2013年12月31日

[東京新聞] 大晦日に考える 日本人らしさよ (2013年12月31日)

「日本を取り戻そう」と安倍首相は言いますが、それよりも「日本人らしさを取り戻そう」と言いたい。そんなことを思ったこの一年でもありました。

ことし印象深かった光景のひとつに、俳優高倉健さんの文化勲章を受けた時の会見がありました。

こう言いました。

「日本人に生まれて本当によかった…」

それを聞いてじつに新鮮な感じを受けました。最近、聞いた覚えがなかったからです。

ご承知のように健さんは、期待のニューフェースとして映画界入りしたものの作品に恵まれず任侠(にんきょう)映画でやっと人気を博す。


◆健さんは簡潔に言った
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やくざがいい、とは言いませんが、彼の演ずるやくざは、思慮深く、忍耐強く、そして自分の信念は曲げないという人物。つまり伝統的な日本人です。

少々脱線するようですが、当時の熱気あふれる映画館では、終幕に殴り込んだ健さん、その背後に敵の刃(やいば)が迫る、すかさず客席から銀幕に声が飛ぶ。

「健さん、うしろだ」

間髪入れず、健さん、振り返って、バッサリ…。

今ではおよそ考えにくい光景でしょうが、その映画館の掛け声とは、自分がそうありたい日本人に向かって思わず叫んだ声援ではなかったでしょうか。

記者会見で、健さんはこうも言いました。

「一生懸命やっていると、ちゃんと見ていてもらえるんだなあ」

日本人の倫理観を見事なほど簡潔に述べています。勤勉を尊び、仕事は公正に評価される。うなずきつつ聞いた人もいたでしょう。

目下、格差社会といわれます。

こんな言い方があります。

日本政府は、外国の企業・投資を呼び込もうとしている。そのために企業の税金を安くする。同じ恩恵は日本の企業も受けるが、厳しい競争のために経営効率を上げる。社員の給与を抑える。非正規労働者を増やす。ではそれは一体だれのための政策だろうか。

こういう中に、日本人らしさはあるでしょうか。

現実には二つの対応があるようです。一つは、少なからぬ企業が苦しい中でも格差をできるだけ抑制しようとしていること。経営者から日本人らしさが消えたわけではありません。

もう一つは、競争を理由に格差を進んで認めるような企業のあることです。若者を使い捨てるブラック企業が典型でしょう。日本人らしくもないことです。


◆司馬さんの日本人論
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政治の世界でも、政治参加の権利をめぐって格差に似たものが生まれつつあるのかもしれません。政治と民意とが離れすぎた。

例えば、揺れに揺れた特定秘密保護法。

情報を独占する国家と、情報を知らされざる国民。もう少し踏み込んで言えば、支配する者と支配される者。歴史の教えに従うなら、国家と国民の分離はその国の未来を不安定にしかねません。少なくとも民主国家からは遠ざかるでしょう。

日本人論と言えば、作家の司馬遼太郎さんは、こう語っていました。一九九一年、文化功労者に選ばれた時の会見で。

「どうして日本人はこんなにばかになったんだろう。昔はちがったろう。ここから(ぼくの)小説(を書くこと)は始まった」

彼によれば武士道から来たストイシズム、禁欲主義。江戸の商人たちが到達した合理主義。その二つが明治で合体し、よき明治人をつくり上げたとなる。

司馬さんは、明治人を書くことで、無謀な戦争の愚かさや、戦後の土地バブルのようなことは、断じて日本人らしくはない、とさとそうとしたのでした。

古い日本人をふりかざそうとは思いません。しかしそれは私たちの先人の知恵であり、振り返る価値のあるものです。

どの国にも国民性はあります。アメリカにはアメリカ人らしさ、中国には中国人の、日本には日本人の…。それは変わらないようで時に変わったようにも見えます。政治や経済が曲げることがあるからです。


◆自信喪失状態の選択は
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私たちは、やはり時々自分を見つめ直さねばなりません。

冒頭の健さんの言葉に戻せば、その「日本人に生まれて本当によかった…」という言葉は、私たち自身を問い直すよい機会を与えてくれたような気がします。

私たちは経済的に豊かな日本を取り戻すのか、それとも精神的に豊かな日本人らしさを取り戻すのか。そこが見るべき岐路です。

日本は今自信喪失状態のようです。しかし政治にせよ、経済にせよ、日本人らしさを忘れているだけなのではないでしょうか。
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[産経新聞] 回顧2013 日本再生の希望がみえた 「成長」「憲法」で突破口開け (2013年12月31日)

日本人が、誇りと豊かさを取り戻すため、活力ある国づくりに再び歩み出した1年だった。

昨年暮れに自公連立の安倍晋三政権が発足するまでの日本は、崖っぷちにあった。政権を担った民主党は国政を迷走させ、世界には「衰退する国」と映った。われわれも自信喪失気味だった。

しかし、今は違う。徳俵で踏みとどまると、経済が再生を始め、自国の安全保障を確かなものにすべく、さまざまな取り組みが進められている。

2020年東京五輪の開催が決まったのは、「元気な日本」が進行している象徴といえまいか。今年の成果を踏まえ、さらなる前進を新年に期待したい。

≪土俵際から反転できた≫

安倍首相が最も重視したのは経済再生と中国への備えだった。

まず着手したのは、デフレからの脱却だ。大胆な金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略を三本の矢とする「アベノミクス」を推進した。新しい日本銀行総裁に、積極的な金融緩和を主張する黒田東彦(はるひこ)氏を起用した。「異次元」と呼ばれた過去最大の量的緩和の実施で円安株高は加速された。

中長期的な成長に向けた手も打った。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加を決断し、日本は米国と厳しい折衝を行っている。国益を守る交渉に引き続き粘り強くあたってほしい。

半面、財政再建という重荷を依然抱えたままだ。国の借金である国債の残高は、6月末時点で初めて1千兆円を突破した。

景気の腰折れを懸念しつつも、首相は税収増を図るため、平成26年4月1日から消費税率を現行の5%から8%へ引き上げることを決めた。

経済力は日本の国際的地位と国民の暮らしを支える基盤である。緒に就いたばかりの経済再生と財政再建という2つの難題にどのように同時に挑んでいくか。難問ではあるが、あらゆる手段を尽くして解決策を出してもらいたい。

尖閣諸島を奪おうとしている中国が、軍事力による圧力をますます強める1年でもあった。

中国公船が尖閣周辺で領海侵入などを繰り返すだけでなく、海軍艦船は海上自衛隊護衛艦に射撃管制用レーダーを照射、日本の接続水域へ中国潜水艦が潜航したまま入り込んできた。無人機の飛来、一方的な防空識別圏の設定など、中国の挑発行動は繰り返される。共通するのは、国際ルールや国際秩序を軽んじ、軍事力を背景に現状変更をねらっている点だ。

安倍政権はそのような中国に毅然(きぜん)と対応する姿勢を鮮明にした。国と国民の安全に責任を持つ政府として当然である。「(日本の主権への)挑戦を容認することはできない。どの国も判断ミスをすべきではない」と、2月の訪米時に講演で述べたのも、尖閣を守り抜く意志を示すメッセージだ。

≪欠かせぬ国民との対話≫

中国、韓国が日本との首脳会談を意図的に回避したのに対し、首相はミャンマーを含む中国の周辺国を相次いで訪問する外交を展開した。7月の参院選勝利で「衆参ねじれ」を解消すると、積極的な安全保障政策にも動き出した。

10月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、日本の集団的自衛権の行使容認の検討に米側が「歓迎」を表明し、防衛協力のための指針(ガイドライン)再改定で合意した。日米合同の離島防衛訓練も重ねている。

今月発足させた国家安全保障会議(日本版NSC)では、中国に対応する防衛力強化の方針が国家安保戦略として打ち出された。

政権発足から1年の節目に、首相が靖国神社を参拝し、沖縄県の仲井真弘多知事から米軍普天間飛行場移設の辺野古埋め立て承認を引き出したことは、懸案を解決する政権の姿を印象付けた。

再生の希望がみえた年にしては、首相のライフワークである憲法改正では足踏みが続いた。国民の多くが憲法改正に前向きになっており、国会ではすでに「護憲一本やり」の政党はごく少数派となった。にもかかわらず首相が提唱した改正要件を緩和する96条の先行改正論は下火となり、国民投票法改正も持ち越した。

集団的自衛権の行使容認問題は早急に決着すべき課題だ。国の防衛のあり方を大きく変えるからだ。首相は国民の理解を求めるために国民との対話を進めるときである。
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[日経新聞] 歴史的な株高が映す期待を現実に (2013年12月31日)

株価は経済の先行きを映す鏡である。2013年の株式市場は総じて明るい雰囲気だった。国も企業も市場のメッセージをきちんと受けとめ、新年を迎えたい。

大納会の30日、日経平均株価は1万6291円で今年の取引を終了した。年間上昇率は57%と1980年代後半のバブル期を上回り、朝鮮戦争の特需が日本復興を後押しした51、52年や、日本列島改造ブームがあった72年に次ぐ過去4番目の大きさとなった。

外国人投資家の年間買越額もおよそ14兆円と過去最高だった。

円安の追い風を生かす

このような歴史的な株価上昇が映したものは、日本経済が長期の低迷から抜け出すことへの期待感にほかならない。

株価上昇のきっかけとなったのは、安倍晋三首相の経済政策、アベノミクスの第1の矢と呼ばれる大胆な金融緩和だ。3月に就任した黒田東彦日銀総裁は4月の金融政策決定会合で、2%の物価上昇率目標を掲げ通貨供給量を大幅に増やすことを決めた。

金融緩和を受けて外為市場では円安・ドル高が加速した。リーマン・ショック後に合理化を進めていた日本企業は円安の追い風を生かして業績を改善させ、株式市場の評価を高めた。

株価の上昇は資産効果や心理の好転を通じて個人消費を刺激したため、流通業など内需型企業も潤った。それが再び株価にはね返るという好循環になった。

アベノミクス第2の矢である財政政策も景気を下支えした。金融緩和をきっかけとする円安・株高と相まって、日本経済はデフレ脱却の端緒をつかんだ。

とはいえ、一年をふり返れば日本経済の課題やアベノミクスの限界もはっきりしてきた。

まずもって第3の矢と呼ばれる成長戦略が物足りない。

安倍政権が今年6月に打ち出した日本再興戦略は、医療や農業など高い成長が見込める分野で、本格的な規制改革に踏みこまなかった。再興戦略が明らかになった直後の株価下落は、政策の中身が期待に届かないとき、市場の反応がいかに厳しいかを示している。

安倍首相は本紙インタビューで、来年6月をめどに新たな成長戦略をまとめると語った。経済の新陳代謝を促し、潜在成長率の引き上げにつながるような具体案を示してほしい。

財政健全化計画への信頼を高めることも課題として残る。来年度予算案は社会保障費の膨張に歯止めがかからず、歳出抑制に甘さが目立つ。国債の新規発行は相変わらず巨額だ。今は落ちついている長期国債の金利が今後、必要以上に上昇しないか心配になる。

国から企業に目を移すと、資金が手元に積み上がり、賃金の上昇や投資の拡大に生かされていないという問題がある。

日本企業は国内総生産(GDP)の半分近くにあたる220兆円の現預金を保有している。投資家は、今後稼ぐ収益を含めて企業に資金を有効に使うよう求めている。企業は来年、そうした声に応える必要がある。

世界経済は金融危機後に好調を保った新興国に陰りが見える一方、米国の景気が回復するなど移行期にある。米連邦準備理事会(FRB)は量的緩和の縮小を始めた。これを受け、経常収支が赤字の新興国の通貨が下落するなど、国境を越える投資マネーの動きは相変わらず速い。

経済重視の姿勢崩すな

経済が良い循環に入り始めた日本も、資金流出のきっかけになるような懸念を市場に抱かせるわけにはいかない。

その意味で気になるのは、安倍首相の経済重視の姿勢が変わりつつあるようにも見えることだ。

安倍首相が成長戦略実行国会と位置づけた先の臨時国会は、焦点が特定秘密保護法案に移り、国会運営が拙速とも批判された。

政権発足1年の機会をとらえて踏みきった靖国神社への参拝については、日本企業の中国ビジネスに与える悪影響を指摘する投資家も少なくない。

株価上昇は日本経済の構造変化に対する期待の表れだ。安倍首相が経済以外の分野を含めた全ての政策への信認と取り違えるようなら、アベノミクスへの市場の評価も揺らいでしまう。

来年は4月に消費税率が引き上げられるなど、景気の先行きにとって不透明な要素が増える。国も企業も円安・株高に安住して課題を先送りしては、日本経済を強くすることはできない。株価上昇を実体経済のいっそうの好転につなげるべきだ。
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[毎日新聞] 社説:学力回復 入試の改革に生かそう (2013年12月31日)

3年に1度実施されるOECD(経済協力開発機構)の2012年国際学習到達度調査(PISA=ピザ)で、日本は各分野で成績の上位を回復した。

03年の調査で落ち込んだ際は「PISAショック」と呼ばれ、学習指導要領の見直しや全国学力テストの復活、発展的な学習内容を盛り込んだ分厚い教科書の登場など「脱ゆとり」現象につながった。

文部科学省は今回のPISA結果を、そうした授業量の増加や習熟度別指導の普及などが効果を上げたとみるが、教室の先生たちの努力や創意工夫が大きいだろう。単に「量」が奏功するのではなく、PISA型学力を反映した教え方や授業法も重要な鍵になる。

PISA型学力といわれるものは、従来の知識や技能テストとは異なり、論理力や実用的な活用力などを重視する。テストは「数学的リテラシー(活用力)」「読解力」「科学的リテラシー」の3分野があり、高校1年相当の15歳が対象だ。

一端を挙げると、例えば、ある風刺寓話(ぐうわ)をめぐり2人が語った異なる意見を並べ、それぞれの発言の理由を書かせるような問題が出る。どちらが正しいか、○×で選ばせるのではない。なぜそんな意見が出てくるのか考えさせるのである。

変化を続ける現実の社会生活や仕事で日常的に求められる“おもんぱかる力”といえるだろう。

調査は、日本の生徒たちについてもう一つの側面を示す。

学習意欲や興味の持ち方が成績に比べ低い傾向だ。例えば、数学について「授業が楽しみ」「将来の仕事の可能性を広げてくれるから学びがいがある」といった度合いが、OECD平均より低い。

また、このPISA調査の問題にどれだけ真剣に取り組んだかを10段階で自己評価する「努力値」で、日本の平均値が参加国中最低だった。03年、06年も同様だ。ひたむきな努力を軽んじるような風潮を映してはいないかと、気になる点だ。

学びの喜びという種を植え、生涯にわたって意欲的な学習の動機付けとすることが、学校教育の大きな目標の一つだ。

1980年代、臨時教育審議会は、社会や時代の急速な変化に対応する思考力、問題解決力を重視する新しい学力観を打ち出した。PISA型学力にも通じるものがある。

今秋、政府の教育再生実行会議は1点刻みの大学入試を改めようと、「達成度テスト」創設などを提起した。今後の制度設計に際しては、この根づき始めたPISA型学力をいかに生かすか、論議を求めたい。

新年への期待である。

2013年12月31日 02時31分
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[毎日新聞] 社説:プロ野球 組織改革に猶予はない (2013年12月31日)

日本野球機構(NPB)の新しいコミッショナーが決まった。東京地検特捜部長などを務めた弁護士の熊崎勝彦氏が1月1日付で就任する。ビジネスの拡大に向けた組織改革、統一球問題で欠陥が指摘されたガバナンス(組織統治)の構築など課題は山積している。ファンや選手あってのプロ野球という視点を忘れることなく、改革を進めてほしい。

統一球の仕様をひそかに変更していた責任を取って辞任した加藤良三氏の後任について2005年からコミッショナー顧問を務め、球界の事情にも精通している71歳の熊崎氏をセ・リーグが推したのに対し、パ・リーグの一部球団は積極的なビジネス展開を図れる人物の起用を主張したが、ビジネスを取り仕切る専務理事を新しく設けることで折り合いがついた。プロ野球がビジネスであることを踏まえれば、遅きに失した感はあるが、一歩前進と言える。

統一球問題を調査・検証した第三者委員会は再発防止に向け、コミッショナーが業務執行の責任者として職責を果たせるような組織体制の強化を求めた。さまざまな課題の解決に向け、熊崎氏にリーダーシップの発揮を求めるならば、現在はオーナー会議が決定したことを執行する権限しかないコミッショナーの役割を見直すことは欠かせないだろう。

就任会見で熊崎氏はポスティングシステム(入札制度)に代わる新移籍制度の見直しについて触れた。改定交渉は米大リーグ機構(MLB)主導で行われ、日本選手の獲得を希望する米球団から日本球団に支払われる移籍金に上限が設けられ、2000万ドルで決着がついた。

前制度では最高入札額を提示した米球団に独占交渉権が与えられたが、上限はなく、松坂大輔投手やダルビッシュ有投手の場合、約5000万ドルの入札額がついた。新制度では米球団は支出が抑えられ、日本選手は複数球団と交渉できる可能性が生まれた。日本球団だけが割をくった形で、ワールド・ベースボール・クラシックの収益分配問題に続いてNPBの交渉力の弱さがあらわになった。MLBと互角の交渉ができる人材の確保が急がれる。

日米全球団と自由に交渉できるフリーエージェント(FA)権についてプロ野球選手会は国内7?8年、海外9年となっている取得期間の短縮を求めている。移籍金が発生しないFA権を行使しての海外移籍に球団側が消極的なのは理解できるが、力のある選手が活躍の場を求めてMLBに渡る流れは止められない。

国内FA移籍ですでに実施している金銭補償や人的補償と組み合わせる形で海外FA権の取得期間を短縮することを検討してはどうか。

2013年12月31日 02時30分
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[朝日新聞] アベノミクス1年―中長期の視点を忘れるな (2013年12月31日)

この1年、日本経済はアベノミクスを中心に回ってきたといえるだろう。

安倍政権は「異次元」の金融緩和と大規模な財政出動を推し進めた。幸い、世界経済も落ち着きを取り戻した。

これらが日本経済の沈滞したムードを一変させたのは間違いない。物価はプラスに転じ、政府は12月の月例経済報告で「デフレ」の文字を4年2カ月ぶりに削った。

しかし、金融と財政が混然一体となった異例のデフレ脱却策は、財政破綻(はたん)のリスクを膨らませてもいる。

危惧するのは、安全保障の強化など「安倍カラー」の政策を進めるために支持率の維持が最優先となり、景気のわずかな停滞もなりふり構わず排除する姿勢が見えることだ。

来春の消費増税への対策に5・5兆円もの国費を投入するのはその典型だ。目先の景気刺激を意識するあまり、構造的な財政悪化の是正という中長期の政策がおろそかになっては、手痛いしっぺ返しが来る。

■インフレ期待の逆流

アベノミクスで、まず打ち出されたのは日銀による金融緩和である。正式には「量的・質的金融緩和」という。

以前は、緩和策の終了に備えて満期3年までの国債を市場で買っていたが、現在は3年以上の国債も大量に買い込む。2年で日銀の資産を2倍に増やし、2%の物価上昇を目指す。

金融緩和への強い姿勢を示すためだが、一方で金融政策のかじ取りは難しくなる。

生命線は「インフレ期待」である。家計や企業が物価高を予想して早めに支出を増やし、それが経済を活性化させ、さらに物価上昇につながる好循環を想定している。

現実に、物価は上がりつつある。だが、その相当部分は円安による輸入インフレで占める。値下げ競争でデフレの元凶だったパソコンや家電で価格低下が止まったのも、輸入依存度が高まったためだ。

これだけでは家計を圧迫する「悪いインフレ」である。実質的な収入が増えなければ、日銀の想定とは逆に家計の財布のひもは固くなる。インフレ期待が「逆流」しかねない。

先々のインフレ率の予想も伸び悩み、金融市場では追加緩和の催促が始まった。黒田日銀総裁は「緩和策の逐次投入はしない」というが、インフレ期待を維持するために追加緩和を続ける悪循環のリスクもちらつく。

こうしたジレンマを覆い隠すのが、大盤振る舞いの財政出動だ。政権発足後、補正予算を含めると年間100兆円規模の大型歳出が続く。

リーマン・ショック前の好況期に比べ15%ほど多く、国債依存率も上昇した。経済全体の財政依存は深まっている。

消費増税対策の補正予算も、公共事業をはじめとするバラマキ型で、古い自民党時代の赤字膨張メカニズムさながらだ。

■劣化する財政規律

そもそも消費増税は、社会保障を持続可能なものにするための第一歩である。国民に負担増を求める以上、中長期の歳出抑制につながる財政改革に力を注ぐべきだった。

ところが、安倍政権では社会保障との「一体改革」という位置づけは遠景に退き、増税対策の名目で予算の分捕り合いが展開される。財政規律は「量的・質的」にむしばまれていると言わざるをえない。

日銀の金融緩和が長期金利を抑え込んでいることが、政府与党の慢心を助長していることも否定できまい。

結局、アベノミクスは金融と財政の「上げ底」ミックスに過ぎない――。いずれ、そんな疑念が深まるのを恐れる。

それは、日銀の緩和策が財政赤字の穴埋めだという見方を広げ、国債暴落(金利急騰)の引き金になりかねない。

安倍政権は、企業に対する賃上げ要請に力を入れている。9月から続いた政労使の協議は、合意文書で来年の春闘での「賃上げ」を明記した。

インフレ期待の逆流を防ぐのに賃金上昇が重要であるのは事実だ。円安メリットを享受する主要企業が率先して労働者に還元すべきことも論を待たない。

■暮らしの底上げを

ただ、賃上げやベアはあくまで労使の努力で主体的に生み出すものだ。成果を急ぐような政府介入は弊害が大きい。

春闘の中心は製造業の大企業であり、対象は正社員だ。むしろ政府が果たすべき役割は、サービス業や非正規労働者、中小企業での賃上げに向けた環境整備である。

例えば、巨大な潜在需要がありながら、低賃金労働が一般化している福祉・介護の分野だ。介護保険など制度に縛られた面が大きく、ここを社会保障の改革の中で相応の所得を生む仕事に変えていく。

暮らしの底上げを目指す成長戦略に目を向けるときだ。
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[読売新聞] 独大連立政権 欧州経済の再生に責任は重い (2013年12月31日)

安定的な政権基盤を得たメルケル・ドイツ首相が欧州財政・金融危機の克服に指導力を発揮することを期待したい。

欧州一の経済大国、ドイツで、中道左右の2大政党が4年ぶりに大連立を組み、第3次メルケル政権が発足した。

ドイツ連邦議会(下院)の選挙制度は基本的に比例代表制であるため、大政党でも単独過半数を占めることは難しく、政権作りには連立交渉が避けられない。

9月の総選挙で大勝したのは、首相率いる中道右派、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)で、最大野党の中道左派、社会民主党(SPD)と交渉した。

だが、社民党が連立合意作りで、全国一律の最低賃金制度導入などの公約実現を強く主張し、政権発足に80日以上も要した。国内の政治空白が生じ、欧州連合(EU)における危機対策をめぐる論議の停滞を招いたのは否めない。

両党がまとめた連立合意書は、ユーロ加盟国に対して財政健全化と構造改革を求めた。ユーロ圏の信用で資金調達する「ユーロ共通債」など、ドイツの負担増につながる構想には、債務国の甘えを助長するとして、反対している。

メルケル政権の従来路線の踏襲だ。危機克服に取り組む基本姿勢を改めて示したと言えよう。

ギリシャなど南欧諸国は失業増に苦しみ、ユーロ圏がデフレに陥る危険も指摘される。

経済が堅調で、昨年経常黒字が世界最大だったドイツは、「独り勝ち」の状況だ。欧州の景気回復に向け、内需拡大で域内諸国から輸入増を図るなど、成長に資する政策を検討する必要がある。

連立合意書は、エネルギー分野では、2022年までに原子力発電所を全廃するというこれまでの「脱原発」政策も再確認した。

ただ、代替電力として期待される再生可能エネルギーについては、電力会社が電力を一定年数、高値で買い取る「固定価格買い取り制度」を抜本的に見直す。

新設の再生エネ施設で発電された電力は市場での取引を原則とするなど、競争原理が働きやすい仕組みを取り入れるという。

再生エネ普及促進策の核として、この制度が2000年に導入されて以来、家庭の電力料金は右肩上がりで上昇し、現在約2倍にまでなっている。国民の反発は強く、見直しは当然と言える。

日本の固定価格買い取り制度は、ドイツを参考にして作られた。日本は、ドイツの現状を注視し、制度見直しを進めるべきだ。
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[読売新聞] コミッショナー NPBの体制強化を最優先に (2013年12月31日)

プロ野球が一層、国民に愛されるよう、力を注いでほしい。

東京地検特捜部長などを務めた弁護士の熊崎勝彦氏が、1月1日付でプロ野球の新コミッショナーに就任することが決まった。

熊崎氏は記者会見で、「プロ野球界を活力あるものにし、社会に貢献できるように持ち味を発揮したい」と抱負を語った。

2005年からコミッショナー顧問として、コンプライアンス(法令順守)問題などを担当してきた。その経験を生かし、プロ野球界が抱える問題点を改善するリーダーシップが期待される。

まず、手がけねばならないのは、足元の日本野球機構(NPB)の改革である。統一球問題で、NPBはファンの信頼を失った。

加藤良三・前コミッショナーは、統一球の反発力が高まった事実を把握していなかったという。重要情報がトップに伝わらないNPBの組織改革が急務だ。

熊崎氏は、細かく目配りできる常勤の補佐役が必要だとの考えを示した。コミッショナーが的確な判断を下せるガバナンス(統治機能)を確立する必要がある。

プロ野球を取り巻く環境は依然、厳しい。今季はセ・パ両リーグとも昨季より観客数が増えたものの、4球団では減少した。テレビの地上波中継も減っている。

ファンサービス向上のため、新コミッショナーは12球団と連携し、知恵を絞ってもらいたい。

特に、常設化した日本代表(侍ジャパン)の魅力を高め、収益につなげる戦略が求められる。ファンが喜ぶ国際試合の設定などで、手腕が問われよう。

楽天は、エースの田中将大投手の米大リーグ移籍を容認した。

大リーグに挑戦し、飛躍したいという選手の夢は、可能な限り尊重すべきだろう。

一方で、スター選手の流出が続けば、プロ野球の地盤沈下が避けられないのも事実である。

今回、日本選手が大リーグに移籍するためのポスティングシステムが、大きく変更された。移籍を容認した日本の球団が、2000万ドル(約20億円)を上限に譲渡金を設定する仕組みになった。

上限がなかった日本選手の獲得金額を抑えたい大リーグ側の意向を反映した制度変更と言える。

野球が世界的にさらに発展するには、軸となる日米の球界が共存共栄していくことが欠かせない。選手獲得における日米の公平なルール作りも、新コミッショナーの重要な課題である。
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2013年12月30日

[東京新聞] 年のおわりに考える 民主主義は深化したか (2013年12月30日)

今年も残すところあと一日。振り返れば、久々に首相交代のない一年でもありました。安倍晋三首相の下、日本の民主主義は「深化」したのでしょうか。

今年、日本政治最大の変化は、参院で政権与党が過半数に達しない国会の「ねじれ」状態の解消です。民主党政権の一時期、解消されたことはありましたが、二〇〇七年から六年ぶりのことです。

ねじれ国会では与党が法案を成立させようとしても、野党が反対すれば不可能です。内閣提出法案の成立が滞り、政策を実現できない「決められない国会」に、国民のいらだちは高まりました。


◆ねじれ解消したが
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ねじれ国会のこの六年間は頻繁な首相交代の時期と重なります。ねじれが政治不安定化の一因になったことは否めません。

では、ねじれ国会が解消されて日本の政治は本当によくなったのでしょうか。

経済再生、デフレ脱却を最優先に掲げてきたはずの第二次安倍内閣が「本性」を現した象徴的な政治的出来事が、年末になって相次いで起きました。

その一つが、特定秘密保護法の成立を強行したことです。

この法律は、防衛・外交など特段の秘匿が必要とされる「特定秘密」を漏らした公務員らを厳罰に処す内容ですが、国民の知る権利が制約され、国民の暮らしや人権を脅かしかねないとの批判が噴出しました。

しかし、安倍首相率いる自民党政権は衆参で多数を占める「数の力」で、採決を強行します。

首相は「厳しい世論は国民の叱声(しっせい)と、謙虚に真摯(しんし)に受け止めなければならない。私自身もっと丁寧に説明すべきだったと反省している」と述べてはいます。しかし、首相が国民の声に本気で耳を傾けていたら、成立強行などできなかったのではないでしょうか。


◆「自民一強」の慢心
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そして、第二次内閣発足一年に当たる二十六日の靖国神社参拝です。第一次内閣で参拝できなかったことを「痛恨の極み」と話していた首相ですから、積年の思いを果たしたということでしょう。

国の命による戦死者を、指導者が追悼し、慰霊するのは当然の責務とはいえ、首相の靖国参拝にはさまざま問題があります。

靖国神社が一宗教法人であるという政教分離の問題に加え、極東国際軍事裁判(東京裁判)のA級戦犯が合祀(ごうし)されている靖国神社への首相参拝は、軍国主義礼賛と受け取られかねないからです。

首相の参拝には、国内はもとより、日本軍国主義の犠牲となった中国、韓国をはじめ近隣諸国から激しい反発が出ています。東アジアの火種を避けたい米政府も「落胆した」と批判しています。

足元の自民党内の一部や友党である公明党の反対を押し切っての参拝強行です。そこには多数党の頂点に立つ首相なら何をやっても乗り切れる、という「慢心」があるように思えてなりません。

その翌日には、沖縄県の仲井真弘多知事が米軍普天間飛行場の県内移設に向けて、名護市辺野古沿岸部の埋め立てを承認します。

知事に承認させるため、政府と自民党は手を打ってきました。年間三千億円の沖縄振興予算という「アメ」と、世界一危険とされる普天間飛行場が固定化してもいいのかという「ムチ」です。

県民の多くが求めた国外・県外移設を、安倍政権は一顧だにしません。県選出の自民党国会議員には県外移設の公約撤回を迫る周到ぶりです。

これらはたまたま時期が重なっただけかもしれません。

しかし、いずれも民主主義とは相いれない、自民党「一強」ゆえの振る舞いです。野党の言い分や国民の間にある異論に耳を傾けざるを得ない「ねじれ国会」であれば、躊躇(ちゅうちょ)したはずです。

今夏までのねじれ国会では歩み寄りの努力を怠り、ねじれ解消後は議会多数の「数の力」で押し切り、異論をねじ伏せる。そんなことで自由、民主主義という価値観をほかの国と共有すると、胸を張って言えるでしょうか。


◆大事なことは面倒
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引退を表明した世界的なアニメ作家、宮崎駿さんは「世の中の大事なことって、たいてい面倒くさいんだよ」と指摘します。

多様な意見があり、利害が交錯する現代社会では、意見を集約して方向性を決めることは手間のかかる作業です。選挙結果を金科玉条に、多数で決める方が議員にとって、はるかに楽でしょう。

最後は多数決で決めるとしても少数意見にも耳を傾ける。議論を尽くして、よりよい結論を出す。説明、説得を怠らない。

民主主義を実践するのは面倒です。しかし、その地道な作業に耐える忍耐力こそが、民主主義を深化させる原動力になるのです。
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[産経新聞] 東電の経営計画 政府の関与強化は当然だ (2013年12月30日)

東京電力が新たな経営再建計画を政府に提出した。政府と一体となって福島第1原発事故に伴う除染などに取り組む方針を打ち出し、一層の合理化推進と併せて福島の早期復興を目指す。

その柱に柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を据えて、休止中の全7基のうち4基の運転を来年度中に再開するとしている。

柏崎刈羽の再稼働は、首都圏に安定的に電力を供給し、確実な収益で賠償費用を捻出するために不可欠である。計画を画餅に終わらせてはならない。政府は、柏崎再稼働でも東電を支援し、地元の説得に当たってもらいたい。

実質国有化された東電の昨年の経営計画は、賠償や除染費用として国から5兆円を借り入れ、事業収益で返済する内容だった。

だが、除染費用がかさみ、賠償の本格化で資金枠が枯渇する恐れが生じ、これを9兆円に拡大するなど抜本的な見直しを図った。

新計画では、除染などの東電負担を軽減し、国と共同で原発事故処理を行うことを明確にした。全てを東電任せにした民主党政権下の枠組みでは、賠償や除染に遅れが生じていた。その点で政府の役割強化は評価できる。両者一体で福島の復興を進めてほしい。

計画の成否は柏崎刈羽原発の早期再稼働にかかる。東電では来年7月の6、7号機、来年度後半の1、5号機の運転再開を前提にしている。6、7号機についてはすでに、原子力規制委員会に安全審査を申請中だ。規制委の迅速な審査が期待される。

新潟県の泉田裕彦知事は再稼働に慎重な姿勢だ。だが、遅れれば賠償費用の確保や電力供給に支障が出かねない。再稼働なくしては電気料金の再値上げの可能性があることも忘れてはなるまい。

安全性が確認された原発は、早期に運転を再開すべきだ。そのためには、政府が前面に出て、地元自治体の理解を得る努力を尽くさなければならない。

計画では希望退職募集や支店の廃止など、リストラの拡大・深化も決めた。国費を投入して事故処理を行う以上、一段の合理化に取り組むのは当然ではある。

50歳以上の管理職500人を福島に異動させるという。ただ、適材適所の人材配置でなければ、賠償業務に影響しかねない。社員の意欲を引き出す対策も忘れてはならない。
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[産経新聞] 問題教師 指導力高め信頼取り戻せ (2013年12月30日)

教職者への信頼が揺らいでいる。体罰にわいせつ行為と不祥事が絶えない。懲戒や訓告などの処分を受けた教員が、文部科学省の調査で大幅に増えたことが分かった。

能力や資質に課題があり「指導が不適切な教員」を認定し研修させる制度の適用はわずかしかない。資質向上へ手を尽くし、信頼を取り戻したい。

平成24年度の公立小中高校の教員処分状況では、免職や停職、減給をはじめとする懲戒処分や訓告などを受けた者は1万人余で、前年度の2・5倍になった。

このうち体罰を理由に処分されたのは2千人以上で、昭和63年度の調査開始以来、最多だった。大阪市の桜宮高校の体罰自殺事件を受け、各教育委員会が従来は見過ごされていたケースを含め、厳しく処分したという背景もある。

だが、怒りに任せた暴力が指導といえないのは当然だ。学校教育法では教員に懲戒権を与えてはいても体罰は否定している。指導に名を借りて独りよがりになってないか、改めて見直してほしい。

調査を通じて、教委によって処分の判断に違いがあることも判明した。たたく行為も「全て体罰として迅速に処分している」という教委がある一方、外部識者の意見を聞き慎重に判断する所もある。問題を隠さず対応することは当然としても、くれぐれも教師の熱意をそがないようにしてほしい。

体罰によらず、粘り強く荒れた学校を立て直した教師らの例は少なくない。生徒の顔色をうかがって見て見ぬふりをしていては、信頼など得られない。毅然(きぜん)と教えられるよう指導力を高めたい。

資質自体が疑われる現象もなくならない。わいせつ行為で処分されたのは186人と前年度より増えた。国旗国歌の指導を妨げて処分される者も相変わらずいる。本来あってはならないことだ。

問題教師を教壇に立たせない当然の措置も徹底されていない。指導が不適切と認定された教員は149人と8年連続で減った。制度を厳正に運用してもらいたい。

学校に対する要請は多様化している。団塊世代の退職で若手教員の指導力向上も急務だ。大学での教員養成過程を含めて採用、研修をさらに工夫したい。

教員は自らの指導を評価される機会が少なく、互いに切磋琢磨(せっさたくま)する姿勢に乏しい。悪弊を見直し連携して指導力を磨いてほしい。
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[毎日新聞] 社説:石綿被害判決 国は早期救済に動け (2013年12月30日)

戦前から紡織業が盛んだった大阪府南部地域のアスベスト(石綿)関連工場の元従業員と遺族が国を相手に起こした集団訴訟で、大阪高裁は1審に続いて賠償を命じた。

石綿による健康被害を防ぐ規制を怠った国の責任を初めて高裁段階で認めたことになる。1審よりも国の責任範囲を広げ、被害者の多くを救済対象としたことは評価できる。

粉じんで石綿肺が発症するという医学的知見が1958年に確立したのに、国は71年まで排気装置の設置を義務化しなかった。粉じんの濃度規制も、学会が勧告したにもかかわらず、欧米より10年以上遅れた。判決は、これらの規制権限を行使しなかったことは著しく合理性を欠いており違法と結論付けた。

健康被害の救済を重視して、国の不作為責任を認めた2004年の筑豊じん肺訴訟の最高裁判決に沿う当然の判断だ。

集団訴訟は二つに分かれ、今回は第2陣の控訴審判決だった。原告が逆転敗訴した第1陣の大阪高裁判決は、産業の発展を重視し、行政の裁量権を広く認めて国の責任を否定したため、原告側が上告した。

今回の判決で国側が上告すれば、相反する二つの判断について最高裁で審理が続く。だが、原告の元従業員59人は石綿肺による呼吸障害や石綿関連がんの中皮腫に苦しみ、半数以上が死亡している。最高裁の判断を待っていては遅い。国は判決を受け入れ、早期救済に動くべきだ。

石綿による健康被害は、建設業や造船業などで深刻な事態となっている。元建設作業員らが国の責任を求めた訴訟では、東京地裁が昨年12月、防じんマスク着用の義務化が遅れたとして国に賠償を命じている。司法が相次いで救済を迫る意味を政府は重く受け止めなければならない。

石綿の健康被害で労災認定された人と06年施行の石綿健康被害救済法で救済認定された人は合わせて1万人を超えた。中皮腫は発症までの潜伏期間が20?60年と長いため、死亡者は年々増え、昨年は過去最多の1400人に上った。今後も被害拡大は避けられない。

救済法の補償水準は労災や公害被害と比べて低く、不備が指摘されている。労災の認定基準も厳しく、基準に合理性がないとして救済する司法判断が出ている。被害の実態に合う制度となるよう補償増額や対象拡大の検討を急がなければならない。

高度成長期以降に大量輸入され建材に使われた石綿は800万トン前後と推計される。昨年3月に全面使用禁止となったが、石綿が残る建物の解体は数年後からピークとなる。行政や業者は石綿が飛散しないよう万全の対策を取る必要がある。

2013年12月30日 02時30分
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[日経新聞] 安倍外交は立て直しから再出発だ (2013年12月30日)

中国の台頭をどうやって受け止め、アジアの成長に生かすのか。安倍政権の対外政策は、来年以降もこれがいちばんの課題だ。

そうしたなか、安倍晋三首相による靖国神社への参拝で、各国とのあつれきが広がっている。中国や韓国だけでなく、米国との間にもすきま風が吹く始末だ。

中国は安倍首相が戦後の秩序に挑戦しようとしている、と宣伝してきた。この参拝によって、中国の主張に同調する空気がアジアや欧米に広がれば、日本は孤立しかねない。

■靖国参拝の影響抑えよ

安倍外交は、参拝で生じた各国とのあつれきを取りのぞき、態勢を立て直すところから始めなければならない。

そのうえで、中国にどう向き合っていくか、である。尖閣諸島への揺さぶりや、東シナ海での防空識別圏(ADIZ)の設定など、中国が強気な行動をやめる兆しはない。南シナ海では島々の領有権をめぐり、東南アジア諸国とも対立している。

国力を増すにつれて、中国はこうした行動をさらに加速するかもしれない。中国の国防予算は2ケタで伸び続けており、すでに日本の2倍を超える。日本だけでは中国の軍拡に対応しきれない。

そこで欠かせないのが、同盟国である米国や他の友好国との一層の連携だ。各国と安全保障の協力を強め、アジア太平洋に網状のネットワークをつくる。これを足場に中国に関与し、責任ある行動を働きかけていく。求められるのはそんな戦略だ。

安倍首相はそんな発想から、今年、東南アジア諸国連合(ASEAN)の全加盟国を訪れ、米国、ロシア、モンゴル、中東諸国を訪問した。ASEANとは今月、都内で特別首脳会議も開いた。

各国と「航行の自由」や海洋秩序の維持で一致し、協力を深めることで足並みをそろえた。アジア太平洋に安全保障網をつくるため、種をまいたといえよう。

にもかかわらず、靖国参拝でこうした連携の輪が崩れるとすれば、外交上の損失はあまりにも大きい。そうならないよう、首相は優先順位が高い協力から、首脳外交の成果を着実に形にしてほしい。

そのひとつがASEAN各国との協力だ。これらの国々の多くは、南シナ海に面している。だが、海上の警備力は十分ではない。日本が巡視艇の供与などによって警備力の底上げを支援すれば、南シナ海の安定に役立つ。

すでに安保協力の実績があるオーストラリアや、インドとの海洋安全保障協力も加速したい。

むろん、基軸になるのは日米同盟だ。日米は防衛協力のための指針(ガイドライン)を約17年ぶりに改定する。来年末までに協議を重ね、作業を終えるという。

尖閣諸島を含めた東シナ海で危機が起きたとき、日米がどう対処するのか。これが、いちばんの焦点である。日本は情報収集や後方支援などで、さらに多くの役割を担うべきだ。そのためにも集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈の見直しが必要だ。

オバマ政権は、国防予算の削減を強いられ、中東情勢にも精力を割かれている。アジアへの関与が息切れしないか、心配だ。そうさせないためにも、自衛隊による対米協力の拡大は大事だ。

■「歴史」避け現実外交を

こうした手立てを尽くしたうえで、中国との対立に歯止めをかける対策も欠かせない。まずは、尖閣諸島の周辺や東シナ海の上空で、不測の事態が起きるのを防ぐための措置だ。いざというとき、すばやく連絡を取りあえる体制を築くべきだ。

日本の対外政策には、経済の視点も大切だ。アジアに米国を深く関与させるには、市場や投資先としての魅力も高める必要があるからだ。日本ができることは多い。

たとえば、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉では大胆な自由化を求める米国と、抵抗するアジア新興国の対立が続く。このままでは交渉が行き詰まりかねない。そんなとき日本が橋渡し役を果たし、交渉を妥結に導くことは、米国を政治的にもアジア太平洋に組み込むことにつながる。

ASEANは2015年の経済統合をめざしている。各国が団結し、外交力を高める狙いだが、域内の格差は大きい。この解消に向けて日本が支援すれば、各国との絆はさらに太くなる。

歴史問題に踏み込まず、現実外交に徹する。この姿勢に戻れるかどうかが、安倍政権の成否も決めることになる。
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[毎日新聞] 社説:原発事故の賠償 被害に見合った対応を (2013年12月30日)

福島第1原発事故に伴う住民に対する慰謝料などについて、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会の新たな指針が決まった。

事実上帰還できない帰還困難区域の住民への精神的損害に対する慰謝料の最終総額は、1人につき1450万円で、既払い分を除き一括して支払われる。また、移住する住民が新居を購入し、事故時の土地や家屋の補償金額を超えた場合、旧宅の新築時と事故時の価値の差額を基に一定額を上乗せすることも決まった。

政府は20日、福島復興の加速化の方針を公表し、全員帰還方針を断念することを明らかにした。今回、慰謝料の一括支払いや住宅の補償についての審査会の指針が決まったことは、移住を考えている人たちを経済的に後押しする意味がある。

帰還をあきらめた人の住まいや雇用、医療など総合的な生活支援策の具体化をまず急がねばならない。また、帰還困難区域が人口の9割以上を占める大熊、双葉両町の自治体としての将来像について、政府や福島県は地元と真剣に協議すべきだ。

原発事故で帰る故郷を失い、長年かけて築いてきたコミュニティーも喪失した人たちにどう賠償をするのか。例がないだけに難しい問題だ。

精神的損害への慰謝料は、4人家族ならば計5800万円に上る。だが、審査会の議論でも出ていたが、実際には避難に伴うもろもろの出費、つまり生活費の補填(ほてん)に賠償金が回される場合が多いのではないか。避難によるストレスで病気になったり、二重生活や避難先を転々としたりといったケースも少なくあるまい。被害の実態は人によってさまざまだろう。

指針はあくまで基準だ。指針を基に通常は、原子力損害賠償紛争解決センターで住民と東京電力との和解が進められる。センターや東電は、住民それぞれの事情を酌み、場合によっては指針の額を超える解決も目指すべきだ。それでも合意に達しなければ、司法の場で被害実態に合った救済をしなければならない。

帰還困難区域以外の住民への目配りも必要だ。避難指示が解除される地域について、審査会は解除後1年をめどに1人月額10万円の慰謝料支払いを打ち切る方針を決めた。だが、その場合、帰還せずに避難生活を続ける人の生活が成り立つのか。

避難指示が解除されても、全員が帰還するわけではない。年間積算線量20ミリシーベルトが解除の目安だ。子供のいる世帯は、高線量だとして当面戻らない可能性がある。政府は早期帰還者への賠償金を上乗せする方針を明らかにしたが、帰らない人も含め、全ての被災者の選択を尊重し、それぞれの支援策を打ち立てるべきだ。

2013年12月30日 02時35分
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[読売新聞] 2013回顧・世界 災害への同情と中国への不安 (2013年12月30日)

東日本大震災からの復興途上にあるだけに、国民は、海外で起きた災害にも強い関心と同情を寄せているのだろう。

本紙読者が選んだ「海外10大ニュース」の1位は、「猛烈な台風がフィリピン直撃」だった。レイテ島などで、死者・行方不明者合計約8000人という甚大な被害を出した。

ロシアの「隕石(いんせき)落下」が3位だ。隕石の軌跡をとらえた映像がテレビで流れ、天変地異の凄(すさ)まじさが強い印象を残したようだ。

今年は以前にも増して中国を巡る重要ニュースが多く、その台頭ぶりを裏付けた。

習近平氏の国家主席就任は、4位に入った。習政権は、日本に対して、軍事力を背景にした強圧的な姿勢を示している。日本の対中不信感は強まるばかりだ。

中国は、貧富の格差や環境悪化など、急激な成長に伴うひずみに直面している。

微小粒子状物質(PM2・5)による大気汚染の深刻化が5位になったのは、日本にも汚染の影響が及ぶのではないか、という強い不安の反映でもあろう。

北朝鮮・金正恩政権のナンバー2と言われた張成沢・国防委員会副委員長が失脚して処刑されたという衝撃的な出来事は、12月に報じられ、10大ニュースの「番外」として追加された。

恐怖政治によって独裁体制を固め、核・ミサイルの開発を続ける北朝鮮は、来年も、地域の不安定要因であることに変わりない。

米国では、オバマ大統領が2期目をスタートさせた(9位)。だが、外交、内政ともつまずきが多く順調とは言えなかった。

米中央情報局(CIA)の元職員エドワード・スノーデン容疑者が、国内外における米情報機関の広範囲な通信傍受を暴露した(8位)。傍受対象だとされた欧州諸国からは強い反発が起きた。

米国民からも批判の声が上がっており、大統領は、情報収集の方法の見直しを迫られている。

連邦予算を巡る与野党対立で、10月初めに政府機能の一部が停止する事態も発生した(13位)。

読者の心を和ませた出来事もあった。英国のウィリアム王子の妻キャサリン妃が、長男ジョージ王子を出産した(2位)。

一方、英経済を再生させた「鉄の女」サッチャー元首相の死去(7位)に続き、12月は、南アフリカで多人種融和に尽くしたマンデラ元大統領の訃報が伝えられた。2人の指導者の業績は、今日も世界に影響を与え続けている。
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[読売新聞] みずほ追加処分 経営の刷新で一から出直せ (2013年12月30日)

経営を刷新し、今度こそ企業体質を立て直さない限り、失墜した信頼の回復は望めまい。

みずほ銀行が暴力団組員らへの融資を放置していた問題で、金融庁はみずほ銀と持ち株会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)に対する追加行政処分を下した。

問題融資のあった提携ローンを1か月間の業務停止とし、経営責任の明確化や管理態勢の強化を命じた。9月の業務改善命令から、わずか3か月である。

みずほ銀は当初、「問題融資の情報は担当役員止まり」と金融庁に説明していたが、実際には当時の頭取らに報告が上がっていたことが判明した。

金融庁が短期間に2回も処分するのは異例だ。無責任体質の改善を厳しく迫る狙いだろう。

みずほは金融庁に対し、来年1月17日までに業務改善計画を提出する。暴力団取引から決別するため、実効性のある再発防止策を講じる必要がある。

疑問なのは、行政処分を受けたみずほの対応だ。みずほFGの塚本隆史会長は3月末で引責辞任するものの、みずほ銀の佐藤康博頭取は、兼務するみずほFG社長を含めて続投する。

佐藤頭取は記者会見で、「国際金融市場で評価されるガバナンス(企業統治)体制を作ることが私の責務だ」と述べた。

金融庁は、「取締役会は実質的な議論を行っておらず、機能を発揮していない」と、今回の処分理由で厳しく批判した。「佐藤体制」を維持したまま、抜本的な経営改革が進むだろうか。

みずほは、第一勧業、富士、日本興業の旧3行統合で発足して以来、大規模なシステム障害など不祥事を繰り返してきた。

過去にも指摘された「縦割り意識」の払拭に真剣に取り組まなかったことが、不祥事の連鎖が止まらない主因と言えよう。

旧行意識の打破が急務である。旧3行で役員ポストを分け合うバランス人事や、相互干渉を避ける悪弊を徹底して排すべきだ。

みずほはメガバンクで初の委員会設置会社に移行し、社外取締役による経営監視を強める。外部の風を吹き込み、よどんだ空気を一新できるかどうかが問われる。

金融検査にも課題を残した。暴力団融資に関するずさんな説明をうのみにして、検査の甘さを批判されたからだ。

検査に対する国民の信頼を回復するよう、金融庁は検査手法に一層、磨きをかけてもらいたい。
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[朝日新聞] WTOの行方―自由化の調和を担え (2013年12月30日)

自由貿易の基盤を作ってきた世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ラウンド)が岐路に立っている。

交渉12年に及ぶドーハ・ラウンドは今月、何とか3分野で部分決着にこぎ着け、「崩壊」は避けられた。

だが、ラウンド全体の交渉は自然消滅するとの見方も強い。そうなればWTOのルール作りの機能が弱まり、自由貿易体制の求心力まで低下し、保護主義を助長しかねない。

加盟国は交渉継続のため、知恵を絞ってほしい。

今回合意した3分野は、先進国が途上国向けの関税撤廃枠を広げる「開発」、通関手続きの改善といった「貿易円滑化」、そして「農業」のうち途上国の補助金をめぐる扱いなどだ。

農業分野の大半を含む残る6分野は、物品の関税引き下げやサービス貿易の一層の自由化など、159カ国に増えた加盟国が足並みをそろえるのは難しいものばかり。

今後の交渉計画は1年かけて練り直す。継続の流れを絶やさないためには、新たな候補分野を加えて枠組みを弾力的に見直すことも考えられよう。

IT製品の関税引き下げ協定のように、特定分野で有志国から自由化を広げる取り組みを増やしてラウンドを補完するのも一案だ。

一連の交渉難航の根底には、WTO発足当初からある南北対立がある。途上国にとっては自由化の負担が増す一方、先進国の市場が十分開かれていないとの不満が募る。かたや先進国は投資など新分野の自由化が途上国の反対で果たせず、ラウンドへの熱意を失った。

さらには新興国の台頭と世界の多極化という環境変化が重なる。これを背景に米中がにらみ合い、行き詰まった。

当初は市民団体から「グローバル資本主義の手先」として糾弾されたWTOだが、自由化の矛盾を是正する交渉の場としての性格も帯びてきた。この機能を失ってはならない。

世界は、国や地域ごとの自由貿易協定(FTA)が乱立する時代に入った。だが、FTAで南北問題そのものが消えるわけではない。多数のルールが並立することで経済活動が煩雑になり、かえって自由貿易を阻害する弊害も指摘される。

いずれFTAの整合化に向けた機運も高まろう。その場はWTO以外に考えにくい。最も開かれた自由化の礎として、乱立する個々の自由化を調和させる舞台として、WTOの役割はなお大きい。
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[朝日新聞] 教科書検定―政治の力に屈するのか (2013年12月30日)

教科書検定のありかたの見直し案がまとまり、国民への意見公募にかけられた。

歴史記述への国の介入が強まりかねない大きな方針転換だ。それを、検定を担う学者らによる審議会の会合を2回開いただけで通し、来年度の中学向け検定から適用しようとしている。あまりに拙速だ。

審議会での説明を聞く限り、文部科学省は政治の力に屈したと言わざるをえない。

たとえば見直し案には、愛国心や郷土愛をはじめとする改正教育基本法の「教育目標」に照らして、「重大な欠陥」があれば不合格にできる――という事項が含まれている。

これまでの検定で、重大な欠陥のあるものが見逃されてきたということか。審議会で委員が尋ねると、文科省側は「今まで重大な欠陥があるのに通してきたという認識は、私どもにもない」と答えた。

無用な改定であることを自ら認めたようなものだ。

それでも改定を図るのは、政権への配慮としか言いようがない。4月の衆院予算委員会で、安倍首相は「検定基準に改正教育基本法の精神が生かされていなかった」と述べている。

見直し案には、近現代史で通説的見解のない数字などを書くときは、通説がないことを明示するルールも盛り込まれた。

これについても、文科省は自ら「何をもって通説とするかは非常に難しい問題」と認めた。通説の有無や、史実の評価が定まっているかを誰が判断するのか、と委員からも懸念が出た。そもそも通説がゆらぐことは、古代史や中世史の方が多い。

そうした無理を承知で、ことさら「近現代史の数字など」に的を絞った事情ははっきりしている。自民党などが、国会をはじめさまざまな場で、日中戦争で起きた南京事件の犠牲者数をめぐる記述などをやり玉に挙げてきたからだ。

通説的な見解、愛国心。これらは、いわば目盛りのない物差しだ。目盛りがないから、使う者が好きなように判定できる。出版社は不合格を恐れて自主規制するようになる恐れがある。

主観的な物差しを検定の場に持ち込めば、文科省や検定審の恣意(しい)が働くという以前に、ときの政権の意向に教科書の中身がふりまわされる危険が高まる。今回の改定過程じたいが、それを如実に物語る。

教科書を書く側ばかりか、検定する側も政権の顔色をうかがわざるをえなくなる。文科省は自らの首を絞めるような改定を本当にやるつもりか。
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2013年12月29日

[東京新聞] 年のおわりに考える 国民生活支える企業に (2013年12月29日)

二〇一三年は賃上げをめぐり政府と経済界が攻防を繰り広げた一年でもありました。そこから見えてきたのは勤労者を物質と見る企業の倫理欠如です。

政府と経済界、労働界による政労使会議が、企業収益の拡大を賃金上昇につなげていくとの合意文書をまとめました。

安倍政権の経済政策は金融緩和や公共事業、成長戦略の「三本の矢」で、勤労者の所得増を実現しないと完結しません。目標に近づく合意だけに、安倍晋三首相は「経済の好循環に向けた確固たる土台を築けた」と総括しました。


◆発言ぶれる経団連
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その一方で、主要企業千三百社が加盟する経団連の米倉弘昌会長の発言はぶれています。政労使会議後には「経済拡大の成果を従業員に配分するよう企業に訴えたい」と語ったのに、その後の記者会見では「各社それぞれが判断すべき」と後退してしまいました。

賃上げの仕掛け人は安倍政権であり、物価が下がり続けるデフレからの脱却が狙いです。賃金が上昇すれば家庭の財布のひもが緩くなるので、企業のもうけも増え、景気がよくなって物価も上がり、デフレから抜け出せる。首相のいう経済の好循環です。

賃金水準は労使が決めるべきもので、政府が口を出す話ではない。こう主張してきた経済界は、なぜ折れたのでしょう。そこにはからくりがあるのです。法人税額に10%上乗せしている東日本大震災の復興特別法人税を一年前倒しで一三年度末に廃止するという税制の見直しです。

政府は経団連の求めに応じて企業の税負担を六千五百億円ほど軽くする代わりに、賃上げの実現を迫りました。ここに、自ら負担すべき費用を国などに押しつける企業の性癖がにじみ出ています。


◆危うい「人間尊重」
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かつて経済同友会の終身幹事を務めた故品川正治さんは、早くから「近ごろの経済界はおねだりが多い」と企業経営者に自省を求めていました。米倉会長の一貫性を欠く発言の背景には、おねだりしたがゆえに政府に押し切られたという敗北感があるのでしょうか。

経団連の企業行動憲章は「安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現する」と、人間尊重の経営を加盟企業に促しています。それは、企業は生活者と共存共栄の関係にあるという信頼を得られるよう努力することが求められる−との意味でもあります。

しかし、現実は人間尊重どころではありません。その象徴が労働力を鉄や電力などの原材料と同じように扱い始めたことです。

明治時代から、企業と従業員は企業のもうけをほぼ等しく分かってきたのに、一九九八年を境に従業員の賃金を削減し、企業さえよければとばかりに、もうけの大半を奪い取るようになりました。日大教授の水野和夫さんは、資本と労働との暗黙の契約を破る「企業の暴走」と言い切っています。

給与所得者の平均年収は九七年の四百六十七万円をピークに二〇一一年は四百九万円まで減りました。〇四年には当時の自民党政権が経済界の要請を受け、専門職に限られていた労働者派遣を製造業にまで広げる法改正に応じたことで、「人間らしい生活を営める所得層」、いわゆる購買力をつけた中間層を衰退させています。

非正規労働者は一二年に二千万人を超え、雇用者全体の38%に達しました。四人に一人は年収二百万円以下に抑えられ、消費減退に加えて未婚者増や少子化を加速させました。人として守るべき道からの逸脱であり、倫理の欠如と言わざるを得ません。

企業は内部留保を三百兆円規模にまで積み上げ、従業員への配分増をためらっています。人件費や電力コストが高すぎるなどを理由に「日本を出ていくしかない」と語る経営トップも少なくなく、残ってほしければ法人税の負担軽減を−などとおねだりもします。

しかし、悲観してばかりでは将来が暗くなります。建設機械世界第二位のコマツは、海外に進出した生産拠点の一部を国内に戻し、今や生産額の半分近くを日本で稼いでいます。材料費などを海外と総合比較すると国内のコストは必ずしも高くはないといいます。


◆経営者の自負示せ
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国の経済安定には外貨獲得も欠かせません。生産拠点が国内に舞い戻れば雇用も増えるでしょう。

年約五百兆円の日本の国内総生産の約半分を企業が生み出し、その企業では全就業者の七割が働いています。四千万人を超える従業員と家族を、どうすれば食べさせていけるかという国民生活に資する経営モデルに改めるべきです。

減税要求など、政府への安易なおねだりを慎み、国民生活を安定させることこそが「経済の主役は民間」と誇らしげに語る経営者の自負というものです。
posted by (-@∀@) at 13:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[産経新聞] みずほ再処分 体質変える最後の機会だ (2013年12月29日)

事態は非常に深刻である。これを、企業体質を変える最後の機会ととらえなくてはならない。

暴力団組員らへの融資を放置していたみずほ銀行に対して、金融庁が一部業務停止など追加の行政処分を下した。同行はこの9月に処分を受けたばかりだ。メガバンクが短期間に再び処分を受けるのは極めて異例である。

持ち株会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)は、塚本隆史会長が引責辞任し、経営の透明度を高める経営改革に取り組む。だが、これで「みそぎ」は終わったと勘違いしてはならない。

反社会的勢力との関係をめぐり不祥事が繰り返される同行の「土壌」が、抜本的改良を迫られている。そう厳しく認識すべきだ。

旧3行の縦割り意識といった社風を払拭して、銀行に課せられた社会的な責任を全うする以外に、信頼を回復する道はない。

みずほは、系列信販会社の提携ローンを通じて暴力団員らに融資し、内部で発覚後も2年以上、取引を放置した。金融庁は業務改善を命じたが、みずほ側が「トップは把握していない」と事実と異なる内容を報告したため、提携ローンの新規受け付けを1カ月停止するなどの再処分に踏み切った。

これを受け、塚本氏は留任するとしていたFG会長職を、一転して来年3月末で辞任する。だが、記者会見には出席せず、反省の弁も聞かれなかった。辞任理由は自らの言葉で語るべきだった。

みずほは、統合前の第一勧業、富士、日本興業の旧3行への帰属意識が強いとされ、金融庁も「縦割り意識の弊害が根深い」と不祥事の背景を指摘した。佐藤康博頭取兼FG社長も「縦割りの企業風土」を問題点に挙げた。

今後は、企業体質改善に向け、社外取締役が人事や報酬決定などに関与する委員会設置会社に移行する。取締役会議長も社外取締役から起用するという。

委員会会社移行はメガバンクでは初めてだ。ただし、経営体制だけを変えても、行員一人一人の意識改革を欠いては機能しない。

佐藤社長は報酬の返上期間を半年から1年に延長するが、「社内改革の実行で責任を果たしたい」と辞任しない考えを強調した。

その間に、目に見える改革の成果を出せなければ、「ただ地位に恋々とした経営者」とのそしりを免れないだろう。
posted by (-@∀@) at 13:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 産経新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする