2014年10月01日

[東京新聞] 拉致再調査 帰国実現へ粘り強く (2014年10月01日)

北朝鮮による日本人拉致に関する再調査結果の報告が遅れている。最初の報告がいつ提示されるかも決まらない。日本側は粘り強く交渉を重ね、正確な調査結果を引き出さねばならない。

日朝の外務省局長級協議が二十九日、中国・瀋陽で開かれ、北朝鮮側は「調査はまだ初期段階だ」として、具体的な結果は報告できないと説明した。協議を継続することでは一致した。

北朝鮮から日本側担当者に対し、訪朝して調査委員会のメンバーに直接会い、進捗(しんちょく)状況を詳しく聞いてほしいと要請があった。政府は慎重に意図を見極め、対応を決める。

日朝はこれまで非公式も含め、政府間協議を中国など第三国で行ってきた。もし日本側が求めに応じて代表団を訪朝させれば、拉致問題での新たな情報が期待できる可能性は確かにある。逆に、朝鮮人の夫とともに北朝鮮に渡航した日本人妻の消息など、拉致とは関係がない事案だけで終わる懸念もある。訪朝要請に応じるかどうか、難しい判断を迫られる。当面は水面下の交渉も含め、北朝鮮の真意をさらに探るべきだろう。

一方で、当初は九月第二週とみられていた最初の調査結果報告は先延ばしされたままだ。

日朝は五月末、拉致被害者だけでなく、北朝鮮にいるすべての日本人を対象に消息確認をすることで合意した。

北朝鮮はまず、日本人妻の所在や、太平洋戦争直後の混乱期に北朝鮮で死亡した日本人の遺骨収集など、着手しやすいところから始めたい意向のようだ。拉致については日本の世論の動向を見ながら情報を小出しにし、併せて日本側に制裁の追加解除、新たな人道支援など譲歩を求めるのが狙いとみられる。

日本側は政府認定の拉致被害者十二人の消息確認を最優先する。北朝鮮はうち八人を死亡、四人は入国情報がないと回答した。だが、横田めぐみさんのものと引き渡してきた遺骨がDNA鑑定の結果、別人のものとみられるなど、死亡情報は不可解な事ばかりだ。日本側は死亡報告を覆して、北朝鮮に生存を認めさせ、帰国実現につなげることが最終的な目的になる。拉致の疑いが濃い行方不明者の消息も追及すべき重要な課題だ。

納得できる情報が提示された場合は、北朝鮮への支援も検討するなど、硬軟取りまぜた外交の駆け引きがいっそう重要になる。
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[東京新聞] 代表質問始まる 誠心誠意答えてこそ (2014年10月01日)

安倍晋三首相の所信表明演説に対する各党代表質問が始まった。対決姿勢を強める野党党首の質問に、首相は強気で切り返していたが、誠心誠意答える姿勢で臨まなければ、国民も納得しまい。

九月初めの第二次安倍改造内閣発足後初の国会論戦だ。衆院ではきのう民主党の海江田万里代表、自民党の谷垣禎一幹事長、維新の党の江田憲司共同代表が質問に立った。各党の新体制発足後、初の国会質問でもある。

一番手の海江田氏は、憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った首相が所信表明演説で触れなかったことに言及し、「見事に議論拒否の姿勢を貫いている」と批判した。

平和主義、専守防衛など戦後日本の「国のかたち」を変える方針転換である。国会で説明しようとしなかった首相の姿勢を厳しく追及するのは当然だ。

首相は「議論拒否の発想は毛頭ない」と切り返し、谷垣氏には「憲法解釈の基本的考え方はこれまでと何ら変わらない」「平和国家としての日本の歩みはこれからも決して変わらない」と答えた。

根幹部分が変わらないのに、そもそも憲法解釈変更を閣議決定する必要があったのか。関連法案の提出を来年の通常国会以降に先送りしながら、なぜ閣議決定を急いだのか。納得できる答えは、首相の口から聞かれなかった。

こうした姿勢ではいくら「丁寧に説明」するといっても、国民の理解は得られまい。

経済政策で海江田氏は、物価上昇分を差し引いた実質賃金低下への対応をただした。首相は「物価上昇で賃金上昇を実感しづらい状況」を認めはしたが、「経済の好循環が生まれ始めている。今年の春闘の賃上げ率は過去十五年間で最高」などと胸を張った。

政府が国会に再提出した派遣労働者の無期限派遣を条件つきで認める改正法案についても、海江田氏は「派遣労働者は一生、派遣で働けというのか」と指摘したが、首相は「派遣労働者の正社員化を支援するものだ」として突っぱねた。

強気の首相答弁から透けて見えるのは自らが進める政策への自信だ。依然50%を超える内閣支持率が支えになっているのだろう。

いくら自民党「一強」時代とはいえ、野党の言い分にも耳を傾けなければ、道を誤ることがある。おごらず、事を焦らず。首相には常に謙虚な気持ちで国会審議に臨んでほしい。
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[毎日新聞] 社説:拉致再調査 北は駆け引きに走るな (2014年10月01日)

日本人拉致被害者らの再調査の進捗(しんちょく)状況を話し合うため、日本と北朝鮮は中国・瀋陽で外務省局長級協議を開いた。

協議では、日本側が拉致被害者の調査を優先し結果を速やかに報告するよう求めたのに対し、北朝鮮側は「科学的、客観的な調査に着実に取り組んでいるが、初期段階」とした上で、詳細は日本側が訪朝して北朝鮮側の担当者から直接説明を受けるよう求めた。北朝鮮の意図はわからない面があるが、北朝鮮は駆け引きをすべきではない。誠実で迅速な対応を改めて求めたい。

日朝両政府は、再調査について「1年以内」に結論を出し、初回報告の時期を「夏の終わりから秋の初め」とする認識で一致していた。だが、9月18日に北朝鮮側が再調査は「まだ初期段階にある」と初回報告の先送りを通告してきた。今回の協議はこれを受けて、北朝鮮側から再調査の現状を聞くために開かれた。

北朝鮮が7月、再調査のために設置した「特別調査委員会」は本気度をうかがわせるもので、だから日本も調査開始にあわせて北朝鮮への独自制裁を一部解除した。宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使は9月初め、共同通信の取材に、いつでも調査結果の報告が可能と語っていた。

それがなぜ先送りになったのか。調査開始から3カ月近くたって「初期段階」というのは理解しがたい。はっきりした理由は明らかになっていないが、関係者の話を総合すると、双方に再調査の進め方についてずれがあることがうかがわれる。

北朝鮮は、特別調査委員会に設けられた(1)拉致被害者(2)行方不明者(3)日本人遺骨(4)残留日本人・日本人配偶者??の4分科会で、調査を同時並行で進めることを強調する。その上で調査結果を順次、報告し、行動対行動の原則に従って日本がその都度、制裁を緩和するよう期待する。

これに対して、日本は4分野すべてが大事だが、拉致被害者の調査が最重要課題と位置づけている。日本人妻らの情報だけが先行して、拉致被害者の調査報告が後回しにされる事態は受け入れられない。

拉致被害者の横田めぐみさんの両親は先日、毎日新聞の取材に「どんな報告が出るのか、毎日心配でくたくた。本当の消息が知りたい」と語った。調査報告を待つ家族の心労は察するに余りある。

北朝鮮が駆け引きに走れば、日本の北朝鮮への不信感を募らせ、世論を硬化させ、北朝鮮の立場を悪くするだけだ。北朝鮮は誠実に事実に向き合い、その結果を迅速に提供すべきだ。日本政府は、北朝鮮との意思疎通を密にし、早期解決に導くよう対応を強化しなければならない。

2014年10月01日 02時35分
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[毎日新聞] 社説:新幹線50年 この先も安全で楽しく (2014年10月01日)

「夢の超特急」と呼ばれた東海道新幹線が営業運転を開始し、1日で50年となる。世界最高速の時速210キロ、東京?新大阪をそれまでの最速特急より2時間半短い4時間で結ぶひかり号に始まった新幹線は、海外の高速鉄道にも影響を与え、日本ブランドの象徴的存在になった。

東京五輪開幕を9日後に控えた1964年10月1日午前6時。ひかり1号と2号の一番列車が、それぞれ東京と新大阪を出発した。「ひかり」の愛称を選んだ公募に、予想の倍近い56万通が届くなど、国民の親しみに支えられ育っていった。

全長515キロでスタートした新幹線は日本中に延びていき、現在は2387キロに及ぶ。航空機、高速道路に主役を奪われ、「鉄道の時代は終わった」との見方を裏切り、新幹線は日本のレールに新しい息を吹き込んだ。

世界が感嘆するのは、混雑時に3分間隔で発車する超過密ダイヤにもかかわらず、時刻表通りに運行するその正確さだ。東海道新幹線の場合、列車1本あたりの年間平均遅延が1分を超えたのは、87年にJRとなってから90年度の1回だけである。支えるのはハード面の技術に限らない。約8分で16両編成の清掃を完了する作業員の働きを英BBCは「軍隊並みの精密さ」と驚いてみせた。

だが何より日本の新幹線の信頼を支えるのは安全性だろう。国土交通省によると、JRの全新幹線でこれまで脱線事故が起きたのは2回。2004年の中越地震と11年の東日本大震災の時だ。中越地震の時、乗客に負傷はなく、東日本大震災時の脱線は回送列車で起きた。乗車中に乗客が死亡する事故は、半世紀の歴史でいまだにゼロである。

車両の性能を含むシステム全体の技術力はもちろんだが、日々の地道な保守点検があってこその記録だろう。最終列車が通った後、線路や信号機などの点検、交換作業が始まる。始発列車までに確認車両が全線を低速で走り、異物がないかなど最終チェックする。365日だ。守りたい日本の資産である。

新幹線には今後も新しい挑戦が待っているはずだ。

ただそれは、高速記録とか、路線の延伸といった、従来の価値観からくる挑戦ではないだろう。人口減少、高齢化、外国人旅行者の増加。役割の変化を先取りしながら、魅力を膨らませていくことが大事だ。もちろん、安全の記録は伸ばしてもらいたい。

「移動の手段」を超え、乗る体験自体が目的になるような旅へ。鉄道マンの職人技だけでは足りない。女性や若手、外国人のアイデアも積極的に取り入れて、次なる歴史の章を重ねていってほしい。

2014年10月01日 02時30分
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[読売新聞] 衆院代表質問 民主党は対案示して論争せよ (2014年10月01日)

批判するばかりでは、国会論戦が深まらない。民主党は、野党第1党の責任として、重要政策の対案を示したうえで、論争すべきだ。

衆院で安倍首相の所信表明演説に対する代表質問が始まった。

民主党の海江田代表は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」について「企業が儲(もう)けるのが最優先という考え方だ」と批判した。政府が目指す法人税率引き下げに関しても、多額の財源が必要として否定的な考えを示した。

首相は、アベノミクスによって「経済の好循環が生まれ始めている」と反論した。物価上昇を踏まえて、「賃金が毎年増える状況を実現する」とも強調した。

企業の収益増により賃金上昇や雇用拡大を実現し、消費拡大を景気回復につなげる「経済の好循環」は、デフレ脱却に欠かせない。企業の国際競争力を強化するには、法人減税が有効である。

所得格差の拡大など、副作用にも目配りしつつ、アベノミクスを推進することが重要だ。

民主党は今年5月、中間層と地域経済の再生を柱とする経済政策をまとめているが、海江田氏はこの詳細には触れなかった。

消費税率の10%への引き上げについて、海江田氏は、増税時の社会保障の充実を求めた。首相は、増収分の2割を新規の社会保障政策に充てる考えを示した。

首相は年内に、経済状況などを総合的に勘案し、増税の是非を判断する予定だ。景気や財政再建にも大きな影響を与える重要な判断となる。国会でも、多角的な議論を行うことが求められる。

集団的自衛権の行使を容認する安全保障法制の整備について、海江田氏は「国民には何も説明のないまま議論が棚上げされようとしている」と述べた。関連法案の提出を来年の通常国会に先送りする政府の方針を非難したものだ。

だが、「先送り批判」は民主党にこそ当てはまる。民主党は行使容認の是非について、今なお党の見解を集約できないでいる。早急に党内論議を行う必要がある。

維新の党の江田共同代表は、消費増税について「アベノミクスの失敗への決定的な引き金を引くかもしれない」と語った。安倍政権は「歳出のムダ削減が全く不十分だ」とも指摘した。

前身の日本維新の会は安倍政権に是々非々の立場だったが、維新の党は対決姿勢を強めている。仮に「責任野党」から転換する場合でも、健全な政策論争を仕掛ける姿勢は維持すべきだろう。
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[読売新聞] 拉致再調査 「北」の時間稼ぎは許されない (2014年10月01日)

北朝鮮の不誠実な対応をいかに改めさせ、日本人拉致問題を前進させるか。政府には、したたかな外交が求められる。

日朝の外務省局長級協議が中国・瀋陽で行われた。北朝鮮の宋日昊日朝交渉担当大使は、拉致被害者らの再調査について「報告できる段階にない。詳細は平壌で特別調査委員会から直接聞いてほしい」と要請した。

政府は、外務省幹部らを平壌に派遣する方向で調整している。北朝鮮に真剣な調査を迫り、具体的な成果を上げるには、どんな措置を取るのが効果的なのか、慎重に見極めることが重要である。

外務省の伊原純一アジア大洋州局長は協議で、拉致被害者らの調査を迅速に行い、その結果を速やかに報告するよう求めた。

宋大使は「科学的かつ客観的な調査に着実に取り組んでいる」と語った。調査は「初期段階」にあり、個別結果を伝えることはできない、との主張も繰り返した。

より多くの見返りを狙って、情報を小出しにするのは北朝鮮の常套(じょうとう)手段だ。そうした時間稼ぎを続けることは、許されない。

伊原局長は、「すべての調査が重要だが、特に拉致問題が最重要だ」と宋大使に伝えた。

調査は、拉致被害者のほか、拉致の可能性のある特定失踪者や日本人遺骨問題なども対象となる。この中で拉致被害者らの安否調査を優先するよう促したものだ。

政府は、北朝鮮による拉致被害者として17人を認定している。このうち横田めぐみさんら12人が未帰国だ。その安否に関する北朝鮮の過去の説明は信ぴょう性が乏しいものが多い。政府が最重点に位置づけたのは当然である。

菅官房長官は「(北朝鮮との)扉は簡単に閉ざさない方がいい。対話と圧力の姿勢で臨んでいきたい」と語っている。

北朝鮮は、伝統的な友好国とされる中国との関係が悪化し、韓国とは対話が進んでいない。米国との核協議も途絶えている。国際的な孤立から脱却するため、対日関係を改善したいとの思惑が依然としてあるのだろう。

この構図を踏まえ、拉致問題の具体的な進展につなげたい。

重要なのは、「行動対行動」の原則を貫くことである。北朝鮮が前向きな対応を取れば、日本も見合った措置を取りたい。

政府は、7月の調査開始時に北朝鮮に対する制裁の一部を解除した。北朝鮮が誠意のない対応を続けるなら、制裁を復活させることも選択肢となろう。
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[朝日新聞] 差別と政権―疑念晴らすのはあなた (2014年10月01日)

「知らなかった」では済まない。山谷えり子・国家公安委員長は深く認識すべきだ。

山谷氏は2009年に、当時「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の幹部だった男性と一緒に写真に納まっていたことが先月発覚した。「在特会の人であることは知らなかった」と弁明し、世耕弘成官房副長官も「何ら問題はない」との見解を示した。

だが先週、日本外国特派員協会で行われた山谷氏の講演は、拉致問題がテーマだったにもかかわらず、質疑のほとんどが在特会との関係に集中した。

在特会の政策に反対するかという質問に対し、山谷氏は「一般論として、色々な組織についてコメントすることは適切ではない」。在特会が主張する「在日特権」とは何か、自身もそのような特権があると考えるかといった質問には「私が答えるべきことではない」と述べた。

国家公安委員会は警察の最高管理機関である。その長と、在日韓国・朝鮮人を「殺せ」と街頭で叫ぶ在特会との関係が疑われること自体、恥ずべきことだ。にもかかわらず、民族差別は許さないという強い意思を示さず、「日本は和をもって貴しとする、ひとりひとりの人権を大切にしてきた国柄」などと山谷氏らしい語り口で、一般論として「(ヘイトスピーチは)誠によくない、憂慮に堪えない」と述べただけでは到底、疑念を晴らすことはできない。

それどころか、彼らの行動を黙認しているのではないかとの疑いすら招きかねないだろう。

海外メディアは、山谷氏の件だけでなく、高市早苗総務相や自民党の稲田朋美政調会長が、ナチスの思想に同調しているとみられる団体の代表と写真撮影をしていたことも報じている。閣僚ら個人の問題を超え、右翼的な政権の性格を示すものだとの見方が広がっている。

民主党の海江田万里代表は、きのうの国会代表質問でこの件を取り上げ、「国際社会からあらぬ目で見られないためにも、民族差別や偏向したナショナリズムには一切くみせぬことを示してほしい」と迫った。だが、安倍首相は「一部の国、民族を排除しようという言動のあることは極めて残念であり、あってはならない」と、あっさり答弁しただけだった。

このままでは疑念は深まるばかりだ。問題を指摘された3氏と任命責任者たる安倍氏が、自身の言葉ではっきりと、在特会が扇動する民族差別や、「ネオナチ」の考え方は容認しないという決意を示す必要がある。
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[朝日新聞] 新幹線50年―安全、さらなる高みへ (2014年10月01日)

東海道新幹線が開業し、今日で50年を迎えた。これまで運んだのは延べ56億人にのぼる。

当時世界一の時速210キロ運転は、航空機の台頭で時代遅れとみられてきた鉄道を復権させた。東京と大阪は日帰り圏となり、旅ではなく移動との感覚が強まった。

来年3月の北陸新幹線・長野―金沢間の開業で、全国の新幹線網は2600キロを超す。社会構造に与えた影響は計り知れないものがある。

東海道新幹線は、円熟期にある。開業時は4時間だった東京―新大阪間は最速で2時間半を切る。1日60本だった運転本数はこの夏、最高記録を更新して426本となった。1本あたりの遅れが1分を切るという正確さも、世界に類を見ない。

新幹線の生みの親と呼ばれる元国鉄技師長の島秀雄氏は「新幹線は実証済み技術の巧みな集積」と語っている。19世紀に英国で誕生した鉄道は、狭い国土に大都市が点在する日本で新たな発展を遂げた。成果を集大成し、高速化に成功したのが新幹線の神髄といえる。

支えは地道な努力だ。保守点検は列車を止める深夜に集中する。大雨が予測されるときは、作業員が空振り覚悟で待機して早い運転再開を図る。終着駅に着いた列車は10分足らずで清掃して折り返す。どれ一つ欠けても、新幹線の質は保てない。

東海道新幹線にとって喫緊の課題は施設の劣化である。JR東海は昨年度から10年をかけ、7千億円超を投じる大改修に着手した。新技術を駆使し、列車を運休せずにトンネルや橋を補強していく。

南海トラフなどで起きる地震も心配される。阪神大震災で山陽新幹線の高架橋が落ち、新潟県中越地震では上越新幹線の列車が脱線した。

JR東海はこれらの経験を踏まえた耐震強化を急いでいるが、今後も最新の知見に素早く対応し、「想定外」を埋めていってもらいたい。

新幹線の何よりの売りは安全性である。衝突、脱線、火災といった列車事故での乗客死傷ゼロは輝かしい実績だ。

ただ、95年に東海道新幹線の三島駅で乗客がドアに引きずられて死亡した事故や、トンネルのコンクリートが山陽新幹線の列車屋根を直撃した99年の事故など、新幹線でも死角はしばしば露呈してきた。

近年はスペインや中国で高速鉄道の大事故が起きた。「新幹線は大丈夫」との「神話」に陥ることなく、不断の向上でさらなる高みを目指してほしい。
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