2012年05月19日

[東京新聞] 「都構想」素案 大阪の外でも考えたい (2012年5月19日)

大阪都構想の素案がようやく示された。あのダブル選から半年、十分な議論を積んだ跡がうかがえる。大都市制度を見直し、地方から国の在り方を変える先駆者として、成案にこぎつけてほしい。

素案は大阪府市統合本部の議論を経てまとめられ、府市議らでつくる協議会に提示された。大阪維新の会の公約通り、府市再編により広域自治体機能を大阪都に一元化し、大阪市は基礎自治体の特別自治区に分け、中核市並みの権限を持たす内容だ。

都が世界の都市間競争に打ち勝つ「強い大阪」を目指す一方、各特別区には公選首長と議会を置き住民に身近な「やさしい大阪」を志向する。役割分担が明確化され、二重行政の現行よりましだ。

今後、再編を拒否した政令市の堺市をどうするか、その他の市町村を中核市レベルにどう引き上げていくか、の課題は残る。

住民が最も知りたいのは、現在の二十四区がどう再編されるのか、特別区に税財源はどう配分されるのか、だ。ここが不明確では議論が進みづらい。しかし、生みの苦しみには時間がかかる。

区割りは公募区長が就任する八月から検討を始め、提案は一年後とした。直接利害が及ぶ住民の大多数が納得できるよう公開の場で議論を重ねてもらいたい。

財政調整では税財源の抜本改革を目指すとした。地方の財政自主権の確立は地域主権改革に欠かせない。調整財源と地方交付税の配分を担うのは都か、それとも特別自治区の共同体か−。シミュレーションを検討しながら、新しい制度を編み出してほしい。

気掛かりなのは、統治する側の論理が目立ち、そこに住む生活者の視点が足りないことだ。統合本部で水道や地下鉄などの経営形態や、重複する行政サービスの見直しが進んでいる。住民が都構想の善しあしを判断できるよう具体的なプランをもっと示すべきだ。

国政をうかがう維新の会を警戒する既成政党は、地方制度調査会の議論をまたずに都構想の実現に必要な法案を作った。ただ、今国会での審議は始まりそうにない。先送りの政治は維新の会をさらに勢いづかせるだろう。

横浜市が積極的な、道府県から政令市を独立させる特別自治市、さらに中京都、新潟州、福岡都市州など各地で構想が相次ぐ。多様な統治制度から各自治体が選択できるようになれば、おのずと中央集権は弱まる。大阪にとどまらない国民的な議論を期待したい。
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[東京新聞] 夏の電力不足 深化させよう節電文化 (2012年5月19日)

今夏の電力不足について、関係閣僚会議が節電や融通増強などで乗り切るよう電力業界に要請した。節電文化を一段と深化させて原発頼みから脱していく。日本全体でその覚悟を共有する好機だ。

この夏の電力不足は、いかに乗り切るかにとどめず、今後のエネルギー政策についても熟慮する機会ととらえるべきだろう。その手掛かりとなるのは、福島第一原発を失いながら夏を乗り切った昨年の東京電力と、供給量の半分を原発に頼ってきた関西電力の対応の違いだ。

東電は約一兆キロワット時に上る日本の電力の年間供給量のうち、三割を担う。大規模停電で首都機能を混乱させてはならないという焦りもあり、昨夏は停止中の火力発電所再開やガスタービンによる新たな電源の確保など、四カ月間の突貫工事で供給体制を築き直した。

供給力の積み上げに加え、企業や商店、家庭のすさまじい節電が夏を乗り切る決定打となった。ピーク時の供給が前年より原発十基分に相当する一千万キロワットも減少し、大震災の被害に苦しむ東北電力にも融通する余裕さえ見せている。

東電の昨年度の電力販売量は前年度比9%減った。節電文化の浸透を裏づける数字であり、原発ゼロの入り口に立ったと言えるのではないか。東電と東北電は供給余力が膨らみ、政府の今夏の対策に節電目標の数字が記されていない。小さな節電の積み重ねが電力需給の土台を動かし始めている。

それに引き換え、関電は福島の事故以降、原発再稼働に理解が得にくくなったのに、代替電源の増強に手をこまねくどころか、福井県の大飯原発を再稼働させれば供給はプラスになるとの試算さえ出してきた。再稼働を期待させる世論操作の思惑が透けないか。

野田佳彦首相も国会で「原発依存度を可能な限り引き下げる」と表明しながら、大飯原発の再稼働には前のめりだ。まずは脱原発依存の見取り図を示し、国民とともに一歩でも前に進むべきだ。

政府は、北海道、関西、九州の三電力の供給不足が懸念されるため、余裕のある中部、北陸、中国、四国電力にも5〜7%の節電を求めている。不足する地域に、その節約した電力を送り届けるオールジャパン体制だ。

電力の窮状を語れば、国民は誠意で応えてくる。それは昨年、東電が実証済みだ。この夏、節電文化を深化させ、枝野幸男経済産業相のいう「原発なしでも成り立つ日本」に少しでも近づきたい。
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[産経新聞] 夏の電力対策 節電頼みでは国が傾く 「大飯」再稼働を最優先せよ (2012/05/19)

これで本当に夏が乗り切れるのか。政府がまとめた今夏の電力需給対策はあまりに不安要素が多く責任ある対応策とは言い難い。

特に関西電力管内では原発の再稼働なしに猛暑を迎えた場合、14・9%の電力不足に陥る。これを15%以上の自主的な節電と他電力からの融通で乗り切り、強制使用制限の発動は見送るという。

関電管内の供給不足は昨年夏、電気事業法の電力使用制限令を発動した東日本地域を上回る厳しい水準だ。それなのに「自主節電頼み」で危機を回避できるのか。安定した電力供給を確保するための努力は不十分だ。

≪首相は説得の先頭に≫

何よりも電力不足の解消と安定供給の確保には、停止中の原発の再稼働が不可欠だ。政府は福井県の大飯原発3、4号機の再稼働への同意を地元に要請し、野田佳彦首相は17日、「最後は私のリーダーシップで意思決定する。判断の時期は近い」と断言した。

その言葉通り、野田首相は原発の安全性などに全責任を持ち、早期運転再開を主導しなければならない。それが今夏の電力危機を乗り切る最低条件だ。

首相は自ら説得に現地入りするなど、先頭に立つ覚悟を示してもらいたい。

国内の全原発が停止した中で、とりわけ原発利用度が高かった関電の供給力は大きく低下した。八木誠社長は「需給ギャップが全国で最も厳しい」とし、「猛暑の場合、広域的な停電を回避できない可能性もある」と指摘した。

政府対策では、中部、北陸、中国の隣接電力会社に融通を求めるが、それでも賄い切れず、15%節電で需給を均衡させる計画だ。3電力管内の利用者も5%以上の節電を強いられる。こうした人々の理解と協力を得るためにも関電管内での徹底した節電が必要だ。

政府は強制力を伴う使用制限令発動も検討したが、「関西の産業界に対する影響が大きい」として見送ったという。

しかし、福島原発事故を受けた昨年夏、東日本で大口需要家に15%の使用制限を義務づけたのは、東京電力管内で10%の電力不足が想定されたためだ。今回、関電管内ではこれより厳しい逼迫(ひっぱく)が予想されるのに、なぜ使用制限令を発動しないで乗り切れるのかの説明はあいまいだ。

使用制限令は故意に使用を超過した利用者に罰則を科す。法により政府の責任で厳しい節電を義務づける措置だ。これを発動しないのは、関電を含む電力会社のみに需給調整の責任を押しつけることにならないか。政府の責務を回避するような姿勢は許されまい。

需給対策では、突発的な大規模停電を回避するため、関電に加え北海道、九州、四国の4電力に1日2時間程度の計画停電も準備させる。使用制限も含むあらゆる手段を講じた上で、最悪の事態に備えるのが筋というものだろう。

≪安定した電力供給を≫

こうなったのは、対策が原発再稼働を確かな前提に据えていないからだ。大飯3、4号機が再稼働すれば関電管内の電力不足はほぼ解消され、政府も「再稼働した場合には需給計画を修正する」とした。それならば、安全性を確保した上で、早期再稼働の実現を最優先課題に掲げるべきだ。

政府は既にストレステスト(耐性検査)などを経て同原発の安全性を確認した。再稼働へ同意を要請された立地自治体の福井県とおおい町のうち、おおい町議会は再稼働容認を決議した。長年、原発と向き合ってきた地元の協力姿勢を無にしてはならない。

それでも再稼働へのハードルは高い。県議会や西川一誠知事らの理解が必要だが、西川知事が「政府がぐらつくことのない姿勢を見せてほしい」と確かな保証を求めていることに応えるべきだ。

大阪市や滋賀県、京都府など大飯原発周辺自治体の首長は、逆に再稼働に慎重だ。西川知事がこうした電力消費地の理解も取り付けるよう政府に求めていることをきちんと受け止める必要がある。

仮に原発再稼働なしに夏を乗り切れても、節電頼みの慢性的な電力不足が続くことを忘れてはならない。安価で安定した電力供給体制は再構築できず、産業空洞化は一層加速する。東電以外の電力料金引き上げも避けられまい。

電力不足は国力の疲弊という負の連鎖を招き、国の土台を傾ける。政府は肝に銘じるべきだ。
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[日経新聞] 国民の利益につながる宇宙ビジネスを (2012/5/19)

三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、韓国の人工衛星を載せた国産大型ロケット「H2A」の打ち上げに成功した。

海外から受注した衛星の打ち上げは今回が初めてとなる。国民の理解を得ながら、宇宙ビジネスを広げる足掛かりとしたい。

国内の宇宙機器産業の市場規模は約2700億円。これに対し、世界の宇宙産業は13兆円の市場規模があり、年率10%を超えるペースで伸びている。

通信・放送や地球観測など衛星の利用は新興国にも広がっている。2018年までの10年間の衛星打ち上げ需要は260機と、08年までの10年に比べて2倍以上に増える見通しだ。この需要を取り込みたい。

そのためにはまず、宇宙ビジネスを国家戦略として推進することへの国民の合意が前提となる。

科学技術中心の宇宙開発を安全保障や産業振興に広げることを目的とした宇宙基本法が08年に成立し、首相を本部長とする宇宙開発戦略本部が発足した。体制は整えたが、国民の理解が深まっているとはいえない。

韓国の衛星打ち上げは実績作りにはなったが、H2Aの打ち上げには今後も官需による下支えが不可欠だ。巨額の国費を投じて宇宙ビジネスを育てることで国民が得る利益や、産業への波及効果をわかりやすく示さねばならない。

H2Aは今回で連続15回打ち上げに成功した。米欧のライバルに肩を並べる高い信頼性の一方で、打ち上げ費用は割高だ。新たな受注には製造費の低減などコスト競争力を高める努力も必要だ。

そのうえで、官民が連携して宇宙の平和利用の経験をアジアなどの新興国に伝え、宇宙空間を共同で利用する仕組み作りで協力していくべきだ。

宇宙開発もインフラ輸出のひとつと位置付け、自国での衛星開発や運用が難しい新興国に衛星情報の利用方法や地上設備、人材育成などを包括的なパッケージで売り込んでいくことが大切だ。

日本政府はベトナムに納入する予定の日本製衛星を使った災害監視システムを、東南アジア諸国連合(ASEAN)の他の加盟国にも提案している。各国が持つ衛星システムを連携させれば広域での防災対応が可能になる。

宇宙利用で社会や生活がどう変わるのか。提案力が宇宙ビジネスの開拓には欠かせない。
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[日経新聞] 電力問題に響くスーダン緊迫 (2012/5/19)

スーダンと昨年7月に分離・独立した南スーダンが軍事衝突を繰り返し、原油の供給が停滞している。日本にとって両国は世界で数少ない火力発電所向け原油の調達先だ。緊迫が長引けば発電燃料の調達額がかさむ懸念がある。

南スーダンは多くの油田を持つ一方で、輸送設備はスーダンに頼る。両国はパイプラインの使用料などで対立しており、スーダンが南スーダンの原油を差し押さえると南側は対抗措置として1月に原油の生産を停止した。その後も国境付近の緊張は増すばかりだ。

国連安全保障理事会は両国に対して即時停戦を求め、守らない場合は経済制裁を警告する決議案を採択した。スーダンは、半世紀に及ぶ内戦を経て独立した南スーダンと懸案である石油収入の配分などを話し合い、ともに安定した国づくりに努めてほしい。

南スーダンでは自衛隊の国連平和維持活動(PKO)部隊も活動を続けている。両国の情勢緊迫は、日本にとって遠い国の話ですまされない。

しかも日本は中国、マレーシアに次ぐ、両国産原油の輸入国だ。猛暑で火力発電向けの消費量が1千万キロリットルを超えた2007年度は、発電原油の2割強を占めた。

硫黄分などの環境規制を満たし、調達可能な原油は限られる。これまで主力調達先だったインドネシアの原油生産が資源枯渇で減り、両スーダン産の重要性は高まっている。

燃料の調達額が膨らみ、温暖化ガスの排出も多い石油火力への依存はできる限り減らすべきだ。ただ、当面は原油や重油を燃料に使う火力発電にも頼らざるを得ない。3月に国内で供給された火力発電向けの原油は前年同月の2.2倍に急増している。

原油の国際相場は4月から下げ基調にあるものの、限られた油種に電力各社の買いが集中すれば価格は上昇しやすい。電力各社は発電燃料に使える油種の拡大や競争入札の導入など、燃料調達費を安くする対策も急ぐべきである。
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[毎日新聞] 社説:夏の節電対策 脱原発社会への一歩へ (2012年05月19日)

政府が、この夏の電力需給対策を決めた。国内の原発50基が、まったく稼働しないことを前提に、沖縄県を除く全国で節電を求める。

電力不足は、国民生活や経済活動に制約を課す。原発再稼働にこだわり、後手に回った政府の責任は重い。地域独占の恩恵を受けながら、供給責任を全うできない電力会社にも反省を求めたい。

もっとも、省エネ・節電は、原発依存からの脱却を進めるためにも欠かせない。官民が本腰を入れてこの夏を乗り切り、将来の「脱原発社会」につなげる必要がある。

政府は、供給余力が比較的大きい東北、東京を除く7電力の管内には節電の数値目標も設定した。中でも需給が厳しい関西、九州、北海道、四国の4社は計画停電も準備する。

東電福島第1原発の事故から1年2カ月がたった。この間、国内の全原発が止まり、電力不足が起きる事態は、想定されていた。ところが政府は、ぎりぎりまで需給関係をつかみ切れず、結局、国民に我慢を強いることになった。

電力会社は原発事故後も「オール電化」を推進するなど、原発再稼働ありきの発想を転換できず、節電を促す努力を怠ってきた。

この夏の電力不足は、そうした怠慢のツケともいえるが、「原発ゼロ」に向けた取り組みの出発点として前向きに考えたい。

昨夏は、東電管内で計画停電が実施され、家庭や企業を混乱させた。その反省を踏まえ、まず、停電回避に努める必要がある。

停電の可能性が高まるのは、需要がピークを迎える時間帯だ。政府は電力会社に対して、ピーク時の節電を促す料金制度の設定や、節電の実績に応じて電力会社が対価を支払う「ネガワット取引」の導入などを求めている。

ピーク需要の抑制は、発電設備への過剰な投資を抑え、発電コストを引き下げる効果も期待できる。実現には、利用者が消費電力や料金を常時計測できる次世代電力計(スマートメーター)が欠かせない。電力会社は普及を急ぐべきだ。

今回の対策は、小口電力向けの取引市場を創設することや、電力会社間の電力融通を拡大することも盛り込んだ。余っている電力をうまく融通できれば、電力不足の解消に役立つだけでなく、発電設備の無駄も減らせる。大手電力の地域独占に風穴を開ける可能性もある。

ピーク需要の抑制や発電コストの引き下げにつながるさまざまな対策は、「脱原発依存」に向けても大きな意味を持つ。政府と電力会社は、責任を転嫁し合うことなく、取り組みを加速すべきだ。
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[毎日新聞] 社説:H2Aロケット 世界市場へ課題克服を (2012年05月19日)

H2Aロケット21号機が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の水循環変動観測衛星「しずく」と韓国航空宇宙研究院の多目的観測衛星「コンプサット3」の打ち上げに成功した。H2Aの海外衛星打ち上げは初めてで、日本勢が世界市場へ進出する弾みとなるだろう。コスト高などの課題を克服し、国内外からの打ち上げ受注拡大を目指してほしい。

H2A打ち上げは07年、JAXAから三菱重工業に民間移管された。以後、100件以上の引き合いがあったが、韓国以外はまだ受注に結びついていない。H2Aの失敗は1回だけで、成功率は世界水準の95%を超えた。問題なのは、信頼性よりも費用と打ち上げ能力の方だ。

三菱重工はH2Aの製造・打ち上げ費用を公表していないが、約100億円と推定される。円高もあって衛星打ち上げ市場の大半を握る欧州や米露勢にコスト面で負けている。韓国の衛星は「しずく」との相乗りでコストが下げられた。

欧州のアリアンロケットは赤道直下に発射場を持ち、赤道上空を回る静止衛星の打ち上げ効率が良い。日本は種子島からの打ち上げで、緯度が高い分、打ち上げ効率も落ちる。静止衛星は大型化しているが、H2Aの能力ではその需要をカバーできていないのだ。

三菱重工は、専用品が多いロケット部品に自動車用の汎用(はんよう)品を導入することなどで大幅なコスト削減を目指す一方、第2段ロケットの航行時間を延ばして静止衛星の軌道投入能力を向上させる計画だ。政府からの打ち上げ委託は年間2〜3機だが、民間需要を合わせ年間4機の打ち上げが確保できれば、ロケットの信頼性の向上にもつながるという。

H2Aは日本の主力ロケットだ。その技術的な安定とコスト削減は、今後の日本の宇宙開発にとっても大きなメリットとなる。官民が協力して民需拡大を進めるべきだ。

「しずく」の活躍も期待したい。

「しずく」は高度700キロの軌道から降水量や海水温、大気中の水蒸気量などのデータを収集する。これらは地球温暖化のメカニズム解明にとって重要で、豪雨や干ばつなどの災害対策にも活用できる。JAXAは後継機も準備中で、地球全体を15年程度観測することにしている。

日本は昨年末の国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議で、先進国に温室効果ガスの排出削減を義務づけた京都議定書の延長期間への参加を見送った。当面は自主的な対策を実施するが、「しずく」のようなプロジェクトで科学的なデータを集め、世界に貢献することは、温暖化交渉の場で低下する日本の存在感を増すことにもつながるはずだ。
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[読売新聞] 軽減税率 低所得対策の有力な選択肢だ(5月19日付・読売社説) (2012年5月19日)

社会保障・税一体改革の国会審議が、衆院特別委員会で始まった。

消費税率引き上げ関連法案審議の焦点の一つは低所得者の負担を和らげる方策である。

野田首相が特別委員会で、生活必需品などの税率を低く抑える軽減税率について、「与野党間で真摯(しんし)に胸襟を開いて議論を進める」と述べた意味は大きい。軽減税率は有力な選択肢となりうる。議論を深めてもらいたい。

法案に盛り込まれた低所得者対策では、まず消費税率を8%に引き上げる2014年4月の時点で「簡素な給付」として現金を支給する。15年10月に税率を10%とする際には、「給付つき税額控除」という制度を導入する。

給付つき税額控除は、収入が少ない人の所得税を減税し、さらに低所得で所得税がかからない人には現金を支給する仕組みだ。配当や不動産収入などを含め、所得を正確に把握することが制度を適正に運用する大前提と言える。

政府が15年に導入を目指す共通番号制度がうまく機能しなければ、給付つき税額控除は単なるばらまきに終わる可能性がある。番号制度でも、職業によっては所得を完全に把握するのは難しい。

給付つき税額控除の場合、すぐには減税や現金支給の恩恵を受けられない問題もある。

にもかかわらず、財務省はこれまで軽減税率の導入に否定的だ。対象の線引きが難しく、範囲を拡大すれば必要な税収が確保できないなどと説明している。

生活必需品のコメや生鮮食品、活字文化を担う新聞、書籍などに対象を絞り込めば、政府が懸念する税収の大幅な落ち込みにはならないのではないか。

消費税を増税しても生活に欠かせない商品の税率が低ければ、家計の支出に与える影響を、その場で抑えることができよう。

付加価値税の先進導入国である欧州で、広く採用されているのも国民の支持を得ているからだ。

軽減税率を巡る与野党の議論は活発化してきた。

民主党の前原政調会長は「柔軟に対応していくテーマだ。検討に値する」との考えを示した。

公明党の斉藤鉄夫税制調査会長は「税を納める側からすると、理解しやすい」と支持し、自民党の野田毅税調会長も「何を対象にするかは難しいが、それを乗り切るのが一番大事」と指摘した。

与野党は軽減税率の利点と課題を精緻に議論し、現実的な低所得者対策をまとめる必要がある。
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[朝日新聞] ロケット成功―未来につなぐ絵を描け (2012年5月19日)

これからの宇宙開発をどう進めるか。国民に開かれた議論で目標を定め、未来を開きたい。

日本の主力ロケットH2Aが、韓国の人工衛星の打ち上げに成功した。メーカーの三菱重工が初めて獲得した海外の顧客である。記念すべき一歩といっていい。

だが、日本の宇宙開発には現在、肝心なことが欠けている。この一歩を手がかりにロケットをどう育て、それを使って何をするという大きなビジョンだ。

宇宙開発の司令塔として、内閣府に宇宙戦略室が置かれる予定だ。将来像を描く中心的役割を果たすことになる。

ロケット事業の独り立ちの道はきわめて厳しい。

世界の静止衛星の打ち上げ需要は年に20機程度で、それを欧州を中心に米国やロシア、中国が奪い合う。安価な米国のベンチャーも参入し、割高な日本製は苦戦している。

それでも、H2Aは15回連続の成功となり、成功率95%にこぎつけた。日本の強みである信頼性をさらに向上させ、コストダウンにも努め、海外市場を開いていってほしい。

当面は、政府や宇宙航空研究開発機構(JAXA)の衛星の打ち上げによって、安定運用に必要という年4機程度の大半をまかなうしかない。だが、いつまでも官需頼みでは困る。

宇宙開発は、転機を迎えている。2008年にできた宇宙基本法は、宇宙技術の利用に重点を移すことを掲げ、安全保障目的の利用も認めた。専門調査会で、宇宙基本計画や政府の体制作りが議論されてきた。

新しい宇宙戦略室は、政府全体の政策の調整機能を担い、民間委員からなる宇宙政策委員会とともに戦略をつくる。

気がかりなのは、これまでの専門調査会での議論も民間の委員によるものとはいえ、非公開で透明性を欠いたことだ。

そして、有人活動をどうするか、長期的に何をめざすかといった根本的な議論はないまま、全地球測位システム(GPS)の日本版をめざす準天頂衛星を中心とする計画作りが進んだ。

新しい組織は透明性を持たせて、幅広い議論を巻き起こす必要がある。

世界に目を転じれば、日本も参加する国際宇宙ステーションの運用が2020年に終わる。次の計画に向けての国際的な議論が始まる一方、新興国の宇宙への参入の動きも続いている。

私たちの安全や暮らしの向上に役立ち、宇宙の探査や地球観測などで国際貢献も果たす。そういう宇宙開発の姿が必要だ。
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[読売新聞] H2A成功 宇宙産業の地歩を築く一歩に(5月19日付・読売社説) (2012年5月19日)

初めて海外から受注した韓国の衛星など4基を載せたH2Aロケット21号機が、打ち上げに成功した。

いずれの衛星も予定軌道に乗った。

すべてスケジュール通りで、極めて順調だった。

注目された衛星は、韓国航空宇宙研究院の「アリラン3号」だ。高解像度のカメラを搭載し、地上を精密撮影できる。

日本の宇宙関係者が悲願としてきた、海外衛星の打ち上げビジネスへの参入に一歩をしるした。成功を商機拡大につなげたい。

H2Aの打ち上げも、2003年の6号機失敗後、15回続けての成功となった。成功率95・2%は世界のトップクラスだ。

ただし、打ち上げ回数では、日本の強力なライバルである欧州のロケット「アリアン」が約200回に達している。成功率も約95%だ。21回のH2Aは、世界水準には、まだまだ遠い。

それだけに、日本の打ち上げビジネスの前途は険しい。

H2Aを製造している三菱重工業は、07年ごろから打ち上げ契約獲得を目指してきた。打診は100件を超えるが、成約に至ったのは、今回の衛星以外にない。

打ち上げ費用を低減する取り組みを強化するなど、さらなる営業努力が必要だろう。

韓国側は、打ち上げにH2Aを選択した理由として、費用の「安さ」を挙げている。

H2Aの打ち上げには、通常100億円前後かかるが、韓国の衛星は、地球の水環境を詳細に観測する日本の宇宙航空研究開発機構の衛星「しずく」と相乗りのため料金が軽減されたという。

ロケット製造コストの一層の削減も必要だ。三菱重工業も部品調達の見直しなどで、将来の費用半減を目標に掲げている。

政府も、産業界の取り組みを積極的に後押しすべきだろう。

地球観測や通信など様々な政府の衛星を、今後もH2Aで切れ目なく打ち上げることで、実績作りにも貢献する必要がある。

H2Aの次の国産ロケット開発についても、本格的に検討を始めるべきではないか。新規の研究開発がなければ、優秀な技術者はいなくなる。H2Aに携わった技術陣はすでに引退し始めた。

米国では、民間企業主導で、打ち上げ費用がH2Aの半額程度という安価なロケットも登場している。実績はまだ少ないが、新たなライバルになろう。

国産ロケット技術の維持、強化へ産官学の協力が重要だ。
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[朝日新聞] 大飯原発―再稼働はあきらめよ (2012年5月19日)

野田首相がNHKの番組で、関西電力の大飯原発3、4号機(福井県)について「最後は私のリーダーシップで決めたい。判断の時期は近い」と話し、あらためて再稼働に前向きな姿勢を示した。

野田さんは原発の安全策に対する国民の不信がぬぐえたと考えているのだろうか。状況は変わっていない。この夏の再稼働は見送るしかない。

首相発言は、福井県から再稼働の同意が得られるとの見通しに基づくようだ。

だが、福井県知事が政府に要望していた「消費地の理解」はどうなったのか。19日に関西広域連合の会合が予定されているが、京都、滋賀の両知事をはじめ周辺自治体は再稼働にきわめて慎重な姿勢だ。

この1年余を振り返ろう。

民主党政権は原発事故の反省に立って「脱・原発依存」への転換を掲げ、安全規制や核燃料サイクルについて、白紙に戻して見直すと表明した。

ところが、メニューは示されたものの、緊急対策といった暫定的な措置を除けば、ほとんど実現していない。

4月にできるはずだった原子力規制庁の設置や、原発の寿命を40年とする法律改正が、いまだに審議入りのめどさえ立っていないのはその象徴だ。

原発規制は、信頼が地に落ちた原子力安全・保安院や原子力安全委員会にいまも委ねられている。ストレステストも、両者のもとで進められた。

再稼働を判断する4閣僚会合の段階になって、保安院に付け焼き刃の安全基準をまとめさせるなど、政治主導の局面でも拙劣さばかりが目につき、かえって不信をあおる結果になった。

もちろん電力不足の解消は、国民生活や経済にとって重要な課題である。

ただ多くの国民は、この夏は節電努力で乗り切りたいと考えている。再稼働に反対する各種の世論調査を見ても、その意志が表れている。

18日には、政府の節電対策が正式に決まった。7月から全国的に節電を求める。電力会社からデータを出させ、第三者の目で検証したことは評価する。

民意を意識して、政府として「原発ゼロの夏」への備えを整えた、ということだ。であれば賢い節電の徹底と定着に全力を注ぐのが筋である。

そのうえで、早く脱・原発依存の具体策を示し、法律を通して抜本的な原子力規制の見直しを進める。それなしに再稼働に動こうとしても、国民の納得は得られない。
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2012年05月18日

[東京新聞] 金環日食 千年に一度の朝だから (2012年5月18日)

今日は子どもたちに特に読んでほしい、金環日食のお話です。大宇宙を規則正しく巡る星々の神秘、正確にそれをとらえる科学の力、この年に巡り合わせた偶然の面白さ。さあ、空を見てみよう。

想像してごらん。今から九百三十二年も前の平安時代、天空に突如現れた金のリングを見た人たちの驚きを。

二十一日早朝、私たちはその時と同じような空を見ます。九州から関東にかけての広域で、太陽の外縁だけが強く輝く金環日食、北陸や北海道、東北など日本全国で、部分日食に出会えます。

こんなに広い地域、そして名古屋や岐阜で金環日食を観測できるのは、実に九百三十二年ぶり。気の遠くなるような巡り合わせです。恐らく史上最も多くの日本人が、金環日食をともに見る日になるでしょう。

金環日食という出来事自体が、奇跡のような偶然です。日食はよく知られているように、太陽と月、地球が一直線に並んだ時、太陽が月の陰に隠れて、欠けて見える現象です。三つの星はなかなか真っすぐに並べません。月が地球の周りをまわる公転軌道が、地球が太陽の周りをまわるそれに比べてわずかに傾いているからです。

太陽の直径が月の約四百倍、地球から太陽への距離も月への約四百倍という偶然から、人間の目にはどちらも、ほぼ同じ大きさに見えること。さらに、月の公転が楕円(だえん)軌道を描くため、その距離に約一割の変化が起きる条件が重なって、金環日食が生まれます。

遠い祖先は折々に空を見上げて、天空の不思議に驚き、恐れを抱き、やがてあこがれ、謎解きに挑むようになったのでしょう。

今は滅びた中米のマヤ文明は、金星や火星の軌道計算ができるほど、天体のことを知っていました。太古から人は、星の巡りを追って暦を作り、暦の上に文明を築き上げました。

今や、太陽系の果てまで届く小舟を操るようになりました。不思議は科学の礎です。

科学的な技術の粋を集めたはずの原発神話が、震災で崩れ去りました。こんな時こそ、自然の不思議と科学の力を自分の目で確かめたい。千年の時間を超える驚きやあこがれを、私たちも味わいたい。東京で次に金環日食に会えるのは、三百年先のこと。

想像してごらん。金色に輝くリングをくぐると、向こう側には何が待っているのでしょうか。
posted by (-@∀@) at 15:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする