2012年10月31日

[東京新聞] 個人情報流出 これでは不安は尽きぬ (2012年10月31日)

千葉県船橋市役所の非常勤職員が、報酬目当てに探偵に個人情報を漏らしていた。プライバシーが丸裸になるような情報漏れだ。政府は共通番号制を導入する構えだが、これでは不安は尽きない。

想像してほしい。あなたの知らないうちに、氏名、生年月日は言うに及ばず、離婚歴、納税状況などまでが見知らぬ他人の手に渡っていた場合の不安と恐怖を。

漏えいをそそのかしたのは、携帯電話の顧客情報

を転売した事件で

起訴された探偵で

ある。漏れた情報が犯罪にも悪用されかねないことは容易に想像できる。愛知県警が摘発した今回の事件は、氷山の一角であろう。

漏らしたのは、地方公務員法で守秘義務が定められた市の職員である。一件あたり数千円の報酬を得て、五年間も公然と役所内で業務外の不正照会をしていた。

船橋市では、パソコン端末への接続権限がある職員の認証コードを使い回していたという。迅速な市民サービスのためと言うが、何の言い訳にもならない。

二〇〇五年の個人情報保護法の施行以降、住民基本台帳も原則として閲覧できない。職務上知り得た秘密を守るべき役所として、情報管理や職員指導の甘さに猛省を促したい。

浜松市のように、市の個人情報保護条例で、個人情報の不正提供について、地方公務員法より重い罰則を定める自治体もある。事件の発覚で、政府が二〇一五年の運用開始を目指す共通番号制に、あらためて強い不安を覚える。

この制度では、国民に「マイナンバー」を割り振り、納税、年金、医療・介護など、国や自治体が別々に管理している情報を結びつけて一元管理する。

政府は、確定申告や年金受給で国民が便利になると強調する。だが、今回の事件を見ても、情報漏れの心配は、現実のものとして私たちの前にある。一元管理であれば、一つの情報が漏えいした時の被害はさらに大きくなる。

米国など似たような制度を導入している国は多い。

だが、番号の売買や

他人の番号悪用など

問題も後を絶たない。政府は独立した監視機関をつくるというが、安全の確保は完璧と言えるのだろうか。

共通番号制により、政府が国民の個人情報を握る一方、国家機密として国民からのアクセスを難しくするような動きがあることも見逃せない。何度でも立ち止まって考えるべきだ。
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[東京新聞] 追加金融緩和 いかにも中途半端だ (2012年10月31日)

日銀が二カ月続けて金融緩和を決めた。政府の財政出動が期待できない中で欧米並みの大胆な緩和が期待されたが、とても十分とはいえない。物価安定のインフレ目標を引き上げるべきだ。

大胆に十五兆円以上かと期待された資産買い入れ基金の増額は、中途半端な十一兆円−。「アリバイづくりではないか」と思えてしまう対策である。

日銀が異例の二カ月連続の追加緩和に踏み切ったのは、世界経済の減速に日中関係の悪化も加わり、景気と物価の先行き懸念が強まったためだ。政府の緊急経済対策に歩調を合わせ、強力な緩和策が待ち望まれていた。

それなのに出てきたのは、国債などの資産買い入れ基金の小幅増額と、金融機関の貸し出し増加を促す新たな基金創設である。「日銀も対策は打ってます」というような姿勢では、デフレからの脱却はもちろん、景気の下支え効果も期待できない。

日銀は同日、二〇一四年度までの物価見通しが0・8%上昇と、目標の1%には届かないと発表した。デフレはすでに十五年に及ぶが、この先も脱却への道筋が描けていないということだ。

今回の追加緩和で、資産買い入れ基金は九十一兆円になった。国債に加え、比較的リスクの高い上場投資信託(ETF)などの購入枠拡大も決めた。基金は一〇年十月の創設以来、小出しに規模を拡大してきた。だが基金以外のところで資金を絞っているため、基金の拡大ほど緩和はされていない。

これは欧米との比較でも明らかだ。リーマン・ショック後にどれだけマネーを供給したかをみると、欧州中央銀行(ECB)は約二倍に、米連邦準備制度理事会(FRB)は約三倍に増やしたが、日銀は横ばいに近い。短期間に強力な緩和を行った欧米との落差は顕著だ。やはり物価目標を現行の1%から、他国並みの2〜3%に引き上げるべきである。

日銀と政府は、デフレからの早期脱却に向け「一体となって最大限の努力を行う」とする共同文書を発表した。両者が政策目標を共有するのは当然であり、今更との感はあるが歓迎したい。政府が経済政策に沿ってインフレ目標を日銀に働きかけ、日銀がその政策手段を決め実行していく。

デフレの十五年は、政府が日銀の金融政策をそしり、日銀はアリバイづくりに終始した。そんな不毛な関係に終止符を打つことが第一歩になる。
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[産経新聞] 事務所費 前原氏の説明は不十分だ (2012/10/31)

前原誠司国家戦略担当相は説明責任を果たしたといえるのか。

政治団体「まえはら誠司東京後援会」が、東京都内の秘書の自宅マンションを「主たる事務所」として届け出、7年間で事務所費や人件費、光熱水費など計1200万円超の経常経費を実体がないのに計上していたと指摘されていることだ。

前原氏は「実体はあった」と強調しながら、具体的な根拠は示していない。問題にほおかぶりしているとしかいえない。国会での野党の追及は必至だが、自ら説明責任を果たすよう求めたい。

国会議員の事務所費問題は、これまでも数多く表面化しており、閣僚の辞任に発展した例は少なくない。これを前原氏が知らないはずはないだろう。

しかも、前原氏は在日外国人から献金を受けていたことで、昨年3月に外相を辞任している。

前原氏は、この秘書が都内で毎年開く政治資金パーティーを担当しており、「年1回のパーティーにコストをかけない」ため、秘書の自宅を事務所にしたなどと説明している。

一方、パーティー券の大半は東京で販売しているが、印刷や発送などは京都市の事務所に委託したという。このパーティーの開催に、都内の事務所がそもそも存在する必要があるのだろうか。

事務所費問題が問われてきたのは、実体のない事務所の経費を計上することが、政治資金規正法上の虚偽記載にあたる可能性があるからだ。

安倍晋三内閣では、当時の赤城徳彦農林水産相や佐田玄一郎規制改革担当相が、親族宅などに置いた事務所の実体がないことを否定できず、辞任に追い込まれた。

厳しく追及したのは、当時はまだ野党の民主党だった。藤村修官房長官は、前原氏に事実関係を確認することなどは「考えてもいない」と述べている。与野党が入れ替わり、政府・民主党としては前原氏の件を不問にして押し通すつもりのように見える。政権への信頼は失われる一方である。

平成19年の規正法改正により、国会議員の政治団体の経常経費について1万円超は領収書や内訳をつけることが義務づけられた。ただ、人件費の内訳の詳細は公表から除かれたままとなっている。政治資金の透明性を高めるため、与野党はもっと努力すべきだ。
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[産経新聞] 追加金融緩和 なぜ円高是正踏み込まぬ (2012/10/31)

日銀が9月に続き金融緩和に踏み切った。金融機関の不良債権問題で信用不安が日本を覆った平成15年以来の2カ月連続の金融緩和である。

日本経済の現状は厳しさを増す一方だ。欧州債務危機の長期化、中国経済の急減速などの海外情勢の悪化と円高で輸出が減少し、生産鈍化などにつながっている。

日銀も30日公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、今年度の物価見通しを7月時点の0・2%上昇から一転、0・1%のマイナスとし、デフレ状態が継続すると判断した。

この状況を踏まえると日銀が打った手は十分とはいえない。何より、日銀が日本経済最大の重しである円高にどう対応しようとしているかが見えない。

今回日銀は、市場に資金を流すために国債などの資産を買い取る基金を11兆円増やし、株価指数に連動する上場投資信託を買い増すことを決めた。金融機関の貸し出しを促すため、貸し出し増加分については低利で無制限に貸し付ける新たな仕組みも作る。だが、これらは従来の政策の延長であり、企業などの資金需要が落ち込む今、その効果も不透明だ。

歴史的高水準にある円相場は実体経済を反映していない。これが輸入品価格を押し下げ、デフレ要因になっている。国内の輸出産業、とりわけ中小企業に打撃を与えているのはいうまでもない。

円高是正の観点からいえば、日銀による外国債券の購入も積極的に検討すべきだ。円を売って発行国通貨を買うことになり、円安を誘う効果がある。これに対し、日銀も財務省も、外債購入は日銀法が認めない外国為替市場安定目的の金融政策になるとして難色を示している。

ただ、日銀の外国為替の売買自体は可能であり、資金供給手段として基金で外債購入できるとの解釈もある。これを財務省が容認すれば、政府・日銀が一体となって円高是正に取り組む意思を市場に見せることにもなろう。

両者は今回、デフレ脱却で最大限協力し合うとした共同文書も公表している。先の先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で日本は円高是正への理解を求め、異論は出なかったという。日銀に今、求められるのは円高是正への強い意思を明確に掲げ、それを形にすることだ。
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[毎日新聞] 社説:日銀また緩和 数値至上主義に陥るな (2012年10月31日)

先月に続き、日銀がまた大幅な追加金融緩和を決めた。2カ月連続の緩和はリーマン・ショック後の歴史的混乱期でさえなかった異例の対応だ。確かに景気の減速懸念が強まってきてはいるが、わずか1カ月余りで、資産買い入れ基金を11兆円も上積みしなければならなかった経済的理由がわからない。

しかも、今回もまた政策委員会(9人で構成)の全会一致による決定だ。会合には、政府代表として前原誠司経済財政担当相が「強力な金融緩和を求めることを前提に意見を述べたい」として臨んだ。会合終了と同時に、日銀の白川方明総裁、前原氏、城島光力財務相の連名による文書が発表され、日銀は「引き続き(インフレ率)1%を目指し強力に金融緩和を推進していく」と確約させられた形だ。政策委員会の各委員が真に独立した立場で判断しているのか、疑問を持たずにはいられない。

今回の追加緩和の背景には、日銀が同時に公表した経済や物価の見通し(展望リポート)が芳しくなかったことがあろう。12、13年度の実質経済成長率や消費者物価指数の伸び率は軒並み下方修正となった。

今回初めて予測対象となり注目された14年度については、実質成長率が0・6%、消費者物価指数の伸び率(消費税の影響を除く)が0・8%にとどまった。0・8%は、日銀が目指す1%に遠くはないものの、厳密には届いていない。

このため、インフレ予測が1%を明確に超えるまで日銀への緩和圧力が続く恐れがある。だが、過度に特定の数値にとらわれることは、政策決定の自由度や機動性を奪ってしまう。効果や弊害の点検が軽視される危険もはらむ。日銀にとっても日本経済にとっても利益にならない。

数値至上主義的な機運は、消費増税を阻止しようとする勢力の後押しにもなりそうだ。14年度は消費税が5%から8%に引き上げられる年だ。実施の最終判断は、約半年前に内閣が行うが、政策目標である「名目3%、実質2%」の成長率や「物価の1%上昇」を増税条件として厳格に適用するよう求める声が強まりそうな気配がある。

金融政策は目標を掲げつつも、その時その時の総合判断で最善とされる決定を下さねばならない。経済がグローバル化した今日は、なおさら複合的な議論が求められる。

白川総裁は今春の講演で「経済を管理することは、人間とその感情を巻き込んだ複雑なシステムである以上、科学ではなくアートであり続けるだろう」と述べ、機械的ルールにとらわれることを戒めていた。

残念だが今の日銀の金融政策にアートは感じられない。
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[毎日新聞] 社説:東電事件再審 検察の謝罪姿勢に疑問 (2012年10月31日)

こんな謝罪では「公益の代表者」の看板が泣くというものだ。

97年に起きた東京電力女性社員殺害事件で再審開始決定を受けたゴビンダ・プラサド・マイナリさんの再審公判。検察は「別人が犯人の可能性を否定できない」と、有罪主張を引っ込めて無罪を求めた。来月7日の判決で無罪が言い渡され、確定するのは確実だ。

マイナリさんは異国の地で15年も身柄を拘束され、自由を奪われた。それにもかかわらず検察は法廷で謝罪せず、閉廷後に東京高検次席検事がコメントを出した。

科学捜査の進展が主張を変えた理由だとしたうえで、「検察官が殊更に証拠を隠したなどの事実も認められず、その捜査・公判活動に特段の問題はなかった」「結果としてマイナリ氏を犯人として長期間身柄拘束したことについては、誠に申し訳なく思っている」としている。

釈明と併せて読むと、謝罪も大いに色あせる。そもそも捜査や公判に問題がないとする検察の主張は到底納得できない。

1審で無罪判決が出たように証拠は万全でなかった。2審の無期懲役判決が最高裁で確定した後、マイナリさんは05年、再審請求をした。弁護側が証拠開示を求めたのに対し、検察は被害女性の体内にあった精液を長く出し渋っていた。

そして、鑑定の結果、別人のDNA型が昨年検出された。東京高裁が6月、「殺害は別人の疑いがある」として再審開始決定を出した後も、検察は異議申し立てをして有罪にこだわった。

結局、追加鑑定した被害女性の爪の付着物からも別人のDNA型が検出された。この鑑定も長く弁護団が求めていたものだった。「有罪」の見立てにこだわり、ご都合主義的に証拠を出したり鑑定を繰り返したりした揚げ句、白旗をあげた格好だ。

DNA型鑑定の精度は日々向上している。速やかな証拠開示と鑑定があれば、マイナリさんはもっと早く塀の外に出られたはずだ。

検察不祥事を受けて定めた「検察の理念」では、自己の名誉や評価を目的として行動しないことや、謙虚な姿勢を保つべきことをうたっている。その意識が徹底されているのか疑問だ。このままでは、過ちを認めたがらない検察の体質は改まっていないと非難されても仕方ない。

もちろん、再審無罪に至るまでの司法の責任は検察だけでない。当初の警察の捜査や、無罪判決を覆した確定審の裁判所の判断など、教訓を酌みとるべきことは少なくない。弁護団は第三者による徹底的な検証を求めている。その要請に応える道を探らねばならない。
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[読売新聞] 追加金融緩和 政府・日銀は効果的な連携を(10月31日付・読売社説) (2012年10月31日)

デフレ脱却を目指し、政府・日銀が連携を強化する姿勢を明確にした。肝心なのは効果的な政策の実行である。

日銀が国債などを買い入れる基金を11兆円上積みし、91兆円とする追加金融緩和策を決めた。貸し出しを増やした銀行に、日銀が低利で資金供給する新制度も打ち出した。総額に上限を設けず、手厚く供給するという。

海外経済の減速や日中関係の悪化の影響で、景気は冷え込み始めた。腰折れを防ぐため、日銀が2か月連続で追加策に踏み切ったのは妥当な判断と言えよう。

基金を積み増す従来の手法では企業などに資金が十分に行き渡らない。新制度によって貸し出しが増加することに期待したい。

政府・日銀がデフレ脱却に向けて「一体となって最大限の努力を行う」という、初めての共同文書も発表した。

金融政策決定会合に出席した前原経済財政相は記者会見で、「重要な一歩になる」と強調した。政府・日銀の協調を「かけ声倒れ」に終わらせないことが大切だ。

日銀が新制度を含む追加策に動いた背景には、「2014年度以降、遠からず」としていたデフレ脱却の時期が遅れることへの危機感があるのだろう。

日銀が追加策とあわせて発表した14年度の物価上昇率の見込みは「0・8%」で、デフレ脱却のメドとなる「1%」を下回った。

14年4月には消費税率が8%に引き上げられる予定である。社会保障・税一体改革に支障の出ないよう、政策を総動員し、デフレ脱却を急がねばならない。

政府や与野党には、円高是正を目指した外債購入や、インフレ目標の導入などを日銀に求める声もある。政府と日銀がさらに論議を深めることが求められる。

人口減少や潜在成長率の低下、産業空洞化など、構造問題への対応は主として政府の役割である。先週に閣議決定された小規模な緊急経済対策では全く不十分だ。

介護・医療や環境などの成長分野で新産業を育成し、雇用の創出も加速させてもらいたい。

安全を確認できた原子力発電所を再稼働して電力の安定供給を図り、経済再生を後押しする態勢を整える必要もある。

何より、今年度当初予算の財源を確保する特例公債法案の成立を急ぐべきだ。国庫が底をつき、行政機能が停止すれば、急激なデフレ圧力で日本経済は致命的な打撃を受ける。こうした混乱は回避しなければならない。
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[読売新聞] 高齢者の医療費 「世代間格差」の改善が必要だ(10月31日付・読売社説) (2012年10月31日)

高齢化で膨らむ医療費の負担を世代間で公平にすることが急務だ。

政府の財政制度等審議会が、70〜74歳の医療費の窓口負担を1割に抑える特例措置を廃止し、法律の規定通り2割負担にすべきだとの見解で一致した。財務相に近く措置の見直しを提言する。

医療費の大半を賄う現役世代の負担が過重になるのを防ぐため、高齢者に応分の負担を求めることはやむを得ない。

後期高齢者医療制度が始まった2008年、医療機関で払う窓口負担は70〜74歳がそれまでの1割から2割に、75歳以上は従来通り1割とすると法律で決まった。

だが、当時の自公政権は国民の反発を恐れ、70〜74歳の負担を1割に抑える特例措置を決めた。

民主党政権も継続している。

この結果、1人当たりの平均収入に占める患者負担割合は、65〜69歳の3・8%、75歳以上の4・6%に対し、70〜74歳は2・4%と、格段に低い。歪(ひず)みが広がっていると言えよう。

三井厚生労働相は、この問題について、記者会見で、特例措置の見直しに慎重な姿勢を示した。次期衆院選を控えて、高齢者に新たに負担を求めることは避けたいからだろう。

だが、特例措置を維持するため、毎年約2000億円の国費が投入されている。財政赤字を拡大させる要因になっており、そのツケは将来世代へ回ることになる。

高齢世代は、若い世代に比べて、税や保険料の負担を上回る年金や医療サービスを受けることができる。窓口負担の特例措置は、世代間の格差も助長するものだ。

やはり、特例措置を見直し、負担の引き上げを決断すべきだ。政府は、負担を引き上げる場合は、今後70歳になる人から順次行い、既に70歳を超えた人は対象にしないことを検討している。

日本人の外来受診回数は、英米を大きく上回り、医療費の増加や医師不足につながっている。窓口負担の引き上げで、不要不急の受診を防ぐ効果も期待できよう。

無論、症状が重く、通院を減らせない人もいる。その場合には、75歳未満であっても、75歳以上が対象の後期高齢者医療制度に移行し、負担を抑える仕組みを活用してはどうか。

一方、公的年金も、本来より高い給付水準に据え置く特例措置により、過払いになっているという問題もある。医療、年金財源の負担を将来世代に先送りし続けることは、もうやめるべきである。
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[朝日社説] 追加金融緩和―政治不況を起こすな (2012年10月31日)

景気の急速な冷え込みを防ぐため、日本銀行が2カ月連続で追加の金融緩和を決めた。

政府と日銀が一体でデフレ脱却に取り組むという異例の共同声明も出した。

だが、一連の動きを見ると、政治が自らの機能停止のツケを日銀に押し付けているとしか思えない。特例公債法案の成立など、政治が責任を果たすことが先決だ。

今回の緩和では、国債や上場投信など計11兆円を買い増す。単に資金を積み上げても景気への効果が見通せないため、銀行が企業への新規融資を行う資金を超低利で供給する仕組みも新たに設けた。

ただ、企業に資金をいくら押し込もうとしても、実体経済の側に資金需要を生むような事業の盛り上がりが生まれなければ効き目がない。

政府による規制や制度の改革が不可欠だ。むろん民間の努力は重要だが、経営環境の展望が開けなければ、民間が動こうにも動けない分野も多い。

金融緩和だけでは、「何もせず景気回復を待つ」という現状維持の心理を助長し、民間経済を沈滞させかねない。

政府・日銀の共同声明は、こんな懸念を意識してのことかも知れない。政府はデフレを生みやすい経済構造の改革に政策を動員するという。

決意表明は大いに結構だ。しかし、現下の政治はこれを素直に受け取れるような状態ではない。機能停止にとどまらず、むしろ自ら不況をつくりだしつつあるといっていい。

臨時国会は始まったものの、特例公債法案は成立のめどが立っておらず、歳出抑制の動きが広がる。米国で不安視される「財政の崖」の日本版を自らつくり、解散するか否かのチキンレースに励んでいる。

さすがに機関投資家の間では不安が広がっている。12月に国債発行が停止になった場合、たとえ後から法案が通って発行が再開されたとしても、「だんご発行」になる恐れがある。

となると、市場で消化しきれず、歴史的な高値相場が変調をきたし、金利が急騰しかねない――。もっともな懸念だ。

そんな危機を覆い隠そうとばかりに、政府、与野党はこぞって日銀に緩和圧力をかけた。

予算の資金繰りすら始末をつけられない政治が、中央銀行に物申すことで何か一仕事しているかように振る舞うのは、まことに見苦しい光景だ。

政治不況は起こさない。政府と与野党はまずこの一点から良識を取り戻してほしい。
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[朝日社説] 電力値上げ―当座しのぎではダメだ (2012年10月31日)

原発への依存度が高い関西電力をはじめ、電力各社が値上げを検討している。

原発の代わりに動かしている火力発電の燃料費がかさんでいるためだ。

火力への依存が高まることによる当面のコスト増は、ある程度、利用者全体で広く薄く負担するのもやむをえまい。

しかし、それも電力会社が先々の電力供給や経営のあり方を真剣に見直したうえでの話である。それなくして、値上げには説得力がない。

原発への新しい安全基準は、来年7月をめどに原子力規制委員会がまとめる。追加的な対策をとるのが難しく、稼働が認められない原発も出るだろう。

運転寿命を40年とする規制を厳格に適用する方針は、すでに示されている。大飯原発など、活断層の存在が懸念される原発もいくつかある。

こうした危ない原発、古い原発から閉めていくことになる。

廃炉には多額の費用がかかるが、まだ十分に引当金を積めていないところが少なくない。

そうした状況を考えれば、経営戦略を早急に切り替えなければならない。

事業を見直し、経営の無駄をとりのぞく。安全対策費がかさみ、維持だけでお金がかかりすぎるなら、自ら原発を閉める選択肢もある。

世界一高いとされる液化天然ガス(LNG)の購入費も、政府の支援などを得ながら調達先を広げるなどして下げていく必要がある。

効率のいい新型火力や自然エネルギーなど、新たな電源を確保する。利用者に省エネ・節電を促す新しいビジネスを活用していく。やるべきことは、山ほどある。

ところが、各社の発言を聞いていると、まだ全ての原発の存続を前提に、当座をしのぐ策ばかり練っているようだ。

政府・与野党も、エネルギー産業の構造改革に向けて早く議論を深め、電力会社が自ら脱原発へと動くような枠組みを講じていくべきだ。

実際に値上げ申請となれば、少なくとも家庭向けの料金については、公認会計士など専門家による査定を受ける。

消費者庁も別途、検証の場を設けるだろう。どちらも広く公開される見込みだ。

原発依存からの脱却へ経営を切り替えているか――。コスト負担を引き受けるうえで、注意深く点検する必要がある。

「燃料代が上がったので」という説明だけなら、とうてい納得できない。
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2012年10月30日

[東京新聞] 東電女性再審 “暗黒司法”そのものだ (2012年10月30日)

東京電力の女性社員殺害事件で、無罪となるネパール人男性の再審公判は、司法界の“暗黒”を物語る。検察も裁判所も過ちを検証せねばならない。真犯人の追及にも本腰で取り組むべきだ。

再審の公判で「無罪」と主張したのは、検察側だ。弁護側はずっと無実を訴えてきた。これで結審し、ネパール人男性の無罪は確実だが、もっと早く冤罪(えんざい)から救済できなかったか悔やまれる。

昨年夏に被害者の体内から採取された精液のDNA型鑑定の結果が出た。男性とは別人の「X」のもので、しかも殺害現場にあった体毛の型と一致していた。この時点でも、検察は“撤退”が可能だったはずだ。ところが、今年六月に再審開始決定が出ても、検察側は異議を申し立てていた。

検察が白旗を揚げる決め手になったのは、女性の爪に残っていた付着物をDNA型鑑定したところ、やはり「X」のものだったことだ。被害者と最後に接触したのは「X」である可能性が濃厚になった。爪の付着物は、被害者の激しい抵抗の痕跡かもしれない。

だが、弁護側が爪に着目して、鑑定書を求めたのは二〇〇七年である。検察は裁判所に促されても、「鑑定書はない」「爪からは何も検出されていない」などと、虚偽に近い不誠実な姿勢だった。最後まで有罪にこだわり続けた検察の態度は非難に値する。

有罪を確定させた裁判所も問題だ。一審は「無罪」だった。「別人が犯行現場の部屋を使った可能性がある」「精液の入った避妊具は、事件当日に使用したと断定できない」などと、新しい鑑定技術がなくとも、男性を犯人とすることに疑いを持ったのだ。

ところが、二審はわずか四カ月のスピード審理で「逆転有罪」となった。なぜ一審が下した“赤信号”を素通りし、最高裁まで追認したのか。さまざまな証拠が「X」が真犯人だと指し示しているような現在、裁判所はどのような弁解をするのだろうか。

当初からネパール人男性を犯人だと決めつけた捜査に問題があるのは間違いない。重要物証をDNA型鑑定しなかったのも致命的だ。被告人に有利な証拠も得られるよう、全面証拠開示の必要性も、この事件は訴えている。

司法が「暗黒」と呼ばれないためには、他にも冤罪が潜んでいないか、早急にチェックすることだ。もはや正義に奉仕すべき司法の倫理さえ問われている。
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[東京新聞] 臨時国会始まる 政権延命こそ政治空白 (2012年10月30日)

臨時国会が召集され、野田佳彦首相が所信表明演説を行った。もはや野田内閣が居座る限り、政治空白は続く。与野党は衆院解散・総選挙に向けた環境整備を急ぎ、速やかに国民の信を問うべきだ。

振り返れば、八月十日に民主党の二〇〇九年衆院選マニフェストに違反する消費税率引き上げが強行成立した後、日本の政治はどれほど前進したといえるのだろう。

この間、野田内閣の第三次改造や安倍晋三自民党総裁誕生に伴う顔触れの変化はあったにせよ、政治課題での進展は見られない。むしろ、原発ゼロ政策の「後退」や復興予算流用、日中関係悪化など失政が目に余る。

財源の四割を占める赤字国債を発行する公債発行特例法案や、最高裁に違憲状態と指摘された衆院「一票の格差」を是正する法案は喫緊の課題とされたにもかかわらず、与野党に歩み寄る兆しがないのはどうしたことか。

背景には解散時期をめぐる与野党対立がある。首相は所信表明で「やみくもに政治空白をつくり、政策に停滞をもたらすようなことがあってはならない」と述べた。

野党側が「ねじれ」国会で法的根拠のない問責決議を乱発し、いたずらに政局を混乱させるようなことは厳に慎むべきではある。しかし、首相は自ら懸案処理にどれだけの汗をかいたというのか。

民主党の苦戦が予想される次期衆院選をできるだけ先延ばしするため、喫緊の課題処理をも放置してきたのではないか。首相が政権延命を図り、居座りを続けることこそが政治空白になっている事実から目を背けてはならない。

消費税増税という議会制度の成り立ちにもかかわる最重要課題での公約違反が強行された以上、野田内閣は速やかに総辞職するか、衆院解散に踏み切るべきである。

その環境を整えるためにも、前提となる格差是正法案と公債法案の成立に与野党が協力し、首相はその先頭に立たねばならない。

所信表明と各党代表質問は、この臨時国会では衆院だけで行われる。憲政史上初の異常事態だという。

先の通常国会で首相問責決議が可決された参院で野党が開催を拒んだためだが、野党側に今、必要なのは積極的に論戦に挑んで野田内閣の問題点を厳しく追及し、懸案処理を急ぐことではないか。

首相が解散時期をいたずらに先延ばしできなくなるような環境を野党側が整えることが、結果的に政治を前に進めることになる。
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[産経新聞] 首相所信表明 「明日への責任」は解散だ (2012/10/30)

野田佳彦首相の所信表明演説は、現下の政治課題を列挙しただけで、政権がこれから何に、どう取り組もうとしているのかが見えない。

首相は「明日への責任」を繰り返し、経済対策や東日本大震災の復興、社会保障制度改革国民会議の設置など、懸案を先送りしない「決断する政治」の重要性を強調した。だが、実現の具体策を明示できないようでは、政権を担う正当性や資格に疑念を持たざるを得ない。

政権延命のためだけに首相の座にしがみつくのなら、無責任の極みだ。一刻も早く解散・総選挙を行うことこそ、野田首相が掲げる「決断する政治」であり、「明日への責任」の取り方である。

驚いたのは、尖閣諸島の国有化後、初の国会であるのに「尖閣」という言葉が一度も出てこなかったことだ。中国公船が領海侵犯を繰り返すなど尖閣をめぐる危機は緊迫度を増している。

首相は「領土・領海を守るという国家としての当然の責務を、国際法に従って、不退転の決意で果たす」と述べた。だが、国民が聞きたいのは、一般論ではない。国難にどう備え、いかに立ち向かうかの具体策だ。国民に理解と覚悟を求めることこそ、最高指導者としての責務ではないのか。

尖閣を守る上で最重要の日米同盟についても、米兵による集団暴行事件への批判や沖縄の基地負担軽減などにとどまった。首相の持論である集団的自衛権の行使容認など、同盟深化に向けた意気込みをなぜ語らないのか。

島根県竹島への韓国の不法占拠についても、一切触れなかった。中韓両国を刺激しないことが問題解決の近道と思っているのであれば、大きな間違いだ。

首相は「現下の最大の課題」として経済再生を挙げた。だが、処方箋には抽象論が並び、日中関係の冷え込みなど具体的な懸案にどう対応するかは示していない。

臨時国会の焦点である特例公債法案や衆院の「一票の格差」是正についても、「『政局』第一の不毛な党派対立の政治」と野党側を批判するだけで、事態を打開しようという意欲が感じられない。

所信表明演説からも、野田政権に諸課題をやりこなすエネルギーが残っているとは思えない。国政の停滞を避けるためにも、首相は「近いうちに信を問う」という約束から逃げてはならない。
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[産経新聞] 道交法改正提言 成立急ぎ悲劇繰り返すな (2012/10/30)

警察庁の有識者検討会は、てんかんなど車の運転に支障を及ぼす可能性がある病状の虚偽申告に対して罰則を新設することなどを盛り込んだ提言書をまとめた。

提言を踏まえた道交法改正案は、来年の通常国会にも提出される。悲劇を繰り返さないためにも成立を急ぎ、より安全な社会をつくりたい。

提言のきっかけとなったのは、昨年4月、栃木県鹿沼市で起きた悲惨な事故だ。クレーン車を運転していた男がてんかんの発作を起こし、小学生の列に突っ込んで6人が死亡した。その後も同様の事故が後を絶たない。

てんかん患者の運転免許の取得は、平成14年施行の改正道交法で可能となった。「今後発作が起きる恐れがない」という医師の診断などを条件にしているが、現行法には、無申告や虚偽申告に対する罰則はない。クレーン車事故の運転手も、免許取得の際に持病のてんかんを隠していた。

提言では、「運転に支障を及ぼす症状を虚偽申告した場合には罰則が必要」とした上で、患者の情報について「医師が任意で都道府県の公安委員会に届け出る仕組みも必要」とした。症状が改善した患者が免許を再取得する際には、技能、学科試験を免除する負担軽減策の導入にも言及している。

てんかん患者は全国で約100万人を数える。適切な治療や投薬で発作を抑えることができる人がほとんどだという。

実際に正しい手順で申告して運転免許を取得し、安全に運転を続けている患者も多い。提言は、そうした患者らを偏見から守るためのものでもある。

鹿沼市の事故の遺族らは、医師に対して事故を引き起こす可能性の高い患者の通報を義務とすることも求めていた。

提言は義務化には踏み込まず、任意の届け出にとどめたが、道交法の改正後、一定期間の検証を経て、より事故防止に実効性ある制度を目指す努力を続けたい。

遺族らはまた、虚偽申告で免許を取得した患者が事故を起こした場合には、より罰則の重い危険運転致死傷罪を適用するように、刑法の改正も求めている。

危険運転致死傷罪は酒酔い、薬物使用での運転を主な対象としているが、厳罰の適用範囲を拡大して悲惨な事故の未然防止につなげることも必要だ。
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[毎日新聞] 社説:波乱の臨時国会 眼前の2課題に全力を (2012年10月30日)

臨時国会が召集され、野田佳彦首相による所信表明演説が行われた。衆院解散をめぐる攻防が早くも激化している。参院では首相演説が行われず、衆院のみという憲政史上初の異常な幕開けとなった。

「近いうちに」衆院を解散するとの約束実現を野党に迫られる中、首相演説は民意を問う覚悟から遠い内容だった。一方で与野党が解散時期の駆け引きだけに明け暮れることは子どもじみている。目の前にある課題の決着にまずは集中してほしい。

衆院補選に自民が辛勝した直後の召集だ。「安倍自民」がどう国会論戦にのぞむかがさっそく試されるが、参院はさきの首相問責決議を理由に本会議開催を参院自民党など野党側が拒み、演説が行われなかった。参院自らが存在意義を否定するような、職責放棄の愚行である。

首相演説もピントはずれだった。国会が一日も早く解決すべきなのは違憲状態の衆院「1票の格差」緊急是正と特例公債法案の処理である。

ところが首相は1票の格差について演説で後半に簡単にふれた程度で、しかも難しい定数削減問題と合わせての結論を説くにとどまった。

首相は格差是正後の新たな区割りでなくとも衆院解散は可能だと説明している。だが、たとえ次の選挙に区割り改定が間に合わなくとも、最低限の法的措置は講じないと衆院解散は難しいのが現実だろう。「0増5減」の緊急是正の先行になぜ、踏み込まないのか。

赤字国債を発行するための特例公債法案について自民党内には柔軟論も浮上しているようだ。1票の格差とただちに同時決着させれば年内解散もなお、不可能ではあるまい。

首相演説からは消費増税法成立を受けた野田内閣の次の目標や、来る衆院選に民主党が何を掲げようとしているかも伝わらなかった。

エネルギー政策は「原発に依存しない社会の実現に向けて大きく政策を転換」とうたいながら「不断の検証と見直し」も強調し、結局どちらをみているかがよくわからない。積み残された課題である社会保障の全体像を首相がどう考えているかも語られずじまいである。

首相は演説で持論の「中庸」を説き、「極論の先に真の解決はない」と語った。いわゆる「第三極」へのあてこすりかもしれないが、中庸とは決して足して2で割るような妥協を意味する言葉ではない。政策の中身を具体的に示すべきだ。

放置し続けた「1票の格差」「特例公債法案」を一日も早く決着させ、国民の審判に足る材料を示すことが与野党の役割だ。1年以内に必ず衆院選は行われる。逃げ腰の演説と、演説拒否ではさみしすぎる。
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[毎日新聞] 社説:地域主権と福祉 誰のための分権か (2012年10月30日)

施設での管理された集団生活よりも、街の中の家庭的な雰囲気の家で暮らしたい。お年寄りや障害者のそんな思いを実現しようとグループホームは生まれた。わが国では病院や施設での収容型福祉がまだまだ根強いが、それでもグループホームは着実に増えてきた。

ところが、病院や入所施設の敷地内に建物を新築し、それもグループホームとして認めようという動きがある。それは病院や施設の「別棟」に過ぎず、「街の中で」というグループホームの理念と矛盾するのではないか。福祉関係者からの批判は強いが、兵庫県、岐阜県、神戸市などは立地条件を緩和し、病院・施設の敷地内も可能とする条例案をまとめた。どうしてこのような事態になったのかというと、地域主権改革一括法で福祉施設の設置・管理基準に関する自治体の裁量が広く認められるようになったからだ。

居室の広さから廊下の幅まで国が全国一律に規制するよりも、地域の実情や住民の希望に沿って自治体ごとに造る方がいいのは間違いない。問題は、誰の希望に沿っているのかという点だ。「病院や施設と連携しやすいので利用者の安心や利便性の面で優れている」という自治体の意見もあるが、経営者にとって効率的な運用ができるというのが本音だろう。街の中ではいまだに周辺住民から建設反対運動が起きたりする点も挙げられよう。

しかし、積極的に取り組んでいる自治体や施設の中には、懸念する住民を丁寧に説得し、経営や人事管理面も工夫しながら、お年寄りや障害者の希望に沿って努力している所も増えてきた。千葉県船橋市は経営者の都合より利用者の住み心地のよさを優先して、むしろ以前よりも厳しい基準を策定しようとしている。同市内には重度の障害者を街中のグループホームで多数受け入れてきた社会福祉法人もある。

誰のための地域主権改革なのか。病院や施設の経営者のためか、高齢者や障害者のためか、そこが問われている。地方分権を進めながらも福祉の質をどのように確保していくのかは先進諸国が直面している問題でもある。住民が自治体の福祉への関心を高めることが何よりも重要だが、十分な情報や分析・評価がなければ住民も判断できないだろう。

イギリスはケアの質などを評価する独立機関を設置し、業績改善が認められた自治体には補助金の使途の自由度を高めたり、監査の回数を減らしたりするなどの優遇措置が取られている。地方分権を進めながら福祉サービスの質を確保するためには、こうした自治体の取り組み意欲を高める工夫があってもいい。
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[読売新聞] 首相所信表明 戦略見えない「明日への責任」(10月30日付・読売社説) (2012年10月30日)

「明日への責任」を掲げる以上、その言葉に見合う政策と実現への戦略を示す必要がある。

臨時国会が召集され、野田首相は衆院本会議で所信表明演説を行った。

だが、社会保障・税一体改革に続く政治課題として何を最優先に取り組むのかが見えてこない。

首相は、「決断する政治」の実現を強調し、デフレ脱却と超円高を克服する経済再生を「現下最大の課題」と位置づけた。

そうであれば、自由貿易の拡大でアジアの成長を取り込む環太平洋経済連携協定(TPP)への参加が、手段として欠かせない。今回の演説でも「推進する」と言うだけで、交渉参加を正式に表明していないのはなぜなのか。

民主党から離党者が出ることや農業団体の反発を懸念しているのだろうが、内向きの守りの姿勢では、日本の活路は開けまい。

来月6日の米大統領選後、米豪など11か国による交渉が本格化する。来年にかけて、日本抜きで貿易と投資のルールが決まることになりかねない。日本が交渉に参加を表明することは急務である。

次期衆院選の政権公約(マニフェスト)作成に向けて、TPPに慎重な自民党との違いを打ち出すことにもなるはずだ。

エネルギー政策について首相は、2030年代に原子力発電所の「稼働ゼロ」を目指す「革新的エネルギー・環境戦略」を踏まえて遂行すると主張した。

しかし、「原発ゼロ」への具体的な道筋は不透明だ。電力の安定供給が揺らぐだけでなく、電気料金値上げや産業空洞化など国民生活への深刻な打撃が予想される。原子力の分野で優秀な人材を確保することも困難となろう。

政府は「原発ゼロ」方針を撤回し、現実的な原発・エネルギー政策を策定し直すべきである。

主権・領土の問題に関しては、「国家として当然の責務を不退転の決意で果たす」と述べただけだ。対中・韓・露外交をどう立て直すのか、具体策を聞きたい。

問題なのは、首相が自民、公明両党の党首から協力を得られず、状況打開への戦略を欠いたまま、国会が始まったことである。

赤字国債の発行を可能にする特例公債法案や衆院選挙制度改革の関連法案の成立には、何ら見通しが立っていない。

「政局第一の不毛な党派対立の政治」と野党を批判するだけでは、政治は前に動かない。政府・与党が責任ある提案を行い、野党との接点を探るのが筋だろう。
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[読売新聞] 演説拒否の参院 不要論を加速させる愚行だ(10月30日付・読売社説) (2012年10月30日)

戦後初の事態である。

憲政史上に汚点を残す愚行と言うほかない。

野田首相の所信表明演説が衆院本会議だけで行われた。参院では、多数を占める野党が、本会議開会に応じなかったためだ。

所信表明演説は、首相が外交、内政にわたって基本方針を示す重要な機会だ。これを受けて与野党の代表質問で論戦が本格化するのが国会の慣例となっている。

参院の自民、公明両党などは、先の通常国会で野田首相問責決議を可決した以上、首相を本会議場に迎えられないと主張する。「参院の意思で所信表明を求めなかった。審議拒否ではない」と釈明するが、こんな詭弁(きべん)は通らない。

過去に問責された福田、麻生両首相は結果的に次の国会審議前に退陣した。問責された首相が次の国会に臨むのは初めてとなる。

野党は、問責決議に伴う審議拒否戦術という悪弊を断ち、不毛な応酬に終止符を打つべきだ。

そもそも、参院の問責決議は、衆院の内閣不信任決議と違って、法的な拘束力はない。首相は参院に対し、衆院解散のような対抗手段がなく、衆院の優越を定めた憲法の理念にも反するからだ。

6年間の安定した任期がある参院に首相を辞任させる手立てが認められないのは当然である。

理解し難いのは自民党だ。

この問責決議は、消費増税法が「国民の声に背く」ことを理由に挙げたが、自民党は民自公3党合意に基づいて法案に賛成し、成立させた当事者である。自己否定する決議を今国会でも振りかざす理不尽さには唖然(あぜん)とさせられる。

衆参ねじれ国会では、野党の制する参院が再三、権限を乱用し、国会を混乱させてきた。与党として参院に苦しめられた自民、公明両党が野党転落後、意趣返しを繰り返しているのは嘆かわしい。

一方で、参院は予算委員会を開催する方向だ。閣僚の不祥事を追及するとともに、首相の出席を求めて田中慶秋前法相を起用した任命責任をただすためだという。

それが事実ならば、本会議での首相演説を拒否したこととの整合性をどう説明するのか。

しかも、参院は、他の委員会での政府提出法案審議は原則、拒否するとしている。政権復帰を目指す自民党までが、このようなご都合主義で、ちぐはぐな国会対応を採用するつもりなのか。

参院が「政争の府」に堕するようでは、ねじれ国会の下でくすぶる「不要論」が加速するのは避けられないだろう。
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[朝日社説] 臨時国会開幕―報復の連鎖を断ち切れ (2012年10月30日)

異常な幕開けである。

きのう、臨時国会が召集され、衆院本会議で野田首相の所信表明演説があった。

ところが、参院はこれを拒否し、各党の代表質問も行わないという。憲政史上、例のない事態である。

参院は先の通常国会で首相の問責決議を可決した。だから首相の発言は聞くに値しない。自民党など野党側が、そう唱えたためだ。

政権にどんな問題があろうとも、あくまで審議を通じてただしていく。それが国会の役割ではないのか。怠慢というほかはない。

自民党としては、野党が多数を握る参院で野田政権を揺さぶり、衆院の早期解散を迫るのがねらいだろう。

だが、予算執行に不可欠な赤字国債発行法案や、衆院の一票の格差是正の「0増5減」法案などの処理は喫緊の課題だ。

参院自民党には、ただちに審議に応じるよう強く求める。でなければ、参院不要論に火をつけ、結局は自分たちの首をしめることになる。

そもそも「ねじれ国会」が続くなか、参院が政権の命運を左右するほどの力をふるうことが、今回の異常事態を招いたともいえる。

問責決議を理由に審議を拒んだり、重要法案を人質にとったりするのでは、政治の混迷は深まるばかりだ。

首相は、所信表明演説で赤字国債法案を駆け引きに使う悪弊を「ここで断ち切ろう」と訴えた。私たちも同感だ。

赤字国債発行法案は予算と一体で成立させる。問責を決議しても審議には応じる。

そんな慣例やルールをつくり、政治を前に進める。臨時国会では、そのことに与野党あげて取り組むべきだ。

一方、首相も野党に求めるだけでなく、譲るべきは譲らねばならない。

足元の民主党の惨状は目を覆うばかりだ。

28日の衆院鹿児島3区補選では、民主党推薦の候補が自民党前職に敗れた。離党者も止まらず、きのう新たに2人の衆院議員が離党届を提出し、単独過半数割れまで3議席となる。

政権に、難局を打開する力が残っていないことは明らかだ。

自民、公明に再度の党首会談を呼びかけ、解散時期についてより踏み込むなどして、協力を求める。そして互いに報復し合う連鎖を断ち切り、政治を動かす道筋をつける。

それこそが、野田政権の仕事ではないか。
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[朝日社説] 再審無罪へ―15年の検証が必要だ (2012年10月30日)

事件が突きつけた課題にどう向きあい、信頼回復につなげるか。刑事司法にかかわるすべての人の姿勢が問われている。

東京電力の女性社員が15年前に殺された事件のやり直し裁判は、検察側が「被告を有罪とは認められない」との意見を述べて、ただちに結審した。

現場に落ちていた体毛、被害者の体内に残された体液、そして爪の付着物。この三つから、被告ではない人物のDNA型が検出された。いったん無期懲役が確定した被告に、来月7日、無罪が言い渡される。

6月の再審開始の判断は、最初の二つの鑑定結果が大きな根拠になった。逆転をねらった検察は8月に爪の鑑定を嘱託。これが、当の検察に誤りを認めさせる決定打となった。

だれもがおかしいと思うだろう。弁護側は5年以上前から、「爪に犯人の皮膚片などがついている可能性がある」として、鑑定を求めていたのだ。

このほかにも検察には、証拠隠しと批判されて当然の振る舞いがあった。こうした背信行為をゆるさない仕組みを、急ぎ整えなくてはならない。

ところが検察は、捜査や公判を検証する考えはないという。とんでもない話だ。少なくともこの間の証拠開示に関する姿勢は、国民の理解を得られるものではない。「公益の代表者」として恥じる点はないと、本気で思っているのか。

郵便不正事件など一連の不祥事で検察の信頼は地に落ちた。組織をあげての改革を口にするが、実態はこのありさまだ。体面を重んじ、批判をきらう独善的な体質は改まっていない。

裁判所も問われる。東京高裁は、一審の無罪判決が指摘した重大な疑問点の解明をおきざりにしたまま、逆転有罪を言い渡した。この高裁判決は、多くの刑事裁判官に「緻密(ちみつ)に事実を認定している」と受けとめられ、最高裁も支持した。

なぜ誤判に至ったのかを解明し、教訓を共有しなければならない。もちろん、その方法は慎重な検討が必要だ。政治的な思惑が紛れこんだりすると、「裁判官の独立」が脅かされ、将来に禍根を残しかねない。

だがそうした懸念を口実に、この問題から逃げてしまっては不信は深まるばかりだ。

いまは、ふつうの人が裁判員として有罪無罪の判断にかかわる。つまり、間違えれば市民が冤罪(えんざい)の加害者になる時代だ。

無実の人を罪に落とさない。それは、これまでにも増して、重大で切実な社会の課題であることを忘れてはならない。
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