割を終えた、との意見があるが、これも大きな誤りだ。

お金の受け取りを拒む元慰安婦らは、安倍首相をはじめ、日本政府が真に謝罪していないとして反発を強めている。

ソウルの日本大使館前に立つ少女像の移転は、韓国政局の不安定化でさらに難しくなったとみられている。釜山でも、市民団体らが日本総領事館前に少女像を設置しようとして混乱している。

この問題が象徴するように、日韓の心が通い合わないと根本的な解決は図れないことを、双方が改めて認識すべきである。
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2016年12月29日

[産経新聞] 【主張】真珠湾での慰霊 平和保つ同盟を確認した (2016年12月29日)

■靖国を参拝し「訪問」報告せよ

「和解の力」に基づく日米同盟の絆の強さを発信した意義は大きい。緊密な同盟こそ地域安定の礎となるものだ。その抑止力を一層高めていくことが重要である。

日米戦争発端の地となったハワイ・真珠湾で、安倍晋三首相と米国のオバマ大統領が肩を並べ、戦争で亡くなった人々を慰めたことを素直に喜びたい。

日米それぞれの国の戦没者、および戦災で亡くなった人々に対し、敬意と哀悼の誠をささげたのである。

《対中国の抑止力を築け》

75年前の真珠湾攻撃以来、両国の首脳がそろってこの地を訪れたのは初めてのことだ。

安倍、オバマ両氏は不戦の誓いと日米和解の意義を強調し、アジア太平洋地域と世界の平和と発展のためという同盟の役割を再確認した。

この地域における最大の不安要因は、軍事的に台頭した中国の脅威である。慰霊に先立つ首脳会談で、中国の空母が西太平洋へ初めて進出したことが話題となり、その動向を注視すべきだとの認識で一致した点にも象徴される。

会談では、南シナ海や東シナ海における中国の行動を念頭に、太平洋とインド洋を「自由で開かれた海域」として維持するためのインド、オーストラリアとの協力を申し合わせた。北朝鮮の核・弾道ミサイル開発問題で連携していくことも確認した。

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今後、具体策を講じるのは、安倍首相と来年1月に就任するトランプ次期大統領の役割となる。日米の協力を継続、強化していかねばならない。

オバマ大統領は演説で、日米同盟について「新たな世界大戦を防ぎ、国際秩序の強化に貢献している」と評価した。同盟が揺らぐことがあれば、大規模な戦争に発展する危機を招来しかねない、ということである。

安倍首相は、戦争の惨禍を二度と繰り返してはならないとの「不動の方針」を強調した。同盟を強めるのは、戦争を回避することそのものであるといえよう。

安保関連法や防衛力の整備は、日米同盟と自衛隊を充実させ、戦争を抑止する。平和への道としての努力であることを、内外に説明していく必要がある。

それは、首相が語った「世界を覆う幾多の困難に立ち向かう希望の同盟」の実現に不可欠だ。

今回の真珠湾訪問とオバマ大統領の広島訪問は連動するものではない。これら2つの訪問によって日米が初めて和解したわけではない点を指摘しておきたい。

両国は、とうに和解している。法の支配や民主主義などの基本的な価値観を共有してきた。

首相の演説に直接的な謝罪がなかったとして、問題視するのもおかしい。「謝罪ではなく慰霊のため」の訪問だからだ。菅義偉官房長官が「米国と協力し、世界の平和と安定に貢献していくことを伝えた」と、その意義を語ったのは妥当な判断だ。

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《「寛容」が「憎悪」に勝る》

成熟した関係にある両国は、憎悪ではなく寛容の心を持つ。だからこそ、広島でもハワイでも相手に謝罪を求めなかった。

そもそも、戦争をめぐる日米の歴史観は重なり合わない。真珠湾攻撃にしても、米国は「屈辱の日」と位置づけてきた。日本にとっては、自存自衛のため大きな戦果を挙げた戦いだ。

思想の自由や言論の自由がある民主主義の国同士として、当然である。欧米のメディアも、今回の真珠湾訪問をおおむね好意的に報じている。

これに対し、中国外務省の報道官は「侵略の歴史を深く反省すべきだ」と日本の謝罪を求めた。自国の歴史認識を言い張り、謝罪せよと求めてやまない。

中国の江沢民国家主席(当時)は1997年の訪米時、わざわざハワイに立ち寄り真珠湾で献花をした。日本を米中共通の敵と印象付けようとしたからだ。

力による現状変更をねらう中国にとり、日米同盟は大きな障害物となる。今後も歴史問題を用いて日米分断を図ってくることに備える必要がある。

ここで安倍首相には、靖国神社参拝の再開を改めて求めたい。吉田茂首相(当時)はまだ占領中の昭和26年10月、サンフランシスコ平和条約締結を戦没者に報告するため靖国を参拝した。真珠湾訪問も十分報告に値しよう。
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[東京新聞] 首相、真珠湾で慰霊 和解の力、アジアにこそ (2016年12月29日)

安倍晋三首相が真珠湾を訪問し、先の大戦の犠牲者を慰霊した。歴史的な訪問だが、演説で言及した「和解の力」は、アジア諸国にこそ示すべきである。

米ハワイ州オアフ島の真珠湾。青く、波光きらめくこの入り江で七十五年前、旧日本軍の奇襲攻撃によって、苛烈な太平洋戦争の戦端が開かれた。

首相がオバマ米大統領とともに訪れた「アリゾナ記念館」は、この攻撃で撃沈され、海底に横たわる戦艦アリゾナの上に立つ。艦内には約九百人の遺体が残され、燃料の油が今も浮かび上がる。荘厳な空気の漂う慰霊の空間である。


◆記念館には初の訪問
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日米両首脳は、戦死した米兵らの名前が刻まれた大理石の壁に向かって花をささげ、黙とうした。

真珠湾には一九五〇年代、吉田茂、鳩山一郎、岸信介の三首相が訪れているが、六二年に完成した記念館を訪問した現職首相は、安倍首相が初めてだ。

記念館の完成後、長きにわたって日本の首相による訪問が実現しなかったのは、訪問が「謝罪」につながることを懸念する、日本国内の一部にある世論への配慮があったからにほかならない。

今回の訪問でも首相官邸が「謝罪のためではない」(菅義偉官房長官)と繰り返さざるを得なかったのは、その証左であろう。

首相が保守層を政権基盤とし、高い内閣支持率を維持している政治状況だからこそ、記念館への訪問を可能にしたこともまた、現実である。

首相の祖父は東条英機内閣の商工相で、開戦の詔書に副署した、のちの岸首相だ。その親族で、現職首相でもある安倍氏が、七十五年を経て開戦の地を訪れ、犠牲者に哀悼の誠をささげたことは、かつて敵国同士だった両国の「和解の力」を示すものではある。


◆謝罪、反省の言葉なく
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より重要なことは、首相が開戦の地で何を発信したかである。

首相は記念館を望む埠頭(ふとう)で演説し、「戦争の惨禍は、二度と繰り返してはならない。私たちはそう誓いました」「戦後七十年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たち日本人は静かな誇りを感じながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります」と述べた。 専守防衛に徹し、二度と軍事大国にならないという日本の平和主義は戦後日本を貫き、国際社会の信頼と尊敬を勝ち得てきた「国のかたち」である。開戦の地で、不戦をあらためて誓う意味は重い。

ただ、首相の演説は、かつて激しい戦火を交えた両国が「歴史にまれな、深く、強く結ばれた同盟国」になった意義を強調することに重きが置かれ、反省や謝罪の言葉はなかった。

不戦の誓いは、無謀な戦争に突入して、国内外に多大な損害を与え、日本人だけで三百十万人の犠牲者を出した、先の大戦に対する痛切な反省に基づいていると考えるのが一般的だろう。

首相は戦後七十年の節目だった昨年四月、米議会上下両院合同会議での演説で「戦後の日本は、先の大戦に対する痛切な反省を胸に、歩みを刻みました」と語った。

昨年八月に発表した戦後七十年の安倍談話でも、戦後五十年の村山談話や戦後六十年の小泉談話に盛り込まれた「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「心からのおわび」の文言を使っている。

首相が真珠湾での演説で反省や謝罪に触れなかった背景には、後の世代に謝罪を続ける宿命を負わせないという意図があるのだろうが、不戦の誓いが、先の大戦に対する痛切な反省に基づいているのなら、こうした言葉にも言及すべきではなかったか。

さらに、真珠湾攻撃は日米戦争の戦端ではあるが、三一年の満州事変に始まる「十五年戦争」の一部にすぎない。

日米開戦時点ですでに中国大陸への侵攻は続いており、真珠湾攻撃と同日にはアジア・太平洋各地域への攻撃を始めている。

日本が真に和解すべきは、安全保障や経済ですでに深い関係がある米国ではなく、中国をはじめとするアジア諸国だろう。

首相は、米国との和解に注いだ政治力と政治的資源を、アジア諸国にも同様に注ぐべきである。


◆憎悪の連鎖断つため
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先の大戦終結から七十一年。戦争の惨禍は、いまだ世界から消えず、憎悪が憎悪を招く連鎖は、なくなっていないのが現実だ。ヨーロッパでは難民排斥のナショナリズムも高まっている。

「寛容の心、和解の力を、世界はいまこそ必要としている」という首相の主張には同意したい。

憎しみ合い、戦火を交えたかつての敵国同士の首脳が、肩を並べて寛容の大切さと和解の力を訴える。その姿が国際社会の範となるのなら、せめてもの救いである。
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[毎日新聞] 首相の真珠湾訪問 和解を地域安定の礎に (2016年12月29日)

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日系人として初めて米上院議員になった故ダニエル・イノウエさんは、17歳のとき、故郷ハワイで真珠湾攻撃の日を迎えた。その情景を自伝に書き残している。

「訓練飛行じゃない。パールハーバーが日本軍に爆撃されている」とラジオから流れる怒鳴り声を聞いたとき、「日系アメリカ人は一大恐怖に襲われた」という。

イノウエさんは、米陸軍の日系2世らの部隊である第442連隊に志願して欧州の激戦地で戦い、右腕を失う。終戦後、ハワイに戻り、民主党の下院議員、上院議員となった。


日米関係の成熟を示す
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「旭日をつけた一番機がパールハーバーの上空に姿を見せた瞬間に、2世の背をピシッと打った目に見えない十字架」を感じ、米国人としての忠誠心を示すために戦争協力に打ち込まざるを得なくなったと、生涯を振り返っている。

安倍晋三首相がオバマ米大統領とともに、太平洋戦争の戦端が開かれたハワイ・真珠湾を訪れて、戦没者を慰霊した。戦争は、多くの人たちの人生を一変させた。とりわけ日系人は、自らのルーツである日本との戦争でつらい日々を味わうことになったが、イノウエさんはそれを乗り越え日米の懸け橋となった。

戦後、日米両国は安保条約を結び同盟国となった。しかし、米国にとっては真珠湾への奇襲攻撃や米兵捕虜の扱いが、日本にとっては広島、長崎への原爆投下、日系人の強制収容などが、両国関係の歴史に刺さったトゲのようになってきた。

その傷痕を癒やし、日米の和解の歴史に新たなページを開こうと、オバマ氏が5月に広島を現職の米大統領として初めて訪問し、それを引き継ぐようにして、首相が真珠湾を訪問したことを評価したい。

首相の真珠湾訪問によって、日米間に戦争をめぐるわだかまりがなくなるわけではない。和解プロセスは今後も続けていかなくてはならない。それでも同じ年に、両首脳が太平洋戦争の重要な場所を互いに訪問したことは、象徴的な意味を持つ。

日米開戦から75年。両首脳が真珠湾に並んで立つことにより、かつての敵国が和解の道を歩み、強固な同盟関係を築いたことを、両国の人々だけでなく国際社会にも示した。

首相が真珠湾で行った演説のキーワードは、「寛容の心」と「和解の力」だった。米国の寛容の心が日米に和解の力をもたらし、激しい戦争を戦った両国が歴史的にもまれな同盟国になったという認識を示した。

大統領もこれに呼応するような演説をし、「最も憎しみあった敵同士でも、最も強固な同盟国になることができる」と語った。

両首脳が演説の中で、今の国際情勢への強い危機感を共有したことも、日米同盟の成熟を感じさせた。

首相は「憎悪が憎悪を招く連鎖はなくなろうとしない」と語った。

大統領は「憎しみが燃えさかっている時でも、内向きになる衝動に抵抗しなければならない。自分たちと違う人々を悪魔のように扱う衝動に抵抗しなければならない」と訴えた。これはトランプ次期政権を意識したものでもあろう。

ただ、首相の演説には、もの足りない面もある。


乏しいアジアへの視線
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首相は「戦争の惨禍は二度と繰り返してはならない」と不戦の誓いをした。では、なぜ日本人だけで約300万人の死者を出すような無謀な戦争を防げなかったのか。過去の戦争に対する認識が語られなかったのは残念だ。

もう一つは、アジアへの視線が見られなかったことだ。昨年の米議会演説や戦後70年談話に盛り込まれたアジア諸国に対する戦争の加害者としての視点はなかった。

おそらく首相は、戦後70年から真珠湾訪問までで「戦後」に一区切りをつけ、「未来志向」で外交を展開したいと考えているのだろう。

しかし、満州事変以降の中国侵略の拡大が、やがて日米開戦につながった経緯や、それらに先立つ韓国の併合について、首相がどういう認識を持っているかは、国のあり方の基本にかかわる問題だ。

首相は、未来を語るうえで、歴史を謙虚に顧み、反省を踏まえる姿勢を示すべきだったのではないか。

今回、首相の真珠湾訪問が実現する環境が整うまでには、日米両国の先人たちの長年の努力の蓄積があったことも忘れてはならない。

たとえば、真珠湾攻撃を指揮した山本五十六(いそろく)・連合艦隊司令長官の出身地である新潟県長岡市。山本が最後まで日米開戦に反対したことを地道に説き、4年前にハワイ・ホノルル市と姉妹都市になった。戦後70年の昨夏は米海軍とも協力し慰霊の長岡花火を真珠湾で打ち上げた。今回の式典には、長岡市長も招かれた。

アジア諸国との間でも、こうした関係を積み上げていきたい。

オバマ氏は「受け継ぐ歴史を選ぶことはできないが、そこから学ぶ教訓を選ぶことはできる。その教訓に基づいて将来を描いていくことはできる」と語っていた。

日米両国は、戦争の教訓を忘れず、和解を礎(いしずえ)にして国際秩序の安定に貢献していく責任がある。
posted by (-@∀@) at 12:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 毎日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[朝日新聞] 電通違法残業 他社の話ではすまぬ (2016年12月29日)

広告大手の電通とその幹部が、社員に違法な長時間労働をさせたとして、労働基準法違反の疑いで書類送検された。

今から1年前、新入社員の高橋まつりさん(当時24)が長時間の過重労働が原因で自殺し、労災と認定されたのを受けて、厚生労働省東京労働局などが捜査してきた。高橋さんを含む社員2人に対し、労使で決めた時間外労働の上限を超えて働かせていた疑いである。

電通は、過去にも過労自殺した男性社員を巡って会社側の責任を認める最高裁判所の判決が示されたり、違法な長時間労働で労働基準監督署から是正勧告を受けたりしている。今回の捜査でも、複数の部署で違法な時間外労働や、勤務時間を実際より過少に報告させていた例が見つかっているという。

長時間の残業を当然とする空気が電通の社内全体にあったということだろう。全容の解明を目指して捜査は続く。石井直社長は辞任を表明したが、実効性のある再発防止策を実施することが企業としての責務である。

もっとも、これは電通だけの問題ではない。

今年初めて公表された過労死白書によると、労災認定の目安とされる月80時間を超える残業をした社員のいる会社は約2割にのぼる。すべての会社、すべての職場が自らを省みて、社員に無理をしいていないか点検し、問題があれば改めていかなければならない。

朝日新聞社も今月、社員に違法な長時間労働をさせたとして労基署から是正勧告を受けた。電通事件をはじめ違法残業問題を報じる立場として、自らが問われることを肝に銘じたい。

政府が力を入れる「働き方改革」でも、長時間労働の是正は喫緊の課題だ。厚労省は、違法残業のあった企業名の公表対象を広げることをはじめ、緊急対策を示した。

ただ、従業員を大切にすることは、政府に迫られてではなく、企業が自主的に取り組むべき課題だ。働く時間を抑えるには、仕事の中身やそのやり方を見直すことが欠かせない。

難しい課題だが、従業員の意欲と生産性を高め、企業の収益改善にもつなげうるテーマである。集中して働き、給与もしっかりもらう理想の姿を目指し、まずは経営者が方針を明示して職場で知恵と工夫を重ねたい。

「日本の働く人全ての人の意識が変わって欲しい」

高橋まつりさんの母、幸美さんが、まつりさんの命日に公表した手記の言葉である。社会全体で受け止めねばならない。
posted by (-@∀@) at 11:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする