2014年10月31日

[東京新聞] 沖縄県知事選 基地の現実直視したい (2014年10月31日)

沖縄県知事選がきのう告示された。最大の争点は米軍普天間飛行場の「県内移設」の是非だが、この機会に、本土に住む私たちも、沖縄に米軍基地が集中している現実を、あらためて直視したい。

仲井真弘多知事(75)の任期満了に伴うもので、十一月十六日に投開票される。三選を目指す仲井真氏に翁長雄志前那覇市長(64)、下地幹郎元郵政民営化担当相(53)、喜納昌吉元参院議員(66)が挑む構図である。

最大の争点は普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への「県内移設」を認めるか否かだ。

仲井真氏は前回「県外」を公約しながら、県内容認に転じた。今回は「(市街地に囲まれた)普天間より、安全性は格段に高い」と辺野古移設推進の立場で臨む。

これに対し、翁長氏は「あらゆる手段を尽くして辺野古に造らせない」と、県内阻止を掲げる。共産、社民両党など革新系の支援も受けるが、前回は仲井真陣営の選対本部長を務めた保守政治家だ。

沖縄県知事選は、保守と革新が対決する構図が長く続き、保守分裂選挙は今回が初めてだ。

在日米軍基地の約74%が集中する沖縄県に、普天間返還のためとはいえ、さらに米軍基地を新設することへの拒否感が、保守層にも浸透しつつあることを物語る。

安倍内閣は、今年一月の名護市長選で辺野古移設に反対する稲嶺進氏が再選されても、県内移設を進める方針を崩そうとしない。

そればかりか、八月に海底掘削調査を始めたり、今月二十四日には本体埋め立て工事の入札を公告するなど、県内移設を県知事選前に既成事実化しようとしている。

菅義偉官房長官は九月の内閣改造で「沖縄基地負担軽減担当相」兼任となったが、県内移設の是非は「もう過去の問題だ」として、県知事選の結果に関係なく、移設作業を進める方針を強調する。

しかし、民意を顧みない強硬姿勢で、重い基地負担に苦しむ県民の理解が得られるだろうか。

普天間問題には移設の是非だけでなく、沖縄をめぐる問題が凝縮していると考えるべきだ。

日米安全保障体制が日本の平和と安全に不可欠なら、負担は国民が等しく負うべきではないのか、負担の押し付けは沖縄県民に対する差別ではないのか、などだ。

本土に住む私たちも、同じ日本国民として、沖縄県民の苦しみから目を背けてはならない。今回の知事選を、沖縄の現実をともに見つめ、考える機会としたい。
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[産経新聞] 【主張】和紙が無形遺産に 技術力の発信を競い合え (2014年10月31日)

「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録される見通しだ。

手間をかけて作られる丈夫で美しい和紙は、世界に誇れる日本の伝統技術だ。ものづくり日本の象徴として、広く世界に発信したい。

無形文化遺産には2009年、すでに手漉和紙の「石州半紙」(島根県浜田市)が登録されている。今回はこれに「本美濃紙」(岐阜県美濃市)、「細川紙」(埼玉県小川町、東秩父村)に範囲が広げられ、「和紙」として登録が勧告された。

石州半紙は主に障子紙として用いられ、本美濃紙は正倉院に残る戸籍用紙にも使われた。細川紙は土地台帳や大福帳などに使用されたことで知られる。

昨年の「和食 日本人の伝統的な食文化」に続くもので、過去には能楽や歌舞伎、結城紬(つむぎ)なども登録されている。和紙は、伝統的知識や技術が世代間で受け継がれてきたことなどが評価された。

和紙の魅力は、身近なところでも発揮されている。

ポケットに紙類を入れたまま洗濯してしまったことはないだろうか。領収書の類は残骸の塊となるが、お札だけは破れもせず、原形のままをとどめている。和紙の製法が応用されていることが、その大きな理由の一つである。

無形文化遺産への登録勧告を受けて、和紙デザイナーの堀木エリ子さんは本紙の取材に「2020年の東京オリンピックではぜひ、和紙の聖火台を作らせてほしい」と訴えた。

素晴らしい発案だと思う。

ただ、世界に発信すべき日本の技術は、和紙だけではあるまい。ものづくりの国の存在感を示すべく、われこそは、と聖火台づくりも競い合ってはどうか。開会式の聖火点火をめぐっては、「最終ランナーに鉄腕アトムを飛ばす」というアイデアもあった。

三菱重工業の子会社、三菱航空機が小型ジェット旅客機「MRJ」を完成させたばかりだ。国産旅客機の開発はプロペラ機「YS11」以来、半世紀ぶりとなる。

あらゆる機会をとらえて、ものづくり日本の復権につなげたい。和紙の無形文化遺産登録も、国産旅客機の開発も、その契機となる。国際社会で日本の存在感を取り戻し、国内では地方創生にも寄与することになる。
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[東京新聞] 小渕氏疑惑 収支の“闇”を洗い出せ (2014年10月31日)

小渕優子前経済産業相の政治資金問題で、東京地検が強制捜査に乗り出した。会計処理に違法性がないか調べるためだ。不透明な「政治とカネ」の実態に迫り、収支の暗部を洗い出してほしい。

「収支報告書の記載に大きな疑念があると言わざるを得ない」と、小渕氏自身が認めたほどだ。「小渕優子後援会」や「自民党群馬県ふるさと振興支部」など四つの政治団体に説明のつかない会計処理が見つかり、告発を受けていた。

東京の明治座での観劇会や東京ドームでの野球観戦を催したが、二〇〇九年から一一年にかけての収支報告書では支出が収入を約四千三百万円も上回っていた。一二年の観劇会では収支の記載そのものがなかった。その年以外にも同様の催しはあったはずだから、収支のずれは総額いくらになるのだろうか。まさか差額が横領されたわけではあるまい。

問題は仮に政治団体側が差額分を負担していたケースだ。公職選挙法が禁じている有権者への寄付にあたる可能性がある。小渕氏の説明では、観劇会の参加者から実費一万一千円から一万二千円を徴収しているという。年一、二回開催で、毎回千人程度の人が参加したそうだ。きちんと徴収しているのなら、なぜ適切な表記をしないのか。根本から疑問が湧く。

費用を全額徴収していたとしても、食い違う書き方をすれば、政治資金規正法の虚偽記載にあたるのではないか。記載がない場合は、不記載に問われよう。東京地検が関係先を家宅捜索したのも、同法違反の容疑に基づく。

報告書の作成者の「名義貸し」まで行われたという。法の趣旨からの逸脱も甚だしい。徹底的に事実関係を解明してほしい。

ベビー用品や下仁田ネギなどの物品購入もあった。「県外在住者への贈答」と小渕氏は説明するが、自分の写真ラベルを貼ったワインを選挙区内の人が受け取ったことをどう説明するのか。カレンダーはどうか。古い“贈答文化”がいまだにはびこっているとしか思えない。

任意聴取を受けた元秘書の折田謙一郎氏は故小渕恵三元首相の代から三十年余の付き合いだ。「私が全部チェックした」と語った以上、納得のいく説明が求められる。

国会議員の懐には税金も入っている。議員歳費はむろん、文書通信費や立法事務費、政党交付金…。「政治とカネ」に対する国民の目はいっそう厳しい。その自覚を議員は持たねばならない。
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[産経新聞] 【主張】参院自民党 与党の自覚も失ったのか (2014年10月31日)

これが「1強多弱」と呼ばれて他を圧倒する政権与党の姿だろうか。

参院自民党が選挙制度改革の方針をまとめきれず、4つの案を並べて「たたき台」と位置付けていることである。

再開される各派協議会に、手ぶらで臨むわけにいかないと考えた末の苦肉の策だろうが、改革案の名に値するものではない。

自民党から出ていた協議会座長が、人口の少ない県同士の「合区」案を打ち出すと、それに反対して座長を更迭してしまったことが混乱の原因である。

責任政党としての自覚があるなら、野党との合意に向けて改革案を練り直すべきだ。

4案とは北海道、東京、兵庫の定数を2ずつ増やし、宮城、新潟、長野の定数を2ずつ減らす「6増6減」案や、選挙区の定数を増やして比例代表の定数を減らす案などだ。2県を1つにする合区案も残している。

中では具体的といえる6増6減案も、選挙制度改革に踏み込まない弥縫(びほう)策にとどまるものだ。協議会は自民党の混乱のあおりで空転していた格好なのに、このたたき台で議論の進展は望めまい。

参院選挙制度への取り組みは、二院制のあり方を含む統治機構を考えることでもある。ばらばらの案の羅列は、制度論を真剣に考えていない印象を強く与える。

「一票の格差」が最大4・77倍だった昨年7月の参院選をめぐる訴訟の上告審で、最高裁が今年中に統一判断を示す可能性がある。高裁段階では「違憲・無効」の1件を含めて16件の判断が示されたが、「合憲」はなかった。

国側は「抜本的な改革に取り組んでいる」と主張しているが、参院の現状がそう映るだろうか。具体的な制度は司法ではなく立法府として構築すべきものとしても、遅滞を重ねる姿勢を続けて、どうして国民の信を保てるのか。

与野党協議で、政治がまず「身を切る」改革としての定数削減が軽視されているのも問題だ。

「衆参で3年後に1割減、6年後に3割減」「衆院比例80、参院40程度」などと自民、民主両党が思い切った削減案を公約していたのは、つい4年前のことだ。その後の政権交代などをはさみ、ほおかむりしてきたが、このままでは「うそつき」と呼ばれよう。

安倍晋三首相にも両院の改革を促す指導力を求めたい。
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[毎日新聞] 社説:米国の金融政策 正常化の道しっかりと (2014年10月31日)

米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が、2年前に開始した量的緩和第3弾の終了を決めた。2008年秋のリーマン・ショック後、FRBが初めて足を踏み入れた異例の金融政策は、金利のある正常な世界に向け、「出口」の最初のドアをようやく通過した。

リーマン・ショックの震源地となった米国の経済は、劇的な回復を見せ、09年に一時、10%に達した失業率も6%を下回る水準まで好転した。FRBも量的緩和策終了の理由として、雇用市場の見通しに「十分な改善が見られた」ことを挙げた。経済成長が巡航速度を取り戻した以上、劇薬の投与を終えるのは、当然のことだ。

ただ、この政策が成功したと結論付けるのは早すぎよう。

リーマン・ショック直後に実施した第1弾は、極度の動揺状態に陥った金融市場を落ち着かせるうえで効果があったと認める専門家が多い。だが、第2弾、第3弾については、評価が分かれる。米経済や世界経済への影響は、この先起きることも合わせて分析する必要がある。

その「この先」だが、最大の焦点は、ゼロ金利政策が解除され、金利が徐々に引き上げられていく、正常化の道のりだ。来年半ばにも、最初の利上げがあると予測されているが、それでも、歴史的な低金利が当分続くことに変わりはない。

物価が落ち着いていても、長引く超低金利が証券市場などを過熱させ、新たな金融危機を招く危険が残る。すでに代表的な株価指数(S&P500)は金融危機後の安値から3倍近い水準まで高騰しているのだ。FRBは細心の注意を払わねばならない。

一方、金融政策の正常化が必要かつ当然とはいえ、その過程で他国の経済や金融市場を大きく揺さぶる恐れもある。

特に、量的緩和で新興国経済に流入した大量のマネーが米国へ向け逆流を本格化させると、資金が流出する国で混乱が起きかねない。従来通り低コストで資金を調達できなくなった国家や企業が返済難に陥ったり、通貨安が輸入品の価格を押し上げ、インフレを引き起こしたりする弊害だ。日欧の金融政策との違いから、ドル高・円安、ユーロ安に拍車がかかる心配もある。

量的緩和の結果、FRBの資産は約4.5兆ドル(約490兆円)に膨れ上がった。市場価値が目減りしかねない資産が、日本の国内総生産(GDP)に迫るほどの規模でFRBの元に残る。これを、どのようにして減らしていくのか。再び世界経済を危機に巻き込むことなく、政策の正常化を果たしてもらいたい。

2014年10月31日 02時30分
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[毎日新聞] 社説:大学入試改革 手間をかける決意こそ (2014年10月31日)

よく考え、判断し、表現ができて主体性がある。これらの力をどう見いだし、評価するか。

容易ではないが、中央教育審議会がまとめている大学入試改革の答申案は、これを選抜試験の主眼とし、学校教育の質的転換もうたう。

高校の段階で「大学入学希望者学力評価テスト」と、基本を確認する「高校基礎学力テスト」の新たなテストを提案した。複数回受けられ、グローバル時代に即して英語は民間の検定試験などの活用を考える。

「学力評価テスト」は、今の大学入試センター試験が切り替えられるものだ。将来は教科・科目別の試験ではなく、枠を超えた「合教科・科目型」「総合型」試験のみにする。

その成績は受験生と志望する大学へ提供されるが、1点刻みではなく、レベル別に表示する。

各大学は、どんな学生を受け入れ育成するかの指針(アドミッションポリシー)を明確に示し、「学力評価テスト」に加えて小論文、面接、集団討論など独自に工夫した個別試験の実施を強く求められる。

大学入試改革は、試行錯誤の連続だったといっても過言ではない。

経済成長に伴う進学率向上と受験競争の過熱、ふるい落とすためだけの難問・奇問の横行などから改革機運が高まり、国公立では1979年に共通1次試験が始まった。

1次で基礎学力の共通試験、大学で個別試験だったが、共通のため偏差値序列が生まれるという弊害が出て90年、センター試験になる。

私立大も自由に参加し、受験生は志望校が指定する科目を受け、各大学は独自に個別試験をする。

しかし、これも少子化を背景に受験生獲得競争が強まると、科目を少なくする大学や、センター試験結果だけで選抜する大学が増える。

また、面接や論述などで特性をみるはずのアドミッション・オフィス(AO)や推薦入試も形骸化が指摘される。学力低下が論じられ、高校課程の復習をする大学も多い。

今回の改革案もこの危機感が底にある。新テストで学習の「動機づけ」をし、高校と大学との接続を円滑にする。専門的な制度設計はこれからだが、課題は山積している。

例えば、1点刻みの順位を当たり前としてきた「試験文化」をどう改めるか。教科・科目を超えた出題とはどのようなものか。大規模大学でどう対処できるのか。肝心の大学教育をどう変えるか……。

これまでの制度でなぜうまくいかなかったか。まず挙がるのは、手間を惜しんだことではないか。

入学者選抜には丁寧に手をかける。それが共通認識として醸成できるかどうかに成否がかかる。

2014年10月31日 02時40分
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[日経新聞] 米量的緩和後の利上げに世界は備えよ (2014年10月31日)

中央銀行が市場に出回るお金の量を増やし、景気や物価の押し上げを狙う政策は、量的金融緩和政策とよばれる。米国で2008年秋のリーマン危機後に導入された、この異例の金融緩和政策がいよいよ終わる。

米連邦準備理事会(FRB)が29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的金融緩和の第3弾に伴う証券の購入を10月いっぱいで終えることを決めた。

米国の景気回復の足取りはしっかりとしている。雇用情勢も次第に改善し、今年9月の失業率は5.9%とほぼ6年ぶりの低水準となった。FRBがこの時期に量的緩和を終え、金融政策の正常化に向けて大きくカジを切るのは妥当といえるだろう。

今後の焦点は、FRBがいつ政策金利の引き上げに踏み切るかだ。政策金利を事実上ゼロにする「ゼロ金利政策」について、FRBは量的緩和終了後も「相当な期間、維持する」としている。市場関係者の間では、来年中の利上げを予想する声が多い。

利上げが遅すぎると物価の安定が損なわれる。またリーマン危機のきっかけとなった米国の住宅バブルの崩壊は、金融緩和の長期化が一因だった。その二の舞いは避けるべきだ。一方で、早すぎる利上げは雇用の回復に水をさす。

対応を誤ると通貨・株式などの国際金融市場が動揺しかねない。FRBは雇用・物価情勢を丹念に点検し、利上げの時期を慎重に見極めるとともに、市場との対話に万全を期してほしい。

日本経済も無関係ではない。FRBが利上げを始めれば、日米の金利差が拡大することで、市場では円売り・ドル買いが進みやすくなる。急激な円安は原材料やエネルギー価格の上昇を通じ、景気を下押しするおそれがある。

新興国も米国の利上げの影響は大きい。巨額の経常赤字や財政赤字を抱えている新興国から資金が流出すれば、こうした国々で通貨安とインフレに拍車がかかり、インフレを防ぐための利上げがさらに景気を減速させる悪循環に陥る可能性はゼロではない。

輸出競争力を高め、財政赤字を減らす。外国企業の投資を呼び込む規制緩和をする。こうした構造改革を新興国は急ぎ、米国の利上げに備えるべきだ。新興国からの資金流出は、日米を含む先進国経済にも打撃を与えかねない。こうした点への目配りは怠れない。
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[日経新聞] 「政治とカネ」の徹底解明を (2014年10月31日)

永田町を揺るがす「政治とカネ」の問題に検察の捜査のメスが入った。国民の政治への信頼を取り戻すには、さまざまな疑惑の徹底的な解明が必要だ。不正が明白になれば、関わりのある政治家には議員辞職など目に見えるけじめを求めたい。

東京地検特捜部が小渕優子前経済産業相の元秘書の自宅、後援会の事務所などを家宅捜索した。小渕氏の後援会が催した「観劇会」の収支が大幅に食い違っており、検察は政治資金規正法違反(政治資金収支報告書の虚偽記入)の疑いがあるとみている。

観劇会にかかった費用を後援会が補填していれば、有権者への利益供与を禁じた公職選挙法に抵触するおそれもある。

小渕氏は後援会の代表ではないので、後援会に不正があっても直ちに罪に問われるわけではない。とはいえ、監督責任は免れない。

政治資金規正法や公選法は、不正な資金集めなどで選挙に勝つ人がないように定めた法律である。もしも、その法律に反したのであれば国会議員を辞めるのが筋だ。閣僚辞任では責任を取ったことにはならない。

9月の内閣改造以降、政界には「政治とカネ」を巡る多くの疑惑が渦巻く。与野党双方から次々と名前が出ており、そろそろ撃ち方やめにしようとの雰囲気もあるようだ。もしも、そんなことをすればさらに政治不信をかき立てる。この際、全ての政治家が我が身を省みて襟を正すときだ。

松島みどり前法相のいわゆる「うちわ」疑惑の場合、公選法違反ではないと釈明する一方で安倍晋三首相に辞表を出すという釈然としない辞任劇だった。合法なのか違法なのか。はっきりさせたい。

最高裁が地方議会の政務活動費の使途は少額でも開示すべきだとの初判断を下した。国民の「政治とカネ」への視線はどんどん厳しくなっている。「以前はとがめられなかった」ではすまない。政治にかかわる全ての人がそのことを自覚せねばならない。
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[朝日新聞] 沖縄知事選―基地を正面から語れ (2014年10月31日)

沖縄県知事選がきのう告示された。

米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題について菅官房長官は「過去の問題」と強調するが、これこそ沖縄の現実の問題であり、知事選の主要な争点である。

立候補したのは、元郵政民営化担当相の下地(しもじ)幹郎(みきお)氏、元参院議員の喜納(きな)昌吉(しょうきち)氏、前那覇市長の翁長(おなが)雄志(たけし)氏の新顔3人と、昨年12月に辺野古の海の埋め立てを承認し、3選を目指す現職の仲井真(なかいま)弘多(ひろかず)氏。

自民推薦の仲井真氏は辺野古移設を容認。自民党県連幹事長だった翁長氏は「断固反対」。下地氏は移設問題を決着させるために県民投票実施を主張。喜納氏は民主党方針に反して「埋め立て承認の撤回、取り消し」を掲げ、党を除名された。

沖縄でずっと続いてきた「保革対決」の構図は崩れた。公明、民主は自主投票。保守の一部が革新と組む保守分裂の選挙戦となった。移設問題への立ち位置の違いが、この新たな構図を生んだと言える。

既成政党の枠組みが壊れ、保守が分裂した背景には、仲井真氏の方針転換がある。

前回知事選で県外移設を公約して当選したものの結局、埋め立てを承認した。今回は、辺野古移設が具体的で現実的な方策だと、計画容認にかじを切った。仲井真氏の決断を受け、政府は辺野古のボーリング調査に着手した。

知事の承認に至る過程で、やはり県外移設を公約に当選した沖縄県選出の国会議員や自民党県連に、自民党本部が公約放棄を迫り続けたことも、県民に不信感を植え付けた。知事の公約変更に、有権者がどう審判を下すのかが注目される。

さらに、政権が相次いで打ち出す「基地負担の軽減策」をどうみるかも問われる。

「過去の問題」と言いながら政府は移設に絡んで、現職の仲井真候補へ露骨な肩入れを続けていると受け止められかねない状況が生じている。

普天間配備の空中給油機を8月に岩国基地へ移転。オスプレイの訓練も県外へ分散するとも言う。だが、空中給油機は今も普天間に来ているし、オスプレイの普天間での飛行回数は、配備直後の1年間よりこの1年の方が増えている。

普天間を2019年2月までに運用停止にする政権の約束も、米政府が拒否し、空手形だったことが明らかになった。

「負担軽減」は本物か。知事選を通じて、沖縄の有権者はじっと見ている。
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[読売新聞] 沖縄知事選告示 「辺野古」で責任ある論戦を (2014年10月31日)

沖縄の米軍基地負担をいかに軽減するか。各候補者は、責任ある論戦を展開してもらいたい。

沖縄県知事選が告示された。3選を目指す現職の仲井真弘多知事と、翁長雄志・前那覇市長、喜納昌吉・前参院議員、下地幹郎・元郵政改革相の新人3人が立候補した。

最大の争点は、米軍普天間飛行場の移設問題とされる。

自民党が推薦する仲井真氏は、「普天間問題の解決が最優先の課題だ」と訴え、名護市辺野古への移設を容認している。

翁長氏は、「あらゆる手段を尽くして新基地を造らせない」として、辺野古移設に反対する。

喜納氏は、移設先の埋め立て承認の取り消し・撤回を掲げる。下地氏は、移設の是非を問う県民投票の実施を唱えている。

仲井真氏は前回知事選で県外移設を主張したが、昨年末、辺野古沿岸部の埋め立てを承認した。市街地にある普天間飛行場の危険性除去を最優先したためだ。

辺野古移設は、基地負担の軽減と米軍の抑止力維持を両立させるうえで、最も現実的な選択肢だ。実現には大きな意義がある。

日米両政府は昨年4月、辺野古移設を前提に、2022年度以降の普天間飛行場返還で合意した。移設が遅れれば、普天間だけでなく、合意に盛り込まれたキャンプ瑞慶覧など他の米軍5施設の返還も先送りされる可能性が高い。

辺野古移設に反対する候補は、普天間の危険性を除去する具体的な代替策を示す必要がある。沖縄全体の基地負担の軽減が遅れるリスクについても、県民にしっかり説明しなければならない。

防衛省は公有水面埋立法に基づき、必要かつ正当な手続きを踏み、埋め立ての承認を得ている。この法律には、喜納氏の言及する承認撤回などの規定はない。法令に基づく決定の一方的な変更は、行政権限の乱用にあたるだろう。

疑問なのは、公明党が自主投票を決めたことだ。辺野古移設を支持する党本部は、反対する県本部を説得できず、仲井真氏の推薦を見送った。与党の一員として責任ある対応ではあるまい。

民主党の姿勢にも問題がある。鳩山政権時代に普天間問題を迷走させた末、辺野古移設の支持に転換した。それなのに、今回の自主投票は無責任ではないか。

最近は、尖閣諸島周辺で中国公船が領海侵入を繰り返すなど、沖縄県の平和と安全が脅かされている。知事選では、こうした問題も議論することが大切だ。
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[朝日新聞] 津波と学校―総合的な視点で対策を (2014年10月31日)

東日本大震災を受け、文部科学省が、全国の公立学校施設の津波対策を初めて調べた。

津波で浸水が想定されるのは2860校。その4割近い1066校がまだ「検討中」であると答えた。

耐震化を優先して津波対策が後回しになっている事例や、自治体の想定が確定しておらず、対策が定まらない例もある。

学校は子どもだけでなく、地域住民の命のとりででもある。一日も早く整備してほしい。

今回調べたのは浸水の想定区域内の学校だ。東日本大震災で実際に津波が来た学校のうち、浸水を予測していなかったのは、宮城県石巻市立大川小など半数を超えた。想定区域外の学校への対応も欠かせない。

対策はハード面だけでなく、防災教育や訓練などソフト面も重要だ。文科省の別の調査では、想定区域内で津波の危機管理マニュアルのない学校や、津波の防災訓練をしていない学校がそれぞれ2割余りだった。

住民の避難所としての機能の調査でも、課題が目立つ。9割の学校が避難所に指定されているが、自家発電設備があるのは神奈川が84%に対し、島根が3%など地域格差が大きい。

これらの調査の主体は、施設が文教施設企画部、ソフト面はスポーツ・青少年局、避難所は国立教育政策研究所とばらばらだ。文科省は局の縦割りを超えて調べてほしい。地震や火災、防犯なども含め、「学校防災白書」をつくってはどうか。

学校現場の危機感は大きい。

日本教育学会の研究グループが東南海地域の沿岸部の小中学校にアンケートをしたところ、7割近い学校が、自由記述欄に対策の課題を書いた。

「近くに高台がない。校舎の高さ以上の津波にどう対応するか」「児童の安全を確保しながら住民への対応をどうするか」

条件整備への要望も強い。

「少数の教員で安全に誘導しなくてはならない。教員配置で支援を望みたい」「財政が追いつかず、施設の補強や資材の充実に行政が対応できない」

こうした不安や要望に、国や都道府県、市町村は丁寧に応えていくべきだ。特に国の補助制度の充実は欠かせない。

自治体では、学校、教育委員会と一般行政の防災部局で、もっと協議する必要がある。

教委の制度改革で、自治体の長が設け、教委と話し合う「総合教育会議」が来春から設けられる。

震災を風化させてはならない。防災拠点としての学校の整備を、ぜひ取り上げてほしい。
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[読売新聞] 米量的緩和終了 未知の局面に踏み出すFRB (2014年10月31日)

米国による未曽有の金融緩和策が、大きな節目を迎えた。

米連邦準備制度理事会(FRB)が、国債購入などで大量の資金を世の中に供給する量的緩和策を、10月末で終了する。

2008年秋のリーマン・ショック以降、3段階にわたる異例の量的緩和策を打ち出し、「100年に1度」と言われた世界的な経済危機を、ひとまず収束させたことは評価されよう。

米国債などを買い続けた結果、FRBの資産は米国の経済規模の4分の1に相当する4・5兆ドル(約490兆円)に膨らんだ。

景気が回復した一方で、巨額の資金が市中に出回る「カネ余り」が常態化している。放置すれば、投機によるバブルや、インフレの引き金ともなりかねない。

ただ、これほど大量の資金を回収していく経験は、どの中央銀行にもない。FRBは今後、金融政策にとって「未知の領域」に踏み出すことになる。

当面の焦点は、政策金利の誘導目標を「0?0・25%」としている事実上のゼロ金利政策を、いつ解除するかである。

FRBは声明で、ゼロ金利政策を「相当の期間」維持するとし、これまでの表現を踏襲した。「早期利上げ」の観測を打ち消し、市場の動揺を避ける狙いだろう。

昨年5月には、当時のバーナンキFRB議長が量的緩和の縮小を示唆したことをきっかけに、世界的な株安を招いた。

ショックを与えぬよう、FRBの意図を少しずつ市場に浸透させることが大切だ。丁寧な「市場との対話」が求められる。

気がかりなのは、新興国に大量の「緩和マネー」が流入していることだ。米国の利上げ観測が一気に高まれば、米国への急激な資金還流を起こす恐れがあろう。

新興国の通貨や株価の急落などで、世界経済を揺るがす事態は避けねばならない。

FRBは、超金融緩和を脱却する「出口戦略」を、慎重に進めてもらいたい。

米国以外に世界経済の牽引(けんいん)役が見当たらないことも、市場を不安定にしている要因だ。

特に欧州は、経済政策で各国の足並みがそろわず、低成長とデフレ化の危機が拡大している。財政出動や一層の金融緩和など、機動的な対応が急がれる。

日本も消費を中心に内需が冷え込んでいる。民間企業を活気づける成長戦略を、さらに加速させることが何より重要である。
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2014年10月30日

[産経新聞] 【主張】「35人学級」 教員増より指導力向上を (2014年10月30日)

公立小学校の「35人学級」をめぐり論議が行われている。

教員を増やし1クラスの児童数の上限を従来の40人から35人に減らす文部科学省のこの施策に対し、財務省は教育効果があいまいだとして待ったをかけた。

安易に教員を増やしても公教育の信頼回復にはつながらない。中身の充実が伴う施策を行ってもらいたい。

35人学級は民主党政権時の平成23年度から小学1年で導入された。きめ細かな指導ができるとし、文科省は他の学年にも広げたい考えだ。

これに対し財務省は、財政制度等審議会の分科会で、小1の35人学級見直しを求める案を提示した。いじめや学力などの調査で、少人数学級の明確な政策効果がみられないとしている。40人学級に戻せば教員が約4000人削減でき、約86億円の歳出削減になるという。限られた財源の中で有効な施策を求める指摘だろう。

国力につながる教育には十分な予算を求めたいが、教員増が優先すべき施策なのかは、疑問だ。増員より教師一人一人の指導力向上が先ではないか。

文科省などがクラスの少人数化を求めるのは、子供の個性に応じ、目配りできるとの理由だ。保護者の要望も多様化し、教員の負担感も増しているという。

だが受け持つ子供が少ないからうまく指導できるものでもない。少人数でも指導力不足の教員が学級崩壊を招く例がある。学校社会は、教員が互いの授業を評価する機会が少なく、ベテラン教員が独善的指導で子供や保護者との信頼を築けない例もある。

少子化のなかで児童生徒数に対する教員数はむしろ増えている。さらなる増員を求める前に、やるべきことは多いはずだ。

悪平等をなくし、指導力不足の教員を放置せず、優秀な教師、熱心な教師を適切に評価し、やる気を引き出す制度を充実すべきだ。地域の人材を活用して土曜授業などを行い、学力向上など効果をあげている教育委員会もある。

家庭の教育力低下が指摘され学校の役割が増しているのは確かだ。いじめなど生徒指導でも担任だけで解決できない問題が増えている。だからこそ一人で抱えず、学校内外で連携する力も一層求められる。ダメな教員をいくら増やしても問題は解決しない。
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[産経新聞] 【主張】沖縄県知事選 正面から移設の意義説け (2014年10月30日)

米軍普天間飛行場の移設問題などを争点とする沖縄県知事選が30日、告示される。

移設先となる辺野古埋め立ての承認は済んでいるが、これを認めない候補者もおり、その理由を語るべきである。

県民にとって、基地負担の軽減に関心が向くのは当然だろうが、尖閣諸島(石垣市)を抱える沖縄が国の守りの最前線になっているという現実もある。

基地負担のみならず、日本の防衛をどうするかという視点に立って議論を展開してほしい。

いうまでもなく、辺野古移設は日米両政府間の重い約束事だ。4月の日米首脳会談や昨年10月の外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)でもその方針は確認されてきた。

すでに移設に関連する工事が始まっており、頓挫すれば日米安全保障体制に亀裂が入り、同盟の抑止力低下につながりかねない。

南西諸島方面で近年、何が起きているかを候補者や県民は直視してほしい。中国は力ずくで尖閣の領有をねらい、中国公船が尖閣周辺の領海に侵入してくる。

また、中国は尖閣を含む東シナ海の空域に「防空識別圏」を一方的に設定し、中国軍機が、国際ルールを守って飛行する自衛隊機に異常接近を重ねた。中国海軍艦船は射撃管制用レーダーを海自護衛艦に照射した。

こうした中国の軍事的動向を冷静に考えれば、沖縄における米軍のプレゼンスが、沖縄自身を含む日本の平和と安全、さらには東アジアの安定に欠かせないことはわかるはずである。

日米同盟の抑止力を保ちつつ、住宅密集地にある普天間飛行場の危険性を除くには、辺野古移設の実現こそが現実的な解答だ。

安倍晋三首相をはじめ政府・与党は一丸となって移設を推進する責任がある。だが、知事選での与党の対応は割れた。

自民党は、昨年12月に政府の埋め立て申請を認可した現職を支援するが、公明党は自主投票を決めた。同党県本部が辺野古移設に難色を示したからだというが、与党の責任を果たしていない。

1つの地方選挙が、国の安全保障の行方に影響を与えること自体、望ましくないが、政府は沖縄振興をめぐる協力などとともに、辺野古移設の重要性を正面から説いていかなければならない。
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[東京新聞] 食料自給率 別の指標も見てみたい (2014年10月30日)

政府が食料自給率の目標引き下げを検討している。カロリーベースの自給率は有力な指標だが、現実との隔たりも目立つ。「食料自給力」など新たな指標で補完する必要があるのではないか。

食料自給率は、国内で消費される食料のうち、国内産が占める割合で、政府は目標設定に生産量や消費量を熱量(カロリー量)で示した「カロリーベース」の数値を使っている。

農林水産省は二〇一〇年三月、輸入に頼っている小麦を国内で増産することを前提に、先進国で最低レベルの自給率を、それまでの目標45%から「二〇年度に50%」へと引き上げた。しかし現実には39%前後の低迷が続き、目標の達成は困難になっている。

目標引き下げを求めているのは財務省で、同省の試算ではカロリーベースを1%引き上げるために国産小麦を年四十万トン増産すると、今の制度では年間四百二十億円から七百九十億円の補助金が必要になる。国民負担の補助金に依存した50%達成は困難で、むしろ農業の担い手や農業技術の向上など改革に重点を置き、着実に自給率向上につなげるべきだとしている。農水省も、目標引き下げによる補助金削減を警戒しながらも、現実的な数値を模索している。

生きるのに必要な栄養価が基準のカロリーベースは重要な指標であることに変わりない。ただ現実との乖離(かいり)も指摘したい。

一つは「生産額ベース」で見た自給率で、一三年度は65%とまずまずの水準にある。カロリーベースでは輸入飼料で育てた牛、豚、鶏などは自給に計算されない。野菜や果物はほとんどが国内産なのに低カロリーで貢献度が低く、日本の農業の実力を的確に示しているとは言えない。もうひとつは巨大な食品ロスで、日本では食べられるのに廃棄される食品が年間約五百万トンから八百万トン。自給の柱であるコメの生産量に匹敵する。

カロリーベースの欠点を補う新たな指標として「食料自給力」が注目されている。

海外からの輸入が途絶えた場合に、国民が必要とする食料を潜在的に供給できる能力を示す指標で、英国では耕作可能な全農地で小麦を生産した場合の供給力を試算している。

日本では「農地などの農業資源、農業者、農業技術で食料自給力を構成する」というアイデアの段階だ。ぜひ具体化して食料危機に対する国民の潜在的な不安に応えてほしい。
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[東京新聞] 香港占拠1カ月 法治は党のためだけか (2014年10月30日)

香港の学生が民主化を求めて中心部を占拠してから一カ月。政府との対話が物別れになり、事態収拾の糸口は見えてこない。双方が対話を絶やさず、平和的な解決を図る努力が必要だ。

三年後の行政長官の選出方法をめぐり、完全な普通選挙の実施を求める学生らの香港中心部占拠は、先月二十八日に始まった。

この間、香港当局との対話も開かれた。学生側は、中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会が決定した事実上、民主派が立候補できない選挙方法の撤回をあくまで求めた。香港政府はこの要求を全面拒否。全人代の決定を変更する権限は香港には、ないこともはっきりした。学生らが決定の全面撤回を求める限り、対話による香港政府との合意は難しい。

香港政府は対話の中で、二〇一七年より後の長官選での改善を示唆、現在の状況を中国政府に報告することも提案した。妥協案を示しつつあるともいえる。

その中国では共産党中央委員会の第四回全体会議が開かれ、法に基づく国家づくりを進めることを明確にした。同時に一党独裁の堅持も鮮明にした。中国の憲法に従い党の指導が最優先で法はその下に位置付けられ、欧米型の法治とは異なる。

香港問題では、「法による一国二制度の実践と推進」を確認したという。法は香港基本法で、学生たちの行動は違法との見解を示している。中国が一国二制度を推進するなら国際社会が納得する法治であってほしい。

繁華街の占拠はいつまでも続けられるものではない。日常生活を阻害され、反感を抱く市民も出ている。占拠反対派の市民が集めた署名は四日間でほぼ百万人に上ったという。

学生内部でも当局との話し合いで段階的な目的達成を考える穏健派と、普通選挙を勝ち取るまで占拠を続ける強硬派との足並みの乱れもあり、統制が取れていない。

市民同士の衝突だけは避けねばならない。十一月に北京で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)が終わるまでは、中国政府は国際的な批判を受ける強硬措置は取らないとの見方は強い。しかし、強制排除がいつあっても不思議ではない状況だ。

香港市民の多くは全人代決定の撤回は、すぐには不可能であることを認識しており、段階的な解決を求める考えも強い。学生の主張には共感できる。平和的な収束の道は最後まで貫いてほしい。
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[毎日新聞] 社説:派遣法改正案 格差を固定化するな (2014年10月30日)

今国会の焦点である労働者派遣法改正案が衆院で審議入りした。派遣労働の期限を事実上撤廃する内容で、「派遣は臨時的」という原則の大きな転換になる。

派遣労働者の身分保障や処遇改善をしないまま長期の派遣使用に道を開くことは正社員との格差の固定化を招くおそれがある。成長戦略の観点だけから論じるべきではない。慎重に議論を尽くすべきだ。

現行の派遣法は企業が同じ職場で派遣労働者を使える期間について、ソフトウエア開発など「専門26業務」を除き原則1年、最長3年と上限規制を定める。改正案は全業務で上限を3年とする一方、3年たった時点で別の派遣労働者に交代すれば、引き続き派遣での使用を可能とする。このため期限制限はなくなる。

安倍内閣は成長戦略の一環として派遣法改正を重視する。労働市場の流動化や働く形態の多様化は確かに重要だが、上限撤廃には強い懸念を抱かざるを得ない。

まず指摘したいのは派遣労働者の処遇を改善しないまま長期派遣に「お墨付き」を与える危うさだ。

派遣労働者の契約は「雇い止め」など不安定で、賃金も40代は時給換算で正社員と2倍以上の差があるとされる。専門26業務も不利な条件の労働を強いられる人が多い。

正社員と同等の仕事をこなす派遣労働者の格差是正こそ急ぐべきだ。賃金、安定雇用に加え年金など社会保障、キャリアアップ、福利厚生施設利用など差別解消へ検討すべき課題は山積しているはずだ。

「派遣労働者の能力向上を図り、正社員への転換を促す」との政府の説明もにわかには信用できない。

改正案は派遣元の会社に計画的な職業訓練や、派遣先企業に直接雇用を求めることなどを義務づける。

だが、派遣元の多くは中小零細で、計画的職業訓練をする力がないところが圧倒的に多い。人件費削減による「安価な労働力」目当てという派遣の本質がある以上、正社員化の保証は無い。それどころか派遣労働者の配置転換を繰り返す「生涯派遣」や、正社員の派遣労働者への振り替えなど格差の固定化、拡大を不安視する声が出るのも無理はない。

派遣労働者を含む非正規雇用者への厚生年金の適用拡大を政府は検討してきたが、経済界の反対もあり中途半端に終わっている。「企業の論理」だけで問題を捉えず、処遇改善や正社員化への道筋を実効性ある方法で裏付けるべきだ。

民主党は改正案に反対しているが維新の党がまとめた非正規職員と正社員の同一労働・同一賃金を求める法案の共同提出には応じるという。野党にも責任ある議論を求めたい。

2014年10月30日 02時30分
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[日経新聞] 労働時間改革で企業の創意工夫を競え (2014年10月30日)

会社に社員がそろう時刻を早めた新しいフレックスタイム制で、相互の連携を深める。夜遅くの残業を禁じ、仕事の密度を濃くする――。そうした働く時間の改革が企業の間で相次いでいる。

仕事の生産性を上げる労働時間制度の見直しでは、働く時間の長さでなく成果で賃金を支払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」への関心が高い。しかし、それ以外にもやり方は多様だ。

女性の働きやすさも労働時間改革では大事になる。それぞれの企業が創意工夫を凝らした改革が広がり、競争力の向上につながるよう期待したい。

リコーと富士ゼロックスは始業と終業時刻を社員が柔軟に決められるフレックスタイム制を刷新し、勤務しなければならない時間帯(コアタイム)を広げた新制度を始めた。従来のコアタイムはリコーで午前10時15分から、富士ゼロックスで10時からだったが、両社とも9時からへ早めた。

製品開発、営業、顧客対応など部門間の連絡をとりやすくするためだ。背景には、ものづくりからサービスへ収益源が移る「製造業のサービス化」の流れがある。

複写機メーカーはハード(機器)単体の販売から、企業へのコンサルティングを通じて情報システムを提案するサービス事業に軸足を移しており、それには各部門の連携が欠かせない。事業構造の変化に合わせ、働き方も変える必要があることを示している。

伊藤忠商事は午後8時以降の残業を原則禁止とし、午前5時?9時の時間帯に割増賃金を払って朝型勤務を促す制度を設けた。残業禁止で社員は仕事の優先順位をはっきりさせるようになり、早朝出勤で1日の業務の流れがつかみやすくなったという。仕事にメリハリをつけた好例といえよう。

長時間労働を是正して効率的に働ける仕組みをつくることは、専門性のある外国人を採りやすくし、子育て中の女性に十分に力を発揮してもらうためにも急務だ。

1日の勤務時間を6時間などとする「短時間正社員」の制度は女性が働きやすい環境づくりに役立つ。企業は積極的に導入を検討してほしい。

ホワイトカラー・エグゼンプションは企業の競争力を高める手段のひとつにすぎない。労働規制の見直しを待たずに、働く時間の制度改革に自ら踏み出すことが企業を強くする。
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[日経新聞] 閣僚増員は慎重に検討せよ (2014年10月30日)

政府が閣僚を1つ増やす法案を国会に提出した。2020年の東京オリンピックに備え、専任閣僚を置くためだ。五輪は成功させねばならないが、6年も前から専任閣僚が必要かどうかは議論の余地がある。行政改革に反しないかどうかなどを与野党は慎重に検討してほしい。

昨年9月に五輪の東京開催が決まると、安倍晋三首相は直ちに五輪相設置を決め、下村博文文部科学相に委嘱した。五輪準備は多くの省庁が関係することから、政府は今度の法案が成立し次第、兼務から専任に格上げする方針だ。

首相を除く閣僚の数は、1885年の内閣制度発足時は9人だった。省庁新設などで徐々に増え、1974年に20人になった。2001年の省庁再編時に初めて減らし、内閣法で「14人以内。特別に必要がある場合は3人を限度に増加できる」と定めた。

その後の内閣が常に特別3枠をフル活用してきたことからも、永田町に「大臣病」患者がいかに多いかがうかがえる。安易な増員は厳に慎まねばならない。

政府は一昨年、東日本大震災の復興相を置くため、閣僚枠を特例で1増した。あれだけの国難だったのだから、当然の措置である。五輪準備はそれに匹敵するだろうか。半世紀前の東京五輪の際に五輪相を置いたのは開催の2年前、専任にしたのは3カ月前だった。

法案は専任の五輪相を置くのは21年3月までとしている。気がかりなのは、スポーツ庁設置構想などと絡め、自民党内から「スポーツ相などの形で1増枠をいずれ恒久化できるのではないか」と期待する声が聞こえてくることだ。1増する場合には、五輪終了後は必ず元に戻すと安倍首相に確約してもらいたい。

政治主導を強化するには閣僚がもっと多くてよい、という意見がある。一理あるが、だとすれば現在の省庁体制が適正か、内閣府の肥大化にどう歯止めをかけるのかなどの議論と一体で考えるのが筋だ。慌てて決める話ではない。
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[毎日新聞] 社説:沖縄県知事選 辺野古移設への審判だ (2014年10月30日)

沖縄県知事選がきょう告示される。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に向け、仲井真弘多(ひろかず)知事が埋め立てを承認してから初の知事選で、知事の判断と辺野古移設の是非が問われる。

政府は選挙結果にかかわらず移設を進める方針だが、地元の民意を無視した安全保障政策は長続きしない。政府は選挙で示される県民の声に真摯(しんし)に耳を傾けてもらいたい。

知事選には3選を目指す仲井真知事、翁長雄志(おなが・たけし)前那覇市長、下地幹郎元郵政担当相、喜納昌吉(きな・しょうきち)元参院議員が立候補を表明している。辺野古移設について4氏の主張は、仲井真氏は推進、翁長氏は反対、下地氏は県民投票の実施、喜納氏は埋め立て承認の撤回を求め、違いが鮮明だ。

政党支援の構図は複雑だ。沖縄県知事選としては初めて保守系が分裂し、保革対決の構図が崩れた。自民党は仲井真氏を推薦するが、公明党は自主投票を決めた。翁長氏は、那覇市議会の保守系会派と共産、社民などの支援を受け保革共闘で臨む。

翁長陣営は知事選を「イデオロギーではなく、沖縄のアイデンティティーの戦い」と位置づける。冷戦終結から四半世紀を経ても沖縄に基地が集中し、新基地建設を押し付けられるのは沖縄への「構造的な差別」であり、「オール沖縄」で沖縄の将来を勝ち取ろうという考えだ。

仲井真氏は現実路線で対抗する。「普天間の危険性除去」が最優先だとして、辺野古移設を「現実的で具体的な解決策」として推進する。

安倍政権は、基地負担軽減策に取り組んで仲井真氏を全面支援する一方、選挙結果が移設に影響しないよう工事の既成事実化を図ってきた。

負担軽減策のなかには、普天間の空中給油機KC130部隊を山口県の米軍岩国基地へ移転したり、日米両政府が在日米軍基地の環境調査に関する新協定の締結に実質合意したりするなど前進したものもある。

だが、仲井真知事が昨年末の埋め立て承認の際、最重要の条件とした「普天間の5年以内の運用停止」は、米政府が反対しているとされ、実現は困難視されている。日本政府の沖縄への空手形に終わる可能性がある。

政府は沖縄県がすでに公有水面埋立法に基づく埋め立て承認をしている以上、重大な法的瑕疵(かし)や明白な環境破壊がなければ撤回や取り消しはできないとの立場だ。とはいえ、選挙結果いかんによっては、移設をめぐる政治的環境が根本から変わる。今回の知事選は辺野古移設に対する事実上の審判となる。

投開票は11月16日。沖縄の過重な負担のうえに日米安保体制の恩恵を享受している本土の人たちもまた沖縄の将来を考える機会にしたい。

2014年10月30日 02時35分
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