2011年12月31日

[産経新聞] 【主張】民主消費増税決定 歳出削減にも指導力示せ (2011.12.31)

野田佳彦首相が最大の懸案であった消費税率引き上げに関する民主党案をまとめた。

首相は29日の党税調総会で「困難があっても国の将来のために避けては通れない」「政治家の集大成のつもりで臨む」などの決意を示した。

少子高齢化が進む中で、社会保障の安定財源を確保するための消費税率引き上げは避けて通れない課題であり、年内の決着にこぎつけた首相の手腕は評価したい。

しかし、増税へ国民の理解を得るには、確実な経済成長と、政治家や公務員が身を削るなどの歳出削減策の実行が不可欠だ。

首相は国会議員定数と国家公務員給与の削減の関連法案を次期通常国会に提出し、成立に全力を尽くすと強調した。いずれもハードルは高く、これらの実現に重い責任を負った。

了承された増税案は、平成26年4月に8%、27年10月に10%と2段階で消費税率を引き上げるもので、それぞれ半年ずつ遅らせる修正が加えられた。

増税の実施時期を半年先送りすることで、27年度税収は党税調の当初案よりも少なくなる。政府は国債費を除く基礎的財政収支の赤字水準を「平成27(2015)年度に22年度比で半減させる」との財政再建目標を掲げているが、その達成は極めて難しくなった。
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[東京新聞] 大晦日に考える 人間、そのすばらしさ (2011年12月31日)

ことしの日本の最大の出来事は、悲しいことですが東日本大震災と、それに続く原発事故でした。しかしそこに見たのは、人間の強さでもありました。

大震災の起きた日、東北から遠い所もゆらりゆらりと大きく揺れました。その直後のテレビの映像で、私たちは見たこともないような惨事の発生を知ったのでした。

私たちに少々意外でもあったのは外国の報道ぶりでした。速報で定評のある米国CNNの女性記者は、岩手県大槌町の商店が無料で食べ物を配ったことを紹介し、恐ろしい現実の中での日本人の冷静な行動は気高いと評して世界に伝えていました。


◆世界を驚かせた日本人
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他の外国メディアも被災者らの忍耐強い行動を一種の驚きをもって伝えるので、日本人が日本人をあらためて見直したものでした。現実には福島などで避難した無人家屋への空き巣などもあって、自警団が回りもしましたが、世界一般から見るならば、被災者の秩序ある行動は発見に値するようなことでもあったのです。

その日本人を驚かせ、また喜ばせもしたのが、米コロンビア大学名誉教授で日本文学者のドナルド・キーン氏でした。大震災のあと日本国籍取得と日本永住を決めたのです。

キーン氏は、一九二二(大正十一)年、ニューヨーク生まれ。日米開戦に伴い米軍で日本語教育を受け、戦後京大に留学する。

震災のあとの東北での講演で「私は平凡な日本人になりたい」というようなことを話されました。文学者の彼は、もちろん日本および日本人の鋭い観察者でした。日常を一番正直に写す日記類の研究もしていた。講演の中で、彼は作家の高見順の日記(「敗戦日記」)を引きます。

その高見の日記は一九四五(昭和二十)年三月の東京大空襲のあとの上野駅の被災民の列を見て、こう記している。


◆権力も財もないひとり
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「何の頼るべき権力も、財力も持たない。黙々と我慢している。そして心から日本を愛し信じている庶民の、私もひとりだった」

たとえすべてを失っても、再び仕事を始める。財はなくとも忍耐がやがて道を開く。同じ境遇の仲間がいる。新しい日々は古い日々をもとに始まりそうだ。そういうような普通だけれど強く生きる人々の一人で私もありたい、とキーン氏は言うのでした。

だが、もう少し想像を広げてみましょうか。文学者キーン氏、人間キーン氏が大震災の中に見たものとは、普通の日本人にとどまらず、もっと広くより普遍的な人間の強さ、素晴らしさではないかとも、思うのです。極限にあって初めて気づかされる人間存在そのものと言えばいいでしょうか。

今年はじめ、世界の目は中東にくぎ付けになりました。

「アラブの春」です。

エジプト・カイロの、その名も解放を意味するタハリール広場に集まった民衆は素手でした。実弾を撃つ治安警察に流血覚悟で立ち向かい、革命を成し遂げた。我慢に我慢を重ねてきた普通の人々の人間的品位と威厳とが勝利した瞬間でした。シリアでも同じことが起きました。

シリアという秘密警察国家に潜入した欧州の記者は、民衆と軍の衝突を見て、思わずこう口走りました。…見てください。彼ら民衆は驚くべきことに武器をもっていません。

デモは欧州でも米国でも起きました。日本では福島のお母さんたちが、国の放射線対策の甘さに業を煮やして霞が関に詰めかけました。人間の未来をかけた闘いなのです。脱原発集会もありました。

主義主張はもちろん人さまざまにある。それは利害や、確執を生む。しかし今年、私たちが見たものは、人間の醜さよりも素晴らしさ、また崇高さだったのではないでしょうか。日本では、それは不幸にも3・11という大きな危難が現出させたのですが、私たちはそこに希望と力と自信も見いだすこともできたのです。


◆私たちは助け合おう
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危難に遭い、また運動の中で人は見知らぬ人々と出会いました。ボランティアや集会など。震災での私たちの社説の見出しは「私たちは助け合う」でした。果たしてその通りになったのです。助け合う、そのことの一つひとつが私たち人間の誇りです。二〇一一年という年は不幸でしたが、後世に伝えるべき年となったのです。

東北は雪の降り積むころ。日中でも気温が氷点下の日があります。被災者たちの闘いは、年を越えます。それはしずかだが火を燃やし続けるような熱く粘り強い闘いです。私たちも奮闘しよう。日本がこんな閉塞(へいそく)状態だから、私たちそれぞれがその内なる火を大いに燃やそうではありませんか。
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[産経新聞] 【主張】日印首脳会談 海洋安保軸に連携拡大を (2011.12.31)

訪印した野田佳彦首相がシン首相と首脳会談を行い、海洋安全保障協力の拡大などを含む共同声明に署名したことは、地域の海洋覇権樹立を狙う中国を牽制(けんせい)する「戦略的グローバル・パートナーシップ」を一歩進める外交として評価できる。

両国はアジアの2大民主主義国としての価値や利害を共有し、来年の国交60年を機に海上自衛隊とインド海軍の初の2国間訓練も行われる。

インド洋へ足場を拡大する中国を牽制し、海上交通路の相互の安全を図る上でも日印協力は理にかなう。首相は日米同盟強化を怠らずに、日米印の戦略対話と連動させるなど重層的な連携をさらに深める努力を重ねてもらいたい。

日印連携の重要な意義は、野田首相が首脳共同会見で「両国は価値や戦略的利益の共有だけでなく相互補完性がある」と述べた点にある。中国は東シナ海、南シナ海に加え、インド洋でも対印包囲網といえる拠点構築を進め、インドが懸念を募らせているからだ。

特にインド側はインド洋の中国潜水艦の暗躍に警戒心を高め、日本の対潜水艦能力などの技術にも関心を示しているという。

共同声明には「海洋安保協力」が明記され、来年の共同訓練に向けて制服レベルの協議を立ち上げて調整を進める。この枠組みを発展させれば、日米を軸とする「日米豪」「日米韓」に加え、「日米印」へ協力がつながる。米国の呼びかけで19日、初の日米印3カ国の局長級戦略対話が米国で開かれたことも大切な布石といえる。
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[毎日新聞] 社説:消費増税案 ギリギリで合格点だ (2011年12月31日)

まさにぎりぎりの「年内決着」だ。税と社会保障の一体改革で、最大の焦点となった消費税率引き上げの幅と時期を民主党がやっと決めた。

まず14年4月に8%、15年10月には10%まで引き上げる。反対派に譲歩する形で、野田佳彦首相自ら、原案にあった時期をそれぞれ半年遅らせる修正案を示し、了承を得た。

決して立派な出来だとほめられる内容ではない。それでも、増税そのものへの反対論が渦巻き、離党者まで出る状況下で、何とか年内に増税時期と幅を決めたことは評価する。首相が、「政権与党は一番苦しいテーマから逃げてはならない」と訴え、先送りやあいまい決着を許さない姿勢を貫いたのは正しかった。

政府が15年度の10%にこだわったのには理由がある。昨年6月に閣議決定した財政健全化目標だ。借金の返済分を除いた国と地方の財政収支の赤字(国内総生産比)を15年度までに半減させ20年度までに黒字化するというものである。「15年度に消費税率10%」を実現できなければ、健全化の一里塚に過ぎない約束さえ守れないということになる。

ギリシャに始まった欧州の債務危機が突きつけた問題は国家の信用力だ。借金の規模以上に、財政を改善させる政治の意思と実行力が注視されている。一度、約束をほごにすると信用が大きく揺らぎ、回復がいかに重い犠牲を伴うかということを国債市場が残酷なほど鮮明にした。

その意味で、民主党が消費増税実現に一歩踏み出した意義は小さくない。今後、最終案や法案に仕上げる過程で、これ以上後退のないよう、首相のリーダーシップを望みたい。

強調しておきたいのは、「景気への悪影響」は極端な場合を除き、増税先送りの理由にならない点だ。後になれば景気がよくなる保証などない。選挙の都合という事情から景気を口実にするのは無責任だ。先の見通しを明確にしない方が、企業活動にも市場にも悪影響を及ぼす。

消費増税は決まったものの、積み残した問題、さらに具体化しなければならない点は少なくない。例えば増税が相対的に大きな負担となる低所得者への対策として給付つき税額控除を導入する方針のようだが、欠点も指摘されており、欧州型の複数税率などの検討も進めてほしい。

増税する以上、税金全般の使い道についても、もっと切り込みが必要だ。国会議員定数や国家公務員の人件費を削減する法案を次期通常国会で成立させるのは当然である。

野党との合意、法案の成立まで、まだ道のりは険しいが、遅れたらその分、国民へのしわ寄せが重くなる。与野党が足の引っ張り合いをしている余裕など、この国にない。
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[毎日新聞] 社説:回顧2011年 3・11を乗り越えて (2011年12月31日)

東日本大震災に見舞われた2011年に、日本と日本人がとった行動は、後世にどのような評価を受けることになるのだろうか。

マグニチュード9の巨大地震が起こったのは3月11日午後2時46分18秒。揺れの続く中で約3分後に大津波警報が出された。激しい水流に街全体が破壊されていく光景が私たちの目に焼き付いた。

死者は1万5000人余りを数え、行方不明者も加えると2万人に迫る未曽有の大災害だ。膨大な資金を投じ、世界でも類のない津波対策を講じてきたにもかかわらずだ。自然の脅威に、私たちは今なお、脆弱(ぜいじゃく)であることを思い知らされた。

しかし、極限的な状況の中で被災者がとった「利他的」な行動に、世界は驚嘆した。日本の中でも、ボランティアや義援金などの形で被災地に対する支援の輪が広がった。

共同体が崩れ、社会の分断が進んでいると言われている。しかし、日本人が「絆」で結ばれていることを確認できたのは、大災害という不幸な状況下ではあるものの、社会への信頼を再認識する契機になったのではないだろうか。

震災は天災である。それによって生じる被害を最小限にとどめることができれば、そう言い切ることができるだろう。しかし、実際にはそうではなかった。

福島第1原発事故は、原発の安全神話のもとに、事故への対応がいかになおざりにされてきたかを示した。政治の動きも鈍かった。衆参のねじれの中で、先鋭化した与野党の対立が、震災や原発事故への対応にも持ち込まれてしまった。

世界の生産活動が密接に連携し、どこかで支障が生じると、その影響が瞬く間に広がる。日本での震災に加え、タイでの洪水でも示されたサプライチェーンの問題だ。

欧州の債務危機も、ギリシャの段階で適切な措置がとられず、欧州全体に危機が広がっていった。

さまざまなリスクに対する対応力が問われているわけだが、特に原発事故は、日本の対応力の低さを世界に示した格好だ。また、普天間飛行場移設をめぐる環境影響評価問題での政府の醜態も、対応力の劣化という点で特筆すべき事例だろう。

政治や行政に企業も含め、リスクへの対応力の再構築が必要であることが、今年ほど鮮明になった年はない。震災からの復興、原発事故の収束と放射性物質の除染には、長い時間と多くの資源、そして忍耐を費やさなければならない。その過程でも多くのリスクが待ち受けている。

それへの対応力をつけ、3・11を乗り越えていけるのか。来年は、それが問われる年になる。
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[朝日新聞] 首相と増税―豹変して進むしかない (2011年12月31日)

民主党が、消費税率を2段階で上げる案をまとめた。14年4月から8%に、15年10月には10%にする。

「年内」に引き上げ時期と税率を示す約束をしていた野田首相は、なんとか面目を保った。反対派に配慮して、党税制調査会の役員会案から、それぞれ半年ずつ遅らせたが、案を固めたことは率直に評価する。

これで、ひとまず社会保障と税の一体改革のスタート台には立てた。

首相はおととい、議論を決着させる党の会議で「政治家としての集大成」という言葉を使った。その覚悟を本当に形にしてほしい。

なにしろ、ここまでの首相の態度は煮え切らなかった。

さきの臨時国会では、国家公務員給与や議員定数の削減をできず、みずから身を削る姿勢をまったく示せなかった。

それなのに来年度から八ツ場ダムの本体工事や、整備新幹線の三つの新規区間の着工、東京外郭環状道路の建設再開を決めた。大震災の復興費用がかさむなか、あえて大型公共事業の復活に道を開いた。

これでは、税率引き上げに反対する理由を、わざわざばらまいたようなものだ。あまりの戦略性のなさは、政権の命取りにさえ見えた。

一方で、党内の増税反対派の動きも理解しがたかった。

8月の党代表選で、野田氏が勝った時点で、増税方針は決着したのではなかったのか。

むろん、デフレ脱却が先だ、もっと行革をすべきだ、といった意見はあり得る。だが、ならば、そのための政策を論じ、実現するのが与党議員の務めではないか。

残念ながら、反対派の言動からにじんだのは、次の選挙が心配という個別事情だ。

その極めつきが、議論が終わる前に、党を捨てて、離党した議員たちだ。

首相には自民党など野党との協議、国会での法案審議、そして採決と、より高いハードルが待ち受ける。与党内からも、法案に反対する議員が出るのは避けられそうにない。

だが、この一体改革はもはや後戻りはもちろん、立ち止まることさえ許されない。

首相はおととい、「来年は国民のための正念場の年だ。『君子は豹変(ひょうへん)す』という立場で行革にも臨む」と訴えた。

言葉どおり、無駄の削減を実現しなければ、改革への世論の支持は広がらず、政権の命運も尽きる。首相は厳しい現実をみつめ、突き進むしかない。
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[朝日新聞] 金正恩体制―変化の機会を逸するな (2011年12月31日)

平壌で金正日総書記の告別式と追悼大会があった。各界代表が新たな指導者として三男の金正恩氏を押し立て、「革命偉業の継承を」と訴えた。

これから北朝鮮はどう進むのか。世界が注視するなかで、「金正恩体制」の始動である。

正恩氏をたたえる北朝鮮からの報道が増えている。

いわく、総書記死去に伴って軍事演習中断の命令を出し、弔問の外交団への応対を続けた。韓国の故金大中大統領の夫人らの弔問も受けて面会した。

呼称も、これでもかと言わんばかりだ。「最高領導者」「唯一の後継者」、さらに「21世紀の太陽」「軍最高司令官」という表現まで現れた。

後継者としての正統性と、順調な滑り出しを強調したいようだ。裏を返せば、短い準備期間で自立を迫られたことへの焦りのようにも見える。

なにしろ、正恩氏は30歳に満たない。統治の経験もなく、指導力やカリスマ性に疑問符がつく。すぐには大胆な新機軸は打ち出しにくいだろう。

当面は、脇を固める側近に頼らざるをえまい。ただ、その陣容も、たとえば核問題や米国との交渉の顔ぶれは20年近く実質的に変わってはいない。

しかし、旧態依然とした特権階級に囲まれた新体制が、変化を遠ざけ、独裁体制をただ踏襲していくだけでは困る。

それは、日米韓はもちろん、北朝鮮の後ろ盾として新体制をいち早く支持した中国も望むところではないはずだ。

きのう、最高指導機関の国防委員会が、韓国の李明博大統領を名指しで非難して、「我々に対するいかなる変化も望むな」と宣言した。

まずは、こうした態度を改めることだ。

そして真っ当なメンバーとして国際社会に加わる。それによって経済の再生に取り組み、住民の生活の改善を図っていく。

体制の移行期を、北朝鮮みずからが、核やミサイル、拉致などの問題の包括的な解決に生かすように動くことで、米朝や日朝の国交正常化、韓国との平和共存をめざす。そんな展開を望まずにいられない。

北朝鮮は来年、故金日成主席の生誕100年の節目を迎える。現実的な政策への転換と国際協調なしには、将来の展望が開けないことを自覚しなければならない。

私たちも北朝鮮の「瀬戸際外交」の手口からは、多くを学んでいる。核やミサイルの実験で状況を変えようとしても、もう通じない。
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[読売新聞] 日印首脳会談 経済や安保で戦略的な連携を(12月31日付・読売社説) (2011年12月31日)

日本とインドが、経済や安全保障などで幅広く連携し、「戦略的利益」の共有を確認したことの意義は大きい。

訪印した野田首相はシン首相との会談で、デリー・ムンバイ間の貨物鉄道や沿線の工業団地建設を中核とする巨大事業へ、45億ドル(約3500億円)を融資することを表明した。

インドが計画中の高速鉄道については、新幹線の技術を活用するよう求めた。

インドは今後5年間で1兆ドル(約78兆円)の社会資本投資を予定している。その柱となる交通網整備への支援は、インドの経済発展を支えるだけでなく、日本の商機拡大にもなるだろう。

共同声明には、両国企業がインドでレアアース(希土類)を共同生産する方針が明記された。日本には、輸出を規制する中国への依存度を下げる道が開ける。レアアースの安定的確保につなげたい。

安全保障分野では来年、海上自衛隊とインド海軍が共同訓練を行うことを確認した。インドは中東からの海上交通路(シーレーン)の要衝にある。その安全は、野田首相が講演で語ったように「両国の死活的な利益」に直結する。

防衛当局の事務レベルに加え、制服組が連携することは重要だ。中国海軍のインド洋進出へのけん制にもなる。

日印が交渉中の原子力協定について「妥結に向け一層努力する」ことで一致したのは妥当だ。

インドは、核兵器を開発した中国への対抗上、自らも核兵器を保有した。一方で、核実験凍結を宣言し、民生用の原子力施設に対する国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れる方針だ。

野田首相は、こうしたインドの姿勢を前提に「核軍縮、不拡散に十分に配慮し、交渉を進めたい」と述べた。インドが、日本の原子力技術を兵器開発に転用しないことなどを明確にすれば、交渉の前進にプラスになろう。

慢性的エネルギー不足に悩むインドは「原発大国」を目指し、現在約20基を稼働中で、さらに20基程度増やす計画だ。

原発の受注を目指す米仏両国も日本製の部品が欠かせないため、日本に協定締結を促している。

日本は原発事故の教訓を生かし、インドの原子力安全に貢献すべきだ。日本の原発ビジネスの推進にも弾みがつくはずだ。

2005年以降、日印両国は毎年、首相の相互訪問を続けてきた。今後も首脳会談を重ね、より緊密な関係を築きたい。
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[読売新聞] 2011回顧・世界 独裁者の死と失脚で揺れた年(12月31日付・読売社説) (2011年12月31日)

北朝鮮の金正日総書記が死去――。年の瀬に飛び込んできた、この大ニュースは、本紙読者が選んだ「海外10大ニュース」に「番外」として、急きょ追加された。

北朝鮮の国営メディアは、三男の正恩氏が金総書記の後継者になると伝えた。北朝鮮は平壌で国葬、追悼大会を行い、後継体制の安定ぶりを誇示したが、権力継承が円滑に進むのかは不透明だ。武力挑発などへの不安も残る。

北朝鮮と対照的に、中東や北アフリカでは、独裁体制が相次ぎ崩壊する歴史的なうねりが起きた。チュニジアやエジプトなどで長期独裁政権が倒れた「アラブの春」は、10大ニュースの3位だ。

その後、エジプトでは国会選挙が行われ、カダフィ体制が崩壊したリビアも制憲議会選に向けて動き出した。選挙を通じた民主化が地域に根付いていくのか、緊迫した情勢が続いている。

2001年の米同時テロを首謀した国際テロ組織「アル・カーイダ」の指導者ウサマ・ビンラーディンの殺害(2位)は、テロの脅威を思い起こさせた。テロとの戦いはなお各地で行われている。

一方、海の向こうで起きた自然災害や債務危機は、東日本大震災からの復興途上にある日本の経済にも重大な影響を及ぼした。1位は「タイで洪水被害、日系企業も大打撃」だった。

9月以降、被害を広げた大洪水は、立ち直りつつあった自動車、電機、レンズなどの企業に打撃を与えた。世界の部品供給網を混乱させた衝撃も大きかった。

ユーロ危機の深刻化(5位)に対しては、独仏などが危機収束に取り組んでいるが、金融不安は解消されていない。歴史的な超円高とともに、日本の景気回復を遅らせる原因となっている。

中国が日本を抜いて世界第2の経済大国になった(9位)ことは、その膨張ぶりを鮮明に示した。高速鉄道の追突事故(6位)をめぐる中国当局の対応には、人命や安全性の軽視が際立ち、経済大国にふさわしからぬ姿をさらした。

巨大な経済力と軍事力を背景に強硬姿勢を強める中国にどう向き合うかは、日本にとって、来年も重要な課題となろう。

日本人28人も犠牲になったニュージーランドの地震(4位)や、トルコの地震(11位)では、多くの尊い命が失われた。

世界人口の70億人突破(8位)は、様々な問題を抱える世界が「持続可能な成長」に最優先で取り組む必要性を物語っている。
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2011年12月30日

[東京新聞] 震災と日本人 自然と謙虚に向き合う (2011年12月30日)

“想定外”の言葉が飛び交って、原発事故の責任逃れにも使われた東日本大震災。自然の突きつける冷厳な事実を直視しないと、大災害は繰り返される。

まず、東北地方沖の太平洋で複数の震源が破壊され、マグニチュード(M)9・0の巨大地震と大津波が襲うとは、研究者、行政からの警告は一切なかった。

東北、北海道沖では、太平洋プレートが陸側プレートの下に沈み込む。このため過去もプレート境界付近を震源に明治と昭和(一八九六年、一九三三年)の三陸地震津波、十勝沖地震(二〇〇三年)などが起きている。


◆地震研究の“敗北”か
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しかし3・11以前には、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震として八つの地震が個別に予想されたのみ。宮城県沖地震を筆頭に発生の切迫性は指摘されたが、人的被害想定は最大の明治三陸タイプ地震で約二千七百人にとどまる。

東日本大震災は、事前の想定に基づく防災対策を「机上の空論」に終わらせた。良心的な地震研究者すら、“全くの想定外れ”と認めたのは事実である。今秋、静岡市で開かれた地震学会大会では、「地震学全体の敗北」との発言も聞かれた。

地震発生の日時、場所、規模を特定した厳密な短期予知はもちろん、長期的な警告でも事前にあれば、防災意識を高め充実した対策が可能なことは当然である。

駿河湾付近が震源の東海地震は一九七六年までに、石橋克彦・東京大理学部助手(当時、現神戸大名誉教授)らが警告した。

同湾から日本列島南岸沿いのフィリピン海プレートと陸側プレートの境界(南海トラフ)付近が震源の一連の海溝型地震、東海、東南海、南海地震は過去百〜百五十年周期で発生した。一九四〇年代に東南海、南海は相次いだが、東海のみ一八五四年以後起きていないのが大きな根拠である。

これは長期的な警告だが、問題は東海地震が予知も可能とされてきたことである。

周知のように東海地震の予知可能説は、一九四四年十二月の東南海地震直前、静岡県森町−掛川市間の水準測量で往復の標高が食い違ったことに基づく。これを地震の前兆の地殻変動と解釈する。

伊豆半島−遠州灘沿いに設けたひずみ計など現在の観測網でとらえたデータの異常が増え、東海地震発生の恐れと判定すれば、首相は警戒宣言を発令する。公共交通機関は運行を止め、防災担当機関は非常事態に備える。


◆限界、率直に認めよ
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しかし、土台となる標高の食い違いを測定誤差と疑うなど異論も強い。予知できず地震が不意打ちなら、3・11同様警戒宣言どころではない。タイプは違うが阪神大震災でも警告は一切なく、地震予知への厳しい批判を呼んだ。

特定の地震が予想不能ならば、現在の地震研究の限界と率直に認めるべきであろう。「敗北」と焦る必要はない。過去の地震や地殻変動の現状をより正確に明らかにすれば、防災に貢献する。

広く精密な観測網の充実には異論はない。予知可能かどうかにかかわらず、プレート境界付近の地殻変動、陸上や日本列島周辺の活断層の存在と動態究明は、長期的な地震対策に着実に役立つ。

東日本大震災以後、東海、東南海、南海が同時または続く三連動地震発生の恐れが指摘された。一七〇七年の宝永地震など過去の例に基づく。また海溝型地震では、従来想定されたプレート境界の深部のほか、浅い領域も震源になるとわかった。このため南海トラフの南縁(海溝軸)の浅い部分と日向灘も震源に加わる五連動地震の危険も浮上した。

国内に起きた地震の歴史的研究も重要さを増している。古文書・古記録など文献から地震の発生、震源、規模、被災地域を推定、過去の地震の姿を鮮明にすれば、海溝型巨大地震の周期や直下型の発生頻度の高い地域を絞れる。

近年注目されている地層の発掘調査も、文献史料との照合で、歴史時代の地震・津波被害の実態確定に寄与する。3・11で話題になった貞観地震(八六九年)がよい例である。おおいに期待したい。


◆事実がすべてに優先
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福島第一原発の重大事故は、放射能汚染を中心に真の収束には程遠い。この事故で原発安全神話は、まじめな研究者の警告を無視、国、電力会社、一部の学者が作り上げたことが暴露された。

良心的な地震研究者の成果は、原発の安全神話とは無縁である。しかし、事実が想定を超えたり仮説が反証されたら、それを受け止めて新しいデータの収集や解釈を進め、現状で可能な見通しを示すのが正しい科学のあり方である。破綻した仮説にしがみつけば、新しい神話を生みかねない。
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[産経新聞] 【主張】回顧2011 震災の記憶語り継ごう 政治は被災地を泣かせるな (2011.12.30)

近年、日本がこれほどの国難に見舞われたことがあったろうか。3月11日、マグニチュード9・0の大地震が列島を襲った。激しい揺れに続き、津波が北海道から関東までの太平洋側を浸食した。

東日本大震災の死者・行方不明者数は2万人に迫る。子を失った親、親を失った子、不幸は何通りもある。あまりに大きな喪失感は、埋めようがない。

全電源を失った東京電力福島第1原子力発電所が制御不能に陥り、水素爆発で破壊された建屋が無残な姿をさらした。ようやく原子炉は冷温停止状態に達したが、周辺住民は帰宅の見通しが立たず廃炉には長い年月を要する。

≪津波てんでんこ徹底を≫

未曽有の大災害の中にも、語り継ぐべきことは数多くあった。

震災犠牲者の実に92%が水死だった。改めて津波の猛威を思い知る。岩手県釜石市も甚大な津波の被害にあったが、約3000人を数える小中学生のほとんどが無事だった。過去に多くの被害にあった津波対処の言い伝えとして、各自が一目散に高台へ避難する「津波てんでんこ」の教えが徹底されていたためだ。「釜石の奇跡」を教科書に掲載するなど、教訓を全国に広げたい。

津波で住む家を失った住人らは避難所で秩序を保ち、忍耐強く救援を待った。被災者が自ら復旧の先頭に立ち、子供たちは壁新聞を作って大人を鼓舞した。
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[毎日新聞] 社説:日印関係 地域大国との絆を太く (2011年12月30日)

来年は日本とインドが国交を樹立してちょうど60年になる。

このアジアの大国との関係は、中国や韓国、東南アジアとの関係に比べて決して緊密とは言えなかった。だが、経済的にも政治的にもインドが国際社会に占める比重はますます大きくなっている。日印関係の絆を太くすることは、これからの日本外交にとって極めて重要だ。

野田佳彦首相は中国訪問のあとインドを訪れ、シン首相と会談した。日本とインドは「戦略的グローバルパートナーシップ」の構築を目指すことを確認し、05年から毎年、首相の相互訪問を続けている。

近年の日本外交が、これほどハイレベルで関係強化の努力と実績を積み重ねている国は少ない。首脳交流を大事にし、今後も継続することが肝心である。だが、過去7年間で相互訪問した首相がインド側はシン首相1人なのに対し、日本は小泉純一郎首相(05年)、安倍晋三首相(07年)、鳩山由紀夫首相(09年)、そして今回の野田首相と毎回顔ぶれが違う。これでは首脳同士の個人的な信頼関係を築くのは難しい。不安定な政治が国家関係にいかにマイナスかを改めて肝に銘じたい。

インドが世界に重きをなす大国であるのは明らかだ。ユーラシア大陸のほぼ中央に位置し、国土面積はロシアを除く欧州とほぼ同じ広大さである。中国に次いで世界2位の人口は、25年には14億6000万人と世界1位になると見込まれている。年率8・5%(10年度)と中国並みの急激な成長を続けている経済力はアジアで3位、世界でもイタリアとカナダの間の9位を占める。

これほどの潜在力を持つ大国インドとの関係を維持発展させることの意味は、単に魅力的な市場の確保という経済的な側面だけで語れるものではむろんない。海洋で軍事的な影響力を強める中国をけん制するためにも、その背後でシーレーン(海上交通路)の要衝を占めるインドと連携を密にし、安全保障面で協力を拡大していくことが必要だ。

日印首脳はレアアース(希土類)の共同事業推進でも合意した。昨年の尖閣諸島沖での漁船衝突事件のあと、中国からのレアアースの対日輸出手続きが停滞したことを想起すれば、ハイテク製品の生産に欠かせないこうした希少資源の供給先の多角化を進めることは、経済安全保障のうえからも理にかなう対応である。

一方、原子力協定締結問題で両首脳は交渉加速を指示したが、核実験を実施しない確約をいかにとりつけるかなど、課題は多い。日印関係強化は重要だが、前のめりになりすぎて、核軍縮政策の理念までゆがめることがあってはならない。
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[毎日新聞] 社説:視点・オウムの教訓 今後に生かしたい=論説委員・重里徹也 (2011年12月30日)

今年はオウム真理教をめぐる刑事裁判がすべて終結した年だった。重い教訓を生かしたいが、信者たちがなぜ、深刻な犯罪に走ってしまったのか、解明するのはこれからの課題だ。

大部な研究書「情報時代のオウム真理教」(宗教情報リサーチセンター編、春秋社)が今夏に刊行された。若手からベテランまで18人の研究者たちが膨大な1次資料を分析している。その記述で、オウムが情報発信能力にたけていたうえ、メディアが結果としてうまく使われていたことが印象的だった。

何種類ものビデオやアニメ、説法テープ、出版物、歌、ロシアからのラジオ放送が布教のために駆使された。音楽では、一般の人に対するもの、信者の信仰を深めるためのもの、出家信者のみを対象に「敵」への明確な意思を示したものの3種類があり、3層構造によって、代表者への絶対忠誠が深められていったという。

また、テレビのワイドショーやバラエティー番組はオウムを「ネタ」として消費し続けた。この本の責任編集者である宗教社会学者の井上順孝・国学院大教授は、オウムを不特定多数につなぐ役割を果たしたのではないかと指摘する。

地下鉄サリン事件から16年がたち、若者たちの宗教意識からは事件の風化が見て取れる。事件直後は宗教教団への強い不信があったのに、2000年代半ばごろから確実に宗教への関心が高まっているというのだ。

たとえば、「宗教と社会」学会などの昨年の意識調査では、大学生4311人中、11・9%が「信仰を持っている」、38・2%が「宗教に関心がある」と答えた。いずれの数字もこの10年間、増え続けている。

さらに二つの要因が気になる。一つはインターネットの発達で、社会の情報化が飛躍的に深まっていることだ。不特定の人が情報を通して宗教に触れる機会は多くなっている。

また、東日本大震災や原発事故がもたらす影響も注目される。多くの日本人が死に直面したり、文明のあり様を疑ったりした経験は宗教意識にも、変化を及ぼすのではないか。

自分が生きる意味は何なのか、死後をどう考えるのかなど、宗教的な問いかけは人間本来のものだろう。宗教への関心が深まることには、肯定的な側面もあるかもしれない。でも、オウムのようにそれを悪用する集団が出ないとも限らない。

そんな中で教訓をどう生かすのか。既成の宗教はもちろん、私たちメディアのあり方も問われている。
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[朝日新聞] 年の終わりに―万の悲しみを忘れない (2011年12月30日)

私たちはあの大震災で、いったい何を失ったのだろう。

冬の被災地をめぐる。

宮城県石巻市の鈴木由美子さん(42)は12歳の三男、秀和(ひでかず)くんを亡くした。別々の車で逃げる途中、津波にのまれた。

年が変わろうというのに、時間は3月から止まったままだ。

息子が好きだったプロ野球のシーズンが、いつのまにか始まり、終わっていた。「もう落ち着いた?」と声をかけられるたび、叫び出しそうになる。

前と同じ飲食店にパートで勤める。あ、学校帰りのヒデが自転車で前を通るころだ、と思い出す。でも泣けるのは、退勤のときの車の中だけだ。

市内で月に一度、同じように子をなくした母親の集まりがある。みなせきを切ったように語りだし、相づちを打ち、柔らかな顔になる。自分は一人じゃないと、ようやく思える。

警察庁によると震災の死者数は29日現在で1万5844人、行方不明者は3451人。

DNA鑑定による身元判明が進み、12月に入って死者数は4人増え、不明者は156人減った。小刻みに変わる数字をみるたび、粛然とする。

■喪の作業を支える

宮城県のある男性は、母親の遺体がやっと見つかった。「みな言うんです。『よかったね』って。何が良かったんでしょうか。遺骨が手元に届き、母親の死が、現実になったばかりなのに」という。

震災直後は合同の葬儀が多かった。棺もない、火葬もちゃんとできない。縁ある人が集まり語らうことも、ままならなかった。「自然の脅威を前に、宗教はいかに無力だったか」。遺体安置所で読経を続けた岩手県の僧侶は言う。

被災地は少しずつ復興へと向かい始めている。その陰で、一人ひとりの悲しみは、置きざりにされがちだ。

大切な存在を失った事実を、ゆっくり受け止めながら、それぞれの速度で前へと進む。そうした「喪の作業」を、いかに周囲が支え、独りぼっちにしないか。復興の道筋で見落としてはならないことだ。

人々の孤立は、実は3月11日の前から、社会が直面する問題だった。家族のぬくもり、地域のつながり、しんどそうな人を見守るゆとり。私たちが失いつつあったものを、震災は、改めて突きつけている。

もう一つ、忘れることのできない死がある。

福島県須賀川市の専業農家、樽川久志さん(64)は、3月23日夕方、政府が県産キャベツの摂取制限と出荷停止を決めたのを、ファクスで知った。晩飯のときからふさぎこみ、珍しく自分で茶わんを洗った。

■原発を問うた死

翌朝、暗いうちに床を抜け出し、作業着に着替え、母屋を出た。携帯の歩数計は680歩を示す。本当なら収穫が始まっていたはずのキャベツ畑を、ひと回りしたのだろう。そして自宅裏の木のところへ行く。

遺書はなかった。

毎年8月6、9日の原爆の日には、息子たちに黙祷(もくとう)させるような父親だった。65キロ先にある原発の危うさを、しばしば口にした。後継ぎは、次男の和也さん(36)。原発1号機が爆発した3月12日、久志さんは「お前を間違った道に進めたなあ」と言った。

和也さんは、父親が毎日つけていたノートを元に、春夏秋と農作業をこなした。来春とれるキャベツは、大きく作付けを減らした。学校給食に納入していた自治体が、福島県産の野菜を使わない方針を示したからだ。ここでどれだけ、農業を続けられるだろう。

「なぜ、線香の一本もあげにこない」。和也さんは東京電力に抗議を続けている。

悲しみに満ちた年が、暮れようとしている。あれだけの犠牲を生んだ災害だったということを、もう一度心に刻みたい。

被災自治体の住民は、安全な街をどうつくるか、格闘を続けている。意見はぶつかりあい、負担は大きく、将来像は見通せない。息子を亡くした鈴木由美子さんは言った。「大勢の犠牲あっての復興だということを、忘れないで」

■思いは届いているか

野田政権は原発事故「収束」を宣言した。だが、帰れぬふるさとを思いながら年を越す人たちに、安心は訪れない。地域と暮らしの再建に向け、やるべきことが山積みだ。

これからのエネルギーをどうするかの議論も、行きつ戻りつを繰り返す。キャベツ農家の樽川久志さんが、死をもって訴えようとしたことは、届いているだろうか。

難しい課題を推し進めるのは言うまでもなく政治の役割だ。だがそのもたつきぶりには、目を覆うばかり。国の芯が失われてゆく感覚すらする。

いたたまれず天を仰ぐ。凍(い)てつく夜空から突き刺すように、万の星がまたたいている。
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[読売新聞] 民主の消費税案 首相は年末決着を次へ生かせ(12月30日付・読売社説) (2011年12月30日)

◆関連法案提出では譲歩するな◆

財政健全化に向けた消費税率引き上げを巡る民主党の議論が29日深夜、ようやく決着した。

野田首相は、これを踏まえて早急に政府・与党としての「素案」をまとめ、自民、公明両党との協議入りを実現すべきだ。

野田首相は、党税制調査会・社会保障と税の一体改革調査会の合同総会に出席し、「この国の将来のために避けて通れないテーマに結論を出そう」と訴えた。

迷走してきた党の議論を収束させるため、首相自ら説得に乗り出したのは当然だが、むしろ遅過ぎたのではないか。

◆時期・税率明示は当然◆

改革実現には、数々の難関が待ち構えている。首相は党内外の反発にひるまず、財政再建へ指導力を発揮しなければならない。

焦点となったのは、消費税率を引き上げる時期と税率だ。

民主党案は「2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げる」とする2段階とした。反対派の主張に配慮し、当初案よりそれぞれ半年遅らせたのは残念である。

だが、素案に具体的な時期と税率を明示することは最低限の条件だ。曖昧な決着を避けたことは評価したい。来年3月に関連法案を国会に提出することは譲歩してはならない。

消費税率引き上げの影響が大きい低所得者への対策としては、所得減税と現金給付を組み合わせ、支払った消費税を還付する「給付つき税額控除」を導入する。

低所得者の線引きは難しい。何より政府が正確に所得を把握することが必要だ。国民一人ひとりに番号を割り振る制度の創設など、公平性を確保する仕組みの導入も併せて急ぎたい。

欧米では、食料品など生活必需品や新聞・出版物の税率は低く抑えられている。この「軽減税率」もなお検討すべきである。

民主党案が、所得税や相続税などで富裕層に一層の税負担を求める方針を明記したのは問題だ。

高所得者狙い撃ちの課税強化は消費増税への批判をかわそうとする大衆迎合的な発想と言える。

所得税の最高税率を引き上げても、対象者は少なく、税収増も限られる。税収の源泉となる経済の活力を奪うことになりかねず、それでは本末転倒だろう。

消費税率引き上げには経済状況も見極める必要がある。「種々の経済指標を確認し、総合的に勘案する」として、景気弾力条項を設けたことは妥当だ。

経済成長率など数値目標の明記を求める意見も出たが、それは政策の柔軟性を縛ることになる。

◆野党体質からの脱皮を◆

民主党の意見集約の過程では、うんざりするような議論が延々と続いた。社会保障と税の一体改革については、8月の代表選で野田首相が明確に主張し、決着したはずだ。反対論を蒸し返す民主党議員たちの姿勢は、まるでだだっ子のようである。

「増税の前に行政改革をまず実現すべきだ」とはもっともらしいが、こうした主張で財政再建を先送りし、日本は先進国で最悪の水準の財政状況に陥った。

民主党は、税金の無駄遣いを根絶し、新しい財源を生み出すとしながら、これまで何ら成果を上げてこなかったではないか。国債依存度が過去最悪の49%にのぼる12年度当初予算案は、その証左と言えよう。

首相は、消費税率引き上げの前に、国会議員の定数削減に積極的に取り組み、公務員給与削減など行政改革にも「君子豹変(ひょうへん)す」の立場で臨むと強調した。その言葉を実行に移してもらいたい。

年明けに新党結成を目指すという若手議員9人が民主党を離党した。消費税の問題をはじめ、民主党が政権公約(マニフェスト)を反古(ほご)にしていると批判した。

だが、マニフェストは財源確保や実現性への考慮を欠き、明らかに破綻している。これを守れという主張に説得力は全くない。

◆集団離党は自己保身だ◆

離党議員の多くは、前回衆院選で民主党への追い風で当選した比例選出である。逆風が予想される今、離党するのは、衆院議員として生き残るための自己保身と見られても仕方あるまい。

与党議員としての自覚がなく、国政に対する見識も乏しい議員たちが政権党を離党するのは、かえって望ましいことである。

野田首相は、総会で「与党とは一番つらいテーマから逃げないことだ」と語った。その通りだ。社会保障と税の一体改革の与野党協議を実現し、断固として関連法案を成立させねばならない。
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2011年12月29日

[産経新聞] 【主張】消費税増税 政官のリストラも前提だ (2011.12.29)

民主党税制調査会の役員会が消費税を平成27年に10%まで引き上げる増税案を示した。具体的な税率や引き上げ時期が同税調で示されたのは初めてである。

少子高齢化が進む中で安定した社会保障財源を確保するには消費税増税は避けて通れないが、国民の理解を得るには政府や国会が自ら身を削る覚悟が求められる。政府・与党は円滑な引き上げに向け、そうした環境整備に取り組まねばならない。

役員会案によると、現在5%の消費税率を、平成25年10月にまず8%とし、27年4月には10%へと2段階で引き上げる。段階的な引き上げで景気に対する影響を極力抑える一方、企業や商店の準備時間を確保する狙いもある。

国民に負担増を求める以上、まず政官のリストラが求められるのは当然で、なにより徹底した歳出削減が大前提となる。

ところが、民主党はマニフェスト(政権公約)に盛り込んだ国会議員の定数削減にすら見通しを付けるに至っていない。大震災の復興財源に充てる時限的な国家公務員給与の引き下げ法案も成立をみておらず、自らの身を削る姿勢に疑いの目が向けられている。
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[産経新聞] 【主張】武器三原則緩和 残る安保の宿題も見直せ (2011.12.29)

日本の武器輸出を事実上、全面禁止してきた武器輸出三原則の緩和に政府が踏み切った。

戦闘機などの国際共同開発・生産に日本が参加できるようにし、平和構築や人道目的で重機などの装備品を供与する場合は三原則の例外とする内容だ。

三原則は米国への武器技術供与など一部の例外を除いて共同開発の道を閉ざした。結果的に防衛技術は競争に取り残され、防衛関連産業の停滞を招いた。日本の国防と国民の安全を危うくする弊害だったというしかない。

緩和の意義は大きく、野田佳彦政権の判断は当然といえる。

政府が航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)に選定したF35は米英など9カ国による共同開発だが、日本は三原則の制約で参加できなかった。

平成24年度も防衛費は削られ、10年連続の減少となった。中国などが軍拡を進める中でこうした政策判断が続くのは極めて問題だ。一方で、厳しい財政下、調達コストは抑えなければならず、共同開発への参加は不可欠だ。

防衛産業の裾野は広く、1千社から2千社に及ぶという。装備品調達の減少などから、すでに中小企業の転廃業が相次いでおり、安全保障政策と産業政策の両面からの立て直しが重要だ。
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[東京新聞] 民主議員離党届 公約破りへの警鐘だ (2011年12月29日)

民主党の九衆院議員が集団で離党届を提出した。消費税率引き上げ方針などへの反発だという。にわかには評価できないが、少なくとも野田政権の幹部は、公約破りへの警鐘だと受け取るべきだ。

かつて見た光景がまた眼前で繰り広げられている。年末の離党、新党騒ぎ。この時期の離党は政党交付金狙いだと容易に想像はできるが、背景にある危機感を見過ごすわけにはいかない。

それは民主党が、政権交代を果たした二〇〇九年当時とは異なる存在に成り果てたということだ。その代表格が、消費税増税方針や八ッ場ダム建設再開であることはいうまでもない。

離党届を提出した議員の一人は記者団に「(〇九年衆院選)マニフェストで当選した議員として、ことごとくほごにされては立つ瀬がなくなる。変質した民主党に失望した」と語ったという。

その心情は理解できる。ただ、本当に失望しているのは国民であることを忘れてもらっては困る。

選挙の洗礼を受けていない野田佳彦首相は、マニフェストに書いていない消費税増税に「不退転の決意」を強調する一方、約束したはずの行政の無駄をなくすことにはあまりにも不熱心だ。

中止を掲げた八ッ場ダムの建設再開が省庁主導で決まったり、沖縄県での米軍基地新設を強行するために書類を夜陰に乗じて運び込むのを見ると、民主党政権はすでに官僚に対する統制力を失っているとすら思えてくる。

こんな党にとどまっても、目指す政策は実現できないし、何より次の選挙で当選するのは難しい。ならば離党して新党から立候補した方が生き残りの機会は広がる。離党者はそう考えたのだろう。

民主党税調は消費税を現行の5%から一三年に8%、一五年に10%に引き上げる案を示した。

本来なら離党せず、政権がマニフェストとは違う方向に進むのを全力で阻止すべきだった。当選一回議員が多く経験不足とはいえ、それが政党政治家の役割だ。

筋論で言えば、個人名の票ではなく民主党票で当選した比例代表選出議員が離党した場合、議員辞職するのが望ましい。

離党者は野田政権批判を強める小沢一郎元代表に近い。第二、第三の離党者が続く可能性もあり、権力闘争の側面は否定できない。

しかし、野田首相や輿石東幹事長ら政権幹部が彼らの行動を支えている国民の怒りを軽んじるなら民主党にもはや存在価値はない。
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[東京新聞] 北朝鮮後継者 核兵器よりまず食糧を (2011年12月29日)

北朝鮮の金正日総書記の葬儀が営まれた。後継者の三男金正恩氏は、国民が飢えても核とミサイルを造る「貧しい軍事大国」を統治し、再建できるのか。国際社会は不安を抱きながら注視している。

金総書記の棺を納めた車は平壌市内を進み、沿道では多数の市民が別れを告げた。二十九日には追悼大会が開かれ、労働党や人民軍の幹部が正恩氏に忠誠を誓う演説をするとみられる。

正恩氏の現職は党中央軍事委員会の副委員長だが、党機関紙「労働新聞」は既に最高司令官と呼んでいる。

来年四月には祖父の故金日成主席の生誕百年、人民軍創建八十年など国家的行事がある。正恩氏は当面、側近の補佐を受けながら国内安定を優先して「安全運転」で臨むのではないか。その後、機関決定を経て父の職位である党総書記と国防委員長に就任するとみられるが、時期が大幅に遅れるようだと指導者としての力量不足を示すことになる。

軍を統治の中核にすえる「先軍政治」も継承される。心配なのは若い後継者が権力基盤を固めようと軍事力を誇示することだ。核実験や弾道ミサイルの試射をしたり、昨年の韓国・延坪島砲撃のような強硬策をとれば、国際社会は正恩氏は危険で信用できないと判断しよう。自制を強く求めたい。

国連機関の調査だと、全人口の四分の一が飢餓に直面している。

正恩氏がまず取り組む課題は食糧を確保することだ。改革・開放は難しいとしても、大量破壊兵器開発に使う軍事費を抑えて食糧生産にまわし、海外からの支援を引き出せば、国民は飢えの恐怖から解放される。

今月中旬の米朝協議で、米国が栄養補助食品の支援を提案し、北朝鮮もウラン濃縮活動中止を検討していたという。金総書記が進めた政策であり、年明けに協議が再開されれば、後継体制でも外交が機能していると判断されよう。

中国は共産党政治局常務委員九人が北京の北朝鮮大使館を弔問して、金正恩体制の後ろ盾になると意思表示をした。核放棄への影響力行使を期待する。北朝鮮が中国と合意した道路や港湾整備などの経済協力を進めれば、国内の経済再建にもつながる。

金日成、金正日父子はあらゆる分野で指導をしたが、まだ二十八歳の正恩氏には同じような神格化はできないだろう。三代世襲の権威は、本当の近代化のために使うよう望みたい。
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[毎日新聞] 社説:民主議員集団離党 浅ましい年の瀬の混乱 (2011年12月29日)

消費増税問題をめぐり民主党内の亀裂が拡大している。野田佳彦首相が目指す年内の素案取りまとめの調整が難航する中、増税に反発する党所属衆院議員9人は集団での離党に踏み切った。

政府・与党の素案も正式に決定しない段階での離党は次期衆院選での逆風をおそれ、党に見切りをつけた自己保身と断じざるを得ない。党税調は2015年4月までに消費税率を2段階で10%に上げるたたき台を示した。時期や税率も含めた意見集約と法案化への作業を首相はひるまず断行すべきである。

東日本大震災で避難した多くの住民は今なお仮設住宅で寒さの脅威にさらされ、原発事故も実態は首相の言う収束に遠い。そんな年の瀬、相も変わらぬドタバタと政治の醜態が繰り返されてしまった。

「マニフェストを約束して当選したが、ほごにされ立つ瀬がない。うそつきと呼ばれたくない」。議員の一人はこんな理屈で離党は正当と主張しているという。確かに消費増税は衆院選公約でふれておらず、八ッ場ダムの建設再開にみられるように公約は総崩れ状態だ。党の主要政策の方向と離党議員らの主張はかけ離れており、同じ党にいることがもはや不自然にすら思える。

だからといって、今回の行動に大義や政治家としての責任を認めることはできない。

次期衆院選も2年以内に迫り、増税への逆風におびえる空気が党内に広がる。しかも過去の新党騒ぎが年末にあったように、年内に離党した形を取れば、年明けに国会議員5人以上で新党を結成しても来年の政党交付金を受け取ることは可能だ。

集団離党した議員のほとんどは小沢一郎元代表に近く、多くは今年2月に会派離脱を届け出たメンバーと重なる。橋下徹大阪市長が率いる「大阪維新の会」、石原慎太郎東京都知事を中心とした新党構想など既成政党を脅かす動きも議員心理を浮足立たせている。こうした事情が重なり、抗争が本格的に再燃したのが実態ではないか。だとすれば、政策本位とはほど遠い動きである。

首相も覚悟が問われている。党内に根強い増税慎重論に配慮したのか、外国訪問前にあれほど強調していた年内の政府・与党素案作成の先送りに含みを持たせていた。党としての具体的な意見集約すらできないようでは「不退転」などと軽々しく言う資格はない。

消費増税の法案化を進めるにつれ、さらなる離党の動きや対立が加速していくことは避けられまい。首相が党内融和を優先しても、おのずと限界がある。分裂も辞さぬ構えで政策の筋を通す局面である。
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