2012年02月29日

[産経新聞] 【主張】エルピーダ破綻 変化恐れず生き残り図れ (2012.2.29)

国の公的支援を受けていた半導体大手、エルピーダメモリが経営破綻した。韓国メーカーなどとの競争激化に加え、円高で輸出採算が悪化したことが主因だ。

かつて世界を席巻した半導体メーカーの苦境は、日本のものづくりが岐路にあることを示している。エルピーダの破綻は、時代の変化についていけない旧体質企業の退場と、新たな起業を促す産業の構造転換が進まない現状を映している。

政府は再度の公的支援に否定的だが、当然と言わざるを得ない。日本の企業は変わらなければ生き残れないグローバル経済の厳しさを改めて認識すべきだ。

エルピーダは3年前も破綻のふちに置かれ、国が300億円の公的資金を投入して救済した経緯がある。当時は、同社が製造する半導体が性能面で大きな競争力を持ち、経済産業省も半導体製造を日本の基幹産業と位置付けていたからだ。日立製作所、NEC、三菱電機の事業統合によるエルピーダの設立に一役買ったのも、経産省だった。

だが、半導体は新陳代謝が激しく、製品価格はすぐに下がる。しかも優秀な工作機械があれば、エルピーダ製品は世界中どこでもつくれる汎用(はんよう)品になった。規模拡大にしか目が向かなかった同社の経営悪化は当然だったといえる。

産業のコメとして、自前の「日の丸半導体」を守るべきだという意見もあるが、国の手厚い保護が将来性ある起業を阻害する面があることも忘れてはならない。
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[東京新聞] エルピーダ破綻 半導体再建に知恵絞れ (2012年2月29日)

半導体メーカー、エルピーダメモリが経営破綻した。韓国勢の台頭や超円高などが理由だが、主力の半導体メモリー・DRAMは産業のコメとして電子機器に欠かせない。再建へ知恵を絞るときだ。

かつて世界市場の80%を占め、一人勝ちを演じた日本の半導体メーカーが再建にあがいている。

今やエルピーダは電子機器などに広く使われるDRAMの日本唯一のメーカーであり、前身は日立製作所、NEC、三菱電機の半導体部門だ。

三社統合の最大の理由は、サムスン電子など韓国勢の躍進にある。半導体に集中投資してコストダウンを図り、低価格で日本メーカーを追い上げた。日本の有力メーカーから技術者を引き抜いて、技術開発にも力を入れている。

二〇〇〇年代半ばには、日本のシェアを奪い、世界一の座に躍り出た。半導体の市場価格が低迷しても投資を緩めず、これが「世界のトップを目指す」というビジネスの目標を実現させている。

エルピーダはリーマン・ショック後の半導体価格急落も重なり、二〇〇九年には政府が公的資金を投入して支えたが、超円高が追い打ちとなり、会社更生法の適用申請に追い込まれた。縮小するテレビ生産と同じ道を歩んでいる。

しかしDRAMの用途はパソコン、デジタルカメラ、録画機器、家電など、とてつもなく広い。

日本のDRAMが米国を席巻した一九八〇年代、米国防総省は過度の日本依存は軍用機生産など、安全保障上の問題も生じさせるとする報告書を発表した。「産業のコメ」と言われるゆえんであり、簡単には消滅させられない。

枝野幸男経産相は公的資金を使った経営てこ入れに失敗した経緯があるため「事業再生の可能性がなければ使えない」と再投入には慎重だ。それならば、DRAMを必要とする国内の製造業など、民間を中心に生産技術継続の手だてを探ることも検討すべきだろう。

エルピーダの坂本幸雄社長は、「多くのお客さまが、がんばれと言ってくれている」と語った。エルピーダは技術者の質が高いとされ、小型化や省電力が求められるスマートフォン用などに微細加工した半導体は世界的にも評価が高い。付加価値をつけ復権を果たす道筋を早急に描くべきだ。

今後の焦点はエルピーダのスポンサー企業が現れるか否かだ。東芝などが浮上しており、オールジャパンで資金調達などを支える体制を検討するよう期待したい。
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[東京新聞] 民間事故調 危機に備えぬ国の脆さ (2012年2月29日)

「泥縄的」。福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)がまとめた事故報告書から浮かび上がったのは日本政府の危機管理の脆(もろ)さだ。事故を危機への備えにどう生かすのかが問われている。

報告書から見える日本政府の姿は、お粗末としか言いようがない。まず官邸の緊急時への準備不足だ。政府と東京電力の対策統合本部が設置されるまで、原子力災害対策の枠組みなど法的理解を欠いたまま泥縄的な対応に追われた。

原子力安全・保安院や東電への不信感から菅直人首相(当時)が出す独断的な指示が混乱に拍車をかけた。

情報の公開や提供にも問題があった。放射性物質の飛散量を試算したSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報提供が遅れた。保安院や東電は原子力安全委員会への情報提供をほとんどしなかった。

日本政府に招かれて意見を述べた米原子力規制委員会(NRC)のリチャード・メザーブ元委員長は「誰が責任を持ってどの問題に対処するのかを明確にした指令系統が必要だ」と問題点を突いた。

首相が独走するのではなく、動かすべき組織を動かし、情報を共有する危機管理の基本がなおざりにされた。意思決定過程を検証するためにも必要な議事録が作成されていなかったことも国際社会では通用しないだろう。

報告書は菅氏が原発から撤退を考えていた東電を押しとどめたことは功績と評価した。だが、東電が撤退を検討していたことが事実なら、事業者としての責任放棄である。電気料金の値上げも真相の究明なしになどとても受け入れる気になれない。

一方、NRCは昨年三月十一日から十日間の内部記録を公開した。情報公開の姿勢が明確だ。

情報がないことで危機感を持ち、原子炉が炉心溶融する最悪の状況を想定、在日米国人の保護を最優先に迅速に対応した。日本政府との危機感の違いが際立つ。

日本政府が小出しに避難指示区域を拡大し混乱した対応とは対照的に、早々に「八十キロ圏外へ避難」を検討した。最悪を想定した結果の対応だろう。

メザーブ氏は「日本の規制当局は社会から信頼されていない。その回復には意思決定過程の公開性、透明性が必要だ」と指摘する。発足する原子力規制庁が、日本政府の危機への新たな備えの試金石になる。政府は国際社会が見ていることを肝に銘じるべきだ。
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[産経新聞] 【主張】取り調べ可視化 治安水準落とさぬ工夫を (2012.2.29)

警察が試行中の取り調べの録音・録画(可視化)について、警察庁の有識者研究会が、対象範囲の拡大を盛り込む最終報告をまとめた。

おとり捜査や司法取引など新たな捜査手法については、今後も検討の必要性があるとの指摘にとどめた。可視化の論議だけが先行すれば、捜査能力の低下を招くことになる。

検察・警察が冤罪(えんざい)を作ることは許されないが、一方で治安を維持し、国民の生活を守る重大な責務がある。治安水準を落とさないためにどうすべきか。議論にはその視点が不可欠だ。

警察庁は平成21年4月から、全国の警察で、裁判員裁判の対象事件のうちでも、容疑を認めている自白事件で、調書を読み聞かせる場面を中心に、可視化の試行を実施してきた。

研究会は、否認事件も試行対象に加えるほか、逮捕直後の初期段階から可視化の対象場面を拡大することも求めている。

すべての事件を対象とする全面可視化については、委員の間でも意見が一致しなかったという。

警察庁は昨年6月、試行結果の検証を行った。取り調べを担当した捜査員の97・1%が「一部可視化は自白の任意性立証に効果がある」と答える一方、全面可視化については90・9%が反対した。

主な理由は「人間味のある取り調べができない」「容疑者との信頼関係が築けない」といったものだった。容疑者の側から、緊張するからといった理由で可視化を拒否するケースもあった。
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[毎日新聞] 社説:水俣病遺族勝訴 救済の幕引きまだ早い (2012年2月29日)

現行の水俣病認定基準は唯一の基準とするには十分でなく、運用も適切とは言い難い??。

水俣病の認定を巡る訴訟で、福岡高裁は、これまでの国の水俣病への対応を厳しく批判した。さらに、「本来認定されるべき申請者が除外されていた可能性は否定できない」と、根源的な疑問を投げかけた。

国は、患者と認定されない被害者を対象にした水俣病被害者救済特別措置法(特措法)の申請を7月末に締め切る方針を今月になって表明し、水俣病問題の事実上の幕引きを図ろうとしている。

だが、過去の経緯や今回の司法判断を踏まえれば、救済の手立てを閉ざすべきではない。まずはこの方針を撤回し、さらなる制度設計が必要なのかを含め、検討すべきだ。

水俣病は68年に公害病と認定された。その後、国が77年に示した患者の認定基準が救済の出発点になった。ただし、感覚障害や視野狭さくなど複数の症状がなければ認定されないため、多くの被害者は基準を満たさなかった。

未認定患者らは補償を求めて次々に提訴した。国は95年、約1万人に一時金260万円を支払うことで最初の政治決着を図った。

だが、最高裁は04年、感覚障害のみでこの一時金を上回る賠償を認めた。このため、認定を求める被害者が増え、国は09年、特措法を制定し、未認定患者に一時金210万円を支払うことで救済の最終的な解決を目指した。

10年に救済申請の受け付けが始まり、5万人以上が申請中だ。高齢化などを背景に、多くの被害者が認定よりも、特措法による救済を選択した結果とみられる。

だが、司法と行政の認定を巡る判断の違いが再び明確化したことで、救済を申請している被害者の間にも動揺が広がるだろう。救済が認められれば、患者としての認定申請を取り下げねばならないからだ。

水俣病問題が長期にわたって混乱する背景には、原因企業であるチッソの姿勢だけでなく、規制を怠った行政の不作為もあるはずだ。

その責任に背を向けただけでなく、国は包括的な住民の健康調査などを通じた被害の実態解明をこれまでしてこなかった。

結局、そのツケが混乱の要因として現在まで残ったと言える。水俣病とは何か。認定基準の抜本的な見直しが必要ではないのか。本質的な問いかけも避けられまい。

水俣病の実像がわからないまま、既に多くの人が亡くなった。国は、これからでも可能な調査をまずは尽くしたうえで、救済に資する情報を被害者らに示すべきだ。
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[毎日新聞] 社説:エルピーダ破綻 民間の知恵で再建を (2012年2月29日)

エルピーダメモリが会社更生法の適用を申請した。世界3位の記憶用半導体メーカーだが、価格の急落に円高などが重なり、資本提携で活路を探ったものの、資金繰りに窮し、自力再建を断念した。4480億円の負債総額は製造業の破綻では過去最大だ。

半導体は一時、日本が世界を席巻し、日米貿易摩擦の焦点ともなった分野だった。しかし、90年代に入ると韓国などのメーカーの攻勢を受けて国内メーカーはシェアを落とし続けた。事業の統合を進めざるを得なくなり、記憶用半導体はエルピーダに集約された。

激しい投資競争はその後も続き、供給過剰に陥るたびに市況は急落し、エルピーダの経営を揺さぶった。リーマン・ショック後には、国が公的資金を投入して企業再生を目指す改正産業活力再生特別措置法(産活法)の適用第1号となり、経営の立て直しを進めてきた。

しかし、市況の急落と円高により業績が急速に悪化する中で、3月末には産活法の適用期限を迎える。公的資金の返済延期や、金融機関からの融資の借り換えを模索したものの、その前提となる、抜本的な再建策をめぐる交渉は難航した。

一方、産活法を適用して経済産業省主導で進められてきた再建策は、行き詰まったことになる。破綻によって最大280億円の国民負担が生じる可能性があるという。この点を重く受け止めねばならない。

記憶用半導体は日本になくてはならない産業だというのが官主導の再建策につながった。しかし、何が必要なのかは、自らの資金を投じる民間の判断に委ねるというのが本来の姿だ。

パソコンなど汎用(はんよう)化したものは別として、多機能電話のスマートフォンやタブレット型端末のような新製品はこれからも登場する。そうした新製品に適した記憶用半導体の開発能力を保持し、日本企業が活用できるようにするにはどのようにしたらいいのか。民間同士の話し合いの中で知恵を出してもらいたい。

破綻処理による債務整理でエルピーダは身軽になり、再建を目指すことになるが、同時に記憶用半導体の世界的な再編にさらに拍車をかけることになるだろう。

海外のメーカーがスポンサーになることも考えられる。ただ、巨額の投資を続ける韓国勢のシェアが今でも群を抜いており、場合によっては韓国勢以外に調達先がなくなる事態も想定しなければならないという状況にあることも忘れてはならない。

健全な競争が阻害されぬようにということも、記憶用半導体の再編にあたって押さえておくべき点だ。
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[読売新聞] 企業年金消失 リスク見極める眼力も必要だ(2月29日付・読売社説) (2012年2月29日)

企業年金の資産運用を委託されていた投資顧問会社「AIJ投資顧問」(東京)が、年金資産の大半にあたる約2000億円を消失させていたことが発覚した。

AIJは、高い運用利回りを売り物にする会社として、評判だった。大手格付け会社が顧客を対象に行ったアンケート調査で1位を獲得したこともある。

ところが実際は、顧客にも監督官庁にも虚偽の報告をして、好調な運用実績を装っていた。集めた資金を香港の金融機関に移すなどの動きもしていたという。

運用に失敗して巨額の損失を出したのか。それとも、預かった資金を流用していたのか。証券取引等監視委員会は海外当局とも連携し、運用の実態と消失に至る経緯を徹底解明してもらいたい。

問題の背景には、企業年金を取り巻く環境の悪化がある。

社員と企業が資金を出し合って運用する企業年金は、公的年金を補い、老後の生活を支えるものだ。しかし、少子高齢化で新たな加入者が増えない一方で、年金を受け取る退職者は増え続けており、どこも収支は苦しい。

リーマン・ショック後の株価低迷による運用難が収支の悪化に拍車をかけた。そんな時、AIJは魅力的に映ったのだろう。

厚生労働省によると、AIJに資産運用を任せていた企業年金は昨年3月末時点で84あり、大半は同じ業種の中小企業などが集まってつくる厚生年金基金だった。

厚労省は、リスク回避のため、分散投資を求める資産運用指針を設けていた。だが、資産の半分以上をAIJに集中させていた年金基金もあった。

資産が戻らず、企業も穴埋めできなければ、年金給付額の減額を迫られることも想定される。

年金基金は一般の個人投資家とは異なり、プロの投資家として扱われている。金融行政が「事前規制型」から「事後チェック型」に変わり、自己責任が原則とされる時代である。

基金にも、リスクを見極める目を養うことが求められる。

一方、金融庁は、他の投資顧問会社約260社の一斉調査に着手する。資産の運用方法や顧客への説明内容に問題がないか、チェックを急ぐ必要がある。

投資顧問会社は年に1回、運用実績を記載した事業報告書を地方財務局に提出するが、外部監査は義務づけられていなかった。監視体制を点検し、不祥事の再発防止につなげなければならない。
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[読売新聞] エルピーダ破綻 韓国勢に負けた日の丸半導体(2月29日付・読売社説) (2012年2月29日)

日本の産業競争力低下を象徴する「日の丸半導体」の挫折である。

パソコンなどに使うDRAMの国内唯一のメーカーで、世界3位のエルピーダメモリが、自力再建を断念して会社更生法の適用を申請し、経営破綻した。

DRAM市場は、サムスン電子とハイニックス半導体の韓国2社が6割強を占め、競争は激しい。超円高とウォン安、市況低迷も重なり、業績は急速に悪化した。

エルピーダは、米国や台湾企業との提携による起死回生策を模索したが、実現せず、資金繰りに行き詰まった。法的整理に追い込まれたのは残念である。

1980年代、日本メーカーは「産業のコメ」と呼ばれる半導体で世界の市場を席巻した。

日立製作所、NEC、三菱電機の事業を継承してエルピーダが誕生したが、2008年の金融危機後に深刻な業績不振に陥った。

その時、救済に乗り出したのが経済産業省である。

経産省は一般企業に公的資金を投入できるように政策変更し、09年夏、エルピーダを第1号に認定して300億円を投入した。

お家芸とされたDRAM事業を国内に残し、急成長した韓国勢に対抗できる「国策企業」として支えることを狙ったと言える。

だが、結局、エルピーダは韓国勢との競争に敗れ、3年弱で頓挫した。公的支援が延命策に過ぎなかったと言われても仕方ない。

エルピーダ破綻に伴い、国民負担が最大280億円に膨らむ可能性があることも問題だ。

政府支援がなぜ空振りに終わったか。大型投資と低価格品で攻勢をかけた韓国勢に対し、エルピーダに戦略ミスはなかったのか。

経産省はきちんと検証し、企業支援のあり方や、産業振興などの政策に生かすべきだ。

今後の焦点は再建策である。

これまで提携交渉していた米社による支援が有力だが、高い技術力を生かせるよう、早期に支援企業を探し、再建の道筋をつけることが求められる。ただし、技術や人材の国外流出には要警戒だ。

エルピーダ支援を担当していた経産省高官が同社株のインサイダー取引事件で逮捕、起訴され、行政への不信感も募った。経産省は信頼回復も急がねばならない。

テレビの不振で電機各社が巨額赤字を抱えるなど、半導体に限らず、日本の製造業は試練に直面している。国際競争力を回復し、世界で勝ち残るために、エルピーダを教訓としてもらいたい。
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[朝日新聞] 民間事故調―原子力規制に生かせ (2012年2月29日)

民間の立場から福島第一原発の事故原因を調べる「福島原発事故独立検証委員会」の報告書がまとまった。

独立系シンクタンクの事業として昨秋に着手した。政府の事故調査委員会だけでは真相究明に不十分との思いからだ。科学者や法律家らが委員を務めた。

400ページを超える中身は多岐にわたる。政府の事故調査委員会が昨年末に公表した中間報告が、発電所を中心とした事故の直接的な原因分析に比重を置いていたのとは対照的だ。

章によって、分析の精度にはばらつきがある。それでも住民避難の実態、「安全神話」や「原子力ムラ」といった社会的背景、原子力をめぐる国際的な動きと日本との関係にも意欲的に切り込んだ。

事実を多面的にとらえ、幅広い視点から課題を指摘しようという姿勢もうかがえる。

例えば官邸の対応をめぐる検証だ。事故拡大の恐れで緊迫するなか、当時の菅首相や官邸がとった場当たり的な行動や判断を厳しく断じた。一方で、原子力安全・保安院や原子力安全委員会、東京電力の能力欠如が背景にあったと論じている。

3月15日未明に東京電力が「撤退」を求めた時は、首相の強い叱責(しっせき)が、現場放棄を食い止める結果になったと評価した。

命のかかる危機のなかで、福島第一原発の吉田昌郎所長が示した勇気と使命感をたたえつつも、重大な事故災害への対応を現場に委ねることの問題を指摘している。

実際の調査や執筆をになったのは原子力工学や政治学、公共政策などを専門とする中堅の研究者や弁護士、ジャーナリストたちだ。仕事を抱えながらの作業だったが、ヒアリングの対象は約300人に及んだという。

菅首相をはじめ官邸中枢で事故対応に関わったほとんどの政治家や官僚、原子力関係の責任者が調査に応じたが、東京電力は最後まで拒否したという。きわめて残念だ。

これほどの事故だ。当事者には、事実を語り記録を残す責任がある。「全面撤退」について東電は「事実に反する」としているが、そうであれば、根拠を含めて堂々と反論すればいい。

今回の報告書は、今夏に向けて最終報告をまとめる政府の事故調や、憲政史上初の国会による事故調にも、いい刺激になるだろう。それぞれの足りない点を検証し、補完しあうことで、事故解明の完成度は高まる。

政府や国会も、指摘をきちんと受け止め、原子力の安全規制見直しに生かすべきだ。
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[朝日新聞] エルピーダ倒産―安易な救済への警鐘だ (2012年2月29日)

パソコンなどでデータを記憶する半導体DRAMで世界3位のエルピーダメモリが、会社更生法の適用を申請して倒産した。負債総額は4480億円。製造業では過去最大だ。

NECと日立製作所、三菱電機の事業を集約した日本で唯一のDRAMメーカーである。

リーマン・ショック後の09年には日本政策投資銀行から300億円の出資を仰ぎ、損失は政府が補填(ほてん)する異例の公的支援を受けていた。

急激な円高による採算悪化、欧州危機を一因とするパソコンの世界的な販売不振など、様々な要因が重なった。しかし、根本には、サムスン電子をはじめとする韓国、台湾勢に市場を奪われる構造的な苦境がある。

DRAMでは、80年代に日本メーカーが世界市場の7割を占めた。しかし、日米半導体摩擦に伴う輸出規制で日本勢が動きを封じられているうちに、様相は一変した。

DRAM事業で主導権を握るには、巨額の投資を続けることが不可欠だ。サムスンはほかにも様々な事業を持ち、財務基盤が厚い。エルピーダがDRAM専業で対抗しようとしたことに無理があった。

経済産業省によると、公的資金のうち最大で280億円が戻ってこない恐れがある。

DRAM事業が重要だとはいえ、金融やエネルギーなど、日々の生活を支える社会インフラではない。一般の事業会社に公的資金を直接投入することは、よほどのことがない限り禁じ手だ。エルピーダ再建にかかわるインサイダー取引事件で幹部職員が起訴されたことを含め、経産省は猛省すべきだ。

心配なのは、「官」が出過ぎているのでは、と思える事例がほかにもあることだ。

半導体と同じく厳しい環境が続く液晶業界では、東芝とソニー、日立製作所が中小型液晶事業を統合して新会社を立ち上げる。音頭をとったのは、政府を中心に民間が一部出資する産業革新機構だ。

機構は、新会社に2千億円を出資し、株式の7割を握るという。中小型液晶は市場の拡大は期待できるが、価格競争が激しく、機敏な経営判断が欠かせない。官主導の再編でうまくいくだろうか。

欧米に追いつき、追い越すという明確な目標があり、政府が旗を振れた時代はとうに過ぎた。新産業をどう切り開いていくのかは、民間の知恵に任せるべきだろう。政府の役割は企業が活動しやすい環境を整え、後方支援に徹することだ。
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2012年02月28日

[産経新聞] 【主張】首相の沖縄入り 普天間移設さらに努力を (2012.2.28)

就任後初めて沖縄県を訪ねた野田佳彦首相は、仲井真弘多県知事との会談で米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設が「唯一有効な方法」と説得したが、知事側は県外移設を求めたため、話は平行線のまま終わった。

首相が普天間移設のために自ら足を運んで説得に着手し、歴代民主党政権の迷走を謝罪したのは当然といえる。ただ、就任約半年後の訪問は遅きに失した面があり、地元の信頼回復には至らなかった。

その大きな要因は、民主党沖縄県連がいまだに「県外移設」を掲げるなど、政府・党中央と県連のはなはだしい言行不一致にあり、首相は直ちにこれを正すべきだ。その上で日本の安全のために何度でも沖縄を訪ね、是が非でも移設を実現してもらいたい。

民主党は3年前の総選挙の際、鳩山由紀夫代表が「普天間をできれば国外、最低でも県外」と語った。しかし、日本の安全や日米同盟の堅持に米軍の抑止力が不可欠な現実を無視できず、日米合意に基づく辺野古移設に回帰した。

にもかかわらず、党県連が定期大会で「県外移設」を再確認したのは、野田首相の沖縄入りの前日のことだった。

先の宜野湾市長選でも、地元選出国会議員の一部が「普天間の即時閉鎖と県外移設」を掲げた候補の支援に回り、党・政府の方針と正反対の言動を続けてきた。

首相との会談で、仲井真知事が現行合意に戻った経過に「民主党として納得いく説明がない」と重ねて問うたのも、まさにそのことだろう。これに対し、首相が「結果的に今の日米合意に至った」としか説明しなかったのは極めて不十分といわざるを得ない。

首相は地元振興と基地負担軽減を柱に「論より証拠」で信頼を回復する意欲を語ったが、まずは政権党として地元県連にいたるまで政策を一本化するのが先決だ。

首相は日本の安保環境の厳しさや抑止力の必要性も説明したが、中国海軍の海洋進出に拍車がかかり、金正恩新体制に移った北朝鮮も核・ミサイル開発中心の「先軍政治」を改める気配はない。日米の抑止力を強化充実させる必要は日ごとに強まっている。

辺野古の空中視察にとどめたのも物足りない。普天間の現状固定化を避け、国民の平和と安全を守るには移設が不可欠だ。それを現地で堂々と訴えてほしかった。
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[産経新聞] 【主張】G20と欧州 危機意識の緩みが心配だ (2012.2.28)

ギリシャ債務危機の本質は何ら改善されていないのに、欧州をはじめ世界に危機感の緩みが出ていないか心配である。

先進国に新興国を加えた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、「ユーロ圏による対策強化が不可欠だ」と指摘して、欧州に一段の自助努力を求め、国際通貨基金(IMF)の融資枠拡大に関する議論を先送りした。

欧州連合(EU)、わけてもユーロ圏諸国は、ギリシャ発の債務危機の連鎖が金融危機へと発展しかねない事態への対応で後手に回ってきた。G20が欧州自体の行動を強く迫ったのは当然である。

ユーロ圏諸国は先週、超緊縮財政を条件としたギリシャへの第2次支援策でようやく合意した。欧州中央銀行(ECB)による金融市場への大量の資金供給もあり、イタリアなど他の南欧諸国の国債金利は安定的に推移している。

今回、欧州諸国の間では危機は一服したとの空気があったのも事実だ。ドラギECB総裁も閉幕後の記者会見で、「昨年11月のカンヌG20首脳会議時に比べ、安定している」との認識を示した。

だが、ギリシャ国内はストやデモが吹き荒れ、その緊縮財政、債務削減の行方は予断を許さない。債権の半分放棄にどれだけの銀行が応じるかも不透明である。

ドイツなど北方の経済優等生諸国は国民の強い反発を受け、南欧諸国への資金支援には相変わらず抵抗している。「今そこにある危機」は収束したとは言い難い。

そうでなくても、イラン核開発をめぐる情勢緊張で原油が高騰して新たな不安定要因になっている。欧州には世界経済安定化への応分の責任を自覚してほしい。

今回のG20では、最大5000億ドルのIMFの融資枠拡充が議題とされながら、欧州自らの融資能力の増強策を踏まえて、4月のG20で再度協議する、とした。

EU独自の融資枠拡充の中身も決まっていない現状では、その前に「欧州がやるべきことがある」と、米国がIMFの支援強化に反対したのも分からぬでもない。

だが、G20も、危機克服への結束を強調しながら緊張感を欠く議論に終始したのは否めない。2008年のリーマン・ショックの克服を目的に会したG20もまた、その使命を考えれば、今回、協調策を具体的に示せなかった点を重く受け止めてしかるべきだろう。
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[東京新聞] 首相沖縄初訪問 謝罪では普天間返らぬ (2012年2月28日)

野田佳彦首相が初めて沖縄県を訪問した。米軍普天間飛行場の県内移設に理解を得るのが狙いだが、県側の軟化は望み薄だ。普天間返還の実現には、現行の移設計画を根本から見直す必要がある。

国会審議の合間を縫っての沖縄訪問となった。平和祈念公園や旧海軍司令部壕(ごう)など激烈を極めた沖縄の戦跡を訪れたり、市街地が迫る巨大な米軍基地を視察したりと、今も続く沖縄県民の苦しみの一端に触れたことだろう。

首相が今回の訪問から多くを学ぶのであれば、その意義も認められよう。ただ、より早期の訪問が望ましかったのではないか。

就任後半年近くたっての沖縄訪問は、消費税率引き上げに血道を上げてきた首相にとっての沖縄問題の優先順位の低さを、目に見える形で表してしまった。

首相は仲井真弘多県知事との会談で、鳩山由紀夫元首相が県外移設を掲げながら結局、名護市辺野古への県内移設で米政府と合意した「迷走」を陳謝し、田中聡前沖縄防衛局長の沖縄「犯す」発言についても謝罪した。

政府に対する沖縄の信頼回復は為政者として当然としても、それで県側が県内移設受け入れに転じる状況でないことは知事自身が語る通りだ。ここは知事が言うように「県外移設を検討」した方が、普天間返還の早道ではないか。

首相は沖縄訪問二日前、移設先を辺野古とする理由を「沖縄の地理的特性を考えると、そこに存在する海兵隊の抑止力維持はとても大事」と述べた。

しかし、海兵隊の沖縄駐留が抑止力にならないことは、米国の著名な学者らが県外移駐を提唱していることからもすでに明らかだ。

そればかりか、海兵隊のグアム先行移駐で合意した際の日米共同発表では、海兵隊を西太平洋地域に分散配置する理由に、攻撃に耐えてなお機能を維持する、運用面での「抗堪(こうたん)性」を挙げている。

海兵隊にとって、軍事力の増強著しい中国に近い沖縄が万が一攻撃されても、分散配置しておけば対応は可能ということだろう。この場合、地理的特性はむしろ脆弱(ぜいじゃく)性として認識されている。

日本政府はなぜ米政府の戦略転換から目を背けて県内移設にこだわり続けるのか。理解に苦しむ。

首相はすでに破綻した海兵隊抑止力論に固執せず、米政府に対して国外・県外移設の提起を決断すべきだ。首相の沖縄訪問がその転機となるのなら救いである。
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[東京新聞] 河村市長発言 なぜ素直に撤回しない (2012年2月28日)

名古屋市長は「南京事件はなかった」との発言を撤回せず、訪問団にも非礼ではなかったとの考えを、きのう述べた。率直な議論で「ノドのトゲを抜こう」と主張するが、その土台は一体あるのか。

河村たかし市長は会見で「いわゆる南京事件はなかったのではないか」という発言が「南京大虐殺はなかったという持論を展開」と報道され、「南京では何もなかった」と誤解されたと釈明した。

市長は「象徴的に三十万人とされるような組織的大虐殺はなかったとの趣旨」と説明。「友好団に面と向かって三十万人の大虐殺と申し上げるのは言葉がいかにも残虐なので、あえていわゆる南京事件と申し上げた」と釈明した。

当初の発言は、市長が南京大虐殺はなかったと公にしたと受け止められる言葉である。報道により南京市民の誤解を招いたというのは、とんでもない責任転嫁だ。

南京で虐殺がなかったという研究者はほとんどいない。日中歴史共同研究の日本側論文も「集団的、個別的な虐殺事件が発生し」と明記する。市長自身「非戦闘員の殺害はあっただろう」と認めており、日中で隔たりがある被害者数を問題にする意図であったのなら、そう明言すべきであった。

市長は共同研究を「学者の個人的見解」と批判するが、国や政治レベルで埋まらぬ歴史認識の溝を、少しでも客観的に埋めようとの知恵であった。中国主張の「三十万人」を市長が真っ向から否定しては、南京市側は率直な議論のテーブルにはつけぬだろう。

敏感な問題でも、政治家が主義主張を掲げるのは結構だ。だが、首長は政治家であるとともに自治体のリーダーでもある。歴史的な米中、日中国交正常化の扉を開いたピンポン外交の舞台である名古屋のトップの公式発言としては不適切だった。日中四十周年の記念すべき年に、友好都市が公の交流を停止し、記念行事や経済活動にも影を落とす。苦しい釈明ではなく、素直に撤回できないものか。

昨年春、南京市の公園で日中の百人以上が友好の桜を植えた。南京出身で十五年以上も名古屋に住む韓金龍さんが中心となり、過去五年で千本余を植えた。韓さんは「手を携えて桜を守り、友情の証しにしたい」と話した。

「公の交流停止」と言う南京市のシグナルを、敏感に受け止めてほしい。民の交流の根は深く、広い。民の交流を支えてこその市長であろう。
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[毎日新聞] 社説:首相の沖縄訪問 「辺野古が唯一」は無策 (2012年2月28日)

野田佳彦首相が就任後初めて沖縄県を訪問し、仲井真弘多同県知事と会談したが、米軍普天間飛行場の移設問題の前進はなかった。

首相は、「普天間を固定化させない」と強調したうえで、「辺野古移設が唯一、有効な方法」と述べ、同県名護市辺野古への移設に理解を求めた。知事は「辺野古は時間がかかる。県外移設を検討、実現してほしい」と主張、かみ合わなかった。

首相は、民主党政権下の普天間をめぐる迷走や前沖縄防衛局長の不適切発言を謝罪し、在沖縄米海兵隊のグアム移転と米軍嘉手納基地以南の5施設・区域返還を普天間移設から切り離して先行実施する方針や、沖縄振興策にも言及した。負担軽減や振興策の実施で沖縄の信頼回復を図り、沖縄が辺野古案を受け入れる環境整備としたい考えのようだ。

しかし、事態が動く気配はない。知事は、沖縄振興予算の拡充を評価する一方で、普天間問題では「(県外移設の)主張を変えるつもりはない」と語った。辺野古案が困難である現実を、首相は直視すべきだ。

辺野古移設に反対する沖縄の政治状況や知事発言を踏まえれば、辺野古案に固執すればするほど、普天間の固定化回避という首相の約束が実現不可能になるのは明らかだ。

まさか、辺野古案を掲げ続け、普天間の恒久化を表明しない限り、普天間を使用し続けても固定化でない、と主張するつもりではあるまい。そこは首相の誠意を信じたい。

辺野古移設に必要な公有水面埋め立て申請を知事が許可しない、あるいは、政府が申請もできない状況に至るなど、辺野古案がストップしたまま普天間を継続使用するなら、それは事実上の固定化である。

これを避けるには、辺野古案の見直しを検討し、米側に提起するしかない。辺野古案を「唯一」とする姿勢のままでは、事態の進展と普天間の固定化回避は期待できない。

また、首相は、移設先がどこになるにせよ、実現までの普天間周辺住民の危険性除去・軽減対策が必要であることを忘れてはならない。

普天間移設と海兵隊グアム移転などの切り離しによって、普天間移設の実現には、これまで見込んでいた以上の年月がかかることが予想される。

現状では、その間、「世界一危険な基地」の周辺住民は引き続き、人命にかかわる危険と、騒音などの生活被害にさらされることになる。

万一、普天間に近接する沖縄国際大学へのヘリ墜落(04年)のような重大事故が再び起きれば、日米安保体制の円滑な運営や、首相が強調する「抑止力の維持」にも大きな影響を及ぼす。普天間機能の当面の分散移転など対策を検討すべきだ。
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[毎日新聞] 社説:G20と欧州危機 当事者の決断促す力に (2012年2月28日)

主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が開かれた。最大のテーマは今回もユーロ圏の債務危機である。

中でも注目されたのが、危機の拡大を防ぐため国際通貨基金(IMF)の資金基盤を拡充する問題だ。IMFは総額5000億ドルを新たに加盟国から調達したい構えらしいが、G20は、まず欧州諸国が自前の域内支援基金を十分な規模のものに増やすべきだと自助努力を求めた。

当然である。ギリシャやポルトガルなど単独では借金返済ができなくとも、ユーロ圏全体ではそれを補える経済力や信用力がある。危機が通貨を共有する国々に飛び火するのを防ぐための支援である以上、ユーロ加盟国で資金を確保するのが筋だ。自力で借金返済ができなくなればIMFの助けを仰ぐしかなかった過去の債務危機と大きく異なる点だ。

それでもIMFは、これまで多額の資金を欧州の債務危機国に貸してきた。ギリシャ、アイルランド、ポルトガルの3カ国に対し、すでに計785億ユーロである。欧州諸国が負担した額の半分近い。

もちろん、将来の危機に備えてIMFが十分な資金基盤を持っておく必要はあろう。しかし、だからといって債務危機の欧州がこれまで同様IMFの資金をあてにしてよい、ということにはなるまい。

G20会議の共同声明には、IMFの資金が特定の地域用にあるのではないと明記された。欧州諸国が仮に、自前の支援基金拡充で近く合意したとしても、IMFは安易に欧州への追加支援を決めるべきではない。

IMFの欧州支援に慎重な米国、前向きの新興国といった具合にG20内で温度差がある中、日本の意向は重要なものとなりそうだ。

ギリシャに始まった債務危機がこれほど長期化し拡大したのは、欧州諸国が対応を誤ったからである。資金的な力が不足していたのではなく、国内での批判を恐れ、大胆な政治決断を避け続けた結果だ。

ギリシャへの第2次支援を取りまとめる過程でも、ユーロ加盟国政府は自らの追加負担というより、民間投資家や欧州中央銀行の助けを仰ぐ道を選んだ。最近は柔軟に転化しつつあるというが、経済規模がユーロ圏最大のドイツは依然、欧州自前の支援枠拡大にすら後ろ向きである。

金融市場の緊張が緩んだとはいえ、欧州の債務危機に出口が見えたわけではない。欧州が財政統合や成長力強化に向け、本質的で困難な政治決断を下すよう、日本をはじめG20は、働きかけ続ける必要がある。

IMFの資金支援により、そうした政治決断が先送りされるようでは、真の貢献とは呼べまい。
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[読売新聞] G20声明 欧州は自前の安全網拡充急げ(2月28日付・読売社説) (2012年2月28日)

欧州危機の封じ込めには、欧州の一層の自助努力が不可欠だ。

日米と新興国が厳しい注文を突き付けたと言えよう。

日米欧と中国、ブラジルなどが参加したメキシコでの主要20か国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は、共同声明を採択して閉幕した。

焦点は、信用不安拡大に備えた国際通貨基金(IMF)の資金基盤増強策だったが、決着は4月の財務相会合に先送りされた。

声明は、ユーロ圏が3月中に自ら支援能力を「再評価」することが「G20の重要な判断材料になる」と指摘した。IMFの融資枠拡大に先立ち、欧州に自前の安全網拡充を迫った意味は大きい。

信用不安国に対するユーロ圏の緊急融資枠は現在、欧州金融安定基金(EFSF)と、7月に発足させる欧州安定メカニズム(ESM)を合わせて5000億ユーロ(約55兆円)にとどまる。

欧州では、これらの融資枠を拡大する案が浮上しているものの、具体化は難航している。追加負担を懸念するドイツが慎重で、独仏両国と、ギリシャなど被支援国との対立も影を落としている。

欧州連合(EU)は3月初めに首脳会議を開く。融資枠拡大などG20を納得させる追加策を打ち出せるのか。結束が問われる。

IMFは、5000億ドル(約40兆円)の融資枠拡大を検討し、日米や中国などに資金拠出の協力を呼びかけている。

日中両国は前向きに検討中だが、米国は支援の枠組みと資金拠出に慎重姿勢を続ける。財政難の中、米議会の承認が得られる見通しがたたず、中国などの発言力増大も警戒しているためだ。

欧州はIMF支援を追い風に、危機を乗り切りたいのが本音だろう。それには自助努力で追加措置に踏み出すことだ。

EUなどが先週、震源地ギリシャへの第2次支援策を決めたことで、ギリシャが債務不履行(デフォルト)に陥る事態は回避されそうだが、信用不安はくすぶる。

共同声明が、「経済の下振れリスクは高い」と警鐘を鳴らしたのは当然だろう。

声明は、イラン情勢の緊迫化や世界的な金融緩和に伴って原油価格が1バレル=100ドル超に急騰していることも、世界経済の新たな懸念材料として警戒を表明した。

原油高は、本格的な景気回復が遅れる日本にとっても重荷だ。

G20は引き続き、価格の監視を強化するとともに、産油国に安定供給を求める必要がある。
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[読売新聞] 首相沖縄訪問 関係改善テコに普天間進展を(2月28日付・読売社説) (2012年2月28日)

沖縄県との関係改善を米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の進展につなげることが肝要だ。

野田首相が就任後初めて沖縄県を訪問し、仲井真弘多知事と会談した。

首相は、普天間問題の迷走について陳謝した。知事は、2012年度の沖縄振興予算の大幅増などを「快挙」と歓迎し、「心から感謝する」と語った。

仲井真知事には、さらなる沖縄振興策への期待があるのだろうが、鳩山元首相の失政で生じた民主党政権への沖縄の不信感は、かなり払拭されたのではないか。

野田政権は、沖縄振興策の拡充に加え、米国人軍属の裁判権をめぐる日米地位協定の運用を改善した。普天間問題と海兵隊のグアム移転を切り離し、県南部の米軍施設先行返還への道も開いた。

菅政権が無為無策だったのに対し、野田政権が沖縄の多くの要望に一歩一歩応えてきたことは高く評価できる。ただ、やはり肝心なのは普天間問題である。

首相は会談で、辺野古移設が「唯一有効な方法」と述べ、改めて理解を求めた。知事は「辺野古はものすごく時間がかかる」として、従来通り県外移設を主張し、議論は平行線に終わった。

沖縄県は先週、辺野古移設に関する政府の環境影響評価について騒音対策など25項目、175か所が不適切で、「環境保全は不可能」との知事意見書を示している。

辺野古移設の実現に不可欠な知事の許可を取り付けるためのハードルは、依然として高い。

それでも、過去15年以上に及ぶ日米両政府の検討でも、辺野古以外に、現実的な移設先は見つかっていない。辺野古移設の頓挫は、普天間飛行場の長期間の固定化という最悪の展開を意味する。

今なお、条件付きで辺野古移設を容認する周辺住民や関係者が少なくない点も考慮すべきだ。

今年5月、沖縄は本土復帰40周年の節目を迎える。名護市では太平洋・島サミットが開催される。政府は、様々な機会を利用し、沖縄振興策や米軍基地の地元負担の軽減を進める中で、辺野古移設への理解を広げる必要がある。

首相が会談で指摘したように、日本の安全保障環境は近年、一段と厳しくなった。北朝鮮の核や中国の軍備増強によって、在沖縄海兵隊の抑止力を維持し、日米同盟を深化する意義は増している。

野田首相は、沖縄の地政学的な重要性や、沖縄振興を特別に重視する必要性について、国民全体にきちんと説明せねばならない。
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[朝日新聞] 企業年金消失―監視態勢に工夫を (2012年2月28日)

株価の低迷などにたたられ、どこの年金も構造的な運用難に苦しんでいる。

そんななかで、「相場に左右されない安定した利回り」とうたって、80を超す企業年金から2千億円以上をかき集めていた「AIJ投資顧問」で、運用資産の大半が消えてなくなる異常事態が判明した。

金融庁と証券取引等監視委員会が真相の解明と業界の実態調査を急いでいるが、ここまでひどい会社がなぜ「野放し」のままだったのか。

投資顧問業は、規制緩和によって参入が容易な登録制となっている。年1回、運用成績の報告が義務づけられてはいるが、外部監査などのチェックは受けなくてもいい。

金融庁の検査は、要員の制約もあって年15社がせいぜいだ。全体の5%強でしかない。

金融自由化を否定すべきではないが、事後的な監視態勢を強化しなければならない。金融庁は、問題のある運用や営業行為を早期にあぶり出せるよう、情報の開示義務などに工夫を凝らす必要がある。

問題は運用を任せる側の年金基金にもある。「投資のプロ」なら、自己責任で相手を選別するのが筋だ。

しかし、専門家の助言も受けない小さな年金基金も多く、建前通りに行くとは限らない。問題のある業者が当局にすぐに通報されるようなガイドラインの整備など、「カモ」にされない支援態勢を整えるべきだ。

AIJが売り物にしたような金融派生商品による運用は、本来は資産のごく一部を充てる補完的なものだ。

ところが、被害にあった年金基金の中には、かなりの部分を任せてしまった例が見られる。

とくに、支給額をあらかじめ約束している確定給付型の年金では、随分前に決めた予定利回りが高いままのところも多い。運用が目標利回りに届かず、勢いリスクの高いハイリターン運用へ傾斜しがちだ。

それが、悪質な業者の横行を許す温床となる。年金基金の財務は厚生労働省が監督しているが、このような問題にメスを入れてきたとはいいがたい。

年金に開いた穴は、母体企業が負担するか、年金の給付額を減らすかして埋め合わせることになりそうだ。場合によっては、基金が解散に追い込まれることもありうる。当事者は厳しい対応を迫られる。

他の多くの年金にとっても、今回の事件は資産をどう持続させるか、真剣に考えるための警告となったのは間違いない。
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[朝日新聞] 首相沖縄訪問―負担軽減を早く確実に (2012年2月28日)

就任から半年、ようやく野田首相が沖縄を訪問した。

税と社会保障の一体改革などの難題を抱えているとはいえ、あまりに遅い対応だった。普天間の移設先とされる名護市の市長にも会わなかった。

首相は仲井真弘多(ひろかず)知事との会談で、政権交代以降の普天間をめぐる迷走や、前沖縄防衛局長の女性蔑視の暴言について、深々と頭を下げた。

「おわび」から入らなければならない事態が、動かない沖縄問題を象徴していた。

それなのに、首相は普天間を固定化させないためには、辺野古移設が「唯一有効な方法」だと、これまでの政府の姿勢を繰り返した。代替案がない現状の厳しさはわかるが、説得力はまるでない。

予想された通り、あくまで県外移設を求める知事とは平行線に終わった。

知事は先週、国の環境影響評価に対し、辺野古移設に反対する意見書を出したばかりだ。

「生活、自然環境の保全を図ることは不可能」という沖縄の専門家の知見に基づいている。将来、政治的な事情の変化で覆る内容ではあるまい。

普天間をめぐる日米合意の実現は、ますます遠のいている。

この現実を、首相は真剣に受け止めなければならない。

そして、今春の訪米に向け、より抜本的な米軍再編の見直し策を練り、「辺野古移転断念」に踏み切るべきだ。

この大転換がなければ、沖縄問題の進展は望めない。同時に、首相が取り組むべきは、在日米軍基地の74%が集中する沖縄の負担軽減である。

カギを握るのが、さきに普天間問題と分離された、嘉手納基地以南の5施設の先行返還だ。どの施設を、いつまでに返すのか。速やかに、具体的な成果をあげることを期待する。

基地機能の維持を求める米側との交渉は容易ではないが、首相を先頭に日本政府の総力を示すときだろう。

同時に、日米で合意した基地騒音の軽減が、米軍の運用によって事実上骨抜きにされている実態にも、厳しく対処してほしい。沖縄県民は目に見える結果を待っている。

沖縄防衛局長の講話問題は、どうなったのか。宜野湾市長選で暗に特定候補への投票を促したと見られても仕方ない。更迭しなければ、沖縄へのおわびも信頼回復への努力も、言葉だけだと受け取られるに違いない。

沖縄の信頼を取り戻すには、できることから、ひとつずつ実行することだ。
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