2016年05月31日

[産経新聞] 【主張】文革から50年 指導部は「評価」見直しを (2016年05月31日)

中国全土を混乱に陥れ10年間に及んだ文化大革命(文革)の開始から50年が経過した。紅衛兵の暴力が吹き荒れ、伝統文化は破壊された。虐殺は一般国民にも及んだ。

中国が日本に向かってよく用いる「歴史を鑑(かがみ)とする」との警句は、まず中国共産党指導部が銘記すべきものであろう。

文革の本質が、最高指導者の毛沢東による権力闘争だったことは今日、すでに明らかだ。

中国でも文革そのものは否定された。一方、毛沢東の責任を追及することは認められない。一説に「死者2千万人」とされる文革の被害実態も、今日まで公表されていない。

これで、文革を引き起こした権力の暴走を阻むことなど望めるのだろうか。文革開始から半世紀の節目の今こそ、指導部は毛沢東の責任論を含め、文革の実態を明らかにすべきである。

真相究明を阻んでいるのは、1981年に共産党が採択した「歴史決議」という公式評価である。文革を強く否定した「決議」も、その発動は毛沢東の「晩年の誤り」にすぎないとして、究明の道を閉ざした。

文革の再発防止に向けて、中国が取り組むべき目標は、党の権威保護を優先したこの「決議」の見直しをおいて他にないはずだ。

だが、党はこのほど機関紙「人民日報」の論評を通じ、「決議」の「揺るぎない権威」を再確認し、文革議論の再燃を封じた。一切の議論を認めないというのは、身勝手な「文革隠し」である。

文革で失脚したトウ小平は、最高実力者となった後、個人崇拝を禁じ、集団指導体制を進めた。

習近平政権の下でこの取り組みは守られているだろうか。

習近平国家主席をたたえる歌や美談の数々は、文革中の毛沢東礼賛を彷彿(ほうふつ)とさせる。権力の集中を急ぐあまりの過剰な権威づけは、時代錯誤である。

習政権の発足後、「反腐敗」を掲げた大物政治家らの摘発が相次いだ。最近も、胡錦濤前国家主席の側近だった令計画・前政治協商会議副主席が収賄罪で起訴された。汚職はむろん許されないが、政敵ばかりを狙う摘発は、権力闘争としか受け取られまい。

文革中に苦労した経験を持つからこそ、習氏には毛沢東時代を思わせる権力集中を捨て、文革の公式評価を見直してもらいたい。
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[産経新聞] 【主張】消費増税の再延期 首相は国民に説明つくせ (2016年05月31日)

安倍晋三首相が政府与党の幹部と相次いで会談し、来年4月の消費税増税を2年半再延期する方針を示した。

国内景気は力強さを欠いている。このまま予定通りに増税すれば、デフレ脱却が危うくなる。そう判断したのであれば、ひとつの選択肢だ。

ただ、その前提は、増税できる経済環境を作るという約束を果たせなかったことを首相が認め、その原因を明確に説明することだ。同時に、アベノミクスの足らざる部分を具体的にどう補強するかを示さねばならない。

成長戦略や持続的な社会保障制度の構築は万全だったのか。

これらに向き合わず、再延期の理由を海外経済のリスクに求めるばかりでは、国民の理解は得られまい。それだけではなく、経済再生の処方箋も誤りかねない。首相には丁寧に説明を尽くしてもらいたい。

首相は伊勢志摩サミットで、世界経済はリーマン・ショック前に似た状況だと語った。新たな危機を回避するため、増税を見送るという理屈立てだろう。

だが、首相の認識は各国首脳の共通理解とはならなかった。国内にも異論は多い。足元がリーマン級の事態だということと、そのリスクが深まっていることは別のものだ。取るべき対応も異なる。もっと整理して説明すべきだ。

増税を見送れば、政府の財政再建目標や社会保障財源の確保などにも多くの課題が残る。確かな道筋を示さねばならない。

政府には平成32年度に基礎的財政収支を黒字化する目標がある。2年半の増税再延期でも、これを維持できる可能性はあるが、30年度の赤字を国内総生産(GDP)比で1%程度に減らす中間目標は放棄せざるを得まい。新たな目標を明示できるのか。

また、政府は増税による税収増の一部を社会保障の充実策に充てるとしてきた。待機児童の解消なども含まれるが、どう代替財源を手当てするのか。

首相は一昨年11月に増税延期を表明した際に「再び延期することはない」と明言した。再延期はその約束を違える重い政治責任を伴うことを忘れてはならない。

個人消費や企業の設備投資に勢いがみられない中で、どう景気を再点火できるのか。政治や税制に対する信頼が損なわれないよう、十分に説明する責務がある。
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[東京新聞] 五輪招致疑惑 臭いものにふたするな (2016年05月31日)

新国立競技場や公式エンブレムを巡る騒動が鎮まった途端、過去の招致活動の不正疑惑に覆われた。二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの正当性さえ失われかねない。日本の誠実さが問われる。

先週、不正疑惑を調べる日本オリンピック委員会(JOC)の調査チームが動きだした。弁護士ら三人から成る。国内外の信頼と期待を揺るがす重大事態である。不退転の決意で臨んでほしい。

もっとも、渦中にあるJOCが自ら選んだメンバーだ。中立公正の立場で真相に迫れるのか疑念も拭えない。調査期限が曖昧なのも気がかりだ。

経緯を振り返ってみよう。

東京五輪の招致委員会から一三年七月と十月、シンガポールのコンサルタント会社ブラックタイディングス(BT)社の口座に計二億二千万円余りが送金された。その間の九月にあった国際オリンピック委員会(IOC)総会で、東京は五輪開催を勝ち取る。

送金先のBT社代表イアン・タン氏は、IOC委員でもあった国際陸上競技連盟前会長ラミン・ディアク氏の息子と親交があるという。招致委からディアク氏側に集票目当てで賄賂が流れたのではないかと、仏検察は見ているのだ。

ディアク氏は、ロシア陸連の組織的なドーピング違反をもみ消す代わりに謝礼をもらったとして訴追されている。BT社は実体のない会社で、この事件でも同じ口座が使われたと指摘されている。

刑事責任の追及は仏検察に任せるとして、JOCの調査チームの最大の使命は、国民の疑問に迅速かつ丁寧に応えることである。

招致委理事長だったJOC会長竹田恒和氏は、コンサルタント契約や報酬支払いの正当性を主張する。しかし、契約上の守秘義務を理由に詳しい説明をしていない。

疑惑資金の財源は、民間からの寄付金や協賛金だったとされるが、いわば国家的事業の誘致に充てたのだ。誰がどんな業務を委ねたのか。金額は適正だったのか。情報を国民に知らせて当然だ。

結果として、招致委とディアク氏側との橋渡しをしたのは広告代理店の電通という。BT社と契約を結んだのは、その実績評価を基にしてのことだ。電通は真相解明の鍵を握る存在と言える。

たとえ契約そのものに違法性がなかったとしても、汚職を疑われた以上、東京五輪の価値はすでに深く傷ついた。夢と希望のスポーツの祭典をうたうのなら、誠実かつ謙虚に対応せねばならない。
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[東京新聞] へイトスピーチ 差別ない社会めざして (2016年05月31日)

特定の人種や民族に対する差別的言動を繰り返すヘイトスピーチ。その対策法が成立した。個人の人権や尊厳を傷つける行為が許されないのは当然である。あらゆる差別がない社会をめざしたい。

「朝鮮人は日本から出ていけ」−。排外的な主張を声高にとなえる団体が、各地でシュプレヒコールをあげる光景は、何とも残念だ。もはや社会現象となり、放置できない事態となっている。差別を受ける当事者にとっては、恐怖そのものだ。国連人種差別撤廃委員会も日本に対応を求めていた。

今国会で成立した同法は、悪質極まるヘイトスピーチを食い止める姿勢を示したものだ。

「不当な差別的言動は許されない」と同法は強い表現で宣言している。ただし、具体的な禁止規定や罰則のない理念法である。どんな抑止効果を発揮するかは未知数だが、人権侵害をなくす一歩となることを期待する。

保護する対象は、適法に日本に居住する「本邦外出身者」とその子孫としたが、アイヌ民族や不法滞在者への差別が野放しになるという指摘があった。そのため、付帯決議で「法が定義する以外、いかなる差別的言動も許されるとの理解は誤り」と盛り込んだ。

「危害を加える旨を告知する」ことなどが差別的言動としたが、「著しく侮蔑する」言動も含まれた。どのような言葉まで対象になるか、わかりづらい点もある。

また、国や自治体には相談体制の整備や、教育、啓発活動の充実を求めてもいる。ただ、街宣車などでのシュプレヒコールそのものを取り締まることはできない。これには、はがゆさを覚える人もいるだろう。

規制法でなく、理念法として誕生したのは、「表現の自由」とのかかわりがあるからだ。公権力がデモなどの表現活動を規制する足掛かりとなる恐れがありうる。

日本では戦前の言論弾圧の歴史から、原則として「表現の自由」の保障に例外を認めてこなかった。だから、本来は言論には言論で対抗する手法が望ましい。ヘイトスピーチにも、そうして対抗し、社会から根絶したい。

既に大勢の市民が反ヘイトの声をあげてデモを行っている。六月上旬に予告される川崎市内でのヘイトデモについても、川崎市議会が断固とした措置を求める要望書を市側に出した。いわれなき差別をなくす努力は、国民一人一人に課されている。
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[日経新聞] 市場機能を傷めぬ株高速取引のルールを (2016年05月31日)

IT(情報技術)の進歩が株式取引の世界にも押し寄せている。今や世界の主要な株式市場では、1秒間に1000回もの売買をコンピューターが自動発注する取引が主流をなす。日本も例外ではなく、東京証券取引所の売買注文の7割前後を、そうした高速取引が占めるもようだ。

2016年初めから株価が乱高下する場面が目立つようになり、高速取引が相場変動を大きくしているのではないか、といった指摘も増えた。そこで金融庁は金融審議会の場で、ITを駆使した株式取引への対応を検討し始めた。必要に応じて新たな規制を導入する可能性もあるという。

市場構造の変化に対応し取引ルールを整備することは必要だ。しかし、株式市場の重要な機能のひとつは自由な取引によって資本を効率的に配分し、経済の活性化に役立つことにある。過剰規制でその機能が損なわれるようなことがあってはならない。

世界の市場監督当局にとって最大の悩みは高速取引の専門ファンドが急増し、活動の実態がとらえにくくなっていることだ。取引業者が破綻し、市場の動揺が瞬時に世界に広がるシステミック・リスクの懸念もある。

そうした事態を避けるため、欧州では2018年から高速取引のファンドに登録制を導入し、リスク管理などを義務づけることにした。米国でも同じような登録制が検討されている。

株式取引のグローバル化を考えれば、日本の市場監督当局が国際的な流れに足並みをそろえるのは自然なことだ。日本の取引ルールが未整備なままでは世界の市場を不安定にさせかねない。

高速取引のファンドは海外に本拠を置いていることも多い。日本の中だけの対応ではおのずから限界がある。金融庁は米欧当局と情報交換を密にし、世界的な視野で高速取引の実態を把握すべきだ。証券取引所と連携し、不正行為があれば迅速に摘発できる体制を整えなければならない。

そのうえで、高速取引を大幅に抑えるような規制が本当に必要かどうか、慎重に考えるべきだ。高速取引には市場に流動性を供給する機能があるとの指摘は多い。過剰規制は流動性を低下させ、円滑な株価形成の妨げになる。投資家や企業など広く市場参加者に不利益が及ぶようなことは避けなければならない。
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[日経新聞] もんじゅの延命にこだわるな (2016年05月31日)

高速増殖炉もんじゅの開発の進め方を検討していた文部科学省の有識者会合が報告をまとめた。いまは日本原子力研究開発機構が運営しているが、ずさんな安全管理が続き、原子力規制委員会が運営主体の見直しを勧告していた。

有識者会合の報告は具体的な運営主体を示さず、産業界や学界など外部の専門家が経営に参加するなど、新組織の要件を示すにとどまった。もんじゅの存続を前提とした内容である。

もんじゅで問われているのは運営主体の問題だけではない。そもそも高速増殖炉は日本にとって必要なのか。長期的な研究開発をどう進め、もんじゅをどう位置づけるかである。残念ながら有識者会合ではそうした議論は聞けなかった。

報告を受け馳浩文科相は「速やかに新組織を決める」と述べた。いまいちど、もんじゅの存廃まで立ち返って判断すべきだ。その際、他省庁や産業界など幅広い層の意見を聞くことも求めたい。

高速増殖炉は発電しながらプルトニウムなどを増やすことができ、計画当初は「夢の原子炉」とされた。だがいまは状況が大きく変わり、将来展望を欠いている。

ひとつは実用化が見通せないことだ。もんじゅは1995年に事故を起こして以降、本格的に稼働していない。炉の冷却にナトリウムを使う技術は難しいうえ、建設費も通常の原発より高くなる。

電力自由化が進み、電力会社同士の競争が厳しくなるなか、もんじゅの後を継ぐ実用的な炉を誰が建設するかも不透明だ。

日本は使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを国内外で48トン持ち、海外からは核兵器の原料になるとの懸念がある。まずはプルトニウムを通常の原発で燃やす計画が着実に進むよう、政府と電力会社が全力をあげるべきだ。

フランスなどは高速増殖炉の実用化を急がず、研究開発に地道に取り組んでいる。日本ももんじゅの延命にとらわれず、長期的な研究計画を立て直すときだ。
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[毎日新聞] 首相の増税再延期 税の議論をゆがめるな (2016年05月31日)

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税と社会保障の将来に大きな影響を与え、これまでの首相の発言ともつじつまが合わない判断だ。

安倍晋三首相は来年4月に予定されていた消費増税を2年半後に先送りする方針を固めた。首相は通常国会の閉幕間際に政府・与党内で調整を急いでいる。

2014年11月18日、増税の1年半延期を決め衆院を解散して民意を問う際に首相は記者会見し、「再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりと断言いたします。必ずや(増税可能な)経済状況をつくり出す」と語っていた。


発言の重みはどこへ
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それが1年半を経て、180度近い方針転換である。首相発言の重みやこれまでの国民との約束はどうなってしまうのか。しかも、その根拠は著しく説得力を欠いている。

第一の問題点は、海外の経済状況に再延期の責任を転嫁しようとしていることだ。

首相は主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で世界経済が「リーマン・ショック前に似ている」との認識を示し、「危機に陥る大きなリスクに直面している」と記者会見で強調した。再延期の判断基準を首相は「リーマン・ショックや東日本大震災のような事態」と説明してきた。増税再延期の地ならしをサミットで図ったとみられている。

だが、首相の認識は、ほかの首脳とは異なる。英仏の両首脳は「危機ではない」と述べていた。サミットの首脳宣言も「新たな危機に陥ることを回避する努力を強化する」との表現であり、首相の言いぶりとは落差がある。

むしろ問題があるとすれば、国内の経済状況の方だろう。デフレ脱却の道筋は見えず、日本経済は本格的な回復に至っていない。

増税できないほど状況がよくないというのであれば、まずはアベノミクスの失敗を率直に認めるべきだ。海外要因を挙げて正当化しようというのでは、議論が逆立ちしている。

第二の問題点は、増税再延期がもたらす社会保障への影響だ。

税率を10%に上げることで、政府は低所得年金受給者への給付金など社会保障の充実に1・5兆円程度をあてる予定だった。子育て支援など「1億総活躍社会」のプランもまとめたばかりだ。保育士や介護士の賃金改善だけでも2000億円規模の財源が必要だが、確保はますます難しくなる。

財政再建への影響も懸念される。国と地方の借金は1000兆円を超え、先進国で最悪の水準だ。政府は「基礎的財政収支の20年度黒字化」を目標としているが、再延期すると達成は一段と厳しくなる。

今回の判断は首相が憲法改正のステップと位置づける参院選直前のタイミングで下された。14年の衆院解散と同様、税制を政権維持の道具に使う構図が繰り返される。

アベノミクスの効果が暮らしに反映されず、多くの国民の生活実感が厳しさを増しているのは事実だろう。毎日新聞の最新の世論調査では10%への引き上げについて66%が先送りに賛成している。

消費税率を2段階で10%に引き上げる道筋は野田佳彦内閣時代の12年、自民、公明、民主による3党合意に基づく。選挙で逆風を呼びやすい増税問題を政争から分離することで、社会保障の安定財源を確保しようとする政治の知恵だった。合意当時の世論調査では、44%の人が関連法の成立を評価している。


政治への信頼を損なう
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それが今、首相は再延期方針を固め、民主党を継承した民進党も来春の増税に反対している。合意の枠組みはもはや実質的に崩壊寸前と言っても過言ではあるまい。

危機的な財政と、急増する社会保障の需要に対処するためには、安定財源が欠かせない。私たちは来春に増税を予定通り実施できる環境整備の必要性を主張してきた。

10%への引き上げと同時に、食料品など生活必需品の税率を抑えるための軽減税率が導入されることが決まっている。低所得者の負担感がある程度、軽減されることが期待されている。

ところが首相は国民に消費税の意義を説くどころか、逆にマイナス面をあおっているようだ。

首相方針通りに増税が2年半延期された場合、実施は19年10月となるため、同年の統一地方選や参院選以降となる。しかも首相の自民党総裁としての任期は延長されない限り18年秋で切れるため、増税時期が任期を越えてしまう。国民の政治への信頼を損ないかねない無責任な対応である。

首相方針は与党内で十分な議論を経ないまま、いきなり示された。麻生太郎副総理兼財務相が首相の方針を聞いて難色を示し、再延期の場合は衆院を解散して民意を問うよう促したのも違和感の表れだろう。

野党は強く反発している。4野党は、再延期は経済失政が原因として首相に退陣を求め、内閣不信任決議案の提出を検討するなど通常国会は最終盤で緊迫している。

国民の生活に大きく影響する消費税に関する基本方針の転換だ。徹底的に議論を尽くすべきだ。
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[読売新聞] 消費増税延期へ 「脱デフレ」優先の説明尽くせ (2016年05月31日)

◆同日選見送りは妥当な判断だ◆

重大な政策変更だ。消費増税延期の理由や、修正を迫られる財政健全化の道筋などを国民に丁寧に説明し、理解を得ることが欠かせない。

安倍首相が、消費増税を2年半延期し、衆参同日選を見送る考えを与党幹部に伝えた。

麻生副総理兼財務相や自民党の谷垣幹事長らとの協議を経て、公明党の山口代表とも会談した。

2017年4月の消費税率10%への引き上げは、19年10月まで先送りする。与党は、一連の首相の判断を受け入れる方向だ。

◆「リーマン級」に違和感

景気の回復は足踏みを続けており、デフレ脱却は道半ばである。特に内需の柱の個人消費は、14年4月に実施した前回の消費増税で落ち込んだままだ。

ここで増税を強行すれば、消費マインドがさらに冷え込む恐れがある。脱デフレによる日本経済再生を掲げる首相が、増税延期を政治決断したのは理解できる。

気がかりなのは、首相が、世界経済の現状を08年のリーマン・ショック時の状況と比較して、増税先送りの必要性を論じていることだ。

確かに、世界経済は、中国をはじめとした新興国経済の減速などの下方リスクを抱えている。先進各国が財政出動を含む政策総動員で牽引(けんいん)する必要がある。先週の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でも、安倍首相の主導で確認された。

だが、世界同時不況が心配されるような状況にあるとの見方は少ない。一時急落した原油価格は回復傾向にある。米国も、景気が上向いたとして、追加利上げのタイミングを計り始めている。

◆アベノミクスの強化を

リーマン・ショックを引き合いに出すことには違和感がある。

首相がこうした見解にこだわるのは、「リーマンや東日本大震災級の出来事がない限り、予定通り増税する」と繰り返してきたためだ。アベノミクスが失敗したとの批判に反論する狙いもあろう。

アベノミクスが、日銀による金融緩和などで円高・株安を修正し、長く低迷を続けた日本経済を浮揚させたのは事実だ。

アベノミクスを一層強化し、成長基盤を底上げしようとする政策の方向性は間違っていない。

安倍政権が目指す「経済の好循環」の実現が遅れている状況や、世界経済の下振れが国内経済に与える影響などについて、率直に語ることが大切だ。

増税の先送りで生じる時間を有効活用して、今度こそ、消費増税を行える「強い経済」を確かなものにしたい。

首相は、増税を先送りした場合も、20年度に基礎的財政収支を黒字化する財政健全化目標は堅持する方向だという。高い成長を前提とした現行の計画でも、6・5兆円の赤字が残る。

10%への引き上げによる増収分で予定されていた社会保障の充実策の財源に、穴が開いてしまうという問題もある。

◆なぜ2年半の先送りか

これらの課題にどう対応するのか。具体策が求められる。

増税時には、家計の痛税感を和らげるため、食品などへの軽減税率導入が不可欠だ。円滑な導入への準備は怠れない。

安倍首相は、増税延期の期間を2年半とすることについても、きちんと説明せねばなるまい。

19年秋には翌年の東京五輪の特需が始まるが、その前の増税には懸念があるのだろう。

18年9月末には、首相の自民党総裁任期が切れる。さらに、19年春に統一地方選、夏には参院選が予定される。増税時期を19年10月にすることには、これら重要選挙への影響を小さくすることが目的だとの見方がある。

首相は14年11月、消費増税を17年4月へ延期する是非を問うとして、衆院解散を断行した。

このため、与党内には、増税を先送りする場合は、衆参同日選に踏み切るべきだとの声もある。

国政選の機会がなかった前回と異なり、今回は7月に参院選が控える。自公両党は、改選議席の過半数の確保を目指すことで、民意を問うことができよう。

衆院選には、与党で3分の2の議席を割り込むリスクもある。

首相が同日選の見送りを決めたのは、妥当な判断と言える。

民進、共産など野党4党は党首会談で、31日に内閣不信任決議案を提出することを決めた。安全保障法制の制定や「経済失政」を批判し、首相退陣を求めている。

民進党も増税の2年先送りを主張している。与党は、淡々と不信任決議案を否決すればよい。
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[朝日新聞] 消費増税の再延期 首相はまたも逃げるのか (2016年05月31日)

来年4月の予定だった10%への消費増税を2年半先送りし、実施は19年10月とする。

安倍首相が、政府・与党幹部に増税延期の方針を伝えた。もともと15年10月と決まっていたのを17年4月に延ばしたのに続き、2度目の先送りである。

なぜ19年10月なのか。

首相の自民党総裁としての任期は18年秋まで。首相在任中は増税を避けたい。そして19年春?夏に統一地方選と参院選がある。国民に負担増を求める政策は選挙で不利になりかねない。だから選挙後にしよう――。

そんな見方が、与党内でもささやかれている。

■「一体改革」はどこへ

私たち今を生きる世代は、社会保障財源の相当部分を国債発行という将来世代へのつけ回しに頼っている。その構造が、1千兆円を超えて国の借金が増え続ける財政難を招いている。だから、税収が景気に左右されにくい消費税を増税し、借金返済に充てる分も含めすべて社会保障に回す。これが自民、公明、民主(当時)3党による「税と社会保障の一体改革」だ。

国民に負担を求める増税を、選挙や政局から切り離しつつ、3党が責任をもって実施する。それが一体改革の意味だった。選挙に絡めて増税を2度も延期しようとする首相の判断は、一体改革の精神をないがしろにすると言われても仕方がない。

首相は1度目の増税延期を表明した14年11月の記者会見で、次のように語っていた。

「財政再建の旗を降ろすことは決してない。国際社会で我が国への信頼を確保し、社会保障を次世代に引き渡していく安倍内閣の立場は一切揺らがない」

「(増税を)再び延期することはないと断言する」

この国民との約束はどこへ行ったのか。

■「リーマン」とは異なる

首相が繰り返す通り、リーマン・ショック級や東日本大震災並みの経済混乱に見舞われた時は、増税の延期は当然だ。

足元の景気は確かにさえない。四半期ごとの実質経済成長率は、年率換算でプラスマイナス1%台の一進一退が続く。一方、リーマン直後の成長率はマイナス15%に達した。大震災時の7%を超えるマイナス成長と比べても明らかに異なる。

それでも消費増税を延期したい首相が、伊勢志摩サミットで持ち出したのが「世界経済が通常の景気循環を超えて危機に陥る大きなリスクに直面している」というストーリーだ。

アベノミクスは順調だ、だが新興国を中心に海外経済が不安だから増税できない、そう言いたいのだろう。これに対し、独英両国などから異論が出たのは、客観的な経済データを見れば当然のことだ。

一方、野党は増税延期について「アベノミクスが失敗した証拠だ」と首相に退陣を求める。だがアベノミクスの成否を論じる前に、それが日本経済への処方箋(せん)として誤っていないか、改めて考える必要がある。

一国の経済の実力を示す指標に「潜在成長率」がある。日本経済のそれはゼロパーセント台にすぎないと政府も認める。

潜在成長率を高めるには、どんな施策に力を注ぐべきか。

まず保育や介護など社会保障分野だ。税制と予算による再分配を通じて、支えが必要な人が給付を受けられるようにする。保育士や介護職員の待遇を改善し、サービス提供力を高めていく。負担と給付を通じた充実が、おカネを循環させて雇用を生むことにつながる。

温暖化対策や省エネ、人工知能開発など、有望な分野への投資を促す規制改革も大切だ。

■アベノミクス修正を

これらの施策は短期間では成果が出にくいから、金融緩和や財政で下支えする。その際に副作用への目配りを怠らない。それが経済運営の王道だろう。

だがアベノミクスは「第1の矢」の異次元金融緩和で物価上昇への「期待」を高め、それをてこに消費や投資を促そうとしてきた。金融緩和を後押しする「第2の矢」である財政では、大型補正予算の編成など「機動的な運営」を強調する。

首相はサミットを締めくくる記者会見で「アベノミクスのエンジンをもう一度、最大限ふかしていく」と強調した。

しかし金融緩和の手段として日本銀行が多額の国債を買い続ける現状は、政府の財政規律をゆるめる危うさがつきまとう。補正予算も公共事業積み増しや消費喚起策が中心では、一時的に景気を支えても財政悪化を招き、将来への不安につながる。

首相がいまなすべきは金融緩和や財政出動を再び「ふかす」ことではない。アベノミクスの限界と弊害を直視し、軌道修正すること。そして、一体改革という公約を守り、国民の将来不安を減らしていくことだ。

選挙を前に、国民に痛みを求める政策から逃げることは、一国を率いる政治家としての責任から逃げることに等しい。
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2016年05月30日

[産経新聞] 【主張】英国とEU 離脱の不利益考え選択を (2016年05月30日)

英国の欧州連合(EU)離脱は、世界経済の大きなリスク要因だ。伊勢志摩サミットで示された先進7カ国(G7)の共通認識である。

離脱か残留かを問う国民投票は6月23日に実施される。仮に離脱が決まれば、金融市場の混乱は避けられまい。何よりも英国自らが被る痛手は大きいはずだ。英国民には、選択がもたらす結果を見つめ、賢明な判断を下すことを望みたい。

首脳宣言には、英国のEU離脱は「成長に向けたさらなる深刻なリスク」と盛り込まれた。国際貿易や投資にも影響し、「雇用を反転させる」とも指摘した。

EU残留を主張するキャメロン英首相を、後押しするものだ。会議では、安倍晋三首相らG7首脳からも、残留を支持する発言が相次いだ。

英財務省によると、EU離脱後の英国は景気後退に陥り、2年後の経済成長率は残留の場合を3・6?6・0ポイント下回るという。

域内2位の経済大国を失うEUにも深刻な打撃で、欧州市場の拠点として英国に進出した日本企業にも影響は大きい。

EU離脱論が、英国だけのものではないことも事実だ。来年大統領選を控えたフランスの極右、国民戦線(FN)のルペン党首は、離脱の是非を問う国民投票の実施を公約としている。

財政負担や移民問題に伴うEUへの不満は、いくつかの国に共通している。離脱の「連鎖」も懸念される。

英国内では、スコットランド独立の機運が再び高まるだろう。独立派は、EU残留を求めている。国内に分離・独立運動がくすぶる欧州各国への波及も心配だ。

欧州統合の試みは2度の大戦の反省から始まった。平和と繁栄のため民族、文化の違いを超えて合意点を見いだしてきた。その努力を無駄にしてはなるまい。

中東では暴力的過激主義がはびこり、中国、ロシアは力による現状変更を進めている。G7は、テロ対策、難民問題の解決が喫緊の課題であることを確認した。

いまこそ、欧州の強い結束を国際社会は求めている。EUが団結し、諸問題の解決に重要な役割を果たすためにも、英国は欧州のリーダーとして、EUにとどまるべきだ。キャメロン首相には、丁寧な説明で国民を残留支持へ導いてもらいたい。
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[産経新聞] 【主張】南海トラフ地震 大震法を直ちに撤廃せよ (2016年05月30日)

南海トラフ地震の想定震源域で、プレート(岩板)境界に蓄積されたひずみの分布状況が、海上保安庁の海底観測で明らかになった。

東海地震の直前予知を担う地震防災対策強化地域判定会の平田直会長は「想定の見直しが必要」との見解を示した。

これを、国の南海トラフ地震対策を抜本的に見直す機会ととらえたい。東海地震だけを対象として防災対策を定めた大規模地震対策特別措置法(大震法)は直ちに撤廃すべきである。

南海トラフは駿河湾から日向灘にかけて延びる浅い海溝で、マグニチュード(M)8?9級の大規模地震が30年以内に起きる確率は70%とされる。東海地震の想定震源域は、その東端に位置する。

大震法は、昭和53年に制定された。東海の震源域が単独でM8級の大地震を起こすとの想定で、直前予知を前提とした警戒宣言の発令などの対策が定められた。

予知に関しては、平成25年に中央防災会議が「確度の高い予測は困難」との見解を示した。防災対応は予知に依存しない方向に軌道修正が図られたが、東海地震は今でも「直前予知が可能な唯一の地震」とされている。

大震法の最大の欠陥は、東海地震の単独発生が法律で規定されていることだ。

大震法が制定された当時、昭和東南海、南海地震(昭和19、21年)のときに動かなかった東海の震源域で、大地震の発生が懸念されるという学説には、一定の説得力があった。

しかし、次の南海トラフの活動で「東海の震源域だけが動く」と予測する地震学者は、今はおそらくいない。歴史的にも、東海地震は東南海、または東南海・南海地震と一緒に起きており、単独で発生した例はない。

例えば、東海地震の前兆現象が観測された場合、どう備えればいいのか。法律が予知の対象とするのは東海地震だけでも、東南海、南海地震との連動を想定しなければならないことは明らかだ。

防災の観点から、東海地震の単独発生を想定した大震法は不要なだけでなく、被災地対応の支障にさえなる。

南海トラフ巨大地震では最悪で32万人もの死者が想定される。国の存続にもかかわる地震防災で、「邪魔な法律」をこれ以上、存続させてはならない。
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[東京新聞] 週のはじめに考える たそがれても輝く国に (2016年05月30日)

伊勢志摩の“祭りの後”には一層、先進国の「たそがれ」が際立ちます。日本を先頭に進む高齢化、人口減…。衰えゆく先の大きな時代の変わり目です。

人気映画『ALWAYS三丁目の夕日』に出てくる「氷屋さん」を覚えていますか。

建設中の東京タワーをバックに高度成長期が始まったころの下町人情劇。ある日、主役一家の自動車修理業、鈴木家に当時の「三種の神器」の一つ、電気冷蔵庫が届きます。氷塊で冷やす旧式冷蔵庫からの買い替えでした。

氷屋さんはそれまで、氷塊の入れ替えで鈴木家にも出入りしていました。後日、用済みで裏庭に出されていた旧式冷蔵庫を目撃するわけです。路地から塀越しにしばらく見詰めた後、ふっとため息をつき自転車で去っていくシーン。時代の変わり目に漂う哀愁を、静かに描写していました。

この時代、その転機を鮮やかに描写した流行語もありました。

「もはや『戦後』ではない」

一九五六年経済白書の結語に刻まれた時代の惹句(じゃっく)です。


◆先頭走者として
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「…我々はいまや異なった事態に当面しようとしている。回復を通じての成長は終わった。今後の成長は近代化によって支えられる」。それはまさに、日本経済が戦後の復興を経て「先進国」の領域に踏み出す“宣言”でした。

日本はその後、六四年に経済協力開発機構(OECD)加盟。最先進国グループのサミットにも、七五年の第一回会議から参加し、文字通り「先進国」の中の先頭走者として時代を極めていったのでした。

しかしながら、その勢いも無論永遠ではあり得ません。

高度成長も七〇年代前半には峠を越え、九〇年代初めから今に至る低成長です。この先も、成長力の衰えは抗(あらが)えない歴史の現実でしょう。遅かれ早かれ他の先進国にも共通の現実です。そして日本は今や、その衰えの先頭走者です。

成熟した先進国が軒並み成長に行き詰まるのはなぜか。

いろいろ言われますが、先頭を走る日本で大きいのは、やっぱり「高齢化」でしょうか。

先進国の豊かさゆえに国民が長寿になる。それ自体は本当に幸せなことです。問題はむしろ、それによって働く現役世代の人口割合が減ることの裏返しでしょう。消費の担い手でもある働く世代が劣勢となれば、新たな需要も生まれにくくなる。経済成長が高齢化につれて行き詰まる流れです。


◆成長がなくとも
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国もまた高齢化によって税収が減る半面、社会福祉などの負担が重くなれば、次世代への借金は膨らむ一方です。何とか需要を生み出そうと金融政策に頼れば、弱肉強食の市場で富の偏在を招き、ひときわ格差を広げます。

国の借金や格差で次世代に希望が開けないなら、人々はあえて子どもを持とうとも思わない。こうして高齢化は「少子化」「人口減」も加速させながら、相乗的に成長力は衰えていくのでしょう。

伊勢志摩サミットの経済討議は従来の成長路線に沿った短期策に終始しました。でも、この衰えの現実を踏まえれば、先進各国は目先の成長回復を追うだけでなく「たそがれ」後の先行きにも目を向け直す時ではなかったか。

例えばこの先、成長がなくとも一定程度は豊かな社会にと、目標を切り替えてみるのです。とりわけ日本がたどる「国の老い方」は、以後の世界モデルにもなりえます。ただ、欧米の後を追った上り坂と違って、今度は人類未踏の下り坂です。まだよく分かっていないのです。その先にどんな光景が待つのか。

一つのヒントです。恐らく世界一級の情報機関である米国家情報会議(NIC)の元分析・報告部長が著しました。二〇三五年の近未来予測『シフト』(マシュー・バロウズ、訳・藤原朝子、ダイヤモンド社)には、残念ながら影の薄くなった日本が登場します。

「日本は『過去』の国になる」

そんな小見出しです。二十年後の日本は世界で「中の上」程度のパワーを維持する。ただし「大規模な構造改革を実行すれば」の条件が付く。それは例えば、退職年齢の引き上げや移民受け入れなど「より破壊的な改革」です。


◆未知の痛み分担
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仮にそうなら“破壊”に伴う痛みもまた、未体験の激しさということになるのでしょう。国民的な覚悟も必要です。

そういえば五六年白書にも「覚悟」の一節がありました。近代化で中小企業や農業が一時的に抱く矛盾は「国民相互にその力に応じて」分担するしかない−と。

衰えた先に未知の痛みも分け合って、新たな価値観で輝き続ける国へと時代を開けるか。再び日本人の底力が問われます。
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[日経新聞] 種子メジャーが起こす再編 (2016年05月30日)

遺伝子組み換え技術に強みを持つ米国のモンサントやデュポン、スイスのシンジェンタは種子メジャーとも呼ばれる。その3社が世界的な再編劇を引き起こしている。増え続ける世界の食糧需要を満たすために、高度な技術が求められているからだ。

ドイツの医薬・農薬大手のバイエルはモンサントに対し、総額620億ドル(約6兆8千億円)の買収計画を提示した。シンジェンタは中国化工集団の傘下に入ることで合意し、デュポンは米ダウ・ケミカルとの経営統合を決めた。

70億人を超えて急増する世界人口と途上国の経済発展で食糧需要は拡大を続ける。それを賄うには農業技術の進歩が欠かせない。砂漠化などで農地の拡張は難しく、栽培面積あたりの収量を飛躍的に伸ばす必要があるからだ。

過去50年間、収量の伸びを支えたのは化学肥料の普及や品種改良だった。今後のけん引役と目されるのが遺伝子組み換え技術だ。

遺伝子組み換え農産物は2015年時点で世界28カ国で栽培され、作付面積に占める組み換え品種の比率は大豆で8割を超す。組み換え農産物がこれだけ普及した理由は、除草剤散布などの手間や害虫被害を軽減できるからだ。栽培面積あたりの収量増加も期待でき、農家の採算は向上する。

頻発する異常気象への対抗策として、干ばつなどに強い品種の開発も進んでいる。ただ、研究開発にかかる費用は増大しており、それも再編が相次ぐ要因となった。

組み換え農産物に対しては日本や欧州を中心に安全性への懸念が強いことも事実だ。消費者の選択肢を確保するために通常の農産物と分別して流通する仕組みや、組み換え農産物の使用を表示する制度は維持する必要がある。農薬とともに自然環境への影響は避けなければならない。

消費者の不安や環境への影響を防ぎながら、いかに食糧需要を賄うか。日本企業も植物工場などの得意分野を生かし、世界の食糧問題克服に協力してほしい。
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[日経新聞] 魅力ある電力市場を息長く育てよう (2016年05月30日)

電力小売りが4月に全面自由化されてほぼ2カ月がたった。一般家庭や小規模店舗は電気の購入先を自由に選べるようになり、電気とガスのセット販売など、これまでにない売り方が話題を集める。

だが小売りに参入した新規事業者への切り替えが期待ほど進まなかったり、地域によって切り替えた家庭の数にばらつきがあったりするなどの課題も見えてきた。

電力自由化に期待されるのは、多様な事業者による競争を通じて電気料金を抑え、サービスの質を高めることだ。自由化市場を息長く育てるため、その魅力を高める努力を続けていかねばならない。

20日時点で全国の約95万の家庭や店舗が既存の電力会社から新規事業者に契約先を変えた。対象となる全契約数の1.5%にとどまる。このうち首都圏と関西圏の消費者が8割超を占める。北海道では4万超の家庭や店舗が新規事業者へ変えたが、北陸や中国地方はそれぞれ約2千件にすぎない。

一方、4月末時点で約135万の家庭や店舗が従来の電力会社からの購入は変えないものの、自由化にあわせて導入した時間帯別などの新メニューに変えた。中国電力の供給区域では7万超の家庭が中国電との新契約に切り替えた。

政府は電力自由化の目的に消費者の選択肢の拡大を掲げる。新規事業者への切り替え数の伸び率は週を追うごとに鈍りつつある。このままでは失速しかねない。切り替えを阻んでいる理由があるなら、手を打つ必要がある。

電気は日々の生活を支えるインフラだ。消費者にすれば電力会社を変える不安も小さくないだろう。政府は電力会社を変えても停電の起こりやすさに差はないことなど、自由化への理解を促す活動を粘り強く続けることが大切だ。

新規事業者が既存の電力会社と料金やサービスを差別化できていないことも、多くの消費者が様子見を続けている理由ではないか。

売り方やサービスに新規事業者がもっと知恵を絞ることが求められる。そのうえで販売用の電力を調達する卸電力市場を使いやすくするなど、政府が競争を促す環境を整えることが急務である。

イノベーションを促すきっかけにもしていきたい。IT(情報技術)を使い電力需給の逼迫時に家庭や企業に節電を促し、その分の料金を割り引いたり、節電する能力を売買したりする仕組みの普及を後押しすることも必要だろう。
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[毎日新聞] 野党の候補統一 安倍1強にどう挑むか (2016年05月30日)

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今夏の参院選で民進党や共産党など4野党が改選数1のすべての「1人区」で候補を統一する見通しとなった。自民党候補と対決する。

安倍晋三首相が憲法改正実現のステップとするなど、参院選の位置づけは重い。現状で野党がバラバラに戦えば1人区で苦戦を強いられ「自民1強」の維持に結果的に手を貸す可能性がある。候補統一は戦術としては理解できる。

民進、共産、社民、生活の4野党は32ある「1人区」で候補を調整している。候補者は無所属と民進党がほぼ半数ずつで、香川では共産党候補に一本化された。

今回、共闘を主導したのは、1人区の候補擁立にこだわらない方針を打ち出した共産党だ。

民進党には当初、選挙協力への慎重論も根強かった。だが、4野党が共闘した先月の衆院北海道5区補選で共産票が加算される効果が示されたことを機に、調整が加速した。

参院選では、小選挙区型で与野党の力関係が反映されやすい1人区が全体の勝敗に大きく影響する。第1次安倍内閣時代の2007年に自民党は6勝23敗で、全体でも惨敗した。逆に政権復帰後の13年に大勝した際は、1人区で29勝2敗だった。

今回、統一候補は安全保障関連法廃止などを旗印として掲げている。1人区は保守地盤の厚い選挙区が多いうえ、結党した民進党に対する世論の期待感は高まっていない。

参院には衆院を抑制する役割が期待されている。第3次安倍内閣の中間的な評価の場となる参院選だけに、野党の「1人区」での共闘には、安倍政治に批判的な有権者に受け皿を用意する意味合いもある。

一方で懸念もある。民進党が来年春の消費増税反対にかじを切ったのは、与党の先手を打つだけでなく、共産との共闘に配慮したとみられている。共闘頼みとなるあまり、政策の軸足が揺れ動くようでは問題だ。

野党の協力をめぐっては、参院選比例代表の死票を減らすため統一名簿作成を探る動きもある。だが、政党の融合に近い形となるだけに、政権構想まで示すことが前提だろう。

政権選択の選挙である衆院選も、選挙協力を進めるのであれば、参院以上に政権構想と切り離せない。消費増税にしても2年の先送りを求める民進党と、あくまで反対の共産党の立場は異なる。安全保障など基本政策の違いを棚上げにしたまま、協力を進めるべきではない。

与党は野党の共闘に「野合」批判を強めている。民進党は野党第1党として、政権の受け皿たり得る政策を示す責任がある。参院選での共闘を政権戦略にどう結びつけていくのか、明確に説明してほしい。
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[毎日新聞] 出生率1.46 さらなる子育て支援を (2016年05月30日)

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2015年の合計特殊出生率が前年からわずかに上がり、1・46となった。

1人の女性が一生に産む子供の数を示すもので、人口維持に必要な「2・07」や、安倍政権の「希望出生率1・8」にはほど遠いが、1990年代半ばの水準まで回復した。

景気回復で若い世代の雇用条件が良くなったことや自治体の子育て対策の拡充が影響したと見られる。

ただ、今後も現役世代の女性の数が減っていくため、出生率が上がっても、生まれてくる子供の数は容易には増えない。さらに官民を挙げた少子化対策が必要だ。

年齢別では11年から減少が続いていた25〜29歳の出生率が上昇したほか、30歳以上の各年代も上昇。最も増加幅が大きいのは30〜34歳だ。

サービス業や福祉などは人手不足となっており、若年世代の賃金アップが出生率の改善につながっていると指摘される。政府が取り組んできた最低賃金の引き上げ、非正規雇用の待遇改善なども影響している可能性がある。

出生率の高い都道府県は(1)沖縄(1・94)(2)島根(1・80)(3)宮崎(1・72)(4)鳥取(1・69)。子育て支援を重視する政策を実施している自治体で出生率が上がっている傾向が見られる。

島根県は乳幼児医療費や保育料の軽減、若年世代の移住対策に力を入れてきた。鳥取県も子供を多く抱える世帯の保育料無料化、小児医療や不妊治療の助成の拡大など経済的負担の軽減に努めている。

一方、第1子出産時の母親の平均年齢は前年より0・1歳上がり、30・7歳で過去最高を更新した。婚姻件数は63万5096組で前年より8653組も減り、戦後最少となった。結婚しない人が増え、晩産化が進む傾向をどう変えていくかが相変わらずの課題だ。

東京の出生率は1・17で、全国で最も低い。首都圏や関西圏など人口の多い自治体の出生率の改善は急務だ。こうした自治体は待機児童の多い地域でもある。安心して子供を産むことができるよう、保育所の拡充など子育て環境をさらに整えていくべきである。

企業の取り組みも重要だ。女性社員が出産しても安心して働き続けられるよう雇用慣行を変えなければならない。男性社員の育児休暇の取得率は著しく低い。長時間労働を解消し、夫婦で育児を担えるようにしてほしい。

出生率の改善は人口減少に歯止めを掛け、年金の持続可能性を高めるなど、長期的な課題に大きな影響を及ぼす。すべての世代に関わる問題であり、さらに取り組みを強化していく必要がある。
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[読売新聞] もんじゅ報告書 安全担える新組織が不可欠だ (2016年05月30日)

安全を確保しつつ、高速増殖炉「もんじゅ」を再起動させる。それを担える新組織の具体化を急ぐ必要がある。

もんじゅの新たな運営主体が備えるべき要件について、文部科学省の検討会が報告書をまとめた。

現在の運営主体である日本原子力研究開発機構は、複数の原子炉を保有し、タイプの異なる新型炉開発や放射性廃棄物処分など、幅広い研究を手がけている。

もんじゅも、機構内の研究部門の一つと位置付けられてきた。

報告書は、研究に比重を置く運営形態が相次ぐトラブルの背景にあると指摘し、「運転・保守管理の適切な実施」を主眼とする実務的体制を構築するよう求めた。

原子力機構から、もんじゅを切り離すことが狙いだろう。

原子力規制委員会は、原子力機構にはもんじゅの運営能力がないとして、文科省に新たな運営主体を決めるよう勧告している。

報告書は、技術力の高度化や継承のほか、核不拡散への貢献、強力な経営体制の整備なども、要件に挙げた。文科省は、これらも十分考慮し、新組織の形態や人員、予算の検討を急ぐべきだ。

もんじゅは、当初、核燃料サイクルの完成を目指す特殊法人「動力炉・核燃料開発事業団」が開発を担っていた。その後、別の特殊法人と統合された結果、もんじゅの存在は埋没し、運営責任の所在もあいまいになった。

こうした点を踏まえれば、報告書の方向性は現実的である。

もんじゅの廃炉を避けるには、現在の技術者を中心に、高速増殖炉の研究開発に特化した法人を新設するしか方策はあるまい。

運転再開に向けて最優先で取り組むべき課題として、報告書は、現行の保守管理計画の抜本的な見直しを挙げている。

原子力発電所を構成する膨大な数の部品を、どれほどの頻度で点検し、交換するか。それを定めた保守管理計画は、原発の安全を確保する上での要である。

現行の保守管理計画は、2008年末に当時の経済産業省原子力安全・保安院の指示により、2か月間で拙速に策定された。他原発で保守管理が強化されたのに合わせ、対応を急がされた結果だ。

特殊な炉でありながら、一般的な原発と同じ点検項目を採用したことなどが、その後の点検不備につながったことは否めない。

もんじゅの信頼を回復するには、徹底した保守管理で安全を確保することが最低限の条件だ。
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[読売新聞] 特殊詐欺対策 多様な手口に自衛強めたい (2016年05月30日)

特殊詐欺の手口は、多様化かつ巧妙化する一方だ。市民に対する一層の注意喚起が不可欠だ。

警察庁によると、今年1?3月の特殊詐欺の被害額は約93億円で、昨年の同じ時期に比べて20%近く減少した。

6年ぶりに増加に歯止めがかかった昨年からの減少傾向が続いている。それでも、毎日1億円以上の被害が出ている現状が深刻であることに変わりはない。

昨年は、「架空請求詐欺」の被害が186億円と最も多かった。老人ホームの入居権や株購入権が当たったと告げて名義貸しを持ちかけた後、「違法だ」と難詰して金を要求するといった手口だ。

「オレオレ詐欺」も173億円に上っている。

このところ急増しているのが電子マネーを巡る被害だ。アダルトサイト利用料などの名目でプリペイド式電子マネーを購入させ、ID番号を聞き出して、額面分の電子マネーを詐取するものだ。

警戒の目を欺く手口は、ますます巧妙になっている。被害者に喪服を着用して金融機関に出向くよう指示し、葬儀代を装って金を引き出させる。新車購入に見せかけるため、車のカタログを持参させたケースもある。

インターネット回線を使うIP電話の悪用も多い。レンタル契約時に本人確認が不要なためだ。

警察と関係機関が連絡を密にして、新たな手口への対策を強化する必要がある。市民に積極的に情報を公開し、自衛を求めていくことも大切である。

被害が地方都市へと拡散していることにも警戒を要する。首都圏の昨年の被害額は、前年より20?30%減った一方で、西日本では被害が増えた府県が目立つ。岡山県では9割近くも増えた。

取り締まりが厳しい首都圏を避け、犯行組織が地方へと軸足を移しているとの分析もある。全国の警察が連携し、漏れのない捜査体制を築くことが肝要である。

被害防止の観点で注目されるのが、「コールセンター事業」だ。犯行拠点から押収された名簿を基に、警察から委託された業者が市民に電話で注意を呼びかける。

昨年度には18都県が実施し、埼玉県では172件の被害を未然に防いだという。取り組みをさらに拡大させていきたい。

改正通信傍受法が今国会で成立し、組織的詐欺の捜査でも通信傍受が可能になった。末端の現金受け渡し役から主犯格まで役割分担された犯罪組織の壊滅へ、新たな武器を効果的に活用したい。
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[朝日新聞] 参院選比例区 野党は統一名簿を (2016年05月30日)

民進や共産など野党4党が、7月の参院選で32ある1人区すべてに統一候補を立てる。史上初めてのことだ。

各党は日米安保や原発再稼働など基本的な政策が違い、これまで互いに議席を争ってきた。そんないきさつを乗り越えて共闘するのは画期的である。

二つの点で評価する。

まず3年半続く安倍政治と異なる、もう一つの民意の受け皿を有権者に示すことだ。「安倍1強」に対峙(たいじ)する勢力がひとつにまとまれば、政治に緊張感も生まれるだろう。

安倍首相はアベノミクスでデフレ脱却をめざす一方で、特定秘密保護法をつくり、歴代内閣の憲法解釈をひっくり返して安保法制も成立させた。ともに反対論を数の力で押し切った。

そして、この参院選で憲法改正を発議できる3分の2以上の勢力を確保し、いよいよ改憲に取りかかろうとしている。

こんな首相のやり方に、若者を含む多くの人々が危機感を抱いている。いまも続く「アベ政治を許さない」という市民の声の広がりが、野党の背中を押したのは確かだろう。

多くの選挙区で候補者を取り下げた共産党の判断も大きかった。民主、維新の合流も足並みをそろえやすくした。

次に、投票率の向上が期待できることだ。1人区に複数の野党候補が立てば、よほどの風がなければ勝ち目はなかった。勝敗が見えていては有権者の関心も薄れがちだ。12年、14年の衆院選と13年の参院選での自民党の主な勝因は、野党がそれぞれ候補を立てたことだった。

だから提案する。野党は比例区でも共闘してはどうか。一つの政治団体をつくり、統一名簿に各党の候補者を順不同で並べるのだ。政権への対決姿勢がより鮮明になるのは間違いない。

慶応大の小林節名誉教授らが提案してきたが、なかなか実現しそうにない。民進党が否定的だからだ。統一名簿は小政党の救済策だろう、衆参同日選になれば衆院選と投票先が違って混乱する、といった理由だ。

だが、同日選はなさそうだ。

ほとんどの1人区で候補擁立を見送った共産党が比例区にこだわるのはともかく、野党第1党の民進党こそ共闘の音頭をとってはどうか。

統一名簿には、分散する野党の票を一つにまとめ、死票を減らすメリットもある。

与党の「野合」批判にこたえるためにも、統一名簿づくりの目的と選挙後の活動方針を各党で合意し、有権者にはっきり説明しておくことも欠かせない。
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[朝日新聞] 旧姓使用拡大 国の成長の道具ですか (2016年05月30日)

希望すれば、結婚前の姓を住民票やマイナンバーカードに併記できる。そのように政令を改める方針を政府がきめた。国家公務員が旧姓を使える範囲の拡大なども検討するという。

それ自体に異論はない。だが旧姓の使い勝手をよくすることと、夫婦に同じ姓を名のるのを強制している民法を改めることとは、まったく別の話だ。

今回の措置が法改正をめぐる議論にブレーキをかける方向に働かないか、注意して見ていく必要がある。夫婦別姓訴訟の判決で最高裁が昨年12月、旧姓使用の広がりを根拠のひとつにあげて合憲の結論を導きだしているだけになおさらだ。

マイナンバーカードなどへの併記は「女性活躍加速のための重点方針2016」に盛りこまれた。冒頭、次のような政府の問題意識が示されている。

人口減少社会を迎え、わが国の持続的成長を実現するには、国民皆が能力を発揮できる社会をつくらねばならない。女性は最大の潜在力だ。あらゆる分野で活躍できるよう、参画拡大のとり組みを推進する――。

つまり、まず国の成長という大きな目標があり、それを達成するために、個人の人格の象徴である氏名を手段として使おうというのだ。逆立ちした発想といわざるを得ない。

氏名はその人をその人たらしめている大きな要素だ。姓が変わることで、自分らしさを失ったように感じる人がいるのは自然だし、それまで築いてきた評価や信用が断ちきられるという不利益をしばしばもたらす。

もちろん、好きな人と結婚して同じ姓になることに価値を見いだす人の思いも尊重されなければならない。だから同姓か別姓かを選べるようにする。それが選択的夫婦別姓である。

今回の政府方針は、同姓の強制が女性活躍の妨げになっているのをはっきり認めている。であれば、マイナンバーカードに旧姓も記載するなどという小手先の対応ではなく、その妨げを正面から取りのぞくことに力を注ぐのが筋ではないか。

最高裁も先の判決で選択的夫婦別姓にふれ、「合理性がないと断ずるものではない」と述べたうえで、立法府で議論を深めることに期待をにじませた。だが、この通常国会でもそうした場は設けられなかった。議員の存在意義が問われる。

「すべての女性が輝く社会」を真にめざすのなら、政府も国会も、「国」ではなく「個」の立場にたち、そこから一人ひとりの尊厳を守る施策を練り上げていかなければならない。
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