2019年04月25日

[東京新聞] 温暖化対策戦略 世界をリードできない (2019年04月25日)

政府が示す温暖化対策長期戦略案は、到達点として「脱炭素社会」の構築をめざす。それはいい。だがそのために「原発を再稼働させる」という。温暖化対策を原発復権の口実にしてはならない。

二十一世紀後半に世界の温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にすることをめざすパリ協定は、二〇二〇年までに、目標実現のための「長期戦略」を国連に提出するよう、参加各国に義務付けている。

安倍首相の意向を受けた政府の有識者懇談会が、その内容を検討し、今月二日提言を出していた。

提言は「現状では、五〇年ごろまでに世界の平均気温が一・五度上昇する恐れが強く、異常気象などのリスクが高くなる」−とする国連の特別報告書をふまえ、「今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会をめざす」という目標を明示した。この点は、政府案にも踏襲された。

問題は原子力の位置付けだ。

提言では、省エネや再生可能エネルギーなどと同様、目標達成のための選択肢の一つとし、「安全性確保を大前提とした原子力の活用についての議論が必要」とした。ところが政府案は「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」と明記した。

政府案は「脱炭素社会」実現のための技術革新を重視する。

その中には「安全性、経済性、機動性に優れた(原子)炉の追求」まで目標として含まれており、高速炉や小型モジュール炉などが例示されている。新型原発の新増設も勘定の内ということなのか。

原発は発電段階では温室効果ガスを排出しない。だが、福島の現状を見るにつけ、到底“クリーンエネルギー”とは呼びがたい。

福島の事故で、原発の隠れたコストが明るみに出る一方で、世界では再生可能エネの普及が進み、割安になりつつある。

安全性と経済性と環境を考え合わせ、脱原発、脱石炭、そして再エネ100%に向かうのがエネルギー政策の世界的潮流だ。ところが日本政府は、温暖化対策を原発再稼働に結び付け、石炭火力廃止についても「可能な限り依存を減らす」と及び腰−。そんな「戦略」をひっさげて、「国際的議論をリードしていく」という。

世界の流れに逆行し、原発と石炭火力にしがみつくこの国に、果たしてそれができるだろうか。
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[東京新聞] 小出義雄さん死去 女子長距離を育てた (2019年04月25日)

陸上の女子長距離の名指導者、小出義雄さんが死去した。笑顔を絶やさない指導でメダリストを次々と生み出し、それまで非常識とされたトレーニングを常識に変えた功績は大きい。

未来を見据え、スポーツのあるべき姿を実践した。小出さんには、このような指導者像が真っ先に思い浮かぶ。

女子マラソンの歴史は意外と浅い。本格的な大会が始まったのは一九七〇年代後半から。オリンピックには八四年ロサンゼルス大会から正式種目として加わった。女性にとって陸上の長距離は、体への負担が大きすぎるという見方が大勢を占めていたからだ。

小出さんはそのような風潮の中で、筋肉の持久力が女性は優れていることなどに着目し、女子マラソンの時代が来ることを予見して早い段階から指導法などを研究していた。

卓越した先見の明と、決めたことをやり遂げる強い意志は、八八年に実業団のリクルートの監督に就任してから結実。九二年バルセロナ、九六年アトランタ五輪で有森裕子さんをメダルに導き、二〇〇〇年シドニー五輪では高橋尚子さんが金メダルを獲得した。女子マラソンで五輪メダリストを三大会連続で輩出した指導者は世界を見渡しても例がないであろうし、一九九七年には鈴木博美さんも世界選手権を制した。

選手への指導は「褒めて伸ばす」がモットーだった。ひげを蓄えた風貌からの豪快な笑顔で励まし、長所を伸ばし、走ることの楽しさを持ち続けることができるように努めた。背景には自らが「駆けっこ大好きな少年」として育ったことがある。二〇〇一年に設立した佐倉アスリート倶楽部で子供たちのランニング教室を開いた時でも、この教え方は同様だった。

スポーツ界では現在もパワハラ問題がたびたび持ち上がる。それらとは対極にある指導法で、世界のトップクラスに立つ選手を次々と生み出した功績は大きい。

もちろん褒めるだけではない。自らが導き出した練習方法は画期的だった。それまで標高二千メートルが限界とされた高地でのトレーニングを、三千五百メートル以上にまで引き上げた。周囲から「無謀」と批判を浴びても独自のノウハウを貫き、高橋さんの心肺機能を高めて快挙につなげた。

非常識とされていたことを常識に変え、女子陸上界に一時代を築いた名伯楽の逝去を悼む。
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[産経新聞] 【主張】平成の事件 オウムの反省を忘れるな 安全を守る決意で法整備を (2019年04月25日)

平成時代の事件で特異なものは、やはりオウム真理教の一連の事件だろう。

7年3月20日、朝の通勤時間帯の都心で、オウム真理教の信者らが官庁街の霞ケ関駅を通る地下鉄3路線に猛毒のサリンを散布し、13人が死亡、約6300人が負傷した。前年の6月には長野県松本市でサリンが散布され、8人が死亡した。世界で初の化学兵器を使用した凶悪な無差別大量殺人テロである。

元年11月には、教団の活動を批判していた坂本堤弁護士ら家族3人が横浜市の自宅で殺害された。事件当初からオウムの犯行が疑われたが摘発に至らず、彼らは数々の事件を経て、地下鉄サリン事件を起こした。教団に捜査のメスを入れる機会は何度もあったのに、これを逃し続けた結果である。

死刑判決が確定した元教祖の麻原彰晃死刑囚=本名・松本智津夫=ら13人の死刑がすでに執行された。だが、これで事件が終わったわけではない。

確定判決は一連の事件の動機を麻原元死刑囚が「救済の名の下に日本国を支配して自らその王となることを空想。その妨げになる者をポア(殺害)しようとした」と認定した。

国家転覆を図った残虐な集団の後継団体が今も存続し、麻原元死刑囚への帰依を鮮明にしているとされる。これを許容する国のありようは異常である。

教団の解散を目指した破壊活動防止法の適用は、識者からなる公安審査委員会が請求を棄却した。11年に新設した団体規制法は解散命令を出すことさえできない。

日本は依然、テロ集団に弱い国である。

国際社会でも、米中枢同時テロや過激組織「イスラム国(IS)」による無差別テロが頻発した。テロとの対峙(たいじ)には国際社会との連携が不可欠だが、国連が採択した国際組織犯罪防止条約の批准を目指した共謀罪法案は3度も廃案とされた。

名を変え、内容を厳格化したテロ等準備罪の新設で、ようやく29年7月に条約締結を果たした。世界で188番目の、遅すぎた締結である。国内法の不備が日本をテロに弱い国に押しとどめていたのである。

≪身近な犯罪の深刻化も≫

法整備が実社会の課題に追いつかないのは、身近な犯罪でも同様である。

児童虐待や家庭内暴力、いじめ、ストーカーなど、かつては民事不介入を理由に警察が扱う事案ではないとされた。だが、罪のないいくつもの命が失われる深刻な事態を受け、これらを明確に事件化する新法の創設や法改正が相次いだ。それでも不備は解消されていない。

ストーカー規制法を例にあげれば、同法は「桶川ストーカー殺人事件」をきっかけに成立した。だが電子メールの普及を想定していなかったため、メールによるつきまとい行為に警察が対応できず、「逗子ストーカー殺人」を防げなかった。

法改正で条文に「電子メール」が加えられたが、ツイッターやSNSの明記はなく、さらなる悲惨な事件を招いた。

被害者を助けるための条文が捜査の足かせとなった典型的な悪例である。

同様に、「児童虐待防止法」や「いじめ防止対策推進法」なども深刻な事件が起きる度に改正を繰り返しているが、泥縄の印象は拭えない。犠牲者が出なければ法改正ができない現状は立法府の不作為と映る。

≪飲酒運転の追放に学べ≫

新法の創設や厳罰化が社会を変えた好例もある。

危険運転致死傷罪は飲酒運転事故の被害者らによる署名運動を受けて13年に施行された。これ以降、飲酒運転による死亡事故や飲酒事故件数は、おおむね減少傾向にある。

悲惨な事故に対する社会の怒りが新法による厳罰化を後押しした。同時に飲酒運転を許さない意識改革、環境づくりが社会全体で進められた。

「飲んだら乗るな」は今や常識だが、平成の初期には「少しぐらい」の甘えがなかったか。社会は変えられる。法整備はその一助となる。

法や刑罰の設定は国民や社会の安全を守る国の決意、意思表明であると認識してほしい。
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[毎日新聞] 原発のテロ対策遅れ 安全に猶予は認められぬ (2019年04月25日)

原発の新規制基準は、航空機テロなどに備えた施設の設置を義務づけている。その期限は、再稼働に向けた審査終了後5年以内だ。

これまで再稼働した原発は関西、四国、九州の3電力で計9基ある。いずれも、施設は未完成だ。

3電力は、想定より大規模な工事が必要になったなどとして、設置期限の延長を求めていたが、原子力規制委員会は認めない方針を決めた。

これにより施設が未完成の原発9基は順次停止に追い込まれる。しかし、安全確保に猶予は認められない。規制委の決定は当然のことだ。

テロ対策施設は「特定重大事故等対処施設」(特定施設)と呼ばれる。2001年の米同時多発テロを契機に、米原子力規制委員会がまとめた対応策を参考に導入された。

原子炉建屋などに航空機が衝突しても、遠隔操作で原子炉の冷却が続けられるよう、緊急時制御室を設け、非常用発電機や冷却水を送り込むポンプなどを備える。

3電力会社によれば、稼働中の原発9基すべてで施設の完成が期限より1年程度は遅れる可能性がある。最も早く期限が訪れるのが、九電川内原発1号機の20年3月だ。

電力各社は、規制委に提出した資料で「本体施設でテロ対策に必要な機能は満たしている」などと訴えてきた。だが、原発の安全対策に終わりはない。対策の手を抜くと、重大な事態を招く。これは福島第1原発事故の教訓だ。

川内1、2号機の場合、特定施設の設置費用は2000億円を超すという。再稼働を優先し、安全対策の更なる強化が後回しになったと見られても仕方がない。

そもそも、特定施設の設置期限は一度延長された。当初は13年の新基準施行から5年以内だった。だが、再稼働に向けた安全審査が長引いたことから、原発の工事計画の審査後5年以内に見直されていた。

本来なら、再稼働に先立ち設置されるべき施設である。再度の延期を規制委が認めていれば、その存在意義を問われることになったろう。

原発が停止しても、電力不足を心配する必要がないことは、3・11後の経験から明らかだ。むしろ、原発はテロへの備えが脆弱(ぜいじゃく)であることを見つめ直す機会とすべきだ。
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[毎日新聞] 強制不妊救済法が成立 謝罪の主体が曖昧なまま (2019年04月25日)

旧優生保護法で強制不妊手術を受けた障害者らの救済法が成立した。

宮城県の60代の女性が初めて国を提訴してから1年3カ月。被害者の高齢化に配慮して与野党の国会議員らが救済を急いだ結果だ。

しかし、被害者が計7地裁に起こした国賠訴訟は今後も継続するという。一時金の320万円が著しく少ないことだけが理由ではない。

不妊手術の被害者は約2万5000人いるが、記録で氏名が特定できたのは3079人しかいない。しかも、プライバシーへの配慮を理由に本人へは通知しないという。これでは一時金が得られるのは少数にとどまる可能性が強い。

旧優生保護法は1948年に与野党議員の主導で成立した。当初は手術件数が少なく、議員らは何度も国会で予算増を要求した。厚生省(当時)は増えた予算を消化するため都道府県に手術の推進を求めた。「身体の拘束」「麻酔」「欺罔(ぎもう)(だますこと)」を用いることも認めた。

憲法違反ではないかとの地方からの質問に、法務府(当時)は「憲法の精神に背くものではない」と見解を示した。都道府県の優生保護審査会の決定に異議のある時は再審査を申請できることが根拠とされた。

ところが、厚生労働省が開示した資料では81年までの20年間で再審査申請はわずか1件しかない。

救済法では「おわび」の主語が「我々」という曖昧な表現にされた。安倍晋三首相は「政府としても真摯(しんし)に反省し、心からおわび申し上げる」と談話を発表したが、これで曖昧さが解消されたとは言えない。国の責任を明記するのが当然だろう。

救済法には国会が問題の経緯を調査することも盛り込まれた。

疑問の声は当初からあり、70年代には厚生省内でも強制不妊手術を疑問視する意見があったが、国家による人権侵害は続き、長年顧みられることがなかった。その構造を解明するには、独立した第三者機関による検証が必要ではないか。

「障害者は生きる価値がない」と元施設職員が19人もの重度障害者を殺害した相模原事件、性的少数者を「生産性がない」という自民党議員など、優生思想をうかがわせる風潮は今も根強い。過去の過ちに対する不断の検証が求められる。
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[読売新聞] スリランカテロ 卑劣な凶行の兆候を見逃すな (2019年04月25日)

無辜(むこ)の人々を狙った卑劣で許し難い凶行だ。

スリランカのコロンボなどで同時爆破テロが起き、日本人を含む多数の死傷者が出た。

イースター(復活祭)でキリスト教徒が集う教会や、外国人客の多い高級ホテルが標的となった。8か所が爆破され、自爆攻撃も行われた。

スリランカ当局は、国内のイスラム過激派組織が実行したとしてメンバーらを拘束した。ウィクラマシンハ首相は、過激派組織「イスラム国」の関与について「結びつきがあるのではないかと考えている」と述べた。

「イスラム国」は、犯行声明や事件の実行犯とされる男らの動画を公開した。真偽は不明だが、テロの標的や大がかりな手口からみて、実行グループを何らかの形で支援したのではないか。

米国は3月に「イスラム国」の支配領域を完全に奪還したと宣言したが、その過激思想はインターネットなどを通じて拡散が続く。貧困や差別などを抱えた社会に浸透する危険は残る。

問題は、スリランカ当局がテロの兆候を見過ごした可能性があることだ。外国の情報機関からキリスト教会を狙った自爆テロ計画を伝えられたが、首相や閣僚らは報告を受けていなかったという。

シリセナ大統領と首相の政治対立が背景にあるとされる。テロを未然に阻止するには、政府が一丸となって機敏に対処することが欠かせない。政府は対応が後手に回ったことを重く受け止め、再発防止策を講じる必要がある。

事件の真相解明には、米国などの捜査機関との協力も大切だ。

スリランカは1980年代から分離独立を求めるヒンズー教徒の過激派組織と、多数派の仏教徒が主導する政府が激しく対立した。過激派による爆弾テロが繰り返されたが、2009年に内戦が終結してからは治安は改善した。

今回の事件を引き金に、異なる宗教や民族の間で緊張が再び高まることが懸念される。テロと報復の連鎖を許してはならない。

スリランカには年間4万人の日本人が観光などで訪れている。外務省は不要不急の渡航を控えるよう呼びかけた。10連休中に海外旅行を計画している人は多い。訪問先の最新の治安情報を確認することを心がけたい。

テロ対策では、国際的な情報共有が不可欠である。日本は、6月に大阪で開催する主要20か国・地域(G20)首脳会議などを通じて議論を主導すべきだ。
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[読売新聞] 10連休対策 備えを進め安心して過ごそう (2019年04月25日)

これまでにない長期の連休である。国民の暮らしに影響が出ないよう、抜かりなく備えたい。

皇位継承に伴い、27日から10連休に入る。旅行や小売りを中心に経済効果が期待できる一方で、様々な分野で混乱が生じることも懸念される。

関心が高いのは、医療機関の対応だろう。地域の事情に応じて、軽症患者は休日診療所や開業医の輪番制で、重症患者は救急病院で診るところが多い。

通常の外来診療を行う病院も一定数ある。自治体は、受診できる医療機関を周知徹底すべきだ。

体調を崩した際の対処方法を確認しておく。薬を多めに処方してもらう。患者側にも、そんな心構えが求められる。

住民生活に身近なサービスの多くは、自治体が担っている。自然災害や感染症、食中毒が発生した時など、迅速な対応が必要なケースが少なくない。万が一の際に初動が遅れないよう、態勢を整えることが欠かせない。

観光や飲食などのサービス業で働く人は、大忙しだろう。休日出勤をした従業員には、連休後に休暇をとらせるなど、企業は柔軟に対応してもらいたい。

暦通りに休めず、子供の預け先を探している保護者も多い。

多くの子供を受け入れられるよう、政府は一時預かりを行う保育施設への補助金を上乗せする。保育士の確保に一定の効果が出ることを期待したい。

申し込みが殺到し、既にキャンセル待ちが生じている自治体もある。自治体は可能な限り、受け入れ数を増やすべきだ。

大型連休は、経済活動にも様々な影響を与える。銀行の窓口は休業するが、現金自動預け払い機(ATM)は通常の土日と同様に稼働する。連休前後は混雑が予想される。現金が必要な場合は早めに手当てすることが望ましい。

中小企業は、取引先からの入金の遅れによる資金不足が心配だ。日本政策金融公庫が、通常と別枠の資金でつなぎ融資する。こうした制度を上手に使ってほしい。

日本市場の休場時は、為替相場が大きく動く例が多い。今年の年始も円高に振れた。連休前後を含めて市場に混乱が起きないよう、政府・日本銀行と金融機関は細心の注意を払わねばならない。

代替わりに際し、繁華街などで想定外の人出も予想される。警察は情報を収集し、不測の事態が生じないよう努めねばならない。

トラブルなく、新たな時代を明るい気持ちで迎えたい。
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2019年04月24日

[東京新聞] 通年採用拡大 雇用の安定にも配慮を (2019年04月24日)

就活ルールをどうすべきか。経団連と大学は通年採用の拡大で合意した。学生の就職だけでなく、日本の雇用慣行と労働者の生活設計に影響する改革だ。慎重な制度の設計を求めたい。

経団連の中西宏明会長が形骸化を理由に就活ルールの廃止を表明したのは昨年十月。これをきっかけにさまざまな見直し案とその長所、短所が論じられてきた。

今回、拡大で合意した通年採用は、グローバル競争に直面する大企業に要望が強く、実績や能力のある人材を適宜、採用できる利点がある。半面、職業人としての実績がない新卒には不利で、欧米で若者の失業につながっている面は否定できない。

一方、新卒一括採用は終身雇用と一体で安定、安心という利点はあるが、卒業時にチャンスを逃すと不安定な非正規雇用につながる心配がある。

経済界と大学側は一括採用と通年採用の併用で合意した。一括採用の現行ルールは二〇二二年春まで継続される予定で、その間に政府も交えて新たな制度、ルールの具体化が進められる。欠点を補い長所を生かす工夫が必要だ。疑問や課題を指摘しておきたい。

通年採用が広がれば海外留学生や既卒者を中心に、選択肢が増えるため、大学関係者や学生からは一定の評価がある。一方で就職活動の時期の目安はどうなるのか。就活開始がさらに早まり、学業がおろそかになる懸念がある。

なにより優秀な学生だけでなく、地道に勉強に取り組んできた多くの学生が、それぞれに職を得て活躍できる安定した制度が前提だ。人材確保に不安を抱える中小企業への目配りも不可欠だ。

もうひとつ。終身雇用、年功序列という雇用慣行への影響も見極めなければならない。

崩れ始めているとされる終身雇用だが、企業で働く多くの人々が老後までの生活を見通し、設計する土台になってきた。企業も労使間の信頼、協調の土台にしてきた。通年採用の拡大は、この土台を揺さぶる。

景気の動向にも細心の注意を払って議論を進めてほしい。

なだらかな景気で人手不足が続いているが、先行きに雲がかかりつつある。仮にリーマン・ショックのような危機が起きれば、雇用は最初に打撃を受ける。

就職氷河期や年越し派遣村という厳しい経験を踏まえ、安全網の拡充など危機に耐えられる制度づくりも必要だ。
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[東京新聞] ウクライナ 「脱ロ入欧」は慌てずに (2019年04月24日)

隣国のロシアにどう向き合うか。ウクライナの次期大統領に選出されたゼレンスキー氏の最大の課題である。東部地域での親ロシア派勢力との紛争終結に向けて、ロシアと対話を始めてほしい。

大統領選の決選投票で、政治経験のないコメディアンのゼレンスキー氏が現職のポロシェンコ氏に圧勝したのは、既成政治家への反発という世界的潮流に乗った結果とも言える。

親ロシア派政権が倒れた二〇一四年の政変後、政権を担ったポロシェンコ氏は政治の刷新に失敗した。政治腐敗と閉塞(へいそく)感が深まる中で、手あかのついていないゼレンスキー氏は現状打破を願う国民の期待を集めた。

ポロシェンコ氏の強硬な反ロシア姿勢は、ロシアによるクリミア併合や、一万三千人の犠牲者を生んだ東部紛争という問題に進展をもたらさなかった。このポロシェンコ路線を否定した選挙結果でもあった。

その点、ゼレンスキー氏がロシアとの対話に前向きなのを歓迎したい。ロシアにとっても関係改善はプラスだ。それは冷えきった対米関係の修復にもつながる。ドイツとフランスが仲介した東部紛争の停戦に関するミンスク合意は履行に至っていない。紛争収拾へ協議再開を期待する。

ウクライナは、ポーランドやオーストリアに支配されたことのある西部は欧州志向、ロシアの勢力下に長く置かれた東部は親ロシア色が強いという構造的な亀裂を抱える。ソ連崩壊後は欧米とロシアが影響力を競い合う舞台となり、東西のはざまで揺れてきた。

ポロシェンコ氏と同じくゼレンスキー氏も欧州連合(EU)加盟を目指している。だが、この脱ロ入欧路線を急げば大きな摩擦を生む。国内の結束を重視して慎重に進める必要がある。

ウクライナは日本の一・六倍の国土を持ち、肥沃(ひよく)な黒土に恵まれる。軍需、鉄鋼などの工業も盛んだ。ところが長引く紛争に経済は低迷し、ウクライナの一人当たりの国内総生産(GDP)は三千ドル弱。欧州の最貧国とも呼ばれる。

しかもひと握りのオリガルヒ(新興財閥)が経済を牛耳り、政治とも結びついて腐敗を深刻化させている。

政治手腕が未知数のゼレンスキー氏は経済再生と汚職対策で実績を上げないと、国民の失望を買う。優れた人材をそろえて取り組んでほしい。
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[産経新聞] 【主張】ウクライナ新政権 露につけいる隙与えるな (2019年04月24日)

隣国ロシアにクリミア半島を奪われ、軍事介入も受けるウクライナの大統領選で、新人のコメディアン、ゼレンスキー氏が現職に大差をつけて当選を決めた。

現政権下での経済低迷やエリート層の腐敗体質が、国民の失望を招いた結果なのだろう。

だが、厳しい対露姿勢を貫いてきた現職と対照的に、ゼレンスキー氏が対話路線を打ち出していることには危惧を覚える。プーチン露政権の不法行為を容認することに繋がらないか。

プーチン大統領が厳しい対露姿勢を貫いてきた現職よりも御しやすい相手と考え、ウクライナを自国の勢力圏に引き戻す好機と捉える恐れがある。ゼレンスキー氏には、これを許さぬ毅然とした対露外交に徹してもらいたい。

ウクライナでは2014年に親露派政権が崩壊し、親欧米派のポロシェンコ氏が政権に就いた。同政権は民主化と欧州連合(EU)との統合を目指しており、今回の大統領選でも、国民の大半は欧州統合路線を支持している。

懸念するのは、ゼレンスキー氏に政治経験がなく、公約も漠然としていることだ。プーチン氏との対話でロシアとの問題を解決するというものの、その戦略を具体的に示しているわけではない。

ロシアは14年、南部クリミア半島に特殊部隊を投入して半島を併合し、東部の親露派武装勢力を支援して紛争をたきつけた。サイバー攻撃や情報宣伝、特殊部隊や民兵などを組み合わせた「ハイブリッド戦争」の先駆けである。今後もさまざまな手段でウクライナに圧力を強めるに違いない。

ゼレンスキー氏は、平凡な教師が大統領に選ばれて汚職や新興財閥と戦う人気ドラマで、主役を演じた。現実はドラマのように甘くないことを認識すべきである。

ロシアのウクライナ介入は主権国家に対する侵略行為である。ロシアが一方的にウクライナから手を引いて当然であり、ウクライナが妥協する余地などない。

次期大統領は民主的選挙で選ばれた責任を自覚し、改革の歩みを確かなものとすべきだ。民主主義の定着と経済的繁栄こそがロシアに不法を改めさせる力となる。

ロシアに北方領土を不法占拠されている日本は、ウクライナが正しい道を歩むよう支援する必要がある。これは今後も変えてはならぬ基本的な立場である。
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[産経新聞] 【主張】通年採用を拡大へ 学生の資質向上に繋げよ (2019年04月24日)

大学生の就職活動を協議する経団連と大学の産学協議会が通年採用を拡大する中間報告をまとめた。新卒一括採用に偏った慣行を見直し、卒業後の選考など多様な採用形態への移行を目指す。

自由な採用活動が広がれば、企業は学業成績や留学経験など幅広い評価基準で学生を選考できるようになる。学生は、新卒時にたとえ就活に失敗しても、専門性を高めたうえで改めて就活に臨むなどの機会が増えよう。

一方で、企業による優秀な学生の「青田買い」が加速したり、就活期間がかえって長期化したりする恐れもある。混乱を避ける一定のルールも欠かせまい。

中間報告を受けて、政府は経済界や大学と協議し、3年後の導入に向けた具体的な仕組みづくりを検討する見通しだ。通年採用の拡大を学生の資質向上に繋(つな)げる制度改革にしてもらいたい。

協議会は新卒一括採用に加え、専門技術を重視した「ジョブ型採用」を含めた複線型の採用方式を導入する方針を示した。一時期に学生を集中選考する現在の就活をめぐっては、授業やゼミが疎(おろそ)かになるほか、就活に出遅れるなどの懸念から留学を敬遠する弊害が指摘されている。

卒業後も入社試験を受けられるようになれば、専門的な技術や知識を習得したり、留学やボランティアなどの経験を積んだりした学生を獲得できる機会が広がる。企業の期待は大きい。

ただ、最近の就活は深刻な人手不足を背景に時期の前倒しが進んでいる。通年採用の拡大をきっかけに、優秀な学生を早く囲い込もうとする動きが広がれば、学生が学習や人生経験を積む時間がかえって失われることになる。これでは本末転倒であり、人材育成にも大きなマイナスとなる。

それだけに、中間報告が「卒業論文や卒業研究の成果を含む学位取得にいたる全体の成果を重視すべきだ」と強調したのは当然である。企業側はそれぞれ明確な採用基準を示し、中途入社組を含めて多様な人材が応募できる環境を整備すべきだ。

通年採用の拡大は、採用の専門部署を持つ大手企業には有利となるが、人手不足に悩む中小企業にとっては、ますます人材獲得が難しくなる恐れがある。中小企業の採用支援などを含めた制度を設計できるかが問われよう。
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[毎日新聞] 政治資金で堺市長辞職 入りも出も不透明すぎる (2019年04月24日)

堺市の竹山修身市長が、政治資金収支報告書に多額の記載漏れがあった問題の責任を取るとして、辞職を申し出た。

関連する三つの政治団体が大阪府選管に届け出ていたカネの出入りは、2017年までの6年間で2億4500万円だった。だが記載漏れは2億3300万円にも上る。収支が一気に倍に膨らんだ。

団体間寄付や政治資金パーティー収入の未記載が多かったというが、有権者の目の届かない形で、億単位のカネが不明朗に処理されていたのは見過ごせない問題だ。会計処理のずさんさにもあきれる。

3団体のうち二つは竹山氏の次女が会計を担当していたが、会計帳簿を備え付けていない事例があった。

問題発覚後、報告書を修正したが、同じ振込明細書のコピーを複数の団体で使い回す二重計上も見つかった。いずれも、政治資金規正法に抵触する疑いのある行為だ。

記載漏れ自体、規制法違反の疑いがある。市民は竹山市長と家族に対する告発状を大阪地検特捜部に出している。

竹山市長は記載漏れを会計上のミスと釈明したうえで「天地神明に誓って私的流用はない」と強調する。

だが帳簿すらないのでは、裏金づくりなど何らかの目的があったと疑われても仕方ないだろう。事務所の運営やスタッフ選びも政治家の責任のはずだ。

政治資金規正法の趣旨は、政治家がかかわる団体への寄付やパーティー収入などをガラス張りにして市民の監視を受け、公正を保つことだ。

だが5万円以下の寄付や、20万円以下のパーティー収入に関しては、領収書や支出者の氏名を報告する必要がない。不記載が多額に上るケースもチェックが難しい。

このため国会議員の政治団体に関しては、07年の法改正で第三者の弁護士らが監査する制度がある。

今回のような処理がまかり通るなら、県知事や政令市長らに対象を広げることも検討すべきではないか。

竹山市長は辞職表明の記者会見で、「公職を離れても説明したい」と述べたが、具体的な方法などは示していない。辞職を幕引きに使い、説明責任を果たさないまま退場することは許されない。
posted by (-@∀@) at 07:21| Comment(0) | 毎日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする