2009年05月31日

[読売新聞] 元時津風親方 暴行指示を重視した実刑判決(5月31日付・読売社説) (2009年5月31日)

弟子を育てる立場にある親方が、暴行を主導して、弟子を死亡させた。その悪質性を重視した実刑判決である。

大相撲の時津風部屋で入門間もない序ノ口力士が暴行を受け、死亡した事件で、名古屋地裁は、元時津風親方に懲役6年の実刑を言い渡した。

元親方は、序ノ口力士が宿舎を逃げ出したことなどに憤慨して殴打し、兄弟子たちにも暴行を指示した。死亡する直前の約30分にわたるぶつかり稽古(げいこ)でも、兄弟子らが殴打や足蹴(げ)りを加えた。

判決は、こうした事実を認定し、親代わりとなるべき親方が、率先して暴行に及んだことを「言語道断」と指弾した。

相撲界では、稽古と暴行の境界があいまいだと言われてきた。元親方も、問題のぶつかり稽古を「正当な稽古」と主張していたが、判決は、「明らかに正常な範囲を逸脱していた」と結論付けた。

厳しい稽古がなければ、強い力士が育たないのは事実であろう。だが、稽古の名を借りた制裁は、許されるものではない。

角界全体が判決を重く受け止め、すべての親方が自らの指導法を見つめ直さねばなるまい。

昨年12月に有罪判決を受けた兄弟子3人は、執行猶予付きだった。親方には逆らえない従属的立場が考慮された結果といえる。

今回の判決は、相撲部屋における親方について、「絶大な支配力を有している」と指摘した。元親方が実刑となったのは、本来は暴行を止めるべき立場にありながら、「支配力」で暴行を主導したためだろう。

親方は、国技を担う自覚や心構えなどを弟子に教育する責任も担っている。共同生活の中で信頼関係を築き、弟子は親方の教えを吸収していくのが、相撲部屋のあるべき姿であるはずだ。

名横綱・双葉山の流れをくむ時津風部屋が事件の舞台となったことは、大相撲のイメージを大きく損ねた。大麻問題など、最近の相撲界の相次ぐ不祥事は、あまりに嘆かわしい。

新弟子検査を受ける若者の数は低迷が続いている。今回のような事件があれば、角界入りに二の足を踏むケースも出てくるのではないだろうか。

土俵の主役が外国人力士になって久しい。有望な若者を発掘し、その才能を伸ばしていく。今こそ、親方には地道な取り組みが求められている。

ファンは、横綱に昇進できる日本人力士を待ちわびている。
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[東京新聞] 週のはじめに考える 裁判員と民主主義社会 (2009年5月31日)

陪審制を民主政治のための無償の学校と評価したのはフランスの政治思想家トクヴィルでした。裁判員制度も真の民主主義へ大きな可能性を秘めます。

一八三一年から翌二年にかけ九カ月にわたってアメリカ合衆国を旅したトクヴィルは、アメリカについて書かれた最良の本とも民主主義を考える際の古典的名著ともされる二巻の著書「アメリカのデモクラシー」を残しました。

岩波文庫版序文によると、名門貴族の生まれで、若き司法官だったトクヴィルがアメリカをめざしたのは、歴史分析と真剣な思索から、「平等の漸次的段階的発展こそ人類の過去であり未来」との認識に至り、そこに語らざる神の確かな意志の徴(しるし)を見たからでした。


◆国民性変える陪審制
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革命の混乱と無秩序が支配するフランスとは対照的に、アメリカでは自由と平等の民主革命が革命なしで進んでいました。役立つ教訓を合衆国に求めたのです。新しい政治学への野心もありました。

トクヴィルによれば、政治の法制の真の保障は刑法であり、犯罪者を裁く人間こそが真に社会の主人です。すべての市民を裁判官席に着かせるアメリカの陪審制は人民主権の教義そのものでした。

トクヴィルが注目し考察の対象としたのは、陪審制の司法面ではなく政治的側面でした。そして、陪審制の実施は国民性に多大な影響を及ぼし、民事訴訟に導入されれば影響はさらに増大すると分析を示したうえで、陪審制の効用を列挙しています。

陪審制は人々に衡平原理の実践と自分自身の行動の責任を回避せぬことを教える。すべての人に社会に対して果たすべき義務のあることを感じさせ、統治に参加しているとの実感を与える。自分自身の仕事とは別の事柄への関与を強いることで社会の錆(さび)ともいうべき個人的利己主義と戦わせる―。


◆社会参加に意義がある
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トクヴィルは人民の判断力の育成、理解力の増強に信じられぬほど役立つのが陪審制の最大の利点とし、無償でいつでも開いている学校と結論するのでした。

それから百七十年、日本で国民参加の裁判員制度がスタートしました。戦前の大日本帝国憲法下の一時期、陪審制が試みられたことはありますが、本格的な市民参加は初めて。裁判員制は市民だけで有罪か無罪か評決する米英型の陪審制と市民と裁判官とで評議する独仏型の参審制を折衷した日本独自の制度です。

これまで国民にとって司法は遠く、関心の薄い存在でした。裁判への参加を求める強い世論があったわけではありません。小渕内閣で設置された司法制度改革審議会の審議内容が十分知られていたともいえません。国会の全党派一致の決定だったにもかかわらず、裁判員制導入は「寝耳に水」が多くの国民の感想、今なお不満と不安の声が漏れるのも無理からぬところかもしれません。

仕事や家事、育児を中断して参加する市民の負担は軽いとはいえませんが、導入はやはり意義深く大きな期待もかけられています。歴史的な改革といわれるように、裁判のあり方が変わろうとしています。

公判前に争点整理が行われ、裁判は劇的に短くなりそうです。十年裁判などは論外でした。

検事調書の任意性や信用性の争いがもっぱらだった法廷は、裁判員の前での証言や供述の真実性の争いが中心となり活性化がはかられるでしょう。そうなれば、捜査も自白から、より物的証拠重視とならざるを得ず、何より難解な法律用語は市民に分かる言葉に変わらなければならないでしょう。

その一方で迅速と効率優先の裁判からは法廷での真相解明の努力が失われかねません。訴訟的真実で満足すべきだとの議論には抵抗感が残ります。なお実体的真実の追求にこだわりたく思うのです。

裁判員制導入による一連の司法改革の意味は小さくありませんがより大きな意義は、裁判を通じての「市民の社会への積極参加」のなかにあります。

トクヴィルが合衆国で発見したのは、人々がそれぞれの立場で社会の統治に積極的な役割を果たそうとするとき、だれもわが事のようにタウンや地区や州全体の事柄に関心を寄せ、社会全体の繁栄がわが身の幸福を左右すると理解するようになっていくことでした。最大多数の福祉に役立つ民主主義社会、そこにトクヴィルの期待がありました。


◆社会の主人の自覚こそ
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裁判員制度は市民に社会の主人としての自覚とともに責任と義務も求めているのでしょう。それが民主主義の成熟といえるかもしれません。時間をかけて制度を育てわが身の幸福追求が全体の繁栄となる社会にしたいものです。
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[日経新聞] 社説2 政投銀民営化の旗降ろすな(5/31)

危機に乗じて「官製金融」を温存する動きが公然と起きている。

日本政策投資銀行の政府保有株をすべて手放す完全民営化を3年ほど延ばす法案が国会で審議中だ。与野党は完全民営化の撤回を探る協議も進め、例えば3分の1超の株式を政府が持ち続ける案が出ている。民主党は官僚依存の脱却を掲げているのに、撤回には積極的だ。

政投銀は2008年10月に政府100%出資の株式会社として民営化したが、その矢先に金融危機が起き、政府の危機対応の一環で大企業向けの資金供給に追われている。それ自体はやむを得ないとしても、なし崩し的に完全民営化の方針まで転換するのはおかしい。

与党は09年度補正予算の関連で完全民営化を「17年4月―19年4月」へと3年半遅らせる法案を提出した。金融危機もあり、政府関与を続けるべきだとの声が強いためだ。民主党は小泉政権の改革を否定し、完全民営化の撤回で公的金融の安全網を残すべきだと主張する。

補正関連法案の取り扱いは衆院解散をにらんだ国会運営と絡む。政投銀の完全民営化が与野党の交渉カードの1つとなっている。だが、小泉政権で路線を敷いた改革が、国会対策の駆け引きでいとも簡単にねじ曲げられていいのだろうか。

政投銀は株式会社化によって完全民営化に向けた収益確保のビジネスモデルを模索し、自力の資金調達にも正面から取り組み始めている。

民間銀行が信用収縮で貸し出しに慎重となり、政投銀が当初の想定と違った業務に追われているのは確かだ。企業のコマーシャルペーパー(CP)買い入れなどの資金繰り支援に加え、公的資金を一般企業に資本注入する支援策も政投銀が担う。

大きな官製金融を温存すれば、平時の経済に復帰した時に民間金融機関の業務を圧迫しかねない。退場すべき企業が公的金融によって維持され、市場をゆがめることにもなりかねない。政策金融は政府系の日本政策金融公庫が担うよう、支援体制やノウハウを集中するのが筋だ。

民間主導で活力のある日本経済を築くために、官業のリストラはまだまだ必要である。与野党ともその原点を見失わないでほしい。
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[日経新聞] 社説1 雇用安定へ短期と長期の政策総動員を(5/31)

鉱工業生産など生産活動の指標には持ち直しの兆しが見えるものの、雇用情勢は厳しさを増している。

4月の有効求人倍率は、アジア通貨危機や不良債権問題で雇用が落ち込んだ10年前の過去最低水準に並んだ。同月の完全失業率は5年5カ月ぶりに5%台に乗せた。非正規社員の雇い止めなどから始まった雇用調整は正規社員に及び、新規採用を抑える動きも広がっている。

29日に成立した今年度の補正予算には、失業手当が出ない人への職業訓練を前提にした生活費支給などを盛り込んでいる。雇用指標は実際の景気に遅れる傾向があるので、今後さらに悪くなる恐れがある。必要に応じて、財政活用による需要の拡大策や雇用安定策を追加することも考えておくべきである。

同時に、雇用情勢が深刻になっているこの機をとらえて、雇用拡大のための様々な構造的な問題にも取り組む必要がある。

まず規制・制度改革である。今後も需要が伸びると予想されるのは介護、看護、保育、美容などのサービス業や農林漁業だ。ところが、これらの業種の多くは既得権益の擁護が壁となって企業が事業を広げにくく、したがって雇用の受け皿として頼りにならない。様々な規制を緩めて自由な参入、自由な競争を可能にする環境をつくることが重要だ。

例えば、潜在的な需要が多い保育分野では認可保育所に補助金を集中投入するのを改めて、幅広く保育所利用者に公費の恩恵が及ぶようにすれば、保育所の数が増えて、保育士の雇用も増えるのではないか。

また、介護など長期にわたり人材の確保が必要な分野は報酬制度などの抜本的な改革が避けられない。介護報酬は今年度当初予算で3%引き上げ、補正予算でさらに処遇を改善するための時限的な基金創設を決めたが、ともに主な財源は国債だ。長続きさせるには保険料の大幅な見直しなどの改革が欠かせない。

職業訓練の制度も時代の要請に合っているか再検討すべきだ。非正規社員は職業訓練の機会に恵まれないという問題がある。訓練内容も製造業の技術のほか、次代に役立つ情報技術や金融、医療関連などにもっと重点を置いてよいのではないか。

職業紹介の担い手となる企業を育てることも大切だ。公共職業安定所の建物の中に職業紹介会社を置いて無料紹介業務を委託し、双方を競わせるための法案は成立しなかったが民間のノウハウを生かすべきだ。雇用維持は社会の安定のためとても重要であり、なすべきことは多い。
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[毎日新聞] 社説:温暖化中期目標 ビジョン伴う数字示せ (2009年5月31日)

日本が2020年までに温室効果ガスをどれほど削減するか。「中期目標」の議論が終盤を迎え、最終決定は麻生太郎首相の政治決断にゆだねられた。6月前半にも数値を公表する段取りだ。

京都議定書以降(ポスト京都)に、日本がめざす社会の構造を左右する重要な判断である。首相には、国際交渉を視野に入れた覚悟と戦略を示してほしい。

政府の検討委員会は4月、国内の実質的な削減幅について、90年比で4%増?25%減の6選択肢を示した。その上で、意見交換会などを通じて国民の意見を聞いてきたが、建設的な議論には至らなかった。日本経団連を中心とする産業界が、もっとも緩い「4%増」を主張し、環境NGOが「25%以上の削減」を主張する構図はこれまで通りだ。

一方、内閣官房の世論調査では、「7%減」を選んだ人が半数近くいた。財界の中にも、経済同友会のように「7%減」を支持する団体もある。これらを背景に浮上しているのが、「7%減」を軸に落としどころを探るという見方だ。

しかし、中間的で、国民の支持もあるから7%でいいというほど単純な話ではない。地球の将来をどうするのか、それに応じて日本の社会をどう変えるのか。選択肢にある15%減、25%減の可能性を排除せず、大きなビジョンに基づいて数字を示す必要がある。

排出増加が国際的に受け入れられるはずはなく、産業界は意識を転換すべきだが、政治の側も産業界を説得する努力をもっと真剣にすべきだ。それを前提に、世界の大量排出国である中国や米国の積極的な参加を促すためにも、意欲的な数値を示すことが大事だ。

その際には、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の分析も重視しなくてはならない。地球規模の被害を抑えるには、20年までに先進国全体で90年比25?40%削減する必要があるとの指摘は、世界が念頭においているものだ。

公平性の確保も大事だ。ただ、公平性の指標はさまざまで、各国の思惑がからむ。すでに、日本にとって有利な指標である削減費用だけでなく、国内総生産(GDP)当たりの排出量、エネルギー効率、歴史的な排出量といった指標が提示されている。国際交渉の場では、これらの組み合わせで議論が進むと考えられ、全体を見越したシミュレーションをしておくことが大事だ。

どの選択肢を選ぶにしても、今、示されているのは、国内での削減量だ。途上国での排出削減などについても、具体的戦略を練っておくべきだろう。
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[毎日新聞] 社説:安保理の対応 中国巻き込み実効性を (2009年5月31日)

北朝鮮が2度目の核実験を強行してから早くも1週間になる。新たな決議に向けた国連安全保障理事会の常任理事国5カ国と日本、韓国による協議は追加制裁の内容をめぐり難航しているようだ。しかし、北朝鮮の暴挙にいつまでも黙っているわけにはいかない。安保理各国は足並みをそろえ、実効性を伴う決議の採択を急がなければならない。

安保理の初動は今回は早かった。核実験の直後に緊急会合を開き、北朝鮮の行為を安保理決議違反として非難し、新たな決議で対応することで合意した。その後の協議では新決議に追加制裁を含む新しい措置を盛り込むことも申し合わせた。

4月の弾道ミサイル発射の際、「決議」か「声明」かで日本・米国と中国・ロシアが対立し結局、「声明」で妥協せざるをえなかったのと比べれば中露の態度の変化が見て取れる。国際社会の再三にわたる警告を無視し続ける北朝鮮に対しては、最も近い関係にある中国も、追加措置に反対しえない状況になった、と判断したのだろう。

北朝鮮は06年10月、最初の核実験を行った。その際、安保理は制裁決議1718を採択したが、北朝鮮は今年4月に弾道ミサイルを発射し、今回2度目の核実験を行った。孤立を恐れるどころか国際社会に挑戦しているとしか思えない行動だが、それを許してしまった原因の一つは決議1718が抜け穴だらけだったことにある。

決議1718は北朝鮮船舶の貨物検査を加盟国に促したが、中露の反対により協調行動の要請にとどめたためほとんど実施されていない。

核・ミサイル関連物資やぜいたく品の輸出禁止、北朝鮮の核・ミサイル関連企業の資産凍結も盛り込んだが、これらも効果が上がらなかった。禁輸措置に関しては国連加盟国の6割が制裁品目の提出義務さえ果たしておらず、北朝鮮企業の資産凍結も4月のミサイル発射を受けて初めて安保理が対象企業として3社を具体的に指定したのが実態だ。

追加制裁はこうした抜け穴をふさぐために必要だ。日米は新決議に、北朝鮮に出入りする貨物検査の義務化や資産凍結企業の拡大、核・ミサイル開発関連企業の銀行取引制限などを盛り込むよう求めているが、中国などは慎重な姿勢を示しているという。

核施設再稼働や大陸間弾道弾(ICBM)発射の動きをみせる北朝鮮に対しては強い内容の決議が必要だ。中国を巻き込まなければ実効ある制裁はできない。中国はまだ見解を明らかにしていないようだが、もし貨物検査や金融制裁に反対するなら、それに代わる効果的な措置を示すべきである。
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[朝日新聞] 雇用危機―住まいの安全網にも力を (2009年5月31日)

雇用の不安定化とともに、安心して住める場所を確保できない人が増えている。いつ家を追い出されるかと、心配しながら暮らす人たちだ。

各地で問題になっている「追い出し屋」のトラブルも、その一例だ。

収入が不安定な非正規の労働者などは、連帯保証人になってくれる人がいなかったり、手持ちのまとまったお金がなかったりする人が多い。そうした人たちをターゲットに、家賃保証会社が保証人代わりになり、敷金・礼金不要で入居させる賃貸方式が、ここ数年で急速に広がっていた。

家賃滞納時の立ち入りを認めるなど、借り主に不利な形の契約を結ばされることが普通だ。それが昨年以降、仕事が減るなどして家賃が少しでも遅れると、保証会社や管理業者から強引に退去させられる例が相次いでいる。

留守中に鍵を勝手に付け替え、家財道具まで処分してしまう行為まであるという。国土交通省は、野放しだった家賃保証業の規制を検討し始めた。

だが、それだけでは根本的な解決にはならない。背景には、雇用危機に直面する非正規の人たちへの住まいの支援策が、十分に整っていない実態があるからだ。

低所得者向けの公営住宅はどこも高倍率のうえ、若い単身者には入居資格がない。そもそも非正規社員の場合、勤め先からの住宅補助をもらえる人が少ない。滞納をおそれる貸主は、普通の賃貸契約では貸したがらない。

その結果、初期費用がいらない物件や寮付きの派遣の仕事を選ばざるを得なくなる。仕事や収入が途絶えると、路頭に迷うことになる。大量の「派遣切り」がその流れを加速した。

働く貧困層の拡大とともに、住宅政策のほころびが出てしまったのだ。

職と住まいを同時に失った人に対して、政府や自治体はあわてて雇用促進住宅のあっせんや公営住宅への優先入居の手を打った。4月にまとまった経済対策では、失業者向けに最長6カ月の住宅手当支給も打ち出された。

だが、いずれも緊急の措置だ。家を失う人をこれ以上出さないような、永続的な支援を考えなくてはならない。

たとえば、収入の不安定な労働者にも家主が貸しやすくなるよう、公的機関が家賃を保証し、滞納時に立て替えるようにはできないか。高齢者や障害者にはすでに制度がある。

公営住宅の建設は抑えられたままでいいか。政府と自治体が家賃差額を補助して、民間賃貸住宅を低家賃で供給してもらう制度を拡充してはどうか。生活保護にいたる前の支援策として、公的な住宅手当の仕組みが必要ではないか。こうした議論も深めるべきだ。

仕事を失っても、住まいさえあれば次のスタートを切りやすい。住まいの安全網はきちんと張っておきたい。
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[朝日新聞] 時効見直し―多角的な議論をもっと (2009年5月31日)

死刑にあたる罪は25年。無期懲役の罪なら15年。

こうした一定期間が犯罪の発生から過ぎると、その後に容疑者が分かっても起訴できない。この公訴時効が成立する事件は、殺人事件だけでも年に50件前後ある。刑法犯全体では一昨年7千件を超えた。

なぜ時効制度があるのか。長い時が過ぎると、証拠が集めにくくなって裁判が難しくなる。被害者や社会の処罰感情も薄れる、といった理由からだ。

これに対し、事件の被害者や遺族らから、時効の撤廃を求める声が強まっている。2月には、未解決事件の遺族を中心に「殺人事件被害者遺族の会(宙(そら)の会)」も発足した。

欧米には時効を設けていない国がある。法務省は公訴時効制度を見直すかどうかの検討に入り、国民からの意見を6月11日まで募っている。

背景にあるのは、DNAで個人を識別する鑑定の精度が飛躍的に進歩したことだ。

事件現場などに残された犯人のDNAを保存しておけば、将来、犯人を特定することができるはずだ。遺族の憤りは、時間がたって増すことはあっても薄れることはないし、国家が犯人の逃げ得を許してはならない。時効撤廃の論理はこのようなものだ。

これに対して、日本弁護士連合会や一部の被害者の中からは次のような反対論が出ている。

時間がたつほど、アリバイや被告に有利な証言は探しにくくなり、十分な弁護活動ができない。捜査機関がDNAを適正に集めていなかったり、きちんと保管していなかったりして、犯人以外のDNAが紛れ込んでいる恐れもある。DNA型鑑定だけを頼りにすると冤罪が起きる可能性がある。

犯罪にはだれもがあう恐れがあり、社会全体として犯人を追及しつづけることが予防にも通じる。時効撤廃論にそれなりの説得力はある。

とはいえ、徹底した冤罪防止策を時効撤廃とともに実施することが必要だ。関係者の取り調べの全過程を録画して永久保存する、採取したDNAについては捜査部門から独立した機関が適正に保管する、といったことだ。

時効の見直しをめぐっては、(1)対象事件の範囲をどうするか(2)捜査体制は追いつくのか(3)法改正時に、未解決のまま時効が進行中の事件にも適用すべきか、など多くの論点がある。

法務省の見直し案には、撤廃のほかに、延長やDNA型による起訴、検察官請求による時効停止・延長といった選択肢も示されている。

公訴時効については4年前に延長されたばかりだ。時効は司法の根幹にかかわる。国会だけでなく、国民の間でも、じっくり、多角的に論議する必要がある。
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[読売新聞] 改正薬事法施行 ネット販売の秩序ある拡大を(5月31日付・読売社説) (2009年5月31日)

規制緩和と規制強化が入り交じり、矛盾が非常に多い。

6月1日から施行される改正薬事法だ。医師の処方箋(せん)を必要としない大衆薬の販売ルールが大きく変わることになった。

新制度では、副作用に注意が必要な度合いに応じ、大衆薬を3段階に分類する。

特別に注意が必要な薬は第1類として、薬剤師が副作用などの説明をした上でないと販売を認めない。だが、比較的安全な第2類と第3類については、新たに設ける「登録販売者」という資格を取れば販売を認める。

風邪薬や胃腸薬のほとんどが第2類に、ビタミン剤などが第3類に位置付けられる。これにより、大衆薬の大半がコンビニなどでも買えるようになる。

ここまでは、妥当な規制緩和と言えるだろう。

問題は、新たなルールが「対面販売」を大前提として作られたことだ。厚生労働省の省令で、電話やインターネットなどを使った通信販売は、薬剤師であっても第3類しか取り扱えなくなる。

その結果、昔からの漢方薬を遠方の客に送ってきた伝統薬メーカーや、いわゆるネット薬局、そしてこれらを利用してきた人が影響を受けることになった。これは納得し難い規制強化である。

厚労省は、対面販売でないと薬のリスクを十分に説明できない、としている。無論、薬を販売するにあたっては、まず安全性を最重視するのは当然だろう。

しかし第1類はともかく、第2類は今後、薬剤師のいないコンビニでも買える薬だ。インターネットであっても、薬剤師が責任を持って販売するのなら、リスクはむしろ少ないのではないか。

厚労省は伝統薬やネット薬局の利用者に配慮し、急きょ2年間の暫定措置を設けることにした。

これまで通販を利用していた人が同じ薬を購入する場合と、薬局のない離島に住む人には、通販による売買を第2類まで認めるという。これにも首をかしげる。

規制がなし崩しとならないように、ネット販売などが継続購入者と離島在住者に限定されることをチェックする、という。それができるのなら、ネット販売全体を監視することも可能だろう。

無資格者や悪質な業者を排除する仕組みを作れば、インターネットなどの利便性を生かしつつ、安全に大衆薬を販売できるのではないか。秩序ある規制緩和を進めるべきだ。
posted by (-@∀@) at 04:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 読売新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[読売新聞] 元時津風親方 暴行指示を重視した実刑判決(5月31日付・読売社説) (2009年5月31日)

弟子を育てる立場にある親方が、暴行を主導して、弟子を死亡させた。その悪質性を重視した実刑判決である。

大相撲の時津風部屋で入門間もない序ノ口力士が暴行を受け、死亡した事件で、名古屋地裁は、元時津風親方に懲役6年の実刑を言い渡した。

元親方は、序ノ口力士が宿舎を逃げ出したことなどに憤慨して殴打し、兄弟子たちにも暴行を指示した。死亡する直前の約30分にわたるぶつかり稽古(げいこ)でも、兄弟子らが殴打や足蹴(げ)りを加えた。

判決は、こうした事実を認定し、親代わりとなるべき親方が、率先して暴行に及んだことを「言語道断」と指弾した。

相撲界では、稽古と暴行の境界があいまいだと言われてきた。元親方も、問題のぶつかり稽古を「正当な稽古」と主張していたが、判決は、「明らかに正常な範囲を逸脱していた」と結論付けた。

厳しい稽古がなければ、強い力士が育たないのは事実であろう。だが、稽古の名を借りた制裁は、許されるものではない。

角界全体が判決を重く受け止め、すべての親方が自らの指導法を見つめ直さねばなるまい。

昨年12月に有罪判決を受けた兄弟子3人は、執行猶予付きだった。親方には逆らえない従属的立場が考慮された結果といえる。

今回の判決は、相撲部屋における親方について、「絶大な支配力を有している」と指摘した。元親方が実刑となったのは、本来は暴行を止めるべき立場にありながら、「支配力」で暴行を主導したためだろう。

親方は、国技を担う自覚や心構えなどを弟子に教育する責任も担っている。共同生活の中で信頼関係を築き、弟子は親方の教えを吸収していくのが、相撲部屋のあるべき姿であるはずだ。

名横綱・双葉山の流れをくむ時津風部屋が事件の舞台となったことは、大相撲のイメージを大きく損ねた。大麻問題など、最近の相撲界の相次ぐ不祥事は、あまりに嘆かわしい。

新弟子検査を受ける若者の数は低迷が続いている。今回のような事件があれば、角界入りに二の足を踏むケースも出てくるのではないだろうか。

土俵の主役が外国人力士になって久しい。有望な若者を発掘し、その才能を伸ばしていく。今こそ、親方には地道な取り組みが求められている。

ファンは、横綱に昇進できる日本人力士を待ちわびている。
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[産経新聞] 【主張】卑弥呼の墓 歴史と科学のよき関係を (2009.5.31)

「卑弥呼(ひみこ)の墓」との説もある奈良県桜井市の箸墓(はしはか)古墳が、「放射性炭素年代測定法」という自然科学的手法によって、西暦250年前後に築かれた可能性が高いとのデータが国立歴史民俗博物館を中心としたグループによってまとめられた。「魏志倭人伝(ぎしわじんでん)」の伝える女王・卑弥呼の没年に近く、江戸時代以来の邪馬台国論争に決着がつく成果だという。

放射性炭素年代測定法は、炭素を含む生物が死滅すると同時に、同位体元素の「C14」がベータ線を出して崩壊を始める原理を利用して、その量から年代を割り出す方法である。

研究グループは6年前、「弥生時代の始まりが500年近く古くなる」という調査結果を発表して学界に衝撃を与えた。箸墓は「最古の大型前方後円墳」とされており、今度は古墳の始まりに科学的なデータを与えたことになる。

地中の遺物や遺構を発掘調査する考古学だが、年代の決定には困難がつきまとう。土器や金属器の形式によって前後関係を決め、基準となる遺物との比較で、おおまかな年代を推定するしかない。

しかし最近では、放射性炭素法のほか、年輪によって材木が切り出された年を判定する「年輪年代法」などの科学的手法により、かなりの精度で絶対年代に迫れるようになった。今回の発表も、そうした成果の一つである。

邪馬台国の所在地論争に決着がつくなら、専門家ならずとも大きな話題だが、ここは「少し冷静に」と呼びかけたい。科学的なデータは百パーセント正しいとは限らないからだ。サンプルの取り方や、測定方法によって誤差が生じることもある。さらなる蓄積を待ち、専門家がじっくりと議論して結論を出しても遅くはない。

というのも、考古学の世界では9年前、前期・中期旧石器の遺跡と遺物が捏造(ねつぞう)された苦い経験がある。教科書は書き直され、国の史跡は解除された。人為的な事件だったが、互いに検証することを怠り、捏造を見抜けなかった関係者の責任は小さくない。

考古学に自然科学の「目」を持ち込むことは有意義だ。だが、先端科学と考古学はもともとなじみにくい部分を持った学問である。科学的データに対し、考古学者は口をさしはさみにくい雰囲気もある。互いに議論を尽くし、2つの学問の「よき関係」を作り上げる努力をすべきである。
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[産経新聞] 【主張】新駐日米大使 拉致解決の手助けを期待 (2009.5.31)

オバマ米大統領が次期駐日大使にカリフォルニア州のビジネス系弁護士ジョン・ルース氏(54)を指名した。

日米関係で知名度や存在感はないが、「大統領と直接話せる」関係が強みだという。日米同盟は今、多くの課題を抱えている。その解決とさらなる発展に、オバマ氏とのパイプを生かしてほしい。

戦後の駐日大使の大半は知日派の学者、外交官、政界実力者で占められ、それが伝統ともなっていた。流れが変わったのは、ブッシュ前大統領が知日派でない盟友シーファー氏を起用してからだ。

シーファー前大使は「ブッシュ氏の寝室にも電話できる関係」とされ、日米政治への造詣の深さよりも大統領との親密度を優先した人事だった。今回の指名が「シーファー型」(米国務省)と呼ばれる理由もそこにある。

そのシーファー氏も、大使として着任当初は小泉純一郎政権下で起きた日中関係の険悪化に懸念を示し、靖国神社参拝問題に対しても批判的だった。

一方で、北朝鮮による日本人拉致問題では、人道上の強い問題意識と被害者家族らへの深い同情と共感を表明してきた。

横田めぐみさんの拉致現場を駐日大使として初めて視察し、横田早紀江さんら被害者家族とブッシュ大統領の面会を実現させる強い後ろ盾となった。いずれも「国民との触れ合いが重要」との持論に基づく行動だった。

北朝鮮のテロ支援国家指定解除問題では、米政府の決定を覆すには至らなかったものの、ブッシュ氏に親書を通じて強く再考を求めたことが知られている。

ルース氏は主に選挙資金調達を通じてオバマ氏の信任を深めたといい、論功行賞の指名であることは否めない。大使経験や政治人脈もない点は、確かに懸念材料とみられるだろう。豊富な政治・外交経験を買われて駐中国大使に指名されたハンツマン氏とも何かにつけて比較されそうだ。

だが、同盟の大切さを認識し、国民の間に分け入って問題意識や国民感情を共有する姿勢があるならば、駐日大使として期待できない理由はない。まずは前任者のように、拉致現場視察や被害者家族らとの面談をお勧めしたい。

来年、日米は安保条約改定50年を迎える。両国が協力して日米関係に新たなページを開く作業にも力を発揮してもらいたい。
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2009年05月30日

[東京新聞] 元親方に実刑 角界への判決でもある (2009年5月30日)

大相撲の力士暴行死事件で、時津風部屋の元親方に実刑判決が言い渡された。正常なけいこを逸脱した制裁と断罪しつつ、背景にある相撲界の体質も指摘した。角界全体で受け止めるべき判決だ。

入門わずか二カ月の十七歳力士が、激しいぶつかりげいこの後に死亡して間もなく二年になる。

名古屋地裁での判決は「部屋から逃げた制裁の意味があった」「三十分という異例の長さだった」と違法性を認めたうえで、元親方の指示だったのは明らかとした。

事件発覚後、元親方は死亡した力士を「センスがあった。関取にもなれたのに」と悔やんだという。なおさら、この若き力士の無念さは思うに余りある。

そればかりでない。けいこを指示された兄弟子三人も執行猶予付きの有罪判決を受け、相撲人生を絶たれた。しかも法廷で、元親方側から「兄弟子の勝手な暴行が主因」と責任を押しつけられた。

判決で見逃せないのは「相撲部屋では、親方は弟子らに対し、絶大な権力を有している」などと相撲界の体質を背景に挙げたことだ。さらに、ぬぐいがたい暴力の土壌も読み取れる。相撲界は判決のこの指摘を戒めとしてほしい。

事件後に日本相撲協会は、暴力の禁止やけいこ場からの竹刀の撤去など再発防止策を示している。欠かせないのは、閉鎖的な空間である相撲部屋で絶対的な存在の親方の意識改革である。

弟子の育成にあたっては、自らの感情を抑えてこそ指導者としての親方である。「相撲をやめたい」という力士の心の中まで踏み込んでいたなら、こんな不幸は起きなかったはずだ。

問答無用に力で力士らを従わせようとしても、無理が出る。相撲界では力士らの大麻事件も相次いだ。弟子たちと正面から向き合う姿勢があれば違っていただろう。

相撲は力と技がすべてだ。その力の発揮とともに礼儀、作法を尊ぶ姿が「国技」と称されてきた。

親方たちからは、手を出さないと「殴られないのが分かっているから、雑務をやろうとせず、けいこも手を抜く」などと戸惑いの声も漏れる。しかし、今回の判決は「強くなるための激しいけいこ」まで否定されたわけではない。

「けいこは土俵を裏切らない」とも言う。次の七月は、名古屋場所である。けいこを積み重ねてきた力士らの取組を、ファンらが待っている。
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[東京新聞] 厚労省分割 朝令暮改にあきれ返る (2009年5月30日)

厚生労働省の分割・再編に関する麻生太郎首相の発言は朝令暮改が過ぎる。衆院選の目玉政策としてのアピールを狙っていたとすればお粗末ではないか。首相としての見識、資質、指導力が問われる。

首相は今月半ば、厚労省を医療、年金、介護を所管する「社会保障省」と、雇用や少子化などを受け持つ「国民生活省」に分割・再編する案を示し、与謝野馨財務・金融・経済財政相に具体案の検討を指示した。

文部科学省所管の幼稚園と厚労省所管の保育園を一体化し「国民生活省」で一元管理することも念頭に置いていた。

首相のつくった「安心社会実現会議」で委員の一人が厚労省分割を提案したのを受けてのことだ。

唐突の指示に政府・与党でも「寝耳に水」と異論が続出した。

反発の強さに首相は二十八日夜、分割に「最初からこだわっていない」と事実上断念した。「既成事実のごとく話すのはやめたほうがいい」と、まるで報道側に責任があるような口ぶりだった。

首相は定額給付金などの問題でも前言を翻し、国民の不信を買った。迷走を繰り返す首相に政権担当能力があるのか首をかしげる国民は少なくないだろう。

厚労省分割を衆院選のマニフェストに盛り込む方針だったというが、それで国民の支持が増えるとでも思っていたのだろうか。

社会の流れに応じて行政組織を見直すこと自体は間違っていない。厚労省の二〇〇九年度予算は一般歳出の半分近くを占めるなど政府の十二府省の中で突出している。年金、医療、介護のほか、生活保護、少子化・育児、新型インフルエンザに代表される感染症対策、救急医療、雇用対策と、国民生活に直結する問題のほとんどが厚労省の守備範囲に含まれる。

二〇〇一年の旧厚生、労働省の統合後、機動的な政策運営に欠けることが多く、最近では雇用対策が出遅れるなど、肥大化の弊害が随所に表れている。長期的には分割・再編を考えるべきだろう。

だが、幼保一元化を求めるなら、例えば医療政策も一元化しなければならない。文科省が医師や看護師の養成と医学教育、総務省が自治体病院、医療制度が厚労省の所管と分かれ、非効率になっているからだ。薬事行政を厚労省から分離させる考えもある。

分割・再編は、十分な議論を踏まえて長所、短所を見極めながら行うべきである。思いつきですることではない。
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[日経新聞] 社説2 原爆症認定の早期決着を(5/30)

被爆者援護法に基づく医療特別手当の支給認定を国に求め却下された被爆者らの原爆症認定訴訟で東京高裁は被爆者側「ほぼ完全勝訴」(原告弁護団)の判決を言い渡した。

同種訴訟で国の18連敗になった。行政判断の当否を争う訴訟に、日本の裁判所は、概して慎重な態度で臨む。行政判断を覆す判決が繰り返し出るのは異例である。

中でも今回の東京高裁判決は、被爆者の病気が放射線に起因するかを判定する原爆症認定基準そのものを「適格性を欠く」と批判した。

原爆症認定訴訟では、2000年に初めて最高裁判決があった。被爆者の訴えを認めた同判決は(1)認定基準を機械的にあてはめて放射能起因性を判定してはならない(2)放射線が原因と認めることもできる、という程度でも原爆症と認定する――などの指針を示した。

03年から始まった集団認定訴訟で、各地の裁判所はこの最高裁判決を踏襲し、国の判断より広く原爆症と認定する判決を出し続けた。国は従来の認定基準を緩めざるを得なくなり、昨年4月から新基準を採り入れ、訴訟中の案件にも適用した。

ところが、新基準でも原爆症に認定されにくい疾患である肝硬変について原爆症と認める判決が既に出ている。今回の東京高裁判決も、新基準で申請を却下された10人のうち9人を、新基準に基づかず独自に検討して原爆症と認定した。

麻生太郎首相が、新基準をさらに緩和した新・新基準を考える方針を表明したのは当然の動きだ。与党のこの問題に関するプロジェクトチームはさらに踏み込んで「政治主導で一括解決を図るべきだ」と政府に申し入れている。

公費から手当を支出するのだから公正・公平を期すために、客観的な認定基準は必要だろう。問題は、基準を機械的にあてはめると認定から漏れるケースを審査する姿勢ではないか。そこに血を通わせなければ、いくら基準を見直しても被爆者援護の目的は達成されない。

認定を申請して審査結果を待つ被爆者は7000人を超えるという。高齢のこの人たちに、さらに時間のかかる裁判を強いることのないような決着を、国は急いでほしい。
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[日経新聞] 社説1 国際商品の高騰リスクも警戒すべきだ(5/30)

国際商品価格が上昇している。市場の指標となる米国産原油の相場は1バレル65ドルを超え、今年初めの安値のおよそ2倍の水準になった。大豆は一時1ブッシェル12ドル台と昨年の高値圏に接近しつつある。需要はなお弱いが、景気の底割れ懸念が薄れて株式相場がやや持ち直したのと並行して、商品市場に投資マネーが再び流入し始めているからだ。

金融危機が深刻化した昨年秋以降の商品相場の下落はあまりにも急激で、資源開発の停滞などの懸念を広げていた。最近の相場上昇はその反動ともいえるが、不況下で食料やガソリンなどの価格が大幅に上昇すると、消費の回復に水を差す。商品価格上昇のリスクも警戒すべきだ。

石油輸出国機構(OPEC)は28日の総会で生産枠の据え置きを決めた。世界的に原油や石油製品の在庫が積み上がっている中で追加減産を見送ったのは、最近の相場の堅調で産油国に楽観的な空気が広がっているからでもある。

もちろん足元の需要は鈍く、ヘッジファンドなどの投資余力も弱まっているから、昨年前半のような原油急騰が起きる可能性は当面小さい。非鉄金属などの買い材料になっている「中国需要」も多分に思惑の要素が含まれており、どこまで相場の上昇傾向が続くかは不透明だ。

ただし、穀物はアルゼンチンなどの干ばつや米国の天候不順などで、すでに需給逼迫(ひっぱく)の懸念が生じている。米農務省は、来年夏に米国のトウモロコシ在庫が警戒すべき水準まで減ると予想している。今後の天候次第で相場が過熱する可能性も排除できないだろう。

人口の増加と新興国の成長で世界の食糧需要が増大するのは確実で、中長期的な需給にはもともと不安もある。原油も開発投資の鈍化による中長期の供給不安は消えていない。資源価格は、生産者、消費者双方にメリットがある水準で、安定することが望ましい。資源や食糧の増産投資を促して中長期の供給不安を解消する努力が重要である。

商品先物市場は金融市場の一部としての性格を強め、金融要因による相場の変動が大きくなった。最近、主要国の国債発行急増を懸念した投資資金が、債券から商品にシフトする兆候も見える。商品価格の上昇が長期金利の上昇圧力をさらに強めるような悪循環は避けたい。

相場が過熱した際の取引証拠金の引き上げなど技術的な対応だけでなく、各国政府・当局は緊急経済対策の出口戦略を示し、債券や通貨の市場の不安を和らげる必要もある。
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[日経新聞] 社説1 実効性ある新財政再建目標を掲げよ(5/29)

「2011年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する」。小泉純一郎政権末期の06年に政府が掲げた財政再建目標の達成が困難になった。景気後退に伴う税収減と景気対策で、財政が急速に悪化したためだ。

与謝野馨財務・金融・経済財政相も最近の国会答弁で「(目標は)もはや到達できない」としたうえで、新たな財政再建目標を検討することを明らかにした。

ここで政府に求められるのは、経済を再び持続的な成長軌道に乗せるための政策を進めるのと同時に、実効性のある新たな財政再建目標を掲げることである。

新たな目標をめぐっては、基礎的収支の黒字化時期の改定と、国・地方の長期債務残高の国内総生産(GDP)に対する比率の引き下げなどが検討対象になっている。

その年の政策的な経費をその年の税収など収入で賄うようにする基礎的収支の均衡は、財政再建の最終目標ではない。その先には09年度末(見込み)でGDP比で168%と先進国では最悪の水準にある国・地方の長期債務残高の引き下げが必要になる。

政府・与党内には、基礎的収支よりは、債務残高のGDP比引き下げを目標として重視すべきだとの意見もあるようだ。だが、毎年の予算編成などで、個別経費の歳出削減などのメドを立てやすい基礎的収支の目標も残すべきだ。

11年度の黒字化が困難になった基礎的収支について、与謝野経財相は「(当初の目標より)7―10年遅れる可能性がある」との見方を示している。

新目標では黒字化達成の時期を可能な限り早める努力をすべきだが、目標の実効性をあげるには、基礎的収支の黒字化の前に「半減」あるいは「骨太方針06を定めた時の水準」など段階を踏む中間的な目標の設定も必要だろう。

28日の債券市場では新発10年物国債の利回りが一時1.500%と約半年ぶりの水準まで上昇した。政府が長期的な財政健全化の道筋を市場にきちんと示さずに、国債を増発すれば、どこかで長期金利が急騰する可能性も否定はできない。

日本に限らず世界金融・経済危機後に財政出動に動いた欧米など先進国の財政は軒並み悪化し、国債格下げ観測などから世界的に長期金利が上昇しやすい地合いになっている。短期的な財政刺激策と長期的な財政再建策のバランスをどうとっていくかは、先進国共通の課題でもある。
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[毎日新聞] 社説:会期延長 時間稼ぎはいただけぬ (2009年5月30日)

残る焦点はひとつである。総額14兆円の財政支出を盛り込んだ09年度補正予算が成立した。政府が今国会で打ち出した一連の経済対策はヤマを越え、与野党の関心は議員の任期満了まで100日余となった衆院選の実施時期に絞られている。

補正予算関連法案など残る重要法案の審議に民主党が引き延ばし戦術を取らない限り、国会は来月に重要案件の処理を終える。麻生太郎首相が衆院解散のフリーハンドを確保できるよう与党は会期を大幅に延長する方針だが、もはや時間稼ぎをする局面ではあるまい。首相は主要案件の決着と同時に衆院を解散し、各党は政権公約の国民への提示に全力を注ぐべきである。

首相が「第4段ロケット」と銘打った景気対策を締めくくる補正予算が何とか成立した。本来は政府・与党が安堵(あんど)する場面だろうが「こんなはずでは」との思いを幹部の多くが抱いているのではないか。

政府が鳴り物入りでアピールした補正予算は46基金へ4兆円もの交付や、予算額117億円の国立メディア芸術総合センター構想などが野党から厳しく追及された。なけなしの財源の投入に値する中身だったかが問われる展開となった。

小沢一郎前代表の公設秘書起訴をめぐり民主党の攻勢がいったん弱まった状況も変化している。鳩山由紀夫代表就任を受けた毎日新聞の世論調査では首相にふさわしい人に麻生首相よりも鳩山代表を挙げる人が10ポイント以上上回った。

7月には主要国首脳会議、東京都議選などの政治日程も控える。与党内にはできるだけ選挙時期を延ばすことで、勝機をうかがう意見が強いのかもしれない。とはいえ、そもそも政権発足と同時に国民の審判を仰ぐべきだった麻生内閣だ。仮に衆院議員の任期終了間際に衆院を解散しても、首相が民意を問う意気込みと迫力は国民に伝わるまい。

補正予算関連法案、海賊対処法案、公文書管理法案などが決着すれば今国会は事実上、役割を終える。内閣人事局を置く国家公務員制度改革関連法案が残るが、「政と官」の問題は衆院選で与野党が競うべきテーマだ。選挙を経ない政権の力には限界がある。延長国会をずるずる続けても、多くの国民の目には時間稼ぎとしか映るまい。一方、民主党もいたずらに残る法案の審議引き延ばしをすべきではない。衆院解散の環境を整えるべきだろう。

国民は今、自民、民主両党のどちらを中心とする政権に政策遂行能力があるかを目を凝らして見極めている。与野党が優先すべきは判断材料を国民に示すことだ。そのゴングを鳴らすことは、首相の責務である。
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[毎日新聞] 社説:厚労省分割迷走 軽過ぎる首相の言動 (2009年5月30日)

厚生労働省の分割・再編をめぐる麻生太郎首相の発言には驚いた。首相が作った「安心社会実現会議」で渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長兼主筆が提唱した分割論を受けて、「社会保障省」と「国民生活省」に分割する自らの案を示して、検討を指示したばかり。ところが、党や閣内からの反対が強まると、「最初からこだわっていない」と釈明した。今週から協議を始めていた関係閣僚ははしごをはずされた格好だ。

言うまでもなく、首相の発言は重い。検討を指示する以上、行政システムへの理念がなければならず、こだわりも必要だ。「こだわっていない」などと発言すること自体、理解に苦しむ。トップとしての立場が分かっていない、と批判されても反論できないはずだ。軽率のそしりは免れない。

消えた年金や後期高齢者医療制度などで集中批判を浴びた厚労省を分割・再編する案を掲げて民主党との対立軸を作り、人気取りを図る狙いがあったとすれば、本末転倒だ。

01年の省庁再編から8年、組織が巨大化し功罪が出てきたことは確かだが、それは厚労省だけではない。なぜ、麻生首相が厚労省の分割・再編を指示したのかがよく分からない。省庁の再々編は国土交通省や総務省など、全省庁を含めて検討し、全体像を描いた上で進めないと、混乱するだけだ。

麻生首相が再編論をトーンダウンさせたのは政府・与党内から反発や慎重論が強まったからだ。文部科学省が所管する幼稚園と厚労省所管の保育所の一元化も含めた検討を指示したものの、支持団体の利害がからむ問題ということもあり、自民党内から反論や批判が噴き出した。各議員が、それぞれ応援を買って出ることも計算せず、総選挙前に拙速で進めようとしたことで墓穴を掘った。この結果、麻生首相の指導力が失われ、求心力が低下することは避けられない。

省庁再編を進めようとするなら、まずは首相がリーダーシップを発揮し、国民の声にも耳を傾けてコンセンサスを作り上げるべきだ。

分割をめぐり「安心社会実現会議」でも議論があった。薬害肝炎全国原告団の代表が「一委員が提案した厚労省分割が報道され、衆院選のパフォーマンスだとの思惑が広がり残念だ」と発言した。これに対して渡辺氏が「党利党略に新聞社の主筆たる者が便乗して振り回されるようなことを言われた。取り消していただきたい」と反論する一幕もあった。

問われているのは麻生首相のリーダーシップである。首相は迷走を反省し国のかたちを決める省庁再編問題の抜本議論をやり直すべきだ。
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[産経新聞] 【主張】力士暴行死事件 判決を教訓に信頼回復を (2009.5.30)

大相撲時津風部屋で2年前に起きた力士暴行死事件で、名古屋地裁が元親方に懲役6年(求刑同7年)の実刑判決を言い渡した。若い力士を育てる立場にある親方を厳しく断罪した判決で、相撲協会や親方衆は、判決を角界への厳しい戒めと自覚し、信頼回復に邁進(まいしん)してもらいたい。

この事件では、暴行に加わり、傷害致死罪に問われた兄弟子3人がすでに、執行猶予付きの有罪判決を受け、確定している。両者の「量刑の差」は、元親方が兄弟子に暴行を指示したと明確に認定し、元親方主導の悪質な暴行事件と断定したためである。

力士が死亡する原因となった、30分間にも及ぶぶつかりげいこについても、「正常なけいこの範囲を逸脱しており、明らかに違法だ」と検察側の主張をほぼ全面的に認めた。

そもそも大相撲では、若手力士の育成について、各部屋の親方に大半を委ねている。親方は、力士たちのけいこだけでなく日常生活にも細かく目を配り、教育していくことが求められている。

そのかわりとして、部屋における親方の立場は、だれもが逆らえない絶大な力を持っている。このような絶対的権力者が、兄弟子たちに命じ、17歳という若い命を奪った責任は重大で、実刑判決も当然である。

巨体の力士同士が全力でぶつかる大相撲は、生半可なけいこでは、強くたくましい力士が育たない。けいこの厳しさは、この世界の宿命のようなものである。しかし、そんなけいこも、「立派な力士に育ってほしい」という関係者の愛情に裏打ちされていなければならない。

最近の相撲界では、力士の大麻汚染などの不祥事が続発したほか、横綱朝青龍の言動が物議をかもすなど、問題が噴出している。協会としての対応は大切だが、やはり親方の指導力、力士教育が問われている。

外国人力士が多くなっている現状を考えれば、親方は若い力士に国技としての相撲道のあり方などを教えていく義務もある。

来月、定年退職する東関親方(元関脇高見山)は、外国出身力士のパイオニアだが、部屋の指導方針を「辛抱と努力」に置いた。横綱曙も育て、日本人以上に日本人の心を持っていると、評価された。東関親方の相撲と弟子に対する愛情を、かみしめたい。
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