2014年10月03日

[東京新聞] 大学脅迫 言論への暴力許されぬ (2014年10月03日)

二人の元朝日新聞記者が勤める二大学にそれぞれ退職を要求する脅迫文が届いた。暴力による言論の排除は民主主義の土台を壊す卑劣な行為だ。互いの違いを認め合う寛容と共生の精神を高めねば。

一人が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市)には五月と七月に、もう一人が教授を務める帝塚山学院大(大阪府)には九月に相次いで送りつけられた。警察は威力業務妨害の疑いで調べている。

脅迫文には「辞めさせなければ学生に痛い目に遭ってもらう。釘(くぎ)を入れたガス爆弾を爆発させる」などと書かれていた。罪のない学生を人質に取る形で、元記者らを大学から追い出すよう求めていた。悪質極まりない。

二人は記者時代に慰安婦報道に携わった。朝日の報道や論調に違和感を覚えたり、腹が立ったりしたとしても、言論で伝えるのが民主主義の鉄則である。気に食わない相手を力ずくでねじ伏せるなら、暴力団のやり口と同じだ。

かつて教授は、韓国の済州島で女性を強制連行したと証言した故吉田清治氏の記事をいくつか書いていた。非常勤講師は元慰安婦の証言を先駆けて報じていた。

朝日は八月に過去の慰安婦報道の検証特集を載せ、吉田氏に関する記事を間違いだったとして取り消した。元慰安婦の記事には事実のねじ曲げはないとして捏造(ねつぞう)説を否定した。木村伊量社長が謝罪したのは九月に入ってからだった。

一連の報道の訂正や謝罪はあまりに遅きに失したと強く批判された。日韓関係をはじめ内外に重大な悪影響を与えたとの厳しい指摘も続いている。朝日は誠実に受け止め、応えねばならない。

しかし、言論による批判や抗議を超え、威迫や暴力による攻撃に及べば、人びとを萎縮させ、社会そのものが成り立たなくなる。削除が難しいネットを使っての嫌がらせも見過ごせない。

一九八七年五月、朝日の阪神支局に押し入った男が散弾銃で記者を殺害した。九三年十月、右翼活動家の野村秋介氏が朝日の東京本社を訪れ、拳銃自殺した。自分の考えや価値観を押し通すために自他を傷つけても、何ら得られるものはない。

「私は、あなたの意見には反対だ。だが、あなたがそれを主張する権利は命を懸けて守ろう」

十八世紀のフランスの啓蒙(けいもう)思想家ボルテールにまつわる名言を胸に刻みたい。相手の権利を守ってこそ、自分の権利も保障される。自由と民主主義の原理である。
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[東京新聞] 火山災害 メッセージ見落とすな (2014年10月03日)

長野、岐阜県境の御嶽山の噴火は四十七人の死亡が確認され、戦後最悪の火山災害となった。悲しみを繰り返してはならない。火山が発するメッセージを見落とさず「共存」していかなくては。

前兆は、なかったのか。

御嶽山では、半月ほど前から微小地震の増加が観測されていた。その後、減少したため噴火警戒レベルが「平常」から引き上げられることはなかった。

多くの専門家は「これだけで噴火の恐れがあるとは言えない」と、警戒レベル据え置きの判断を追認しているようである。

現状の科学的知見では、噴火の予知は難しいとされる。しかも、火山ガス、火山灰などの降下物、火砕流、火山泥流、溶岩流など、噴火に伴って多様な現象が発生するという特徴がある。

想定外の事態が起こりうる、という認識を共有することは、自分たちを守る第一歩であろう。

もちろん「分からない」で済ませてしまうわけにはいかない。

二〇〇〇年三月に北海道の有珠山が噴火した際は、その二日前に緊急火山情報が出された。一万六千人もの住民が避難し、人的被害を防ぐことができた。

集積されたデータが多く、分かりやすい火山だった、とも言われるが、それだけではあるまい。

予知成功の背景には、有珠山のホームドクターとして、その麓に住み、日夜、山と住民に向き合ってきた研究者の努力があった。

火山が発するわずかなメッセージも聞き漏らさぬようにしていたからこそ、なのである。

いうまでもなく、日本は火山国である。火山は荒々しく、また美しく、登山者によく親しまれている。火山の周辺にわき出る温泉も、地方の貴重な観光資源である。あるいは熊本県の阿蘇山のように、カルデラの中に人が暮らしているところもある。

この国に暮らす私たちは、火山と共存していくしかない。火山の恵みを利用するだけでなく、火山を知り、その恐ろしさとも付き合っていく覚悟が必要だろう。

一般的に、火山災害が繰り返される周期は、地震・津波や土砂災害などに比べ、はるかに長い。だから、他の自然災害に比べ、火山災害の経験をめぐる地域の伝承は少ない。

だからこそ、火山の動向には敏感に耳を傾け、観測機関、自治体、住民、登山者は情報を共有したい。火山の発するメッセージを見落としてはならない。
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[毎日新聞] 社説:御嶽山の犠牲者 「戦後最悪」から教訓を (2014年10月03日)

長野、岐阜県境にある御嶽山(おんたけさん)の噴火は戦後最悪の火山災害となった。

噴火活動が続き火山灰や火山ガスが放出される中、警察や消防、自衛隊が山頂付近で救出活動を行い、2日までに47人の死亡が確認された。計44人が死亡・行方不明となった長崎県の雲仙・普賢岳の火砕流災害を上回る。私たちはこの被害を教訓として、今後の火山対策に生かさなければならない。

警察や地元自治体によれば、安否が確認されていない人がまだ多数おり、山頂付近に取り残されている可能性がある。関係機関は捜索を継続するという。天候悪化も予想されており、2次災害の発生には十分な注意を払ってもらいたい。

生存者の証言などから浮かんでくるのは、噴火に伴って飛び出してきた噴石の恐ろしさだ。長野県警によれば、死亡が確認された47人中46人の死因は、噴石が直撃したことなどによる「損傷死」だった。

噴石は秒速150?200メートルに達することがあり、小石程度の大きさでも衝撃は大きい。御嶽山には噴石などを避ける退避壕(ごう)は設置されておらず、噴火直後に山小屋などに逃げ込むことができたかどうかが明暗を分けたと見られる。

日本には活火山が110あり、このうち富士山を含めた47火山は、今後100年程度の中長期的な噴火の可能性があるなどとして、気象庁が常時監視している。しかし、退避施設が整備されているのは、阿蘇山や浅間山などわずかしかない。活火山の登山者は、平常時もヘルメットなどの装備を準備するようにしたい。

御嶽山では噴火の半月ほど前に火山性地震が多発した。気象庁は情報を自治体に伝え、ホームページにも掲載した。しかし、噴火警戒レベルは平常の「1」を維持し、登山者らへの積極的な情報提供はなかった。

活火山が作り出す景観は、各地で観光資源となっている。警戒レベルの引き上げは、観光客の減少に直結する。政府は情報提供の在り方などを検証する方針だが、人命最優先の対応が求められる。

内閣府の検討会は昨年、火山の大規模噴火に備え、監視体制の強化や避難計画の早期策定を求める提言をまとめた。東日本大震災をきっかけに、富士山を含め全国で火山の活動が活発化する恐れがあるという。

だが、大学で火山の観測や研究に従事する研究者は40人程度で、火山学を専攻する学生も減っている。

東日本大震災の教訓の一つは、災害リスクを「想定外」としてしまうことの恐ろしさだった。政府はもちろん、国民一人一人が火山国に暮らすリスクを認識し、防災・減災対策に取り組む必要がある。

2014年10月03日 02時30分
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[毎日新聞] 社説:大学への脅迫 看過できない卑劣さ (2014年10月03日)

元朝日新聞記者が教授を務める帝塚山学院大学(大阪狭山市)と、別の元朝日記者が非常勤講師を務める北星学園大学(札幌市)に、それぞれの退職を要求する脅迫があった。

「学生に痛い目に遭ってもらう」 「大学を爆破する」

応じなければ学生に危害を加えるという趣旨で、帝塚山学院大の元記者は教授を辞職した。大阪府警と北海道警が威力業務妨害容疑で捜査している。

2人の元記者はかつて慰安婦報道に関わっていた。

教授は朝鮮が日本の植民地だった戦争中、済州島で「慰安婦狩り」を行ったという吉田清治氏(故人)の証言を初めて報じたとされた。朝日新聞は、8月の自社報道点検でこの「吉田証言」を虚偽と判断し、記事を取り消した。しかし9月末に、初報を執筆したのは教授ではなく別の記者だったと訂正した経緯がある。

また非常勤講師は元慰安婦の証言を初めて報道した。元慰安婦の裁判を支援する団体の幹部である韓国人の義母に便宜を図ってもらい、都合の悪い事実を隠したとの批判が寄せられていたが、報道点検は事実のねじ曲げはなかったと結論づけた。

虚偽の「吉田証言」報道を放置していたことで、朝日新聞は大きな代償を支払うことになった。木村伊量(ただかず)社長が謝罪の記者会見を行い、社外の第三者委員会が取材の経緯や影響を検証することを決めた。自ら明らかにすべき事柄は少なくない。

だがそれでも、意に沿わない報道やその筆者を社会から排除しようと無関係な団体を脅す行為は許されない。脅迫は元記者の勤め先の大学にとどまらず、ネット上では家族までプライバシーをさらされ、攻撃の的になっている。

北星学園大は、学生の父母らから非常勤講師に関する問い合わせや意見が多数寄せられ、学長名の説明文をホームページに急きょ公開した。学問の自由・思想信条の自由を重んじる大学の対応が注視される。

自由な議論を保障するためにも警察には容疑者を早く検挙してもらいたい。

「反日」「売国」「国賊」??。今回の事件の背景には、一部の雑誌やネット上に広がる異論を認めない不寛容な空気がある。各地で深刻さを増すヘイトスピーチ(憎悪表現)にも相通じる現象だ。乱暴な言葉で相手を非難したり、民族差別をあおったりすれば、慰安婦問題の解決はますます遠くなるだろう。

短絡的なレッテル貼りは、同種の事件を生む土壌になる。私たち一人一人が力を合わせて差別的な言動を締め出し、冷静な議論ができる環境を整えなければならない。

2014年10月03日 02時40分
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[読売新聞] 大学への脅迫文 言論封じを狙う卑劣な行為だ (2014年10月03日)

脅迫で言論を封じ込めようとする行為を看過することはできない。

かつて慰安婦報道にかかわった元朝日新聞記者が教員として勤務する帝塚山学院大学(大阪府)と北星学園大学(札幌市)に、2人の退職を要求する脅迫文が送りつけられた。

「辞めさせなければ、学生に痛い目に遭ってもらう」「クギを入れたガス爆弾を爆発させる」

脅迫文には、そうした文言が書かれ、クギが同封されたものもあった。元記者を攻撃するだけでなく、学生にも危害を加えると脅す行為は、極めて卑劣だ。

警察は威力業務妨害容疑で捜査を始めた。犯人の摘発に全力を挙げてもらいたい。

帝塚山学院大教授だった元記者は、韓国で女性を強制連行したと虚偽の証言をした吉田清治氏(故人)に関する記事を書いた。

朝日新聞が8月に自社の慰安婦報道の検証記事を掲載して以降、大学側に「教授を辞めさせないのか」といった問い合わせが相次いだ。元記者は脅迫文が届いた9月13日付で辞職した。

北星学園大で非常勤講師を務める元記者は、韓国人元慰安婦の証言を他紙に先駆けて報道した。

ネット上では、元記者の家族とされる名前を挙げて、中傷する書き込みすら見られる。報道には何の関係もない家族をも攻撃の対象にしている。言語道断だ。

朝日新聞の一連の慰安婦報道は、国による強制連行があった、という誤解を世界に広めた。

日本の国益を著しく害し、韓国側の反日感情をあおった責任は重大である。

「吉田証言」については、1992年頃から、内容に疑義が呈されていた。それにもかかわらず、朝日は見直さず、今年8月にようやく記事を取り消した。

報道機関に対する信頼を大きく損ねたことは間違いない。

だが、朝日の報道が意に沿わないからといって、脅迫行為に訴えることが許されるはずもない。言論に問題があった場合は、あくまで言論で反論していくべきだ。

読売新聞は、紙面で朝日の慰安婦報道を分析し、いかに甚大な影響を及ぼしたかを示した。誤報の背景を探り、徹底検証することが、傷つけられた日本の名誉を回復し、報道機関の信頼を取り戻すためには必要だと考えるからだ。

言論の自由は、民主主義社会が成り立つための基本原則である。いかなる場合にも、この原則は堅持されなければならない。
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[読売新聞] 御嶽山惨事 火山情報の発信に工夫が要る (2014年10月03日)

噴煙に巻き込まれたら逃げようにも逃げられない。火山の恐ろしさを改めて思い知る。

御嶽山噴火は戦後最悪の火山災害となった。死者は、1991年、93年に計44人の死者・行方不明者を出した雲仙・普賢岳の火砕流を上回る。

御嶽山は、日本百名山に数えられる人気の山だ。紅葉シーズンの週末、山頂に人が集まる昼食時間帯の噴火が被害を広げた。噴石が当たり、亡くなった人が多い。

警察や陸上自衛隊、消防などが懸命の捜索を続けている。火山灰が積もり、有毒ガスも発生している。再噴火や、降雨による土石流の恐れもある。くれぐれも二次災害には注意してもらいたい。

遭難者の安否情報は二転三転し、帰還を待ちわびる家族は振り回された。長野県の災害対策本部と県警、消防が連携を欠き、確認が不十分なまま、捜索状況が伝えられた結果だろう。

国内には110の活火山がある。活動性の高い要注意の火山を抱える自治体は、万一の噴火を想定した備えを強化すべきだ。

今回の噴火で、重要性が浮き彫りになったのが登山届である。登山者や同行者の氏名、行程、緊急連絡先などを記入し、登山口のポストなどに入れておく。

遭難時に、自治体や警察などは、誰が入山しているかを迅速に把握できる。登山計画を基に、遭難地点の割り出しにも役立つ。

遭難者が多い群馬県の谷川岳や富山県の剱岳では、県条例で登山届の提出を義務づけている。これらは例外で、他の山では登山者の自主性に任せているのが現状だ。未届けで入山する人は多い。

御嶽山でも、噴火時にどれだけの人がいたか、今も把握に手間取り、捜索に支障が生じている。苦い教訓である。

気象庁は、御嶽山の活動を24時間体制で監視してきた。9月中旬には、火山性地震を観測したと、3度にわたり周辺自治体に伝え、ホームページにも掲載した。

ところが、この地震が何を意味するか、具体的な解説がないこともあって、自治体側が重要視することはなかった。

異変を把握したら、その内容を分かりやすく伝える工夫が不可欠だ。登山口や山小屋に表示することも役立つだろう。登山者も、火山情報には十分留意したい。

安倍首相は国会で、「火山活動の監視を強化するなど、対策にスピード感を持って取り組む」と述べた。惨事を繰り返さぬよう、防災体制を再点検すべきだ。
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[朝日新聞] 代表質問―論争挑んでこそ野党 (2014年10月03日)

安倍首相の「安全運転」には終わらせまい。野党のそんな意気込みが見えた論戦だった。

きのうまでの衆参両院での代表質問は、1月の通常国会とはやや様子が変わった。野党第1党の民主党とともに、維新の党も安倍政権への対決姿勢を鮮明にしたからだ。

圧倒的な力を持つ安倍政権に向き合う立ち位置が、ようやく定まったということだろう。この姿勢をこれからも貫き、予算委などを舞台にさまざまな論点を示してほしい。

通常国会では「責任野党とは政策協議を行っていく」との首相の呼びかけに、野党の足並みが乱れた。だが、安倍政権は結局は議場外での自民、公明の与党協議ばかりを重視した。集団的自衛権の行使を認める閣議決定への過程はその典型だ。

衆参両院で多数を持つ以上、与党はそうしたやり方に傾きがちだ。そこで野党が存在感を示すには、政策論で切り込む正攻法しかあるまい。

民主党の海江田代表は、「地方創生」と「女性の活躍」を掲げる首相にこう問いかけた。

「各府省が地方創生という冠をつけて縦割りのバラマキ予算要求を行っている」「首相は子育てや介護に追われ、仕事との両立に疲れ果てている女性を忘れてはいないか」

地方や女性を重視すべきなのは総論ではその通り。だが、政権がこれから具体化するという政策が霞が関や大企業からの視点に偏ることはないのか。野党の側からも対案をぶつけていくべきだ。

維新の党の江田代表は、消費増税の必要性は認めつつ「とてもさらなる増税を行える経済体力にはない」と語った。同じ意見の野党は多い。

首相は所信表明演説で有効求人倍率の高水準や賃上げの実績を誇ったが、経済指標は明るいものばかりではない。アベノミクスの中間総括の意味でも、税率の再引き上げについては徹底的な議論が必要だ。

江田氏はまた、国会議員に毎月100万円支給されている「文書通信交通滞在費」について、使途を公開する法改正を首相に呼びかけた。

首相は「国会において議論を」との答弁にとどめたが、消費増税に伴い自民、公明、民主の3党が約束した「身を切る改革」は何ら実現していない。定数削減には賛否があるにしても、経費の透明化に何をためらう必要があろうか。

野党は、巨大与党が安閑としていられない提案を打ち出し、国会を活性化させてほしい。
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[朝日新聞] 香港デモ―長官選のあり方再考を (2014年10月03日)

「雨傘革命」と呼ばれる大規模な抗議行動が香港で続いている。警官隊の催涙ガスを傘で防いだことに由来するという。

中心街の大通りを埋め尽くす人びとの数は、香港の自治が脅かされていることへの危機感を表している。

過去のデモに比較的穏やかに対処してきた香港警察が今回、催涙ガスを使ったことは、市民の驚きと反発を招いた。さいわい犠牲者は出なかったが、89年の北京・天安門を思い出した人も少なくない。

警察はこれ以上の実力行使を控えるべきだ。万が一にも、香港駐留の中国軍部隊が出動することがあってはならない。

今回のデモは、香港トップの行政長官を選ぶ3年後の次期選挙をめぐる対立が招いた。

香港史上初めて全有権者による普通選挙をすることになっている。問題は、候補者の資格を与えられる人の決め方だ。

中国と香港当局は、各界代表1200人による指名委員会で候補者を2?3人に絞る制度にしようとしている。事実上、中国寄りの人物しか立候補できなくなり、中国に批判的な民主派は排除される。

これに反発する学生が立ち上がり、多くの市民が同調した。街頭が長く占拠される事態により経済や観光への影響を心配する声もあるが、これまで学生らは冷静に行動しており、多くの国々にも共感を広げている。

候補者の事前指名制は、香港の憲法にあたる香港基本法に明記してある。それを実施したまでというのが中国の言い分だ。しかし普通選挙にはそれを支える精神というものがある。立候補をしにくくし、異なる立場、意見の候補者が自由に競うことを妨げる制度は正当性を欠いていると言わざるを得ない。

中国領になっても、国際金融都市・香港は大陸と異なる自治領域を維持している。この「一国二制度」の知恵が、97年に英国から返還された当時の共産党指導部の選択だった。しかしその後、歴代政権は、残念ながら「二制度」より「一国」を強調しがちだ。

中国政府はいま、抗議行動の報道を厳しく規制しており、ネットなどで見られないように管理している。香港の動向が大陸各地に影響することを恐れている証拠だろう。

行政長官選挙の制度設計は見直し、思想や主張にかかわらず、だれにでも立候補の道を開くことを検討すべきだ。それで香港の自治と繁栄がいっそう保障されることはあっても、損なわれることはない。
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