中東の紛争地で貴重な遺跡が破壊されている。武装勢力が戦費調達のため文化財を密売するともいわれ、歴史と文明を否定する許し難い蛮行だ。停戦を急ぎ、遺跡修復に取り組みたい。
シリア中部パルミラ。紀元前一〜紀元三世紀にシルクロードの交易都市として栄えたが、過激派組織「イスラム国」(IS)が占拠し、今年三月に撤退するまで破壊を繰り返した。
遺跡の中心ベル神殿や凱旋(がいせん)門は爆破され、一部を残してがれきの山に。博物館前のライオン像は顔の部分が大きく切り取られた。ISはイスラム以前の文明を偶像崇拝だと憎悪し、破壊する画像をインターネットで流した。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)は二〇一三年に、パルミラなどシリア国内の世界遺産六カ所を「危機遺産」に指定していた。だが、政府軍と反政府勢力の激戦地となった古都アレッポでは、中世の建物が並ぶスーク(市場)が見る影もない。十字軍の城塞(じょうさい)「クラック・デ・シュバリエ」も損傷がひどい。
シリア内戦では約四百八十万人の難民・避難民が国外に流出している。まず停戦の実現、難民への人道支援を優先すべきだ。
それでも、悠久の歴史と異なる文明の交流を伝える遺跡は、人類が共有する財産である。紛争地での遺跡保護は緊急を要する。
昨年十二月には日本の学会の呼び掛けで、シリア考古学会議が隣国レバノンで開催され、文化財の修復と盗品の情報共有などで意見交換をした。
被害は中東各地の世界遺産に広がる。イラク北部の紀元前三〜紀元三世紀の都市ハトラは昨年、ISによって大規模に破壊された。内戦が長期化するイエメンでは首都サヌアの「世界最古の摩天楼」と呼ばれる、日干しれんがの高層建築群が砲撃で被害を受けた。
遺跡の保存と修復には国際的な協力が不可欠だが、ハイテクを駆使するのが最近の特徴だ。ユネスコは衛星による画像を分析して、破壊や盗掘をした犯人グループを特定する作業に取り組む。3Dプリンターを使って建造物の復元を試みる専門家もいる。
パルミラ博物館の前館長ハレド・アサド氏は、ISが侵攻する前に神像や出土品数百点を別の場所に移動させた。ISに脅迫されても行き先を明らかにしなかったため、惨殺された。中東の考古学者や学芸員は命懸けで、貴重な文化財を守ろうとしている。
2016年06月21日
[産経新聞] 【主張】参院選と憲法改正 首相が率先して語る時だ (2016年06月21日)
日本にとって、どのような憲法改正を急ぐべきか。参院選はそれを論じる絶好の機会である。
最大与党を率い、憲法改正を政治課題に掲げてきた安倍晋三首相(自民党総裁)が、自ら改正点を国民に提示するのが筋だろう。
ところが、首相はそこを具体的な争点にはしないという。
秋の臨時国会を念頭に、衆参両院の憲法審査会で改正項目の絞り込みに入る方針は表明した。ならばなおさら、何を改正すべきかの論戦を今、深めるべきだ。
改正を旗印にしてきたこれまでの姿勢は何だったのか。なぜ自ら封印しようとするのか。首相の姿勢をいぶかる支持者は少なくないだろう。
首相は「選挙の結果を受け、どの条文を変えていくか議論を進めていきたい」とも語った。
国政選挙は、国民と「政治」の対話の場である。選挙中には論点を具体的に取り上げず、選挙後に国会議員だけで絞り込みを行おうというのは分かりにくい。改正の機運も盛り上がるまい。
憲法改正原案の発議には、3分の2以上の賛同が必要だ。だから、憲法改正問題は国政選挙になじまないとの意見が与野党双方に存在するが、おかしな考えだ。
続きを読む
憲法改正は、国政の最も重大なテーマであり、憲法上、国民投票で最終的に決する仕組みになっている。国民投票以前でも、国政選挙で論じ、道筋を示すのは当然のことではないか。
とりわけ今回の選挙は、衆院に続いて参院でも、憲法改正を志向する勢力が、3分の2以上の議席を確保できるかどうかが焦点の一つになっている。
首相はNHK番組で「3分の2を今回目指しているわけではない」といったん述べ、同じ番組内で「もちろん(3分の2を)構成したい」とも語った。発言の揺れが気になるが、最初の発言が本音なのだろうか。
「時代の変化に合わせ、国民の幸せを守るために変えるべきものは変えていく。その責任を果たす」。首相がインターネット討論会で憲法について語った内容は、極めて妥当なものだ。
その責任を果たすには、改正を求める多くの国民の後押しが欠かせない。その力をまとめ上げ、国論を成熟させるためにも、論点作りに取り組んでもらいたい。
最大与党を率い、憲法改正を政治課題に掲げてきた安倍晋三首相(自民党総裁)が、自ら改正点を国民に提示するのが筋だろう。
ところが、首相はそこを具体的な争点にはしないという。
秋の臨時国会を念頭に、衆参両院の憲法審査会で改正項目の絞り込みに入る方針は表明した。ならばなおさら、何を改正すべきかの論戦を今、深めるべきだ。
改正を旗印にしてきたこれまでの姿勢は何だったのか。なぜ自ら封印しようとするのか。首相の姿勢をいぶかる支持者は少なくないだろう。
首相は「選挙の結果を受け、どの条文を変えていくか議論を進めていきたい」とも語った。
国政選挙は、国民と「政治」の対話の場である。選挙中には論点を具体的に取り上げず、選挙後に国会議員だけで絞り込みを行おうというのは分かりにくい。改正の機運も盛り上がるまい。
憲法改正原案の発議には、3分の2以上の賛同が必要だ。だから、憲法改正問題は国政選挙になじまないとの意見が与野党双方に存在するが、おかしな考えだ。
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憲法改正は、国政の最も重大なテーマであり、憲法上、国民投票で最終的に決する仕組みになっている。国民投票以前でも、国政選挙で論じ、道筋を示すのは当然のことではないか。
とりわけ今回の選挙は、衆院に続いて参院でも、憲法改正を志向する勢力が、3分の2以上の議席を確保できるかどうかが焦点の一つになっている。
首相はNHK番組で「3分の2を今回目指しているわけではない」といったん述べ、同じ番組内で「もちろん(3分の2を)構成したい」とも語った。発言の揺れが気になるが、最初の発言が本音なのだろうか。
「時代の変化に合わせ、国民の幸せを守るために変えるべきものは変えていく。その責任を果たす」。首相がインターネット討論会で憲法について語った内容は、極めて妥当なものだ。
その責任を果たすには、改正を求める多くの国民の後押しが欠かせない。その力をまとめ上げ、国論を成熟させるためにも、論点作りに取り組んでもらいたい。
[東京新聞] 高浜原発 延命よりも新産業だ (2016年06月21日)
原子力規制委員会が、運転四十年を超える関西電力高浜原発(福井県)の延長を初めて認可した。世界は既に廃炉時代。無理な延命を図るより、時代の先端を行く方が、地域の実りははるかに多い。
もの皆すべてに寿命がある。生き物と同じである。
3・11後に定められた四十年という原発の法定寿命は、原子炉の圧力容器の内部が絶え間ない中性子の照射を受けて劣化するまでの目安という。
運転後四十年もたてば、原子炉も相当傷んでいるだろうと心配するのは当然だ。延命期間も安全に稼働できるという十分な根拠こそ、電力会社も原子力規制委員会ももっと詳しく示してほしい。
3・11後、老朽原発廃炉は世界の潮流だ。安全対策に費用がかかりすぎるからである。
四国電力は、来年九月で運転開始四十年になる伊方原発(愛媛県)1号機の廃炉を決めた。
燃えやすい電源ケーブルを燃えにくいものに取り換えたり、原子炉格納容器上部の遮蔽(しゃへい)性を高めるなど、大規模な工事が必要になるからだ。
ところが関電は、ケーブルの六割を燃えにくいものに替えるだけ、あとは防火シートで包むという“簡易型”の対策で延長を申請し、規制委もこれを了承した。
「より厳しい審査を経て」という大前提はのっけから骨抜きだ。
延長容認の基準は「安全性」ではなく「経済性」、3・11の教訓はもうほごか−。このように受け取られてもやむを得ない判断だ。
先例にされては、危険である。
原発廃炉で立地地域の雇用喪失を心配する声は根強い。
二〇二二年までの原発廃止を決めたドイツでは、「廃炉事業は成長産業」との声が高まっている。
廃炉には、四十年という時間がかかる。しかも、前例の少ない手探りの大事業。関連企業を集約できれば、原発を上回る長期雇用も十分期待可能である。
新型転換炉「ふげん」(福井県)の廃炉作業を進める日本原子力研究開発機構によると、昨年度携わった延べ約二百六十社のうち、約七割が地元企業だったという。
ドイツには、原発建屋の撤去跡地に再生可能エネルギーの関連工場を誘致した例もある。
廃炉時代は確実に訪れる。“原発銀座”と呼ばれるほどに原子力の時代を支えた福井県が、新しい時代の先陣を切れるよう、政府も施策を打つべきだ。
もの皆すべてに寿命がある。生き物と同じである。
3・11後に定められた四十年という原発の法定寿命は、原子炉の圧力容器の内部が絶え間ない中性子の照射を受けて劣化するまでの目安という。
運転後四十年もたてば、原子炉も相当傷んでいるだろうと心配するのは当然だ。延命期間も安全に稼働できるという十分な根拠こそ、電力会社も原子力規制委員会ももっと詳しく示してほしい。
3・11後、老朽原発廃炉は世界の潮流だ。安全対策に費用がかかりすぎるからである。
四国電力は、来年九月で運転開始四十年になる伊方原発(愛媛県)1号機の廃炉を決めた。
燃えやすい電源ケーブルを燃えにくいものに取り換えたり、原子炉格納容器上部の遮蔽(しゃへい)性を高めるなど、大規模な工事が必要になるからだ。
ところが関電は、ケーブルの六割を燃えにくいものに替えるだけ、あとは防火シートで包むという“簡易型”の対策で延長を申請し、規制委もこれを了承した。
「より厳しい審査を経て」という大前提はのっけから骨抜きだ。
延長容認の基準は「安全性」ではなく「経済性」、3・11の教訓はもうほごか−。このように受け取られてもやむを得ない判断だ。
先例にされては、危険である。
原発廃炉で立地地域の雇用喪失を心配する声は根強い。
二〇二二年までの原発廃止を決めたドイツでは、「廃炉事業は成長産業」との声が高まっている。
廃炉には、四十年という時間がかかる。しかも、前例の少ない手探りの大事業。関連企業を集約できれば、原発を上回る長期雇用も十分期待可能である。
新型転換炉「ふげん」(福井県)の廃炉作業を進める日本原子力研究開発機構によると、昨年度携わった延べ約二百六十社のうち、約七割が地元企業だったという。
ドイツには、原発建屋の撤去跡地に再生可能エネルギーの関連工場を誘致した例もある。
廃炉時代は確実に訪れる。“原発銀座”と呼ばれるほどに原子力の時代を支えた福井県が、新しい時代の先陣を切れるよう、政府も施策を打つべきだ。
[産経新聞] 【主張】「炉心溶融」 危機管理に生かす解明を (2016年06月21日)
平成23年3月の福島第1原子力発電所の事故で、東京電力が「炉心溶融」を認めるのが遅れた原因などを調べていた第三者検証委員会の報告書がまとまった。
原子力事故に限らず、大災害時のリスクコミュニケーションを考える上での重要な教訓が含まれていると考えたい。
調査の最大焦点は、発生直後から2カ月間にわたって「炉心損傷」という言葉が使われたことの理由と、この表現が及ぼした影響に当てられている。
報告書は、事故当時の清水正孝社長が官邸からの要請を受けて、「炉心溶融」という用語を使わないよう社員に指示したとする調査結果を示している。
看過できない要点だが、「官邸からの要請」は、裏付けが取れておらず、「と推認される」の間接表現に終始しているのが残念だ。現に、当時の首相の菅直人氏や官房長官の枝野幸男氏は、そうした事実はないと否定している。
問題は複雑だが、あえて言うなら、当時の原子炉の状態を「炉心溶融」とせず「炉心損傷」としたことによる現実的なマイナスは、なかったことに注目したい。結果論だが、国民のパニックが回避された効果も認められよう。
続きを読む
しかし、大災害において、全てのリスク情報を抑制的に発信すればよいというものではないはずだ。線引きは難しいが、だからこそ今回の問題を具体例に、今後に生かす教訓を掘り起こしたい。
福島事故は、日本を揺るがす原発事故だった。その一大危機の状況下で、官邸側から東電への要請や指示の内容どころか、有無さえも判然としないとあっては、先進国家の体をなさない。
「炉心溶融」への統制的な空気の存在は、濃厚にうかがえる。炉心溶融を認める発言をしていた原子力安全・保安院の審議官が事故翌日の3月12日夕刻の記者会見から外されているではないか。
清水社長の官邸訪問は13日で、炉心溶融という言葉を避けるよう社内に伝えたのは14日のことだった。官邸からの影響はどのようなものだったのか。当の保安院の審議官に尋ねる道もあるだろう。
福島事故の継続調査は、国会事故調によっても提言されていることである。
言った言わないの水掛け論に埋没させては、国の危機管理に禍根を残す。
原子力事故に限らず、大災害時のリスクコミュニケーションを考える上での重要な教訓が含まれていると考えたい。
調査の最大焦点は、発生直後から2カ月間にわたって「炉心損傷」という言葉が使われたことの理由と、この表現が及ぼした影響に当てられている。
報告書は、事故当時の清水正孝社長が官邸からの要請を受けて、「炉心溶融」という用語を使わないよう社員に指示したとする調査結果を示している。
看過できない要点だが、「官邸からの要請」は、裏付けが取れておらず、「と推認される」の間接表現に終始しているのが残念だ。現に、当時の首相の菅直人氏や官房長官の枝野幸男氏は、そうした事実はないと否定している。
問題は複雑だが、あえて言うなら、当時の原子炉の状態を「炉心溶融」とせず「炉心損傷」としたことによる現実的なマイナスは、なかったことに注目したい。結果論だが、国民のパニックが回避された効果も認められよう。
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しかし、大災害において、全てのリスク情報を抑制的に発信すればよいというものではないはずだ。線引きは難しいが、だからこそ今回の問題を具体例に、今後に生かす教訓を掘り起こしたい。
福島事故は、日本を揺るがす原発事故だった。その一大危機の状況下で、官邸側から東電への要請や指示の内容どころか、有無さえも判然としないとあっては、先進国家の体をなさない。
「炉心溶融」への統制的な空気の存在は、濃厚にうかがえる。炉心溶融を認める発言をしていた原子力安全・保安院の審議官が事故翌日の3月12日夕刻の記者会見から外されているではないか。
清水社長の官邸訪問は13日で、炉心溶融という言葉を避けるよう社内に伝えたのは14日のことだった。官邸からの影響はどのようなものだったのか。当の保安院の審議官に尋ねる道もあるだろう。
福島事故の継続調査は、国会事故調によっても提言されていることである。
言った言わないの水掛け論に埋没させては、国の危機管理に禍根を残す。
[日経新聞] 老朽原発の再稼働へ基準上回る安全策を (2016年06月21日)
運転開始から40年を超えた関西電力高浜原子力発電所1、2号機(福井県)について、原子力規制委員会は最長20年の運転延長を認めた。原発の運転期間は法律で原則40年と定められたが、特別な審査に合格すれば延長できる。それが適用される第1号になった。
関電は運転延長に向け、原子炉の格納容器の補強や防火対策の強化などを計画し、規制委に申請していた。規制委は新規制基準に照らし、それらの対策や工事計画などが妥当かを1年以上かけて審査し、最終的に合格とした。
関電の対策は規制基準の要求に沿っており、規制委の判断は妥当といえる。半面、基準は原発の安全性を確保するための最低限の対策であり、長期の運転で機器が劣化しないかなど課題も残る。点検を厳しくし機器類を早めに交換するなど、基準で定められた以外の安全策の積み重ねが欠かせない。
関電は2019年秋以降の再稼働をめざしている。追加的な安全策や保守点検計画も最大限公表し、地元の理解を得るべきだ。
今回の規制委の判断は、国のエネルギー政策にとって重要な意味をもつ。政府は昨年まとめたエネルギー需給見通しで、30年時点の発電量に占める原発の比率を20?22%にすると定めた。この数字は運転40年超の原発が一定数再稼働することが大前提だ。
関電は美浜3号機(福井県)でも運転延長をめざしており、他の電力会社にも同様の動きが出るだろう。まず関電が高浜1、2号機の安全な再稼働に万全を期し、地元や国民から信頼されるような先例になってほしい。
その一方で美浜1、2号機や中国電力の島根1号機(島根県)、四国電力の伊方1号機(愛媛県)などは電力会社の判断で廃炉が決まった。規制基準を満たすには安全対策に巨額の費用がかかるためだ。「40年ルール」は実質的に機能しているともいえる。
ほかの40基強の原発も多くが高度成長期に建てられ、今後相次いで運転40年を迎える。すべて廃炉にすれば、低廉な電力を安定供給できるかや、日本が世界に公約した温暖化ガスの削減目標を達成できるかがきわめて不透明になる。
規制委が安全と判断し、地元が同意すれば再稼働するケースがあってもよい。原発の建て替えをどうするかを含め、政府が中長期的な原子力の利用の仕方をもっと明確に示す必要もある。
関電は運転延長に向け、原子炉の格納容器の補強や防火対策の強化などを計画し、規制委に申請していた。規制委は新規制基準に照らし、それらの対策や工事計画などが妥当かを1年以上かけて審査し、最終的に合格とした。
関電の対策は規制基準の要求に沿っており、規制委の判断は妥当といえる。半面、基準は原発の安全性を確保するための最低限の対策であり、長期の運転で機器が劣化しないかなど課題も残る。点検を厳しくし機器類を早めに交換するなど、基準で定められた以外の安全策の積み重ねが欠かせない。
関電は2019年秋以降の再稼働をめざしている。追加的な安全策や保守点検計画も最大限公表し、地元の理解を得るべきだ。
今回の規制委の判断は、国のエネルギー政策にとって重要な意味をもつ。政府は昨年まとめたエネルギー需給見通しで、30年時点の発電量に占める原発の比率を20?22%にすると定めた。この数字は運転40年超の原発が一定数再稼働することが大前提だ。
関電は美浜3号機(福井県)でも運転延長をめざしており、他の電力会社にも同様の動きが出るだろう。まず関電が高浜1、2号機の安全な再稼働に万全を期し、地元や国民から信頼されるような先例になってほしい。
その一方で美浜1、2号機や中国電力の島根1号機(島根県)、四国電力の伊方1号機(愛媛県)などは電力会社の判断で廃炉が決まった。規制基準を満たすには安全対策に巨額の費用がかかるためだ。「40年ルール」は実質的に機能しているともいえる。
ほかの40基強の原発も多くが高度成長期に建てられ、今後相次いで運転40年を迎える。すべて廃炉にすれば、低廉な電力を安定供給できるかや、日本が世界に公約した温暖化ガスの削減目標を達成できるかがきわめて不透明になる。
規制委が安全と判断し、地元が同意すれば再稼働するケースがあってもよい。原発の建て替えをどうするかを含め、政府が中長期的な原子力の利用の仕方をもっと明確に示す必要もある。
[日経新聞] 沖縄は何に憤っているのか (2016年06月21日)
沖縄をめぐる様々なあつれきはどうして起きるのか。米軍絡みの犯罪にしても、普天間基地の県内移設にしても、個々の事象だけ追っても全体像はわからない。多くの県民は何に憤っているのか。それを知ることが、対話の糸口につながるはずだ。
沖縄に住む軍属の米国人による殺人事件への抗議集会が開かれた。普天間基地の県内移設に反対する翁長雄志知事の支持勢力が主催、日米地位協定の改定や海兵隊の撤収を求める決議を採択した。
「よく県全体(の声)という話をうかがうが、これは全く当たらない」。菅義偉官房長官は集会についてこう強調した。自民党などが不参加だったのは事実だが、これでは翁長知事とは話し合わないと言っているようなものだ。
日米両国政府は沖縄県の要望を踏まえ、地位協定における軍属の範囲の見直しを進めている。特権が縮小すれば犯罪抑止効果が見込める。ぜひ実現させてほしい。
問題は本土と沖縄の間に信頼関係がないことだ。日米がいくら努力しても「どうせ小手先の対策」と受け止められかねない。
沖縄の地理的重要性を考えれば一定数の米軍が沖縄に駐留することは日本の安全保障にとって不可欠だ。沖縄県民にもそう考える人は少なくない。にもかかわらず反基地運動が盛り上がるのは、安倍政権の姿勢が県民の心情を硬化させているからではないか。
普天間移設に必要な埋め立てに関する国土交通相の指示が適法かどうかを審査してきた総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」は判断をせずに終了した。
「いずれの判断をしても国と地方のあるべき関係を構築することに資するとは考えられない」というのが小早川光郎委員長の説明である。法的に正しくとも力押しできないこともあるということだ。
安倍政権は沖縄との話し合いの糸口をまず探すべきだ。県民のために一生懸命に動いていると思われない限り、どんな対策を実施しても効果は生まない。
沖縄に住む軍属の米国人による殺人事件への抗議集会が開かれた。普天間基地の県内移設に反対する翁長雄志知事の支持勢力が主催、日米地位協定の改定や海兵隊の撤収を求める決議を採択した。
「よく県全体(の声)という話をうかがうが、これは全く当たらない」。菅義偉官房長官は集会についてこう強調した。自民党などが不参加だったのは事実だが、これでは翁長知事とは話し合わないと言っているようなものだ。
日米両国政府は沖縄県の要望を踏まえ、地位協定における軍属の範囲の見直しを進めている。特権が縮小すれば犯罪抑止効果が見込める。ぜひ実現させてほしい。
問題は本土と沖縄の間に信頼関係がないことだ。日米がいくら努力しても「どうせ小手先の対策」と受け止められかねない。
沖縄の地理的重要性を考えれば一定数の米軍が沖縄に駐留することは日本の安全保障にとって不可欠だ。沖縄県民にもそう考える人は少なくない。にもかかわらず反基地運動が盛り上がるのは、安倍政権の姿勢が県民の心情を硬化させているからではないか。
普天間移設に必要な埋め立てに関する国土交通相の指示が適法かどうかを審査してきた総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」は判断をせずに終了した。
「いずれの判断をしても国と地方のあるべき関係を構築することに資するとは考えられない」というのが小早川光郎委員長の説明である。法的に正しくとも力押しできないこともあるということだ。
安倍政権は沖縄との話し合いの糸口をまず探すべきだ。県民のために一生懸命に動いていると思われない限り、どんな対策を実施しても効果は生まない。
[毎日新聞] 摂食障害 理解と支援を広げたい (2016年06月21日)
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若い女性を中心に広がる「摂食障害」への理解を深め、患者や家族を支援しようと医師らが日本摂食障害協会を設立した。病気と考えず隠したがる傾向があり、患者数もはっきりしない。心身の成長期に発症して一生を左右しかねず、家族も偏見などに苦しむだけに、社会の理解と手厚い支援態勢が欠かせない。
摂食障害は、神経性やせ症(拒食症)と神経性大食症(過食症)に大別される。
拒食症は過食症へ移行することが多い。食べすぎた後、吐いたり下剤を使ったりして排出する行動も目立つ。見た目は少しやせているだけで、外見からは気づきにくい。
極端な低体重で命を危うくするだけでなく、食べ物を粗末にする罪悪感や自己嫌悪による自殺も少なくないという。吐き続けて胃酸で歯がボロボロになり、骨粗しょう症や不妊症などに苦しむ人もいる。
女性のやせ志向などを背景に1980年代に増えた。患者の約90%は女性だが、男性も増えている。厚生労働省の調査では小学生の発症も報告され、低年齢化の傾向がある。
2万人強が医療機関を受診しているとみられるが、症状に苦しむ人はもっと多い。国立精神・神経医療研究センターの安藤哲也ストレス研究室長は「対応の進む英国の患者は75万人と言われ、日本に100万人いてもおかしくない」と分析する。
しかし、周囲の支えは乏しく、治療体制の整備は進んでいない。
「本人がわがままなだけ」と切り捨て、「育て方が悪い」「母親に原因がある」などと決めつける偏見が根強い。拒食も過食も、自らコントロールできず、そのこと自体に悩み苦しんでいる。家族関係を問題視するのも誤った見方である。
専門医や病院は足りない。命にかかわる緊急性を問われる場合があり、心理療法を中心にした息の長い対応も不可欠だ。人手と時間のかかる領域に取り組む医師は多くない。
厚労省は「治療支援センター」を5カ所に作る計画だ。設置の希望を募り、昨年度中に福岡県(九州大学病院)と宮城県(東北大学病院)、静岡県(浜松医科大学付属病院)にできたが、残りはめどが立たない。病気への理解が希薄で、年間600万円の運営費の半額負担もあるため、都道府県は及び腰のようだ。
摂食障害協会は、受診をためらう患者らへの情報提供などの支援とともに、治療体制の整備を行政に働きかける考えだ。生野照子理事長は「発症者の苦境を和らげ、未来ある若い人の心身の健康と命を救いたい」と語っている。患者と家族を孤立させず、可能性を奪わないために理解と支援を広げたい。
若い女性を中心に広がる「摂食障害」への理解を深め、患者や家族を支援しようと医師らが日本摂食障害協会を設立した。病気と考えず隠したがる傾向があり、患者数もはっきりしない。心身の成長期に発症して一生を左右しかねず、家族も偏見などに苦しむだけに、社会の理解と手厚い支援態勢が欠かせない。
摂食障害は、神経性やせ症(拒食症)と神経性大食症(過食症)に大別される。
拒食症は過食症へ移行することが多い。食べすぎた後、吐いたり下剤を使ったりして排出する行動も目立つ。見た目は少しやせているだけで、外見からは気づきにくい。
極端な低体重で命を危うくするだけでなく、食べ物を粗末にする罪悪感や自己嫌悪による自殺も少なくないという。吐き続けて胃酸で歯がボロボロになり、骨粗しょう症や不妊症などに苦しむ人もいる。
女性のやせ志向などを背景に1980年代に増えた。患者の約90%は女性だが、男性も増えている。厚生労働省の調査では小学生の発症も報告され、低年齢化の傾向がある。
2万人強が医療機関を受診しているとみられるが、症状に苦しむ人はもっと多い。国立精神・神経医療研究センターの安藤哲也ストレス研究室長は「対応の進む英国の患者は75万人と言われ、日本に100万人いてもおかしくない」と分析する。
しかし、周囲の支えは乏しく、治療体制の整備は進んでいない。
「本人がわがままなだけ」と切り捨て、「育て方が悪い」「母親に原因がある」などと決めつける偏見が根強い。拒食も過食も、自らコントロールできず、そのこと自体に悩み苦しんでいる。家族関係を問題視するのも誤った見方である。
専門医や病院は足りない。命にかかわる緊急性を問われる場合があり、心理療法を中心にした息の長い対応も不可欠だ。人手と時間のかかる領域に取り組む医師は多くない。
厚労省は「治療支援センター」を5カ所に作る計画だ。設置の希望を募り、昨年度中に福岡県(九州大学病院)と宮城県(東北大学病院)、静岡県(浜松医科大学付属病院)にできたが、残りはめどが立たない。病気への理解が希薄で、年間600万円の運営費の半額負担もあるため、都道府県は及び腰のようだ。
摂食障害協会は、受診をためらう患者らへの情報提供などの支援とともに、治療体制の整備を行政に働きかける考えだ。生野照子理事長は「発症者の苦境を和らげ、未来ある若い人の心身の健康と命を救いたい」と語っている。患者と家族を孤立させず、可能性を奪わないために理解と支援を広げたい。
[毎日新聞] 炉心溶融調査 これでは信頼できない (2016年06月21日)
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東京電力福島第1原発の過酷事故で、「炉心溶融」の公表が遅れたのはなぜか。東電の第三者検証委員会は、当時の清水正孝社長が「炉心溶融」という言葉を使わないよう社内で指示したとの報告を公表した。
国民の命や健康に関わる重大事故を起こした企業のトップが、その深刻さを隠すような指示を出したことには大きな問題がある。原子力担当の副社長ら幹部や社員がその指示に従ったことも問題だ。
こうした事実が今ごろになって明らかになったことを考え合わせると、事故から5年たって東電の信頼性が回復したとは到底思えない。
炉心溶融は学術的にはあいまいさのある言葉だが、東電には「炉心の損傷割合が5%を超えたら炉心溶融」と定義する社内マニュアルがあった。この定義に従えば、事故発生から3日後に1、3号機は「炉心溶融」と判断できた。ところが、東電が炉心溶融を認めたのは2カ月後。しかも、社内マニュアルの存在が明らかにされたのは今年2月だ。
東電は当初、「マニュアルの定義に気づいていなかった」としていたが、実際には外部通報を担当していた社員の相当数が知っていた。また、「社内で(炉心溶融を認めない)明確な意思決定はなかった」などとも説明していたが、社長の指示があったのだから、炉心溶融を隠蔽(いんぺい)したと考えるのが自然だろう。
こうした当時の東電の対応に加えて問題なのは、第三者検証委員会のあり方だ。報告は清水社長の指示の背景として、「官邸側から、対外的に炉心溶融を認めることについては慎重な対応をするようにとの要請を受けたと理解していたものと推認される」とし、官邸の圧力を示唆した。にもかかわらず、当時の首相や官房長官らからの聞き取りもせず、権限も時間もなかったと釈明するにとどまっている。
政治介入があったかどうかは重要な点であるにもかかわらず、推測や臆測でものを言うのはあまりにずさんだ。東電の責任を転嫁しようとしているようにも受け取れる。
これ以外にも、社内マニュアルの定義が5年も明らかにされなかったことについて「故意や意図的とは認められない」とするなど、東電寄りの姿勢が見える。これでは検証委を信頼するのはむずかしい。
ここで思い浮かぶのは、舛添要一・東京都知事の政治資金の使い道や、小渕優子衆院議員の関連政治団体を巡る政治資金規正法違反事件でも用いられた「第三者による調査」の限界だ。「第三者」とはいえ、当事者が設置する以上、独立性に疑問符がつく。自己の正当化や責任逃れに利用してはならない。
東京電力福島第1原発の過酷事故で、「炉心溶融」の公表が遅れたのはなぜか。東電の第三者検証委員会は、当時の清水正孝社長が「炉心溶融」という言葉を使わないよう社内で指示したとの報告を公表した。
国民の命や健康に関わる重大事故を起こした企業のトップが、その深刻さを隠すような指示を出したことには大きな問題がある。原子力担当の副社長ら幹部や社員がその指示に従ったことも問題だ。
こうした事実が今ごろになって明らかになったことを考え合わせると、事故から5年たって東電の信頼性が回復したとは到底思えない。
炉心溶融は学術的にはあいまいさのある言葉だが、東電には「炉心の損傷割合が5%を超えたら炉心溶融」と定義する社内マニュアルがあった。この定義に従えば、事故発生から3日後に1、3号機は「炉心溶融」と判断できた。ところが、東電が炉心溶融を認めたのは2カ月後。しかも、社内マニュアルの存在が明らかにされたのは今年2月だ。
東電は当初、「マニュアルの定義に気づいていなかった」としていたが、実際には外部通報を担当していた社員の相当数が知っていた。また、「社内で(炉心溶融を認めない)明確な意思決定はなかった」などとも説明していたが、社長の指示があったのだから、炉心溶融を隠蔽(いんぺい)したと考えるのが自然だろう。
こうした当時の東電の対応に加えて問題なのは、第三者検証委員会のあり方だ。報告は清水社長の指示の背景として、「官邸側から、対外的に炉心溶融を認めることについては慎重な対応をするようにとの要請を受けたと理解していたものと推認される」とし、官邸の圧力を示唆した。にもかかわらず、当時の首相や官房長官らからの聞き取りもせず、権限も時間もなかったと釈明するにとどまっている。
政治介入があったかどうかは重要な点であるにもかかわらず、推測や臆測でものを言うのはあまりにずさんだ。東電の責任を転嫁しようとしているようにも受け取れる。
これ以外にも、社内マニュアルの定義が5年も明らかにされなかったことについて「故意や意図的とは認められない」とするなど、東電寄りの姿勢が見える。これでは検証委を信頼するのはむずかしい。
ここで思い浮かぶのは、舛添要一・東京都知事の政治資金の使い道や、小渕優子衆院議員の関連政治団体を巡る政治資金規正法違反事件でも用いられた「第三者による調査」の限界だ。「第三者」とはいえ、当事者が設置する以上、独立性に疑問符がつく。自己の正当化や責任逃れに利用してはならない。
[読売新聞] 高浜20年延長 再稼働へのハードルを越えよ (2016年06月21日)
原子力発電を日本の主要エネルギー源として活用していくために、重要な一歩と言えよう。
営業運転の開始から40年を超えた関西電力高浜原子力発電所1、2号機について、原子力規制委員会が20年間の運転延長を認可した。
福島第一原発事故後に厳格化された新規制制度は、原発の運転期間を40年に制限し、例外的に最長20年間の延長を認めている。今回、それが初めて適用された。
40年超の原発でも、安全を確認して稼働させれば、電力の安定供給上、大いに有益である。
ただし、老朽原発の再稼働は容易ではない。関電は着実にハードルを越える必要がある。
最大の関門は、設備やシステムの改修だ。全長約1300キロ・メートルのケーブルの6割を難燃性に取り換える。残る部分も防火シートで巻くといった措置を施す。
重大事故に備え、格納容器上部に、コンクリート製の強固な覆いを建設する工事も待ち受ける。中央制御室では、安全確保の要となる制御盤を最新のタイプに更新する。複雑な制御システムを確実に機能させねばならない。
関電は、2019年秋に工事を終え、再稼働を目指す。規制委は工事の進展に合わせて、厳格な検査を実施する。格納容器内の主要設備の一部は、実際に揺さぶり、耐震性能を確認するという。
地元の理解を得ることも、再稼働に欠かせない条件である。関電は、工事内容や再稼働の必要性を丁寧に説明せねばならない。
工事には、2000億円を超える巨費を要するが、再稼働にこぎ着けられれば、1か月で90億円の収益改善につながる見通しだ。
関電は、一連の手続きを円滑に進め、今後も続く原発の長期運転のモデルとしてもらいたい。
規制委にも、審査の効率化が求められる。制度の仕組み自体を見直すことも大切だ。
電力会社が時間的余裕を持って運転延長を申請しようにも、現行では申請時期が限られている。さらに、運転開始後40年の日までに審査が未了だと、廃炉になる。
当然ながら、審査スケジュールは綱渡りになる。他の審査にもしわ寄せが出る。今回も、他の原発の再稼働審査が滞っている。
40年で運転を制限することが科学的に妥当かどうか、という根本的な問題も残っている。
政府は、30年度の原発比率として20?22%の目標を掲げる。その達成には、運転延長だけでなく、原発の新増設も検討すべきだ。
営業運転の開始から40年を超えた関西電力高浜原子力発電所1、2号機について、原子力規制委員会が20年間の運転延長を認可した。
福島第一原発事故後に厳格化された新規制制度は、原発の運転期間を40年に制限し、例外的に最長20年間の延長を認めている。今回、それが初めて適用された。
40年超の原発でも、安全を確認して稼働させれば、電力の安定供給上、大いに有益である。
ただし、老朽原発の再稼働は容易ではない。関電は着実にハードルを越える必要がある。
最大の関門は、設備やシステムの改修だ。全長約1300キロ・メートルのケーブルの6割を難燃性に取り換える。残る部分も防火シートで巻くといった措置を施す。
重大事故に備え、格納容器上部に、コンクリート製の強固な覆いを建設する工事も待ち受ける。中央制御室では、安全確保の要となる制御盤を最新のタイプに更新する。複雑な制御システムを確実に機能させねばならない。
関電は、2019年秋に工事を終え、再稼働を目指す。規制委は工事の進展に合わせて、厳格な検査を実施する。格納容器内の主要設備の一部は、実際に揺さぶり、耐震性能を確認するという。
地元の理解を得ることも、再稼働に欠かせない条件である。関電は、工事内容や再稼働の必要性を丁寧に説明せねばならない。
工事には、2000億円を超える巨費を要するが、再稼働にこぎ着けられれば、1か月で90億円の収益改善につながる見通しだ。
関電は、一連の手続きを円滑に進め、今後も続く原発の長期運転のモデルとしてもらいたい。
規制委にも、審査の効率化が求められる。制度の仕組み自体を見直すことも大切だ。
電力会社が時間的余裕を持って運転延長を申請しようにも、現行では申請時期が限られている。さらに、運転開始後40年の日までに審査が未了だと、廃炉になる。
当然ながら、審査スケジュールは綱渡りになる。他の審査にもしわ寄せが出る。今回も、他の原発の再稼働審査が滞っている。
40年で運転を制限することが科学的に妥当かどうか、という根本的な問題も残っている。
政府は、30年度の原発比率として20?22%の目標を掲げる。その達成には、運転延長だけでなく、原発の新増設も検討すべきだ。
[読売新聞] あす公示 政治路線の議論も重視したい (2016年06月21日)
参院選は、あす公示される。与野党は、政策に加え、政治路線に関する議論も深めてほしい。
安倍首相は、改選議席の過半数の61議席を与党で獲得することを目指す。
民進党の岡田代表は、これを野党共闘で阻止することを新たに目標に掲げた。民進、共産など野党4党が統一候補を擁立する32の1人区の攻防がカギを握ろう。
気がかりなのは、参院選後の4党の路線が不明確なことだ。
岡田氏は、共産党との連携について「政権を共にすることはできない」と述べ、連立政権を組むことを否定している。だが、共産党の志位委員長は「(次期)衆院選までに前向きな結論を出す」と強調する。足並みはそろっていない。
4党は、安全保障関連法の廃止などを共通政策にしているというが、憲法、日米安保など基本政策の違いは大きく、中長期的な協力関係も曖昧だ。首相が「無責任だ」と批判するのは理解できる。
首相は、秋の臨時国会から衆参両院の憲法審査会で改正項目の議論を始めたい考えを示した。国会で改憲のテーマが絞られていないことを理由に挙げるが、自民党として、どの項目の改正を優先するかも明示すべきではないか。
岡田氏も、「9条改正阻止」を唱えるだけでなく、民進党公約にある「未来志向の憲法」の具体像を説明してもらいたい。
残念なのは、参院のあり方に関する議論が乏しいことだ。
今回、1票の格差を是正するため、選挙区選で合区が導入された。地方の人口減が進めば、合区が拡大し、地方の声が国政に一段と届きにくくなるのは確実だ。
改正公職選挙法は、「参院のあり方を踏まえた選挙制度の抜本的な見直し」の検討を付則に明記している。自民党は公約で、全都道府県で最低1人が選出されるよう憲法改正を含めて検討するという。真剣な論議が欠かせない。
参院には本来、衆院に対する抑制や補完の役割が期待される。与党が参院で少数となる「ねじれ国会」に陥った際、政治の停滞を防ぐには、衆院の法案再可決の要件の引き下げが求められる。
参院の独自色も強めたい。
予算審議で優越する衆院に対して、参院が決算を重視し、審議結果を翌年の予算編成に反映させてきたことは評価できる。
衆参両院の役割分担と選挙制度を一体で改革し、立法府を活性化させることが肝要である。
安倍首相は、改選議席の過半数の61議席を与党で獲得することを目指す。
民進党の岡田代表は、これを野党共闘で阻止することを新たに目標に掲げた。民進、共産など野党4党が統一候補を擁立する32の1人区の攻防がカギを握ろう。
気がかりなのは、参院選後の4党の路線が不明確なことだ。
岡田氏は、共産党との連携について「政権を共にすることはできない」と述べ、連立政権を組むことを否定している。だが、共産党の志位委員長は「(次期)衆院選までに前向きな結論を出す」と強調する。足並みはそろっていない。
4党は、安全保障関連法の廃止などを共通政策にしているというが、憲法、日米安保など基本政策の違いは大きく、中長期的な協力関係も曖昧だ。首相が「無責任だ」と批判するのは理解できる。
首相は、秋の臨時国会から衆参両院の憲法審査会で改正項目の議論を始めたい考えを示した。国会で改憲のテーマが絞られていないことを理由に挙げるが、自民党として、どの項目の改正を優先するかも明示すべきではないか。
岡田氏も、「9条改正阻止」を唱えるだけでなく、民進党公約にある「未来志向の憲法」の具体像を説明してもらいたい。
残念なのは、参院のあり方に関する議論が乏しいことだ。
今回、1票の格差を是正するため、選挙区選で合区が導入された。地方の人口減が進めば、合区が拡大し、地方の声が国政に一段と届きにくくなるのは確実だ。
改正公職選挙法は、「参院のあり方を踏まえた選挙制度の抜本的な見直し」の検討を付則に明記している。自民党は公約で、全都道府県で最低1人が選出されるよう憲法改正を含めて検討するという。真剣な論議が欠かせない。
参院には本来、衆院に対する抑制や補完の役割が期待される。与党が参院で少数となる「ねじれ国会」に陥った際、政治の停滞を防ぐには、衆院の法案再可決の要件の引き下げが求められる。
参院の独自色も強めたい。
予算審議で優越する衆院に対して、参院が決算を重視し、審議結果を翌年の予算編成に反映させてきたことは評価できる。
衆参両院の役割分担と選挙制度を一体で改革し、立法府を活性化させることが肝要である。
[朝日新聞] 原発40年規制 運転延長に反対する (2016年06月21日)
運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)について、原子力規制委員会が運転延長を認可した。関電は安全対策工事をしたうえで、2019年秋以降の再稼働をめざす方針だ。
東京電力福島第一原発の事故を経て、朝日新聞は社説で20?30年後の「原発ゼロ社会」を主張してきた。当面どうしても必要な原発の稼働は認めつつ、危険度の高い原発や古い原発から閉じていくという意見である。
このままでは、利益をあげられると電力会社が判断した原発について、次々と運転延長が認められかねない。今回の認可に反対する。
まずは規制委である。
難題とされた電気ケーブルの火災対策で、燃えにくいケーブルへの交換が難しい部分は防火シートで覆う関電の方針を受け入れた。運転延長後の耐震性を推定するために格納容器内の重要機器を実際に揺らす試験も、対策工事後に回して認可した。
「1回だけ、最長20年」という運転延長規定は、電力不足などに備えるために設けられた。規制委も「極めて例外的」「(認可は)相当困難」と説明していたのではなかったか。
より大きな問題は、安倍政権の原発への姿勢である。
法律を改正し「原発の運転期間は40年」と明記したのは民主党政権のときだった。福島の事故を受け、国民の多くが「原発への依存度を下げていく」という方向で一致していたからだ。
安倍政権も、発足当時は「原発依存度を可能な限り低減する」と繰り返していた。しかし、なし崩し的に原発温存へとかじを切り、基幹エネルギーの一つに位置づけた。
「規制委が安全と判断した原発は再稼働していく」。これが最近の政権の決まり文句だ。
その規制委は個別原発の安全審査が役割だと強調する。避難計画が十分かどうかは審査の対象外だし、高浜原発がある福井県のような集中立地の是非も正面から議論はしていない。
高浜原発を巡っては今年3月、再稼働したばかりの3、4号機について、大津地裁が運転差し止めの仮処分決定を出した。決定の根底には、原子力行政を専門家任せにしてきたことが福島の事故につながったとの反省がある。
「原発40年」の法改正は民自公の3党合意に基づく。規制委によりかかりながら、原発依存度低減という国民への約束をなかったことにするのは許されない。政権は40年ルールへの考え方をきちんと説明するべきだ。
東京電力福島第一原発の事故を経て、朝日新聞は社説で20?30年後の「原発ゼロ社会」を主張してきた。当面どうしても必要な原発の稼働は認めつつ、危険度の高い原発や古い原発から閉じていくという意見である。
このままでは、利益をあげられると電力会社が判断した原発について、次々と運転延長が認められかねない。今回の認可に反対する。
まずは規制委である。
難題とされた電気ケーブルの火災対策で、燃えにくいケーブルへの交換が難しい部分は防火シートで覆う関電の方針を受け入れた。運転延長後の耐震性を推定するために格納容器内の重要機器を実際に揺らす試験も、対策工事後に回して認可した。
「1回だけ、最長20年」という運転延長規定は、電力不足などに備えるために設けられた。規制委も「極めて例外的」「(認可は)相当困難」と説明していたのではなかったか。
より大きな問題は、安倍政権の原発への姿勢である。
法律を改正し「原発の運転期間は40年」と明記したのは民主党政権のときだった。福島の事故を受け、国民の多くが「原発への依存度を下げていく」という方向で一致していたからだ。
安倍政権も、発足当時は「原発依存度を可能な限り低減する」と繰り返していた。しかし、なし崩し的に原発温存へとかじを切り、基幹エネルギーの一つに位置づけた。
「規制委が安全と判断した原発は再稼働していく」。これが最近の政権の決まり文句だ。
その規制委は個別原発の安全審査が役割だと強調する。避難計画が十分かどうかは審査の対象外だし、高浜原発がある福井県のような集中立地の是非も正面から議論はしていない。
高浜原発を巡っては今年3月、再稼働したばかりの3、4号機について、大津地裁が運転差し止めの仮処分決定を出した。決定の根底には、原子力行政を専門家任せにしてきたことが福島の事故につながったとの反省がある。
「原発40年」の法改正は民自公の3党合意に基づく。規制委によりかかりながら、原発依存度低減という国民への約束をなかったことにするのは許されない。政権は40年ルールへの考え方をきちんと説明するべきだ。
[朝日新聞] 参院選 あす公示 若者よ黙ってないで (2016年06月21日)
参院選があす公示され、7月10日の投票日に向けて、各党や候補者の論戦が本格化する。
今回から約240万人の18、19歳の有権者が投票できるようになる。これを機に、若者の政治参加について考えてみる。
若い世代の投票率は低い。とくに20代は60代の半分に満たないことも珍しくない。
たとえば14年の衆院選では、20代の32・58%に対し、60代は68・28%あった。13年の前回参院選は20代が33・37%で、60代は67・56%だ。
いまや国民の4人に1人が65歳を超える。人口が多いうえに投票率が高いのだから、選挙結果を左右する力が大きいのは、若者より圧倒的にお年寄りだ。
政治家は選挙のことを考え、投票所に足を運ぶ高齢世代の声に耳を傾けがちだ。そんな政治を称して「シルバー民主主義」という言葉も生まれた。
その一例が、参院選前に実施された。所得の低い65歳以上の約1100万人を対象に一律3万円を渡す臨時給付金だ。
所得の低い人への対応策は必要だとしても、なぜ高齢者だけなのか。野党は「税金による選挙対策だ」と批判したが、「賃上げの恩恵を受けにくい高齢者にアベノミクスの果実を支給する」として止まらなかった。
もともと長年にわたって、高齢者向けの予算配分は多い。国立社会保障・人口問題研究所によれば、13年度の政府支出は年金や介護など高齢者向けが54兆円余、保育所建設や児童手当など子育て向けは約6兆円だ。
もちろん、年齢を重ねるほど医療費や介護費が必要なケースが増える。総額が膨らむことは避けられない。だが同時に、若い世代にも、もっと予算を振り向ける必要があるのも確かだ。
保育所増設や保育士の待遇改善、子どもの貧困対策、返済義務のない給付型奨学金の創設なども急ぐべきだろう。
総務省によると、仕方なく非正規で働く「不本意非正規」の割合が最も多いのは25歳から34歳の世代だ。そうした人たちを正社員にするための能力開発事業なども拡充すべきだ。
子育て、教育、雇用対策など若い世代向けの政策の充実強化を政治家に迫る近道は何か。
やはり、若者自身が選挙公約に目をこらし、投票に行き、意思表示することだ。
消費増税を延期すれば、目の前の負担は増えなくてすむ。一方でそのツケを背負わされるのは、若い世代にほかならない。
こうした政治のあり方をどう評価するのか。黙っていていいわけがない。
今回から約240万人の18、19歳の有権者が投票できるようになる。これを機に、若者の政治参加について考えてみる。
若い世代の投票率は低い。とくに20代は60代の半分に満たないことも珍しくない。
たとえば14年の衆院選では、20代の32・58%に対し、60代は68・28%あった。13年の前回参院選は20代が33・37%で、60代は67・56%だ。
いまや国民の4人に1人が65歳を超える。人口が多いうえに投票率が高いのだから、選挙結果を左右する力が大きいのは、若者より圧倒的にお年寄りだ。
政治家は選挙のことを考え、投票所に足を運ぶ高齢世代の声に耳を傾けがちだ。そんな政治を称して「シルバー民主主義」という言葉も生まれた。
その一例が、参院選前に実施された。所得の低い65歳以上の約1100万人を対象に一律3万円を渡す臨時給付金だ。
所得の低い人への対応策は必要だとしても、なぜ高齢者だけなのか。野党は「税金による選挙対策だ」と批判したが、「賃上げの恩恵を受けにくい高齢者にアベノミクスの果実を支給する」として止まらなかった。
もともと長年にわたって、高齢者向けの予算配分は多い。国立社会保障・人口問題研究所によれば、13年度の政府支出は年金や介護など高齢者向けが54兆円余、保育所建設や児童手当など子育て向けは約6兆円だ。
もちろん、年齢を重ねるほど医療費や介護費が必要なケースが増える。総額が膨らむことは避けられない。だが同時に、若い世代にも、もっと予算を振り向ける必要があるのも確かだ。
保育所増設や保育士の待遇改善、子どもの貧困対策、返済義務のない給付型奨学金の創設なども急ぐべきだろう。
総務省によると、仕方なく非正規で働く「不本意非正規」の割合が最も多いのは25歳から34歳の世代だ。そうした人たちを正社員にするための能力開発事業なども拡充すべきだ。
子育て、教育、雇用対策など若い世代向けの政策の充実強化を政治家に迫る近道は何か。
やはり、若者自身が選挙公約に目をこらし、投票に行き、意思表示することだ。
消費増税を延期すれば、目の前の負担は増えなくてすむ。一方でそのツケを背負わされるのは、若い世代にほかならない。
こうした政治のあり方をどう評価するのか。黙っていていいわけがない。


