2016年03月31日

[産経新聞] 【主張】「保育園落ちた」ブログで急ごしらえの待機児童対策 でもいたずらに政治問題にしても前進しない (2016年03月31日)

安心して子供を託せるかという、本質的な問題を忘れてはならない。

厚生労働省が待機児童の解消に向け、受け皿の拡大を優先させる緊急対策をまとめた。手順としては理解できるが、保育の質を確保する取り組みを同時に強化することが極めて重要である。

「保育園落ちた」といった匿名ブログを機に、この問題をめぐる安倍晋三政権の対応に批判が高まった。国政選挙を控え、急ごしらえで対策をまとめた印象は拭えない。

緊急対策は、小規模保育所の定員枠の拡大や、保護者が緊急時などに利用できる「一時預かり」を保育所が見つかるまで定期利用できるようにするなど、既存施設の規制緩和が中心となった。

受け皿の拡大を急ぐあまり、保育士の負担が重くなり、保育の質の低下を招くのではないかという懸念も残る。

そうでなくとも、保育士不足が深刻化している。平均賃金が全職種に比べ月約11万円も低い状況にあることが、根本的な原因だ。

フルタイムで働く親が増える分、子供を預けようとする時間も長くなり、労働条件はより厳しくなる。保育士の資格を持つのに、職に就かない人が相次いでいる現状を重く見るべきだ。離職者の復帰などが期待されても、条件の悪さは経験者も遠ざける。

子供の命を預かる保育士の待遇改善は喫緊の課題である。政府は5月にまとめる「1億総活躍プラン」に処遇改善策を盛り込む方針だが、補正予算による一時金などでは焼け石に水だ。

その財源を考えると、消費税率が10%に上がっても子育て策の充実には3千億円以上足りない。

高齢者に偏った社会保障費のあり方の見直しも必要だが、消費増税の再延期は保育士の処遇改善を含め、重大な影響をもたらすことを認識すべきである。

驚いたのは、1年前に厚労省が公表した待機児童2万3千人を大きく上回る約6万人もの「潜在的な待機児童」がいたことだ。

提示された施設が自宅から遠かったため断ったケースなどを含めてこなかったという。実態を隠すような姿勢では根本的な問題の解決につながらない。

待機児童問題は、いたずらに政治問題化させても前進しない。現実的な対策をいかに組み合わせていくかの道筋が大切だ。
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[東京新聞] 東京新聞 TOKYO Web (2016年03月31日)

安倍政権はなぜ安全保障関連法廃止法案の審議に応じないのか。専守防衛を転換し、憲法違反とも指摘される法律だ。国民の理解が十分得られたとも言えない。「決着」はまだ、ついていない。

自民、公明両党の幹事長らがきのう会談し、民進党に合流する前の旧民主、維新両党と共産、社民、生活の計五党が共同提出した安保関連法廃止法案の審議には応じないことを決めた。「決着のついた議論を再び蒸し返すだけ」(佐藤勉自民党国対委員長)というのが理由だという。

安保関連法は昨年、衆参両院で計二百十六時間の審議を行い、参院では野党の一部の賛成も得て成立。二十九日に施行された。

しかし、国内外で多くの犠牲を強いた先の大戦の反省から、戦後日本が貫いてきた「専守防衛」政策を転換し、他国同士の戦争に加わる集団的自衛権を行使できるようにする法律だ。

ましてや歴代内閣が長年、憲法違反だとして禁じてきた集団的自衛権の行使を一転、安倍晋三首相が、一内閣の判断で認めた新しい憲法解釈を反映したものである。

国の在り方や国民の命運を大きく左右する安全保障政策は国民の大方の理解を得ることが必要だ。成立後でも、問題点が指摘されれば、とことん審議するのは国会の役割である。審議時間が長ければいいというものではあるまい。

共同通信社が安保関連法施行直前に行った世論調査では、関連法を「評価しない」との答えがほぼ半数を占めた。首相がいくら関連法について「廃止すれば、日米の同盟の絆は大きく毀損(きそん)される」と強弁しても、国民の理解が十分に得られないことの表れだろう。

旧民主、維新両党は民進党への合流前、日本領域での事態には迅速に対応する一方、海外での自衛隊活動には歯止めをかけるため、領域警備法案など三法案を共同で提出した。廃止法案と合わせて安保関連法の対案を成すものだ。

野党には対案がないと批判し、「全体像を一括して示してほしい」と挑発していたのは首相自身である。たとえ成立の見込みがない対案でも、提出を促しながら提出されたら審議に応じないというのでは、不誠実極まりない。

安倍政権は廃止法案の審議に堂々と応じるべきだ。審議すれば安保関連法の問題点が次々と明らかになり、夏の参院選や四月の衆院補選に影響が出ることを政権は恐れている−。審議を避けるのならそう思われても仕方があるまい。
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[東京新聞] 東京新聞 TOKYO Web (2016年03月31日)

「残業代ゼロ法案」提出の政府が、残業規制の見直しを言い出した。確かに日本の労働時間は欧州などより長い。過労死を防ぎ仕事と家庭の両立を容易にするならいい。具体像をまず示してほしい。

安倍晋三首相は、政府の一億総活躍国民会議で「(残業時間の上限を労使で定める)三六協定における時間外労働規制のあり方について再検討を行う」と表明した。

労働基準法は労働時間を一日八時間、週四十時間までと定めている。

しかし、労使が三六協定を結べば法定時間を超えて残業でき、“青天井”ともなる。三六協定を結ぶ事業場は全体の五割を超える。

日本人の労働時間は長い。国際労働機関(ILO)によると、週当たりの労働時間が四十九時間以上の長時間労働者の割合は二〇一三年で、日本は21%超。フランスやドイツの、ほぼ倍だ。

厚生労働省によると、一四年度に脳・心臓疾患で過労死したと認定されたのは百二十一人と高止まりし、精神障害による過労自殺は未遂も含めて九十九人と、過去最多を更新している。

フランスやドイツの労働時間が短いのは、総労働時間の上限規制を設けているからだ。加えて、勤務終了から開始まで連続十一時間以上の休息を取らなければいけないという「インターバル規制」も定めている。

一億総活躍国民会議のメンバーからは「三六協定の上限規制の設定など、長時間労働規制を前に進めてほしい」と欧州と同様の規制を設けるよう求める声も出た。

日本労働弁護団は、フランスを参考に、総労働時間の上限を週四十八時間、時間外労働の上限を年二百二十時間と、罰則付きで法律で定めることを提言する。

経済界の反発も予想されるが、総労働時間の上限規制を日本も導入するべきではないか。労働時間の抑制は、働き手の命や健康を守るのみならず、女性の活躍支援や少子化対策としても有効な施策であることは間違いない。

理解に苦しむのが、政府は長時間労働の抑制に旗を振る一方、働いた時間に関係なく成果に応じて賃金を支払う残業代ゼロ法案の成立を目指していることだ。同制度は過重労働を助長させ、過労死を増やすとの懸念が強い。

政府は年収千七十五万円以上の高度専門職に限定するため対象は「極めて狭い」と言うが、将来、拡大されない保証はない。働く側の声をよく聞いてもらいたい。
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[産経新聞] 【主張】首都直下地震 命を守る備え確認したい (2016年03月31日)

30年以内の発生確率が70%とされる首都直下地震に備え、政府は救助部隊派遣や物資輸送の骨格となる応急対策活動計画をまとめた。

平成25年に公表された首都直下地震の被害想定では、最悪のケースで死者2万3千人、全壊・焼失する建物は61万棟にのぼる。

住民の生命を守り、日本の中枢機能を維持するために、政府が具体的な活動計画を示した意義は大きい。家庭や職場、地域でも減災に向けた取り組みと、災害時の心構えを改めて確認したい。

東日本大震災を教訓に、応急活動計画では、被害の全容把握や被災自治体の要請を待たずに人命救助や救援活動を開始する。

発生から72時間以内に、東京、神奈川、千葉、埼玉の4都県に自衛隊、警察、消防など最大14万人が派遣される。救助、救援活動を円滑に行うための拠点や緊急輸送ルートも定めた。

家庭や職場ではまず、揺れと火災への対策を再点検してほしい。家具の固定や電気機器からの出火を防ぐ「感震ブレーカー」の設置など、家庭や事業所ごとの耐震と防火対策が、被害の大幅な軽減につながる。

活動計画には、800万人と推計される帰宅困難者対策も盛り込まれた。東日本大震災のときのように、一斉に帰宅を始めれば、交通渋滞を引き起こし救助活動の妨げになる。

家族が心配で、すぐに帰りたいという思いは、みな同じである。だが、命の危険が迫っている被災者がいることを最優先に考え、地震直後はむやみな移動を控えるべきだ。

そのためには、家族で安否確認の手段を決めておくこと、職場や学校での食料や水の備蓄など、日ごろの備えが大切だ。

ただ、買い物客など身を寄せる施設が定まらない人の一時滞在施設は、十分に確保できていないのが現状だ。一時滞在中に事故が起きた場合、施設側の責任が問われる可能性があり、民間の協力が広がっていないという。法整備を含めて、民間が協力しやすい環境をつくる必要がある。

大都市では誰もが、帰宅困難者になる可能性がある。

支援を待つ側ではなく、要救助者や高齢者などの災害弱者を助ける側になるという意識を、一人一人が持ちたい。
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[毎日新聞] 差別解消法施行 障害者に一層の配慮を (2016年03月31日)

障害者差別解消法が4月に施行される。障害を理由に不利な扱いをしないだけでなく、個々人の障害特性に対する「合理的配慮」を行政や企業に義務づけたところが重要だ。

とかく横並びの協調性が重視される社会に息苦しさを感じる人は多いはずだ。障害者だけでなく誰もが個性を認め合える社会にするため、この法律を生かしていくべきである。

表面上、障害者を一般の人と区別して不利に扱わないというだけでは、真の平等にならない場合が多い。

車いすの学生が一般の学生と分け隔てなく入学を認められても、校舎にエレベーターがなければ、2階以上の教室から閉め出されているのと同じだ。市役所の窓口で目や耳の不自由な人が手話通訳や点訳の資料なしで説明されても、十分に理解できないことが多いだろう。

こうした場合に学校や行政に対して過重な負担にならない範囲で、エレベーター設置や補助的な情報手段を求めることができる。これが合理的配慮だ。同時に施行される改正障害者雇用促進法でも合理的配慮が企業に義務づけられた。

塩素濃度に過敏で学校の水道水を飲めない、黒板の文字がゆがんで読み取れない、などの特性を持つ発達障害の子がいる。自宅から水筒を持参することや、文字のゆがみを修正するパソコンソフトの利用を求めたところ、学校から「1人だけ特別扱いできない」と許可されない。そんなトラブルが各地で起きている。

視力の弱い子には眼鏡やコンタクトレンズ、食物アレルギーのある子には特別食が認められるように、見た目で障害がわかりにくい子にも合理的配慮は必要なのだ。

仕事や生活に不自由な思いをしている障害者に配慮する文化を育てると、一般の人へも恩恵が広がる可能性がある。車いす用トイレが多目的トイレに進化し、多くの人が便利になった。知的障害者へのわかりやすい説明は、外国人観光客にも優しさを感じてもらえるはずである。

課題は、相談や紛争解決の体制が不十分なことだ。法務局や労働局など国の出先機関や教育委員会、警察、弁護士会などが連携する「障害者差別解消支援地域協議会」の設置が同法で規定された。都道府県は8割以上が4月に設置する予定だが、市区町村は2割程度にとどまるという。

障害者からの要求が高まり、事務負担も増すことを警戒する自治体は多い。だが、内閣府が実施したモデル事業では、同地域協議会の円滑な運営によって障害者からの苦情が減り、行政の事務負担も軽減される例も示された。誰もが暮らしやすい社会を実現するため、各自治体は前向きに取り組むべきである。
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[毎日新聞] 朝鮮学校補助金 子供を中心に考えよう (2016年03月31日)

朝鮮学校への補助金交付について文部科学省が「透明性」などを求める通知を関係都道府県に出した。

補助金の公益性、目的に沿った執行、住民への情報提供などである。

文科省は「これは北朝鮮への制裁とは関係ない。減額や停止を求めたものではない」としている。

だが、地方自治体の権限である補助金交付に関して、中央から通知を出すのは異例のことだ。自治体側がこれを事実上の停止圧力と受け止め、全体に交付「自粛」へとつながる可能性がある。

国家的な犯罪である日本人拉致問題、東アジアの平和を脅かす核実験、弾道ミサイル開発など、外交上厳しく対峙(たいじ)を続ける北朝鮮である。

制裁措置にからみ、自民党などから朝鮮学校への補助金を停止すべきだとの意見が出ていた。使途が不透明とする指摘もあった。通知の背景にはこうした状況がある。

子供を中心に据えて考えたい。

重い制裁措置など外交上の圧力は当然だが、それと子供の教育の場への締めつけは別だろう。

「各種学校」である朝鮮学校は28都道府県が認可し、休校中も含め68校ある。日本の幼稚園、小、中、高校の児童生徒に相当する六千数百人が通う。このほか朝鮮大学校がある。

文科省によると、補助金交付は2010年度ごろから減る傾向にあり、14年度の実績で18道府県から計1億8603万円、114市区町から計1億8591万円だった。

学校運営費のほか、保護者補助などに充てられるという。

私立学校と同様、多くの教育機関に公的財政支援があるのは、教育を受ける権利と機会の保障という理念に基づく。朝鮮学校も民族文化教育のほか、日本の学習指導要領を踏まえた教科学習をし、日本の大学へ進学する生徒も多い。

学校側も変わる必要はないか。

通知は、学校の教育内容や人事、財政に密接に在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が影響を及ぼしているという政府認識を前提にした。

指導者礼賛や歴史観などへ違和感を持つ人は過去においても少なくなかった。学校側は、今回は差別問題であり、教育内容は関係ないとの考え方のようだ。しかし、こうした状況も見据え、もっと開かれた学校づくりを試みてはどうか。

朝鮮学校の子供たちは、日本の社会風土に育った。環境も流行も価値観も国籍を超えて重なり合う。

スポーツなどを通じ、親しまれる学校もある。行事を地域社会と協力して催す例もあり、新たな共生の境地を開く余地は十分にあろう。

締めつけより、息長く得るものを求めたい。
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[読売新聞] 民政ミャンマー 不安残る経済発展路線の継承 (2016年03月31日)

経済発展路線を円滑に継承できるか。新体制の舵(かじ)取りが問われよう。

ミャンマーで、国民民主連盟(NLD)のティン・チョー大統領率いる新政権が発足した。

NLDが昨年11月の総選挙で、軍政の流れをくむ連邦団結発展党(USDP)を破って圧勝したことに伴う政権交代である。民主的な選挙を経た文民大統領の誕生は約半世紀ぶりとなる。

NLDのアウン・サン・スー・チー党首は、外相や大統領府相など4閣僚を兼務する。「大統領の上に立つ」と公言していたように、側近のティン・チョー氏を通じて政権を主導するのだろう。

憲法は外国籍の親族がいる者の大統領就任を禁じており、英国籍の子息をもつスー・チー氏に、その資格はない。関連条項の一時凍結という裏技による大統領就任を目論(もくろ)んだが、軍の反発に配慮して見送ったとされる。

ティン・チョー氏は国会での就任演説で、「民主的な基準に沿った憲法にする責任がある」と強調した。憲法改正に事実上の拒否権を持つ軍に対し、改正を粘り強く働きかけるとみられる。

スー・チー氏が就いた外相は、大統領や軍首脳らと並んで、非常時に強大な権限を有する「国防治安評議会」のメンバーでもある。入閣により、軍の影響力を牽制(けんせい)する思惑があるのではないか。

NLDは人材に乏しく、スー・チー氏の政治手腕も疑問視されている。民間の専門家やUSDP出身者を閣僚に起用したのも、苦肉の策だろう。軍やUSDPとの協調が欠かせない。

国民の生活水準の向上など、新政権の課題は山積している。

テイン・セイン前政権は、中国一辺倒の外交政策を転換し、米欧との関係改善を図った。経済改革を進めて、投資環境を整備することで外資を呼び込み、高成長を実現してきた。

懸念されるのは、新政権の具体的な経済政策や外交方針がなおも明確でないことだ。

スー・チー氏の行き過ぎた情報統制も指摘される。新政権の政策決定過程の透明性が十分に保たれないようなら、外国企業の投資拡大への不安は拭えまい。引き続き規制緩和や法制度整備などに努める必要があろう。

東南アジアと南アジアを結ぶ要衝にあるミャンマーが民主国家として安定した発展を遂げることは、日本にとっても重要だ。日本は従来通り官民を挙げて、ミャンマーの国造りを後押ししたい。
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[読売新聞] 米軍北部訓練場 翁長氏は返還を望まないのか (2016年03月31日)

大規模な米軍施設の返還が違法な妨害で滞っている現状を、早期に打開すべきではないか。

政府が、沖縄の米軍北部訓練場の一部返還に向けた動きを強めている。菅官房長官と中谷防衛相が先週以降、沖縄県の翁長雄志知事に相次いで協力要請した。

北部訓練場は県内最大の米軍施設だ。1996年の日米の沖縄施設・区域特別行動委員会(SACO)合意で、約7500ヘクタールのうち約4000ヘクタールの返還が決まった。ヘリコプター着陸帯6か所を存続区域内に移設するのが条件だ。

返還区域は県全体の米軍施設の2割近い面積を占める。返還が実現すれば、その意義は大きい。

政府は、環境影響評価を経て、2007年にヘリ着陸帯建設に着工したが、完成は2か所にとどまる。反対派住民らが県道に車両を放置するなどして訓練場への出入り口を遮断し、工事車両が入れない状況が続いているためだ。

疑問なのは、県道の管理者である翁長氏の対応である。菅氏らの違法車両撤去の協力要請に対し、「口頭の指導はしている」と釈明しつつ、慎重姿勢に終始した。

本来、翁長氏は管理者として強い権限を持つ。県道からの車両撤去に本気で乗り出せば、事態は大幅に改善する可能性がある。

北部訓練場では、米軍の輸送機オスプレイが使用されている。翁長氏が知事選で、オスプレイの県内配備の撤回を公約したとの事情があるにせよ、何より優先すべきは訓練場の返還のはずだ。

沖縄への米軍施設の過度な集中を批判し、基地負担の軽減を訴える持論と矛盾しないか。翁長県政を支える共産、社民両党などが反対派を支援することに配慮しているとの見方もある。

重視すべきは、地元の国頭村と東村がSACO合意を支持し、早期返還を求めていることだ。周辺住民の大半も騒音対策などの条件付きで着陸帯建設を容認する。

沖縄本島北部の北部訓練場を除く森林地帯は年内にも、「やんばる国立公園(仮称)」に指定される見通しだ。豊かな自然と生物の宝庫である土地の返還は、観光など地域振興にも役立とう。

東村の伊集盛久村長は先週の中谷氏との会談後、「全面返還は現実には厳しい。一部返還を次の返還に結びつける方が基地の整理縮小が進む」と強調した。

翁長氏が米軍基地問題で「地元の民意」を重視するのであれば、こうした自治体の現実的な判断も重く受け止める必要があろう。
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[朝日新聞] 秘密と国会 追認機関ではいけない (2016年03月31日)

特定秘密の指定や解除の運用をチェックする衆参両院の「情報監視審査会」がきのう、年次報告書を衆参両院の議長に提出した。2014年末に特定秘密保護法が施行されて以来、初めての報告書である。

しかし残念ながら、「監視」の名に値する内容とは程遠かった。これでは国民の代表としての国会の責任が果たせたとは、到底言えない。

防衛省や外務省など10行政機関が指定した特定秘密382件(約18万9千点)について、概要を記した「特定秘密指定管理簿」などをもとに、各省庁から聞き取りして確認した。

だが、開示された特定秘密は数点だけ。政府が提出した管理簿の記述は「外国から提供を受けた情報」などあいまいで、指定が適正かどうか判断できる内容ではなかった。

最大の問題は、何が秘密にあたるかが秘密、その範囲が恣意(しい)的に広がりかねないという、秘密法それ自体にある。

野党側は国会への情報提供を義務づけるよう求めたが、与党側は「三権分立の観点から行政権を侵してはならない」と受け入れなかった。ならばなぜ国会に監視機関を置いたのか。

三権分立だからこそ、行政権をもつ政府に対する、国会の監視機能が重要なのだ。政府の外から特定秘密の運用を監視できるのは、唯一、国会の審査会だけである。国会は強い危機意識をもち、監視機能の強化をはからねばならない。

審査会の対応で物足りなかったのは、政府の特定秘密の指定状況が適正かの判断に踏み込まず、運用改善を「意見」として求めるにとどめたことだ。より強い「勧告」になぜ踏み込まなかったのか。

一方で、「意見」の中身には耳を傾けるべきものもある。

例えば、秘密指定が適正かどうか、首相に報告する内閣府の「独立公文書管理監」に対し、審査会にも報告するよう求めたことだ。政府は真剣に検討してもらいたい。

安全保障法制が施行され、自衛隊の運用など安保政策をめぐる政府の裁量の幅が広がった。そのうえ特定秘密への監視機能の弱さが放置されれば、国民の目の届かないところで、政府の恣意的な判断が際限なく広がる恐れがぬぐえない。

国会が「国民の代表として監視する」という責任を自覚し、運用改善と法改正に向けた検討を不断に重ねることが、政府に緊張感を持たせるはずだ。

形ばかりの監視で、政府の追認機関になってはならない。
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[朝日新聞] ミャンマー 問われる真の民主改革 (2016年03月31日)

ミャンマーで新政権が発足した。人口5千万強の国を率いるのは、昨秋の選挙で圧勝した国民民主連盟(NLD)である。

自由選挙による文民政権は、1962年の軍事クーデター後は初めて。アウンサンスーチー氏率いるNLDへの支持は、軍政脱却を願う民意の表れだ。

とはいえ、まだ体制の変革とは言いがたい。軍政がつくった憲法の枠組みが今もある。民主化の力量が問われるのはまさにこれからである。

国防、内務、国境相は軍が指名し、非常時は最高司令官が全権を握ると憲法にある。国会の4分の1は軍人枠で、その同意なしに憲法改正は難しい。

新政権では、スーチー氏側近のティンチョー氏が大統領に就く。スーチー氏は外相など4閣僚を兼務し、実質的に政権を率いるという。外国籍の家族がいれば大統領になれない憲法上の制約を受けた苦肉の策だ。

この国が民主化への軌道にのれるかどうかは、新政権と軍が穏当な関係を築けるかどうかにかかっている。経験のない新政権が軍と対等に向き合うには、スーチー氏のカリスマ的な指導力に頼るのは当然だろう。

だとしても、「大統領も憲法も超える存在になる」というスーチー氏の発言は、新たな独裁者になるかのような印象を与える。法治の原則を見失えば、健全な国家建設の道は遠のくことを忘れずにいてもらいたい。

軍は経済にも根を張っている。前政権下で諸改革が進んだが、軍と関係の強い企業群の利権は依然大きい。その構造に新政権が切り込めるか、そこにも高いハードルがある。

国内では今なお少数民族の武装勢力が軍とにらみ合う。新政権は、その問題の解決も期待されているが、ここでは軍の協力を求める必要もあろう。

前途多難だが、やはり新政権が目指すべきは憲法改正だ。軍政への逆戻りを阻むために不可欠な手続きである。そのためには、国際社会との共栄をめざす価値観が国の将来に必要だという大局観を、軍関係者にも説き続けるほかないだろう。

残念ながら今の世界では、民主化の流れが滞っている地域が多い。タイが民政と軍政の間で揺れ動き、中国という巨大な権威主義体制が存在する。そんな中でミャンマーの民主化が前進することの意義は大きい。

1人あたり国内総生産は約1200米ドルで、「東アジアの奇跡」から取り残されてきたが、潜在成長力が大きい。法制度やインフラの整備、人材育成に、日本も支援を強めたい。
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2016年03月30日

[産経新聞] 【主張】消費増税の再延期 「危機」に陥らぬ判断示せ (2016年03月30日)

政策効果を厳しく検証せよ

来年4月の消費税再増税の実施を最終的にどう判断するか。平成28年度予算の成立を受け、安倍晋三首相は政権運営の軸をそこに置くことになろう。

世界経済の不透明感が強まる中での再増税は回避すべきだ、という海外の有識者の意見に首相は耳を傾けている。再増税延期に絡め、衆院解散で参院選との同日選に向かうとの観測も広がる。

一昨年11月に安倍政権が再増税延期を決めた後、産経新聞は来年4月の再増税に耐え得る経済の実現に向け、民需主導の自律的な成長の必要性を主張してきた。だが、現状はどうか。

≪財政再建の道筋明確に≫

デフレ脱却の途上にあり、景気回復の実感には乏しい。環境が整っていない状態で、景気をさらに落ち込ませる政策はとるべきでない。首相もそう判断し、危機を回避する目的を明確にするのであれば、再延期という選択はやむを得ないだろう。

安倍首相は29日の会見で、「世界経済の不透明さが増しているのも事実だ」と述べる一方、「日本経済が回復傾向にあることに変わりない」と強調してみせた。こうした現状認識での政策判断では国民の理解は得られない。

忘れてならないのはアベノミクスのどこに問題があり、何を補うべきかをしっかり吟味することである。前回の延期判断から今に至るまでの、政策効果を厳しく検証することが欠かせない。

国と地方の借金が1千兆円を超え、少子高齢化が急速に進む中で、安定的な社会保障財源を確保するために消費税の増税が避けて通れないことも不変である。

単なる延期でなく、再増税や財政健全化に向けた道筋を改めて国民に明示しなければならない。

一昨年の増税延期表明の際、首相は「再び延期することはない」と断言した。景気弾力条項も削除し退路を断った。アベノミクスも順調に推移していると主張してきた。ここに来て再延期の判断をすれば、そのギャップは大きい。

国民に約束した、再増税に耐え得る強い経済をなぜ創出できなかったのか。首相は厳しく受け止めるべきだ。

一方で無謀な選択に踏み切り再び日本を「失われた20年」に陥らせてはならない。経済政策への批判を甘受しつつ、危機を回避するのも指導者の責任といえよう。

政府が有識者との会合で印象付けようとしているように、海外経済の低迷という要因はたしかにある。年明け以降、中国経済の減速や原油安などで市場が混乱した。世界経済にとってのリスクは払拭されていない。

だが、現状では首相が再延期の条件に挙げてきた「リーマン・ショック級の危機」には及ぶまい。むしろ、海外経済の変調ですぐに揺らぐ、日本経済の脆弱(ぜいじゃく)さの克服が遅れている問題が大きい。

≪一体改革は放置できぬ≫

なかでも深刻なのは、3月の月例経済報告で国内の景気判断が5カ月ぶりに下方修正された要因ともなった個人消費の低迷だ。

2人以上世帯の消費支出は、1月まで5カ月続けて実質で前年同月比マイナスの水準が続いた。2月も「うるう年」の影響を除けばマイナスだった。個人消費は明らかに力強さを欠いている。

政府が3年連続で着実な賃上げを求めた春闘でも、経営側の回答は小幅な賃上げにとどまった。そこでも、円安から円高への戻り、海外要因などが理由とされた。

個人消費の活性化を通じて「経済の好循環」を実現させるシナリオを描いても、家計の回復の遅れなどからそこに至っていない。それが一般的な見方だろう。

ただ、日本の財政が先進国では最悪の状況にあるなかで、増税先送りにはリスクが伴うことを忘れてはなるまい。前回の増税見送りの際も、政府は平成32年度に国と地方の基礎的財政収支を黒字化する財政健全化目標は堅持するとした。再延期でさらに遠のくとみられれば、財政に対する信頼は大きく揺らぐだろう。

消費税の増収分は、すべてを社会保障財源に充てることになっている。国債増発を抑制し、将来世代に負担を先送りしない。

これが自民、公明、民主3党が決めた「社会保障と税の一体改革」である。世代間の格差拡大を防ぐにも欠かせない。日本が抱えるこの難題から、政治が逃れることはできないのである。
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[東京新聞] 大学入試改革 理念ばかり並べても (2016年03月30日)

大学入試をがらりと変え、知識偏重の高校教育の改善をも促すという。文部科学省の有識者会議が出した最終報告は、しかし、新テストの理念と課題の羅列に見える。実現へもっと熟議をせねば。

有識者会議は、高校と大学の教育を見直し、橋渡しをするための方策を議論してきた。最大の焦点だったのは、大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト」の導入である。

この新しい共通テストでは、知識の暗記量や解法テクニックというよりも、論理的に考え、筋道を立てて表現する力を試すことに狙いを定める。そのためにマークシート式の改良に加え、記述式の問題を採り入れる。

グローバル化、少子高齢化や地方創生…。既成の知識や解法パターンでは、先行きを読み解くことが難しい時代だ。正解を素早く発見する力ではなく、自ら問いを立て、一つとは限らない答えを探る力こそが重要になっている。

新テストをてこに、知識の詰め込みに陥りがちな高校教育を、考えさせる教育へと脱皮させる意図もある。入試の影響力を利用する発想も、理解できなくはない。

懸念されるのは、課題山積の記述式の採用である。有識者会議は、実施体制を含めて具体の制度設計を先送りしてしまった。実現までの道筋を描ききれなかった。

五十万人を超える受験生が見込まれる。膨大な答案の採点者をどう集めるのか。採点の公平性をどう担保するのか。民間委託や人工知能(AI)の活用も挙げられたが、信頼性を確約できるのか。

採点時間を確保するためにマークシート式と切り離し、記述式のみを前倒しで実施する案も出された。これには、高校生活が侵食されるとして反対の声も根強い。

入試は人生の大きな節目だ。だからこそ政府の教育再生実行会議は、挑戦できる機会の複数化を提言していた。やり直しが利く社会への転換をというメッセージでもあった。それを置き去りにしては、改革の意義も薄れよう。

こうした根幹に関わる課題は、宙に浮いたままだ。なのに文科省は二〇二〇年度開始という工程表に従い、一七年度初めまでに新テストの実施方針を詰めるという。拙速を避け、開かれた場での議論があらためて必要だ。

国籍や文化、年齢、性などを問わず、多様な背景を持つ人々が力を合わせねばならない時代である。大事な才を見逃さないよう大学は個別試験を工夫してほしい。
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[東京新聞] 予算成立 もう追加の財政出動か (2016年03月30日)

新年度予算が成立したが、与党内では追加の経済対策を求める声が出ている。選挙目当てのばらまきにならないか。過去最大規模の予算に続く財政出動となる。景気回復の名目ならば何でもありか。

一般会計の総額で九六・七兆円。企業の収益拡大などで税収は二十五年ぶりの高水準を見込むが、それでも歳出の三分の一以上を国債で賄う借金頼みの大型予算。税収が増えれば、その分使ってしまう相変わらずの放漫財政だ。

安倍晋三首相は「予算の早期成立こそが景気対策だ」と繰り返してきたが、予算が成立する前から、追加経済対策の要求だ。しかも検討事項に挙がっているものは、現金給付や額面以上の買い物ができるプレミアム付き商品券の配布により消費を喚起する案である。

すでに本年度補正予算に盛り込まれ、参院選前の配布が決まっている低年金高齢者向けの三万円給付は「票目当ての高齢者優遇ではないか」との批判が出たが、追加の経済対策も同じ発想なのかと思わざるを得ない。

併せて待機児童対策として保育士給与を、これまで実施した分を含め4%(月額一万二千円)上げる案もある。もし「三万円給付」の財源を保育士給与の引き上げに回せば、退職保育士が望む五万円程度の待遇改善が実現できるとの試算もある。

安倍政権の予算でいえるのは、防衛費や公共事業費は四年連続で拡大させてきた一方で、本当にお金を必要とする弱者への配分が極めて不十分なことだ。予算の規模は大きくなる一方なのに、「声なき声」への目配りが足りないと言われても仕方あるまい。

政府は、五月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)での討議に向け、ノーベル経済学賞受賞のスティグリッツ・米コロンビア大教授らから意見を聴いている。

教授らは来年四月の消費税増税の延期や財政出動の必要性に確かに言及した。ただ、やみくもに財政出動を促したわけではない。要は、緊縮財政ではなく、教育や若者の健康への政府支出など、必要とされる分野への財政出動や、労働者保護といった平等性を高める政策を求めたのである。

そもそも百兆円に近い当初予算と恒常的に補正予算を組んでいる日本は緊縮財政ではない。

社会保障との一体改革をほごにした消費税の増税は反対だが、バラマキ色が強い財政出動もまた、許される状況にないのである。
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[毎日新聞] 消費増税の判断 政治の打算を離れよう (2016年03月30日)

2016年度予算と税制改正関連法がきのう成立した。税制改正関連法には、消費増税と同時に導入される軽減税率が盛り込まれ、低所得者対策が法的に整備された。

だが、政府・自民党内では、夏の参院選をにらんで、増税の再延期論が公然と語られ始めている。

消費増税の原点は、社会保障制度の充実に向けた財源を確保しつつ、先進国で最悪の財政を再建することだ。超党派で取り組む国家的課題として、12年に自民、公明、民主3党が合意したものだ。


少子化対策に不可欠
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3党合意に基づく消費増税法は、税収増すべてを社会保障財源に充てると定めている。17年4月に予定される税率10%への引き上げは、もともと15年10月に実施するはずだった。だが、安倍晋三首相が14年秋に延期を決め、衆院を解散した。

延期によって、社会保障充実の財源が確保できず、しわ寄せは特に子育て支援に及んでいる。「保育園落ちた」のブログを機に噴出した親たちの怒りに向き合うためにも、財源の早急な手当てが必要だ。

首相はアベノミクス新三本の矢として子育て支援を掲げている。人口減少を食い止めるには少子化対策が急務だ。増税を再延期すると矛盾するのではないか。

さらに、1000兆円を超す借金を抱える財政の立て直しがますます難しくなる。政府は「基礎的財政収支の20年度黒字化」を目標にしているが、消費税率10%が前提だ。再延期すれば、達成は絶望的になる。

首相は「税率を上げて税収が上がらなくなるのでは元も子もない」と主張する。再延期の条件に「リーマン・ショックや大震災級の事態」を挙げている。リーマン級の危機なら再延期もやむを得ないだろう。

だが、今の景気は再延期しなければならないほど深刻なのか。

首相が判断材料の一つとするのは1〜3月期の国内総生産(GDP)だ。リーマン直後の成長率はマイナス幅が2四半期連続で年率10%を超えた。1〜3月期は「マイナス成長になっても小幅」との予測が多く、リーマン級とは言えないだろう。

年明けから金融市場の混乱が続き、首相は再延期の条件に「世界経済の大幅な収縮」も加えた。

政府は5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向け、世界経済を分析する有識者会合を開いている。ノーベル経済学賞を受賞した米大学教授2人が「世界経済は低迷している」と増税再延期を唱えた。

政府は、世界的な経済学者から再延期のお墨付きを得たと解釈するのかもしれない。しかし、米教授2人はもともと増税に慎重だ。政権に都合の良い主張だけをつまみ食いするなら公平性を欠くのではないか。

再延期するなら、きちんとした理由が必要だ。しかし、今のところ説得力ある根拠は見当たらない。

それ以上に問題なのは、経済情勢の客観的な分析よりも、衆参同日選や憲法改正の環境整備をにらんだ政治的思惑が絡んで、再延期論が浮上してきている点である。

首相は在任中の憲法改正実現に意欲を示している。このため、参院選では、改憲賛成派が憲法改正の発議に必要な3分の2以上を占めるかが焦点となる。


同日選の大義にするな
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この参院選に衆院選を重ねて、票の掘り起こしを進め、参院で自民党が獲得する議席の上積みを図ろうというのが衆参同日選論だ。その際、増税の再延期は首相が民意を問う大義名分になるという理屈である。

だが、そんな発想は、増税を政争から切り離そうとしてきたこれまでの取り組みを台無しにしかねない。

国民に新たな負担を求める増税は、選挙での逆風を恐れて、政党が取り上げにくいテーマだ。しかし、巨額の借金を抱える中、少子高齢化で膨らみ続ける社会保障費をまかなうため、安定財源を確保していくことは与野党共通の課題である。

3党合意は、税制改革を政争から切り離すという意義があった。時の政権の思惑や党派的対立に左右されず、幅広い合意に立脚し、改革を着実に進めていく狙いがあった。

世論も増税を理解する意見が多かった。合意を評価したためだろう。

ところが首相は14年に延期を決め、衆院解散で民意を問うテーマにしてしまった。あしき前例である。

首相が今回、参院選を前に再延期を決めれば争点外しと取られても仕方あるまい。まして衆院解散に踏み切るようなら、政治的打算から改憲のために増税問題を利用した、との見方が出てくるのではないか。

軽減税率が整備されたのも家計への影響を和らげ、国民が増税を受け入れやすい制度とするためだ。だが、再延期論を受けて各種世論調査では延期を求める声が強まりつつある。これまで積み上げてきた増税への国民的理解を崩しかねない。3党合意の原点に立ち返るべきだ。

首相は14年に延期を決めた際、「再延期はない。(旧)三本の矢を前に進め、(増税できる)経済状況を作り出せる」と明言していた。

仮にどうしても増税できない状況だというのなら、アベノミクスの失敗を認めるのが先だ。
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[読売新聞] 待機児童対策 「緊急」と「抜本」の連動が重要だ (2016年03月30日)

子供の預け先が見つからず、親が退職に追い込まれる。そんな事態をなくすため、官民で取り組みを加速させたい。

政府が、保育所に入所できずにいる待機児童の解消に向けた緊急対策を公表した。

小規模保育所の定員上限19人を22人に引き上げるなど、既存の施設や制度の規制緩和が柱である。昨年4月に待機児童が50人以上いた114市区町村を中心に、積極的な実施を促していく。

小規模保育所は、待機児童の多い0?2歳児を預かる。マンションの一室や空き店舗でも開設できるため、用地取得が難しい都市部での有力な受け皿と言える。

認可保育所については、国の基準より手厚く保育士を配置している自治体などに定員枠の拡大を求める。子供の「一時預かり」事業での定期利用も可能にする。

認可保育所の増設には時間がかかる。新年度の直前になっても預け先が見つからない保護者向けの緊急対策として、規制緩和で受け皿を確保するのは理解できる。抜本対策ではないが、自治体は、前向きに対応してもらいたい。

待機児童は昨年4月時点で2万3167人と、前年より1796人増えた。保育所定員は着実に伸びているが、共働き世帯の増加に伴う需要拡大に追いつかない。

深刻なのは、やむなく認可外保育所に入ったり、保護者が育児休業を延長したりして、待機児童に含まれない「隠れ待機児童」が6万人にも上っていることだ。

2015年度に始まった「子ども・子育て支援新制度」は、潜在ニーズも踏まえた保育サービス整備を自治体の責務と位置付けた。だが、財政難などを理由に、自治体の対策は後手に回っている。

緊急対策について、子供の「詰め込み」になるとして、保育の質の低下を懸念する声も強い。

規制緩和は、政府が定める最低基準の範囲内にとどまり、質の確保に一定の配慮をしているが、保育士の負担が増える恐れがある。時限措置とするのも一案だ。

無論、抜本対策として認可保育所の増設は欠かせない。最大の課題は、保育士の確保である。

安倍首相は、5月に策定する「ニッポン1億総活躍プラン」に、保育士の待遇改善を含む中長期的対策を盛り込む考えを示した。

民間保育士の月給は全産業平均を10万円以上も下回る。着実に賃金を上昇させる具体策を打ち出すことが求められる。研修の充実などで専門性を高め、職場への定着を促す取り組みも重要である。
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[読売新聞] 16年度予算成立 緩まずに経済再生に取り組め (2016年03月30日)

2016年度予算が成立した。景気の先行きが不透明さを増す中、経済再生への取り組みを緩めてはならない。

安倍首相は記者会見で「強い経済を確かなものにする予算だ。可能なものから前倒し実施する」と強調した。

総額96・7兆円の予算の施策を迅速に実行し、経済政策「アベノミクス」の効果を持続させて、広がりを持たせることが大切だ。

成長戦略のさらなる強化も欠かせない。農業や医療分野などの規制改革を急ぎ、民需主導の景気回復につなげるべきだ。

予算には、低所得の年金受給者向けの給付金制度が含まれる。15年度補正予算との合計で約3800億円を計上し、1000万人以上に3万円を支給する内容だ。

野党などは「バラマキ」と批判した。確かに、一時的な給付では、貯蓄に回る分も多く、景気を下支えする効果は限定的だろう。

高齢者に手厚い従来型の社会保障制度を見直し、若年層にもっと目配りすることが、社会の活力を高める観点からも求められる。

17年4月に消費税率を10%へ上げる際、8%の軽減税率を導入する税制改正関連法も成立した。

安倍政権内には、世界経済の動向次第では消費増税を延期すべきだとの声があるが、増税の準備は着実に進めておく必要がある。

審議では、軽減税率の対象の線引きが分かりづらく、混乱しかねないとの指摘が相次いだ。飲食料品の「持ち帰り」に軽減税率、「店内飲食」には標準税率が適用される点などである。

政府は、制度の周知徹底に万全を期さねばならない。

中小企業などに認められる軽減税率の簡素な経理方式についても、円滑に導入されるよう事業者を支援すべきだ。

今国会では、閣僚らの失態や不適切な発言が目に余った。

石破地方創生相は地域再生法改正案の審議で、別の法案の提案理由を約2分半も読み上げた。極めてお粗末な事態である。地方創生への本気度が疑われる。

自民党の大西英男衆院議員は会合で、神社の巫女(みこ)に選挙応援を断られたことを「巫女さんのくせに何だと思った」などと語った。何か勘違いしていないか。大西氏は昨年6月にも、報道規制発言で党から厳重注意されている。

後半国会では、環太平洋経済連携協定(TPP)承認案などの審議が予定される。夏の参院選を控え、与野党は浮足立つことなく、建設的な論戦を展開すべきだ。
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[朝日新聞] 財政政策 選挙の道具にするな (2016年03月30日)

安倍首相は、国会で成立した国の16年度予算の早期執行を指示した。それに伴う年度後半への手当てもあり、経済対策の検討に乗り出すと見られている。

税制でも、17年4月に予定する10%への消費増税について、2度目の延期を視野に入れる。「リーマン・ショックや東日本大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施していく」と強調する一方、「日本経済自体が危うくなるような道を取ってはいけない」と含みを持たせている。

深刻な財政難の中で予算拡充や増税先送りという選択肢をにらむのは、5月の主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の議長国として、世界経済を安定させるための政策協調を重視するからのようだ。

しかし、額面通りには受け取れまい。7月には参院選があり、衆院を解散しての同日選もありうる。有権者への給付を増やし、負担増は避けて、勝利を目指す。そんな思惑が込められているのは明らかだろう。

選挙にとらわれて財政政策に頼ってきた結果が1千兆円を超える国の借金である。同じ過ちを繰り返すべきではない。

確かに、新興国や資源国を中心に世界経済の先行きは予断を許さない。が、為替や株式など金融市場の動揺は小康状態にある。首相も「現在(日本経済が危うくなるような)重大な事態が発生しているとは全く考えていない」と国会答弁で語った。

首相が自ら発案し、有識者に助言を求める国際金融経済分析会合では、ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ・米コロンビア大教授の発言が注目された。氏は消費増税について否定的な見解を述べ、需要を作り出す重要性を強調したが、首相は「大変良い示唆をもらった」と応じた。

が、助言はいいところ取りするべきではない。スティグリッツ氏は、安倍政権が力を入れる法人税減税について「投資を促さない」とも指摘している。

過去最高水準の収益が続く企業部門がため込んだ資金を、どう賃上げや投資に結びつけるか。それが日本経済の喫緊の課題だ。政権はおカネを使わせようと企業に圧力をかけてきたが、動きは鈍い。ならば、減税どころか課税強化が検討課題になるのではないか。

日本経済の体質を変える取り組みこそが必要だ。目先の思惑から財政政策に頼るばかりでは体質転換は進まず、将来世代へのツケが膨らむ一方である。

経済政策は、選挙の道具ではない。
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[朝日新聞] 待機児童対策 財源確保して充実を (2016年03月30日)

「保育園落ちた」の匿名ブログをきっかけに国会でも論議になった待機児童問題で、厚生労働省が緊急対策を発表した。

柱は、待機児童が多い地域での規制緩和だ。人員配置や面積の基準が国の最低基準よりも厳しい自治体に、国の基準並みにして受け入れを増やすよう要請する。小規模保育所での受け入れの上限を19人から22人に引き上げる、といった具合だ。

だが、保育の現場からは国の基準がそもそも低すぎるとの声も聞かれる。自治体が独自に高い基準を設けるのも、安心・安全のために他ならない。子どもたちや現場の保育士にしわ寄せがいかないかが心配だ。

どこまで基準を緩めるかは自治体に委ねられている。判断も責任も丸投げされた自治体側も困惑しているのではないか。

問題解決の道筋を示したうえでの応急措置というならまだわからないでもない。だが、厚労省はこれまでも面積基準などを緩和してきた。本来は時限措置のはずが常態化している。同じことを繰り返すのか。

必要なのは、安心して子どもを預けられる保育サービスを増やすことだ。まずは、保育のニーズを把握することだ。

昨年4月に始まった子ども・子育て支援新制度では、待機児童にはカウントされない潜在的な保育ニーズも含めて整備計画を立てることになっているが、保育所整備の規模、スピードは実態から離れたままだ。今の整備計画が妥当なものなのか、再点検が必要だ。

ニーズに即して受け皿を整備する際には、人材確保も考えなければならない。各地で保育士不足が深刻化し、施設を作っても保育士が確保できず受け入れを制限しているところもある。

一方で、保育士の資格はあるのに働いていない潜在保育士は80万人弱とも言われる。背景にあるのは、低賃金や長時間労働などの待遇の問題だ。

自民、公明、民主の3党で合意した社会保障と税の一体改革では、消費税を財源に、保育士の給与を引き上げたり、職員の配置を手厚くしたりすることになっていた。

だが必要な財源には、消費税が10%になっても3千億円足りない。その10%も15年の実施予定が延期され、子育て支援の予算は大きな穴が開いたままだ。

安倍政権に求められていることは財源を確保し、約束を果たす姿勢を明確にすることだ。

これまでの延長線上で小手先の対応を繰り返しているだけでは、いつまでたっても深刻な事態は打開できない。
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2016年03月29日

[産経新聞] 【主張】安保法の施行 自ら同盟の抑止力高めよ 日米で戦略目標の明確化急げ (2016年03月29日)

日本を取り巻く国際情勢が厳しさを増すなか、国民を守る新たな法的枠組みが、ようやく実際に使えるものとなる。安全保障関連法が施行される意味合いだ。

危機にしっかりと備えて侵略者をひるませ、戦争を抑止する。それが新たな法制の本質である。安倍晋三首相が「現実を直視し、あらゆる事態に切れ目のない対応ができる法制」の必要性を唱えてきたのもそのためだ。

集団的自衛権の限定行使の容認によって、自衛隊は米軍などの外国軍と互いに守り合える。

≪効果発揮できる運用を≫

重要影響事態や国際平和協力における後方支援活動を充実する。日米同盟の抑止力を高め、国際社会との絆を強化する。これらの関連法の趣旨を最大限発揮する運用に努めなければならない。

国民は、新たな任務を担う自衛隊に期待している。中谷元防衛相は「万全の態勢で準備を整える」と述べた。国民の命と平和な暮らしを守るために、いかに法律を駆使できるかである。

留意すべきは、日本が防衛努力や国際貢献をしっかりと果たしていかなければ、せっかくの新法制も意味を失いかねないことだ。

昨年9月の関連法成立後、自衛隊をどのように活用していくか、装備、人員、予算をどう整えていくかについて政府与党はどれだけ国民の前で論じてきただろう。

朝鮮半島有事のような放置すれば日本への武力攻撃の恐れもある重要影響事態や存立危機事態などに備え、米軍支援を充実させる日米物品役務相互提供協定(ACSA)の改正が必要だ。それも行われていない。

参院選を控えた時期の安保論議は得策でないと判断し、関連法さえあれば安心だと思考停止しているのだとすれば、極めて問題だ。平時に議論と準備を積み重ねることこそ重要なのである。

最大野党の民進党の無責任ぶりはさらに際立つ。共産、社民両党と一緒になって安保関連法を「戦争法」と決めつけ、廃止を求める姿勢を続けるのだろうか。

個別的自衛権しか認めないといった冷戦期の古い憲法解釈にしがみつき、国民の生命を守りきれると考えるなら大間違いだ。

米国が「世界の警察官」であり続けることを、オバマ大統領がやめるといったことは、国際情勢に多くの悪影響を与えた。米大統領選で共和党候補指名争いを優位に戦っているトランプ氏は、日米同盟の重要性を否定している。

米国の内向き志向、孤立主義の傾向には、強い懸念を抱かざるを得ない。日本が個別的自衛権の殻に閉じ籠もったままでは、米国に日本防衛義務の確実な履行は期待できない。

≪米の孤立主義に警戒も≫

日本としての防衛上の役割を増すことで、発言権を維持し、同盟の絆が強まる。日本防衛やアジア太平洋地域の秩序維持に、米国をつなぎとめねばならない。

安保関連法の成立時、国民の理解は必ずしも高くなかった。だが、産経新聞とフジニュースネットワーク(FNN)の19、20日の世論調査では、関連法を「必要だ」と考える人が57・4%に上り、「必要でない」(35・1%)を大きく上回った。

関連法成立後も、東・南シナ海における中国の「力による現状変更」の動きや、北朝鮮の核実験、長距離弾道ミサイル発射などが相次いだ。国政での議論が不十分ななかで、国民は平和を脅かす出来事への危惧を強めているといえるだろう。

欧米や東南アジア諸国をはじめ世界59カ国が安保関連法への支持や理解を示している。国際社会では戦争抑止への日本の努力が正当に評価されている。

国連平和維持活動(PKO)では、宿営地の共同警備や駆け付け警護などの新任務が検討されている。自衛隊という貴重な国民の資産を、いかに効果的に活用するかの観点も重要である。

政府に特に求めたいのは、新たな法制の活用も含め、どのような国際社会のありようを日米両国が目指すのかを明示することだ。

具体的には、日米の「共通戦略目標」の改定だ。なかでも、経済的に密接な関係がある一方、安全保障上は脅威となる中国に対する共通認識が欠かせない。

身を挺(てい)して新たな任務に就く自衛官のため、表彰や補償などの処遇改善も不可欠である。
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[東京新聞] 安保関連法施行 「無言館」からの警鐘 (2016年03月29日)

集団的自衛権を行使できるようにする安全保障関連法が施行された。戦後貫いてきた専守防衛政策の変質だ。平和憲法の重みをいま一度思い起こしたい。

長野県上田市の南西部に広がる塩田平(しおだだいら)。その山裾に「無言館(むごんかん)」は立つ。昭和の時代、画家を目指しながら志半ばで戦火に散った画学生の作品を集め、展示する慰霊のための美術館だ。

コンクリート打ちっ放しの瀟洒(しょうしゃ)な建物。扉を開けると、戦没画学生の作品が目に飛び込む。館内を包む静寂。作品は何も語らず、圧倒的な存在感が、向き合う者を無言にさせる。故に「無言館」。


◆戦火に散った画学生
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無言館は、館主の窪島誠一郎(くぼしませいいちろう)さん(74)が一九九七年、近くで経営する「信濃デッサン館」の分館として開館した。

きっかけは、東京美術学校(現在の東京芸術大学)を繰り上げ卒業した後、旧満州(中国東北部)に出征した経験を持つ洋画家の野見山暁治(のみやまぎょうじ)さんとの出会いだった。

「戦死した仲間たちの絵をこのまま見捨てておくわけにはゆかない」という野見山さんとともに戦没画学生の遺族を全国に訪ね、作品収集を続けた。

召集され入営する直前まで、また戦地に赴いても絵筆や鉛筆を握り続けた画学生たち。無言館に展示されている絵の大半は、妻や両親、兄弟姉妹らごく親しい人や、身近な山や川を描いたものだ。

死を覚悟しながらも、絵を描き続けたいという情熱。そのひた向きさ、家族への感謝や愛情の深さが、無言館を訪れる多くの人を無言にさせ、涙を誘う。

戦争さえなければ、彼らの中から日本を代表する芸術家が、何人も生まれたかもしれない。その好機を奪った戦争は嫌だ、平和は尊い。それが無言館のメッセージであることは確かだ。


◆平和憲法耕し、花咲く
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窪島さんには無言館が反戦・平和の象徴とされることへのためらいがあるという。「絵を描くという純粋な行為を、政治利用することはできない」と考えるからだ。その考えは今も変わらない。

しかし、安倍晋三首相の政権が成立を強行した特定秘密保護法と安保関連法をきっかけに、時代への危機感が募り始めたという。

防衛・外交などの「特定秘密」を漏らした公務員らを厳罰に処す特定秘密保護法は、国民の「知る権利」を脅かしかねない。真実を隠蔽(いんぺい)し、画学生たちをも戦地へと駆り立てた戦中の記憶と重なる。

そして、きょう施行日を迎えた安保関連法である。

軍民合わせて日本国民だけで三百十万人、アジア全域では二千万人以上に犠牲を強いた反省から、戦後、先人は憲法九条に戦争放棄と戦力不保持を書き込んだ。

その後、日米安全保障条約を結び、米軍の日本駐留を認める一方で、急迫不正の侵害を排除する必要最小限度の実力組織として自衛隊を保有するには至った。

政府は、自らを守る個別的自衛権のみ行使する専守防衛に徹し、外国同士の戦争に加わる集団的自衛権の行使を禁じてきた。

歴代内閣が継承してきたこの憲法解釈を、一内閣の判断で変え、集団的自衛権の行使に道を開く安保関連法の成立を強行したのが安倍政権である。

自衛隊はきょうを境に「戦争できる」組織へと法的に変わった。

首相が視野に入れるのはそれだけではない。

自民党の党是は憲法改正。夏の参院選で他党を含めて「改憲派」で三分の二以上の議席を確保し、改正の発議を目指す。究極の狙いは九条改正による「国防軍」創設と集団的自衛権の行使を明文規定で認めることだ。

窪島さんには今、声を大にして言いたいことがあるという。

「平和憲法を耕していた年月がある。先人は憲法を耕し、育てた。種をまいたのはマッカーサー(連合国軍最高司令官)かもしれないが、耕し続けたのは日本人。無数の花が咲いている。そのことをもっと誇りに思うべきだ」


◆「厭戦」という遺伝子
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画学生が生き、そして戦火に散った戦争の時代。その時代に近づくいかなる兆候も見逃してはならない。それが命を受け継ぎ、今を生きる私たちの責務だろう。

戦中、戦後の苦しい時代を生き抜いた窪島さんは、「厭戦(えんせん)」という遺伝子を持つという。地元長野で、特定秘密保護法や安保関連法の廃止を目指す市民団体の呼び掛け人にも名を連ね、五十年以上ぶりにデモにも参加した。

「日本は一センチでも戦争に近寄ってはいけない国だ。角を曲がって戦争の臭いがしたら、戻ってこなければいけない。このままほっておけば『無言館』がもう一つ増える時代がやってくる」。窪島さんが無言館から鳴らす警鐘である。
posted by (-@∀@) at 13:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする