2012年05月31日

[東京新聞] 名張事件・抗告 試されるのは最高裁だ (2012年5月31日)

八十六歳の死刑囚が再び、最高裁に判断を仰いだ。半世紀も前の名張毒ぶどう酒事件。再検証は容易でない。最高裁は「疑わしきは被告人の利益に」の原則に則(のっと)り、自ら速やかに判示すべきだ。

「裁判所には罪を犯した者は逃してはならないというような気持ちが根底に強くあるのではないだろうか」。最高裁の元判事が自身の著作で、そう書いている。

最高裁に身を置いた人ですら、日本の司法は無実の人を罰してしまうことへの恐れよりも、国の治安の安定を優先していると感じたのだろう。

日本の裁判は有罪率が99%を超える。まして確定判決を見直し、裁判をやり直す再審の扉は重い。三審制が四審、五審となってしまうからだ。

最高裁も古くは「無罪とすべき明らかな新証拠がない限り再審は認めない」という態度だった。だが「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則は再審でも適用されるという「白鳥決定」を出した。

新証拠を出すのは前提だが、他の証拠と総合的に評価して、確定判決の事実認定に合理的な疑いを生じさせれば足りるとした。

先週、奥西勝死刑囚の再審を認めなかった名古屋高裁の決定は、再審可否の審理とはいえ、毒物の科学鑑定に終始し、この肝心な刑事裁判の基本をおろそかにしたきらいなしとはいえなかった。

事件は半世紀も前のことだ。証人や捜査関係者には亡くなった人も多く、検証不能の事柄は多々ある。当初の裁判をみても、一審と二審の判決はほぼ同じ証拠を見て無罪と死刑に分かれた。

冤罪(えんざい)とは国家の罪である。裁判所が誤判をすれば、司法の信用は失墜し、何より被告の人格人生を粉々に打ち砕いてしまう。

英国の有名な法格言は「十人の真犯人を逃がしても、一人の無辜(むこ)の人間を罰してはならない」と述べる。神ならぬ身の人間が冤罪を生まないために学んだ経験的な知恵である。

それとは逆の考えが日本の司法には、なお根強いのだろうか。下級審が「上」に異を唱えにくい雰囲気でもあるのか。最高裁は今度こそ自判すべきである。

高齢の死刑囚は拘置所の外の病院で病に苦しんでいる。もし獄中死のような結末を迎えるのなら、司法は、その役割を放棄したにも等しい。ましてや裁判員時代である。この死刑囚を裁く司法こそが今、試されているのだ。
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[東京新聞] 野田・小沢会談 増税の免罪符にするな (2012年5月31日)

野田佳彦首相と小沢一郎民主党元代表との会談は、消費税増税をめぐり平行線に終わった。首相はこれを機に、増税に向かって突き進むつもりなのか。会談を増税の免罪符にされたら、かなわない。

輿石東幹事長を交えた会談は約一時間半に及んだ。野田、小沢両氏がこれほどじっくり相対するのは、まれな機会ではないか。

首相は、今の国会(延長がなければ会期は六月二十一日まで)での成立に「政治生命を懸ける」と言明した消費税増税について「財政状況や少子高齢化の問題を考えれば、待ったなしだ」と協力を要請した。

これに対し、小沢氏は「国民に大きな税負担を求める前に政権としてやるべきことがある。消費税増税に今、賛成とはいかない」と行政・社会保障改革、デフレ対策を先行させるべきだと反論した。

予想された展開だった。財政状況に対する危機感はわれわれも首相と共有するが、小沢氏の発言を正論と考えるのが妥当だろう。

二〇〇九年衆院選で国民が民主党に政権を託したのは、中央集権から地域主権、官僚主導から政治主導へと行政の仕組みを変え、行政の無駄を徹底的になくして財源を捻出するというマニフェストを信頼したからにほかならない。

にもかかわらず、行政改革は中途半端に終わり、マニフェストに一行もない消費税増税を民主党政権の手で強行したのでは、国民をだましたとの批判は免れない。

首相は今後の対応について、記者団に「今回の会談を反すうしながら考えていきたい」と語った。

小沢氏の指摘を受け、首相が消費税増税を一時棚上げし、行政の無駄排除に本気で取り組んだり、社会保障制度の抜本改革に乗り出すのなら、会談にも意義がある。

しかし、協力を求めたが平行線に終わったことを免罪符に、消費税増税に向けた動きを加速させるのなら納得いかない。会談は単なるアリバイづくりでしかない。

同じく消費税10%への増税を掲げてきた自民党の谷垣禎一総裁は首相に対し、小沢氏を切り捨てるのなら、増税法案に賛成する意向を重ねて示している。

百人を超えるとみられる小沢氏支持グループが反対しても、自民党などの賛成で増税法案は成立するという誘い水だ。

小沢氏を切って増税のために自民党と組むのか。政権交代の大義に従うのか。首相には大きな岐路だろうが、国民の負託の意味を熟考した決断をすべきである。
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[産経新聞] 原子力規制 原発潰しの道具にするな (2012/05/31)

原子力発電の新しい規制組織を設置するための法案審議が国会で始まった。原発の安全性向上だけでなく、国のエネルギー安全保障を左右する組織である。国民は規制と活用の両面を冷静に見極めることが肝要だ。

国会では2案が審議されている。政府による「原子力規制庁設置関連法案」と自民、公明両党の「原子力規制委員会設置法案」だ。

両法案に一長一短はあるのだが、厳格度でみれば、自公案の方がより強い。民主党が野党時代に主張していた原子力安全規制への取り組みを、今回の法案では現実路線に戻しているのに対し、自公案は、かつての民主党案に近いものとなっているからだ。

その最たる部分が規制組織の性格だ。政府案は原子力規制庁を環境省の外局としている。これに対し、自公案では国家行政組織法第3条に基づく高い独立性が付与された原子力規制委員会だ。

規制組織の独立性が高ければ、原発の運用サイドにいる経済産業省などの圧力に対抗することが可能になろう。しかしその半面、危うさも生じる。

5人の委員で構成される原子力規制委員会は、メンバーの人選次第では、極端な規制や「原発潰し」に向かって走りかねないからだ。そうなれば、誰も規制の暴走の手綱を締められない。

規制組織は、安全性の確保と向上を大前提として原発の利活用の遂行を確認するのが、本来のあり方のはずである。脱原発至上主義のための規制装置としてしまう愚は、何としても避けたい。

現在の原子力安全・保安院の破綻は、誰の目にも明らかだ。新たな規制組織を設置しなければ、関西電力の大飯3、4号機をはじめとする原発再稼働問題も解決しない。ストレステスト(耐性検査)の審査も前に進まない。

9月には国際原子力機関(IAEA)の総会が開かれる。そのとき規制の新組織が発足していない事態となれば、日本の危機管理能力の欠如を世界に露呈してしまうことになる。

野田佳彦首相は「国民の不安に応えるためにも新たな組織の下で規制制度、防災体制を整えることが急務」としている。だが、法案成立を急ぐあまり、自公案を丸のみにするような拙速に走ってはならない。地震国での原発利用には健全な規制精神が必要だ。
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[産経新聞] 野田首相 公約撤回なぜ打ち出さぬ (2012/05/31)

消費税増税をめぐる野田佳彦首相と小沢一郎元民主党代表との会談は、首相からの関連法案成立への協力要請を小沢氏が「大増税の前にやることがある」と拒み、物別れに終わった。

大方の予想通りの展開だ。首相は「かなり率直な天下国家の議論ができた」などと意義も強調したが、危機感が足りないというしかない。

よりよい社会保障と税の一体改革を実現するには、首相は自民党との法案修正協議の進展に全力を挙げるほかない。前提となるのは、民主党マニフェスト(政権公約)の抜本的な見直しだ。

その点、会談で首相の姿勢は曖昧だった。政策転換を明確に打ち出して協議への道を切り開くしかないのに、「乾坤一擲(けんこんいってき)」の必死さはうかがえなかった。

小沢氏は消費税増税に反対する理由として、行政改革や地方分権、社会保障制度改革への取り組みが不十分だと指摘した。デフレ脱却なども挙げたが、根本にはマニフェストが一向に実現しないことへの不満があるのだろう。

だが、行政の仕組みを変えて無駄をなくし16・8兆円の財源を生み出すとの主張は、小沢氏が幹事長を務めた鳩山由紀夫政権の時点で破綻した。その後も、ばらまき政策を全面的に見直さなかったことが大混乱につながっている。

小沢氏は年金制度改革や後期高齢者医療を挙げて「われわれのビジョンは忘れ去られようとしている」とも指摘した。最低保障年金の導入や後期高齢者医療の廃止を貫くべきだとの意味だろうが、莫大(ばくだい)な費用を要し、社会保障費の無原則な増大につながる。

首相はマニフェストについて「これまで以上に取り組みを進める」と答えたが、これで与野党協議の環境が整うのか。小沢氏と折り合うなら、与野党協議は望めない。首相が再会談を明言しなかったのは当然だ。

小沢氏は「消費税率引き上げ自体には反対でない」と語った。平成5年の著書「日本改造計画」で消費税10%を打ち出し、翌年に当時の細川護煕首相と7%の国民福祉税構想を進めた経緯もある。

首相は小沢氏が現時点の増税に反対している点を「時間軸の違い」と述べた。最も重要な政策で大きな食い違いを与党内に残したままで、法案を成立させることなどできるのだろうか。
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[毎日新聞] 社説:円・人民元取引 アジア通貨の国際化へ (2012年05月31日)

円と中国の通貨、人民元の直接取引が1日、東京と上海で始まり、従来のようにドルを介在させなくても交換できるようになる。経済交流の拡大に沿った当然の流れだ。2国間の貿易や投資をより活発化させるとともに、円と人民元の国際通貨としての地位向上につなげたい。

直接交換でまず期待できるのは、取引コストの低下だ。日中間の貿易額は、年間27兆円を超え、過去10年で2.5倍に膨らんだ。中国に進出した日本企業も2万2000社以上と、日中は互いに欠かせない経済パートナーになっている。ところが、通貨の交換は大半がドル経由だ。円をドルに替え、それを元に替えるといった手間を省けたら、手数料や為替変動のリスクを軽減できる。

ただし、恩恵を受けるには前提条件がある。直接、貿易に関わる業者だけでなく、多くの投資家が利用する厚みある市場の形成だ。円と元の為替市場に加え、元建ての債券が発行・売買される市場などを併せて東京に築いていく必要がある。それは日本にとって大きなビジネスチャンスでもある。

だが、手ごわいライバルがいる。成長が期待される人民元取引には各国の関心が高い。中国当局が、これまで強力に規制してきた元の国際取引を徐々に自由化させているからだ。まずは香港が自由化の受け皿市場になっているが、ロンドンやシンガポールもその地位を狙っている。

特にロンドンは、国際金融都市としての優位性や香港との歴史的つながりをテコに、中国国外における主力人民元市場になろうと積極的だ。主導役を担っているのが民間の金融機関である点に注目したい。

円と元の直接交換は政府間合意の結果だが、市場の発展には民間の主体性が欠かせない。貿易や企業進出など金融外の分野で中国と強いつながりを持つ日本の強みを生かした商品・サービスの発案が求められる。

それと連動し、中国政府には、人民元相場の柔軟な変動や金融に関する規制緩和など、一段の改革を促していかねばならない。さらに問われるのは、国際金融市場としての東京、そして国際通貨としての円の魅力をどこまで高められるか、だろう。人民元が国際通貨に成長することは望ましいが、一方で円の取引が地盤沈下していくようではだめだ。

中国政府は人民元の利用拡大に力を入れ始めた。中国での元建て決済が貿易総額に占める割合は10年初めの0.4%から2年後の今年初め、11%まで上昇している。

日本も、アジア全域で円がより広範に使われるよう、官民で努力を重ねる必要がある。改革を競い合う日中であってほしい。
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[毎日新聞] 社説:元代表と平行線 首相、早く見切りを (2012年05月31日)

もはや時間稼ぎなど許されない。消費増税法案をめぐり野田佳彦首相と民主党の小沢一郎元代表が会談した。首相の増税法案への協力要請を元代表は拒み、物別れに終わった。

元代表は首相から再会談の要請があれば応じる考えを示したが、接点を見いだすことは難しい。首相は再会談について「もう一回反すうしながら考えたい」と述べ、歯切れが悪かった。成算なき党内融和に見切りをつけ、自民党との協議に専念すべき時だ。

「乾坤一擲(けんこんいってき)、一期一会のつもりで説明したい」。首相はこんな大見えをきって、元代表との会談にのぞんだ。その言葉は重いはずだ。

増税法案は民主党で長時間議論した末に了承された。にもかかわらず決定後も公然と反対論が出ることを首相は事実上、黙認してきた。党内融和重視の輿石東幹事長の路線を尊重したためだろう。

役職を持たぬ元代表との会談をわざわざ輿石氏が仲介し大仰に行うこと自体、おかしな話だ。それでも元代表は党内で多くの議員に影響力を持ち、その動向は終盤国会を左右し得るのが現実だ。首相が会談に動いたことをいちがいに否定はしない。

だが、行革の徹底や経済情勢など「そもそも論」を展開し「今は賛成できない」と説く元代表と、増税を「待ったなし」とする首相の隔たりはやはり明白だ。

首相が融和にこだわるほど、今国会成立に政治生命を懸けるとの覚悟が本物か、野党は疑念を募らせる。法案の先送りを内心で望む多くの民主党議員は不毛な駆け引きが長引き、時間切れになることを期待しているはずだ。首相が尻込みしていてはそれこそ「乾坤一擲」が泣く。

一方で、元代表も言動に責任を負うべきだ。確かに現内閣の政策は09年衆院選の民主党マニフェストから乖離(かいり)しており、首相はそれを国民に率直にわびる必要がある。

だが、増税が党の方針となり、政権の最大課題である以上、従わないのであれば党を離れる覚悟を持つべきだ。首相が衆院解散に踏み切れないと高をくくっての内部抗争であれば、昨年6月の菅内閣不信任騒動とほぼ同じ構図である。

社会保障について自民は有識者会議で具体策を協議する対案の骨子をまとめた。最低保障年金の扱いに苦慮する民主への助け舟ともいえるが、首相が協議に捨て身でのぞむ姿勢を示さなくては、足元をみられよう。

首相は昨年の代表選で「ノーサイド」と語り、内紛の終結を説いた。しかし、今や「キックオフ」も辞さぬ覚悟が必要だ。衆院で法案採決をするかどうかの局面が迫る中、無為に時間を費やすことは愚策である。
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[読売新聞] 野田・小沢会談 「もう一度」は時間の浪費だ(5月31日付・読売社説) (2012年5月31日)

議論は、予想通り平行線だった。野田首相は増税反対派に妥協せず、社会保障と税の一体改革を着実に進めるべきだ。

首相が民主党の小沢一郎元代表と会談し、消費税率引き上げ関連法案の成立への協力を要請した。「社会保障と財政の状況を踏まえれば、一体改革は待ったなしだ」と迫った。

小沢氏は、「増税前にやるべきことがある」と従来の姿勢を崩さず、法案に賛成できないと明言した。さらに、「行政改革による無駄の排除」「社会保障の理念の後退」「デフレ脱却が途上」の3点を主張したという。

双方の主張を吟味すれば、明らかに大義は野田首相にある。

消費税率引き上げは昨秋以降、党代表選や一体改革関連法案の了承などの党内手続きをきちんと経ている。少子高齢化に伴って社会保障費が増大する中、増税先送りは財政を一段と悪化させよう。

小沢氏の「増税前にやるべきことがある」との主張は、改革先送りのための常套(じょうとう)句に過ぎない。行革やデフレ脱却の重要性は、党内論議で何度も確認されている。

小沢氏は、「政権公約(マニフェスト)の原点を忘れるな」とも言う。だが、小沢氏が主導したマニフェストは、予算組み替えによる年16・8兆円の財源捻出など非現実的で、民主党政権に「負の遺産」を背負わせたのが実態だ。

衆参ねじれ国会の下、野党の協力が不可欠な中で、あえて実現不可能な公約を持ち出すのは、「反対のための反対」である。

首相と小沢氏の会談を仲介し、同席もした輿石幹事長は、「党内融和」を優先しており、再会談の可能性を否定していない。

しかし、合意する見込みがないのに、何度も同様の会談を繰り返すことには意味があるまい。

関連法案の成立には、自民、公明など野党との法案の修正協議が欠かせない。自民党は「小沢氏との決別」を協力の条件の一つに掲げている。再会談が与野党協議の妨げとなるのなら、いずれ会談打ち切りを決断する必要がある。

野田首相は、関連法案採決時の党内からの造反について「党として対応する」と語り、処分を辞さない構えだ。一体改革に「政治生命を懸ける」と言明している以上、今国会での法案成立を最優先すべきで、安易な妥協は禁物だ。

自民党が社会保障制度改革基本法案の骨子をまとめるなど、一体改革をめぐる与野党協議の機運は徐々に高まってきている。この機を逃してはならない。
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[読売新聞] 原子力規制組織 緊急時には首相指示が要る(5月31日付・読売社説) (2012年5月31日)

原子力規制行政を担う組織はどうあるべきか。与野党が知恵を出し、緊急事態にも迅速に対応できる体制を整えなければならない。

「原子力規制庁」を環境省の外局として設置する政府提出法案と、より独立性の強い「原子力規制委員会」を設ける自民、公明両党案の審議が、ようやく衆院で始まった。

経済産業省の原子力安全・保安院に代わる新組織の発足は、当初予定した4月1日から大幅に遅れている。野田首相が「一日も早く規制制度と防災体制を整えるのが急務」と強調したのは当然だ。

政府・与党は、自公案を大筋で受け入れる姿勢をみせている。衆参ねじれ国会の下、規制行政を早急に立て直すには野党の協力が欠かせないとの判断だろう。

だが、自公案には問題が少なくない。原子力規制委は5人の専門家で構成される。公正取引委員会のように、首相や他の府省の指示を受けず、独立して規制行政を担う仕組みだ。

自民党は、保安院を「独立性が欠如し、安全を軽んじてきた」と批判し、東京電力福島第一原発事故を防げなかった失態を繰り返してはならないとしている。

ただ、一刻の猶予も許されない災害対応の際、合議制を原則とする原子力規制委で、スピーディーに意思決定できるかどうか。自公案が緊急時のルール作りを規制委に委ね、具体的に定めていない点は詰めが甘い。

しかも、規制委のメンバーは国会同意人事だ。時に政治的妥協で選ばれることになると、必ずしも適任者がそろうとは限らない。

政府の体制にも課題がある。

自公案によると、原子炉への対応策は規制委が所管し、住民避難や自衛隊の派遣などは首相を長とする原子力災害対策本部が担当するという。役割を分断し、首相が電力会社に関しても指示できるとする現行規定を廃止する。

これに対し、野田首相が「危機管理上の最後の手段」として首相の指示権を残す必要性を指摘したことは理解できる。細野原発相も「国家の命運を誰に託すかということだ」と強調した。

菅前首相が行ったような電力会社への過剰な介入は論外だが、規制委の専門家に任せきりにするわけにはいくまい。

自公両党内には、政府の主張に理解を示す声もある。未曽有の原発事故の教訓を生かせるよう、与野党が譲り合い、実効性のある組織にしてもらいたい。
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[朝日社説] 野田首相へ―自民との協調が優先だ (2012年5月31日)

野田首相が民主党の小沢一郎元代表と約1時間半会談し、消費増税への協力を要請した。

だが、小沢氏は「大増税の前にやるべきことがある」と、今国会での法案成立に反対する姿勢を明確にした。

平行線だった会談結果をみるにつけても、首相には「一党員との会談」より優先すべきことがあるのは明らかだ。

政権交代から2年9カ月。「動かない、決められない」惨状が続く政治を前に動かす。

そのために、譲るべきは譲って、野党、とりわけ最大野党の自民党に、法案の修正合意を真摯(しんし)に働きかけることだ。

「社会保障は世代間の公平を確保しなければならない。財政も厳しい。(消費増税は)待ったなし。ぜひご協力を」。会談で、首相が小沢氏に説いた危機意識は私たちも共有する。

社会保障と税の一体改革という、国の将来像に直結するテーマである。「挙党一致」「党内融和」が可能なら、それに越したことはないと私たちも思う。

これに対し、小沢氏は政権交代が実現した09年総選挙のマニフェストの柱を並べて反論した。「統治の仕組みを大改革し、ムダを徹底的に省いた財源を、新しい政策の財源にする。その約束が緒についていない」

確かに、民主党のマニフェストは破綻(はたん)状態にある。

だが、マニフェストが実行できていないからといって、増税にも、社会保障の改革にも手をつけてはならないといわんばかりの主張は暴論にすぎる。

民主党政権がなぜ、政治を動かせないのか。一歩ずつでも、できることを積み上げていく。そんな着実な政治の営みが欠けていたのではなかったか。

これまでの国会審議で印象深かったのは、10%への消費増税だけでなく、厚生・共済年金の一元化、年金の受給資格期間の短縮など、2大政党の主張に差のない政策が多いことだ。

民主党では、法案を採決すれば小沢氏が党を割りかねない、と継続審議や会期の大幅延長による採決先送り論も出ている。だが、それでは「決められない政治」が続くだけだ。

会期末まであと3週間。審議を尽くし、与野党で一定の合意ができた法案は粛々と採決して成立させる必要がある。

合意できない政策は、有識者をまじえた「国民会議」で話し合う。そんな自民党の提案を首相は受け入れるべきだ。

そうして政治を進めた結果、小沢氏が民主党とたもとを分かつというなら仕方がない。首相はもはや腹をくくるときだ。
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[朝日社説] 大飯再稼働―これでは不信ぬぐえぬ (2012年5月31日)

野田政権が関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を事実上、決めた。再稼働に反対してきた関西広域連合が30日、「限定的なものとして適切な判断」をするよう求めたことで、理解が得られたと判断した。

私たちは、見切り発車のように原発を再稼働させることに反対してきた。原発の安全性確保をめぐる状況に、大きな変化があったわけではない。野田政権の判断に強い疑問を抱かざるをえない。

私たちが再稼働の判断で最も重視したのは、福島の事故を踏まえた安全基準や防災対策の見直しであり、「想定外」のことが起きても減災をはかる危機対応の整備だった。

なにより、脱原発への道筋を明確にし、「必要な数しか動かさない」政策への転換を示すことが不可欠だと指摘してきた。

ところが、野田政権が進めたのは、ストレステストの後、付け焼き刃ともいえる暫定的な安全基準を原子力安全・保安院にまとめさせ、専門家の評価なしに政治判断で再稼働に踏み出すことだった。

政権から脱原発依存に向けた具体策は示されていない。「なし崩し的に原発を動かそうとしているのではないか」。国民の不信はぬぐえないままだ。

こうした問題点を厳しく指摘してきた関西広域連合が30日になって、姿勢を転換したのにも首をかしげる。

関西広域連合の会合に出席した細野原発相は、原子力規制庁の設置法案が国会で審議入りしたことを踏まえ、「規制庁発足後、大飯を含め新たな安全基準で再度精査する」と説明した。

であれば、大飯を稼働させるにしても、あくまでこの夏に限定した措置とし、電力需要が一段落したところで再度停止することを明言すべきだ。

加えて、運転開始からすでに40年を超える敦賀1号機や美浜1号機をはじめとした老朽化原発や、大地震などのリスクが大きい原発の廃炉を早期に打ち出す必要がある。

大飯原発の再稼働で、電力融通や節電対策の手が緩むことがあってはならない。

発電所にトラブルが発生する可能性は十分にあるし、西日本全体では依然として電力は不足気味だ。今後の電力政策を考えるうえでも、送電網の広域運用や需要抑制策の実績を積み重ねていくことが重要である。

第三者による電力需給見通しの検証を経て、国民は「原発ゼロの夏」への備えを整えつつあった。その意志を無視してはならない。
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2012年05月30日

[東京新聞] 原子力規制組織 独立・緊急対応 両立を (2012年5月30日)

原子力規制を担う新組織づくりの法案が衆院で審議入りした。政府案に加え、自公両党も対案を提出している。政府から独立し、緊急時には迅速対応できる組織とは何か。議論を尽くしてほしい。

原子力を推進する組織と規制する組織が同居し、産学官の「原子力ムラ」が幅をきかせる現体制では東京電力福島第一原発事故は防げなかった。これが新たな規制組織が必要な最も大きな理由だ。

政府案では原子力安全・保安院を経済産業省から切り離して内閣府原子力安全委員会などと統合し、環境省の外局「原子力規制庁」を設置する。

新組織にとって最も重要なことは政府や電力会社、原子力ムラからの独立性の確保だ。政府案の規制庁は、環境相から規制の制定を受任し、長官は環境相が任命するなど、予算や人事に決定権を持つ環境相の関与が大きい。

この点、政府案より自公両党の対案の方に分がある。

自公案の「原子力規制委員会」は、公正取引委員会のように独立性が高い「三条委員会」だ。五人の委員は国会の同意が必要な人事で、政府案と違って規制は独自に制定する。規制庁は規制委の事務局という位置付けだ。

民主党は政府案にこだわらず、規制委方式を受け入れた。新組織を早期に発足させる狙いがあるにせよ、独立性の観点からは妥当な判断だ。ただ、原発事故発生時の指示権は誰が持てば、迅速に対応できるのかという問題が残る。

政府案では、緊急時の指示権は首相が持つのに対し、自公案では規制委が担う。規制委の意思決定は五人の合議制のため、自衛隊や自治体、電力会社への迅速な指示ができないという指摘もある。

独立性を担保しつつ、緊急時には迅速に対応できる新組織づくりに与野党が知恵を絞ってほしい。

国会の原発事故調査委員会は六月中に報告書をまとめる予定だ。原子力の規制にはどんな組織、指示系統がふさわしいか。報告書を参考に結論を出してもよい。

この際、中途半端なものよりは、しっかりした組織をつくるべきだ。

政府は法案審議を急いでいるようだが、新組織が原発再稼働のためであってはならない。

新組織には、保安院などから職員が移行するのだろうが、独立性の担保には出身官庁との関係を断ち切る新たなルールも必要だ。官僚自身の保身よりも国民の安全が重視されるべきは当然である。
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[東京新聞] 災害対策基本法 備えあれば復興も早い (2012年5月30日)

政府が国会に提出した災害対策基本法の改正案は、3・11を教訓に広域支援態勢がとれるよう国と都道府県の役割を強めた。必要な改正を急ぎつつ、減災から復興まで総合的な法整備も不可欠だ。

東日本大震災では多くの市町村が被災し庁舎や職員を失ったため、被害の把握や救援活動など初動態勢が十分に取れなかった。改正案では、市町村が被害を把握できない場合は都道府県が情報収集する▽国や都道府県は市町村からの要請を待たずに救援物資を供給できる▽自治体を超えた広域避難を国や都道府県は調整する−ことを盛り込んだ。

当たり前の対応だが、現行法には市町村が壊滅的被害を受ける想定はない。災害対策はどうしても後追いになってしまう。基本法も一九五九年の伊勢湾台風を機に制定。国が防災基本計画、自治体が地域防災計画を作成する根拠法となった。阪神大震災後、自衛隊派遣要請の権限を市町村長に拡大するなど大幅改正されている。

大災害ごとの“つぎはぎ改正”は仕方ないとしても、もっと踏み込める点はあるのではないか。東北の被災地で今も続く自治体間の応援について、あらかじめ協定締結に努めることが明文化されたが、いっそ制度化すべきだ。

3・11以降、自治体の相互応援協定が増えている。沿岸部と内陸部、都市と農村の組み合わせを考えたい。広域災害での応援は遠隔地の方が機能しやすい。一対一で支援相手を決めておくカウンターパート方式も有効だ。

地域住民をはじめボランティア、民間企業を交えた支援態勢が威力を発揮することも学んだ。「自助」「共助」が重要だ。「公助」中心の現行法を抜本的に見直したい。まずは、避難の在り方など積み残した課題を含めた第二次の改正を急がなければならない。

今改正案では、住民の責務として災害教訓の伝承を明記し、自治体には防災教育の実施を努力目標とした。地域防災力を向上させる上で極めて重要だ。各自治体の計画に具体策を盛り込んでほしい。

次に来るだろう南海トラフ巨大地震の対策では、東海と東南海・南海に分かれる特別措置法を早く一本化すべきだ。甚大な被害や影響が想定される首都直下地震は、国家の命運がかかるだけに特措法が必要だ。

被害を最小限に食い止め、早く復旧復興する−。そのためにも災害法制を再整備し、世界が見習う防災モデル国を目指したい。
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[産経新聞] 中国の諜報活動 書記官出頭重ねて求める (2012/05/30)

在日中国大使館の1等書記官が不正に銀行口座を開設し、ウィーン条約が禁じた商業活動を行っていたことが明るみに出た。警視庁が外務省を通じて出頭要請したが、大使館側が拒否し、書記官は一時帰国した。

書記官は外交官の身分を隠して銀行口座を開設するため、虚偽の住所などを記した申請書を東京都内の区役所に出していた。以前に使っていた外国人登録証を不正に更新した外国人登録法違反(虚偽申告)などの疑いが持たれている。一般の外国人なら強制捜査の対象になる事件だ。

外交特権を持つ書記官を逮捕することはできないが、書記官が外交官の地位を利用してスパイ活動を行っていた疑いが極めて強い。日本政府は中国当局に対し、書記官を警視庁に出頭させるよう重ねて要請すべきである。

書記官は中国人民解放軍総参謀部の情報部門出身とみられ、外交官になる前から、何度も日本に入国し、東大や福島大などに籍を置いていた。多くの政治家を輩出した松下政経塾の特別塾生になったこともあり、学界や政財界に人脈を築いていた。要注意人物だ。

今回の事件を受け、藤村修官房長官は「個別の捜査の案件なので答えは控える」と話し、松下政経塾出身の玄葉光一郎外相は「今朝(省内の)関係者から聞いた。背景、事実関係はまだ承知していない」と述べるにとどめた。

警視庁が捜査している事件とはいえ、国益が絡み、単なる犯罪ではない。人ごとのような対応では済まされない。

警視庁も、書記官と接触した政治家、財界人、学者らの周辺捜査を徹底して進めてほしい。

これまで、中国人民解放軍が絡んだとみられる事件として、平成18年に発覚した、ヤマハ発動機が生物化学兵器などの散布に転用できる無人ヘリコプターを無許可輸出しようとしたケースがある。同社は外為法違反容疑で静岡、福岡両県警の捜索を受け、翌年、執行役員ら3人が逮捕された。

中国の諜報活動は自然な形で近づき、技術や情報を入手するケースが多い。産業界だけでなく、政治家や官僚も用心が必要だ。

日本でスパイ活動に適用される法律は外国人登録法、出入国管理法などしかない。いずれも微罪である。スパイから国益と主権を守るための法整備も急がれる。
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[産経新聞] 野田・小沢会談 首相は「本気度」を見せよ (2012/05/30)

野田佳彦首相が今国会で消費税増税関連法案を成立させる「本気度」を示す好機を迎える。30日の小沢一郎元民主党代表との会談である。

しかし、消費税増税について小沢氏は、「国民との約束を忘れては、政権交代の意味がない」と反対姿勢を鮮明にしている。首相も翻意が望めないことは分かっているはずだ。

6月21日の国会会期末まで1カ月を切り、法案成立は事実上困難になっている。首相には先行きが見えない小沢氏との会談に時間をかけている余裕はあるのか。首相が取り組むべきは、自民党との修正協議に向けた環境整備だ。

まず、参院で問責決議を受けた前田武志国土交通相と田中直紀防衛相の2閣僚の問題がある。閣僚の地位利用など公職選挙法に抵触する疑いが持たれた前田氏と、安全保障担当には不適格とされる田中氏の更迭が求められている。

さらに民主党がマニフェスト(政権公約)に掲げ、年金改革案の柱と位置づけている最低保障年金の撤回なども必要だろう。

最大のポイントは、社会保障と税の一体改革を、よりよい内容にすることだ。デフレ脱却を実現する具体策などを与野党でまとめるべきだ。社会保障も高齢者優遇を是正しない限り、持続可能な制度とはいえない。

自民党の茂木敏充政調会長は、医療、年金、介護など社会保障政策全般を有識者が協議する「国民会議」を設置することを、衆院一体改革特別委員会の審議の中で政府側に提案し、この創設を柱とする社会保障制度改革基本法案の骨子もまとめた。

政府・与党の出方を見て法案提出時期を探る駆け引きの面もあるが、野田首相が提案に対し「国民会議のようなものは必要だ。そういう協議はどんどんやりたい」と語ったように、与野党協議に入る好機到来である。

首相は小沢氏との会談について「乾坤一擲(けんこんいってき)だ」「一期一会のつもり」などと語った。両氏の会談について、党内に亀裂が生じるのを避けたい輿石東幹事長は「タイムリミットはない」と再会談も想定しているようだが、成果は望めないだろう。

そもそも、小沢氏との会談の意味もよくわからない。党内融和を重視しているようでは、「政治生命を懸ける」という首相の覚悟はどこにも見えない。
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[毎日新聞] 社説:視点・高地トレーニング いいことだけではない (2012年05月30日)

陸上や水泳をはじめスキー、スケートなど持久力が勝敗を左右する競技種目の強化に欠かせないのが高地トレーニングだ。低酸素環境にある高地(標高1500〜3000メートル)で行うトレーニングは酸素を全身に運ぶ赤血球を増やし、持久力を高める。効果は2〜3週間継続するという。半面、赤血球が増え過ぎると血管が詰まりやすくなり、心肺機能への過度の負担などの危険性も指摘される。

そんな中、男子百メートル平泳ぎの世界選手権王者が4月末、米国での高地合宿中に急死した。死因と高地トレとの因果関係は明らかになっていないが、日本水泳連盟は来月、米国とフランスでの高地合宿を予定通り実施することを決めた。今回は出発前に低酸素下の状態で心電図を測定したり、合宿に医師を帯同させたりして安全管理体制を強化する。当然の対応だ。

日本では1960年ローマ五輪と64年東京五輪のマラソンで優勝したエチオピアのアベベ選手ら高地民族の活躍や、68年メキシコ五輪を契機に高地トレへの関心が高まり、医科学面での研究が始まった。メキシコ五輪のマラソンで君原健二さんが銀メダルを獲得したのは高地トレの成果だと言われている。

水泳は80年代以降、陸上は90年代以降、国際大会に向けた強化策として取り組んでいる。研究が進んだとはいえ、適切なトレーニングの強度、時間などについては経験に頼っている部分もある。睡眠不足や蓄積疲労など、さまざまな健康障害も報告されている。2006年には中国・昆明で高地合宿中だった日体大の男子水泳部員が練習中に亡くなる事故が起き、遺族が提訴した。日本水泳連盟は08年に安全管理のガイドラインを作成し、事前準備や指導上の注意点などを例示している。

「もろ刃の剣」である以上、実施にはスポーツ医科学の支援と協力は欠かせない。

ただ、高地トレの恩恵に浴するのは日本など一部のスポーツ先進国に限定されている。

君原さんは75年に出版した恩師との共著「マラソンの青春」(時事通信社)の中で、意外にもメキシコの表彰式では感激も喜びもなかったことを告白している。「私はメキシコが五回目という経験がものをいった。恵まれすぎた予備条件である。スポーツにおいての平等の原則からみて、メキシコの高所障害を経験しなかったものに勝っても価値は乏しい」と。

今の時代、異論はあるだろうが、スポーツにおける平等とは何か、公平・公正とは何かを考えさせられる問いかけだ。
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[毎日新聞] 社説:30年の原発比率 15%以下に抑えられる (2012年05月30日)

経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会が、2030年を目標にした電源構成に関する報告書をまとめた。

総発電量に占める原発の比率は、0%から25%までの数値を示した3案と数値目標を定めない案が併記された。政府は、「国民的議論」を経て一本化し、8月をめどに新しいエネルギー基本計画を決める。

国論が分かれる中、政府には「脱原発依存」の道筋をしっかりと示す責任がある。

委員会は昨年10月以降、25回開催された。当初は目標とする原発比率の一本化を目指したが、脱原発派と原発推進派委員との溝は最後まで埋まらなかった。

「原発事故のリスクはなくせるのか」「発電コスト上昇による経済への悪影響を回避できるのか」。それぞれの立場から投げかけられた問題に、双方とも説得力ある答えを用意できなかったからだ。

一本化の決断を迫られる政府は、原発の運転期間を40年とし、新増設がない場合の試算値である15%を軸に検討する見通しだ。そうであれば、立場の違う委員が提起した双方の難問に答える努力が求められる。

再稼働の際の安全を確保するには、設置法案がようやく審議入りした新たな規制機関を早く発足させ、今回の事故の検証結果を踏まえた安全基準を作り直す必要がある。

民間の電力会社に原発の運営を任せるのであれば、事故の際に無過失でも無限の損害賠償責任を負わせる原子力損害賠償法も見直すべきだ。

一方、複数の研究機関が委員会に示した試算では、今回のエネルギー計画見直しは、電力価格を大幅に上げ、実質GDP(国内総生産)を押し下げるという結果が出た。

的確な経済成長戦略によって、GDPを下支えする必要がある。原発の穴は当面、天然ガスを中心にした火力発電で補うしかない。政府は、米国産シェールガスの調達を図るなど天然ガス価格の引き下げにも努めるべきだ。

「15%案」そのものにも見直しの余地がある。この案は、国内の原発50基の再稼働を認め、40年間の耐用年数まで稼働させることを前提にしている。しかし、立地条件などによっては再稼働のための安全性が確保できないケースや、耐用年数以前に停止すべき場合も当然、考えられる。15%は、なお引き下げの余地があるということだ。

この案は、30年以降について、原発依存を減らすのか、その水準を維持するのかを明示していない点でも問題が残る。政府は、「原発ゼロ」を目指すという方向をはっきりと示し、国民の理解を求めるべきだ。(論説委員・落合博)
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[読売新聞] 国会事故調 反省なき菅前首相の脱原発論(5月30日付・読売社説) (2012年5月30日)

東京電力福島第一原子力発電所の事故に対応する政府中枢の混乱と無策ぶりが、改めて明確になった。苦い教訓を生かさねばならない。

国会の事故調査委員会が、菅前首相、当時の閣僚、佐藤雄平福島県知事らからの聴取を終えた。来月をめどに報告書をまとめる。

菅氏は、「(経済産業省原子力安全・保安院、東電などから)原子炉の状況についての説明は一切なかった」「手の打ちようがない怖さを感じた」などと述べた。

当時官房長官だった枝野経産相らも同様の証言をした。

情報収集と事故対応で中心的な役割を担うはずだった保安院は、職員が早々に原発と首相官邸から退去していた。

政権の危機管理能力が欠如していたことを露呈したと言える。

本来なら、政府組織が一丸となって情報を集め、確立した指揮命令系統の下で動くべきだった。

だが、菅氏は思いもよらない行動に出た。枝野氏の反対を押し切って、ヘリで原発を視察し、担当者に説明を求めた。「(現場に)40分くらいいた」という。それが火急の事態に、責任者の時間を浪費させてしまった。

佐藤知事が「国が司令塔の役割を果たせなかった」と批判した意味は重い。

さらに、菅氏は外部の有識者を次々と内閣官房参与に任命し、個人的な助言を求めた。枝野氏が「プラスとは思えない」と批判したのは当然である。

菅氏が誤った「政治主導」を掲げ、過剰に介入したことが現場に負担をかけ、官僚組織を萎縮させた。猛省すべきだろう。

真相がなお不明な点もある。

菅氏は、原発から作業員を全面撤退させるという東電社長の意向を伝えられたと主張した。これに対し、勝俣恒久会長は「事実ではない」と否定している。

国会事故調は、さらに事実の徹底解明を進める必要がある。

菅氏は最悪の場合、3000万人の避難が必要だったとした上で「国家崩壊リスクに対応できる確実な安全確保は不可能だ」と述べた。自ら言い出した「脱原発」を正当化したいのだろう。

しかし、自身の失態を棚に上げて、エネルギー政策に関し、「原子力ムラは深刻な反省もないまま原子力行政の実権を握り続けようとしている」などと自説を振りかざすのは論外である。

原発再稼働に向けた政府の判断は最終局面を迎えている。菅氏の発言は混乱を拡大しかねない。
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[読売新聞] エジプト情勢 イスラム伸長で進む「二極化」(5月30日付・読売社説) (2012年5月30日)

エジプトでイスラム主義勢力が伸長している。安定したエジプト新体制を築けるかどうかは、中東全体の民主化の行方も左右するだろう。

エジプト大統領選は、第1回投票で決着せず、6月中旬、決選投票が行われることになった。

決選投票に臨むのは、得票率約25%で1位となったイスラム主義組織「ムスリム同胞団」のモルシ候補と、約24%で2位のシャフィク元首相である。

イスラム主義の候補とムバラク前政権で頭角を現した軍出身の世俗派政治家が対決する構図だ。

ムスリム同胞団はじめイスラム主義勢力は、昨年11月から今年1月まで行われた下院選で、全体の7割超の議席を取り、その台頭を強く印象付けた。

今回の大統領選でも、4割を超す票を獲得して、「ポスト・ムバラク」時代の政治の主役であることを示したと言える。

立候補の名乗りが遅れたモルシ氏は、先行していたイスラム主義候補の票を取り込み1位を確保した。共倒れを避けようとする同胞団の組織力も働いたのだろう。

シャフィク氏がモルシ氏とほぼ肩を並べたのは、公約で治安回復を強調したことが大きい。急速なイスラム主義台頭に警戒する有権者を引きつけた面もある。

選挙戦は過熱しそうだ。国論が「イスラム主義」と「世俗主義」という二極に分裂することが、懸念される。

早くもシャフィク氏の選挙事務所が放火される騒ぎが起きた。

今週末には、ムバラク前大統領への1審判決も予定されている。前大統領は、反体制デモ参加者への発砲命令が罪に問われ、死刑を求刑されており、その判決は、選挙戦にも影響を与えよう。

イスラム主義の台頭を念頭に、米国政府は「ポスト・ムバラク」をにらみ、同胞団とのパイプ作りに乗り出した。

エジプトの変化は避けられないが、クリントン国務長官が指摘したように、それが、女性や宗教少数派の権利の後退につながるようなことがあってはなるまい。

決選投票で大統領が決まれば、軍最高評議会による暫定統治は終わり、民政に移行する予定だ。

だが、二極化がさらに進めば、そのシナリオ通りにいくのかどうか不透明感も増そう。最大の問題は、実権を握る軍の出方だ。

大国エジプトが、中東・北アフリカ地域の安定と民主化の進展を牽引(けんいん)していく役割を日本を含めた国際社会は注視している。
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[朝日社説] 原子力規制庁―政治と専門家の連携を (2012年5月30日)

ようやく、である。

原子力規制庁(仮称)の創設を柱とする原子力規制関連法案が衆議院で審議入りした。

福島原発事故の反省に立って規制行政を推進から切り離し、一元化して強化する。脱原発依存を進めるうえでも、要となる法律である。

法案提出からすでに4カ月が過ぎた。4月発足という当初の予定から大きくずれこんでいることが原発行政への不信を高める原因にもなっている。

与野党は実効性ある仕組みづくりへ議論を尽くしつつ、一刻も早い成立を目指してほしい。

焦点は、規制庁の独立性だ。

政府案では、経済産業省内の原子力安全・保安院と内閣府の原子力安全委員会を移管・統合し、環境省の外局とし、人事や予算の権限は環境省が握る。非常時には政治が前面に出る。

これに対し、自民、公明両党が提出した対案は、規制庁の上部組織として、独立性の高い国家行政組織法の「3条委員会」にあたる原子力規制委員会(仮称)を設け、政治の関与を排除することに力点を置く。

両者の差は、福島事故の際の混乱原因を、専門家たちの能力欠如に見るか、それとも、菅首相(当時)をはじめとする政治家の過剰関与に見るか、の違いでもある。

だが、これまでの事故検証が示すのは、政治も専門家集団も過酷事故への備えが甘く、どちらも未熟だったという事実だ。

政府は早期成立へ自公案を受け入れる構えである。

独立性を高める点に私たちも異論はない。ただ、専門家の質や意識が変わらないままでは、「原子力ムラ」による支配が強まることにもなりかねない。組織の中立性や透明性の確保は不可欠だ。

組織の形をいじるだけではなく、外国からアドバイザーを入れたり、見識の高い専門スタッフを育成する手だてを講じたりしなければならない。

そのうえで、平時でも緊急時でも、それぞれが役割や責任を果たしつつ、連携する仕組みを根底からつくることだ。

規制の一元化という点でも問題が残る。政府案でも自公案でも、核拡散を防ぐ査察など保障措置(セーフガード)に関する行政は規制庁の業務に盛り込まれず、引き続き文部科学省の管轄となっている。

核テロへの備えなど安全保障面での対応は、使用済み燃料の保管の仕方といった原子力規制とも密接に絡む。国際的な協調を総合的に進めるためにも新組織に集約すべきだ。
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[朝日社説] アスベスト被害―救済の見直しが必要だ (2012年5月30日)

では、どこに救いを求めればいいのか。やりきれぬ思いで判決を聞いた人も多いだろう。

建材に含まれるアスベストで肺がんなどになった建設労働者が、国とメーカーを訴えた裁判で横浜地裁は請求を退けた。

被害を防ぐために国がとった吹きつけ作業禁止などの措置と時期は、それなりの合理性があった。事情が異なるメーカーをひとくくりに責任追及するのは無理がある――との判断だ。

防じんマスク着用のルールを守らなかった事業主や労働者に問題がある。そんなふうに読める記述もある。だが、実情を知りつつ目をつぶってきたのも、また国ではなかったか。

同様の裁判は各地の裁判所におこされている。そこには建設労働者特有の事情がある。

現場を転々とし、特定の雇い主の責任を問うのは難しい。いわゆる一人親方など、実態は労働者なのに法律上は個人事業主とされ、労働者保護の法令が適用されない人も少なくない。

働き手として最も弱い立場にあった人が、被害者としても最も弱い立場におかれ、やむなく国やメーカーと争う。社会の矛盾があらわれた裁判といえる。

主張のなかには法的に困難なものもあり、司法の限界を感じさせる審理ともなった。

だが横浜地裁も、このままでよしとしたわけではない。

判決を締めくくるにあたり、「被害は、アスベスト建材によって利益と恩恵を受けた国民全体が補償すべきものとも考えられる」と述べ、いまある救済法の充実や新たな補償制度の創設について、再度検証する必要があるとの見解を示した。

救済法は6年前に制定されたが、通常の損害賠償はもちろん労災保険と比べても、支払われる金額や救済範囲は低水準にとどまる。国に責任はない、との前提に立っているからだ。

この前提を問い直すのが一連の訴訟の目的だが、並行して、判決が指摘した再検証に取り組めないはずがない。

法的責任を踏まえた賠償か、それとも福祉の立場からの救済か、といった議論で堂々めぐりをしているうちに、次々と失われていく命の重みに思いをいたすべきではないか。

アスベストがもたらす病気は潜伏期間が長い。2040年までに死者が10万人以上になるという試算もあるが、国の財政事情や企業経営を考え、施策の充実をためらう空気は強い。

だが、潜在患者が多いからこそ手当てを急がねばならない。戦後の経済成長の負の遺産から逃げるわけにはいかない。
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