2014年10月12日

[産経新聞] 【主張】裁判員裁判 制度定着へ不断の改善を (2014年10月12日)

悩ましい問題である。強盗殺人事件の裁判で裁判員を務めた女性が、殺害現場の写真を見たことなどから急性ストレス障害になったとして、国に賠償を求めた訴訟の判決があった。

女性は、裁判員制度は、「国民に苦役を強いるもので違憲」と訴えたが、福島地裁はこれを退け「合憲」との判断を示した。

一方で、裁判員を務めたこととストレス障害には「相当因果関係が認められる」とし、補償を受けることもできると指摘した。

判決は妥当なものだ。裁判員制度は、国民の司法参加により、その日常感覚や常識を判決に反映させることなどを目的に導入された。制度が始まって5年が過ぎ、5万人以上が裁判員や補充裁判員として裁判に参加した。

日本人の勤勉な国民性にも支えられ、制度はおおむね順調に運用されてきたといっていい。さらなる制度の定着に向け、不断の検証、改善が必要だ。

福島地裁の判決にある「司法の国民的基盤の強化を図るものであることに照らせば、裁判員法の立法目的は正当」とした指摘は、十分に理解できる。残酷な証拠と向き合うことなどによる重い精神的負担を認める一方で、「裁判員の義務は公共の福祉によるやむを得ない制約」とも判断した。

刑事司法を、民意とかけ離れたものにしてはいけない。一方で司法参加には、国民も大きなリスクを負う。ストレス障害の影響で日常生活を営めなくなったとする女性の訴えは深刻なものだった。

女性の訴えを契機に、証拠調べのカラー写真を白黒やイラストにするといった措置が取られるようになった。

ただ証拠の残虐性を薄めれば、このことが判決に影響を与える可能性もある。判決後に会見した女性も、「本当のことを見せないと、刑事裁判はできない」と指摘したという。

冒頭で「悩ましい」と記した理由も、ここにある。

東京地裁は昨年、証拠調べで遺体写真などを見ることが必要な裁判では、選任手続きの際に予告し、辞退の訴えも柔軟に認めることを申し合わせた。最高裁もこの取り組みを全国の裁判所に「参考にしてほしい」と紹介した。

制度の充実と負担の軽減を両立させるために何ができるか。国民全体で考えるべき問題だ。
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[産経新聞] 【主張】ひまわり8号 精度の高さで貢献したい (2014年10月12日)

天気予報の雲の画像でなじみ深い気象衛星の後継機「ひまわり8号」が、鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Aロケット25号機で打ち上げられた。

ひまわり8号は最先端の観測機器が搭載された次世代型の静止気象衛星である。

今月半ばに高度約3万5800キロの静止軌道に入り、来年夏ごろ、運用中の7号から日本を含む西太平洋一帯の気象観測を引き継ぐ予定だ。

世界気象機関のもとで、日本はアジア、オセアニア、西太平洋地域の観測を担っている。ひまわりの気象データは約30カ国で活用される。8号は欧米の次世代機に先駆けて運用されることから、世界からも注目されている。

大幅に向上する観測性能を生かし、国民の安全な生活に寄与すると同時に、環境と防災分野での一層の国際貢献を期待したい。

静止気象衛星「ひまわり」は、1977年に初号機の運用が始まった。7号までの画像は白黒だが、最新の観測機器を備えた8号では雲の動きなどをとらえる画像が初めてカラーで表示される。

画像の細かさ(解像度)は2倍に向上し、観測間隔は従来の30分から10分に短縮される。観測範囲を日本列島周辺に絞れば、2分30秒ごとに高精度撮影が可能になるという。

観測性能の向上により、積乱雲の発達や移動を刻々ととらえることができる。特に、広島市の土砂災害をもたらしたような局地的な集中豪雨において、精度の高い予測やリアルタイムの情報発信が期待される。

また、これまでは雲と区別できなかった黄砂や火山の噴煙も識別でき、大気中の微小物質の精度の高い観測も可能になる。火山活動の観測や予測、地球環境の監視でも「宇宙の目」が果たす役割は大きい。

地球温暖化などの影響で、地球規模で極端な気象が多発する傾向にある。昨年11月にフィリピンを襲った強大な台風30号では、多くの人が犠牲になった。人類の食を支える農業や漁業分野でも、精度の高い気象情報は欠かせない。

日本が世界各国から必要とされる国家であり続けるうえで、防災と環境は、国際貢献の中でも重要な柱と位置付けられる。ひまわり8号の運用を軌道に乗せ、世界を牽引(けんいん)してもらいたい。
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[東京新聞] 週のはじめに考える “大転換”の風が吹く (2014年10月12日)

ドイツでは、再生可能エネルギーが急速に普及しています。かといって、電力が足りなくなることはなく、ものづくりも好調です。風は誰が吹かすのか。

今年ドイツでは、電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合が、28・5%になりました。

二〇〇〇年には3%しかなかった風力や太陽光の電力が、25・1%の褐炭火力を抜いて電源別第一位の座に就いたのです=写真。

日本では、せいぜい2%程度しか、太陽や風の力を活用していません。ドイツでは、なぜ増えていくのでしょうか。

「そもそも、なぜエネルギーベンデ(大転換)が必要か」

ドイツ環境・建設・原子力安全省気候変動対策・エネルギー転換局長のトーステン・ビショッフさんは問い掛ける。

ドイツで公表された最新の予測では、二一〇〇年までに世界で二億人を超える人々が、地球温暖化による海面上昇に暮らしや命を脅かされる。中国だけでも五千万人、日本では千三百万人が影響を受けるという。

温暖化を食い止めるため、世界は行動を起こさなければなりません−。私たちの想像以上に欧州は、温暖化に対する危機感を強く共有しています。

「エネルギーベンデは、温室効果ガス削減の特別な道具です」とビショッフさん。

連邦政府が描く二〇五〇年までの温室効果ガス削減のシナリオには「再エネ電源を八割にする」と明記されています。

福島原発事故による連邦政府の脱原発政策が、再エネの普及を加速させました。

国として確かな目標を持つ−。このことがエネルギーベンデの大前提になっている。目標を実現するために、連邦政府は厳格なルールを掲げています。


◆再エネが奏でる主旋律
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ビショッフさんはその原則を「再エネが主なリズムを奏で、他の電源がそれを補う」と表現します。送電線の中では再エネの電力が最優先、火力や原子力は常に、道を譲らなければなりません。

発電事業と送電事業は完全に分離され、送電事業者は再エネの電力を、決められた値段で無制限に買い取らなければなりません。

風力や太陽光は天候に左右されやすく、電源として不安定な面があるのは否めない。それを承知で再エネを電力の主役に据えたことにより、ドイツでは、ベースロード電源という考え方が、時代遅れになりました。

日本のエネルギー基本計画では、原発を維持する理由にされた、二十四時間、安定的に使える高出力の電源が、不要になるということです。その代わり、送電網の拡充と近代化が必要です。

再エネ電力の売り手の多くは、個人や小規模事業者です。

小規模で多様な電力をまとめ上げ、よりスムーズに家庭や事業所へ送り込むマネジメントが、送電事業者の役割です。高圧超電導ケーブルの開発など毎時、毎分、毎秒単位の需給調整が可能になるような、柔軟な送電網の確立にドイツは挑んでいるのです。

エネルギーベンデとは、電源の転換だけではありません。送電網も含めたエネルギーシステム全体の大転換を意味しています。

日本では、再エネの買い取り申請が増えすぎて、大手電力会社が受け入れを中断し始めた。

不安定な再エネ電力が送電線に殺到すると、周波数が乱れ、停電を引き起こす恐れがある…。ドイツではできない言い訳です。

もう一つ、エネルギーベンデに欠かせないのが、電力消費者の理解でしょう。

再エネの買い取り料金が賦課されて、家庭の電気料金が値上がりしたのは確か。ところが世論調査では、ドイツ市民の九割以上が惑うことなくエネルギーベンデを支持しています。石油やガスを輸入しなくていい社会、原発事故や温暖化の心配がない未来への投資だと、割り切っているからです。


◆市民が何を選ぶのか
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ビショッフさんに「政府の意思と国民の選択が、成功の秘訣(ひけつ)でしょうか」と聞いてみました。

ビショッフさんは、にっこり笑って言いました。

「ドイツでも四年に一度、連邦議会の選挙があるからね」

風車へ風を送るのも、太陽光に光を当てるのも、結局は私たちだということです。
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[毎日新聞] 社説:視点トレイルラン 共存の道を探ろう=落合博 (2014年10月12日)

約1300年前の奈良時代、山に分け入り尾根を縦走する、当時としては珍しい難行苦行に挑んだ男がいた。修験道の開祖、役小角(えんのおづぬ)だ。役行者(えんのぎょうじゃ)と言った方がなじみがあるだろう。

今、登山道などの未舗装路を駆け巡る新しいスポーツ「トレイルランニング(トレラン)」が注目を集めている。平地ではなく、あえて上り下りに挑むトレイルランナーたちは21世紀の役行者と言えるかもしれない。

東京・奥多摩地域で12?13日、日本山岳耐久レース「長谷川恒男CUP(ハセツネカップ)」が開催される。71.5キロを24時間以内に走破する大会で、22回目の今年は約2500人が参加する。完走率は近年、80%前後で推移している。

民間の調査会社によると、トレラン参加者は20万人に達し、潜在人口は70万人という。大会数は年間200を超えるとも言われ、観光資源に乏しい自治体が地域おこしのイベントとして支援する大会も少なくない。

日本山岳協会は都道府県の山岳連盟や大会の主催者団体に呼びかけ、今年8月に「日本トレイルランニング会議」を結成した。用語の統一、競技規定や大会規則の作成、公認指導者・審判員の養成、選手育成・強化普及などを進めていく。

もはや一部の人たちが楽しむマニアックなスポーツではなく、山岳スポーツとして市民権を得つつあると言えそうだ。

一方で、問題もある。集団走行などによる登山者やハイカーとの接触やトラブル、はみ出し走行による植生への悪影響も指摘されるようになっている。7年前のハセツネカップでは夜間に転落死亡事故が発生した。

週末多くの登山者が訪れる神奈川県鎌倉市では今年3月、議会がトレラン規制の条例化を求める陳情を採択した。東京都は事前相談などを盛り込んだ指針を年度内にまとめる予定で、近くパブリックコメント(意見公募)を実施する。国立公園を管理する環境省も検討中だ。

山のルールや常識、自然への思いやりを欠くようでは賛同は得られず、規制の声は高まるだろう。大会開催に際しては山岳保険の加入、救急対応、危険箇所への人員の配置などの事故・安全対策に加え、主催者は地元の警察や消防などへの届け出を怠ってはならない。ハセツネカップが実施している安全走行講習会、コース整備や清掃登山などの取り組みは評価したい。

山は誰のものでもない。登山、散策、森林浴など山の楽しみ方は多様で、優先順位はつけられない。共存のための知恵をみんなで出し合いたい。(論説委員)

2014年10月12日 02時30分
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[毎日新聞] 社説:女性活躍推進法案 男性の働き方を変えよ (2014年10月12日)

これで女性が活躍できる社会になるだろうか。臨時国会に提出される女性活躍推進法案がまとまった。大企業(従業員301人以上)に女性登用の数値目標を義務付けたが、企業が実情に応じて数値を設定でき、何を公開するかも判断できる。企業の自主性に委ねるだけでは「指導的地位にある女性を2020年までに3割に増やす」という政府目標が達成できるとは思えない。

同法案は経営者に対し、新規採用者や管理職中の女性比率、勤続年数の男女差、労働時間の状況を把握・分析させ、女性の登用促進に向けた取り組みを「行動計画」にまとめ公表することを義務付ける。ただ、数値目標は「倍増する」などあいまいな表現が可能で、数値目標のどれを公開するかも企業が選択できるため、指導的地位にある女性の比率がどう改善されたのか正確に把握するのは難しい。また、「名ばかり管理職」を増やして女性登用が進んだように見せかけてもチェックできないのではないか。

国は必要に応じて助言、指導、勧告ができることになっており、女性の活用が進んでいる企業を公共工事の入札などで優遇することも可能になる。企業任せではなく、政府が強い指導力を発揮して実効性を高めなければならない。

これまでも女性の活用や職場定着を図る施策は行われてきたが、第1子出産後に退職する女性はいまだに6割に上る。非正規雇用で働く女性の割合もほとんど改善が見られない。育児休業制度や短時間勤務制度を企業が取り入れるようになったが、女性社員ばかりが育児・介護休暇制度を利用し、利用期間が長期化することによるキャリア形成の遅れも指摘される。育児をしながら働き続けられる条件は整備されつつあるが、女性が十分に活躍できる状況にはなっていないのである。

正社員の長時間労働は多くの企業で相変わらず行われており、時間外に長時間働くことが難しい子育て期の女性社員が重要な仕事に就けない原因の一つとなっている。日本の男性が育児や家事に参加する時間の少なさは以前から問題となっているが、長時間労働はますます夫から育児を遠ざけているのだ。

女性登用の数値目標にばかり焦点が当てられているが、それを阻んでいる時間外労働の慣行の是正をはじめ、短縮労働や在宅勤務の推進、幼児や学齢期の児童の養育場所の確保、税制や社会保障制度の是正などに政府や企業は本腰を入れて取り組むべきだ。

男性社員の働き方を変えなければ、女性が活躍できるようにはならないだろう。

2014年10月12日 02時40分
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[読売新聞] 「消費税10%」 やはり軽減税率が不可欠だ (2014年10月12日)

◆家計への過大な負担は避けよ

さらなる消費増税が、景気の停滞に追い打ちをかけることはないか。

消費税率を予定通り2015年10月に、8%から10%へ引き上げるかどうかを巡って、政府・与党内で論議が活発化している。

財政再建は先送りできない課題だが、今年4月の消費増税後、消費の低迷が続いていることを軽視してはならない。

仮に「消費税10%」に踏み切るのなら、食料品など必需品の税率を低く抑える軽減税率を導入し、家計の負担を和らげるべきだ。

◆迫られる難しい決断

安倍首相は7?9月期の国内総生産(GDP)などの経済指標を確認し、年末までに増税に踏み切るかどうか決める方針だ。

見送った場合、社会保障費の財源確保がさらに厳しくなり、20年度までに基礎的財政収支を黒字化する政府目標の達成も遠のく。

かといって、増税の影響で景気が腰折れし、デフレを脱却できなくなっては、元も子もない。

首相は、「国民の生活に資する判断をしたい」と述べている。景気や財政の状況を総合的に勘案した、難しい決断を迫られよう。

消費税率を10%に上げる場合には、大きな影響を受ける消費の動向に、特段の注意を要する。

代表的な指標である家計調査では、一般世帯の消費支出が4月から5か月連続でマイナスだ。

天候不順もあり、夏のボーナス商戦は低調で、エアコンなど耐久消費財への支出が急減した。増税前の駆け込み需要がほとんど見られなかった旅行などのサービス消費も、不調が続いている。

増税後の「反動減」とは別に、消費増税分を含め3%を超える物価上昇率に、収入の伸びが追いついていないことが、消費不振を長引かせている大きな原因だ。

円安で穀物や資源の輸入価格が上昇し、食料品などに値上げの動きも広がってきた。節約による「生活防衛」に動く消費者が、一層増える恐れがある。

政府が消費税8%時に打ち出した5・5兆円規模の経済対策は、公共事業が中心で、消費者向けの施策は限られた。低所得者への1万?1・5万円の給付措置も、家計支援としては力不足だった。

政府は、消費が落ち込んだ教訓を踏まえ、「消費不況」の防止に有効な対策を検討すべきだ。

◆対象品目をどう絞るか

軽減税率なら、1回限りの給付金とは違い、負担軽減の効き目は持続する。対象品を購入するたびに軽減措置の恩恵を実感できることから、消費者心理の冷え込みを防ぐ効果も期待できよう。

自民、公明両党は8日の与党税制協議会で、軽減税率に関する本格的な論議を始動させた。

気がかりなのは、昨年末の与党税制改正大綱で、消費税率10%時に軽減税率を導入する方針が明記されたのに、依然として自民党と公明党に温度差があることだ。

公明党の斉藤鉄夫税制調査会長が、「軽減税率導入に不退転の決意で臨む」と積極姿勢を見せるのに対し、自民党の野田毅税調会長は、「これから丁寧に詰めていく」と慎重である。

自民党を支持する中小企業団体などは、事務負担の増加などを懸念して反対している。

確かに、品目によって違う税率が適用されれば、帳簿作りや納税事務の手間は増える。

ただ、欧州諸国の大半は、日本の消費税にあたる付加価値税に軽減税率を導入している。海外の先行事例を研究し、どうすれば民間の事務負担を最小限に抑えられるのか、議論を深めたい。

軽減税率を全ての「飲食料品」に適用すると、税率を1%軽減するごとに、消費税収は年6600億円も減る。対象品目をどう絞り込むかが課題だ。

公明党が、穀物や生鮮食料品に対象を限って、減収額を抑える案を練っている。与党協議で、具体策の検討を急ぐべきだ。

◆新聞と書籍にも配慮を

欧州諸国など軽減税率を採用する国の大半が、食品と並んで新聞や書籍を対象としている。

とりわけ、日本の新聞は戸別配達率が9割以上にのぼり、多くの家庭にほぼ毎日、新聞が届く。これが、民主主義や活字文化を支える大きな役割を果たしている。

書籍も、多様な知識の普及に貢献してきた。

新聞や書籍は、単なる消費財ではなく、豊かな国民生活の維持に欠かせない公共財と言える。

海外の例にならい、日本も新聞や書籍について、軽減税率を適用すべきである。
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[朝日新聞] 秘密法施行―「丁寧に説明」はどこへ (2014年10月12日)

「今後とも国民の懸念を払拭(ふっしょく)すべく、丁寧に説明をしていきたい」。昨年12月、安倍首相は特定秘密保護法の成立を受けた記者会見でこう述べていた。

それから10カ月。果たして丁寧な説明はなされたか。首相は自らの言葉に誠実であったと言えるだろうか。

秘密法の施行日を12月10日とする政令と、同法の運用基準が近く閣議決定される。

運用基準については、1カ月間で2万3820件のパブリックコメント(公募意見)が寄せられた。これを受け、知る権利について「十分尊重されるべきだ」と明記。さらに法施行5年後に運用基準を見直すなど27カ所の修正が加えられたものの、何が特定秘密に当たるのか、指定基準は不明確なままだ。

内閣府には新たに「独立公文書管理監」が置かれ、各省庁の大臣らに特定秘密の提出を求め、運用基準に合わないと判断すれば指定解除を要求できる。ただし、大臣らは「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼす」ことを理由に、管理監への情報開示を拒否できる。恣意(しい)的な運用を防ぐ「歯止め」となり得るのか、はなはだ心もとない。

また、国会も、常設の監視機関「情報監視審査会」を衆参両院に設置する。政府に個別の特定秘密を提供するよう求めることができるが、こちらも「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼす恐れ」があると政府が判断すれば、提供を拒める。

何が秘密に当たるのかがわからない。秘密の範囲が恣意的に、際限なく広げられる危険性がある。しかも半永久的に公開されないかもしれない――。秘密法に対する、これらの根本的な懸念や不安は、何ら払拭されていない。ここにきて自民党総務会でも、運用基準をめぐり、「知る権利」「報道の自由」が十分に担保されていない、運用が正しいかどうか誰も検証できないなどの意見が出たという。

先日の衆院予算委員会では、集団的自衛権行使を判断する根拠となった情報が特定秘密に指定され、国会に開示されない懸念などが指摘された。

首相は「行政機関が特定秘密提供を拒む場合には、公文書管理監にその理由を疎明しなければならないので、提供されない場合は極めて限られる」と答えた。それは「あり得る」ということなのか。だとすれば具体的にはどのようなケースが想定されるのかを聞きたいが、議論はそれ以上深まらなかった。

ただすべきことはまだ多くある。国会ではギリギリまで議論を重ねてほしい。
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