2018年08月20日

[東京新聞] 教室にエアコン 子どもを猛暑から守れ (2018年08月20日)

猛暑のたびに熱中症の危険性がいわれる。命を守るための適切な室温調整は今や常識だ。だが、小中学校の教室のエアコン導入はまだ不十分で、自治体間の設置率の差も大きい。早急に改善したい。

先月十七日、愛知県豊田市で、校外活動に参加した市立小学校一年生の男子児童が重い熱中症で死亡した。体調不良を訴え、学校に戻った男児が休息をとった教室にはエアコンはなかった。

午前中だったが、市内の気温は既に三〇度を超えていた。

この事故がきっかけになったといえよう。保護者や専門家から、学校の教室にエアコン設置を求める声が広まった。

文部科学省の二〇一七年度の都道府県別調査では、全国の公立小中学校の普通教室のエアコン設置率は、平均で49・6%だった。

北海道(0・3%)など涼しいとされる地域も含む値だが、実際に都道府県の格差は大きい。公立小中学校の設置者である市町村の設置率の差も同様だ。

たとえば、男児の事故が起きた豊田市がある愛知県の設置率は全国平均を下回る35・7%。このうち当の豊田市の市立小中学校の設置率は、一部を除いてほぼ0%。

愛知県に隣接する静岡県は相当低く7・9%。岐阜県は55・2%だが、“暑い町”としてよく知られ、今年も四〇度超えなど猛暑続きの多治見市は0%である。

ただ豊田、多治見両市ともに、エアコン導入の方針や計画を今春までに既に決めている。

設置率の高い自治体としては、たとえば東京都が99・9%。一〇年の猛暑を機に、国の補助金に上乗せして都が財政支援した。愛知県内でも名古屋市が一三〜一五年度にかけ、全校に配備した。

気象庁が今年七月の天候を「異常気象」と総括し、あえて地球温暖化にも触れ、高温傾向などは今後も増えると警鐘を鳴らす中、設置率が半分に満たない状況は何とか改善しなければなるまい。

教育現場の一部にはなお、部活動中に過度に走らせるなど高温の危険性を甘く見るケースもあるようだ。「我慢は美徳」という精神論は、この異常な猛暑の前ではナンセンスと言うほかない。そんな空気が空調整備の障害になっているなら、あらためたい。

文科省はエアコン設置費の三分の一を補助しているが、自治体から引き上げの要望もある。やはり格差解消を進めるには、補助率アップなど現行制度の見直しに踏み切ることも必要ではないか。
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[東京新聞] トルコ通貨危機 両大統領に自省促せ (2018年08月20日)

トルコの通貨危機が世界経済に悪影響を及ぼしている。背景には米国とトルコの対立があり、両国指導者の行動が危機に拍車をかけている。大事に至る前に国際社会は協調して動くべきだ。

対立の発端は二〇一六年にトルコで起きたクーデター未遂事件だ。トルコのエルドアン大統領が事件に関与したとみなす在米のイスラム教指導者、ギュレン師の引き渡しを米国は拒否し続けている。トルコは米国人牧師、ブランソン氏を事件に関与したとして同年拘束した。

牧師は米共和党の有力支持基盤、キリスト教福音派に属する。米中間選挙が近づく中、トランプ大統領は牧師解放に応じないトルコに対し、鉄鋼・アルミニウムへの関税を二倍に引き上げる経済制裁を表明した。一方、慢性的なインフレに悩むトルコでは、中央銀行が金利を引き上げる必要に迫られていた。しかし、金利自体を敵視するエルドアン大統領が金融政策に介入する姿勢をみせて利上げは困難となり、通貨防衛策が立てにくい状況に陥ってしまった。

両大統領のやや過激な政策発動の結果、信用が低下したトルコの通貨リラの価値は一時、年初来の下落率が四割となった。政治指導者による「人災」ともいえる異例の通貨危機の勃発である。

この影響は直ちに各国金融市場に連鎖した。トルコに多額の投資をしている欧州主要国の株価が一気に下がり、その流れは日米の株式市場にも波及。各国の株価は依然、不安定な状態が続く。

アルゼンチン、南アフリカといった新興国といわれる国の通貨も軒並み下落。トルコの経済状況を不安視した投資家が、資金を引き揚げ始めたからだ。

金融市場の混乱は放置すると暮らしの痛みに直結する。日本では、円高による株価下落が続けば企業財務の悪化を招き、賃金抑制につながる。通貨が弱い国では輸入価格急騰でインフレが起き、世界経済の足かせ要因にもなる。

しかし両大統領は妥協の気配すら見せていない。このままだと「プレジデント(大統領)経済危機」が起きかねない。日本を含む国際社会は早急にスクラムを組み、二人の大統領に自省を促す必要がある。そのための仕組みとして日米やトルコも参加する二十カ国・地域(G20)財務相、中央銀行総裁会議があるのではないか。度が過ぎた対立や自国中心主義が、自らも痛めるとの現実を各国は議論を通じ共有すべきだ。
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[産経新聞] 【主張】がん健診 質の管理に目を向けよう (2018年08月20日)

がんを早期に発見し、治療するには、がん検診が不可欠だ。だが、検診での見落としなどが生じている。検診は決められた手順や態勢で行われることが必要なのに、徹底されていないのは、極めて問題である。

検診の質が不十分であれば、がんを見つけて治療につなげることは期待できない。

質を満たさない検診を放置してはならない。国は広く実態を把握して対応してもらいたい。

市区町村は、基準を満たす医療機関を適切に選んで、住民検診を委託しなければならない。それには地域医師会の協力が欠かせない。都道府県は両者を後押ししてほしい。

東京都杉並区で、肺がん検診を受けた女性が、がんを見落とされ、早期の治療機会を失う事例があった。女性は同じ医療機関で何度もがん検診を受けていた。

ここでの検診は、厚生労働省と国立がん研究センターなどが求める「質の指標」を満たしていなかった。胸部エックス線写真の読影は、2人の医師が行い、うち1人は肺がん診療か放射線科の専門医であることが求められている。しかし、専門医抜きで行われることがあった。

質の指標は、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸(けい)がんについて、どんな検診をするか、受診者に何を説明するか細かく決まっている。精密検査の結果を、市区町村と検診機関などが共有することも盛り込まれている。

だが、徹底している地域と、徹底していない地域がある。猛省を促したい。不利益を被るのは住民である。

市区町村の検診だけではない。企業の健康保険組合などで行うがん検診は、チェックする態勢自体が整っていない。

がん検診の指標は、長らく「受診率の向上」だった。だが、検診の質を問う「精度管理」の必要性が、昨年更新された国の「がん対策推進基本計画」に盛り込まれている。

受ける側も自覚すべきことがある。質の指標には精密検査の受診率が含まれるが、65?85%と地域やがんの種類で差がある。精密検査なしでは検診の意味は薄れる。結果に向き合うのは不安かもしれないが、早期発見のための検査である。その意義を理解して、がん検診を正しく受けたい。
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[産経新聞] 【主張】チェコ侵攻50年 ロシアの野望阻止へ動け (2018年08月20日)

東西冷戦期の1968年、社会主義体制下で民主化運動「プラハの春」を進めたチェコスロバキア(当時)にソ連が軍事侵攻して20日で50年を迎える。

戦車に押しつぶされた自由は冷戦後、中東欧諸国に行き渡った。だが、「ロシア世界の再興」を掲げたプーチン政権は、10年前の2008年にはグルジア(現ジョージア)の南オセチア自治州を、14年にはウクライナ南部のクリミア半島を、それぞれ軍事力で併合した。

ソ連からロシアになっても、周辺国に対する独善的姿勢は変わらない。自由や法の支配などの基本的価値を共有する日本と欧米諸国は、プーチン政権の危険性を認識すべきである。

プラハの春は、「人間の顔をした社会主義」をスローガンにした、共産党第1書記ドプチェクが進めた運動だった。ソ連は、他の東欧諸国への波及を恐れ、ワルシャワ条約機構の軍を率いて侵攻した。市民らは戦車の前で抗議したが、ドプチェクは解任され、民主化運動は圧殺された。

正当化のためソ連のブレジネフ書記長が持ち出したのが、社会主義圏全体の利益を守るには、圏内の国家の主権を制限できるという「制限主権論」だった。

プーチン大統領は、ロシアの勢力圏の維持・拡大のためには近隣諸国への介入は許されるという、似通った論理を用いている。グルジアやウクライナをめぐっても「ロシア系住民を保護せよ」というプロパガンダの下で、軍事介入を正当化したのである。

ロシアは、エストニアなど欧米各国の混乱をねらって、サイバー攻撃や世論工作など非軍事的手段を組み合わせた「ハイブリッド戦」を仕掛けている。

これに対し、北大西洋条約機構(NATO)は、バルト三国やポーランドに部隊を駐留させた。欧州連合(EU)もハイブリッド戦への対策センターを昨年設置するなど警戒を強めている。

日本は、固有の領土である北方四島を73年前から不法占拠されている。現在進行形の被害国そのものであり、悔い改めないロシアに対する安易な経済協力など本末転倒である。

ロシアが力ずくで国際秩序を破壊することを決して許さない。そうした決意で日本や欧米各国は結束しなければならない。
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[毎日新聞] 貧困が生む健康格差 深刻さが知られていない (2018年08月20日)

所得が低かったり、非正規労働者だったりする人は、そうでない人より健康を害しやすい。いわゆる「健康格差」の問題が指摘されている。

これを裏付けるデータの報告は相次いでいる。全日本民主医療機関連合会(民医連)が、生活習慣が原因といわれる「2型糖尿病」について2011?12年に40歳以下の782人を調査したところ、年収200万円未満が6割近くを占めた。バランスのいい食事を取ることが少ないためとみられる。

また、低所得層は高所得層に比べ、うつ状態の割合が5倍に上るという調査もある。経済的・社会的なストレスを抱えると心身の健康がむしばまれやすいとされる。

経済的・社会的要因が健康状態まで左右する深刻な実態に、政府や自治体はもっと目を向けるべきだ。

世界保健機関(WHO)は09年、加盟国に対し、健康格差是正に向けた取り組みを推進するよう勧告した。厚生労働省も12年、生活習慣病などを予防する13?22年度の「国民健康づくり運動プラン」に、所得や地域差などを要因とする「健康格差の縮小」を初めて明記した。

中でも子供の健康格差は深刻だ。東京都足立区は15年、区立小学校に在籍する全ての小学1年生5355人を対象に健康状態や家庭の状況を調査した。

それによると、世帯収入が300万円未満など「生活困難」の条件に該当する家庭の子供は、虫歯が5本以上ある割合が、そうでない家庭の子供の約2倍に上った。麻疹・風疹の予防接種を受けていない割合も、生活困難世帯の子供が同様に約2倍だった。

区の報告書は「子供の医療費が公費負担であることを踏まえると、経済的な理由だけでなく、保護者が子供の健康に関心があるか否か、そのための時間を確保できるかなどの要因も考えられる」と指摘する。

健康格差対策は医療面だけでなく、雇用や社会保障、貧困家庭への支援など多岐にわたる。英国では首相官邸や各省庁から企業、ボランティア組織まで含め、社会全体でこれらに取り組んでいる。

日本政府も子供の健康格差をはじめとして、実態把握をした上で総合的な対策を打ち出すべきだ。
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[毎日新聞] イスラエルの強硬化 中東和平の前途がかすむ (2018年08月20日)

中東和平の前途がますますかすんでいる。イスラエルのネタニヤフ政権の強硬化が著しいからだ。

イスラエル国会は先月、右派勢力が主に後押しした「ユダヤ人国家法」を賛成多数で可決した。従来あった基本法を改定し、ユダヤ人のみが「民族自決権を持つ」とするなど、ユダヤ人の優位色をより強めた。

特に問題視されているのは、公用語をユダヤ人が使うヘブライ語のみとし、アラブ系住民が使うアラビア語を外した点だ。

イスラエル国内にはアラブ系住民が約2割おり、先日、3万人規模の反対デモを繰り広げた。少数派のアラブ系が「我々を2級市民扱いするのか」と怒るのは当然だろう。

イスラエルは1948年、ホロコーストの苦難をくぐったユダヤ人が築いた国家だ。ネタニヤフ政権は建国70年を機に改めてユダヤの民族主義を強調したかったのだろう。

しかし、当時の独立宣言や後にできた基本法は、ユダヤ人国家と同時に、宗教や人種の平等をうたい、民主国家を目指すことを掲げてきた。

パレスチナとの和平と共存という目標がありながら、パレスチナ人の同胞であるアラブ系住民を公平に扱わず、あつれきの原因を作ることは賢明ではない。

新法でさらに懸念すべきなのは、ユダヤ人入植地の発展を「国家的価値」と位置づけ、建設の促進を唱えた点だ。

ユダヤ人入植地はイスラエルが67年の第3次中東戦争で占領・併合した元のパレスチナ側の土地に、強引に拡張して作った住宅地だ。領土を分け合うべきである和平交渉を常に阻害してきた。

国連安保理も違法だと非難し停止を求める入植活動を、逆に奨励するなど、国際的に容認されまい。

ネタニヤフ政権の強硬化の背後には、トランプ米政権によるイスラエル一辺倒の支援がある。米国は首都エルサレムを認定して大使館を移転した。

一方で国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への拠出金を半分以上凍結し、パレスチナを極端に冷遇する。

建国70年は紛争が70年続いている歴史でもある。強硬な姿勢のままでは穏当な解決など望めない。
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[読売新聞] 防衛力整備 費用対効果の視点を忘れるな (2018年08月20日)

将来の安全保障環境を見極め、日本の防衛力を着実に整備していくことが重要である。

中国の軍備拡張や強引な海洋進出は、周辺国にとって脅威となっている。国防費は、公表されている分だけで30年間で50倍以上に伸びた。

北朝鮮は、日本を射程に入れる数百発の中・短距離の弾道ミサイルを配備している。核、ミサイル廃棄の道筋はなお不透明だ。

政府は、今後10年間の国防の指針となる防衛大綱を、年末に策定する。国民の理解を得ながら、日本の平和と安全を守る体制を構築せねばならない。

周辺国によるミサイル開発と配備への対応は重要な課題だ。

地上配備型迎撃システム「イージスアショア」は、多数のミサイルが同時に撃ち込まれても対処できる能力を備える。費用対効果を十分に吟味し、導入の意義を明確にする必要がある。

ただ、防衛省のこれまでの対応は稚拙さが否めない。

小野寺防衛相は昨年、1基の価格の見通しを800億円とした。今は1340億円に膨らんだ。維持費を含む総額を当初から示さなかったことも混乱を招いた。

米政府を通じて最新鋭の装備を購入する「対外有償軍事援助」を利用する。米国が価格設定を主導するとはいえ、金額が次々と増えていくようでは、防衛調達への信頼は損なわれよう。

配備予定の秋田、山口両県には、レーダーが放つ電波による健康被害を心配する声などがあり、反対論が強い。防衛省は地元に対する説明を重ね、理解を得る努力を続けなければならない。

米国防総省は、上陸作戦などを担う中国海軍部隊の規模が拡大する見通しだとの報告書を公表した。沖縄県の尖閣諸島を含む南西諸島の防衛力強化は急務である。自衛隊の配備を進め、警戒監視態勢を充実させることが大切だ。

大綱には、2000年に導入されたF2戦闘機の後継機の開発方針や、宇宙監視システムの構築に向けた方向性なども明記される。巨額の費用が想定されている。

政府は調達価格の見直しを図るとともに、装備を重点化し、経費節減を目指さねばならない。

自民党は防衛予算について、対GDP(国内総生産)比で2%への引き上げを提言している。

2018年度の防衛費は5兆1911億円で、約0・9%にあたる。増え続ける社会保障費など他の予算を考慮した場合、2%は現実的な数字とは言えまい。
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[朝日新聞] 温暖化対策長期戦略 「脱炭素」へ大胆な転換を (2018年08月20日)

「2050年までに温室効果ガスを80%削減する」という地球温暖化対策の長期目標を、どう実現していくのか。政府の長期戦略づくりが始まる。パリ協定を実行していく上で、きわめて重要なロードマップである。

今月始まった有識者懇談会の議論を土台に戦略を練る。来年6月に大阪である主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)までにまとめたい考えだ。

長期目標の閣議決定から2年あまり、政府が戦略づくりに二の足を踏む間、世界は「脱炭素時代」へ急速に転換している。日本も急がねばならない。

未曽有の原発事故を起こした国として、原発依存度を下げていくこととの両立も重要だ。欧米では再生可能エネルギーのコストが下がり、原発の競争力が失われつつある。再エネや省エネのさらなる拡大につながる野心的な戦略が求められる。

■世界に広がる危機感

パリ協定は「産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度までに抑える」という目標を掲げ、今世紀後半に温室効果ガス排出を実質ゼロにすることをめざしている。

国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別報告書案によると、このまま気温が上がり続けると40年代に1・5度に達する。各国が危機感をもって排出削減に取り組んでいるのは当然である。

たとえば英国は、石炭火力発電を25年までに全廃することを決めた。数年前に約40%だった石炭火力の比率は9%に減っている。カナダや欧州主要国の多くも石炭ゼロの目標を掲げる。

クリーンエネルギーを拡大する政策も相次いでいる。

ドイツは50年に電力の80%以上を再エネでまかなう目標を掲げた。英仏は40年までにガソリン・ディーゼル車の新車販売禁止を決めたほか、中国も19年から新車の一定割合を電動車にするよう義務づける。

■化石燃料からの撤退

ビジネスの動きも急だ。

石炭や石油への投資が回収不能になるのを避けるため、化石燃料からの投資撤退が広がっている。撤退を表明した企業や投資家の運用資産は660兆円を超えた。逆に、環境や社会などを重視する「ESG投資」が2500兆円に急増している。

マネーが脱炭素に方向転換しているだけでなく、企業の振る舞いも変わりつつある。

業務で使う電力をすべて再エネでまかなうという目標を掲げる国際的な企業連合「RE100」、企業が科学に基づいて温室効果ガスの削減目標をつくる「SBT」……。脱炭素に取り組むことが企業価値を上げる時代になってきたのだ。

企業の変化に押され、太陽光や風力などの再エネが伸びている。自然エネルギー財団によると、米国では再エネが広がり、昨年までの7年間で発電にともなう排出量が約23%減った。

「世の機運は高まっている。とてつもなく多くのよい変化が起きている」。アル・ゴア元米副大統領は映画「不都合な真実2 放置された地球」で、そう語った。脱炭素への流れは、もう逆戻りすることはない。

日本にも「芽」はある。

大手生保が石炭火力発電への新規の投融資をしないことを相次いで決めたほか、三つのメガバンクグループも石炭火力への融資を厳しくし始めた。RE100やSBTなどに参加し、ビジネスを低炭素型に切り替えようとする企業も現れている。

■30年先の日本の姿

こうした「芽」を育てるには政策による支援が欠かせない。しかし政府は旧態依然の政策から離れられないでいる。

たとえば7月に決めたエネルギー基本計画は石炭火力をベースロード電源とし、30年度に全体の26%という目標を維持した。「石炭火力は事業リスクが大きい」(中川雅治環境相)にもかかわらず約30の新設計画があるのは、国が脱石炭をめざしていないことと無縁ではない。

いまある技術をもとに考えても、30年以上先を見すえる戦略にはなりえない。むしろ野心的なビジョンと目標を掲げることで技術革新を生み、経済や社会を活性化させる。求められるのは、そんな好循環で日本を大胆に変える長期戦略である。

既存の政策にとらわれず、どれだけ具体的な内容を盛り込めるか。石炭火力からの段階的な撤退や再エネの拡大、電動車の普及などについて目標や工程表を明確にしたい。二酸化炭素の排出に課金するカーボンプライシングの導入や原発依存度を下げる道筋も示すべきだ。

関係省庁の意見を調整したり産業界に配慮したりするばかりでは、腰の引けた内容になってしまう。政治が国民の声に耳を傾け、慎重論や反対論を乗り越えていくしかない。

主要7カ国のうち長期戦略をもたないのは日本とイタリアだけだ。脱炭素の流れに乗る最後のチャンスと腹をくくり、思い切った戦略を打ち出したい。
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[読売新聞] 首都高地下化 日本橋再生のコストが問題だ (2018年08月20日)

できるだけコストをかけずに、かつての景観を取り戻す。そのための知恵を絞りたい。

東京・日本橋の上を走る首都高速道路を、地下化する事業の概要がまとまった。国土交通省や東京都、首都高速道路会社などが大筋で合意した。

日本橋周辺の約1・2キロ区間を地下トンネルとする。日本橋の上をまたぐ高架は撤去する。2020年東京五輪後に着工し、完成まで10?20年かかる見通しだ。

日本橋は江戸時代に東海道など五街道の起点として賑(にぎ)わった。

現在の石造アーチ橋は1911年に完成し、国の重要文化財に指定されている。

青空に映える日本橋が復活すれば、国際観光都市を目指す東京のシンボルとなろう。

現在の首都高は、面倒な用地買収の手間を省いて河川上に建設された。前回の東京五輪に間に合わせるための苦肉の策だった。

地元経済界が、景観が著しく損なわれているとして高架の撤去を求めてきたのは理解できる。

総事業費は3200億円を見込む。うち首都高速会社が2400億円を負担する。残りの800億円は、都や周辺で再開発を行う民間企業などが分担する。

事業費は当初、4000億?5000億円と見込まれた。既存のトンネル転用などでコストを圧縮したが、なお巨額である。

懸念されるのは、難工事が予想されることだ。周辺は地下鉄や上下水道などのインフラが複雑に入り組み、それを縫うようにトンネルを掘削する必要がある。

工事を円滑に進めるため、この地域の河川の流れを、一時的に脇にずらすことも検討している。

難航すれば、工期の延長や費用の拡大は避けられまい。

工事に伴う交通渋滞や企業活動への支障なども心配される。影響をさらに精査すべきだろう。

弊害があまりに大きいようなら、地下化にこだわらず、一帯の高架部分を撤去することも選択肢の一つとなるのではないか。

首都圏では、都心を迂回(うかい)する中央環状線や外環道が整備されている。将来的な交通量の予測なども考慮し、冷静に判断したい。

日本橋の景観復活による具体的な経済効果は示されていない。国交省や都は、地下化の意義を分かりやすく説明すべきだ。

韓国・ソウルでは、河川にかかる高架道路の撤去で景観を改善した。海外事例も参考に、日本橋の再生を軸とした地域活性化への青写真を描くことが大切になる。
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2018年08月19日

[産経新聞] 【主張】文化財防災 千年の遺産を守るために (2018年08月19日)

災害による文化財被害が相次いでいる。6月の大阪北部地震(最大震度6弱)では、京都、奈良など近畿圏で80件以上の被害があった。7月の西日本豪雨では被害が広域に及び、文化庁によると今月9日時点で26府県204件に上っている。

文化財を守ることには先人の営みを受け継ぎ、次代につなぐという大きな意味がある。だからこそ、2年前の熊本地震では大きな被害を受けた熊本城が「復興のシンボル」とされ、その再建が被災者を含む地域住民の心の支えになっている。

先人に学び、新たな知恵も活用して、文化財の修復と防災に努めたい。

大阪北部地震では、京都府宇治市の平等院鳳凰(ほうおう)堂(国宝)の壁にひびが入るなどした。幸い軽微だったが、震度6強、震度7だったらどうだったか。さらに、地震に伴う火災への備えは大丈夫か。被害がなかった物件も含めて丁寧な検証が必要だろう。

文化財の保護は、法隆寺金堂の火災を機に制定された昭和25年の文化財保護法で本格化した。平成7年の阪神大震災をきっかけに、耐震化への意識が高まり、国も対策を促している。しかし、建造物では外観を損なうような補強はしづらいといった事情もあり、なかなか進んでいない。

美術工芸品が最も安全なのは博物館や美術館などに寄託することだが、仏像など宗教的理由で預けられない場合もある。

古来の木造建築に学びつつ最新技術を活用する視点がほしい。大阪北部地震では木造の茶室の土壁が揺れの衝撃を吸収し、建物自体が守られたケースもあった。

薬師寺西塔などの再建を手がけ最後の宮大工棟梁(とうりょう)と呼ばれた西岡常一さんは、古代の建築物に込められた先人の知恵に舌を巻く。大陸からの先端技術を理解した上で高温多湿の日本の風土に合わせた工夫が読み取れるという。「千三百年前の飛鳥時代の大工は賢いな。(中略)こういうのを文化というのとちゃいますか」(『木に学べ』)。千年の知恵に学ぶ姿勢を見習いたい。

新たな取り組みもある。京都古文化保存協会は、インターネットで小口の寄付を募る「クラウドファンディング」を始めた。

現代技術を活用して「千年の遺産」を守る。必要なのは柔軟な発想だ。
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[東京新聞] 週のはじめに考える 無神経が阻む核軍縮 (2018年08月19日)

互いが刺激的な行動を繰り返して事態を複雑にする。米中の貿易戦争だけではありません。米ロの核軍縮問題もそうです。軍縮の阻害要因を考えます。

「軍拡競争をやる気なら受けて立つ。でも勝つのは私だからな」

米NBCテレビによると、三月に再選を果たしたプーチン大統領に、電話で祝意を伝えたトランプ大統領はこう警告しました。

プーチン氏はこれに先立って行った年次教書演説で、数々の新兵器開発を公表しました。映像やCGを活用して新型ミサイルが米本土を狙うような挑発的な内容でした。これがトランプ氏の神経を逆なでしたというのです。


◆下がった核使用の敷居
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年次教書演説で新兵器が公開されるのは異例です。米国が二月に発表した「核体制の見直し(NPR)」で示した新しい核戦略に張り合う姿勢を見せる狙いもあったようです。

NPRは核兵器の役割を拡大し、使用の敷居を低くすることを打ち出しました。爆発力が低い「使いやすい小型の核兵器」を開発するというのです。ロシアが地域紛争に用いる戦術核を重視していることへの対抗策です。

では、なぜロシアはそうした姿勢をとるのでしょうか。

ロシアは一九九三年、ソ連崩壊後では初めてとなる軍事ドクトリンをまとめました。ドクトリンは核兵器の保有は抑止力が目的で、その使用は限定的であっても「破局的結果を生じる」として否定しました。

しかし核兵器は米国と比肩し得る数少ない戦力。ロシアは核依存を高めていきます。

九〇年代後半には、欧州戦域での限定的な核使用を想定すべきだとする意見が軍に台頭、二〇〇〇年に改訂された軍事ドクトリンは限定使用の可能性を示しました。

限定使用は敵の侵略を思いとどまらせるために、核兵器で威嚇したり実際に用いることを想定しています。核によって紛争がエスカレートするのを緩和する、という概念が生まれました。

しかし、核の限定使用がむしろ全面的な核戦争の引き金になる可能性は否定できません。「エスカレーション緩和」という考え方は危険で、倒錯している印象すら覚えます。

ロシアの安全保障政策に詳しい小泉直美防衛大准教授によると、この概念を後押ししたのは、九八年に激化したコソボ紛争でした。


◆コソボ紛争が後押し
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ユーゴスラビア連邦セルビア共和国のコソボ自治州はアルバニア系住民が多く、セルビアからの分離・独立に走りだし、セルビア側と武力衝突に発展しました。

北大西洋条約機構(NATO)がアルバニア系住民の保護を理由にユーゴ空爆へ動きだすと、ロシアは同じスラブ系民族のセルビア側に立ち、これに反対しました。

結局、NATOは国連決議のお墨付きのないまま空爆に踏み切り、ロシアは米国への反発と警戒心を強めました。

米国が旧ソ連の衛星国だった東欧諸国をNATOに加盟させる東方拡大を進めたことも、ロシアの不信感を増大させました。

自分の行動が相手にどんな作用を及ぼすのか、米ロともに無神経です。相手を刺激したことで対抗策を突きつけられる。その繰り返しによって双方の核使用の敷居は低くなりました。

もっとも、ロシアによる核の限定使用は杞憂(きゆう)かもしれません。小泉氏は「敷居を越える際の明確な指標をつくるべきだ、という議論がロシア軍内にある」と指摘し「実際には限定使用の判断はつかないだろう」とみています。

七月にヘルシンキで行われた米ロ首脳会談では、二〇二一年に期限切れを迎える新戦略兵器削減条約(新START)の延長をプーチン大統領が提案したが、合意には至りませんでした。よほど残念だったのでしょう。プーチン氏は延長の重要性をたびたび訴えています。

新STARTは戦略核弾頭の配備数を双方が千五百五十発まで削減するもので、一〇年に調印されました。以来、軍縮の動きは停滞し、軍拡へ逆流しています。


◆負の連鎖を断ち切る
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それでもロシアにとって米国と核の均衡を保つことは死活的に重要です。条約に基づく情報交換によって米国の手の内もある程度は推量できるのもプラスです。ロシアは米国と歩調を合わせて軍備管理を進めたいのが本音です。

米ロはそれぞれ七千発近くを保持し、トランプ氏も「世界の90%の核戦力を米ロが保有するのはばかげている」と言います。ならば両国は率先して軍縮を進めるべきです。まずは無神経による負の連鎖を断ち切り、相互不信を克服する必要を自覚してほしいものです。
posted by (-@∀@) at 13:22| Comment(0) | 東京新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[産経新聞] 【主張】公務員の定年延長 行政改革の徹底が条件だ (2018年08月19日)

人事院が、国家公務員の定年を60歳から段階的に65歳に延長するよう求める意見書を政府と国会に提出した。

政府は来年の通常国会への法案提出を目指している。

少子高齢化によって勤労世代が激減していく。人材確保が難しくなるのは公務員も例外ではないだろう。官民を問わず、意欲と能力のある60代が活躍できるよう選択肢を増やすことは時代の要請である。

とはいえ、人件費を税金でまかなう公務員の話である。単に延長を図ることは許されない。

公務員の人事制度をめぐっては、これまでも特権や厚遇に過ぎる手当など「お手盛り」が批判されてきた。行政改革を徹底することなしに延長するつもりなら、国民の理解は得られないだろう。

組織のスリム化を定年延長の絶対条件とすべきである。人口減少時代に合わせて、公務の範囲も縮小しなければならない。

定年を延長すれば、公務員数は一挙に増える。現状でも、民間企業ならば1人でこなすような仕事を、複数の職員が担当している無駄が散見する。人数が増えた分だけ、不必要な仕事を増やすのでは本末転倒となる。

時代の変化により廃止すべき仕事もあろう。民間に任せられる業務も残ってはいまいか。公務員の適正規模は何人なのかを洗い出すのが先決だ。

行政改革とともに求めたいのが、人件費総額の上限の設定である。定年を延ばせば総人件費は膨らむ。それに伴う新卒採用の抑制や財源確保のための増税などあってはならない。

定年延長を「年功序列」の発想を一掃する契機にもしたい。

人事院は、民間に合わせて60歳超の職員給与を7割水準に引き下げるよう求めた。若い職員の昇進が停滞しないよう「役職定年制」の導入も打ち出した。

これらは民間企業ではすでに当たり前となっている。特段、定年延長を待つまでもない。ただちに実行に移すべきだ。

民間企業の多くは、定年延長ではなく再雇用を選択している。国家公務員が踏み切れば、地方公務員や民間企業にも定年延長の流れは広がるだろう。

こうしたことも視野に入れて、政府と国会には手本となるべき制度を作りあげてもらいたい。
posted by (-@∀@) at 13:22| Comment(0) | 産経新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする