2012年12月31日

[東京新聞] 大晦日に考える 山中教授の朝のように (2012年12月31日)

「仕切り直しの朝です」。そう言ったのはノーベル賞授賞式翌朝の山中伸弥教授でした。聞いて、思わず気を引き締めた人もいたのではないだろうか。

その言葉は、日本の記者たちを前に飛び出した。いよいよ新型万能細胞の臨床応用が始まるし、もう仕事の連絡も来ている、これからです、と教授は言うのです。実にまじめで、また良き日本人気質をうかがわせる一言でした。

前日の晩餐(ばんさん)会では、白いドレスのマデレーン・スウェーデン王女をえんび服姿で導いていました。


◆神戸ビーフを話題に
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千三百人もの祝宴で着いた座席は、中央の栄光のテーブルと呼ばれる場所のさらに真ん中。前菜の北極イワナ、主菜のキジ肉と食事を進めつつ、関西育ちは神戸ビーフを話題にしたそうです。

何だか痛快じゃありませんか。

政治の行方はこれからのこととしても、よくないことばかりが続いたような今年。その中で山中教授受賞のニュースは、日本人を少しほっとさせた。まだまだ日本は捨てたものじゃない。そう思い直させたのではないでしょうか。

失われた二十年という。

しかし、そう言っているばかりでは安穏にすぎます。格差拡大はとどまらず、未来に踏み出す高校生や大学生の就職内定率は、低すぎる。それは彼らを受け入れるはずの大人が自らの社会的責任をあまりにおろそかにしているからだ。冒険せよとは言わないが、挑戦する精神と活力を忘れかけているからではないか。

半世紀前、日本の世界的繁栄を予見した英誌エコノミストは、今年、世界の二十年後や四十年後を占って、日本は急速に存在感を失うと予測した。

新興国の経済が伸びる一方、日本は超高齢化と少子・人口減が進み、二〇五〇年には一人当たりの国内総生産(GDP)が韓国の半分、独仏の七割、中国を少し上回る程度というのです。


◆落胆でなく「警告」と
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だが、欧州の例を見るまでもなく、世界の動向は資源の多消費ではなく少消費の持続可能型、節約型に向かいつつあります。

エコノミストの予測に落胆するのではなく、それを未来を考える警告と受け取りたいものです。

山中教授とはむろん、状況が異なりますが、「仕切り直しの朝」こそが今の私たちそれぞれに必要なのではないでしょうか。

記念講演で、教授は、細胞初期化の先人で共同受賞者の英国人ジョン・ガードン氏らへの謝意とともに、こう述べました。

「私は(万能細胞を)受精卵からではなく、患者さん自身の体の細胞からつくりたかった」

受精卵という命のもとを使う、あるいは壊すのではなく、患者の体細胞を用いるということです。

ここには生命倫理のハードルを越えるというよりも(もちろんそれはあるにせよ)人の命に対する畏敬、また優しさが強く感じられます。より多くの患者をより簡便な方法で救うという医師の使命感をうかがわせるのです。

それが実に率直に示されたことに、世界は感動し、日本人は感動とともに大きな誇りを感じたのです。つまりわが事のようにすら思ったのです。

日本は東日本大震災、福島原発事故という大きな不幸に遭った。しかも、その被害はまだ続いている。そういう過酷な現実の中での山中教授の栄誉でした。研究は広く応用の利くもの、また優しさのあるものでした。

ここに、新しい日本の未来、新しい科学技術の芽は見つからないものでしょうか。

日本は、欧州などのように少数の超エリートを育てるというよりも、みんな一緒に向上するというほうが、どうも似合うようです。日本には、日本のやり方があり、良さもあるのです。

引き合いに出すのは、少々気が引けるのですが、山中教授とは、そういう私たちの素晴らしきモデルなのです。


◆町工場に育った少年
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彼自身、自分は科学者というよりも技術者である、と言ったことがある。父親はミシン部品の町工場を営み、その息子は機械に魅せられた少年でもあったということです。

そう考えてくると、そのノーベル賞とは、天才のひらめきのゆえというよりも、日本のよき土壌、歴史、精神風土から生まれたのではないか。もしかしたら、教授のノーベル賞とは日本人全体に贈られたのではないか。そんなふうにも想像されてくるのです。

もう一度、思い起こしてみましょう。「仕切り直しの朝」という実直で気迫のこもった教授の言葉を。そこに、私たちの失われし時を超えて、思い出すべき、また奮起すべき、何ものかが潜んでいるのではないだろうか。
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[産経新聞] 特定暴力団の指定 健全な社会守る法整備を (2012/12/31)

北九州を中心に、暴力団によるとみられる無法な事件が続いている。

暴力団同士の抗争事件だけではなく、その牙は、暴力団排除の標章を掲げた飲食店関係者ら一般社会にも向けられた。彼らは健全社会の敵である。あらゆる法令を駆使して排除すべきだ。

福岡、山口両県の公安委員会は改正暴力団対策法に基づく「特定危険指定暴力団」に「工藤会」(北九州市)を指定した。福岡など九州4県も同法に基づく「特定抗争指定暴力団」に「道仁会」(福岡県久留米市)と「九州誠道会」(同県大牟田市)を指定した。指定は全国初だ。

「特定危険」に指定された組織の組員が不当な要求をすれば、中止命令を経ずに逮捕できるなど、規制の強化が期待できる。

だが、道仁会が「特定抗争」に指定されることが決まった20日夜、道仁会系事務所に手投げ弾とみられる爆発物が投げ込まれた。指定をあざ笑うかのような、やりたい放題の犯行である。9月には九州誠道会幹部が所有するビルに火炎瓶が投げ込まれ、福岡県警が道仁会系幹部を放火未遂などの容疑で逮捕していた。

福岡県の暴力団排除条例に基づいて「暴力団員立入禁止」の標章を掲げた北九州市の飲食店では、経営者や女性従業員に対する殺人未遂事件やビルの不審火が相次いだ。「次はお前じゃ」といった脅迫電話も繰り返された。標章を外す店も増えている。

警察庁は全国の警察から福岡県に応援を送り、暴力団の封じ込めに必死だが、十分な効果をあげているとは言い難い。

福岡県の小川洋知事は暴対法の改正に加え、おとり捜査や通信傍受といった捜査手法の導入も国に求めてきた。新たな「武器」を与えなくては、警察の努力だけでは限界がある。暴力団の恐怖におののく一般人を守るための法整備を急ぎたい。

一方、東京・六本木のクラブで客の男性が金属バットなどで武装した集団に襲われ死亡した事件では、暴走族「関東連合」のOBらが関与したとみられる。一昨年、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが暴行された事件でも、別の元メンバーが逮捕された。

「半グレ」とも呼ばれる暴力団組織に属さない、または境界があいまいな犯罪集団を法の網から逃さないための整備も急務だ。
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[産経新聞] 日本版NSC 早期設置で緊急対応図れ (2012/12/31)

日本の外交・安全保障体制の強化に向けて、安倍晋三首相が日本版国家安全保障会議(NSC)の早期設置に意欲を表明した。

NSC構想は、米国の例を参考に政治主導で外交・安全保障分野の首相官邸の司令塔機能を再編強化するための機構改革だ。第1次安倍内閣時の平成19年に安全保障会議設置法改正案(設置法案)が国会に提出された後、廃案となっていた。

中国の攻勢や北朝鮮の脅威が強まる中で、新たに国家戦略を構築する必要性は一層高まっている。安倍氏の意欲を歓迎し、速やかな設置と実働開始を求めたい。

安倍氏は26日の会見で「総合力としての外交を戦略的に展開する。日本の安全保障は今そこにある危機だ」と強調した。菅義偉官房長官に国家安全保障強化を担当させ、NSC担当に礒崎陽輔首相補佐官を充てるなど、外交・安全保障重視を明確にした。

また、内閣官房参与に谷内正太郎元外務事務次官、外交担当の官房副長官補に兼原信克・外務省国際法局長を起用したのも、NSC設置へ向けた布陣といえる。

当初の設置法案によると、NSCは首相を議長とし、官房長官、外相、防衛相、国家安全保障担当補佐官が出席する。緊急事態や防衛計画大綱などの審議には総務、財務、経済産業各相や国家公安委員長らも加わるという。

米国のNSC設置は1947年と歴史が長い。国務、国防総省、軍、情報機関などの縦割りに陥りやすい政策決定過程を統合し、大統領府を司令塔に機動的な決断を下すためだ。英国でも日本と同じ時期に設置構想が生まれ、一足先に2010年に発足した。

日本が出遅れたのは、安倍氏の後を継いだ福田康夫政権が設置法案を撤回したためだ。参院のねじれなどで成立が困難とされた事情もあるが、政府自ら撤回したことには疑問が残る。

ただ、会議の設置だけでは機能をフルに発揮できない。優秀な人材、省庁間の情報共有、閣僚間の連携に加え、日本に情報機関がないことも早急に是正が必要だ。

NSC型の即断が求められるのは、とりわけ東日本大震災型の大災害や大規模テロ、外国の侵略などの緊急事態だ。米英の経験から学べることも多い。課題を克服して、真に効果を発揮できる組織に育ててもらいたい。
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[毎日新聞] 社説:TPP参加 首脳会談で意思明確に (2012年12月31日)

来年1月に予定される日米首脳会談で、日本の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加問題が主要議題になりそうだ。安倍晋三首相は会談で交渉参加の意思を明確に示し、国内経済の活性化と日米同盟の強化を追求すべきだ。

米国は日本の参加を強く望んでいる。しかし、安倍首相は組閣後の会見で「国益を守れるか、総合的に検討していく」と述べるにとどまった。自民党の石破茂幹事長は、7月の参院選までに党の方針を決める考えを示した。首脳会談での参加表明には慎重な姿勢がうかがえる。

新政権に参加をためらわせている最大の要因は、農業界の強い反発だ。総選挙で農業票を得るため、「TPP反対」を訴えた自民党の衆院議員は少なくない。

しかし、交渉参加を遅らせることは、「国益」に反する。TPP交渉には米大陸やアジア太平洋の11カ国が参加し、さらに拡大する勢いだ。これらの国々との貿易・投資が国益に欠かせないことは明らかだろう。

貿易・投資のルールを決める交渉は来年中に、正念場を迎える見通しだ。日本の主張を反映させるために残された時間は、あまりない。

確かに、国民の間にTPP参加への不安があることは否めない。「コメ農家が壊滅する」「食の安全が脅かされる」「医療格差が広がり、弱者が切り捨てられる」といった心配が、その代表例だろう。政府はそうした不安を解消するため、国民に対して説明を尽くすべきだ。

そもそも、「最善の国益」を求めて交渉するのが政府の職責である。守るべき「聖域」は、交渉の中で勝ち取らなければならない。そのためにも、ルールが固まる前に交渉に参加する必要がある。最悪の事態を想定し、交渉参加を先延ばしするのは本末転倒といえる。

それでも、関税化をめぐる交渉次第では、国内農業に影響が出る可能性はあるだろう。しかし、国内で維持すべき産品に関しては、所得補償の工夫で保護する手立てがある。国際競争力を高めるための構造改革も急がなければならない。

第2次安倍内閣で農相に就任した林芳正氏は、農水族ではない。農業界とのしがらみがないだけに、思いきった取り組みを期待したい。林農相は早速、ばらまきとの批判がある戸別所得補償制度の見直しを表明した。農業強化策を早急に打ち出し、交渉参加の環境を整えてほしい。

アジア太平洋地域では、TPP以外にも日中韓自由貿易協定(FTA)など複数の経済連携の取り組みが進む。そうした交渉を主導していくためにも、TPPに参加することで発言力を高める必要がある。
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[毎日新聞] 社説:普天間問題 「そこにある危険」除け (2012年12月31日)

沖縄・米軍普天間飛行場の移設問題では、安倍自公政権も、日米両政府の合意通り名護市辺野古への「県内移設」を目指すという。

安倍晋三首相は就任直前、「基本的には辺野古に移設していく方向で地元の理解を得るため努力していきたい」と語った。

しかし、その後も、仲井真弘多沖縄県知事は「県外移設を求める私の考えは変わらない。県議会、県内全41市町村の首長や議会がすべて(辺野古移設に)反対だ。政府が仮に工事をしようとしてもスムーズに進まない」と述べている。

防衛省は辺野古移設に必要な知事の公有水面埋め立て許可に向けた申請準備を進めているが、知事や名護市長をはじめ、沖縄の理解が得られるとは到底思えない。

衆院選で自民党は沖縄県の4小選挙区のうち3選挙区で勝利し、残る一つも比例代表で復活当選した。いずれの候補も党沖縄県連も「県外移設」を公約に掲げていた。

石破茂自民党幹事長は「最終的に県外移設というゴール」を目指すのだから「党本部と沖縄県連に齟齬(そご)はない」と言う。だが、県連や候補者の「県外移設」公約は辺野古移設後の将来の目標だった、というのは沖縄の有権者を裏切る詭弁(きべん)である。

沖縄では、「県外移設」が知事、自民党を含めた県議会、各自治体の総意であり、辺野古移設の見通しが立たないという現実は変わらない。とすれば、安倍政権がまず取り組むべきなのは、移設が実現するまでの間、普天間飛行場周辺住民の危険性を早急に除去・軽減する手立てを講じることだろう。これは、鳩山政権による「普天間の迷走」以降、問題解決に消極的になった民主党政権が放置してきた課題である。

普天間飛行場は宜野湾市の人口密集地にあり、周辺には約9万人が居住し、120以上の公共施設が張り付いている。墜落など万一のことがあれば重大事故につながる。

沖縄県によれば、10月に普天間飛行場に配備された垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、安全確保のため日米両政府が合意した運用ルールに違反するとみられる飛行が11月末までに318件あった。政府は違反の有無を検証し、違反があれば米側に厳重に改善を申し入れるべきだ。

安倍政権が検討しているオスプレイの本土への訓練移転は、沖縄の負担軽減に結びつくが、訓練にとどまらず、普天間飛行場の基地機能を分散移転すれば、周辺住民の危険性は大幅に軽減できる。

小野寺五典防衛相は普天間飛行場の固定化回避を強調している。同時に、「今そこにある危険」を除去する方策を真剣に検討してほしい。
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[読売新聞] 社会保障政策 全世代で応分の負担が必要だ(12月31日付・読売社説) (2012年12月31日)

◆活力回復へ少子化に歯止めを◆

急速な少子高齢化で、年金、医療、介護など社会保障制度の維持に黄信号がともっている。

将来への不安から、消費を控えて貯蓄に回そうとする心理が、景気低迷にもつながっている。安倍内閣は、社会保障制度に対する信頼の回復を急がねばならない。

最優先すべきは、消費税率の引き上げを柱とする社会保障と税の一体改革を着実に進めることだ。消費増税分は、基礎年金や医療などの財源に充てられる。制度を維持していくための大きな一歩になるだろう。

◆改革は長期的な視点で◆

無論、これだけでは不十分だ。将来を見据えた長期的な改革として、少子化対策が重要である。

これまでの日本の社会保障は、年金額などで高齢者に手厚い反面、少子化対策が貧弱だった。

社会保障と税の一体改革によって、消費増税分13兆5000億円のうち、7000億円が子育て支援策の財源となる。それでも、フランスやスウェーデンなど、少子化の克服に成功した国々に比べると相当見劣りする。

日本は、1人の女性が産む子供の数を示す合計特殊出生率が1・39で、先進国では最低のレベルだ。出生率の低下で、人口は今後50年間に3割以上も減り、100年後には3分の1の規模に縮むと予測されている。

少子化に歯止めがかからなければ、労働力人口が減少し、現役世代の社会保障費負担は重くなる。経済成長にもマイナスで、社会の活力をそぐことにもなる。

出産を機に退職を余儀なくされる女性が多い現状を改善したい。失職への不安が、出産をためらう一因だ。保育サービスの拡充や育児休業中の所得保障の強化など、安心して働き続けられる環境を整えることが急務だろう。

安倍首相は記者会見で、女性が活躍し、子供を産み育てやすい国を作っていくことが政権の責務だと強調した。3年3か月で少子化相が計10人も入れ替わった民主党政権を反面教師とし、強力に少子化対策を進めてもらいたい。

少子化と並び、非正規雇用の増大も社会保障を危うくしている。パート、契約社員などの非正規労働者は1800万人を超え、被用者の35%に達した。

◆非正規雇用対策が課題◆

非正規労働者については、年金、医療、雇用など社会保険を適用していない企業が多い。社会保険料の徴収対象でない労働者の増加は、保険料収入で成り立つ社会保障制度の根幹を揺るがす。

失業や病気が生活困窮に直結し、将来は無年金・低年金になる恐れも強い。

非正規労働者は、リストラの対象にもなりやすい。経済的な理由で結婚が難しく、30歳代男性の既婚者の割合は正社員の半分ほどにとどまる。それが少子化を加速させる悪循環を招いている。

非正規労働者に対する厚生年金など社会保険の適用拡大や、正社員との賃金格差の是正は大きな課題である。

田村厚生労働相が記者会見で、経済再生のため「雇用についてもしっかり対応したい」と述べたのは妥当だ。非正規労働者の処遇改善にも積極的に取り組んでもらいたい。

社会保障制度を持続可能にするには、若者から高齢者まで、世代を問わず、能力に応じて負担することも求められる。特に見直しが必要なのは、年金税制である。

公的年金は税額控除が大きく、年金生活者の納税額は、同じ収入の勤労所得者に比べて大幅に少ない。年金課税を強化し、現役世代との格差を是正すべきだ。

問題はそれだけではない。70〜74歳の医療費の窓口負担は、法定では2割のところ、1割に抑えられている。その結果、前後の年代に比べ、収入に占める負担額の割合が小さい。本来の2割負担に引き上げることが求められる。

◆給付の抑制も不可避◆

介護サービスは現在、比較的症状が軽い要支援者でも、自己負担率は重度の要介護者と同じ1割だ。今後は負担率の引き上げも検討課題になる。

給付の抑制も避けられない。

公的年金には、賃金や物価の変動率より年金の伸び率を低く抑える仕組みが2004年に導入されたが、一度も発動されていない。早期に実施する必要がある。

ただ、年金生活者の所得格差も大きく、生活費を基礎年金だけに頼る低年金の高齢者も少なくない。消費増税の際、生活必需品の軽減税率を導入するなど、低所得者対策が欠かせない。
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[朝日社説] 年金の周知度―利点を知らせる工夫を (2012年12月31日)

障害年金をご存じだろうか。

重い障害を負った場合、月約6万5千〜8万2千円が一生受け取れる制度だ。若者でも実感できる国民年金加入の大きなメリットである。

ところが、厚生労働省の最新の実態調査によると、「知っている」のは54.1%で、6年前より5ポイントほど減った。

そもそも国民年金の半分は税でまかなわれる。民間保険ではありえない「お得な制度」だが、こちらは33.4%しか知らず、6年前から7ポイント低下した。

再来年からの消費増税のうち約1%分は年金に投じられる。もし、無年金になれば、税の払い損になってしまう。

一方、国民年金の未納者(保険料を2年間、全く納めていない人)のうち、民間の個人年金に入っている人が8.6%もいて、月平均で1万4千円の保険料を払っている。国民年金の1万5千円と、ほぼ同じだ。

こうした不合理な行動が起きるのは、制度を周知させる努力が足りなかったからだ。

国民年金の被保険者のうち、未納者(455万人)の割合が過去最高の26.2%に達した背景にも、年金への認識不足があろう。仕組みについて、広報や教育など地道な仕事を軽視してきたツケである。

民主党政権は、事業仕分けで年金の広報・教育の予算(09年度で約3億4千万円)を廃止した。削りっぱなしではなく、内容の改善を促すべきだった。

二つのルートで取り組みを強化してはどうか。

まずは、市町村との連携強化である。年金事務所よりも住民にとって身近であり、所得情報を活用して所得の低い人には保険料の免除を勧めるなど、効果的な対策がとれる。むろん、個人情報の保護には細心の注意が必要だ。

市町村にとってもプラス効果がある。無年金や低年金の住民が減れば、生活保護の財政負担も減るからだ。

3年後には、年金受給に必要な加入期間が25年から10年に短縮される。この周知や相談態勢の整備にも、市町村の力を借りる必要があろう。

もう一つのルートは、学校教育だ。若者の間では非正規雇用が増えている。企業が様々な社会保障の手続きをしてくれる正社員よりも、自分の身を守る意識と知識が必要になる。

学校現場は忙しいが、教え子を無防備のまま社会に送り出すことは避けたいはずだ。

年金制度を維持していくために、政府全体で取り組むべき課題である。
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[朝日社説] 農業政策―もうバラマキはやめよ (2012年12月31日)

限られた予算を有効に使い、経営規模を大きくし、競争力を高めていく――。日本の農業の課題ははっきりしている。

焦点は、民主党政権が導入した戸別所得補償の見直しだ。

とくに、米作について一定の条件を満たせば、零細・兼業を含むすべての農家を支払い対象とする仕組みである。田を貸したり譲ったりする動きにブレーキをかけ、規模拡大への妨げになっている。

自民党は「バラマキだ」と厳しく批判してきたが、どうも雲行きが怪しい。

総選挙での公約と政策集には次のような文言が並ぶ。

政権交代後、大幅に削減された予算を復活させる▼農地を農地として維持することに対価を支払う日本型直接支払いの仕組みを法制化する▼コメに加えて麦、大豆、畜産、野菜、果樹など、多様な担い手の経営全体を支える……

民主党政権が切り込んだ農業関係の公共事業費を元に戻し、農家への支払いはさらに手厚くする、ということか。

自公政権は07年、すべての農家へ品目別に支払ってきた補助金を改め、1戸あたり4ヘクタール以上(北海道は10ヘクタール以上)の農家に絞って所得補償する制度を導入した。農業の大規模化をめざし、「戦後農政の大転換」と言われた改革だ。

しかし、農業関係者の反発にあい、同年の参院選で敗北する一因となった。その後、制度は骨抜きになっていく。

09年には当時の石破農水相が生産調整(減反)の義務づけをゆるめる「減反選択制」に意欲を見せたが、党内や農協の反対で断念した。この年の総選挙で惨敗し、政権を明け渡した。

今回の公約は、農業票を強く意識した結果だろう。しかし、わが国の財政に大盤振る舞いする余裕はない。バラマキが農業の体質を一層弱めかねない危うさは、自民党が最もよくわかっているはずだ。

民主党政権は、コメ農家などの経営規模を20〜30ヘクタールと現状の10倍程度に広げる目標を打ち出した。農林漁業に加工と販売を組み合わせる「6次産業化」推進のためのファンドや、新規就農者に年150万円を出す給付金制度も立ち上げた。

大規模化への障害は何か。ファンドや給付金は一時的なバラマキに終わらないか。これらの点検も必要だ。

選挙のたびのバラマキ合戦に終止符を打ち、農業の再生に必要な政策を練り直す。「責任政党」を自覚するなら、まっとうな姿勢を見せてほしい。
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2012年12月30日

[東京新聞] 年のおわりに考える 「未定」で生きている (2012年12月30日)

東日本大震災から二度目の年の瀬です。復旧復興はままならず、生活再建に遠い厳冬です。被災者たちの「希望」の声に政治は応えねばなりません。

浜辺にある巨大な白い漆喰(しっくい)壁は、山を背に、青い海に向かっています。氷点下の風が鳴り、打ち寄せる波が轟音(ごうおん)を立てます。

石巻市雄勝町(宮城)にある「希望のキャンバス」は、高さ四メートル、長さ四十メートルもあります。がれきの木材などを骨格にして、地元の土が塗られています。岐阜県の左官職人・挟土(はさど)秀平さんらが今月初めに作りました。

<父さん 大波 小波に負けず頑張ります><じいちゃんから学んだこと(中略)生きる姿勢 継いでいきます>

きっと家族を亡くした人なのでしょう。被災者たちの思いの言葉が墨で書かれています。

宮城県の左官業・今野等さん(45)も手伝いました。石巻市にあった自宅は、大津波に流され、母親を亡くしました。大勢の児童が犠牲になった大川小学校から約五百メートルの距離でした。

「津波の後、船を出したら、周りは遺体ばかりでした。中にはまだ生きている子どももいて、おんぶして、搬送しました」

仙台や石巻のアパートから妻と子で、同県内の家に移ったのは今年五月です。父親はまだ仮設住宅に住んでいます。

「約百四十人いた地区住民の半分は亡くなりました。仮設の人の望みは何といっても、住む所です。自立したいのに、代替地がない。何年、待ったらいいのか…。海の人たちは強く、前向きですが、今は足踏み状態です。ストレスがたまっています」


◆心が「難民」の状態で
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今野さんは「みんな『予定』がなくなり、『未定』になった」と言います。確かにわれわれは「予定」の世界で生きています。学校を卒業したら、結婚したら、定年を迎えたら…。将来を描き、予定を立て、日々を営んでいます。

大震災はそんな「予定」をぶち壊し、先の読めない「未定」の世界に放り込んでしまったのです。

福島第一原発の被災者たちも同じです。原発のある福島県大熊町の人々の96%は「帰還困難区域」に家があります。

「ほとんどの人は家に帰るのは、もう無理だと思っています」と語るのは、同町でただ一人の司法書士・菅波佳子さん(42)です。各地に散りぢりになった町民の相談にのっています。

相続登記や賠償金の案件が多いそうです。不動産の所有者が誰かはっきりしないと、賠償金の支払いが受けられないからです。

「問題は今後、自分がどこに落ち着いたらいいのか、わからないことです。多くは役場機能にくっついて、会津若松(福島)やいわき(同)の仮設住宅に入っているだけです」

大熊町の役場は出張所が会津若松市、連絡事務所がいわき市にあります。でも、そこが自分の場所とは考えられないのです。

「心が『難民』の状態なのです」とも菅波さんは言いました。「自立したくとも、見つかる仕事は多くはアルバイト程度です。先が見えません。これからどう生きていっていいのか、誰もが心が定まらないのです」

原発被害の精神的損害への賠償がなされています。その五年分を一括払いし、不動産も事故前の公示価格で買い取る案があります。でも、「町民は誰も納得していない」と聞きました。

「なぜ公示価格なのか」「町ごと買い取ってほしい」などの声が上がっているそうです。根本はお金の問題ではありません。むしろ、「今までの生活に戻してほしい」という気持ちが強いのです。

原発事故の恐ろしさは、生活も環境もすべて根こそぎ壊したことです。古里を喪失した理不尽さから逃れられないまま、「仮設」という中ぶらりんの空間で暮らしています。だから、心が「難民」状態なのでしょう。

菅波さんは「私自身も心が定まりません」とこぼします。


◆浜辺に書かれた古里
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雄勝町の浜辺にある漆喰壁には、こんな言葉もありました。

<ふるさと とわに>

<現在・過去・未来。いつも いつでも 故郷はここ雄勝>

お正月はとりわけ古里が恋しい季節です。でも、大震災と原発事故は、古里の風景も、「予定」も奪いました。いまだに避難者は約三十二万一千人もおり、約十一万四千人が仮設住宅で生活しています。住宅や雇用、教育…。「未定」という空白を急いで埋める政策こそ、希望につながる道です。
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[産経新聞] 中国機侵入 領空を守る措置は十分か (2012/12/30)

領空侵犯に対処する航空自衛隊の任務や権限が、曖昧なまま放置されている。

わが国固有の領土である尖閣諸島をめぐり、中国の国家海洋局所属の航空機が領空侵犯や領空への接近を繰り返している現状を考えれば、対領空侵犯措置は明確にしておく必要がある。

自衛隊法84条は、外国航空機が国際法に違反して日本領空に侵入した場合、これを着陸させるか領空から退去させるための「必要な措置をとれる」としている。

空自はこれに基づいて、外国機が日本の防空識別圏に入るたび戦闘機を緊急発進(スクランブル)させ、無線での警告や警告射撃などの段階を踏んで、領空侵犯機に退去や強制着陸を命じる措置をとることになっている。

だが、警告や警告射撃などの措置は公共の秩序を維持する「警察活動」とされ、武器使用は正当防衛に限られるなど、極めて抑制的にとらえられている。

実際に警告射撃を行ったのが、昭和62年に旧ソ連の偵察機が沖縄本島上空などで領空侵犯を繰り返した際の一度だけ、ということにも示されている。

警告を無視して侵犯した外国機に、どう対応するかも考えておかなければならない。その意味で空自の対領空侵犯措置は不十分であり、実効性のある抑止にならないところに問題がある。

今月13日に初めて領空侵犯した中国国家海洋局のプロペラ機(Y12)は、その後も24日から3日連続で尖閣の領空近くまで接近するなどの行動を重ねている。

中国機が再び領空侵犯した場合でも、空自は警告射撃を行うことには慎重だという。

直ちに日本国民の生命や安全が脅かされることはないとの判断もあるようだが、相手の攻撃を受けた場合にどう反撃するかなどは、どうなっているのか。先送りすることは許されない。

尖閣の「領有権問題」を強調するため、中国側が領空侵犯を繰り返し、空自を誘い出す意図を持っていないのかも警戒すべきだ。そのためにも、どの段階で警告射撃を行うかなどを明確にしておくべきだろう。

政府公船による領海侵犯などの常態化に加え、空からも尖閣奪取の動きを加速する中国の行動をいかに抑止するかが安倍晋三政権に問われている。
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[産経新聞] 原子力規制委 断層調査の暴走が心配だ (2012/12/30)

原発の再稼働を難しくしたり廃炉に追い込もうとしたりする意図があるのではないだろうか。

原子力発電所の敷地内の破砕帯が、活断層かどうかを調べている原子力規制委員会の専門家調査団の活動姿勢に対しては、思わずそうした危惧を抱かされてしまう。

破砕帯の現地調査と評価は、関西電力の大飯原子力発電所から始まったが、日本原子力発電の敦賀原子力発電所(福井県)や東北電力の東通原子力発電所(青森県)についての評価会合では、電力会社側の説明に十分耳を傾けようとする誠意や真摯(しんし)さが感じられない。

敦賀原発に対しては、短時間の審議で活断層との断を下し、東通原発では、活断層の可能性を完全に否定し切れていないという論理で電力会社の主張を退けた。

あまりに強引で、独断的にすぎないか。これでは、調査団に「原発潰し」の目的があるようにも見えてしまう。そうした意図がないのなら、ぜひとも方法を改めるべきだろう。

規制委は以前に原発の地質調査に関わった研究者をメンバーに加えていないが、参加してもらってはどうか。より深い議論ができるはずだ。「原子力ムラ」のレッテルを貼って排除すること自体、科学者として最も慎まなければならない行為である。

排除されている側の研究者にも提案がある。同じ立場の専門家が連携し、破砕帯を再評価する調査団を結成してはどうだろう。

それを妨げる理由は、ないはずだ。福島第1原子力発電所の事故調査でも民間事故調が活動した。破砕帯の評価に関しても多様な視点が歓迎されてしかるべきだ。

規制委の調査団が、よりどころの一つとしている感がある変動地形学は航空写真や地表の形から断層などの存在を読み取る学問だ。調査用の溝を掘って地層の質や破砕帯そのものを扱う地質学とは、おのずと精密度を異にする。

民間の調査団と規制委調査団がそれぞれの見解をもとに、活断層かどうかを議論すれば、国民の理解も深まるはずだ。そうした健全な展開が大切である。

規制委には独立性が保証されているだけに暴走しかねない。一方的に電力会社の説明を退ける姿勢に、その兆候が表れ始めているのでないか。田中俊一委員長には良識ある手綱捌(さば)きを期待したい。
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[毎日新聞] 社説:米「財政の崖」交渉 世界が注視している (2012年12月30日)

財政の健全化策をめぐり、米ワシントンで期限ぎりぎりの攻防が続いている。年末までに議会で合意がみられなければ、年明け早々、大型減税の期限切れによる全世帯の実質増税と、大規模な歳出の一律削減が同時に米経済を襲う。「財政の崖」と呼ばれる緊急事態だ。

時間不足で、抜本策の合意は絶望視されている。よくても難問先送りの部分決着となりそうだ。それでも、何も決められず越年という最悪の結末だけは回避してもらいたい。不安心理が広がり、米経済だけでなく、株式市場などを通じて負の影響が世界に及びかねない。

期限間際にならないと交渉が妥結しないというのは珍しくないが、今回は明らかに、米国の「決められなくなった政治」を露呈した。

4年連続で「財政赤字1兆ドル超」という米国の現状をみれば、歳入増と歳出削減の両方が必要であることは明白だ。ところが民主党は歳出削減に抵抗し、共和党は増税そのものに拒絶反応を示し続けた。一律の歳出削減が自動的に発動されそうなのも、両党がこれまで均衡のとれた削減策をまとめられなかった結果だ。

増税については、中間所得層以下を巻き込まずに歳入増を図りたいオバマ大統領が、対象を年収25万ドル(約2100万円)超にする提案をした。「40万ドル超」まで譲歩する構えも見せたが、下院で多数派の共和党は、「100万ドル超」とした下院議長案すら受け入れなかった。

だが共和党にしても、財政の崖を迎えれば、全所得層が増税され、大統領案をのむより悪い結果となる。民主党も同じだ。「25万ドル超」を「50万ドル超」まで引き上げたとしても、歳入の差額は年210億ドル(約1兆7800億円)程度とされる。

妥協の余地はあるのに、政治的メンツと相手への不信感が妨げになり、崖っぷちまで追い込まれた。

崖から落ち、株価が急落するような混乱や批判を招いても、互いに相手のせいにするつもりなのだろう。しかし、そうした状況下で勝者など存在せず、米国民も世界経済もすべてが道連れになり被害を受ける。

交渉を年末ぎりぎりまでもつれこませた結果、すでに悪影響が米国の消費者心理などに表れている。政治対立をこれ以上続けた場合の代償は、経済面はもちろんだが、国民の政治不信や、世界における米国の地位低下にも及ぶだろう。自動的な歳出削減の半分は国防予算からなのだ。

両党の指導者間で妥協が成立しても、法案が両院を通るまで予断を許さない。先送りされた課題も残るだろう。米国民と世界が注視している。オバマ大統領も両党のすべての議員も、それを心してほしい。
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[毎日新聞] 社説:無償化見送り 排除にとどまらずに (2012年12月30日)

政府は高校無償化を朝鮮学校に適用しないことにした。民主党政権で棚上げ状態にされてきた懸案だった。ただ、これでこの問題は終わり、ではないはずだ。

高校無償化は、国全体で生徒の学びの機会を支えるための制度で、学校自体を援助するものではない。

下村博文文部科学相は不適用の理由で、北朝鮮による拉致問題に進展がないことや、朝鮮学校が朝鮮総連と教育内容、財政などで密接に関係していることを指摘し、このままでは国民の理解を得られないとした。

確かに北朝鮮は拉致問題解決に向けて誠意ある対応がみられず、ミサイル実験や核開発疑惑など、挑発的な示威行為も絶えない。

また教育内容でも、北朝鮮の独裁体制の礼賛や独善的な見方がみられ、問題があるとこれまでも指摘されてきた。こうした状況では無償化の対象にすることへの違和感や反対する意見も多く出よう。

だが、朝鮮学校に学ぶ生徒の大半は日本に生まれ育ち、将来も日本社会に生きる。教科学習も日本の高校に相当し、多くの大学は朝鮮学校卒業生に受験資格を認めてきた。高校のスポーツ競技でも交流は活発だ。

生徒それぞれの学びの機会を経済的に支える、という制度の理念に、朝鮮学校の生徒を一律に除外するのはそぐわない。

社会に根差した生徒たちを、単に排除的に扱うだけでは解決にはなるまい。他方、朝鮮学校や総連側も問題指摘には応えるべきで、社会の無理解があるというのならば、積極的な情報公開が必要である。

開放性と校内外の情報共有は今の学校教育のキーポイントだ。

その意味からいえば、前政権や文科省がこの問題についてどう審査し、判断していたか詳しく検証し、公開することも必要ではないか。

高校無償化は民主政権の目玉公約の一つとして2010年度にスタートした。「各種学校」である外国人学校は、日本の高校に相当する程度であることなどを大使館を通じて確認、制度適用の対象になる。

国交のない北朝鮮については専門家らの検討会議などで、適用対象である「専修学校高等課程」の要件を審査基準のベースにした。これでクリアするとも目されたが、北朝鮮による韓国砲撃事件で審査は止まり、結論は先送りになってきた。

例えば、審査基準に教育内容の是非は含まないが、文科省は内容に懸念される実態があれば、学校側に自主的な改善を強く求めるとしていた。それらはどうであったのか。

本来、生徒に罪や責任はない。単なる排除だけにとどまらない状況改善への模索を絶やすまい。
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[読売新聞] 2012回顧・世界 国際舞台の役者が出そろった(12月30日付・読売社説) (2012年12月30日)

2012年は、主要国で大統領選や指導部交代が相次いだ。

読売新聞の読者が選んだ「海外10大ニュース」にも、国際政治の大きな変化が読みとれる。

1位は、「米大統領選でオバマ氏が再選」だった。

多極化が進む世界とはいえ、経済力、軍事力で群を抜く米国は、依然として最も影響力がある超大国だ。民主党のオバマ大統領と共和党のロムニー候補の論戦は、世界中が注目した。

オバマ政権の最優先課題は、景気対策と財政再建の両立である。1期目で打ち出したアジア重視の外交戦略は、今後の日米関係を方向づけるだろう。

2位は、中国共産党のトップ交代だ。総書記に習近平氏が選出された。中国指導部への関心がかつてなく強いのは、尖閣諸島をめぐり、中国が日本に露骨な圧力を加えているからにほかならない。

日本の尖閣諸島国有化に抗議するデモが暴徒化し、日本企業に大きな損害を与えるなど、国交樹立40周年の日中関係に明るいニュースは乏しかった。

ロシアではプーチン首相が大統領の座に返り咲いた(6位)。アジアとの経済関係を強化し、国力向上を図ろうとしている。

年末の韓国大統領選(20位)で、朴槿恵氏が当選した。初の女性大統領と安倍首相が、日韓関係をどう改善するかを注視したい。

「指導者選び」の重圧を経た各国首脳には来年、内向きな発想を脱して諸課題に取り組み、国際協調を深めてもらいたい。

北朝鮮では、昨年死去した金正日総書記の後継として三男正恩氏が、朝鮮労働党第1書記に就任した(3位)。3代世襲の新体制を固めるように、4月と12月にミサイル発射を強行した。

北朝鮮が、国際的孤立を深めているのは大きな懸念材料だ。

ミャンマーは対照的に、テイン・セイン大統領が民主化を進め、国際社会との関係を修復した。野党指導者アウン・サン・スー・チー氏が議会補選で当選した(5位)のは象徴的だ。

欧州では、英エリザベス女王の即位60年の祝賀行事(4位)という明るい話題の一方で、財政・金融危機が長期化し、スペインがユーロ圏に金融支援を要請した(10位)。欧州経済の動向は来年も目が離せない。

シリアでは、アサド政権と反体制派の間の内戦が泥沼化した(8位)。「アラブの春」のうねりはなおも中東を揺るがしている。
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[読売新聞] 教育政策 高校無償化の見直しは妥当だ(12月30日付・読売社説) (2012年12月30日)

安倍首相が改革に意欲を見せる教育分野で、早くも独自のカラーを出したということだろう。

民主党政権が結論を先送りしてきた朝鮮学校に対する高校授業料の無償化適用について、安倍政権が適用を見送る方針を決定した。

その理由として、下村文部科学相は、日本人の拉致問題に進展がないことに加え、朝鮮学校の財務や教育内容が、北朝鮮と結びつきの強い在日本朝鮮人総連合会の影響下にある点を挙げている。

民主党政権下で策定された判断基準に沿って、文科省が審査を続けてきたが、これとは別に、安倍政権として判断したという。

無償化が適用されると、日本の高校にあたる「朝鮮高級学校」10校に、授業料分として年約2億円の就学支援金が支給される。

確かに、就学支援金が授業料以外に流用される恐れや、事実と異なる内容の教育が行われる懸念が払拭できない限り、国費投入に国民の理解は得られまい。

高校無償化に関しては、下村文科相が、2014年度以降、制度を見直し、対象に所得制限を設ける方針を明らかにしている。

高校無償化は「社会全体で子供を育てる」という理念を掲げた民主党政権の目玉政策の一つだった。だが、家計に余裕のある層まで一律に対象としたため、「ばらまき」との批判が根強かった。

高校生は授業料以外にも学用品購入費などの負担が多い。所得制限によって無償化の対象を絞り込むことで財源を捻出し、低所得者層の支援に活用するという安倍政権の考え方は理解できる。

教育分野で早急な対策が求められるのは、いじめ問題だ。

今夏以降、各地で深刻ないじめが表面化した。大津市でいじめを受けた男子中学生が自殺した事件では、元同級生3人が、暴行などの容疑や非行事実で書類送検や児童相談所送致となった。

相手を思いやる気持ちの欠如が、いじめを生んでいる。安倍政権が道徳教育の強化を打ち出したのは当然だ。学校の授業や地域での職場体験などを通じ、規範意識や公共性を育む必要がある。

「いじめ防止対策基本法」の制定も検討されている。法制化を通じて、「絶対にいじめを許さない」という意識を社会全体で共有する意義は大きい。自治体や学校に具体的な取り組みを促す効果も期待できるのではないか。

大津の事件で機能不全が露呈した教育委員会の在り方についても政府内で議論を進めてほしい。
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[朝日社説] 災害支援―人材バンクをつくろう (2012年12月30日)

のべ116万人。

東日本大震災でボランティアに赴いた人の数である。これは各地の窓口をへた人だけで、実際にはもっといる。

がれきを運ぶような力仕事だけではない。産業復興や情報発信。ノウハウのいる分野で活躍する長期ボランティアも多い。

いつどこを襲うとも知れない大災害に備え、そうした人たちの人材バンクをつくれないか。

この11月、宮城県南三陸町の漁協と県内の居酒屋チェーンが海産物の取引を始めた。

両者をつないだのは、震災直後から活動を続ける沖縄からの支援者。ボランティア仲間のつてをたどり、販路を見つけた。

町の災害ボランティアセンターでも、長期の支援者がホームページやセンターの運営に携わる。社会福祉協議会は、本来の業務を抱えながらセンターを営んでいる。外の力は大きい。

仮設住まいの人たちの心のケアなど、知識や経験をもつ人が長いこと支援してこそ効果が出る分野はほかにもある。

南三陸の猪又隆弘・災害ボランティアセンター長(54)は、こんな提案をしている。

センターを営んだ各地の社協から、力を発揮したボランティアを推薦してもらい、人材バンクをつくるべきだ。そうすれば、次に災害があったときすぐ派遣できる――。

被災地支援の経験者らをセンターに派遣して支える制度は、震災前からある。阪神大震災や中越地震をうけて、中央共同募金会が中心になってつくった。ただ、震災が大きすぎて十分な人材は送れなかった。

NPOや社協の人だけでなく今回活躍した個人ボランティアを含む幅広いネットワークを、新たにつくってはどうか。社会の共有財産になるだろう。

被災地で長く活躍するには、生活や仕事の心配をしなくてすむ環境が欠かせない。

現地で重宝され、本人も活動を続けたいが、会社の理解が得られない。生活費がもたない。そんな理由でやむなく帰ったボランティアもいる。

経団連によると、短期のボランティア休暇の制度は会員企業の半分以上がもっているが、月や年単位のボランティア休業制度があるのはまだ2割だ。

一方で、業務の扱いで社員を送り出した企業や、復興支援のNPOに社員を派遣した企業もある。被災地での経験は本業でも力になろう。意欲のある社員を制度で後押ししてほしい。

南海トラフや首都直下の巨大地震もいつか来る。東北の経験を共有すべきだ。
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[朝日社説] 警察不祥事―外部の力かりて再生を (2012年12月30日)

金をもらって暴力団関係者に捜査情報をもらす。署長が部下の窃盗をかくす。強盗強姦(ごうかん)事件の証拠をでっちあげる……。

いまや警察官の犯罪は珍しくない。残念なことに、そう思わせるこの1年だった。

際だつのは富山県警の54歳の警部補が逮捕された事件だ。2年前、知り合いの夫婦を殺し、証拠隠しに放火したという。

警部補は消費者金融に200万円ほどの借金があり、捜査情報を知人にもらした疑いももたれている。

平素は信頼が厚く、何度も幹部から表彰されていた。そんな警察官がなぜ凶行に走ったのか。上司らがこれまでの勤務の中で見落としていた予兆はなかったのか。徹底的に調べなくてはいけない。

6月までの半年間で懲戒免職になった警察官は31人にのぼる。警察改革の始まった2000年以降では最悪のペースだ。

警察改革は、警察を監督する国家公安委員会の指示で始まった。ストーカー殺人事件での埼玉県警の失態などを受けたものだ。「国民のための警察の確立」「警察行政の透明性の確保と自浄機能強化」を柱に再生に取り組んできたはずだった。

だが、不祥事は後を絶たない。免職以外の懲戒も含めると警察官の処分は、年間300人前後と高止まりの状態が続いている。自浄機能が強まったとはとても言えない。改革が不十分なのは明らかだ。

警察内部の力だけでは、再生はおぼつかない。この12年の足跡を見る限り、そう言わざるをえない。これを教訓に、今度は国家公安委に第三者機関を新たに設け、実効性のある改革をめざして知恵をしぼってもらったらどうだろう。

公安委員会の監察機能の強化も検討すべきだ。ここでも弁護士ら外部の識者を加えた監察制度の導入を考えてもらいたい。

もちろん、使命感にあふれ、仕事を地道に続ける警察官は多い。一線の警察官のモラルや使命感を高めるためにも、意欲のある者が報われる制度づくりが欠かせない。

警察組織では、いわゆるキャリア組と都道府県での採用組の間で、昇進の早さや条件などで大きな差がある。これが警察組織の士気にマイナスとなっていないか。組織の根っこから洗い直す必要がある。

社会の治安は、警察に頼るところが大きい。市民がそう期待しているからこそ、警察改革も真剣勝負でなくてはならない。来年こそ、立て直しの節目の年とすべきである。
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2012年12月29日

[東京新聞] 対中韓外交 着実に現実路線進めよ (2012年12月29日)

安倍政権の外交で取り組むべきは中国、韓国との関係修復だ。経済再生を第一に掲げるのなら、アジアの成長力を取り込む政策が必要になる。隣国との摩擦を拡大せず、協力体制を再構築したい。

安倍晋三首相はまず韓国との関係修復に動きだした。島根県・竹島(韓国名・独島)について、自民党の衆院選政策集では二月二十二日を「竹島の日」として祝う政府主催の式典を催すとしていたが、来年は見送る方針だ。

朴槿恵・次期大統領の就任式がその三日後に行われるため韓国側を刺激するのを避けたのだろう。賢明な判断だといえる。

早期に首脳会談を開き、竹島や歴史問題とともに、日中韓自由貿易協定(FTA)交渉の進展や北朝鮮の核、ミサイル開発への対応などを話し合うべきだ。

中国は沖縄県・尖閣諸島周辺の領海や領空への侵犯を繰り返す。安倍政権は海上保安庁の態勢強化を急ぐが、尖閣諸島に公務員を常駐させる案については「中国との交渉カードの一つ」との見解を示すなど、姿勢を軟化させた。

安倍首相は六年前の就任後、中国との「戦略的互恵関係」を掲げて、小泉政権で悪化した関係の改善に努めた。総選挙中は強硬発言が目立ったが、今回も現実路線を進もうとする姿勢がみてとれる。

政府は中国の海洋進出を警戒するオバマ米政権と緊密な協議を重ね、同時に習近平新指導部には、暴力的な反日デモを許さず、日本企業の投資環境を保証するよう強く求めたい。日中両国の緊張は、中国経済にとっても大きな損失になるからだ。

菅義偉官房長官は植民地支配と侵略を認めた村山富市元首相の談話を踏襲するとし、従軍慰安婦で旧日本軍の関与を認めた河野洋平元官房長官談話については、有識者会議での議論が必要だとしながらも、「政治、外交問題にはしない」と述べた。

二つの談話は歴代政権が継承してきた対アジア外交の基本理念である。見直しを明言すれば、中国や韓国との修復はまた遠のいてしまう。日本との同盟強化を目指す米国にしても、戦前の軍国主義への反省を無にするような歴史認識には厳しい批判があることを忘れてはならない。

固有の領土を守り安全保障体制を強化しながら、中韓両国とは共通の利益を模索して「右傾化」批判を避ける。現実主義に立脚した外交を展開していきたい。
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[東京新聞] 松井秀喜引退 ひたむきさ、貫いた (2012年12月29日)

多くの人々に愛され、また多くの人々を勇気づけてきた男が球場を去る。松井秀喜、引退表明。栄光も挫折も味わいつつ奮闘した強打者に、今後への期待もこめて惜別の拍手を送りたい。

日米双方の野球界にかつてない足跡を残した希代のスラッガーが現役引退を表明した。巨人時代は不動の四番として君臨し、米メジャーリーグではヤンキースを中心に、十年にわたって印象的な活躍を続けてきた松井秀喜選手。ここ二年ほどは度重なる故障に悩まされ、思うようなプレーができない状態だったが、それでも並みいるパワーヒッターの中で示した豪打の存在感は、メジャーに渡った日本選手の誰より大きかったといえる。

メジャーではシーズン百打点を四回。三十本塁打も記録した。とりわけ鮮烈な印象となって残ったのは、二〇〇九年のワールドシリーズでなし遂げたMVP獲得の快挙。長距離打者がそろうメジャーで中軸を打ち続けた実績は、日本野球の可能性を示すものとして長く歴史に残るだろう。

ただ、松井選手の魅力はバットマンとしての活躍にあるだけではない。ひたむきに努力を重ねて野球に取り組む姿。不運に遭ってもくさることなく、明るくさわやかにプレーする人柄。チームを第一に考える姿勢。いかにもスポーツマンらしいその人間味こそが一番の魅力だったのではないか。

誰もが一目置く大選手となってからも、試行錯誤を重ねて力を出し尽くそうとしてきた。人気球団のスターであっても、おごらず高ぶらず、誠実にファンと向き合ってきた。いわば人間・松井秀喜そのものが日米のファンを等しくひきつけてきたのだ。だからこそ多くの人々が松井を応援し、その奮闘に励まされてきたのである。

そんなひたむきさや誠実さ、てらいなく素朴に努力し続ける姿勢はまた、現代社会がしだいに失いつつあるもののようにも思える。われわれは松井選手の姿に、再び取り戻したいもの、なくさずに守っていきたいものの面影を見ていたのかもしれない。

三十八歳での引退はいささか早い。しかし彼にはこれからも期待がかかる。日米の野球を知り、双方のファンから愛された選手だ。となれば、問題が山積する日米野球界の関係を改善していく、またとない懸け橋ともなれるだろう。そして野球少年たちには、みなに愛された強打者の軌跡からさまざまなことを学んでほしい。
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[産経新聞] 回顧2012 領土を守り自信取り戻せ ものづくりで経済力回復を (2012/12/29)

日本を取り巻く国際環境がいかに厳しいかを思い知らされた1年だった。3年3カ月の民主党政権による内政・外交の迷走が最大の原因であり、それが国民の自信喪失に追い打ちをかけた。

これを見透かしたように、習近平新体制となった中国は東シナ海などへの海洋権益拡大の野心をむき出しにした。わが国固有の領土・尖閣諸島の上空を初めて中国機が領空侵犯し、周辺海域を含む公船の侵犯も常態化した。年末の衆院選で復帰した安倍晋三政権に託された使命と責任は大きい。

≪国旗奪われて何もせず≫

尖閣問題は、東京都知事だった石原慎太郎氏が「都で購入する」と表明した後、政府が慌てて国有化したが、実効統治強化に向けた措置を講じようとしなかった。

中国側は「領土問題では半歩も譲らない」(温家宝首相)と強硬姿勢を強め、中国国内で日本排撃の嵐が吹き荒れた。反日デモで暴徒化した群衆は日系企業やスーパーを襲った。丹羽宇一郎駐中国大使の公用車も襲われ、国旗が奪われたにもかかわらず、日本政府は抗議しただけだった。

日本領土への挑戦は、中国にとどまらなかった。ロシアのメドベージェフ首相が北方領土の国後島を再訪問し、韓国の李明博大統領も島根県・竹島に上陸した。北朝鮮は「衛星打ち上げ」と称して長距離弾道ミサイルを発射した。

日本が各国につけ込まれたのは野田佳彦政権が尖閣問題で「平穏かつ安定的な維持管理」を繰り返し、領海・領空侵犯にも明確な対抗措置を取らなかったことが大きい。抑止の源泉となるべき日米同盟は普天間飛行場移設問題が進展しないまま空洞化が進んだ。

国内で気がかりなのは、多くの国民が長引く経済の沈滞もあって自信を失ってしまったことだ。

企業の平成24年3月期決算で、電機大手のパナソニックが7721億円、ソニーが4566億円、シャープは3760億円と、いずれも過去最大の最終赤字を計上した。テレビ事業の不振が大きな理由だが、衝撃的な数字である。

日本は長く家電製品や自動車を輸出して稼いできた。だが、昨年3月の東日本大震災を機に、貿易収支は赤字に転じた。原発再稼働が困難となり、火力発電用の化石燃料の輸入が増え続けている。

笹子トンネル事故は、日本経済を支えてきたインフラの老朽化に警鐘を鳴らした。ものづくりこそ日本の経済力の中心であり、自信を取り戻さなければならない。

教育の荒廃も目立った。中2男子が自殺した大津市のいじめ問題は、暴行容疑などで同級生2人が書類送検、1人が児童相談所に送致された。生徒アンケートで「自殺の練習をさせられていた」などの回答も明らかにされ、教育をめぐる問題の深刻さが示された。

≪国民が結束するときだ≫

米大リーグで活躍し、ひたむきなプレーで日本人を元気づけてくれた松井秀喜選手が引退を表明した。同選手の引退は残念だが、スポーツや学術・文化の世界では明るい話題も多かった。

ロンドン夏季五輪で、日本は史上最多の38個(金7、銀14、銅17)のメダルを獲得した。

競泳男子平泳ぎの北島康介選手は3大会連続2冠の期待があったが、個人種目のメダル獲得はならなかった。その北島選手を「手ぶらで帰らせるわけにはいかない」と後輩らが勇み立った。メドレーリレーでチームが団結し、みごと銀メダルを獲得した。

人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製した山中伸弥京大教授が日本人2人目のノーベル医学・生理学賞を受賞した。山中氏は米国などとの競争に勝つため「オールジャパン体制で研究が必要」と訴えて、国の支援を得た。

山中教授は「日の丸の支援のおかげで日本が受賞した。世界の難病の方にメード・イン・ジャパンの薬を提供したい」と語ったが、国民が自信を取り戻し、日本を元気にするには全ての分野で「オールジャパン」のアプローチが有効だ。日本人は団結すれば、一人で出せない力を発揮する。

「再チャレンジ」を掲げて再登板した安倍首相率いる自公新政権にも、同じことがいえる。憲法改正や集団的自衛権の行使容認などの公約を掲げた新政権の課題は多く、震災復興にもスピードが求められる。今度こそ短命政権に終止符を打ち、日本再生を果たしてもらいたい。
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