2013年07月31日

[東京新聞] オスプレイ 民意顧みぬ配備強行だ (2013年7月31日)

沖縄県の米軍普天間飛行場に追加配備されるMV22オスプレイ十二機が山口県の米軍岩国基地に搬入された。仲井真弘多知事ら沖縄県民の多くが配備強行に反対している。なぜ民意を顧みないのか。

外国軍である米軍機が日本の空を自由に飛び回る。その軍用機は安全性に疑念が残るから、配備をやめてほしいと基地周辺住民が再三求めても聞き入れられない。これが安倍晋三首相が思い描く「主権」国家なのか。

垂直離着陸輸送機MV22オスプレイは、八月上旬にも岩国基地から普天間飛行場(宜野湾市)に移動し、配備済みの十二機と合わせて二十四機態勢が整う、という。

住宅地に囲まれ、かつて米国防長官が「世界一危険」と認めた普天間飛行場に、開発段階から実戦配備後まで墜落事故を繰り返す軍用機を、なぜ配備できるのか。日本政府もなぜそれを許すのか。

事故の危険性が指摘される飛行方法を米軍施設上空に限定し、人口密集地上空の飛行は避けるなどの日米合意も守られていない。

仲井真知事は九日、菅義偉官房長官らに追加配備の見直しを要請した。沖縄県議会も十一日、全機撤収を求める意見書と抗議決議を全会一致で可決している。二十一日の参院選では、配備に反対する糸数慶子氏が当選したばかりだ。

日米両政府は直近の民意がオスプレイ配備反対であることを、重く受け止めるべきではないか。

米国内ではオスプレイの低空飛行訓練計画に周辺住民から懸念が出て、中止や見直しが行われたという。米国内では住民の意見に耳を傾け、国外では聞く耳を持たないというのでは二重基準だ。

これでは自由と民主主義を「人類共通の価値観」と位置付ける米国が世界の民主化の先頭に立とうと意気込んでも、信用されまい。

米太平洋空軍のカーライル司令官は、空軍仕様のオスプレイCV22の、嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)や横田基地(東京都福生市など)への配備に言及した。

CV22は陸軍特殊部隊の輸送など特殊作戦機として運用されるため、MV22に比べて事故率が高いという。昨年六月には米国内で訓練中に墜落事故を起こしている。

危険な軍用機が日本中を飛び回り、その配備も止められない。オスプレイは沖縄にとどまらず、「国の在り方」にもかかわる重い課題だ。日本国民全体が自らの問題として考えなければならない時機に来ているのではないか。
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[東京新聞] 観光立国道半ば 外国人の目で見つめよ (2013年7月31日)

円安で訪日外国人数は過去最高ペースだ。しかし、日中関係の悪化で中国人観光客は激減し、安倍政権が成長戦略で掲げる目標にはほど遠い状況である。魅力ある国でなければ、成果は望めない。

日本政府観光局によると六月の訪日外国人数は、前年同月比で30%以上も増え、九十万一千人と過去最高を記録、上半期では四百九十五万人に達した。政府は十年前から本格的に観光立国に取り組み始め「年間一千万人の訪日客」を目標にしてきたが、このままのペースだと初めて達成できそうだ。

とはいえ、政府はさらに二〇一六年に千八百万人、六月にまとめた成長戦略では「三〇年に三千万人まで拡大」を掲げており、その遠大な道筋はとても見えてこない状況である。

目標に少しでも近づくには、幅広い国々から誘客を図ることも必要だが、やはりまずは中国人観光客の大幅拡大は欠かせない。

しかし、韓国や台湾、マレーシアなどからは大幅増加となる一方で、中国本土からは減り続けている。上半期は韓国の半数以下にとどまった。尖閣問題をきっかけとした日中関係の冷え込みで、団体旅行客の訪日中止が続いているのである。

安倍政権は関係修復に向け努力を続けているだろうが、領土や歴史をめぐる姿勢で反省すべき点は多々あるはずだ。譲れない一線は堅持し、主張すべきは主張するとしても、経済的に重要なパートナーとして互恵の理念で共栄を図るべきだ。旺盛な中国マネーを取り込んで成長に生かす。それこそが成長戦略であるはずだ。

訪日客は、消費や雇用増をもたらし、国を豊かにしてくれる「金の卵」の存在だ。昨年一年間に訪日客が国内で消費した金額は約一・一兆円で、訪日客三千万人になれば、それが四兆円に膨らむ。少子高齢化で国内需要が先細るわが国にとって経済効果は大きい。

だが、外国人旅行者の受け入れ数で日本は世界で三十位、アジアでも中国や韓国、タイなどに後れを取り、八位に沈んでいる。欧米のリゾート客が集まるタイなどよりも参考にすべきは韓国である。国を挙げて外国人の関心を細かくくみ取り、交通や宿泊など受け入れ体制を整えた。

日本は地方の観光地の知名度向上や外国語の案内表示といった課題も多いが、何よりまず近隣の国を引き付けるような安全で温かいおもてなしの国を目指すべきだ。
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[産経新聞] 日本版NSC 年内発足で国家戦略急げ (2013/07/31)

外交・安全保障に関する国家戦略を構築する国家安全保障会議(日本版NSC)の年内発足に向けた環境が整った。

菅義偉官房長官は30日、「できるだけ早く発足できるよう努力したい」と述べた。当初想定の来年4月発足からの前倒しに意欲を示した発言であり、歓迎したい。

参院選で衆参の「ねじれ」状態が解消し、政府与党は安定した国会運営が可能になった。10月召集予定の臨時国会で、日本版NSC関連法案を、確実に成立させる必要がある。

安倍晋三首相は、5月のNSC創設に関する有識者会議の席上、「外交・安全保障体制の強化は喫緊の課題だ」と述べた。

NSCを一日も早く発足させなくてはならないのは、厳しさを増す一方の東アジア情勢に対し、国家の総力を挙げて的確に対処するためだ。

尖閣諸島の奪取をねらう中国は、不測の事態を招きかねない挑発行為を繰り返している。

1月には、中国海軍艦船が海上自衛隊の護衛艦に対して射撃管制用レーダーを照射した。5月には中国潜水艦が3度にわたり、日本の接続水域へ潜航したまま侵入した。今月26日には、新設された中国海警局所属の「海警」4隻が尖閣周辺の領海に侵入した。

北朝鮮は、国連など国際社会の非難も意に介さず、2月に核実験を強行するなど、核・ミサイル開発を続けている。

NSCは、形骸(けいがい)化が指摘される現在の安全保障会議を大幅に改組し、外交・安全保障の司令塔となる機関にしようというものだ。事務局である国家安全保障局は、政府の各機関から国家安全保障に関する重要情報の提供を受け、政策立案に活用する。

その意義は、東アジア情勢への対処にとどまらない。自由な通商に支えられたわが国の繁栄は、中東など世界各地と密接にかかわっている。地域分析にも力を入れるNSCは、日本の政治が、世界的な視野で国家戦略を構想することにも資するだろう。

発足後も、より実効性のある機関とする努力が欠かせない。内外の機密情報を得るため秘密保全法制が必要だ。ポストや組織の性格をめぐり、外務省や警察庁など省庁間の主導権争いも伝えられる。縄張り意識を捨て、国のためによりよい仕組みを作ってほしい。
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[産経新聞] 全柔連会長辞任へ 新体制で前を向きなおせ (2013/07/31)

不祥事が続く全日本柔道連盟の上村春樹会長が8月中に辞任する意向を表明した。執行部も総辞職する。遅きに失する決断だが、速やかに新体制へ移行し、そろそろ前を向いてもらいたい。

女子代表選手らへの暴力指導や指導者助成金の不正受給、さらには幹部のセクハラ問題と、全柔連の名声と信用は地に墜(お)ちた。

上村会長は「改革をやり切る」と辞任を先延ばしにしてきた。内閣府の公益認定等委員会に認定取り消しをちらつかされての勧告に従った辞任前倒しの表明だ。

競技団体の自立性を保つためにも、先に自らの判断で辞めるべきだった。到底、潔しとは言い難い辞意の表明だが、これを契機に組織を立て直さなくては、柔道そのものがつぶれてしまう。

不祥事の多くは、トップ選手強化の場を舞台に起きていた。当事者でもある執行部の総辞職は当然である。問題は、会長や執行部の延命を、全柔連幹部の多くが支持してきたことだ。

30日に行われた臨時評議員会では、上村会長を含む23理事の解任動議も否決された。現体制を擁護する空気の中で、徹底的な改革は断行できるのだろうか。

上村会長は理事職も同時に辞任する意向だが、一方で講道館館長の座にはとどまるという。

柔道の創始者、嘉納治五郎氏が初代館長を務め、4代目の上村氏は、初めて嘉納家以外から館長となった。柔道の象徴ともいえる館長に、一方の組織で引責辞任した人物が居座ることを、妥当とはいえまい。上村氏は、館長の職も辞すべきだ。

嘉納氏は教育者であるとともに、日本人で初めて国際オリンピック委員会(IOC)委員となった「日本五輪の父」でもある。柔道の名が汚濁にまみれ、五輪招致の足を引っ張っている現状を、どう報告しようというのか。

柔道は日本で生まれ、世界で育った競技である。早急に組織を立て直さなくてはならない。

人心一新を図るには、従来のように、柔道の強さや、獲得したメダルの色ばかりがものを言う人選ではだめだ。

金メダリストが不適格だというのではない。純粋に組織を統括するにふさわしい人物を選んでほしいということだ。柔道界に、人がまったくいないというわけではあるまい。
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[日経新聞] 「減反」を見直し市場重視のコメ政策に (2013/7/31)

コメの消費減少に歯止めがかからない。高い関税率で輸入を制限し、生産調整(減反)で国内価格を維持する政策が消費者や企業のコメ離れにつながった。環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に参加した今こそ、全国横並びの減反を抜本的に見直し、市場を重視したコメ政策に転換すべきだ。

農林水産省が公表した2012年7月?13年6月のコメの需要実績は、778万5千トンと前年に比べて4%強減少した。実績は昨年時点の需要見通しを20万トンも下回る。主因は価格の高止まりだ。

国民1人あたりの年間コメ消費は、1962年度の118キログラムから11年度の58キログラムへと半減した。パンやめん類など食生活が多彩になり、少子高齢化で食料の総需要も縮小している。

消費者の間に低価格志向は根強い。加工食品や外食を担う企業はなおさらだ。価格が高止まれば、消費の減少幅は大きくなる。農水省はコメ消費の回復は見込めず、来年6月末の民間在庫量が過去15年で最高の230万トン台まで積み上がると予想している。

構造的な消費の減少に高価格政策が拍車をかけ、生産調整の拡大を迫られる悪い循環を絶つ必要がある。市場の変化に対応できていないコメ政策を見直すときだ。

95年に食糧管理法が廃止され、コメの流通は自由になった。生産調整への参加も制度上は自由だ。しかし、現実には多くのコメ生産者が減反に参加している。政府が目標生産量を決め、都道府県に生産枠を割り振る仕組みも残る。

これでは消費の変化に追いつかない。政府は農地を集約し、生産コストを下げる政策を進めているのだから、安さを強みにできる大規模な農家が能力いっぱい生産できる自由な環境に変えるべきだ。

価格が下がった場合は、農家への直接支払いで経営を支える。その制度も単純な横並びではなく、競争力の強化に意欲のある農家を後押しする設計が求められる。

市場競争を避ける政策は、農家が創意工夫をこらす意欲を奪う。店頭では新品種が増えたように見えても、コシヒカリの作付け比率は37%台と集中したままだ。

減反を強化しながら足りない加工原料米などを補助金で増やそうとする、びほう策を繰り返すだけではだめだ。コメの生産もできるだけ自由にし、農家が市場の動きを探りながらそれぞれの強みを競える環境が大切だ。
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[日経新聞] 韓国の元徴用工判決を憂う (2013/7/31)

韓国の司法は国家間で締結した条約や協定の重みを、どうとらえているのだろうか。

釜山高裁が三菱重工業に対し、戦時中に日本に強制徴用された韓国人への損害賠償の支払いを命じた。元徴用工が新日鉄住金を相手取って起こした訴訟でも、ソウル高裁が同様の判決を言い渡している。それに続くものだ。

原告側は日本で起こした裁判では敗訴が確定し、韓国でも一、二審でいったんは敗訴していた。

今回はいずれも差し戻し控訴審だ。判決が覆ったのは、韓国の最高裁が昨年、日本企業に対する個人の賠償請求権は「消滅していない」との判断を示したためだ。

しかし、そもそも日韓両国は1965年の国交正常化の際に請求権・経済協力協定を結んでいる。日本政府は無償3億ドル、有償2億ドルの経済協力を実施し、それによって請求権問題は「完全かつ最終的」に解決されたはずである。

韓国政府も元徴用工の賠償について、対日請求権は認められないとの認識を共有してきた。韓国の司法の判断は極めて遺憾で、不当な判決としか言いようがない。

国家間で解決済みの問題について、日本の個別企業の責任が問われるようでは、「安心して韓国とビジネスができない」という声が上がりかねない。

新日鉄住金は上告し、三菱重工も上告する構えだが、仮に最高裁で賠償命令が確定した場合、一企業として取り得る対抗措置は限られる。判決を機に新たな提訴が相次ぐ恐れもある。日本政府は個別企業に対応を任せきりにせず、前面に立って韓国政府に善処を求めることも必要ではないか。

韓国では日韓の政府や関係企業が資金を出して財団をつくり、元徴用工を支援する構想も浮上しているという。だが、元徴用工らへの賠償については本来、韓国政府が対処するのが筋である。

日韓はただでさえ、歴史認識などをめぐって冷え込んでいる。一連の判決は関係をさらにこじらせかねず、憂慮せざるを得ない。
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[毎日新聞] 社説:参院1票の格差 その場しのぎは限界だ (2013年07月31日)

参院が衆院と同等、もしくはそれ以上のがけっぷちに立たされていることを国会は自覚すべきだ。

21日投開票の参院選は「1票の格差」が憲法の定める法の下の平等に反し、無効だとする訴訟が47の全ての選挙区について起こされた。

参院の格差問題は現在の選挙制度を維持する限り解決困難という極めて厳しい状況にある。にもかかわらず政党の動きは鈍い。とりわけ与党は責任を持ち、参院のあり方も含めた議論を主導すべきだ。

今参院選は一部の選挙区の定数を是正して行われた。

2010年に行われた参院選について最高裁は昨年10月、最大格差5.00倍を「違憲状態」と判断、格差拡大の要因となっている都道府県単位の選挙区の抜本見直しを求めた。

ところが国会は制度見直しには踏み込まず、「4増4減」のびほう策でお茶を濁した。是正で最大格差は4.77倍に縮小したとはいえ、今後の司法判断は予断を許さない。

「1票の格差」をめぐっては昨年の衆院選についても高裁で「合憲」判断は皆無で、2件の選挙無効判決まで下された。その後「0増5減」の緊急是正がやっと実現し、年内にも最高裁判決が下される。衆参両院が「違憲の府」の烙印(らくいん)を押されかねない危機的状況である。

参院格差のさらなる是正策として一部では比例代表の定数を削り、大都市圏などの選挙区定数を増やす案などが取りざたされているようだ。だが、選挙のたびに違憲状態が指摘される状況をその場しのぎでかわし続けることには限界がある。

やはり最高裁が指摘するように、31ある「1人区」を持つ都道府県選挙区の抜本見直しに踏み込まざるを得まい。地域ブロックを選挙区とするのも一案だろう。

同時に問われるのは参院のあり方だ。衆院との役割分担がはっきりせず「ねじれ国会」で健全な監視機能を発揮できなかったことを与野党が真剣に検証する必要がある。

「1票の格差」で都道府県選挙区が注目を浴びるが、比例代表も課題がないわけではない。今参院選も業界、労組代表や「有名人」が各党の候補には目立った。こうした人選がどれだけ一般有権者に魅力ある顔ぶれに映ったかは疑問である。

憲法をめぐる議論で私たちは統治機構のありかた、とりわけ衆参両院の機能を優先して論じるよう求めてきた。参院を地方代表の府として位置づけるような思い切った考え方も有り得よう。

次期参院選まで3年の間がある今こそ「1票の格差」是正と並行して参院の役割を精力的に論じてほしい。もう、怠慢は許されない。
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[毎日新聞] 社説:大阪・誤認逮捕 これでは捜査と言えぬ (2013年07月31日)

ずさんとしか言いようのない捜査である。大阪府警が誤認逮捕した男性会社員について、大阪地検が起訴を取り消した一件だ。関与を否定する男性の主張を裏付けるため、弁護人が車の走行実験など独自調査をした結果、男性にアリバイがあることを突き止め、無実と判明したが、男性は85日間勾留された。

基本的な裏付け捜査をなぜしなかったのか。府警は捜査の経緯を検証し、公表するが、新たな冤罪(えんざい)被害者を出さないために詳細な分析が必要だ。捜査が不十分なことを見逃して起訴に踏み切った地検についても同じことが言える。

男性は、盗品のガソリンカードを使って給油したとする窃盗罪で6月に起訴された。現場のガソリンスタンドにある防犯カメラに男性が映っていたことを決め手に府警が逮捕していた。

ところが、カメラの撮影時刻は実際の時刻と数分違っていた。北堺署は映像を過信し、この時刻のずれや、男性が給油後に利用した高速道路の自動料金収受システム(ETC)の記録などの確認を怠った。男性の言い分を聴き、裏取りをすれば、男性は無関係とわかり、第三者による犯行の可能性を検討できたはずだ。

経験の浅い若手が捜査したとはいえ、上司が捜査結果の報告を受けて決裁している。男性を犯人と決めつけた見込み捜査が修正されなかったことには指導力不足の問題もある。

パソコンの遠隔操作事件で大阪府警は昨年、アニメ演出家の男性を誤って逮捕した。検証の結果、インターネット上の住所であるIPアドレスなどの客観的証拠を過大に評価し、否認の供述内容の吟味が足りなかったことを問題点に挙げている。どうすれば捜査の現場にその教訓を浸透させられるのか、警察幹部は真剣に考えなければならない。

大阪府警では6月から証拠品や調書の捏造(ねつぞう)が相次いで発覚した。公務執行妨害事件で堺署員が複数の虚偽調書を作成、公判でも偽証したことが判明し、結審した裁判がやり直しとなった。証拠の注射器が紛失したと思い込んだ当時の警部補が同型の注射器を調達して偽装していたことも明らかになった。

証拠類を適切に取り扱うことは、捜査の基本だ。順法意識を欠いていると指摘されても仕方のない不祥事が続いており、組織に潜む問題の洗い出しは急務である。

今回の誤認逮捕で、男性は取り調べ時に捜査員から「あなたは普通じゃない」などと屈辱的なことを言われ、長期間の拘束で体力も落ち、現在休職中だ。ずさんな捜査は、深刻な人権侵害を引き起こす。危機感を持って捜査の基本に徹しなければ、国民の信頼は遠のくばかりだ。
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[読売新聞] 原子力委員会 司令塔の役割強化する改革を(7月31日付・読売社説) (2013年7月31日)

東日本大震災以降、混迷が続いてきた原子力政策を立て直すには、政府内に確固たる総合司令塔が必要である。

組織や権能の在り方が問われている内閣府の原子力委員会を、どう改革するか。政府の有識者会議が検討に乗り出した。

原子力委は、原子力政策大綱の立案や平和利用の確認作業を担ってきた。原子力利用を推進、維持する行政組織だ。

原子力発電所の安全確保を担うため、昨年発足した原子力規制委員会とは車の両輪と言える。

ところが、「脱原発」政策を掲げる民主党政権は、原子力委から政策立案の権限を奪った。その上で、法的根拠がないまま、関係閣僚らで組織するエネルギー・環境会議に権限を移した。

野田内閣は昨年10月、原子力委の廃止も視野に見直し会議を設けたが、結論は出なかった。

脱原発とは一線を画す安倍内閣が、新たに有識者会議を設け、原子力委の立て直しに乗り出したことは適切な判断である。

政府内で、原子力委にどのような責任を持たせるのか。行政組織としての役割を、有識者会議でしっかりと議論してもらいたい。

原子力委は1956年に発足した。初期には委員長を閣僚である科学技術庁長官が務め、原発立地から安全規制まで、原子力政策全般を一手に担った。

その後、原発の増加やトラブル対応強化のため、安全規制部門が分離された。省庁再編の後には、有識者が委員長職に就き、権限も大幅に縮小した。

だが、専門的な知識を要する原子力政策の立案、推進における役割は今こそ大きい。

30日の初会合でも、メンバーから原子力委の機能を再活性化させる必要性を説く声が相次いだ。

日本の原発輸出の取り組みを踏まえ、「国際協力が重要」との指摘があった。「プルトニウム利用について、国内外への説明責任を担う」「廃炉も重要な仕事だ」といった見解が示された。

日本が世界有数の原発保有国であることを考えれば、もっともな意見である。

原子力委の意見を政府内で反映させるためには、委員長を閣僚に戻し、責任を明確にした組織にすることも十分考えられよう。

政府は年内をめどにエネルギー基本計画を策定する方針だ。

その中で原発をどう位置づけるべきか。現実的な戦略を作るためには、原子力委の専門的な検討が不可欠である。
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[読売新聞] 郵政保険提携 企業価値の向上占う試金石だ(7月31日付・読売社説) (2013年7月31日)

郵政事業の収益を向上させ、日本の保険市場の公正な競争を阻害しない提携が求められる。

日本郵政と米保険大手のアメリカンファミリー生命保険(アフラック)が、がん保険の提携強化で合意した。

アフラックは日本のがん保険市場の7割を占める最大手で、日本政府が出資する日本郵政のがん保険参入に強く反対していた。

それが一転して、がん保険を本格的に共同販売するという異例の提携劇である。

具体的には、アフラックのがん保険を販売する郵便局を、現在の1000局から2万局へ拡大し、かんぽ生命保険の直営店でも取り扱うようにする。

アフラックは、日本郵政が販売するがん保険の専用商品を開発するという。

6月に就任した西室泰三・日本郵政社長は記者会見で、「顧客の利便性を高め、グループの企業価値を高められる」と述べ、提携拡大の意義を強調した。

重要なのは日本郵政の保険ビジネスの成長につなげることだ。販売手数料を得るだけではメリットは乏しい。アフラックと提携内容をさらに詰める必要がある。

環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る日米交渉で、米国は日本郵政の保険事業拡大に難色を示していた。両社の提携で支障の一つがなくなる。これから本格化するTPP交渉には追い風となろう。

一方、日本の生保業界には、国の後ろ盾がある日本郵政とアフラックの“巨大提携”が、新たな民業圧迫につながるのではないかとの懸念がくすぶっている。

保険市場の活性化を図るには、公正な競争が確保されていることが不可欠だ。政府はしっかり監視してもらいたい。

日本郵政は、政府が持つ日本郵政株を2015年度に上場することを目指している。上場に伴う政府保有株の売却益は、東日本大震災の復興財源に活用される。着実な上場の実現が望まれる。

気がかりなのは、日本郵政の事業が縮小傾向にあることだ。上場の障害となりかねない。

かんぽ生命の保有契約件数は減少が続き、郵便の取扱数や、ゆうちょ銀行の残高も民営化前より大きく目減りした。

日本郵政は、住宅ローンなどへの参入で収益向上を図りたい考えだが、融資審査や内部管理などの体制は依然として心もとない。

長引く低迷から脱却し、目に見える成果を出せるか。西室体制の経営手腕が問われよう。
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[朝日社説] もう一つの参院選―参加と対話の政治を育む (2013年7月31日)

先の参院選は、自民党1強体制を生んだだけではない。底流では、着目すべき変化の兆しがあった。

ミュージシャンの三宅洋平さん(35)は、緑の党から比例区に立候補した。

有名ではないし、組織の後ろ盾もない。でも17万6970票は、落選した比例区候補の中で最も多く、最少得票で当選した人の7倍近い。

選挙戦最終日。東京・渋谷での「選挙フェス」は、演説と音楽を融合させた手法もさることながら、訴えの内容もまた、他の候補にはないものだった。

■「パワハラ民主主義」

「民主主義は、多数決じゃあだめなんだ。すべての人が大声を出せるシステムじゃなきゃだめだと思うんだ」

「議会をパワハラじゃなく、おれたちの話し合いの場に戻そうよ」

考えてみれば、多数決で勝てない人たちの利益は、あれもこれも侵害されている。非正社員の待遇。将来世代への負担のつけ回し。沖縄への安保のしわ寄せ。たしかに多数派によるパワハラかもしれない。

「だけどね、国会議員を孤独にさせて闇を生んだのはおれたちだぜ。注目し続け、意見し続け、政治を孤独にしないこと」

「一票入れてくれなんて、おこがましくていえない。好きに選んだらいい。自分が『こいつとなら6年、付き添える』っていう人間に、意見し続け、情報長者にするんだよ」

問題の根っこは、有権者の政治へのかかわり方にもある。演説は、私たちの民主主義の問題点を言い当てている。

三宅さんは、単純に敵・味方で分けることもしない。原発の廃炉を唱えたが、「原発をつくったやつにも事情があったんだよ」。中国でライブやったよ、いいやついっぱいいるぜ。韓国にも、マッコリ飲むたび尊敬の念しかわかないね……。

異なる意見をたたきつぶそうとする物言いが、世にあふれている。その連鎖をとめたい。

三宅さんはそう話す。

■「敵」をつくる政治

そんな訴えが新鮮に聞こえるのは、現実の政治が対極にあるからだろう。

郵政事業が、抵抗勢力が、官僚が悪い。生活保護は問題だ。既得権益に切り込めば日本は立ち直る――。近頃の政治は、「敵」や「悪者」を仕立てあげ、たたいてばかりだ。

経済成長が止まり、利益の分配で支持者をひきつけるのは難しくなった。それを穴埋めするために、敵との戦いを演出する「劇場型」の政治が広まった。

だが、それで少子高齢化やグローバル化といった問題が解決するわけではない。それどころか、支持をつなぎとめるため、さらに敵意をあおる悪循環に陥りかねない。

「敵」への不信感を接着剤にして、有権者とつながろうとする政治は危うい。信頼でつながる方法を探らねばならない。

かぎは、政治への市民の「参加」と「対話」にある。

三宅さんへの支援の核となったのは、音楽仲間やファンたち若い世代だ。

三宅さんは、ネットを活用する一方、ネットから飛びだそうと呼びかけていた。それに応えた若者たちが、一晩かけて親を説得したりして、支持が広がったという。

■流されない民意を

この選挙では、有名無名の個人が、特定候補を推薦する動きも目についた。

「年越し派遣村」村長だった湯浅誠さん(44)は5人の候補を推した。民主党政権で内閣府参与を務めたとき、どの政治家が何に、どんな思いで取り組んでいるか間近に見たからだ。

業界団体や労組のような組織は細った。代わりに個人が、人と人、人と政治をつなぐ役割を買って出ている。ネットの普及やネット選挙運動解禁で、働きかけやすくもなっている。

そんな環境を生かしながら、政治的立場を明かして対話することを当たり前にしたい。大切なのは、世代や立場の異なる人と話すことだ。そうすれば「敵」と思っていた人の抱える事情もわかってくる。その繰り返しが、敵をたたく論法に流されない「民意」をつくり出す。

参加と対話をどう促すか。そのための環境整備も必要だ。

壁となる制度は取り払わなければならない。たとえば選挙の際の戸別訪問だ。1925年に禁止され、同時に治安維持法が制定された。庶民が政治運動に加わるのを抑えるねらいがあったとされる。こんな時代遅れの規制は撤廃すべきだろう。

仕事でくたくたになり、対話どころではないという人が大勢いる。湯浅さんは「長時間労働を規制し、『市民としての時間』を取り戻さなければならない」という。

気の遠くなるような道のりだ。だが、そんなところから積み上げなければ、政治は育たないのかもしれない。
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2013年07月30日

[東京新聞] エジプト衝突 和解へモルシ氏解放を (2013年7月30日)

エジプトで衝突が続いている。その停止には、デモを続けるムスリム同胞団と、世俗派中心の暫定政府との和解協議が不可欠だ。それには、軍部が拘束するモルシ前大統領が解放されねばならない。

エジプトのアラブの春は、なお模索中だ。

いや、模索中ならまだいいが、軍による“クーデター”は二年前の民衆革命で始まった民主主義を急速に冷え込ませた。

モルシ政権のイスラム教傾斜と経済不振へのいら立ちが、国民の間に積もっていたとはいえ、民主主義のルールでは、選挙で勝ったモルシ氏には明白な正統性がある。

それが、あっさりと軍によりその座を追われ、拘束された。

エジプトでは、国軍に対する一定の信頼性がある。国王を追放したナセルらの自由将校団は民衆の喝采を浴びた。以来、比較的安定した統治を続けてきた。

しかし、アラブの春はさび付いていた歴史の歯車を回し、軍政の独裁を投げ捨てたはずだった。

それが、また息を吹き返しそうなのだ。

エジプトにとって一番恐ろしいのは小麦の備蓄と安定供給が危うくなることだ。パンを求める全国的暴動は国を脅かす。そこで軍の出番となったのかもしれない。

しかし、それでもモルシ氏の拘束は正しかったのか。

裁判所は新たに十五日間の拘束を認めた。二年前の革命時に同胞団員らを閉じこめていた刑務所や警察署を襲ったというのだ。だが古い事件を持ち出したこと自体、拘束の不当性を表してもいる。拘束の長期化に対し、米欧などは解放を求めだしている。

目下、駆け引きは急である。

暫定政権は軍の行程表をもとに和解協議を呼びかけ、同胞団はモルシ氏解放が先だとして拒否している。ほかに宗教権威や知識人らからも国民対話や早期の選挙実施を求める提案が出ている。

しかしいずれにせよ、モルシ氏の解放なしに和解協議はありえない。民主化とは、力ずくの政治、抑圧を過去のものとしたのではなかったか。

これ以上、溝が深まり、衝突と流血が繰り返されるのなら、かつての軍、治安警察による同胞団の徹底弾圧という暗い歴史に逆戻りしかねない。

それはアラブの春の死を意味しかねず、中東全体にも、テロの撲滅を求める世界にとっても大きな損失となるだろう。
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[東京新聞] 児童虐待激増 見守り力で苦境を救え (2013年7月30日)

全国の児童相談所が昨年度に対応した虐待件数が過去最多を更新、六万件を超えた。関係機関が動いたのに子どもを救えなかった例がなくならない。地域・自治体間の連携を強くする努力が要る。

六歳の女児の遺体は、雑木林に埋められていた。

四月横浜市で、母親(30)と元同居人男性(28)が女児に暴力を加え死亡させ、遺体を遺棄したとして死体遺棄容疑で逮捕された。

保護を受けるべき大人から暴力を振るわれるだけでなく、命を奪われ捨てられてしまう不条理はやりきれない。

厚生労働省の集計では、児童相談所の対応件数は六万六千八百七件、初めて六万件を突破した。この十年で二・五倍になった。

件数の増加は、地域の児童虐待への関心が高まり住民の通報が増えたからだ。警察も危機感が強まり通報をするようになった。子どもたちのSOSに耳をそばだてる住民が増えたことは心強い。

だが、課題は多い。横浜市の事件で、母子は千葉県松戸市から神奈川県秦野市へ転居、その後横浜市に移り住んだ。松戸市で小学校入学を迎えた女児が学校に来ていなかった情報が自治体間で共有されず、虐待に気付くのが遅れた。

松戸市の学校関係者が母子宅を再三訪問していただけに、残念でならない。

児童相談所が動きながら防げなかった心中以外の虐待死事例は昨年度十七件と三割を占める。自治体や医療機関、学校、警察など関係機関でつくる地域協議会が対応したケースでも十四件あり25%になる。これまでより高い比率だ。

せっかく救いを求める親子に手が届きながら、救えない事態は避けなければならない。虐待に至る家庭は地域で孤立しがちだ。いち早く見つけ虐待を防ぐために、地域の連携力をもっと強めたい。

虐待を疑われた家庭は転居を繰り返すことも多い。自治体間の連携は法的には努力義務で、現場に任されている。情報共有のルール化に現場は知恵を絞ってほしい。

地域では、児童相談所や自治体は関係機関との情報共有や対応手順などの徹底を再点検すべきだ。

自治体は独自に実施する母子健康手帳の交付時や乳幼児健診などを通した目配りも引き続き要る。

現場の人材確保は課題だが、今でもやれる連携はあるはずだ。住民の見守りは確実に広がっている。その温かい心をもっと地域でつないで苦境の親子を救いたい。
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[産経新聞] 中東和平 相互努力で本交渉目指せ (2013/07/30)

中東和平交渉が米国の仲介で、約3年ぶりに再開する。イスラエルとパレスチナ双方の交渉担当者がワシントンで予備交渉のテーブルに着く。

シリア内戦の泥沼化、エジプトのクーデターなど「アラブの春」の激動が続くが、パレスチナ和平は地域の安定の根幹をなす問題だ。イスラエルの入植問題など両者の主張は対立したままで、難航が予想されるが、まずは交渉を軌道に乗せる努力を求めたい。

予備交渉は2日間で、イスラエルのリブニ法相、パレスチナの和平交渉責任者のアリカット氏らが参加する。今後数カ月間の交渉の進め方を決めるという。

オバマ米大統領は今年3月、2期目の最初の外遊でイスラエルとパレスチナを訪れた。その後、ケリー国務長官が頻繁に中東入りして両者に交渉再開を強く促した。オバマ政権の外交的成果だが、真価が問われるのはこれからだ。

イスラエル側は交渉再開に先だって、パレスチナ側の要求を受け入れる形で、パレスチナ人政治犯104人を釈放する決定を下した。本格交渉へ前向きな姿勢を示したといえる。

イスラエルはしかし、パレスチナ側が求める占領地でのユダヤ人入植地建設の凍結は拒んでいる。中東和平交渉は2010年10月、入植活動をめぐってパレスチナ側が反発、中断が続いていた。

イスラエル側は、この拒否姿勢を改める必要がある。一方、パレスチナ側も、ガザ地区はイスラム原理主義組織ハマスが支配し、自治政府の統治が及ばないという現状を解消しなければならない。

和平交渉では、聖地エルサレムの帰属やパレスチナ難民がイスラエル領内の故郷に帰還する権利など多くの問題が未解決のままだ。交渉進展に向け国際社会全体が支えていかなければならない。

日本は、岸田文雄外相が先ごろ、ヨルダンのほか、イスラエルとパレスチナを訪問し、両者に交渉再開を促した。

パレスチナ自治区のエリコ郊外で日本は、農産品加工団地の建設を進めている。イスラエルとパレスチナが共同で農業開発に取り組むことで、相互の信頼醸成を図る考えだ。

米国のパレスチナ和平仲介を側面支援する形であり、日本らしい貢献で中東でも日米協力を実現させることは極めて重要だ。
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[産経新聞] 呉氏の入国拒否 韓国は納得のいく説明を (2013/07/30)

韓国出身の評論家で日本国籍をもつ呉善花・拓殖大教授が明確な理由を告げられず、韓国への入国を拒否された。

呉氏は歴史問題などをめぐって、韓国に厳しい評論活動で知られる。入国拒否の理由について、韓国当局に納得のいく説明を求めたい。

呉氏によると、ソウルで行われる親族の結婚式に出席するため、27日、韓国・仁川空港に着いたところ、パスポートの詳細な確認を受け、入管職員に「入国は許可できない」と言われた。理由を尋ねても「上からの命令」などと答えるだけだったという。

しかも、夕刻の日本行きの便まで待機させられ、その機内で呉氏が着席するまで職員がついてきたという。理解に苦しむ対応だ。

韓国に批判的な呉氏の言論活動が入国拒否の理由だったとすれば、由々しき問題である。

韓国は中国や北朝鮮と違い、自由な言論を尊重しなければならない民主国家だ。どんな批判でも、それがテロなど危険な行為を伴うものでない限り、許容し、入国を認めるべきではないか。

本紙の取材に、入管当局は「プライバシーに関することで回答できない」と語ったが、説明として不十分だ。菅義偉官房長官は「思想信条を理由に入国を拒否されたのであれば、日本国民に対する極めて残念な措置だ」「事実関係を把握した後、適切に対応する」と述べた。当然である。

韓国は一昨年、当時野党だった自民党の国会議員3人が竹島に近い鬱陵(うつりょう)島を視察しようとした際も、「公共の安全を害する行動を起こす恐れがある」として、ソウルの空港で入国を拒否した。入管当局は入国目的も聞かず、いきなり不許可を告げた。これも著しく礼を失した対応だった。

また、ソウルで28日に行われたサッカー東アジア・カップ男子の日韓戦で、韓国側応援団が「歴史を忘れた民族に未来はない」と日本を誹謗(ひぼう)する横断幕を掲げた。韓国政府の意向ではないにしても、国際的なスポーツ競技でのマナーに反する行為である。

日本と韓国は、歴史認識や領土問題で対立しても、北朝鮮の核開発や中国の軍拡など安全保障面では協力しなければならない関係にある。経済的なつながりも深い。日本と同じ自由と民主主義を重んじる隣国として、韓国には冷静で理性的な対応を望みたい。

日本非難の巨大横断幕「歴史忘れた民族」 FIFA規定違反の疑い
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[日経新聞] 訪日客1000万人時代に求められるもの (2013/7/30)

観光などで日本を訪れる外国人が増えている。今年上半期の訪日客は前年比23%増の495万人に達し、政府が目標とする年間1000万人が視野に入ってきた。これをさらに伸ばすためには、企業や自治体の一層の努力がいる。

政府は訪日外国人を2016年に1800万人、20年に2500万人に増やす目標を掲げている。旅行者の増加は宿泊、食、交通など幅広い産業にプラスだ。ただし現在の伸びは震災による落ち込みの反動や円安による「お得感」など、特殊な条件が重なった面もある。楽観はできない。

一度だけでなく繰り返し日本に来たくなる。長く滞在し、さまざまな消費をしたくなる。そうした日本ファンを育てるには、キャンペーンよりも滞在中の満足度の向上が大事だ。現場でサービスを担う企業や自治体の役割は大きい。

戦後、日本の観光業は宿泊業も旅行会社も観光施設も、主に国内の団体客で成長してきた。近年、女性グループなど個人客が増える中で、サービスや施設面で対応した企業や観光地と、そうでない所で集客力の差が広がりつつある。こうした努力不足が国内の旅行市場を縮小させた面もある。

外国人も伸びるのは個人客だ。今度こそ発想を転換し、経営革新に取り組みたい。「おもてなし」の伝統を大事にしつつ、使い勝手のいいようサービスを刷新する。画一的なメニューや催しをやめ、土地の文化をじっくり楽しんでもらう。そんな工夫を重ねたい。

時間と懐具合に余裕がある層に向けたリゾートホテルや都市型ホテルも不足している。優雅さやぜいたく感の演出では、欧米だけでなくインドネシアやシンガポールなど東南アジア諸国の一部施設に先行されている。

また、訪日客を国内で案内する業者に関して、質のばらつきが指摘されている。日本に悪い印象を持てば再訪につながらない。日本の旅行会社がこれまで力を入れてこなかった分野だ。安心できる案内サービスを提供すれば、観光客にも会社にもプラスだ。

地方は、地元が見落としている魅力を発掘するため、外国人自身の目をもっと生かしたい。外国人が中心となり、川を使ったアウトドアスポーツや古い街並みの活用で観光振興に成功した事例がある。当たり前と思っている自然や景観も資源になる。思い切った人材登用にも挑戦したい。
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[日経新聞] 気象庁は特別警報の周知を (2013/7/30)

山口、島根両県で猛烈な雨が降り、土砂崩れや河川の氾濫で被害が出た。気象庁は今回の豪雨を「特別警報」のレベルに相当するとして最大級の警戒を呼びかけた。

特別警報は気象庁が8月30日から発表を始める新しい警報だ。数十年に一度の大きな災害をもたらす大雨や暴風、地震などを対象にする。従来の大雨警報などの上に位置付けられる。

今回は本番を先取りする形で、気象庁の担当者が特別警報に言及した。ただどこまで国民に周知されているか心もとない。

気象庁は運用を前に特別警報がもつ意味と、従来の警報との違いをきちんと説明する必要がある。一段上の新しい警報ができたからといって、これまでの「警報」が軽視されるようでは困る。

特別警報は5月に改正気象業務法が成立し、導入が決まった。2011年に深刻な被害をもたらした紀伊半島の豪雨など早い段階で警報などが出ていながら、迅速な住民避難につなげられなかった反省から生まれた。地球温暖化の影響もあり、異常気象が増えると予測されることも背景にある。

防災の要は情報だ。行政が正確でわかりやすい情報を適時に流し、それを住民がしっかり受け止め行動につなげてこそ、情報が生き、人命を救う。新しい警報の導入を、防災情報の伝達の仕組みを点検、強化する機会にすべきだ。

特別警報に関し地元自治体は住民に伝える義務を負う。従来の警報の伝達は「努力義務」だった。

防災無線や広報車などを活用して情報を伝えるルートを多重にし、高齢者や山間部に離れて住む人たちにも確実に届くよう徹底しなければならない。

また「逃げなさい」とただ指示するだけではいけない。自宅を離れない方が安全な場合もある。

防災は地域ごとだ。きめ細かい気象予報とともに、防災の知識や経験を積んだ自治体職員を育てる努力も要る。日ごろから危険な場所や避難経路を地域ぐるみで確認し共有しておくようにしたい。
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[毎日新聞] 社説:日韓戦の横断幕 観客もフェアプレーで (2013年07月30日)

ソウルで開催されたサッカーの東アジア・カップ最終日(28日)、男子の日本対韓国戦で両国の難しい関係をさらに悪化させるような出来事があった。試合開始から間もなく、歴史問題にからむ巨大な横断幕が韓国側の観客席に掲げられたのだ。前半終了後に撤去されたが、競技場での政治的メッセージを伝える応援を禁止した国際サッカー連盟(FIFA)の規定に違反する疑いがある。

横断幕は縦数メートル、横30〜40メートルで、「歴史を忘れた民族に未来はない」とハングルで書かれていた。また、試合開始直前には、初代韓国統監を務めた伊藤博文を暗殺し、韓国で英雄視されている安重根(アン・ジュングン)の肖像とみられる幕も登場し、スタンドのほとんどを埋めた韓国人の観客から大きな歓声が上がった。

一方、日本側の応援席では、韓国においては戦前の日本による植民地支配の象徴とされがちな「旭日旗(きょくじつき)」が掲げられる場面があった。

今大会では、女子の韓国対北朝鮮戦で「祖国は一つ」と書かれたプラカードや、南北が国際大会で統一チームを構成した際に使用される「統一旗」を掲げた観客もいて、主催者側に制止されている。

昨年のロンドン五輪では、男子の日韓戦後、韓国の選手が観客から手渡された竹島(韓国名・独島)の領有権を主張するメッセージを掲げたことが問題となり、FIFAから出場停止などの処分を受けた。

スポーツの中でも、とりわけサッカーは見る側のナショナリズムを刺激しやすい。本来はグッドゲームをともに作り上げる相手を「敵」とみなしがちで、負けると相手への憎しみを感じたりする場合もある。

だからこそ「12番目の選手」とも言われる見る側は悪循環を断ち切るためにも、過度な感情移入は慎み、抑制的でありたい。

選手レベルでの両国の交流は日韓共催だった2002年ワールドカップ大会を契機に加速している。先月就任した韓国の洪明甫(ホンミョンボ)監督はJリーグの柏などでプレーした経験を持ち、東アジア・カップ日本戦の先発メンバー11人の中には2人のJリーガーがいた。女子も同様だ。27日の日本戦で2ゴールを決めて勝利に貢献した韓国の池笑然(チ・ソヨン)選手は普段、日本のINAC神戸でプレーしている。

ピッチ上で問われるのはサッカーの技術や相手をパートナーとして尊重する態度であり、国籍、人種、民族、宗教などは決して持ち込まないことは世界共通の了解事項だ。その意味で、スポーツの場で政治的なメッセージを主張することは明白なルール違反であり、フェアプレーに努める選手たちの気持ちに背く行為になることを指摘したい。
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[毎日新聞] 社説:視点・テレビと選挙=重里徹也(論説委員) (2013年07月30日)

先の参院選でインターネットによる選挙運動が解禁されたが、テレビに出演する芸能人や文化人が候補を応援することは許されないのだろうか。

NHKは、男性グループ「EXILE(エグザイル)」と女性グループ「E−girls(イーガールズ)」が出演する二つの番組の放送を延期したり、中止したりした。メンバーが自民党候補を応援している写真が、候補者のブログに掲載されたのが理由だ。また、報道番組にレギュラー出演している会社経営者、小室淑恵さんの出演を見合わせた。民主党候補予定者のホームページに応援動画が掲載されたためだ。

NHKは放送法に基づいてガイドラインを定めている。その中に「選挙の応援をする学者・文化人や芸能人などの番組出演は、政治的公平性に疑念を持たれないように配慮する」という項目があり、そこに照らして決めたという。しかし、疑問が残る。論点を列挙してみよう。

芸能人にももちろん、政治活動の自由がある。NHKの対応は、それを萎縮させることになりかねない。「政治的公平性」とは何かを考えることも必要だ。出演中に主張するのならともかく、番組外の行為が放送の公平性に関係するのだろうか。

どこまでがOKで、どこからが出演見合わせになるのか、その線引きも難しい。

連続テレビ小説「あまちゃん」に出演中の渡辺えりさんは14日付の共産党機関紙のインタビュー記事に写真付きで登場し、党への期待感を表したが、選挙期間中もドラマに登場した。

石田研一・放送総局長は「選挙へのかかわり方と番組内での役回りを総合的に判断した」と答えたが、わかりにくい説明だった。エグザイルのメンバーが出演していたのは、子供たちにダンスを教えるEテレの番組で、選挙に関係ない。

エグザイルと渡辺さんでは、特定候補への応援と政党への支持という違いがある。でも、渡辺さんの記事の横には共産党候補の写真が掲載されている。

テレビで親しんでいる人たちが選挙について意見を言うことは、政治への関心を幅広く呼ぶきっかけになる。政治を語り合う土壌をつくれば、民主主義が活性化するだろう。

誰もがブログやツイッターで意見を表明できる時代になった。インターネットの発展はテレビと選挙のあり方についても、新しい課題を突きつけている。番組外での選挙運動をどう考えるか。NHKに限らず、テレビ各局は過度に神経質にならず、議論を深めてほしい。
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[読売新聞] 「多弱」の野党 再編は政策論議から始めよ(7月30日付・読売社説) (2013年7月30日)

「1強」の自民党と、「多弱」の野党と言われる。巨大与党に対抗し得る野党像を模索すべきなのに、展望は厳しい。

参院選後、執行部の責任問題が取り沙汰された民主党、日本維新の会は、ともにトップが続投することになった。

みんなの党を加えた3党間で野党再編も浮上しているが、参院選で共闘できなかった党首の下、結束や再編は容易ではあるまい。

民主党は、参院選で無所属候補を応援した菅元代表の処分を「党員資格3か月停止」とした。当初案の「除籍」に比べて後退した。海江田代表の続投に不満が根強く、党再建の道筋は不透明だ。

民主党では結党以来、基本政策を巡って隔たりが大きい。最大の弱点とされる党の一体感の欠如を招いている。海江田氏が、路線対立を乗り越える指導力を発揮できるのか、はなはだ疑問である。

幹事長には、大畠章宏代表代行が就いた。大畠氏は旧社会党出身で労働組合色が濃く、民主党の労組依存体質は強まるだろう。

参院選の比例選でも、当選者7人のうち連合の組織内候補が6人を占めている。

海江田氏は、野党再編に関し、「大切なのは民主党が中心になることだ」と述べたが、民主党の置かれた状況を理解していない。

維新の会の橋下共同代表らは、まさに民主党の労組依存を問題視しており、結束を呼びかける相手は、みんなの党と民主党の保守・非労組系議員だからだ。

その維新の会では、橋下氏が辞意を表明したものの、石原共同代表らに慰留された。本拠地の大阪と、東京の国会議員団との対立という問題は今後もくすぶろう。

みんなの党には、渡辺代表と江田幹事長の確執がある。江田氏はみんなの党が再編を主導すべきだと前のめりだが、渡辺氏は「拙速な再編は野合に終わり、失敗する」と慎重な構えだ。

長年、政界再編の中心だった生活の党の小沢代表は、政治力の低下が著しい。社民党を10年間率いてきた福島党首も退く。

政党は本来、内外の課題を把握し、処方箋たる政策を実行していくためにある。政治家の都合で離合集散すべきものではないし、国民の支持なしに生き残れない。

新しい野党には、ガバナンスを確立できるリーダーの下、憲法など政策での一致が欠かせない。

次の国政選まで最大3年ある。野党各党は、浮ついた再編論議ではなく、現実的で地道な政策論から始めるべきである。
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