2009年11月11日

[東京新聞] 事業仕分け 『水増し要求』にメスを (2009年11月11日)

二〇一〇年度予算をめぐる行政刷新会議の事業仕分けがスタートする。無駄な事業を削るのは当然だが、そもそも予算の骨格をめぐる議論はどうなったのか。枝葉の削減劇に終わってはいけない。

議員バッジをつけた国会議員が各省庁の官僚を呼び付けて、公開の席で予算の要不要を判定する。まったく初めての試みだ。

霞が関の密室で決まっていた予算編成が一部とはいえ、国民監視の中で政治家と官僚が議論を戦わせて税金の使い道を決めるのは意義がある。本来は国会の役割であるはずだが、与野党の審議は形式化し、政府は予算案組み替えに応じてこなかった。ぜひ深い議論をして無駄や非効率に徹底したメスを入れてほしい。

そう期待したうえで、あえて疑問も投げかけたい。事業仕分けのような個別作業に入る前に、鳩山政権はいったい今回の予算をどんな形にしたいのか。そこがさっぱり見えてこないのだ。

予算編成と税制改正は目先の景気対策の柱になるだけでなく、中長期の日本経済を展望するうえで最重要の役割を担っている。だからこそ「国家戦略室が予算の骨格をつくる」と言ってきたはずなのに、国家戦略室はあたかも開店休業状態であるかのようだ。

鳩山首相自ら認めるように、景気は二番底に陥る懸念もある。戦略がはっきりしないまま個別の事業仕分けに取り組んでも、それで日本経済をどうするのか、多くの国民は方向感をつかめない。厳しい景況の下、財政政策が担う役割と中長期的な日本経済の姿をもっと積極的に語るべきだ。

四百四十七事業が仕分け対象になったが、三千といわれる全事業からみれば一割強にすぎない。膨大な量の中から短時間に選んだだけに、実質的には財務省や各省庁の事前調整任せになった面もありそうだ。残った事業にも目配りが不可欠である。

一方で「目標削減額は三兆円」といった数字が早くも飛び交っている。三兆円という数字にどんな根拠があるのか不明だが、これではハードルが低すぎる。

本年度歳出総額が八八・五兆円だったことを考えれば、社会保障費の自然増一兆円を加えても来年度は九十兆円程度に収まらなければ、予算組み替えで子ども手当などの歳出増を捻出(ねんしゅつ)したとはいえない。九十五兆円の概算要求が過大なのだ。官僚の水膨れ要求を政治家がどこまで削れるか、最初の試金石である。
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[東京新聞] プルサーマル 誰のための『国策』か (2009年11月11日)

プルサーマル発電の試運転が、佐賀県玄海町の九州電力玄海原子力発電所で始まった。国内初だが、海外では撤退に向かう核燃料サイクル計画は、「国策」として続けていくに足るものか。

プルサーマルとは、原発で使用済みになったウランの燃えかすからプルトニウムを抽出し、新しいウランに混ぜてもう一度燃やす、燃料リサイクルである。

本来ならば一九九九年、関西電力高浜原発か、東京電力福島第一原発が「第一号」になるはずだった。ところが、MOX(ウラン、プルトニウム混合)燃料の品質管理データ改ざん問題などで、計画は頓挫した。十年の遅れを生んだもの、それは原発につきまとう、トラブル、隠ぺい、そして不信の連鎖にほかならない。

玄海3号機は、何とか始動にこぎ着けた。来月には営業運転を開始する。が、不信がぬぐい去られたわけではない。MOX燃料を供給すべき青森県六ケ所村の再処理工場は、トラブルの連続で完成が十七回も延期されてきた。

使用済み燃料を再利用する「核燃料サイクル」は「国策」という。ただし、発電すればするほど燃料が増える高速増殖炉がその本命だった。しかし、実用化のめどは立っていない。“つなぎ”役のプルサーマルも制御が難しいとされるなど、技術的な疑問は多い。利用できるプルトニウムは使用済み燃料のわずか1%、それ自体が猛毒だ。MOX燃料の価格は、通常のウラン燃料の十倍近い。欧米では“再処理離れ”が進む。

使用済みMOX燃料の捨て方は決まっておらず、核燃料の「サイクル(輪)」は寸断されている。

関係者はことあるごとに「安全」を強調するが、住民の不信と不安がくすぶる中で見切り発車したという印象も否めない。それでも先を急ぐのは、核兵器にも転用できる再処理済みのプルトニウムがたまりすぎているからだ。

来年度にかけて、四国電力伊方原発、中部電力浜岡原発なども、発電開始をめざしている。

民主党政権下でも「国策」は変わっていない。エネルギー自給率4%のこの国で、政府や電力事業者は「国策」遂行に邁進(まいしん)し、そのために不信を呼んだ。安全確保、情報公開は当然だ。その上で、少し立ち止まって考えたい。安全、コスト、将来性、ライフスタイルなどの面から、私たち消費する側も交えて「国策」を冷静に論じ合い、見直しを図るべきだろう。
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[日経新聞] 社説1 事業仕分け人は臆さず制度に切り込め(11/11)

政府の行政刷新会議が公開の場で要らない支出を洗い出す「事業仕分け」の作業に入る。対象447事業を約220件にくくり、3つの作業部会に分かれ、1件当たり約1時間をかけて所管官庁などと議論する。事業や制度が必要か、国が担うべきかなどを検証し、存廃を判定する。

仕分けの対象は幅広い。各省庁の調査費などの細かい経費から国際機関や独立行政法人への交付金、下水道や道路の公共事業費に及ぶ。さらに診療報酬や薬価、地方交付税の交付金や義務教育費の国庫負担金といった、多額で政治の利害関係者の声が強い分野も取り扱う。

旧来の権益に縛られた予算を政治主導で大胆に見直し、歳出をより有効に振り分けることが民主党政権には期待されている。歳出の構造を変えていく手段として、私たちは事業仕分けが有効だと考える。ただ、当初の構想に比べると懸念される問題点も浮かんでいる。

まず評価者の「仕分け人」になる民主党国会議員が7人に減らされたことだ。

当選1回の議員を含め約30人の政治家が入る構想は、小沢一郎民主党幹事長の反発で撤回された。各省政務官や民間の学者、エコノミストらが加わり総勢約80人で始まるが、十分な態勢と言えるのか。

第2に事業仕分けへの期待が、ともすれば歳出削減の金額自体に集まりがちなことだ。

鳩山由紀夫首相による2010年度の予算編成は、税収が40兆円を割る深刻な収入難に陥りそうだ。95兆円超に膨れた歳出の概算要求を大幅に削る必要が生じている。民主党政権が事業仕分けをその突破口にしたいのは無理もないところだ。

今回取り扱うのは全体で4000近い事業の1割程度である。事業仕分けだけで数兆円もの予算を削減するのは容易ではない。だが、各種の事業のあり方について人々の常識や現場の視点で検証する事業仕分けは、政治主導による予算編成の出発点として非常に大きな意味がある。

仕分け人に求められるのは小手先での事業規模の切り詰めよりも、長い間、存在意義が問われなかった制度や事業に根本から切り込む姿勢だ。地方交付税のあり方や、聖域と化しつつある社会保障関係費の無駄についても、納得のいく論点と判断を示すよう期待したい。

今回は予算案決定まで1カ月余りという短期決戦だが、事業仕分けの作業は今後も続く。他の社会保障の制度や特別会計、独立行政法人にも意欲的にメスを入れてほしい。
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[日経新聞] 社説2 「象徴天皇」を形にした20年(11/11)

天皇陛下が即位から20年を迎え、あす、政府、民間主催でそれぞれの記念式典が開かれる。

平成の時代の流れと重ね合わせれば、「つねに国民とともにあり、国と国民のためにつくす」という新しい天皇像が定着しつつあることに誰もが気づくだろう。天皇陛下と、陛下を支えた皇后陛下の歩みを振り返ると、一貫した姿勢に強い意志を見る思いがする。

天皇陛下は今の憲法の下で即位した初の天皇だ。憲法第1条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する国民の総意に基づく」と定めている。しかし「象徴天皇とは何か」に用意された答えはない。

天皇陛下はことし4月、「象徴とはどうあるべきかということはいつも私の念頭を離れず、その望ましいあり方を求めて今日に至っている」と述べられている。

この言葉に天皇陛下の20年が凝縮している。

平成は「内平(たいら)かに外成る」「地平かに天成る」という中国古典の文言から、内外、天地が平和であれとの思いを込めてつけられた元号だ。しかし、この20年が平らかだったとは、とても言えない。

バブルの絶頂と崩壊、その後の「失われた10年」があった。雲仙普賢岳噴火、阪神大震災などの災害もあった。鳩山由紀夫首相は平成で15人めの首相だ。政治が不安定だった証しである。少子高齢化は進み、昨年はリーマン・ショックが襲った。

こうした中、「国民が何を期待しているか」を思い続ける天皇陛下の姿勢にはブレがなかった。被災地や福祉施設でひざをついて人々に声をかけられることに、いま違和感を持つ人はほとんどないだろう。しかし、天皇がひざをつく姿など想像できない時代があったのである。

戦没者の慰霊を通じ平和への思いを示すことや即位後32カ国に上る外国訪問なども含め、陛下は積極的な行動によって象徴天皇像を作りあげてこられた。その像は国民の期待に合致していると言っていいだろう。

しかし、そのため公務の負担が重くなりすぎたのは否めない。陛下は来月23日に76歳になる。即位20年を負担軽減のきっかけにしてほしい。
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[毎日新聞] 社説:オバマ氏初来日 「同盟深化」の出発点に (2009年11月11日)

オバマ米大統領が13日、初来日し、同夜に鳩山由紀夫首相と会談する。アフガニスタン復興のための支援策や、気候変動問題への取り組み、核軍縮などの諸課題が主なテーマとなる見通しだ。

日本政府は会談に向けて、今年から5年間で50億ドル(約4500億円)のアフガン支援策を決めた。反政府勢力タリバン元兵士の社会復帰のための職業訓練や、警察官給与半額負担の継続、農業・医療支援などが柱となる。インド洋での給油活動に代わる自衛隊派遣は、アフガン本土の治安悪化、連立を組む社民党への配慮などから見送り、資金拠出を中心とする民生支援となった。

それにしても、02年以降のアフガン民生支援が総額約20億ドルだから、大きく膨らむことになる。給油活動中止や、治安悪化で人的貢献が限られることの「代償」として米側と折り合った結果とみられる。これだけの税金を投入する以上、政府は支援内容の到達点などを定期的に国民に報告し、透明性を確保すべきだ。

一方、「普天間」移設問題は、会談の決裂を回避するため両首脳とも突っ込んだ議論は避けるようだ。問題の先送りだが、普天間が両国の大きな懸案である以上、会談の隠れた主役であることは違いない。

普天間をめぐっては、鳩山政権の対応に気になることがある。民主党は衆院選マニフェストで米軍再編や在日米軍基地について「見直しの方向で臨む」とし、鳩山代表は選挙中、沖縄県外への移設を明言していた。「県外移設」は事実上の公約である。

ところが、岡田克也外相は米空軍嘉手納基地への統合を念頭に置き、北沢俊美防衛相は日米合意のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設案に傾いている。ともに県内移設である。政権が県外移設を真剣に検討している様子はまったくない。鳩山首相は「沖縄県民の思い」と「日米合意の重さ」の両方を強調するが、日米合意の存在を認識したうえで県外移設を主張したのではなかったのか。混迷する普天間問題解決の道筋をつけるのは鳩山首相の責任である。首脳会談では、少なくとも移設問題に真剣に取り組む両首脳の認識を共有し、解決に向けた道筋を示してもらいたい。

来年は日米安保条約改定から50周年を迎える。日米両国の政権交代を踏まえ、日米同盟の深化に向けた共同作業を開始することは大きな意味がある。鳩山政権も、日米同盟を日本外交の基盤であると強調している。来年11月に横浜市で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)には、オバマ大統領が再来日する。今回の会談は、これを目標に日米同盟の「再定義」の取り組みを進める出発点にすべきである。
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[毎日新聞] 社説:光事件実名本 妥当な決定ではあるが (2009年11月11日)

少年事件における出版・表現の自由はどこまで認められるのか。99年に起きた山口県光市の母子殺害事件をめぐり、当時18歳だった被告の元少年(28)を実名表記したルポルタージュ本について、広島地裁が元少年側の出版差し止めの仮処分申し立てを却下する決定をした。

内容の一部に元少年に対するプライバシーの侵害行為はあるが、出版によって回復困難な損害を受けるとまでは認められない、というのが理由だ。検閲につながりかねない出版物の差し止めは、プライバシー侵害による損害の程度が極めて大きい場合に限定すべきだという従来の司法判断の延長線上の結論であり、妥当といえるのではないか。

元少年は昨年4月、広島高裁の差し戻し控訴審で死刑を言い渡され、上告中だ。今、全国で最も注目される少年事件の被告といっていい。本は元少年の実名(名字)から「■■君を殺して何になる」というタイトルが付けられている。書名自体が、少年時の罪で起訴された者の実名表記を禁じる少年法に違反するため、出版界に波紋を呼び、先月7日の発売時の書店の対応も分かれた。

著者はフリーのライターで、死刑判決以後、元少年と文通や面会を重ねたという。本は、そのやりとりや手紙の引用、元少年の父親や友人ら関係者への取材内容を中心に構成している。題名どおり元少年の死刑判決に懐疑的な内容だが、少年側の弁護団は反発した。原稿を事前に確認させる約束が守られず、内容も元少年の人格権を侵害すると主張した。

決定は、事前に原稿を見せる約束があったとはいえないと判断し、差し止め請求は退けた。だが、今回の出版については、表現の自由が守られたと楽観できないのも事実だ。

決定が「事前確認行為なく書籍を出版したことの是非はともかく」と結論に注釈を付けたように、当事者に知らせることなく出版しようとした行為は、いかにも不意打ち的だ。また、元少年側が先月5日に仮処分を申し立てた後、初版が売り切れると2万部増刷した行為も適切だろうか。決定を待つのがせめてもの出版倫理ではないか。

なぜ実名を書かねばならなかったのか。著者は「少年の実像を知ってもらうのには欠かせない」と説明するが、十分な説得力があるだろうか。これまでの経緯をみると、利益優先との批判はやむを得ない側面もある。

決定は、元少年から著者への手紙や、中学時代の顔写真を掲載した点について、プライバシーを侵害すると認定した。今回の出版については、既に損害賠償を求める訴えが別に起こされている。そちらで十分な審理を尽くしてほしい。
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[朝日新聞] 東アジア共同体―自由貿易圏づくりが先だ (2009年11月11日)

東アジア共同体」をめぐる発言や動きが国際舞台で目立つようになってきた。鳩山由紀夫首相が推進を表明したことも力となって、先の東アジアサミットでは、政府間で域内の経済連携を研究することで合意した。

しかし、首相が語る共同体は、まだぼんやりした理念にすぎない。中国韓国東南アジア諸国などはそれぞれ、人口も経済力も格差が著しく、政治体制も異なる。この多様な地域を、欧州連合(EU)のように通貨から政治面まで含めて統合するというのは、なお夢物語に近い。

現実的なのは、「共同体」への足がかりとなる「共通市場」化ではあるまいか。域内での経済連携の拡大による自由貿易圏づくりだ。

ヒト、モノ、カネがスムーズに流れることで域内の経済成長につながる、という未来図である。だが、それさえも簡単なことではない。

輸出競争力がある中国、対日貿易赤字の拡大を恐れる韓国、農産物輸入自由化に踏み切れない日本。それぞれの間で自由貿易協定(FTA)を結ぶことに尻込みしているのが実態だ。

鳩山政権は、まずこうした現状を打開するために汗をかくべきだ。中国、インドを代表格とする新興国はますます繁栄の道を歩む。アジアは世界の成長センターとして発展するだろう。

人口減少と超高齢化で陰りが出ている日本は、この地域の成長力や「アジア内需」と連動して未来を切り開く覚悟が必要である。

まず域内でFTAの機運を盛り上げるような協力を積み重ねてはどうか。たとえば、アジアを縦断する交通路をつくることや、通関手続きや食品の安全基準の整備、環境問題での協力など、互いの利益が期待できるテーマで成果を上げていくことだ。

はるか先の「共同体」についてではあるが、構成メンバーについての意見は割れている。中国は、日中韓と東南アジア諸国連合による13カ国を主張。日本はインドや豪州、ニュージーランドを加えた16カ国の枠組みを提唱し、隔たりは大きい。

米国の扱いも対立の火種だ。米国抜きの共同体をつくろうとする議論に対し、米国は不満を表明している。鳩山政権は、岡田克也外相が「米国まで含めることになっていない」と言うかと思えば、鳩山首相は米国の関与を求める発言をしている。

共同体の構成について結論を急ぐことは問題をこじらせ、生産的ではない。日本はむしろ、政治的にも経済的にも緊密な米国とのFTAをアジア諸国とのFTAと同時に推進することに力を注ぐべきだろう。

東アジアと環太平洋の共通市場化を進めながら「共同体」のありようをじっくり考えていきたい。
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[朝日新聞] 事業仕分け―国民だれもが点検できる (2009年11月11日)

来年度の予算案づくりに向け、行政刷新会議の事業仕分けがきょう始まる。歳出の無駄を洗い出し、鳩山由紀夫首相の掲げる「コンクリートから人へ」の組み替えを実現できるか。その成否は新政権の評価に直結する。

民主党の国会議員と自治体職員、エコノミストら民間の有識者が「仕分け人」となり、役所の担当者と議論しながら、ひとつひとつ事業の必要性を吟味する。

目標は、95兆円に膨らんだ来年度予算の概算要求から3兆円規模の削減を生み出すことだ。仕分け対象は政府の全事業の約15%にあたる447事業だが、対象外でも類似の事業には今回の判断をあてはめる。

一口に無駄といっても、それぞれの事業にはそれなりの理由と目的があり、恩恵を受ける人もいる。それらを仕分けるのは▽費用に見合う効果はあるのか▽縦割り行政のなかで重複はないか▽財政が苦しい中で今やる必要はあるのか▽地方や民間に任せるべきではないか、といった観点からの検討である。仕分け人には、官僚の説明に言いくるめられない眼力が求められる。

作業にあたるのは枝野幸男元政調会長ら民主党の国会議員7人のほか、民間の有識者56人が起用された。各分野での専門知識を生かすのはもちろんだが、一般市民の常識に照らしておかしくはないか、説得力はあるかという視点を大事にしてもらいたい。

事業の必要性を問うことは、その事業を定めた制度や事業を担う組織の見直しにもつながる。単に削減額を積み上げるだけではなく、文字通り、将来の「行政の刷新」につながる議論も期待したい。

これまで予算査定を一手に握ってきた財務省は、対象事業の選定に全面的に協力した。仕分けにも主計局の職員が出席して意見を述べる。財務省主導の予算削減の隠れみのになっては元も子もない。仕分け人たちの主体性が何よりも重要である。

仕分け作業の結果をその通りに予算案に反映させるかどうかは、首相が議長を務める行政刷新会議の判断にかかっている。地方交付税や義務教育費の国庫負担、在日米軍への思いやり予算といった案件では、内閣全体としての判断が問われることになる。

特筆したいのは、仕分け作業が全面的に公開されることだ。会場で傍聴できる人は限られるだろうが、インターネットで中継され、全国どこでも見ることができる。国民からの意見を受け付ける仕組みも検討しているという。

予算査定の生の現場が公開される。納税者としてこの機会を見逃す手はない。私たちの納めた税金がどのように使われようとしているのか、しっかり目をこらしていこう。民主主義の原点を確認する機会にもなる。
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[読売新聞] アフガン支援策 「小切手外交」に戻るのか(11月11日付・読売社説) (2009年11月11日)

鳩山政権が取り組むアフガニスタン支援策がまとまった。

元タリバン兵士に対する職業訓練や警察官の給与肩代わりなど、5年間で50億ドル(約4500億円)の民生支援を実施する。従来の支援額と比べ、単年度平均で約4倍となる。

自衛隊による人的貢献策は盛り込まれなかった。政府は、来年1月に期限切れとなるインド洋での給油活動も中止する方針だ。自衛隊のアフガン支援がなくなれば、「小切手外交」に逆戻り、との批判は免れそうにない。

鳩山首相は、来日するオバマ米大統領に支援内容を説明する。巨額の財政支援は、米国をはじめ、欧州各国からも一定の評価が得られるだろう。

50億ドルは無償資金協力や国際機関を通じて拠出されるが、その具体的な使途について、政府は国民に十分に説明することが求められる。支援の効果も検証しつつ、実施していくことが大切だ。

政府は、アフガン人自身が民生安定に取り組む能力を強化するため、国際社会は「背後」から支えるべきだとしている。

このため、人的支援策も民生分野に限り、国際協力機構(JICA)による現地での農業指導の拡充を検討しているという。だが、現地の治安情勢を考えれば、大幅な人員増は困難だ。

アフガンの国軍や警察が十分に機能していない中で、治安維持の前面に立っているのは、欧米など42か国が参加する国際治安支援部隊(ISAF)である。

国連安全保障理事会が先月、ISAFの活動延長を決めた際、非常任理事国の日本も賛成した。

支援策の検討にあたっては、北沢防衛相が、ISAF司令部への要員派遣や、航空自衛隊による空輸支援などの可能性を探った。

民主党の小沢幹事長は以前、ISAFへの自衛隊派遣に前向きな考えを示したことがある。

しかし、これらが十分論じられないまま、自衛隊活用策は見送られた。自衛隊の海外派遣に反対する社民党との連立維持を優先させたということだろう。

かつての湾岸危機の際、当時の海部政権が自衛隊派遣を見送り、財政支援だけで対応して「小切手外交」と批判された苦い経験を思い起こす必要がある。

海上自衛隊による給油活動は国際社会から高く評価されており、中止によって失われるものは大きい。鳩山首相は、給油活動継続の道を探るべきだ。
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[読売新聞] 分権委最終勧告 改革の工程表と全体像を示せ(11月11日付・読売社説) (2009年11月11日)

4次にわたる政府の地方分権改革推進委員会の勧告が出そろった。政府は、勧告の尊重にとどまらず、より大胆な改革を目指してほしい。

分権委の勧告は多岐に及ぶ。国から地方への権限移譲、国の出先機関の統廃合、国が法令で自治体を縛る「義務付け・枠付け」の見直しなどだ。

このうち保育所や老人施設の設置基準の緩和など義務付け・枠付けの見直しは、実現に向けて関係府省との調整が始まっている。

地方が要望する40本の法律の104条項のうち、4分の1強の28条項の見直しは各府省が同意した。34条項は一部の見直しにとどまり42条項は拒否されている。

自民党政権では、各府省が族議員とも連携し、大半の勧告にゼロ回答を続けた。今回、回答が多少前向きになったのは、政権交代の効用とみられるが、官僚の抵抗は依然として根強い。

政府は、年末に地方分権改革推進計画を決定し、来年の通常国会に関連法案を提出する。

「地域主権国家」を標榜(ひょうぼう)する鳩山内閣の重要な試金石だ。鳩山首相や、地域主権推進担当の原口総務相が指導力を発揮し、見直し条項をさらに積み増しすべきだ。

最低居室面積や職員配置など、保育所の設置基準の緩和に関しては、関係団体から「保育の質が低下する」との反対論がある。

だが、都市部の自治体は既に、国の補助金を受けずに独自の保育所認可基準を設けている。多くの待機児童がいる切実な現状を踏まえた措置だ。深刻な保育所不足などを考えれば、基準緩和は時代の要請とも言えるだろう。

義務付けの見直しは、自治体の意識改革も促すはずだ。

自治体は従来、国が判断した基準に従う、という受け身の姿勢で良かった。今後は、自ら判断し、基準を制定する責任を負う。新たな権限をきちんと行使する覚悟と能力が求められよう。

地方分権改革では、多くの課題を同時並行で進める必要がある。政府は月内にも、地方分権委に代えて、閣僚や地方代表、有識者による新組織を設置する予定だ。

分権委は第2次勧告で、国土交通省地方整備局など8府省の出先機関の統廃合を提言した。ただ、統廃合と同時に地方に移管する事務や権限が明確でなく、看板の掛け替えに終わる懸念がある。

政府は、分権改革の進め方を議論、整理したうえ、新たな工程表を作成し、その全体像を国民に提示する必要があろう。
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[産経新聞] 【主張】行政刷新会議 聖域なく歳出に切り込め (2009.11.11)

行政刷新会議が来年度予算概算要求の無駄を削る「事業仕分け」対象を決めた。診療報酬や地方交付税、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)など広範な分野が盛り込まれている。

これらの分野は予算規模や政治判断が必要な点からみて、個別事業の要不要を判断するという単なる「事業仕分け」の域を越えており、本格的予算編成作業に近い。ならば、聖域を設けず大胆に切り込むよう求めたい。

鳩山由紀夫首相も「聖域なき見直し」を表明してはいるが、額面通りには受け取れない。民主党議員と民間有識者によるいわゆる「仕分け人」が短期間で広範な分野をどこまで判断できるか疑問だし、作業を通じて政権公約との矛盾も生じかねない。

来年度が改定年に当たる診療報酬では、医師不足解消を目的にした大幅引き上げが民主党の主張だった。しかし、民間給与が下がる中で医師の診療報酬を上げることに国民が納得するだろうか。

本来なら優遇されすぎた開業医の報酬を削減し、その分を不足する勤務医などに配分すれば済む。その意味で配分見直しの権限を厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会から刷新会議に移したのはいいが、これにも閣内で異論が出ているという。

地方財源拡充の公約を背景に大幅な増額要求となった地方交付税も削らねばならない。高すぎる地方公務員給与を放置したままの増額要求など筋の通る話ではないからだ。では支持基盤である自治労をどこまで抑えられるのか。

思いやり予算も同様だ。対象は地域の民間給与を大幅に上回る基地従業員の人件費だが、基地労組は強い反対勢力である。これを説得するのは容易ではない。

このように、いざ歳出を削減しようとすれば鳩山政権は返り血を浴びる。しかも、95兆円に上る概算要求から目標の3兆円を削ったところで、国債増発を行わないとする公約は危うい。

今年度税収は当初見込みの46兆円から30兆円台後半に落ち込むのが確実で、来年度も税収増は期待できない。国債増発の判断基準を今年度補正予算後の44兆円という甘い水準に置いたとしても、財源はまだまだ足りない。

子ども手当や高速道路無料化など財源の裏付けが希薄な政権公約にはやはり無理がある。現実に則して見直すべきではないか。
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[産経新聞] 【主張】アフガン支援 湾岸の教訓を忘れたのか (2009.11.11)

政府は、国際社会によるテロとの戦いで正念場を迎えているアフガニスタンとパキスタンに対し、新たな支援策を正式決定した。アフガンには今後5年間で50億ドル、パキスタンには2年間で10億ドルを拠出する。

オバマ大統領はアジア太平洋経済協力会議(APEC)が開かれるシンガポール中国などアジア歴訪の皮切りに、13日に来日する。直前の発表を米政府も歓迎した。

しかし、テロとの戦いの一環であるインド洋補給支援を打ち切る代替策としては不十分であると指摘せざるを得ない。

確かに日本の新たな支援パッケージは、アフガン警察官の給与負担や元タリバン兵士の職業訓練、さらに農業分野というこれまでの支援を拡大し、金額的には倍以上だ。が、支援を円滑に進めるのに不可欠な治安の確保という視点を、鳩山政権は欠いている。

アフガンの民生支援には国際協力機構(JICA)を中心に百数十人の専門家を含む文民が派遣されている。しかし、今年8月以降はテロの頻発で最悪の治安状態となり、現在は8〜9割がアフガン国外に退避している。

例えば、JICAが現在アフガンに3人派遣している稲作農業指導をカブール東の都市部周辺から北東部の穀倉地帯に拡大するというが、武器をもたない文民の安全を一体だれが確保するのか。

地方復興チーム(PRT)に派遣された日本の文民を国際治安支援部隊(ISAF)のリトアニア兵が警護したことがあった。米韓同盟強化の観点から、中止していたPRTへの警護要員の再派兵を決めた韓国やISAF参加国と比べれば、日本のアフガン支援は自衛隊派遣という選択肢を排除している。実効性の面から問題だ。年間約70億円の補給支援活動は多くの国から感謝されている。鳩山由紀夫首相は補給支援という国際共同行動を継続するよう再検討すべきである。

テキサス州の陸軍基地で先日、アフガン派遣前の陸軍少佐が銃乱射事件を起こした。アフガン駐留米軍をさらに増派しようとしているオバマ大統領は苦しい立場に追い込まれている。

イラクがクウェートに侵攻した湾岸戦争(1991年)で日本は130億ドルもの支援をしたが、資金のみの協力にとどまったため、「小切手外交」と揶揄(やゆ)された。あの教訓を忘れてはなるまい。
posted by (-@∀@) at 04:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 産経新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする